JP2020139238A - 剥離紙用原紙、及び剥離紙 - Google Patents

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Masaya Tosaka
昌也 登坂
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和幸 田渕
吉田 正
Tadashi Yoshida
正 吉田
吉田 義雄
Yoshio Yoshida
義雄 吉田
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Abstract

【課題】目止め性に優れ、均一な剥離剤層を形成することが可能な剥離紙用原紙、及び均一な剥離剤層を有し、光沢性、密着性、剥離性に優れた剥離紙を提供する。【解決手段】基紙と、前記基紙の少なくとも一方の面に目止め層を備え、前記目止め層が、少なくとも顔料、樹脂ラテックス、数平均繊維長が20nm以上250nm以下であるセルロースナノファイバーを含有する剥離紙用原紙と、この剥離紙用原紙を用いた剥離紙。【選択図】なし

Description

本発明は、粘着ラベル等に使用する剥離紙に用いられる剥離紙用原紙と、この剥離紙用原紙に剥離剤層を設けた剥離紙に関する。
剥離紙は、粘着ラベル等において、粘着面を保護し、粘着面の汚れ、粘着力の低下等を防ぐために、粘着面に貼付して用いられる。剥離紙は、粘着面から容易に剥離できるように、粘着面と接する表面に剥離剤層を有する。
剥離剤としては、一般的にシリコーン樹脂が用いられているが、シリコーン樹脂は非常に高価であるため、少量で剥離剤層を形成できるように、原紙としてシリコーン樹脂塗工液が浸透し難い、目止め性に優れたポリエチレンラミネート紙が用いられていた。
しかし、ポリエチレンラミネート紙は、紙表面に強靭なポリエチレンの皮膜が形成されており、使用後に離解することが困難であるため、リサイクルに適していないという問題があった。
本出願人は、特許文献1において、シリコーン樹脂等の剥離剤塗工液の浸透を抑えるための顔料塗工層を有し、木材パルプを主体とする基紙を用いていることからリサイクルが可能な剥離紙用原紙を、さらに、特許文献2において、顔料成分を含有する目止め層を備え、剥離剤塗工液を均一に塗工できる、リサイクルが可能な剥離紙用原紙を提案した。
ここで、顔料を含有する目止め層を有する剥離紙用原紙において、少量のシリコーン樹脂塗工液で均一な剥離剤層を形成するために、目止め層にはピンホール欠陥等がなく均一性が高いことが求められる。目止め層が均一であることにより、シリコーン樹脂塗工液の浸透を抑制でき、密着性と剥離性とに優れた剥離剤層を形成することができる。そして、従来、顔料を含有する目止め層において、目止め層の均一性は光沢度と相関があり、目止め層上に均一な剥離剤層を形成するためには、目止め層の光沢度は高い方が好ましいとされていた。
特開2000−282397号公報 特開2016−223036号公報
本発明は、目止め性に優れ、均一な剥離剤層を形成することが可能な剥離紙用原紙、及び均一な剥離剤層を有し、光沢性、密着性、剥離性に優れた剥離紙を提供することを課題とする。
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.基紙と、前記基紙の少なくとも一方の面に目止め層を備え、
前記目止め層が、少なくとも顔料、樹脂ラテックス、数平均繊維長が20nm以上250nm以下であるセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする剥離紙用原紙。
2.前記セルロースナノファイバーを、前記顔料100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下含有することを特徴とする1.に記載の剥離紙用原紙。
3.前記目止め層の塗工量が、片面当たり乾燥重量で5g/m以上20g/m以下であることを特徴とする1.または2.のいずれかに記載の剥離紙用原紙。
4.前記樹脂ラテックスを、前記顔料100質量部に対して8質量部以上25質量部以下含有することを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の剥離紙用原紙。
5.1.〜4.のいずれかに記載された剥離紙用原紙の目止め層上に剥離剤層を有することを特徴とする剥離紙。
本発明の剥離紙用原紙は、目止め層が数平均繊維長が20nm以上250nm以下であるセルロースナノファイバーを含有する。本発明の剥離紙用原紙は、光沢度は低いが均一性の高い目止め層を有するため、少量の剥離剤から均一性の高い剥離剤層を形成することができる。すなわち、本発明の剥離紙用原紙は、光沢度が低いにも関わらず均一な目止め層を有するため、この目止め層上に剥離剤層を設けることにより、光沢性、密着性、剥離性に優れた剥離紙を得ることができる。
本発明の剥離紙用原紙は、基紙と、この基紙の少なくとも一方の面に目止め層とを備え、この目止め層が、少なくとも顔料、樹脂ラテックス、数平均繊維長が20nm以上250nm以下であるセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする。
「基紙」
本発明において基紙とは、製紙用繊維、填料、各種助剤等からなるシートである。製紙用繊維は、木材パルプを主成分とすることが好ましい。木材パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の化学パルプ、サーモメカニカルパルプ、ストーングラインドパルプ、リファイナーグラインドパルプ等の機械パルプ、及び、新聞紙、コート紙、上質紙等から得られる再生パルプ等が挙げられる。これらの木材パルプを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。基紙は、木材パルプを主体とすることが、リサイクルが可能な剥離紙用原紙を得ることが容易となるため好ましい。また、必要に応じてケナフ、麻、竹等の非木材パルプ、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等のセルロース繊維以外の繊維材料を1種または2種以上配合することができる。
本発明の基紙は、填料を含有することができる。填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。本発明において、填料は任意成分であり、填料を含有しないこともできる。
助剤としては、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
基紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して基紙を製造することができる。また、基紙は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
さらに、基紙の表面を各種薬剤で処理することができる。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
基紙の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
基紙の坪量は、剥離紙用原紙及び剥離紙に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は50g/m以上300g/m以下程度のものが好ましく、80g/m以上200g/m以下のものがより好ましい。
「目止め層」
目止め層は、基紙の少なくとも一方の面に設けられ、少なくとも顔料、樹脂ラテックス、数平均繊維長が20nm250nm以下であるセルロースナノファイバーを含有する。
・顔料
顔料は、特に限定されることはなく、一般に製紙に使用されている顔料を使用することができる。例えば、カオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、マイカ、イライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、及び、密実型、中空型、またはコア−シェル型などの有機顔料等の顔料を1種または2種類以上組み合わせて使用することができる。
顔料は、レーザー回折/散乱法で測定した体積50%平均粒子径(D50)が、2.0μm以上7.0μm以下であることが好ましい。D50は3.0μm以上であることがより好ましい。また、5.0μm以下であることがより好ましい。
顔料のD50が2.0μm未満であると、基紙表面の繊維間の空隙を埋める効果は得られるものの、樹脂ラテックスが顔料間を十分に接着することができず、微細な空隙が多くなるために、目止め性が低下して剥離剤層の均一性が低下する場合がある。また、顔料のD50が7.0μmを超えると、目止め層表面の凹凸が大きくなり、やはり剥離剤層の均一性が低下する場合がある。
ここで、レーザー回折/散乱法の測定装置としては、例えば、堀場製作所社の粒子径分布測定装置「Partica」、マルバーン社の粒度分布測定装置「MASTER SIZER S」などが例示可能である。
顔料は、アスペクト比が5.0以上であることが好ましい。アスペクト比が5.0以上の顔料は、塗工後に目止め層内で平面方向に配向するため、目止め層の目止め性を向上させることができる。本発明では、アスペクト比が5.0以上のカオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、タルク、水酸化アルミニウム、マイカ、イライト等を使用することが好ましく、アスペクト比が5.0以上のカオリン、エンジニアードカオリン、クレー、デラミネーテッドクレーを使用することがより好ましい。
・樹脂ラテックス
樹脂ラテックスは、特に限定されず、スチレン・ブタジエン系共重合体、スチレン・アクリル系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ブタジエン・メチルメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体などの各種共重合体のラテックスを使用することができ、また、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、顔料との分散性、接着性に優れたスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックスを使用することが好ましい。
樹脂ラテックスのガラス転移温度(Tg)は、−20℃以上30℃以下であることが好ましい。樹脂ラテックスのTgが−20℃より低いと、目止め層が柔らかくなりすぎて傷が付きやすくなり、また、目止め層上に設けた剥離剤層の均一性が低下する場合がある。一方、Tgが30℃を超えると、目止め層の均一性が低下して、やはり目止め層上に設けた剥離剤層の均一性が低下する場合がある。
なお、樹脂ラテックスのTgは、樹脂ラテックスを130℃で30分間の前処理を行った後、走査型差動熱量計(JIS K−7122に準拠して窒素雰囲気下で10mgの試料を20℃/分で昇温)での二次転移に伴う比熱の変化を測定して、下記計算式から求められる。
Tg=Tg1×α1+Tg2×α2+・・・+Tgn×αn
Tg1、Tg2・・・Tgn:実測した各組成単体のガラス転移温度(K)
α1、α2・・・αn:全樹脂質量に対する各組成単体の質量分率(%)
目止め層において、樹脂ラテックスの配合量は、顔料100質量部に対して絶乾で8質量部以上25質量部以下であることが好ましい。樹脂ラテックスの配合量は10質量部以上であることがより好ましい。また、20質量部以下であることがより好ましい。
顔料100質量部に対する樹脂ラテックスの配合量が8質量部未満であると、顔料の比率が高くなりすぎるために、樹脂ラテックスが顔料間を十分に充填することができず、微細な空隙が多くなるために、目止め性が低下して剥離剤層の均一性が低下する場合がある。また、樹脂ラテックスの配合量が25質量部を超えると、剥離紙用原紙の水離解性が悪化するために、リサイクル性が低下する場合がある。
・セルロースナノファイバー(CNF)
セルロースナノファイバー(以下、CNFともいう)は、セルロース原料を、必要に応じて化学変性等の処理を行った後で、解繊処理することにより得られる微細繊維であり、一般に、繊維径が1〜100nmのセルロースのシングルミクロフィブリルと定義される。本発明は、数平均繊維長が20nm以上250nm以下であるセルロースナノファイバー(以下、短繊維CNFともいう)を用いることを特徴とする。
短繊維CNFの数平均繊維長は、200nm以下であることが好ましい。また、数平均繊維径は、2nm以上10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。短繊維CNFの数平均繊維長または数平均繊維径が上記した範囲であると、目止め性の向上効果が大きいため好ましい。
なお、短繊維CNFの数平均繊維長及び数平均繊維径は、CNFの電子顕微鏡(EM)像または原子間力顕微鏡(AFM)像から求めることができ、具体的には以下の測定方法により求めることができる。
<数平均繊維長>
マイカ切片上に固定した短繊維CNFの原子間力顕微鏡像(3000nm×3000nm)から、任意の30本以上について繊維長を測定し、数平均繊維長を算出する。繊維長測定は、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用い、長さ100nm〜2000nmの範囲で行う。
<数平均繊維径>
短繊維CNFの濃度が0.001質量%となるように希釈した短繊維CNF水分散液を調製する。この水分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の任意の30本以上について断面高さを計測し、数平均繊維径を算出する。
・セルロース原料
CNFの原料であるセルロース原料は、木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、或いはそれらを酸加水分解等の化学処理により精製した微結晶セルロース粉末等を使用することができる。この他に、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹等の植物由来のセルロース原料も使用することができる。
量産化やコストの観点からは、セルロース原料として粉末セルロース、微結晶セルロース粉末、或いはクラフトパルプ又はサルファイトパルプのような化学パルプを用いることが好ましい。化学パルプを用いる場合は、公知の漂白処理を施してリグニンを除去することが好ましい。漂白済みパルプとしては、例えば、白色度(ISO 2470)が80%以上の漂白済みクラフトパルプ又は漂白済みサルファイトパルプを使用することができる。
本発明では、セルロース原料は未変性であっても化学変性されていてもよいが、化学変性されていると繊維の微細化が十分に進み、均一な繊維長及び繊維径の短繊維CNFが得られるため好ましい。
化学変性の方法は特に制限されないが、例えば、カルボキシル化(酸化)、エーテル化(カルボキシメチル化)、カチオン化、エステル化、リン酸化、シランカップリング、フッ素化などの化学変性が挙げられる。これらの中で、カルボキシル化(酸化)、エーテル化(カルボキシメチル化)等のアニオン変性CNFが好ましく、短繊維CNFが得られやすいため、カルボキシル化CNFがより好ましい。
短繊維CNFの製造方法は特に制限されず、セルロース原料から公知の方法により製造することができる。
例として、アニオン変性短繊維CNFであれば、本出願人による特許第5544053号公報に記載の、加水分解処理した後にクラフト蒸解を行うことにより得られるパルプ(DKP)をセルロース原料として、これをカルボキシル化(酸化)、解繊する方法、特許第6229090号公報に記載の、セルロース原料をカルボキシル化(酸化)、アルカリ加水分解処理、解繊処理、脱塩処理する方法、特許第6313755号公報に記載の、セルロース原料をマーセル化剤で処理して得られるカルボキシメチル化セルロースを解繊処理する方法等が挙げられる。
また、数平均繊維長が250nmより長いCNFに対して、紫外線照射、酸化分解、酸加水分解等の短繊維化処理を施し、セルロース鎖を適度に切断して数平均繊維長を20nm以上250nm以下とすることで、短繊維CNFを製造することもできる。
目止め層において、短繊維CNFの配合量は、顔料100質量部に対して絶乾で0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。短繊維CNFの配合量は0.3質量部以上であることがより好ましい。また、10質量部以下であることがより好ましい。顔料100質量部に対する短繊維CNFの配合量が0.1質量部未満では短繊維CNFの配合による効果が不十分となり、目止め性が十分に向上しないことがある。また、短繊維CNFの配合量が15質量部を超えると短繊維CNFの配合による効果が飽和する。
目止め層は、少なくとも顔料、樹脂ラテックス、短繊維CNFを含有すればよく、その他に、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなど等の水溶性樹脂や、分散剤、耐水化剤、潤滑剤、消泡剤、増粘剤、保水剤、架橋剤、界面活性剤、防腐剤、染料、蛍光染料等の各種助剤を含有してもよい。
目止め層の塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、主として水を媒体とする水系塗工が好ましい。
目止め層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
目止め層の塗工量は、片面当たり乾燥重量で5g/m以上20g/m以下であることが好ましい。この塗工量が5g/m未満では、得られる目止め層が、剥離剤層用塗工液の浸透を防ぐことが困難となる。一方、この塗工量が20g/mを超えても、目止め性はほとんど向上せず、効果が飽和する。目止め層の塗工量は、片面当たり乾燥重量で8g/m以上であることがより好ましい。また、目止め層の塗工量は、片面当たり乾燥重量で15g/m以下であることがより好ましい。
目止め層のJIS P8155:2010に基づいて測定した平滑度(王研法)は、300秒以上2,000秒以下であることが好ましく、500秒以上1,500秒以下であることがより好ましい。平滑度(王研法)が300秒未満であると、剥離剤層用塗工液を薄く均一に塗工することが困難になることがある。また、平滑度(王研法)が2,000秒を超えると、剥離紙用原紙と剥離剤層との密着性が低下することがある。
目止め層のJIS P8151:2004に基づいて、ソフトバッキング使用、クランプ圧1MPaの条件で測定した表面粗さ(エア・リーク法)は、0.8μm以上3.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上2.5μm以下であることがより好ましい。表面粗さが0.8μm未満であると、目止め層と剥離剤層との密着性が低下することがある。また、表面粗さが3.0μmを超えると、剥離剤層の均一性が低下することがある。
ここで、本発明の目止め層は、顔料と短繊維CNFを含有するが、本発明の目止め層は、顔料を含有し短繊維CNFを含有しない従来の目止め層と比較して、光沢度が低下する。なお、短繊維CNFに限らず、CNFを含有させると目止め層の光沢度が低下するが、その理由は不明である。
従来の知見は、顔料を含有する目止め層の光沢度は目止め層の均一性と相関があり、目止め層上に均一な剥離剤層を形成するためには、目止め層の光沢度は高い方が好ましいというものであった。しかし、本発明の短繊維CNFを含有する目止め層は、従来の目止め層と比較して光沢度が低下するにも関わらず、ピンホール等の欠陥が少なく均一性に優れる。そして、この目止め層上に形成される剥離剤層はピンホール等の欠陥が少なく、従来の目止め層よりも均一性が向上し、光沢度も高くなる。そして、剥離剤層の均一性が向上するという効果は、短繊維CNF特有のものであり、繊維長の長いCNFでは剥離剤層の均一性は向上しない。
「剥離紙」
本発明の剥離紙用原紙の目止め層上に、剥離剤を塗工して剥離剤層を形成することにより、剥離紙を製造することができる。剥離剤としては、シリコーン樹脂、フッ素化合物、アミノアルキド化合物、ポリエステル化合物等の、表面エネルギーが低く粘着剤との粘着力が弱い材料を特に制限することなく使用することができるが、本発明においては、シリコーン樹脂を使用することが好ましい。剥離剤として使用するシリコーン樹脂としては、無溶剤系シリコーン樹脂、溶剤系シリコーン樹脂、水系エマルジョン系シリコーン樹脂及び無溶剤UV硬化型シリコーン樹脂等が挙げられる。
剥離剤の塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。
剥離剤層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
剥離剤層の塗工量は、片面当たり乾燥重量で0.2g/m以上3.0g/m以下であることが好ましい。この塗工量が0.2g/m未満では、均一な剥離剤層を得ることが困難となる。一方、この塗工量が3.0g/mを超えても、剥離性はほとんど向上せず、効果が飽和する。剥離剤層の塗工量は、片面当たり乾燥重量で0.3g/m以上2.0g/m以下であることがより好ましい。剥離剤層の塗工量は、片面当たり乾燥重量で0.4g/m以上であることがさらに好ましい。また、剥離剤層の塗工量は、片面当たり乾燥重量で1.2g/m以下であることがさらに好ましい。
上記したように、本発明の剥離紙用原紙は、目止め層の光沢度が低いにも関わらず均一性が高く、この目止め層上に均一な剥離剤層を形成することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。また、実施例における部及び%は、特に記載がない限り、それぞれ絶乾での質量部及び質量%を示す。
実施例に使用する顔料のレーザー回折/散乱法で測定した体積50%平均粒子径(D50)、並びに、剥離紙用原紙の品質及び剥離紙の品質は、下記の方法により測定・評価した。
<顔料のレーザー回折/散乱法で測定した体積50%平均粒子径(D50)>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン社製、機器名:マスターサイザーS)を用いて測定した。
<剥離紙用原紙の品質評価>
(1)平滑度(王研法)
JIS P8155:2010に基づいて、王研式平滑度計(旭精工株式会社製:KY−5)を使用して目止め層の表面を測定した。
(2)表面粗さ(エア・リーク法)
JIS P8151:2004に基づいて、ソフトバッキング使用、クランプ圧1MPaの条件で、PPS測定機(L&W社製:PPS TESTER)を使用して目止め層の表面を測定した。
(3)光沢度
JIS P8142:2005に基づいて、目止め層表面の75°光沢度を測定した。
(4)目止め性
縦148mm×横210mmに裁断した剥離紙用原紙の目止め層の上に、無溶剤系シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製:LTC-1053L)を、塗工量が乾燥重量で1.3g/mとなるようにRI印刷機で塗工し、130℃の乾燥機で3分間乾燥した。シリコーン樹脂の浸透の度合いを目視により観察して、以下の3段階により評価した。
○:シリコーン樹脂が目止め層の上に均一に残っている。
△:シリコーン樹脂の一部が浸透しているが、目止め層の上に概ね均一に残っている。
×:シリコーン樹脂が完全に沈んでいる(光沢感が無くなる)。
(5)均一性
縦148mm×横210mmに裁断した剥離紙用原紙の目止め層の上に、オイルブルーのトルエン溶液(濃度10%)を均一に塗布し、5秒後にガーゼで拭き取った。目止め層の欠陥(ピンホール等)と表面の状態を目視により観察して、以下の3段階により評価した。
○:ピンホール等の欠陥がなく、表面が均一。
△:ピンホール等の欠陥が若干あるが、表面は概ね均一。
×:ピンホール等の欠陥があり、表面が不均一。
(6)離解性
絶乾重量40gの剥離紙用原紙を、2Lの水に浸漬させ、パルプ離解試験機(熊谷理機工業株式会社製、JIS P 8220に準拠)で60分間離解した。水溶液中への離解の程度を目視により観察して、以下の3段階により評価した。
○:パルプ繊維が分散しており、離解性が良好。
△:わずかにパルプ繊維の結束が残っているが、離解性は概ね良好。
×:パルプ繊維の塊やパルプ繊維の結束が残っており、離解性が不良。
<剥離紙の品質評価>
(1)光沢度
JIS P8142:2005に基づいて、剥離剤層表面の75°光沢度を測定した。
(2)密着性
剥離紙の剥離剤層の表面を指(およそ3kg荷重)で約5cmを往復5回擦り、表面状態を目視により観察して、以下の3段階により評価した。
○:擦った箇所に跡が付かない。
△:擦った箇所に跡が付くが、剥離剤層の剥がれはない。
×:擦った箇所の剥離剤層が剥がれる。
(3)被覆性
剥離紙の剥離剤層の表面に赤色の油性マジックペン(寺西化学工業株式会社製、マジックインキ極太)で線を引き、インキのはじきの程度を目視により観察して、以下の3段階により評価した。
○:インキがはじかれて粒状になり、剥離剤層への浸透は見られない。
△:剥離剤層への浸透が若干あるが、インキははじかれて概ね粒状になっている。
×:インキのはじきが無く、剥離剤層に浸透している。
(4)剥離力
剥離紙の剥離剤層の上に、アクリルエマルジョン粘着剤(サイデン化学株式会社製、AT−22C)を、塗工量が乾燥重量で40g/mとなるように塗工した後、120℃で2分間乾燥して粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層の上に上質紙(坪量64g/m)を貼付し、粘着紙を作成した。
この粘着紙を23℃、50%RHの環境下で1週間静置した後、JIS Z0237:2009に基づいて、180度方向に300mm/分の速度で上質紙を剥離させる条件で、引張試験機を使用して上質紙と剥離剤層の剥離力を測定した。なお、剥離力が30〜130mN/30mmであると、実用上問題がない。
(CNF)
特許第5544053号公報に記載の、加水分解処理した後にクラフト蒸解を行うことにより得られるパルプ(DKP)をセルロース原料として、これをカルボキシル化(酸化)し、解繊処理する方法で、解繊処理の時間を調整することにより、数平均繊維長150nm、数平均繊維径3nmである短繊維CNF及び数平均繊維長300nm、数平均繊維径3nmである長繊維CNF1を得た。また、特許第6313755号公報に記載の、セルロース原料をマーセル化剤で処理して得られるカルボキシメチル化セルロースを解繊処理する方法で、解繊処理の時間を調整することにより、数平均繊維長500nm、数平均繊維径3nmである長繊維CNF2を得た。
[実施例1]
(基紙の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)300mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)100質量部を原料パルプとした。紙力剤としてカチオン化澱粉を原料パルプ100質量部に対して0.3質量部添加し、次いで、硫酸バンドを1.5質量部添加した後、長網多筒式の抄紙機を用いて抄紙を行い、坪量100g/mの基紙を得た。
(目止め層用塗工液の調製)
顔料としてカオリン(イメリス社製:KCS、D50:4.6μm)を100質量部、樹脂ラテックスとしてスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製:PA0330、Tg:−10℃)を15質量部、短繊維CNF(数平均繊維長:150nm、数平均繊維径:3nm)を2質量部、酸化澱粉(日本食品化工株式会社製:MS#3800)を3質量部、潤滑剤(サンノプコ株式会社製:ノプコートC−104)を0.1質量部配合して、目止め層用塗工液を調製した。
(剥離紙用原紙の作製)
得られた基紙の片面上に、目止め層用塗工液を乾燥重量で塗工量10g/mとなるようブレードコーターを用いて塗工、乾燥して、剥離紙用原紙を得た。
(剥離剤層用塗工液の調製)
無溶剤系シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製:LTC-1053L)に触媒を2部添加し、剥離剤層用塗工液とした。
(剥離紙の作成)
剥離紙用原紙の目止め層の上に、RI印刷機を用いて剥離剤層用塗工液を、塗工量が乾燥重量で1.0g/mとなるように塗工した後、乾燥機で硬化処理(130℃、30秒)を行い、剥離紙を得た。
[実施例2]
短繊維CNFを1質量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[実施例3]
短繊維CNFを5質量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[実施例4]
樹脂ラテックスを20質量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[実施例5]
目止め層用塗工液を乾燥重量で塗工量5g/mとなるようブレードコーターを用いて塗工、乾燥した以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[比較例1]
短繊維CNFを配合しない以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[比較例2]
短繊維CNFの代わりに、長繊維CNF1(数平均繊維長:300nm、数平均繊維径:3nm)を2質量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[比較例3]
短繊維CNFの代わりに、長繊維CNF2(数平均繊維長:500nm、数平均繊維径:3nm)を2質量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[比較例4]
樹脂ラテックスの代わりに、完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA−117)を15質量部配合した以外は、実施例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[比較例5]
樹脂ラテックスを20質量部配合した以外は、比較例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
[比較例6]
樹脂ラテックスを30質量部配合した以外は、比較例1と同様にして剥離紙用原紙と剥離紙を得た。
各実施例、比較例で得られた剥離紙用原紙及び剥離紙の評価結果を表1に示す。
Figure 2020139238
「まとめ」
本発明の剥離紙用原紙は、光沢度が低いにも関わらず、目止め性、均一性に優れており、この剥離紙用原紙に剥離剤層を設けた本発明の剥離紙は、剥離紙として好適に用いることができた。
実施例1、4で得た目止め層が短繊維CNFを含有する本発明の剥離紙用原紙は、それぞれ比較例1、5で得た目止め層が短繊維CNFを含有しない剥離紙用原紙と比較して、光沢度が低下したが、目止め性、均一性が向上した。そして、実施例1、4で得た本発明の剥離紙は、それぞれ比較例1、5で得た剥離紙よりも、光沢度が高く、密着性、被覆性が向上し、剥離紙として優れていた。
実施例1及び比較例2、3から明らかなように、CNF配合による剥離紙用原紙、剥離紙としての適性の向上は、数平均繊維長が短い短繊維CNFに特有の効果であり、数平均繊維長が長い長繊維CNFでは、この効果は認められなかった。

Claims (5)

  1. 基紙と、前記基紙の少なくとも一方の面に目止め層を備え、
    前記目止め層が、少なくとも顔料、樹脂ラテックス、数平均繊維長が20nm以上250nm以下であるセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする剥離紙用原紙。
  2. 前記セルロースナノファイバーを、前記顔料100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の剥離紙用原紙。
  3. 前記目止め層の塗工量が、片面当たり乾燥重量で5g/m以上20g/m以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の剥離紙用原紙。
  4. 前記樹脂ラテックスを、前記顔料100質量部に対して8質量部以上25質量部以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の剥離紙用原紙。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載された剥離紙用原紙の目止め層上に剥離剤層を有することを特徴とする剥離紙。
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