JP6658526B2 - 生体物質の選択的吸・脱着材 - Google Patents

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Description

本発明は、生体物質を含有する液から回収対象とする生体物質を選択的に吸・脱着して分離するための生体物質の選択的吸・脱着材に関し、特に血液等の生体液からペプチド等の生体物質を効率的に分離回収するための生体物質の選択的吸・脱着材に関する。
本発明はまた、この生体物質の選択的吸・脱着材を用いた高純度ペプチドの製造方法及びペプチドの分離方法に関する。
近年、癌や肝炎、その他の疾病の早期発見・診断のためのバイオマーカーとして、血液(血清又は血漿)中のペプチドが注目されている。疾病患者のペプチドには、疾患に特異的なペプチドが存在することから、これを検出することで癌などの疾病の早期発見・診断が可能となる。
ペプチドをバイオマーカーとして分析するためには、疾病患者から採取した血液からペプチドを選択的に分離回収する必要がある。従来、血液からペプチドを分離回収する方法として、ペプチドがシリカのメソ孔に選択的に侵入して吸着される性質を利用して、メソ孔を有するシリカ(本発明において、「メソポーラスシリカ」と称す。)をペプチドの吸・脱着材として用いる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、血清又は血漿に含まれるペプチドを、ハニカム構造のメソポーラスシリカの乾式粉体と混合することにより、ペプチドをメソポーラスシリカのメソ孔内に吸着させて回収する方法が提案されている。具体的には、まず、メソポーラスシリカの乾式粉体を、ペプチドを含む液体試料に入れて撹拌することにより、ペプチドをメソポーラスシリカのメソ孔内に吸着させた後、遠心分離によりペプチドを吸着したメソポーラスシリカを回収する。回収物を水で洗浄した後、酸性緩衝液で処理することにより、メソポーラスシリカ粒子の外面に吸着している蛋白質ないしは長鎖ペプチドを剥離除去する。次いで水洗後、アセトニトリルを含む水溶液よりなるペプチド回収用溶媒で処理することにより、メソポーラスシリカのメソ孔内に吸着しているペプチド(短鎖ペプチド)を脱着、溶出させて回収し、これを分析する。
この特許文献1の方法では、メソポーラスシリカの乾式粉体を用いるため、メソポーラスシリカと血液との混合、水による洗浄、酸性緩衝液による処理、ペプチド回収用溶媒による処理の各工程間で、遠心分離によるメソポーラスシリカ粉体の固液分離工程が必要となる。
国際公開WO2011/062270号パンフレット
メソポーラスシリカを用いるペプチドの分離回収方法は、血液中からペプチドを選択的に分離して回収する方法として有効な方法であるが、今後、臨床への実用化に当たっては、分析装置による自動化のために更なる改良が要求される。
即ち、従来法では、メソポーラスシリカを乾式粉体として用い、これをそのまま血液中に投入して撹拌しているため、血液とメソポーラスシリカとの混合工程を含め、水洗、酸性緩衝液による処理、ペプチド回収溶媒による処理の各工程において、粉体と処理液との撹拌混合と遠心分離による固液分離操作を複数回行う必要があり、このように煩雑な操作を複数回必要とする方法を、分析装置を用いて自動化することは困難である。
また、メソポーラスシリカ粉体では、次のような欠点もある。
(1) 液中にメソポーラスシリカの粉体を投入して撹拌しても、十分な接触効率が得られず、ペプチドの吸着効率も脱着効率も低いことから、処理に長時間を要する。
(2) 本来、親水性の高いシリカを粉体の状態で十分に洗浄し、また、遠心分離により固液分離することは困難であり、粉体の懸濁液中に含まれる残留成分のために分析結果が影響を受けるおそれがある。
(3) 遠心分離によるメソポーラスシリカ粉体の回収効率が悪く、ペプチドの回収ロスが多い。ペプチドの回収率が低いことは、分析精度を十分に高めることができない原因ともなる。
(4) 未回収の粉体が閉塞物質ないしは汚染物質となって装置の安定運転を阻害する原因となる。
本発明は上記従来の問題点を解決し、生体物質を含有する液から回収対象の生体物質を選択的に吸・脱着して分離するための生体物質の選択的吸・脱着材であって、取り扱い性に優れ、分析装置による自動化が容易であり、回収対象の生体物質を短時間で効率的に、かつ高い回収率で分離回収することができる生体物質の選択的吸・脱着材と、この生体物質の選択的吸・脱着材を用いた高純度ペプチドの製造方法及びペプチドの分離方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、メソ孔を有する多孔体を含むシートを吸・脱着材とすることにより、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1]生体物質を含有する液から、生体物質を選択的に吸・脱着して分離するための生体物質の選択的吸・脱着材であって、該吸・脱着材が、メソ孔を有する多孔体を含むシートであることを特徴とする生体物質の選択的吸・脱着材。
[2]前記吸・脱着材が、メソ孔を有する多孔体を含む吸・脱着層と通水性層とが積層された積層体であることを特徴とする、[1]に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[3]前記吸・脱着材が、メソ孔を有する多孔体を含む吸・脱着層の両面に通水性層が積層された積層体であることを特徴とする、[2]に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[4]前記吸・脱着材が、メソ孔を有する多孔体とバインダを含む層を有することを特徴とする、[2]に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[5]生体物質を含有する液から、生体物質を選択的に吸・脱着して分離するための生体物質の選択的吸・脱着材であって、該吸・脱着材が、メソ孔を有する多孔体を含む吸・脱着層と通水性層とが積層された積層体であることを特徴とする生体物質の選択的吸・脱着材。
[6]生体物質を含有する液から、生体物質を選択的に吸・脱着して分離するための生体物質の選択的吸・脱着材であって、該吸・脱着材が、メソ孔を有する多孔体とバインダとを含む層を有することを特徴とする生体物質の選択的吸・脱着材。
[7]前記メソ孔を有する多孔体のメソ孔径が2nm以上20nm以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[8]前記メソ孔を有する多孔体は、平均粒子径が50μm以上700μm以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[9]前記メソ孔を有する多孔体は、比表面積が100m/g以上1200m/g以下である、[1]〜[8]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[10]前記メソ孔を有する多孔体は、メソポーラスシリカ、シリカゲル、およびイオン交換樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[11]前記通水性層は、織布又は不織布である、[2]〜[5]及び[7]〜[10]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[12]前記通水性層は、外表面に親水化処理が施されている、[2]〜[11]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[13]前記通水性層は、外表面に疎水化処理が施されている、[2]〜[12]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[14]前記生体物質がペプチドである、[1]〜[13]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[15]前記バインダがエチレン酢酸ビニル共重合体である、[4]及び[6]〜[14]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[16]前記バインダは、メソ孔を有する多孔体とバインダとを含む層中に20重量%以上80重量%以下含有される、[4]及び[6]〜[15]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
[17]前記生体物質を含有する液を保持しうる容器であって、[1]〜[16]のいずれかに記載の吸・脱着材を内部に有する容器。
[18][1]〜[16]のいずれかに記載の吸・脱着材と前記生体物質を含有する液を保持しうる容器とを含む生体物質の精製キット。
[19][1]〜[16]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材を、生体物質を含有する液に接触させる工程を含む、生体物質の製造方法。
[20][1]〜[16]のいずれかに記載の生体物質の選択的吸・脱着材を、生体物質を含有する液に接触させる工程を含む、生体物質の分離方法。
本発明の生体物質の選択的吸・脱着材によれば、以下のような効果が奏される。
(1) シート状(層状)の成型体であるため、遠心分離のような固液分離操作が不要であり、例えば、生体物質を含有する液に浸して引き上げるのみで、回収対象の生体物質を吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体に吸着させることができる。また、水洗や各種の処理液による処理についても同様に簡易な操作で行うことができるため、分析装置による自動化が容易である。
(2) 生体物質を含有する液との接触効率が高く、水洗や酸性緩衝液、ペプチド回収溶媒等の処理液による処理の際においてこれらの液体との接触効率も高い。このため、生体物質の吸着効率、脱着効率が高く、生体物質を安定に高収率で分離回収することができる。また、吸着速度、脱着速度、洗浄効率、処理効率が高く、生体物質の吸・脱着操作に要する時間を大幅に短縮することができる。更に、洗浄効率、処理効率が高いことから、好ましくない残留成分の少ない、高純度の生体物質を回収することができ、夾雑物による影響を受けることなく精度よく分析することが可能となる。
(3) メソ孔を有する多孔体が脱落しない設計とすることで、メソ孔を有する多孔体を用いる場合のように、未回収の粉体が閉塞物質ないしは汚染物質となって装置の安定運転を阻害する問題を解決することができる。
本発明の生体物質の選択的吸・脱着材の実施の形態を示す、(a)第一の実施形態、(b)第2の実施形態、(c)第3の実施形態の模式的な断面図である。 本発明の生体物質の選択的吸・脱着材の形状の一例を示す模式図であって、(a)、(d)、(e)図は斜視図、(b)、(c)図は正面図である。 本発明の生体物質の選択的吸・脱着材の製造方法の一例を示す工程説明図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、以下において、本発明の実施形態に係る生体物質の選択的吸・脱着材を、生体物質を含有する液と接触させる処理、洗浄のために水と接触させる処理、回収対象の生体物質以外の不要物の剥離除去のために処理液と接触させる処理、回収対象の生体物質の脱着のために生体物質回収用溶媒等の脱着液と接触させる処理等、をまとめて「接液処理」と称する場合がある。
例えば回収対象の生体物質がペプチド(短鎖ペプチド)の場合、回収対象の生体物質以外の不要物とは、蛋白質ないしは長鎖ペプチド等が挙げられ、不要物の剥離除去のための処理液は酸性緩衝液等が挙げられる。
[生体物質の選択的吸・脱着材]
本実施形態に係る生体物質の選択的吸・脱着材は、メソ孔を有する多孔体を含むシートである形態(以下、第1の実施形態ともいう。)を含む。
また、本実施形態に係る吸・脱着材の別の実施形態として、メソ孔を有する多孔体を含む吸・脱着材と通水性層とが積層された積層体であってもよい(以下、第2の実施形態ともいう。)。
また、本実施形態に係る吸・脱着材の別の実施形態として、メソ孔を有する多孔体とバインダとを含む層を有してもよい(以下、第3の実施形態ともいう)。
本発明の吸・脱着材は、メソ孔を有する多孔体を含み、シート状構造を有するものであれば特に制限はないが、例えば血液の凝固因子となるような血栓性材料は好ましくなく、選択的吸・脱着材全体として、生体不活性材料や抗血栓性材料などの生体適合性材料よりなることが好ましい。
ただし、生体不適合性材料であっても、表面処理等により生体液との接触面が血栓性材料や生体不活性材料よりなるものとされたものは、生体適合性材料として、生体物質の選択的吸・脱着材の構成材料として用いることができる。
また、第1の実施形態に係る吸・脱着材は、以下のような特性ないし条件を有することが望まれることから、そのための様々な処理やシート設計上の工夫を講じることが好ましい。
(1)メソ孔を有する多孔体が生体物質を選択的に吸・脱着することから、生体物質の回収量を増加させるためには、吸・脱着材に含まれるメソ孔を有する多孔体の内表面積およびメソ孔の表面積と細孔容積がともに大きいことが好ましい。
(2) 接液処理時の液との接触効率を上げるために吸・脱着材に含まれる多孔体の外表面積を大きくすることが好ましい。多孔体の外表面積を大きくするためには、例えば、多孔体の粒径を小さくしたり、吸・脱着層を薄くすればよい。
(3) 接液処理時の液との接触効率を上げるために、メソ孔を有する多孔体は接液処理時の液との濡れ性がよいことが好ましい。また、吸・脱着材を構成する各部材、例えば通水性層を構成する材料に親水化処理を施したり、液中に浸漬し易いように吸・脱着材の比重を調整することが好ましい。
(4)吸・脱着材に含まれるメソ孔を有する多孔体は、接液処理時に流動しても流動しなくてもよい。液との接触効率の面からは流動した方が好ましい。流動が激し過ぎると、メソ孔を有する多孔体同士の衝突で粒子が破損し、細かい多孔体粉体が発生して脱落する「粉もれ」が起きる可能性がある。従って、脱落した多孔体粉体が、装置の閉塞因子又は汚染因子となると共に、ペプチドの回収率も悪くなるため、流動の程度は粉もれがない程度に調整することが好ましい。一方、粉もれを抑止し、取り扱い性を向上するためには接液処理時に多孔体が流動しない方が好ましい。流動しないためには多孔体をバインダで固定することが好ましい。
なお、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る吸・脱着材に関しても、対応する上記説明が援用され得る。また、以下に示す発明の構成要件に関する説明も、第1の実施形態のみならず、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る吸・脱着材に関して援用され得る。「本発明の実施形態」との表記は、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態を含み、またそれ以外の本発明が含み得る実施形態を全て包含する。
<生体物質を含有する液・生体物質>
本発明の実施形態において処理対象となる生体物質を含有する液としては、代表的には生体液である血液(血清又は血漿)が挙げられるが、これに限らず、例えば生体内に存在する体液、或いは生体内から外部へ排出される液、およびこれらの処理液のすべてが包含される。処理液とは生体液に処理を施した液であり、生体物質を分離回収できればその処理方法は限定されず、公知の方法を適用することができる。また、生体は人体に限定されない。生体液としては、具体的には以下のものが例示されるが、何らこれらに限定されるものではない。
血液、リンパ液、組織液(組織間液、細胞間液、間質液)、胸水、腹水、心嚢液等の漿膜腔液、脳脊髄液(髄液)、関節液(滑液)、眼房水(房水)、唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液等の消化液、汗、涙、鼻水、尿、精液、膣液、羊水、乳汁。
生体物質を含有する液から分離回収する生体物質としては、メソ孔を有する多孔体内に選択的に侵入して吸着されるものであればよく特に制限はないが、疾病の早期発見・診断のためのバイオマーカーとして使用できる生体物質が好ましく、例えば、核酸由来のバイオマーカー、ペプチド、タンパク質、脂質代謝物、糖質代謝物等が挙げられる。核酸としてはDNAおよびRNAがあげられる。
生体物質の液中での動的直径は、通常0.3nm以上、好ましくは0.4nm以上、より好ましくは0.5nm以上であり、通常15nm以下、好ましくは12nm以下、よりお好ましくは10nm以下である。生体物質がペプチドの場合、特にアミノ酸残基長10〜100、好ましくは10〜50の短鎖ペプチドが挙げられる。
生体物質を含有する液は分離回収の対象となる生体物質以外の不純物の含有量は少ない方が好ましく、不純物は公知の方法で除去できる。例えば、生体物質がペプチドの場合、アルブミンやグロブリンなどのタンパク質等の不純物の含有量が少ない方が好ましい。
<メソ孔を有する多孔体>
メソ孔を有する多孔体としては、メソ孔を有しており、且つ多孔体であれば特段限定されない。具体的には、メソポーラスシリカ、シリカゲル、シリカ・アルミナ、イオン交換樹脂、珪藻土、活性炭、ゼオライト、酸性白土、などがあげられる。これらのうち、生体物質の吸脱着の観点から、メソポーラスシリカ、シリカゲル、イオン交換樹脂であることが好ましい。
メソ孔の細孔径は通常2nm以上であり、また通常50nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは8nm以下、特に好ましくは5nm以下である。
メソ孔の細孔径は、分離回収の目的物である生体物質の種類に応じて設定することが好ましい。例えばペプチドを分離回収するためには、通常1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上であり、通常15nm以下、好ましくは12nm以下、よりこのましくは10nm以下である。
メソ孔を有する多孔体は、メソ孔を有していれば、メソ孔に含まれないマクロ孔などの細孔を有していてもよいが、目的とする生体物質を選択性よく効率的に分離回収するために、メソ孔を有する多孔体の細孔はメソ孔のみからなるものが好ましい。
なお、メソ孔を有する多孔体の細孔径は、窒素ガス吸脱着法で測定した等温吸・脱着曲線から、E.P.Barrett, L.G.Joyner, P.H.Haklenda, J.Amer.Chem.Soc.,vol.73,373(1951)に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図から求めることができるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
また、メソ孔を有する多孔体の単位重量当たりの細孔容積(本明細書ではこの「細孔容積/重量」で表される量を、単に「細孔容積」という。)は、通常0.1ml/g以上、好ましくは0.2ml/g以上、また通常1.5ml/g以下、好ましくは1.2ml/g以下である。細孔容積が上記下限未満では、吸・脱着性能に劣る傾向があり、上記上限を超えると接液処理で細孔構造や粒子が壊れやすくなり吸・脱着選択性が低下したり、粉もれが発生したりする。メソ孔を有する多孔体の細孔容積は、吸着等温線の相対圧0.98における窒素ガスの吸着量から求めることができるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
メソ孔を有する多孔体の形状は、多孔体をシート状(層状)に成型可能であれば特に制限はなく、破砕状、球状等の粒状であってもよく、また、モノリスや造粒粒子であってもよい。また、特許文献1に記載されるハニカム構造のものであってもよい。造粒粒子の場合は、一次粒子間の空隙が大きいものが、生体液等との接触効率の面で好ましい。
メソ孔を有する多孔体の大きさは、小さ過ぎると、全表面積(メソ孔内表面積と粒子外表面積との合計)に対して粒子外表面積が大きくなり、吸着効率、液との接触効率の面では有利である反面、吸着物質によっては、吸着選択性が下がるおそれがあり、逆に、大きい粒子では、粒子内の細孔長が長いために、接液処理時に生体液や洗浄水又は処理液が細孔内に浸透、拡散するのに時間がかかるようになり、吸・脱着や洗浄、生体物質の回収に長時間を要し、好ましくない。
メソ孔を有する多孔体の大きさには、回収対象の生体物質等に応じて最適値があり、一概には規定できないが、例えば、全粒子の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の粒子の最大フェレ径が、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは800μm以下である。
平均粒子径は、好ましくは50μm上、より好ましくは70μm以上であり、好ましくは700μm以下であり、より好ましくは600μm以下である。
ここで、最大フェレ径とはいわゆる定方向接線径の最大値であり、球状粒子であればその直径に該当し、破砕状等の異形形状の粒子では、その粒子を2本の平行な定方向接線で挟んだ場合に、最もその線同士の間の間隔が長くなる箇所の長さに該当する。最大フェレ径は例えば、光学顕微鏡により粒子を観察し、画像解析を行うことで求めることができる(以下、最大フェレ径を「粒子サイズ」ということがある)。全粒子に占める所定の径の粒子の割合は、任意に100個以上の粒子を選択して求めることができる。
また、平均粒子径は一次粒子の粒子サイズの平均値である。平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)等によって粒度分布を測定し、その結果から求めることができるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
メソ孔を有する多孔体は、比表面積が通常100m/g以上であり、好ましくは200m/gであり、また通常1200m/g以下、好ましくは1000m/g以下である。比表面積が上記下限以上であることで、目的物を効率的に吸・脱着することができる。上記上限以下であることで、多孔体の強度を担保することができ、吸・脱着材の耐久性を向上することができる。
なお、比表面積は、BET1点法により測定される。
メソ孔を有する多孔体は、外表面に目的物質以外の物質が吸着するのを防ぐために、疎水化処理等の表面処理を施して用いてもよい。表面処理の例としては、メソ孔を有する多孔体の外表面をシリコーン処理、トリメチルシリル化処理することで疎水化して、メソ孔を有する多孔体の細孔内のみに目的とする生体物質が選択的に吸着するように改質してもよい。この場合、メソ孔を有する多孔体の細孔内にもこのような処理が施されると、細孔内で目的物質が吸着し難くなるため、粒子の外表面のみに表面処理が施されるように、その処理の程度を調整することが重要である。
<吸・脱着層>
吸・脱着層はメソ孔を有する多孔体のみで構成されていてもよく、メソ孔を有する多孔体と他の材料とで構成されていてもよい。
吸・脱着層に含まれていてもよいメソ孔を有する多孔体以外の材料としては、メソ孔を有する多孔体による生体物質の吸・脱着機能を大きく阻害することなく、また生体不活性材料よりなるものであれば特に制限はないが、例えば、メソ孔を有する多孔体を固定して吸・脱着層の成型安定性を高め、前述の粉もれを防止するためのバインダや、比重調整のための無機フィラー、濡れ性向上のためのシリカの粗大粒子などが挙げられる。
本発明の第1の実施態様は、接液処理時に吸・脱着層を構成する材料が流動する態様を含むが、その場合、吸・脱着層にバインダを含んでも含まなくてもよい。
<バインダ>
バインダは、メソ孔を有する多孔体を成型できれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂としては、メソ孔を有する多孔体を成型(例えば熱融着により接着)することができるものであればよく特に制限はない。好ましくは以下に記載する吸水率及びMFRを満足するものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アイオノマー樹脂などがあげられ、これらの変性物であってもよい。多孔体の成型性及び溶剤耐性の観点から、エチレン酢酸ビニル共重合体、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンが好ましい。中でも、成分の溶出が少なく、メソ孔を有する多孔体の吸・脱着特性を低下させづらく、吸・脱着材に外部応力を受けてもメソ孔を有する多孔体が脱落しづらい点で、エチレン酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
熱可塑性樹脂は、以下の方法で測定される吸水率が0.2%以上であることが好ましい。吸水率が0.2%未満の熱可塑性樹脂は、疎水性が強く、吸・脱着層において、メソポーラスシリカ粒子間の空隙に表出した熱可塑性樹脂が水をはじくことによって、吸・脱着材の吸・脱着性能が劣るものとなる場合がある。熱可塑性樹脂の吸水率は高い程好ましく、特に0.5%以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂の吸水率の上限としては、通常10%以下である。
(熱可塑性樹脂の吸水率)
ポリエステル製剥離フィルム又はアルミ箔上に熱可塑性樹脂粒子を均一に散布した後、この上にポリエステル製剥離フィルム又はアルミ箔を重ね合わせて熱可塑性樹脂粒子を挟持させ、次いでこの積層体をホットプレスにより、熱可塑性樹脂粒子の融点よりも10℃高い温度にて0.5MPaで2分間処理し、その後、剥離フィルム又はアルミ箔を剥がし取り、吸水率測定用フィルム(厚さ約1mm)を作成する。このフィルムを25℃の水に3時間浸漬した後引き上げ、吸水性の良い紙にはさみ込んで表面の水滴を取り去った後、重量を測定し、重量増加分から吸水率(=重量増加分/吸水前の重量×100)を算出する。
熱可塑性樹脂の吸水率は、熱可塑性樹脂の親水性の指標として用いているが、熱可塑性樹脂の親水性は、水接触角によっても表すことができる。熱可塑性樹脂は、これを前述の吸水率測定用フィルムと同様の方法でフィルム状とし、このフィルム面に対してθ/2法により測定した水接触角が95°以下、特に85°以下であることが好ましい。前述の吸水率とこの水接触角とは必ずしも対応しておらず、水接触角が小さくても吸水率が低い熱可塑性樹脂や、吸水率が大きくても水接触角が大きい熱可塑性樹脂もある。これら両方の特性の指標とした場合、吸水率が大きくかつ水接触角が小さいものが最も好ましいが、吸水率が0.2%程度で、比較的吸水率の低いものであっても水接触角が小さいものであれば本発明に有効であると言える。
熱可塑性樹脂はまた、以下の方法で測定されるMFRが55g/10min以下であることが好ましい。MFRが55g/10minを超えるような流動性の大きいものでは、熱融着時の流動で、メソ孔を有する多孔体の表面を広く覆うこととなり、メソ孔を有する多孔体の表出面積を低減させ、また、メソ孔を有する多孔体の細孔をふさいでしまい、メソ孔を有する多孔体本来の吸・脱着機能を有効に発揮し得なくなる場合がある。熱可塑性樹脂のMFRは小さいほうが好ましいが、MFRが過度に小さいものは熱溶融時の流動性が小さ過ぎて、メソ孔を有する多孔体の成型が困難になる場合がある。従って、熱可塑性樹脂のMFRは1〜55g/10min、特に5〜50g/10minであることが好ましい。
(熱可塑性樹脂のMFR)
JIS K6760に従って、190℃、2.16kg荷重で測定する。
熱可塑性樹脂の融点について特に制限はないが、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、また通常250℃以下、好ましくは150℃以下である。熱可塑性樹脂の融点が50℃未満の場合は、常温での使用において熱変形しやすいという問題があり、逆に、250℃を超えると吸・脱着層の加熱溶融成形時に、後述の通水性層を備える場合には、該通水性層を熱変形させてしまうおそれがある。
熱可塑性樹脂の形状は特に限定されないが、粒子状のものを用いることで、メソ孔を有する多孔体と熱可塑性樹脂とを混合し、プレスする方法で、吸着脱層であるシートを形成することができる。熱可塑性樹脂粒子を用いる場合には、メソ孔を有する多孔体の粒子径との関係において、好適な粒子径が存在する。メソ孔を有する多孔体の粒子径に対して、熱可塑性樹脂粒子の粒子径が過度に大きいと、メソ孔を有する多孔体間に良好な空隙を形成し得ず、また、シート形成時に熱可塑性樹脂粒子中にメソ孔を有する多孔体が埋没してしまい、十分な吸・脱着機能を発揮することができない場合がある。熱可塑性樹脂粒子の粒子径が過度に小さくても、メソ孔を有する多孔体同士が密接し、吸・脱着層の空隙率が小さくなってしまう。粒子径が過度に小さい熱可塑性樹脂粒子は市販品として入手し難く、またメソ孔を有する多孔体との均一混合性にも劣るという欠点がある。
熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径は、メソ孔を有する多孔体の平均粒子径に対して、熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径/メソ孔を有する多孔体の平均粒子径=1/8〜15/1、特に1/7〜8/1の範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径自体は、上記平均粒子径比を満たす範囲において任意であるが、入手し易さ、取り扱い性等の面から5〜900μm程度であることが好ましい。
熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法(水分散湿式法)により求められた値である。
本発明の実施形態に係る吸・脱着材の吸・脱着層が上記の熱可塑性樹脂粒子を含む場合、吸・脱着層を構成する熱可塑性樹脂粒子とメソ孔を有する多孔体との重量比は1/4〜4/1、特に1/3〜3/1であることが好ましい。この範囲よりも熱可塑性樹脂粒子が少ないと、メソ孔を有する多孔体の成型性が悪く、シート状の吸・脱着層を形成しにくい。この範囲よりも熱可塑性樹脂粒子が多いと、メソ孔を有する多孔体成型時に溶融した樹脂が粒子間の空隙を埋めやすくなり、空隙率の低下を生じる。さらに、メソ孔を有する多孔体の細孔内に樹脂が入ったり、細孔を覆うことによって、吸・脱着性能が低下してしまい、吸・脱着性能に優れた吸・脱着材を得ることができない。
(無機フィラー)
吸・脱着層に、メソ孔を有する多孔体よりも比重の大きい無機フィラーを含有させることにより、吸・脱着材の比重を大きくして、生体液、その他の処理液中に沈み易くして、生体液、その他の処理液との濡れ性を高めることができる。このような目的で用いる無機フィラーとしては、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム、比重4.7)、石英(比重2.7)、アルミナ(比重4.0)等の金属酸化物粒子や、ステンレス鋼、チタン合金(Ti−6Al−4V)、コバルト−クロム合金(バイタリウム、Co−Cr−Mo合金)等の金属粒子などの1種又は2種以上を用いることができる。なお、血液の凝固因子となる金属粒子の場合、生体不活性材料で表面コーティングして用いることが好ましい。
無機フィラーの粒子サイズについては、過度に大きいと吸・脱着層の厚さに影響を及ぼし、また、通水性シート内でメソ孔を有する多孔体が動きやすくなり、粉もれにつながり、逆に、過度に小さいとメソ孔を有する多孔体の空隙を埋めやすくなり、吸・脱着性能を低下させるおそれがあることから、例えば、メソ孔を有する多孔体と同程度の大きさのものが用いられる。
無機フィラーは、その目的に応じて、吸・脱着材が所望の比重となるように用いられるが、吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体の含有量を確保するうえで、その合計体積が吸・脱着層の見掛け体積に対して通常80%以下、好ましくは70%以下の体積率となるように用い、通常5%以上の体積率である。
吸・脱着層と通気性層とを積層させる場合には、吸・脱着層にシリカの粗大粒子を含有させることにより、この粗大粒子を後述の通水性層の表面から突出させて、突出したシリカ粒子を親水性の起点として吸・脱着材の濡れ性を高めることができる。この場合、シリカの粗大粒子の粒子径は吸・脱着層の厚みよりもわずかに大きい程度でよく、通常、吸・脱着層の厚みの1.5倍以上5倍以下である。シリカの粗大粒子を吸・脱着層に含有させる場合、その量が少な過ぎると十分な濡れ性向上効果を得ることができないが、多過ぎると吸・脱着層の成型安定性が損なわれたり、吸・脱着量が制限されたりするため、その合計の体積が、吸・脱着層の見掛け体積に対して通常80%以下であり、70%以下の体積率であることが好ましく、また通常5%以上の体積率である。
吸・脱着層は、空隙率が10%以上であることが好ましい。吸・脱着層の空隙率が小さ過ぎると、吸・脱着層内への生体液や各種処理液の浸透効率が悪く、メソ孔を有する多孔体による優れた吸・脱着性能を十分に得ることができず、洗浄効率も劣るものとなる。空隙率は10%以上で、ある程度高いことが好ましいが、過度に高いと相対的にメソ孔を有する多孔体の割合が減ることにより吸・脱着性能が低下し、また、メソ孔を有する多孔体や熱可塑性樹脂粒子、その他の材料が少ないことにより吸・脱着層の成型性、形状保持性、機能性が劣るものとなる。従って、吸・脱着層の空隙率は通常15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また通常95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。
なお、ここで、吸・脱着層の空隙率は、例えば、メソ孔を有する多孔体と熱可塑性樹脂粒子とからなる吸・脱着層の場合、以下の方法で求められる値である。
(吸・脱着層の空隙率)
吸・脱着層の空隙率とは、吸・脱着層の両面に表面平滑なシートを積層したときに、そのシート間に形成される体積のうち、空隙(ただし、メソ孔を有する多孔体の細孔容積は含まない)が占める割合(百分率)をさし、吸・脱着層を構成する材料の比重及び使用重量から求めた吸・脱着層に占める構成材料の体積と、吸・脱着層の見掛け体積(後述の通水性シート間に形成される体積)から計算によって求められる。
具体的には、12cm×12cm(面積)の吸・脱着層について、次のような方法で算出される。
吸・脱着層体積[cm]:12×12×(吸・脱着層厚さ)
メソ孔を有する多孔体の体積[cm]:
(吸・脱着層重量)×(吸・脱着層構成材料中のメソ孔を有する多孔体の重量割合)/(メソ孔を有する多孔体の真比重)
メソ孔を有する多孔体の細孔容積[cm]:
(吸・脱着層重量)×(吸・脱着層構成材料中のメソ孔を有する多孔体の重量割合)×(メソ孔を有する多孔体の細孔容積[cm])
熱可塑性樹脂粒子体積[cm]:
(吸・脱着層重量)×(吸・脱着層構成材料中の熱可塑性樹脂粒子重量割合)/(熱可塑性樹脂粒子密度)
空隙容積[cm]:
(吸・脱着層体積[cm]−メソ孔を有する多孔体の粒子体積[cm]−メソ孔を有する多孔体の細孔容積[cm]−熱可塑性樹脂粒子体積[cm])
吸・脱着層空隙率[%]:(空隙容積[cm])/(吸・脱着層体積[cm])×100
吸・脱着層の厚さは、接液処理時の液の浸透性、通過性の面からは、薄い方が好ましい。従って、吸・脱着層の厚さは、層内に含まれるメソ孔を有する多孔体の平均粒子径の20倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。また2倍以上であることが好ましい。即ち、吸・脱着層の厚さ方向に、メソ孔を有する多孔体の層が2〜5層程度形成される厚さであることが好ましい。
例えば、吸・脱着層の厚さは、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、また、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
<通水性層>
本発明の実施形態に係る吸・脱着材は、通水性層を有してもよい。通水性層は、親水性、通水性に優れ、生体適合性の材料であって、取り扱い時に必要な機械的強度、耐薬品性等を満たすものであればよく、特に制限はないが、織布又は不織布を用いることが好ましい。
織布又は不織布としては、市販のものを用いることができるが、特に安価であり、目開き調整されたものを容易に入手できる点から、通水性層としては、不織布を用いることが好ましい。
通水性層に用いる不織布又は織布を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維;ポリアクリル繊維;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維のような合成繊維;レーヨン、アセテート繊維などの半合成繊維などを1種以上組み合わせたものを使用できる。これらのうち、半合成繊維、特にレーヨンは濡れ性が高い点で吸・脱着を行う際の取り扱いやすい点で好ましく、ポリオレフィン繊維は生体物質の回収率が高い点で好ましい。ポリエステル繊維は濡れ性と生体物質の回収率をバランス良く満たす点で好ましい。
また、芯鞘構造として熱融着性を付与した繊維や、繊維を極細化、繊維断面の異形化、側面への溝や凹部の付与、繊維の多孔化などによって親水性を高めた特殊繊維や、親水性のコーティング処理を施した表面処理繊維などを用いることもできる。特に、芯鞘繊維は、後述の本発明の吸・脱着材の製造の際に、切断時に容易にヒートシールを施すことができ、好ましい。
通水性層は、接液処理時の各種の液の浸透性、通過性から、目開きが大きい方が好ましいが、過度に大きいと吸・脱着層の成型安定性が劣るものとなる。
また、通水性層の厚さについては、吸・脱着材の強度の確保、熱融着のしやすさの観点からは厚い方が好ましく、薄肉化のためには薄い方が好ましい。
接液処理時の各種の液の浸透性、通過性、吸・脱着材の強度、取り扱い性等の面からは、通水性層は以下の条件を満たすことが好ましい。
通水性層の平均目開きは、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、また通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。通水性層の平均目開きは、吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体の平均粒子径に対して通常0.1倍以上、好ましくは0.2倍以上であり、また通常1倍以下、好ましくは0.8倍以下である。
通水性層の厚さは通常50μm以上、好ましくは70μm以上、より好ましくは100μm以上であり、また通常1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体の重量(g/m)に対して通水性層の重量(g/m)が1/10〜10倍、特に1/5〜5倍となるように用いることが好ましい。
また、通水性層が不織布である場合、その目付量が通常10g/m以上、好ましくは20g/m以上、より好ましくは30g/m以上であり、通常200g/m以下、好ましくは150g/m以下、より好ましくは100g/m以下である。
また、通水性層は、JIS L 1096 6.27.1 A法(フラジール法)に準じて測定した通気度が通常50cc/cm・sec以上、好ましくは70cc/cm・sec以上であり、また通常250cc/cm・sec以下、好ましくは200cc/cm・sec以下である。
また、通水性層の比表面積に対して吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体の比表面積が通常1000倍以上、好ましくは1万倍以上であり、また通常1000万倍以下である。ここで、通水性層の比表面積とは、通水性層が織布又は不織布で構成される場合、構成する糸(繊維)の表面積の値であり、メソ孔を有する多孔体の比表面積とは粒子外表面積と細孔内表面積の合計の値であり、窒素ガスBET法により求めることができる。
通水性層が織布又は不織布で構成される場合、織布又は不織布を構成する繊維の疎水性が高く、十分な濡れ性が得られない場合には、次のような親水性向上処理を施してもよい。
(1) 織布又は不織布に、アルゴン又は酸素等のプラズマによる表面処理を施し、水酸基を導入して親水性を高める。
(2) サンドブラスト等で織布又は不織布の表面粗さを高めることで、濡れ性、親水性を高める。このブラスト処理で織布又は不織布の表面に親水性元素を打ち込み、これにより更に親水性を高めることもできる。
(3) セルロース繊維、レーヨン繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)繊維等の親水性繊維、或いは、酢酸ビニルやビニルアルコール等の親水性モノマーを用いた親水性共重合樹脂繊維などを、織布又は不織布を構成する繊維として、単独で、或いは、通水性シートに用いる不織布又は織布を構成する繊維として先に例示したものに加えて、これらの繊維と混合して、或いは積層して、或いは短繊維としてバインダ等を用いてシート化するなどの方法で用いる。
(4) ポリエチレングリコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、スルホン化セグメントポリウレタン等の親水性基を織布又は不織布表面に物理的又は化学的に固着させる処理を行う。
(5) 織布又は不織布の表面にシリカコーティング処理を施して親水化する。このシリカコーティングは、織布又は不織布に対して、ドット状、又は線状に印刷することで部分的に行うものであってもよい。
通水性層の親水性の程度としては、1cm角のシートを水面に浮かすような形で水につけた時に短時間で水中に埋没する程度がよい。好ましくは1分以内、より好ましくは30秒以内に埋没する程度の親水性を有することが好ましい。また、親水性の程度を示す別な方法として、通水性層に純水の水滴を落としたときに、10秒以内にシートへの水の浸み込みが始まるものが良く、望ましくは5秒以内に水が浸み込むものがよい。
また、生体液や各種処理液内に吸・脱着材が沈み易くするための比重調整として、通水性層に、比重の大きい材料よりなる孔明きシート(例えば、パンチングメタル)を積層したり、高比重材料を含有させたりしてもよい。
通水性層には、吸・脱着材を生体液内に浸漬した際に、夾雑物で目詰まりしたり、粘着物が付着したりすることがないことが好ましい。また、接液処理時の各種の液の浸透性、通過性の面からは、親水性に優れることが好ましい。ただし、通水性層の材質や表面処理の方式によっては、通水性層への生体物質の吸着量が多くなり過ぎ、吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体の細孔内への生体物質の吸着量が少なくなるおそれもあることから、表面状態を適宜調整することが好ましい。
表面状態の調整には、例えば、抗血栓性の材料を適用するのが好ましく、抗血栓性材料としては、ヘパリン固定化コーティング材料、ウロキナーゼ固定化コーティング材料、トロンボモジェリン固定化コーティング材料、セグメント化ポリウレタンコーティング材料、合成系生体適合性コーティング材料、リン脂質吸着または固定化コーティング材料(MPCポリマー)、アルキル化セルロースコーティング材料等が挙げられる。
また、疎水性となって親水性が低下するデメリットはあるものの、生体適合性に優れたものとすることができることから、ポリジメタルシロキサンなどのシリコーン材料を通水性層に用いたり、シリコーンコーティングを通水性層に施したりしてもよい。
ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリ四フッ化エチレンなどのフッ素樹脂は、通水性層の構成材料としても、またコーティング材料としても好ましく用いることができる。
<本発明の吸・脱着材の構成>
以下に図面を参照して本発明の吸・脱着材の具体的な構造例について説明するが、以下の説明は本発明の吸・脱着材の一例であって、本発明の吸・脱着材は何ら以下のものに限定されるものではない。
図1は、本発明の吸・脱着材の実施の形態の一例を示す模式的な断面図である。
図1(a)は、メソ孔を有する多孔体を含むシートの好ましい態様の一例であり、吸・脱着材1が、メソ孔を有する多孔体2がバインダ3で互いに接着したシート状の吸・脱着層4の両面に、通水性層5が積層されている。吸・脱着層4と通水性層5とは、吸・脱着層4に含まれるバインダ3により接着されている。
吸・脱着層4の両面に、通水性層5が積層されている形態の吸・脱着材の厚さは、通常300μm以上、好ましくは500μm以上であり、通常5000μm以下、好ましくは4000μm以下、より好ましくは3000μm以下である。
図1(a)において吸・脱着層4はメソ孔を有する多孔体2とバインダ3とで構成されているが、本発明に係る吸・脱着層4は更に前述の無機フィラーやシリカの粗大粒子を含んでいてもよい。吸・脱着層4の両面の通水性層5は、一方の通水性層と他方の通水性層とが同じ材料でも異なる材料でもよい。
吸・脱着層4の両面に、通水性層5が積層されている構成において、吸・脱着層4はバインダ3を含んでも含まなくてもよい。
バインダを含む場合は図1(a)に示した通り、メソ孔を有する多孔体2がバインダ3で互いに接着したシート状の吸・脱着層4を形成する。
バインダを含まない場合は、(a−i)吸・脱着層が、バインダを含まずに成型されたメソ孔を有する多孔体の成型体である、(a−ii)吸・脱着層が、メソ孔を有する多孔体を通水性層に固定されて形成された層である、(a−iii)吸・脱着層が、メソ孔を有する多孔体が通水性層で挟持されることで層の形状を保持する、等の態様により、吸・脱着材をシートの形状としうる。
(a−i)吸・脱着層が、バインダを含まずに成型されたメソ孔を有する多孔体の成型体である場合、該成型体は、例えば、メソ孔を有する多孔体を打錠成型することで得られる。吸・脱着層がバインダを含まない場合、吸・脱着層と通水性層とを、前述のバインダと同一の材料を用いて積層しても良く、融着できる材料を含む通水性層により熱融着してもよい。本実施態様は、吸・脱着層が脆くなりやすい一方で、バインダの量を低減することができ、メソ孔を有する多孔体に生体物質を含有する液を効率的に接触させることができる点で好ましい。
(a−ii)吸・脱着層が、メソ孔を有する多孔体を通水性層に固定されて形成された層である場合は、吸・脱着層を形成するために、2つの通水性層の一方の層にのみメソ孔を有する多孔体を固定しても、両方の通水性層にメソ孔を有する多孔体を固定してもよい。吸・脱着材が含むメソ孔を有する多孔体の量を多くしやすい点で、両方の通水性層にメソ孔を有する多孔体を固定するのが好ましい。該固定の方法は限定されず、例えばメソ孔を有する多孔体をバインダにより通水層に接着してもよく、通水性層に融着できる材料を用いてメソ孔を有する多孔体と通水性層とを融着してもよい。本実施形態において2つの通水性層は吸・脱着層を介して接着されないため、2つの通水性層を相互に固定する必要がある。2つの通水性層の固定の位置は限定されず、例えば、2つの通水性層の周縁部同士を固定する方法や、2つの通水性層を所定の間隔で固定する方法が挙げられる。該固定の方法は限定されず、例えば接着でも熱融着でもよい。接着の場合には前述のバインダを接着剤として用いてもよい。融着する場合は、通水性層が熱融着できる材質であるのが好ましい。固定の位置は限定されないが、粉もれを抑止するためには、通水性層の周縁部を接合するのが好ましい。本実施形態によれば、メソ孔を有する多孔体の表面においてバインダと接触する面積が少なくなるため、接液処理を効率的に行うことができる点や、メソ孔を有する多孔体2が通水性層に固定されているため、粉もれが生じづらい点で好ましい。
(a−iii)吸・脱着層が、メソ孔を有する多孔体が通水性層で挟持されることで層の形状を保持する場合、接液処理時にメソ孔を有する多孔体が流動し、前述のように粉もれが生じるおそれがある。通水性層の周縁部から多孔体がもれないように、2枚の通水性層の周縁部を固定した態様が好ましい。2つの通水性層の周縁部を固定する方法は限定されず、例えば接着でも融着でもよい。接着の場合には前述のバインダを接着剤として用いてもよい。2つの通水性層が所定の間隔で融着していてもよい。この場合、通水性層に熱融着できる材質を用いるのが好ましい。
また、接液処理時の各種の液の浸透性、通過性を確保した上で、吸・脱着層におけるメソポーラスシリカ粒子の流動性が適度なものとなるように、設計上の工夫を行うことが好ましい。
なお、吸・脱着層4がバインダ3を含む場合であっても、メソ孔を有する多孔体2が吸・脱着層4から脱落し、粉もれが生じる場合があるため、粉もれを抑制するためには、設計上の工夫を行うことが好ましい。
吸・脱着層4がバインダ3を含み、吸・脱着層4の両面に通水性層5が積層された図1(a)の態様は、特に吸・脱着材1からの粉もれを抑制するのに好ましい態様であり、生体物質の分析装置の安定運転を阻害しづらい点で好ましい。
図1(b)は、メソ孔を有する多孔体を含む吸・脱着層と通水性層とが積層された吸・脱着材の好ましい態様の一例である。メソ孔を有する多孔体2がバインダ3で互いに接着してシート状の吸・脱着層4を形成し、吸・脱着層4の一方の面に、通水性層5が積層されている。吸・脱着層4と通水性層5とは、吸・脱着層4に含まれるバインダ3により接着されている。
吸・脱着層4の一方の面に、通水性層5が積層されている、すなわち一の吸・脱着層と一の通水性層が積層されている場合の吸・脱着材の厚さは、通常150μm以上、好ましくは200μm以上であり、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下である。
なお、通水性層の両面に吸・脱着層が積層されていてもよい。この場合、吸・脱着材の厚さは、通常250μm以上、好ましくは400μm以上であり、通常5000μm以下、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下である。
図1(b)において吸・脱着層4はメソ孔を有する多孔体2とバインダ3とで構成されているが、更に、本発明に係る吸・脱着層4は前述の無機フィラーやシリカの粗大粒子を含んでいてもよい。
吸・脱着層4の一方の面に、通水性層5が積層されている構成において、吸・脱着層4はバインダ3を含んでも含まなくてもよい。
バインダを含む場合は図1(b)に示した通り、メソ孔を有する多孔体2がバインダ3で互いに接着したシート状の吸・脱着層4を形成する。
バインダを含まない場合は、(b−i)吸・脱着層が、バインダを含まずに成型されたメソ孔を有する多孔体の成型体である、(b−ii)吸・脱着層が、メソ孔を有する多孔体を通水性層に固定されて形成された層である、等の態様により、吸・脱着材をシートの形状としうる。
(b−i)吸・脱着層が、バインダを含まずに成型されたメソ孔を有する多孔体の成型体である場合、該成型体は例えば、メソ孔を有する多孔体を打錠成型することで得られる。吸・脱着層がバインダを含まない場合、吸・脱着層と通水性層との積層に、前述のバインダと同一の材料を用いてもよく、融着できる材料を含む通水性層により熱融着してもよい。本実施形態は、吸・脱着層が脆くなりやすい一方で、バインダの量を低減することができ、メソ孔を有する多孔体に生体物質を含有する液を効率的に接触させることができる点で好ましい。
(b−ii)吸・脱着層が、メソ孔を有する多孔体を通水性層に固定されて形成された層である場合、該固定の方法は限定されず、例えばメソ孔を有する多孔体をバインダにより通水層に接着してもよく、通水性層に融着できる材料を用いてメソ孔を有する多孔体と通水性層とを融着してもよい。本実施形態によれば、メソ孔を有する多孔体の表面においてバインダと接触する面積が少なくなるため、接液処理を効率的に行うことができる点や、メソ孔を有する多孔体2が通水性層に固定されているため、粉もれが生じづらい点で好ましい。
吸・脱着層4がバインダ3を含み、吸・脱着層4に通水性層5が積層された図1(b)の態様は、吸・脱着材1からの粉もれを抑制しつつ、接液処理時の各種の液を吸・脱着層4に接触しやすい点で好ましい。
図1(c)は、メソ孔を有する多孔体2とバインダ3とを含む層を有する吸・脱着材1の好ましい態様の一例であり、メソ孔を有する多孔体2がバインダ3で互いに接着してシート状の吸・脱着材1を形成している。
吸・脱着層に、通水性層が積層されていない形態の吸・脱着材の厚さは、通常100μm以上、好ましくは200μm以上であり、通常2000μm以下、好ましくは1000μm以下である。
図1(c)の態様は、接液処理時の各種の液を吸・脱着層4に接触しやすく、また、メソ孔を有する多孔体2以外に生体物質が付着しうる成分がバインダ3のみのため生体物質の回収率を上げやすく、また、接液処理時の各種の液を吸・脱着層4に効率的に接触できる点で好ましい。
本発明の吸・脱着材のシートまたは積層体の形状には特に制限はなく、適用する生体液の分析装置の形態等、目的に応じて適宜決定される。通常、シートとは、厚さよりも幅および奥行が大きい形状を意味するが、本発明において、シートまたは積層体の形状は、厚さが幅および/または奥行よりも大きい形状も含む。例えば、厚さが底面の一辺の長さよりも長い直方体や、積層方向の厚さが底面の直径よりも大きい円柱であってもよく、また、積層体の厚さ、幅、および奥行が同じ立方体であってもよい。取り扱い性の点では、厚さよりも幅および奥行が大きい形状が好ましい。
例えば、本発明の吸・脱着材1は、図2(a)に示すような、採血用スピッツ(試験管)10に挿入し、スピッツ10内で血液6と接触して使用されることから、スピッツ10の形状に合わせ、一方の端部が先端側ほど幅狭となる略長方形状であってもよい。
また、このような吸・脱着材において、処理液の通液性を高めるために、図2(b)に示すように、厚さ方向に透孔1aを形成した吸・脱着材1A、図2(c)に示すように、両側辺部に切込1bを入れた吸・脱着材1Bとしてもよい。
また、スピッツ内に挿入できる吸・脱着材シート量を大きくして吸・脱着面積を増やすために、図2(d)に示すように、先端側を蛇腹状にプリーツ加工した吸・脱着材1Cとしてもよい。
更に、吸・脱着材の小片1Dをネット7内に入れ、ティーバッグのように吊り紐8等で吊り下げて使用する構成としてもよい。
なお、吸・脱着材は、例えば、以下に説明する製造方法で製造することができるが、吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体の脱落を確実に防止するために、吸・脱着層の両面に設けられる2枚の通水性シートの周縁を吸・脱着層の周縁よりも外側に延出させて、延出部を互いにヒートシール等で熱融着させることにより、後掲の図3(e)に示されるように、吸・脱着材26の全周縁部において、通水性層22と通水性層24の端縁部が密着されて密閉袋状とされていることが好ましい。この周縁部における通水性層同士の熱融着部の幅(図3(e)のLの長さ)は、十分な熱融着強度を確実した上で、吸・脱着材面積に対する吸・脱着層面積の割合を大きくして吸・脱着効率を高める観点から50μm以上であることが好ましく、また2000μm以下であることが好ましい。
<吸・脱着材の製造方法>
吸・脱着材の製造方法は限定されず、例えば次のようにして吸・脱着材を製造することができる。
まず、図3(a)(斜視図)のように、所望のパターンに孔開き加工を施したマスク21を準備し、このマスク21を図3(b)(断面図)のように通水性層22の上方に設置し、この上からメソ孔を有する多孔体、例えばメソポーラスシリカ粒子を散布して、通水性層22上にマスク21の透孔21aのパターン形状にメソポーラスシリカ粒子層23を形成する。次いで、図3(c)(断面図)に示すように、この上に通水性層24を載せて、通水性層21/メソポーラスシリカ粒子層23/通水性層24の積層体25とする。次いで、図3(d)(平面図)に一点鎖線で示すように、得られた積層体25のメソポーラスシリカ粒子層23間を加熱しながら切断することにより、下側の通水性層22と上側の通水性層24とを熱融着すると共に切断して、図3(e)(断面図)の通り、吸・脱着層としてメソポーラスシリカ粒子23Aを含む所望の形状のシート状の吸・脱着材26を得る。更にプリーツ加工を施すことにより、図2(d)に示す吸・脱着材1Cを得ることができる。
また、このように、加熱と切断とを同時に行う方法の他、加熱により熱融着し、その後常温に戻してから切断する方法も好適に採用される。
吸・脱着層にメソ孔を有する多孔体と共に前述の無機フィラーやシリカの粗大粒子を含有させる場合は、上記のメソ孔を有する多孔体の散布時に、メソ孔を有する多孔体と無機フィラー及び/又はシリカの粗大粒子の混合物を散布すればよい。
また、吸・脱着層にメソ孔を有する多孔体と前述のバインダを含有させる場合は、上述のメソ孔を有する多孔体の散布時に、メソ孔を有する多孔体と例えばバインダとして熱可塑性樹脂粒子との混合物を散布し、上記と同様に積層体25とする。この積層体25をホットプレス、加熱ロール、加熱ベルトなどにより加熱して、熱可塑性樹脂の溶融でメソ孔を有する多孔体同士及びメソ孔を有する多孔体と通水性層とを接着一体化した後、上記と同様に切断する。
このような吸・脱着層の製造工程は、ベルト上に送り出した通水性層上に、マスクを介してメソ孔を有する多孔体と必要に応じバインダなどとの混合物を散布し、その上に別途送り出した通水性層を重ねて加熱、切断する連続工程で実施することができる。
[生体物質の精製キット]
本発明の吸・脱着材は、生体物質を含有する液からの生体物質の吸・脱着に使用できる。従って、例えば生体物質を含有する液を保持するための容器の内部に吸・脱着材を格納し、生体物質の精製キットとすることができる。
生体物質の精製キットは、吸・脱着材と前記生体物質を含有する液を保持しうる容器とを含めばよく、使用時に生体物質を含有する液を保持するための容器の内部に吸・脱着材を簡便に格納(挿入)して使用すればよい。
容器の材質は限定されないが、生体物質の吸・脱着操作を実施するために透明であることが好ましく、樹脂やガラスが好適に例示される。一方で、生体物質生体物質の光による分解を防ぐ目的で、有色の容器であってもよい。
容器の容積は限定されないが、通常0.1ml以上、好ましくは0.5ml以上であって、上限は限定されないが、通常1000L以下、好ましくは100L以下、より好ましくは10L以下である。目的に応じて任意の容積を選択できる。
容器の形状は限定されないが、容器の形状と吸・脱着材の形状とが、効率的に接液処理ができる形状であることが好ましい。
生体物質の分析に用いる場合、容器の例として試験管、中でもマイクロチューブが好適に挙げられる。
[生体物質の製造方法・生体物質の分離方法]
本発明の実施形態に係る吸・脱着材は、生体物質を含有する液から生体物質を吸・脱着して分離する公知の方法に適用できる。例えば本発明の実施形態に係る吸・脱着材を、生体物質を含有する液に接触させ、メソ孔を有する多孔体のメソ孔内に生体物質を選択的に吸着させた後、吸・脱着剤を洗浄し、生体物質を脱着させることで生体物質を得ることができる。
例えば生体液、具体的には血液からペプチドを分離する場合、吸・脱着材を、血液または血液を処理して得られる血漿に浸漬させるなどして接触させる。吸・脱着材を接触させる液は、目的である生体物質以外の不純物の含有量が少ない方が好ましく、不純物の除去には公知の方法を用いることができる。
血液または血漿中のペプチドを吸・脱着層内のメソ孔を有する多孔体のメソ孔内に選択的に吸着させた後、この吸・脱着材を引き上げ、特許文献1に記載されるように、水洗した後、酸性緩衝液で処理してメソ孔を有する多孔体の外面に吸着している蛋白質や長鎖ペプチドを剥離除去し、次いでアセトニトリルを含むペプチド回収用溶媒で処理することにより、多孔体のメソ孔内に吸着しているペプチド(短鎖ペプチド)を脱着させることで、生体液からペプチドを分離回収して、高純度ペプチドを製造することができる。
本発明の実施形態に係る吸・脱着材を用いたペプチドの分離方法は、血液検査、ペプチド分析に有効であり、分析装置による自動化で容易かつ効率的に、高回収率で生体液からペプチドを分離回収して高精度な分析を可能とする。このため、癌や肝炎、その他の疾病の早期発見・診断に有用である。また、糖蛋白、糖ペプチドの回収、分析にも有効に適用することができる。
また、本発明の実施形態に係る吸・脱着材は、高純度ペプチドを製造することができることから、このような検査目的以外にも、生活習慣病予防、血圧低下・安定化、脂質低下・安定化、アンチエイジングなどの作用効果を奏するサプリメントの製造等に有用である。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
メソ孔を有する多孔体、バインダ、通水性層として以下のものを用いた。
<メソ孔を有する多孔体:メソポーラスシリカ粒子>
日本化成社製「メソピュア」
粒子径分布:70〜600μm
平均粒子径:250μm
形状:破砕状
細孔径:4nm
細孔容積:0.7ml/g
比表面積:730m/g
<バインダ:熱可塑性樹脂粒子>
EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)
吸水率:0.09%
水接触角:91°
MFR:70g/10min
融点:97℃
平均粒子径:40μm
<通水性層>
(株)ユウホウ製不織布「ZL4035」
構成繊維:レーヨン30%/ポリエステル70%繊維
平均目開き:60μm
厚さ:220μm
目付:50g/m
繊維密度:152.3kg/m
比表面積:0.0003m/g
メソポーラスシリカ/バインダの重量比が7/3になるように、混合容器に仕込み、よく混合して混合粉体を得た。得られた混合粉体を、メソポーラスシリカ目付量が1000g/mとなるように、通水性層の上に均一に載せ、更にその上から通水性層を被せ、サンドウィッチ構造体とした。
得られたサンドウィッチ構造体を、卓上テストプレス機(株式会社神藤金属工業所製)を用いて、プレス圧0.5MPa、プレス温度110℃、プレス時間4分間で熱圧着し、成型シートを作製した。
作製した成型シートから、メソポーラスシリカ25mg相当分を切り出し、成型体サンプル1とした。
[試験例1]
<ペプチド溶液の調製>
ペプチドには、和光純薬工業株式会社製 ACTH Human 1−24 型番4109−v 0.5mg入りを使用した。その試薬瓶の中に25μLの超純水を入れ、その液滴内にペプチドを全て溶解し、ペプチド溶液を調製した。
<ペプチドの定量方法>
ペプチドの定量方法について、以下に示す。
ペプチドの定量には、下記のLC/MS分析計を用いて、得られたクロマトグラムのペプチドのピーク面積比で評価を行った。
LC/MS測定機器;
LCシステム:アジレント・テクノロジー株式会社製Agilent1200
カラム:インタクト株式会社製Imtakt Presto FT−C18 4.6mm×30mm
質量分析計:アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilent LC/MS 6130
実施例1で得られた成型体サンプル1を、容積1.5mlのエッペンチューブに入れ、更に、この中に上記調製したペプチド溶液を全て添加した。
このエッペンチューブを、ボルテックスミキサー(アズワン株式会社 型式VM−96B)を用い、回転数1500rpmで1時間攪拌し、ペプチド溶液を成型体サンプル1に吸着させた。
その後、エッペンチューブから成型体サンプル1を取り出し、1mlのピペットチップの中に移した後、ピペットチップを定量ピペットに取り付けた。成型体サンプル1を内包したピペットチップ内に超純水を1ml吸い上げた後、吐出して水を排出し、水洗を実施した。この水洗作業を5回繰り返した。
次に、和光純薬工業株式会社製の0.1mol/L グリシン−塩酸緩衝液(pH2.2)を1ml吸い上げた後、吐出して緩衝液を排出し、緩衝液による洗浄を実施した。この洗浄作業を5回、繰り返した。この水洗及び酸性緩衝液で処理することにより、シリカ粒子の外面に吸着しているペプチドを剥離除去した。
その後、ピペットチップを定量ピペットから取り外し、ピペットチップ内にある成型体サンプル1を取り出し、容積1.5mlのエッペンチューブ内に移した。そのエッペンチューブに、和光純薬工業株式会社製の0.1vol%トリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液を1ml添加し、ボルテックスミキサー(回転数1500rpm)による攪拌を、30秒間実施した。
その後、室温で1時間放置した後、ピンセットで成型体サンプル1を取り出して、残りの残液を分析サンプル1とした。この操作によって、シリカのメソ孔内に吸着しているペプチドを脱離、溶出させて回収した。
この分析サンプル1を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で用いたメソポーラスシリカを25mg秤量し、容積1.5mlのエッペンチューブに入れ、この中に上記ペプチド溶液を添加した。
このエッペンチューブを、ボルテックスミキサー(アズワン株式会社 型式VM−96B)を用い、回転数1500rpmで1時間攪拌し、ペプチド溶液をメソポーラスシリカに吸着させた。
その後、エッペンチューブ内に、超純水1mlを添加後、前述のボルテックスミキサー(回転数1500rpm)を用いて、30秒間攪拌した。その後、そのエッペンチューブを遠心分離機(CHIBITAN−R メルク株式会社製)を用い、10分間遠心分離を実施した。その後、上澄みを除去した後に超純水を1ml添加し、前述のボルテックスミキサーによる攪拌、及び遠心分離を3回繰り返した。
その後、和光純薬工業株式会社製の0.1mol/L グリシン−塩酸緩衝液(pH2.2)を1ml添加し、前述の超純水添加時と同様に、ボルテックスミキサーによる攪拌、及び遠心分離を3回繰り返した。この水洗及び酸性緩衝液で処理することにより、シリカ粒子の外面に吸着しているペプチドを剥離除去した。
次に、和光純薬工業株式会社製の0.1vol%トリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液を1ml添加し、ボルテックスミキサー(回転数1500rpm)による攪拌を、30秒間実施した。
その後、室温で1時間放置し、前述の遠心分離機で10分間遠心分離を実施し、その上澄みを回収して分析サンプル1´を得た。この操作によって、シリカのメソ孔内に吸着しているペプチドを脱離、溶出させて回収した。
この分析サンプル1´を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表1に示す。
[比較例2]
以下に示すメソポーラスシリカ粒子を用いた以外は、比較例1と同様にしてペプチドの吸・脱着評価を行った。結果を表1に示す。
<メソ孔を有する多孔体:メソポーラスシリカ粒子>
日本化成社製「メソピュア」
粒子径分布:1〜10μm
平均粒子径:5μm
形状:微粉状
細孔径:4nm
細孔容積:0.6ml/g
比表面積:720m/g
[実施例2]
以下に示す通水性層を用いた以外は、実施例1と同様に成型体サンプル2を作製し、分析サンプル2を得た。この分析サンプル2を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表1に示す。
<通水性層>
株式会社クラレ製不織布「TM022D」
構成繊維:ポリプロピレン繊維
厚さ:188μm
目付:23g/m
[実施例3]
以下に示すメソポーラスシリカを用いた以外は、実施例1と同様に成型体サンプル3を作製し、分析サンプル3を得た。この分析サンプル3を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表1に示す。
<メソ孔を有する多孔体:シリカゲル>
富士シリシア化学株式会社製「キャリアクトG−6」
粒径分布:45〜150μm
形状:破砕状
細孔径:6nm
細孔容積:0.8ml/g
比表面積:560m/g
Figure 0006658526
比較例1と実施例1との対比より、吸・脱着材を粉体で使用するよりも、シート状である本発明の吸・脱着材を用いることにより、ペプチドの検出量が増加することが示されている。また、実施例1と実施例2との対比により、通水性層としてPP(ポリプロピレン)を用いた方がペプチドの回収量が多いことがわかる。
また、メソ孔を有する多孔体としてシリカゲルを用いた実施例3は、メソポーラスシリカを用いた実施例1よりもペプチドの検出量が多い。多孔体の種類が異なるため、直接の対比はできないものの、実施例3の多孔体は実施例1の多孔体と比較して粒径が小さい。多孔体は粒径が小さい方がペプチド含有液に接触する表面積が大きいため、ペプチドの吸・脱着に寄与しうる多孔体の体積が大きくなり、ペプチドの回収量が多いと考えられる。
[実施例4]
通水性層の厚さがペプチドの回収量に及ぼす影響を検討するためのモデル実験を行った。通水性層に用いた不織布を、成型体の両面と同面積の大きさに切り取り、成型体サンプルと一緒に試験を行った以外は、実施例1と同様にして分析サンプル4を得た。この分析サンプル4を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表2に示す。
[実施例5]
通水性層に用いた不織布を、成型体の片面と同面積の大きさに切り取り、成型体サンプルと一緒に試験を行った以外は、実施例1と同様にして分析サンプル5を得た。この分析サンプル5を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表2に示す。
[実施例6]
以下に示すメソポーラスシリカを用いた以外は、実施例1と同様に成型体サンプル5を作製し、分析サンプル6を得た。この分析サンプル6を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表2に示す。
<メソ孔を有する多孔体:メソポーラスシリカ粒子>
実施例1で用いた日本化成社製「メソピュア」を分級して以下の粒径分布および平均粒子径を有する多孔体を得た。
粒径分布:>425μm
平均粒子径:566μm
形状:破砕状
細孔径:4nm
細孔容積:0.7ml/g
比表面積:730m/g
[実施例7]
以下に示す通水性層を用いた以外は、実施例1と同様に成型体サンプル7を作製し、分析サンプル7を得た。この分析サンプル7を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表2に示す。
<通水性層>
日本バイリーン株式会社製不織布「FV−4365」
構成繊維:ポリエステル繊維
[実施例8]
以下に示す通水性層を用いた以外は、実施例1と同様に成型体サンプル8を作製し、分析サンプル8を得た。この分析サンプル8を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表2に示す。
<通水性層>
旭化成株式会社製不織布「ELTRS−N」
構成繊維:ナイロン繊維
[実施例9]
以下に示す通水性層を用いた以外は、実施例1と同様に成型体サンプル9を作製し、分析サンプル9を得た。この分析サンプル9を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表2に示す。
<通水性層>
旭化成株式会社製不織布「ELTRS−P」
構成繊維:ポリプロピレン繊維
[実施例10]
以下に示すバインダを用いた以外は、実施例1と同様に成型体サンプル10を作製し、分析サンプル10を得た。この分析サンプル10を上述のペプチド定量方法によって定量した。結果を表2に示す。
<バインダ:熱可塑性樹脂粒子>
ポリエチレン(東京インキ株式会社製 PR1050SP)
MFR:24g/10min
融点:105℃
Figure 0006658526
実施例4と5との対比により、通水性層の量が増加するとペプチド検出量が減少することがわかる。従って、吸・脱着材として、ペプチドの吸・脱着の観点からは通水性層は薄い方が好ましいと考えられる。実施例8〜10より、通水性層の材質はPP(ポリプロピレン)よりもPET(ポリエチレンテレフタレート)が好ましく、Nylon(ナイロン)よりもPPの方が好ましいことがわかる。通水性層の材質がペプチドの検出量に及ぼす影響の詳細は不明であるが、ペプチドがメソ孔を有する多孔体に吸・脱着するだけでなく通水性層にも吸着し、その脱着のしやすさに差がある可能性が考えられる。実施例10よりペプチド検出量の点ではバインダとしてポリエチレンよりもEVAの方が好ましいことが示された。
1,1A,1B,1C 吸・脱着材
2 メソ孔を有する多孔体
3 バインダ
4 吸・脱着層
5 不織布
6 血液
10 採血用スピッツ
21 マスク
22,24 通水性層
23 メソポーラスシリカ粒子層
25 積層体
26 吸・脱着材

Claims (19)

  1. 生体物質を含有する液から、生体物質を選択的に吸・脱着して分離するための生体物質の選択的吸・脱着材であって、
    該吸・脱着材が、メソ孔を有する多孔体を含む吸・脱着層と、厚さ300μm以下の通水性層とを含むシートであることを特徴とする生体物質の選択的吸・脱着材。
  2. 前記吸・脱着材が、前記吸・脱着層と前記通水性層とが積層された積層体であることを特徴とする、請求項1に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  3. 前記吸・脱着材が、前記吸・脱着層の両面に前記通水性層が積層された積層体であることを特徴とする、請求項2に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  4. 前記吸・脱着層が、メソ孔を有する多孔体とバインダを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  5. 前記バインダがエチレン酢酸ビニル共重合体である、請求項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  6. 前記バインダは、メソ孔を有する多孔体とバインダとを含む層中に20重量%以上80重量%以下含有される、請求項4又は5に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  7. 前記メソ孔を有する多孔体のメソ孔径が2nm以上20nm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  8. 前記メソ孔を有する多孔体は、平均粒子径が50μm以上700μm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  9. 前記メソ孔を有する多孔体は、比表面積が100m2/g以上1200m2/g以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  10. 前記メソ孔を有する多孔体は、メソポーラスシリカ、シリカゲル、およびイオン交換樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  11. 前記通水性層は、織布又は不織布である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  12. 前記通水性層は、不織布である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  13. 前記通水性層は、外表面に親水化処理が施されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  14. 前記通水性層が、親水性物質からなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  15. 前記生体物質がペプチドである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材。
  16. 前記生体物質を含有する液を保持しうる容器であって、請求項1〜15のいずれか1項に記載の吸・脱着材を内部に有する容器。
  17. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の吸・脱着材と前記生体物質を含有する液を保持しうる容器とを含む生体物質の精製キット。
  18. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材を、生体物質を含有する液に接触させる工程を含む、生体物質の製造方法。
  19. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の生体物質の選択的吸・脱着材を、生体物質を含有する液に接触させる工程を含む、生体物質の分離方法。
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