JP6653133B2 - シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に関し、特に、相対的に回転運動する物体間に配置されるエネルギー吸収装置を備えたシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に関する。
例えば、シートベルトリトラクタ等のような、長尺物の巻き取り装置(巻き戻し機能も含む)において、長尺物を巻き取る巻胴(ドラムやスプールと称されることもある)は、該巻胴を回転可能に支持する支持手段に対して相対的に回転運動している。かかる相対回転運動をする装置において長尺物が伸びきった場合や巻き取り又は巻き戻し中に巻胴が停止した場合には、装置や長尺物に大きな荷重がかかることから、相対回転運動する物体間にエネルギー吸収装置を配置することが好ましい。
例えば、特許文献1には、相対的に回転運動する巻取ドラムとラチェットギヤとの間にトーションバーとワイヤとを配置したシートベルトリトラクタが開示されている。かかるシートベルトリトラクタによれば、トーションバーの捩り変形及びワイヤの摺動変形により巻取ドラムとラチェットギヤとの間に生じ得るエネルギーを吸収することができるとともに、ワイヤを摺動変形させるために必要な引き出し荷重を異ならせることによってエネルギー吸収特性を変化させることができる。
また、特許文献2には、相対的に回転運動する物体間にリングディスク(1,3)と揺動部材(2)とを配置した車両用フォースリミッタ装置が開示されている。かかる装置によれば、リングディスク(1,3)に対して揺動部材(2)が相対回転する際に、揺動部材(2)に形成された突起(5)がリングディスク(1,3)に形成された突起(7,8)に交互に揺動しながら接触することにより、相対的に回転運動する物体間に生じるエネルギーを吸収することができる。特に、本装置では、揺動部材(2)の回転速度によって運動エネルギーが変化し、揺動部材(2)の回転速度が増加するに連れてエネルギー吸収量を増大させることができる。
特開2013−184538号公報 国際公開2012/059166号
ところで、上述した特許文献1や特許文献2に記載されたようなエネルギー吸収装置を備えたシートベルトリトラクタを有するシートベルト装置では、同一の車両であっても、男性や女性、大柄な体格の人や小柄な体格の人等、種々の体格を有する乗員がシートに着座することとなる。したがって、同一のシートベルト装置であっても、車両衝突時にウェビングやリトラクタにかかる荷重が変動することとなる。この変動荷重に対応するためには、車両に乗員の体格を判断するセンサを配置したり、異なる荷重に対応可能なエネルギー吸収装置を配置したりしなければならない。
しかしながら、特許文献1に記載されたエネルギー吸収装置では、ワイヤとトーションバーの二段階にエネルギー吸収特性を変更することができるものの、無段階にエネルギー吸収特性を変更することができない。
また、特許文献2に記載されたエネルギー吸収装置では、揺動部材の回転速度に応じてエネルギー吸収量を変更することができ、種々の体格の乗員に対応させることができる。しかし、かかるエネルギー吸収装置は、揺動部材の回転速度に応じてエネルギー吸収量を変更していることから、車両衝突時等の初期段階(例えば、車両衝突から乗員がエアバッグに接触するまでの間)において、リングディスクに対する揺動部材の相対回転速度が遅く、エネルギー吸収量が少ないという問題がある。
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、無段階にエネルギー吸収特性を変更することができるとともに、エネルギー吸収特性の向上を図ることができる、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。
本発明によれば、乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプールと、該スプールの軸心に挿通されるシャフトと、該シャフトに接続され前記スプールを回転状態から非回転状態に切り替え可能なロッキングベースと、前記スプールと前記ロッキングベースとの間に配置されたエネルギー吸収装置と、を備えたシートベルトリトラクタにおいて、前記エネルギー吸収装置は、前記スプールと連動するスプール側構成部品と、前記ロッキングベースと連動するロッキングベース側構成部品と、前記スプール側構成部品と前記ロッキングベース側構成部品との間に生じる相対回転によって抗力を発生させる抵抗体と、前記スプール側構成部品と前記ロッキングベース側構成部品との間に配置され所定の荷重が生じた場合に破断又は塑性変形する拘束機構と、を含み、前記シャフトは、所定の閾値以上の荷重が負荷されると捻れるように構成されたトーションバーであり、前記拘束機構が破断又は塑性変形を開始する前記所定の荷重は、前記トーションバーの閾値よりも大きく設定されており、前記トーションバーの捻れ初速を大きくして前記エネルギー吸収装置によるエネルギー吸収量を大きくするようにした、ことを特徴とするシートベルトリトラクタが提供される。
また、本発明によれば、乗員をシートに拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、前記シートの側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたトングと、を備えたシートベルト装置において、前記シートベルトリトラクタは、前記ウェビングの巻き取りを行うスプールと、該スプールの軸心に挿通されるシャフトと、該シャフトに接続され前記スプールを回転状態から非回転状態に切り替え可能なロッキングベースと、前記スプールと前記ロッキングベースとの間に配置されたエネルギー吸収装置と、を備え、前記エネルギー吸収装置は、前記スプールと連動するスプール側構成部品と、前記ロッキングベースと連動するロッキングベース側構成部品と、前記スプール側構成部品と前記ロッキングベース側構成部品との間に生じる相対回転によって抗力を発生させる抵抗体と、前記スプール側構成部品と前記ロッキングベース側構成部品との間に配置され所定の荷重が生じた場合に破断又は塑性変形する拘束機構と、を含み、前記シャフトは、所定の閾値以上の荷重が負荷されると捻れるように構成されたトーションバーであり、前記拘束機構が破断又は塑性変形を開始する前記所定の荷重は、前記トーションバーの閾値よりも大きく設定されており、前記トーションバーの捻れ初速を大きくして前記エネルギー吸収装置によるエネルギー吸収量を大きくするようにした、ことを特徴とするシートベルト装置が提供される。
上述したシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置において、前記拘束機構は、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか一方に形成された凹部と、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか他方に形成され前記凹部に挿通可能な凸部と、を有していてもよい。
また、前記拘束機構は、前記スプール側構成部品及び前記ロッキングベース側構成部品に形成された挿通部と、対峙する前記挿通部に挿通されるシェアピンと、を有していてもよい。
また、前記拘束機構は、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか一方に形成された係止部と、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか他方に形成されたストッパと、一端が前記係止部に係止され他端が前記ストッパに当接し中間部が前記スプールの回転方向に沿って配置された拘束部材と、を有していてもよい。
また、前記係止部は、前記スプールの軸方向と平行に形成された穴又は前記スプールの径方向に形成された溝によって構成され、前記拘束部材の一端は、前記穴又は前記溝に係止可能に屈曲していてもよい。
また、前記拘束部材は、前記中間部が一端側から他端側に向って前記ウェビングを送り出す方向に延びるとともに前記ウェビングを巻き取る方向に折り返されていてもよい。
上述した本発明に係るシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置によれば、エネルギー吸収装置のスプール側構成部品とロッキングベース側構成部品との間に抵抗体を配置したことにより、スプール側構成部品とロッキングベース側構成部品との間に生じた相対回転運動エネルギーを抗力(例えば、慣性力、摩擦力等)に変換することができ、無段階にエネルギー吸収特性を変更することができる。
また、本発明では、スプール側構成部品とロッキングベース側構成部品との間に拘束機構を配置したことにより、スプール側構成部品とロッキングベース側構成部品との相対回転運動を所定の荷重が発生するまで抑制することができ、エネルギー吸収装置作動後の相対回転速度の遅い区間を短縮することができ、初期段階におけるエネルギー吸収特性を向上させることができる。
本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図1(A)におけるB−B矢視断面図、である。 図1に示したシートベルトリトラクタのシャフトユニットを示す部品展開図である。 図1に示したエネルギー吸収装置の説明図であり、(A)は部分拡大図、(B)はエネルギー吸収特性、を示している。 図1に示したシートベルトリトラクタの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。 本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図5(A)におけるB−B矢視断面図、である。 図5に示したシートベルトリトラクタのシャフトユニットを示す部品展開図である。 図5に示したエネルギー吸収装置の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態、(B)は変形例、を示している。 本発明の第三実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図8(A)におけるB−B矢視断面図、である。 図8に示したエネルギー吸収装置の説明図であり、(A)は部分拡大図、(B)は拘束部材の拡大図、(C)は拘束部材の変形例、(D)はエネルギー吸収特性、を示している。 本発明の第四実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図10(A)におけるB−B矢視断面図、である。 図10に示したエネルギー吸収装置の説明図であり、(A)は部分拡大図、(B)は拘束部材の拡大図、(C)は拘束部材の第一変形例、(D)は拘束部材の第二変形例、を示している。 本実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。
以下、本発明の実施形態について図1〜図12を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図1(A)におけるB−B矢視断面図、である。図2は、図1に示したシートベルトリトラクタのシャフトユニットを示す部品展開図である。図3は、図1に示したエネルギー吸収装置の説明図であり、(A)は部分拡大図、(B)はエネルギー吸収特性、を示している。
本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、例えば、図1(A)〜図3(B)に示したように、乗員を拘束するウェビングWの巻き取りを行うスプール2と、スプール2の軸心に挿通されるシャフト3と、シャフト3に接続され回転状態と非回転状態とに切り替え可能なロッキングベース4と、スプール2とロッキングベース4との間に配置されたエネルギー吸収装置5と、を備え、エネルギー吸収装置5は、スプール2と連動するスプール側構成部品5aと、ロッキングベース4と連動するロッキングベース側構成部品5bと、スプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に生じる相対回転によって抗力を発生させる抵抗体5cと、スプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に配置され所定の荷重が生じた場合に破断する拘束機構5dと、を含んでいる。なお、図1(A)及び図1(B)において、説明の便宜上、ウェビングWの図を省略してある。
図示したシートベルトリトラクタ1は、従来のシートベルトリトラクタと同様に、スプール2を回転可能に収容する断面角型U字形状のベースフレーム11と、シャフト3の一端に配置されるスプリングユニット12と、シャフト3の他端に配置されるロック機構13と、車両の加速度を検知するビークルセンサ14と、車両衝突時等にスプール2を回転させてウェビングWを巻き取って乗員とウェビングWとの隙間を消失させるプリテンショナ15と、を有している。なお、プリテンショナ15は、必要に応じて省略することができる。また、シャフト3は、例えば、トーションバーによって構成される。
スプリングユニット12は、図1(A)に示したように、スパイラルスプリング(図示せず)の軸心を形成するスプリングコア12aと、スパイラルスプリングを収容するスプリングカバー12bと、を有している。スプリングコア12aには、シャフト3の一端が接続されている。
ロック機構13は、図1(A)及び図2に示したように、シャフト3の端部に配置されるロッキングベース4と、ロッキングベース4に揺動可能に配置されたパウル13aと、ロッキングベース4の外側に隣接するようにシャフト3の端部に配置されるロックギア13bと、ロックギア13bに揺動可能に配置されたフライホイール13cと、これらの部品を収容するとともにシャフト3を回転可能に支持するリテーナ13dと、を有している。
ビークルセンサ14は、図1(A)に示したように、ロック機構13と隣接して配置されており、車両の衝突等により車両に生じた加速度を検知した際に、ロックギア13bの外周に形成された歯に係合するアクチュエータ14aを有している。
ビークルセンサ14が車両の衝突等により車両に生じた加速度を検知すると、アクチュエータ14aによりロックギア13bの回転が規制される。また、ウェビングWが急速に引き出された場合には、フライホイール13cが慣性力により揺動してリテーナ13dの内周面に形成された歯に係合し、ロックギア13bの回転が規制される。ロックギア13bの回転が規制されると、パウル13aが揺動してロッキングベース4の外径方向に突出し、ベースフレーム11の開口部に形成された歯と係合する。このパウル13aの係合によって、ロッキングベース4はベースフレーム11に固定(拘束)された状態となる。
ロック機構13が作用した状態で、ウェビングWを引き出す方向に荷重が負荷された場合であっても、シャフト3(トーションバー)に閾値以上の荷重が生じるまでは、スプール2はシャフト3(トーションバー)を介してロッキングベース4に接続されていることから、非回転状態に保持される。そして、シャフト3(トーションバー)に閾値以上の荷重が生じた場合には、シャフト3(トーションバー)が捻れることによって、スプール2がロッキングベース4に対して相対的に回転運動を生じ、ウェビングWが引き出される。
シャフト3は、トーションバーの最大捻れ回転数を規定するストッパ3aを有していてもよい。ストッパ3aは、例えば、ロッキングベース4の軸部の外周に挿嵌される。かかるストッパ3aにより、ウェビングWの引き出し量が規制される。また、ストッパ3aとスプール2との間にはガタツキ防止用のカラー3bが配置されていてもよい。
プリテンショナ15は、例えば、図1(A)に示したように、シャフト3に挿通され同心軸上に配置されたピニオン15aと、ピニオン15aと係合可能な内歯を有するリングギア15bと、リングギア15bに動力を付与する動力発生手段と、リングギア15bの外周を覆うカバー15cと、を有している。動力発生手段は、例えば、リングギア15bの外周に係合して回転させる質量体(図示せず)と、質量体を放出可能に収容するパイプ15dと、質量体に動力を付与するガスジェネレータ(図示せず)と、を有している。
通常時は、ピニオン15aとリングギア15bとは離隔しており、車両衝突時にパイプ15dから質量体が放出されると、質量体の移動によってリングギア15bがピニオン15aと噛み合うとともに、リングギア15bの回転によってピニオン15aが回転され、スプール2が回転される。
図2に示したように、ピニオン15aは、内側に延出されシャフト3に嵌合されるベアリング部15eを有しており、ベアリング部15eはスプール2に形成された開口部に嵌合される。したがって、シャフト3の一端は、ピニオン15aのベアリング部15eを介してスプール2に接続されている。なお、ピニオン15aは、プッシュナット15fにより軸方向の位置決めがなされている。
上述したシートベルトリトラクタ1の構成は、例えば、特開2012−30636号等に記載された従来のシートベルトリトラクタと実質的に同様の構成を有しており、これ以上の詳細な説明を省略する。そして、本実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、図1(A)〜図2に示したように、スプール2とロッキングベース4との間にエネルギー吸収装置5が配置されている。
エネルギー吸収装置5は、例えば、図1(A)〜図2に示したように、相対的に回転運動する物体間に配置されるエネルギー吸収装置であって、スプール2の端部に一体に形成されるとともに環状に形成された波形溝51aを有する底面を備えたハウジング51と、ハウジング51に対向するように接続されるとともにハウジング51の波形溝51aと同期した波形溝52aを有するカバープレート52と、一端がハウジング51の波形溝51aに挿入され他端がカバープレート52の波形溝52aに挿入された複数の駆動ピン53と、駆動ピン53の各中間部に配置された複数の質量体54と、駆動ピン53が挿通されて質量体54の両側に配置されるとともにロッキングベース4に接続される一対の中間プレート55と、を有している。
図示したエネルギー吸収装置5では、ハウジング51がスプール2と一体に形成されているが、ハウジング51とスプール2とを別体に形成して接続するようにしてもよいし、ハウジング51と波形溝51aを有するプレートとを別体に形成して接続するようにしてもよい。また、質量体54の内側には、質量体54の径方向に移動を案内するガイドリング56を有している。
また、中間プレート55及びガイドリング56は、固定リング57及び連結リング58を介してロッキングベース4に固定されている。中間プレート55及びガイドリング56の中心部には、係合歯を有する開口部が形成されており、この開口部に固定リング57の軸部57aが係合歯と係合するように挿通される。また、固定リング57は、連結リング58を介してロッキングベース4に固定されている。なお、連結リング58は、必要に応じて省略することができ、固定リング57を直にロッキングベース4に固定するようにしてもよい。
駆動ピン53は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。質量体54は、例えば、鉛や鉄等の金属によって構成される。また、質量体54は、駆動ピン53が波形溝51a及び波形溝52aに沿って移動することによって、スプール2の径方向に往復移動することとなることから、図2に示したように、放射状に配置される。質量体54は、例えば、全体として内側が狭く外側が広く形成された略台形形状を有しており、内側に突出した突起部54aを有している。突起部54aは、ガイドリング56の外周に形成された溝に挿入される。
図2に示したように、本実施形態では、駆動ピン53と質量体54とを別体に構成し、質量体54に形成された貫通孔に駆動ピン53が挿通されている。このとき、駆動ピン53は、質量体54の貫通孔に圧入されていてもよいし、質量体54の貫通孔に遊嵌状に挿通されていてもよい。また、図示しないが、駆動ピン53と質量体54とはダイカスト等によって一体に形成されていてもよい。
駆動ピン53を質量体54に圧入した場合や駆動ピン53と質量体54とを一体に形成した場合には、駆動ピン53を質量体54に固定することができ、波形溝51a及び波形溝52aを移動する駆動ピン53の回転(自転)を抑制することができる。したがって、駆動ピン53及び質量体54の移動に伴って発生する抗力(慣性力、摩擦力等)によってエネルギー吸収を行うことができる。なお、駆動ピン53は、質量体54に遊嵌状に挿通するようにしてもよい。
中間プレート55は、駆動ピン53を挿通する複数の長孔55aと、固定リング57の軸部57aに係合する内歯55bと、を有する環状の部品である。かかる中間プレート55を駆動ピン53の両端部に配置することにより、駆動ピン53にバランスよく荷重を付加させることができ、応力集中の発生を緩和することができる。長孔55aは、長径が径方向に沿って配置されており、その長さは波形溝51a及び波形溝52aの振幅よりも大きくなるように設計されている。
ここで、本実施形態において、「波形溝」とは、円周方向に蛇行するように形成された溝を意味する。また、「同期」とは、波形溝51aと波形溝52aとが同位相において同一の振幅を有していることを意味する。また、本実施形態において、スプール側構成部品5aは、ハウジング51及びカバープレート52により構成される。また、ロッキングベース側構成部品5bは、一対の中間プレート55、ガイドリング56、固定リング57、連結リング58により構成される。また、抵抗体5cは、駆動ピン53及び質量体54により構成される。
上述したエネルギー吸収装置5において、今、ロック機構13が作用してロッキングベース4がベースフレーム11に固定されているものとする。このとき、スプール2はシャフト3を介してロッキングベース4に接続されていることから、非回転状態に保持される。例えば、乗員が前方に移動してウェビングWを引き出す方向に荷重が負荷された場合、本実施形態ではシャフト3がトーションバーによって構成されていることから、シャフト3に所定の閾値以上の荷重が生じるまでは、スプール2は非回転状態に保持される。
そして、シャフト3に所定の閾値以上の荷重が生じた場合には、シャフト3が捻れることによって、スプール2がロッキングベース4に対して相対的に回転運動を生じ、ウェビングWが引き出される。このスプール2の相対的な回転運動によって、エネルギー吸収装置5のスプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に相対的な回転運動を生じることとなり、駆動ピン53が波形溝51a及び波形溝52aに沿って移動することとなる。このとき、質量体54は、径方向に往復移動しつつ、駆動ピン53と連動して回転(公転)することとなる。
駆動ピン53及び質量体54の質量は、ウェビングWに生じる加速度の予測値に応じて任意に設計される。また、車両衝突時等に乗員に生じる加速度、すなわち、ウェビングWに生じる加速度は、時間の経過とともに上昇する傾向にあり、同じ質量であれば加速度の大きさによって、スプール2から入力されたエネルギーの吸収量を変動させることができる。また、ウェビングWに生じる加速度は、乗員の体格差(体重差)によっても変動することとなるが、この場合も加速度の大きさに応じてエネルギー吸収装置5のエネルギー吸収量を変動させることができる。すなわち、上述したエネルギー吸収装置5によれば、無段階にエネルギー吸収特性を変更することができる。
拘束機構5dは、例えば、図3(A)に示したように、カバープレート52(スプール側構成部品5a)と固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)との間に形成される。具体的には、拘束機構5dは、カバープレート52(スプール側構成部品5a)に形成された凹部5eと、固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に形成され凹部5eに挿通可能な凸部5fと、を有している。なお、図示しないが、カバープレート52(スプール側構成部品5a)に凸部5fを形成し、固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に凹部5eを形成するようにしてもよい。
カバープレート52は、中心部に開口部を有し、その内縁に固定リング57を摺動可能に支持する鍔部52bを有している。また、固定リング57は、カバープレート52の鍔部52bに摺動可能に配置されるフランジ部57bを有している。そして、凹部5eは、鍔部52bに径方向に形成された切欠部により形成されている。また、凸部5fは、フランジ部57bの内面に径方向に形成された突起部により形成されている。この凹部5eに凸部5fを挿通(例えば、圧入)してエネルギー吸収装置5を組み立てることにより、凸部5fが破断するまでカバープレート52(スプール側構成部品5a)と固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)との間に生じる相対的な回転運動の開始を遅らせることができる。
ここで、拘束機構5dの作用について、図3(B)を参照しつつ説明する。本図において、一点鎖線は拘束機構5dを有しないエネルギー吸収装置5のエネルギー吸収特性を示し、点線は拘束機構5dを有するエネルギー吸収装置5のエネルギー吸収特性を示している。また、どちらのエネルギー吸収装置5もシャフト3としてトーションバーを採用しているものとする。なお、図3(B)において、横軸は時間t(s)、縦軸はウェビングWに生じる荷重F(N)を示している。
最初に、拘束機構5dを有しないエネルギー吸収装置5のエネルギー吸収特性について説明する。車両の衝突等によりウェビングWの引き出しがロックされた状態でウェビングWが引き出し方向に引っ張られるとウェビングWに荷重Fが負荷される。時間t1に閾値荷重F1に達すると、シャフト3(トーションバー)は捻れを生じ、エネルギー吸収装置5のスプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に相対回転運動を生じる。そして、エネルギー吸収装置5によりエネルギー吸収されながら、ウェビングWに生じる荷重Fは時間t2にピーク荷重F2を迎える。その後、ウェビングWの引き出し速度が低下し、それに伴ってウェビングWに生じる荷重Fも低下する。
この拘束機構5dを有しないエネルギー吸収装置5では、シャフト3(トーションバー)の捻れが生じると同時に作用し始めることから、捻れ始めの遅い回転速度の段階ではエネルギー吸収量が少なく、相対回転速度(捻れ速度)が大きくなるに連れてエネルギー吸収量が大きくなる傾向にある。ところで、エアバッグ装置を備えた車両において、ピーク荷重F2に達する前に乗員がエアバッグに接触した場合には、乗員拘束に対するエネルギー吸収装置5の貢献度が下がることとなる。また、ピーク荷重F2の数値が大きいということは、それだけ乗員に生じる負荷が大きいことを示している。
したがって、車両が衝突してから乗員がエアバッグに接触するまでの間にピーク荷重を設定したい、ピーク荷重をより低く設定したい、というニーズがある。そこで、本実施形態では拘束機構5dを配置することによって、このピーク荷重を制御している。具体的には、拘束機構5dを配置することによって、時間t3に破断荷重F3に達するまでスプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に相対回転運動を生じないようにしている。
そして、この破断荷重F3を超えると拘束機構5dの凸部5fが破断し、シャフト3(トーションバー)に捻れを生じ、スプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に相対回転運動を生じる。このとき、従来の閾値荷重F1よりも大きな破断荷重F3がウェビングWに負荷されていることから、シャフト3(トーションバー)の捻れ速度の初速が大きくなり、スプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に生じる相対回転速度の初速も大きくなる。その結果、図3(B)に点線で示したように、ピーク荷重F4を従来よりも早い時間t4に発生させることができる。
なお、図中の実線は、シャフト3(トーションバー)及び拘束機構5dに負荷される荷重変動を示しており、時間t1まではシャフト3(トーションバー)に荷重Fが負荷され、時間t1〜t3の区間は拘束機構5dに荷重Fが負荷され、時間t3〜t5の区間はエネルギー吸収装置5に荷重Fが負荷され、時間t5以降はシャフト3(トーションバー)に荷重Fが負荷される。
また、拘束機構5dを有しないエネルギー吸収装置5と拘束機構5dを有するエネルギー吸収装置5との仕事量が同じであると仮定すれば、時間t2よりも早い時間t4にピーク荷重F4を設定したことにより、ピーク荷重F4から時間t5までの軌跡を緩やかに設定することができ、その分だけピーク荷重F4をピーク荷重F2よりも小さく設定することができる。
次に、上述したシートベルトリトラクタ1の変形例について、図4(A)〜図4(C)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、図1に示したシートベルトリトラクタの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。なお、各図において、エネルギー吸収装置5の一部の部品のみを抜き出して図示している。
図4(A)に示した第一変形例は、ハウジング51(スプール側構成部品5a)とハウジング51の波形溝51aに隣接する中間プレート55(ロッキングベース側構成部品5b)との間に拘束機構5dを配置したものである。ここでは、ハウジング51の底面に凸部5fを形成し、中間プレート55に凹部5eを形成している。凹部5eは、図示したように、中間プレート55を貫通する孔であってもよいし、板厚が大きい場合には貫通しない穴(窪み)であってもよい。また、中間プレート55に凸部5fを形成し、ハウジング51の底面に凹部5eを形成するようにしてもよい。
図4(B)に示した第二変形例は、カバープレート52(スプール側構成部品5a)とカバープレート52の波形溝52aに隣接する中間プレート55(ロッキングベース側構成部品5b)との間に拘束機構5dを配置したものである。ここでは、カバープレート52の内面に凸部5fを形成し、中間プレート55に凹部5eを形成している。凹部5eは、図示したように、中間プレート55を貫通する孔であってもよいし、板厚が大きい場合には貫通しない穴(窪み)であってもよい。また、中間プレート55に凸部5fを形成し、カバープレート52の内面に凹部5eを形成するようにしてもよい。
図4(C)に示した第三変形例は、カバープレート52(スプール側構成部品5a)に形成された凹部5eと、カバープレート52の波形溝52aに隣接する中間プレート55(ロッキングベース側構成部品5b)に形成された凹部5e′と、対峙する凹部5e,5e′に挿通されるシェアピン5gと、により拘束機構5dを構成したものである。凹部5eは、図示したように、中間プレート55を貫通する孔であってもよいし、板厚が大きい場合には貫通しない穴(窪み)であってもよい。凹部5e′も、図示したように、カバープレート52を貫通する孔であってもよいし、板厚が大きい場合には貫通しない穴(窪み)であってもよい。シェアピン5gは、例えば、両端が凹部5e,5e′に圧入される。なお、このシェアピン5gを含む拘束機構5dは、第一実施形態や第一変形例に示した拘束機構5dに適用することもできる。
次に、本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタについて、図5(A)〜図7(B)を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図5(A)におけるB−B矢視断面図、である。図6は、図5に示したシートベルトリトラクタのシャフトユニットを示す部品展開図である。図7は、図5に示したエネルギー吸収装置の部分拡大図であり、(A)は第二実施形態、(B)は変形例、を示している。
第二実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1とエネルギー吸収装置の構成が異なるものである。それ以外の構成については、上述した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1と実質的に同一であることから、エネルギー吸収装置5以外の詳細な説明を省略する。
第二実施形態に係るシートベルトリトラクタ1に搭載されたエネルギー吸収装置50は、スプール2の端部に一体に形成されたハウジング501と、ハウジング501内に固定されるとともに波形溝502aを有する固定プレート502と、ハウジング501に対向するように接続されるとともに固定プレート502の波形溝502aと同期した波形溝503aを有するカバープレート503と、固定プレート502及びカバープレート503の各内側に隣接するようにそれぞれ配置された一対のクラッチプレート504と、一端が固定プレート502の波形溝502aに挿入され他端がカバープレート503の波形溝503aに挿入された複数の駆動ピン505と、を有している。なお、図6において、カバープレート503の表面には波形溝503aの裏面(すなわち、波形溝を形成する波形凸部)が図示されている。
ここでは、ハウジング501に固定プレート502を固定する場合を図示しているが、ハウジング501と固定プレート502とは一体に形成されていてもよい。クラッチプレート504は、環状の平板部材であり、外周に沿って形成された複数の開口部504aと、内縁部に形成された固定用の内歯504bと、を有している。開口部504aには、駆動ピン505が挿通される。また、クラッチプレート504は、内歯504bに係合する固定リング506を介してロッキングベース4に接続されている。
固定リング506は、例えば、外周に内歯504bに係合する歯を有し、内周にロッキングベース4と係合可能なキー溝を有する軸部506aと、軸部506aとロッキングベース4との間に配置されカバープレート503の位置決めを行うフランジ部506bと、有している。
駆動ピン505は、円柱形状を有する第一駆動ピン505aと、三日月柱形状を有する第二駆動ピン505bと、を含んでいる。第一駆動ピン505aは、クラッチプレート62の回転によって波形溝502a及び波形溝503aに沿って移動し、第二駆動ピン505bは、第一駆動ピン505aの移動に伴って従動的に波形溝502a及び波形溝503aに沿って移動する。
かかるエネルギー吸収装置50によれば、ハウジング501とクラッチプレート504との相対回転速度が上昇すると、それに伴って駆動ピン505の速度が増大し、クラッチプレート504の運動エネルギーは駆動ピン505の慣性力に変換される。また、駆動ピン505は、波形溝502a,503a内を移動する際に、壁面に押し付けられることとなるため、駆動ピン505に生じる垂直抗力Nが増大し、摩擦力(f=μN)も増大する。したがって、ハウジング501とクラッチプレート504との相対回転速度に応じて抗力を発生させることができる。すなわち、上述したエネルギー吸収装置50によれば、無段階にエネルギー吸収特性を変更することができる。
本実施形態において、スプール側構成部品5aは、ハウジング501、固定プレート502及びカバープレート503により構成される。また、ロッキングベース側構成部品5bは、一対のクラッチプレート504及び固定リング506により構成される。また、抵抗体5cは、駆動ピン505(第一駆動ピン505a及び第二駆動ピン505b)により構成される。
拘束機構5dは、例えば、図7(A)に示したように、カバープレート503(スプール側構成部品5a)と固定リング506(ロッキングベース側構成部品5b)との間に形成される。具体的には、拘束機構5dは、カバープレート503(スプール側構成部品5a)に形成された凹部5eと、固定リング506(ロッキングベース側構成部品5b)のフランジ部506bに形成され凹部5eに挿通可能な凸部5fと、を有している。なお、図示しないが、カバープレート503(スプール側構成部品5a)に凸部5fを形成し、固定リング506(ロッキングベース側構成部品5b)に凹部5eを形成するようにしてもよい。
カバープレート503は、中心部に開口部503bを有している。固定リング506のフランジ部506bは、カバープレート503の内縁部に摺動可能に配置される。そして、凹部5eは、開口部503bに径方向に形成された切欠部により形成されている。また、凸部5fは、フランジ部506bの内面に径方向に形成された突起部により形成されている。この凹部5eに凸部5fを挿通(例えば、圧入)してエネルギー吸収装置50を組み立てることにより、凸部5fが破断するまでカバープレート503(スプール側構成部品5a)と固定リング506(ロッキングベース側構成部品5b)との間に生じる相対的な回転運動の開始を遅らせることができる。
また、拘束機構5dは、例えば、図7(B)に示したように、固定プレート502(スプール側構成部品5a)と固定プレート502に隣接するクラッチプレート504(ロッキングベース側構成部品5b)との間に拘束機構5dを配置したものであってもよい。ここでは、固定プレート502の内面に凸部5fを形成し、クラッチプレート504に凹部5eを形成している。凹部5eは、図示したように、クラッチプレート504を貫通する孔であってもよいし、板厚が大きい場合には貫通しない穴(窪み)であってもよい。また、クラッチプレート504に凸部5fを形成し、固定プレート502の内面に凹部5eを形成するようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態に係るシートベルトリトラクタについて、図8(A)〜図9(D)を参照しつつ説明する。ここで、図8は、本発明の第三実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図8(A)におけるB−B矢視断面図、である。図9は、図8に示したエネルギー吸収装置の説明図であり、(A)は部分拡大図、(B)は拘束部材の拡大図、(C)は拘束部材の変形例、(D)はエネルギー吸収特性、を示している。
第三実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、上述した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1と実質的に同一のエネルギー吸収装置5を備え、拘束機構5dの構成が異なるものである。したがって、拘束機構5d以外の構成については詳細な説明を省略する。
第三実施形態に係るシートベルトリトラクタ1の拘束機構5dは、例えば、図9(A)に示したように、固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に形成された係止部5hと、カバープレート52(スプール側構成部品5a)に形成されたストッパ5iと、一端5jaが係止部5hに係止され他端5jbがストッパ5iに当接し中間部5jcがスプール2の回転方向に沿って形成された拘束部材5jと、を有している。
固定リング57は、軸部57aとフランジ部57bとの間に環状の高台状に形成された台座部57cを有している。また、カバープレート52は、中心部に開口部52cを有し、開口部52cの内縁に沿ってC字形状の内縁溝52dが形成されている。エネルギー吸収装置5を組み立てたとき、台座部57cの表面と内縁溝52dの底面とが同一面上に配置され、拘束部材5jを配置する収容空間が形成される。
係止部5hは、台座部57cに形成されており、スプール2の軸方向と平行に形成された穴によって構成され、拘束部材5jの一端5jaは、係止部5hを構成する穴に係止可能に屈曲している。また、ストッパ5iは、内縁溝52dの一部を遮るように形成された突起部によって構成される。また、拘束部材5jは、図8(B)に示したように、中間部5jcが一端5ja側から他端5jb側に向ってウェビングWを送り出す方向Raに延びるとともにウェビングWを巻き取る方向Rbに折り返されていてもよい。
拘束部材5jは、例えば、塑性変形可能な金属により構成されており、一端5jaが固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に係止され、他端5jbがカバープレート52(スプール側構成部品5a)のストッパ5iに当接している。拘束部材5jは、図9(B)に示したように、角形断面のワイヤやピンを折り曲げて形成してもよいし、図9(C)に示したように、円形断面のワイヤやピンを折り曲げて形成してもよい。
かかる拘束部材5jを使用することにより、拘束部材5jの強度によって、所定の荷重が負荷されて塑性変形するまで、カバープレート52(スプール側構成部品5a)と固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)との間に生じる相対的な回転運動の開始を遅らせることができる。
なお、図示しないが、係止部5hをカバープレート52(スプール側構成部品5a)に配置し、ストッパ5iを固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に配置してもよい。また、カバープレート52以外のスプール側構成部品5aにストッパ5i又は係止部5hを配置し、固定リング57以外のロッキングベース側構成部品5bに係止部5h又はストッパ5iを配置してもよい。
ここで、拘束機構5dの作用について、図9(D)を参照しつつ説明する。本図において、一点鎖線は拘束機構5dを有しないエネルギー吸収装置5のエネルギー吸収特性を示し、点線は拘束機構5dを有するエネルギー吸収装置5のエネルギー吸収特性を示している。また、どちらのエネルギー吸収装置5もシャフト3としてトーションバーを採用しているものとする。なお、図9(D)において、横軸は時間t(s)、縦軸はウェビングWに生じる荷重F(N)を示している。
拘束機構5dを有しないエネルギー吸収装置5のエネルギー吸収特性は、図3(B)の説明で詳述した通りであるので、ここでは説明を省略する。本実施形態においても、上述した第一実施形態と同様に、拘束機構5dを配置することによって、ピーク荷重を制御している。具体的には、拘束機構5dを配置することによって、時間t3に塑性変形荷重F3に達するまでスプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に相対回転運動を生じないようにしている。
そして、この塑性変形荷重F3を超えると拘束機構5dの拘束部材5jが塑性変形を開始し、シャフト3(トーションバー)に捻れを生じ、スプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に相対回転運動を生じる。具体的には、図8(B)において、ウェビングWの引き出し方向Raに相対回転運動を生じることによって、拘束部材5jの他端5jbがストッパ5iによって押されて中間部5jcが塑性変形し、最終的に拘束部材5jは固定リング57に沿った円弧形状に変形される。
かかる拘束機構5dにおいても、従来の閾値荷重F1よりも大きな塑性変形荷重F3がウェビングWに負荷されていることから、シャフト3(トーションバー)の捻れ速度の初速が大きくなり、スプール側構成部品5aとロッキングベース側構成部品5bとの間に生じる相対回転速度の初速も大きくなる。その結果、図9(D)に点線で示したように、ピーク荷重F4を従来よりも早い時間t4に発生させることができる。
なお、図中の実線は、シャフト3(トーションバー)及び拘束機構5dに負荷される荷重変動を示しており、時間t1まではシャフト3(トーションバー)に荷重Fが負荷され、時間t1〜t3の区間は拘束機構5dに荷重Fが負荷され、時間t3〜t5の区間はエネルギー吸収装置5に荷重Fが負荷され、時間t5以降はシャフト3(トーションバー)に荷重Fが負荷される。
また、拘束機構5dを有しないエネルギー吸収装置5と拘束機構5dを有するエネルギー吸収装置5との仕事量が同じであると仮定すれば、時間t2よりも早い時間t4にピーク荷重F4を設定したことにより、ピーク荷重F4から時間t5までの軌跡を緩やかに設定することができ、その分だけピーク荷重F4をピーク荷重F2よりも小さく設定することができる。また、拘束機構5dに塑性変形可能な拘束部材5jを使用することにより、拘束機構5dを凹凸によって形成した場合と比較して、拘束機構5dの損傷を抑制することができ、塑性変形荷重F3の調整も容易に行うことができる。
次に、本発明の第四実施形態に係るシートベルトリトラクタについて、図10(A)〜図11(C)を参照しつつ説明する。ここで、図10は、本発明の第四実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は軸方向断面図、(B)は図10(A)におけるB−B矢視断面図、である。図11は、図10に示したエネルギー吸収装置の説明図であり、(A)は部分拡大図、(B)は拘束部材の拡大図、(C)は拘束部材の第一変形例、(D)は拘束部材の第二変形例、を示している。
第四実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、上述した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1と実質的に同一のエネルギー吸収装置5を備え、拘束機構5dの構成が異なるものである。したがって、拘束機構5d以外の構成については詳細な説明を省略する。なお、本実施形態に係る拘束機構5dは、第三実施形態に係る拘束機構5dと同じコンセプトであり、実質的に同一の作用及び効果を有している。
第四実施形態に係るシートベルトリトラクタ1の拘束機構5dは、例えば、図11(A)に示したように、固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に形成された係止部5hと、カバープレート52(スプール側構成部品5a)に形成されたストッパ5iと、一端5jaが係止部5hに係止され他端5jbがストッパ5iに当接し中間部5jcがスプール2の回転方向に沿って形成された拘束部材5jと、を有している。
固定リング57は、軸部57aとフランジ部57bとの間に環状の高台状に形成された台座部57cを有している。また、カバープレート52は、中心部に開口部52cを有し、開口部52cの内縁に沿ってC字形状の内縁溝52dが形成されている。エネルギー吸収装置5を組み立てたとき、台座部57cの表面と内縁溝52dの底面とが同一面上に配置され、拘束部材5jを配置する収容空間が形成される。
係止部5hは、台座部57cに形成されており、スプール2の径方向に形成された溝によって構成され、拘束部材5jの一端5jaは、係止部5hを構成する溝に係止可能に屈曲している。この溝は、例えば、図11(A)に示したように、台座部57c上に形成された複数の突起部57dによって形成される。また、ストッパ5iは、内縁溝52dの一部を遮るように形成された突起部によって構成される。また、拘束部材5jは、図10(B)に示したように、中間部5jcが一端5ja側から他端5jb側に向ってウェビングWを送り出す方向Raに延びるとともにウェビングWを巻き取る方向Rbに折り返されていてもよい。
拘束部材5jは、例えば、塑性変形可能な金属により構成されており、一端5jaが固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に係止され、他端5jbがカバープレート52(スプール側構成部品5a)のストッパ5iに当接している。拘束部材5jは、図11(B)に示したように、角形断面のワイヤやピンを折り曲げて形成してもよいし、図11(C)に示したように、円形断面のワイヤやピンを折り曲げて形成してもよい。また、拘束部材5jは、図11(D)に示したように、細長い板材又は平板を折り曲げて形成するようにしてもよい。
かかる拘束部材5jを使用することにより、拘束部材5jの強度によって、所定の荷重が負荷されて塑性変形するまで、カバープレート52(スプール側構成部品5a)と固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)との間に生じる相対的な回転運動の開始を遅らせることができる。
なお、図示しないが、係止部5hをカバープレート52(スプール側構成部品5a)に配置し、ストッパ5iを固定リング57(ロッキングベース側構成部品5b)に配置してもよい。また、カバープレート52以外のスプール側構成部品5aにストッパ5i又は係止部5hを配置し、固定リング57以外のロッキングベース側構成部品5bに係止部5h又はストッパ5iを配置してもよい。
次に、上述したシートベルトリトラクタ1を備えたシートベルト装置101について、図12を参照しつつ説明する。ここで、図12は、本実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。
図12に示したシートベルト装置101は、乗員(図示せず)をシートSに拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うシートベルトリトラクタ1と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー102と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー103と、シートSの側面に配置されたバックル104と、ウェビングWに配置されたトング105と、を備え、シートベルトリトラクタ1は、上述した第一実施形態〜第四実施形態(各実施形態の変形例を含む)に係るシートベルトリトラクタ1のいずれかである。
図示したシートベルト装置101は、いわゆる助手席用のシートベルト装置であり、シートSと隣接した位置にピラーPが配置されていることが多い。そして、例えば、シートベルトリトラクタ1はピラーP内に配置されており、ガイドアンカー102はピラーPの表面に配置されている。かかるシートベルト装置101では、ウェビングWを引き出してトング105をバックル104に嵌着することにより、ウェビングWで乗員をシートSに拘束することができる。
なお、シートベルト装置101のシートベルトリトラクタ1以外の構成については、従来のシートベルト装置と同様の構成であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、シートベルト装置101は、助手席用のものに限定されず、運転席用のシートベルト装置であってもよいし、後部座席用のシートベルト装置であってもよい。後部座席用のシートベルト装置では、ガイドアンカー102を省略するようにしてもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、エネルギー吸収装置5,50は上述した構成以外のエネルギー吸収装置であってもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
1 シートベルトリトラクタ
2 スプール
3 シャフト
3a ストッパ
3b カラー
4 ロッキングベース
5,50 エネルギー吸収装置
5a スプール側構成部品
5b ロッキングベース側構成部品
5c 抵抗体
5d 拘束機構
5e,5e′ 凹部
5f 凸部
5g シェアピン
5h 係止部
5i ストッパ
5j 拘束部材
5ja 一端
5jb 他端
5jc 中間部
11 ベースフレーム
12 スプリングユニット
12a スプリングコア
12b スプリングカバー
13 ロック機構
13a パウル
13b ロックギア
13c フライホイール
13d リテーナ
14 ビークルセンサ
14a アクチュエータ
15 プリテンショナ
15a ピニオン
15b リングギア
15c カバー
15d パイプ
15e ベアリング部
15f プッシュナット
51,501 ハウジング
51a,52a,502a,503a 波形溝
52,503 カバープレート
52b 鍔部
52c,503b 開口部
52d 内縁溝
53 駆動ピン
54 質量体
54a 突起部
55 中間プレート
55a 長孔
55b 内歯
56 ガイドリング
57,506 固定リング
57a 軸部
57b フランジ部
57c 台座部
57d 突起部
58 連結リング
62 クラッチプレート
101 シートベルト装置
102 ガイドアンカー
103 ベルトアンカー
104 バックル
105 トング
501 ハウジング
502 固定プレート
504 クラッチプレート
504a 開口部
504b 内歯
505 駆動ピン
505a 第一駆動ピン
505b 第二駆動ピン
506a 軸部
506b フランジ部


Claims (7)

  1. 乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプールと、該スプールの軸心に挿通されるシャフトと、該シャフトに接続され前記スプールを回転状態から非回転状態に切り替え可能なロッキングベースと、前記スプールと前記ロッキングベースとの間に配置されたエネルギー吸収装置と、を備えたシートベルトリトラクタにおいて、
    前記エネルギー吸収装置は、前記スプールと連動するスプール側構成部品と、前記ロッキングベースと連動するロッキングベース側構成部品と、前記スプール側構成部品と前記ロッキングベース側構成部品との間に生じる相対回転によって抗力を発生させる抵抗体と、前記スプール側構成部品と前記ロッキングベース側構成部品との間に配置され所定の荷重が生じた場合に破断又は塑性変形する拘束機構と、を含み、
    前記シャフトは、所定の閾値以上の荷重が負荷されると捻れるように構成されたトーションバーであり、前記拘束機構が破断又は塑性変形を開始する前記所定の荷重は、前記トーションバーの閾値よりも大きく設定されており、前記トーションバーの捻れ初速を大きくして前記エネルギー吸収装置によるエネルギー吸収量を大きくするようにした、
    ことを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  2. 前記拘束機構は、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか一方に形成された凹部と、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか他方に形成され前記凹部に挿通可能な凸部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
  3. 前記拘束機構は、前記スプール側構成部品及び前記ロッキングベース側構成部品に形成された挿通部と、対峙する前記挿通部に挿通されるシェアピンと、を有することを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
  4. 前記拘束機構は、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか一方に形成された係止部と、前記スプール側構成部品又は前記ロッキングベース側構成部品のいずれか他方に形成されたストッパと、一端が前記係止部に係止され他端が前記ストッパに当接し中間部が前記スプールの回転方向に沿って配置された拘束部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
  5. 前記係止部は、前記スプールの軸方向と平行に形成された穴又は前記スプールの径方向に形成された溝によって構成され、前記拘束部材の一端は、前記穴又は前記溝に係止可能に屈曲している、ことを特徴とする請求項4に記載のシートベルトリトラクタ。
  6. 前記拘束部材は、前記中間部が一端側から他端側に向って前記ウェビングを送り出す方向に延びるとともに前記ウェビングを巻き取る方向に折り返されている、ことを特徴とする請求項4に記載のシートベルトリトラクタ。
  7. 乗員をシートに拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、前記シートの側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたトングと、を備えたシートベルト装置において、
    前記シートベルトリトラクタは、請求項1〜6の何れか一項に記載のシートベルトリトラクタである、ことを特徴とするシートベルト装置。

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