JP6652834B2 - 酸化チタン含有組成物、酸化チタン含有組成物の製造方法、光触媒構造体 - Google Patents

酸化チタン含有組成物、酸化チタン含有組成物の製造方法、光触媒構造体 Download PDF

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本発明は、光触媒と抗菌・抗ウイルス性の少なくとも一方の機能を持つ、酸化チタンを含有する組成物である酸化チタン含有組成物、及びその応用に主に関する。
酸化チタンを用いた光触媒は、安価で化学的安定性に優れ、高い光触媒活性(有機化合物分解性、抗菌性等)を有し、人体に無害であること等により、光触媒として広く用いられている。
また、この酸化チタンに銅金属又は銅化合物を混合した酸化チタン含有組成物は、優れた光触媒機能と、抗菌・抗ウイルス性を持つことが知られている。
例えば、特許文献1には、1価の銅化合物と共に光触媒物質を含む微生物不活化剤としての酸化チタン含有組成物が開示されており、光触媒物質として酸化チタン触媒を用いることができることが開示されている。更に、特許文献1には、2価の銅化合物に比べて1価の銅化合物が微生物に対してはるかに強い不活化作用を有するとの記載がされている。
しかしながら、1価の銅化合物は酸化され易く、例えば1価の銅酸化物であるCuO(赤色)が酸化されて2価の銅酸化物であるCuO(黒色)に変化するなどした場合に色むらや抗菌・抗ウイルス性の低下が生じる場合がある。
酸化チタン含有組成物は所定の基材(例えば、膜材)の表面に塗布して、乾燥させるなどしてその主に固形分を基材の表面に固定させて使用されるのが一般的であるが、酸化チタン含有組成物を塗布して基材の表面に作られた光触媒層の表面に上述の如き色むらが生じると、意匠性に劣ることになる。
そのような点を改良するために、銅化合物として2価のものを用いることも、特許文献2では開示されている。2価の銅化合物には様々なものがあるが、その価格や入手の安定性等の面から見て、銅化合物に2価の酸化銅を用いるのが便利である。
しかしながら、例えば2価の銅化合物として2価の酸化銅(CuO)を用いた場合には、酸化チタン含有組成物の色彩は全体として黒みがかったものになる。
酸化チタン含有組成物が黒みがかった色彩であると、それを基材に塗布して用いるという用途が制限されることがある。例えば2価の酸化銅を用いた酸化チタン含有組成物は、屋外等では紫外線照射に起因して黒ずみが生じることが多く、このため用途が制限されていた。更に、屋内等の主に可視光線照射環境下では、酸化チタン含有組成物はその機能が保証される限り透明であるのが最良であろうが、せめて白色になるべく近い色彩であることが、その応用範囲の広さからいって好ましい。
また、2価の酸化銅を用いた酸化チタン含有組成物は、それを基材の表面に塗布して用いた場合に、1価の酸化銅を用いた酸化チタン含有組成物を用いる場合に比してその表面に色むらが生じることは少ないが、それでもなお、例えば屋内等で高湿度雰囲気下や、或いは酸化チタンが光触媒効果を生じるような光の存在する環境下で、酸化チタン含有組成物が塗布された膜表面に人の手などが接触したり、有機物が付着したりした場合には、酸化チタン含有組成物を用いて作られた光触媒層の表面に色むらが生じることがありうる。そのような色むらの発生は、酸化チタン含有組成物を基材の表面に塗布して作られた光触媒層の色が、全体として同色で黒ずんでいるよりも、意匠的に問題を生じる可能性が高い。
そこで、本願発明者は特許文献3にてこれらの課題を解決するために以下の発明の提案を行った。
該発明は、固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む酸化チタン含有組成物であって、固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量のスルホン酸を含んでなる、酸化チタン含有組成物である。
固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む酸化チタン含有組成物は、概ね従来技術(特許文献2)で述べた酸化チタン含有組成物と同じである。本願発明者は、これに、上記固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量のスルホン酸を更に加えたものが、白色に近い色彩となるとともに使用においての変色及び色むらの発生が少ないこと、及び使用環境(例えば、通常の屋内環境や高湿度屋内環境(30℃×90%RH×4週間))において抗菌・抗ウイルス性の活性低下の少ないことを見出した。
特に、高湿度環境(30℃×90%RH×4週間)で曝露後、可視光照射下での高い抗菌・抗ウイルス性と暗所でも同等の高い抗菌・抗ウイルス性を示した。
特開2011−190192号公報 特許第5343176号公報 特願2014−250826号 特開2009−227965号公報
しかしながら、スルホン酸を含む上述の酸化チタン含有組成物は、温水浸漬後においてその抗菌・抗ウイルス性が劣化し、また特に暗所で用いる場合にその傾向が強いことがわかった。例えば、該酸化チタン含有組成物を90℃の温水に24時間浸漬した後のその抗菌・抗ウイルス性は、特に暗所で使用した場合にかなり劣化することが判明した。例えば、抗菌・抗ウイルス性のシート材を、医療関係のベッド敷き布や、穀物等を輸送する通いのコンテナバックなどに応用した場合、それらは再使用のため、水洗したり、温水で洗浄することがある。したがって、仮にそのような用途に酸化チタン含有組成物を応用するのであれば、温水浸漬後における、また場合によってはその後の暗所での抗菌・抗ウイルス性は大切な機能であるから、その劣化を避けられるのであればその意味は大きい。
本願発明は、スルホン酸を含む上述の酸化チタン含有組成物を、温水浸漬後や洗浄後における特に暗所での抗菌・抗ウイルス性の劣化を抑えるように改良すること、及びその応用を提供することをその課題とする。
上述の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む酸化チタン含有組成物であって、
前記固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(1)
−SOOH (1)
(式中、Rは置換基を有することのあるC1〜10のアルキル基、置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルキル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基、又は置換基を有することのあるC6〜10アリール基を示す。)
で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物と、
前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
M(OH) (3)
(アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
MCl (4)
(アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)と、
を含んでなる酸化チタン含有組成物である。
固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む酸化チタン含有組成物は、概ね従来技術(特許文献2)で述べた酸化チタン含有組成物と同じである。本願発明者は、これに、上記固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量のスルホン酸を更に加えたものが、白色に近い色彩となるとともに使用においての変色及び色むらの発生が少ないこと、及び使用環境に於いて抗菌・抗ウイルス性の低下の少ないことを見出した。
従来の酸化チタン含有組成物にスルホン酸を加えた酸化チタン含有組成物が白色に近い色彩となる機序は詳しくは不明である。本願発明者の考察によれば、2価の酸化銅とスルホン酸とが、前者が塩基として、後者が酸として反応を生じる(例えば、CuO+2HOSO→Cu(OSO+HOのように)ことが、酸化チタン含有組成物が白色に近い色彩となる理由になっている可能性がある。
また、本願発明者は、本願発明による酸化チタン含有組成物が白色の色彩を維持しやすいことについての機序も、詳しくは不明であるが、酸化チタン含有組成物が白色になる上述の理由と同様の機序によるのではないかと予想している。
そして、この酸化チタン含有組成物は、上記式(3)で示したアルカリ金属の水酸化物か又は上記式(4)で示したアルカリ金属の中性塩(塩化物)を含む。これを、本願発明の酸化チタン含有組成物に加えたのは以下の理由による。
上述したように、本願の酸化チタン含有組成物は、上記式(1)で示したスルホン酸を含んでいる。このスルホン酸は、本願の酸化チタン含有組成物を白色に近い色彩とし、またその白色に近い色彩を維持しやすくするために不可欠ではあるものの、それが持つ強い酸性(pHで1.4程度、pKaで−4.9程度)故に、特に高温の水にある程度の時間浸漬させた場合に、その抗菌・抗ウイルス性を劣化させるおそれがあると本願発明者は考えている。酸化チタン含有組成物における酸化チタンに担持されたCuOは、CuOが弱い塩基性金属酸化物のため、本来水にほとんど溶けない。しかしながら、CuOは強酸には溶解して、担持から外れることがあり得るので、仮にそのようなことが起こるとすれば、例えば酸化チタン含有組成物で作成した塗膜を温水中にある程度以上の時間浸漬させると、酸化チタン含有組成物中の未反応のスルホン酸やスルホン酸とCuOとの反応物は、温水中に溶出すということが生じる。これにより、酸化チタンに担持されているCuOが溶け出してその量が減じるのが、抗菌性や抗ウイルス性が低下し、特に暗所での抗菌性や抗ウイルス性が低下する原因となっているのではないか、というのが本願発明者の予想するところである。
本願発明者は、このような未反応のスルホン酸(本願発明の酸化チタン含有組成物におけるスルホン酸は、上述のように2価の酸化銅の少なくとも一部と反応して反応物を生成しているが、2価の酸化銅と反応していないスルホン酸も存在する。これを、本願では「未反応のスルホン酸」と称する。)が持つ強い酸性が上述の不具合を生じていると考え、かかる未反応のスルホン酸が強い酸性を生じる原因となっているHにキャッピングをすれば、上述の不具合を抑制することができると予想した。本願発明において、かかるキャッピングに用いられるのが、上記式(3)で示したアルカリ金属の水酸化物であり、又上記式(4)で示したアルカリ金属の中性塩(塩化物)である。
実際、これらを含む本願発明による酸化チタン含有組成物は、本願発明者の予想通り、温水浸漬後においても、またその後の暗所での使用においても、抗菌性の低下も、抗ウイルス性の低下も抑制された。
上記式(3)で示したアルカリ金属の水酸化物、又は上記式(4)で示したアルカリ金属の中性塩(塩化物)は、上述したように、式(1)で示したスルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルだけ添加される。この数値の下限と上限はそれぞれ、スルホン酸のHにキャッピングをするのに必要な量と、十分な量である。なお、上記式(3)で示したアルカリ金属の水酸化物、又は上記式(4)で示したアルカリ金属の中性塩(塩化物)の式(1)で示したスルホン酸に対するモル比が、1.0以上であれば、皮膚に直接触れたときに炎症を生じるおそれのあるスルホン酸の強酸性を抑制することにより、酸化チタン含有組成物全体のpHを中性に近づけることができるため、本願発明の酸化チタン含有組成物にて作られた光触媒層を持つ光触媒構造体を使用し、その光触媒層が皮膚に直接触れた際に、光触媒層が皮膚に与える刺激を抑制することができるようになる、という副次的な効果をも得られることになる。
以下に述べる酸化チタン含有組成物もそうであるが、本願における酸化チタン含有組成物は、例えば、その用途が光触媒である場合もあるし、その用途が抗菌又は抗ウイルス剤である場合もある。
なお、本願における溶剤は、固形物としての酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを懸濁させるものである。通常、「懸濁」の語は、固形物を溶解させない状態で溶媒中に分散させることを意味するが、例えば、溶剤がアルコールであり、バインダーが分子量の小さなシリカバインダーである場合等には、溶剤にシリカバインダーが溶解することもあり得る。そのような点を考慮して、本願でいう「懸濁」には、固形物の一部が溶剤に溶解するものの、固形物の残部が固体として溶液中に分散している場合も含むものとする。
本願の酸化チタン含有組成物(或いはその製造方法)で使用される酸化チタン化合物は、アナターゼ型酸化チタン或いはルチル型酸化チタン又はそれらの混合物であっても良い。酸化チタンの結晶構造にはアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型があるが、本願発明の酸化チタンとしては、これらのうちアナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンとを用いることができる。アナターゼ型酸化チタンと、ルチル型酸化チタンとは、一般に紫外線照射下では前者の方が光触媒としての機能が高いが、それらは混合されていてもよい。
前記酸化チタン化合物が、酸化チタンに占めるルチル型酸化チタンのモル比が50%以上のものとなっていても良い。このような酸化チタン化合物を用いることにより、酸化チタン化合物が生じる光触媒作用と、抗菌・抗ウイルス性をより大きくすることができる。
前記酸化銅の少なくとも一部が、スルホン酸との反応物となっていても良い。
かかる反応物は、従来の酸化チタン含有組成物にスルホン酸を加えただけで生じる場合もあるし、製造の過程でかかる反応物を生じさせるための反応を促進するための処理(かかる処理については後述する。)を行って得られる場合もある。本願でいう反応物は、上述の如き反応物の生成を促進する処理を行った上で生じたものとそうでないものとの双方を含む。
本願の酸化チタン含有組成物(或いはその製造方法)で使用されるバインダーは、酸化チタン含有組成物の使用時において、酸化チタン含有組成物を、所定の基材の表面に塗布して、乾燥させるなどしてその主に固形分を基材の表面に固定させるにあたって、基材に対して酸化チタンを固定できるようなものであれば良い。いずれにしても、バインダーには公知のものを用いることができる。
また、本願発明におけるバインダーは、バインダー表面に水酸基を有するものであっても良い。このようなバインダーであれば、上記式(1)で表されるスルホン酸が、二重結合を有するビニルスルホン酸であるアルケニルスルホン酸等である場合には、バインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合との反応が可能となり、フリー(単独)のスルホン酸が少なくなる。これにより、スルホン酸として上述の如き二重結合を有するものが選択された酸化チタン含有組成物は、それを用いて作られた塗膜が高湿度環境や温水等と接触した時に、塗膜から溶出するスルホン酸(アルケニルスルホン酸)が少なくなるから、耐久性が向上することが期待できる。この場合のスルホン酸は、上記式(1)で表されるスルホン酸のうちの一部のスルホン酸であり、下記式(2)で表されるスルホン酸である。
−SOOH (2)
(式中、Rは置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基を示す。)
上記式(2)で表されるスルホン酸の例は、ビニルスルホン酸である。
前記バインダーは、金属酸化物ゲル若しくは金属水酸化物ゲルで、その比表面積が、150℃で乾燥後50m/g以上あるのが好ましく、100m/g以上あると更に好ましい。このような比表面積を有するのであれば接着性はより向上し、触媒活性も向上することになる。ここで、金属成分としては、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫等の金属の酸化物ゲル若しくは水酸化物ゲルを好ましく例示することができる。また、バインダーは、式(2)のスルホン酸との反応物を含むものであっても良い。例えば、前記バインダーは、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫等の金属の酸化物ゲル若しくは水酸化物ゲルと、上記式(2)のスルホン酸との反応物を含むものであってもよい。
本願の酸化チタン含有組成物(或いはその製造方法)で使用される溶剤は、酸化チタン含有組成物に含まれる固形分を懸濁させる液体であり、それが可能な限り公知のものを用いることができる。
前記溶剤は、水、アルコール類、ケトン類の1種又はそれらの2種以上の混合物であってもよい。
アルコール類としては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、あるいはこれらの混合物を挙げることができ、ケトン類としては、例えば、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
本願の酸化チタン含有組成物(或いはその製造方法)で使用される酸化チタン含有組成物は、酸化チタン化合物と、2価の酸化銅と、バインダーと、上述の量のスルホン酸と、溶剤とを混合すれば得られる。
しかしながら、酸化チタン含有組成物の色彩を白色に近いものとするという本願発明による効果をより良く得るためには、2価の酸化銅とスルホン酸とを反応させて、酸化銅とスルホン酸との反応物を作ることを促進させるべきである。
本願発明におけるスルホン酸は、上述のように次の式(1)で示されるものとすることができる。
−SOOH (1)
(式中、Rは、置換基を有することのあるC1〜10のアルキル基、置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルキル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基、又は置換基を有することのあるC6〜10のアリール基を示す。)
式(1)により表されるスルホン酸の例は、アルキルスルホン酸又はアルケニルスルホン酸である。また、本願発明における式(1)のスルホン酸は例えば、メタンスルホン酸又はビニルスルホン酸とすることができる。
により示されるC1〜10のアルキル基またはC2〜10のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖のいずれの構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ビニル基、メチルビニル基、1−プロペニル基、アリル基、メタリル基、1−メチルアリル基、1−ブチレニル基、2−ブチレニル基、イソブチレニル基、1,3−ブタジエン−1−イル基等を挙げることができる。
により示されるC3〜10のシクロアルキル基又はC3〜10のシクロアルケニル基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロヘキセニル基等を挙げることができる。
により示されるC6〜10のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を挙げることができる。
は、置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基であること、すなわち、RはRであること、或いは、前記式(1)により表されるスルホン酸が、前記式(2)により表されるアルケニルスルホン酸であること、が好ましい。
具体的には、本願発明における上記式(2)で表されるスルホン酸は、ビニルスルホン酸であるのがより好ましい。
アルケニルスルホン酸は、バインダーとの反応、特に紫外線を用いた反応が可能である。従って以下に説明するように、RがRである場合には、言い換えれば、式(1)で表されるスルホン酸が、式(2)で表されるスルホン酸である場合には、酸化チタン含有組成物の製造方法(或いは、酸化チタン含有組成物の製造方法の一部である酸化チタン含有中間組成物の製造方法)として、後述するA−3法、B−1法、B−2法、B−3法のいずれかを採用すること、又は光触媒構造体の製造方法としてC−2法を採用することができ、また、それらを採用することが好ましい。特にバインダーとスルホン酸との反応を要する場合には、上記式(2)で表されるスルホン酸は、そのRが置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基であるアルケニルスルホン酸が好ましく、更にビニルスルホン酸であることが好ましい。
前記「置換基を有することのある」とは、R(Rの下位概念であるRの場合も当然に同様である。)により示される基に含まれる水素原子の1つ若しくは複数が、置換基により置換されていてもよいことを意味する。このR上の置換基は、更に置換基を有してもよい。前記「置換基」としては特に限定されないが、好ましくは、前記Rに関して例示された基、C1〜4アルコキシ基、C1〜4アルケニルオキシ基、カルボキシル基、C1〜4アシル基、C1〜4アシルオキシ基、C1〜4アルコキシカルボニル基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、C1〜4アルキル基又はC1〜4アシル基で置換されることのあるアミノ基、スルホン酸基等を挙げることができる。
本願発明におけるスルホン酸の添加量は、前記固形分に対して、若しくは、前記酸化チタン化合物、前記2価の酸化銅、及び前記バインダーの合計の質量に対して、0.5〜25質量%に相当する量である。
上記添加量は、より確実な効果を発揮させるために、0.8質量%以上であることが好ましい。また、少なくとも20質量%のスルホン酸が存在すれば十分な効果が得られることから、上記添加量は20質量%以下であることが好ましい。
本願発明の酸化チタン含有組成物は、例えば以下の方法により製造することができる。以下にその例を3つ挙げる。
第1の方法は、固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含み、且つ前記固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(1)
−SOOH (1)
(式中、Rは置換基を有することのあるC1〜10のアルキル基、置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルキル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基、又は置換基を有することのあるC6〜10アリール基を示す。)
で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物を含んでなる酸化チタン含有中間組成物に、
前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
M(OH) (3)
(アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
MCl (4)
(アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)を添加し、攪拌混合することによって酸化チタン含有組成物を得る、酸化チタン含有組成物の製造方法である。
式(3)で示されるM(OH)のアルカリ金属水酸化物は、強いアルカリ性でスルホン酸と式(A)の中和反応を生じることにより、スルホン酸のHをMでキャッピングする。
R−SOOH+M(OH)→ R−SOOM+HO 式(A)
また、式(4)で示されるMClのアルカリ金属中性塩は、式(B)の反応を生じることにより、スルホン酸のHをMでキャッピングする。
R−SOOH+MCl→ R−SOOM+HCl 式(B)
式(A)及び式(B)の反応条件は、特に制限されるものでないが、通常は室温で0.5時間〜2時間程度攪拌すれば良い。
スルホン酸のHを式(3)や式(4)のMで置換するために必要な量は、スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルであるが、生成した酸化チタン含有組成物のpH、粘度、温水浸漬後に必要となる抗菌性や抗ウイルス性の程度を考慮して選択される。
通常、スルホン酸に等モルの塩基性化合物を添加すれば、pHは中性に近くなるが、スルホン酸を添加する前の酸化チタン含有組成物(酸化チタン含有中間組成物)は、既に、組成物の安定性を維持するために、硝酸等の酸性化合物でpHを3程度に調整しているので、スルホン酸添加後の白色酸化チタン組成物のpHを中性に近づけるには、過剰量の塩基性化合物の添加が必要となる。
例えば、NaOH/VSAの例では、後述する実施例に示すように、等モル(NaOH/VSA=1.0)では、pH≒4程度、粘度=20〜30mPa・s程度となり、NaOH/VSA=1.3では、pH≒7程度、粘度=100〜200mPa・s程度となり、いずれも塗工上問題のない粘度に調整できる。
また、NaOH/VSA=3.0程度まで上げるとpHは、10程度になり、かなり高粘度になりチクソ性を有した。これは、シリカゾル等が脱水縮合して架橋されるためと考えられ、添加量の上限と看做せる。
第2の方法は、バインダーに式(2)
−SOOH (2)
(式中、Rは置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基を示す。)
で表されるスルホン酸を添加して反応させることによって得た反応物を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、前記反応物が添加された前記懸濁液を攪拌混合することによって、固形分としての酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーに対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(1)で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物を含んでなる酸化チタン含有中間組成物に、前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
M(OH) (3)
(アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
MCl (4)
(アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)を添加し、攪拌混合することによって酸化チタン含有組成物を得る、酸化チタン含有組成物の製造方法である。
第3の方法は、 バインダーに、式(2)
−SOOH (2)
(式中、Rは置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基を示す。)
で表されるスルホン酸を添加して反応させることによって得た反応物に、更に式(5)
R−C(=O)−NR (5)
(式中R、Rは、同一又は異なる水素原子又は低級アルキル基を表す。)
で表されるアミド化合物を、前記スルホン酸に対するモル比で0.4〜2.5倍モルの量添加し、紫外線照射下で、前記反応物中の未反応のスルホン酸を重合させることにより得たその反応物を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、前記懸濁液を攪拌混合することによって、固形分としての酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーに対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(2)で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物を含んでなる酸化チタン含有中間組成物に、前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
M(OH) (3)
(アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
MCl (4)
(アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)を添加し、攪拌混合することによってスルホン酸のHを前記アルカリ金属(M)で置換した酸化チタン含有組成物を得る、酸化チタン含有組成物の製造方法である。
ここで、第3の方法で使用されるアミド化合物は、特許文献4に記載されている化合物であり、上述のように、以下の式(5)で示される。
R−C(=O)−NR (5)
(式中R、Rは、同一又は異なる水素原子又は低級アルキル基を表す。)
かかるアミド化合物は例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及び、N,N−ジエチルアセトアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であればよい。
上記アミド化合物の酸化チタン含有中間組成物に対する添加量は、前記アミド化合物の量が、アルケニルスルホン酸1モルに対し、例えば0.4〜2.5倍モルであればよい。
本願における酸化チタン含有組成物は、以下に述べる方法によって製造されてもよい。
(A法)
固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含み、且つ前記固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量の上記式(1)で表されるスルホン酸を含んでなる懸濁液を撹拌混合することにより、酸化チタン含有組成物の製造方法のうちの上述した第1の方法における酸化チタン含有中間組成物を製造する方法であって、好ましくはその懸濁液に、以下の処理を行うことにより酸化チタン含有組成物を製造する方法である。A法には、以下の1〜3が含まれる。
1.懸濁液に上記式(1)で表されるスルホン酸を添加して、室温で攪拌混合する方法(A−1法と称する)。
2.懸濁液に上記式(1)で表されるスルホン酸を添加して、加温下に攪拌混合する方法(A−2法と称する)。
3.懸濁液に上記式(1)で表されるスルホン酸を添加して、紫外線を照射下で加温し、攪拌混合する方法(A−3法と称する)。
(B法)
バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して反応させた反応物を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、当該懸濁液を攪拌混合することによって、固形分としての酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーに対して、0.5〜25質量%に相当する量の上記式(2)で表されるスルホン酸を含んでなる酸化チタン含有中間組成物を製造する方法であって、好ましくは懸濁液に以下の処理を行うことにより酸化チタン含有中間組成物を製造する方法である。B法には以下の1〜3が含まれる。
1.バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して、好ましくは加温下で、攪拌混合して反応生成物1を得た後に、固形分として、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含む懸濁液に、反応生成物1を添加して、好ましくは加温しつつ、撹拌混合する。(酸化チタン含有組成物の製造方法のうちの上述した第2の方法における酸化チタン含有中間組成物を製造する方法であり、B−1法と称する)
2.バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して、紫外線の照射下で、好ましくは加温し、攪拌混合して反応生成物2を得た後に、固形分として、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含む懸濁液に、反応生成物2を添加して、好ましくは加温しつつ、撹拌混合する。(酸化チタン含有組成物の製造方法のうちの上述した第2の方法における酸化チタン含有中間組成物を製造する方法であり、B−2法と称する)
3.バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して、紫外線の照射下で、好ましくは加温し、攪拌混合して反応生成物2を得た後に、反応生成物2に更に式(5)で表されるアミド化合物を、式(2)で表されるスルホン酸に対するモル比で0.4〜2.5倍モルの量添加し、紫外線照射下で、反応物中の未反応のスルホン酸を重合させることにより反応生成物3を得て、その反応生成物3を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、好ましくは加温しつつ、撹拌混合する。(酸化チタン含有組成物の製造方法のうちの上述した第3の方法における酸化チタン含有中間組成物を製造する方法であり、B−3法と称する)
A−1法において、反応条件は特に制限されるものではない。攪拌混合する時間つまり、反応時間は、好ましくは、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで、あるいは均一に混合後、攪拌を止めて静置し、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまでとすれば良い。
この方法によれば、2価の酸化銅(CuO)と上記式(1)で表されるスルホン酸のスルホン酸基との中和反応が主に進むと思われる。
A−2法において、反応条件は特に制限されるものではない。反応温度は、特に制限されるものでないが、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下とすることができる。反応時間は、反応温度及び上記式(1)で表されるスルホン酸の添加量により異なるが、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
この方法によれば、2価の酸化銅(CuO)と上記式(1)で表されるスルホン酸のスルホン酸基との中和反応が進み、また特に、スルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合には、バインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応が並行して進むものと思われる。
A−3法において、反応条件は特に制限されるものではない。反応温度は特に制限されるものでないが、50℃以上150℃以下とすることができる。紫外線の波長と強度は、UVA(400〜315nm)やUVB(315〜280nm)の波長で、紫外線強度0.5〜5mw/cmとすることができる。反応時間は、反応温度、紫外線強度や、スルホン酸の添加量によって異なるが、少なくとも、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
この方法によれば、2価の酸化銅(CuO)とスルホン酸のスルホン酸基との中和反応が進み、また特に、スルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合にはバインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応が並行して進み、二重結合との反応の割合がA−2法より増加し、更に、紫外線照射により、系内で光触媒反応も生じるものと思われる。
B−1法において、反応生成物1の合成条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは60℃以上150℃以下とすることができる。反応時間は1時間以上24時間以下が好ましい。
この方法によれば、特に、スルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合にはバインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応が進み、かつ、バインダーに結合したアルケニルスルホン酸のスルホン酸基はフリーであり、バインダーに結合しないフリーのアルケニルスルホン酸も存在する状態となると思われる。
B−1法において、反応生成物1を添加した後の懸濁液を混合する場合における条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下である。反応時間は、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
B−2法において、反応生成物2の合成条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは60℃以上150℃以下とすることができる。紫外線の波長と強度は、UVA(400〜315nm)やUVB(315〜280nm)の波長で、紫外線強度1〜10mw/cmとすることができる。反応時間は1時間以上24時間以下が好ましい。
この方法によれば、特に、スルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合には、反応生成物2は、反応生成物1より、バインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応がより進み、フリーのアルケニルスルホン酸含量は少なくなるものと思われる。
B−2法において、反応生成物2を添加した後の懸濁液を混合する場合における条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下の温度とすることができる。反応時間は、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
B−3法において、反応生成物2の合成条件は特に制限されるものでなく、例えばB−2法における反応条件に倣うことができる。また、反応生成物3の合成条件は、特に制限されるものでない。反応生成物2に、式(5)で表されるアミド化合物を、式(2)で表されるスルホン酸1モルに対し0.4〜2.5倍モルの量となるようにして添加して、紫外線照射下で未反応のスルホン酸を重合して反応生成物3を得る。その場合の反応温度は、例えば、20℃以上80℃以下で、好ましくは40℃以上60℃以下とすることができる。紫外線の波長と強度は、UVA(400〜315nm)やUVB(315〜280nm)の波長で、紫外線強度1〜10mw/cmとすることができる。反応時間は0.1時間以上4時間以下が好ましい。
B−3法において、反応生成物3を添加した後の懸濁液を混合する場合における条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下の温度とすることができる。反応時間は、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
本願発明の酸化チタン含有組成物を応用したものとして、本願発明者は、以下の光触媒構造体をも本願発明の一態様として提案する。
光触媒構造体の一例は、基材と、以上で説明した酸化チタン含有組成物のいずれか又は以上で説明した酸化チタン含有組成物の製造方法を用いて製造された酸化チタン含有組成物のいずれかを用いて形成された光触媒層とを有している、光触媒構造体である。
かかる光触媒構造体は、以上で説明した酸化チタン含有組成物のいずれか又は以上で説明した酸化チタン含有組成物の製造方法を用いて製造された酸化チタン含有組成物のいずれかを、基材の表面に塗布し、乾燥させることによってそれに含まれる溶剤を蒸発させることによって製造可能である。
上述の如き光触媒構造体であれば、酸化チタンと2価の酸化銅による光触媒機能と抗菌・抗ウイルス性とを、基材の表面に有するものとなるとともに、基材の表面の酸化チタン含有組成物によって形成された層を白色に近い色彩にすることができるため、意匠の点でも優れたものであり、更に温水浸漬後の抗菌・抗ウイルス性の劣化が少なく、特に、暗所での活性も高いものとなる。また、その抗菌・抗ウイルス性は、温水浸漬後においても、また暗所での使用においても劣化しにくい。
光触媒構造体は、より具体的には、以上で説明した酸化チタン含有組成物のいずれか又は以上で説明した酸化チタン含有組成物の製造方法を用いて製造された酸化チタン含有組成物のいずれかを用いて、例えば、以下の(C法)によって製造することができる。
(C法)
以上で説明した本願発明による酸化チタン含有組成物のいずれかを基材の表面に塗布し、乾燥させることによってそれに含まれる溶剤を蒸発させることにより光触媒構造体を製造する光触媒構造体の製造方法であって、酸化チタン含有組成物を塗布した後に、以下の処理を行うことで、光触媒構造体を製造する方法である。C法は、以下の2種類である。
1.本願のいずれかの酸化チタン含有組成物を基材に塗布後、150℃以下の温度で乾燥、硬化して、光触媒構造体を製造する方法。(C−1法と称する)
2.本願のいずれかの酸化チタン含有組成物を基材に塗布後、150℃以下の温度かつ紫外線照射下で乾燥、硬化して、光触媒構造体を製造する方法。(C−2法と称する)
前記基材は、適当に選択できるが、例えばシートとすることができる。前記シートは、高分子樹脂の成形物、又は繊維による織物であってもよい。高分子樹脂の成形物であるシートの例は、ポリエチレン、ポリピロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の成形物である。
具体例を以下に示す。
本発明に用いられるシートは、高分子樹脂を含むものであればその原料について特に制限されることはないが、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フッ化エチレン−プロピレン共重合樹脂、フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂等により、上記基材を形成することができる。また、シート基材として、1質量%以上80質量%以下の可塑剤、好ましくは5質量%以上80質量%以下の可塑剤を含むものを用い、これに本発明による酸化チタン含有組成物を適用した場合には、従来の方法により得た光触媒構造体と比較して顕著に光触媒機能の向上が見られる。
本発明に用いられる基材の形状は、フィルム状、板状、管状、繊維状、網状等どのような形状でもよい。また、その大きさは10μm以上であれば光触媒を強固に担持することができる。
より具体的には、テント地キャンバス、カーテン、壁紙等の膜材、またポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂等からなる光透過性材料を好ましく挙げることができる。
高分子樹脂による基材と光触媒層、接着層との密着性を良くするために、放電処理やプライマー処理等をその表面に施した基材を用いることもできる。また、施工済の建築資材、家庭電化製品、めがね等用途によっては、製品として存在する加工済の高分子樹脂成形体に本発明の光触媒構造体の製造方法による処理を行うことによって、本発明による光触媒構造体とすることもできる。いずれにせよ、かかる光触媒構造体の応用範囲は極めて広いと言える。
特に膜材、その中でもテント地キャンバスに本発明の方法を応用した場合、従来の方法で製造した場合に比較して顕著な効果が現れる。テント地キャンバスとしては、既存のどの様な種類のテント地キャンバスでも用いることができる。ポリエステル等の樹脂からなる繊維を織った基布、該基布に塩化ビニル樹脂をコート含浸塗布により加工した塩ビ含浸基布、該塩ビ含浸基布の表面をアクリル、フッ素樹脂等でコートした表面処理塩ビ含浸基布など、テント地キャンバスとして呼称される全てのものに適用可能であるが、広く使用されているB種テント地キャンバス、C種テント地キャンバス、倉庫用膜材料に対しては特に好ましく使用できる。
また、本発明の光触媒担持テント地キャンバスは、広く一般建築用材料として、例えばテント倉庫の屋根、トラックシートなどの輸送体機器の幌、野積みシート、店舗用装飾テント、商店等の軒だし日除け、各種アーケードの屋根、展示会パビリオン等の屋根や側面の覆い、ガソリンスタンドの屋根や側面の覆い、防水保護シート、防雪シート、エアードーム、プールカバー、クイックシェルターの内膜、各種建築物の膜天井、仕切り、窓等、防汚、抗菌、防カビの効果を必要とする多くの場面にその優れた防汚性、抗菌性、防カビ性を生かして長期にわたって表面の美麗な状態を維持するため、特に好ましく使用できるものである。
中でも、優れた抗菌・抗ウイルス効果を利用して、医療用テントを含む医療施設、食品工場、食品倉庫、植物工場等に、特にそれらの内部に使用することが好ましい。
光触媒構造体の一例として、医療施設や老人ホーム等で使用するベッド用敷布、ベッドの手すり、ベッド下の敷きマット、オーバーテーブル台用マット、仕切り用カーテンなどを挙げられる。
また、光触媒構造体は、穀物などを輸送する通いのコンテナバックにも好ましく応用することができる。例えば、抗菌・抗ウイルス性の高い光触媒層を例えばその内側面に有する本発明のシート材で作製したコンテナバッグであれば、穀物などに雑菌等が付着しにくく、また再利用のため温水等で洗浄した後でも暗所の抗菌・抗ウイルス性も維持できるため好ましい。
試験結果を示す表1、及びグラフ1、2。 試験結果を示す表2、及びグラフ3、4。 試験結果を示す表3、及びグラフ5。 試験結果を示す表4、及びグラフ6。 試験結果を示す表5、6、及びグラフ7、8。 試験結果を示す表7、8、及びグラフ9、10。 試験結果を示す表9、及びグラフ11、12、13。 試験結果を示す表10、及びグラフ14、15、16。 試験結果を示す表11、及びグラフ17、18、19。 試験結果を示す表12、及びグラフ20、21、22。 試験結果を示す表13。 各試料液の性状及び生成方法と、各試料液と試料シート又は比較シートとの対応関係を示す表。
以下、本願発明の実施形態について説明する。
[酸化チタン含有組成物の製造]
この実施形態では、以下のようにして、酸化チタン含有組成物を製造する。
最終的に得られる酸化チタン含有組成物は、固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含み、且つ固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量のスルホン酸と、スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルのアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ金属の中性塩を含んでいる。
酸化チタン含有組成物の製造方法は、例えば、酸化チタン化合物と、2価の酸化銅と、バインダーと、上述の量のスルホン酸と、溶剤とを、上述の質量比で混合し、必要に応じて撹拌して酸化チタン含有中間組成物を得て、その酸化チタン含有中間組成物にアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ金属の中性塩を混合して、必要に応じて撹拌するというものである。
また、2価の酸化銅は酸化チタン化合物に担持されたものも好適に用いられる。酸化チタン化合物に2価の酸化銅を担持させる方法は公知であり、その方法により2価の酸化銅を担持させた酸化チタン化合物を得ることができる。
その方法の一例として、特許文献2(特許第5343176号公報)の段落[0021]における「製造方法1」に準じた方法に続けて、段落[0029]における「製造方法3」を実行する方法を挙げることができる。すなわち、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタン、2価銅化合物原料(例えばCuCl・2HO)、水、及びアルカリ性物質を混合してなる混合物を攪拌した後に脱水することにより、銅及びチタン含有組成物(Cu(OH)Cl/TiO)を得ることができる。
次に製造方法1で得られた銅及びチタン含有組成物を、更に熱処理することで、2価の酸化銅/酸化チタン化合物(本発明のCuO/TiO担持体を示す)を得ることができる。この熱処理により、2価の銅化合物が酸化チタンに強固に結合する。
酸化チタン化合物に2価の酸化銅を担持させる方法の他の例として、同段落[0029]における「製造方法2」に準じた方法に続けて、段落[0029]における「製造方法3」を実行する方法を挙げることができる。結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと、2価銅化合物原料(例えば、CuCl・2HO)とを、乾式混合又は湿式混合することにより銅及びチタン含有組成物((CuCl・2HO/TiO)を得ることができる。
次に製造方法2で得られた銅及びチタン含有組成物を、更に熱処理することで、2価の酸化銅/酸化チタン化合物(本発明のCuO/TiO担持体を示す)を得ることができる。この熱処理により、2価の銅化合物が酸化チタンに強固に結合する。
もっとも、酸化チタン含有組成物の色彩を白色に近いものとすることを考慮すれば、2価の酸化銅とスルホン酸との反応を促進させて、酸化銅とスルホン酸との反応物をより多く生成させるべきである。詳細な酸化チタン含有組成物の製造方法をA法と、B法として次に示す。
(A法)
固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含み、且つ固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量の上記式(1)で表されるスルホン酸を含んでなる懸濁液を撹拌混合することにより酸化チタン含有中間組成物を製造する方法であって、好ましくはその懸濁液に、以下の処理を行うことにより酸化チタン含有中間組成物を製造する方法である。A法には、以下の1〜3が含まれる。
1.懸濁液に本願発明における上記式(1)で表されるスルホン酸を添加して、室温で攪拌混合する方法(A−1法と称する)。
2.懸濁液に上記式(1)で表されるスルホン酸を添加して、加温下に攪拌混合する方法(A−2法と称する)。
3.懸濁液に本願における上記式(1)で表されるスルホン酸を添加して、紫外線を照射下で加温し、攪拌混合する方法(A−3法と称する)。
A−1法において、反応条件は特に制限されるものではない。攪拌混合する時間つまり、反応時間は、好ましくは、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで、あるいは均一に混合後、攪拌を止めて静置し、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまでとすれば良い。
この方法によれば、2価の酸化銅(CuO)と上記式(1)で表されるスルホン酸のスルホン酸基との中和反応が主に進むと思われる。
A−2法において、反応条件は特に制限されるものではない。反応温度は、特に制限されるものでないが、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下とすることができる。反応時間は、反応温度及び上記式(1)で表されるスルホン酸の添加量により異なるが、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
この方法によれば、2価の酸化銅(CuO)とスルホン酸のスルホン酸基との中和反応が進み、特にスルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合にはバインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応が並行して進むものと思われる。
A−3法において、反応条件は特に制限されるものではない。反応温度は特に制限されるものでないが、50℃以上150℃以下とすることができる。紫外線の波長と強度は、UVA(400〜315nm)やUVB(315〜280nm)の波長で、紫外線強度0.5〜5mw/cmとすることができる。反応時間は、反応温度、紫外線強度や、上記式(2)で表されるスルホン酸の添加量によって異なるが、少なくとも、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
この方法によれば、2価の酸化銅(CuO)とスルホン酸のスルホン酸基との中和反応が進み、特にスルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合には、バインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応が並行して進み、二重結合との反応の割合がA−2法より増加し、更に、紫外線照射により、系内で光触媒反応も生じるものと思われる。
(B法)
バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して反応させた反応物を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、当該懸濁液を攪拌混合することによって、固形分としての酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーに対して、0.5〜25質量%に相当する量の上記式(2)で表されるスルホン酸を含んでなる酸化チタン含有組成物を製造する方法であって、好ましくは懸濁液に以下の処理を行うことにより酸化チタン含有組成物を製造する方法である。B法には以下の1、2が含まれる。
1.バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して、好ましくは加温下で、攪拌混合して反応生成物1を得た後に、固形分として、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含む懸濁液に、反応生成物1を添加して、好ましくは加温しつつ、撹拌混合する。(B−1法と称する)
2.バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して、紫外線の照射下で、好ましくは加温し、攪拌混合して反応生成物2を得た後に、固形分として、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含む懸濁液に、反応生成物2を添加して、好ましくは加温しつつ、撹拌混合する。(B−2法と称する)
3.バインダーに上記式(2)で表されるスルホン酸を添加して、紫外線の照射下で、好ましくは加温し、攪拌混合して反応生成物2を得た後に、反応生成物2に更に本願における上記式(5)で表されるアミド化合物を、上記式(2)で表されるスルホン酸に対するモル比で0.4〜2.5倍モルの量添加し、紫外線照射下で、反応物中の未反応のスルホン酸を重合させることにより反応生成物3を得て、その反応物3を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、好ましくは加温しつつ、撹拌混合する。(B−3法と称する)
B−1法において、反応生成物1の合成条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは60℃以上150℃以下とすることができる。反応時間は1時間以上24時間以下が好ましい。
この方法によれば、特にスルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合には、バインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応が進み、かつ、バインダーに結合したアルケニルスルホン酸のスルホン酸基はフリーであり、バインダーに結合しないフリーのアルケニルスルホン酸も存在する状態となると思われる。
B−1法において、反応生成物1を添加した後の懸濁液を混合する場合における条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下である。反応時間は、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
B−2法において、反応生成物2の合成条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは60℃以上150℃以下とすることができる。紫外線の波長と強度は、UVA(400〜315nm)やUVB(315〜280nm)の波長で、紫外線強度1〜10mw/cmとすることができる。反応時間は1時間以上24時間以下が好ましい。
この方法によれば、特にスルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合には、反応生成物2は、反応生成物1より、バインダーの水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合の反応がより進み、フリーのアルケニルスルホン酸含量は少なくなるものと思われる。
B−2法において、反応生成物2を添加した後の懸濁液を混合する場合における条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下の温度とすることができる。反応時間は、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
B−3法において、反応生成物2の合成条件は特に制限されるものでなく、例えばB−2法における反応条件に倣うことができる。また、反応生成物3の合成条件は、特に制限されるものでない。反応生成物2に、式(5)で表されるアミド化合物を、式(2)で表されるスルホン酸1モルに対し0.4〜2.5倍モルの量で添加して、紫外線照射下で未反応のスルホン酸を重合して反応生成物3を得る。その場合の反応温度は、例えば、20℃以上80℃以下で、好ましくは40℃以上60℃以下とすることができる。紫外線の波長と強度は、UVA(400〜315nm)やUVB(315〜280nm)の波長で、紫外線強度1〜10mw/cmとすることができる。反応時間は0.1時間以上4時間以下が好ましい。
B−3法において、反応生成物3を添加した後の懸濁液を混合する場合における条件は、特に制限されるものでない。反応温度は、例えば、50℃以上200℃以下で、好ましくは100℃以上150℃以下の温度とすることができる。反応時間は、酸化チタン含有組成物の色が白色になるまで攪拌すれば良い。
この実施形態の製造方法で用いることのできる酸化チタンは、公知のものでよく、具体的には、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンであり、或いはこれらの両者を含むものである。この実施形態における酸化チタンは、それに含まれるルチル型の酸化チタンが、モル比で50%を超えているものとする。
2価の酸化銅は、上述のように酸化チタンに担持されていても構わない。
2価の酸化銅は、また、以下に述べるように、スルホン酸との反応物を含んでも良い。
この実施形態の製造方法で用いることのできるバインダーは、以下のものから選択可能であり、以下のものを2種類以上含むものであっても構わない。
本願発明におけるバインダーは、酸化チタン含有組成物の使用時において、酸化チタン含有組成物を、所定の基材の表面に塗布して、乾燥させるなどしてその主に固形分を基材の表面に固定させるにあたって、基材に対して酸化チタンを固定できるようなものであれば良い。また、本願発明におけるバインダーは、バインダー表面に水酸基を有し、スルホン酸がビニルスルホン酸等の上記式(2)で表されるアルケニルスルホン酸である場合には、その水酸基とアルケニルスルホン酸の二重結合との反応が可能なものとすることができる。いずれにせよ、バインダーには公知のものを用いることができる。
バインダーは、金属酸化物ゲル若しくは金属水酸化物ゲルで、その比表面積が、150℃で乾燥後50m/g以上あるのが好ましく、100m/g以上あると更に好ましい。このような比表面積を有するのであれば接着性はより強固になり、触媒活性も向上することになる。ここで、金属成分としては、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫等の金属の酸化物ゲル若しくは水酸化物ゲルを好ましく例示することができる。
また、バインダーは、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン、錫等の金属の酸化物ゲル若しくは水酸化物ゲルと、ビニルスルホン酸との反応物を含むものであってもよい。
この実施形態の製造方法で用いることのできる溶剤は、以下のものから選択可能であり、以下のものを2種類以上含むものであっても構わない。
溶剤は、例えば、水、アルコール類、ケトン類から選択できる。
アルコール類としては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、あるいはこれらの混合物を挙げることができ、ケトン類としては、例えば、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
以上のようにして生成された、酸化チタン含有中間組成物に、本願における上記式(3)M(OH)で表されるアルカリ金属の水酸化物、又は本願における上記式(4)MClで表されるアルカリ金属の中性塩を加え、必要に応じて撹拌することにより、この実施形態による酸化チタン含有組成物を得る。
この実施形態の製造方法で用いることのできる上記式(3)M(OH)で表されるアルカリ金属の水酸化物又は上記式(4)MClで表されるアルカリ金属の中性塩は、以下のものから選択可能であり、またともに、以下のものを2種類以上含むものであっても構わない。具体的には、NaOH、KOH又はNaCl、KClである。
以上で説明した酸化チタン含有組成物は、例えば、その用途が光触媒である場合もあるし、その用途が抗菌又は抗ウイルス剤である場合もある。
また、以上で説明した酸化チタン含有組成物は、例えば、基材(例えば、シート)の表面(少なくとも一方の面)の、例えば全面に塗布し、乾燥させて溶剤を蒸発させることにより、基材の表面にその固形分を固定させて用いる。もっとも、基材としては、課題を解決するための手段の欄で種々挙げたものの中から、適宜選択することができる。
基材がシートである場合、シートは、高分子樹脂の成形物、繊維による織物、繊維織物を芯材として高分子樹脂で被覆加工したシートであっても良い。高分子樹脂の成形物であるシートの例は、ポリエチレン、ポリピロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の成形物である。繊維による織物の例は、ポリエステル繊維織物やガラス繊維織物である。繊維織物を芯材として高分子樹脂で被覆加工したシートの例は、ポリエステル繊維織物やガラス繊維織物を芯材にした塩化ビニルテント基材、ガラス繊維織物を芯材とするフッ素樹脂テント基材である。
酸化チタン含有組成物が塗布された基材の表面は、酸化チタンと2価の酸化銅による光触媒機能と抗菌・抗ウイルス性とを併せ持つことになる。
以上における酸化チタン含有組成物を用いて光触媒構造体を製造する場合には、例えば、以下の(C法)を用いることができる。
(C法)
以上で説明した本願発明による酸化チタン含有組成物のいずれかを基材の表面に塗布し、乾燥させることによってそれに含まれる溶剤を蒸発させることにより光触媒構造体を製造する光触媒構造体の製造方法であって、酸化チタン含有組成物を塗布した後に、以下の処理を行うことで、光触媒構造体を製造する方法である。C法は、以下の2種類である。
1 酸化チタン含有組成物を基材に塗布後、150℃以下の温度で乾燥、硬化して、光触媒構造体を製造する方法。(C−1法と称する)
2 酸化チタン含有組成物を基材に塗布後、150℃以下の温度かつ紫外線照射下で乾燥、硬化して、光触媒構造体を製造する方法。(C−2法と称する)
以下、この実施形態における酸化チタン含有組成物の製造方法の実施例について説明する。
<光触媒塗布液1及び2の生成>(室温混合)
蒸留水1000gに、60g(100質量部)の酸化チタン化合物としてのルチル型酸化チタンA(BET値(10m2/g)、ルチル化率(95.9モル%)、アナターゼ化率(4.1モル%)、半値全幅(0.18度)、一次粒子径(150nm):昭和タイタニウム株式会社製)を懸濁させるとともに、4.979g(銅換算で3.1質量部、3.0質量%)のCuCl・2HO(関東化学株式会社製)を添加して、10分攪拌した。
次いで、pHが10になるように、1mol/Lの水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)水溶液を添加し、30分間攪拌混合を行ってスラリーを得た。
次いで、このスラリーをろ過し、得られた粉体を純水で洗浄してから80℃で乾燥し、ミキサーで解砕し、試料を得た。得られた試料を大気中、450℃で、3時間加熱処理して、試料1を得た。
なお、この試料1は、それをフッ酸溶液中で加熱して全溶解し、抽出液をICP発光分光分析により定量したところ、酸化チタン100質量部に対して、銅イオンが3.1質量部(3.0質量%)であることがわかった。すなわち、試料1を作るために用いられた上述のCuCl・2HO由来の銅イオンの全量が銅化合物として酸化チタンの表面に担持されていることがわかった。更にこの銅化合物はESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis:X線光電子分光)の波形分離からCuOであることを確認した。
次いで、上述の試料1と、界面活性剤とを、溶剤としての蒸留水186.9gに添加し、攪拌混合して、固形分含量25質量%となるように調整されたスラリーであるスラリー1を得た。
次いで、この60gのスラリー1と、界面活性剤1.5gとを、エチルアルコール148.5gに添加して懸濁させたものに更に、バインダーとしての固形分含量25質量%の硝酸酸性シリカゾル40gを添加して攪拌混合し、これに更に硝酸を添加して液のpHを3に調整し、固形分が10質量%となっている、光触媒塗布液1を250g得た。この光触媒塗布液1の色は、淡褐色であった。
次に、500mlの三口フラスコに、淡褐色を呈する上述の光触媒塗布液1を250g入れ、攪拌しながらビニルスルホン酸(VSA−H:商標:旭化成ファインケム株式会社製、以下単に「VSA」と称する場合がある。)2.50g(光触媒塗布液1の固形分に対して9.1質量%)を添加混合し、室温で2時間攪拌し、その後、室温で1日静置し光触媒塗布液2(便宜上モノマー系と称する)を得た。かかる酸化チタン含有組成物の色彩は、白色であった。なお、光触媒塗布液1を除くこの実施例における光触媒塗布液には、本願発明における式(1)で表されるスルホン酸が含まれる。各光触媒塗布液に含まれるスルホン酸の分量次第ではあるが、それが本願発明で規定したスルホン酸の分量に合致している場合には、その光触媒塗布液は、本願発明における酸化チタン含有中間組成物に相当する。
以下、本願発明の具体的な実施例、及び比較例を用いてのその評価について説明する。
<試料液A1〜A4の生成>(中和反応)(モノマー系)
100mlのガラス製サンプル瓶に、攪拌子を入れ、光触媒塗布液2の50gを注入し撹拌しながら試料液A0を調整した。同様な試料液4個を調整し、それぞれを試料液A1、A2、A3、A4とした。試料液A1、A2、A3、A4である、各光触媒塗布液50g中には、VSAが0.495g(0.00458モル)含有されている。
また、別の100mlガラス製サンプル瓶に15.1質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を50g調整した。
試料液A1をスターラーで攪拌しながら、15.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.092gを滴下し、室温で2時間攪拌しVSAの90mol%を中和した。これを、簡単のため、NaOH/VSA=0.90と示すことにする。なお、以後の説明において、「/」の記号の前後に化学物質名を記載した場合には、試料液A2〜A4のみならず、それ以降においても、「/」の前後に記載された2つの化学物質のモル比を意味するものとする。
以下同様に、試料液A2(NaOH/VSA=1.00)、試料液A3(NaOH/VSA=1.10)、試料液A4(NaOH/VSA=1.30)を調整し、それぞれのpH(pH計で測定)と粘度(BLを粘度計25℃で測定)とを測定し、図1の表1と、グラフ1(pH)及びグラフ2(粘度 mPa・s)に示した。
グラフ1、2を見ると、pH及び粘度ともに、NaOH/VSA=1.10までは、略直線的に増加し、NaOH/VSA=1.3以上では、急増している。NaOH/VSA=1.3でのpHは、6.7でほぼ中性と言える。またそのときの粘度は198mPa・sで塗工上問題のない粘度である。
<反応生成物1及び2の生成>(ポリマー系)
500mlの三口フラスコに、オルガノシリカゾル(IPA−ST(商標):日産化学株式会社製:イソプロピールアルコール(IPA)溶媒、固形分30.5質量%、粒子径12nm)を80.0gと、IPA42.0gとを添加して固形分を20.0質量%になるように調整し、攪拌しながらそれにビニルスルホン酸(VSA−H)7.3gを添加して均一に分散させた。
その後、更に攪拌しながら70℃に昇温させ、更にBLBランプで紫外線を照射(紫外線は、フラスコ表面で1.0〜2.0mw/cmの強度となるようにした。)しながら、7時間反応し、その後、加熱を止め攪拌しながら室温まで冷却した。生成物はかなり増粘しており、粘調な反応生成物(反応生成物1)129.3gを得た。つまり、以上の処理により、バインダーとしてのシリカゾルと、ビニルスルホン酸との反応物の生成が促進されていた。反応生成物の持つ粘調な性質は、ビニルスルホン酸の二重結合基とシリカゾルの〜Si−OH結合とが反応して、〜Si−O−CH−CH−SOHが生成されたことによるものと考えられる。
反応生成物1中には、VSAが5.7質量%、SiO2量が18.9質量%及びIPAが75.5質量%が含まれる。
次いで、反応生成物1を室温で攪拌しながらDMF(ジメチルホルムアミド)3.7g(DMF/VSAモル比で0.74)を少量ずつ滴下した。添加するにつれ内容物は白濁し急激に増粘した。その後、BLBランプで紫外線を照射下、40℃で0.5時間、60℃で1.5時間加熱混合し、VSAを重合して高分子量化し、室温まで冷却して反応生成物2(便宜上ポリマー系と称する)を133g得た。なお、重合に際しては、特許文献4に記載の方法を参考にした。
<光触媒塗布液3の生成>(ポリマー系)
500mlの三口フラスコに、別途調整した淡褐色の光触媒塗布液1を200g添加し、攪拌しながら上記反応生成物2を39.1g添加して、室温で3.5時間混合し、白色の光触媒塗布液3(ポリマー系)を239g得た。
光触媒塗布液3中の組成は、固形分が12.3質量%、溶剤類が87.7質量%であり、固形分には、CuOが0.19質量%、酸化チタンが4.83質量%、バインダー類が6.35質量%、VSAが0.90質量%含まれる。光触媒塗布液3におけるVSA/CuO=3.6となる。
<試料液A11〜A14の生成>(中和反応)(ポリマー系)
100mlのガラス製サンプル瓶に、攪拌子を入れ、光触媒塗布液3の50gを注入し試料液A10を調整した。同様の試料液4個を調整し、それぞれを試料液A11、A12、A13、A14とした。試料液A11、A12、A13、A14である、各光触媒塗布液50g中には、VSAが0.450g(0.00416モル)含有されている。
また、別の100mlガラス製サンプル瓶に15.1質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を50g調整した。
試料液A11をスターラーで攪拌しながら、15.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.99gを滴下し、室温で2時間攪拌しVSAの90mol%を中和して、試料液A11(NaOH/VSA=0.90)とした。以下同様に、試料液A12(NaOH/VSA=1.00)、試料液A13(NaOH/VSA=1.10)、試料液A14(NaOH/VSA=1.30)を調整し、それぞれのpHと粘度を測定し、図2の表2と、グラフ3(pH)及びグラフ4(粘度)に示した。
グラフ3及びグラフ4を見ると、pH及び粘度ともに、NaOH/VSA=1.10までは、略直線的に増加し、NaOH/VSA=1.3以上では、急増している。NaOH/VSAが1.3でのpHは、6.8でほぼ中性と言える。またそのときの粘度は105mPa・sで塗工上問題のない粘度である。
<光触媒塗布液4、5の生成>(VSA反応条件)
300mlの三口フラスコに、淡褐色を呈する上記光触媒塗布液1を150g入れ、攪拌しながらビニルスルホン酸(VSA)0.90g(光触媒塗布液1の固形分に対して5.66質量%)を添加混合し、室温で7時間攪拌し、その後、室温で1日静置し光触媒塗布液4を得た。かかる酸化チタン含有組成物の色彩は、白色であった。
300mlの三口フラスコに、淡褐色を呈する前記の光触媒塗布液1を150g入れ、室温で攪拌しながらビニルスルホン酸(VSA)0.90g(光触媒塗布液1の固形分に対して5.66質量%)を添加混合し、その後50℃に昇温し1.8〜2.4mw/cm2の紫外線を照射しながら1時間反応し、更に70℃、1.3〜1.8mw/cm2で3時間反応させ、その後、室温で1日静置し光触媒塗布液5を得た。かかる酸化チタン含有組成物の色彩は、白色であった。
光触媒塗布液4、5は、それぞれ0.0083モルのVSAを含有しており、VSA/CuO=2.96である。
<試料液A21、A22及びA23、A24の生成>(Naキャッピング)
ビニルスルホン酸(VSA)のスルホン酸基(−SOOH)は、NaOHやNaClでもHとNaが置換(Naキャッピングと称する)して、−SOONaとなる。具体的には、以下の式(C)、式(D)の反応が生じる。
CH=CH−SOOH+NaOH→CH=CH−SOONa+HO 式(C)
CH=CH−SOOH+NaCl→CH=CH−SOONa+HCl 式(D)
光触媒塗布液4の50gをスターラーで攪拌しながら、15.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液の0.730gを滴下し、室温で2時間攪拌しVSAの100mol%を中和し、試料液A21(NaOH/VSA=1.00)を生成した。
同様に光触媒塗布液5に15.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液の0.730gを滴下攪拌し、試料液A22を生成した。
80gの蒸留水を入れたビーカに20gの食塩(NaCl)を添加攪拌して20質量%の塩化ナトリウム水溶液を生成した。
光触媒塗布液4の50gをスターラーで攪拌しながら、20.0質量%の塩化ナトリウム水溶液の0.806gを滴下し、室温で2時間攪拌しVSAの100mol%のHをNaで置換し、試料液A23(NaCl/VSA=1.00)を生成した。
同様に光触媒塗布液5に20.0質量%の塩化ナトリウム水溶液の0.806gを滴下攪拌し、試料液A24を生成した。
<反応生成物3及び4の生成>(ポリマー系)
500mlの三口フラスコに、オルガノシリカゾル(IPA−ST(商標):日産化学株式会社製:イソプロピールアルコール(IPA)溶媒、固形分30.5質量%、粒子径12nm)を80.0gと、ノルマルプロピールアルコール(n−PA)42.0gとを添加して固形分を20.0質量%になるように調整し、攪拌しながらそれにビニルスルホン酸(VSA−H)7.3gを添加して均一に分散させた。
その後、更に攪拌しながら70℃に昇温させ、更にBLBランプで紫外線を照射(紫外線は、フラスコ表面で1.0〜2.0mw/cmの強度となるようにした。)しながら、7時間反応し、その後、加熱を止め攪拌しながら室温まで冷却した。生成物はかなり増粘していたが、反応生成物1より低粘度な反応生成物(反応生成物3)129gを得た。
反応生成物3中には、VSAが5.7質量%、SiO量が18.9質量%及びIPAとn−PA混合溶剤が75.5質量%含まれる。
次いで、反応生成物3を室温で攪拌しながらDMF(ジメチルホルムアミド)の3.7g(DMF/VSA=0.74)を少量ずつ滴下した。添加するにつれ内容物は白濁し急激に増粘した。その後、BLBランプで紫外線を照射しながら、40℃で2時間、60℃で2時間加熱混合し、VSAを重合させて高分子量化し、室温まで冷却して反応生成物4を133g得た。
<光触媒塗布液6の生成>(ポリマー系)
500mlの三口フラスコに、別途調整した淡褐色の光触媒塗布液1を200g添加し、攪拌しながら上記反応生成物4を30.8g添加して、室温で3.5時間混合し、白色の光触媒塗布液6を230g得た。
光触媒塗布液6中の組成は、固形分が11.8質量%、溶剤類が88.2質量%であり、固形分には、CuOが0.19質量%、酸化チタンが5.01質量%、バインダー類が5.92質量%、VSAが0.73質量%含まれる。光触媒塗布液6におけるVSA/CuOモル比は2.8となる。
<試料液A31及びA32の生成>
100mlのガラス製サンプル瓶に、攪拌子を入れ、光触媒塗布液6の50gを注入し試料液A30(光触媒塗布液6)を調整した。同様な試料液2個を調整し、それぞれを試料液A31、A32とした。光触媒塗布液50g中には、VSAが0.367g(0.0034モル)含有されている。
また、別の100mlガラス製サンプル瓶に15.1質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を50g調整した。
試料液A31をスターラーで攪拌しながら、15.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液の0.899gを滴下し、室温で2時間攪拌しVSAの100mol%を中和して、試料液A31(NaOH/VSA=1.00)とした。同様に、試料液A32には、15.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液の2.70gを添加し、NaOH/VSA=3.00の試料液A32を得た。
NaOH/VSA=1.00の試料液A31に比して、 NaOH/VSA=3.00の試料液A32は、かなり粘度が高くチクソ性を有していた。とはいえ、試料液A32は、室温で1ヶ月近く静置したものでもゲル化しておらず、塗工上もそれほど問題にはならなかった。試料液A32では、pH試験紙でpH10程度であったので、NaOHが過剰添加された状態となっており、系がアルカリ性の為、いわゆるゾルゲル反応で縮合が進んでいる状態となっていると思われる。この状態では既に、CuO/TiO、SiO等が結合されており、担持されたCuOは、温水浸漬時にも溶出しにくくなっているものと考えられる。他方、これ以上のNaOH添加は、シリカゾル等の縮合が更に進み、例えば試料液A32全体のゲル化が更に促進されるものと思われる。したがって、NaOH/VSA=3.00を、NaOHの添加量の上限と看做すことができる。
<試料シートB1〜B4及びB11〜B14の作成>
次に、本願発明における基材の一例としてのシートの表面(必ずしもこの限りではないが、この例ではシートの片面)に、試料液A1〜A4及び試料液A11〜A14を塗布して乾燥させることにより、試料液A1〜A4及び試料液A11〜A14それぞれの主に固形分をシートの表面に固定させて光触媒層を形成させた。
ここで用いたシートは、ポリエステル繊維製の基布、ポリ塩化ビニル、可塑剤などを含んでおり、一般膜材をその用途とする白色のテント基材(E−5(商標):太陽工業株式会社製)である。
まず、この例では、シートに接着層を形成した。接着層は、シートに以下のようにして生成される接着層塗布液1を塗布して生成した。
接着層塗布液1は、シリコン含量が3質量%のアクリル−シリコン樹脂を10質量%含有するキシレン−イソプロパノール(50/50)溶液に、アクリル−シリコン樹脂に対して30質量%のポリシロキサン(メチルシリケート51(商標):コルコート株式会社製)と、界面活性剤とを添加し、混合することにより得た。
接着層塗布液1のシートへの塗布は、一般的なバーコータを用いて行った。その後、100℃で15分間乾燥して、塗布した接着層塗布液1を接着層とした。接着層の厚さは約1.5μmである。接着層を備えるシートは、A4の大きさであり、同じものを8枚作った。
次いで、以上のようにして作成した接着層を備えるシートのそれぞれの上記接着層上に、試料液A1〜試料液A4及び試料液A11〜A14をそれぞれ塗布し、乾燥させた。試料液A1〜A4及び試料液A11〜A14の塗布は、一般的なバーコータを用いて行った。その後、100℃で15分間乾燥して、接着層の上に、試料液A1〜A4及び試料液A11〜A14のいずれかに由来する光触媒層を形成することにより、光触媒層を有するシートである試料シートB1〜B4及び試料シートB11〜B14を得た。
試料シートB1〜B4及び試料シートB11〜B14の光触媒層の色彩は、いずれも白色と評価できるものであった(図3の表3における「YI値(初期)」と、図4の表4における「YI値(初期)」参照)。
<比較シートB0及びシートB10の作成>
光触媒塗布液2を、試料液A0として、試料液A1〜試料液A4の代わりとして用い、<試料シートB1〜B4の作成及び比較シートB11〜B14>で説明したのと同じ方法で、比較シートB0及び比較シートB10を得た。
比較シートB0及び比較シートB10が有する接着層と光触媒層の厚さは、それぞれ、2μmと1.5μmであった。また、比較シートB0及びB10の光触媒層の色彩は、いずれも白色と評価できるものであった(図3の表3における「YI値(初期)」と、図4の表4における「YI値(初期)」参照)。
<試料シートB21、B22、B23、及びB24の作成>
試料液A1〜試料液A4の代わりに、試料液A21、A22及び試料液A23、A24を用いた他は、試料シートB1〜B4の作成と同様にして試料シートB21、B22及び試料シートB23、B24を作成した。また、光触媒層の色彩は、B21、B22(YI値で8〜9)及び試料シートB23、B24(YI値で20〜21)で、いずれも白色と評価できるものであった。
<比較シートB20、B20(2)の作成>
試料液A1〜試料液A4の代わりに、光触媒塗布液4又は5を用いた他は、試料シートB1〜B4の作成と同様にして比較シートB20及びB20(2)を作成した。また、試料シートB20及びB20(2)の光触媒層の色彩は、いずれも白色(YI値で8〜9)と評価できるものであった。
<試料シートB31、B32の作成>
試料液A1〜試料液A4の代わりに、試料液A31、A32を用いた他は、試料シートB1〜B4の作成と同様にして試料シートB31、B32を作成した。また、試料シートB31、B32の光触媒層の色彩は、いずれも白色(YI値で9〜10)と評価できるものであった。
<比較シートB30の作成>
試料液A1〜試料液A4の代わりに、試料液A30(光触媒塗布液6)を用いた他は、試料シートB1〜B4の作成と同様にして比較シートB30を作成した。また、比較シートB30の光触媒層の色彩は、白色(YI値で9〜10)と評価できるものであった。
<試料シート、比較シートの色調(黄色度及び色差)、及びその経時変化>
前記試料液を用いて作製した試料シートB1〜B4、試料シートB11〜B14及び比較シートB0及びB10の光触媒層の色調及びその変化を評価した。評価したのは、シート作成後1日後の結果(YI値(初期))と、蛍光灯照度が300Lux程度の居室に2週間置いた後の結果(YI値(2w))と、同条件下で4週間経過した後の結果(YI値(4w))である。
色調は、黄色度YIにより評価した。YIは、補助イルミナント Cを使用し、XYZ表色系を用いて、以下の数式により決定した。
YI=100(1.2769×X−1.0592×Z)/Y
試料シートB1〜B4と比較シートB0についてのモノマー系の測定結果を、図3の表3と、グラフ5に示した。また、試料シートB11〜B14と比較シートB10についてのポリマー系の測定結果を、図4の表4と、グラフ6に示した。
また、試料シートB1〜B4と比較シートB0について、及び試料シートB11〜B14と比較シートB10について、色差の測定を行った。
色差の測定は、XYZ色度図のカラースケールCIELAB(L*a*b*)
を用いて、具体的には、a*(レッド(+)/グリーン(−))とb*(イエロー(+)/ブルー(−))を測定した。評価の時期は、試料シートB1〜B4と比較シートB0、及び試料シートB11〜B14と比較シートB10ともに、YI値に同じである。
試料シートB1〜B4と比較シートB0についてのモノマー系の測定結果のうち、a*に関するものを図5の表5及びグラフ7に、b*に関するものを、同図の表6及びグラフ8にそれぞれ示した。また、試料シートB11〜B14と比較シートB10についてのポリマー系の測定結果のうち、a*に関するものを図6の表7及びグラフ9に、b*に関するものを、同図の表8及びグラフ10にそれぞれ示した。
グラフ5から判るように、VSAのスルホン酸基をNaOHで中和したモノマー系の試料シートB1〜B4は、かかる中和を行っていない比較シートB0に比較して、YI値(初期)は同等か減少傾向であり、2週間及び4週間後のYI値であるYI値(2w)とYI値(4w)は、NaOH/VSA=0.9以上であれば、比較シートB0に比較して改善されていた。
また、グラフ6から判るように、VSAのスルホン酸基をNaOHで中和したポリマー系の試料シートB11〜B14は、かかる中和を行っていない比較シートB10に比較して、YI値(初期)は同等か減少傾向であり、2週間及び4週間後のYI値であるYI値(2w)とYI値(4w)は、特にNaOH/VSA=0.1以上のときに、比較シートB0に比較して改善されていた。
グラフ7、8から判るように、VSAのスルホン酸基をNaOHで中和したモノマー系の試料シートB1〜B4は、かかる中和を行っていない比較シートB0に比較して、a*(初期)とb*(初期)とは同等か減少傾向であり、2週間及び4週間後のa*とb*の値であるa*(2w)とb*(2w)、及びa*(4w)とb*(4w)はともに、NaOH/VSA=0.9以上であれば、比較シートB0に比較して改善されていた。
グラフ9、10から判るように、VSAのスルホン酸基をNaOHで中和したポリマー系の試料シートB10〜B14は、かかる中和を行っていない比較シートB10に比較して、a*に関しては、a*(初期)、a*(2w)、a*(4w)ともに同等であったが、b*に関してはb*(初期)では、同等か優れており、且つb*(2w)及びb*(4w)に関しては、特にNaOH/VSA=1.0以上であれば、比較シートB10に比較して改善されていた。
<耐熱水性試験後の抗菌性>
試料シートB1〜B4(モノマー系)、試料シートB11〜B14(ポリマー系)及び比較シートB0(モノマー系)、B10(ポリマー系)の各々のシートを必要枚数(8枚程度)5cm角の試験片に切断し、2リットルのポリ容器に1.5リットル程度の蒸留水中に浸漬し、90℃の恒温槽で24時間静置した後、取り出して付着している水分を拭き取り、大腸菌の抗菌性を「JIS R 1752」に準拠して評価した。評価は、可視光を照射する明所と、照射しない暗所とで行った。明所において光源は白色蛍光灯を用い、UVカットフィルター(N−169)を用いてλ≧380nmとした可視光を試料シートの光触媒層の表面の照度が1000lxとなるようにして、照射することとした。明所、暗所のいずれの試験においても、1時間後、2時間後、及び4時間後にける抗菌性を大腸菌の活性値により評価した。
モノマー系の試料シートB1〜B4と比較シートB0とについての抗菌性の評価結果を、図7の表9及びグラフ11〜13に示した。
ポリマー系の試料シートB11〜B14と比較シートB10とについての抗菌性の評価結果を、図8の表10及びグラフ14〜16に示した。
グラフ11〜13に示されたように、モノマー系の試料シートB1〜B4は、明所、暗所のいずれの場合においても、1時間後の大腸菌の抗菌性では、比較シートB0に対してNaOHの添加効果が認められ、特にNaOH/VSA=1.1以上の場合でそれが明確であった。また、明所において2時間の結果では、比較シートB0に対する効果が明確でないが、暗所では明らかな添加効果が認められる。4時間後の結果でも同様の傾向である。
グラフ14〜16に示されたように、ポリマー系の試料シートB11〜B14は、明所、暗所とも、1時間後の大腸菌に対する抗菌性では、NaOH/VSA=1.1以上の場合では、比較シートB10に対してVSAの添加効果が認められる。ポリマー系では、明所と暗所の抗菌活性値の差が明確である。ポリマー系、明所での2時間後の結果では、VSAの添加効果が認められないが、暗所ではNaOHの添加効果が認められる。
<耐熱水性試験後の抗ウイルス性>
試料シートB1〜B4(モノマー系)、試料シートB11〜B14(ポリマー系)及び比較シートB0、比較シートB10の各々のシートを必要枚数(8枚程度)5cm角の試験片に切断し、それらを2リットルのポリ容器に1.5リットル程度の蒸留水中に浸漬し、90℃の恒温槽で24時間静置した後、取り出して付着している水分を拭き取り、抗ウイルス試験としての抗ファージ性試験を「JIS R 1756」に準拠して行った。評価は、可視光を照射する明所と、照射しない暗所とで行った。明所において光源は白色蛍光灯を用い、UVカットフィルター(N−169)を用いてλ≧380nmとした可視光を試料シートの光触媒層の表面の照度が1000lxとなるようにして照射した。明所、暗所のいずれの試験においても、1時間後、2時間後、及び4時間後における抗ウイルス性を、抗ファージ性の値により評価した。
モノマー系の試料シートB1〜B4と比較シートB0とについての抗ファージ性の評価結果を、図9の表11及びグラフ17〜19に示した。
ポリマー系の試料シートB11〜B14と比較シートB10とについての抗ファージ性の評価結果を、図10の表12及びグラフ20〜22に示した。
表11及び表12に示したように、モノマー系の試料シートB1〜B4、ポリマー系の試料シートB11〜B14の双方において、明所での抗ファージ性は全ての試験片で検出限界以上(活性値5.1以上)であり非常に高活性であり、NaOH添加の効果が明確であった。
モノマー系の試料シートB1〜B4、ポリマー系の試料シートB11〜B14の双方において、暗所での1時間後と2時間後の抗ファージ性は、NaOH/VSA=0.9までは活性値が初期値より若干低い傾向を示したが、NaOH/VSA=1.0以上では、初期値と同等か高活性となった。これはVSAのスルホン酸基の酸性がファージに与える影響とCuO/TiOの担持量がファージに与える影響の差によるものと思われる。
<耐熱水性試験後の抗菌性と抗ファージ性の考察>
本可視光型光触媒CuO/TiO(ルチル)は、暗所でも高い抗菌性や抗ファージ性を有するが、塗膜が褐色のため、VSAを添加してCuOと反応させると白色の塗膜を得る。この反応はスルホン酸基のHとCu++が置換してCH=CH−SO−OCu+ になるためであると推測している。しかしこの白色の塗膜を温水中に長時間浸漬すると酸性水溶液のためCuO/TiO(ルチル)の担持している塩基性金属酸化物CuOが溶出して、暗所での抗菌性、抗ファージ性の低下を来たす。
そこで、VSAで白色化した光触媒塗布液にNaOHを添加して、フリー(未反応)のスルホン酸基のHをNa+と置換すると、光触媒塗布液が中性近くなり、その塗膜は温水中に浸漬してもCuOの溶出が少なく、暗所での活性低下を抑制するものと考えている。
VSAで白色化した光触媒塗布液中には、(CH=CH−SO−O)Cu、CH=CH−SO−OH、HNO、HO、CHCHOH及びTiOなどが含まれていると考えられ、この溶液中にNaOH水溶液を添加すると、pKaが小さい酸(酸性度が強い酸)から優先的に中和されると考えられる。各酸成分のpKaは、CH=CH−SO−OH(−4.9)、HNO(−1.8)なので、VSAとNaOHの中和反応でCH=CH−SO−ONaとなる反応が優先する。フリーのVSAが全て中和されると、HNOとNaOHが反応し、NaNOとHOが生成する。更に過剰のNaOHが添加されると、(CH=CH−SO−O)CuとNaOHでCH=CH−SO−ONaとCu(OH)が生成する可能性もあり、これがNaOHの添加量の上限、ひいては上記式(3)M(OH)で表されるアルカリ金属の水酸化物、及び上記式(4)MClで表されるアルカリ金属の中性塩の添加量の上限が規定されるものと思われる。
<Naキャップ剤種類と抗菌性と耐温水性、モノマー系>
光触媒塗布液1にVSAを添加して室温で反応した光触媒塗布液4及び紫外線照射下で加熱して反応を促進して得た光触媒塗布液5それぞれに、NaOH又はNaClをこれまでに説明した方法で添加することでNaキャッピングを行い、それにより試料シートB21、B22(NaOH)及び試料シートB23、B24(NaCl)を作成した。それぞれのシートの黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する初期の抗菌性と、更に90℃×24時間の耐熱水性試験後の抗菌性を、Naキャッピングしていない比較シートB20とB20(2)との比較により、既に述べたのと同様の方法により評価した。
その結果を、図11の表13に示した。
なお、表13における「初期値」の欄に記載の値は、耐熱水性試験前の値であり、また、同「耐熱水性試験(90℃熱水×24hrs)後」の欄に記載の値は、上述の条件で耐熱水性試験を行った後、既に述べた条件で、可視光を照射する場合としない場合の試験を行った場合における試験開始後(1、2、4)時間後の値である。
初期の抗菌性において、Naキャッピング有無による抗菌性及びNaキャッピング剤の種類による抗菌性の差は認められなかった。
但し、各試料シートの経時的色調変化に関して言えば、キャッピングにNaClを用いた試料シートB23及び試料シートB24では、黄色化傾向にあった。この理由については、明確でないが、強酸のスルホン酸と反応させる成分が式(A)では、強塩基性のNaOHであり、式(B)では、中性塩のNaClのため、両成分の反応性はNaOH>NaClとみなせ、反応副生成物が式(A)ではHOで、式(B)では、HClのため、後者の場合に酸性が残るためであると、推定している。この点からキャッピングに用いるNaを提供するためのキャッピング剤としては、NaClよりNaOHの方が好ましいといえる。もっとも、Naキャッピングなしの場合、耐熱水性試験後の大腸菌の明所における抗菌性は、若干の低下で留まったが、暗所での抗菌性はかなり低下した。一方、Naキャッピング有りの場合、明所での抗菌性は劣化が認められず、暗所での抗菌性はわずかの低下で収まった。耐熱水性試験後の暗所・抗菌性に関していえば、Naキャッピング剤がNaClであろうとNaOHであろうと、それらの種類による差は大きくないので、上述の黄色化傾向がさほど問題とならず抗菌性が重視されるような用途であれば、これらキャッピング剤のいずれを用いたとしても大差はないであろう。
<Naキャッピング剤の添加量上限、ポリマー系>
ポリマー系光触媒塗布液6(試料液A30)にNaOHをこれまで説明したのと同様の方法で添加し、NaOH/VSAが、1.0と3.0となる試料シートB31(1.0倍)及び試料シートB32(3.0倍)を作成した。
それらと、NaOHキャッピングを行っていない比較シートB30とについて、「<Naキャップ剤種類と抗菌性と耐温水性、モノマー系>」で行ったのと同等の試験を行った。ただし、この試験では、黄色ブドウ球菌についての試験は省略している。
耐熱水性試験前後の大腸菌に対する抗菌性を、比較シートB30との対比により評価し、その結果を、上述の図11の表13に示した。
Naキャッピングなしの比較シートB30の場合、大腸菌の暗所での抗菌性の劣化は大きいが、Naキャッピング有りの場合は、活性の低下が抑制された。Naキャッピングの効果は、NaOH/VSA=3.0の方がNaOH/VSA=1.0より添加効果が大であった。ただし、NaOH/VSA=3.0の場合、試料液A32の粘度がかなり増加しており、塗工の工程を考えると、これが許容できる粘度の上限と思われたため、これがNaOH/VSAの許容できる上限であると思われた。
<皮膚一次刺激性試験>
ウサギを用いる皮膚一次刺激性試験を日本食品分析センターで行った。
評価した検体は、試料シートB3と試料シートB13であり、いずれの試料シートも「無刺激性」の評価であった。試料シートB3はモノマー系であり、塗布液の試料液A3のpHは4.4でNaOH/VSA=1.1であり、試料シートB13は、ポリマー系であり、塗布液の試料液A13のpHは、4.3でNaOH/VSA=1.1である。
試料液A3は、光触媒塗布液1にVSAを添加し、更に、未反応のVSAをNaOHで中和したものである。光触媒塗布液1のpHは、3.0程度であるので、NaOH/VSA=1.1のNaOHを添加した後の試料液A3のpHが、4.4である。試料液A3では、刺激性の強い未反応のVSAは全て中和され、更に光触媒塗布液1中の硝酸の一部も中和されていると看做せる。
参考までに、以上で説明した各試料液の性状及び生成方法と、各試料液と試料シート又は比較シートとの対応関係を示す表を、図12として示す。

Claims (11)

  1. 固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む酸化チタン含有組成物であって、
    前記固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(1)
    −SOOH (1)
    (式中、Rは置換基を有することのあるC1〜10のアルキル基、置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルキル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基、又は置換基を有することのあるC6〜10アリール基を示す。)
    で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物と、
    前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
    M(OH) (3)
    (アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
    MCl (4)
    (アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)と、
    を含んでなる酸化チタン含有組成物。
  2. 前記式(1)で表されるスルホン酸が、ビニルスルホン酸又はメタンスルホン酸である、
    請求項1記載の酸化チタン含有組成物。
  3. 前記酸化チタン化合物が、酸化チタンに占めるルチル型酸化チタンのモル比が50%以上のものとなっている、
    請求項1又は2記載の酸化チタン含有組成物。
  4. 前記式(1)で表されるスルホン酸の一部が式(2)
    −SO OH (2)
    (式中R は置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基を示す。)
    で表されるスルホン酸であり、
    バインダーと、式(2)で表されるスルホン酸との反応物を、前記バインダー中に含む、
    請求項1又は2に記載の酸化チタン含有組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の酸化チタン含有組成物であって、
    その用途が抗菌又は抗ウイルス剤である、
    酸化チタン含有組成物。
  6. 固形分として、酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーを含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含み、且つ前記固形分に対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(1)
    −SOOH (1)
    (式中、Rは置換基を有することのあるC1〜10のアルキル基、置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルキル基、置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基、又は置換基を有することのあるC6〜10アリール基を示す。)
    で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物を含んでなる酸化チタン含有中間組成物に、
    前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
    M(OH) (3)
    (アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
    MCl (4)
    (アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)を添加し、攪拌混合することによって酸化チタン含有組成物を得る、
    酸化チタン含有組成物の製造方法。
  7. バインダーに式(2)
    −SOOH (2)
    (式中、Rは置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基を示す。)
    で表されるスルホン酸を添加して反応させることによって得た反応物を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、
    前記反応物が添加された前記懸濁液を攪拌混合することによって、固形分としての酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーに対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(2)で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物を含んでなる酸化チタン含有中間組成物に、
    前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
    M(OH) (3)
    (アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
    MCl (4)
    (アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)を添加し、攪拌混合することによって酸化チタン含有組成物を得る、
    酸化チタン含有組成物の製造方法。
  8. バインダーに、式(2)
    −SOOH (2)
    (式中、Rは置換基を有することのあるC2〜10のアルケニル基、又は置換基を有することのあるC3〜10のシクロアルケニル基を示す。)
    で表されるスルホン酸を添加して反応させることによって得た反応物に、更に式(5)
    R−C(=O)−NR (5)
    (式中R、Rは、同一又は異なる水素原子又は低級アルキル基を表す。)
    で表されるアミド化合物を、前記スルホン酸に対するモル比で0.4〜2.5倍モルの量添加し、
    紫外線照射下で、前記反応物中の未反応のスルホン酸を重合させることにより得たその反応物を、酸化チタン化合物、及び2価の酸化銅を含むとともに、それらを懸濁させる溶剤を含む懸濁液に添加し、
    前記懸濁液を攪拌混合することによって、固形分としての酸化チタン化合物、2価の酸化銅、及びバインダーに対して、0.5〜25質量%に相当する量の式(2)で表されるスルホン酸と前記2価の酸化銅の少なくとも一部の反応物を含んでなる酸化チタン含有中間組成物に、
    前記スルホン酸に対するモル比で0.9〜3.0倍モルの式(3)
    M(OH) (3)
    (アルカリ金属の水酸化物で、式中MはNa又はKを示す)又は式(4)
    MCl (4)
    (アルカリ金属の中性塩(塩化物)で、式中MはNa又はKを示す)を添加し、攪拌混合することによって前記スルホン酸のHを前記アルカリ金属(M)で置換した酸化チタン含有組成物を得る、
    酸化チタン含有組成物の製造方法。
  9. 前記式(1)で表されるスルホン酸がビニルスルホン酸又はメタンスルホン酸である、
    請求項記載の酸化チタン含有組成物の製造方法。
  10. 前記酸化チタン化合物が、酸化チタンに占めるルチル型酸化チタンのモル比が50%以上のものとなっている、
    請求項6〜9のいずれかに記載の酸化チタン含有組成物の製造方法。
  11. 基材と、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化チタン含有組成物を用いて形成された光触媒層とを有している、
    光触媒構造体。
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