JP6652161B2 - 梁接合構造及び梁接合構造の回転剛性算出方法 - Google Patents

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本発明は、梁接合構造及び梁接合構造の回転剛性算出方法に関する。
従来、小梁(梁)の端部を大梁(支持部材)に接合した梁接合構造における小梁と大梁との接合部は、一般的に剛接合(例えば、特許文献1から4参照)又はピン接合(例えば、非特許文献1及び2参照)として設計される。
剛接合の接合部では、例えば、小梁のフランジは大梁に溶接又はボルトを用いて接合(以下、ボルト接合と呼ぶ)されるとともに、小梁のウェブは大梁に設けたシアプレートにボルト接合される。一方で、ピン接合の接合部では、例えば、小梁のウェブは大梁に設けたシアプレートにボルト接合されるが、小梁のフランジは大梁に接合されない。
一方で、鉄骨造の梁の上にRC(Reinforced Concrete)スラブ又はデッキ合成スラブ等の伝達部材を設けた合成梁が知られている。コンクリートは、圧縮耐力(剛性)よりも引張耐力の方が小さい。このため、合成梁は、下方に向かって凸となる正曲げの曲げ耐力(以下、正曲げ耐力と呼ぶ)に比べて、上方に向かって凸となる負曲げの曲げ耐力(以下、負曲げ耐力と呼ぶ)の方が小さい。
図16の(a)ピン接合の列に示すように、長さlの梁101が、荷重条件として、下向きにwの等分布荷重を受けているとともに、両端部が支承102等によりピン接合されているとする。この場合、公知の梁理論により、モーメント図に示すように、梁101の端における曲げモーメントMは0になる。梁101の中央における曲げモーメントMは、(wl/8)の式による値になる。
たわみの図に示すように、梁101のヤング係数をE、梁101の断面二次モーメントをIとする。この場合、梁101の中央におけるたわみδは、{5wl/(384EI)}の式による値になる。
梁101の両端部がピン接合されている場合には、梁101には正曲げだけが発生し、負曲げは発生しない。梁101に発生する曲げモーメントの中で、梁101の中央における正曲げの曲げモーメントの絶対値が最大になり、梁101の中央が損傷しやすくなる。
図16の(b)剛接合の列に示すように、梁101は、両端部が壁103等により剛接合されているとする。この場合、モーメント図に示すように、梁101の中央部に正曲げが発生し、梁101の両端部に負曲げが発生する。梁101の中央における正曲げの曲げモーメントの絶対値が、(M/3)の式による値になる。梁101の両端における負曲げの曲げモーメントの絶対値は、(2M/3)の式による値になる。梁101の中央におけるたわみは、たわみの図に示すように(δ/5)の式による値になる。
以上のことから、梁に発生する曲げモーメントの絶対値の最大値を抑えられる梁の端部の接合の仕方が、剛接合とピン接合との間にあると考えられる。
特開2002−285642号公報 特開2009−052302号公報 特開2015−68005号公報 特開2015−68001号公報
西本信哉、外4名、「鉄骨小梁端高力ボルト接合部の回転剛性とすべり耐力 その1 実験概要」、日本建築学会大会学術講演梗概集、2010年9月、p.703-704 安田聡、外4名、「鉄骨小梁端高力ボルト接合部の回転剛性とすべり耐力 その2 解析的検討」、日本建築学会大会学術講演梗概集、2010年9月、p.705-706
しかしながら、合成梁を備える梁接合構造は、損傷しやすい負曲げの曲げ耐力を考慮して、合成梁に発生する曲げモーメントの絶対値の最大値を抑えるように合成梁の端部の接合を調整されていない。
また、合成梁の端部の損傷を評価する際に、合成梁の端における回転剛性を算出することが有効である。しかしながら、合成梁の端の回転剛性を精度良く算出することは容易ではない。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、第1課題は、梁の端部が負曲げされても梁の端部が損傷するのを抑制した梁接合構造を提供することである。第2課題は、合成梁の端部が負曲げされても合成梁の端部が損傷するのを抑制した梁接合構造を提供することである。そして、第3課題は、梁接合構造に用いられる梁の端の回転剛性を精度良く算出できる梁接合構造の回転剛性算出方法を提供することである。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1) 本発明の梁接合構造は、シアプレートが設けられた支持部材と;ウェブとフランジとを有し、前記シアプレートから延びるように配置された梁と;前記梁の前記ウェブの端部と前記シアプレートとを摩擦接合するボルトと;前記梁の前記フランジに設けられ、前記梁に作用する曲げモーメントを前記支持部材に伝達する伝達部材と;を備える梁接合構造において、前記梁の材軸方向の端に発生する曲げモーメントの絶対値と前記梁の前記材軸方向の中央に発生する曲げモーメントの絶対値とが同等になる梁接合構造を第1基準構造としたときに、前記梁接合構造の前記梁の端の回転剛性は、前記第1基準構造の前記梁の端の回転剛性である回転剛性上限値以下であり、前記梁の長さをl(mm)、前記梁の正曲げ剛性をEI (Nmm )、及び、前記梁の負曲げ剛性をEI (Nmm )としたときに、前記回転剛性上限値K u,lim (Nmm/rad)は(1)式を満たすことを特徴としている。
Figure 0006652161
この発明によれば、例えば伝達部材がコンクリートを有する場合には、コンクリートでは圧縮耐力よりも引張耐力の方が小さいため、梁は正曲げ耐力よりも負曲げ耐力の方が小さくなる。このため、正曲げが発生する梁の中央よりも負曲げが発生する梁の端の方が損傷しやすくなる。梁の端の回転剛性を回転剛性上限値以下にすることで、梁の端に発生する曲げモーメントが梁の中央に発生する曲げモーメント以下になり、梁の端部が負曲げされても梁の端部が損傷するのを抑制することができる。
また、梁の正曲げ剛性及び負曲げ剛性を考慮して梁の端部の損傷を定量的に評価し、一般的に梁の中央よりも耐力の小さい梁の端部が損傷するのを抑制することができる。
(2) 上記(1)に記載の梁接合構造において、前記梁接合構造に対して、前記梁の端における負曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、前記梁の中央における正曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、が同等になる梁接合構造を第2基準構造としたときに、前記梁接合構造の前記梁の端の回転剛性は、前記第2基準構造の前記梁の端の回転剛性である回転剛性下限値以上であってもよい。
この発明によれば、梁の端部における支持部材との接合部に一定以上の回転剛性を付与することで、梁の中央のたわみを抑制することができる。
(3) 上記(2)に記載の梁接合構造において、前記梁の長さをl(mm)、前記梁の正曲げ剛性をEI (Nmm )、前記梁の負曲げ剛性をEI (Nmm )、前記梁の正曲げ耐力を (Nmm)、及び、前記梁の負曲げ耐力を (Nmm)としたときに、前記回転剛性下限値K l,lim (Nmm/rad)は(2)式を満たしてもよい。
Figure 0006652161
この発明によれば、曲げモーメントの余裕度を定量的に評価し、梁の端部が損傷するのをより確実に抑制することができる。
(4) 本発明の他の梁接合構造は、シアプレートが設けられた支持部材と;ウェブとフランジとを有し、前記シアプレートから延びるように配置された梁と;前記梁の前記ウェブの端部と前記シアプレートとを摩擦接合するボルトと;前記梁の前記フランジに設けられ、前記梁に作用する曲げモーメントを前記支持部材に伝達する伝達部材と;を備える梁接合構造において、前記梁及び前記伝達部材を備える合成梁について、前記合成梁の材軸方向の端に発生する曲げモーメントの絶対値と前記合成梁の前記材軸方向の中央に発生する曲げモーメントの絶対値とが同等になる梁接合構造を第1基準構造としたときに、前記梁接合構造の前記合成梁の端の回転剛性は、前記第1基準構造の前記合成梁の端の回転剛性である回転剛性上限値以下であり、前記梁の長さをl(mm)、前記合成梁の正曲げ剛性をEI (Nmm )、及び、前記合成梁の負曲げ剛性をEI (Nmm )としたときに、前記回転剛性上限値K u,lim (Nmm/rad)は前記(1)式を満たすことを特徴としている。
この発明によれば、例えば伝達部材がコンクリートを有する場合には、コンクリートでは圧縮耐力よりも引張耐力の方が小さいため、合成梁は正曲げ耐力よりも負曲げ耐力の方が小さくなる。このため、正曲げが発生する合成梁の中央よりも負曲げが発生する合成梁の端の方が損傷しやすくなる。合成梁の端の回転剛性を回転剛性上限値以下にすることで、合成梁の端に発生する曲げモーメントが合成梁の中央に発生する曲げモーメント以下になり、合成梁の端部が負曲げされても合成梁の端部が損傷するのを抑制することができる。
(5) 上記(4)に記載の梁接合構造において、前記梁接合構造に対して、前記合成梁の端における負曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、前記合成梁の中央における正曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、が同等になる梁接合構造を第2基準構造としたときに、前記梁接合構造の前記合成梁の端の回転剛性は、前記第2基準構造の前記合成梁の端の回転剛性である回転剛性下限値以上であってもよい。
(6) 上記(5)に記載の梁接合構造において、前記梁の長さをl(mm)、前記合成梁の正曲げ剛性をEI (Nmm )、前記合成梁の負曲げ剛性をEI (Nmm )、前記合成梁の正曲げ耐力を (Nmm)、及び、前記合成梁の負曲げ耐力を (Nmm)としたときに、前記回転剛性下限値K l,lim (Nmm/rad)は前記(2)式を満たしてもよい。
(7) 上記(1)から(6)のいずれかに記載の梁接合構造において、前記伝達部材はコンクリートを有してもよい。
この発明によれば、伝達部材の圧縮耐力を大きくすることができる。
(8) 本発明の梁接合構造の回転剛性算出方法は、上記(1)から(7)のいずれかに記載の梁接合構造の前記梁の端における回転剛性を算出する梁接合構造の回転剛性算出方法であって、前記伝達部材は、コンクリートと;前記コンクリート内に配置され、前記材軸方向に延びるとともに前記ウェブの幅方向に並べて配置されたn層の鉄筋と;を有し、前記ボルトは、前記シアプレートに形成されたプレート貫通孔、及び前記梁の前記ウェブに形成されたウェブ貫通孔にそれぞれ挿入され、前記シアプレート及び前記ウェブを、前記プレート貫通孔の軸を境界として、前記幅方向に前記プレート貫通孔の数Nに1を加えた数の領域に分け;1から(N+1)までの値をとる自然数iに対して、前記幅方向における前記梁の中立軸と前記幅方向の一方からi番目の前記領域である第i領域の中心との距離をxs,i(mm)、前記第i領域の軸剛性をks,i(N/mm)とし;1からnまでの値をとる自然数hに対して、前記幅方向における前記中立軸と前記幅方向の一方からh層目の前記鉄筋である第h鉄筋の軸線との距離をxr,h(mm)、前記第h鉄筋の軸剛性をkr,h(N/mm)としたときに、前記梁の端の回転剛性K(Nmm/rad)を(3)式により算出することを特徴としている。
Figure 0006652161
この発明によれば、シアプレートと梁との接合部を、鉄筋の軸剛性及び領域の軸剛性でモデル化して、梁の端の回転剛性Kを精度良く算出することができる。
(9) 上記(8)に記載の梁接合構造の回転剛性算出方法において、前記シアプレート及び前記ウェブのせん断弾性係数をG(N/mm)、前記第i領域における前記ボルトの摩擦が有効な前記材軸方向の長さをb(mm)、前記第i領域の有効厚さをt(mm)、前記第i領域の前記幅方向の有効長さをh(mm)としたときに、前記第i領域の軸剛性ks,iを(4)式により算出してもよい。
Figure 0006652161
この発明によれば、第i領域の軸剛性ks,iを、せん断変形するシアプレート及びウェブでモデル化するとともに有効長さb、h、及び有効厚さt等を考慮して、梁の端の回転剛性Kをより精度良く算出することができる。
本発明の梁接合構造によれば、梁の端部が負曲げされても梁の端部が損傷するのを抑制することができる。また、本発明の他の梁接合構造によれば、合成梁の端部が負曲げされても合成梁の端部が損傷するのを抑制することができる。そして、本発明の梁接合構造の回転剛性算出方法によれば、梁接合構造に用いられる梁の端の回転剛性を精度良く算出することができる。
梁接合構造に用いられる合成梁の端の回転剛性を精度良く算出することができる。
本発明の第1実施形態の梁接合構造が用いられる建築物の一部を透過した斜視図である。 同梁接合構造の要部を側面視した断面図である。 図2中のIII−III線に相当する断面図である。 合成梁が等分布荷重を受ける場合について、(a)は合成梁をモデル化した図であり、(b)は合成梁の正曲げ及び負曲げの範囲を示す図である。 合成梁がスパンを3分割する2点に集中荷重を受ける場合について、(a)は合成梁をモデル化した図であり、(b)は合成梁の正曲げ及び負曲げの範囲を示す図である。 合成梁が中央1点に集中荷重を受ける場合について、(a)は合成梁をモデル化した図であり、(b)は合成梁の正曲げ及び負曲げの範囲を示す図である。 合成梁の端の回転剛性に対する合成梁の端及び中央に発生する曲げモーメントの絶対値の変化を示す図である。 合成梁の端の回転剛性に対する端曲げ応力度比及び中央曲げ応力度比の変化を示す図である。 同梁接合構造の各領域と距離を説明するための図である。 同梁接合構造の1つの領域の寸法等を説明するための斜視図である。 同梁接合構造の軸ばね及びせん断ばねのばね剛性を説明するための図である。 床スラブを備えない梁接合構造における領域と距離を説明するための図である。 床スラブを備えない梁接合構造におけるせん断ばねのばね剛性を説明するための図である。 実験結果の回転剛性と算出した回転剛性との関係を示す図である。 本発明の変形例の実施形態における梁接合構造の要部の側面図である。 従来の梁の端部の接合の違いによるモーメント及びたわみの変化を説明する図である。
〔1.梁接合構造の構成〕
以下、本発明に係る梁接合構造の一実施形態を、図1から図15を参照しながら説明する。図1に示す建築物1には、本実施形態の梁接合構造2が用いられている。この建築物1は、上下方向に沿って延び、第1シアプレート14が設けられた複数本の柱11と、柱11間に掛け渡され、第2シアプレート(シアプレート)25が設けられた大梁(支持部材)21と、大梁21間に掛け渡された小梁(梁)31と、小梁31の小ウェブ(ウェブ)32の端部と第2シアプレート25とを摩擦接合する高力ボルト(ボルト)41と、小梁31の小フランジ(フランジ)33に接合された床スラブ(伝達部材)51と、を備えている。
なお、図1では、柱11が1本のみ、及び後述する複数本の縦鉄筋53のうちの一部のみが示されるとともに、床スラブ51において複数本の縦鉄筋53以外が透過されて示されている。
梁接合構造2において、小梁31及び床スラブ51は、合成梁61を構成する。
この例では、柱11はCFT(Concrete Filled steel Tube)造である。すなわち、柱11は、コンクリート13が鋼管12で囲まれて構成されている。鋼管12には、前述の第1シアプレート14が溶接等により固定されている。
以下では、建築物1が備える複数本の大梁21のうちの1本の大梁21と、この1本の大梁21に高力ボルト41により端部が接合された小梁31と、小梁31に接合された床スラブ51に着目して説明する。これら大梁21、小梁31、高力ボルト41、及び床スラブ51は、梁接合構造2を構成する。
なお、大梁21を挟んでこの小梁31に対向するように配置された小梁31を、小梁31Aとも呼ぶ。
図2及び図3に示すように、例えば、大梁21にはH形鋼が用いられている。大梁21は、大ウェブ22の上方、下方に大フランジ23、大フランジ24がそれぞれ位置するとともに、水平面に沿って延びるように配置されている。以下では、大梁21の長手方向を第1方向Yと呼ぶ。
なお、図3中には、一部を拡大した図も示す。
前述の第2シアプレート(せん断部材)25は、大梁21に溶接等により固定されている。第2シアプレート25は、大梁21から、水平面に沿うとともに第1方向Yに直交する第2方向X(小梁31の材軸方向)に向かって突出している。第2シアプレート25には、複数のプレート貫通孔25aが上下方向に沿って互に間隔を空けて並べて形成されている。複数のプレート貫通孔25aは、等間隔に配置されている。各プレート貫通孔25aは、第2シアプレート25を第1方向Yに貫通している。第2シアプレート25には、上下方向に沿って複数行のプレート貫通孔25aが形成されるとともに、第2方向Xに沿って1列のプレート貫通孔25aが形成されている。
大梁21の端部は、柱11の第1シアプレート14に、符号を省略したボルトや溶接等により接合されている。
例えば、小梁31にはH形鋼が用いられている。すなわち、小梁31は、小ウェブ(ウェブ)32、及び小ウェブ32の幅方向に小ウェブ32を挟むように接合された小フランジ(フランジ)33及び小フランジ34を有している。なお、本実施形態では、小ウェブ32の幅方向は上下方向となる。
小梁31は、小ウェブ32の上方、下方に小フランジ33、小フランジ34がそれぞれ位置するとともに、第2方向Xに沿って延びるように配置されている。小梁31は、第2シアプレート25から水平面に沿って延びるように配置されている。なお、小梁31及び第2シアプレート25は、第2方向Xに沿って延びるように配置されていなく、第2方向Xに対して傾いていてもよい。
小ウェブ32の第2方向Xの端部(以下、単に小ウェブ32の端部とも言う)には、複数のウェブ貫通孔32aが形成されている。複数のウェブ貫通孔32aは、上下方向に沿って互いに間隔を空けて並べて形成されている。複数のウェブ貫通孔32aは、等間隔に配置されている。各ウェブ貫通孔32aは、プレート貫通孔25aに連通している。
高力ボルト41は、棒状の軸部42と、軸部42の第1端部に設けられた頭部43と、を有する。頭部43は、軸部42よりも外径が大きい。高力ボルト41の軸部42は、第2シアプレート25のプレート貫通孔25a、及び小梁31のウェブ貫通孔32aにそれぞれ挿入されている。頭部43の外径は、プレート貫通孔25aの内径、及びウェブ貫通孔32aの内径よりもそれぞれ大きい。
高力ボルト41の軸部42の第2端部は、ワッシャ44に挿入されるとともに、ナット45に嵌め合わせられている。高力ボルト41の頭部43寄りの軸部42も、ワッシャ44に挿入されている。高力ボルト41の頭部43及びナット45は、一対のワッシャ44を介して第2シアプレート25及び小梁31の小ウェブ32を第1方向Yに挟み込んでいる。
高力ボルト41は、第2シアプレート25のプレート貫通孔25a、及び小ウェブ32のウェブ貫通孔32aに対応して、上下方向に沿って複数行配置されるとともに、第2方向Xに沿って1列配置されている。
なお、高力ボルト41がトルシア型の場合には、ワッシャ44はナット45側の1枚だけでよい。
このように、第2シアプレート25及び小梁31の小ウェブ32は、高力ボルト41で接合されている。しかし、小梁31の小フランジ34と大梁21及び第2シアプレート25とは、直接接合されていない。
床スラブ51は、複数本のスタッド52と、複数本の縦鉄筋(鉄筋)53と、コンクリート54と、を有している。
複数本のスタッド52は、小フランジ33の上面に固定されている。複数本のスタッド52は、第2方向Xに互いに間隔を空けて配置されている。複数本の縦鉄筋53は、第2方向Xに沿って延びるとともに第1方向Yに互いに間隔を空けて配置されている。複数本の縦鉄筋53のうち、同一の水平面内に配置されているものをまとめて第1層の縦鉄筋53、第2層の縦鉄筋53等と数えるとする。複数本の縦鉄筋53は、1層を構成してもよいし、上下方向に互いに間隔を空けて複数層を構成していてもよい。複数本のスタッド52及び複数本の縦鉄筋53は、コンクリート54内に配置されている。
床スラブ51は、小梁31の小フランジ33に接合されている。床スラブ51は、小梁31に作用する曲げモーメントを大梁21及び小梁31Aに伝達する。
なお、コンクリート54内には、第1方向Yに沿って延びる複数本の横鉄筋が配置されていてもよい。複数本の横鉄筋は、第2方向Xに互いに間隔を空けて配置される。
コンクリート54は、第1方向Y及び第2方向Xに沿ってそれぞれ延びる板状に形成されている。
〔2.合成梁の端の回転剛性〕
〔2.1.回転剛性と合成梁の端の回転角との関係〕
小梁31は、長さがl(mm)であるとする。合成梁61は、正曲げ剛性がEI(Nmm)、負曲げ剛性がEI(Nmm)であるとする。合成梁61で一般的な荷重条件を想定し、下記の(i)から(iii)の3つのケースを対象にする。
(i)合成梁61が等分布荷重w(N/mm)を受ける場合
(ii)合成梁61が、小梁31のスパンを3分割する2点に集中荷重P(N)を受ける場合
(iii)合成梁61が、小梁31の中央1点に集中荷重P(N)を受ける場合
以下では、(i)から(iii)の各ケースにおいて、合成梁61の第2方向Xの端の回転剛性K(Nmm/rad)と合成梁61の端の回転角θ(rad)との関係を定式化する。ただし、回転角θは、時計回りを正とする。
〔2.1.1.合成梁が等分布荷重を受ける場合〕
図4(a)に示すように合成梁61をモデル化する。座標xは、合成梁61(小梁31)に沿って規定される。合成梁61が全長にわたり下向きに等分布荷重w(N/mm)を受けるとする。
なお、以下で説明する回転剛性、曲げモーメント、曲げ耐力等は、特に指定が無い場合には第1方向Yに沿う軸線周りの値である。
合成梁61の端の(合成梁61の端に発生する)曲げモーメントの絶対値M(Nmm)は、(11)式で表される。
Figure 0006652161
合成梁61の方向xの曲げモーメントM(Nmm)は、下方の小フランジ34に引張力が作用するときの曲げモーメントを正とすると、力の釣り合い条件から(12)式で表される。
Figure 0006652161
合成梁61の曲率φ(rad/mm)は、曲げモーメントMと合成梁61の曲げ剛性EI(Nmm)を用いて表せる。合成梁61は、正曲げと負曲げとで曲げ剛性が異なる。図4(b)に示すように、座標xが(l<x<l)の範囲で曲げモーメントが正になり合成梁61が正曲げ、(0≦x≦l,l≦x≦l)の範囲で曲げモーメントが負になり合成梁61が負曲げとする。前述の正曲げ剛性EI及び負曲げ剛性EIを用いて、曲率φは、合成梁61が正曲げ、負曲げの領域に分けて座標xの範囲に応じて(13)式及び(14)式で表される。
例えば、座標xがl以上l以下のときに、曲率φは(13)式で表され、座標xが0以上l以下、及びl以上l以下のときに、曲率φは(14)式で表される。座標xがl及びlのときには、(13)式及び(14)式のどちらを用いてもよい。
Figure 0006652161
(12)式の値が0となる時のxの値が、l,lである。したがって、(12)式の値を0とした式を解いて、l,lは(15)式及び(16)式のようになる。
Figure 0006652161
次に、合成梁61の回転角θ(rad)の分布θ(x)は、(13)式及び(14)式の曲率φをxで積分すると、(17)式を用いて(18)式から(20)式のように表される。このとき、x=0における境界条件である、θ(0)=θの式を考慮する。
Figure 0006652161
次に、合成梁61のたわみδ(mm)の分布δ(x)は、(18)式から(20)式の回転角θをxで積分して、(17)式、(21)式及び(22)式を用いて(23)式から(25)式のように表される。このとき、x=0における境界条件である、δ(0)=0を考慮する。
Figure 0006652161
以上で求めた式は、曲げモーメントの絶対値M、及び合成梁61の端の回転角θを含む。このままでは、任意の合成梁61の端の回転剛性Kの値に対して、曲げモーメントの絶対値M、及び合成梁61の端の回転角θの値が一義的に決まらない。
ここで、さらにx=l/2における変形の適合条件であるθ(l/2)=0の式を用いると、(11)式及び(19)式から、回転剛性Kと合成梁61の端の回転角θとの関係が(26)式で表される。
Figure 0006652161
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(19)式において、EI=EI=EIとおく。さらに、合成梁61の変形の適合条件から、x=l/2においてθ(l/2)=0であることを用いると、回転剛性Kと合成梁61の端の回転角θとの関係が(27)式で表される。
Figure 0006652161
〔2.1.2.合成梁がスパンを3分割する2点に集中荷重を受ける場合〕
図5(a)に示すように合成梁61をモデル化する。合成梁61は、合成梁61の長さlを3分割する、座標xが(l/3)、(2l/3)の2点に下向きに集中荷重Pを受けるとする。この場合、合成梁61の端の曲げモーメントの絶対値Mは、前述の(11)式で表される。
合成梁61の方向xの曲げモーメントM(Nmm)は、小梁31の下方の小フランジ34に引張力が作用するときの曲げモーメントを正とすると、力の釣り合い条件から(31)式から(33)式で表される。
Figure 0006652161
図5(b)に示すように、座標xが(l<x<l)の範囲で曲げモーメントが正になり、合成梁61が正曲げになる。座標xが(0≦x≦l,l≦x≦l)の範囲で曲げモーメントが負になり、合成梁61が負曲げになる。
曲率φは、前述の正曲げ剛性EI及び負曲げ剛性EIを用いて、合成梁61が正曲げ、負曲げの領域、及びモーメントが不連続な領域に分けて(34)式から(38)式で表される。
Figure 0006652161
(31)式、(33)式の値が0となる時のxの値が、l,lである。したがって、(31)式、(33)式の値を0とした式を解いて、l,lは(39)式及び(40)式のようになる。
Figure 0006652161
次に、合成梁61の回転角θの分布θ(x)は、(34)式から(38)式の曲率φをxで積分すると、(41)式及び(42)式を用いて(43)式から(47)式のように表される。このとき、x=0における境界条件である、θ(0)=θの式を考慮する。
Figure 0006652161
以上で求めた式は、曲げモーメントの絶対値M、及び合成梁61の端の回転角θを含む。このままでは、任意の合成梁61の端の回転剛性Kの値に対して、曲げモーメントの絶対値M、及び合成梁61の端の回転角θの値が一義的に決まらない。
ここで、さらにx=l/2における変形の適合条件であるθ(l/2)=0の式を用いると、(11)式及び(45)式から、回転剛性Kと合成梁61の端の回転角θとの関係が(48)式で表される。
Figure 0006652161
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(45)式において、EI=EI=EIとおく。さらに、合成梁61の変形の適合条件から、x=l/2においてθ(l/2)=0であることを用いると、回転剛性Kと合成梁61の端の回転角θとの関係が(49)式で表される。
Figure 0006652161
〔2.1.3.合成梁が中央1点に集中荷重を受ける場合〕
図6(a)に示すように合成梁61をモデル化する。合成梁61は、合成梁61の長さlの中央である、座標xが(l/2)の1点に下向きに集中荷重Pを受けるとする。この場合、合成梁61の端の曲げモーメントの絶対値Mは、前述の(11)式で表される。
合成梁61の方向xの曲げモーメントM(Nmm)は、小梁31の下方の小フランジ34に引張力が作用するときの曲げモーメントを正とすると、力の釣り合い条件から(56)式及び(57)式で表される。
Figure 0006652161
図6(b)に示すように、座標xが(l<x<l)の範囲で曲げモーメントが正になり、合成梁61が正曲げになる。座標xが(0≦x≦l,l≦x≦l)の範囲で曲げモーメントが負になり、合成梁61が負曲げになる。
曲率φは、前述の正曲げ剛性EI及び負曲げ剛性EIを用いて、合成梁61が正曲げ、負曲げの領域、及びモーメントが不連続な領域に分けて(58)式から(61)式で表される。
Figure 0006652161
(56)式、(57)式の値が0となる時のxの値が、それぞれl,lである。したがって、(56)式、(57)式の値を0とした式を解いて、l,lは(62)式及び(63)式のようになる。
Figure 0006652161
次に、合成梁61の回転角θの分布θ(x)は、(58)式から(61)式の曲率φをxで積分すると、(64)式を用いて(65)式から(68)式のように表される。このとき、x=0における境界条件であるθ(0)=θの式と、x=l/2における対称性と、を考慮する。
Figure 0006652161
以上で求めた式は、曲げモーメントの絶対値M、及び合成梁61の端の回転角θを含む。このままでは、任意の合成梁61の端の回転剛性Kの値に対して、曲げモーメントの絶対値M、及び合成梁61の端の回転角θの値が一義的に決まらない。
ここで、さらにx=l/2における変形の適合条件であるθ(l/2)=0の式を用いると、(11)式及び(66)式から、回転剛性Kと合成梁61の端の回転角θとの関係が(69)式で表される。
Figure 0006652161
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(66)式において、EI=EI=EIとおく。さらに、合成梁61の変形の適合条件から、x=l/2においてθ(l/2)=0であることを用いると、回転剛性Kと合成梁61の端の回転角θとの関係が(70)式で表される。
Figure 0006652161
〔2.2.合成梁の端の最適な回転剛性の上限値〕
本実施形態の梁接合構造2に対して、合成梁61の回転剛性については、合成梁61の端の回転剛性K以外は同一であり、合成梁61の端に発生する曲げモーメントの絶対値と合成梁61の中央に発生する曲げモーメントとの絶対値が一致する梁接合構造を第1基準構造とする。
ここで、「梁接合構造2に対して、合成梁61の回転剛性については、合成梁61の端の回転剛性K以外は同一」であるとは、梁接合構造2によって支持された合成梁61と第1基準構造によって支持された合成梁は互いに曲げ剛性及び材軸方向の長さが同じであり、合成梁の端の接合部の回転剛性だけが相互に異なることを意味する。具体的には、前記合成梁の端の位置において、例えば、伝達部材として床スラブ51の内部に設けられた縦鉄筋53の本数等が異なる、高力ボルト41の数や当該高力ボルト41が挿入される貫通孔の配置が異なる、第2シアプレート25の板厚を異なる等の状態の差異を意味する。
本実施形態の場合、梁接合構造2と第1基準構造とは、合成梁61の端の回転剛性を異ならせるために、合成梁61の端の位置において、床スラブ51が有する例えば縦鉄筋53の本数等を異ならせている。
すなわち、第1基準構造は、第2シアプレート25が設けられた大梁21と、第2シアプレート25から延びるように配置された小梁31と、小梁31の小ウェブ32の端部と第2シアプレート25とを摩擦接合する高力ボルト41と、小梁31の小フランジ33に接合された床スラブ51と、を備えている。第1基準構造は、小梁31の端に発生する曲げモーメントの絶対値と小梁31の中央に発生する曲げモーメントとの絶対値が一致するように、小梁31の端の回転剛性K等が調節されている。
第1基準構造において、小梁31及び床スラブ51は合成梁61を構成する。
第1基準構造の合成梁61の端の回転剛性を、回転剛性上限値Ku,lim(Nmm/rad)と規定する。
なお、第1基準構造において、合成梁61の端の曲げモーメントの絶対値Mと合成梁61の中央の(合成梁61の中央に発生する)曲げモーメントの絶対値Mとが同等になるときの合成梁61の端の回転剛性Kが、回転剛性上限値Ku,limであるとしてもよい。ここで言う同等とは、例えば(M−M)/Mの値が±5%以内であることが好ましく、±2%以内であることがより好ましい。
図7に、合成梁61の端の回転剛性Kに対する、合成梁61の端及び中央の曲げモーメントの絶対値の変化を示す。なお、図7の横軸の回転剛性Kは常用対数の目盛りで示し、縦軸の曲げモーメントの絶対値は通常の目盛りで示している。
曲線L1は小梁31の端の曲げモーメントの絶対値Mを示し、曲線L2は合成梁61の中央の曲げモーメントの絶対値Mを示す。曲線L1と曲線L2との交点の回転剛性Kが、回転剛性上限値Ku,lim(Nmm/rad)である。第1基準構造では、合成梁61の端の回転剛性Kが回転剛性上限値Ku,limに等しく、この結果、合成梁61の端の曲げモーメントの絶対値と合成梁61の中央の曲げモーメントの絶対値とが等しくなる。
一般的に、コンクリートでは圧縮耐力よりも引張耐力の方が小さいため、小梁31の上方に床スラブ51が設けられた合成梁61は、正曲げ耐力よりも負曲げ耐力の方が小さくなる。このため、正曲げが発生する合成梁61の中央よりも負曲げが発生する合成梁61の端の方が損傷しやすくなる。
本実施形態の梁接合構造2において、合成梁61の端の回転剛性Kを回転剛性上限値Ku,lim以下の範囲R1とすることで、梁接合構造2の合成梁61の端の曲げモーメントの絶対値Mが合成梁61の中央の曲げモーメントの絶対値M以下になり、合成梁61の端部が負曲げされても合成梁61の端部が損傷しにくくなる。
本実施形態の梁接合構造2の合成梁61の端の回転剛性Kは、第1基準構造の合成梁61の端の回転剛性Kである回転剛性上限値Ku,limと同一であってもよいし、回転剛性上限値Ku,limよりも小さくてもよい。
以下では、前述の(i)から(iii)の各ケースにおいて、回転剛性Kの上限値について定量的に評価する。
〔2.2.1.合成梁が等分布荷重を受ける場合〕
前述の(26)式に下記の(76)式及び(77)式を代入すると、(78)式が得られる。
Figure 0006652161
ここで、(M≦M)の不等式において等号が成立する条件を(78)式に代入すると、回転剛性上限値Ku,limは(79)式で表される。
Figure 0006652161
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(79)式に代えて、以下の手順により求めた後述する(81)式を用いる。
この場合、(76)式が成り立つ。(26)式において、EI=EI=EIとおき、等分布荷重wについて解くと、(80)式が得られる。
Figure 0006652161
合成梁61の中央の曲げモーメントは、(77)式で表される。(76)式、(77)式、及び(80)式を(M≦M)の不等式に代入する。不等式の等号が成立するときに(K=Ku,lim)であるので、(81)式が得られる。
Figure 0006652161
〔2.2.2.合成梁がスパンを3分割する2点に集中荷重を受ける場合〕
(48)式を集中荷重Pについて解くと、(86)式が得られる。
Figure 0006652161
x=l/2における合成梁61の中央の曲げモーメントの絶対値Mは、(32)式から、(87)式のように得られる。
(M≦M)を満たすには、(88)式の条件が必要である。
Figure 0006652161
(88)式に(76)式及び(48)式を代入すると、(M≦M)となるための回転剛性Kは、(89)式で表せる。
Figure 0006652161
(89)式の等号が成立するときの回転剛性Kが回転剛性上限値Ku,limであるが、(89)式を「Ku,lim=」の形に解く(陽解法で解く)ことができない。このため、回転剛性上限値Ku,limを収斂計算(収束計算)で求める。
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(89)式に代えて、以下の手順により求めた後述する(91)式を用いる。
この場合、(76)式が成り立つ。(49)式を集中荷重Pについて解くと、(91)式が得られる。
Figure 0006652161
x=l/2における合成梁61の中央の曲げモーメントの絶対値Mは、前述の(87)式のように得られる。
(76)式、(87)式、及び(91)式を、(M≦M)の式に代入する。この不等式の等号が成立するときに(K=Ku,lim)であるので、(92)式が得られる。
Figure 0006652161
〔2.2.3.合成梁が中央1点に集中荷重を受ける場合〕
まず、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(70)式を集中荷重Pについて解くと、(96)式が得られる。
また、(76)式が成り立ち、x=l/2における合成梁61の中央の曲げモーメントの絶対値Mは、(97)式となる。
Figure 0006652161
(76)式、(96)式、及び(97)式を(M≦M)の式に代入して整理すると、(98)式が得られる。
Figure 0006652161
(98)式は、合成梁61がゼロ以上の曲げ剛性を持つ限り、あらゆる回転剛性Kの値に対して、(M≦M)の不等式が成立することを示している。
合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しくない場合には、一般的に、負曲げを受ける合成梁61の端の曲げ剛性は、正曲げを受ける合成梁61の中央の曲げ剛性よりも小さい。このため、曲げ剛性が一様な梁よりも梁の端の曲げモーメントが小さくなり、曲げ剛性が一様な梁と同様に、あらゆる回転剛性Kに対して、(M≦M)の不等式が成立する。
〔2.3.合成梁の端の最適な回転剛性の下限値〕
正曲げを受ける合成梁61の曲げ耐力(正曲げ耐力)は(Nmm)、負曲げを受ける合成梁61の曲げ耐力(負曲げ耐力)は(Nmm)である。
本実施形態の梁接合構造2に対して、合成梁61の回転剛性については、合成梁61の端の回転剛性K以外は同一であり、曲げ耐力に対する設計用曲げモーメントの比が、合成梁61の端と中央とで一致する梁接合構造を第2基準構造とする。言い換えれば、本実施形態の梁接合構造2に対して、合成梁61の端における負曲げ耐力に対する合成梁61の端に発生する曲げモーメントの絶対値の比率(以下、端曲げ応力度比と呼ぶ)と、合成梁61の中央における正曲げ耐力に対する合成梁61の中央に発生する曲げモーメントの絶対値の比率(以下、中央曲げ応力度比と呼ぶ)と、が一致する梁接合構造を第2基準構造とする。
ここで、「梁接合構造2に対して、合成梁61の回転剛性については、合成梁61の端の回転剛性以外は同一」であるとは、2.2.において説明した意味である。
すなわち、第2基準構造は、第2シアプレート25が設けられた大梁21と、第2シアプレート25から延びるように配置された小梁31と、小梁31の小ウェブ32の端部と第2シアプレート25とを摩擦接合する高力ボルト41と、小梁31の小フランジ33に接合された床スラブ51と、を備えている。第2基準構造は、端曲げ応力度比と中央曲げ応力度比とが一致するように、小梁31の端の回転剛性K等が調節されている。
第2基準構造において、小梁31及び床スラブ51は合成梁61を構成する。
第2基準構造の合成梁61の端の回転剛性を、回転剛性下限値Kl,lim(Nmm/rad)と規定する。
なお、第2基準構造において、端曲げ応力度比と中央曲げ応力度比とが同等になるときの合成梁61の端の回転剛性Kが、回転剛性下限値Kl,limであるとしてもよい。
図8に、合成梁61の端の回転剛性Kに対する、端曲げ応力度比及び中央曲げ応力度比の変化を示す。曲線L3は端曲げ応力度比を示し、曲線L4は中央曲げ応力度比を示す。なお、図8の横軸の回転剛性Kは常用対数の目盛りで示し、縦軸の曲げ応力度比は通常の目盛りで示している。
曲線L3と曲線L4との交点の回転剛性Kが、回転剛性下限値Kl,limである。
曲げ応力度比は、例えば、曲げモーメントに対して損傷(破壊)に至るまでの余裕度をあらわす。曲げ応力度比の値が1になると、合成梁61が損傷する。
本実施形態の梁接合構造2において、合成梁61の端の回転剛性Kを回転剛性下限値Kl,lim以上の範囲R2とすることで、合成梁61の端部における大梁21との接合部に一定以上の回転剛性を付与することで、合成梁61の中央のたわみを抑制することができる。
本実施形態の梁接合構造2の合成梁61の端の回転剛性Kは、第2基準構造の合成梁61の端の回転剛性Kである回転剛性下限値Kl,limと同一であってもよいし、回転剛性下限値Kl,limよりも大きくてもよい。
前述のように、本実施形態の梁接合構造2の合成梁61の端における回転剛性Kは、回転剛性上限値Ku,lim以下の範囲R1であることが好ましい。また、回転剛性Kは、回転剛性下限値Kl,lim以上の範囲R2であることが好ましい。さらに、回転剛性Kが、回転剛性下限値Kl,lim以上回転剛性上限値Ku,lim以下の範囲R3であることで、回転剛性Kはより好ましい最適回転剛性範囲となる。
端の回転剛性Kが範囲R3内である梁接合構造2は、合成梁61の端部の接合の仕方が、剛接合とピン接合との間の、いわゆる半剛接合の回転剛性になる。
なお、半剛接合とは、大梁21と合成梁61との間で伝達される曲げモーメントが小さく、大梁21に対する合成梁61の回転移動がある程度拘束された接合形式をいう。また、ピン接合とは、大梁21と合成梁61との間で伝達される曲げモーメントが皆無又は極小で、大梁21に対する合成梁61の回転移動が拘束されない接合形式をいう。そして、半剛接合、ピン接合、及び剛接合の定義は、特に、欧州設計基準(Eurocode3 Part1-8)に準拠するものとする。
以下では、前述の(i)から(iii)の各ケースにおいて、回転剛性の下限値について定量的に評価する。
端曲げ応力度比が中央曲げ応力度比以上となる条件は(101)式で表わせる。
Figure 0006652161
合成梁の負曲げ耐力及び正曲げ耐力は、合成梁61の諸元から計算することができる。負曲げ耐力と正曲げ耐力とが等しい場合には、〔2.2〕で求めた回転剛性上限値Ku,limと回転剛性下限値Kl,limとが等しくなり、回転剛性Kは1つの値に定まる。
負曲げ耐力と正曲げ耐力とが等しくない場合には、回転剛性下限値Kl,limは以下のようになる。
〔2.3.1.合成梁が等分布荷重を受ける場合〕
(101)式に(76)式、(78)式を順に代入すると、(102)式が得られる。
Figure 0006652161
(101)式の等号が成立するときの回転剛性Kが回転剛性下限値Kl,limとすれば、(103)式及び(104)式を用いて、回転剛性下限値Kl,limは(105)式のように表される。
Figure 0006652161
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(105)式において、EI=EI=EIとおいた(106)式を用いる。
Figure 0006652161
〔2.3.2.合成梁がスパンを3分割する2点に集中荷重を受ける場合〕
前述の(101)式に(76)式、(32)式、及び(48)式を順に代入し、(101)式の等号が成立するときの回転剛性Kが回転剛性下限値Kl,limだとすると、(111)式が得られる。
Figure 0006652161
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(101)式に(76)式、(87)式、及び(91)式を代入して回転剛性Kについて解くと、回転剛性下限値Kl,limが(112)式のように得られる。
Figure 0006652161
〔2.3.3.合成梁が中央1点に集中荷重を受ける場合〕
前述の(101)式に(76)式、(69)式、及び(78)式を順に代入し、(101)式の等号が成立するときの回転剛性Kが回転剛性下限値Kl,limだとすると、(116)式が得られる。
Figure 0006652161
ただし、合成梁61の正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい場合には、(101)式に(76)式、(96)式、及び(97)式を代入して回転剛性Kについて解くと、回転剛性下限値Kl,limが(117)式のように得られる。
Figure 0006652161
正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しい合成梁は、一般的に負曲げ耐力と正曲げ耐力とが等しい。上フランジ(一方のフランジ)と下フランジ(他方のフランジ)との強度が異なる溶接組み立てH形鋼等では、正曲げ剛性EIと負曲げ剛性EIとが等しくても、負曲げ耐力と正曲げ耐力とが異なる。この場合は、(106)式、(112)式、及び(117)式を用いて、回転剛性下限値Kl,limを評価することができる。
地震による水平力を負担する耐震フレームの場合、合成梁の端部は剛接合とすることが多く、本発明の梁は、主に水平力を負担しない小梁に適用されることを想定している。このため、合成梁の荷重条件は、等分布荷重であることが多い。
これまで、(i)から(iii)の3つのケースを説明してきたが、(i)の合成梁が等分布荷重を受ける場合が多いことと、(i)の場合は、(ii)の場合及び(iii)の場合を含むこと、により、本発明の合成梁の荷重条件は(i)のケースを満たせばよいと考えられる。
〔3.合成梁の端の回転剛性の算出〕
ここで、合成梁61の端の回転剛性Kを算出する梁接合構造2の回転剛性算出方法(以下、回転剛性算出方法とも略称する)の手順の一例について説明する。
図9に示すように、合成梁61を湾曲させたときの中立軸をC1とする。小梁31に床スラブ51が設けられていることで、中立軸C1は小梁31の上下方向の中央よりも上方に位置する。
第2シアプレート25及び小梁31の小ウェブ32を、上下方向にプレート貫通孔25aの軸を境界として、プレート貫通孔25aの数Nに1を加えた数の領域に分ける(領域分割工程)。この例では、第2シアプレート25に5つのプレート貫通孔25aが形成されているため、第2シアプレート25及び小ウェブ32を上下方向に6つの領域に分ける。例えば、第2シアプレート25及び小ウェブ32を、1から(N+1)までの値をとる自然数iに対して、下方(上下方向の一方)から順にi番目の領域を第i領域Sとして分ける。なお、第1領域Sから第(N+1)領域S(N+1)までの(N+1)の領域を区別しないで呼ぶときは、領域Sと総称する。
なお、複数の第i領域Sに付ける自然数iの順番はこれに限られず、上方から順につけてもよいし、上下方向の中央から外側に順につけてもよい。
図10に、6つに分けた領域の1つである第i領域Sの斜視図を示す。
ここで、図10に示すように、第i領域Sの有効厚さは、t(mm)である。具体的には、第1領域Sの有効厚さは、t(mm)である。第i領域Sの上下方向の有効長さはh(mm)、第i領域Sにおける高力ボルト41の摩擦が有効な第2方向Xの長さはb(mm)である。
図9に示すように、上下方向における中立軸C1と第i領域Sの中心との距離は、xs,i(mm)である。
高力ボルト41の頭部43の外径及びワッシャ44の外径のうち小さい方の値は、d(mm)、小梁31の小ウェブ32の厚さはt(mm)である。小フランジ33、34の厚さはt(mm)、第2シアプレート25の厚さはt(mm)である。図2に示すように、複数のプレート貫通孔25aのうち最も上方のプレート貫通孔25aの中心軸から小フランジ33の上面までの距離は、ev,web(mm)である。第2シアプレート25及び小ウェブ32のせん断弾性係数は、G(N/mm)である。
図9に示すように、複数本の縦鉄筋53のうち、上下方向にはn層が並べて配置されている。この例では、例えばnは2層である。層数nは、特に限定されず、1層でもよいし、3層以上でもよい。
層の縦鉄筋53のうち、下方からh層目の縦鉄筋53を、第h縦鉄筋(第h鉄筋)53と呼ぶ。自然数hは、1からnまでの値をとる。なお、複数層の第h縦鉄筋53に付ける自然数hの順番はこれに限られない。n層の第h縦鉄筋53を区別しないで呼ぶときは、縦鉄筋53と総称する。
上下方向における中立軸C1と第h縦鉄筋53の軸線C2との距離は、xr,h(mm)である。
図11に示すように、第i領域Sの軸剛性(ばね剛性)をks,i(N/mm)とする。第h縦鉄筋53の軸剛性をkr,h(N/mm)とする。
第1領域Sから第6領域Sに対する有効長さb、h、及び有効厚さtの例を表1に示す。
Figure 0006652161
表1に示すように、例えば、高力ボルト41の摩擦が有効な第2方向Xの長さbは、3dの値である。この長さbの範囲の第2シアプレート25及び小梁31の小ウェブ32は、摩擦接合に必要な表面処理を行うように規定されている。
第i領域Sの上下方向の有効長さhは、上下方向の端の領域である第1領域S及び第6領域Sに対して(ev,web−t/2)の式による値である。この値を採用したのは、フランジの引張力はフランジの板厚の中心に作用しているためである。有効長さhは、第2領域Sから第5領域Sに対しては、複数のプレート貫通孔25aの上下方向のピッチp(mm)(図2参照)である。
例えば、第i領域Sの有効厚さtは、第1領域S及び第6領域Sに対して小ウェブ32の厚さtである。この理由は、第1領域S及び第6領域Sには第2シアプレート25が部分的にしか存在しないためである。
有効厚さtは、第2領域Sから第5領域Sに対しては、(t+t)の式による値である。この理由は、第2領域Sから第5領域Sでは、第2シアプレート25及び小梁31の小ウェブ32が各領域の全体にわたり存在しているためである。
第h縦鉄筋53の軸剛性ks,hは、例えばEUROPEAN STANDARD EN1994-1-1 : Eurocode 4 : Design of composite steel and concrete structures - Part 1-1 : General rules and rules for buildings Annex A, December 2004 (以下、文献1と呼ぶ)によって計算することができる。第h縦鉄筋53の軸剛性ks,hは、下方からh本目の第h縦鉄筋53の全断面積に縦鉄筋53のヤング係数を掛け、接合部における縦鉄筋53の有効長さで除した値としてもよい。ただし、文献1では、縦鉄筋53の断面積分で負担する軸剛性は、スタッド52等の局所変形分の剛性低下を考慮して計算されている。
図10に示すように、第i領域Sにせん断力Q(N)が作用したときに、第i領域Sの上下方向の一端がδr,i(mm)変位し、第i領域Sにせん断ひずみγが生じたとする。なお、せん断ひずみγは、(δr,i/h)の式による値となる。第i領域Sにおけるせん断変形する面の面積A(mm)は、(b)の式による値となる。
せん断力Qは、(121)式で表わせる。
よって、第i領域Sの軸剛性ks,iは(122)式で表わせる。
Figure 0006652161
図11に示すように梁接合構造2をモデル化する。合成梁61の端の回転角をθ(rad)とする。
第i領域Sについて、(δs,i=xs,iθ)の式が成り立つ。第h縦鉄筋53の第2方向Xの変位(伸びの長さ)を、δr,h(mm)とする。第h縦鉄筋53について、(δr,h=xr,hθ)の式が成り立つ。
変位δs,i及び変位δr,hの式から、大梁21と合成梁61の端との接合部の曲げモーメントM(Nmm)は、(123)式で表わせる。
したがって、合成梁61の端の回転剛性Kを、(124)式により算出する(回転剛性算出工程)。
Figure 0006652161
以上説明した回転剛性算出方法を行うことで、合成梁61の端の回転剛性Kが算出される。なお、回転剛性算出方法を算出装置(コンピュータ装置)に行わせることができる。図示はしないが、算出装置は、例えば、入力部と、処理部と、出力部と、を機能的に備える。
入力部は、キーボード等である。処理部は、処理装置と、記憶装置と、記憶装置の記憶領域に予め記憶された算出プログラムとが協働することで、所定の処理を実行する。処理装置は、CPU(Central Processing Unit)等である。記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)等である。
出力部はプリンタ等であり、処理部における処理結果を外部に出力する。
回転剛性算出方法及び算出プログラムは、領域分割工程と、回転剛性算出工程と、を実行する。予め、使用者は入力部からプレート貫通孔25aの数N等を入力する。
領域分割工程では、処理部は算出プログラムに基づいて、第2シアプレート25及び小ウェブ32を、上下方向に、プレート貫通孔25aの軸を境界として、プレート貫通孔25aの数Nに1を加えた数の領域に分ける。
回転剛性算出工程では、処理部は算出プログラムに基づいて、合成梁61の端部の回転剛性Kを(124)式から算出する。
算出プログラムが算出装置で実行されることで、算出装置は、領域分割工程を行う領域分割部、回転剛性算出工程を行う回転剛性算出部としてそれぞれ機能する。
〔4.算出した合成梁の端の回転剛性と実験結果との比較〕
算出した回転剛性Kを、実験結果と比較することを試みた。しかし、床スラブ51を備える梁接合構造2の実験結果が見つからなかった。このため、梁接合構造2の構成に対して床スラブ51を備えない梁接合構造4(図12参照)の実験結果が載っている前述の非特許文献1の実験結果と、算出した回転剛性Kとを比較した。
梁接合構造4に関して、図12に第1領域Sから第6領域Sの中立軸C1からの距離を示し、図13にせん断ばねのばね剛性を示した。梁接合構造2と梁接合構造4との違いは、梁接合構造4が床スラブ51を備えないことだけである。小梁31の中立軸C1は、小梁31の上下方向の中央に位置する。
非特許文献1の表2に数値として記載されている回転剛性K(初期回転剛性実験値)を、表2のKtest(文献値)の欄に示す。Ktestの値は、13383(kNm/rad)等である。
Figure 0006652161
非特許文献1では、回転剛性Ktestは、高力ボルトがすべり耐力に達したときの接合部の回転角及び曲げモーメントから算出されている。しかし、曲げモーメントがすべり耐力よりも小さいときに、回転剛性が低下している試験体もある。これは、高力ボルトにより接合されたシアプレート及びウェブに局所的にせん断変形が生じたためだと考えられる。
そこで、非特許文献1の図3で線形関係が成立している範囲の回転角θ(rad)、及び曲げモーメントM(kNm)を読み取った。(M/θ)の式から、初期の回転剛性Ktestを算出した。
図から読み取ったこれらの回転角θ、曲げモーメントM、及び回転剛性Ktestの値を、表2に示す。例えば、回転角θを0.002(rad)、曲げモーメントMを31.1(kNm)と読み取ったときに、回転剛性Ktestは(31.1/0.002)の式から15543(kNm/rad)と算出される。
回転剛性Ktestは、非特許文献1の表2に数値として記載されている値よりも本明細書の表2に図から読み取った値として示した値の方が大きい。
(124)式から算出した回転剛性Kcalc、及び、非特許文献1の図3から読み取った回転剛性Ktestに対する回転剛性Kcalcの比率である(Kcalc/Ktest)の値を表2に示す。図14には、非特許文献1の図3から読み取った実験結果の回転剛性Ktestと、算出した回転剛性Kcalcとの関係を示す。図14において、結果を示す●印が直線L6に近いほど、回転剛性Ktestと回転剛性Kcalcとがより一致していることを表す。
7つの実験結果のいずれにおいても、(Kcalc/Ktest)の値は、0.91以上1.21以下の範囲に入る。本回転剛性算出方法及び算出プログラムにより回転剛性Kを精度良く算出できることが分かった。
以上説明したように、本実施形態の梁接合構造2によれば、例えば床スラブ51がコンクリート54を有する場合には、コンクリート54では圧縮耐力よりも引張耐力の方が小さいため、合成梁61は正曲げ耐力よりも負曲げ耐力の方が小さくなる。このため、正曲げが発生する合成梁61の中央よりも負曲げが発生する合成梁61の端の方が損傷しやすくなる。合成梁61の端の回転剛性を回転剛性上限値Ku,lim以下にすることで、合成梁61の端に発生する曲げモーメントが合成梁61の中央に発生する曲げモーメント以下になり、合成梁61の端部が負曲げされても合成梁61の端部が損傷するのを抑制することができる。
本実施形態では、モーメント抵抗の力学モデルを仮定し、梁接合構造2のディテイル(細部)に応じた回転剛性Kの算出方法を規定している。さらに、大梁21と合成梁61の端との接合部の最適な回転剛性Kを、合成梁61の断面の性能から決める方法を規定している。なお、最適な回転剛性Kから、梁接合構造2の必要なディテイルを逆算することもできる。
床スラブ51はコンクリート54を有するため、床スラブ51の圧縮耐力を大きくすることができる。
回転剛性上限値Ku,limは、(79)式を満たす。これにより、合成梁61の正曲げ剛性及び負曲げ剛性を考慮して合成梁61の端部の損傷を定量的に評価し、一般的に合成梁61の中央よりも耐力の小さい合成梁61の端部が損傷するのを抑制することができる。また、回転剛性Kが大きい程、小梁31の小フランジ34が圧縮となる負曲げ領域が長くなり、横座屈しやすくなるが、回転剛性Kに上限を設けることで、横座屈を防止することができる。回転剛性Kが回転剛性下限値Kl,lim以上であると中央曲げ応力度比が端曲げ応力度比よりも小さくなるため、合成梁61の端の断面積よりも合成梁61の中央の断面積が小さくても曲げモーメントに耐えられる。したがって、合成梁61の端の曲げ耐力及び中央における曲げ耐力のいずれも、無駄なく有効に使うことができる。
合成梁61の端の回転剛性Kは回転剛性下限値Kl,lim以上であるため、合成梁61の端部における大梁21との接合部に一定以上の回転剛性を付与することで、合成梁61の中央のたわみを抑制することができる。
回転剛性下限値Kl,limは、(105)式を満たす。これにより、曲げモーメントの余裕度を定量的に評価し、合成梁61の端部が損傷するのを抑制することができる。
本実施形態の回転剛性算出方法によれば、合成梁61の端の回転剛性Kは、(124)式により得られる。第2シアプレート25と合成梁61との接合部を、縦鉄筋53の軸剛性及び領域Sの軸剛性でモデル化して、合成梁61の端の回転剛性Kを精度良く算出することができる。
第i領域Sの軸剛性ks,iを、(122)式により算出する。第i領域Sの軸剛性ks,iを、せん断変形する第2シアプレート25及び小ウェブ32でモデル化するとともに有効長さb、h、及び有効厚さt等を考慮して、合成梁61の端の回転剛性Kをより精度良く算出することができる。
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、小梁31は床スラブ51と接合されておらず、鉄骨のみで構成されていてもよい。すなわち、図12に示すように、1組の第2シアプレート25と小ウェブ32が高力ボルト41によって接合されていてもよい。この場合、合成梁の回転剛性Kは、(124)式において鉄筋の剛性の寄与を表す右辺の第2項をゼロとすればよい(回転剛性算出工程)。
例えば、図15に示すように、1組の第2シアプレート25及び合成梁61の小梁31の小ウェブ32に対して、高力ボルト41が第2方向Xに沿って複数列配置されていてもよい。図15の例では、高力ボルト41が上下方向に沿って2行、第2方向Xに沿って2列配置されている。高力ボルト41の第2方向Xに沿う間隔(列の間隔)がp(mm)であり、高力ボルト41が第2方向Xに沿ってk列配置されているとする。このとき、第i領域Sの高力ボルト41の摩擦が有効な長さbは、例えば下記の(i)及び(ii)のように規定してもよい。
(i)間隔pが3dの値よりも大きい(p>3d)場合には、b=3d
(ii)間隔pが3dの値以下(p≦3d)場合には、b=3d+(k−1)p
前記実施形態では、大梁21にはH形鋼が用いられているとしたが、大梁21にはフランジ付き十字鉄骨等が用いられているとしてもよい。伝達部材は、縦鉄筋53に代えて鋼板や繊維補強コンクリート等を有してもよい。
支持部材が大梁21であり、梁が小梁31であるとした。しかし、支持部材が柱であり、梁が大梁(梁)であるとしてもよい。
前記実施形態では、小梁31の第2方向Xの端に発生する曲げモーメントの絶対値と小梁31の第2方向Xの中央に発生する曲げモーメントとの絶対値が一致する梁接合構造を第1基準構造としてもよい。そして、梁の端の回転剛性は、第1基準構造の梁31の端の回転剛性である回転剛性上限値以下であるとしてもよい。さらに、曲げ耐力に対する設計用曲げモーメントの比が、小梁31の端と中央とで一致する梁接合構造を第2基準構造とし、小梁31の端の回転剛性Kを回転剛性下限値以上であるとしてもよい。
すなわち、合成梁61に対する回転剛性、曲げ剛性、曲げ耐力等に代えて、小梁31に対する回転剛性、曲げ剛性、曲げ耐力等をそれぞれ適用してもよい。
2 梁接合構造
21 大梁(支持部材)
25 第2シアプレート(シアプレート)
25a プレート貫通孔
31 小梁(梁)
32 小ウェブ(ウェブ)
32a ウェブ貫通孔
33 小フランジ(フランジ)
41 高力ボルト(ボルト)
51 床スラブ(伝達部材)
61 合成梁
C1 中立軸
C2 軸線
u,lim 回転剛性上限値
l,lim 回転剛性下限値
X 第2方向(材軸方向)

Claims (9)

  1. シアプレートが設けられた支持部材と;
    ウェブとフランジとを有し、前記シアプレートから延びるように配置された梁と;
    前記梁の前記ウェブの端部と前記シアプレートとを摩擦接合するボルトと;
    前記梁の前記フランジに設けられ、前記梁に作用する曲げモーメントを前記支持部材に伝達する伝達部材と;
    を備える梁接合構造において、
    前記梁の材軸方向の端に発生する曲げモーメントの絶対値と前記梁の前記材軸方向の中央に発生する曲げモーメントの絶対値とが同等になる梁接合構造を第1基準構造としたときに、
    前記梁接合構造の前記梁の端の回転剛性は、前記第1基準構造の前記梁の端の回転剛性である回転剛性上限値以下であり、
    前記梁の長さをl(mm)、前記梁の正曲げ剛性をEI (Nmm )、及び、前記梁の負曲げ剛性をEI (Nmm )としたときに、前記回転剛性上限値K u,lim (Nmm/rad)は(1)式を満たす
    梁接合構造。
    Figure 0006652161
  2. 前記梁接合構造に対して、前記梁の端における負曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、前記梁の中央における正曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、が同等になる梁接合構造を第2基準構造としたときに、
    前記梁接合構造の前記梁の端の回転剛性は、前記第2基準構造の前記梁の端の回転剛性である回転剛性下限値以上である
    請求項1に記載の梁接合構造。
  3. 前記梁の長さをl(mm)、前記梁の正曲げ剛性をEI(Nmm)、前記梁の負曲げ剛性をEI(Nmm)、前記梁の正曲げ耐力を(Nmm)、及び、前記梁の負曲げ耐力を(Nmm)としたときに、前記回転剛性下限値Kl,lim(Nmm/rad)は(2)式を満たす
    請求項2に記載の梁接合構造。
    Figure 0006652161
  4. シアプレートが設けられた支持部材と;
    ウェブとフランジとを有し、前記シアプレートから延びるように配置された梁と;
    前記梁の前記ウェブの端部と前記シアプレートとを摩擦接合するボルトと;
    前記梁の前記フランジに設けられ、前記梁に作用する曲げモーメントを前記支持部材に伝達する伝達部材と;
    を備える梁接合構造において、
    前記梁及び前記伝達部材を備える合成梁について、
    前記合成梁の材軸方向の端に発生する曲げモーメントの絶対値と前記合成梁の前記材軸方向の中央に発生する曲げモーメントの絶対値とが同等になる梁接合構造を第1基準構造としたときに、
    前記梁接合構造の前記合成梁の端の回転剛性は、前記第1基準構造の前記合成梁の端の回転剛性である回転剛性上限値以下であり、
    前記梁の長さをl(mm)、前記合成梁の正曲げ剛性をEI (Nmm )、及び、前記合成梁の負曲げ剛性をEI (Nmm )としたときに、前記回転剛性上限値K u,lim (Nmm/rad)は(3)式を満たす
    梁接合構造。
    Figure 0006652161
  5. 前記梁接合構造に対して、前記合成梁の端における負曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、前記合成梁の中央における正曲げ耐力に対する発生する曲げモーメントの絶対値の比率と、が同等になる梁接合構造を第2基準構造としたときに、
    前記梁接合構造の前記合成梁の端の回転剛性は、前記第2基準構造の前記合成梁の端の回転剛性である回転剛性下限値以上である
    請求項4に記載の梁接合構造。
  6. 前記梁の長さをl(mm)、前記合成梁の正曲げ剛性をEI (Nmm )、前記合成梁の負曲げ剛性をEI (Nmm )、前記合成梁の正曲げ耐力を (Nmm)、及び、前記合成梁の負曲げ耐力を (Nmm)としたときに、前記回転剛性下限値K l,lim (Nmm/rad)は(4)式を満たす
    請求項5に記載の梁接合構造。
    Figure 0006652161
  7. 前記伝達部材はコンクリートを有する
    請求項1から6のいずれか一項に記載の梁接合構造。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の梁接合構造の前記梁の端における回転剛性を算出する梁接合構造の回転剛性算出方法であって、
    前記伝達部材は、
    コンクリートと;
    前記コンクリート内に配置され、前記材軸方向に延びるとともに前記ウェブの幅方向に並べて配置されたn層の鉄筋と;
    を有し、
    前記ボルトは、前記シアプレートに形成されたプレート貫通孔、及び前記梁の前記ウェブに形成されたウェブ貫通孔にそれぞれ挿入され、
    前記シアプレート及び前記ウェブを、前記プレート貫通孔の軸を境界として、前記幅方向に前記プレート貫通孔の数Nに1を加えた数の領域に分け;
    1から(N+1)までの値をとる自然数iに対して、前記幅方向における前記梁の中立軸と前記幅方向の一方からi番目の前記領域である第i領域の中心との距離をxs,i(mm)、前記第i領域の軸剛性をks,i(N/mm)とし;
    1からnまでの値をとる自然数hに対して、前記幅方向における前記中立軸と前記幅方向の一方からh層目の前記鉄筋である第h鉄筋の軸線との距離をxr,h(mm)、前記第h鉄筋の軸剛性をkr,h(N/mm)としたときに、前記梁の端の回転剛性K(Nmm/rad)を(5)式により算出する;
    梁接合構造の回転剛性算出方法。
    Figure 0006652161
  9. 前記シアプレート及び前記ウェブのせん断弾性係数をG(N/mm)、前記第i領域における前記ボルトの摩擦が有効な前記材軸方向の長さをb(mm)、前記第i領域の有効厚さをt(mm)、前記第i領域の前記幅方向の有効長さをh(mm)としたときに、前記第i領域の軸剛性ks,i(6)式により算出する
    請求項8に記載の梁接合構造の回転剛性算出方法。
    Figure 0006652161
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