JP2021055464A - 床スラブ付き鉄骨梁およびその補強方法 - Google Patents
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Abstract
Description
その際、小梁又は孫梁に接合してあるアングル等の部材と鉄骨梁の下フランジとを接合することで、下フランジの構面外変形も拘束することが通例である。
従来の床スラブ付き鉄骨梁41は、両端部が柱3に剛接合されたH形断面の鉄骨梁5と、鉄骨梁5の上部に頭付きスタッド11を介して接合されたコンクリート床スラブ13とを有するものであって、鉄骨梁5の側面にはガセットプレート43が設けられ、小梁45が鉄骨梁5の上部においてガセットプレート43とボルト接合され、アングル47が小梁45の下部に設けたガセットプレート49と鉄骨梁5の側面のガセットプレート43の下部とに跨るように接合されている。これによって鉄骨梁5の横座屈による構面外変形が拘束される。また、コンクリート床スラブ13にはコンクリート23の内部に鉄筋25が設けられている。
鉄骨梁5のウェブ19は柱3に溶接接合されるか、柱3に溶接接合されたシヤプレート51と高力ボルト接合される。
このような考えの下、特許文献1では、鉄骨梁に接合されているコンクリート床スラブのねじれ剛性を鉄骨梁のねじれ剛性の10倍とすることで横座屈補剛材がなくても横座屈を防止できる設計法が提案されている。
また、特許文献2では、コンクリート床スラブと接合された鉄骨梁の設計法および床構造を提案しており、コンクリート床スラブと接合された鉄骨梁の弾性横座屈モーメントMeを用いて計算された横座屈細長比λbが0.5以下であれば、横座屈補剛部材がなくても十分な耐力が期待できることを示している。
しかし、梁長さが長い場合は鉄骨梁5が頭付きスタッド11を介してコンクリート床スラブ13と接合されている場合でも、鉄骨梁5が横座屈によって十分な変形能力を発揮できない恐れがある。
すなわち、長尺の鉄骨梁では、特許文献2に記載の通り、梁長さが長いほど鉄骨梁の耐力が低くなり、コンクリート床スラブと接合されていても十分な耐力を発揮できず、それに伴い変形能力も不十分となる恐れがあるため、横座屈補剛部材の省略が難しい。
一方で、昨今の建築物では梁長さが20mを越えるような場合もあり、梁長さが長いものほど、従来の設計方法では必要とされる横座屈補剛部材数が多いため、横座屈補剛部材の省略によるメリットが大きいが、従来法では対応できないという課題がある。
前記鉄骨梁は、梁長さと上下フランジの板厚中心間距離の比であるλwが15<λw≦30で、前記鉄骨梁の弱軸に関する細長比λyがA<λyであり、
前記頭付きスタッドの本数が、逆対称曲げモーメント分布時に完全合成梁として必要とされる本数の2倍以上とし、
前記鉄骨梁の上下フランジを繋ぐように接合された縦スチフナが、前記鉄骨梁の全長にわたって梁長さの0.2倍以下のピッチで、かつ前記柱に最も近い前記縦スチフナと前記柱との距離が梁長さの0.125倍以下となるように設けられていることを特徴とするものである。
ただし、Aは、鉄骨梁全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合において、横座屈補剛が不要である鉄骨梁の弱軸に関する細長比の上限を定める係数である。例えば、鉄骨梁5に用いられる鋼材が400N級鋼の場合は170、490N級鋼の場合は130、520N級鋼の場合は120、550N級鋼の場合は110である。
かつ、前記鉄骨梁は、全塑性モーメントMpと下式によって与えられる弾性横座屈モーメントMeの比の平方根√(Mp/Me)で与えられる前記鉄骨梁の横座屈細長比λb=√(Mp/Me)が、0.5<λb≦0.54を満足することを特徴とするものである。
前記鉄骨梁は、梁長さと上下フランジの板厚中心間距離の比であるλwが15<λw≦30で、前記鉄骨梁の弱軸に関する細長比λyがA<λyであり、
前記頭付きスタッドの本数が、逆対称曲げモーメント分布時に完全合成梁として必要とされる本数の2倍以上である床スラブ付き鉄骨梁の補強方法であって、
前記鉄骨梁の上下フランジを繋ぐように縦スチフナを設け、かつ該縦スチフナを、前記鉄骨梁の全長にわたって梁長さの0.2倍以下のピッチで、かつ前記柱に最も近い前記縦スチフナと前記柱との距離が梁長さの0.125倍以下となるように設けることを特徴とするものである。
ただし、Aは鉄骨梁全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合において、横座屈補剛が不要である鉄骨梁の弱軸に関する細長比の上限を定める係数である。例えば、鉄骨梁5に用いられる鋼材が400N級鋼の場合は170、490N級鋼の場合は130、520N級鋼の場合は120、550N級鋼の場合は110である。
本実施の形態に係る床スラブ付き鉄骨梁1は、両端部が柱3に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁5と、鉄骨梁5の上フランジ7の全長に亘って設けられた頭付きスタッド11を介して接合されたコンクリート床スラブ13とを有する床スラブ付き鉄骨梁1であって、鉄骨梁5の上フランジ7および下フランジ9を繋ぐように縦スチフナ15が設けられている。
以下、各構成を詳細に説明する。
柱3の種類は特に限定されないが、例えば溶接組立箱形断面柱、角形鋼管柱、H形断面柱、CFT柱、RC柱、SRC柱などが該当する。
柱3には、鉄骨梁5の上下フランジ7、9から伝達される力を柱3に伝達するためにダイアフラム17という鋼板が設けられる。ダイアフラム17には、柱3との接合形式によって、通しダイアフラム形式、内ダイアフラム形式、外ダイアフラム形式に分けられる。
鉄骨梁5は、H形断面を有し、設計基準強度で235N/mm2以上、440N/mm2以下の鋼材で構成されている。設計基準強度440N/mm2越えの鋼材については、高強度ゆえに伸びが小さく、地震時の変形能力に乏しくなるため、梁には不適である。鉄骨梁のサイズとしてはJIS G3192記載の小断面のH形鋼や最大梁せい1000mmの外法一定H形鋼、さらには溶接組立H形断面部材で梁せい1000mmを越えるような大断面のものが該当する。この中でも梁せいが1000mmを越えるような大断面部材や、設計基準強度355N/mm2以上の高強度鋼によるH形断面部材では、下フランジの構面外変形を抑えるためのアングル47等の補剛部材が必要となることが多い。
本実施の形態の鉄骨梁5は、図9、図10に示した従来例のように、構面外変形を拘束することを目的とした小梁45やアングル47は設けられていない。
ただし、Aは、鉄骨梁5全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合において、横座屈補剛が不要である鉄骨梁5の弱軸に関する細長比の上限を定める係数である。例えば、鉄骨梁5に用いられる鋼材が400N級鋼の場合は170、490N級鋼の場合は130、520N級鋼の場合は120、550N級鋼の場合は110である。
横座屈補剛が不要な鉄骨梁5や、梁長さがあまり長くなく、コンクリート床スラブ13によって上フランジ7の構面外変形が拘束されれば小梁45やアングル47を省略しても十分な変形能力が発揮される床スラブ付き鉄骨梁1を、本発明の対象から外すためである。
鉄骨梁5のウェブ19は柱3に溶接接合されたシヤプレート51と高力ボルト接合されるか、あるいは柱3に溶接接合される。
デッキプレート21には捨て型枠用のフラットデッキ、コンクリートと一体となって挙動する波形の合成デッキ、鉄筋が溶接された鉄筋トラス付き捨て型枠デッキなどがある。
コンクリート床スラブ13はコンクリート23の内部に鉄筋25が配設された鉄筋コンクリート構造である。コンクリート23には普通コンクリート、軽量コンクリートが用いられ、鉄筋25には異形鉄筋、丸鋼鉄筋、溶接金網が用いられる。また工場で製作したプレキャストコンクリート板を現場で兼用型枠として用いるハーフPCスラブや、中空部を含むボイドスラブも該当する。
頭付きスタッド11は、鉄骨梁5の上フランジ7の全長に亘って溶接接合されており、その本数は、逆対称曲げモーメント分布時に完全合成梁として必要とされる本数の2倍以上の本数である。
頭付きスタッド11の本数をこのように設定することで、横座屈補剛部材がない場合でも鉄骨梁5の変形能力改善効果が期待できる。なお、この点は、後述の実施例2において実証している。
縦スチフナ15は、鉄骨梁5の上下フランジ7、9を繋ぐように鉄骨梁5に溶接接合されている。そして、縦スチフナ15は、鉄骨梁5の全長にわたって梁長さの0.2倍以下のピッチで、かつ柱3に最も近い縦スチフナ15と前記柱3との距離が梁長さの0.125倍以下となるように設けられている。
縦スチフナ15をこのように設けることで、横座屈補剛部材がない場合でも鉄骨梁5の変形能力改善効果が期待できる。なお、この点は、後述の実施例1において実証している。
また、縦スチフナ15をコンクリート床スラブ13支持用の小梁と接合するためのガセットプレートと兼用することも可能である。コンクリート床スラブとの接合を考慮することで横座屈防止用の小梁、孫梁、アングルを省略できたとしても、床スラブのたわみの抑制のために、小梁が設けられる場合がある。このような小梁は、従来の横座屈防止用の小梁と異なり、大梁の下フランジの構面外変形を抑えるためのアングル等はなく、また鉛直荷重さえ支持できればよいので、断面が横座屈補剛用の小梁より小さかったり、接合部のボルト本数が少なくなったりすることがある。
この意味から、本願発明の有利性が得られる鉄骨梁5としては、横座屈細長比λbが0.5を超えるものである。
したがって、横座屈細長比λbが、0.5<λb≦0.54の鉄骨梁5であれば、本発明を適用することで、本発明の効果が十二分に期待できる。
図3の解析モデル27は床スラブによる上フランジ7の構面外変形拘束効果を、上フランジ7の境界条件として考慮した簡易モデルである。
解析ケースは、以下に示す4ケースであり、いずれも両端が柱3と剛接合されていることを想定して材端の梁断面を剛面とした。
・ケース2:梁端から0.125L(L:鉄骨梁5の長さ)の位置にのみ縦スチフナ15を設けたもの
・ケース3:梁端から0.125Lの位置と、0.15Lのピッチで梁全長にわたって縦スチフナ15を設けたもの
・ケース4:梁端から0.1Lの位置と、0.2Lのピッチで梁全長にわたって縦スチフナ15を設けたもの
梁、縦スチフナ15ともにシェル要素でモデル化した。解析では地震荷重時の逆対称曲げモーメント分布となるよう梁材端に曲げモーメントを与えた。
図4に示すように、ケース2〜4は縦スチフナ15の効果によって縦スチフナ15を設けていないケース1より最大耐力が上昇している。
しかし、縦スチフナ15を端部にのみ配置したケース2の塑性変形倍率は、図5に示すように、ケース1と同程度であり、耐力は上昇したものの変形能力は向上していない。それに比べて、ケース3、4では耐力、変形能力ともにケース1よりも向上している。そして、梁端に最も近い縦スチフナ15の位置が、より梁端に近いケース4の方がケース3よりも耐力は大きくなった。
よって、梁全長にわたって縦スチフナ15で補強することで、床スラブ付き鉄骨梁1の耐力と変形能力を改善できることを確認した。
解析では柱3、ダイアフラム17、鉄骨梁5をシェルモデルで、コンクリート床スラブ13を梁要素で、頭付きスタッド11をバネ要素で詳細にモデル化した。
頭付きスタッド11接合部は、頭付きスタッド1本分の耐力と剛性を考慮したせん断バネ、回転バネでモデル化した。
解析ケースは3ケースで、合成率は1.0、2.5、4.7とした。図7、図8に解析結果を示す。図7は負曲げ側の梁の最大耐力(Mmax)を全塑性モーメント(Mp)で基準化したもの、図8は負曲げ側の梁の最大耐力時の塑性変形倍率(Rmax)を示す。
本解析の結果、合成率2.0あれば十分な耐力、変形能力改善効果が得られると考えられる。この結果から、頭付きスタッド11の本数を、逆対称曲げモーメント分布時に完全合成梁として必要とされる本数の2倍以上にすることが有効であることが示された。
3 柱
5 鉄骨梁
7 上フランジ
9 下フランジ
11 頭付きスタッド
13 コンクリート床スラブ
15 縦スチフナ
17 ダイアフラム
19 ウェブ
21 デッキプレート
23 コンクリート
25 鉄筋
<従来例>
41 床スラブ付き鉄骨梁
43 ガセットプレート
45 小梁
47 アングル
49 ガセットプレート
51 シヤプレート
Claims (3)
- 両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有する床スラブ付き鉄骨梁であって、
前記鉄骨梁は、梁長さと上下フランジの板厚中心間距離の比であるλwが15<λw≦30で、前記鉄骨梁の弱軸に関する細長比λyがA<λyであり、
前記頭付きスタッドの本数が、逆対称曲げモーメント分布時に完全合成梁として必要とされる本数の2倍以上とし、
前記鉄骨梁の上下フランジを繋ぐように接合された縦スチフナが、前記鉄骨梁の全長にわたって梁長さの0.2倍以下のピッチで、かつ前記柱に最も近い前記縦スチフナと前記柱との距離が梁長さの0.125倍以下となるように設けられていることを特徴とする床スラブ付き鉄骨梁。
ただし、Aは、鉄骨梁全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合において、横座屈補剛が不要である鉄骨梁の弱軸に関する細長比の上限を定める係数である。 - 両端部が柱に剛接合されると共に横座屈補剛部材が設けられていないH形断面の鉄骨梁と、該鉄骨梁の上フランジの全長に亘って設けられた頭付きスタッドを介して接合されたコンクリート床スラブとを有する床スラブ付き鉄骨梁であって、
前記鉄骨梁は、梁長さと上下フランジの板厚中心間距離の比であるλwが15<λw≦30で、前記鉄骨梁の弱軸に関する細長比λyがA<λyであり、
前記頭付きスタッドの本数が、逆対称曲げモーメント分布時に完全合成梁として必要とされる本数の2倍以上である床スラブ付き鉄骨梁の補強方法であって、
前記鉄骨梁の上下フランジを繋ぐように縦スチフナを設け、かつ該縦スチフナを、前記鉄骨梁の全長にわたって梁長さの0.2倍以下のピッチで、かつ前記柱に最も近い前記縦スチフナと前記柱との距離が梁長さの0.125倍以下となるように設けることを特徴とする床スラブ付き鉄骨梁の補強方法。
ただし、Aは鉄骨梁全長にわたって均等間隔で横補剛を設ける場合において、横座屈補剛が不要である鉄骨梁の弱軸に関する細長比の上限を定める係数である。
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