JP5437009B2 - 架構の補強構造 - Google Patents

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Description

本発明は柱と梁を備える架構の補強構造に関するものである。
従来から、鉄骨造の架構において柱と梁の接合部の耐力の向上を図るべく、当該接合部や接合部の近傍に補強部材を設け、これにより接合部に地震等の水平力に対し抵抗力を付与することが行われてきた。
この種の接合部の構成として、例えば特許文献1には、スプレットティを介して柱に梁を連結すると共に、これら柱と梁とに亘って方杖材を架設した構成が開示されている。また、梁には、当該方杖材と梁との接続部となる位置に、上下のフランジに亘って複数のスチフナが設けられており、これにより梁と方杖材の接合部の強度向上が図られている。
特開2007−332682号公報
しかしながら、上記特許文献1の構成においては、上述の如く、方杖材はH型鋼により形成されており、当該方杖材のフランジに対しても梁との間での力を伝達させるべく、梁と方杖材との接続部となる位置にスチフナが設けられており、当該スチフナの存在によって部品数が増えることなって管理が煩雑となるのみならず、当該スチフナを梁に取り付ける工程を要することで工程数が増大し、作業効率を低下させてしまうという問題がある。
また、これらスチフナは溶接により取り付けることが一般的であるが、溶接作業には熟練を要し、品質を一様に維持するのは容易ではない。また、溶接による残留変形や溶接欠陥が発生するなどの冶金的劣化を招来する。さらには、梁部材全体としての総重量も増加して、運搬、施工の負担が大きくなる。また、当該梁にスチフナを設ける構成であるため、当該スチフナを設ける位置が配管の通り道として好適であったとしても梁貫通孔を設けることができない。さらには、断熱材等を梁の長手方向に一様に収まりよく設けることができないばかりか、当該スチフナが熱橋を形成して断熱性能を低下させてしまうことも考えられ、このように、スチフナ等の補強材を設けることで他部材との納まりとの関係で不利になってしまうことも考えられる。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、コストや工程を抑えつつも耐震性を維持し、かつ、他部材との収まり性も向上させることができる架構の補強構造を提供することを目的とするものである。
上記課題解決のための具体的手段として、本願発明は、
(1)鋼材からなる柱と梁とを接合してなる柱梁接合部の近傍に、前記柱と梁とに亘って方杖材を架設して補強された架構の補強構造であって、
前記柱と梁の少なくともいずれか一方は、一対のフランジと該フランジを連結するウェブとを備える形鋼により形成されており、
該形鋼には、長さ方向の両端部間に一方のフランジから他方のフランジに亘って補強材を不存在とする無補強領域が設けられると共に該一方のフランジの無補強領域に前記方杖材との連結部が形成されており、
前記方杖材は、前記柱と梁とに亘って架設される矩形断面部材を備え、
該矩形断面部材は、形鋼との間で以下の式(1)の関係を満足し、且つ、厚さ方向の中心線を前記形鋼のウェブの厚さ方向の中心線に一致させた状態で、前記形鋼の一方のフランジの連結部に接続されている
ことを特徴としている。
[数1]
tw×σyw ≧ tr×σur ・・・式(1)

ただし、tw:形鋼のウェブの板厚
σyw: 形鋼のウェブの降伏点
tr:矩形断面部材の板厚
σur:矩形断面部材の引張強さ
これによれば、柱と梁との間に方杖材が架設されるものの、これら柱と梁のいずれかが形鋼により形成されている場合であっても、方杖材は、形鋼に設けられる無補強領域にて当該形鋼に連結されるので、当該方杖材と形鋼の周囲の納まりを良好なものとすることができる。
また、方杖材は、形鋼のウェブの厚さ方向の中心線と矩形断面部材との厚さ方向の中心線とを一致又は略一致させた状態で当該矩形断面部材が形鋼に接続され、かつ、これら形鋼のウェブと矩形断面部材とが上記式(1)を満たすため、形鋼が降伏するよりも以前の状態を維持して矩形断面部材の補強効果を充分に発揮させることができる。これによって、矩形断面部材の断面が全て引張強さに達する最大引張耐力又は全て圧縮強さに達する最大圧縮耐力に達する状態において、仮に応力の不均一により形鋼のウェブに局所的に降伏している部分があったとしても、形鋼のウェブの全体が降伏に至ることはなく、方杖材を有効に効かせることができるものとなっているのである。
なお、形鋼のウェブの厚さ方向の中心線と矩形断面部材の板圧の厚さ方向の中心線とが略一致するとは、一方の中心線が他方の板圧の厚さの範囲内に存在することをいう。
(2)また、前記矩形断面部材は、矩形状の断面を有する矩形断面部と、該矩形断面部の端部小口に設けられる一対の座部とを備え、
一方の座部が前記柱に取り付けられると共に、他方の座部が前記梁に取り付けられることで前記矩形断面部材が前記柱と梁に架設されている
ことが好ましい。
これによれば、矩形断面部材を柱と梁に強固に取り付けることができる。
(3)また、前記柱は、角形鋼管からなり、前記梁との接合部の全てに対応して前記方杖材との接合用のボルト孔が予め設けられており、前記方杖材は、前記ボルト孔を利用してボルト接合されていることが好ましい。
本発明に係る架構の補強構造によれば、コストや工程を抑えつつも耐震性を維持し、かつ、他部材との収まり性も向上させることができる。
架構の平面的グリッド構成を示す図である。 架構の全体構成を示す斜視図である。 架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す図である。 架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す図である。 ダンパーの構成を示す図である。 ダンパーを付加した状態の柱と大梁の接合部を示す正面図である。 ダンパーを架設した状態の柱と大梁の接合部を示す側面図である。
次に、本発明の最も好ましい実施形態について図を参照して具体的に説明する。本実施形態は、鉄骨造3階建ての架構を有する工業化住宅における補強構造の例であり、図1は架構の平面的グリッド構成を示す図、図2は架構の全体構成を示す斜視図、図3、図4は架構を構成する柱と大梁の接合状態を示す図、図5はダンパーの構成を示す図、図6はダンパーを付加した状態の柱と大梁の接合部を示す正面図である。図7は、ダンパーを付加した状態の柱と大梁の接合部を示す側面図である。
図1、2に示すように、住宅Aは、妻方向が2スパンで合計6つの平面グリッドからなる3層の架構からなる。図2に示すように、住宅Aの架構は、1層から3層まで連続した通し柱形式の複数の柱1と、各階層において隣接する柱1どうしを連結する複数の大梁(梁)2と、大梁2の直下に格子状に形成された鉄筋コンクリート造の基礎3とで構成されている。なお、柱脚部は特開平01−203522号公報に開示された露出型固定柱脚工法にて基礎に接合されている。
この架構を構築したのち、相対する大梁2の間に小梁を適宜架け渡した上でALC(軽量気泡コンクリート)からなる床パネルを梁の上フランジに載置して床が構成され、外周部の大梁2にALCからなる壁パネルを取り付けることによって外壁が構成されて住宅Aの躯体が完成する。
図3、図4に示すように、柱1は、外形寸法が150mm角の角形鋼管からなる通し柱となっており、柱脚プレート1aの接合部から中途部分に形成された柱・柱接合部1bまでの部分である下部柱1cは、22mmの肉厚を有する横断面内に溶接による継目が存在しない角型鋼管であり、長さ方向についても、柱部材を長さ方向に連結する節を有することなく構成されている。下部柱1cの上端部に連結されて上部の柱を構成する上部柱1dは、外形寸法が下部柱1cと同一の150mm角ではあるが、下部柱1cよりも薄い4.5mm〜6.0mmの肉厚を有する角形鋼管で構成されている。
柱1は、各階層の標準的な階高(大梁上端面間の離間寸法)が2870mmとなるように大梁2の接合高さ位置が設定されており、当該高さ位置にて、柱1の各面には大梁2のエンドプレート2dの孔2eに対応する孔1fが複数個連続して穿たれており、これによって各階の大梁2を受ける梁受け部1eが形成されている。なお、各孔1fの内壁には、ネジが切られている。
梁受け部1eは、大梁2の孔2eと同様に、上部2段と最下段の計6個の孔1fが、大梁2と接合するボルト4を螺入する孔であり、下から2段目の孔2個は位置合わせ用の孔である。柱・柱接合部1bは、特開平6−180026号公報、特開平8−60740号公報等に記載された公知の接合部構造によって3階の大梁2との梁受け部1eの上方に形成されている。
柱1の各面において、2階の大梁2を受ける梁受け部1eから下方向及び上方向に所定寸法離間した位置と、3階の大梁2を受ける梁受け部1eの下方向に所定方向離隔した位置には、後述するダンパー(方杖材)5をボルト接合する為の複数のボルト孔が穿たれてダンパー5を受けるダンパー受け部1gが形成されている。下部柱1cはシームレスパイプで構成されているのでダンパー受け部1gはボルト孔を穿設するだけで容易に形成することができ接合の高さを自由に設定することができる。なお、各ボルト孔の内壁には、ネジが切られている。
このように、柱1のうち下部柱1bを横断面内に溶接による継目が存在しないシームレスパイプで構成したので、ダンパー5を受ける受け部として柱の所定位置にジョイントボックス等を溶接する必要がなく、溶接欠陥によって性能が低下する可能性がない。従って、耐震性能に対する柱1の信頼性を高めることができる。また、シームレスパイプで構成された範囲内においては、柱1の側面の任意の位置にボルト孔を設けるだけでダンパー5を接合することができるので、ダンパー5の接合高さの設定を、住宅Aに求められる構造耐力や有効な室内空間の広さ等に応じて容易に変更できる。
図3に示すごとく、大梁2は、一対のフランジ2a、2bをウェブ2cによって連結して形成されるH形鋼(形鋼)からなり、全ての階層における全ての大梁2は、梁成が250mm、上下のフランジ2a、2bの幅が125mm、厚みが9mm、ウェブ2cの厚みが6mmに統一されている。
大梁2の各端部には、柱1に接合されるエンドプレート2dが溶接により取り付けられている。該エンドプレート2dは、所定の厚さを有する平板状に形成されており、該エンドプレートには、横方向に中心から左右対称に2列、縦方向に等間隔に4段、同一径の孔2eが計8箇所穿たれている。孔2eのうち上部2段と最下段の計6個の孔が柱1との接合に使用するボルト4を挿通する為の孔である。
なお、下から2段目の孔2個は柱1に大梁2を取り付ける接合作業の際、「シノ」と称する挿嵌部材を挿し込んで位置合わせを行う為の孔であり、これら柱1と大梁2との接合には使用しない。このように柱1の梁受け部1eに大梁2のエンドプレート2dが重ね合わされ、これらを上述の如くボルト締結することにより、柱梁接合部Bが形成される。
当該柱梁接合部Bは、大梁2端部のエンドプレート2dを柱1に高力ボルト4により締結する剛接合であり、また、荷重作用時に被接合材である大梁2及び柱1が塑性域に達するまで破断しない保有耐力接合として構成されている。
詳述すると、柱と梁との接合部を剛接合とする場合、梁は地震発生時に躯体に作用する地震エネルギーを塑性変形により吸収する構造要素となることが期待されている。大きな地震動を受けている間に亘って梁の塑性化によるエネルギー吸収機構を保持するためには、当該梁を保持する柱との接合部である梁両端の柱梁接合部が破断してはならない。このように、梁の塑性変形能を充分に発揮させるべく、梁の塑性変形よりも先に柱梁接合部を破断させない接合状態を保有耐力接合という。
また、大梁2の上下フランジ2a、2bには、各種部材をボルト固定する為の孔群2a1、2b1が柱1に接合した状態でモジュールに基づく基準線を中心にして穿たれている。この構成は寸法も含め全ての階層の全ての大梁2に共通している。
また、図6に示す如く、大梁2の下フランジ2bにモジュールに基づいて設けられた複数の孔群のうち、柱1の配置の基準となる基準線(通り芯)から305mm(モジュールの1倍)の位置であって、当該柱1から見てもっとも手前に位置する孔群2b1及びその周囲は、ダンパー5との連結部2kとされており、当該連結部2kとダンパー5とがボルト接合されることでダンパー5は大梁2に連結されている。本実施例においてダンパー5は、柱1と大梁2に接合した状態でダンパー5の中心線Y1と大梁の長手方向の中心線X1とのなす角度θが70度となるように構成されている。
また、当該大梁2には、長さ方向の両端部間にて、上下フランジ間に無補強領域が形成されており、当該連結部2kは、当該無補強領域2pに設けられている。詳述すると、無補強領域2pは、柱梁接合部Bを形成する大梁2一方の梁端部の端縁から当該梁端部に最も近い上下フランジ2a、2bの孔群2a1、2b1まで形成されており、当該下フランジ2bの孔群2b1及びその周囲を連結部2kとすることで無補強領域2pに連結部2kが設けられることとなっている。
なお、本実施形態において、下フランジ2bの連結部2kと当該連結部2kに対向する上フランジ2aとの間の領域を含む領域を無補強領域2pとされているが、大梁2の一方の端部から他方の端部に亘ってスパン方向に長大を無補強領域2pとしても構わない。
図5に示すダンパー5は、低降伏点鋼からなる芯部材5aと、該芯部材5aに圧縮力を作用させた際の座屈を防止する為の座屈防止部材5bとからなる。
芯部材5aは、矩形断面を有する扁平で長尺な棒板状の矩形断面部材5a1と、該矩形断面部材5a1の一端に溶接され大梁2のフランジ2bの連結部2kに接合される平板状の第1座部5a2と、該矩形断面部材5a1の他端に溶接されて柱のダンパー受け部1gに接合される平板状の第2座部5a3とを備えている。
座屈防止部材5bは、一般構造用圧延鋼材からなる一対の平板5b1の間に一対の側板5b2を挟みこんで断面ロ字状とし、これらをボルト5b3により締結して構成され、当該座屈防止部材5bの中央の空隙部分に芯部材5aの矩形断面部材5a1が配されている。座屈防止部材5bの一対の平板5b1の間隔は芯部材5aの厚さよりも僅かに大きいものとされると共に、一対の側板5b2の間隔は芯部材5aの幅とよりも僅かに大きく形成されている。
これにより、座屈防止部材5bによって芯部材5aは弱軸まわりの面外曲げが規制され、これによって芯部材5aの座屈が規制されることとなっている。この結果、ダンパー5は引張力とともに圧縮力をも負担することができ、正負いずれの水平力に対しても抵抗することができるものとなっている。
図6に示すように、ダンパー5は、方杖型であり、第1座部5a2を大梁2の下フランジ2aにボルト接合し、第2座部5a3を柱1のダンパーとのダンパー受け部1gにボルト接合することによって、大梁2と柱1に亘って架設されている。
ここで、図7に示す如く、ダンパー5の矩形断面部材5a1の厚さ方向の中心線Y2と大梁2のウェブ2cの中心線X2とを一致させた状態でダンパー5の第1座部5a2は大梁2の下フランジ2bの連結部2k裏面に固着されている。
また、本実施形態においては、大梁2のウェブ2cの厚さ方向の中心線Xとダンパー5の矩形断面部材5aの板厚の厚さ方向の中心線Yとが一致しているが、一方の中心線が他方の板厚の厚さの範囲内に存在させることでこれら中心線を略一致させた構成も採用可能である。
また、大梁2とダンパー5の矩形断面部材5a1とは、以下の式(2)を満足している。
[数2]
tw×σyw ≧ tr×σur ・・・式(2)

ただし、tw:大梁のウェブの板厚
σyw:大梁のウェブの降伏点
tr:矩形断面部材の板厚
σur:矩形断面部材の引張強さ
なお、ダンパー5と大梁2との接合位置はここに限定はされず、柱1の配置の基準となる基準線(通り芯)からモジュールの整数倍の位置にある孔群を利用してダンパー5を接合することができる。例えば、大梁2との連結部2kを不動として柱1のダンパー受け部1gを柱梁接合部Bから離隔させていくと大梁2の長手方向とのなす角度が直角に近づいていき、ダンパー5による大梁2の補剛効果を高めるものとなる。また、ダンパー5と大梁2の間のなす角度を変えずに柱1のダンパー受け部1gを柱梁接合部Bから離隔させると共に大梁2の連結部2kを当該大梁2のスパン中央方向に移動させた場合も、大梁2に作用する曲げモーメントを小さくすることができ、補強という点では有効である。
また、1本の柱1に対してダンパー5が取付け可能な位置(レベル)は、2階の大梁2のレベルにあっては大梁2の上下フランジ2a、2bであり、3階の大梁2のレベルでは下フランジ2bであり、夫々のレベルで4面(X、Y夫々の方向について2ヶずつ)取り付けることが可能である。
このように、柱梁接合部Bの近傍にダンパー5を設けることにより、本実施形態の架構Cが構成される。
上記構成によれば、大梁2に設定された無補強領域2pにダンパー5との連結部2kが形成されているので、ダンパー5と大梁2とのボルト接続を補強部材等に邪魔されることなくきわめて容易に行うことが可能となっている。また、大梁2の連結部2kが無補強領域2pに形成されているため、当該大梁2とダンパー5との連結部2k周りに大梁2の他の領域と同様に断熱材を敷設することが可能となっている。のみならず、ウェブ2cには、当該接続部2kと対応する位置に梁貫通孔を形成することが可能であって、これによって配管等の設備設計の自由度が向上するものとなる。
また、ダンパー5は、大梁2のウェブの厚さ方向の中心線X2と矩形断面部材5a1との厚さ方向の中心線Y2とを一致させた状態で大梁2に連結され、かつ、これら大梁2のウェブ2cと矩形断面部材5a1とが上記式(2)を満たすため、ダンパー5が塑性化し、全断面が引張強さに達する最大引張り耐力又は圧縮強さに達する最大圧縮耐力に達しても、大梁2のウェブ2cは降伏することはなく、応力をダンパー5に伝達することができるので、ダンパー5は塑性変形を継続することで効果的にエネルギーを吸収することができるものとなる。
すなわち、ダンパー5の矩形断面部材5a1が最大引張耐力又は最大圧縮耐力に達し、仮に大梁2のウェブ2cは応力の不均一により局所的に降伏に達する部分があったとしても、大梁2のウェブ2c全体が降伏するには至ることはなく、ダンパー5を有効に効かせることができるものとなっているのである。
一方、仮に上記式(2)を満たさず、大梁の連結部においてウェブに沿ってスチフナ等の補強材も不存在とすると、大梁のウェブがダンパーよりも先に降伏に至り、ウェブに塑性変形を生じてしまう。そうすると、大梁のウェブの塑性化により当該柱梁接合部の層間変形角が大きくなり、結果的に建物全体の架構としての損傷が拡大してしまう。これに対し、上記実施形態は、上述の如く地震時であっても大梁2のウェブ2cをダンパー5よりも先に降伏させない構成であるため、大梁2自体の損傷は免れ、上記地震後であってもダンパー5の交換のみにより当該柱梁接合部Bの状態を地震前の初期状態に復帰させることが可能となっている。
また、地震時においては、ダンパー5が有効に地震エネルギーを吸収することとなるので、ダンパー5を不存在とする一般的な架構に比べて大梁2に作用する最大の曲げモーメントを小さくすることができ、しかもそれを大梁2の母材部分に作用させることができるので構造耐力上有利となる。例えばスパンが4270mmの場合、大梁2に作用する曲げモーメントはダンパー5接合部で最大となりその値はダンパー5を設置しない状態での2階の大梁2の端部に作用する曲げモーメントの凡そ89%となる。
また、ダンパー5は、矩形断面部材5a1を低降伏点鋼で形成されているため、ゴムや樹脂等の粘弾性体によりかかるダンパー5を形成する場合と異なり、温度や経年により性能が変化することなく、時間的安定性および耐久性も極めて高い。したがって、温度変化や時間経過(経年劣化)によらず、建物全体の架構としての耐震性を安定的に発揮させることができる。
なお、必要に応じて3階の大梁2のレベルにおいて上フランジ2aに取り付け可能にしてもよいし、R階の大梁2のレベルにおいて下フランジ2bに取り付け可能としてもよい。この場合、柱1の全てを長さ方向に継ぎ目のない1本のシームレスパイプで構成するのが好ましい。
また、形鋼として、溝形鋼、リップ溝形鋼、I形鋼およびH形鋼などを採用することができる。また、角形鋼管でもよい。材質は、鋼だけでなくアルミニウム等の建築構造材料でも良い。
さらに、本発明は、梁と柱を共に形鋼とする構成や、柱のみを形鋼とする構成にも採用することができる。また、純鉄骨造以外に鋼管柱にセメントミルクを充填したCFT造や鉄骨鉄筋コンクリート造にも採用可能である。
A…住宅
B…柱梁接合部
C…架構
1…柱
1a…柱脚プレート
1b…柱・柱接合部
1c…下部柱
1d…上部柱
1e…大梁との接合部
1f…孔
1g…ダンパー受け部
2…大梁(梁)
2a…上フランジ
2a1…孔群
2b…下フランジ
2b1…孔群
2c…ウェブ
2d…エンドプレート
2e…孔
2k…連結部
2p…無補強領域
3…基礎
4…ボルト
5…ダンパー(方杖材)
5a…矩形断面部材
5a1…本体
5a2…第1座部
5a3…第2座部
5b…座屈防止部材
5b1…平板
5b2…側板
5b3…ボルト

Claims (3)

  1. 鋼材からなる柱と梁とを接合してなる柱梁接合部の近傍に、前記柱と梁とに亘って方杖材を架設して補強された架構の補強構造であって、
    前記柱と梁の少なくともいずれか一方は、一対のフランジと該フランジを連結するウェブとを備える形鋼により形成されており、
    該形鋼には、長さ方向の両端部間に一方のフランジから他方のフランジに亘って補強材を不存在とする無補強領域が設けられると共に該一方のフランジの無補強領域に前記方杖材との連結部が形成されており、
    前記方杖材は、前記柱と梁とに亘って架設される矩形断面部材を備え、
    該矩形断面部材は、形鋼との間で以下の式(1)の関係を満足し、且つ、厚さ方向の中心線を前記形鋼のウェブの厚さ方向の中心線に一致又は略一致させた状態で、前記形鋼の一方のフランジの連結部に接続されている
    ことを特徴とする架構の補強構造。
    [数1]
    tw×σyw ≧ tr×σur ・・・式(1)
    ただし、tw:形鋼のウェブの板厚
    σyw: 形鋼のウェブの降伏点、
    tr:矩形断面部材の板厚
    σur:矩形断面部材の引張強さ
  2. 前記矩形断面部材は、矩形状の断面を有する矩形断面部と、該矩形断面部の端部小口に設けられる一対の座部とを備え、
    一方の座部が前記柱に取り付けられると共に、他方の座部が前記梁に取り付けられることで前記矩形断面部材が前記柱と梁に架設されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の架構の補強構造。
  3. 前記柱は、角形鋼管からなり、前記梁との接合部の全てに対応して前記方杖材との接合用のボルト孔が予め設けられており、
    前記方杖材は、前記ボルト孔を利用してボルト接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の架構の補強構造。
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