以下、液体吐出装置を印刷装置に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、印刷装置は、用紙などの媒体に液体の一例としてのインクを吐出することで文字や画像を形成するインクジェットプリンターである。
図1に示すように、複合機10は、媒体Sに印刷を行う印刷装置11と、媒体Sに印刷された画像などを読み取る画像読取装置12と、複合機10の各種の情報を表示する表示部13と、を備える。印刷装置11は、印刷前の媒体Sを収容する給送カセット14と、印刷済みの媒体Sが排出される第1の排出トレイ15と、を備える。また、画像読取装置12は、読み取り対象となる画像が印刷された媒体Sを支持する給送トレイ16と、読取済みの媒体Sが排出される第2の排出トレイ17と、を備える。
また、表示部13は、例えば、タッチディスプレイなど、表示機能に加え、操作機能を有するものであることが望ましい。表示部13が操作機能を有しない場合、複合機10は、表示部13の周囲に物理キーを設けることが望ましい。また、本実施形態の複合機10は、印刷機能及び画像読取機能に加えFAX機能を有するものとする。
次に、図2〜図16を参照して、印刷装置11について詳しく説明する。
図2に示すように、印刷装置11は、インクを吐出可能な複数のノズル21が開口する吐出ヘッド22と、液体供給源23のインクを吐出ヘッド22に向けて加圧供給するための供給機構24と、吐出ヘッド22に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構25と、を備える。また、印刷装置11は、吐出ヘッド22をメンテナンスするメンテナンス装置26と、印刷装置11の各種の構成要素を制御する制御部100と、を備える。
また、印刷装置11は、印刷範囲が媒体Sの幅全体に亘るように並列配置された複数の吐出ヘッド22を構成要素として含むラインヘッド31を備える。ラインヘッド31は、吐出ヘッド22にインクを供給するための液体供給路32を有する。液体供給路32の途中には、圧力調整機構25が設けられる。
液体供給源23は、例えば、収容容器33に収容された液体収容袋である。この液体供給源23は可撓性を有する袋からなり、内部にインクが収容されている。また、液体供給源23及び収容容器33は、インクの種類(本実施形態ではインクの色)毎に複数設けられる。また、供給機構24は、液体供給源23に連通する液体導出路34と、収容容器33の内部空間に連通する気体送出路35と、気体送出路35に設けられた加圧弁36(切替弁)と、気体送出路35を通じて収容容器33の内部空間に気体(例えば、空気)を送り込む加圧ポンプ37と、を備える。
そして、加圧ポンプ37の駆動によって気体送出路35を通じて気体が送出されると、その気体が収容容器33内に入って収容容器33内の圧力が上昇する。すると、液体供給源23を構成する袋が圧縮されて、内部に収容されたインクが加圧された状態で液体導出路34に流出する。なお、加圧ポンプ37は、液体導出路34内のインクが所定の正圧に保たれるように、液体導出路34の圧力低下に伴って随時駆動する。
液体導出路34は、複数に分岐して、その分岐した下流端が各吐出ヘッド22に対応するように、ラインヘッド31に設けられた液体供給路32に接続される。液体供給路32及び圧力調整機構25は、各吐出ヘッド22において、インクの種類毎に設けられる。
詳しくは、4つの液体供給源23に収容されたインクがそれぞれ4つの吐出ヘッド22に供給される場合、1つの吐出ヘッド22にはインクの種類毎に圧力調整機構25が4つ設けられる。なお、液体供給路32において圧力調整機構25の上流には、インク中の異物を濾過するためのフィルターを設けてもよい。
吐出ヘッド22には、インクの種類毎に設けられた液体供給路32を通じて供給されるインクが一時貯留される共通液室41と、複数のノズル21に個別に対応するように設けられる複数のキャビティ42と、各キャビティ42に対応するように設けられる複数のアクチュエーター43と、を備える。
図3に示すように、本実施形態では、吐出ヘッド22は、インクを吐出する複数のノズル21からなるノズル列27を、インクの種類毎(本実施形態では4種類毎)に複数有する。すなわち、ノズル列27とは、一の共通液室41からインクが供給されるノズル21の集合であって、本実施形態における「ノズル群」の一例に相当する。
詳しくは、吐出ヘッド22のノズル形成面28には、シアンインクを吐出する複数のノズル21cからなるノズル列27cと、マゼンタインクを吐出する複数のノズル21mからなるノズル列27mとが形成されている。また、ノズル形成面28には、イエローインクを吐出する複数のノズル21yからなるノズル列27yと、黒インクを吐出する複数のノズル21kからなるノズル列27kとが形成されている。
なお、以降の説明では、ノズル列27を構成するノズル21について、幅方向Xにおいて最も第1端側(図3では左側)のノズル21を第1のノズル21(1)とし、幅方向Xにおいて最も第2端側(図3では右側)のノズル21を第nのノズル21(n)とする。また、第1端側から数えてi番目のノズル21を第iのノズル21(i)とする。
また、吐出ヘッド22のノズル形成面28において、種類の異なるインクを吐出する複数のノズル列27は、幅方向Xと交差する媒体Sの搬送方向Fに並ぶように生成されている。吐出ヘッド22において、シアンインクを吐出する第iのノズル21c(i)と、マゼンタインクを吐出する第iのノズル21m(i)と、イエローインクを吐出する第iのノズル21y(i)と、黒インクを吐出する第iのノズル21k(i)とは、搬送方向Fに投影した場合に重複するように形成されている。
上述したように、ラインヘッド31は、複数の吐出ヘッド22として、第1の吐出ヘッド221、第2の吐出ヘッド222、第3の吐出ヘッド223及び第4の吐出ヘッド224を有する。これらの吐出ヘッド22は、ラインヘッド31において、幅方向X及び搬送方向Fに互い違いに配置されるとともに、幅方向Xにおいて一部が重なるように配置されている。こうして、これらの吐出ヘッド22に形成されたノズル21を搬送方向Fに投影すると、各色のインクを吐出するノズル21が幅方向Xに等間隔で並ぶこととなる。
また、第1の吐出ヘッド221のノズル列27の第2端側から数えて1以上のノズル21と、第2の吐出ヘッド222のノズル列27の第1端側から数えて1以上のノズル21とは、搬送方向Fに投影した場合に重複するように形成されている。詳しくは、第1の吐出ヘッド221の第n−1のノズル21(n−1)及び第2の吐出ヘッド222の第1のノズル21(1)並びに第1の吐出ヘッド221の第nのノズル21(n)及び第2の吐出ヘッド222の第2のノズル21(2)は、搬送方向Fに投影した場合に重複するように形成されている。これは、第2の吐出ヘッド222の第2端側のノズル21及び第3の吐出ヘッド223の第1端側のノズル21並びに第3の吐出ヘッド223の第2端側のノズル21及び第4の吐出ヘッド224の第1端側のノズル21においても同様である。
そして、以降の説明では、幅方向Xに隣り合うように設けられた吐出ヘッド22において、搬送方向Fに投影した場合に重複するように形成されたノズル21を「重複ノズル」とも言う。例えば、第1の吐出ヘッド221のノズル21(n−1)及びノズル21(n)並びに第2の吐出ヘッド222のノズル21(1)及びノズル21(2)は、第1の吐出ヘッド221及び第2の吐出ヘッド222の重複ノズルである。
こうして、本実施形態では、幅方向Xにおいて、隣り合う吐出ヘッド22が重なる領域と向き合う領域を搬送される媒体Sに対しては、何れの吐出ヘッド22の重複ノズルからもインクを吐出することができる。ただし、本実施形態では、重複ノズルのうち、一方ノズルからしかインクは吐出されないものとする。すなわち、本実施形態では、通常の場合には、第1の吐出ヘッド221は第1のノズル(1)から第n−1のノズル21(n−1)にインクを吐出させ、第2の吐出ヘッド222は第2のノズル(2)から第n−1ノズル21(n−1)にインクを吐出させるものとする。また、第3の吐出ヘッド223は第2のノズル(2)から第n−1のノズル21(n−1)にインクを吐出させ、第4の吐出ヘッド224は第2のノズル(2)から第nのノズル21(n)にインクを吐出させるものとする。
次に、図4を参照して、吐出ヘッド22の内部構成について説明する。
図4に示すように、アクチュエーター43は、圧電素子44を備え、圧電素子44が接するキャビティ42の壁は、キャビティ42の容積を増減させる方向に撓み変位可能な振動壁45となっている。
そして、通電によって圧電素子44が収縮変形すると、キャビティ42の振動壁45が、図4に二点鎖線で示すようにキャビティ42の容積を増大させる方向に弾性変形する。そして、キャビティ42の容積が増大すると、共通液室41に貯留されたインクがキャビティ42内に導入される。その後通電を停止すると、圧電素子44の収縮が解除された反動で、圧電素子44が接するキャビティ42の振動壁45が、図4に一点鎖線で示すようにキャビティ42の容積を減少させる方向に弾性変形する。
すると、キャビティ42の容積が急激に減少することによって、キャビティ42内のインクがノズル21内に押し出され、その押し出されたインクがノズル21から液滴として吐出される。インクの吐出後、ノズル21内には、毛細管力によって上流側となるキャビティ42から、吐出された液滴の分のインクが補給される。
また、細い管状をなす孔であるノズル21には毛細管力が作用している。このため、アクチュエーター43が駆動しない状態において、ノズル21のノズル形成面28における下流側開口であるノズル開口には、内側に凹状をなす液面であるメニスカスMが形成される。
次に、図2、図4及び図5を参照して、圧力調整機構25について説明する。
図2及び図4に示すように、圧力調整機構25は、共通液室41に連通する液体供給路32の途中に設けられ、ノズル21内のインクの圧力をノズル列27毎に調整する。
図4に示すように、圧力調整機構25は、容積を変更する方向に変位可能な可動壁51が壁面の一部を構成する圧力室52と、供給室53と、弁体54と、供給室53内において弁体54を付勢する第1付勢部材55と、圧力室52内において可動壁51を圧力室52の外側に向けて付勢する第2付勢部材56と、を備える。
圧力室52は、可動壁51とは別の位置に、加圧供給されるインクを流入させる流入孔57と、共通液室41を介してノズル21(ノズル列27)に連通する流出孔58と、を有する。供給室53は、流入孔57を介して圧力室52と連通可能である。弁体54は、基端部が供給室53に配置されるとともに先端部が流入孔57を通じて圧力室52内に突出する。そして、弁体54は、その基端部に設けられたシール部541が流入孔57を閉塞する閉塞位置(図4に示す位置)と流入孔57を開放する開放位置(図5に示す位置)とに変位可能な状態で、供給室53に収容された第1付勢部材55によって閉塞位置に向けて付勢される。また、第2付勢部材56は、可動壁51に付着された受圧板59に一端が接触するとともに圧力室52に突出した弁体54の先端部を囲むように他端が配置される。
また、圧力調整機構25は、圧力室52の外側から可動壁51を当該圧力室52の容積を減少させる方向に外力を作用させることで、圧力室52及び当該圧力室52に連通するノズル21内の圧力を高める増圧機構62を備える。増圧機構62は、例えば、カム機構など、モーターの回転運動を可動壁51を押す運動に変換する機構を採用してもよいし、圧力室52の外側の空間の圧力を高めることで可動壁51を押す機構を採用してもよい。
圧力調整機構25の弁体54は、供給室53に収容された第1付勢部材55に付勢されることにより、供給室53の圧力が上昇しても開放位置に移動することはない。一方、流出孔58からのインクの流出により圧力室52内の圧力が所定の圧力よりも低くなると、可動壁51が圧力室52の内側に向けて変位し、受圧板59が弁体54の先端を押すことにより、弁体54が開放位置に移動する。これにより、流入孔57を通じて供給室53内の加圧されたインクが圧力室52内に流入するので、圧力室52内の圧力が上昇する。
そして、圧力室52内の圧力上昇により可動壁51が圧力室52の外側に向けて変位し、受圧板59が弁体54の先端から離れると、弁体54が開放位置から閉塞位置に移動する。ここで、第2付勢部材56は、受圧板59が弁体54の先端に近づいたときに、受圧板59を、弁体54の先端から離れる方向に押し返す。
そのため、圧力室52の圧力が低下して、受圧板59が第1付勢部材55及び第2付勢部材56の付勢力に抗して弁体54の先端を押圧した場合に弁体54は開放位置に移動する。また、インクの流入により圧力室52内の圧力が正圧まで上昇する前に、第2付勢部材56の付勢力によって受圧板59が弁体54から離されるので、圧力室52内の圧力は、第2付勢部材56の付勢力に応じた負圧の範囲に保持される。
このように、弁体54の開放位置への移動は、可動壁51の変位に起因して生じる。そして、可動壁51の外面側は大気に開放されている。そのため、弁体54の開放位置への移動は、大気圧と圧力室52との差圧によって、モーター等の駆動力を用いることなく行われるので、圧力調整機構25のうち、増圧機構62を除く部分を、差圧弁機構61(あるいは自己封止弁)ともいい、差圧弁機構61による自律的な圧力調整機能を自己封止機能ともいう。
以上のように、圧力調整機構25は、供給機構24によって加圧供給されたインクの吐出ヘッド22への流動を規制可能であるとともに、その流動を規制した下流側におけるインクの圧力を所定の負圧の範囲内に保持可能である。
すなわち、圧力調整機構25においては、インク吐出時に、流出孔58からインクが流出して圧力室52の圧力が大気圧未満の所定の圧力よりも低下する。そして、圧力室52の容積を減少させる方向に変位する可動壁51が弁体54を開放位置に移動させる。これにより、流入孔57から加圧されたインクが圧力室52に流入して当該圧力室52の圧力が上昇する。また、加圧されたインクの供給により圧力室52の圧力が大気圧未満の所定の圧力以上になると、弁体54が再び上流側からのインクの流動を規制する。
なお、吐出ヘッド22に外力が加わった場合などには、その衝撃でノズル21に形成されたメニスカスMが壊れ、ノズル21からインクが漏出することがある。こうしたインクの漏出を抑制するために、圧力調整機構25は、第2付勢部材56の付勢力によってノズル21の上流に位置する圧力室52内を所定の負圧に保持して、ノズル21に形成されるメニスカスMの耐圧を大きくしている。
また、圧力調整機構25は、増圧機構62の駆動により、ノズル21から液面が膨出するようにノズル21内のインクを増圧させる増圧動作を行う。図5に示すように、増圧動作では、増圧機構62の駆動により、圧力室52の容積が減少する方向に可動壁51を変位させることで、弁体54を開放位置に移動させる。その後、所定時間をおいて、圧力室52の容積が増大する方向に可動壁51を変位させることで、弁体54を閉塞位置に戻す。これにより、加圧されたインクが所定量だけ、圧力室52に流入し、ノズル21内のインクの圧力が上昇する。すなわち、ノズル21内のインクの圧力である内圧が、ノズル21が開口する空間の圧力である外圧(本実施形態では大気圧)よりも高くなる。なお、このときの圧力上昇(流入させるインクの量)は、図5に示すように、メニスカスMがノズル開口よりも外に膨出するが、ノズル21からインク滴が落ちない程度であることが好ましい。
次に、図2を参照して、メンテナンス部の一例としてのメンテナンス装置26及び当該メンテナンス装置26による吐出ヘッド22のメンテナンスについて説明する。
印刷装置11では、吐出ヘッド22において、ノズル21の目詰まりまたは異物の付着などに起因して生じる吐出不良の予防または解消のために、フラッシング、キャッピング、吸引クリーニング及びワイピングなどのメンテナンスが行われる。メンテナンス装置26は、キャッピングを行うように構成されたキャップ81と、キャップ81を用いて吸引クリーニングを行うように構成された吸引機構82と、ワイピングを行うように構成されたワイピングユニット83と、を備える。
フラッシングとは、印刷とは無関係にノズル21から液滴を吐出(排出)することで、吐出不良の原因となる異物、気泡または変質したインク(例えば、溶媒成分の蒸発により増粘したインク)を排出するものである。フラッシングによって廃液として排出されたインクは、キャップ81によって受容してもよいし、フラッシングで発生する廃液を受容するためのフラッシングボックスを別途設けてもよい。また、キャップ81は吐出ヘッド22毎に設けてもよいし、各吐出ヘッド22に対してノズル列27毎(インクの種類毎)に設けてもよい。
また、キャップ81は、吐出ヘッド22のノズル21が開口する空間を閉空間として囲み形成するキャッピング位置と、ノズル21が開口する空間を開放空間とする離間位置との間で移動するように構成される。そして、キャップ81がキャッピング位置に配置されることにより、キャッピングが行われる。インクの吐出を行わない時には、キャッピングを行うことでノズル21の乾燥を抑制し、吐出不良の発生を予防する。また、フラッシングにより発生する廃インクを受容するときには、キャップ81を離間位置に配置する。なお、図示は省略したが、複数のキャップ81は、複数の吐出ヘッド22をキャッピングできるように、幅方向X及び搬送方向Fにおいて互い違いに配置されているものとする。
吸引機構82は、上流端がキャップ81に接続される吸引チューブ84と、吸引チューブ84の下流端が導入される廃液収容部85と、吸引チューブ84の途中位置に設けられた減圧ポンプ86と、吸引チューブ84において減圧ポンプ86とキャップ81の間に設けられた減圧弁87(切替弁)と、を備える。
そして、キャップ81をキャッピング位置に配置して形成した閉空間に、減圧ポンプ86の駆動によって生じた負圧を作用させることで、その負圧によってノズル21からインクが吸引排出される吸引クリーニングが実行される。吸引クリーニングによってノズル21から排出されたインクは、廃液として廃液収容部85に収容される。なお、吸引クリーニングの実行時には、キャップ81も吸引機構82の一部として機能する。また、本実施形態では、吸引クリーニングは、全ての吐出ヘッド22を対象に実行されるものとする。
ワイピングユニット83は、吐出ヘッド22のノズル形成面28を払拭する払拭部88と、払拭部88を保持する保持部89と、保持部89のノズル形成面28に沿う移動を案内するガイド軸91と、保持部89をノズル形成面28に沿って移動させるための駆動部92と、を備える。
払拭部88は、例えば弾性変形可能な樹脂からなる板状部材またはインクを吸収可能な布等の吸収部材で構成される。駆動部92が駆動すると、払拭部88が吐出ヘッド22に所定の接触圧で接触した状態で保持部89とともに移動する。これにより、払拭部88がノズル形成面28を中心に吐出ヘッド22を払拭するワイピングが実行される。払拭部88は、媒体Sの幅方向Xに移動しながら、複数の吐出ヘッド22のノズル形成面28を順次払拭する。
なお、印刷装置11の使用開始時には、まず、加圧ポンプ37の駆動によって気体送出路35を正圧にした後に吸引クリーニングを実行することにより、液体導出路34からノズル21に至るまでのインクが流れる領域にインクを充填する。これを「初期充填」と言う。そして、初期充填の実行後には、ノズル形成面28に付着したインクを払拭するためにワイピングを行い、さらにメニスカスMを整えるために、フラッシングを行う。このように、吸引クリーニングを行った後には、ワイピングとフラッシングを順次行うことが好ましい。
次に、図6を参照して、印刷装置11の電気的構成について説明する。
図6に示すように、制御部100は、印刷装置11の各種の設定情報や制御部100が実行するプログラムを記憶する記憶部101を備える。こうした点で、本実施形態において、制御部100は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピューターである。
また、印刷装置11は、吐出ヘッド22においてアクチュエーター43が出力する電気信号(電圧信号)を検出する検出部95と、給送カセット14から第1の排出トレイ15まで媒体Sを搬送する搬送部96と、FAXの送受信を行うFAX通信部97と、を備える。そして、制御部100の入力側インターフェースには、検出部95が接続され、制御部100の出力側インターフェースには、加圧弁36、加圧ポンプ37、アクチュエーター43、増圧機構62、搬送部96、キャップ81、減圧ポンプ86、減圧弁87及び駆動部92が接続されている。
そして、制御部100は、「液体の吐出指令」の一例としての印刷ジョブに基づいて、吐出ヘッド22及び搬送部96を始めとする各種構成の駆動を制御することで、媒体Sに対する印刷を行う。なお、本実施形態の印刷装置11のような、いわゆるラインヘッドタイプのプリンターでは、所定の搬送速度を維持しつつ搬送される媒体Sに対してインクを吐出することで印刷が行われる。
また、複数の媒体Sに対して連続して印刷を行う場合には、所定の搬送速度で逐次搬送される複数の媒体Sに対してインクが吐出される。ここで、複数の媒体Sに対して連続して印刷を行う場合には、複数の媒体Sのうちの一の媒体Sに対する印刷を開始してから当該一の媒体Sに対する印刷を終了するまではインクが吐出されるが、一の媒体Sに対する印刷が終了してから次の媒体Sに対する印刷を開始するまではインクが吐出されない。
すなわち、複数の媒体Sが逐次搬送される搬送期間では、吐出ヘッド22からインクが吐出されたり吐出されなかったりする。そこで、複数の媒体Sに対して連続して印刷を行う場合において、媒体Sに対して印刷が行われているときの媒体Sの搬送期間を「吐出搬送期間」と言い、媒体Sに対して印刷が行われていないときの媒体Sの搬送期間を「不吐出搬送期間」と言う。
また、制御部100は、ノズル21の吐出不良の検出及び吐出ヘッド22のメンテナンスを実行させる。ここで、制御部100が実行させるメンテナンスには、所定の条件を満たした時に自動で実行される「自動メンテナンス」と、印刷装置11のユーザーからのメンテナンスの指令に基づいて手動で実行される「手動メンテナンス」とがある。すなわち、自動メンテナンスはユーザーの意思に関わらず制御部100の判断に基づいて実行されるメンテナンスであり、手動メンテナンスはユーザーの意思に基づいて実行されるメンテナンスである。
次に、吐出ヘッド22に形成されたノズル21に吐出不良が生じているか否かを判断するノズルチェックについて説明する。本実施形態のノズルチェックには、ユーザーの判断が伴わない第1のノズルチェックと、ユーザーの判断が伴う第2のノズルチェックとがある。
まず、図4を参照して、第1のノズルチェックについて説明する。
図4に示すように、本実施形態では、吐出ヘッド22に設けられた振動壁45は、アクチュエーター43に対して駆動電圧が印加された場合、次の駆動電圧が印加されるまでの間に減衰しつつ振動(残留振動)する。このように、振動壁45が残留振動する場合には、アクチュエーター43は、駆動電圧の印加に伴って振動壁45を振動させる場合とは反対に、振動壁45の残留振動に応じた電気信号を出力する。
また、吐出不良が生じていないノズル21(以下「正常ノズル」とも言う。)における残留振動の振動態様と、吐出不良が生じたノズル21(以下「不良ノズル」とも言う。)における残留振動の振動態様とは異なる。詳しくは、ノズル21内に気泡が混入している場合には、ノズル21内に気泡が混入していない場合(ノズル21の状態が良好な場合)と比較して、振動壁45の残留振動の周波数が高くなる傾向がある。また、ノズル21内でインクが増粘している場合には、ノズル21内でインクが増粘していない場合(ノズル21の状態が良好な場合)と比較して、振動壁45の残留振動の周波数が低くなる傾向がある。
そのため、圧電素子44の駆動に伴う振動壁45の残留振動に応じて出力されるアクチュエーター43の電気信号を検出部95で検出し、制御部100が当該電気信号の周波数を正常時の周波数と比較することで、検査対象のノズル21が正常ノズルであるか不良ノズルであるかを判定することが可能となる。こうした点で、本実施形態では、制御部100、検出部95及びアクチュエーター43が「吐出不良検出部」の一例を構成する。なお、正常時の残留振動の周波数は、記憶部101に記憶しておけばよい。
また、ノズル21、アクチュエーター43及び振動壁45は1:1の関係で設けられているため、全てのノズル21について第1のノズルチェックを実行する場合には、タイミングをずらしてアクチュエーター43を駆動し、検査対象とするノズル21を順次切り替えることとなる。
以上説明した第1のノズルチェックは、ノズル21からインクが吐出されない程度に、アクチュエーター43を駆動することで、インクを消費することなく、不良ノズルの有無を高速に検出することができる。その一方で、第1のノズルチェックでは、ノズル21のメニスカスMに触れること無く、当該ノズル21を閉塞するように吐出ヘッド22のノズル形成面28に紙粉などの異物が付着している場合には、そのノズル21の吐出不良を検出することができない場合がある。すなわち、第1のノズルチェックは、ノズル21内のインクの状態の変化に応じた振動壁45の残留振動の変化に基づいて、吐出不良を検出するものであるため、ノズル21内のインクに接することなく当該ノズル21から吐出されるインクの飛翔を妨げる場合には、そのノズル21の吐出不良を検出できない場合がある。
こうして、第1のノズルチェックでは、不良ノズルを検出することが可能であるが、現実には吐出不良が発生しているノズル21を正常ノズルと誤検出するおそれがある。なお、以降の説明では、第1のノズルチェックによって、吐出不良が検出されたノズル21を「不良ノズル」と言い、吐出不良が検出されなかったノズル21を「正常ノズル」と言う。そして、第1のノズルチェックによって、吐出不良が検出されなかったものの、現実には吐出不良が生じているノズル21を「真の不良ノズル」と言う。
続いて、図7を参照して、第2のノズルチェックについて説明する。
本実施形態の印刷装置11は、吐出ヘッド22から媒体Sに向けて正常にインクが吐出されているか否かを確認するために、ユーザーからのパターン印刷指令(パターン形成指令)に基づいて、吐出ヘッド22のノズル21から媒体Sに向けて吐出不良の確認用のパターン(以下、「ノズルチェックパターンPT」とも言う。)を印刷する。
図7に示すように、本実施形態のようなラインヘッドタイプの印刷装置11であれば、幅方向Xに亘って帯状のノズルチェックパターンPTが色毎に印刷される。すなわち、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及び黒インクを吐出するノズル21c,21m,21y,21kの吐出不良を確認するためのノズルチェックパターンPTc,PTm,PTy,PTkが搬送方向Fに並ぶように印刷される。
例えば、第1の吐出ヘッド221のマゼンタインクを吐出するノズル21mのうち、第1端側に形成されたノズル21mに吐出不良が生じると、図7に示すようなノズルチェックパターンPTmが印刷される。また、第3の吐出ヘッド223の黒インクを吐出するノズル21kのうち、幅方向Xにおける中央付近に形成されたノズル21kに吐出不良が生じると、図7に示すようなノズルチェックパターンPTkが印刷される。こうして、ノズルチェックパターンPTを印刷することで、ユーザーは、何れのノズル21において吐出不良が生じているか否かを判断することができる。
したがって、第2のノズルチェックは、ノズルチェックパターンPTの印刷と、印刷されたノズルチェックパターンPTに基づいて吐出不良が生じているノズル21があるか否かをユーザーが判断することで行われる。
また、ノズルチェックパターンPTの印刷時には、印刷ジョブに基づく印刷時と同様に、幅方向Xにおいて隣り合う吐出ヘッド22の重複ノズルのうち一方のノズル21のみからインクが吐出されるものとする。これは、重複ノズルの双方のノズル21からインクが吐出されると、当該重複ノズルのうち、印刷時にインクを吐出することとなっているノズル21に吐出不良が生じていても、他のノズル21からのインクの吐出によって、前者のノズル21の吐出不良を見逃すおそれがあるためである。例えば、第1の吐出ヘッド221の第n−1のノズル21k(n−1)に吐出不良が生じている場合に、第2の吐出ヘッド222の第1のノズル21k(1)からインクが吐出されると、前者のノズル21k(n−1)の吐出不良を見逃すおそれがあるためである。
こうして、第2のノズルチェックは、現実にノズルチェックパターンPTを媒体Sに対して印刷するため、吐出不良の検出に時間を要するとともにインクを消費する。その一方で、ノズルチェックパターンPTの印刷は、印刷ジョブに基づく印刷を行う場合と同条件で行われるため、印刷品質に影響を与えるほどの不良ノズルを見逃すおそれが小さくなる。すなわち、第2のノズルチェックでは、第1のノズルチェックでは、検出できない真の不良ノズルを検出できる可能性が高い。
次に、図8及び図9を参照して、不良ノズルからのインクの吐出を正常ノズルからのインクの吐出で補完する補完処理について説明する。
図8に示すように、例えば、ある吐出ヘッド22の第i−3のノズル21(i−3)から第i+3のノズル21(i+3)までの全てのノズル21の中に不良ノズルがない場合には、これらのノズル21は、媒体Sに対して隙間なくインク滴Idを吐出することができる。
ところが、第iのノズル21(i)が不良ノズルとなる場合には、第iのノズル21(i)は、媒体Sに対して隙間なくインク滴Idを吐出することができなくなる。したがって、第iのノズル21(i)が不良ノズルであるにも関わらず、印刷を行う場合には、当該第iのノズル21(i)がインクを吐出すべき媒体S上の領域にインクが吐出されなくなることで、印刷品質が低下する。そこで、印刷品質の低下を抑制するためにメンテナンスを実行することが考えられるが、不良ノズルが発生する度にメンテナンスを実行すると、当該メンテナンスの実行に伴って印刷を行うことのできないロスタイムが増大するおそれがある。
そこで、本実施形態では、不良ノズルからのインクの吐出を正常ノズルからのインクの吐出で補う補完が可能な場合には、当該補完を行った上で印刷を行うことで、印刷品質の低下及びダウンタイムの増大を抑制することとした。なお、本実施形態では、補完方法の違いによって、「近傍補完」、「代替補完」及び「混色補完」の3通りの補完方法がある。
初めに、近傍補完について説明する。
図8に示すように、近傍補完は、吐出ヘッド22のノズル列27において、不良ノズル(ノズル21(i))がある場合、当該不良ノズルの両隣のノズル(ノズル21(i−1),21(i+1))のインクの吐出量を増大させる。こうして、不良ノズルがインクを吐出すべき媒体S上の領域にインク滴Idが吐出されない事態を抑制する。
ただし、不良ノズルの両隣のノズル(ノズル21(i−1),21(i+1))のインクの吐出量を増大させるだけでは次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、不良ノズルの両隣のノズル(ノズル21(i−1),21(i+1))が吐出するインク滴Idと、当該両隣のノズル21から見て不良ノズルとは反対側で隣り合うノズル(ノズル21(i−2),21(i+2))が吐出するインク滴Idとが媒体S上で重複する面積が増大することで、印刷品質に影響を与えるおそれがある。
そこで、不良ノズルの両隣のノズル21(ノズル21(i−1),21(i+1))のインクの吐出量を増大させた場合には、当該両隣のノズル21から見て不良ノズルとは反対側で隣り合うノズル21(ノズル21(i−2),21(i+2))のインクの吐出量を減少させることが望ましい。これによれば、不良ノズルの両隣のノズル21が吐出するインク滴Idと、当該両隣のノズル21から見て不良ノズルとは反対側で隣り合うノズル21が吐出するインク滴Idとが媒体S上で重複する面積が増大することが抑制され、印刷品質の低下が抑制される。
こうして、近傍補完とは、不良ノズルからのインクの吐出を、当該不良ノズルの近傍のノズル21からのインクの吐出で補完するものである。このため、近傍補完は、全てのノズルについて行うことができる。
続いて、代替補完について説明する。
図9に示すように、本実施形態では、幅方向Xにおいて隣り合う吐出ヘッド22は、重複ノズルを有している。このため、重複ノズルを有する2つの吐出ヘッド22のうち、一方の吐出ヘッド22の重複ノズルが不良ノズルとなった場合であっても、他方の吐出ヘッド22の重複ノズルからインクを吐出することができる。
例えば、第2の吐出ヘッド222の第n−1のノズル21(n−1)が不良ノズルとなった場合には、第3の吐出ヘッド223の第1のノズル21(1)で、インクの吐出を補完することができる。また、第3の吐出ヘッド223の第2のノズル21(2)が不良ノズルとなった場合には、第2の吐出ヘッド222の第nのノズル21(n)で、インクの吐出を補完することができる。
こうして、代替補完とは、幅方向Xに隣り合う2つの吐出ヘッド22において、搬送方向Fに投影した場合に重複するように形成された重複ノズルのうち、一方のノズル21が不良ノズルとなったときに、当該一方のノズル21からのインクの吐出を他方のノズル21からのインクの吐出で補完するものである。このため、重複ノズルでないノズル21について代替補完を行うことはできない。
最後に、混色補完について説明する。
本実施形態のように、カラーインクとして、シアンインク、イエローインク及びマゼンタインクを吐出可能な印刷装置11においては、これらのカラーインクを媒体S上で重なるように吐出することで黒を表現することができる。すなわち、黒インクを吐出するノズル21に吐出不良が発生した場合であっても、当該不良ノズルと搬送方向Fに投影した場合に重複するように形成されたカラーインクを吐出するノズル21c,21m,21yからインクを吐出することで補完することができる。
例えば、図9に示すように、第3の吐出ヘッド223において黒インクを吐出する第iのノズル21k(i)が不良ノズルとなった場合、当該不良ノズルからのインクの吐出を、第3の吐出ヘッド223の第iのノズル21c(i),21m(i),21y(i)からのシアンインク、マゼンタインク及びイエローインクの吐出で補完することができる。
こうして、混色補完とは、黒インクを吐出するノズル21kが不良ノズルとなったときに、当該不良ノズルからのインクの吐出をカラーインクを吐出するノズル21c,21m,21yからのインクの吐出で補完するものである。このため、混色補完は、カラーインクを吐出するノズル21に対して行うことはできない。
以上より、本実施形態では、制御部100は、3種類の補完を行うことができる。なお、補完が可能であるか否かは、制御部100によって不良ノズル毎に判断される。また、制御部100は、ある不良ノズルについて、近傍補完を行うことができる場合、当該不良ノズルについて代替補完及び混色補完を行わない。また、制御部100は、ある不良ノズルについて、代替補完を行うことができる場合、当該不良ノズルについて混色補完を行わない。すなわち、本実施形態では、補完の優先順位が、近傍補完、代替補完及び混色補完の順に定められている。また、制御部100は、不良ノズルに対して何れかの補完を行うことができるならば、当該不良ノズルについて補完可能であると判断する。
なお、補完処理は、不良ノズル毎に行われるものであり、印刷ジョブの内容に基づいて補完の内容が変化するものではない。このため、補完処理は、第1のノズルチェックの結果のみに基づいて行うことができる。
次に、不良ノズルの吐出不良を回復するためのメンテナンスについて説明する。
さて、上述したように、本実施形態の印刷装置11では、不良ノズルの吐出不良を解消するために実行されるメンテナンスとして、キャッピングによって形成した閉空間に負圧を作用させることでノズル21からインクを強制的に吸引する「吸引クリーニング」を行うことができる。
そして、吸引クリーニングを実行する場合においては、キャッピングによって形成された閉空間に負圧を作用させる時間を長くすることでインクの吸引時間を長くしたり、当該閉空間に作用させる負圧を高くすることでインクの吸引速度を早くしたりすることで、不良ノズルの吐出不良を回復させる能力を高めることができる。すなわち、吸引クリーニングを実行する場合には、減圧ポンプ86の駆動を制御することによって、不良ノズルに対する吐出不良を回復させる能力を変更することができる。
以降の説明では、説明理解の容易のために、吐出不良を回復させる能力が比較的低い吸引クリーニングを弱クリーニングとも言い、吐出不良を回復させる能力が中程度の吸引クリーニングを中クリーニングとも言い、吐出不良を回復させる能力が比較的高い吸引クリーニングを強クリーニングとも言う。また、不良ノズルの吐出不良を回復させる能力が高いメンテナンス(吸引クリーニング)のことを「強度の高いメンテンナンス」とも言い、不良ノズルの吐出不良を回復させる能力が低いメンテナンスのことを「強度の低いメンテンナンス」とも言う。すなわち、本実施形態のメンテナンス装置26は、メンテナンスの強度を変更可能であると言うことができる。
ところで、メンテナンスの実行に伴うインクの消費量と、吐出不良を回復させる能力(メンテンナンス強度)との間には比例関係がある。すなわち、強度が高いメンテナンスほど、当該メンテナンスの実行に伴うインクの消費量が多くなりやすく、強度が低いメンテナンスほど、当該メンテナンスの実行に伴うインクの消費量が少なくなりやすい。
このため、不良ノズルの数が少なく軽度の吐出不良が生じているにも関わらず、強度の高いメンテナンスを実行すると、軽度の吐出不良を回復するために必要なインクよりも過剰にインクが消費されるおそれがある。また、不良ノズルの数が多く重度の吐出不良が生じているにも関わらず、強度の低いメンテナンスを実行すると、当該メンテナンスを実行しても、重度の吐出不良が回復しないおそれがある。
そこで、本実施形態では、制御部100は、第1のノズルチェックの結果に基づいて、メンテンナンス強度を選択することとした。詳しくは、制御部100は、手動メンテナンスを実行する場合において、不良ノズルを検出していない場合には、不良ノズルを検出している場合に比較して、メンテナンスの強度を低くすることとした。また、制御部100は、自動メンテナンス及び手動メンテナンスを実行する場合において、不良ノズルの数が少ない場合には、不良ノズルの数が多い場合よりも、メンテンナンス強度を低くすることとした。
なお、本実施形態では、第1のノズルチェックによって検出された不良ノズルの数や、当該不良ノズルを補完できる割合に応じて、不良ノズルの発生状況を「0(零)」〜「3」までの4段階で表現した吐出不良レベルLvを設定する。そして、吐出不良レベルLvに応じて、メンテンナンスを実行する場合の強度を変更する。
ここで、本実施形態における吐出不良レベルLvとは、インクの色毎に設定されるものである。そして、吐出不良レベルLvが「0(零)」の場合とは吐出不良が発生していない場合であり、吐出不良レベルLvが「1」の場合とは軽度の吐出不良が発生している場合であり、吐出不良レベルLvが「2」の場合とは中度の吐出不良が発生している場合であり、吐出不良レベルLvが「3」の場合とは重度の吐出不良が発生している場合である。
詳しくは、吐出不良レベルLvが「0(零)」である場合とは、不良ノズルが「0(零)」の場合であり、吐出不良レベルLvが「1」〜「3」である場合とは、「1」以上の不良ノズルが発生している場合である。また、吐出不良レベルLvが「1」である場合とは、全ての不良ノズルについて補完可能である場合であり、吐出不良レベルLvが「2」又は「3」である場合とは、全ての不良ノズルについて補完不能である場合である。
さらに、吐出不良レベルLvが「2」である場合とは、1つのノズル列27における不良ノズル数が規定ノズル数未満の場合であり、吐出不良レベルLvが「3」である場合とは、1つのノズル列27における不良ノズル数が規定ノズル数以上の場合である。なお、規定ノズル数は、1つのノズル列27を構成するノズル21の数の所定の割合(例えば、10%)のノズル数である。
こうして、本実施形態では、制御部100は、メンテンナンスの実行時において、吐出不良レベルLvが低い場合には、吐出不良レベルLvが高い場合よりも、メンテナンスの強度を低くすると言うこともできる。
次に、図10に示すフローチャートを参照して、初期充填を行うために制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、液体供給源23が装着される度に実行される処理ルーチンである。
図10に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御部100は、初期充填を行う(ステップS11)。すなわち、制御部100は、加圧弁36及び加圧ポンプ37の駆動を制御して、液体供給源23から下流側に向けてインクを加圧供給させる。また、制御部100は、キャップ81、減圧ポンプ86及び減圧弁87の駆動を制御して、吸引クリーニングを実行させる。こうして、液体供給源23から供給されるインクが吐出ヘッド22のノズル21まで到達し、印刷装置11におけるインク供給経路にインクが満たされる。初期充填が終了すると、制御部100は、自動メンテナンス処理を実行し(ステップS12)、印刷ジョブを受け付け可能な受付状態とする(ステップS13)。その後、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
次に、図11に示すフローチャートを参照して、印刷開始時に制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、印刷装置11に印刷ジョブが投入される度に実行される処理ルーチンである。
図11に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御部100は、自動メンテナンスフラグがオンか否かを判定し(ステップS21)、自動メンテナンスフラグがオンの場合(ステップS21:YES)、自動メンテナンス処理を実行する(ステップS22)。ここで、自動メンテナンスフラグとは、自動メンテナンス処理を実行するか否かを選択するためのフラグであり、ユーザーが表示部13を介して設定できるものである。その後、制御部100は、投入された印刷ジョブに基づく印刷を行わせ(ステップS23)、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、先のステップS21において、自動メンテナンスフラグがオフの場合(ステップS21:NO)、制御部100は、フラッシングを実行させ(ステップS24)、第1のノズルチェックを実行させる(ステップS25)。そして、制御部100は、検出された不良ノズルについて補完処理を実行し(ステップS26)、ステップS23にその処理を移行する。すなわち、この場合には、自動メンテナンス処理を実行することなく、印刷が行われることとなる。さらに、この場合には、ステップS26において、検出された不良ノズルのうち、補完可能な不良ノズルについて補完が行われ、補完不能な不良ノズルについて補完が行われない。
次に、図12に示すフローチャートを参照して、印刷ジョブに基づく印刷中に制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、印刷ジョブに基づく印刷中に所定の制御サイクルで実行される処理ルーチンである。
図12に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御部100は、インクの吐出を伴わない搬送期間である不吐出搬送期間であるか否かを判定し(ステップS31)、不吐出搬送期間でない場合(ステップS31:NO)、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、不吐出搬送期間である場合(ステップS31:YES)、制御部100は、第1のノズルチェックを実行させる(ステップS32)。そして、制御部100は、検出された不良ノズルについて補完処理を実行し(ステップS33)、本実処理ルーチンを一旦終了する。なお、ステップS33では、検出された不良のうち、補完可能な不良ノズルについて補完が行われ、補完不能な不良ノズルについて補完が行われない。
また、上記処理ルーチンによれば、不吐出搬送期間では、比較的時間を要しない補完処理については実行されるが、比較的時間を要するメンテナンスについては実行されない。このため、1つの印刷ジョブに基づいて、複数の媒体Sに対する印刷を行っている間に、メンテナンスの実行に起因するロスタイムの増大が抑制される一方、補完処理の実行により印刷品質の低下が抑制される。
また、図12に示すフローチャートにおいて、ステップS32の第1のノズルチェックは、媒体Sに印刷を終えてから次の媒体Sに対する印刷を開始する前に実行されるものである。この点で、本実施形態では、ステップS32が、媒体Sに対する印刷が終了する度にノズル21の吐出不良を検出する「媒体間吐出不良検出」の一例に相当する。
次に、図13に示すフローチャートを参照して、印刷ジョブに基づく印刷の終了後に制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、印刷ジョブに基づく印刷が終了する度に実行される処理ルーチンである。
図13に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御部100は、直近のメンテナンスを実行してからの媒体Sの印刷枚数Pnが規定枚数PnTh以上となったか否かを判定する(ステップS41)。ここで、規定枚数PnThとは、メンテナンスを行わない状態で媒体Sに対する印刷を継続することで、吐出ヘッド22のノズル形成面28に異物(例えば、紙粉)が付着し、印刷品質に影響を与え始めるときの媒体Sの印刷枚数である。
そして、印刷枚数Pnが規定枚数PnTh以上である場合(ステップS41:YES)、制御部100は、定期メンテナンスを実行させ(ステップS42)、本処理ルーチンを一旦終了する。すなわち、自動メンテナンスフラグの状態に関わらず、印刷品質が低下することが明らかである場合には、定期メンテナンスが実行される。なお、定期メンテナンスは、ノズル形成面28に付着した異物を除去する目的を達成できる強度のクリーニングを行えばよい。
一方、印刷枚数Pnが規定枚数PnTh未満である場合(ステップS41:NO)、制御部100は、自動メンテナンスフラグがオンか否かを判定し(ステップS43)、自動メンテナンスフラグがオンの場合(ステップS43)、自動メンテナンス処理を実行する(ステップS44)。その後、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、先のステップS43において、自動メンテナンスフラグがオフの場合(ステップS43:NO)、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
次に、図14に示すフローチャートを参照して、ステップS12,S22,S44の自動メンテナンス処理を実行するために制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。
図14に示すように、制御部100は、第1のカウンターCnt1及び第2のカウンターCnt2に「0(零)」をセットする(ステップS51)。第1のカウンターCnt1は、吐出不良を回復させるメンテナンスの実行回数を計数するものであり、第2のカウンターCnt2は、吐出不良レベルLvが重度の吐出不良が発生していることを示す「3」であった回数を計数するものである。
続いて、制御部100は、吐出不良レベル判定処理を実行し(ステップS52)、判定された吐出不良レベルLvが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS53)。吐出不良レベルLvが「0(零)」である場合(ステップS53:YES)、不良ノズルが検出されておらずメンテンナンスを実行する必要がないため、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、吐出不良レベルLvが「0(零)」でない場合(ステップS53:NO)、制御部100は、吐出不良レベルLvが「1」であるか否かを判定し(ステップS54)、吐出不良レベルLvが「1」である場合(ステップS54:YES)、メンテナンスを実行させることなく補完処理を実行する(ステップS55)。なお、ステップS54が肯定判定されてステップS55が実行される場合には、吐出不良レベルLvが「1」であるため、全ての不良ノズルについて補完が行われる。
一方、吐出不良レベルLvが「1」でない場合(ステップS54:NO)、すなわち、補完不能な不良ノズルがある場合、制御部100は、吐出不良レベルLvが「3」であるか否かを判定し(ステップS56)、吐出不良レベルLvが「2」である場合(ステップS56:NO)、その処理を後述するステップS59に移行する。
一方、吐出不良レベルLvが「3」である場合(ステップS56:YES)、制御部100は、第2のカウンターCnt2に「1」を加算し(ステップS57)、その後、第2のカウンターCnt2が第2のカウンター判定値CntTh2以上となったか否かを判定する(ステップS58)。第2のカウンターCnt2が第2のカウンター判定値CntTh2未満である場合(ステップS58:NO)、制御部100は、次のステップS59にその処理を移行する。
なお、ステップS58の判定は、メンテンナンスを繰り返し実行しても吐出不良レベルLvが依然として「3」である場合、すなわち、吐出不良が回復しない不良ノズルが多くある場合に、第1のカウンター判定値CntTh1に相当する回数のメンテナンスが実行されることを抑制するための処理である。言い換えれば、メンテナンスを繰り返し実行しても吐出不良が回復しない不良ノズルがあることを理由に、メンテナンスが繰り返し実行されると、インクが無駄に消費されることになるため、そうした無駄なメンテナンスの実行を抑制するための処理である。このため、第2のカウンター判定値CntTh2は、第1のカウンター判定値CntTh1未満でなければならない。
ステップS59において、制御部100は、第1のカウンターCnt1が「規定回数」の一例としての第1のカウンター判定値CntTh1以上であるか否かを判定する。第1のカウンターCnt1が第1のカウンター判定値CntTh1以上である場合(ステップS59:YES)、すなわち、メンテナンスを繰り返し実行しても吐出不良レベルLvが「1」以下にならなかった場合、制御部100は、補完不能な不良ノズルが発生している旨を報知する(ステップS60)。
なお、補完不能な不良ノズルが発生している旨の報知は、例えば、表示部13にメッセージを表示させることにより行えばよい。また、ステップS60を実行するにあたり、メンテナンスの実行回数(第1のカウンターCnt1)が規定回数(第1のカウンター判定値CntTh1)に達した旨を合わせて報知してもよい。
その後、制御部100は、その処理をステップS55に移行する。なお、ステップS59が肯定判定されてステップS55が実行される場合には、吐出不良レベルLvが「2」であるため、不良ノズルのうち補完可能な不良ノズルについて補完が行われる。
一方、第1のカウンターCnt1が第1のカウンター判定値CntTh1未満である場合(ステップS59:NO)、制御部100は、メンテンナンス強度を設定する(ステップS61)。ここで、メンテンナンス強度は、吐出不良レベルLvが大きいほど高くなるように設定される。このため、補完不能な不良ノズルが発生していたり、不良ノズルが多く発生していたりする場合ほど、メンテナンスの強度が高くなるため、不良ノズルの発生状況に応じた適切な強度のメンテナンスを実行することができる。
また、メンテナンスの強度は、第1のカウンターCnt1の値が大きいほど高くなるように設定してもよい。これによれば、メンテナンスを繰り返し実行する場合には、メンテナンスの実行回数に応じてメンテナンスの強度が高くなる。このため、比較的高い強度のメンテナンスを実行しなければ回復しない吐出不良が生じている不良ノズルがある場合に、比較的低い強度のメンテナンスが繰り返し実行されることで、メンテナンスを繰り返し実行しても不良ノズルの吐出不良が回復しない事態を回避することができる。
そして、制御部100は、メンテナンスの強度に応じたメンテナンスを実行し(ステップS62)、第1のカウンターCnt1に「1」を加算する(ステップS63)。その後、制御部100は、その処理を先のステップS52に移行する。
一方、先のステップS58において、第2のカウンターCnt2が第2のカウンター判定値CntTh2以上である場合(ステップS58:YES)、制御部100は、ノズル異常フラグがオンの全てのノズル21について、補完可能か否かを判定する(ステップS64)。ノズル異常フラグがオンの全てのノズル21について補完可能でない場合(ステップS64:NO)、制御部100はヘッド異常フラグをオンにして(ステップS65)、その処理をステップS60に移行する。一方、ノズル異常フラグがオンの全てのノズル21について補完可能である場合(ステップS64:YES)、制御部100は、その処理をステップS55に移行する。
ここで、ノズル異常フラグとは、全ての吐出ヘッド22の全てのノズル21毎に設定されるフラグであり、正常にインクを吐出できない状態が継続される場合にオンにされ、そうでない場合にオフにされる。また、ヘッド異常フラグとは、印刷装置11に対して設定されるフラグであり、正常に印刷を行えない可能性が高い場合にオンにされ、そうでない場合にオフにされる。以降の説明では、ノズル異常フラグがオンのノズル21を「異常発生ノズル」とも言う。
さて、本実施形態では、異常発生ノズルがある場合であっても、全ての異常発生ノズルについて補完可能である場合には、当該補完を行った上で印刷を行うことで、印刷品質が低下することが抑制される。一方、全ての異常発生ノズルについて補完可能でない場合には、補完不能な異常発生ノズルがインクを吐出すべき媒体S上の領域にインクを吐出することができないため、印刷品質が低下する可能性が高い。このように、印刷品質が低下する可能性が高い場合(ステップS64:NO)、ヘッド異常フラグがオンにされる。
また、ステップS64が否定判定されて、ステップS60が実行される場合とは、ヘッド異常フラグがオンにされる場合である。このため、この場合には、制御部100は、ステップS60を実行するにあたり、印刷品質に大きな影響を与えるほどの異常が吐出ヘッド22に発生している旨を報知してもよい。
さて、本処理ルーチンでは、吐出不良レベル判定処理の結果、全ての不良ノズルについて補完可能である場合(ステップS54:YES)、当該全ての不良ノズルについて補完が行われ、本処理ルーチンが一旦終了される。そして、印刷ジョブを受付可能な受付状態とされたり(ステップS13)、印刷ジョブに基づく印刷が行われたりする(ステップS23)。こうした点で、本実施形態では、全ての不良ノズルについて補完可能である場合には、当該補完を行った上で印刷ジョブに基づく印刷が許可される。
また、全ての不良ノズルについて補完可能になることなく、メンテナンスの実行回数を示す第1のカウンターCnt1が第1のカウンター判定値CntTh1(規定回数)に達した場合(ステップS54:NO,ステップS59:YES)、不良ノズルについて可能な限りの補完が行われ、本処理ルーチンが一旦終了される。そして、印刷ジョブを受付可能な受付状態とされたり(ステップS13)、印刷ジョブに基づく印刷が行われたりする(ステップS23)。こうした点で、メンテナンスの実行回数が規定回数に達した場合には、可能な限りの補完を行った上で印刷ジョブに基づく印刷の実行が許可される。
言い換えると、本処理ルーチンによれば、「0(零)」以上であって第1のカウンター判定値CntTh1未満の回数のメンテナンスを実行することで吐出不良レベルLvが「1」以下になった場合に印刷の実行が許可されることはもちろん、第1のカウンター判定値CntTh1に相当する回数のメンテナンスを実行しても吐出不良レベルLvが「1」以下にならなかった場合でも、印刷の実行が許可される。
次に、図15に示すフローチャートを参照して、ステップS52及び後述するS92,S95の吐出不良レベル判定処理について説明する。
図15に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御部100は、フラッシングを実行させ(ステップS71)、第1のノズルチェックを実行させる(ステップS72)。続いて、制御部100は、不良ノズルがあるか否かを判定し(ステップS73)、不良ノズルがない場合(ステップS73:NO)、吐出不良レベルLvに「0(零)」をセットして(ステップS74)、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、制御部100は、不良ノズルがある場合(ステップS73:YES)、メンテナンス直後か否かを判定し(ステップS75)、メンテナンス直後でない場合(ステップS75:NO)、その処理を後述するステップS79に移行する。なお、メンテナンス直後であるか否かの判定は、メンテナンスが終了したタイミングからの経過時間を計時し、当該経過時間が所定の判定時間未満であるか否かで判定すればよい。
一方、メンテナンス直後である場合(ステップS75:YES)、制御部100は、直近のメンテナンスの前後に亘って不良ノズルであるノズル21を抽出する(ステップS76)。すなわち、直近のメンテナンスの実行前の第1のノズルチェックで検出された不良ノズルの集合と直近のメンテナンスの実行後の第1のノズルチェックで検出された不良ノズルの集合とに共通して含まれるノズル21を抽出する。
そして、制御部100は、メンテナンスの前後に亘り不良ノズルであるノズル21について、連続不良回数を「1」だけ加算する(ステップS77)。ここで、連続不良回数とは、全ての吐出ヘッド22の全てのノズル21毎に設定される変数である。メンテナンスを実行しても、依然として吐出不良が解消しないノズル21がある場合に、当該ノズル21に対応する連続不良回数が「1」だけ加算される。
続いて、制御部100は、メンテナンスの前後に亘って不良ノズルであるノズル21について、連続不良回数が不良判定回数を超えたか否かを判定し、連続不良回数が不良判定回数を超えたノズル21についてノズル異常フラグをオンにする(ステップS78)。すなわち、このステップS78では、メンテナンスを繰り返し実行しても、吐出不良が回復しない不良ノズルについて、異常が発生していることを示すノズル異常フラグがオンにされる。なお、不良判定回数は、ユーザーによって設定可能としてもよいし、印刷装置11の設計段階で定めてもよい。一例として、「5回」とすればよい。
そして、次のステップS79において、制御部100は、先のステップS72において検出された全ての不良ノズルについて補完可能であるか否かを判定し(ステップS79)、全ての不良ノズルについて補完可能である場合(ステップS79:YES)、吐出不良レベルLvに「1」をセットする(ステップS80)。その後、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
一方、全ての不良ノズルについて補完不能である場合(ステップS79:NO)、すなわち、補完不能な不良ノズルが1以上ある場合、制御部100は、不良ノズルの数が規定ノズル数以上となったノズル列27があるか否かを判定する(ステップS81)。不良ノズルの数が規定ノズル数以上となったノズル列27がない場合(ステップS81:NO)、制御部100は、吐出不良レベルLvに「2」をセットし(ステップS82)、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、不良ノズルの数が規定ノズル数以上となったノズル列27がある場合(ステップS81:YES)、制御部100は、吐出不良レベルLvに「3」をセットし(ステップS83)、本処理ルーチンを一旦終了する。
次に、図16に示すフローチャートを参照して、手動メンテナンスを実行するために制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、本処理ルーチンは、ユーザーからメンテナンスの実行指令がある場合に実行される処理ルーチンである。
図16に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御部100は、第1のカウンターCnt1及び第3のカウンターCnt3に「0(零)」をセットする(ステップS91)。なお、第3のカウンターCnt3は、第1のカウンター判定値CntTh1に相当する数のメンテナンスを繰り返し実行しても吐出不良が回復しない場合などに加算される計数用の変数である。
続いて、制御部100は、吐出不良レベル判定処理を実行し(ステップS92)、ステップS61と同様にメンテナンスの強度を設定する(ステップS93)。そして、制御部100は、設定したメンテナンスの強度に応じたメンテナンスを実行する(ステップS84)。
なお、ステップS92〜ステップS94では、ステップS94のメンテナンスの実行前の吐出不良レベル判定において、不良ノズルが検出された場合(吐出不良レベルLvが「1〜3」である場合)と、不良ノズルが検出されなかった場合(吐出不良レベルLvが「0(零)」である場合)との双方の場合にメンテナンスが実行されることとなる。また、検出された全ての不良ノズルについて補完可能である場合(吐出不良レベルLvが「1」である場合)と、検出された全ての不良ノズルについて補完可能でない場合(吐出不良レベルLvが「2」又は「3」である場合)との双方の場合にメンテナンスが実行されることとなる。
続いて、制御部100は、吐出不良レベル判定処理を実行し(ステップS95)、吐出不良レベルLvが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS96)。吐出不良レベルLvが不良ノズルが無いことを示す「0(零)」である場合(ステップS96:YES)、制御部100は、ノズルチェックパターンPTの印刷指令があるか否かを判定する(ステップS97)。なお、ノズルチェックパターンPTの印刷指令があるか否かの判定は、ノズルチェックパターンPTを印刷するか否かの2つの選択肢を表示部13に表示させて、ユーザーが何れの選択肢を選択するかによって判定すればよい。こうして、ステップS97では、ノズルチェックパターンPTの印刷を促す報知が行われる。
ノズルチェックパターンPTの印刷指令がある場合(ステップS97:YES)、制御部100は、ノズルチェックパターンPTを印刷させ(ステップS98)、メンテナンスの指令があるか否かを判定する(ステップS99)。一方、ノズルチェックパターンPTの印刷指令がない場合(ステップS97:NO)、制御部100は、その処理をステップS99に移行する。なお、メンテナンスの指令があるか否かの判定は、ノズルチェックパターンPTの印刷指令があるか否かの判定と同様に、メンテナンスを実行するか否かの2つの選択肢を表示部13に表示させて、ユーザーが何れの選択肢を選択するかによって判定すればよい。こうして、ステップS99では、メンテナンスの実行を促す報知が行われる。
そして、メンテナンスの指令がある場合(ステップS99:YES)、制御部100は、その処理を先のステップS92に移行する。一方、メンテナンスの指令がない場合(ステップS99:NO)、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
先のステップS96において、吐出不良レベルLvが「0(零)」でない場合(ステップS96:NO)、すなわち、吐出不良レベルLvが「1」以上の場合、制御部100は、補完処理を実行する(ステップS100)。すなわち、ステップS95を実行することで検出された不良ノズルのうち、補完可能な不良ノズルについて補完が行われる。また、ステップS96が否定判定される場合とは、ステップS95の吐出不良レベル判定処理において、不良ノズルが検出された場合である。
そして、制御部100は、吐出不良レベルLvが「1」であるか否かを判定し(ステップS101)、吐出不良レベルLvが「1」である場合(ステップS101:YES)、すなわち、全ての不良ノズルを補完可能な場合、制御部100は、その処理をステップS97に移行する。なお、ステップS101が肯定判定されて、ステップS97,S98が実行される場合とは、不良ノズルについて補完が行われた上で、ノズルチェックパターンPTの印刷を促す旨の報知がされ、ノズルチェックパターンPTが印刷される場合である。
一方、吐出不良レベルLvが「1」でない場合(ステップS101:NO)、すなわち、全ての不良ノズルを補完不能な場合、制御部100は、第1のカウンターCnt1が第1のカウンター判定値CntTh1以上か否かを判定する(ステップS102)。第1のカウンターCnt1が第1のカウンター判定値CntTh1未満の場合(ステップS102:NO)、制御部100は、ノズルチェックパターンPTの印刷指令があるか否かを判定する(ステップS103)。
ノズルチェックパターンPTの印刷指令がある場合(ステップS103:YES)、制御部は、ノズルチェックパターンPTを印刷させ(ステップS104)、メンテナンスの指令があるか否かを判定する(ステップS105)。一方、ノズルチェックパターンPTの印刷指令がない場合(ステップS103:NO)、制御部100は、その処理をステップS105に移行する。なお、ステップS103,S104では、補完可能な不良ノズルについて補完が行われた上で、ノズルチェックパターンPTの印刷を促す旨の報知がされ、ノズルチェックパターンPTが印刷される場合である。
メンテナンスの指令がない場合(ステップS105:NO)、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。この場合には、補完不能な不良ノズルがあるものの、ユーザーの判断によって、さらなるメンテナンスの実行が不要であり、印刷を開始させようとする場合である。
一方、メンテナンスの指令がある場合(ステップS105:YES)、ステップS93と同様に、メンテナンスの強度を設定する(ステップS106)。続いて、制御部100は、設定したメンテナンスの強度でメンテナンスを実行させ(ステップS107)、第1のカウンターCnt1を「1」だけ加算する(ステップS108)。その後、制御部100は、その処理を先のステップS95に移行する。
一方、先のステップS102において、第1のカウンターCnt1が第1のカウンター判定値CntTh1以上である場合(ステップS102:YES)、制御部100は、第3のカウンターCnt3を「1」だけ加算する(ステップS109)。そして、制御部100は、第3のカウンターCnt3が第3のカウンター判定値CntTh3以上であるか否かを判定し(ステップS110)、第3のカウンターCnt3が第3のカウンター判定値CntTh3未満である場合(ステップS110:NO)、その処理をステップS97に移行する。一方、第3のカウンターCnt3が第3のカウンター判定値CntTh3以上である場合(ステップS110:YES)、制御部100は、ヘッド異常フラグをオンにする(S111)。その後、制御部100は、警告を報知し(S112)、本処理ルーチンを一旦終了する。
なお、第3のカウンターCnt3が第3のカウンター判定値CntTh3以上となる場合とは、第1のカウンター判定値CntTh1及び第3のカウンター判定値CntTh3の積に相当する回数のメンテナンスを実行しても、吐出不良レベルLvが「2」未満に回復しない場合である。したがって、この場合には、制御部100は、ノズルチェックパターンPTの印刷指令やメンテナンスの実行指令を受け付けずに、本処理ルーチンを終了する。また、ステップS112では、メンテナンスを繰り返し実行しても、吐出不良が回復しない不良ノズルがあるため、このまま印刷を行ったとしても、所望の印刷品質の印刷物を得ることができない旨を警告すればよい。
また、図16に示すフローチャートにおいて、ステップS92は、ステップS94のメンテナンスの実行前に実行される処理であり、ノズル21の吐出不良を検出するための処理である。こうした点で、本実施形態では、ステップS92の吐出不良レベル判定処理の内部で実行される第1のノズルチェックは「事前検出」の一例に相当する。また、ステップS95は、ステップS94のメンテナンスの実行後に実行される処理であり、ノズル21の吐出不良を検出するための処理である。こうした点で、本実施形態では、ステップS95の吐出不良レベル判定処理の内部で実行される第1のノズルチェックは「事後検出」の一例に相当する。
また、図14及び図16に示すフローチャートにおいて、第1のカウンター判定値CntTh1、第2のカウンター判定値CntTh2及び第3のカウンター判定値CntTh3は、印刷品質の向上を重視するか、ロスタイムの低減を重視するかによって、適宜に設定すればよい。例えば、自動メンテナンス及び手動メンテナンスにおいて、印刷品質が低下するおそれがあるとしてもロスタイムを短くしたい場合には、繰り返し実行され得るメンテナンスの実行回数を少なくするために、上記カウンター判定値CntTh1,CntTh2,CntTh3を小さくすることが望ましい。一方、自動メンテナンス及び手動メンテナンスにおいて、ロスタイムが長くなるおそれがあるとしても印刷品質を向上させたい場合には、繰り返し実行され得るメンテナンスの実行回数を多くするために、上記カウンター判定値CntTh1,CntTh2,CntTh3を大きくすることが望ましい。一例として、第1のカウンター判定値CntTh1を「3」とし、第2のカウンター判定値CntTh2を「2」とし、第3のカウンター判定値CntTh3を「10〜15」とすればよい。
次に、本実施形態の印刷装置11において、自動メンテナンスを実行するときの作用について説明する。なお、自動メンテナンスフラグはオンされているものとする。
さて、印刷装置11に対して、印刷ジョブが投入された場合には、当該印刷ジョブに基づく印刷を開始する前に、自動メンテナンスが実行される。そして、自動メンテナンスでは、第1のノズルチェックが実行され、吐出不良レベルLvが「0(零)」の場合には、不良ノズルが検出されていないとして、印刷ジョブに基づく印刷が開始される。すなわち、この場合には、メンテナンスが実行されることなく印刷が開始される。
また、吐出不良レベルLvが「1」の場合には、検出された全ての不良ノズルについて補完が行われた上で、印刷ジョブに基づく印刷が開始される。すなわち、この場合にも、メンテナンスが実行されることなく印刷が開始される。
これに対し、吐出不良レベルLvが「2」又は「3」の場合には、補完不能な不良ノズルがあるとして、吐出不良レベルLvに応じたメンテナンスが実行される。続いて、第1のノズルチェックが実行され、吐出不良レベルLvが「2」又は「3」の場合には再度メンテナンスが実行される。こうして、吐出不良レベルLvが「1」以下になるまで、第1のノズルチェック及びメンテナンスの実行が繰り返し行われる。また、繰り返しメンテナンスを実行する場合には、メンテナンスの実行回数(第1のカウンターCnt1)に応じて、メンテナンスの強度が次第に高くされる。
例えば、メンテナンスが「3回」繰り返されて実行される場合には、1回目のメンテナンスにおいて、吐出不良レベルLvが「2」であれば弱クリーニングが実行され、吐出不良レベルLvが「3」であれば中クリーニングが実行される。続いて、2回目のメンテナンスにおいて、吐出不良レベルLvが「2」であれば弱クリーニングが実行され、吐出不良レベルLvが「3」であれば強クリーニングが実行される。そして、3回目のメンテナンスにおいて、吐出不良レベルLvが「2」であれば中クリーニングが実行され、吐出不良レベルLvが「3」であれば強クリーニングが実行される。
そして、第1のカウンター判定値CntTh1に相当する回数のメンテナンスを実行する前に、吐出不良レベルLvが「1」以下になれば、検出された全ての不良ノズルについて補完が行われた上で、印刷ジョブに基づく印刷が開始される。
また、第1のカウンター判定値CntTh1に相当する回数のメンテナンスを実行しても、吐出不良レベルLvが「2」である場合には、検出された不良ノズルのうち、補完可能な不良ノズルについて補完がされた上で、印刷ジョブに基づく印刷が開始される。また、第1のカウンター判定値CntTh1に相当する回数のメンテナンスを実行する前に、メンテナンスを実行後に吐出不良レベルLvが「3」となった回数が第2のカウンター判定値CntTh2以上となった場合にも、検出された不良ノズルのうち、補完可能な不良ノズルについて補完が行われた上で、印刷ジョブに基づく印刷が開始される。
こうして、本実施形態では、吐出不良レベルLvに応じて、メンテナンスを実行するか否かが決定される。このため、吐出不良レベルLvが小さい場合には、メンテナンスを実行しないことで、ロスタイムを軽減するとともに不必要にインクが消費されることが抑制される。さらに、吐出不良レベルLvが大きい場合には、吐出不良レベルLvに応じた強度のメンテナンスが実行される。このため、不良ノズルの発生状況に適したメンテナンスが実行される。
因みに、自動メンテナンスフラグがオフされている場合であっても、第1のノズルチェックは行われる。そして、不良ノズルが検出された場合には、当該不良ノズルについて可能な限りの補完がされた上で印刷が開始される。このため、自動メンテナンスフラグがオフされている場合であっても、メンテナンスが実行されないものの、補完が行われる点で、印刷品質が悪化することが抑制される。
なお、印刷ジョブが複数の媒体Sを印刷するための印刷ジョブである場合、1つの媒体Sに対する印刷が終了する度に、第1のノズルチェックが実行される。そして、不良ノズルが検出された場合には、次の媒体Sに対する印刷を開始する前に、当該不良ノズルについて可能な限りの補完が行われる。このため、複数の媒体Sを連続して印刷しているときに、不良ノズルの発生状況が変化した場合にも、その発生状況の変化に応じて補完態様が変更される。こうして、印刷ジョブに基づく複数の媒体Sに対する印刷の途中にメンテナンスが割り込んで実行されることを抑制しつつ、印刷品質の低下が抑制される。
そして、印刷ジョブに基づく印刷が全て終了したタイミングにおいて、直近のメンテナンスを実行してからの印刷枚数Pnが規定枚数PnTh以上であれば、定期メンテナンスが実行される。これは、規定枚数PnTh以上の媒体Sに対する印刷を行うと、吐出ヘッド22のノズル形成面28に異物(例えば、紙粉)が付着することで、印刷品質の低下を招くためである。
また、定期メンテナンスを実行しない場合には、自動メンテナンスフラグの状態に応じて、自動メンテナンスが実行される。すなわち、第1のノズルチェックの結果に基づいて、吐出不良レベルLvが設定され、当該吐出不良レベルLvに基づいて、メンテナンスが実行される。
続いて、本実施形態の印刷装置11において、手動メンテナンスを実行する場合の作用について説明する。
さて、本実施形態の印刷装置11では、ユーザーからのメンテナンスの指令があった場合には、手動メンテナンスが実行される。手動メンテナンスでは、吐出不良レベルLvを判定した後に、当該吐出不良レベルLvに応じた強度のメンテナンスが実行される。なお、メンテナンスは、吐出不良レベルLvが、不良ノズルが存在していないことを示す「0(零)」である場合でも実行される。こうして、吐出不良レベルLvを判定する前提となる第1のノズルチェックにおいて、真の不良ノズルを検出できなかった場合であっても、メンテナンスが実行されることとなる。
なお、このメンテナンスにおいては、例えば、吐出不良レベルLvが「0(零)」であればフラッシングを実行し、吐出不良レベルLvが「1」であれば弱クリーニングを実行し、吐出不良レベルLvが「2」であれば中クリーニングを実行し、吐出不良レベルLvが「3」であれば強クリーニングを実行すればよい。
その後、吐出不良レベルLvが判定され、表示部13にノズルチェックパターンPTの印刷を促す旨の表示がされる。印刷指令がある場合には、ノズルチェックパターンPTが印刷され、印刷指令がない場合にはノズルチェックパターンPTが印刷されない。
その後、表示部13にメンテナンスの実行を促す旨の表示がされる。このため、ノズルチェックパターンPTを印刷した場合には、印刷装置11のユーザーは、現実のインクの吐出状況を把握した上で、さらにメンテナンスを実行するか否かを選択することとなる。
ところで、吐出不良レベルLvが「0(零)」又は「1」であるときに、ユーザーからメンテナンスを実行する旨の指令がある場合には、第1のノズルチェックの結果からは、インクの吐出状況に大きな問題が生じているわけではないが、ユーザーがインクの吐出状況に満足していないとして、メンテンナンスを実行することが許容される。
一方、吐出不良レベルLvが「2」又は「3」であるときに、ユーザーからメンテナンスを実行する旨の指令がある場合には、メンテナンスが実行される。ただし、第1のカウンター判定値CntTh1及び第3のカウンター判定値CntTh3の積に相当する回数のメンテナンスが繰り返し実行されると、表示部13に回復不能な不良ノズルがある旨の警告が表示され、さらなるメンテナンスの実行が制限される。
すなわち、この場合とは、繰り返しメンテナンスを実行したにも関わらず、吐出不良レベルLvが小さくならないため、メンテナンスの実行により回復不能な吐出不良が発生している場合である。したがって、さらにメンテナンスが実行されることにより、無駄にインクが消費されることが抑制される。
以上説明した実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)自動メンテナンスの実行時において、不良ノズルが1以上あるときであっても当該不良ノズルについて補完可能である場合には、印刷ジョブに基づく印刷の実行が許可される。このため、この場合には、不良ノズルがある場合であっても、メンテナンスを実行すること無く、不良ノズルについて補完を行った上で媒体Sに向けてインクを吐出させることができる。一方、不良ノズルが1以上あるときに当該不良ノズルについて補完が不能である場合には、不良ノズルの数が多いほど(吐出不良レベルLvが高いほど)強度の高いメンテナンスが実行される。このため、不良ノズルの数(吐出不良レベルLv)に応じた適切な強度のメンテナンスを実行することができる。こうして、メンテナンスの実行に伴って印刷を行うことができないロスタイムが増大することを抑制することができる。
(2)自動メンテナンスの実行時において、メンテナンスの実行回数が(第1のカウンターCnt1)が規定回数の一例としての第1のカウンター判定値CntTh1に達した場合には、さらにメンテナンスが実行されることを制限し、印刷ジョブに基づく印刷を可能とした。このため、補完不能な不良ノズルがあることを要因として、際限なくメンテナンスが繰り返されることにより、インクの消費量が増大することを抑制することができる。
(3)自動メンテナンスの実行時において、メンテナンスの実行回数が(第1のカウンターCnt1)が規定回数の一例としての第1のカウンター判定値CntTh1に達した場合には、メンテナンスを実行しても補完不能な不良ノズルがある旨が報知される。このため、印刷装置11のユーザーに、予め決められた回数のメンテナンスを実行したが、補完不能な不良ノズルがあることを認識させることができる。
(4)自動メンテナンスの実行時において、メンテナンスの実行回数が(第1のカウンターCnt1)が規定回数の一例としての第1のカウンター判定値CntTh1に達した場合には、不良ノズルのうち、補完可能な不良ノズルについては当該補完を行った上で、印刷ジョブに基づく印刷が行われる。このため、第1のカウンター判定値CntTh1に相当する回数のメンテナンスを実行しても補完不能な不良ノズルがある場合でも、補完可能な不良ノズルについては補完して、印刷を開始することができる。このため、印刷品質の低下を抑制しつつ、印刷装置11が使用不能となる事態を回避することができる。
(5)複数の媒体Sを印刷するための印刷ジョブが投入された場合には、1つの媒体Sに対する印刷が終了する度に第1のノズルチェック(媒体間吐出不良検出)を実行し、その結果、不良ノズルが検出された場合には、当該不良ノズルについて可能な限りの補完を行うこととした。これによれば、上記第1のノズルチェック及び補完を行わない場合に比較して、印刷品質を向上させることができる。
(6)ユーザーからのメンテナンスの指令に基づく手動メンテナンスの実行時において、メンテナンスの実行前に第1のノズルチェック(事前検出)が行われ、不良ノズルがあるか否かが検出される。そして、第1のノズルチェックの結果、不良ノズルが検出された場合だけでなく、不良ノズルが検出されなかった場合にも、メンテナンスが実行される。このため、第1のノズルチェックにおいて、真の不良ノズルを正常ノズルと誤検出した場合であっても、メンテナンスが実行されないことを抑制することができる。
(7)手動メンテナンスの実行時において、全ての不良ノズルについて補完可能な場合と補完不能な場合の双方の場合において、メンテナンスが実行される。このため、第1のノズルチェックの結果、真の不良ノズルを正常ノズルと誤検出することで、全ての不良ノズルについて補完可能と判断した場合であっても、メンテナンスが実行されることとなる。こうして、誤った検出結果に基づいて、全ての不良ノズルについて補完可能と判断した場合において、メンテナンスが実行されないことを抑制することができる。
(8)手動メンテナンスの実行時において、メンテナンスの実行後の第1のノズルチェック(事後検出)の結果、不良ノズルが検出された場合には、ノズルチェックパターンPTの形成を促す報知がされる。このため、印刷装置11のユーザーは、報知に従ってノズルチェックパターンPTを媒体Sに形成させることで、現実のインクの吐出状態を確認することができる。したがって、さらにメンテナンスを実行するか否かをユーザーが判断しやすくすることができる。
(9)また、ノズルチェックパターンPTは、補完可能な不良ノズルについて補完をした上で印刷される。このため、印刷ジョブに基づく印刷時と同条件で印刷されたノズルチェックパターンPTに基づいて、さらにメンテナンスを実行するか否かをユーザーが判断しやすくなる。
(10)ノズルチェックパターンPTを印刷した場合には、メンテナンスの実行を促す報知を行うこととした。これによれば、ノズルチェックパターンPTが形成された後に、メンテナンスの実行を促す報知がされるため、ユーザーは、ノズルチェックパターンPTを確認後、現実のインクの吐出状態が良好でないと判断した場合には、容易にメンテナンスを実行させることができる。
(11)不良ノズルが検出されているか否かで、メンテナンスの強度を等しくすると、不良ノズルの発生状況に適した強度のメンテナンスを実行できないおそれがある。例えば、不良ノズルが多く発生しているにも関わらず低い強度のメンテナンスが実行されたり、不良ノズルが発生していないにも関わらず高い強度のメンテナンスが実行されたりするおそれがある。この点、本実施形態によれば、手動メンテナンスの実行時において、不良ノズルが検出されなかった場合(例えば、吐出不良レベルLVが「0(零)」の場合)には、不良ノズルが検出された場合(例えば、吐出不良レベルLVが「1」〜「3」の場合)よりも、メンテナンスの強度が低くされる。このため、上記事態の発生を抑制することができる。
(12)不良ノズルの数に関わらず、メンテンナンス強度を等しくすると、不良ノズルの発生状況に適した強度のメンテナンスを実行できないおそれがある。この点、本実施形態によれば、自動メンテナンス及び手動メンテナンスの実行時において、メンテナンスを実行するときに、不良ノズルの数が少ない場合(例えば、吐出不良レベルLvが「2」の場合)には、不良ノズルの数が多い場合(例えば、吐出不良レベルLvが「3」の場合)よりもメンテナンスの強度を低くすることとした。このため、不良ノズルの数に応じてメンテンナンス強度が変更されるため、当該メンテンナンス強度を、不良ノズルの吐出不良を解消させるために適切な強度とすることができる。
(13)第1のノズルチェックを実行する前にフラッシングを行うことで、第1のノズルチェックを実行前のインクの吐出状況に関わらず、第1のノズルチェックを実行する際の条件を平準化することができる。このため、第1のノズルチェックの精度を高めることができる。
なお、上記実施形態は、以下に示すように変更してもよい。
・自動メンテナンスは、復帰処理において実行してもよい。ここで、復帰処理とは、例えば、搬送部96(搬送モーター)の負荷が増大することによって媒体Sの搬送経路において媒体Sが詰まった場合に、印刷可能な状態に復帰するための処理である。
図17に示すように、制御部100は、搬送部96などの各構成に異常が生じているか否かを判定する(ステップS121)。搬送部96に異常が生じているか否かは、例えば、搬送部96(搬送モーター)を駆動させたときの負荷の大きさが所定値未満であるか否かで判定すればよい。
各構成に異常が生じていない場合(ステップS121:NO)、制御部100は、自動メンテナンス処理を実行し(ステップS122)、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、各構成に異常が生じている場合(ステップS121:NO)、制御部100は、印刷ジョブに基づく印刷の実行を制限したり、ユーザーに問題を解消させるための作業を促す旨を表示部13に表示させたりといったエラー処理を実行し(ステップS123)、本処理ルーチンを一旦終了する。
これによれば、復帰処理において、自動メンテナンスが実行されるため、上記実施形態の効果を得ることができる。
・図14に示す自動メンテナンス処理において、吐出不良レベルLvが「1」以下になるまで、繰り返しメンテナンスを実行してもよい。図18に示すフローチャートを参照して、この場合に制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。
図18に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御部100は、吐出不良レベル判定処理を実行する(ステップS131)。そして、制御部100は、吐出不良レベルLvが「0(零)」であるか否かを判定し(ステップS132)、吐出不良レベルLvが「0(零)」である場合(ステップS132:YES)、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、吐出不良レベルLvが「0(零)」でない場合(ステップS132:NO)、制御部100は、吐出不良レベルLvが「1」であるか否かを判定し(ステップS133)、吐出不良レベルLvが「1」である場合(ステップS133:YES)、補完処理を実行し(ステップS134)、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、吐出不良レベルLvが「2」又は「3」である場合(ステップS133:NO)、制御部100は、ステップS61と同様にメンテナンスの強度を設定し(ステップS135)、メンテンナンスを実行させる(ステップS136)。その後、制御部100は、その処理をステップS131に移行する。
こうして、本処理ルーチンによれば、吐出不良レベルLvが「0(零)」又は「1」となるまで、すなわち、全ての不良ノズルについて補完可能となるまで、繰り返しメンテナンスが実行されることとなる。このため、メンテンナンスの繰り返しの実行によって、インクの消費量が増大しやすいものの、吐出不良レベルLvが「2」又は「3」であるときに印刷が行われないため、印刷品質を向上させることができる。すなわち、媒体Sに対するインクの着弾精度を高めることができる。
・例えば、図12に示すフローチャートのステップS32において、第1のノズルチェックの対象とするノズル列27を全てのノズル列27とすると、当該第1のノズルチェックに要する時間が長くなることで、ある媒体Sに対する印刷が終了してから次の媒体Sに対する印刷を開始するまでに印刷を実行できないロスタイムが発生するおそれがある。
そこで、図12に示すフローチャートのステップS32において、第1のノズルチェックの対象を1つのノズル列27(例えば、黒インクを吐出するノズル列27)としてもよい。この場合、印刷中処理を実行する度に、第1のノズルチェックの対象とするノズル列27を変更することが望ましい。
詳しくは、印刷ジョブに基づいて印刷しようとする複数の媒体Sのうち第j番目の媒体Sの印刷終了後には、黒インクを吐出するノズル列27kについてステップS32,S33の処理を実行し、第j+1番目の媒体Sの印刷終了後には、シアンインクを吐出するノズル列27cについて、ステップS32,S33の処理を実行してもよい。さらに、第j+2番目の媒体Sの印刷終了後には、マゼンタインクを吐出するノズル列27mについて、ステップS32,S33の処理を実行し、第j+3番目の媒体Sの印刷終了後には、イエローインクを吐出するノズル列27yについて、ステップS32,S33の処理を実行してもよい。
これによれば、1度の第1のノズルチェックにおいて全てのノズル列27を検査対象としないため、1回の第1のノズルチェックに要する時間を短縮することができる。その一方で、第1のノズルチェック毎に検査対象とするノズル列27を変更するため、長期間に亘ってノズル21の吐出不良の検出が行われないノズル列27が発生することを抑制することができる。なお、1度の第1のノズルチェックにおいて検査対象とするノズル列27は、2列分のノズル列27であってもよいし、3列分のノズル列27であってもよい。
・印刷ジョブに基づく印刷を開始する際に実行される処理ルーチンにおいて、通常の印刷を行うための印刷ジョブが投入された場合と、FAX印刷を行うための印刷ジョブが投入された場合とで実行する処理を変更してもよい。次に、図19に示すフローチャートを参照して、この場合に制御部100が実行する処理ルーチンについて説明する。
・図19に示すように、制御部100は、ヘッド異常フラグがオンか否かを判定し(ステップS141)、ヘッド異常フラグがオンの場合(ステップS141:YES)、投入された印刷ジョブがFAX印刷を行うための印刷ジョブか否かを判定する(ステップS142)。投入された印刷ジョブがFAX印刷を行うための印刷ジョブである場合(ステップS142:YES)、制御部100は、FAXデータを記憶部101に保存する(ステップS143)。その後、制御部100は、FAX印刷を中止した旨を報知して(ステップS144)、本処理ルーチンを一旦終了する。なお、FAX印刷を中止した旨の報知は、表示部13を介して行えばよい。
一方、投入された印刷ジョブがFAX印刷を行うための印刷ジョブでない場合(ステップS142:NO)、制御部100は、印刷品質が低下する旨をユーザーに報知し(ステップS145)、ユーザーから印刷指令があるか否かを判定する(ステップS146)。ユーザーからの印刷指令がない場合(ステップS146:NO)、すなわち、ユーザーから印刷の中断指令がある場合、制御部100は、印刷ジョブに基づく印刷を中断し(ステップS147)、本処理ルーチンを一旦終了する。なお、印刷ジョブに基づく印刷を中断する場合、制御部100は、印刷データを記憶部101に記憶してもよいし、記憶しなくてもよい。
一方、ユーザーから印刷指令がある場合(ステップS146:YES)、制御部100は、フラッシングを実行させ(ステップS148)、第1のノズルチェックを実行させる(ステップS149)。その後、制御部100は、補完処理を実行し(ステップS150)、印刷ジョブに基づく印刷を行わせる(ステップS151)。印刷が終了すると、制御部100は、本処理ルーチンを一旦終了する。
先のステップS141において、ヘッド異常フラグがオフの場合(ステップS141:NO)、制御部100は、自動メンテナンスフラグがオンか否かを判定し(ステップS152)、自動メンテナンスフラグがオフの場合(ステップS152:NO)、その処理をステップS148に移行する。一方、自動メンテナンスフラグがオンの場合(ステップS152:YES)、制御部100は、自動メンテナンス処理を実行し(ステップS153)、その処理をステップS151に移行する。
これによれば、ヘッド異常フラグがオンである場合には、FAX印刷を行うための印刷ジョブに基づく印刷が制限され、FAXデータが記憶部101に保存される。このため、当該印刷ジョブに基づいて印刷を行うことで、FAX印刷の印刷品質が劣悪となることを抑制することができる。また、通常、FAXデータは、FAX印刷の終了後に破棄されるものであるため、印刷品質が劣悪であって内容を把握できないFAX印刷を行うことで、FAXデータを損失することを抑制することができる。
・メンテナンスの強度は、吐出不良レベルLvだけに基づいて設定してもよい。この場合、メンテンナンス強度は、吐出不良レベルLvが大きくなるに連れて段階的に高くなるように設定してもよいし、吐出不良レベルLvに比例するように設定してもよい。
・メンテナンスの強度は、メンテナンスの実行回数を示す第1のカウンターCnt1だけに基づいて設定してもよい。この場合、メンテンナンス強度は、第1のカウンターCnt1が大きくなるに連れて段階的に高くなるように設定してもよいし、第1のカウンターCnt1に比例するように設定してもよい。
・吐出不良レベルLvを設定しなくてもよい。吐出不良レベルLvを設定しない状況下では、不良ノズルが発生していない場合には、不良ノズルが発生している場合よりもメンテナンスの強度を低くすることが望ましい。また、不良ノズルが発生している状況下では、全ての不良ノズルについて補完可能な場合には、全ての不良ノズルについて補完可能でない場合よりもメンテナンスの強度を低くすることが望ましい。また、不良ノズルが発生している状況下では、不良ノズルの数が少ない場合には、不良ノズルの数が多い場合よりもメンテナンスの強度を低くすることが望ましい。
・上記実施形態の印刷装置11において、不良ノズルの吐出不良を解消するために実行されるメンテナンスには、以下のメンテナンスがある。すなわち、アクチュエーター43の駆動により印刷とは無関係にノズル21からインクを吐出させる「フラッシング」、増圧機構62の駆動によりノズル21からインクを膨出させた状態でワイピングを行う「加圧ワイピング(図5参照)」及び上述した「吸引クリーニング」がある。
また、上記メンテナンスを吐出不良の回復能力の低い順、すなわち、メンテナンスの強度の低い順に並べると、フラッシング、加圧クリーニング、吸引クリーニングとなる。したがって、上記の各クリーニングの中から1つのクリーニングを選択することで、メンテナンスの強度を設定してもよい。
ここで、メンテナンスとして、加圧ワイピングを選択した場合には、メンテナンスの実行に伴うインクの消費量を抑制しつつ、不良ノズルの吐出不良を回復させることができる。また、この場合には、メンテナンス装置26に加えて吐出ヘッド22が「メンテナンス部」の一例に相当することとなる。
・また、最も強度の低いメンテナンスとして、アクチュエーター43の駆動により、圧電素子44に液体吐出時よりも低い電圧を所定の間隔で印加して、ノズル21からインクが吐出されない程度に振動壁45を振動させる「微振動」を実行してもよい。
・手動メンテナンス処理において、メンテナンスの強度は一定であってもよい。
・手動メンテナンス処理において、ノズルチェックパターンPTの印刷に係るステップを省略してもよい。
・共通液室41及び圧力室52の間の液体導出路34にインクの流通を規制可能な規制弁を設けてもよい。この場合、吸引クリーニングを実行時に、規制弁を閉じた状態で閉空間に負圧を作用させた後に規制弁を開くことで、液体導出路34に負圧を急激に作用させてもよい。これによれば、規制弁を開閉操作しない吸引クリーニングを実行する場合に比較して、強度の高いメンテナンスを実行することができる。
・図12に示すフローチャートにおいて、第j番目の媒体Sに対する印刷後の第1のノズルチェックの結果に基づく補完処理は、第j+1番目の媒体Sに対する印刷開始前に行わなくてもよい。例えば、第j番目の媒体Sに対する印刷後の第1のノズルチェックの結果に基づく補完処理は、第j+2番目以降の媒体Sに対する印刷開始前に実行してもよい。
・図14のステップS51及び図16のステップS91の前に、制御部100は、ヘッド異常フラグがオンか否かを判定してもよい。ヘッド異常フラグがオンの場合、制御部100は、回復不能な不良ノズルがある旨を表示部13に表示させて、本処理ルーチンを一旦終了させてもよい。これによれば、メンテナンスを実行しても回復不能な不良ノズルがある場合に、自動メンテナンス及び手動メンテナンスが実行されることで無駄にインクが消費される事態を回避することができる。
・印刷ジョブの内容に基づいて、媒体Sの幅方向Xにおける長さが明らかである場合、当該媒体Sに対する印刷を行う際にインクを吐出しないノズル21については、第1のノズルチェックの対象から除外してもよい。
・補完処理は、上述した近傍補完、代替補完及び混色補完のうち、少なくとも1つの補完を行うだけでもよい。
・図8に示すように、上記実施形態では、第iのノズル21(i)が不良ノズルである場合には、近傍補完において、第i−2のノズル21(i−2)、第i−1のノズル21(i−1)、第i+1のノズル21(i+1)及び第i+2のノズル21(i+2)のインクの吐出量を変更したが、そうしなくてもよい。
例えば、近傍補完において、インクの吐出量を変更するノズルは、第i−1のノズル21(i−1)及び第i+1のノズル21(i+1)だけでもよい。また、近傍補完において、インクの吐出量を変更するノズルは、第i−3のノズル21(i−3)から第i−1のノズル21(i−1)及び第i+1のノズル21(i+1)から第i+3のノズル21(i+3)としてもよい。
・第2のノズルチェックにおいて、ノズルチェックパターンPTの判断主体は、印刷装置11のユーザーでなくてもよい。例えば、画像読取装置12を制御する制御部であってもよい。
・印刷装置11は、ネットワークを介して、印刷装置11の各種の情報を送受信する管理サーバーに接続されていてもよい。この場合、管理サーバーは、印刷装置11の第1のノズルチェックの結果に基づいて、当該印刷装置11に対し、メンテナンスの指令、メンテナンスの禁止指令、印刷禁止指令、電源強制オフ指令などを送信してもよい。また、管理サーバーは、印刷装置11において、ヘッド異常フラグがオンされた場合には、サービスマンによる修理手配やその旨の報知を行ってもよい。また、この場合の印刷装置11は、印刷枚数Pnに応じて利用料金が定まるスマートチャージ(登録商標)機能を有する印刷装置であってもよい。
・印刷装置11の使用環境における温度が低い場合には当該温度が高い場合に比較して、インクの粘度が高くなりやすい。このため、印刷装置11の使用環境によっては、振動壁45の残留振動の振動態様が変化することで、第1のノズルチェックの精度が低下するおそれがある。そこで、印刷装置11は、吐出ヘッド22内のインクの温度を検出する温度検出部と、吐出ヘッド22内のインクの温度を調整する温度調整部と、を備えてもよい。
そして、温度検出部によって検出された吐出ヘッド22内のインクの温度が第1のノズルチェックに適した温度範囲に収まるように、温度調整部の駆動を制御してもよい。なお、温度調整部を設けずに、温度検出部によって検出された吐出ヘッド22内のインクの温度に基づいて、検出される残留振動の波形を補正してもよい。
・液体供給源23及び圧力調整機構25の間でインクを循環させる循環流路と、循環流路にインクを循環させるための循環ポンプを設けてもよい。この場合、循環流路にインクを循環している最中に第1のノズルチェックを行ってもよい。これによれば、ロスタイムの一例としてのインクの循環中に第1のノズルチェックを効率的に行うことができる。また、第1のノズルチェックの結果、メンテナンスを実行することとなった場合には、循環ポンプを強く駆動するとともに、増圧機構によって弁体54を開放位置に移動させて、吐出ヘッド22のノズル21からインクを排出させてもよい。
・第1のノズルチェックは、振動壁45の残留振動に応じたアクチュエーター43の出力信号に応じて行わなくてもよい。例えば、ノズル21から吐出されるインク滴の大きさ、形状、飛翔経路及び飛翔速度などを光学的に検出することで当該ノズル21に吐出不良が生じているか否かを判定してもよい。また、ノズル21から検出用の電極に向けてインク滴を吐出させ、この電極に生じる電気的な変化に基づいて当該ノズル21に吐出不良が生じているか否かを判定してもよい。このように、第1のノズルチェックは、ユーザーの判断を伴わずに印刷装置11だけで行えるものであればよい。
・なお、第1のノズルチェックをアクチュエーター43の出力信号に応じて行わない場合には、アクチュエーター43は圧電素子44を備えなくてもよい。例えば、静電駆動素子を備えるものや、インクを加熱して膜沸騰により発生した気泡の圧力(膨張圧)を利用してノズル21から液滴を吐出させるヒーター素子などを備えるものを採用してもよい。
・アクチュエーター43に印加する電圧が大きい場合には、当該電圧が小さい場合に比較して、不良ノズルの検出を高精度で行うことができる一方、ノズル21からインクが吐出されるおそれがある。そこで、印刷ジョブに基づく印刷の終了後の自動メンテナンス処理中に実行される第1のノズルチェック(ステップS44,S52)では、印刷ジョブに基づく印刷中に実行される第1のノズルチェック(ステップS32)よりも、アクチュエーター43に印加する電圧を大きくしてもよい。
これによれば、印刷ジョブに基づいて複数の媒体Sに対する印刷中の第1のノズルチェックでは、ノズル21からインクが吐出されることがないため、媒体Sをインクで汚染するおそれを低減することができる。また、印刷ジョブに基づく複数の媒体Sに対する印刷の終了後の第1のノズルチェックでは、高精度に不良ノズルを検出できるため、当該不良ノズルについて補完を行った上で、次の印刷ジョブに基づく印刷を開始することができる。なお、印刷の終了後の第1のノズルチェックでは、媒体Sを支持する支持台にインクが付着することを抑制するために、キャップやフラッシングボックスを吐出ヘッド22(ラインヘッド31)に対向する位置に移動させることが望ましい。
・ラインヘッド31は、幅方向Xにおける媒体Sの長さに対応した長さを有する1つの吐出ヘッド22を有するのみでもよい。この場合、補完処理において、近傍補完及び混色補完が行われることとなる。
・ラインヘッド31を構成する吐出ヘッド22において、ノズル列27の形成方向は幅方向Xと交差する方向であってもよい。
・印刷装置11は、吐出ヘッド22を保持するキャリッジを備え、当該キャリッジを幅方向Xに往復移動させつつ、吐出ヘッド22から媒体Sに向けてインクを吐出することで印刷を行ういわゆるシリアルタイプのインクジェットプリンターであってもよい。この場合、不良ノズルについての補間方法やノズルチェックパターンPTは、シリアルタイプのインクジェットプリンターに適したものに変更することが望ましい。
・媒体Sは用紙に限らず、プラスチックフィルムや薄い板材などでもよいし、布帛、Tシャツ等の衣類、あるいは、文具または食器等の立体物であってもよい。
・液体吐出装置の吐出ヘッド22が吐出する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。