以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1〜図6を参照して、本実施形態に係る帯電処理装置C1を説明する。図1は、本実施形態に係る帯電処理装置を示す斜視図である。図2は、電子源ユニットを示す斜視図である。図3は、電子源ユニットを示す断面構成図である。図4は、図3におけるIV−IV線に沿った断面構成図である。図5は、偏向電極部及びアパーチャ電極部を示す斜視図である。図6は、処理室部の一例を示す斜視図である。
帯電処理装置C1は、図1に示されるように、処理部1と電子源ユニット3とを備えている。帯電処理装置C1は、処理対象物POを所望の電位に帯電させる装置である。たとえば、帯電処理装置C1は、帯電していない処理対象物POを正又は負の電位に帯電させることが可能である。帯電処理装置C1は、たとえば、正又は負の電位に帯電している処理対象物POを除電すること又は所望の電位に変えることも可能である。
処理部1は、処理筐体2、処理室部20、給気部21、及び排気部23を有している。処理筐体2は、処理筐体2の内部空間(処理空間)を気密状態で画成可能に構成されている。処理室部20は、処理筐体2内に配置されており、内部に処理筐体2の内部雰囲気と連通する処理空間が形成される。そのため、処理室部20は、メッシュ又は開口などで構成された、処理筐体2との連通部を有する。処理筐体2及び処理室部20は、たとえば、直方体形状を呈する導電性金属材料(たとえば、ステンレス鋼又はアルミニウムなど)からなる。
処理筐体2及び処理室部20は、処理室部20内に処理対象物POを導入するための導入開口(図示せず)を有している。導入開口を介して処理室部20内に導入された処理対象物POは、処理室部20内に置かれる。これにより、処理室部20(処理部1)は、処理対象物POを包囲する。処理対象物POは、保持部材(不図示)によって、その位置が規定される。処理対象物POを包囲する処理室部20は、所望の電位とされ、処理対象物POは、処理室部20と電気的に絶縁された状態で、処理室部20内に置かれる。処理筐体2及び処理室部20の導入開口は、少なくとも帯電処理時には閉塞されてもよい。処理室部20の導入開口は、処理室部20と同電位の部材で閉塞されてもよい。処理筐体2は、絶縁性材料からなっていてもよい。
処理室部20は、処理筐体2が設置される部位(以下、「設置部位」と称する)と電気的に絶縁されている。処理室部20は、必ずしも、設置部位と電気的に絶縁されている必要はない。たとえば、帯電処理装置C1が除電処理装置のみとして用いられる場合であって、処理筐体2及び設置部位がグラウンド電位(接地電位)とされているときには、処理室部20は、処理筐体2及び設置部位と電気的に接続されていてもよい。
電子源ユニット3は、図2〜図4にも示されているように、電子を発生させる電子発生源5と、筐体Hと、電極部11(第一電極部)と、を有している。電子発生源5は、熱電子を放出するカソード6を有している。カソード6は、加熱されることにより熱電子を放出する。カソード6は、フィラメントなどの直熱型電極である。カソード6は、ヒータの加熱により熱電子を放出する傍熱型電極であってもよい。カソード6は、熱電子を放出する熱電子源に限らず、冷陰極などの電界放出型電子源や弾導電子源といったその他の電子源であってもよい。
カソード6は、イリジウムを含む材料からなる導電性部材6a(基材部)と、導電性部材6aの表面を覆う、イットリウム酸化物を含む材料からなるコーティング層6b(被覆部)と、を含んでいる。イリジウムは、化学的に安定しており、酸素ガスなどと反応し難い。イットリウム酸化物は、仕事関数が低く、低温で熱電子を放出する。イットリウム酸化物は、電子放出材料である。カソード6は、コイル部7を有している。コイル部7では、各ターンが離間するように、導電性部材6aが巻回されている。
電子発生源5は、カソード6から放出された熱電子の運動を制御するための電極部8と、カソード6に電流を供給するための一対の電極ピン9と、カソード6及び電極部8(第三電極部)が収容される容器10と、を有している。電極部8は、カソード6を囲むように、カソード6と後述する第一筐体H1(胴部H1a)との間に配置されている。電極部8の断面形状は円形であり、電極部8は円筒形状を呈している。電極部8の断面形状は、円形に限られず、カソード6の大きさ又は形状に合わせて、楕円形又は多角形であってもよい。
カソード6の両端部は、互いに異なる電極ピン9にそれぞれ電気的に接続されている。電極部8は、一方の電極ピン9に電気的に接続されている。一対の電極ピン9は、電子発生源5(カソード6)に電位を供給する給電部として機能する。電極部8には、別の給電経路が設けられていてもよい。電極部8に別の給電経路が設けられている場合、当該給電経路を通して、カソード6とは別の電位を電極部8に供給してもよい。電極部8は、カソード6以下の電位とされる。
カソード6は、容器10内に位置している。容器10は、バルブ部10aと、ステム部10bとを有している。容器10(バルブ部10a)は、一端が開口している。一対の電極ピン9は、ステム部10bに絶縁固定されている。容器10は、たとえば、ガラスからなる。バルブ部10aとステム部10bとは、一体に構成されていてもよく、また、別体に構成されていてもよい。
筐体Hは、電子発生源5が収容される第一筐体H1と、第一筐体H1が接続されている第二筐体H2と、を有している。第一筐体H1及び第二筐体H2は、導電性金属材料(たとえば、ステンレス鋼又はアルミニウムなど)からなる。第一筐体H1と第二筐体H2とは、電気的に接続されている。第一筐体H1と第二筐体H2とは、一体に構成されていてもよく、また、別体に構成されていてもよい。第一筐体H1の延在方向D1と第二筐体H2の延在方向D2とは、交差している。本実施形態では、第一筐体H1の延在方向D1と第二筐体H2の延在方向D2とは、直交している。第一筐体H1の延在方向D1と第二筐体H2の延在方向D2とは、直交以外の角度で交差していてもよい。
第一筐体H1は、電子発生源5の外側に位置する胴部H1aと、開口部H1bと、を含んでいる。胴部H1aの断面形状は円形であり、胴部H1aは円筒形状を呈している。胴部H1aの断面形状は、円形に限られず、楕円形又は多角形であってもよい。開口部H1bは、胴部H1aの一端に位置している。本実施形態では、第一筐体H1の延在方向D1は、胴部H1aの中心軸方向に沿っている。
電子発生源5は、第一筐体H1の内部空間(胴部H1aの内側空間)に配置されている。容器10(バルブ部10a)は、胴部H1aに挿通されている。容器10は、OリングR1を介して、胴部H1aに気密に支持されている。電子発生源5(容器10)は、第一筐体H1に着脱自在に配置されている。本実施形態では、電子発生源5は、コイル部7の軸線方向が第一筐体H1の延在方向D1と第二筐体H2の延在方向D2とに直交する方向D3に沿うように配置されている。
第二筐体H2は、胴部H2aと、開口部H2bと、を含んでいる。胴部H2aの断面形状は円形であり、胴部H2aは円筒形状を呈している。胴部H2aの断面形状は、円形に限られず、楕円形又は多角形であってもよい。開口部H2bは、第二筐体H2の延在方向D2での胴部H2aの一端に位置している。開口部H2bは、第二筐体H2の外側空間(処理筐体2内の処理空間)と連通している。本実施形態では、第二筐体H2の延在方向D2は、胴部H2aの中心軸方向に沿っている。
第二筐体H2の延在方向D2での胴部H2aの他端には、フランジF1が設けられている。フランジF1には、フランジF2が着脱自在に配置されている。フランジF1とフランジF2との間には、OリングR2が配置されており、OリングR2によりフランジF1とフランジF2との間の気密状態が保たれている。
第一筐体H1は、胴部H2aに接続されている。第一筐体H1は、胴部H2aに形成されている開口に挿通されている状態で、胴部H2aに固定されている。第一筐体H1の内部空間(胴部H1aの内側空間)と第二筐体H2の内部空間(胴部H2aの内側空間)とは、連通している。したがって、第二筐体H2の内部空間には、電子発生源5(カソード6)から電子(熱電子)が放出される。
電子源ユニット3は、電極部13(第二電極部)を備えている。電極部13は、開口部H1bを覆うように、第一筐体H1に設けられている。すなわち、電極部13は、バルブ部10aの開口を覆うように、バルブ部10aの一端に配置されている。電極部13は、第一筐体H1の内部空間(胴部H1aの内側空間)と第二筐体H2の内部空間(胴部H2aの内側空間)とを仕切るように位置している。すなわち、電極部13は、電子発生源5(カソード6)が位置する空間と第二筐体H2の内部空間とを仕切るように位置している。電極部13の形状は、胴部H1aの形状に対応している。本実施形態では、電極部13は、平面視で、円形状を呈している。
電極部13は、第一筐体H1と電気的に接続されている。電極部13は、第一筐体H1とは絶縁され、かつ、所望の電位が供給されるように、たとえば絶縁部材を介して第一筐体H1に配置されると共に、電極部13への給電経路が設けられていてもよい。この場合、電極部13には、第一筐体H1と異なる電位が供給されていてもよい。電極部13は、たとえば、ステンレス鋼からなる。電極部13のメッシュの大きさは、熱電子の通過率が高く、かつ、第一筐体H1と第二筐体H2との間で電界の染み出しが極めて少ない大きさに設定される。
電極部13は、メッシュ状の導電性部材である。メッシュとは、網状に限らず、格子状、多孔状、又は多段櫛刃状などの、所定の領域を複数の領域に二次元的に分割する構造である。メッシュ状の導電性部材が電極部13として用いられる場合、メッシュ状の導電性部材は、電子の透過と電界の形成を可能とする。電極部13はメッシュ状であるので、カソード6にて発生する電子が第二筐体H2の内部空間に向けて通過する。
電極部13は、カソード6の電位より高い電位とされる。このため、電子発生源5(容器10)内には、カソード6及び電極部8に供給される電位によって、カソード6にて発生した熱電子を電極部13に向けて加速させる加速電界が形成される。カソード6から放出された熱電子は、開口部H1bを通して、第一筐体H1から導出される。加速電界を形成する電位差は、第二筐体H2内に導入された熱電子が、電極部13と後述する偏向電極部15及びアパーチャ電極部19との間に形成される減速電界で十分に減速された後に、後述する偏向電極部15と電極部11との間に形成される加速電界に到達するような大きさに設定される。加速電界を形成する電位差は、たとえば、10〜1000Vの範囲内とされ、50〜500Vの範囲内であることが好ましい。
電子源ユニット3は、処理筐体2に気密に着脱自在に装着される真空フランジVFを有している。真空フランジVFは、胴部H2aの一端に固定されている。電子源ユニット3は、真空フランジVFが処理筐体2に装着されることにより、処理筐体2に設けられている。処理筐体2における電子源ユニット3が設けられる位置には、開口部2aが形成されている。すなわち、電子源ユニット3(筐体H)内の空間は、開口部2aを通して、処理筐体2内の空間と連通している。真空フランジVFは、導電性金属材料(たとえば、ステンレス鋼又はアルミニウムなど)からなる。開口部2aの形状は、第二筐体H2(胴部H2a)の形状に対応して、円形状である。
電子源ユニット3が、溶接などにより処理筐体2と一体に設けられている場合、又は、処理筐体2(処理部1)内に配置される場合は、真空フランジVFは必ずしも必要ではない。真空フランジVFは、胴部H2aと一体に構成されていてもよく、胴部H2aと別体に構成されていてもよい。
電極部11は、図2に示されるように、メッシュ状の導電性部材である。メッシュとは、上述したように、網状に限らず、格子状、多孔状、又は多段櫛刃状などの、所定の領域を複数の領域に二次元的に分割する構造である。メッシュ状の導電性部材が電極部11として用いられる場合も、メッシュ状の導電性部材は、電子の透過と電界の形成を可能とする。
電極部11は、開口部H2bを覆うように第二筐体H2に配置されている。電極部11の形状は、開口部H2bの形状に対応している。本実施形態では、電極部11は、平面視で、円形状を呈している。電極部11は、筐体H(第二筐体H2)の外側空間と第二筐体H2の内部空間とを仕切るように位置する。すなわち、電極部11は、電子源ユニット3と処理筐体2(処理空間)とを仕切るように電子源ユニット3と処理筐体2との間に位置する。電極部11はメッシュ状であることから、第二筐体H2に導入された電子が筐体Hの外側空間に向けて通過する。
電極部11は、第二筐体H2とは絶縁され、かつ、所望の電位が供給されるように、たとえば絶縁部材を介して第二筐体H2に固定されると共に、電極部11への給電経路が設けられている。電極部11は、電子発生源5(カソード6)の電位より高い電位とされる。電極部11は、処理室部20と同電位にされる場合、導電部材などを介して処理室部20に電気的に接触させることにより、処理室部20と同電位としてもよい。電極部11と処理室部20とに、別途設けた給電部材によって、同じ電位が供給されてもよい。所望の電位がグラウンド電位の場合、電極部11は、第二筐体H2と電気的に接続されていてもよい。電極部11は、たとえば、ステンレス鋼からなる。電極部11のメッシュの大きさは、熱電子の通過率が高く、かつ、電子源ユニット3と処理筐体2との間で電界の染み出しが極めて少ない大きさに設定される。
電子源ユニット3は、偏向電極部15と、アパーチャ電極部19とを備えている。偏向電極部15及びアパーチャ電極部19は、第二筐体H2内に配置されている。偏向電極部15は、電子発生源5(カソード6)と対向するように第二筐体H2の内部空間(胴部H2aの内側空間)に配置されている。アパーチャ電極部19は、電子発生源5と偏向電極部15との間に配置されている。偏向電極部15及びアパーチャ電極部19は、導電性金属材料(たとえば、ステンレス鋼又はアルミニウムなど)からなる。
偏向電極部15は、電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出される電子(熱電子)を電極部11に偏向させる。電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出される電子(熱電子)を偏向電極部15に衝突しないように電極部11に偏向させるために、偏向電極部15の電位は電子発生源5(カソード6)の電位以下とされる。偏向電極部15には、図5にも示されるように、凹部16が設けられている。凹部16は、電子発生源5と電極部11とに対向する開口16aを有している。本実施形態では、偏向電極部15は、パイプ状の胴部17aと、胴部17aの一端に位置する底部17bと、を有している。すなわち、胴部17aと底部17bとにより、凹部16が構成されている。開口16aは、胴部17aの他端に位置している。胴部17aと底部17bとは一体に構成されていてもよく、また、別体に構成されていてもよい。偏向電極部15は、斜切円筒形状を呈している。胴部17aの断面は、円形に限られず、楕円形又は多角形であってもよい。
偏向電極部15は、胴部17aの他端に、一対の突出片17cを有している。一対の突出片17cは、第二筐体H2の延在方向D2から見て、左右対称となるように配置されている。胴部17aの他端は、電子発生源5と電極部11とに対向している。一対の突出片17cは、互いに対向している。本実施形態では、一対の突出片17cは、第一筐体H1の延在方向D1と第二筐体H2の延在方向D2とに直交する方向D3で離間している。各突出片17cは、胴部17aと一体に構成されている。各突出片17cは、第二筐体H2の延在方向D2から見て、胴部17aの形状に沿って湾曲している。
偏向電極部15は、絶縁部材25を介してフランジF2に固定されている。偏向電極部15は、筐体H(第一筐体H1及び第二筐体H2)と電気的に絶縁されている。偏向電極部15には、電位導入端子18が電気的に接続されている。偏向電極部15には、電位導入端子18を通して、電極部11及び電極部13の電位より低い電位が供給される。すなわち、偏向電極部15は、電極部11及び電極部13の電位より低い電位とされる。
第二筐体H2内には、偏向電極部15に供給される電位によって、第二筐体H2内に導入された熱電子を電極部11に向けて加速させる加速電界が形成される。第二筐体H2内に導入された熱電子は、電極部11を通して、第二筐体H2から導出される。加速電界を形成する電位差は、処理筐体2内に導入された熱電子が、処理対象物POに直接到達し難い大きさに設定される。加速電界を形成する電位差は、たとえば、10〜1000Vの範囲内とされ、50〜500Vの範囲内であることが好ましい。
アパーチャ電極部19は、胴部17aに配置されている。アパーチャ電極部19は、偏向電極部15(胴部17a)に溶接又はねじ止めにより固定されている。アパーチャ電極部19は、第二筐体H2の内部空間に放出される電子(熱電子)が通過する開口部19aを有している。開口部19aの形状は、たとえば、円形状である。開口部19aの形状は、楕円形状又は多角形状であってもよい。本実施形態では、アパーチャ電極部19は、偏向電極部15と電気的に接続されている。アパーチャ電極部19は、偏向電極部15とは絶縁され、かつ、所望の電位が供給されるように、たとえば絶縁部材を介して偏向電極部15に固定されると共に、アパーチャ電極部19への給電経路が設けられていてもよい。
処理室部20は、図6中の(a)に示されるように、たとえば、直方体形状を呈している。処理室部20には、処理筐体2における電子源ユニット3が設けられる面に対向する一つの面に開口部20aが形成されている。開口部20aは、処理筐体2における開口部2aと対向するように位置している。すなわち、処理室部20には、電子源ユニット3と対向する位置に開口部20aが形成されているため、電子源ユニット3(筐体H)内の空間は、開口部2a及び開口部20aを通して、処理部1の処理室部20内の処理空間と連通している。開口部20aは、処理室部20と同電位とされるメッシュ状の電極MEに覆われている。
処理室部20には、図6中の(b)に示されるように、処理筐体2における電子源ユニット3が設けられる面に対向する一つの面の略全体が開口することにより、開口部20aが形成されていてもよい。開口部20aは、処理室部20と同電位とされるメッシュ状の電極MEに覆われている。処理室部20には、図6中の(c)に示されるように、六つの面の略全体が開口していてもよい。図6中の(c)に示された処理室部20は、直方体の各稜に枠部が位置する枠構造体、すなわち、直方体形状の枠構造体である。全ての開口部20aは、処理室部20と同電位とされるメッシュ状の電極MEに覆われている。図6中の(a)〜(c)のいずれにおいても、開口部20aは、メッシュ状の電極MEで覆われることなく、開放されていてもよい。
処理筐体2と処理室部20とには、それぞれ独立して、電位が供給される。この場合、処理筐体2と処理室部20とは、互いに電気的に絶縁されている。処理筐体2と処理室部20とは、必ずしも、互いに電気的に絶縁されている必要はない。処理筐体2と処理室部20とは、互いに電気的に接続されていてもよい。この場合、処理筐体2と処理室部20とは、同じ電位に設定される。帯電処理装置C1が除電処理装置のみとして用いられる場合には、処理筐体2と処理室部20とは、電気的に接続されていてもよい。処理筐体2と処理室部20とは、処理室部20を処理筐体2と接触するように処理筐体2内に配置することにより、電気的に接続することができる。
給気部21及び排気部23は、処理筐体2に設けられている。給気部21及び排気部23は、処理部1内を所定の圧力条件下に設定するために、処理部1(処理筐体2)内のガスの給排気を行う。所定の圧力条件下とは、減圧下はもちろんのこと、大気圧下又は加圧下であってもよい。処理部1内の圧力は、たとえば、数十〜10−3Paの範囲内とされ、より好ましくは10〜10−2Paの範囲内とされる。
給気部21及び排気部23は、荷電粒子形成用ガスの給排気を行う。これにより、処理部1(処理筐体2)内を、荷電粒子形成用ガスを含む所定の圧力雰囲気下とすることが可能である。荷電粒子形成用ガスには、たとえば、大気又はアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスを用いることができる。帯電処理装置C1を取り巻く雰囲気が荷電粒子形成用ガスとされる場合、処理筐体2内を減圧雰囲気とするには、排気部23のみで実現することもできる。給気部21及び排気部23は、処理筐体2に設けられている必要はなく、処理室部20に直接設けられていてもよい。この場合、給気部21及び排気部23が処理室部20の電位に影響しないようにする必要がある。
次に、図7〜図10を参照して、帯電処理装置C1による帯電処理について説明する。図7〜図10は、本実施形態に係る帯電処理装置での帯電処理を説明するための図である。図7中の(a)〜(c)は、処理対象物POを負の電位に帯電させる処理を説明するための図である。図8中の(a)〜(c)は、処理対象物POを正の電位に帯電させる処理を説明するための図である。図9中の(a)〜(c)は、正の電位に帯電している処理対象物POを除電する処理を説明するための図である。図10中の(a)〜(c)は、負の電位に帯電している処理対象物POを除電する処理を説明するための図である。図7及び図8は、処理対象物POが絶縁体である場合を例示する。図9及び図10は、処理対象物POが導電体である場合を例示する。図7〜図10では、説明の容易化のために、処理室部20の開口部20aがメッシュ状の電極MEで覆われていない態様が示されている。また、図7〜図10では、電極部13、アパーチャ電極部19の図示が省略されている。
[負の電位への帯電処理]
図7中の(a)に示されるように、帯電処理装置C1には、帯電していない、すなわち電位が0Vである処理対象物POが処理室部20内に配置されている。給気部21及び排気部23(図7では不図示)は、処理室部20(処理筐体2)内を、荷電粒子形成用ガスを含む所定の圧力雰囲気下とする。たとえば、処理室部20内は、Arガスを含み、かつ、0.7〜1.3Pa(たとえば1Pa)とされた圧力雰囲気下とされる。
帯電処理装置C1では、処理室部20(処理部1)が、所望の負の電位(たとえば、−200V)に設定される。これにより、処理対象物POと処理室部20との間に、処理対象物POと処理室部20との電位差(たとえば、200V)に対応する電界が形成される。電極部11と処理室部20とが同じ電位とされているため、処理対象物POと処理室部20との電位差に対応する電界は、電極部11の近傍まで形成される。
電子発生源5(カソード6)及び偏向電極部15は、上述した各加速電界が形成されるように、処理室部20よりも低い電位(たとえば、−400V)に設定される。これにより、電子源ユニット3内には、電子発生源5及び偏向電極部15と処理室部20(電極部11)との電位差(たとえば、200V)に対応する各加速電界が形成される。電極部11は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界と、電子源ユニット3(第二筐体H2)内の加速電界と、が互いに影響し合うのを抑制する。
電子源ユニット3内に各加速電界が形成され、かつ、処理対象物POと処理室部20(電極部11)との間に上記電界が形成されている状態で、カソード6が通電される。通電により、カソード6は、熱電子を放出する。カソード6から放出された熱電子は、各加速電界により加速され、電極部11を通過し、処理室部20内に導入される。
図7中の(b)に示されるように、処理室部20内に導入された熱電子は、処理室部20内の電極部11と処理対象物POとの間に存在する荷電粒子形成用ガスの分子を励起する。これにより、荷電粒子形成用ガスの分子から、正及び負の荷電粒子が生じる。すなわち、荷電粒子形成用ガスの分子は、熱電子の衝突により、正及び負の荷電粒子に解離する。荷電粒子形成用ガスとして、Arガスが用いられる場合、Ar分子が、Ar+イオンと電子とに開裂し、Ar+イオンと電子とが生じる。
生じた負の荷電粒子(電子)は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理対象物PO側に移動する。処理対象物POは、処理対象物POに移動してきた負の荷電粒子により、負の電位に帯電する。生じた正の荷電粒子(Ar+イオン)は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理室部20側及び電極部11側に移動する。処理室部20及び電極部11に到達した正の荷電粒子は、中和される。
処理対象物POの帯電状態に応じ、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間に形成される電界が弱まる。処理対象物POが、上述した所望の負の電位に帯電すると、図7中の(c)に示されるように、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間には電界が形成されず、負の荷電粒子は移動しない。これにより、処理対象物POは、所望の負の電位に帯電され、処理対象物POの電位は、帯電した状態で安定する。
[正の電位への帯電処理]
図8中の(a)に示されるように、帯電処理装置C1には、帯電していない、すなわち電位が0Vである処理対象物POが処理室部20内に配置されている。給気部21及び排気部23(図8では不図示)は、処理室部20(処理筐体2)内を、荷電粒子形成用ガスを含む所定の圧力雰囲気下とする。たとえば、処理室部20内は、Arガスを含み、かつ、0.7〜1.3Pa(たとえば1Pa)とされた圧力雰囲気下とされる。
帯電処理装置C1では、処理室部20(処理部1)が、所望の正の電位(たとえば、+200V)に設定される。これにより、処理対象物POと処理室部20との間に、処理対象物POと処理室部20との電位差(たとえば、200V)に対応する電界が形成される。電極部11と処理室部20とが同じ電位とされているため、処理対象物POと処理室部20との電位差に対応する電界は、電極部11の近傍まで形成される。
電子発生源5(カソード6)及び偏向電極部15は、上述した各加速電界が形成されるように、処理室部20よりも低い電位(たとえば、−100V)に設定される。これにより、電子源ユニット3内には、電子発生源5及び偏向電極部15と処理室部20(電極部11)との電位差(たとえば、300V)に対応する各加速電界が形成される。電極部11は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界と、電子源ユニット3(第二筐体H2)内の加速電界と、が互いに影響し合うのを抑制する。
電子源ユニット3内に各加速電界が形成され、かつ、処理対象物POと処理室部20(電極部11)との間に上記電界が形成されている状態で、カソード6が通電される。通電により、カソード6は、熱電子を放出する。カソード6から放出された熱電子は、各加速電界により加速され、電極部11を通過し、処理室部20内に導入される。
図8中の(b)に示されるように、処理室部20内に導入された熱電子は、処理室部20内の電極部11と処理対象物POとの間に存在する荷電粒子形成用ガスの分子を励起する。これにより、荷電粒子形成用ガスの分子から、正及び負の荷電粒子が生じる。生じた正の荷電粒子は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理対象物PO側に移動する。処理対象物POは、処理対象物POに移動してきた正の荷電粒子により、正の電位に帯電する。生じた負の荷電粒子は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理室部20側及び電極部11側に移動する。処理室部20及び電極部11に到達した負の荷電粒子は、中和される。
処理対象物POの帯電状態に応じ、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間に形成される電界が弱まる。処理対象物POが、上述した所望の正の電位に帯電すると、図8中の(c)に示されるように、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間には電界が形成されず、正の荷電粒子は移動しない。これにより、処理対象物POは、所望の正の電位に帯電され、処理対象物POの電位は、帯電した状態で安定する。
[正の電荷の除電処理]
図9中の(a)に示されるように、帯電処理装置C1には、正の電荷に帯電している処理対象物POが処理室部20内に配置されている。処理対象物POは、たとえば、+1kVに帯電している。給気部21及び排気部23(図9では不図示)は、処理室部20(処理筐体2)内を、荷電粒子形成用ガスを含む所定の圧力雰囲気下とする。たとえば、処理室部20内は、Arガスを含み、かつ、0.7〜1.3Pa(たとえば1Pa)とされた圧力雰囲気下とされる。
帯電処理装置C1では、処理室部20及び処理筐体2が、グラウンド電位に設定される。これにより、処理対象物POと処理室部20との間に、処理対象物POと処理室部20との電位差(たとえば、1kV)に対応する電界が形成される。電極部11と処理室部20とが同じ電位とされているため、処理対象物POと処理室部20との電位差に対応する電界は、電極部11の近傍まで形成される。
電子発生源5(カソード6)及び偏向電極部15は、上述した各加速電界が形成されるように、処理室部20よりも低い電位(たとえば、−200V)に設定される。これにより、電子源ユニット3内には、電子発生源5及び偏向電極部15と処理室部20(電極部11)との電位差(たとえば、200V)に対応する各加速電界が形成される。電極部11は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界と、電子源ユニット3(第二筐体H2)内の加速電界と、が互いに影響し合うのを抑制する。
電子源ユニット3内に各加速電界が形成され、かつ、処理対象物POと処理室部20(電極部11)との間に上記電界が形成されている状態で、カソード6が通電される。通電により、カソード6は、熱電子を放出する。カソード6から放出された熱電子は、各加速電界により加速され、電極部11を通過し、処理室部20内に導入される。
図9中の(b)に示されるように、処理室部20内に導入された熱電子は、処理室部20内の電極部11と処理対象物POとの間に存在する荷電粒子形成用ガスの分子を励起する。これにより、荷電粒子形成用ガスの分子から、正及び負の荷電粒子が生じる。生じた負の荷電粒子は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理対象物PO側に移動する。処理対象物POは、処理対象物POに移動してきた負の荷電粒子により、正の電位の帯電が中和される。生じた正の荷電粒子は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理室部20側及び電極部11側に移動する。処理室部20及び電極部11に到達した正の荷電粒子は、中和される。
処理対象物POの帯電状態に応じ、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間に形成される電界が弱まる。処理対象物POが、除電されると、すなわち電位が0Vとなると、図9中の(c)に示されるように、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間には電界が形成されず、負の荷電粒子は移動しない。これにより、処理対象物POは、電位が0Vとされ、処理対象物POの電位は、除電された状態で安定する。
[負の電荷の除電処理]
図10中の(a)に示されるように、帯電処理装置C1には、負の電荷に帯電している処理対象物POが処理室部20内に配置されている。処理対象物POは、たとえば、−1kVに帯電している。給気部21及び排気部23(図10では不図示)は、処理室部20(処理筐体2)内を、荷電粒子形成用ガスを含む所定の圧力雰囲気下とする。たとえば、処理室部20内は、Arガスを含み、かつ、0.7〜1.3Pa(たとえば1Pa)とされた圧力雰囲気下とされる。
帯電処理装置C1では、処理室部20及び処理筐体2が、グラウンド電位に設定される。これにより、処理対象物POと処理室部20との間に、処理対象物POと処理室部20との電位差(たとえば、1kV)に対応する電界が形成される。電極部11と処理室部20とが同じ電位とされているため、処理対象物POと処理室部20との電位差に対応する電界は、電極部11の近傍まで形成される。
電子発生源5(カソード6)及び偏向電極部15は、上述した各加速電界が形成されるように、処理室部20よりも低い電位(たとえば、−200V)に設定される。これにより、電子源ユニット3内には、電子発生源5及び偏向電極部15と処理室部20(電極部11)との電位差(たとえば、200V)に対応する各加速電界が形成される。電極部11は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界と、電子源ユニット3(第二筐体H2)内の加速電界と、が互いに影響し合うのを抑制する。
電子源ユニット3内に各加速電界が形成され、かつ、処理対象物POと処理室部20(電極部11)との間に上記電界が形成されている状態で、カソード6が通電される。通電により、カソード6は、熱電子を放出する。カソード6から放出された熱電子は、各加速電界により加速され、電極部11を通過し、処理室部20内に導入される。
図10中の(b)に示されるように、処理室部20内に導入された熱電子は、処理室部20内の電極部11と処理対象物POとの間に存在する荷電粒子形成用ガスの分子を励起する。これにより、荷電粒子形成用ガスの分子から、正及び負の荷電粒子が生じる。生じた正の荷電粒子は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理対象物PO側に移動する。処理対象物POは、処理対象物POに移動してきた正の荷電粒子により、負の電位の帯電が中和される。生じた負の荷電粒子は、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との電位差に対応する電界に応じて、処理室部20側及び電極部11側に移動する。処理室部20及び電極部11に到達した負の荷電粒子は、中和される。
処理対象物POの帯電状態に応じ、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間に形成される電界が弱まる。処理対象物POが、除電されると、すなわち電位が0Vとなると、図10中の(c)に示されるように、処理対象物POと処理室部20及び電極部11との間には電界が形成されず、正の荷電粒子は移動しない。これにより、処理対象物POは、電位が0Vとされ、処理対象物POの電位は、除電された状態で安定する。
以上のように、電子源ユニット3が用いられた帯電処理装置C1では、電極部11及び電極部13の電位よりも小さい電位が、電子発生源5(カソード6)に一対の電極ピン9(給電部)を通して供給され、かつ、偏向電極部15(アパーチャ電極部19)に電位導入端子18を通して供給されると、電子発生源5と電極部13との間、及び、偏向電極部15と電極部11との間には各加速電界が形成される。これらの加速電界により、電子発生源5にて発生する電子は、電極部13及び電極部11を通過し、筐体H(第二筐体H2)の外側空間に効率よく導出される。帯電処理装置C1において、筐体H(第二筐体H2)の外側空間は、処理室部20内の空間(処理対象物POが位置する処理空間)であり、荷電粒子形成用ガスが存在している。このため、筐体Hの外側空間、すなわち処理室部20内に導出された電子は、処理室部20内に存在する荷電粒子形成用ガスの分子を励起する。これにより、荷電粒子形成用ガスの分子から、正及び負の荷電粒子が生じる。
生じた正及び負の荷電粒子のうちいずれか一方の荷電粒子が、電極部11及び処理室部20(電極部11と電気的に接続される部位)の電位(所望の電位)と処理対象物POの電位とで形成される電界に応じて、処理対象物PO側に移動する。生じた正及び負の荷電粒子のうちいずれか他方の荷電粒子は、電極部11側及び処理室部20側に移動する。処理対象物POに移動してきた荷電粒子により、処理対象物POは、所望の電位に帯電する。処理対象物POが所望の電位に帯電すると、電極部11及び処理室部20と処理対象物POとの間に電界が形成されず、荷電粒子は移動しない。したがって、処理対象物POは、確実に所望の電位に帯電する。
図7〜図10では、説明の容易化のために、処理室部20の開口部20aがメッシュ状の電極MEで覆われていない態様が示されている。処理室部20の開口部20aに、処理室部20と同電位のメッシュ状の電極が存在する場合であっても、処理対象物POと処理室部20との電位差に対応する電界は、メッシュ状の電極が存在する開口部20aまで形成される。このため、電極部11から出射された電子は、慣性力でメッシュ状の電極が存在する開口部20aを通過する。したがって、開口部20aにメッシュ状の電極が存在する場合であっても、開口部20aにメッシュ状の電極が存在しない場合と同様の作用効果を奏する。
これらの結果、電子源ユニット3が用いられた帯電処理装置C1では、処理対象物POを所望の電位に帯電させ得る効果が極めて高い。
電極部11まで移動した他方の荷電粒子の一部は、電極部11を通過し、電子発生源5(カソード6)に到達することがある。電子発生源5に到達する荷電粒子は、電子発生源5に衝突し、電子発生源5を劣化させるおそれがある。たとえば、カソード6への荷電粒子の衝突により、カソード6でスパッタが発生し、カソード6を劣化させる。これに対し、電子源ユニット3では、第一筐体H1の延在方向D1と第二筐体H2の延在方向D2とが交差しているので、荷電粒子が電極部11を通過する場合でも、電極部11を通過した荷電粒子は、電子発生源5(カソード6)に到達し難い。したがって、電子源ユニット3では、電子発生源5の劣化が抑制される。
上記スパッタ又は電子発生源5自体の昇華によりカソード6から電子放出材料が飛散する場合でも、第一筐体H1の延在方向D1と第二筐体H2の延在方向D2とが交差しているので、飛散した電子放出材料は、電極部11に向かい難い。したがって、飛散した電子放出材料が処理筐体2内に入るのが抑制されるので、電子放出材料による処理筐体2内及び処理対象物POの汚染が防止される。
カソード6から飛散した電子放出材料は、第二筐体H2内に付着するおそれがある。筐体H(第二筐体H2)が熱伝導性が高い材料(たとえば、アルミニウム)からなる場合、第二筐体H2からの熱の放散が促進される。したがって、カソード6から飛散した電子放出材料が第二筐体H2内に付着した場合でも、電子放出材料は第二筐体H2でトラップされ、電子放出材料の再飛散が抑制される。
第二筐体H2は、第二筐体H2の延在方向D2の一端に、処理筐体2内の処理空間と連通する開口部H2bを含んでおり、電極部11は、開口部H2bを覆うように第二筐体H2に配置されている。これにより、第二筐体H2の外側空間と第二筐体H2の内部空間とを仕切るように位置する電極部11が、確実かつ容易に配置される。
電子発生源5は、熱電子を放出するカソード6を有している。これにより、出力の高い電子発生源5が容易に実現される。カソード6は、イリジウムを含む材料からなる導電性部材6aと、導電性部材6aの表面を覆う、イットリウム酸化物を含む材料からなるコーティング層6bと、を有している。これにより、出力が高く、かつ、安定性の高い電子発生源5が容易に実現される。
電子発生源5は、カソード6を囲むように配置されている電極部8を有しており、電極部8は、カソード6の電位以下の電位とされている。カソード6と電極部13との電位差により形成される加速電界が、電極部8によって、カソード6近傍まで効率よく形成される。カソード6は、各ターンが離間するように巻回されているコイル部7を有している。これにより、加速電界が各ターンに確実かつ適切に作用するため、放出された熱電子が、カソード6と電極部13との電位差により形成される加速電界によって効率よく導かれる。
電子源ユニット3は、メッシュ状の電極部13を備えている。電極部13は、第一筐体H1の内部空間と第二筐体H2の内部空間とを仕切るように位置している。電子発生源5(カソード6)から放出される電子(熱電子)がは、第二筐体H2の内部空間に向けて電極部13を通過する。電極部13は、カソード6の電位より高い電位とされる。電極部13によって、電子発生源5にて発生した電子が、第二筐体H2の内部空間に効率よく導かれる。
電子源ユニット3は、偏向電極部15を備えている。偏向電極部15は、電子発生源5(カソード6)と対向するように、第二筐体H2の内部空間に配置されている。偏向電極部15は、電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出される電子を電極部11に偏向させる。偏向電極部15によって、電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出された電子が電極部11に向けて効率よく移動する。
偏向電極部15には、凹部16が設けられている。凹部16は、電子発生源5(カソード6)と電極部11とに対向する開口16aを有している。凹部16が設けられている偏向電極部15によって、電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出された電子が、電極部11に向けてより一層効率よく移動する。
偏向電極部15は、パイプ状の胴部17aを有している。開口16aは、胴部17aの他端に位置しており、胴部17aの開口でもある。これにより、電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出された電子が電極部11に向けてより一層効率よく移動し得る偏向電極部15の構成が簡易に実現される。
偏向電極部15は、電子発生源5(カソード6)と電極部11とに対向する端(胴部17aの他端)に、一対の突出片17cを有している。一対の突出片17cは、互いに対向している。一対の突出片17cによって、電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出された電子が電極部11に向けてより一層効率よく移動する。偏向電極部15には、複数対の突出片17cが配置されていてもよい。
電子源ユニット3は、アパーチャ電極部19を備えている。アパーチャ電極部19は、電子発生源5(カソード6)と偏向電極部15との間に配置されている。アパーチャ電極部19は、第二筐体H2の内部空間に放出される電子が通過する開口部19aを有している。アパーチャ電極部19によって、電子発生源5にて発生した電子が、第二筐体H2の内部空間に効率よく導かれる。
帯電処理装置C1では、処理部1(処理筐体2)内の荷電粒子形成用ガスの圧力と、電子源ユニット3内の加速電界と、に応じ、荷電粒子形成用ガスの分子が解離する位置(以下、単に「解離位置」と称する)が変化する。加速電界が大きい場合、解離位置は電子源ユニット3から離れる。加速電界が小さい場合、解離位置は電子源ユニット3に近づく。荷電粒子形成用ガスの圧力が高い場合、電子(たとえば、熱電子)の平均自由行程が短くなるため、解離位置は電子源ユニット3に近づく。荷電粒子形成用ガスの圧力が低い場合、電子の平均自由行程が長くなるため、解離位置は電子源ユニット3から離れる。これらのことから、荷電粒子形成用ガスの圧力と加速電界とを調節することにより、解離位置を最適化することができる。したがって、加速電界は調整可能であってもよい。加速電界は、たとえば、カソード6及び電極部8に供給される電位を調整することによって、調整することができる。
次に、図11〜図16を参照して、偏向電極部15の変形例を説明する。図11〜図16は、偏向電極部の変形例を示す図である。図11〜図16中の(a)は、偏向電極部の変形例を示す斜視図である。図11〜図16中の(b)は、偏向電極部の変形例を示す断面構成図である。
図11に示された変形例では、偏向電極部15は、電子発生源5(カソード6)と電極部11とに対向する傾斜面15a(電極面)を有している。偏向電極部15は、斜切円柱形状を呈している。すなわち、本変形例では、偏向電極部15は、凹部16及び一対の突出片17cを有していない。傾斜面15aと第二筐体H2の延在方向D2とがなす角は、たとえば、45〜65°である。
図12に示された変形例では、偏向電極部15が有する傾斜面15aは、第二筐体H2の延在方向D2とのなす角が異なる複数の領域を含んでいる。変形例では、傾斜面15aは、第二筐体H2の延在方向D2とのなす角が第一角度である第一領域15a1と、第二筐体H2の延在方向D2とのなす角が第一角度より大きい第二角度である第二領域15a2と、を含んでいる。
図13に示された変形例では、偏向電極部15が有する傾斜面15aは、階段状とされた領域を含んでいる。傾斜面15a全体が階段状とされていてもよい。図14に示された変形例の偏向電極部15は、一対の突出片17cを有していない点で、図5に示された偏向電極部15と相違する。図15に示された変形例の偏向電極部15は、一対の突出片17cを有している点で、図11に示された偏向電極部15と相違する。
図16に示された変形例の偏向電極部15は、開口16aがメッシュ部材17dにより覆われている点で、図14に示された偏向電極部15と相違する。メッシュ部材17dは、導電性金属材料(たとえば、ステンレス鋼又はアルミニウムなど)からなる。本変形例でも、偏向電極部15は、一対の突出片17cを有していてもよい。
図11〜図16に示された各変形例でも、偏向電極部15によって、電子発生源5から第二筐体H2の内部空間に放出された電子が電極部11に向けて効率よく移動する。図16に示された変形例では、メッシュ部材17dによって、カソード6から飛散した電子放出材料が凹部16内にトラップされる。
続いて、電子発生源5(カソード6)にて発生した電子が第二筐体H2の開口部H2bに向けて効率よく移動し得る電子源ユニット3の効果を、実施例1〜5に基づいて説明する。ここでは、シミュレーションによって、電子源ユニット3における電子の利用効率を求めた。電子の利用効率は、電子発生源5にて発生した電子と、開口部H2bから電子源ユニット3の外側に導出された電子との比率で表す。たとえば、電子発生源5にて発生した全ての電子が開口部H2bから導出された場合、利用効率は100%である。電子発生源5にて発生した電子が開口部H2bから全く導出されなかった場合、利用効率は0%である。
シミュレーションでは、偏向電極部15の端面(カソード6と電極部11とに対向する面)の角度は、45°とした。カソード6(コイル部7)、電極部8、偏向電極部15、及びアパーチャ電極部19の電位は、−200Vとした。筐体H(第一筐体H1及び第二筐体H2)、電極部11、及び電極部13の電位は、グラウンド電位とした。
シミュレーション結果を、図17〜図21に示す。図17〜図21は、実施例1〜5における電子の移動のシミュレーション結果を示す図である。図17〜図21中の(a)は、電子源ユニット内に形成される電界と電子の移動軌道とを示す図である。図17〜図21中の(b)は、第二筐体の開口部での電子の分布を示す図である。図17〜図21中の(a)では、電子源ユニット内に形成される電界が破線で示され、電子の移動軌道が実線で示されている。図17〜図21中の(b)では、電子が分布する領域がハッチングで示されている。
各実施例1〜5におけるシミュレーションでの条件は以下の通りである。偏向電極部15の端面(カソード6と電極部11とに対向する面)の角度は、45°である。カソード6、電極部8、偏向電極部15、及びアパーチャ電極部19の電位は、−200Vである。筐体H(第一筐体H1及び第二筐体H2)、電極部11、及び電極部13の電位は、グラウンド電位である。
実施例1では、電子源ユニット3は、図11に示されている偏向電極部15を備えているものの、電極部13及びアパーチャ電極部19を備えていない。図17に示されるように、電子発生源5にて発生した電子のうち多くの電子が、偏向電極部15の端面(傾斜面15a)の前方で減速しながら、軌道を曲げられ、開口部H2bに向けて移動する。傾斜面15aへの接近度合いに応じて、軌道が曲がる度合いが大きく異なっている。このため、偏向電極部15によって軌道を曲げられた後、第二筐体H2の内壁面に衝突する電子が生じてしまう。電子の利用効率は、25%である。
実施例2では、電子源ユニット3は、図11に示されている偏向電極部15と、アパーチャ電極部19とを備えているものの、電極部13を備えていない。図18に示されるように、電子発生源5にて発生した電子のうち一部は、アパーチャ電極部19(開口部19a)を通過しない。アパーチャ電極部19を通過した電子は、偏向電極部15の端面(傾斜面15a)の前方で減速し、かつ、集束しながら、軌道を曲げられ、開口部H2bに向けて加速される。電子の利用効率は、26%である。実施例2では、電子の利用効率が実施例1と略同じであるものの、アパーチャ電極部19を通過した電子は、実施例1に比して、開口部H2bに向けて効率よく移動する。
実施例3では、電子源ユニット3は、図11に示されている偏向電極部15と、アパーチャ電極部19と、電極部13とを備えている。図19に示されるように、カソード6(電極部8)と電極部13との電位差により形成される加速電界により、電子発生源5にて発生した電子のほとんどが、電子発生源5からアパーチャ電極部19に向けて移動し、アパーチャ電極部19(開口部19a)を通過する。したがって、実施例3では、実施例1及び2に比して、開口部H2bでの電子が分布する領域が拡大する。実施例3では、開口部H2bに達する電子の数は、実施例1及び2に比して、増加する。電子の利用効率は、30%である。
実施例4では、電子源ユニット3は、図14に示されている偏向電極部15と、アパーチャ電極部19と、電極部13とを備えている。図20に示されるように、偏向電極部15と第二筐体H2及び電極部11との電位差により形成される加速電界の一部が、偏向電極部15の凹部16内に入り込むように、凹面状に湾曲して形成されている。すなわち、偏向電極部15の凹部16により、電子レンズ(静電レンズ)が形成される。したがって、アパーチャ電極部19(開口部19a)を通過した電子は、湾曲した電界によって曲げられ、開口部H2bに向かう。湾曲した電界は、電子の拡散を抑制する。したがって、実施例4では、開口部H2bに達する電子の数が、実施例3に比して、増加する。電子の利用効率は、45%である。
実施例5では、電子源ユニット3は、図5に示されている偏向電極部15と、アパーチャ電極部19と、電極部13とを備えている。すなわち、電子源ユニット3は、上述した本実施形態の構成と対応している。図21に示されるように、アパーチャ電極部19(開口部19a)を通過した電子は、実施例4と同様に、湾曲した電界によって曲げられ、開口部H2bに向かう。湾曲した電界は、電子の拡散を抑制する。
実施例4では、カソード6のコイル部7の軸線方向に沿うように放出された電子は、湾曲した電界によって曲げられた後に、第二筐体H2の内壁面に衝突する可能性があった。これに対し、実施例5では、一対の突出片17cによって、カソード6のコイル部7の軸線方向に沿うように放出された電子も、湾曲した電界によって曲げられた後に、開口部H2bに向かう。したがって、実施例5では、開口部H2bに達する電子の数が、実施例4に比して、増加する。電子の利用効率は、83%である。
いずれの実施例においても、電極部11と電極部13とは同電位であるが、電極部11と電極部13とに多少の電位差があっても大きな影響はない。ただし、電極部11と電極部13との電位差が大きい場合、電子及び荷電粒子の制御が難しいので、電極部11と電極部13とは、ほぼ同電位であることが好ましい。
次に、図22及び図23を参照して、電子発生源5の変形例を説明する。図22及び図23は、電子発生源の変形例を示す断面構成図である。
図22に示された変形例では、電子発生源5は、カソード6、電極部8、一対の電極ピン9、容器10(バルブ部10a及びステム部10b)、及びベース部12を有している。電極ピン9(ステムピン9a及び連結ピン9b)は、たとえばコバールからなる。容器10(バルブ部10a及びステム部10b)は、ガラスからなる。ベース部12は、導電性金属材料(たとえば、ステンレス鋼など)からなる。すなわち、ベース部12は、導電性を有する。電極部13は、バルブ部10aの開口を覆うように設けられている。
各電極ピン9は、ステム部10bに固定されているステムピン9aと、カソード6とステムピン9aとを連結している連結ピン9bとを含んでいる。ステムピン9aと連結ピン9bとは、溶接により接続されている。カソード6の両端には、連結ピン9bが溶接により接続されている。電子発生源5は、ベース部12を支持する支持ピン14(ステムピン14a及び連結ピン14b)を有している。ステムピン14aは、ステムピン9aと同様に、ステム部10bに固定されている。連結ピン14bは、ベース部12に固定されている。
ベース部12には、電極ピン9(連結ピン9b)が固定されている。一方の連結ピン9bは、ベース部12を貫通した状態でベース部12に接続されている。一方の連結ピン9bは、ベース部12と電気的に接続されている。他方の連結ピン9bは、ベース部12を貫通した状態で、絶縁部材(たとえば、ガラスなど)を介してベース部12に接続されている。他方の連結ピン9bは、ベース部12と電気的に絶縁されている。電極部8は、ベース部12に溶接により接続されている。電極部8は、ベース部12と電気的に接続されている。すなわち、電極部8は、ベース部12及び一方の連結ピン9bを通して、カソード6と電気的に接続されている。
図22に示された変形例では、ステムピン9a及びステムピン14aがステム部10bに高精度に配置された構造体と、連結ピン9b及び連結ピン14bがベース部12に高精度に配置された構造体とが接続されることにより、より高精度に構成部材が配置される。また、本変形例では、加速電界が電子発生源5(カソード6)近傍まで効率よく形成され得る電子発生源5の構成が簡易に実現されている。
図23に示された変形例では、電子発生源5は、カソード6、電極部8、一対の電極ピン9、容器10(バルブ部10a及びステム部10b)、ベース部12、及び支持ピン14を有している。
ステム部10bは、第一部分10b1と、第一部分10b1を囲んでいる第二部分10b2とを含んでいる。第一部分10b1は、ガラスからなる。第二部分10b2は、金属(たとえば、コバール又はステンレス鋼など)からなり、リング状を呈している。第二部分10b2は、第一部分10b1を構成するガラスの溶融によって、第一部分10b1に固定されている。
ベース部12は、第一部分12aと、第一部分12aを囲んでいる第二部分12bとを含んでいる。第一部分12aは、ガラスからなる。第二部分12bは、金属(たとえば、コバール又はステンレス鋼など)からなり、リング状を呈している。第二部分12bは、第一部分12aを構成するガラスの溶融によって、第一部分12aに固定されている。ベース部12の第一部分12aは、電気絶縁性を有している。
電極ピン9は、ステム部10bの第一部分10b1とベース部12の第一部分12aとに固定されている。電極ピン9は、第一部分10b1と第一部分12aとを貫通している。支持ピン14は、ステム部10bの第一部分10b1とベース部12の第一部分12aとに固定されている。一方の電極ピン9は、第二部分12bと電気的に接続されている。
バルブ部10aは、金属材料(たとえば、ステンレス鋼など)からなる。バルブ部10aは、ステム部10bの第二部分10b2に溶接により接続されている。バルブ部10aの一端には、電極部13が溶接によって接続されている。電極部8は、ベース部12の第二部分12bに溶接により接続されている。
電極部8は、ベース部12の第二部分12bに溶接により接続されている。電極部8は、第二部分12b及び一方の電極ピン9を通して、カソード6と電気的に接続されている。電極部8は、第二部分12bに接続される第一部分8aと、カソード6を囲むように位置する第二部分8bとを有している。第二部分8bの内径は、第一部分8aの内径より小さい。第一部分8aと第二部分8bとは、一体に構成されている。
図23に示された変形例においても、金属部材の多用と溶接による接合とにより、より高精度に構成部材が配置される。また、本変形例では、加速電界が電子発生源5(カソード6)近傍まで効率よく形成され得る電子発生源5の構成が簡易に実現されている。
本変形例では、ステム部10b(第一部分10b1)に固定されている電極ピン9にカソード6が接続されていると共に、ステム部10b(第二部分10b2)にバルブ部10aが固定されている。これにより、バルブ部10aに接続されている電極部13と、カソード6との間隔の管理を容易に行うことができる。電極ピン9にベース部12(第一部分12a)が固定されていると共に、ベース部12(第二部分12b)に電極部8が固定されている。これにより、電極部8の先端とカソード6との間隔の管理を容易に行うことができる。また、電極部8の先端と電極部13との間隔の管理も容易に行うことができる。
次に、図24及び図25を参照して、電子源ユニット3の変形例を説明する。図24は、電子源ユニットの変形例を示す斜視図である。図25は、電子源ユニットの変形例を示す断面構成図である。
図24及び図25に示された変形例では、電子源ユニット3は、電子発生源5、筐体H、電極部11、電極部13、偏向電極部15、及びアパーチャ電極部19を備えている。筐体Hは、第一筐体H1、第二筐体H2、及び第三筐体H3を有している。第三筐体H3は、第一筐体H1及び第二筐体H2と同様に、導電性金属材料(たとえば、ステンレス鋼又はアルミニウムなど)からなる。第三筐体H3は、第一筐体H1及び第二筐体H2と電気的に接続されている。第一筐体H1と第二筐体H2と第三筐体H3とは、一体に構成されていてもよく、また、別体に構成されていてもよい。
第三筐体H3は、胴部H3aを含んでいる。胴部H3aの断面形状は円形であり、胴部H3aは円筒形状を呈している。胴部H3aの断面形状は、円形に限られず、楕円形又は多角形であってもよい。第三筐体H3(胴部H3a)は、胴部H2aに接続されている。第三筐体H3は、胴部H2a(第二筐体H2)における第一筐体H1と対向する位置に接続されている。第三筐体H3は、胴部H2aに形成されている開口に挿通されている状態で、胴部H2aに固定されている。第三筐体H3の内部空間(胴部H3aの内側空間)と第二筐体H2の内部空間(胴部H2aの内側空間)とは、連通している。
第三筐体H3の延在方向と第二筐体H2の延在方向D2とは、交差している。本実施形態では、第三筐体H3の延在方向と第二筐体H2の延在方向D2とは、直交している。第三筐体H3の延在方向は、第一筐体H1の延在方向D1と略一致している。すなわち、第一筐体H1と第三筐体H3とは、第二筐体H2を挟んで、第一筐体H1の延在方向D1で対向している。フランジF1は、第三筐体H3の延在方向での胴部H3aの一端に設けられている。
本変形例では、カソード6から電子放出材料が飛散する場合でも、飛散した電子放出材料が第一筐体H1と対向している第三筐体H3に向かい、第三筐体H3でトラップされる。このため、飛散した電子放出材料は、電極部11に向かい難い。したがって、飛散した電子放出材料が処理筐体2内に入るのが抑制されるので、電子放出材料による処理筐体2内及び処理対象物POの汚染が防止される。
次に、図26を参照して、電子源ユニット3の別の変形例を説明する。図26は、電子源ユニットの変形例を示す断面構成図である。
図26に示された変形例では、電子源ユニット3は、電子発生源5、筐体H、電極部11、電極部13、偏向電極部15、アパーチャ電極部19、及び放熱器27を備えている。放熱器27は、第二筐体H2(胴部H2a)に設けられており、第二筐体H2に熱的に接続されている。放熱器27は、熱伝導率が比較的高い材料(たとえば、アルミニウムなど)からなり、第二筐体H2の熱を放散する。本変形例では、フランジF2にも放熱器27が設けられている。
本変形例では、放熱器27により、第二筐体H2からの熱の放散が促進される。したがって、カソード6から飛散した電子放出材料が第二筐体H2内に付着した場合でも、電子放出材料は第二筐体H2でトラップされ、電子放出材料の再飛散が抑制される。
次に、図27〜図29を参照して、電子源ユニット3の更に別の変形例を説明する。図27は、電子源ユニットの変形例を示す斜視図である。図28は、電子源ユニットの変形例を示す断面構成図である。図29は、図28におけるXXIX−XXIX線に沿った断面構成図である。
電子源ユニット3は、複数の電子発生源5、筐体H、電極部11、電極部13、偏向電極部15、及びアパーチャ電極部19を備えている。本変形例では、電子源ユニット3は、6体の電子発生源5を備えている。複数の電子発生源5は、第二筐体H2の延在方向D2から見て、放射状に配置されている。
フランジF2には、ベアリングBを介して回転フランジF3が設けられている。回転フランジF3は、フランジF2に対し、第二筐体H2の延在方向D2に沿った軸方向において回転自在に支持されている。回転フランジF3は、フランジF2に対する回転方向の位置を調節可能である。回転フランジF3は、所望の回転位置にて、位置決め部材29によりフランジF2と連結されている。回転フランジF3は、位置決め部材29によりフランジF2と連結されている場合、フランジF2に対して回転することはない。フランジF2と回転フランジF3との間には、OリングR3が配置されており、OリングR3によりフランジF2と回転フランジF3との間の気密状態が保たれている。
偏向電極部15は、絶縁部材25を介して回転フランジF3に固定されているので、回転フランジF3の回転に伴って、偏向電極部15も回転する。すなわち、偏向電極部15は、第二筐体H2に対して回転自在に支持されている。位置決め部材29を外し、回転フランジF3を回転されると、偏向電極部15が回転し、対向する電子発生源5が替わる。すなわち、偏向電極部15と第二筐体H2とは、偏向電極部15が対向する電子発生源5が替わるように、相対的に回転自在である。
本変形例では、偏向電極部15が対向する電子発生源5が替わるので、電子(熱電子)を実際に発生させる電子発生源5を替えることが可能となる。本変形例では、6体の電子発生源5の中から、電子(熱電子)を実際に発生させる一つの電子発生源5が選ばれる。この結果、電子源ユニット3の長寿命化が図られる。なお、偏向電極部15ではなく、複数の電子発生源5が第二筐体H2の延在方向D2に沿った軸周りに回転可能に構成されることにより、偏向電極部15が対向する電子発生源5が替わってもよい。
次に、図30を参照して、電子源ユニット3の更に別の変形例を説明する。図30は、電子源ユニットの変形例を示す断面構成図である。
電子源ユニット3は、電子発生源5、筐体H、電極部11、電極部13、偏向電極部15、及びアパーチャ電極部19を備えている。電子発生源5は、第一筐体H1、エネルギー線源32、及び光電子放出体33を備えている。
エネルギー線源32は、たとえば、エキシマランプ又は重水素ランプなどが用いられる。エネルギー線源32は、発光部組立体48とガラス製の密封容器49とを備えている。密封容器49は、発光部組立体48を収容する側管部49aと、側管部49aから突出すると共に側管部49aに連通する突出部49bと、を有している。突出部49bの先端は、エネルギー線(VUV光)を出射する光出射窓によって封止されている。
第一筐体H1は、両端が開口した筒形状を呈している。第一筐体H1の一方の端部には、一方の端部の開口を塞ぐように、電気絶縁性の基板50が配置されている。第一筐体H1の他方の端部は、基板50が配置された状態で、クイックカップリング(Quick-release Coupling)51により気密に封止されている。基板50には、電流導入端子52が気密に設けられている。電流導入端子52は、たとえば、溶接などにより、基板50に固定される。基板50は、クイックカップリング51のブランクフランジとして機能する。
光電子放出体33は、第一筐体H1内に配置されている。光電子放出体33は、胴部33aと底部33bとを有しており、底部33bと対向する一端が開口した有底筒形状を呈している。胴部33aは、断面が円形の円筒形状を呈している。胴部33aの断面は、円形に限られず、楕円形又は多角形であってもよい。底部33bの内側面は、平面とされている。光電子放出体33は、固定基板53及び絶縁性基板54を介して、基板50に設けられている。固定基板53は、導電性を有している。固定基板53は、ねじ止めなどにより、絶縁性基板54に着脱自在に設けられる。絶縁性基板54は、ねじ止めなどにより、基板50に着脱自在に設けられる。
光電子放出体33は、底部33bに形成された突部が固定基板53と螺合することにより、固定基板53に固定される。すなわち、光電子放出体33は、固定基板53に着脱自在に設けられる。これにより、光電子放出体33の交換を容易に行うことができる。光電子放出体33は、固定基板53を介して、電流導入端子52に電気的に接続されている。電流導入端子52は、光電子放出体33に電位を供給する給電部として機能する。
光電子放出体33の胴部33aには、エネルギー線源32が備える密封容器49の突出部49bが挿通される開口が形成されている。突出部49bは、第一筐体H1に一体的に形成された筒状部56にも挿通されており、Oリングを介して、筒状部56に気密に設けられている。エネルギー線源32は、第一筐体H1に着脱自在に設けられている。エネルギー線源32からのエネルギー線が胴部33aの開口を介して光電子放出体33の光電子放出面に照射できれば、光電子放出体33の胴部33aの開口に密封容器49の突出部49bを挿通しなくてもよい。また、第一筐体H1は、胴部33aの開口を臨む位置に、エネルギー線を透過する窓材を備えていてもよい。この場合、エネルギー線源32は第一筐体H1の内部雰囲気外に配置される。
光電子放出体33は、エネルギー線源32からのエネルギー線が照射されると、光電子を放出する。このとき、電子源ユニット3内に加速電界(たとえば、200V)が形成されていると、放出された光電子が、電子源ユニット3から放出される。
本変形例では、帯電処理装置(筐体H)内の雰囲気(圧力及び真空度など)によって性能及び寿命などに影響を受けることの少ない、密封構造のエネルギー線源(たとえばランプなど)を用いることができる。この結果、帯電処理装置(筐体H)内の雰囲気に対して安定度の高い電子発生源を実現することができる。
本変形例では、光電子放出体33からの光電子の放出及び放出された光電子の第二筐体H2側への移動が効率よく行われる。また、本変形例の電子源ユニット3では、エネルギー線源32の突出部49bが光電子放出体33の胴部33aに形成された開口に挿通されているため、エネルギー線源32から放出されたエネルギー線が、第二筐体H2の内部空間に直接照射され難い。このため、第二筐体H2におけるエネルギー線が照射された部位にて、物質の解離などの発生が抑制される。
次に、図31〜図33を参照して、本実施形態に係る帯電処理装置の適用例を説明する。図31〜図33は、帯電処理装置の適用例を説明するための図である。
図31では、本実施形態に係る帯電処理装置が、フィルムFLの表面に機能性膜(たとえば、反射防止膜又はガスバリア膜など)を成膜する装置90に適用されている。装置90は、処理筐体2内に位置している。電子源ユニット3は、成膜部91の前段に配置されており、成膜前のフィルムFLを除電する。
図32では、本実施形態に係る帯電処理装置が、スパッタリング装置92に適用されている。スパッタリング装置92は、ターゲットTを保持するターゲットホルダー93、磁場発生用のマグネット94、及び成膜対象物(たとえば、Siウェハなど)を保持する電極95を備えている。本実施形態に係る帯電処理装置は、スパッタリングを行う前に、成膜対象物を除電する。電子源ユニット3は、処理筐体2内に位置していてもよい。
図33では、本実施形態に係る帯電処理装置が、ハードディスクメディア用の基板96の除電処理装置97に適用されている。基板96は、たとえばAl又はガラスなどからなる。除電処理装置97では、基板96は、メディアホルダ98に保持されている。除電処理装置97で除電された基板96は、成膜装置により、磁性体などからなる薄膜が形成される。本適用例でも、電子源ユニット3は、処理筐体2内に位置していてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
電子源ユニット3は、複数の電子発生源5を有していてもよい。電子発生源5は、複数のカソード6を含んでいてもよい。電子発生源5は、複数のエネルギー線源32を含んでいてもよい。帯電処理装置C1は、複数の電子源ユニット3を備えていてもよい。電子源ユニット3は、処理筐体2に対して移動可能に設けられていてもよい。図24〜図30に示された電子源ユニット3は、偏向電極部15として、図11〜図16に示されたいずれかの偏向電極部15を備えていてもよい。