JP6649551B2 - 糖の取り込みのための促進拡散を用いるコハク酸および他の化合物の生産方法 - Google Patents

糖の取り込みのための促進拡散を用いるコハク酸および他の化合物の生産方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2013年7月23日に出願した米国仮特許出願第61/857,300号に基づく優先権を主張する。
発明の技術分野
本発明は、糖含有原料の使用においてそれらの効率を高めるように修飾され得る生体触媒(細菌および他の微生物)を用いて、特定のおよび汎用性の有機化合物を生産する技術分野に属する。より具体的には、本発明は、コハク酸および他の化合物の生物学的生産のための糖類の輸送および代謝を含む機能をコード化する遺伝子の遺伝子修飾に関する。
発明の背景
多くの有機化合物が、現在、石油化学原料から製造されている。再生可能な原料を用いて生物学的発酵プロセスを介して、これらの石油化学を利用している有機化合物の多くを生産することへの関心が高まっている。再生可能な原料から誘導することができる有機化合物のリストには、α, ω−二酸(コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、グルカル酸、マロン酸、およびマレイン酸)、2,5−フランジカルボン酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、アスパラギン酸、グルカル酸、グルタミン酸、イタコン酸、レブリン酸、3−ヒドロキシブチロラクトン、グリセロール、ならびに1,4−ブタンジオール(米国特許出願公開第20090047719号)、1,3−ブタンジオール(米国特許出願公開第20090253192号)、および2,3−ブタンジオールのようなブタンジオール類が含まれる。アミノ酸、ビタミン類、アルコール類(例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、および高級アルコール)、脂肪酸類、脂肪酸のエステル類、炭化水素類、イソプレノイド類、テルペン類、カロテノイド類、アミン類を含むが、これらに限定されない多くの他のタイプの有機化合物もまた、再生可能な原料を用いて生産可能である。任意のこれらの化合物を、本明細書中“所望の化合物”と言う。多くのこれらの所望の化合物のための発酵プロセスが開発されているが、石油化学プロセスに対抗するために、例えば、生成物の力価(1リットル当たりの生成物のグラム数での終濃度)および生成物の収量(グルコースなどの炭素源1グラム当たりの生成物のグラム数)を改善するため、および酢酸などの望ましくない副生成物の力価を減少させるための、発酵の全体的な経済性を改善するための一定の必要性がある。
大腸菌を含む多くの細菌は、ホスホトランスフェラーゼシステム(PTS)と呼ばれる、グルコースおよび他の糖類を細胞内へ能動輸送するためのシステムを使用している。このシステムは、糖を同時に輸送およびリン酸化するためのエネルギー源およびリン酸源としてPEP(ホスホエノールピルビン酸)を用いる。PTSシステムは、通常、糖を取り込み、そしてそれをリン酸化するのに共に機能する4つ以上のタンパク質を必要とする。これらのタンパク質のいくつかは、所定の生物がPTSにより取り込む糖類の全てに共通するが、PTSの他のタンパク質成分は、1つまたはそれ以上の特定の糖類に特異的である。
例えば、大腸菌において、全てのPTS経路に共通するタンパク質は、それぞれ遺伝子ptsHおよびptsIによってコード化されるPtsHおよびPtsIである。これらの2つの“共通の”PTSタンパク質に加えて、1つまたはそれ以上のさらなる糖特異的PTSタンパク質が、特定の糖類を取り込み、かつそれをリン酸化するのに必要とされる。例えば、PTSによるグルコースの取り込みは、CrrおよびPtsGと呼ばれる2つのさらなるタンパク質を必要とする。Crrは単一ドメインAを有する細胞質タンパク質であり、PtsGは、2つのドメインBおよびCを有する膜タンパク質である。PEP由来のリン酸基は、タンパク質からタンパク質へ中継され、最終的に、細胞内に取り込まれるグルコースに、その6位に転送されて、グルコース−6−リン酸が得られる。PEPから始まる中継の順番は、PtsI、PtsH、Crr、そして最後にPtsGである。歴史的には、これらのタンパク質は、それぞれEI、HPr、EIIAGlc、およびEIIBCなどの他の名前でも呼ばれていた。大腸菌由来の別の例としては、フルクトースは、PtsI、PtsH、FruA、およびFruBを用いる同様の中継によって取り込まれ、最後の2つはそれぞれEIIFruおよびEIIFruとしても公知である。ある糖類、例えば、マンニトールについて、グルコースについて上記のA、BおよびCに対応する糖特異的タンパク質ドメインは、1つの膜結合ポリペプチドに融合されているが、他の糖類、例えば、マンノースについて、AおよびBドメインは、1つの細胞質ポリペプチドに融合されており、一方で、膜結合成分は、CおよびDと称される2つのサブユニットから構成されている。
全ての場合において、該システムは、“共通のサブユニット”(大腸菌において、PtsIおよびPtsH)に依拠し、PEPは、エネルギー源およびリン酸源である。結果として、PTSシステムによって取り込まれる糖分子は、1分子のPEPを利用して、1分子のリン酸化された糖および1分子のピルビン酸を生産する。しかしながら、PEPはまた、1)ピルビン酸キナーゼによるピルビン酸およびATPの形成、2)TCA(トリカルボン酸)回路にも炭素を供給する、PEPカルボキシキナーゼおよびPEPカルボキシラーゼにより触媒されるアナプレロティック代謝経路、および3)3−デオキシ−D−アラビノヘプツロソネート−7−ホスフェートシンターゼ(DAHPシンターゼ)の1つまたはそれ以上のアイソザイムによって触媒される共通の芳香族アミノ酸および芳香族ビタミン生合成経路の利用などの、いくつかの生化学的経路における必須中間体でもある。従って、本明細書に記載の糖取り込みおよび他の経路のためのPTSシステム間のPEPの競合は不可避である。
グラム陽性およびグラム陰性細菌の両方を含む多くの細菌がPTSシステムを使用しているため、進化における種々の状況下で保存されてきたシステムであることは明らかである。しかしながら、嫌気的条件下では、グルコースのような糖類からのATPの生産は、好気的条件下よりもはるかに効率が低く、例えばピルビン酸キナーゼによる所謂“基質レベルの”リン酸化が、酸化的リン酸化がATP収支(budget)の大部分を提供する好気的条件下よりも、ATP収支の大部分を占める。このように、出芽酵母およびザイモモナス・モビリス(アルコール発酵菌)などの微生物は、両者とも、グルコースおよび他の糖類上での嫌気性増殖に適用されるPTSシステムを有しないが、グルコースおよび他の糖類を取り込むために促進拡散タンパク質(facilitated diffusion protein)(パーミアーゼとも言う)を使用しているということに注目すべきである。さらに、PTSを天然で使用する生物(細菌)が発酵により特定の化合物を過剰生産するように遺伝子操作されているとき、多くの場合、該経路はPEPを中間体として用い、そのため、PTSは、PEPについて所望の生合成経路と競合する。PTSの活性を低下させることによるこの競合の緩和は、所望の生合成経路への流入を増加させることが知られている。
例えば、PEPは、コハク酸をもたらすトリカルボン酸(TCA)回路の分岐した還元的経路における中間体である。大腸菌のコハク酸生産体であるKJ122の代謝的進化(metabolic evolution)の間に、フレームシフト変異がptsI遺伝子に起こり、その結果、グルコースからのコハク酸生産の増加がもたらされた。野生型ptsI遺伝子の再挿入(reinstalling)は、コハク酸生産の大幅な減少を引き起こし、ptsI変異が該株の改良に大きく寄与していることを証明した。
別の例では、芳香族アミノ酸は、PEPおよびエリスロース−4−リン酸から構成されている。大腸菌株における3つのpts遺伝子の欠失(ΔptsHI、crr)は、細胞を炭素源としてグルコース上で増殖させたとき、芳香族アミノ酸生合成経路への流入を増加させることが示された。
上記の両方の例において、グルコースの取り込みは、所謂ガラクトースパーミアーゼ(galP遺伝子によりコードされるGalP)によりある程度のレベルで今後達成されると推測される。第一の例では、galP遺伝子のリプレッサー(GalS)の活性を低下させる変異が、代謝的進化の結果もたらされることが見出された(WO2011/123154)。第二の例では、1つまたはそれ以上の変異が、増殖速度の増大をもたらすpts遺伝子の欠失後に生じた。得られた株は、グルコース上で有意に増殖するためにgalPに依存し、該株における1つまたはそれ以上の変異が、galPの発現の増加に関係し得た(US6,962,794)。しかしながら、この第二の例の株は、芳香族アミノ酸生産について“Pts/Glu”株を操作した後においても、芳香族アミノ酸の力価は低かった。フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンは、それぞれ1.7、0.8、および2.2g/l生産された。これらの力価は、経済的に魅力的な商業的方法を支持する程十分高くないため、US6,962,794に記載の発明が商業的生産に有用であるかは明らかではない。このように、経済的に実行可能な化合物の発酵による商業的生産のための発酵パラメータを改善することが依然として必要とされている。
グルコース取り込みのためのプロトン共輸送体であるGalPの使用はPEPを節約するが、輸送される各グルコース分子に対して約1/3のATPを消費する。ある微生物、例えば、細菌ザイモモナス・モビリスおよび酵母サッカロマイセス・セレビシエは、グルコースを取り込むために促進拡散を使用する。Z.モビリスは、グルコースおよびフルクトースの両方を取り込むために機能する1つのファシリテーター(facilitator)タンパク質を有する。S.セレビシエは、少なくとも14種の異なるヘキソースインポーターを有し、その多くがグルコースを取り込み、少なくともいくつかが同様にフルクトースを取り込む。グルコース取り込みのためのこのモードは、糖が細胞質内に取り込まれ、その後、ATPが消費されてグルコース−6−リン酸が形成され、糖が解糖系に入るまで、ATP消費を必要としない。最も重要なことには、PTSシステムとは異なり、PEPが消費されない。このように、促進拡散は、明らかにいくつかの生物に適しており、該細胞にて、PTSシステムまたはGalPなどのプロトン共輸送体のいずれかよりもPEPおよびATPに関してコストが低い。Ingramら(US5,602,030)は、ザイモモナス・モビリス由来のグルコキナーゼ(Glk、glk遺伝子によりコードされる)と共にマルチコピープラスミド上の遺伝子から発現される、同じくザイモモナス・モビリス由来の促進拡散タンパク質(Glf、glf遺伝子によりコードされる)は、親株が天然のグルコース促進拡散能を有しておらず、他のグルコース取り込みシステムが変異により無効にされている大腸菌株のグルコース最少培地での増殖を補助するためにPTSを機能的に置き換えることができることを証明した。プラスミド上にZ.モビリスの2つの遺伝子glfおよびglkを含む組み換え大腸菌ptsG、ptsM、glk株ZSC113は、グルコース最少培地上で好気的に増殖することができた。
これらの開示は、Z.モビリスのタンパク質が、0.53hr-1の比増殖速度で好気的に増殖するのを支持するのに十分に大腸菌において機能し得ることを証明した。しかしながら、グルコース取り込みに天然のPTSを用いる野生型大腸菌は、1.0から1.2hr-1の好気的比増殖速度を有しており、US5,602,030においてglf遺伝子を用いて操作された株はグルコース取り込みにより顕著に制限されることが明らかである。さらに、この開示は、促進拡散システムが嫌気性の増殖を支持し得ることを示さなかった。発酵によって生産される重要な化合物の多くは、経済的に魅力的な商業的生産システムを支持するロバスト性の嫌気的増殖を必要とする(WO2012/018699)。US5,602,030の実施例およびSnoepら(1994)は、緩やかな増殖が、マルチコピープラスミドからglfおよびglkを発現することによって得られ得ることを示したが、それは、増殖がglfおよびglk遺伝子の組み込まれたコピー数によって支持され得ることを証明せず、商業的規模の生産には、プラスミドを含まない株を用いることが望ましいことが多い。最後に、US5,602,030は、glfベースのシステムが、促進拡散を天然で使用していない大腸菌または他の生物における、エタノールまたはコハク酸などの汎用化合物の高力価生産を支持することができることは証明しなかった。このように、glfがPTSに取って代わることができ、結果として、天然の促進拡散システムを有しない宿主株に所望の化合物を生産するための経済的に魅力的な発酵プロセスをもたらすことは、US5,602,030のみの開示からは明らかではなかった。
Tangら(2013)は、コハク酸の嫌気的生産が、ΔptsI、ΔldhA、ΔpflB、pckである大腸菌株バックグラウンドにおいてグルコキナーゼと組み合わせてZ.モビリスのglfの発現によって達成され得ることを示すためにさらに数工程を組み合わせた。しかしながら、このシステムで最高のコハク酸生産は、96時間で僅か220mM(26g/l)と多くはなかった。glfおよびglkの発現を組み合わせて調節することにより最適化したにも関わらず、この力価および生産性は、glfを用いずに83g/lのコハク酸を生産した既報の株の力価および生産性に及ばない。従って、Tangらのより優れた仕事にも関わらず、未だ、グルコース取り込みのための促進拡散の使用が、実際に、経済的に魅力的な商業的生産のために必要となるレベル(少なくとも83g/lがベンチマークとされる)で発酵生産パラメータを改善するのに有用であったことは、証明されていない(WO2012/018699)。大腸菌およびおそらく他の細菌において、glfによるPTSの潜在的置換をさらに複雑にしているのは、PTSの構成要素が、多くの異なる代謝経路に影響を与える多様な調節機能を有しているため、PTS遺伝子群の1つまたはそれ以上の欠失がその結果として生じた改変株の全体的な生理学的特性および発酵特性にいかなる効果をもたらすのか予測不可能だからである。グルコースの取り込みに促進拡散を天然で使用する、天然のZ.モビリス株は、グルコースから約60g/lまでのエタノールおよび同様の量の二酸化炭素を生産することができる。Z.モビリスの操作された菌株は、グルコースから64g/lのコハク酸を生産することが報告されている(EP20070715351)。しかしながら、この発酵は、発酵培地中に10g/lの酵母抽出物を必要とし、その費用と酵母抽出物成分からのコハク酸の精製に要する増大したコストの両方の理由により、コハク酸の商業的生産に望ましくない。さらに、Z.モビリスは、多くの場合、発酵プロセスでの使用に便利なまたは最適な宿主生物ではない。
従って、従来技術をまとめると、大腸菌は、好気性増殖を適度な速度に支持し、そして嫌気的コハク酸生産の適度なレベルを支持するために、グルコースの促進拡散を用いるように操作され得ることが示されているが、グルコース取り込みのための促進拡散の非天然の使用を付与するように操作され、発酵による化合物の生産のためにPTSおよび/またはGalPなどの天然のグルコース取り込みシステムを用いる株よりも改善されている、細菌株または方法は開示されていない。さらに、グルコース取り込みのために促進拡散を使用し、グルコース最少培地などの商業的に魅力的な培地において十分高い力価、収量および速度で、コハク酸またはエタノールおよび二酸化炭素以外の化合物を生産することができる細菌株または方法は開示されていない。このように、生産性、培地のコスト、および後の精製を含む全ての要因を考慮すると、経済的に魅力的な方法でコハク酸および化合物を生産することができる改良された株が依然として必要とされている。
引用文献
全ての文献は、この明細書を読む者の便宜のために列記される。それぞれの文献は、引用によりその全体を本明細書に包含される。
米国特許第5,602,030号 米国特許第6,962,794号 米国特許第7,220,561号 米国特許第8,389,214号 米国特許第8,476,041号 米国特許出願公開第20050079617号 米国特許出願公開第20090047719号 米国特許出願公開第20090253192号 米国特許出願公開第20100184171号 欧州特許第EP20070715351号 欧州特許第EP0785275B1号 国際公開第WO 2010/115067号 国際公開第WO2011/123154号 国際公開第WO2012/018699号
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発明の概要
本発明は、商業的に重要な製品、例えば、それに限定されないが、特定の化合物および汎用性の化合物の発酵生産を改善するためのグルコースの促進拡散を用いるための生体触媒(例えば、遺伝子的に操作された微生物)および方法を提供する。具体的には、本発明は、糖を含む再生可能な原料を用いる、有機酸、アミノ酸および他の生化学物質の生合成経路において生化学的中間体としてPEPを有する、該化合物の発酵生産に有用である。具体的な例として、本発明は、糖の促進拡散を使用するように構成されている生体触媒を用いる、グルコース、フルクトース、またはスクロースを含む再生可能な原料からのコハク酸の発酵生産に有用である。本発明の原理は、発酵により生産することができる多くの他の所望の化合物、特に、フマル酸、リンゴ酸、グルタミン酸、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸、アスパラギン酸誘導体、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、ならびにビタミン類およびcis, cis−ムコン酸などの中心的芳香族経路における中間体から誘導される化合物のような、TCAの中間体化合物またはその誘導体にも適用することができる。
本発明により、グルコースなどの糖類の促進拡散に関与するタンパク質をコードする遺伝子は、促進拡散により発酵媒体から炭素源およびエネルギー源として糖を取り込むための新しい能力を付与するため、または糖輸送および代謝のための生体触媒の既存の能力を増大させるか、または改善するために、多種多様な生体触媒に導入され得る。促進拡散により糖を取り込むための追加された能力を有するように操作された株は、親株のパラメータと比較したとき、例えば、増加した力価(所望の生成物のg/l)、増加した収量(消費される糖1グラム当たりの精製した生産物のグラム数)、増加した比生産性(生成物形成のg/l-hr)、ならびに/あるいは酢酸、ピルビン酸および/またはアミノ酸のような望ましくない副生成物の減少した力価などの改善された発酵パラメータを有し得る。これらの改善されたパラメータは、結果として、エネルギーの保存(例えば、GalPなどのプロトン共輸送体を駆動するためにプロトン勾配を形成するためのより少ないATPの使用)、コハク酸経路(複数可)などの中間体としてPEPを使用する経路のためのPEPの保存、ならびに酢酸生産経路または他の望ましくない経路へのオーバーフロー代謝の低下をもたらし得る。
この方法は、少なくとも部分的にPEPから誘導されるか、またはPEPを介して誘導される化合物、例えば、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、エタノール、ブタノール、プロパンジオール、3−ヒドロキシプロピオン酸、アクリル酸、プロピオン酸、乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、リシン、スレオニン、およびイソロイシンなどのアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、芳香族ビタミン、芳香族性ビタミン様化合物などの中心的芳香族経路から誘導される化合物、ならびに生合成中間体としてPEPから誘導される任意の他の化合物の製造に特に有利である。
一態様において、本発明は、促進拡散によって糖を取り込むための能力を天然に有しない生体触媒に、促進拡散によって糖を取り込むための新しい能力を付与する追加の異種遺伝子(1個または複数の)を提供する。別の態様において、本発明は、親生体触媒よりも所望の発酵産物のより高い力価を生じる新規の生体触媒を提供する。別の態様において、本発明は、親生体触媒よりも所望の発酵産物のより高い収量を産する新規な生体触媒を提供する。別の態様において、本発明は、親生体触媒よりも所望の発酵産物に対するより高い比生産性を生じる新規の生体触媒を提供する。別の態様において、本発明は、親生体触媒よりも望ましくない副生成物の低い力価を生じる新規の生体触媒を提供する。
糖の促進拡散において機能するタンパク質または複数のタンパク質をコードする遺伝子または複数の遺伝子は、糖の促進拡散を実行する天然の能力を有する任意の生物に由来してよく、タンパク質または複数のタンパク質が新しい宿主において機能することができることが唯一の要件である。糖が細胞質に入った後、該糖をリン酸化するのに必要な糖キナーゼ、例えば、グルコキナーゼをコードする遺伝子は、促進拡散のための遺伝子(複数可)が由来する同じドナーに由来してよいか、またはレシピエント宿主由来の天然の糖キナーゼ遺伝子を使用することができるか、または両糖キナーゼの組み合わせを使用することができる。
別の態様において、本発明は、糖を取り込むために促進拡散を使用する遺伝子操作された微生物を培養することを含む、所望の発酵産物を生産するための方法を提供する。
別の態様において、本発明は、促進拡散を使用するように操作された株の発酵性能パラメータ(力価、収量、比生産性、最小化された副生成物形成)を改善する方法を提供する。
別の態様において、本発明は、糖を取り込むために促進拡散を使用する遺伝子操作された微生物における改善された増殖パラメータおよび発酵パラメータを導く促進拡散および糖キナーゼ活性の改善されたバランスを達成するための方法を提供する。
本発明により、1つの方法は、促進拡散により糖を取り込むための新しい能力を第1のレシピエント生物に付与するために、関連する遺伝子(例えば、glfまたはglkまたはそれらの組み合わせ)を天然に含む第2のドナー生物から、該関連遺伝子を天然に含まない該第1のレシピエント生物に、該糖を取り込むための促進拡散システムを遺伝子的に転移することである。好ましい態様において、第1のレシピエントは、該第1のレシピエント株の親または祖先に存在する天然のシステムまたは複数のシステムにより糖を取り込む能力を欠失させるか、または実質的に低減させるように予め操作されているか、または構築されている。このような態様において、得られた株は、該糖上での増殖のために促進拡散を使用するように実質的に強制される。
このましい態様において、第1のレシピエント株は大腸菌株であり、第2のドナー株はザイモモナス・モビリスのCP4株である。より好ましい態様において、該第1の株はWG53であり、これは、順にptsH、ptsI、およびgalPの欠失によりKJ122に由来する。ptsH、ptsI、およびgalPの欠失の正確な特性は広く変えることができ、およびGalPタンパク質の活性を排除するか、または実質的に低減させることが唯一の重要な基準である。
本発明の第一のレシピエント生物は多様であってよく、唯一の基準は、それがグルコースなどの糖のための促進拡散に機能するタンパク質を天然に含んでいないことである。大腸菌に加えて、第1のレシピエント生物の例としては、以下が含まれるが、これらに限定されない:グルコノバクター・オキシダンス、グルコノバクター・アサイ、アクロモバクター・デルマーベ、アクロモバクター・ビスコーサス、アクロモバクター・ラクティカム、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、アグロバクテリウム・ラジオバクター、アルカリゲネス・フェカリス、アースロバクター・シトレウス、アースロバクター・ツメセンス、アースロバクター・パラフィネウス、アースロバクター・ヒドロカーボグルタミカス、アースロバクター・オキシダンス、オーレオバクテリウム・サペルダエ、アゾトバクター・インディカス、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス、ブレビバクテリウム・ディバリカタム(divaricatum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム、ブレビバクテリウム・フラバム、ブレビバクテリウム・グロボサム、ブレビバクテリウム・フスカム、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム、ブレビバクテリウム・ヘルコルム、ブレビバクテリウム・プシルム、ブレビバクテリウム・テスタソイム、ブレビバクテリウム・ロゼウム、ブレビバクテリウム・インマリオフィラム、ブレビバクテリウム・リネン、ブレビバクテリウム・プロトファルミエ、コリネバクテリウム・アセトフィラム、コリネバクテリウム・グルタミカム、コリネバクテリウム・カルナエ、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム、エンテロバクター・アエロゲネス、エルウィニア・アミロボーラ、エルビニア・カロトボーラ、エルビニア・ヘルビコーラ、エルウィニア・クリサンテミ、フラボバクテリウム・ペレグリナム、フラボバクテリウム・フカタム、フラボバクテリウム・アウランティナム、フラボバクテリウム・レナヌム、フラボバクテリウム・スワネンセ、フラボバクテリウム・ブレーベ、フラボバクテリウム・メニンゴセプティカム、ミクロコッカス種CCM825、モルガネラ・モルガニ、ノカルジア・オパカ、ノカルジア・ルゴサ、プラノコッカス・ユーシナタス、プロテウス・レッゲリ、プロピオニバクテリウム・シェルマニ、シュードモナス・シンキサンサ、シュードモナス・アゾトフォルマンス、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・オヴァリス、シュードモナス・スタッツェリ、シュードモナス・アシドボランス、シュードモナス・ムシドレン(mucidolens)、シュードモナス・テストステロニ、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ロドコッカス・エリスポリ、ロドコッカス・ロドクラウス、ロドコッカス種ATCC 15592、ロドコッカス種ATCC 19070、スポロサルシナ・ウレアエ、黄色ブドウ球菌、ビブリオ・メチニコフィイ、ビブリオ・チロゲネス、アクチノマヅラ・マヅレ、アクチノマイセス・ビオラセオクロモゲネス、キタサトスポリア・パルロサ、ストレプトマイセス・コエリカラー、ストレプトマイセス・フラベラス、ストレプトマイセス・グリセウス、ストレプトマイセス・リビダンス、ストレプトマイセス・オリバセス、ストレプトマイセス・タナシエンシス、ストレプトマイセス・バージニアエ、ストレプトマイセス・アンチビオチクス、ストレプトマイセス・カカオイ、ストレプトマイセス・ラベンジュレ、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス、アエロモナス・サルモニシダ、バチルス・プミルス、バチルス・サーキュランス、バチルス・チアミノリチカス、エシェリヒア・フロインディ、ミクロバクテリウム・アンモニアフィルム、セラチア・マルセッセンス、サルモネア・チフィムリウム、サルモネラ・ショットムレリ、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・アミロリケファシエンス、クレブシエラ・オキシトカ、クレブシエラ・ニューモニエ、アシネトバクター・バイリイ(Acinetobacter baylyi)、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム、ブレビバクテリウム・フラバム、マンヘイミア・サクシニシプロデューセンス(Mannhemia succiniproducens)、アネロビオスピリラム・スクシニプロジュセン、およびキサントモナス・シトリ。
第2のドナー生物の例は、糖の天然の促進拡散システムを有する任意の株または種、例えば、ザイモモナス・モビリス株(CP4株に加えて)、ホモサピエンス、アゾスピリラム・アマゾネンセ、フラボバクテリウム属のS85細菌、サッカロマイセス・セレビシエまたは他の酵母の属である。
別の態様において、第1の親株は、初めに、糖を取り込むのに促進拡散を使用するように構成され、その後、得られた株は、コハク酸などの商業的関心のある化合物を過剰生産するようにさらに操作される。
本発明の新たな面は、非病原性のロバストな糖利用微生物由来のglf遺伝子が細菌の染色体中に安定に組み込まれ、そうして新たに構築された細菌は、経済的に実行可能な方法で商業的に実現可能な産物を生産することができることである。グルコースまたは他の糖からの産物の力価、収量および/または比生産性は、親生物のそれらのパラメータよりも大きい。glf遺伝子は、増殖または化合物生産の任意の関連する面と干渉しない染色体中の部位に組み込まれる。酢酸力価は、従来技術例とは異なり、約45から48時間の代表的な発酵、その後2日間の発酵サイクル時間で、親株の力価よりも小さい。糖取り込みのための促進拡散を使用する従来技術の株は、経済的に魅力的な所望の生成物の十分な力価を生じなかった。本発明の別の新規な面は、糖取り込みのために促進拡散を用いることにより、望ましくない副生成物酢酸塩または酢酸の生産が顕著に減少したことが予期せず見出されたことである。従来技術のKJ122株は、典型的な供給グルコース発酵(WO2012/018699)では約5から7g/lの酢酸塩を生産するが、本発明の新規の株は、わずかに約4.2g/lまたはそれ以下である。
本発明のさらなる利点は、以下の説明から容易に明らかになり得る。
図1は、Z.モビリスglfおよびglkの発現カセットの源であるプラスミドpAC19の構造を示す。 図2は、cat(クロラムフェニコール耐性)およびsacB(レバンスクラーゼ)遺伝子を含む、選択用カセットおよび逆選択用カセットの源であるプラスミドpAC21の構造を示す。 図3は、Z.モビリスのglk不含有のglfの発現カセットの源であるプラスミドpSS2の構造を示す。 図4は、pflD遺伝子座での大腸菌crr遺伝子の第2のコピーの統合のための発現カセットの源であるプラスミドpMH68の構造を示す。
表1は、7リットルの発酵槽でのAC15株によるコハク酸の生産を示す。
表2は、500mlの微好気性発酵槽内でのAC15株の赤色変異体によるコハク酸の生産を示す。
表3は、500mlの微好気性発酵槽内でのSS8の2つの単離株によるコハク酸の生産を示す。
表4は、20リットルの微好気性発酵槽内でのYSS41によるコハク酸の生産を示す。
表5は、500ミリリットル微好気性発酵槽でのMH141によるコハク酸の生産を示す。
表6は、大腸菌株KJ122およびYSS41の両方に最適化された通気条件下での、20リットルの発酵槽中での両大腸菌によるコハク酸の生産を示す。
参照態様の詳細な説明
定義。用語“例えば”または“のような(などの)”が用いられるとき、次に記載される用語は、開示されるアイデアや概念のための例示であることを意味する。その後に記載される項目は、アイデアや概念の一般化に該当し得る任意の他の特定のアイテムまたは例示が包含されることを意味するため、所定の例に限定されることを意味しない。任意の所定の化合物について、該化合物の塩を生産するのがより適当であってよく、例えば、コハク酸は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムなど塩としてpH7付近で生産され得るが、リシンは、塩酸塩、硫酸塩、重炭酸塩などとして生産され得る。このように、本明細書中、化合物が命名されたとき、該化合物の任意の塩が包含されることを意味し、塩が命名されるとき、その遊離酸または遊離塩基も包含されることを意味する。従って、例えば、“コハク酸塩”は、“コハク酸”およびコハク酸塩を包含することを意味し、そして“酢酸塩”は、“酢酸”および酢酸塩を包含することを意味する。
“促進拡散”は、典型的に、生体膜(例えば、グラム陰性細菌の内膜またはグラム陽性細菌の単一の膜)にある内在性膜タンパク質、または生体膜にある2以上のタンパク質分子の複合体を含むシステムの作用を意味し、それは、特に、“基質”(例えば、グルコースおよび/またはフルクトース)と称されるが、一般的に化合物(例えば、水および特定の基質以外の細胞質代謝物)である、1つまたはそれ以上の化合物が、細胞によってシステムに直接提供されるエネルギー(例えば、ATPまたはPEPの加水分解により提供される)または異なる化合物の勾配(例えば、プロトン勾配)なしに、膜を通過するのを可能にするように機能する。濃度勾配がある場合には、例えば、基質の濃度が細胞内よりも細胞外のほうが高い場合、促進拡散システムが存在しない場合に起こり得るより早い速度で細胞内にその基質の正味の流入があり得る。促進拡散に機能するタンパク質(複数)は、典型的に、1つまたはそれ以上の基質に特異的で、かつ該システムが数ミリモル以下の比較的低濃度で基質が膜を通過するのを補助するのを可能にする結合親和性を有する。促進拡散の種類によっては、ある基質を優先的に区別する膜を通過する孔またはチャネルを形成することにより機能し、また、他方、他の種類では、タンパク質(複数可)は、膜の一方の側の基質に結合し、その後、回転して膜を通過させ、該膜の反対側に基質を放出することができるものもある。促進拡散タンパク質(単に、ファシリテーターと称されることもある)は、そのようなシステムのタンパク質成分である。従って、促進拡散のための熱力学的駆動力は、基質(例えば、糖)が細胞内の低濃度への細胞外の高濃度から流入する、基質濃度の勾配である。本発明者らは、促進拡散タンパク質ならびにグルコースに対する特異性を有するそのようなタンパク質をコード化する遺伝子をそれぞれ意味する、遺伝子記号Glfおよびglfを使用する。本発明者らは、通常、Glfは単一のポリペプチド鎖からなると考えるが、Glfは、2以上のポリペプチド鎖からなる複合体であってもよい。本明細書に記載されるGlfの特定の例は起源が細菌であるが、本発明者らの定義は、任意の生物由来の促進拡散システムを含むことを意味する。例えば、酵母サッカロマイセス・セレビシエおよび他の酵母が、HXT1、HXT2、HTX3、HTX4、HTX5、HTX6、HTX7などと称される、ヘキソース(例えば、グルコースおよびフルクトース)を取り込むための1つまたはそれ以上の促進拡散タンパク質を有し、ヒト赤血球はGLUT1と称されるタンパク質によりグルコースを取り込み、排出するために促進拡散を用いることがよく知られている。Glfの作用機序は、細孔促進輸送および担体促進輸送を含めて、広く変わることができる。本明細書に記載の特定の例は、グルコースに対して良好な特異性を有するGlfを開示するが、Glfタンパク質は、2以上の糖上で作用可能であり、例えば、ザイモモナス・モビリスおよびサッカロマイセス・セレビシエ由来のGlfは、フルクトースならびにグルコース上で作用し得ることが、当技術分野で公知である。
プロトン共輸送は、駆動力としてプロトン勾配を使用する、生体膜を通過して基質を取り込むためのシステムとして定義されている。より高濃度の細胞外プロトンは、細胞内へ拡散復帰する熱力学的傾向を有する。この熱力学的圧力は、糖などの基質を運搬するのに使用される。プロトン共輸送体は、プロトン共輸送を提供するために機能する、タンパク質またはタンパク質の複合体である。プロトン共輸送体の例は、大腸菌のGalPタンパク質であり、それは、ガラクトース、グルコース、および他の糖類の取り込みに機能することがよく知られている。
グルコキナーゼおよびフルクトキナーゼは、グルコース、フルクトース、または他の糖を、通常6位の炭素の位置でリン酸化を触媒する酵素であるが、1位の炭素または別の位置でも可能である。本発明者等は、グルコキナーゼおよびグルコキナーゼをコードする遺伝子をそれぞれ表すために遺伝子記号Glkおよびglkを用いる。Frkおよびfrkは、フルクトキナーゼおよびフルクトキナーゼをコードする遺伝子をそれぞれ意味する。
crr遺伝子は、大腸菌株のcrr遺伝子またはバチルス・サブチリス株のcrr遺伝子またはかかるcrr遺伝子のホモログなどの、PTSのEIIAglc成分をコードする遺伝子である。
PTS(ホスホトランスフェラーゼシステム)は、リン酸源およびエネルギー源としてPEPを用いて、細胞質内に糖を輸送し、同時に該糖をリン酸化するために共に作用するタンパク質群である。大腸菌由来のPTSタンパク質をコードする遺伝子の例には、ptsH、ptsI、crr、ptsG、fruA、fruB、manX、manYおよびmanZが含まれる。対応するタンパク質は、PtsH、PtsI、Crr、PtsG、FruA、FruB、ManX、ManYおよびManZと命名される。しかしながら、大腸菌および他の原核生物由来のより多くの例があり、これらのタンパク質は、別名を有していてよく、例えば、Crrは、EIIAglcと称されることも多い。PTSタンパク質のいくつかは、他の糖類よりも1つまたはそれ以上の特定の糖類により特異的であるが、いくつかのPTSタンパク質、例えば、大腸菌由来のPtsHおよびPtsIは、多くの異なる糖類に汎用的に使用される。
本明細書中、用語“微好気性”は、空気の供給量が、1分当たりの液体培養物の体積当たり、0.1未満の空気量であることを意味する。本明細書に記載の7および20リットルの発酵槽の例では、スパージャおよび流量計を用いて達成されるか、または任意の強制的な空気の流れなしでタンクの上部に取り付けられた滅菌膜を通して呼吸することを可能にするタンクにより達成される。本明細書に記載の500mlの発酵タンクの例では、空気を意図的に導入していないが、少量の空気が、漏れ、塩基溶液の供給、および試料の採取により導入される。
“最少培地”は、水、純粋な炭素源(例えば、実質的に純粋な糖または実質的に純粋な糖類の混合物)、無機塩類(例えば、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩および塩酸塩に加えて、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、重炭酸塩)、アンモニウムもしくはウレアなどの純粋な窒素源、微量金属(鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、モリブデン、および必要に応じてホウ酸塩)、任意のグリシンベタイン(単にベタインとしても公知)、および必要に応じて消泡剤からなる微生物増殖培地である。最少培地は、酵母抽出物、コーンスティープリカー、大豆加水分解物、肉汁、カゼイン加水分解物、穀物、マメ科植物、または典型的に、物理的もしくは化学的精製もしくは分離工程を行うことなく農業供給源に由来し得る何らかの他の“定義されていない”栄養素の混合物などの任意の複合栄養源(“富”栄養源としても公知)を含まない。サトウキビ、コーンデンプン、モロコシデンプン、タピオカデンプン由来の適当に精製された糖類、または何れか他の適当に精製されたデンプン源は、最少培地に許容されると考えられている。最少培地は、特定の増殖要件(栄養要求性または栄養緩慢性(bradytrophy))を満たすためまたは生化学的経路を強化するために、1つまたはいくつかの純粋な化合物を含んでいてよい。例えば、ある株は、ビオチン等のビタミンを必要とし、それは、このようなプロセスに顕著な負の影響を与えることなく、低濃度で添加されてよい。別の例としては、チアミンなどのビタミンの添加は、増殖に絶対的に必要とされる訳ではないが、それでも、増殖または生化学的経路を増強し得る。最少培地は、構成要素が比較的低コストで、かつ所望の化合物の後段での精製のためのより有利な経済性を可能にするクリアな発酵ブロスを生じるため、多くの化合物の発酵生産に好まれる。エタノール生産は、下流精製を、複雑な媒体からでさえ、所望の生成物を精製するための経済的に魅力的な方法である蒸留を用いて達成することができるので例外である。
芳香族化合物とは、以下の1つまたはそれ以上を意味する。フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファン、またはそれらの誘導体(例えば、L−ジヒドロキシフェニルアラニン、メラトニン、インドール、インドール酢酸、インジゴ、セロトニン、桂皮酸、ヒドロキシスチレン)、ビタミンまたは芳香族部分を含むビタミン様化合物(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、葉酸、トコフェロール、ピロロキノリンキノン)。
第1の遺伝子またはタンパク質のホモログは、第2のタンパク質または第2の遺伝子から翻訳されると推定されるタンパク質が、第1のタンパク質または第1の遺伝子から翻訳されると推定されるタンパク質と同一または類似の生化学的機能を有し、そして、第1および第2のタンパク質または第1および第2の推定翻訳タンパク質のアライメントが、BLASTなどの公に利用可能なコンピュータアラインメントプログラムのデフォルトパラメータを使用する場合、少なくとも50アミノ酸長の領域で25%以上の同一性または類似性を有する、第2の遺伝子またはタンパク質と定義される。
変異は、関連する野生型または天然の遺伝子のDNA配列に対するDNA配列における何らかの変化である。変異は、中途の停止コドンまたはその位置の野生型アミノ酸とは異なるアミノ酸を導入する、単一塩基または複数塩基の変化であり得る。変異は、野生型タンパク質とは顕著に異なるタンパク質を生じるフレームシフトを形成する1つまたはそれ以上の塩基の挿入または欠失であり得る。変異は、多くの、ほとんどの、または全てのコーディング領域(オープンリーディングフレームまたはorfとしても公知)を取り除く欠失であり得る。変異の1つのタイプは、1つ以上の全体のorfに加えて、さらに該コーディング領域の上流もしくは下流または両方の非コーディングDNAの除去である。変異は、比較的大きなDNA配列(約100塩基以上)の挿入、例えば、挿入エレメント(例えば、IS186またはIS4)またはトランスポゾン(例えば、Tn10)の挿入に起因し得る。機能を除去することが目的であるとき、好ましい変異は、orfの全てまたは大部分の欠失であるが、単一塩基の変化または挿入のようなより小さな変異は、多くの場合、全ての実用的な目的のために機能の排除を達成することができる。複数の変異が、自然発生的に、変異によって誘発されるか、または遺伝子工学的に構築され得る。株の改善を達成するために望ましいとき、PTSの特定の要素などの、いくつかの変異は、生物学的機能を低減または排除する変異である。しかしながら、株の改善を達成するために望ましいとき、いくつかの変異は、生物学的機能を増大させる変異であり、例えば、“プロモーターアップ変異(promoter up mutation)”は、glf遺伝子などの所望の遺伝子の発現を増加させることができる。
“外来の”は、第一の属に組み込まれた第二の属(ここで、該第二の属は、該第一の属とは異なる)に由来する遺伝子またはタンパク質を意味する。
遺伝子は、タンパク質または酵素をコード化する染色体の領域として定義され、該タンパク質または酵素に対応するオープンリーディングフレームと、タンパク質または酵素の生産レベルまたは生産速度の制御に寄与するオープンリーディングフレームを取り囲むDNA配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、オペレーター、調節タンパク質結合部位、5’非翻訳mRNAリーダー配列に対応するDNA、ターミネーター、およびアンチターミネーター部位の両方を含むことを意味する。タンパク質のコーディングDNA配列に対応する2つ以上のオープンリーディングフレームが、単一のプロモーターおよび単一のターミネーターの制御下にあるとき、プロモーター、タンパク質コーディングDNA配列に対応するオープンリーディングフレームおよびターミネーターを含む全領域は、オペロンと呼ばれる。例えば、外来遺伝子glfおよびglkが単一のプロモーターおよび単一のターミネーターの制御下にあるとき、それは、glf−glkオペロンと呼ばれる。
本発明は、炭素源として糖を含む最少培地を用いる、高力価、収量および生産性のコハク酸産生のための生体触媒を提供する。用語“収量”は、本発明で定義される通り、消費される糖(例えば、グルコースまたはスクロース)1グラム当たり、生産される生成物(例えば、コハク酸)のグラム数を意味する。用語“生産性”とは、本発明で定義される通り、1時間当たりの培養物1リットル当たりの、生産された生成物(例えば、コハク酸)のグラム数を意味する。用語“力価”は、1リットル当たりのグラム数での、発酵ブロス中の生成物(例えば、コハク酸)の濃度として定義される。コハク酸の望ましい収量は、消費される糖1グラム当たり、生産されるコハク酸0.8−1.2グラムの範囲である。本発明においてコハク酸の所望の生産性は、1時間当たり1リットル当たり、生産されるコハク酸が1グラム以上の範囲である。コハク酸の所望の力価は、48時間以下の発酵時間で、26g/l以上、またはより好ましくは64g/l以上、最も好ましくは83g/l以上である。
細菌の増殖速度は、細菌の増殖から得られる液体培養物の550または600ナノメートルでの光学密度の増加率で測定される。細菌の増殖速度は、細菌細胞の倍増に必要な時間としても表される。本発明に適する細菌細胞において、細菌細胞は、20分から3時間の倍加時間を有することが期待される。
本発明により、コハク酸生産のための生体触媒は、2つの異なる経路で製造され得る。第一の方法では、野生型の細菌種を遺伝子的に操作して、要すれば、進化させて、グルコースまたは他の糖の取り込みのために促進拡散を用いて効率的に増殖させる。一旦、そのような株が構築されると、その後の遺伝子操作が、例えば、以下の当技術分野で公知の方法により、代謝経路に行われて、高力価、収量および生産性でコハク酸または別の化合物を生産する細菌株が得られる。
国際公開番号第WO2010/115067号および米国特許出願公開第US20100184171号にて公開された特許出願は、改善されたコハク酸生産能力を有する大腸菌株を製造するのに有用な遺伝子工学的手法についての詳細を提供する。これらの2つの特許出願は、引用により本明細書中に包含される。
第二の方法では、米国特許出願公開第US20100184171号および国際公開番号第WO2010/115067に記載の通り、コハク酸などの化合物について商業的に魅力的な収量および生産性を有するように既に開発された細菌株が、親株として使用される。その後、さらなる遺伝子操作、および要すれば、進化をこの株に行い、商業的に魅力的な力価、収量および生産性でコハク酸を生産するために、グルコースまたは別の糖を取り込むための促進拡散を用いる能力を有する細菌株を得る。
具体的な例としては、本発明は、促進拡散により糖を取り込む新しい能力を獲得しながら、十分に高い力価、収量および生産性でコハク酸を産生する従来技術のものよりも改善された能力を有する生体触媒および方法を開示する。例えば、Jantamaらにより開示される大腸菌KJ122株は、本発明の出発株として選択され得る。大腸菌KJ122株は、高い力価および生産性で最少培地中でコハク酸を生産する能力を有することが報告されている。
大腸菌のKJ122株は、米国特許出願公開第20100184171号および国際公開番号第WO2010/115067号に記載の通り、大腸菌C株から遺伝子欠失および代謝的進化によって誘導された。大腸菌KJ122株の開発に至る遺伝子変化についての詳細を提供するこれらの2つの特許出願公開文献は、引用により本明細書中に包含される。KJ122は、コハク酸の生産において促進拡散によって炭素源としてグルコースを取り込む実質的な能力を有しない。KJ122におけるこの機能の欠如は、Glfタンパク質をコードする遺伝子の欠失に起因する。本発明者らは、KJ122が、最少培地中で、高力価、収量および生産性でコハク酸を生産する元々の能力を保持または改善しながら、より効率的に炭水化物源としてグルコースを使用するのを可能にする遺伝的アプローチを発見した。
本発明で用いる用語“炭水化物”には、グルコース、フルクトース、キシロースおよびアラビノースなどの単糖類、スクロース、メリビオース、マルトースおよびラクトースなどの二糖類、ラフィノースおよびマルトトリオースなどの三糖類、ならびに高級少糖類、ならびにデンプンなどの多糖類の酵素的または化学的消化による加水分解物、セルロース、ならびにバイオマスが含まれる。例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトースなどの、1〜3個の糖単位の単純炭水化物は、本明細書中、“糖類”と称される。
用語“PTS生物”または“PTS細菌”は、PTSに基づく炭水化物の輸送のための能力を有する細菌を意味する。用語“非PTS生物”または“非PTS細菌”または“PTS細菌”は、そのPTSの活性が野生型PTSの活性と比較して低減するように、PTS機能をコード化する1つまたはそれ以上の遺伝子において変異を有する細菌細胞を意味する。
一面において、本発明は、糖の取り込み、および細胞によってさらに代謝され得る、グルコース−6−ホスフェート、グルコース−1−ホスフェート、フルクトース−6−ホスフェートまたはフルクトース−1−ホスフェートなどの代謝中間体への糖の変換に関与する1以上のタンパク質および/または酵素の活性を付与または増大させるために、生物に遺伝子を添加することを記載している。関連するタンパク質または酵素をコード化する遺伝子は、glf遺伝子、HXT遺伝子、glk遺伝子およびfrk遺伝子からなる群から選択される。
別の態様において、本発明は、再生可能な原料としてグルコースのような糖を取り込むために促進拡散を用いてコハク酸または別の化合物を生産するための方法を提供する。一面において、本発明は、祖先株または親株と比較して、該生物の天然のPTSシステムの少なくとも1つのタンパク質における低減された活性を有する生体触媒を用いる、糖含有培地からのコハク酸の生産方法を提供する。別の面において、本発明は、GalPのようなタンパク質共輸送システムの使用を含む祖先株または親株と比較して、該生物の天然の糖輸送システムの少なくとも1つのタンパク質における低減された活性を有する生体触媒を用いる、糖含有培地においてコハク酸または別の化合物を生産する方法を提供する。
本発明は、PTSおよびその後の細菌の炭水化物取り込みシステムを操作するための方法を提供する。EIおよびHPrタンパク質は、PTSシステムの“一般的”または“共通の”要素として機能するため、EIタンパク質をコード化するptsI遺伝子またはHPrタンパク質をコード化するptsH遺伝子の何れかの不活性化は、PTSの完全な不活性化をもたらし得る。ptsHまたはptsIまたは両方の活性が低減または削除されている細菌細胞において、PTSシステムを介する実質的に低い炭水化物輸送が存在し得る。PTSが部分的または完全に不活性化されるとき、細菌細胞は、炭水化物輸送のための1つ以上の他の代替パーミアーゼシステムに依存しなければならない。
PTSを介する能動グルコース輸送がある場合、EIIAGlcは、そのリン酸基を受け入れる炭水化物基質があるので、非リン酸型のままである。しかしながら、培地にグルコースが存在しない場合、EIIAGlcのリン酸化型は、そのリン酸基をグルコースに転移することができず、従って、そのリン酸化状態のままである。非リン酸化型EIIAGlcは、炭素異化代謝産物抑制(CCR)として一般的に公知の現象を仲介する。CCR下、グルコースが増殖培地中に存在するとき、培地中の他の炭水化物の輸送および/または使用は、培地中のグルコースが低濃度に減少するまで阻止される。炭素異化代謝産物抑制は、炭素源を利用するパーミアーゼシステムまたは他のシステムでの非リン酸化型EIIAGlcの阻害効果からもたらされる。例えば、LacYまたはラクトースパーミアーゼなどの、炭水化物輸送に関与する多数のパーミアーゼが、非リン酸化型EIIAGlcにより阻害されることが知られている。加えて、非リン酸化型EIIAGlcは、アデニレートシクラーゼシステムへの影響を介して炭水化物の輸送および代謝に関与する多くの遺伝子の転写に負の効果を有することが知られている。
良好なコハク酸産生株であるKJ122株は、ptsI遺伝子におけるフレームシフト変異を含み、この変異は、良好なコハク酸生産のために重要である。従って、コハク酸生産のさらなる改善が、ptsHIおよびgalPを欠失させ、次いで促進拡散システムを付与することによって可能であることは、本発明の流れにおいて驚くべきことであった。
別の態様において、本発明は、EIIAGlcタンパク質をコード化するcrr遺伝子の天然に存在しない重複を提供する。本発明者らは、ptsHIの欠失、galPの変異、および機能的glf遺伝子の付加を含む株が、EIIAGlcタンパク質の機能の低下または排除、その後の、コハク酸生産パラメータの予想外の望ましくない減少を引き起こす、crr遺伝子における変異を獲得する予期しない傾向を有することを見出した。天然のcrr遺伝子座から離れた遺伝子座でのcrrの第二のコピーを組み込むことによるcrr遺伝子の重複は、表現型としてcrrネガティブとなる変異の頻度を大幅に減らすことによってこの問題を解決する。
本発明を以下に詳細に説明する。本発明のエシェリヒア属に属する細菌の例は、最初は、糖取り込みのために促進拡散を利用し得ないが、本明細書に記載の遺伝子操作後にglf遺伝子を有し、要すれば外来のglk遺伝子を有し、そしてグルコースおよびフルクトースの取り込みに促進拡散を利用する能力を有する、親株から構築されている株である。
細胞に導入される外来遺伝子は、細胞内で自己複製プラスミド上に維持され得る。プラスミドは、抗生物質選択性または染色体変異の相補化(complementation)によって維持され得る。しかしながら、外来遺伝子が細胞内で自己複製プラスミド上の生体触媒内に維持されるとき、増殖の阻害に繋がるエネルギーおよび物質の不必要な無駄がなく、そして生体触媒を用いて生産される有機物質の収量または生産性の低下がないことが保証される必要がある。好ましくは、外来遺伝子は、細胞内でプラスミドを維持するために抗生物質を添加する必要がなく、かつプラスミドを維持するために細胞にほとんどまたは全く代謝負荷がないように、宿主染色体に組み込まれている。外来遺伝子の挿入が可能な遺伝子座が細胞内に多数存在する。大腸菌の染色体DNA内への外来遺伝子の挿入に好ましい遺伝子座には、商業的発酵条件下で増殖および生成物生産のために必須の機能をコードしない領域が含まれる。
外来遺伝子がオペロンとして得られるとき、任意の予想される負の調節遺伝子またはタンパク質をオペロンから除去することが好ましい。促進拡散および代謝に積極的に機能する遺伝子およびタンパク質のみを有することが理想である。従って、促進拡散遺伝子の発現は、好ましくは、リプレッサーまたは異化代謝産物抑制によって阻止されない。
以下の実施例は、本発明を説明することを目的として提供され、限定するものではない。
糖取り込みのための促進拡散システムを天然で使用しない細菌は何れも、本発明により改良され得る。
本発明の細菌は、KJ122のようなコハク酸生産株または所望の化合物を生産するように以前に操作された他の株に、促進拡散の利用を可能にする1つまたはそれ以上の遺伝子を挿入することにより得られる。あるいは、本発明の細菌は、遺伝子操作によって、要すれば、進化によって、促進拡散の利用が既に可能となっている細菌に、コハク酸または他の所望の化合物を生産する能力を付与することにより得ることができる。後者の代替法は、例えば、ATCC8739株から出発する代わりに、ATCC9637株もしくはK−12タイプの大腸菌株、または任意の他の安全な大腸菌株から出発する以外は、KJ122の構築に用いる全ての工程に従って、達成することができる。
実施例1
ザイモモナス・モビリスCP4由来の遺伝子群からのglfおよびglk遺伝子を含むKJ122の誘導体であるAC15のコンストラクション
DNAおよびプラスミド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、形質転換、ならびに染色体挿入の全ての操作を、当技術分野で周知の標準的方法により実行した。DNA配列をクローニングし、天然で容易に見出されない新しい組み合わせを形成するために、それらの配列を相互に連結し得ることがよく知られている。制限酵素およびDNAリガーゼを用いる従来法に加えて、酵母リコンビニアリング技術を用いる新規方法、所謂、インビトロでのDNAスプライシング法である“ギブソン法”または他の任意の適当な方法が、かかる新規のDNA配列を構築するために使用可能である。必要とされるDNA断片は、クローンのライブラリーから、または適当なテンプレートDNAからのPCRにより入手可能である。多くの所望のDNA配列を設計することができ、化学前駆体から合成可能であることもまた理解される。このようなサービスは、多くの企業、例えば、DNA2.0およびGeneArt(Invitrogen)により、供給されている。
プラスミドpAC19を、枯草菌ファージSP01由来のP26プロモーターによって駆動される、Z.モビリス由来のglfおよびglk遺伝子を含む人工オペロンを含むように構築した。このオペロンは、遺伝子操作される株のtdcCDE遺伝子座への挿入を促進するために、大腸菌CのtdcC遺伝子に相同性の上流配列と、大腸菌CのtdcE遺伝子に相同性の下流配列との間に組み込まれた。上記のカセットは、pSC101 複製起点およびスペクチノマイシン耐性遺伝子を含む、pCL1921に由来するローコピープラスミドベクター上に担持される。該カセットの構成要素は、Sigma社およびIntegrated DNA Technologies (IDT)社のような商業的供給者から得られる適当な合成DNAプライマーを用いるPCRにより得られた。ザイモモナス遺伝子の供給源は、所望のglfおよびglk遺伝子に加えて、zwfおよびedd遺伝子を元々含む、pLOI1740である。glf、zwf、edd、glk遺伝子群をpCL1921に転移させ、その後、不要なzwfおよびedd遺伝子を、インサイドアウトPCRにより欠失させた。上流および下流のtdc配列は、テンプレートとしてKJ122染色体DNAからPCRによって得た。P26プロモーターは、バクテリオファージSP01から得た。pAC19の配列を配列番号1に示す。
全てのコンストラクションは、抗生物質またはスクロースを適宜添加したLB培地(10グラムのバクト−トリプトン、5グラムのバクト−酵母抽出物、および5グラムの塩化ナトリウム)上で株を増殖させながら行われた。AC15株を構築するために、pAC19の人工オペロンを含むカセットを、既報の2工程の遺伝子組換え法を用いて、WG53株の染色体に挿入した。第一工程のcat、sacBカセットは、配列番号2のプラスミドpAC21上に含まれた。pAC21は、人工オペロンが、クロラムフェニコール耐性遺伝子およびレバンスクラーゼをコード化する対選択可能な(counterselectable)sacB遺伝子を含むcat、sacBカセットで置き換えられていること以外、pAC19と同様である。形質転換DNAは、第一工程についてpAC21からのPCRにより、第二工程についてpAC19からのPCRにより得られた。
WG53株は、上記と同様の2工程遺伝子組換え法を用いて、コハク酸を生産するKJ122株からptsH、ptsIおよびgalP遺伝子を欠失させることにより得た。ptsHI欠失を含むDNA配列を、配列番号3に示す。この欠失はcrr遺伝子、ならびにptsH遺伝子の上流に天然に存在する天然のプロモーターをそのまま残すことが特記される。galP欠失を含むDNA配列を、配列番号4に示す。
中間体株WG53が、グルコース最少培地上で極めて不十分に増殖している間、KJ122株およびAC15株は、グルコース最少培地上でよく増殖し、1)ptsHIおよびgalP遺伝子がWG53において成功裏に欠失されたこと、および2)glf、glkカセットが、AC15において、グルコースを取り込むことが可能になるよう機能することが実証された。
実施例2
AC15株ならびに親株KJ122は、コハク酸を生産する
KJ122株およびAC15株を、グルコース供給バッチシステムを含む最少培地を用いて、39℃にて、7リットルの発酵槽中、微好気性条件下で増殖させた。3リットルの開始容量は、第一リン酸カリウム(18mM)、硫酸マグネシウム(2mM)、ベタイン(1.33mM)、微量必須元素、消泡剤204(8ppm)および25g/lのグルコースを含んだ。pHを最初にpH7.0に調整し、その後、pH6.5で維持して、下記の水酸化アンモニウム/重炭酸アンモニウム溶液の添加により酸が生じた。150mlの接種材料(inocula)を、グルコースが20g/lであり、塩化カルシウムが0.1mMの終濃度で添加されること以外、好気的に、かつ上記の培地と同様の最少培地を含んで増殖させた。撹拌を750RPM(毎分当たりの回転数)に設定した。グルコースを5g/lに低減したとき、650g/lのグルコース供給を開始し、グルコース濃度を約5g/l以下に維持することを目的とした速度で維持した。中和に使用されるストック溶液は、水酸化アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムの両方を含んでいた(7N NHOHおよび3M NHHCO)。AC15を35ml/分で通気し、一方、KJ122は、通気性の滅菌膜フィルターを通して周囲空気で平衡化されたヘッドスペースに存在した空気以外の空気を提供されなかった。これらは、それぞれの株にうまく機能することが示されていた条件であった。48時間のサンプルからの糖、コハク酸および副生成物を、HPLCによりアッセイした。平均化複製の結果を表1に示す。AC15は、親株KJ122とほぼ同じ力価で生産するが、酢酸副生成物は顕著に低く、グルコース収量はAC15より高かった。
実施例3
AC15由来の自発的な“赤色変異体”
KJ122は、MacConkey ラクトースプレート(Beckton−Dickinson, Franklin Lakes, NJ)上の赤色コロニーの形成により証明される通り、ラクトースを発酵することができる。しかしながら、AC15は、MacConkey ラクトースプレート上で“白色”(ベージュ)コロニーを生じることにより証明されるとおり、ラクトースを発酵しない。AC15のこの白色コロニー表現型は、非リン酸化型EIIAGlcタンパク質の結合およびそれによるラクトースパーミアーゼ(LacY)の阻害の結果である。この白色コロニー表現型は、EIIAGlcをリン酸化するのに必要な酵素が存在しないため、ptsHIを欠く全ての株に存在し、その結果として、細胞内に存在する全てのEIIAGlcは、非リン酸化型のままである。従って、意外にも、大腸菌ptsHI変異体は、ラクトースが大腸菌におけるPTSシステムにより取り込まれていなくても、表現型Lacである。
本発明者等は、MacConkeyラクトースプレートにAC15を植菌し、37℃で一晩インキュベートし、その後、室温(約22℃)でさらに1日置いたとき、植菌した密度の高い部分上に増殖した白色コロニーの層から多数の赤色コロニーが発生したことを、偶然見出した。赤色コロニーのいくつかを再植菌することにより、赤色コロニーの2つのクラスが進化したことが明らかになった。本発明者等は、第一のクラスを、個々のコロニーが、コロニー全体にひろがる赤一色であったため、“solid red”クラスと称した。第二のクラスを、個々のコロニーが、中央が赤く、コロニーの外側が白色またはベージュであったため、“fried egg red”型と呼ぶことにした。本発明者等は、MacConkeyラクトース上の赤色コロニーの全てのタイプを生じさせる株を総称して“赤色変異体”と呼ぶことにした。
AC15の白色コロニー、ならびにAC15−R1、−R2、−R3および−R4と称する4つの赤色変異体(それらのうち2つは、solid redクラスであり、残り2つはfried egg redクラスである)を、最少培地の開始容量が200mlであり、グルコースを100g/lの開始培地中で全てバッチ処理し、グルコースの供給はなく、撹拌を磁気撹拌棒を用いて350RPMで行い、そして空気の意図的な導入または除去をしないことが異なる以外は、上記の7リットルの発酵槽で用いた培地および方法と同様の培地および方法を用いて、500mlの微好気性発酵槽(Fleakers, Corning Glass, Corning, NY)中でコハク酸生産について試験した。結果を表2に示す。2つのfried egg redクラスの変異体は親AC15と同様の性能を示したが、2つのsolid redクラスの変異体は親AC15よりも顕著に性能が悪かった。
親AC15および該4つの赤色変異体のゲノムシーケンシングをIllumina HiSeq2000システムを用いて行い、両solid redクラスの変異体が1つの変異をそれぞれ獲得しており、これらの変異の両方が、EIIAGlcをコード化するcrr遺伝子内にあることが明らかとなった。両者はヌル変異であると判断された。両fried egg redクラスの変異体が1つの変異をそれぞれ獲得し、これらの変異の両方が、ラクトースオペロン内にあった。これらの両方は、ラクトースオペロンのより高い発現レベルをもたらし得る変異であると判断された(1つは、lacOオペレーター内の変異であり、もう1つは、Lacリプレッサーをコードする遺伝子であるlacIにフレームシフトを起こさせた)。4つ全ての変異が、ラクトースを発酵させる増加した能力の観察された表現型を説明することができる意味を成していた。crrヌル変異は、LacYパーミアーゼの阻害を緩和し得ると予想され、一方、ラクトースオペロン変異は、LacYを過剰生産し、阻害から少なくとも逃れるのを可能にすると予期される。しかしながら、crrヌル変異は明らかにさらなる多面的効果を有し、本発明の発酵条件下でコハク酸を生産する細胞の能力の低下を引き起こした。このことは予期されなかった予想外の効果であった。
実施例4
ザイモモナス・モビリスglk遺伝子は、大腸菌におけるglf遺伝子の機能に必須ではない
プラスミドpSS2を、pAC19について上記の方法と同様の方法を用いて構築した。pSS2とpAC19との違いは、Z.モビリスglk遺伝子が人工オペロンから欠失されていることだけである。他の面において、例えばベクター骨格、glfのプロモーター駆動発現、人工オペロンのtdc隣接配列への組み込み、および種々の構成要素の配向において、pSS2はpAC19と同様である。pSS2のDNA配列を配列番号5として示す。
pSS2由来の人工オペロンを、pAC19由来のオペロンについて上記の通り、2工程遺伝子組換え法を用いてKJ122のtdc遺伝子座に挿入した。互いに恐らく同一である2つの単離体を、SS8−9およびSS8−11と命名した。これらの2つの新規株を、実施例3に記載の500mlの微好気性発酵槽におけるAC15と比較した。48時間後にアッセイした発酵槽の倍加平均の結果を表3に示す。SS8−9およびSS8−11の両方とも、AC15のそれと同様の増殖およびコハク酸力価を生じ、一方、両SS8単離体の酢酸生産は、AC15のそれよりもやや低かった。従って、Z.モビリスglk遺伝子は、本文脈においてglf遺伝子の機能に不必要であり、Z.モビリスglk遺伝子は、発酵パラメータに若干有害である可能性がある。恐らく、SS8単離体は、グルコースをリン酸化するために大腸菌の内在性glk遺伝子を使用している。
実施例5
AC15株の代謝的進化
実施例3に上記の通り、AC15株は、7リットルの発酵槽中、親KJ122よりも高い通気性レベルを確保することが好ましかった。より少ない空気で増殖できるAC15の誘導体を得るために、AC15を、500mlの発酵槽中、開始容量200mlで、意図的に通気することなく、代謝的進化を行った。条件は、酸素を除去しなかったため、微好気性であった。少量の空気が進化の過程で発酵容器に漏れると仮定した。増殖条件は実施例3に記載のとおりである。増殖の48時間後、培養物を、200mlの新鮮な培地を含む新鮮な発酵槽中で1:100に希釈し、その後、この工程を40回繰り返した。これらの新鮮な培地への接種のそれぞれを、“転移(transfer)”と呼ぶことにする。従って、株を、新鮮な培地に計41回移した。各転移は、細胞分裂の約7世代に相当する。最後の転移からの培養液のサンプルをMacConkeyラクトース寒天ペトリ皿に植菌し、単一の白色コロニーを選択し、YSS41と命名した。
7リットルの発酵槽で通気量を変化させることにより、YSS41が、5ml/分の通気で良好なコハク酸生産を行うことが分かり、これは、親AC15株の最適な性能に必要な35ml/分よりも実質的に少ない。5ml/分の空気流量で、YSS41は、94g/lのコハク酸および1.3g/lの酢酸を生産し、コハク酸収量については、7リットルの発酵槽中、48時間で、0.95g/gのグルコース収量であった。
YSS41を、20リットルの発酵槽内のコハク酸生産についてKJ122と比較した。発酵プロトコルは、開始容量が9リットルであり、両株についての通気速度が、両株が生産性であると決定された条件である25ml/分であること以外、7リットルの発酵槽について上記のものと同様であった。48時間のサンプルの結果を表4に示す。YSS41のコハク酸力価は100g/l(KJ122よりも顕著に高い)であり、酢酸生産は2.2g/l(KJ122よりも顕著に少ない)であり、そしてコハク酸収量は0.95g/gグルコース(KJ122よりも少し少ない)であった。従って、進化した株YSS41は、20リットルの発酵槽中、祖先株KJ122よりも高くない通気性要件で、良好な性能を有した。
実施例6
crr遺伝子における変異に対するYSS41の安定化
MacConkeyラクトースプレートに植菌したとき、YSS41は、未だ、solid redタイプおよびfried egg redタイプの両方の赤色変異体を生じた。crr遺伝子を、各タイプの1つの分離株について配列決定した。fried eggタイプの株MYR222は、野生型crr遺伝子配列を有していた。solid redタイプのMYR223は、crrオープンリーディングフレーム内に挿入された挿入要素を有していた。挿入要素のDNA配列は、IS186のそれと一致した。従って、AC15赤色変異体について確立されたパターンは、YSS41赤色変異体にも適用されることが明らかになった。500mlの微好気性発酵槽において、実施例4の通りに増殖させたところ、MYR222は、YSS41と同様の性能を示すが、MYR223は、性能が悪かった(表5参照)。従って、集団内のsolid red変異体の蓄積による性能の低下の可能性が、株YSS41を用いるときの可能性として残った。
この低下の可能性を解決するために、crr遺伝子の第二のコピーを、天然のcrr遺伝子座から離れた部位に挿入した。crr遺伝子とその隣接プロモーターおよびターミネーターを、テンプレートとしてYSS41染色体DNA、ならびにプライマーBY249(配列番号6)およびBY250(配列番号7)を用いてPCRにより増幅させた。その後、得られた平滑末端(blunt)フラグメントを、pflD オープンリーディングフレーム内のユニークなBstZ17I制限部位に、大腸菌C由来のpflDC領域の一部のクローンを含む、pCL1921に由来する低コピープラスミドに連結させた。pflDC遺伝子は、ピルビン酸−ギ酸リアーゼおよびピルビン酸−ギ酸リアーゼ活性化酵素をコード化するpflBA遺伝子に相同である。pflDC遺伝子は大腸菌に必須ではなく、pflDまたはpflCの何れかの欠失は、増殖に重大な影響を与えないため、その遺伝子座におけるカセットの挿入は、増殖またはコハク酸生産のための任意のマイナスの影響を有しないであろう。得られた低コピープラスミド、pMH68は、低コピープラスミド内に、pflDC由来の隣接配列に組み込まれたYSS41由来のcrr遺伝子を含む。pMH68のDNA配列を配列番号8に示す。
pMH68由来の組換えカセットを、初めにpflDC遺伝子をクローニングするために用いられるのと同じプライマーであるプライマーBY124(配列番号9)およびBY125(配列番号10)を用いてPCRにより増幅させた。その後、組換えカセットを、2工程遺伝子組換え法を用いてYSS41の染色体へ組込んだ。得られた、crrの部分二倍体(merodiploid)である株をMH141と名付け、それは、2コピーの野生型crr遺伝子を染色体の2つの異なる部位に含み、1つはその天然の遺伝子座であり、もう1つは、pflDオープンリーディングフレームに挿入されていることを意味する。
予期されたとおり、MH141株は、MacConkeyラクトースプレート上で白色コロニーを生じた。ヘビーストリーク(heavy streak)を行い、プレートを37℃で一晩置き、その後、室温でさらに1日置いたとき、植菌した密度の高い部分上に増殖した白色コロニーの層から多数の赤色コロニーが発生した。しかしながら、MH141から生じる赤色変異体の数は、同じプレート上で行われたYSS41の同様の植菌よりも顕著に少なかった。23個の赤色変異体をYSS41から採取し、12個の赤色変異体をMH141から採取し、全てをMacConkeyラクトースプレート上に再度植菌した。赤色変異体のタイプを採点すると、23個のYSS41 赤色変異体のうち12個がsolid redタイプであり、残り11個がfried eggタイプであった。これとは対照的に、MH141 赤色変異体の12個は全てfried eggタイプであった。従って、染色体においてcrr遺伝子を倍加することにより、solid red変異体の形成速度が、少なくとも10分の1に低減された。MH141から単離されたfried eggタイプの赤色変異体の1つをMH141−R1と名付け、500mlの微好気性発酵槽中、上記の通り試験した(表5参照)。MH141およびMH141−R1の両方は、増殖、コハク酸力価および酢酸力価について親YSS41と同様の性能であった。従って、グルコース取り込みのために促進拡散を使用するより安定した株であるMH141を構築し、それは、グルコース取り込みにGalPシステムを用いる祖先株KJ122と比較したとき、コハク酸のより高い力価および副生成物である酢酸のより低い力価を生じる。
実施例7
YSS41は、代謝的進化中に、glf、glkカセットにおける変異を獲得した
AC15およびYSS41におけるglf、glk発現カセットのDNA配列を決定した。該領域をPCRにより増幅させ、得られたフラグメントを、ジデオキシ鎖終結法によって、glfおよびglk遺伝子ならびに200塩基以上の上流および下流の配列を含んで配列決定した。pAC19の塩基4976から7920に対応する配列決定された領域を配列番号1に示す。YSS41の進化中に獲得された2つの変異が見出された。第一の変異は、配列番号1の7742番目の塩基のGからAへの変化であった。この塩基は、glfオープンリーディングフレームのすぐ上流の、glf、glk mRNA転写物の5’非翻訳領域にあり、glf mRNA(メッセンジャーRNA)における、ATG開始コドンの22塩基上流、または転写の開始部位の15塩基下流でのCからUへの変化をもたらす。この変異は、glfオープンリーディングフレームの翻訳速度を増減すると予期される。第二の変異は、配列番号1の6173番目の塩基のGからAへの変化である。この塩基は、glkオープンリーディングフレームのすぐ上流の5’非翻訳領域にあり、glk mRNAにおけるATG開始コドンの15塩基下流でのCからUへの変化をもたらす。この変異は、glkオープンリーディングフレームの翻訳速度を増減すると予期される。従って、YSS41の進化は、glfオープンリーディングフレームとglkオープンリーディングフレームのより最適な発現バランスをもたらし、結果として、親株AC15を上回る増殖および性能の株をもたらした。
glf遺伝子およびglk遺伝子の転写または発現速度を変えるか、またはglfおよびglkタンパク質の濃度、比活性または安定性を変える他の変異は、2つのコード化されたタンパク質間のより最適なバランスを同様に達成することができ、有利な増殖および所望の化合物の生産も達成し得る。これらの他の代替的変異は、YSS41について上記の方法を用いて達成され得る。この方法はまた、促進拡散または糖取り込みを使用する能力を該株に付与するように、コハク酸以外の生成物を生産するために操作された株にも適用できる。
実施例8
YSS41についての空気流量の最適化後の、KJ122およびYSS41の発酵
親株KJ122に最適な空気流量は、20リットルの発酵槽において、25ml/分であると決定されている。25ml/分の空気流量では、YSS41株は、KJ122と比較したとき、より良好なコハク酸力価および収量を示した。YSS41株のコハク酸収量および力価のさらなる改善が、空気流量を50ml/分に増加することにより得られた。従って、コハク酸収量および力価を参照してYSS41株について最適な空気流量は、KJ122のそれとは異なると考えられる。表6は、各株について最適化された空気流条件下での、20リットルの発酵槽での発酵の結果を示す。YSS41は、力価、収量および副産物である酢酸の形成において親KJ122を上回った。該発酵の開始容量は9500mlであった。グルコースを供給し、塩基で中和後、最終容量は12500mlであった。

Claims (9)

  1. グルコースを含む最少培地で48時間培養した際に、1リットル当たり60グラム以上のコハク酸を生産するように予め操作された細菌であって、該コハク酸の生合成中間体の1つがホスホエノールピルビン酸であり、該細菌が、糖の促進拡散において機能するタンパク質をコード化する少なくとも1つの外来遺伝子であってglf遺伝子を含む外来遺伝子、およびptsH、ptsIおよびgalP遺伝子における欠失をさらに含み、グルコースを含む最少培地で48時間培養した際に、1リットル当たり4.2グラム未満の酢酸を生産し、その親株が大腸菌KJ122株である細菌
  2. 糖取り込みのためのホスホトランスフェラーゼシステムにおいて機能するタンパク質をコード化する1つまたはそれ以上の遺伝子における変異または欠失をさらに含み、該変異または欠失遺伝子がcrr遺伝子以外である、請求項1に記載の細菌。
  3. プロトン共輸送体を用いて機能する糖取り込み体をコード化する遺伝子における欠失をさらに含む、請求項に記載の細菌。
  4. 該変異または欠失遺伝子が、ptsH遺伝子またはその相同体である、請求項に記載の細菌。
  5. 該外来遺伝子が複製プラスミド上に含まれる、請求項1に記載の細菌。
  6. 該外来遺伝子が宿主染色体中に組み込まれる、請求項1に記載の細菌
  7. 機能的crr遺伝子またはcrr遺伝子の機能的相同体の2以上のコピーをさらに含む、請求項2に記載の細菌。
  8. コハク酸の生産方法であって、グルコースを含む最少培地で48時間培養した際に、1リットル当たり60グラム以上のコハク酸を生産するように予め操作された細菌を増殖させる工程、ここで該細菌は、糖の促進拡散において機能するタンパク質をコード化する少なくとも1個の外来遺伝子であってglf遺伝子を含む外来遺伝子、およびptsH、ptsIおよびgalP遺伝子における欠失をさらに含み、グルコースを含む最少培地で48時間培養した際に、1リットル当たり4.2グラム未満の酢酸を生産し、その親株が大腸菌KJ122株である、および
    要すれば、該発酵培地からコハク酸を精製する工程
    を含む、方法。
  9. 該glf遺伝子をコード化するmRNAの5’非翻訳リーダー領域に少なくとも1つの変異を含む、請求項に記載の細菌。
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