JP6646309B2 - ヘプシジン−25産生抑制剤 - Google Patents

ヘプシジン−25産生抑制剤 Download PDF

Info

Publication number
JP6646309B2
JP6646309B2 JP2015062030A JP2015062030A JP6646309B2 JP 6646309 B2 JP6646309 B2 JP 6646309B2 JP 2015062030 A JP2015062030 A JP 2015062030A JP 2015062030 A JP2015062030 A JP 2015062030A JP 6646309 B2 JP6646309 B2 JP 6646309B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hepcidin
choline
production inhibitor
iron
infusion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015062030A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016179965A (ja
Inventor
坂田 文子
文子 坂田
啓明 高橋
啓明 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TRUMO KABUSHIKI KAISHA
Original Assignee
TRUMO KABUSHIKI KAISHA
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TRUMO KABUSHIKI KAISHA filed Critical TRUMO KABUSHIKI KAISHA
Priority to JP2015062030A priority Critical patent/JP6646309B2/ja
Publication of JP2016179965A publication Critical patent/JP2016179965A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6646309B2 publication Critical patent/JP6646309B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、鉄代謝を負に制御するヘプシジン−25の産生を抑制することによって血中のヘプシジン−25の濃度を低下させて、網内系マクロファージからの鉄放出を促進させるヘプシジン−25産生抑制剤に関する。より詳細には、本発明は、ヘプシジン−25の産生を抑制してヘプシジン−25の血中濃度を低下させることによって、静脈栄養療法やその他によって投与される鉄の体内での利用を促進すると共に網内系での鉄の過剰蓄積を防いで鉄の利用を促進させることで、細胞内の自由鉄の濃度を低下させて、ヒドロキシラジカルの産生を抑制し、DNAの損傷やアポトーシスの誘導などを抑制するヘプシジン−25産生抑制剤に関する。
鉄は生体内で最も多く存在する微量金属であり、ヘモグロビン合成や全身の細胞の酸化還元反応、分裂や増殖に関与する必須の元素である。しかし、鉄が過剰になると、酸化ストレスの原因となることから、鉄代謝は数多くの関連分子により巧妙に制御されている(非特許文献1)。鉄代謝の特徴は、積極的な排泄経路を持たず、ほとんどの鉄が再利用される半閉鎖的回路を構築していることである。
ヘプシジン−25は肝臓で合成分泌されるペプチドホルモンであって、ヘプシジン−25・フェロポルチン系により鉄の負の制御を担っている(非特許文献2)。
フェロポルチンは、上部小腸粘膜上皮細胞や網内系マクロファージ、肝細胞などに存在し、血中への鉄供給を担う生体で唯一の鉄輸送膜蛋白である。
ヘプシジン−25は、ヘプシジン−25の受容体であるフェロポルチンと結合すると細胞内部へ移行し、ライソゾームでフェロポルチンとともに分解されることでフェロポルチンを量的に制御している(非特許文献3)。
減少したフェロポルチンが新たに合成されて回復するのには2〜3日を要する。その間は、フェロポルチンの膜分布密度が低下し、細胞からの鉄放出量が減少する(非特許文献4)。
ヘプシジン−25は、炎症(IL−6)、小胞体ストレス(ERストレス)、鉄負荷などによって誘導され、骨髄造血機能の亢進により合成が抑制される。
血清ヘプシジン−25が持続的に高値であると、網内系からの鉄の放出が抑制されて鉄の再利用が停滞し、赤血球合成に鉄が利用できない機能性鉄欠乏状態となり、貧血を発現することが知られている。また、利用されない鉄はフェリチンとして過剰に蓄積し、細胞内の自由鉄の濃度が上昇する。細胞内の自由鉄は三価鉄と二価鉄の鉄イオン形態で存在する。二価鉄イオンは、フェントン反応を介してヒドロキシラジカルを産生することで、DNAの損傷やアポトーシスの誘導を促進させる(非特許文献5)。
血清フェリチンは、組織中のフェリチンの一部が血清中に遊離したものであって、組織内の貯蔵鉄量を反映し、血清フェリチンが高値であると貯蔵鉄が増加した状態であると考えられている。
微量元素製剤を混注した高カロリー輸液剤を投与すると血清ヘプシジン−25の濃度が高値を示す患者が少なからず存在することが、近年報告されている(非特許文献6)。
特許文献1には、ヘプシジン抗体による貧血患者の治療方法が記載されている。しかし、ヘプシジン抗体による抗体療法は、発熱、悪寒、頭痛などの副作用を伴うことが多く、またこれらの全身反応がヘプシジン産生を促進する炎症状態を招く危険性がある。
また、特許文献2には、ヘプシジン吸着剤および装置が記載されているが、体外循環を必要とすることから患者には大きな負担になる。
患者に対して負担にならず、しかも副作用を伴わずに、血清中のヘプシジン−25の濃度を低下させて、鉄の利用を促進させる解決策はこれまで知られていない。
WO 2008/097461 WO 2011/009555
高後裕ほか、「Iron Overload と鉄キレート療法」、p.25−33(2007) 生田克哉ほか、「血液フロンティア」、21(6)、p.23−30(2011) 友杉直久、「血液フロンティア」、21(6)、p.31−39(2011) 友杉直久、「金沢大学十全医学会雑誌」、118(2)、p.61−62(2009) 生田克哉、「血液フロンティア」、19(2)、p.31−39(2009) 加藤治樹、「日本臨床栄養学会雑誌」,36(1)、p.40−45(2014)
本発明の目的は、静脈栄養療法などによって体内に投与された鉄の利用を促進させることができ、しかも種々の臓器や組織での鉄の過剰蓄積を防いで過剰な鉄によってもたらされる酸化ストレスやその他の種々の弊害を回避することのできる製剤を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、コリン(Choline)が、ヘプシジン−25の産生を抑制して、血中でのヘプシジン−25の濃度を低下させる作用を有すること、それによって静脈栄養療法などによって投与される鉄の体内での利用を促進し、更に網内系での鉄の過剰蓄積を防いで鉄の利用を促進させることで、細胞内の自由鉄の濃度を低下させてヒドロキシラジカルの産生を抑制して、DNAの損傷、アポトーシスの誘導などのような、鉄過剰に起因する体内での種々の弊害の回避や抑制に有効であることを見出した。
コリンは、循環器系と脳の機能および細胞膜の構成と補修に不可欠の栄養素であって、コリンおよびその代謝物質は、細胞膜の構造の保全と細胞シグナリングの役割、アセチルコリンへ合成されることによる神経伝達物質としての役割、およびS−アデノシルメチオニンを合成する代謝経路に関与する代謝物質であるトリメチルグリシン(ベタイン)を通じたメチル基の主な原料としての役割という生理学上の3つの重要な役割を有することが従来から知られている。
しかし、コリンがヘプシジン−25の産生を抑制する作用を有することは従来知られていない。かかる点から、コリンがヘプシジン−25の産生を抑制する作用効果を有することは、従来技術からは想到し得ない新しい知見であり、本発明は当該新しい知見に基づくものである。
したがって、本発明は、
(1) コリン、コリン塩およびコリン誘導体から選ばれる少なくとも1種のコリン化合物を有効成分とすることを特徴とするヘプシジン−25産生抑制剤である。
そして、本発明は、
(2) コリン化合物が、塩化コリンおよびCDP−コリンのいずれか一方または両方である前記(1)のヘプシジン−25産生抑制剤;
(3) 鉄分と共に患者に投与されるものである前記(1)または(2)のヘプシジン−25産生抑制剤;および、
(4) 鉄分を含有する前記(1)〜(3)のいずれかのヘプシジン−25産生抑制剤;
である。
さらに、本発明は、
(5) アミノ酸を含有する前記(1)〜(4)のいずれかのヘプシジン−25産生抑制剤;
(6) 糖を含有する前記(1)〜(5)のいずれかのヘプシジン−25産生抑制剤;
(7) シリンジ、バイアル、ボトル、アンプルまたはバッグに収容されている前記(1)〜(6)のヘプシジン−25産生抑制剤;
(8) プレフィルドシリンジ製剤である前記(7)のヘプシジン−25産生抑制剤;および、
(9) 成人1日当たりの投与量が、コリンとして0.5〜8.0gである前記した(1)〜(8)のいずれかのヘプシジン−25産生抑制剤;
である。
コリン、コリン塩およびコリン誘導体から選ばれる少なくとも1種のコリン(Choline)化合物を有効成分とする本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、ヘプシジン−25の産生を抑制して、血中のヘプシジン−25の濃度を低下させることで、静脈栄養療法やその他によって投与される鉄の体内での利用を促進する作用効果を有し、しかも網内系に鉄を過剰蓄積させることなく鉄の利用を促進させることで、細胞内の自由鉄の濃度を低下させ、ヒドロキシラジカルの産生を抑制して、DNAの損傷、アポトーシスの誘導などのような、鉄の過剰蓄積に起因する種々の弊害を抑制することができる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、コリン、コリン塩およびコリン誘導体から選ばれる少なくとも1種のコリン化合物を有効成分とする。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤の有効成分をなすコリン化合物としては、コリン、塩化コリン、重炭酸コリン、コリンリン酸塩などのコリンの無機塩、重酒石酸コリン、クエン酸二水素コリン、グルコン酸コリンなどのコリンの有機酸塩、CDP−コリン[体系名:O−[(5’−シチジリルオキシ)(オキシラト)ホスフィニル]コリン]、ホスファチジルコリンなどのコリン誘導体などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、コリン化合物としては、塩化コリンおよびCDP−コリンの一方または両方が、入手容易性などの点から好ましく用いられる。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、液状物または固体状物のいずれであってもよい。液状物である場合は、コリン化合物を水などの液体に溶解して溶液の形態にするのがよく、コリン化合物は水に溶けやすいので水溶液の形態であることが好ましい。固体状物である場合は、粉末、錠剤などの形態であることができ、粉末の形態が好ましい。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、シリンジ、バイアル、アンプル、ボトル、バッグなどの容器に収容しておくことができる。ヘプシジン−25産生抑制剤を収容する前記した容器は、容器の種類、形状、構造などに応じて、ガラス、合成樹脂、熱可塑性エラストマーなどから形成されていることができる。容器を形成し得る合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどを挙げることができる。また、容器を形成し得る熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジオレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤をシリンジに収容する場合は、コリン化合物の溶液(好ましくは水溶液)をシリンジに予め収容したプレフィルドシリンジ溶液製剤とするか、または粉末状のコリン化合物をシリンジに予め収容したプレフィルドシリンジ粉末製剤とすることができる。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤が、コリン化合物の溶液(特にコリン化合物の水溶液)をシリンジに予め収容したプレフィルドシリンジ溶液製剤である場合は、シリンジ中のコリン化合物溶液の濃度は、コリンとして、0.1〜0.5g/mLであることが好ましく、0.2〜0.4g/mLであることがより好ましい。コリン化合物の濃度が低すぎると、必要な量のコリン化合物を患者に投与することが困難になり、一方コリン化合物の濃度が高すぎると、コリン化合物溶液の調製の際に溶解に長い時間を要したり、保存・移送の際にコリン化合物が析出する恐れがある。
また、プレフィルドシリンジ溶液製剤におけるシリンジの内容積は、取り扱い性、保管性などの点から、0.5〜20.0mLであることが好ましく、2.0〜5.0mLであることがより好ましい。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤が、コリン化合物粉末をシリンジに予め収容したプレフィルドシリンジ粉末製剤である場合は、患者への投与時に、必要な量の溶媒(水など)を針先からシリンジ内に吸入してシリンジ内のコリン化合物粉末を溶解してコリン化合物溶液にして用いる。
プレフィルドシリンジ製剤(溶液製剤および粉末製剤)の形態をなす本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、患者に輸液剤を投与する際に、シリンジ中のコリン化合物溶液を輸液中に注入混合することで、輸液と一緒に患者に投与することができる。
プレフィルドシリンジ製剤の形態をなす本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、コリン化合物と共に、必要に応じて鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレンなどの微量元素の1種または2種以上を含有することができ、また必要に応じてビタミン類、電解質類などの1種または2種以上を含有することができる。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤が、コリン化合物溶液をバイアルまたはアンプルに収容した製剤である場合は、注射器などによってバイアルまたはアンプル中のコリン化合物溶液を吸い出し、それを輸液中に注入混合することで、輸液と一緒に患者に投与することができる。この場合に、バイアルまたはアンプル中のコリン化合物溶液の濃度は、コリンとして、0.1〜0.5g/mLであることが好ましく、0.2〜0.4g/mLであることがより好ましい。コリン化合物の濃度が低すぎると、必要な量のコリン化合物を患者に投与することが困難になり、一方コリン化合物の濃度が高すぎると、コリン化合物溶液の調製の際に溶解に長い時間を要したり、保存・移送の際にコリン化合物が析出する恐れがある。
また、バイアルまたはアンプルの内容積は、取り扱い性、保管性などの点から、0.5〜20.0mLであることが好ましく、2.0〜5.0mLであることがより好ましい。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤が、粉末、錠剤などの固体状のコリン化合物をバイアルまたはアンプルに収容したものである場合は、バイアルまたはアンプルに必要量の溶媒(水など)を加えてコリン化合物溶液にした後に、バイアルまたはアンプル中のコリン化合物溶液を注射器などで吸い出し、それを輸液中に注入混合することで、輸液と一緒に患者に投与することができる。
バイアルまたはアンプル中の固体状のコリン化合物の量は、バイアルまたはアンプルの内容積や必要投与量などに応じて決めればよい。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤が、コリン化合物溶液または固体状のコリン化合物をバイアルまたはアンプル中に収容したものである場合は、コリン化合物と共に、必要に応じて、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレンなどの微量元素の1種または2種以上を含有することができ、また必要に応じてビタミン類や、電解質類などの1種または2種以上を含有することができる。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤が、コリン化合物溶液をボトルやバッグに収容したものである場合は、水溶液などの溶液形態にして収容することが好ましい。
ボトルまたはバッグに収容したコリン化合物溶液には、必要に応じて、アミノ酸、糖類、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ヨウ素、セレンなどの微量元素、ビタミン類、電解質類などの1種または2種以上を含有させることができる。
本発明のヘプシジン−25産生抑制剤が、コリン化合物の溶液をボトルまたはバッグに収容した形態である場合に、ボトルまたはバッグ内のコリン化合物溶液を輸液剤の処方にコリン化合物を配合したものとすると、このコリン化合物溶液は、ヘプシジン−25産生抑制剤としての機能と併せて輸液剤としての機能を有するようになる。
コリン化合物を配合する輸液剤の処方としては、糖、電解質、アミノ酸、ビタミン、微量元素などが挙げられ、これらの成分は、別々の容器に分けて収容されていてもよいし、1室型の1つの容器に一緒に収容されていてもよいし、用時連通可能な隔壁によって複数の室に区分された複数室型の容器のいずれかの室に分けて収容されていてもよく、コリン化合物は、前記した成分が収容されているいずれか1つの容器または複数の容器、或いはいずれか1つの室または複数の室に配合することができる。
コリン化合物を輸液剤中に含有させる場合は、輸液剤中のコリン化合物の濃度は、コリンとして、0.3〜6g/Lであることが好ましく、0.5〜3.0g/Lであることがより好ましい。
本発明で採用し得る、コリン化合物を配合する輸液剤の例としては、例えば、
《1》 糖と電解質が、1つの容器(1つの室)に一緒に収容されているか、異なる容器に別々に収容されているか、または用時連通可能な隔壁によって2つの室に区分された2室型容器のそれぞれの室に収容されている高カロリー輸液用基本液;
《2》 糖とアミノ酸と電解質が、1つの容器(1つの室)に一緒に収容されているか、異なる2つまたは3つの容器に収容されているか、或いは用時連通可能な隔壁によって2つまたは3つの室に区分された2室型または3室型の容器のいずれかの室に収容されている「糖・アミノ酸・電解液」型の高カロリー輸液剤;
《3》 糖とアミノ酸と電解質とビタミン類が、1つの容器(1つの室)に一緒に収容されているか、異なる2つ、3つまたは4つの容器に収容されているか、或いは用時連通可能な隔壁によって2つ、3つまたは4つの室に区分された複数室型の容器のいずれかの室に収容されている「糖・アミノ酸・電解液・ビタミン液」型の高カロリー輸液剤;
《4》 糖とアミノ酸と電解質とビタミン類と微量元素が、1つの容器(1つの室)に一緒に収容されているか、異なる2つ、3つ、4つまたは5つの容器に収容されているか、或いは用時連通可能な隔壁によって2つ、3つ、4つまたは5つの室に区分された複数室型の容器のいずれかの室に収容されている「糖・アミノ酸・電解液・ビタミン・微量元素液」型の高カロリー輸液剤;
などを挙げることができる。
上記《3》の高カロリー輸液剤において、水溶性ビタミンは、糖および/またはアミノ酸が収容されている容器または室に含有させ、脂溶性ビタミンは専用の容器または専用の室に収容することが望ましい。
また、上記《4》の高カロリー輸液において、微量元素は専用の容器または専用の室に収容することが望ましいが、場合によってはヨウ素を糖液を収容した容器または室に配合してもよい。
前記《1》〜《4》の輸液剤において、コリン化合物は、いずれか1つまたは2つ以上の容器或いはいずれか1つまたは2つ以上の室に収容された液に配合することができる。
輸液剤の処方で用いる糖の種類としては、グルコース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトース、グリセロールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有させることができる。溶液中の糖の濃度は、十分な熱量を投与するために、70〜250g/Lであることが好ましく、120〜250g/Lであることがより好ましい。
輸液剤の処方で用いるアミノ酸の種類としては、例えば、イソロイシン、ロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、グリシン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン。プロリン、セリン、チロジン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸を挙げることができ、特に前記したアミノ酸の全てを含有させると、輸液用のアミノ酸溶液製剤として十分な機能を有するようになる。
輸液剤中のアミノ酸の濃度は、十分な窒素量(アミノ酸)を投与するために、20〜70g/Lであることが好ましく、30〜60g/Lであることがより好ましい。
また、輸液剤中にコリン化合物を配合する代わりに、本発明のヘプシジン−25産生抑制剤(コリン化合物)を輸液剤を収容した容器とは別の容器に収容し、輸液剤とセットにして流通、販売、使用することができる。
その具体例としては、上記した《1》〜《4》のいずれかの輸液剤とヘプシジン−25産生抑制剤(コリン化合物)を収容したプレフィルドシリンジ製剤とからなるセットなどを挙げることができる。
また、本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、必要に応じて、緩衝剤、等張化剤、pH調整剤などの1種または2種以上を含有することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》[プレフィルドシリンジ溶液製剤の形態のヘプシジン−25産生抑制剤]
(1) 塩化コリン3.770gを注射用水8mLに溶解して塩化コリン水溶液を調製した後、注射用水を加えて全量10mLの塩化コリン水溶液とした。
(2) 上記(1)で得られた塩化コリン水溶液の4mL(塩化コリン含量1.509g/4mL)を、内容積10mLのポリプロピレン製シリンジ本体に充填し、シリンジ本体の後部開口端をゴム製ガスケットで密封した後、常法により高圧蒸気滅菌処理して、プレフィルドシリンジ溶液製剤の形態をなす、ヘプシジン−25産生抑制剤を製造した。
《製造例1》[静脈栄養用輸液剤の調製]
下記の表1に示す成分組成を有する静脈栄養用輸液剤(全溶液量1505mL)を調製した。
Figure 0006646309
《試験例1》
(1) ラット10匹(平均体重358g/匹)を準備して5匹ずつ、2つの区に分けた。
(2)(i) 実施例1で製造したプレフィルドシリンジ溶液製剤の形態をなすヘプシジン−25産生抑制剤の全量(4mL)を、製造例1で調製した静脈栄養用輸液剤(全量1505mL)に添加して均一に混合して、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を含有する静脈栄養用輸液剤(全量1509mL)を調製した。
(ii) 第1区の5匹のラットに、無蛋白食を2週間摂取させた後、それぞれのラットの右外頸静脈にカテーテルを留置して、無拘束下で、上記(i)で調製した、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を含有する静脈栄養用輸液剤を3日間持続投与した。輸液投与量は1匹当たり406mL/kg/dayとした。
(iii) 3日間の輸液投与終了後、それぞれのラットからイソフルラン麻酔下で腹大動脈より採血し、血清を分離して、血清中のヘプシジン−25の量を液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計を用いて測定(LC−MS/MS法)し、血清中のフェリチンの量をELISA法(Enzyme−Linked Immuno−Sorbent Assay)によって測定して、5匹のラットの平均値を採った。
その結果を、下記の表2に示す。
(3)(i) 製造例1で製造した静脈栄養用輸液剤(全溶液量1505mL)に、塩化コリンを含有しない注射用水4mLを添加・混合して、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を含有しない静脈栄養用輸液剤(全量1509mL)を調製した。
(ii) 第2区の5匹のラットに、無蛋白食を2週間摂取させた後、それぞれのラットの右外頸静脈にカテーテルを留置して、無拘束下で、上記(i)で調製した、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を含有しない静脈栄養用輸液剤を3日間持続投与した。輸液投与量は1匹当たり406mL/kg/dayとした。
(iii) 3日間の輸液投与終了後、それぞれのラットからイソフルラン麻酔下で腹大動脈より採血し、血清を分離して、血清中のヘプシジン−25の量および血清中のフェリチンの量を、上記(2)の(ii)と同様にして測定して、5匹のラットの平均値を採った。
その結果を、下記の表2に示す。
Figure 0006646309
上記の表2に見るように、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を添加した静脈栄養用輸液剤を投与した第1区のラットの血清中のヘプシジン−25の量は、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を添加しない静脈栄養用輸液剤を投与した第2区のラットの血清中のヘプシジン−25の量に比べて有意に低値であった。
さらに、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を添加した静脈栄養用輸液剤を投与した第1区のラットの血清中のフェリチンの量は、ヘプシジン−25産生抑制剤(塩化コリン)を添加しない静脈栄養用輸液剤を投与した第2区のラットの血清中のフェリチンの量に比べて有意に低値であった。
このように、コリン化合物を有効成分とするヘプシジン−25産生抑制剤を添加した輸液を投与することによって、輸液剤中に配合された鉄の利用が促進され、長期に投与すれば貧血の改善等の効果が得られた。
《実施例2》[静脈栄養用輸液剤の形態のヘプシジン−25産生抑制剤]
製造例1で調製した静脈栄養用輸液剤(液量1505mL)に、塩化コリンを1.509gの量で含有する塩化コリン水溶液の4mLを混合し(全量1509mL)、その全量をバッグに収容して、ヘプシジン−25産生抑制剤と静脈栄養用輸液剤を兼ねる製剤を調製した。
《実施例3》
(1) 用時に剥離可能な隔壁によって3つの室に区分した3室型のプラスチックバッグを準備し、その第1室に下記の表3に示す配合組成を有する糖/電解質/ビタミン液を充填し、第2室に下記の表4に示す配合組成を有するアミノ酸/ビタミン液を充填し、第3室に下記の表5に示す配合組成を有するビタミン液を充填して、3室型バッグ入り静脈栄養用輸液剤を製造した。
(2) 上記(1)とは別に、下記の表6に示す配合組成を有する微量元素溶液を調製し、それを内容積が2.5mLのシリンジに充填して、微量元素のプレフィルドシリンジ溶液製剤を製造した。
(3) 上記(1)および(2)とは別に、塩化コリン1.509gを含有する塩化コリン水溶液4mLを調製して、内容積が5.0mLのシリンジに充填して、プレフィルドシリンジ型のヘプシジン−25産生抑制剤を製造した。
(4) 上記(1)で製造した3室型バッグ入り静脈栄養用輸液剤、上記(2)で製造した微量元素のプレフィルドシリンジ溶液製剤および上記(3)で製造したプレフィルドシリンジ型のヘプシジン−25産生抑制剤を組み合わせて、ヘプシジン−25産生抑制剤と静脈栄養用輸液剤を兼ねるセット製剤とした。
Figure 0006646309
Figure 0006646309
Figure 0006646309
Figure 0006646309
コリン化合物を有効成分とする本発明のヘプシジン−25産生抑制剤は、ヘプシジン−25の産生を抑制して、血中のヘプシジン−25の濃度を低下させることで、静脈栄養療法やその他によって投与される鉄の体内での利用を促進し、更に網内系に鉄を過剰蓄積させることなく鉄の利用を促進させることで、細胞内の自由鉄の濃度を低下させ、ヒドロキシラジカルの産生を抑制して、DNAの損傷、アポトーシスの誘導などのような鉄の過剰蓄積に起因する種々の弊害を抑制するための剤として有効である。

Claims (6)

  1. コリン、コリン塩、CDP−コリンおよびホスファチジルコリンから選ばれる少なくとも1種のコリン化合物を有効成分とすることを特徴とする、静脈栄養用輸液剤との併用下に人(但し、アジソン悪性貧血患者を除く)に投与するためのヘプシジン−25産生抑制剤。
  2. コリン化合物が、塩化コリンおよびCDP−コリンのいずれか一方または両方である請求項1に記載のヘプシジン−25産生抑制剤。
  3. 鉄分と共に患者に投与されるものである請求項1または2に記載のヘプシジン−25産生抑制剤。
  4. 鉄分を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘプシジン−25産生抑制剤。
  5. シリンジ、バイアルまたはアンプルに収容されている請求項1〜のいずれか1項に記載のヘプシジン−25産生抑制剤。
  6. 成人1日当たりの投与量が、コリンとして0.5〜8.0gである請求項1〜のいずれか1項に記載のヘプシジン−25産生抑制剤。
JP2015062030A 2015-03-25 2015-03-25 ヘプシジン−25産生抑制剤 Active JP6646309B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015062030A JP6646309B2 (ja) 2015-03-25 2015-03-25 ヘプシジン−25産生抑制剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015062030A JP6646309B2 (ja) 2015-03-25 2015-03-25 ヘプシジン−25産生抑制剤

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019238588A Division JP6849785B2 (ja) 2019-12-27 2019-12-27 ヘプシジン−25産生抑制剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016179965A JP2016179965A (ja) 2016-10-13
JP6646309B2 true JP6646309B2 (ja) 2020-02-14

Family

ID=57131589

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015062030A Active JP6646309B2 (ja) 2015-03-25 2015-03-25 ヘプシジン−25産生抑制剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6646309B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3395229A (en) * 1967-07-03 1968-07-30 Mattox And Moore Inc Process and product for combatting iron deficiency anemia in suckling pigs
SI2231171T1 (sl) * 2007-12-14 2017-03-31 Hofseth Biocare Asa Sestavki in postopki za povečanje absorpcije železa

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016179965A (ja) 2016-10-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6766112B2 (ja) 高圧蒸気滅菌済み末梢静脈投与用栄養輸液におけるビタミンcの安定化方法
US20100196461A1 (en) Resuscitation fluid
JP2019214592A (ja) ベンダムスチンの製剤
KR102057555B1 (ko) 신부전 환자를 치료하기 위한 카복실산 혼합물
JPH0534337B2 (ja)
US20090131338A1 (en) Anesthesia arousal composition
CN108066360A (zh) 一种复方醋酸钠林格注射液及其制备方法
JP2007055992A (ja) 周術期患者用薬剤
JPH06312923A (ja) 末梢静脈投与用栄養輸液
JPH11302164A (ja) アミノ酸組成物
EA013616B1 (ru) Инъекционные препараты диклофенака и его фармацевтически приемлемых солей
RU2760324C1 (ru) Новое применение полоксамера в качестве фармакологически активного вещества
JP6646309B2 (ja) ヘプシジン−25産生抑制剤
JP6849785B2 (ja) ヘプシジン−25産生抑制剤
JP2021535171A (ja) 解糖依存的な病態、特に癌を治療するための乳酸塩保護低血糖
JPH06256184A (ja) 癌患者用アミノ酸製剤
JP2022531670A (ja) インスリンプレミックスの配合物と製品、それを調製する方法、及びそれを使用する方法
JP6169458B2 (ja) 鉄代謝改善用輸液剤
AU2009220942A1 (en) Methods of treatment employing prolonged continuous infusion of Belinostat
JP6771333B2 (ja) 鉄含有注射用製剤
CN114144170B (zh) 非质子极性溶剂中的稳定治疗组合物及其制造方法
WO2018191634A2 (en) Formulations with enhanced stability and bioavailability for administration of (e)-2,6- dialkoxystyryl 4-substituted benzylsulfones
JPH06256186A (ja) 癌用アミノ酸製剤
KR101327904B1 (ko) 목시플록사신 염산염의 주사제형
JP6925148B2 (ja) 鉄含有輸液剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180115

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181109

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20181221

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190603

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190710

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191202

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20191203

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20191227

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191227

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6646309

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250