JP2021535171A - 解糖依存的な病態、特に癌を治療するための乳酸塩保護低血糖 - Google Patents

解糖依存的な病態、特に癌を治療するための乳酸塩保護低血糖 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヒト又は動物における解糖依存的な病態を治療するための、乳酸、インスリン、及びグルコースといった成分、並びに任意選択で、グルカゴン阻害剤、α−βアドレナリン遮断薬、及び抗糖尿病剤から選択される1種又は複数の成分を含むキットに関する。前記治療は、低血糖及び高乳酸血症を誘発するため、治療されるヒト又は動物の循環内に、乳酸、インスリン、及びグルコースといった成分を、血管内、特に静脈内に送達することを含む。解糖依存的な病態は、癌、細菌感染、又は寄生虫感染からなる群から選択される。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒト又は動物における解糖依存的な病態の治療のための、複数の成分を含むキットに関する。
癌は、世界的に第一位の死亡原因であり、発生率が増加し続けており、2015年における8百万人を上回る死亡の原因である。世界的に、ほぼ6名中1名の死亡は癌によるものである。多くの異なる癌の形態が存在し、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、及び他の形態の標的療法など、種々の治療の形態も存在する。癌の形態の多くは治癒させることができず、全ての患者に対して全ての療法が等しく奏効するわけではないため、新規の治療モダリティに対する大きな必要性が依然としてある。
本発明の目的は、癌細胞及び癌組織の代謝を直接的に妨げることである。正常な組織は、制限された好気条件下で、解糖による著しい量の乳酸塩を間欠的に産生する場合があるのに対して、多くの癌は、十分な酸素の供給がある場合でさえ、解糖による著しい量の乳酸塩を継続的に産生する。癌によるこの顕著な好気的解糖は、ワールブルク効果と呼ばれている。ワールブルク効果は、癌の独特な特性であり、十分な酸素が存在している場合でさえ、大量の乳酸を産生するのと同時に、腫瘍によって膨大な量のグルコースが取り込まれることとして定義されている。
18F−デオキシグルコースポジトロン放出断層撮影(FDG−PET)走査によって、ワールブルク効果の結果としてグルコースの取り込みが増加した悪性組織が検出される。癌の診断及び/又は経過観察のためのFDG−PETの定期的な使用は、大いに広まっている。FDG−PETスキャンは、胆道、膀胱、骨、乳房、中枢神経系、子宮頚、結腸、食道、腎臓、喉頭、肝臓、肺、鼻咽腔、口腔咽頭、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、皮膚、軟組織、胃、精巣、甲状腺、及び子宮の癌におけるワールブルク効果を明らかにする。FDG−PETは、ホジキンリンパ腫、白血病、黒色腫、多発性骨髄腫、及び非ホジキンリンパ腫などのより播種的な悪性腫瘍におけるワールブルク効果も明らかにする。これらの一覧が癌の種類の大多数を占めるという事実は、癌におけるワールブルク効果の中心的な役割を強調している。
FDG−PET陽性の程度は、腫瘍アシドーシスと強く関連付けられており、FDG−PET陽性の程度及び腫瘍アシドーシスは、共により悪い臨床予後と関連していることから、FDG−PETはワールブルク効果及び予後と直接関連付けられている。
癌細胞による乳酸の高い産生量は、細胞外腫瘍組織及びその環境の酸性化を生じる可能性がある。低酸素状態の有無に関わらず、この局所的なアシドーシス及び乳酸塩の増加は、より顕著なアシドーシスが増強した侵襲能と関連している多くの腫瘍を、確かに特徴付けている。局所的な乳酸アシドーシスは、非悪性細胞のアポトーシス及びネクローシスを誘導することによって、癌を取り囲む組織を分解する働きをすることも明らかにされている。
悪性細胞が酸化的リン酸化によって産生された十分なATPを有する場合でさえ、悪性細胞は、膜結合性であることが多い、特殊な解糖を原動力とする(glycolysis−powered)過程のために、依然としてグルコースを使用し、グルコースを必要とする。これらの解糖を原動力とする過程(例えば、いわゆるABCトランスポーターによる化学療法剤の速やかな排出)は、腫瘍細胞の侵襲目的(転位)及び自衛目的を果し、化学療法に対する抵抗を容易にする。同様に、解糖は、腫瘍の放射線に対する感受性を低下させ、癌を攻撃するための免疫細胞の有効性を妨げる低酸素及び酸性の微小環境を、腫瘍が作り出すことを可能にすることによって、放射線療法及び免疫療法に対する抵抗も容易にする。
このため、抗癌治療として解糖を阻害するための戦略が提案されている。in vitroにおいて、グルコース減少の効果は強力な殺腫瘍性を示すが、in vivoにおいて、深刻な低血糖自体は、宿主がグルコースを通常必要とするため、直ちに致死的となり得る。このことによって、非悪性組織のために「救助燃料(salvage fuel)」を供給し、同時に、インスリンを用いて全身的グルコース値を低下させ、腫瘍増殖のために必要な燃料を与えないという提案が導かれた。グリセロールのような化合物が提案されてきたが、グリセロールは解糖を回避することがなく、グルコース値の上昇を誘発する可能性すらある。
解糖は、酸化的リン酸化よりも格段に速くなり得る。このため、ヒト及び動物における生理学的状況又は病態生理学的状況下で、乳酸塩は、この2つのATP産生過程を、それぞれ独立して最適に進めることを可能にする、不可欠な緩衝剤として働く。したがって、「乳酸塩シャトル」は、顕微鏡レベル及び肉眼レベル、すなわち、細胞レベルから全身レベルで存在する。このため、グルコース同様に、乳酸塩は、心臓、骨格筋、脳、腎臓、及び肝臓などの臓器によって酸化される主要な燃料である。
バッファー燃料としての乳酸塩の役割は、いわゆる、乳酸置換液を用いた大量の持続的静静脈血液濾過(CVVH)を受けている患者において示される通り、大量の内因性又は外因性乳酸塩を代謝する身体能力を明確にすることである。CVVHを受けている患者は、代謝の維持を可能にする速度で、長期的に乳酸塩を代謝することができる。
癌細胞は、優先的に解糖を介してATPを産生し、乳酸塩を産生することには慣れているが、乳酸塩を消費することには慣れていないため、ワールブルク効果を示す癌細胞は、燃料として乳酸塩を利用することが困難であると思われる。このため、Nijsten&Van Damによって、救助燃料として乳酸塩(ナトリウム)投与を組み合わせたインスリンによって誘発された、低血糖の局所的又は全身的な誘発は、正常組織を害さないが、ワールブルク効果を示す腫瘍の増殖に不利な影響を及ぼすであろうという仮説が立てられた(Medical Hypotheses73(2009)48〜51頁)。
大量の乳酸ナトリウムの静脈内投与には2つの重大な副作用:全身性代謝性アルカローシス及び高ナトリウム血症が存在することは、酸−塩基及び電解質の生理学から知られている。これらの副作用は許容できるものではなく、これらの副作用によって、乳酸ナトリウムは、患者又は患畜において、持続的高乳酸血症を誘発させるのに適していないとされる。
したがって、本発明の目的は、癌細胞がエネルギー源を奪われ、そのために増殖能を著しく阻害されるか、又は損傷され、死滅する場合さえある、乳酸塩保護低血糖状態に至る実行可能で安全なプロトコールを作成することである。グルコースを与えないことも、化学療法抵抗性又は放射線療法抵抗性は解糖依存性であることが多いため、化学療法又は放射線療法など、複数の確立された重要な癌治療を増強する可能性がある。加えて、免疫療法は、大部分の癌細胞が破壊されるか、又は腫瘍内の免疫抑制的な酸性環境の維持を直接的若しくは間接的に担う要素が、一時的な低血糖期間による損傷効果によって著しく妨害される場合に、より効果的であるだろうと予想される。
本発明によって、特殊な順序で使用される場合に、高乳酸血症によって保護された効果的な低血糖状態を誘発する複数の成分を含むキットが提供される。このキットは、乳酸(HLa)、インスリン、グルコース、並びに任意選択で、α−β遮断薬及びグルカゴン阻害剤を含む。このキットは、抗糖尿病剤をさらに含み得る。
乳酸ナトリウム(NaLa)の代わりに高用量のHLaを投与することは、患者に損傷を与える可能性のある代謝性アルカローシスも、高ナトリウム血症も生じないことが認められた。HLaは、このように使用されるか、又はNaLaの僅かな画分と組み合わせて使用され得る。送達された総乳酸塩のうち、NaLaの画分は、好ましくは20%未満であるべきであるが、代謝性アルカローシス及び高ナトリウム血症のリスクが低いか、若しくは追加の治療によってそのリスクが低下した場合、又は短期間のみの低血糖状態が必要とされる場合には20%を上回ってもよい。
宿主の代謝を主に補助するために必要な量のHLaを持続的に投与することは、これまで実施されたことがなかった。
HLa投与には、急性溶血を避けることに特化したシステムが必要とされる。このようなシステムは、例えば、赤血球と濃縮HLaの接触における急性溶血を避けるためのex vivo潅流回路である。適切にはこれは、Zanella他(Anesthesiology 2014;120:416−24)による記載の通り、全血と再度合わせる前に、HLaと限外濾過液を混合した透析回路によって行うことができる。その後、HLaは完全に血液と混合される。血中の乳酸塩値は、通常0.5〜1.5mmol/Lの間で変動する。本発明の治療において、この値は、8〜10mmol/Lに上昇するものであるが、より高値でもより低値でも有用であると想定される。
腫瘍細胞が好むエネルギー源を腫瘍細胞から奪うために、インスリンを使用して身体のグルコース値を低下させる。制御された様式で、グルコース値を、正常値の約25%に低下させる。一実施形態において、インスリンは、いわゆる「クランプ」技術によって、グルコースと共に投与される。クランプによって、グルコース値のはるかに良好な制御が可能となる。クランプ技術は、科学的目的のために広く使用されているが、治療目的のためにも、本発明によって達成される極めて低いグルコース値を達成するためにも使用されたことがない。
本発明によると、極めて低く(すなわち、<2mmol/L)、予め設定された目標値あたりに数時間維持される低血糖レベルは、強力で速やかな可逆的阻害であるカウンター反応(counter−responses)及び0.5mmol/L以上の任意の目標値でグルコース値を安定化するためのグルコースの同時投与によって容易に得られる。
この(極めて大量の)インスリンボーラスの単独投与によって、グルコースの望ましい目標値の達成に加えて、望ましい目標維持期間の達成は、極めて困難となっている。インスリンを単独で投与した場合、オーバーシュート及びアンダーシュートは、いずれも容易に生じ得る。
身体が差し迫った低血糖を検出した場合、肝臓及び腎臓の両方から、糖新生及びグリコーゲン分解によってグルコースが放出される。生理学的条件下で、低血糖は、肝グルコース放出を刺激することによってインスリンの効果に拮抗するグルカゴンの放出を誘発し、続いて血糖値を低血糖範囲より上昇させる。本発明の治療において、このグルカゴンの作用は、キットの一部であるグルカゴン阻害剤によって抑制される。
低血糖に対する生理学的カウンター反応の第2の要素は、同じく肝グルコース放出を刺激するアドレナリン(エピネフリン)の放出を含む、アドレナリン作動性ストレス反応である。したがって、α−βアドレナリン遮断薬は、代償反応であるこの要素を阻害するために含まれる。
さらに、糖新生を阻害する抗糖尿病剤が含まれることは好ましい。抗糖尿病剤は、インスリン用量の減量を容易にするために、インスリン投与前に投与される。
一実施形態において、患者のグリコーゲン値は、治療開始前に可能な限り低くする。これは、治療前の絶食によって達成され得る。
このため、本発明は、乳酸塩保護低血糖(LPH)状態に達するために、特定の順序及び特定の用量で患者に投与される医薬化合物の独特な組合せを含む複数のパーツからなるキットに関する。LPH状態に達したら、癌細胞に十分な損傷をもたらす特定の期間、LPH状態を維持する。
本発明は、ワールブルク効果が役割を果し、そのため癌の維持が解糖依存的である多くの異なる癌の治療に使用することができる。特に、本発明は、強く又は完全に解糖依存的である癌及び他の病態を治療することにおいて有用である。強く解糖依存的であるとは、癌又は病態は、エネルギーを産生するか、又はそのバイオマスを増加するために他の供給源を利用することがあるが、解糖は、癌又は感染を、グルコースがない場合よりも大幅に速く進行させることができる重要な経路を担うことを意味する。
このため、本発明は、胆道、膀胱、骨、乳房、中枢神経系、子宮頚、結腸、食道、腎臓、喉頭、肝臓、肺、鼻咽腔、口腔咽頭、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、皮膚、軟組織、胃、精巣、甲状腺、及び子宮の癌を治療するのに特に有用である。ワールブルク効果は、ホジキンリンパ腫、白血病、黒色腫、多発性骨髄腫、及び非ホジキンリンパ腫などのより播種的な悪性腫瘍においても認められるため、これらの悪性腫瘍も本発明に従って治療することができる。
本発明のキット及び得られる代謝状態は、ヒト又は動物における他の解糖依存的な病態の治療にも適している。このような解糖依存的な病態には、特定の細菌感染、及びマラリア又はトリパノソーマ症などの特殊な寄生虫感染が含まれる。FDG−PET陽性の癌に類似して、これらの病原体は、好んで又はもっぱらグルコースに依存しており、このため、グルコースの制限によって悪い影響を受けるであろう。
ヒトにおいてマラリアの原因となる4種の寄生虫(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax))は、全てATP産生においてグルコースに厳密に依存的である。このため、グルコース代謝の阻害によって、マラリアの転帰が改善された。ヒトトリパノソーマ症の主な病原体(ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)及びクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi))において、グルコースは、基本的に唯一の炭素源でもあり、ATPの唯一の供給源でもあるため、病原体は、制限されたグルコース利用能の影響を受けやすくなっている。このため、これらの寄生虫感染も本発明に従って治療することができる。
ヒトにおいて疾患の原因となり得る多く細菌は、増殖及びATP産生のいずれにも大量のグルコースを使用する。これらの細菌には、グラム陽性菌(例えば、ブドウ球菌(Staphylococcus)属種及び連鎖球菌(Streptococcus)属種)、グラム陰性菌(例えば、大腸菌(E.coli)、エンテロバクター(Enterobacter)属種、プロテウス(Proteus)属種を含む多くの腸内細菌科(Enterobacteriaceae))、シュードモナス(Pseudomonas)属種、及び嫌気性菌(例えば、クロストリジウム(Clostridium)属種、乳酸桿菌(Lactobacillus)属種、バクテロイデス(Bacteroides)属)が含まれる。
同様に、多くの真菌及び酵母菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属種及びカンジダ(Candida)属種)においても、グルコースは、増殖及びATP産生のための重要な炭素源として役立つ。ヒト及び動物の感染中でさえ、血中グルコース値及び組織グルコース値は、実質的に全状況下で、豊富な栄養源を事実上構成する。このため、循環レベルの引き下げを介してグルコース利用能を標的とすることは、感染に対処するための理論的な手段をもたらす。
このため、本発明は、高乳酸血症及び低血糖をもたらす治療方法における使用のための、多くの成分を含むキットに関する。この方法は、解糖に依存的な病態の治療のために使用し得る。解糖の間、エネルギーはグルコースから産生される。患者がグルコースを奪われ、代替エネルギー源としての高値の乳酸塩によって保護された場合、特に特定の他の治療を伴うと、エネルギー源としてグルコースに依存している発病過程は妨害され、癌細胞、細菌、真菌、酵母菌、又は寄生虫の死滅に至るであろう。
前記キットの第1の成分はHLaである。この化合物は最初に投与されるが、任意選択で、肝臓によるグルコース放出を減少させるために患者に薬物を投与した後、及び/又は患者が絶食して肝臓のグリコーゲン量を減少させた後に投与されてもよい。乳酸塩成分であるNaLa(Na+La)は、乳酸塩が完全に酸化された後、重炭酸塩に代謝される。大量に注入された場合、結果として、重炭酸ナトリウムが蓄積し、望ましくない高ナトリウム血症及び望ましくない代謝性アルカローシスの両方を直ちに招く可能性がある。NaLaとは対照的ではあるが、HLa(pKa3.8)は、COへと完全に酸化される。しかし、HLaは、強酸性であり、生理的pHにおいて完全に解離する(H+La)であろう。必要とされるHLaの量は、濃縮された大きなプロトン負荷に等しいため、HLaは、急性溶血のような細胞の損傷を防ぐ方式で送達される。
HLaは、水若しくは0.9%生理食塩水などの希釈剤中、純粋なHLaとして、又はHLa:NaLaが少なくとも75:25、好ましくは少なくとも80:20、より好ましくは少なくとも90:10、最も好ましくは少なくとも95:5の比で、NaLaと混合して適切には投与される。注入されるHLa:NaLaの比を変動することによって、宿主の動脈pHを望ましい範囲であって、腫瘍の(アジュバント)治療のために最も効果的であると考えられることに応じてアシドーシス(例えば、pH7.30)からアルカローシス(例えば、pH7.55)まで変動し得る範囲に導くことが可能である。前記希釈剤は、水及び0.9%NaClから選択される。好ましくは、前記希釈剤は水である。
体液過剰を防ぐために、HLaは、濃縮された様式で投与されなければならない。好ましくは、HLa溶液の濃度は、1000mmol/L〜4400mmol/Lの範囲である。血液循環におけるHLa溶液の送達速度は、0〜10mmol/分の範囲であり、好ましくは4mmol/kg/時間、つまり平均重量75kgの成人患者において5mmol/分、すなわち300mmol/時間である。身体において得られる望ましい乳酸塩の循環レベルは、5〜20mmol/L、好ましくは6〜15mmol/L、より好ましくは8〜10mmol/Lである。この後者のレベルに達するには、15〜60分間の間の時間、通常は約30分間を要する場合がある。
望ましい高乳酸血症状態が達成されたら、身体のグルコース値を、インスリンボーラス投与と、それに続く、生理学的な低血糖のカウンター反対を阻止するための手段と組み合わせたインスリン注入とを用いて低下させる。好ましくは、短時間作用型インスリンが使用され、投与されるインスリンの量は、治療される患者の体重及びベースラインのグルコース値に基づく。適切には、負荷用量が最初に投与され、続いてより少ない維持用量が投与される。初回ボーラスとして投与されるインスリンの単位(U)数は、0.2〜4U/kgの範囲、好ましくは0.4〜1U/kgの範囲、最も好ましくは0.5U/kgであってもよい。インスリンは、100又は500U/mLなどの濃度で市販されており、薬学的に許容される希釈剤で希釈される。
正常なヒトの空腹時血糖値は、4.0〜6.5mmol/Lであるため、目標値1.5mmol/Lは、正常値の僅か4分の1〜3分の1である。この目標値1.5mmol/Lは、特にこの値を長時間維持した場合、十分な癌への損傷効果があると予想される。より低値又はより高値のグルコース(すなわち、0.5〜2.5mmol/L)が望ましい場合、この値は、より多いか、又はより少ないインスリン及びより少ないか、又はより多いグルコースの投与と共に、同じクランプ手法を用いて達成される。治療の開始から30〜120分後、通常は90分後に、グルコース値は、目標値1.5±0.1mmol/Lに達した。グルコースのこの低値は、一定時間維持される。この低血糖の期間は、0.5〜12時間の間、好ましくは2〜8時間の間、最も好ましくは4時間の期間であってもよく、これは、低血糖に影響を受けやすい大部分の癌細胞は、その時までに損傷されているか、又は死滅されているであろうと予想されるからである。最短の最適時間は、腫瘍の様々な種類及び/又はサイズの間で異なることがあり、LPH手順の間に、例えば、「試行錯誤」又は診断法を用いることのいずれかによって確定され得る。好ましい実施形態において、望ましいグルコース値は、「クランプ」技術を用いて維持される。クランプは、より安定したグルコース値を達成するために、グルコース及びインスリンの両方を同時に投与することを含む。体液過剰を防ぐために、グルコースは、濃縮溶液(40%〜50%)、好ましくは50%の溶液として投与されることが好ましい。グルコースは、最初に2〜20μmol/kg/分の速度、通常は12μmol/kg/分(すなわち、75kg成人において54mmol/時間又は10g/時間)の速度で投与され、その後、定期的な血糖測定値に基づいて調節される。好ましくは、グルコースの最小量を投与する。
低血糖の結果として生じる有害作用の疑いがある場合に、血糖値が急速に上昇する可能性があるため、グルコースの同時投与は、追加の安全性ももたらす。
前記キットのさらなる成分は、α−β遮断薬、すなわち、複合されたα及びβのアドレナリン遮断薬である。α−β遮断薬は、ラベタロール、カルベジロール、及びジレバロールなどの一連のα−β遮断薬から選択され得る。好ましい実施形態において、α−β複合遮断薬はラベタロールである。ラベタロールは、ベースライン心拍数の減少、好ましくは約10/分のベースライン心拍数の減少をもたらすような速度で静脈内投与される。この生理学的目標値を達成するために、ラベタロール注入速度は、0.05〜1.5mg/kg/時間で変動可能であり、通常は0.2mg/kg/時間であろう。ラベタロールを、0.9%NaCl又は5%グルコースなどの適当な希釈剤に溶解してもよい。
前記キットはグルカゴン阻害剤をさらに含む。グルカゴン阻害剤は、オクトレオチド、ランレオチド、若しくはパシレオチドなどのソマトスタチンアナログの群から選択され得るか、又はソマトスタチン自体であり得る。短い生物学的作用時間が望ましいため、グルカゴン阻害剤の好ましい実施形態は、静脈内投与されるオクトレオチド又はソマトスタチンであり、最も好ましくはオクトレオチドである。静脈内投与されるオクトレオチドの用量は、0.1〜1μg/kgボーラス、好ましくは0.2μg/kg〜0.6μg/kg、最も好ましくは0.4μg/kgである。次に、グルコース値を指標とすることで、オクトレオチド溶液の持続的静脈内送達速度は、0μg/kg/時間〜1μg/kg/時間、好ましくは0.05μg/kg/時間〜0.8μg/kg/時間、最も好ましくは0.05μg/kg/時間〜0.3μg/kg/時間の範囲である。前記オクトレオチドは、好ましくは50mLの0.9%NaClにオクトレオチド500μgを加えた溶液である。
追加の実施形態において、前記キットは、経口抗糖尿病化合物、好ましくはメトホルミン又はフェンホルミンなどのビグアナイド系の経口抗糖尿病化合物を含む。好ましい実施形態において、抗糖尿病化合物はメトホルミンである。抗糖尿病薬のメトホルミンは、糖新生の阻害を介して、肝臓におけるグルコース産生を阻害する。メトホルミンは、望ましい低血糖レベルを達成するために必要とされるインスリンの投与量を減少させることもある。投与されるメトホルミンの経腸用量は、500mg〜1500mgの範囲、好ましくは1000mgである。メトホルミンは、錠剤(複数可)として、好ましくは従来の非放出制御剤形で投与されるが、放出制御剤形が使用されることもある。メトホルミン投与のタイミングは、意図した低血糖状態が達成された望ましい時点の24時間〜1時間前、好ましくは12時間〜2時間前、最も好ましくは6時間〜4時間前である。メトホルミンの1回目の用量である500mg〜1500mgを、望ましい低血糖状態が達成されると予想される時点の6時間より前に投与することが可能な場合、2回目の同じ用量を、望ましい低血糖状態が達成されると予想される時点の2時間前以内に投与してもよい。
このため、一実施形態において、前記治療は、任意選択で、ヒト又は動物の肝臓からのグルコース排出を阻害すること、持続注入によってヒト又は動物に乳酸を投与すること、ヒト又は動物の重要臓器がエネルギー源として十分に大量の乳酸塩を消費する定常の高乳酸血症状態に達した際に、低血糖状態に達するまでグルコース値を下げるためにヒト又は動物にインスリンを投与すること、低血糖状態を一定時間維持すること、インスリン投与を終了すること、及び血糖の正常値に達するまでヒト又は動物にグルコースを投与すること、及び乳酸投与を終了することを含む。
一実施形態において、前記治療は、
a)任意の前処置である絶食をするステップと、
b)特に、乳酸の投与開始の1日前に、任意選択で、メトホルミンを投与するステップと、
c)続いて、ヒト又は動物の身体の乳酸塩濃度を、約5〜20mmol/L、好ましくは約8〜10mmol/Lに上昇させるために、乳酸又は乳酸と乳酸ナトリウムの組合せを投与するステップと、
d)続いて、血糖値を、約0.5〜2.5mmol/L、好ましくは約1.5mmol/Lに低下させるために、負荷用量のインスリンを投与し、それに伴い、低血糖状態を達成するために、グルコース値を0.5〜2.5mmol/L、好ましくは1.5mmol/Lで維持するために、インスリンを持続的に投与するステップと、
e)「クランプ」によって、低血糖状態を0.5〜12時間、好ましくは約4時間維持するステップと、
f)インスリン投与を止め、必要であれば、ヒト又は動物の身体の生理的グルコース値を回復させるためにグルコースを投与し、乳酸投与を止めるステップと
を含む。
適切には、オクトレオチド及び/又はラベタロールは、インスリンの投与前及び/又は投与中に投与される。
オクトレオチドは、ステップc)後に適切には投与される。ラベタロールは、ステップb)後に適切には投与される。
一実施形態において、オクトレオチド及び/又はラベタロールの投与は、ステップf)前に停止される。
乳酸は、好ましくはex vivo灌流回路を用いて投与される。
LPH状態は、一定時間、特に30分間〜12時間、好ましくは2時間〜8時間、最も好ましくは3時間〜5時間維持される。
続いて、身体の正常な血中グルコース濃度は、インスリン投与の停止、グルカゴン阻害の停止、及びα−βアドレナリン受容体阻害の停止に加えて、グルコース、好ましくは先に述べた通り、低血糖クランプ中の使用のための同じ濃縮グルコース溶液の投与によって回復される。この回復期における静注グルコース溶液の送達速度は、5〜40μmol/kg/分、好ましくは10〜20μmol/kg/分の範囲であり、正常血糖値の達成後は、0μmol/kg/分に速やかに漸減される。
治療方法が、前記キットの成分の送達前に絶食ステップを含む場合、ヒト又は動物は、6〜48時間、好ましくは12〜36時間、最も好ましくは24時間摂食しない。
成分の送達前に、ヒト又は動物に、任意選択で、麻酔をかけてもよい。
本発明は、以下に続く実施例において、さらに説明されるであろう。実施例は、いかなる場合においても、本発明を限定することを意図するものではない。本実施例では、以下の略記が使用されている:
[Glu] 循環グルコースmmol/L(mg/dLを算出するためには18を乗じる)
[Lac] 循環乳酸塩濃度mmol/L
HG−HL 低血糖+高乳酸血症の組合せ
HG(1.5)HL(8) [Glu]が1.5mmol/L(27mg/dL)及び[Lac]が8mmol/LのHG−HL状態
HLa 乳酸
etCO 呼気終末CO濃度
序論
顕著な高乳酸血症(すなわち、8〜10mmol/L)を誘発することは、低血糖の有害作用から身体を保護することがある。低血糖と高乳酸血症を組み合わせた状態(HG−HL)は、ヒトにおける複数の病状で観察することによって明確に示される通り、代謝的に可能である(Oldenbeuving他、Anaesth Intensive Care 2014;42:507−11)。動物及びヒトにおいて、典型的に肝不全に関わる症候群は、HG−HL状態によって特徴付けることができる。極端なHG(0.7mmol/L)−HL(25mmol/L)としてのHG−HL状態が、清明な意識を伴うことが認められているため、この特有な状態は、乳酸塩保護低血糖(LPH)と呼ばれている。ワールブルグ効果を示す腫瘍は、特異的に低いグルコース値の影響を受けやすいことがあり、一方で癌は、身体の正常な重要組織とは異なり、乳酸塩を使用することができない場合があるため、LPHは、単なる科学的好奇心よりもはるかに重要である可能性がある。4時間のHG−HLの誘発によって、癌の代謝に深刻で速やかな変化が生じ、腫瘍に対する不可逆的な損傷に繋がると予想される。
簡潔に述べると、低血糖は、薬理学的阻害である(肝臓の)カウンター反応下で、負荷用量のインスリンを静脈内投与することによって誘発された。乳酸ナトリウム(NaLa)は、実験において、短時間の高乳酸血症又は軽度の高乳酸血症を誘発するために主に使用されてきた。しかし、高用量のNaLa又は持続用量のNaLaは、重度の高ナトリウム血症及び代謝性アルカローシスを直ちに招く。したがって、本明細書において、持続的な高乳酸血症は、体外システムを介した大量の乳酸(HLa)を投与することによって達成された。
科学的知識及び利用可能な技術的手段の現在の状況で、制御された方法におけるHG−HLの達成と、続く正常血糖の回復は、大型動物モデルでのみ実施可能である。本実施例では、ブタモデルが使用される。
本試験では、30kgのブタに麻酔をかけ、濃縮HLa(pH1.6)溶液を投与し、8mmol/Lの[Lac]を達成した。麻酔開始後、オクトレオチドのボーラス投与、続いてオクトレオチド及びラベタロールの持続注入を行い、低血糖のカウンター反応を阻害した。次に、高乳酸血症を確立した後、インスリンのボーラス投与及びインスリンの持続注入を漸増し、1.3〜1.7mmol/L(25〜30mg/dL)の間の[Glu]を達成した。HG(1.5mmol/L)HL(8mmol/L)状態が達成されたら、この状態を4時間維持した。次に、正常血糖に回復させた。
低血糖中及び低血糖後のいずれにおいても、グルコース値の安定化を容易にするために、50%濃縮グルコース注入をインスリンと共に行った。このクランプの原則は、安定した過度の低血糖レベル、通常の低血糖レベル、又は軽度の低血糖レベルを達成するように設計された実験において、非常に一般的である。クランプでは一般的である通り、グルコース及びインスリンの注入速度は、最新の[Glu]に基づいて定期的に調節される。
[Glu]及び[Lac]に加えて、pH、血液ガス、カルシウム、及びリン酸塩などの重要な代謝産物を、動脈血サンプルで頻繁に測定した。
材料及び方法
本実施例は、8mmol/Lの[Lac]下のブタにおいて、約1.5mmol/Lの[Glu]を達成し、その状態を4時間持続させるものである。
その準備は、介入前日の17:00に開始した。この時間以降、ブタには餌を与えなかった。
介入日の朝に、メトホルミン500mgと組み合わせた少量の脂肪分の多い餌をブタに摂食させた。糖新生に対するメトホルミンの阻害作用は3時間以内に開始すると予想される。
麻酔の導入は、換気及び濃縮HLa投与のための体外回路の始動と共に開始された。メデトミジン0.03mg/kgのボーラス、チレタミン−ゾラゼパム4mg/kgのボーラス、及び1%プロポフォール2〜2.5mg/kgのボーラスを、静脈を通して送達した。挿管後、従量式換気を開始した。etCO2の目標値を35〜45mmHg、1回換気量の目標値を8〜10mL/kgとして、呼吸数を調節した。etCO、pCO、及びpHにおける必要に応じて、1回換気量を後に調節した。次に、ダブルルーメン透析カテーテルを、内頚静脈中に外科的に留置した。未分画ヘパリンボーラス5000IU(200IU/kg)を投与し、未分画ヘパリン(400IU/mL)と共にCVVHを1mL/時間で開始し、活性化凝固時間(ACT)が250〜300秒となるように漸増した。
高乳酸血症(HLが8mmol/L)を、40%HLaの漸増投与によって誘発し、静脈−静脈(VV)体外回路を介して50mL/時間で開始した。
続いてラベタロール(5mg/mL)を3mL/時間で静脈内送達し、心拍数の相対的減少が10/分となるように漸増することによって、カウンター反応の阻害を達成し、25μgオクトレオチド(10μg/mL)の静脈内ボーラス投与、次にオクトレオチドの持続的注入を相対的に調節して[Glu]を望ましい低血糖範囲に維持する。
[Lac]が8〜10mmol/Lとなったら、40%HLaの送達を、20〜50mL/時間の間に調節した。
最初の[Glu]に応じた10〜50Uのインスリンの負荷用量及び5mL/時間での50%グルコースの最初の投与を用いて、望ましい低血糖レベルの誘発を達成した。その後の[Glu]に応じて、インスリンの注入速度を0〜60U/時間の間で変動させた。必要であれば、インスリンの追加のボーラス用量を、前述のような同じ基準を用いて、最初の送達の少なくとも30分後に投与した。
[Glu]が1.3〜1.7及び[Lac]が8〜10mmol/Lにいずれも達したら、このHG(1.5)HL(8)状態を、クランプ技術を用いて4時間維持させた。オクトレオチドのT1/2が、インスリンのT1/2よりも長いため、またオクトレオチドによる低血糖のカウンター反応の持続的な抑制が、正常血糖回復期の間の50%グルコースによる補助期間を長期化させることがあるため、HG(1.5)HL(8)期のおよそ中間でオクトレオチド注入を停止した。
HG−HL期の間に、インスリン及び50%グルコースポンプのスライディングスケール調節を行った。HG−HL期の終わり頃に、インスリンポンプ及びラベタロールポンプを停止し、HLa注入を減少させ、予定した4時間のHG−HL期間の終了後に停止した。50%グルコースの注入速度を調節し、安定した正常血糖を達成するまで最終的に0へと漸減した。
HG−HL期終了の90分後に、外因性グルコース又は乳酸塩の補助なしで、正常血糖を達成した。
この実験全体を通して、動脈のpH及びナトリウム値は、純粋なNaLa注入後に観察されるであろう値とは対照的に、望ましい範囲内に維持されていた。さらに、低血糖のみが心臓の伝導/再分極の異常を誘発することができるため、血行動態不安定性、心電図の乱れ、又は調律異常は観察されなかった。

Claims (24)

  1. ヒト又は動物における解糖依存的な病態の治療における使用のためのキットであって、
    乳酸、インスリン及びグルコースを含み、任意選択で、グルカゴン阻害剤、α−βアドレナリン遮断薬及び抗糖尿病剤から選択される1種又は複数の成分を含む、キット。
  2. 前記治療が、低血糖及び高乳酸血症を誘発するため、治療されるヒト又は動物の循環内に、乳酸、インスリン及びグルコースを、血管、特に静脈を介して送達することを含む、請求項1に記載のキット。
  3. 前記グルコースが、濃縮グルコースであり、いわゆる「クランプ」を用いて安定した低減されたグルコース値を達成するために、前記グルコースがインスリンと共に前記ヒト又は動物に投与される、請求項2に記載のキット。
  4. 前記治療が、任意選択で、ヒト又は動物の肝臓からのグルコース排出を阻害すること、持続注入によってヒト又は動物に乳酸を投与すること、ヒト又は動物の重要臓器がエネルギー源として大量の乳酸塩を使用する定常状態に達した際に、低血糖状態に達するまでグルコース値を下げるためにヒト又は動物にインスリンを投与すること、低血糖状態を一定時間維持すること、インスリン投与を終了すること、及び血糖の正常値に達するまでヒト又は動物にグルコースを投与すること、及び乳酸投与を終了することを含む、請求項2又は3に記載のキット。
  5. 低血糖の誘発前及び/又は誘発中に、ヒト又は動物の肝臓又は腎臓によるグルコースの排出が、グルカゴン阻害剤の投与によって阻害される、請求項2〜4のいずれか一項に記載のキット。
  6. グルカゴン阻害剤が、ソマトスタチン、又は、オクトレオチド、ランレオチド若しくはパシレオチドなどのソマトスタチンアナログである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のキット。
  7. 低血糖の誘発前及び/又は誘発中に、ヒト又は動物の肝臓又は腎臓によるグルコースの排出が、α−βアドレナリン遮断薬の投与によって阻害される、請求項2〜6のいずれか一項に記載のキット。
  8. α−βアドレナリン遮断薬が、ラベタロール、カルベジロール及びジレバロールからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のキット。
  9. 前記治療が、抗糖尿病剤の前投与によって、ヒト又は動物の身体における糖新生を低下させることをさらに含む、請求項2〜8のいずれか一項に記載のキット。
  10. 抗糖尿病剤が、メトホルミン及びフェンホルミンからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のキット。
  11. 抗糖尿病剤が、乳酸の投与開始の1日前に投与される、請求項9又は10に記載のキット。
  12. 前記治療が、前記キットの成分の投与開始前に、絶食によってヒト又は動物の身体のグリコーゲン含有量を低下させることをさらに含む、請求項2〜11のいずれか一項に記載のキット。
  13. 前記キットが、乳酸、又はHLa:NaLaが少なくとも75:25、好ましくは少なくとも80:20、より好ましくは少なくとも90:10、最も好ましくは少なくとも95:5の比である乳酸と乳酸ナトリウムの組合せを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のキット。
  14. 前記治療が、
    a)任意の前処置である絶食をするステップと、
    b)特に、乳酸の投与開始の1日前に、任意選択で、メトホルミンを投与するステップと、
    c)続いて、ヒト又は動物の身体の乳酸塩濃度を、約5〜20mmol/L、好ましくは約8〜10mmol/Lに上昇させるために、乳酸又は乳酸と乳酸ナトリウムの組合せを投与するステップと、
    d)続いて、血糖値を、約0.5〜2.5mmol/L、好ましくは約1.5mmol/Lに低下させるために、負荷用量のインスリンを投与し、それに伴い、低血糖状態を達成するために、グルコース値を0.5〜2.5mmol/L、好ましくは1.5mmol/Lで維持するために、インスリンを持続的に投与するステップと、
    e)「クランプ」によって、低血糖状態を0.5〜12時間、好ましくは約4時間維持するステップと、
    f)インスリン投与を止め、ヒト又は動物の身体の生理的グルコース値を回復させるためにグルコースを投与し、乳酸投与を止めるステップと
    を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のキット。
  15. インスリンの投与前及び/又は投与中に、オクトレオチド及び/又はラベタロールが投与される、請求項14に記載のキット。
  16. オクトレオチドが、請求項14のステップc)後に投与される、請求項15に記載のキット。
  17. ラベタロールが、請求項14のステップb)後に投与される、請求項15に記載のキット。
  18. オクトレオチド及び/又はラベタロールの投与が、ステップf)前に停止される、請求項15に記載のキット。
  19. 乳酸が、ex vivo灌流回路を用いて投与される、請求項1〜17のいずれか一項に記載のキット。
  20. 解糖依存的な病態が、癌、細菌感染、真菌感染、酵母菌感染及び寄生虫感染からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のキット。
  21. 前記癌が、胆道、膀胱、骨、乳房、中枢神経系、子宮頚、結腸、食道、腎臓、喉頭、肝臓、肺、鼻咽腔、口腔咽頭、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、皮膚、軟組織、胃、精巣、甲状腺及び子宮の癌からなる群から選択される、請求項20に記載のキット。
  22. 前記癌が、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、黒色腫及び多発性骨髄腫からなる群から選択される、請求項20に記載のキット。
  23. 細菌感染、真菌感染又は酵母菌感染が、グラム陽性菌、特にブドウ球菌属種及び連鎖球菌属種、グラム陰性菌、特に大腸菌、エンテロバクター属種とプロテウス属種を含む腸内細菌科及びシュードモナス属種、並びに嫌気性菌(例えば、クロストリジウム属種、乳酸桿菌属種、バクテロイデス属種)、真菌(例えば、アスペルギルス属種)、並びに酵母菌(例えば、カンジダ属種)を原因とする疾患の群から選択される、請求項20に記載のキット。
  24. 寄生虫感染が、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、又は三日熱マラリア原虫を原因とするマラリア並びにブルーストリパノソーマ及びクルーズトリパノソーマを原因とするトリパノソーマ症からなる群から選択される、請求項20に記載のキット。
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