JP6641943B2 - モーター用圧電駆動装置およびその製造方法、モーター、ロボット、ならびにポンプ - Google Patents

モーター用圧電駆動装置およびその製造方法、モーター、ロボット、ならびにポンプ Download PDF

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Description

本発明は、モーター用圧電駆動装置およびその製造方法、モーター、ロボット、ならびにポンプに関する。
圧電素子により振動体を振動させて被駆動体を駆動する超音波モーターは、磁石やコイルが不要のため、様々な分野で利用されている。
例えば特許文献1には、圧電素子を、ALCVD法により形成された酸化アルミニウム層で覆うことが記載されている。また、特許文献2には、圧電素子を、有機系材料の保護層で覆うことが記載されている。
特開2013−91272号公報 特開2011−124254号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、酸化アルミニウム層の層間絶縁性が不十分であるため、例えば、圧電素子の下部電極と、圧電素子の上部電極に接続された配線層と、が酸化アルミニウム層を挟んで設けられている場合に、両者が短絡してしまうことがあった。この短絡を防止するために、酸化アルミニウム層の厚膜化も考えられるが、ALCVD法による成膜は、成膜速度が遅く、スループットやコストの観点で現実的ではない。
また、特許文献2に記載の技術では、有機系材料の保護層の水分バリア性が不十分であるため、圧電体層の側面において水分を介して下部電極と上部電極とが短絡してしまうことがあった。
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、圧電素子の電極間の短絡を抑制することができるモーター用圧電駆動装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、圧電素子の電極間の短絡を抑制することができるモーター用圧電駆動装置の製造方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記のモーター用圧電駆動装置を含むモーター、ロボット、またはポンプを提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るモーター用圧電駆動装置の一態様は、
第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極と、を有する圧電素子と、
前記第1電極または前記第2電極と電気的に接続された配線層と、
前記配線層と前記圧電素子との間に設けられた絶縁層と、
を含み、
前記絶縁層は、
前記圧電素子側に設けられた無機絶縁層と、
前記配線層側に設けられ、前記配線層と接している有機絶縁層と、
を有する。
このようなモーター用圧電駆動装置では、水分バリア性の高い無機絶縁層によって、圧電体層の側面に水分が付着することを抑制することができる。さらに、このようなモーター用圧電駆動装置では、有機絶縁層によって、例えば第1電極と第1配線層との層間絶縁性を高くすることできる。したがって、このようなモーター用圧電駆動装置では、圧電素子の第1電極と第2電極との間の短絡を抑制することができる。
なお、本発明に係る記載では、「電気的に接続」という文言を、例えば、「特定の部材(以下「A部材」という)に「電気的に接続」された他の特定の部材(以下「B部材」という)」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、A部材とB部材とが、直接接して電気的に接続されているような場合と、A部材とB部材とが、他の部材を介して電気的に接続されているような場合とが含まれるものとして、「電気的に接続」という文言を用いている。
[適用例2]
適用例1において、
前記有機絶縁層は、感光性を有してもよい。
このようなモーター用圧電駆動装置では、有機絶縁層は、レジストやエッチングを用いなくても、露光、現像、およびベークによってパターニングすることができる。そのため、このようなモーター用圧電駆動装置では、低コスト化を図ることができる。
[適用例3]
適用例1または2において、
前記有機絶縁層の材質は、エポキシ樹脂であってもよい。
このようなモーター用圧電駆動装置では、有機絶縁層の材質がアクリル樹脂である場合に比べて、第1配線層のエレクトロマイグレーションを抑制することができる。
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか1例において、
前記無機絶縁層の材質は、酸化アルミニウムであってもよい。
このようなモーター用圧電駆動装置では、無機絶縁層によって、圧電体層の側面に水分が付着することを抑制することができる。
[適用例5]
本発明に係る圧電駆動装置の製造方法の一態様は、
第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極と、を有する圧電素子を形成する工程と、
前記圧電素子を覆うように、無機絶縁層を成膜する工程と、
前記無機絶縁層上に有機絶縁層を成膜する工程と、
前記無機絶縁層および有機絶縁層にコンタクトホールを形成する工程と、
前記有機絶縁層上であって前記有機絶縁層に接し、前記コンタクトホールを介して前記
第1電極または前記第2電極と電気的に接続する配線層を形成する工程と、
を含む。
このようなモーター用圧電駆動装置の製造方法では、圧電素子の第1電極と第2電極と間の短絡を抑制することができるモーター用圧電駆動装置を製造することができる。
[適用例6]
適用例5において、
前記コンタクトホールを形成する工程は、
前記有機絶縁層に第1貫通孔を形成する工程と、
前記第1貫通孔が形成された前記有機絶縁層をマスクとして前記無機絶縁層をエッチングし、前記無機絶縁層に前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を形成する工程と、
を有する。
このようなモーター用圧電駆動装置の製造方法では、レジストをマスクとすることなく、無機絶縁層に第2貫通孔を形成することができ、低コスト化を図ることができる。
[適用例7]
適用例5または6において、
前記無機絶縁層を形成する工程では、
前記無機絶縁層をALCVD法によって成膜してもよい。
このようなモーター用圧電駆動装置の製造方法では、例えばスパッタ法やCVD法で無機絶縁層を成膜する場合に比べて、無機絶縁層の密度を高くすることができる。
[適用例8]
本発明に係るモーターの一態様は、
適用例1ないし4のいずれか1例に記載のモーター用圧電駆動装置と、
前記モーター用圧電駆動装置によって回転されるローターと、
を含む。
このようなモーターでは、本発明に係るモーター用圧電駆動装置を含むことができる。
[適用例9]
本発明に係るロボットの一態様は、
複数のリンク部と、
複数の前記リンク部を接続する関節部と、
複数の前記リンク部を前記関節部で回動させる適用例1ないし4のいずれか1例に記載のモーター用圧電駆動装置と、
を含む。
このようなロボットでは、本発明に係るモーター用圧電駆動装置を含むことができる。
[適用例10]
本発明に係るポンプの一態様は、
適用例1ないし4のいずれか1例に記載のモーター用圧電駆動装置と、
液体を輸送するチューブと、
前記モーター用圧電駆動装置の駆動によって前記チューブを閉鎖する複数のフィンガーと、
を含む。
このようなポンプでは、本発明に係るモーター用圧電駆動装置を含むことができる。
本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置を模式的に示す平面図。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置を説明するための等価回路を示す図。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置の動作を説明するための図。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置の製造方法を説明するためのフローチャート。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置の製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置の製造工程を模式的に示す断面図。 本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置の製造工程を模式的に示す断面図。 実験例に用いたサンプルを模式的に示す断面図。 実験例に用いたサンプルの絶縁層の材質および厚さを示す表。 印加電圧とリーク電流の密度との関係を示すグラフ。 実験例に用いたサンプルの絶縁層の材質および厚さを示す表。 パルス印加時間と破壊発生率との関係を示す表。 パルス印加時間と破壊発生率との関係を示すグラフ。 パルス印加時間と破壊発生率との関係を示すグラフ。 パルス印加時間と破壊発生率との関係を示すグラフ。 本実施形態に係るロボットを説明するための図。 本実施形態に係るロボットの手首部分を説明するための図。 本実施形態に係るポンプを説明するための図。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. モーター用圧電駆動装置
まず、本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置100を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置100を模式的に示す図1のII−II線断面図である。
モーター用圧電駆動装置100は、図1および図2に示すように、基板10と、接触部20と、圧電素子30と、第1絶縁層40と、第2絶縁層42と、第1配線層50および第2配線層52を構成する第1導電層54と、第2導電層56と、を含む。なお、便宜上、図1では、基板10、接触部20、および圧電素子30以外の部材の図示を省略している。
基板10は、例えば、シリコン基板10aと、シリコン基板10a上に設けられた下地層10bと、から構成されている。下地層10bは、絶縁層である。下地層10bは、例
えば、シリコン基板10a上に設けられた酸化シリコン層と、酸化シリコン層上に設けられた酸化ジルコニウム層と、の積層体から構成されている。
基板10は、図1に示すように、振動体部12と、支持部14と、第1接続部16と、第2接続部18と、を有している。振動体部12の平面形状(基板10の厚さ方向からみた形状)は、略長方形である。振動体部12上には、圧電素子30が設けられ、振動体部12は、圧電素子30の変形により振動することができる。支持部14は、接続部16,18を介して、振動体部12を支持している。図示の例では、接続部16,18は、振動体部12の長手方向における中央部から、該長手方向と直交する方向に延出し、支持部14に接続されている。
接触部20は、振動体部12に設けられている。図示の例では、振動体部12に凹部12aが設けられ、凹部12aに接触部20が嵌め込まれて接合(例えば接着)されている。接触部20は、被駆動部材と接触して、振動体部12の動きを被駆動部材に伝える部材である。接触部20の材質は、例えば、セラミックス(具体的にはアルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、窒化ケイ素(SiN)など)である。
圧電素子30は、基板10上に設けられている。具体的には、圧電素子30は、振動体部12上に設けられている。圧電素子30は、第1電極32と、圧電体層34と、第2電極36と、を有している。
第1電極32は、振動体部12上に設けられている。図示の例では、第1電極32の平面形状は、長方形である。第1電極32は、振動体部12上に設けられたイリジウム層と、イリジウム層上に設けられた白金層と、によって構成されていてもよい。イリジウム層の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下である。白金層の厚さは、例えば、50nm以上300nm以下である。なお、第1電極32は、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Cuなどからなる金属層、またはこれらの2種以上を混合または積層したものであってもよい。第1電極32は、圧電体層34に電圧を印加するための一方の電極である。
圧電体層34は、第1電極32上に設けられている。図示の例では、圧電体層34の平面形状は、長方形である。圧電体層34の厚さは、例えば、50nm以上20μm以下であり、好ましくは、1μm以上7μm以下である。このように、圧電素子30は、薄膜圧電素子である。圧電体層34の厚さが50nmより小さいと、モーター用圧電駆動装置100の出力が小さくなる場合がある。具体的には、出力を上げようとして圧電体層34への印加電圧を高くすると、圧電体層34が絶縁破壊を起こす場合がある。圧電体層34の厚さが20μmより大きいと、圧電体層34にクラックが生じる場合があり、さらに駆動電圧が高くなる場合がある。
圧電体層34としては、ペロブスカイト型酸化物の圧電材料を用いる。具体的には、圧電体層34の材質は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O:PZTN)である。圧電体層34は、電極32,36によって電圧が印加されることにより、変形(伸縮)することができる。
第2電極36は、圧電体層34上に設けられている。図示の例では、第2電極36の平面形状は、長方形である。第2電極36は、圧電体層34上に設けられた密着層と、密着層上に設けられた導電層と、によって構成されていてもよい。密着層の厚さは、例えば、10nm以上100nm以下である。密着層は、例えば、TiW層、Ti層、Cr層、NiCr層、Ni層や、これらの積層体である。導電層の厚さは、例えば、1μm以上10
μm以下である。導電層は、例えば、Cu層、Au層、Al層やこれらの積層体である。第2電極36は、圧電体層34に電圧を印加するための他方の電極である。
圧電素子30は、図1に示すように、複数設けられている。図示の例では、圧電素子30は、5つ設けられている(圧電素子30a,30b,30c,30d,30e)。平面視において(基板10の厚さ方向からみて)、例えば、圧電素子30a〜30dの面積は同じであり、圧電素子30eは、圧電素子30a〜30dよりも大きな面積を有している。圧電素子30eは、振動体部12の短手方向の中央部において、振動体部12の長手方向に沿って設けられている。圧電素子30a,30b,30c,30dは、振動体部12の四隅に設けられている。図示の例では、圧電素子30a〜30eにおいて、第1電極32は、1つの連続的な導電層として設けられている。
第1絶縁層40は、図2に示すように、圧電素子30を覆うように設けられている。第1絶縁層40は、第1配線層50と圧電素子30との間に設けられている。第1絶縁層40は、無機絶縁層40aと、有機絶縁層40bと、を有している。
無機絶縁層40aは、圧電素子30側に設けられている。図示の例では、無機絶縁層40aは、第1電極32の上面、圧電体層34の側面、ならびに第2電極36の上面および側面に設けられている。
無機絶縁層40aの厚さは、例えば、30nm以上200nm以下である。無機絶縁層40aの厚さが30nmより小さい場合は、無機絶縁層40aの水分バリア性が不十分となる場合がある。無機絶縁層40aの厚さが200nmより大きい場合は、無機絶縁層40aによって振動体部12の振動が阻害される場合がある。
無機絶縁層40aの材質は、例えば、酸化アルミニウム(AlO)である。無機絶縁層40aの材質が酸化アルミニウムの場合、無機絶縁層40aの厚さは、例えば、90nmである。無機絶縁層40aの材質が酸化アルミニウムの場合、無機絶縁層の密度は、例えば、2g/cm以上4g/cm以下である。具体的には、無機絶縁層40aを、ALCVD(Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法で形成した場合、密度は3.2g/cmであり、CVD(Chemical
Vapor Deposition)法で成膜した場合、密度は2.8g/cmである。無機絶縁層の密度は、例えば、X線解析装置ATX−G(リガク社製)を用いてX線反射率測定法により求めることができる。
なお、無機絶縁層40aの材質は、酸化タンタル(TaO)であってもよい。無機絶縁層40aの材質が酸化タンタルの場合、無機絶縁層40aの厚さは、例えば、50nmである。無機絶縁層40aの材質が酸化タンタルの場合、無機絶縁層の密度は、例えば、6g/cm以上9g/cm以下である。具体的には、無機絶縁層40aを、ALCVD法で形成した場合、密度は8.2g/cmであり、CVD法で成膜した場合、密度は7g/cmである。
また、無機絶縁層40aの材質は、酸化ハフニウム(HfO)であってもよい。無機絶縁層40aの材質が酸化ハフニウムの場合、無機絶縁層40aの厚さは、例えば、50nmである。無機絶縁層40aの材質が酸化タンタルの場合、無機絶縁層の密度は、例えば、8g/cm以上10g/cm以下である。具体的には、無機絶縁層40aを、ALCVD法で形成した場合、密度は9.2g/cmである。
有機絶縁層40bは、第1配線層50側に設けられ、第1配線層50と接している。図示の例では、有機絶縁層40bは、第2配線層52とも接している。有機絶縁層40bは
、無機絶縁層40a上に設けられている。
有機絶縁層40bの厚さは、例えば、1μm以上10μm以下である。有機絶縁層40bの厚さが1μmより小さいと、第1電極32と第1配線層50との間の距離(図2に示す距離D)が小さくなり、第1電極32と第1配線層50とが短絡する場合がある。有機絶縁層40bの厚さが10μmより大きいと、モーター用圧電駆動装置100の厚さが大きくなり小型化が図れない場合がある。
有機絶縁層40bは、感光性を有する。「感光性」とは、物質が光によって化学反応を引き起こす性質のことである。具体的には、有機絶縁層40bは、レジストやエッチングを用いなくても、露光、現像、およびベーク(熱処理)によってパターニングすることができる。なお、有機絶縁層40bは、感光性を有していなくてもよい。
有機絶縁層40bの材質は、例えば、エポキシ樹脂である。有機絶縁層40bの材質がエポキシ樹脂の場合、有機絶縁層40bは、ネガ型の感光性(露光されると現像液に対して溶解性が低下し、現像後に露光部分が残る性質)を有する。有機絶縁層40bの材質がエポキシ樹脂の場合、有機絶縁層40bの厚さは、例えば、2.5μmである。
なお、有機絶縁層40bの材質は、例えば、アクリル樹脂であってもよい。有機絶縁層40bの材質がアクリル樹脂の場合、有機絶縁層40bは、ポジ型の感光性(露光されると現像液に対して溶解性が増大し、現像後に露光部分が除去される性質)を有する。有機絶縁層40bの材質がアクリル樹脂の場合、有機絶縁層40bの厚さは、例えば、3μmである。
第1導電層54は、第1絶縁層40上に(有機絶縁層40b上に)設けられている。第1導電層54は、例えば、チタンタングステン層と、チタンタングステン層上に設けられた銅層と、から構成されている。第1導電層54は、さらに、チタンタングステン層と第1絶縁層40との間に設けられた導電性の密着層を有していてもよい。該密着層のような導電性の層は、第1導電層54とみなすことができる。
第1導電層54は、第1配線層50および第2配線層52を構成している。第1配線層50は、第2電極36の上方に設けられている。図示の例では、第1配線層50は、さらに、第1電極32の上方にも設けられている。第1配線層50は、第1コンタクト部60を介して、第2電極36と電気的に接続されている。第2配線層52は、第1電極32の上方に設けられている。第2配線層52は、第1コンタクト部60を介して、第1電極32と電気的に接続されている。第1コンタクト部60は、第1絶縁層40に形成された第1コンタクトホール41に設けられている。第1コンタクト部60は、第1導電層54と一体的に設けられている。
ここで、図3は、第2配線層52と第1電極32とを電気的に接続する第1コンタクト部60の位置を説明するための平面図である。第2配線層52と第1電極32とを電気的に接続する第1コンタクト部60は、図3に示すように、平面視において、第2電極36の周囲に複数設けられている。このように第2配線層52と第1電極32とを電気的に接続する第1コンタクト部60を、第2電極36の周囲に複数設けることにより、第2配線層52と第1電極32とを電気的に接続する第1コンタクト部60全体の抵抗を低くすることができる。
例えば液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子の場合では、電極の抵抗はそれほど問題にならず、上記のような構成を有する必要がない。さらに、液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子の場合では、平面視において、第1電極の面積を圧電体層の面積よりも小さくして
もよい。さらに、液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子の場合では、層間絶縁層である第1絶縁層を設ける必要がない。
第2絶縁層42は、図2に示すように、第1絶縁層40上および第1導電層54上に設けられている。第2絶縁層42の材質は、例えば、有機絶縁層40bと同じである。第2絶縁層42の厚さは、例えば、有機絶縁層40bと同じである。
第2導電層56は、第2絶縁層42上に設けられている。第2導電層56の材質は、例えば、第1導電層54の材質と同じである。第2導電層56は、第2コンタクト部62を介して、第1導電層54と電気的に接続されている。第2コンタクト部62は、第2絶縁層42に形成された第2コンタクトホール43に設けられている。第2コンタクト部62は、第2導電層56と一体的に設けられている。
なお、図示はしないが、第2絶縁層42上および第2導電層56上に、第3絶縁層が設けられていてもよい。第3絶縁層の材質は、第2絶縁層と同じであってもよい。第3絶縁層の厚さは、第2絶縁層の厚さよりも大きくてもよい。
図4は、モーター用圧電駆動装置100を説明するための等価回路を示す図である。圧電素子30は、3つのグループに分けられる。第1グループは、2つの圧電素子30a,30dを有する。第2グループは、2つの圧電素子30b,30cを有する。第3グループは、1つの圧電素子30eのみを有する。図4に示すように、第1グループの圧電素子30a,30dは、互いに並列に接続され、駆動回路110に接続されている。第2グループの圧電素子30b,30cは、互いに並列に接続され、駆動回路110に接続されている。第3グループの圧電素子30eは、単独で駆動回路110に接続されている。
駆動回路110は、5つの圧電素子30a,30b,30c,30d,30eのうちの所定の圧電素子、例えば、圧電素子30a,30d,30eの第1電極32と第2電極36との間に周期的に変化する交流電圧または脈流電圧を印加する。これにより、モーター用圧電駆動装置100は、振動体部12を超音波振動させて、接触部20に接触するローター(被駆動部材)を所定の回転方向に回転させることができる。ここで、「脈流電圧」とは、交流電圧にDCオフセットを付加した電圧を意味し、脈流電圧の電圧(電界)の向きは、一方の電極から他方の電極に向かう一方向である。
なお、電界の向きは、第1電極32から第2電極36に向かうよりも第2電極36から第1電極32に向かう方が好ましい。また、圧電素子30b,30c,30eの電極32,36間に交流電圧または脈流電圧を印加することにより、接触部20に接触するローターを逆方向に回転させることができる。
図5は、モーター用圧電駆動装置100の振動体部12の動作を説明するための図である。モーター用圧電駆動装置100の接触部20は、図5に示すように、被駆動部材としてのローター4の外周に接触している。駆動回路110は、圧電素子30a,30dの電極32,36間に交流電圧または脈流電圧を印加する。これにより、圧電素子30a,30dは、矢印xの方向に伸縮する。これに応じて、振動体部12は、振動体部12の平面内で屈曲振動(例えば、圧電素子30に電圧が印加されていない状態での振動体部12の短手方向に沿って屈曲振動)して蛇行形状(S字形状)に変形する。さらに、駆動回路110は、圧電素子30eの電極32,36間に交流電圧または脈流電圧を印加する。これにより、圧電素子30eは、矢印yの方向に伸縮する。これにより、振動体部12は、振動体部12の平面内で縦振動(例えば、圧電素子30に電圧が印加されていない状態での振動体部12の長手方向に沿って縦振動)する。上記のような振動体部12の屈曲振動および縦振動によって、接触部20は、矢印zのように楕円運動する。その結果、ローター
4は、その中心4aの周りに所定の方向R(図示の例では時計回り方向)に回転する。
なお、駆動回路110が、圧電素子30b,30c,30eの電極32,36間に交流電圧または脈流電圧を印加する場合には、ローター4は、方向Rとは反対方向(反時計回り方向)に回転する。
また、振動体部12の屈曲振動の共振周波数と縦振動の共振周波数とは、同じであることが好ましい。これにより、モーター用圧電駆動装置100は、効率よくローター4を回転させることができる。
図5に示すように、本実施形態に係るモーター120は、本発明に係るモーター用圧電駆動装置(図示の例ではモーター用圧電駆動装置100)と、モーター用圧電駆動装置100によって回転されるローター4と、を含む。
モーター用圧電駆動装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
モーター用圧電駆動装置100では、第1絶縁層40は、圧電素子30側に設けられた無機絶縁層40aと、第1配線層50側に設けられ、第1配線層50と接している有機絶縁層40bと、を有する。そのため、モーター用圧電駆動装置100では、水分バリア性の高い(水分透過性が低い)無機絶縁層40aによって、圧電体層34の側面に水分が付着することを抑制することができる。これにより、モーター用圧電駆動装置100では、圧電体層34の側面において水分を介して第1電極32と第2電極36とが短絡することを抑制することができる。
さらに、モーター用圧電駆動装置100では、有機絶縁層40bによって、第1電極32と第1配線層50との層間絶縁性を高くすることできる。すなわち、有機絶縁層40bを設けることにより、有機絶縁層40bを設けない場合に比べて、第1電極32と第1配線層50との間の距離Dを大きくすることができ、第1電極32と第1配線層50とが短絡することを抑制することができる。
したがって、モーター用圧電駆動装置100では、圧電素子30の電極32,36間の短絡を抑制することができる。その結果、モーター用圧電駆動装置100では、圧電素子30の耐久性を向上させることができる。
なお、第1電極32と第1配線層50との間の短絡を防止するために、無機絶縁層40aの厚膜化も考えられるが、ALCVD法による成膜は、成膜速度が遅く、コストが高い。一方、有機絶縁層40bは、例えばスピンコート法により成膜されることができ、成膜速度が速く、低コスト化を図ることができる。
さらに、モーター用圧電駆動装置100では、第1配線層50は、有機絶縁層40bと接しているため、第1配線層50の第1絶縁層40に対する密着性を向上させることができる。同様に、モーター用圧電駆動装置100では、第2配線層52の第1絶縁層40に対する密着性を向上させることができる。例えば、第1配線層50が無機絶縁層と接していると、第1配線層50が剥がれてしまう場合がある。ここで、第1配線層がチタンタングステン層および銅層からなる場合、第1配線層には引っ張り応力が生じる。一方、無機絶縁層の材質が酸化アルミニウムである場合、無機絶縁層には圧縮応力が生じる。したがって、第1配線層が無機絶縁層と接する場合、第1配線層と無機絶縁層との界面では反対方向の応力が生じ、第1配線層は、無機絶縁層から剥がれ易くなる。モーター用圧電駆動装置100では、第1配線層50は、有機絶縁層40bと接しているため、第1配線層50に生じる応力を、無機絶縁層に比べて柔らかい有機絶縁層40bで緩和することでき、
第1配線層50の剥がれを抑制することができる。
なお、第1配線層や無機絶縁層に生じる応力は、例えば、各層を直接シリコンウェハーに成膜させたたときのシリコンウェハーの反り量から求めることができる。
モーター用圧電駆動装置100では、有機絶縁層40bは、感光性を有する。そのため、有機絶縁層40bは、レジストやエッチングを用いなくても、露光、現像、およびベークによってパターニングすることができる。そのため、モーター用圧電駆動装置100では、低コスト化を図ることができる。
モーター用圧電駆動装置100では、有機絶縁層40bの材質は、エポキシ樹脂である。そのため、モーター用圧電駆動装置100では、有機絶縁層40bの材質がアクリル樹脂である場合に比べて、第1導電層54のイオンマイグレーションを抑制することができる。例えば、有機絶縁層40bの材質がアクリル樹脂である場合は、水と反応し、銅イオンを溶出させる塩素等の物質が含まれているため、イオンマイグレーションが起こり易い。有機絶縁層40bの材質がエポキシ樹脂である場合は、このような問題を回避することができる。さらに、モーター用圧電駆動装置100では、有機絶縁層40bの材質がアクリル樹脂である場合に比べて、有機絶縁層40bと第1導電層54との密着性を向上させることができる。
モーター用圧電駆動装置100では、無機絶縁層40aの材質は、酸化アルミニウムである。そのため、モーター用圧電駆動装置100では、無機絶縁層40aによって、圧電体層34の側面に水分が付着することを抑制することができる。
モーター用圧電駆動装置100では、無機絶縁層40aの材質は、酸化タンタルであってもよい。酸化タンタルの相対密度は、酸化アルミニウムの相対密度よりも高いので、無機絶縁層40aの水分バリア性を、より高めることができる。
モーター用圧電駆動装置100では、無機絶縁層40aの材質は、酸化ハフニウムであってもよい。酸化ハフニウムの相対密度は、酸化アルミニウムや酸化タンタルの相対密度よりも高いので、無機絶縁層40aの水分バリア性を、よりいっそう高めることができる。
なお、上記では、第1配線層50が第2電極36と電気的に接続され、第2配線層52が第1電極32と電気的に接続されている例について説明したが、本発明に係るモーター用圧電駆動装置は、第1配線層50が第1電極32と電気的に接続され、第2配線層52が第2電極36と電気的に接続されていてもよい。
2. モーター用圧電駆動装置の製造方法
次に、本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置100の製造方法を説明するためのフローチャートである。図7〜図9は、本実施形態に係るモーター用圧電駆動装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、基板10の振動体部12上に第1電極32を形成する(S1)。第1電極32は、例えば、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法などによる成膜、およびパターニング(フォトリソグラフィーおよびエッチングによるパターニング)により形成される。なお、基板10は、例えば、シリコン基板10a上に、スパッタ法やCVD法によって下地層10bを形成することによって得られる。
次に、第1電極32上に圧電体層34を形成する(S2)。圧電体層34、例えば、液相法による前駆体層の形成と該前駆体層の結晶化とを繰り返した後、パターニングすることによって形成される。液相法とは、薄膜(圧電体層)の構成材料を含む原料液を用いて薄膜材料を成膜する方法であり、具体的には、ゾルゲル法やMOD(Metal Organic Deposition)法などである。結晶化は、酸素雰囲気において、例えば、700℃〜800℃の熱処理により行われる。
次に、圧電体層34に第2電極36を形成する(S3)。第2電極36は、例えば、第1電極32と同じ方法で形成される。なお、図示はしないが、第2電極36のパターニングと圧電体層34のパターニングとは、同一の工程として行われてもよい。
以上の工程により、基板10の振動体部12上に、圧電素子30を形成することができる。
図8に示すように、圧電素子30を覆うように、無機絶縁層40aを成膜する(S4)。無機絶縁層40aは、例えば、ALCVD法によって成膜される。なお、無機絶縁層40aは、CVD法によって成膜されてもよい。
次に、無機絶縁層40a上に有機絶縁層40bを成膜する(S5)。有機絶縁層40bは、例えば、スピンコート法によって成膜される。
次に、有機絶縁層40bをパターニングして、第1貫通孔41aを形成する(S6)。有機絶縁層40bが感光性を有する場合、パターニングは、レジストやエッチングを用いずにフォトリソグラフィーによって行われる。
図9に示すように、無機絶縁層40aに、第1貫通孔41aと連通する第2貫通孔41bを形成する(S7)。第2貫通孔41bは、第1貫通孔41aが形成された有機絶縁層40bをマスクとして、無機絶縁層40aをエッチングすることによって形成される。第1貫通孔41aおよび第2貫通孔41bは、第1コンタクトホール41となり、第1貫通孔41aおよび第2貫通孔41bに第1コンタクトホール41を形成することができる。
以上の工程により、第1コンタクトホール41が形成された第1絶縁層40を形成することができる。
図2に示すように、有機絶縁層40b上であって有機絶縁層40bと接するように、第1配線層50および第2配線層52を構成する第1導電層54を形成する(S8)。第1導電層54は、例えば、スパッタ法による成膜およびパターニングにより形成される。本工程において、第1導電層54と一体的に第1コンタクトホール41に第1コンタクト部60を形成することができる。
次に、第1導電層54上に第2絶縁層42を成膜する(S9)。第2絶縁層42は、例えば、有機絶縁層40bと同じ方法で成膜される。
次に、第2絶縁層42に第2コンタクトホール43を形成する(S10)。第2コンタクトホール43は、例えば、第1貫通孔41aと同じ方法で形成される。
次に、第2絶縁層42上に第2導電層56を形成する(S11)。第2導電層56は、例えば、第1導電層54と同じ方法で形成される。本工程において、第2導電層56と一体的に、第2コンタクトホール43に第2コンタクト部62を形成することができる。
以上の工程により、モーター用圧電駆動装置100を製造することができる。
モーター用圧電駆動装置100の製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
モーター用圧電駆動装置100の製造方法では、上記のように、圧電素子30の電極32,36間の短絡を抑制することができるモーター用圧電駆動装置100を製造することができる。
モーター用圧電駆動装置100の製造方法では、第1コンタクトホール41を形成する工程は、有機絶縁層40bに第1貫通孔41aを形成する工程と、第1貫通孔41aが形成された有機絶縁層40bをマスクとして無機絶縁層40aをエッチングし、無機絶縁層40aに第1貫通孔41aと連通する第2貫通孔41bを形成する工程と、を有する。そのため、モーター用圧電駆動装置100の製造方法では、レジストをマスクとすることなく、無機絶縁層40aに第2貫通孔41bを形成することができ、低コスト化を図ることができる。
モーター用圧電駆動装置100の製造方法では、無機絶縁層40aをALCVD法によって成膜する。そのため、モーター用圧電駆動装置100の製造方法では、例えばスパッタ法やCVD法で無機絶縁層40aを成膜する場合に比べて、無機絶縁層40aの密度を高くすることができる。これにより、モーター用圧電駆動装置100の製造方法では、水分バリア性の高い無機絶縁層40aを成膜することができる。
3. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
3.1. 絶縁耐久試験
3.1.1. サンプル
本実験では、図10に示すような、サンプルを用いて実験を行った。図10に示すように、シリコン基板111上に第1電極132を形成し、第1電極132上に絶縁層140を成膜し、絶縁層140にコンタクトホール141を形成し、絶縁層140上に第2電極136を形成した。
絶縁層140を図11に示すように5水準に振った。サンプルAでは、絶縁層140として、アクリル樹脂(商品名:PN−0324D、東京応化工業社製)を3μm成膜した。サンプルBでは、絶縁層140として、エポキシ樹脂(商品名:TMMR−S2000LV、東京応化工業社製)を2.5μm成膜した。サンプルCでは、絶縁層140として、酸化アルミニウムを90μm成膜した。サンプルDでは、絶縁層140として、酸化アルミニウムを90μm成膜した後、アクリル樹脂を3μm成膜した。サンプルEでは、絶縁層140として、酸化アルミニウムを90μm成膜した後、エポキシ樹脂を2.5μm成膜した。
3.1.2. 試験結果
上記のようなサンプルA〜Eにおいて、第1電極132および第2電極136にプローブを接触させ、第1電極132と第2電極136との間に電圧を印加して、リーク電流を測定した。図12は、印加電圧とリーク電流の密度との関係を示すグラフである。
図12に示すように、サンプルCでは、80V未満で絶縁破壊が起こった。したがって、絶縁層140として酸化アルミニウムを90μm成膜しただけでは、絶縁層140の層間絶縁性が低いことがわかった。サンプルA,B,D,Eでは、100V印加しても絶縁
破壊は確認させなかった。
3.2. パルス耐久試験
3.2.1. サンプル
本実験では、上述した図2に示すような、サンプルを用いて実験を行った。ただし、サンプルF〜Jは、第2絶縁層42、第2導電層56、および第2コンタクト部62は、形成されていない(1層構造)。サンプルK,Lは、第2絶縁層42、第2導電層56、および第2コンタクト部62が形成されている(2層構造)。
図13に示すように、サンプルF〜Jの第1絶縁層は、それぞれサンプルA〜Eの絶縁層140と同じ材質および厚さとした。サンプルKの第1絶縁層としては、酸化アルミニウムを90μm成膜した後、アクリル樹脂を3μm成膜した。サンプルKの第2絶縁層としては、アクリル樹脂を3μm成膜した。サンプルLの第1絶縁層としては、酸化アルミニウムを90μm成膜した後、エポキシ樹脂を2.5m成膜した。サンプルLの第2絶縁層としては、エポキシ樹脂を2.5μm成膜した。
3.2.2. 試験結果
上記のようなサンプルF〜Lにおいて、室温にて、正弦波20kHz、振幅100V(0〜100V)の波形を、各々40個(N=40)のサンプルに印加した。具体的には、上記の波形を第1電極をグラントとして第2電極に印加した。そして、印加時間に対する破壊発生率の関係について調査した。図14は、パルス印加時間と破壊発生率との関係を示す表である。図15は、サンプルF〜Jにおいて、パルス印加時間と破壊発生率との関係を示すグラフである。図16は、図15の一部を拡大したグラフであって、サンプルF,Gのみを示している。図17は、サンプルK,Lにおいて、パルス印加時間と破壊発生率との関係を示すグラフである。なお、「破壊」とは、第1電極と第2電極とが短絡した状態をいう。
図14〜図17に示すように、サンプルF,Gは、パルス印加時間5時間未満で、破壊発生率が50%を超えた。これは、水分がアクリル樹脂またはエポキシ樹脂を透過して圧電体層の側面に付着し、第1電極と第2電極とが短絡したためである。したがって、第1絶縁層として有機絶縁層を成膜しただけでは、第1絶縁層の水分バリア性が低いことがわかった。サンプルHは、「3.1. 絶縁耐久試験」と同様に、100Vでは絶縁破壊が生じ全滅した。サンプルI〜Lでは、パルス印加時間が300時間を越えても破壊は確認されなかった。
4. モーター用圧電駆動装置を用いた装置
本発明に係るモーター用圧電駆動装置は、共振を利用することで被駆動体に対して大きな力を与えることができるものであり、各種の装置に適用可能である。本発明に係るモーター用圧電駆動装置は、例えば、ロボット(電子部品搬送装置(ICハンドラー)も含む)、投薬用ポンプ、時計のカレンダー送り装置、印刷装置の紙送り機構等の各種の機器における駆動装置として用いることが出来る。以下、代表的な実施の形態について説明する。以下では、本発明に係るモーター用圧電駆動装置として、モーター用圧電駆動装置100を含む装置について説明する。
4.1. ロボット
図18は、モーター用圧電駆動装置100を利用したロボット2050を説明するための図である。ロボット2050は、複数本のリンク部2012(「リンク部材」とも呼ぶ)と、それらリンク部2012の間を回動または屈曲可能な状態で接続する複数の関節部2020と、を備えたアーム2010(「腕部」とも呼ぶ)を有している。
それぞれの関節部2020には、モーター用圧電駆動装置100が内蔵されており、モーター用圧電駆動装置100を用いて関節部2020を任意の角度だけ回動または屈曲させることが可能である。アーム2010の先端には、ロボットハンド2000が接続されている。ロボットハンド2000は、一対の把持部2003を備えている。ロボットハンド2000にもモーター用圧電駆動装置100が内蔵されており、モーター用圧電駆動装置100を用いて把持部2003を開閉して物を把持することが可能である。また、ロボットハンド2000とアーム2010との間にもモーター用圧電駆動装置100が設けられており、モーター用圧電駆動装置100を用いてロボットハンド2000をアーム2010に対して回転させることも可能である。
図19は、図18に示したロボット2050の手首部分を説明するための図である。手首の関節部2020は、手首回動部2022を挟持しており、手首回動部2022に手首のリンク部2012が、手首回動部2022の中心軸O周りに回動可能に取り付けられている。手首回動部2022は、モーター用圧電駆動装置100を備えており、モーター用圧電駆動装置100は、手首のリンク部2012およびロボットハンド2000を中心軸O周りに回動させる。ロボットハンド2000には、複数の把持部2003が立設されている。把持部2003の基端部はロボットハンド2000内で移動可能となっており、この把持部2003の根元の部分にモーター用圧電駆動装置100が搭載されている。このため、モーター用圧電駆動装置100を動作させることで、把持部2003を移動させて対象物を把持することができる。なお、ロボットとしては、単腕のロボットに限らず、腕の数が2以上の多腕ロボットにもモーター用圧電駆動装置100を適用可能である。
ここで、手首の関節部2020やロボットハンド2000の内部には、モーター用圧電駆動装置100の他に、力覚センサーやジャイロセンサー等の各種装置に電力を供給する電力線や、信号を伝達する信号線等が含まれ、非常に多くの配線が必要になる。したがって、関節部2020やロボットハンド2000の内部に配線を配置することは非常に困難だった。しかしながら、モーター用圧電駆動装置100は、通常の電動モーターよりも駆動電流を小さくできるので、関節部2020(特に、アーム2010の先端の関節部)やロボットハンド2000のような小さな空間でも配線を配置することが可能になる。
4.2. ポンプ
図20は、モーター用圧電駆動装置100を利用した送液ポンプ2200の一例を示す説明するための図である。送液ポンプ2200は、ケース2230内に、リザーバー2211と、チューブ2212と、モーター用圧電駆動装置100と、ローター2222と、減速伝達機構2223と、カム2202と、複数のフィンガー2213,2214,2215,2216,2217,2218,2219と、を含む。
リザーバー2211は、輸送対象である液体を収容するための収容部である。チューブ2212は、リザーバー2211から送り出される液体を輸送するための管である。モーター用圧電駆動装置100の接触部20は、ローター2222の側面に押し付けた状態で設けられており、モーター用圧電駆動装置100がローター2222を回転駆動する。ローター2222の回転力は減速伝達機構2223を介してカム2202に伝達される。フィンガー2213から2219はチューブ2212を閉塞させるための部材である。カム2202が回転すると、カム2202の突起部2202Aによってフィンガー2213から2219が順番に放射方向外側に押される。フィンガー2213から2219は、輸送方向上流側(リザーバー2211側)から順にチューブ2212を閉塞する。これにより、チューブ2212内の液体が順に下流側に輸送される。こうすれば、ごく僅かな量を精度良く送液可能で、しかも小型な送液ポンプ2200を実現することができる。
なお、各部材の配置は図示されたものには限られない。また、フィンガーなどの部材を
備えず、ローター2222に設けられたボールなどがチューブ2212を閉塞する構成であってもよい。上記のような送液ポンプ2200は、インシュリンなどの薬液を人体に投与する投薬装置などに活用できる。ここで、モーター用圧電駆動装置100を用いることにより、通常の電動モーターよりも駆動電流を小さくできるので、投薬装置の消費電力を抑制することができる。したがって、投薬装置を電池駆動する場合は、特に有効である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
4…ローター、4a…中心、10…基板、10a…シリコン基板、10b…下地層、12…振動体部、12a…凹部、14…支持部、16…第1接続部、18…第2接続部、20…接触部、30,30a,30b,30c,30d,30e…圧電素子、32…第1電極、34…圧電体層、36…第2電極、40…第1絶縁層、40a…無機絶縁層、40b…有機絶縁層、41…第1コンタクトホール、41a…第1貫通孔、41b…第2貫通孔、42…第2絶縁層、43…第2コンタクトホール、50…第1配線層、52…第2配線層、54…第1導電層、56…第2導電層、60…第1コンタクト部、62…第2コンタクト部、100…モーター用圧電駆動装置、110…駆動回路、111…シリコン基板、120…モーター、132…第1電極、136…第2電極、140…絶縁層、141…コンタクトホール、2000…ロボットハンド、2003…把持部、2010…アーム、2012…リンク部、2020…関節部、2050…ロボット、2200…送液ポンプ、2202…カム、2202A…突起部、2211…リザーバー、2212…チューブ、2213,2214,2215,2216,2217,2218,2219…フィンガー、2222…ローター、2223…減速伝達機構、2230…ケース

Claims (10)

  1. 第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極と、を有する圧電素子と、
    記第2電極と電気的に接続された第1配線層と、
    前記第1電極と電気的に接続された第2配線層と、
    前記第1配線層と前記圧電素子との間、および前記第2配線層上に設けられた絶縁層と、
    前記絶縁層に形成されたコンタクトホールに設けられ、前記第1電極と前記第2配線層とを電気的に接続するコンタクト部と、
    を備え、
    前記絶縁層は、
    無機絶縁層と、
    前記第1配線層および前記第2配線層前記無機絶縁層との間に設けられた有機絶縁層と、
    を有し、
    平面視において、前記圧電体層および前記第2電極は、前記第1電極の外縁の内側に位置し、
    前記コンタクト部は、1つの前記圧電素子に対して複数設けられ、
    複数の前記コンタクト部は、平面視において、前記第2電極の周囲に設けられている、モーター用圧電駆動装置。
  2. 請求項1において、
    前記有機絶縁層の材質は、エポキシ樹脂である、モーター用圧電駆動装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記無機絶縁層の材質は、酸化アルミニウムである、モーター用圧電駆動装置。
  4. 第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極と、を有する圧電素子を形成する工程と、
    前記圧電素子を覆うように、無機絶縁層を成膜する工程と、
    前記無機絶縁層上に有機絶縁層を成膜する工程と、
    前記無機絶縁層および前記有機絶縁層に複数のコンタクトホールを形成する工程と、
    前記有機絶縁層上であって前記有機絶縁層に接し、前記コンタクトホールを介して前記前記第2電極と電気的に接続する第1配線層および前記第1電極と電気的に接続する第2配線層を形成する工程と、
    を含み、
    前記圧電素子を形成する工程では、
    平面視において、前記圧電体層および前記第2電極を、前記第1電極の外縁の内側に位置するように形成し、
    前記第2配線層を形成する工程では、
    前記コンタクトホールに、前記第1電極と前記第2配線層とを電気的に接続するコンタクト部を形成し、
    前記コンタクト部は、1つの前記圧電素子に対して複数形成され、
    複数の前記コンタクト部は、平面視において、前記第2電極の周囲に形成される、モーター用圧電駆動装置の製造方法。
  5. 請求項4において、
    前記有機絶縁層を成膜する工程は、感光性を有する材料を用いて前記有機絶縁層を形成する、モーター用圧電駆動装置の製造方法。
  6. 請求項4または5において、
    前記コンタクトホールを形成する工程は、
    前記有機絶縁層に第1貫通孔を形成するステップと、
    前記第1貫通孔が形成された前記有機絶縁層をマスクとして前記無機絶縁層をエッチングし、前記無機絶縁層に前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を形成するステップと、
    を含む、モーター用圧電駆動装置の製造方法。
  7. 請求項5または6において、
    前記無機絶縁層を形成する工程では、
    前記無機絶縁層をALCVD法によって成膜する、モーター用圧電駆動装置の製造方法。
  8. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のモーター用圧電駆動装置と、
    前記モーター用圧電駆動装置によって回転されるローターと、
    を有する、モーター。
  9. 複数のリンク部と、
    複数の前記リンク部を接続する関節部と、
    複数の前記リンク部を前記関節部で回動させる請求項1ないしのいずれか1項に記載のモーター用圧電駆動装置と、
    を有する、ロボット。
  10. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のモーター用圧電駆動装置と、
    液体を輸送するチューブと、
    前記モーター用圧電駆動装置の駆動によって前記チューブを閉塞する複数のフィンガーと、
    を有する、ポンプ。
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