JP6641681B2 - エポキシ化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素−炭素二重結合を有する化合物の炭素−炭素二重結合をエポキシ化してエポキシ化合物を製造する方法に関する。
エポキシ化合物は、エポキシ樹脂の原料となるエポキシモノマーや農薬、医薬中間体等の各種化学製品、その中間体や原料として幅広く利用されている。近年、電子部品、光学部品の高性能化に伴い、これに用いられるエポキシ樹脂およびその原料となるエポキシモノマー等のエポキシ化合物の高純度化が求められている。特に電子部品用途では、ハロゲン化合物が配線の腐食の原因となるため、エポキシ化合物の低ハロゲン化、特に低塩素化が求められている。
従来、エポキシ化合物の製造方法として、目的のエポキシ化合物に対応するアルコール化合物やフェノール化合物に、エピクロロヒドリンを作用させ、グリシジルエーテルとする方法が一般的であった。しかしこの方法では、副生する有機塩素化合物等が残留してしまうため、エポキシ化合物の低ハロゲン化には不向きである。
エポキシ化合物の別の製造方法として、アリルアルコールをパラジウム等の金属触媒を用いて縮合し、アリルエーテルとした後、過酸化物を用いてオレフィンをエポキシ化し、エポキシ化合物を得る方法が知られている。このときオレフィンのエポキシ化方法としてタングステン化合物およびオニウム塩の存在下、過酸化水素を反応させる方法が記載されている(特許文献1、2)。
この方法はハロゲン化合物の副生が起こらないため、ハロゲン含有量の少ないエポキシ化合物の製造方法として有用である。しかし前記の方法で得られたアリルエーテル中には、パラジウム等の金属触媒由来の金属不純物が残留することがある。残留した金属不純物は、エポキシ化反応の際に用いる過酸化物を分解し、発熱や酸素発生といった製造時、特に工業スケールでの生産時の安全上の懸念材料となり得る。このような金属不純物は、製造時に用いた金属触媒に限らず、例えば反応容器や配管等の製造設備や、原料、反応溶媒、各種反応助剤等の購入時の容器、包材等からも混入する場合がある。
エポキシ化反応の際に、混入した金属不純物の悪影響を低減する方法が検討されている。
例えば特許文献3では、エポキシ化を行なう原料化合物を、キレート化剤を含む水溶液で洗浄して前処理する方法や、有機過酸化物を用いたエポキシ化反応の際に、反応液中にキレート化剤を共存させる方法が記載されている。
特表平10−511721号公報 特開2012−116782号公報 特開平6−107651号公報
しかし、原料化合物をキレート化剤を含む水溶液で洗浄する方法では、完全に金属不純物を除去することは困難である。また反応容器等の製造設備から溶出する金属不純物には対応できない等の問題がある。
またエポキシ化反応液中に、キレート化剤を共存させて反応を行なう場合は、キレート化剤は、金属不純物のみならず、エポキシ化反応の際に用いるタングステン化合物等の触媒金属とも作用し、触媒金属の効果が損なわれるおそれがあった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、炭素−炭素二重結合を有する化合物に、タングステン化合物等の触媒金属の存在下、過酸化水素を反応させるエポキシ化合物の製造方法において、反応系中に存在する金属不純物による過酸化水素の分解を抑制することを課題とする。
発明者は、鋭意検討の結果、炭素−炭素二重結合を有する化合物に、触媒金属の存在下、過酸化水素を反応させるエポキシ化合物の製造方法において、触媒金属としてタングステン化合物やモリブデン化合物を選択し、かつキレート化剤を反応系に共存させることにより、過酸化水素の分解を抑制し、かつ触媒金属の効果も損なわれることなく、安全にエポキシ化を行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の要旨は、
[1]炭素−炭素二重結合を有する化合物の炭素−炭素二重結合を、触媒金属と、過酸化水素とを用いてエポキシ化するエポキシ化合物の製造方法であって、前記触媒金属が、タングステン化合物及びモリブデン化合物の少なくとも一方であり、かつ前記エポキシ化反応をキレート化剤の共存下で行なうことを特徴とするエポキシ化合物の製造方法、
[2]前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、500ppm(μg/g)以下の金属不純物を含有することを特徴とする、上記[1]に記載のエポキシ化合物の製造方法、[3]前記キレート化剤が、アミノカルボン酸類であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のエポキシ化合物の製造方法、
[4]前記炭素−炭素二重結合を有する化合物と、前記触媒金属と、前記過酸化水素と、前記キレート化剤と、を含有する溶液中に含まれる金属不純物の含有量が500ppm(μg/g)以下であることを特徴とする、上記[2]または[3]に記載のエポキシ化合物の製造方法、
[5]前記金属不純物が、コバルト、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、鉄、及び銅から選ばれる少なくとも1つの金属を含む化合物であることを特徴とする、上記[2]〜[4]のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造方法、
[6]前記エポキシ化反応を、オニウム塩又は第3級アミンの存在下で行うことを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか1に記載のエポキシ化合物の製造方法、
[7]前記エポキシ化反応を、有機溶媒の存在下で行うことを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
[8]前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、酸性水溶液で洗浄処理されたものであることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれか1に記載のエポキシ化合物の製造方法、
[9]前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、キレート化剤水溶液で洗浄処理されたものであることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか1に記載のエポキシ化合物の製造方法、に存する。
本発明の製造方法によれば、タングステン化合物等の触媒金属を用いたエポキシ化反応において、反応液中に存在する金属不純物(第一の金属化合物と第二の金属化合物)による過酸化水素の分解を抑制することができ、工業スケールでのエポキシ化合物での製造を安全に、かつ効率よく行なうことができる。さらに本発明の製造方法によれば、ハロゲン化合物の副生が起こらないため、ハロゲン含有量の少ないエポキシ化合物を工業的に効率よく製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲で種々変形して実施することができる。
本発明のエポキシ化合物の製造方法は、炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、「オレフィン化合物」と称することがある。)に、触媒金属としてタングステン化合物及びモリブデン化合物の少なくとも一方と、過酸化水素を用いてエポキシ化をする際に、キレート化剤を共存させることに特徴をもつものである。
(触媒金属)
本発明において用いられる触媒金属とは、炭素−炭素二重結合を有する化合物の炭素−炭素二重結合を過酸化水素を用いてエポキシ化する際に、過酸化水素と共に反応系内に存在することで触媒として作用する金属種をいう。
具体的にはタングステン化合物及びモリブデン化合物の少なくとも一方である。
(タングステン化合物及びモリブデン化合物)
本発明におけるタングステン化合物は、タングステンを含有し、上記の触媒としての作用を有するものであれば特に限定はされない。具体的にはタングステン酸やその塩等(以下、これらを「タングステン酸類」と総称する)等がタングステン化合物として挙げられる。
前記タングステン酸類としては、具体的には例えば、タングステン酸;タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム等のタングステン酸塩;前記タングステン酸塩の水和物;12−タングストリン酸、18−タングストリン酸等のリンタングステン酸;12−タングストケイ酸等のケイタングステン酸;12−タングストホウ酸または金属タングステン等が挙げられる。好ましくはタングステン酸、タングステン酸塩、リンタングステン酸であり、入手しやすさの点から、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、12−タングストリン酸がより好ましい。
本発明におけるモリブデン化合物は、モリブデンを含有し、上記の触媒としての作用を有するものであれば特に限定はされないが、具体的にはモリブデン酸やその塩等(以下、これらを「モリブデン酸類」と総称する)等が挙げられる。
前記モリブデン酸類としては、モリブデン酸;モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン酸塩;前記モリブデン酸塩の水和物が挙げられる。
上記タングステン化合物およびモリブデン化合物の中では、入手しやすさの点で、タングステン化合物が好ましく、タングステン酸類、即ちタングステン酸、またはタングステン酸ナトリウム及びその水和物、タングステン酸カルシウム及びその水和物がより好ましい。
本発明における触媒金属は、単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。前記触媒金属の使用量は、使用する前記オレフィン化合物等の性質により適宜調節することができ、特に限定されるものではないが、通常、前記オレフィン化合物中に含まれる炭素−炭素二重結合1モル(前記オレフィン化合物中に含まれる炭素−炭素二重結合の数に前記オレフィン化合物の分子量を乗じたもの)に対して触媒金属原子(例えばタングステン化合物を用いる場合はタングステン原子)に換算して、通常0.001モル以上、好ましくは0.005モル以上、より好ましくは0.01モル以上であり、通常1.0モル以下、好ましくは0.50モル以下、より好ましくは0.10モル以下である。前記範
囲内に調整することで、反応が進行しやすく、また経済性が良いためである。
前記触媒金属を用いる場合、前記オレフィン化合物と反応系内で混合して用いても、予め反応系外でオレフィン化合物と混合してから用いてもよく、また前記混合の際に、後述する過酸化水素を併せて混合し、触媒金属を活性化させてから用いることもできる。また後述するオニウム塩、有機溶媒、及びその他の添加物も併せて適宜混合して用いることもできる。
(過酸化水素)
本発明で用いる過酸化水素は、通常は過酸化水素水を用いる。
過酸化水素水の濃度は、特に限定されないが、通常1質量%以上、好ましくは20質量%以上、通常60質量%以下であり、より好ましくは、入手のしやすさや、生産性、運搬コスト等を考慮すると、30質量%以上、45質量%以下である。
反応系中に水を添加する、または過酸化水素を逐次添加することにより、反応時に系内の過酸化水素濃度を低く保つことが、安全性、生産性の面から更に好ましい。
過酸化水素の使用量は、前記オレフィン化合物の反応性等に応じて適宜調整することができ、特に限定はされないが、前記オレフィン化合物のモル数に1分子中に有する炭素−炭素二重結合の数を乗じた値に対し、通常0.5倍モル以上、好ましくは1倍モル以上、通常10倍モル以下、好ましくは3倍モル以下、更に好ましくは1.5倍モル以下用いる。前記範囲内の使用量であれば、生産性よく、効率のよいエポキシ化ができるためである。
(オニウム塩及び第3級アミン)
本発明の製造方法は、オニウム塩又は第3級アミン(以下、「オニウム塩等」と総称することがある。)の存在下でエポキシ化反応を行うことができる。前記オニウム塩等は、前記触媒金属及び過酸化水素と混合して用いることで、活性型のエポキシ化触媒を形成すると考えられ、反応活性が高くなることから本発明の製造方法において使用することが好ましい。具体的には、前記オニウム塩等は、前記触媒金属と複合体を形成し、さらにこの複合体が過酸化水素によって酸化されることで、反応活性の高い活性型のエポキシ化触媒(以下、「活性触媒」という。)になると考えられる。
前記活性触媒は、エポキシ化反応の際には脂溶性となり、通常、必要に応じて用いられる溶媒に、前記オレフィン化合物とともに安定に溶解するものが好ましい。そのため前記活性触媒は、安定的に溶媒中に分配するために、高い脂溶性を有することが好ましい。
本発明において前記オニウム塩等は、前記触媒金属が脂溶性になる程度の高い脂溶性を有することが好ましいため、より脂溶性が高いオニウム塩を使用することが好ましく、その構造内に炭素原子を20個以上有するカチオン種のオニウム塩がより好ましい。
前記オニウム塩としては、例えばメチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、セシルピリジニウム塩等のピリジニウム塩、テトラヘキシルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。
また前記オニウム塩等としては、発明者らが発明し、PCT/JP2013/059461号に開示したオニウム塩を使用することができる。具体的には活性水素を含む官能基またはその塩に変換可能な置換基を1つ以上有し、かつ炭素原子を20以上含むオニウム塩を用いることが好ましい。
上記オニウム塩は、エポキシ反応時には脂溶性を呈するが、エポキシ化反応終了後に加水分解等の簡単な後処理をすることで水溶性物質に変換することができ、タングステン等の前記触媒金属をより効率よく水相に溶解、分離できる点で好ましい。
本発明においてオニウム塩を使用する場合、特に限定はされないが、有機相と水相とからなる二相系反応溶液中で使用することが好ましい。通常脂溶性を有する前記オレフィン化合物が、脂溶性を付与された活性触媒と有機相中で反応するため、副反応が起こりにくいためである。
本発明で用いられるオニウム塩のアニオン種は、特に限定はされないが、具体的には硫酸水素イオン、モノメチル硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸二水素イオン、スルホン酸イオン、カルボン酸イオン、水酸化物イオン等の1価のアニオン、リン酸水素イオン、硫酸イオン等の2価のアニオンが挙げられ、調製が容易である点から一価のアニオンが好ましく、このうちアニオン種が反応生成物であるエポキシ化合物のエポキシ基や、基質の炭素−炭素二重結合に付加しない点や、モノメチル硫酸イオン、硫酸水素イオン、酢酸イオン、リン酸二水素イオン又は水酸化物イオンが好ましい。なおアニオン種は単独でも2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるオニウム塩等が第3級アミンである場合、第3級アミンとしては、特に限定はされないが、炭素原子を6個以上、好ましくは10個以上含むものが好ましい。具体的にはトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン等が挙げられる。
本発明において、オニウム塩等は単独でも2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。前記オニウム塩等の使用量は、使用するオレフィン化合物等の性質により適宜調整可能であり、特に制限はされないが、反応時に使用する前記触媒金属に対して、通常モル比で0.1倍モル以上、好ましくは0.2倍モル以上、より好ましくは0.3倍モル以上、通常5.0倍モル以下であり、好ましくは2.0倍モル以下であり、より好ましくは1.0倍モル以下である。
(キレート化剤)
本発明においてエポキシ化合物の製造は、キレート化剤の共存下で行なう。キレート化剤を共存させることにより、後述する金属不純物との間でキレート化合物を形成すると考えられ、過酸化水素の分解を生じることなく、安全にエポキシ化反応を行なうことができる。
本発明におけるキレート化剤とは、金属イオンと結合してキレート化合物を形成する多座配位子をもつ化合物をいう。
前記キレート化剤としては、特に限定はされないが、具体的には、エチレンジアミン四酢酸およびその塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩、トリエチレントリアミン六酢酸およびその塩、イミノ酢酸およびその塩等のアミノカルボン酸類;クエン酸、グリコール酸およびこれらの塩等のオキシカルボン酸類;ヒドロキシエタンジホスホンなどの有機リン酸類;ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩;エチレンジアミン、サイクレン等のアミン化合物、ビピリジン、フェナントロリン、ポルフィリン等の含窒素ヘテロ環、クラウンエーテル等のエーテル化合物等が挙げられる。これらのうち、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有するアミノカルボン酸類が配位能力が高い点から好ましく、特にエチレンジアミン四酢酸およびその塩が安価で入手容易であることから好ましく、さらには、pH調製の容易さから、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩が好ましい。また、キレート化剤の配位可能な置換基数は多い方がより強固に金属に配位するため好ましく、通常2以上、好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。
また、キレート化剤は単独でも2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明において用いられるキレート化剤の使用量は、後述する第一の金属化合物及び/又は第二の金属化合物(金属不純物)の含有量により適宜調整することができ、特に制限
されるものではないが、通常、第一の金属化合物及び第二の金属化合物の合計量に対して等モル以上である。また上限も制限はされないが、通常、キレート化剤が析出しない範囲の量である。
またエポキシ化反応時の反応液中の前記キレート化剤の含有量は、特に限定されないが、通常反応液中、特に有機相と水相とからなる二相系溶液における水相中のキレート化剤の含有量で、通常1ppm(μg/g)以上であり、好ましくは50ppm以上、通常10000ppm以下であり、好ましくは5000ppm以下であり、さらに好ましくは2000ppm以下である。
(有機溶媒)
本発明では、必要に応じ有機溶媒を用いることができ、オレフィン化合物が固体である場合など、有機溶媒を含む反応液は操作性が向上する点で用いることが好ましい。
本発明のエポキシ化反応において有機溶媒を使用した際、オレフィン化合物は、有機溶媒中に溶解していても、懸濁状態でもよいが、通常、反応温度条件下で有機溶媒に溶解していることが好ましい。
本発明において用いられる有機溶媒は、使用するオレフィン化合物や、前記活性触媒に対して不活性であれば特に限定はされないが、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチルなどのエステル化合物;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N− ジメチルアセトアミド等のアミド類;N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のウレア類;及びこれら溶媒の混合物が挙げられ、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、およびこれら有機溶媒の混合物が好ましい。さらに反応に対して安定であるりな芳香族炭化水素が好ましく、より好ましくは反応温度より高い沸点を有するトルエンが挙げられる。特に反応活性の高い前記活性触媒を使用する際に、水と二相系を形成する有機溶媒を用いて、二相系反応で行なうことが反応の効率や操作上好ましいためである。
なお前記の二相系反応を円滑に行なうため、有機溶媒以外に更に適宜水を反応液に追加して使用してもよい。水を使用する際の使用量は特に限定されない。
本発明における有機溶媒の使用量は、オレフィン化合物の溶解度や各種物性により適宜調整して使用することができ、特に限定されるものではないが、生産性と安全性の観点からオレフィン化合物の使用量に対して、通常0.1倍量以上、10倍量以下であり、好ましくは5倍量以下、より好ましくは3倍量以下である。
(リン酸類及びホスホン酸類)
本発明の製造方法においては、リン酸類及びホスホン酸類の少なくとも一方を使用することができる。特に前記オニウム塩等を用いて、前記触媒金属を前記活性触媒としてエポキシ化反応を行なう際には、リン酸類及びホスホン酸類の少なくとも一方を用いることが反応性の向上の点で好ましく、コストの観点から安価なリン酸を用いることがさらに好ましい。
本発明におけるリン酸類としては、具体的には例えばリン酸、亜リン酸等の無機リン酸;ポリリン酸、ピロリン酸等のリン酸重合体;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素アンモニウム
、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム等の無機リン酸塩;モノメチルリン酸、ジメチルリン酸、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル類;等が挙げられる。このうちリン酸類としては、リン酸が好ましい。
本発明におけるホスホン酸類としては、アミノメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などが挙げられる。
これらのうち本発明では安価なリン酸を用いることが好ましい。
リン酸類及びホスホン酸類の使用量は、特に限定されるものではなく、その種類や触媒金属の種類によって適宜使用量を調整できるが、好ましくは前記活性触媒を使用する二相系反応の水相のpHが適切な範囲になるように使用量を調節する。該リン酸類及びホスホン酸類のいずれかに含まれるリンの当量としては、使用する触媒金属中の金属に対して通常モル比で0.1倍モル以上、好ましくは0.2倍モル以上、より好ましくは0.3倍モル以上であり、通常5.0倍モル以下、好ましくは2.0倍モル以下、より好ましくは1.0倍モル以下である。
リン酸類及びホスホン酸類のいずれかは、反応液の水相のpHが適切な範囲になるように添加することができ、また必要に応じて他の酸や塩基を添加し、pHの調製を行うこともできる。
(炭素−炭素二重結合を有する化合物)
本発明において原料として使用する炭素−炭素二重結合を有する化合物(オレフィン化合物)としては、分子中に炭素−炭素二重結合を一つ以上有する化合物であれば、特に限定はされない。前記オレフィン化合物の具体例としては、特開2011−213716号公報に記載されている化合物が挙げられる。特に高純度化、特に低ハロゲン化されたエポキシ化合物を製造できる点で、下記の一般式(1)〜(3)で表わされるオレフィン化合物を原料とすることが好ましい。このうち(2)で表されるオレフィン化合物が好ましく、中でも、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)−1,1’−ビフェニル、(別名称 3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール ジアリルエーテル)が好ましい。
[数1]
(R23n1−(A)−(OR)m1 ・・・(1)
一般式(1)中、Aは芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくともその一部が還元された基、及び脂肪族炭化水素基のいずれかを表し、OR基、R23以外の置換基を有していてもよい。
における芳香族炭化水素基としては、特に限定はされず、フェニル基等の単環式芳香族炭化水素基、ナフチル基等の縮合環芳香族炭化水素基、複素環芳香族炭化水素基、または式(1)のRが水素原子で置き換えられた化合物が、トリス(4−ヒドロキシフェニル)−トリアジン、1,1‘−メチレンビス−ナフタレンジオール、メチリデントリスフェノール等である前記芳香族が複数連結したものであってもよい。好ましくは炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基が複数連結したものが挙げられる。
同様に芳香族炭化水素基の少なくともその一部が還元された基としては、特に限定はされないが、炭素数6〜14の芳香族炭化水素の少なくとも一部が還元された基が挙げられ、具体的にはシクロへキシル基等が挙げられる。
同様に脂肪族基としては特に限定はされないが、一部の炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよく、かつ置換基を有していてもよい炭素数1〜25の脂肪族炭化水素基である。具体的には、炭素数1〜25の直鎖脂肪族炭化水素、エチレンオキシ基等のエーテル結合を有する脂肪族炭化水素が挙げられる。
Rはアリル基、又はグリシジル基を表し、これらはアルキル基、フェニル基、アルコキシカルボニル基等の置換基を有していてもよいが、好ましくは無置換のアリル基、又はグリシジル基である。なおOR基を複数有するときは、それぞれのOR基は同一でも異なっていてもよい。
が有するORおよびR23以外の置換基としては、グリシジル基、フェニル基、フェニルオキシ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
23は、アリル基を表し、これらはアルキル基、フェニル基、アルコキシカルボニル基等の置換基を有していてもよいが、好ましくは無置換のアリル基である。
OR基、R23以外の置換基としては特に限定されないが、グリシジル基、フェニル基、フェニルオキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
は1以上の整数を表わし、Aで表される置換基上の置換可能な水素原子の数により異なり限定されないが、好ましくは2以上、4以下である。
なおmが2以上のとき、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。
は0以上の整数を表わし、mとnの合計は2以上である。
一般式(1)で表わされるものとしては具体的には1,6−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)−ナフタレン、1,4−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)−ベンゼン、1,4−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)メチル]−シクロヘキサン、1,1,1,1−テトラ(アリルオキシメチル)メタン、1,1’−メチレンビス−2,7−ナフタレンジオールテトラアリルエーテル、2,4,6−トリス[4−(2−アリルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、1,3―ジアリル−2,4−ジグリシジルオキシベンゼン、2−アリル−1,5−ジグリシジルオキシナフタレン等が挙げられる。
Figure 0006641681
一般式(2)中、A、Aはそれぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくともその一部が還元された基、及び脂肪族炭化水素基のいずれかを表し、OR基、X、R23以外の置換基を有していてもよい。それぞれの価数が2価である以外は、上記Aと同義である。
は、直接結合又は置換基を有していてもよい2価の連結基を表わす。
2価の連結基としては、ヘテロ元素で置換されていてもよく、かつ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、−SO−等が挙げられ、連結基中には不飽和結合を有していても、環状構造を有していてもよい。
としては、直接結合、炭素数1〜4の2価アルキレン基、架橋縮合環構造を有する炭素数7〜10の脂環式炭化水素が好ましく、直接結合、炭素数1〜2のアルキレン基がより好ましい。
また、Xを介して連結する隣接するAとAは、また複数のAは、その置換基が更に連結しての環を形成していてもよい。例えば、キサンテン環、スピロジベンゾピラン環、スピロビインダン環等が挙げられる。
R、R23、nは一般式(1)と同義である。
上記A、Aが有するORおよびR23以外の置換基は、一般式(1)と同じである
は1以上の整数を表し、Aで表される置換基上の置換可能な水素原子の数により異なり限定されないが、通常4以下であり、好ましくは2以下である。
なおmが2以上のときは、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。mとnの合計は2以上であり、好ましくはm2の合計が2であり、n1の合計が0または2であり、更に好ましくはn1が0である。
nは0または1以上の整数を表し、通常5以下であり、好ましくは3以下であり、より好ましくは0である。
なおnが2以上のときは、Aは互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(2)で表わされるものとして具体的には3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)−1,1’−ビフェニル(別名称 3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール ジアリルエーテル)、1,1’−(1−メチルエチリデン)ビス[4−(2−プロペン−1−イルオキシ)−ベンゼン](別名称 ビスフェノールA ジアリルエーテル)、1,1’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[4−(2−プロペン−1−イルオキシ)−ベンゼン]、1,1’−スルホニルビス[4−(2−プロペン−1−イルオキシ)−ベンゼン]、4,4’−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)−1,1’−ビフェニル、1,1’−(1−メチルエチリデン)ビス[4−(2−プロペン−1−イルオキシ)]−シクロヘキサン]、3,3’−ジアリルビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル(別名称 3,3’−ジアリル−4,4’−ジグリシジルオキシ―1,1’−ビフェニル)、3,3’−ジアリルビフェニル−4,4’−ジアリルエーテル(別名称 3,3’−ジアリル−4,4’−ジアリルオキシ−1,1’−ビフェニル)、3,3’−ジアリルビスフェノールA−ジグリシジルエーテル(別名称 2,2−ビス(3−アリル−4-グリシジルオキシフェニル)プロパン)、3,3’−ジアリルビスフェノールA−ジ
アリルエーテル(別名称 2,2−ビス(3−アリル−4-アリルオキシフェニル)プロ
パン)等が挙げられる。
[数3]
H−[(R23n1−(A(OR)m2)−X]−H (3)
一般式(3)中、A、m、n、OR基以外の置換基は一般式(2)と同義である。
R、R23は一般式(1)と同義である。
は、直接結合、置換基を有していてもよいアルキレン基または2つ以上のアルキレン基を置換基として有するフェニレン基を表す。アルキレン基の炭素数は通常1〜4、好ましくは炭素数1又は2のアルキレン基である。
iは2以上の整数を表わし、通常20以下であり、好ましくは10以下である。
一般式(11)で表される化合物の具体例としては、4−(2−プロペン−1−イルオキシ)安息香酸−1,1’−(1,4−フェニレン)エステル、トリス[4−アリルオキシフェニル)メタン、クレゾールノボラックのポリアリルエーテル、トリス[3−アリル−4−グリシジルオキシフェニル)メタン、アリルクレゾールノボラックのポリアリルエーテル、アリルクレゾールノボラックのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記一般式(1)〜(3)に記載の化合物に、本発明の製造方法を適用することで、タングステン等の重金属含有量が極めて少なく、さらに塩素含有量の少ないエポキシ化合物を製造することができる。
(金属不純物)
本発明における金属不純物とは、前記オレフィン化合物を含む反応液中に含まれる触媒金属以外の金属を表す。
金属不純物は、金属イオンの他に金属単体であっても金属化合物であってもよい。
上記キレート化剤は、金属イオンに配位して効果を示すことが知られているため、金属不純物の中でも金属イオンが重要である。
さらに、上記キレート化剤は、通常、配位座の非共有電子対を金属イオンの空軌道に供与することで配位するので、空軌道を有する、あるいは交換可能な配位子を有するカチオン性の金属イオンが特に重要である。
前記金属不純物の金属種としては特に限定はされないが、通常は過酸化水素の分解に寄与し得る金属種である。なお金属種としては、いわゆる半金属に分類されるものでもよく、特に限定はされないが、通常軌道相互作用を示す周期表3族から16族に属する元素であり、具体的には例えばチタン、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、ホウ素、ケイ素、テルル等が挙げられる。
このうち過酸化物の分解能が高い点からは、金属不純物は、周期表第8族から第11族に属する金属元素が挙げられ、具体的には、ルテニウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、鉄、銅等である。特にコバルト、ニッケル、パラジウム、ルテニウムを含む金属不純物は、その含有量が少ない場合でも過酸化水素を分解する場合があるため、存在濃度を考慮すべきものである。その他に前記オレフィン化合物中に含まれうる可能性の高いものとしては、反応容器や保管容器との接触に由来するものがあり、鉄、コバルト、クロム、ニッケルが挙げられる。
前記金属不純物の由来は特に限定はされないが、例えば前記オレフィン化合物の製造過程で反応剤や金属触媒等として使用した金属化合物に由来するもの;オレフィン化合物の製造過程やエポキシ化反応で使用した反応容器や配管等の製造設備に由来するもの;及びオレフィン化合物の製造原料、前記有機溶媒、または各種反応助剤等の購入時の容器、包材等に由来するもの;等が挙げられる。前記オレフィン化合物中に含まれうる可能性の高いものとしては、製造過程で反応剤や金属触媒等として使用した金属化合物に由来するものであり、特に前記オレフィン化合物の製造の際に使用する金属触媒に由来するもの、例えばパラジウム、ルテニウム及び銅から選ばれる少なくとも1つは、含まれる可能性が高いものであることから、その存在濃度を考慮すべきものである。
金属不純物の影響の大きさは、過酸化水素の濃度、反応条件、金属不純物の種類により異なり、過酸化水素の濃度が高い場合や、反応温度が高い場合には影響が顕著化する。そのため、オレフィン化合物中の金属不純物の含有量は、前記オレフィン化合物の量に対し、通常、重量比で500ppm(μg/g)以下であり、好ましくは200ppm以下である。また、金属不純物の下限は1ppm(μg/g)以上が好ましく、0.1ppm(μg/g)以上がより好ましく、金属不純物が含まれない場合、すなわち0ppm以上がさらに好ましい。前記範囲内の金属不純物含有量である場合には、本願発明の効果が十分に得られるためである。
また、上記金属不純物の、反応溶液、すなわち前記炭素−炭素二重結合を有する化合物と、前記触媒金属と、前記過酸化水素と、前記キレート化剤とを含有する溶液中に含まれる含有量は、通常500ppm(μg/g)以下であり、好ましくは200ppm(μg/g)以下である。また、金属不純物の反応溶液中の含有量の下限は、通常1ppm(μg/g)以上が好ましく、0.1ppm(μg/g)以上がより好ましく、0.05ppm以上がさらに好ましい。前記範囲内の金属不純物含有量である場合には、本願発明の効果が十分に得られるためである。
(エポキシ化合物の製造方法)
本発明の製造方法は、オレフィン化合物を、触媒金属、過酸化水素及びキレート化剤の共存下でエポキシ化することを特徴とするものである。具体的な反応操作としては特に限定されるものではないが、オレフィン化合物に、触媒金属、過酸化水素及びキレート化剤、必要に応じオニウム塩及び第3級アミノのいずれかを加え、さらに必要に応じて有機溶媒、リン酸類及びホスホン酸類のいずれかを加えてもよい。
特にオニウム塩を用いる場合は、通常二相系反応となるため、必要に応じてさらに水を加えてもよい。
(オレフィン化合物の前処理)
本発明におけるオレフィン化合物は、本発明のエポキシ化反応に用いる際に、必要に応じて前処理を行なってもよい。前処理を行なうことで、金属不純物の量を減少することができるため、本発明の効果を顕著に得る上では、下記する前処理を行なうことが好ましい。
前記前処理の方法としてオレフィン化合物を、酸性水溶液で洗浄する方法やキレート化剤水溶液で洗浄する方法が挙げられる。
前処理の方法としては、オレフィン化合物に直接酸性水溶液やキレート化剤水溶液を作用させて処理することもできれば、前記オレフィン化合物を有機溶媒等に溶解させた後、混合し、酸性水溶液やキレート化剤水溶液で処理することもできる。
前記酸性水溶液に用いる酸の種類は、特に限定はされないが、具体的には塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;酢酸、クエン酸などの有機酸が挙げられる。
酸性水溶液のpHは特に限定はされず、用いるオレフィン化合物の安定性により異なるが、通常pHは1以上、好ましくは3以上、通常5以下、好ましくは4以下で行う。pHの調整の目的で、各種の塩を加えてもよく、例えば硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム等を添加してもよい。
具体的には、酢酸と硫酸ナトリウムの混合水溶液が好ましい。例えば4%の酢酸と1%硫酸ナトリウムを含むpH=4の水溶液がより好ましい。上記の洗浄処理を行なうことで金属が水に可溶化し、水相と共に除去される。
前記キレート化剤水溶液としては、金属とのキレート化能力を有する化合物を含む水溶液であれば、特に限定はされないが、好ましくは、いわゆる金属マスク剤を含む水溶液が好ましい。前記キレート化剤水溶液に用いるキレート化剤としては、上述したキレート化剤と同じであり、操作性や汎用性の面でエチレンジアミン四酢酸、ピロリン酸が好ましい。
なお前記キレート化剤水溶液に用いるキレート化剤は、反応系内に共存させるキレート化剤と同じであっても、異なるものであってもよい。
酸性水溶液やキレート化剤水溶液で洗浄する条件は特に限定はされないが、洗浄時間は通常30分間以上、2時間以下であり、洗浄温度は通常10℃以上、30℃以下である。これらの処理を行なうことで金属が水に可溶化し、水相と共に除去される。
(反応条件)
本発明の製造方法における反応温度は、反応が阻害されない限り、特に限定されないが、通常10℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは60℃以上であり、通常90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下である。前記温度範囲で反応させることにより、反応速度の低下がなく反応を進行させることができ、またより安全に反応を進行させることができるためである。
本発明の製造方法における反応時間は反応温度、触媒量、原料の種類等によって適宜選択でき、特に限定されるものではないが、通常1時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは4時間以上であり、通常48時間以下、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である。
本発明の製造方法における反応時のpHは、反応に供するオレフィン化合物の構造や性質等により適宜調整が可能であり、特に限定されるものではないが、通常pHは2以上、好ましくは2.5以上、通常6以下である。前記オニウム塩を反応に使用し、二相系反応である場合は、その水相のpHが上記範囲であることが好ましい。
例えばオレフィン化合物が環状オレフィンである場合は、エポキシ化されやすい一方、生成したエポキシ環が転移や開裂しやすい傾向があるため、中性に近いpHでの反応が好ましい。一方オレフィン化合物がアリルエーテルの場合は、環状オレフィンと比較してエポキシ化されにくく、開裂しにくい傾向があるため、環状オレフィンの場合に比べ酸性、すなわち低いpHで反応を行なうことが好ましい傾向がある。反応時、前記オニウム塩を使用した場合は、二相系反応の水相中の過酸化水素の量によりpHが変化する、また、反応後半では生成したエポキシが酸性条件下で開裂するため、反応の進行具合に応じて適宜、酸または塩基を添加して、pHを最適な範囲に保つことが好ましい。
本発明の製造方法においては必要に応じて緩衝液を使用することもできる。緩衝液の種類としては、反応を阻害しないものであれば、目的のpHに合わせた緩衝液を適宜用いることができる。緩衝液の例としては、リン酸塩水溶液、リン酸水素塩、又はリン酸二水素塩、又はフェニルリン酸の組み合わせとしては、クエン酸とクエン酸ナトリウム、酢酸と酢酸ナトリウムなどが挙げられる。場合によっては先のタングステン酸類を組み合わせて緩衝液としてもよい。
本発明の製造方法においては、反応を円滑に進行させる目的で、共酸化剤を使用することもできる。具体的には、カルボン酸、好ましくは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸を触媒組成物中に含んでいてもよい。共酸化剤は組成物中に添加してもよく、例えばエステル基を有するオニウム塩の場合、エステル基が加水分解を受けて発生したものであってもよい。
本発明の製造方法における反応は、安全上の観点から、常圧、窒素気流下で行うことが好ましい。
本発明において、エポキシ化反応終了後に必要に応じ還元剤を加えて過剰な過酸化水素のクエンチ処理を行う。反応に前記のオニウム塩を使用した場合は、二相系反応の水相を廃棄後、有機相を水洗後、上記クエンチ処理を行なうことが好ましい。
上記クエンチ処理に用いる還元剤としては特に限定されないが、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドラジン、シュウ酸などが挙げられる。
(精製)
上記の方法で得られたエポキシ化合物は、必要に応じてさらに精製することができる。特に本発明の製造方法において使用した触媒由来の金属、タングステン及びモリブデン化合物の少なくとも一方や、必要に応じ使用したオニウム塩は、通常、精製により除去する。具体的な精製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜使用することができる。エポキシ化合物が固体の場合は晶析、懸洗、分液、吸着、昇華等が挙げられ、エポキシ化合物が液体の場合は分液、洗浄、吸着、蒸留が挙げられる。
分液、洗浄による精製は、水と水に不溶または難溶な有機溶媒を組み合わせる場合と、お互いに混合しない複数の有機溶媒同士を組み合わせる場合がある。水と水に不溶または難溶な有機溶媒の組み合わせとしては、例えば酢酸エチル、トルエン、ジエチルエーテル
、ジイソプロピルエーテル、n−へキサン等の有機溶媒と水の組み合わせが挙げられる。お互いに混合しない複数の有機溶媒同士の組合せとしては例えばN,N−ジメチルホルムアミドとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、ジイソプロピルエーテル、キシレンのうち少なくともひとつとの組合せ、ジメチルスルホキシドとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、キシレンのうち少なくともひとつとの組合せ、アセトニトリルとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタン、シクロへキサン、シクロペンタンのうち少なくともひとつとの組合せ、メタノールとn−ヘプタン、n−へキサン、n−ペンタンのうち少なくともひとつとの組合せがある。
晶析による精製には、溶媒を減圧留去する、または留去することなしに冷却して晶析させる方法、化合物の溶解度の低い溶媒、いわゆる貧溶媒を加え析出する方法、化合物の溶解度の高い溶媒、いわゆる易溶媒と貧溶媒を組み合わせて析出する方法、反応終了後、水を加えて晶析させる方法等のいずれでも良い。溶媒としては有機溶媒、水、またはその混合物、有機溶媒同士を組み合わせる等、いずれでも良く、化合物の溶解度により適切なものを選択する。有機溶媒としては、酢酸エチル等のエステル類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなど脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等の非プロトン性溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n−ブタノール等のア
ルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
懸洗による精製には、化合物の溶解度の低い溶媒、いわゆる貧溶媒を用いる。好ましい貧溶媒は化合物により異なるが、メタノールなどのアルコール類などの極性の高いものや、逆にプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなど極性の低い脂肪族炭化水素が上げられる。水溶性の溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、N,N-ジメチル
ホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等が挙げられ、これらは水と混合して用いることができる。溶媒量は少なすぎる場合は精製効果が十分ではなく、多すぎる場合には、回収率の低下につながる。懸洗終了後、固形物をろ過回収し、乾燥することによって目的物を得ることができる。
吸着による精製は、含塩素系不純物と吸着剤として、活性炭、活性白土、モレキュラーシーブス、アルミナ、ゼオライト、イオン交換樹脂等が挙げられる。
上記精製法の中でも、操作法の点からは、エポキシ化合物の性状に関わらず分液法、吸着法が好ましい。エポキシ化合物が固体の場合は晶析法が有効である。
(エポキシ化合物)
本発明の製造方法により得られるエポキシ化合物は、上記のオレフィン化合物の炭素−炭素二重結合がエポキシ基に変換されたものが得られ、エポキシ化合物がエポキシモノマーの場合は、2つ以上の炭素−炭素二重結合がエポキシ化されたものが好ましい。
上記エポキシ化反応、前記触媒金属や、必要に応じ用いたオニウム塩等の分離・除去工程、必要に応じ精製工程を経て、エポキシ化合物を得る。
本発明の製造方法により得られたエポキシ化合物は、触媒金属由来の金属元素の含有量量は特に限定されるものではないが、通常200ppm以下、好ましくは100ppm以下に、より好ましくは10ppm以下に、更に好ましくは1ppm以下である。
同様に、本発明の製造方法により得られたエポキシ化合物は、オニウム塩由来の窒素含有量は通常500ppm以下、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10ppm以下に、更に好ましくは1ppm以下である。
本発明の製造方法により得られたエポキシ化合物は、反応に供した化合物の塩素含有量
にもよるが、一般的にエピクロルヒドリンを用いて合成したエポキシ化合物に比べ、塩素含有量が少ないという特徴を有する。
通常ハロゲン原子の含有量が少ないものとなり、その含有量は通常200ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。
本発明の製造方法は、後述するエポキシ樹脂の他、エポキシ構造を有する医薬中間体や、農薬の原体の製造に用いることができる。例えば、ハロゲン置換スチレンオキサイド構造を有する抗真菌剤や糖尿病薬の中間体等の製造が上げられる。本発明の方法で得られたエポキシ化合物は、不純物が少ないため、不純物に由来する毒性の懸念が低減する。
(エポキシ樹脂)
本発明の製造方法によって得られたエポキシ化合物は、重合することによりエポキシ樹脂を製造することができる。重合反応は、公知の方法を適用することができ、具体的には特開2007−246819号公報等に記載の方法等により行なうことができる。
本発明で得られたエポキシ化合物を用いた高純度エポキシ樹脂は、電子材料、光学材料、接着剤、建築分野等で用いることができる。半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ配線板、ソルダーレジスト等の電子部品材料として用いた場合、不純物が原因で起きる配線の腐食や短絡の、照明の封止剤等の光学材料として用いた場合、着色や劣化の低減や回避が可能となる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何等限定されるものではない。
H−NMR分析条件>
装置:BRUKER社製 AVANCE400, 400MHz
溶媒:0.03体積%テトラメチルシラン含有重クロロホルム
<液体クロマトグラフ(LC)分析条件>
LC装置:島津製作所製 SPD−10Avp
温度:35℃
カラム:Mightysil RP−18GP aqua 150−4.6(5μm)
(関東化学社製)
(以下、分析条件1とし、特に断りがない場合は本条件でLC分析をおこなった。)
検出器:UV 280nm
溶離液:アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液=90/10(体積%)
流量:0.5ml/min
(以下、分析条件2とする。)
検出器:UV 254nm
溶離液:アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液60/40→100/0 (体積%)、20分間、その後100/0 (体積%)で10分間保持
流量:0.5ml/min
<酸化還元滴定条件>
滴定装置:三菱化学社製
検出電極:白金(複合型)滴定方法:水相を7質量%硫酸水で希釈後、過剰量の10質量%ヨウ化カリウム水溶液を加え、遊離したヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で過酸化物を還元滴定した。過酸化物の量は過酸化水素重量%換算で表した。
<ICP−MS分析条件>
前処理法:乾式灰化−酸溶解法
分析装置:Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型
なお以下の実施例において「LC面積」とは、液体クロマトグラフ(LC)分析で得られた分析対象化合物のピーク面積をいい、「LC面積%」とは、組成物全量のピーク面積に対する対象化合物のピーク面積の割合をいう。
また以下の実施例において、エポキシ化反応中にエポキシ環が開環したジオール化合物、同じくエポキシ環が熱または酸によりアルデヒド異性化後、酸化されたカルボン酸等、エポキシ化合物より極性が高く、上記LC分析条件でエポキシ化合物より早い保持時間を与える化合物が副生した。これらの化合物を総称して、「極性化合物」と称することがある。
以下の実施例において「転化率」とは、反応原料として用いたオレフィン化合物中に含まれる炭素−炭素二重結合のうち、エポキシ化された炭素−炭素二重結合の割合を百分率で示すものであり、具体的には、例えばオレフィン化合物1分子中の炭素−炭素二重結合の数を2とした場合、添加率は下記式で算出した値を表わす。
(転化率)=100−[原料LC面積%+(中間体LC面積%/2)](%)
また以下の実施例において「過酸化水素分解率」とは、反応液中に加えた過酸化水素のうち、分解により消費された過酸化水素の割合を表す。具体的には下記式で算出した値を表わす。
理論転化率とは、加えた過酸化水素がすべて反応した場合の転化率であり、転化率は、実際の反応の結果得られた転化率をいう。
(過酸化水素分解率)=[理論転化率(%)−転化率(%)]/理論転化率(%)
なお反応終了時の水相の過酸化水素濃度は、反応終了時に約0.1%未満と微量であったため、過酸化水素は全て消費されたものとして近似した。
合成例1:オレフィン化合物(反応原料)の合成
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)−1,1’−ビフェニル(別名称:3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール ジアリルエーテル)を、特開2011−213716号公報の実施例2に準ずる方法でパラジウム等の金属触媒を用いることなく、塩基存在下アリルクロライドとフェノール類との縮合する事により合成した。この化合物中の約60元素の金属含有量を上記のICP−MS分析法で全定性・半定量測定を行った(検出下限:約1ppm)。反応装置から混入する懸念があり、ごく微量で過酸化水素を分解するクロム、コバルトに関しては、定量分析を行った(検出下限0.01ppm)。分析の結果、鉄2ppm、クロム0.02ppmを含んでいた。コバルトは検出限界以下であった。
上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビス(2−プロペン−1−イルオキシ)−1,1’−ビフェニル10.0g(31.0mmol)をトルエン10mlに溶解した溶液を、無水硫酸ナトリウム1質量%および酢酸を1体積%含む水溶液30mlで洗浄した後、3質量%ピロリン酸ナトリウム水溶液0.26ml、10質量%エチレンジアミン四酢酸溶液0.12ml、水30mlの混合液で洗浄した。水30mlで洗浄した後、濃縮し、粗結晶を得た(以下、「反応原料」という)。純度99.9%(LC面積%、上記分析条件1)であった。この化合物中の鉄およびクロムの含有量をICP−MSで定量分析したところ、鉄は0.3ppm、クロムは検出限界(0.01ppm)以下であった。
(実施例1)
合成例1で調製した前記反応原料2.0g(6.2mmol)、タングステン酸ナトリ
ウム二水和物(和光純薬社製)205mg(0.62mmol)、8.5%(重量/体積)りん酸水溶液0.64ml(0.56mmol)、メチルトリオクチルアンモニウム硫酸水素塩(東京化成製)145mg(0.31mmol)、トルエン2.0ml及び水0.13mlを混合した混合液を調製した。この混合液にさらに0.01%(重量/体積)酢酸パラジウム水溶液を0.42ml及びキレート化剤としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩10mg(0.031mmol)を加えた。
窒素気流下、この混合液を65℃に加温し、42質量%過酸化水素0.10ml(1.5mmol)を反応開始時、および反応開始30分後に添加し、更に反応開始から1時間後、2時間後に0.20ml(3.0mmol)を加えた後、64〜66℃にて計5時間反応した。反応中、有機相を上記LC分析条件1にて1時間ごとに分析を行った。
反応開始4時間後に反応の進行が停止し、5時間目の有機相の組成比はLC面積%で3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール ジグリシジルエーテル(以下、「エポキシ化体」という)38.7%、4,4’−ジヒドロキシー3,3’ ,5,
5’−テトラメチルビフェニル モノアリルエーテル モノグリシジルエーテル(以下、「中間体」という)44.3%、前記反応原料13.9%、極性化合物3.0%であり、アリル基の転化率は64%であった。反応後、水相を上記滴定条件により酸化還元滴定を行ったところ、過酸化物の濃度は過酸化水素換算で0.1質量%未満であった。
なお反応原料及び得られたエポキシ化体のNMRデータは以下の通り。
反応前後の化合物のNMRデータは以下の通りであった。
H−NMR(400MHz、CDCl)δ値 3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール ジアリルエーテル:
2.32(12H,s,−CH),4.34(4H,dt,J=1.5,5.1Hz,O−CH−),5.27(2H,ddd,J=2.3,2.8,10.6Hz,−CH=CH ),5.44(2H,ddd,J=1.5,3.3,17.2Hz,−CH=CH ),6.06−6.19(2H,m,−CH=CH),7.18(4H,s,−C(Me)−)
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール ジグリシジルエーテル:
2.34(12H,s,−CH),2.75(2H,dd,J=2.8,4.9Hz,−O−CH−),2.90(2H,dd,J=4.3,4.9Hz,−O−CH−),3.36-3.41(2H,m,−CH−),3.73(2H,dd,J=5.8,1
1.0Hz,−O−CH−),4.07(2H,dd,J=3.3,11.0Hz,−O−CH−),7.18(4H,s,−C(Me)−)
(比較例1)
キレート化剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を添加しなかった以外は、上記実施例1と同様の方法で反応を行なった。反応開始4時間後に反応の進行が停止し、5時間目の有機相の組成比はLC面積%で前記エポキシ化体23.9%、前記中間体46.8%、前記反応原料27.2%、極性化合物2.0%であり、アリル基の転化率は49%であった。反応後、水相を上記滴定条件により酸化還元滴定を行ったところ、過酸化物の濃度は過酸化水素換算で0.1質量%未満であった。
(参考例1)
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩および酢酸パラジウム水溶液を添加せず、代わりに水0.42mlを添加した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。反応開始4時間後に反応の進行が停止し、5時間目の有機相の組成比はLC面積%で前記エポキシ化体39.8%、前記中間体43.6%、前記反応原料13.2%、極性化合物3.2%であり、アリル基の転化率は65%であった。反応後、水相を上記滴定条件により酸化還元
滴定を行ったところ、過酸化物の濃度は過酸化水素換算で0.1%未満であった。
Figure 0006641681
表1より実施例1のように、タングステン化合物を触媒金属として、キレート化剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩の存在下でエポキシ化反応を行った場合には、金属不純物としてパラジウムが存在するにもかかわらず、パラジウムが存在しない場合(参考例1)と同様に、添加した過酸化水素の分解を低く抑えることができた。
これに対し、比較例1では、金属不純物として微量のパラジウムが存在する反応系でエポキシ化を行なうと、通常であれば参考例1と同様の反応が進行するはずであるところ、添加した過酸化水素の30%が分解し、反応が途中で停止することがわかる。
これよりキレート化剤が金属不純物であるパラジウムとキレート化し、エポキシ化反応に用いた触媒金属の作用も低下させることなく反応が可能であり、さらに反応操作上も安全に行えることがわかる。
本発明の製造方法によれば、タングステン化合物等の触媒金属を用いたエポキシ化反応において、反応液中に存在する金属不純物による過酸化水素の分解を抑制することができ、工業スケールでのエポキシ化合物での製造を安全に、かつ効率よく行なうことができる。さらにハロゲン含有量の少ないエポキシ化合物を工業的に効率よく製造することができる。

Claims (8)

  1. 炭素−炭素二重結合を有する化合物の炭素−炭素二重結合を、触媒金属と、過酸化水素
    とを用いてエポキシ化するエポキシ化合物の製造方法であって、
    前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、アリルエーテルであり、
    前記触媒金属が、タングステン化合物であり、かつ、前記エポキシ化反応をオニウム塩
    又は第3級アミンと、キレート化剤であるアミノカルボン酸類との共存下で行ない、前記
    エポキシ化反応時のpHが2以上6以下の範囲であることを特徴とする、エポキシ化合物
    の製造方法。
  2. 前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、500ppm(μg/g)以下の金属不純
    物を含有することを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  3. 前記炭素−炭素二重結合を有する化合物と、前記触媒金属と、前記過酸化水素と、前記
    キレート化剤と、を含有する溶液中に含まれる金属不純物の含有量が500ppm(μg
    /g)以下であることを特徴とする、請求項2に記載のエポキシ化合物の製造方
    法。
  4. 前記金属不純物が、コバルト、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、鉄、及び銅から選
    ばれる少なくとも1つの金属または該金属を含む化合物であることを特徴とする、請求項
    2または3に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  5. 前記エポキシ化反応を、有機溶媒の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜4のい
    ずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  6. 前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、酸性水溶液で洗浄処理されたものであるこ
    とを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  7. 前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、キレート化剤水溶液で洗浄処理されたもの
    であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方
    法。
  8. 前記炭素−炭素二重結合を有する化合物が、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表
    されるものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ化合
    物の製造方法。

    一般式(1):
    (R23)n−(A)−(OR)m ・・・(1)
    (一般式(1)中、Aは芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の少なくともその一部が
    還元された基、及び脂肪族炭化水素基のいずれかを表し、OR基、R23以外の置換基を
    有していてもよい。
    Rはアリル基を表す。
    23は、アリル基を表す。
    は1以上の整数を表し、nは0以上の整数を表す。mとnの合計は2以上で
    ある。)

    一般式(2):
    Figure 0006641681
    (一般式(2)中、A、Aはそれぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基、芳香族炭化
    水素基の少なくともその一部が還元された基、及び脂肪族炭化水素基のいずれかを表し、
    OR基、X、R23以外の置換基を有していてもよい。それぞれの価数が2価である以
    外は、上記Aと同義である。
    は、直接結合又は置換基を有していてもよい2価の連結基を表わす。
    は1以上の整数を表し、mとnの合計は2以上である。
    R、R23、nについては、一般式(1)と同義である。)

    一般式(3):
    H−[(R23)n−(A(OR)m)−X]i−H ・・・(3)
    (一般式(3)中、R、R23は一般式(1)と同義である。
    、m、nは一般式(2)と同義である。
    は、直接結合、置換基を有していてもよいアルキレン基または2つ以上のアルキレ
    ン基を置換基として有するフェニレン基を表す。
    iは2以上の整数を表わす。)
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