JP6639261B2 - 積層体及び金属被膜形成方法 - Google Patents

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Description

本件発明は、樹脂基材に金属被膜を設けた積層体、及び、金属被膜形成方法に関する。
従来、配管の結合部分において流体の流出、流入を防ぐために、ゴム製のOリング等のシール部材が使用されている。Oリングの材質としては、耐熱性、耐油性、耐摩耗性等に優れる点で、フッ素ゴムが好適であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−235906号公報
しかしながら、流体が食品、化粧料等の臭いを発する物質である場合には、Oリングがフッ素ゴム製であっても、Oリングに臭いが付着することを防ぐことができないという問題がある。そこで、フッ素ゴムからなるOリングの表面に金属被膜を設けることにより、臭いの付着を防止することが考えられる。しかし、フッ素ゴムは金属被膜との親和性に乏しいために、金属被膜が剥がれやすいという不都合がある。
本発明の課題は、樹脂基材に対する密着性に優れた金属被膜を備える積層体、及び金属被膜形成方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、以下の積層体及び金属被膜形成方法を採用することで上記課題を達成するに至った。
本件発明に係る積層体は、フッ素ゴムからなる樹脂基材と、該樹脂基材の表面を被覆する無電解めっき法で形成した金属被膜とを備える積層体であって、当該樹脂基材は、当該無電解めっき法で形成した金属被膜を設ける表面に改質層を備え、当該樹脂基材と当該無電解めっき法で形成した金属被膜との剥離強度が0.8kN/m以上であることを特徴とする。
本件発明に係る積層体において、前記無電解めっき法で形成した金属被膜は、Cu−Ni−P合金又はNi−P合金からなることが好ましい。
本件発明に係る積層体は、前記無電解めっき法で形成した金属被膜上に電解法で形成した金属被膜を備えてもよい。
本件発明に係る積層体において、前記樹脂基材はOリングであってもよい。
また、本件発明に係る無電解めっき法で形成した金属被膜の形成方法は、紫外線を照射して、フッ素ゴムからなる樹脂基材の表面を改質する工程と、触媒金属イオンを含む触媒溶液に当該樹脂基材の表面を接触させて、当該樹脂基材の表面の改質された領域に触媒を付与する工程と、無電解めっき法により、当該樹脂基材の表面の触媒が付与された領域に金属を析出させ金属被膜を形成する工程を備えることを特徴とする。
本件発明の積層体によれば、フッ素ゴムからなる樹脂基材の表面を被覆する金属被膜が無電解めっき法で形成した金属被膜であると共に、当該金属被膜は改質層を介して樹脂基材に設けられていることにより、金属被膜の樹脂基材に対する密着性が優れており、金属被膜が樹脂基材から剥がれることを防ぐことができる。
また、本件発明の金属被膜形成方法によれば、フッ素ゴムからなる樹脂基材の表面を無電解めっき法で形成した金属被膜によって被膜した積層体を得ることができる。
フッ素ゴム製シートの表面を示すSEM画像である。 フッ素ゴム製シートの表面を示すAFM画像である。 フッ素ゴム製シートの赤外吸収スペクトルである。 実施例1,2の積層体の表面を示す画像である。 実施例1,2の積層体の剥離強度を示すグラフである。
以下、本件発明に係る積層体及び金属被膜形成方法の実施の形態を説明する。
1.積層体
まず、本件発明に係る積層体の実施の形態を説明する。本実施の形態の積層体は、フッ素ゴムからなる樹脂基材と、該樹脂基材の表面を被覆する無電解めっき法で形成した金属被膜とを備え、樹脂基材は無電解めっき法で形成した金属被膜側の表面に改質層を備える。無電解めっき法で形成した金属被膜とは、無電解めっき法により形成された金属被膜をいう。
フッ素ゴムからなる樹脂基材として、例えばOリングを挙げることができるが、これに限定されない。また、フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系(FFKM)等を用いることができ、例えば、NEXUS(登録商標)217(株式会社森清化工)を好適に用いることができる。次式に、NEXUS(登録商標)の構造式を示す。
本実施形態の積層体は、フッ素ゴムからなる樹脂基材としてのOリングの表面が、無電解めっき法で形成した金属被膜によって被覆されている。無電解めっき法で形成した金属被膜として、種々の金属、合金を用いることができ、例えば、Cu−Ni−P合金、Ni−P合金を好適に用いることができる。無電解めっき法で形成した金属被膜は、例えば厚さを0.05μm以上0.5μm以下、好ましくは0.1μm以上0.3μm以下とすることができる。
フッ素ゴムは金属被膜との親和性に乏しいために、通常の方法で形成された金属被膜の場合には、樹脂基材から金属被膜が剥がれやすい。しかしながら、本実施形態の積層体では、後述するように、紫外線の照射によって樹脂基材の表面が改質された後に、表面が改質された領域に無電解めっき法によって無電解めっき法で形成した金属被膜が形成されたことにより、改質層を介して無電解めっき法で形成した金属被膜が樹脂基材の表面に設けられている。このため、本実施形態の積層体では、無電解めっき法で形成した金属被膜が樹脂基材に強固に密着することができ、樹脂基材から剥がれることを防ぐことができる。例えば、樹脂基材に対する無電解めっき法で形成した金属被膜の剥離強度を0.8kN/m以上とすることができる。
さらに、本実施形態の積層体は、無電解めっき法で形成した金属被膜上に、電解めっき処理によって形成された電解法で形成した金属被膜を備えてもよい。電解法で形成した金属被膜として、種々の金属、合金を挙げることができ、例えば、銅を採用することができる。
2.金属被膜形成方法
次に、本件発明に係る金属被膜形成方法の実施の形態を説明する。本件発明に係る金属被膜形成方法は、樹脂基材の表面を改質する表面改質処理工程と、樹脂基材の表面に触媒を付与する触媒付与工程と、無電解めっき工程を順に行う。
(2−1)表面改質処理工程
本件発明では、フッ素ゴムからなる樹脂基材に対して、紫外線を照射することにより、樹脂基材の表面を改質する。例えば、樹脂基材の表面に対して、波長が180nm以上320nm以下の紫外光(紫外線)を、その表面照射量が0.5J/cm以上〜40J/cm以下となるように照射することにより、当該樹脂基材の表面を1nm以上100nm以下の深さで改質する。
(2−1−1)紫外線波長
180nm以上320nm以下の波長域の紫外光を樹脂基材の表面に照射することにより、樹脂基材の表面を改質することができる。その結果、後述する無電解めっき工程により樹脂基材の表面に金属被膜を形成する際に、これらの親水基と触媒及び/又は金属被膜との間の化学的な結合力、すなわちナノアンカー効果を得ることができ、樹脂基材の表面に強固に密着した金属被膜を形成することが可能になる。
ここで、180nm未満の波長の紫外光、例えば、10nm以上180nm未満の紫外光を酸素雰囲気下で樹脂基材の表面に照射した場合、樹脂基材の表面が過改質されたり、樹脂基材の内部劣化を招くことがあり好ましくない。また、320nm以下よりも長波長の紫外光を樹脂基材の表面に照射した場合、樹脂基材の表面を十分に改質することができないことがあり好ましくない。これらの観点から、樹脂基材の表面に照射する紫外光の波長は、180nm以上320nm以下であることが好ましい。
(2−1−2)表面照射量
また、上述のとおり、紫外光照射時において、樹脂基材の表面照射量(積算照射量)が0.5J/cm以上40J/cm以下になるようにする。表面照射量が当該範囲内であれば、光源と樹脂基材の表面との間の距離は特に限定されるものではない。樹脂基材の表面照射量が0.5J/cm未満である場合、上記樹脂基材の表面を十分に改質することができず、当該樹脂基材の表面に密着性の良好な金属被膜を形成することが困難なことがある。一方、樹脂基材の表面照射量が40J/cmを超える場合、樹脂基材の表面が過改質されたり、樹脂基材の内部劣化が生じる場合があるため、好ましくない。これらの観点から、樹脂基材1の表面照射量は、0.5J/cm以上40J/cm以下であることが好ましい。
(2−1−3)光源
また、樹脂基材の表面に紫外光を照射する際に、例えば、上記範囲内(180nm以上320nm以下)の波長の紫外光を出射する超高圧水銀灯や、KrF露光機(KrFステッパ)等を使用することができる。但し、本件発明において、樹脂基材の表面に上記範囲内の波長の紫外光を照射できればよく、当該範囲内の波長の紫外光を樹脂基材の表面に照射することができるものであれば、光源は特に限定されない。
樹脂基材の表面に上記波長範囲の紫外光を照射することにより、樹脂基材の表面を1nm以上100nm以下の深さ範囲で改質することができる。すなわち、樹脂基材に1nm以上100nm以下の厚みの改質層を表層部分に設けることができ、当該改質層により金属被膜との良好な密着性を得ることができると共に、樹脂基材の内部劣化を抑制することができる。改質された範囲が樹脂基材の表面から1nm未満の深さ、すなわち改質層の厚みが1nm未満であると、樹脂基材の表面に密着性の良好な金属被膜を形成するのが困難なことがある。また、改質された範囲が樹脂基材の表面から100nm以上の深さに及ぶと、樹脂基材の改質が進み、改質層の劣化が生じるため好ましくない。また、この場合、樹脂基材の内部劣化も生じる恐れがあるため好ましくない。
(2−1−4)改質深さ
上記観点から、樹脂基材の表面の改質深さは、1nm以上100nm以下とするのが好ましく、20nm以上80nm以下とするのがさらに好ましい。表面から20nm以上の深さまで改質することにより、改質層と金属被膜とのより十分な化学的な結合力を得ると共に、表面の改質に伴う浸食により十分な表面積が確保され、物理的なアンカー効果も大きくなる。また、樹脂基材の劣化を抑制するという観点から、樹脂基材の改質深さは表面から80nm以下であることがより好ましい。但し、当該改質深さ、すなわち改質層の厚みは、上記範囲内で樹脂基材、金属被膜等の材質、用途等に応じて適宜調整することが好ましい。
(2−2)アルカリ処理工程
本件発明では、表面改質処理工程の後、触媒付与工程を行うが、樹脂基材の表面を清浄化し、樹脂基材の親水性を高め、触媒金属及び/又は金属被膜とのより良好な密着性を得るという観点から、表面改質処理工程と触媒付与工程との間にアルカリ処理工程を設けることが好ましい。アルカリ処理は、樹脂基材の表面に残存した、表面改質により切れた高分子鎖等の密着性阻害の原因となる付着物を除去する等、樹脂基材の表面の清浄化を目的として行われる。また、樹脂基材の表面をアルカリ処理することにより、樹脂基材の表面をさらに改質して、改質表面積を大きくしたり、親水基から水素等を電離させる等により、樹脂基材の表面の親水性をより向上することができる。
(2−3)触媒付与工程(キャタリスト工程)
触媒付与工程では、表面改質により親水基が導入された樹脂基材を、触媒金属イオンを含む触媒溶液に接触させて、樹脂基材の表面に触媒を付与する。
触媒溶液は、例えば、Pd、Cu、Ag、Pt、Au等の触媒金属をイオンの状態で含む溶液であり、これらの触媒金属の各種金属塩を用いて調製することができる。また、触媒金属は、その後の無電解めっき工程において析出させる金属に応じて、適宜適切なものを選択することができるのは勿論である。例えば、無電解めっき工程において無電解ニッケルめっきを行う場合には触媒金属としてPd、Agを用いることができ、無電解銅めっきを行う場合には触媒金属としてPd、Cuを用いることができ、無電解金めっきを行う場合には触媒金属としてAu、Ptを用いることができ、無電解白金めっきを行う場合には触媒金属としてPtを用いることができる。
また、触媒を付与した後に、樹脂基材の表面を活性化させるための活性化処理(アクセレータ工程)を行ってもよいのは勿論である。活性化処理は、従来公知の方法等を適宜適用することができる。
(2−4)無電解めっき工程
無電解めっき工程では、無電解めっき法により、当該樹脂基材の表面の触媒が付与された領域に金属を析出させて無電解めっき法で形成した金属被膜を形成する。具体的には、触媒が付与された樹脂基材を無電解めっき液に浸漬することにより、触媒が付与された領域、すなわち触媒付与層上に金属を析出させて無電解めっき法で形成した金属被膜を得ることができる。本件発明において、樹脂基材の表面に、無電解めっき法により析出させる金属は、無電解めっきプロセスにより樹脂基材の表面に析出可能な金属であれば特に限定されるものではなく、Cu、Ni、Ag、Pd、Co、Au、Pt等のいかなる金属を析出させてもよく、これらの金属の各種合金を析出させてもよい。また、無電解めっき液は、目的とする金属を樹脂基材の表面に析出させることができれば、従来公知の無電解めっき液を含め、あらゆる無電解めっき液を使用することができる。
例えば、Cu−Ni−Pからなる無電解めっき法で形成した金属被膜を形成する場合には、銅イオン、ニッケルイオン、リンイオンに加えて、水酸化リチウムを含む無電解めっき液を用いることができる。この場合には、樹脂基材に対する密着性に優れ、色味がより黒い無電解めっき法で形成した金属被膜を得ることができる。
(2−5)電解めっき工程
その後、樹脂基材の表面に形成すべき金属被膜の膜厚等に応じて、電解めっき法により、無電解めっき法で形成した金属被膜上に金属を高さ方向に異方析出させて電解法で形成した金属被膜を形成してもよい。
なお、上記においては、コンディショニング処理について特に説明を行わなかったが、例えば、アルカリ処理と触媒付与工程との間にコンディショニング処理を行ってもよいのは勿論である。本件発明に係る金属被膜形成方法においては、上記各工程の前後に、樹脂基材の表面を改質した上で、樹脂基材の表面に金属被膜を形成する際に行われる各種前処理や後処理を適宜施してもよいのは勿論である。
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1では、樹脂基材として、フッ素ゴム(NEXUS(登録商標)217、株式会社森清化工)からなる厚さ2mmのシート(以下、フッ素ゴム製シート)を用い、次の処理を順に行うことにより、積層体を形成した。
(1)応力緩和工程
上記フッ素ゴム製シートを、20mm×20mm又は25mm×50mmの寸法に裁断した後に、温度120℃の乾燥炉で60分間加熱することにより、裁断時にフッ素ゴムシートの周縁部に付与された応力を緩和した。
(2)表面改質処理工程
表面改質処理工程では、小型紫外線表面処理装置(KOL1−300S、江東電気株式会社)を用い、照射距離を30mmとし、上記フッ素ゴム製シートに対して、波長253.7nmの紫外線及び波長184.9nmの紫外線を含む光線を照射することにより、フッ素ゴム製シートの表面を改質した。光線の照射時間は、3分間、5分間、7分間、10分間とした。波長253.7nmの紫外線の照射強度は60mW/cmであり、波長184.9nmの紫外線の照射強度は8mW/cmであった。
次に、未処理のフッ素ゴム製シート、及び、表面改質されたフッ素ゴム製シートについて、走査型顕微鏡(SEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)によって、表面を観察した。図1にSEM(倍率200倍及び2000倍)によって得られた画像を示し、図2にAFM(測定範囲20μm角)によって得られた画像を示す。図1及び図2から、表面改質処理によってフッ素ゴム製シートの表面が粗くなっていることが観察された。また、図2の画像から平均面粗さ(Ra)を測定したところ、表面改質前は171nmであり、表面改質後は207nmであった。
(3)アルカリ処理工程
次に、表面改質されたフッ素ゴム製シートを、温度65℃の100g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に3分間浸漬することによりアルカリ処理を施し、その後、4段水洗を行った。
次に、未処理のフッ素ゴム製シート、表面改質されたフッ素ゴム製シート、及びアルカリ処理されたフッ素ゴム製シートについて、赤外線分光分析装置(FT−IR)によって、表面を分析した。図3に結果を示す。図3から、未処理では、1700cm−1付近においてC=C(炭素の二重結合)の吸収を示すピーク(図中の丸印で囲まれたピーク)が出現したが、表面改質処理後では、当該ピークが消滅したことが確認された。
また、未処理のフッ素ゴム製シート、表面改質されたフッ素ゴム製シート、及びアルカリ処理されたフッ素ゴム製シートに対して、表面に水滴を滴下し接触角を測定することにより、濡れ性を評価した。結果を表1に示す。
表1から、表面改質処理及びアルカリ処理により、未処理と比較して接触角が低下し、濡れ性が向上したことが明らかである。
(4)コンディショナー工程
次に、アルカリ処理が施されたフッ素ゴム製シートを、温度45℃のコンディショナー溶液に1分間浸漬することによりコンディショナーを施し、その後、4段水洗と、温水洗を行った。コンディショナー溶液として、クリーナーコンディショナー231(ロームアンドハース社)を用いた。
(5)触媒付与工程及び活性化工程
次に、コンディショナーが施されたフッ素ゴム製シートを、温度45℃の触媒溶液に5分間浸漬することにより、フッ素ゴム製シートの表面改質された領域に触媒を付与した。触媒溶液として、0.35g/Lの塩酸と0.3g/LのPdClとを含む溶液を用いた。その後、4段水洗を行った。
次に、触媒が付与されたフッ素ゴム製シートを、温度45℃の30g/Lの次亜リン酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬することにより、表面を活性化させ、その後、4段水洗を行った。
本実施形態では、上記触媒付与工程及び上記活性化工程を1サイクルとして、2サイクル行った。
(6)無電解めっき処理工程
次に、触媒付与及び活性化されたフッ素ゴム製シートを、温度45℃の無電解めっき液(無電解Cu−Ni−Pめっき液)に3分間浸漬して無電解めっき処理を施すことにより、厚さ0.2μmの無電解めっき法で形成した金属被膜(無電解Cu−Ni−P被膜)を形成した。表2に、無電解めっき液の組成を示す。pHは9.0とした。そして、4段水洗を行った後、温度120℃で30分間熱処理を施した。以上により、フッ素ゴム製シートの表面が無電解Cu−Ni−P被膜によって被覆されたシート状積層体が形成された。
また、触媒付与及び活性化されたフッ素ゴム製シートを、上記無電解めっき液に5分間浸漬して無電解めっき処理を施すことにより、厚さ0.3μmの無電解めっき法で形成した金属被膜(無電解Cu−Ni−P被膜)を備えるシート状積層体を形成した。
また、樹脂基材として、上記フッ素ゴム製シートに代えて、同一素材のフッ素ゴムからなり、外径32mm、内径25mmのOリング(材質:NEXUS217、株式会社森清化工)を用いた点と、無電解めっき液への浸漬時間を3分間とした以外は、上記と全く同一にして、厚さ0.2μmの無電解めっき法で形成した金属被膜(無電解Cu−Ni−P被膜)を備えるリング状積層体を形成した。
本実施例では、表3に示す無電解めっき液(無電解Ni−P液)を用い、pHを8.0、無電解めっき液への浸漬時間を3分間とした以外は、実施例1と全く同一にして、上記(1)〜(6)の各工程を行うことにより、フッ素ゴム製シート及びフッ素ゴム製Oリングの表面が無電解Ni−P被膜によって被覆されたシート状積層体及びリング状積層体を形成した。
〔比較例1〕
本比較例では、上記(2)の表面改質処理工程を行わず、無電解めっき液(無電解Cu−Ni−P)への浸漬時間を3分間とした以外は、実施例1と全く同一にして、フッ素ゴム製シートの表面が無電解Cu−Ni−P被膜によって被覆されたシート状積層体を形成した。
〔比較例2〕
本比較例では、上記(2)の表面改質処理工程を行わず、無電解めっき液(無電解Ni−P)への浸漬時間を3分間とした以外は、実施例2と全く同一にして、フッ素ゴム製シートの表面が無電解Ni−P被膜によって被覆されたシート状積層体を形成した。
〔評価〕
まず、実施例1,2及び比較例1,2のシート状積層体の表面を市販のデジタルカメラで撮影した。結果を図4に示す。ここでは、実施例1,2の積層体として、表面改質時間が1分間であり、無電解めっき液の浸漬時間が3分間のものを用いた。図4から、上記(2)の表面改質処理工程を行わなかった比較例1,2のシート状積層体は、無電解Cu−Ni−P被膜又は無電解Ni−P被膜の一部がフッ素ゴム製シートに密着しておらず、無電解めっき法で形成した金属被膜の樹脂基材に対する密着性が低いことが明らかである。一方、上記(2)の表面改質処理工程を行った実施例1,2のシート状積層体は、無電解Cu−Ni−P被膜又は無電解Ni−P被膜が剥離することなくフッ素ゴム製シートに強固に密着しており、無電解めっき法で形成した金属被膜の樹脂基材に対する密着性が優れることが明らかである。
次に、得られた実施例1,2及び比較例1,2のシート状積層体について、JIS H 8504に則って引きはがし試験を行い、各無電解めっき法で形成した金属被膜の密着強度を評価した。
まず、寸法25mm×50mmのフッ素ゴム製シートを用いた実施例1,2及び比較例1,2のシート状積層体を、室温の1%の硫酸水溶液に1分間浸漬し、その後、4段水洗を行った。次に、室温で電解銅めっき処理を施すことにより、厚さ20μmの電解Cu被膜を形成し、その後、4段水洗を行った。次に、温度120℃で30分間熱処理を施した。以上により、各無電解めっき法で形成した金属被膜の表面が電解Cu被膜によって被覆された積層体が形成された。
次に、電解Cu被膜を備える積層体の表面に幅10mmの条痕を形成し、積層体の長手方向の一方の端部において無電解めっき法で形成した金属被膜(無電解Cu−Ni−P被膜又は無電解Ni−P被膜)及び電解Cu被膜を剥ぎ取り、試験片とした。続いて、条痕が形成された積層体の表面に所定のテープを貼り付けた後、引張試験機(Strograph E2−Lo5、株式会社東洋精機製作所)を用いて、当該所定のテープを積層体の表面に対して垂直方向に速度50mm/分で引っ張ることにより積層体の表面から引き剥がした。結果を図5に示す。
図5から、表面改質処理工程を行わなかった比較例1,2の積層体(図中の紫外線照射時間が0分間のデータ)は、フッ素ゴム製シートに対する密着性が非常に悪いことが明らかである。一方、表面改質処理工程を行った実施例1,2の積層体(図中の紫外線照射時間が3,5,7,10分間のデータ)は、フッ素ゴム製シートに対する密着性が優れることが明らかである。また、表面改質処理工程を行った実施例1,2の積層体は、紫外線照射時間が3分間のときに剥離強度が最大であり、照射時間が長くなるにつれて剥離強度が低下するものの、照射時間が7分間のときには定常状態に達していて、照射時間によらず剥離強度が0.8kN/m以上を示すことが明らかである。
次に、表面改質処理時間が10分間、無電解めっき液(無電解Cu−Ni−P液)への浸漬時間が3分間又は5分間である実施例1のシート状積層体(各3個)について、上記と全く同一にして、表面に電解Cu被膜を形成し、上記引きはがし試験を行った。結果を表4に示す。
表4から、浸漬時間が5分間であって膜厚が0.3μmのシート状積層体は、浸漬時間が3分間であって膜厚が0.2μmのシート状積層体と比較して、密着性に優れることが明らかである。
次に、得られた実施例1,2のシート状積層体について、JIS K 5600に則ってクロスカット試験によって各無電解めっき法で形成した金属被膜の密着強度を評価した。ここでは、実施例1,2のシート状積層体として、表面改質時間が10分間のものを用意した。
まず、寸法20mm×20mmのフッ素ゴム製シートを用いた実施例1,2のシート状積層体について、室温の1%の硫酸水溶液に1分間浸漬し、その後、4段水洗を行った。次に、室温で電解銅めっき処理を施すことにより、厚さ10μmの電解Cu被膜を形成し、その後、4段水洗を行った。次に、温度120℃で30分間熱処理を施した。次に、室温の10g/Lスルファミン酸溶液に1分間浸漬し、その後、4段水洗を行った。次に、温度50℃で電解ニッケルめっき処理を施すことにより、厚さ10μmの電解Ni被膜を形成し、その後、4段水洗を行った。次に、温度120℃で30分間熱処理を施した。以上により、各無電解めっき法で形成した金属被膜の表面が電解Cu被膜及び電解Ni被膜によって順に被覆された積層体が形成された。なお、銅よりもニッケルの方が耐薬品性に優れるため、最表面をニッケル被膜とした。
次に、電解Cu被膜及び電解Ni被膜を備える積層体の表面に、2mm間隔で碁盤目状に条痕を形成し、当該表面に所定のテープを貼り付けた後、当該所定のテープを剥離した。剥離した後の積層体の表面を観察したところ、いずれの格子の目からも被膜の剥がれは観察されなかった(分類0)。従って、実施例1,2の積層体は、フッ素ゴム製シートに対する密着性が優れることが判明した。
次に、得られた実施例1,2のシート状積層体について、サーマルサイクル試験によって各無電解めっき法で形成した金属被膜の密着強度を評価した。ここでは、実施例1,2のシート状積層体として、表面改質時間が10分間のものを用意した。
まず、寸法20mm×20mmのフッ素ゴム製シートから得られた実施例1,2のシート状積層体について、クロスカット試験のときと同様にして、各無電解めっき法で形成した金属被膜の表面が電解Cu被膜及び電解Ni被膜によって順に被覆された積層体を形成した。
次に、電解Cu被膜及び電解Ni被膜を備える積層体を、温度120℃の乾燥炉に1時間入れ、続いて、温度約−5℃の冷凍庫に1時間入れることを1サイクルとして、10サイクル行った後、その表面におけるクラックの有無を目視で観察したところ、クラックは全く観察されなかった。従って、実施例1,2の積層体は、耐熱性に優れることが明らかである。
次に、得られた実施例1,2のリング状積層体について、互いに対向する2つの部位を外径側から内径側に向かって外径が10mmとなるまで押圧し、続いて、当該押圧を解除した後、積層体の表面におけるクラックの有無を目視で観察したところ、クラックは全く観察されなかった。従って、実施例1,2のリング状積層体は、樹脂基材の変形に対して追従可能であることが明らかである。
本件発明によれば、紫外線を照射してフッ素ゴムからなる樹脂基材の表面を改質する方法を採用しているため、当該樹脂基材の表面に、密着性に優れた無電解めっき法で形成した金属被膜を形成することができる。このため、本件発明によれば、フッ素ゴムからなる樹脂基材としてOリングを採用したとき、当該Oリングに臭いが付着することを防止することができ、結果、その交換回数を減らすことができ、経済的である。

Claims (5)

  1. フッ素ゴムからなる樹脂基材と、該樹脂基材の表面を被覆する無電解めっき法で形成した金属被膜とを備える積層体であって、
    当該樹脂基材は、当該無電解めっき法で形成した金属被膜を設ける表面に改質層を備え、
    当該樹脂基材と当該無電解めっき法で形成した金属被膜との剥離強度が0.8kN/m以上であることを特徴とする積層体。
  2. 前記無電解めっき法で形成した金属被膜は、Cu−Ni−P合金又はNi−P合金からなる請求項1に記載の積層体。
  3. 前記無電解めっき法で形成した金属被膜上に電解めっき法で形成した金属被膜を備える請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  4. 前記樹脂基材はOリングである請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の積層体。
  5. 紫外線を照射して、フッ素ゴムからなる樹脂基材の表面を改質する工程と、
    触媒金属イオンを含む触媒溶液に当該樹脂基材の表面を接触させて、当該樹脂基材の表面の改質された領域に触媒を付与する工程と、
    無電解めっき法により、当該樹脂基材の表面の触媒が付与された領域に金属を析出させ金属被膜を形成する工程を備えることを特徴とする無電解めっき法で形成した金属被膜の形成方法
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