JP5406505B2 - 水性化成処理液および化成処理ステンレス鋼板 - Google Patents

水性化成処理液および化成処理ステンレス鋼板 Download PDF

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Description

本発明は水性化成処理液および化成処理ステンレス鋼板に関する。
ステンレス鋼板は、近年、自動車のエンジンのシリンダーヘッドガスケット等のより過酷な条件下で使用される部材への適用が検討されている。このような用途では、ステンレス鋼板は、表面にゴム塗膜が形成された塗装ステンレス鋼板として用いられることが多い。この際、ステンレス鋼板と塗膜の密着性が十分でないと、高熱かつ高湿潤な過酷な環境において、塗膜が剥離し、所期のシール性能が発現されないという問題があった。
ところで、特許文献1には、ステンレス鋼板と有機系接着剤の接着性を向上させるために、ステンレス鋼板に特定の表面処理を施す方法が開示されている。具体的には、オキシ硝酸ジルコニウムを含む化成処理液で表面を処理する方法が開示されている。これにより、沸騰水で72時間煮沸した後でも、接着剤と良好に接着したステンレス鋼板が得られるとされる。また、同文献には、化成処理液が、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、またはタンニン酸を含むと、前記接着性が低下することも開示されている。
特開2007−46097号公報
発明者らは、前記特許文献に開示されているオキシ硝酸ジルコニウムを含む化成処理液で処理したステンレス鋼板について、その表面に塗装を施した塗装ステンレス鋼板を調製した。そして、この塗装ステンレス鋼板を50%ロングライフクーラントを含有する120℃の熱水に浸漬して、過酷な条件下での塗膜密着性を検討した。その結果、このような塗装ステンレス鋼板は、過酷な条件においては塗膜密着性が十分でないことが確認された。
すなわち、高温熱水下での塗膜密着性に優れた塗装鋼板を与える表面処理ステンレス鋼板が求められていたが、未だこれらの性能を満足する表面処理ステンレス鋼板は存在しなかった。かかる事情に鑑み、本発明は、高温熱水下での塗膜密着性(「耐熱水性」ともいう)に優れた塗装鋼板を与える表面処理ステンレス鋼板、およびその化成処理液を提供することを目的とする。
発明者は鋭意検討した結果、オキシ硝酸ジルコニウムに、フェノール樹脂またはシランカップリング剤を含む化成処理液により上記課題が解決できることを見出した。すなわち上記課題は以下の本発明により解決される。
[1](A)オキシ硝酸ジルコニウムを金属Zr濃度にして1〜15g/L含み、かつ
(B)フェノール樹脂を0.3〜20g/L含む、水性化成処理液。
[2](A)オキシ硝酸ジルコニウムを金属Zr濃度にして1〜15g/L含み、かつ
(C)シランカップリング剤を0.5〜50g/L含む、水性化成処理液。
[3]前記フェノール樹脂は、酸溶解性である、[1]記載の水性化成処理液。
[4]前記シランカップリング剤は、エポキシ系シランカップリング剤である、[2]記載の水性化成処理液。
[5]ステンレス鋼板の表面に、[1]〜[4]いずれかに記載の水性化成処理液により形成された化成処理皮膜を有する、化成処理ステンレス鋼板。
[6][5]記載の化成処理ステンレス鋼板の上に、第1の塗膜、および第2の塗膜を有する塗装ステンレス鋼板。
[7]前記第1の塗膜は、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂を含み、
前記第2の塗膜は、フッ素ゴムまたはニトリル−ブタジエンゴムを含む、[6]記載の塗装ステンレス鋼板。
[8][6]または[7]記載の塗装ステンレス鋼板を含んでなる、自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケット。
[9]ステンレス鋼板の表面に、[1]〜[4]いずれかに記載の水性化成処理液を塗布する工程、および
前記水性化成処理液が塗布されたステンレス鋼板を100〜300℃で加熱する工程を含む、
表面処理ステンレス鋼板の製造方法。
本発明により、高温熱水下での塗膜密着性に優れた塗装ステンレス鋼板が提供できる。
1.水性化成処理液
本発明の水性化成処理液(以下単に「化成処理液」ともいう)は、特定量のオキシ硝酸ジルコニウムと、特定量のフェノール樹脂または特定量のシランカップリング剤を含むことを特徴とする。水性化成処理液とは、鋼板の化成処理に用いられる液であって、水性である液をいう。すなわち、本発明の水性化成処理液は、水を溶媒とすることが好ましい。
(A)オキシ硝酸ジルコニウム
オキシ硝酸ジルコニウムとは、ZrO(NO・2HOで表される化合物である。オキシ硝酸ジルコニウムの含有量は、水性化成処理液中、金属Zr濃度にして1〜15g/Lである。金属Zr濃度とは、オキシ硝酸ジルコニウムに由来するZr元素の化成処理液中の濃度である。ZrO(NO・2HOの分子量は267、ZrO(NOの分子量は231、Zrの原子量は91である。例えば、1Lの純水にオキシ硝酸ジルコニウムを10g溶解すると、その溶液は、10g×91/267=3.4gのZr元素と、10g×36/267=1.35gの水を新たに含むことになる。よって、この溶液の金属Zr濃度は、3.4/(1+0.00135)=3.4g/Lとなる。
オキシ硝酸ジルコニウムは、Zr−O結合からなるネットワークを有する化成処理皮膜を形成する。この際、化成処理皮膜の表面にはZrの酸化物や水酸化物が存在する。これらの酸化物や水酸化物は、塗膜中の水酸基、カルボキシル基またはエステル基等と親和性が高く、場合によっては水素結合やエステル結合を起こして化学的に結合しうる。よって本発明の化成処理皮膜は、塗膜との密着性が良好となり、耐熱水性に優れた塗装ステンレス鋼板を与える。
水性化成処理液中の金属Zr濃度(以下単に「Zr濃度」ともいう)が、前記下限値未満であると、化成処理皮膜と塗膜の密着性が十分でない。一方、Zr濃度が前記上限値を超えると、化成処理皮膜が脆くなる。
従来、Zrを含む化成処理皮膜を生成する方法として、ジルコニウムフッ化アンモニウム等、Zrのフッ化物を用いる方法が知られている。ジルコニウムフッ化アンモニウムは、NH とZrF 2−に電離して水に溶解する。表面に形成された化成処理皮膜が加熱される際に、NH はNHとなって揮発する可能性があるが、ZrF 2−は、すぐに系中に存在するH等の陽イオンをカウンターとして補足し、水に溶解した状態を保持すると考えられる。よってジルコニウムフッ化アンモニウム等、Zrのフッ化物は、化成処理時の湯洗過程で、Zr成分が流出してしまうので、化成処理皮膜中にZrが残存しにくくなる。また、化成処理時にZr成分が流出しなかったとしても、Zrのフッ化物を含む化成処理皮膜は、高熱水下に放置されると、Zr成分が流出し、所期の化成処理の効果を発現しにくくなると考えられる。
一方、本発明では、オキシ硝酸ジルコニウムを用いる。オキシ硝酸ジルコニウムは、ZrO2+とNO に電離して水に溶解する。加熱により、NO はNOとなって揮発する可能性がある。しかしZrO2+は系中から陰イオンをカウンターとして補足しにくく、水に溶解できなくなると考えられる。最終的に、Zr−Oのネットワークを有するZrOとなる。よって、本発明の化成処理皮膜は、化成処理皮膜中にZrが残存しやすく、塗膜との密着性に優れる。さらには、本発明の化成処理ステンレス鋼板は、高熱水下に放置されてもZr成分が流出しにくく、耐熱水性に優れた塗装ステンレス鋼板を与えると考えられる。
これらは、表1の分析結果から推察できる。表1は、鋼板表面に本発明の化成処理液、フッ化ジルコニウムアンモニウム、またはフッ化ジルコニウム酸を含む本発明以外の化成処理液を塗布して形成した化成処理皮膜の沸騰水浸漬前後での蛍光X線分光法によるZr量の定量分析結果を示す。蛍光X線分光法による定量分析は検量線法により行った。検量線の作成には、まず、成分濃度を変化させた処理液をサンプルと同一基材に塗布・乾燥して皮膜を形成し、Zr・Kα蛍光X線強度を測定した。その後、混酸液(塩酸+過酸化水素水+純水)で皮膜を完全に溶解し、溶解液に含有される皮膜由来の金属元素をICP−AES法により定量分析した。ICP−AES法で得られた定量値を用いて、サンプル面積当りの金属付着量を算出し、蛍光X線強度に換算した検量線を作成した。化成処理皮膜は、加熱温度を120℃とし、定法により形成された。
本発明の化成処理皮膜は、浸漬前後でZr元素はあまり減少していないが、本発明以外の化成処理皮膜は、浸漬前後でZr元素の著しい減少が見られる。
このようにして測定される化成処理皮膜中のZr元素の量は、酸化物の状態にあるZrや水酸化物の状態にあるZrの量を含んでいる。
Figure 0005406505
(B)フェノール樹脂
本発明の水性化成処理液は、フェノール樹脂を含む。フェノール樹脂とは、フェノール骨格を含む樹脂をいう。フェノール樹脂の例には、フェノールノボラック樹脂およびレゾール樹脂が含まれる。
本発明のフェノール樹脂は酸性の水溶液に溶解するものが好ましい。オキシ硝酸ジルコニウムを含む水溶液は酸性であるからである。酸溶解性のフェノール樹脂の好ましい例には、レゾール樹脂、および特開2004−107432に開示されるアミン変性メタクレゾールノボラック樹脂が挙げられる。また、本発明においては、水性化成処理液中、フェノール樹脂の配合量は数%以下であるため、通常使用されるフェノール樹脂(例えば群栄化学工業製レヂトップPL−4667等)やエマルジョンタイプのフェノール樹脂(例えば住友ベークライト製スミライトレジンPR−14170等)を使用してもよい。
フェノール樹脂は化成処理皮膜の強度を向上させる。さらに、フェノール樹脂は極性基である水酸基を有するため、前述のとおり塗膜との密着性を向上させる。
このような観点から、フェノール樹脂の添加量は、水性化成処理液中、0.3〜20g/Lである。フェノール樹脂の添加量が前記下限値未満であると、塗膜との十分な密着性が得られない。またフェノール樹脂の添加量が前記上限値を超えると、化成処理皮膜の硬度が高くなりすぎて、加工時や衝撃時の密着性が低下する。
(C)シランカップリング剤
本発明の水性化成処理液は、シランカップリング剤を含む。シランカップリング剤とは、分子内に加水分解でシラノール基(Si−OH)を与えるアルコキシ基等と、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基やアルキル基等の有機基を有する化合物をいう。
シランカップリング剤は、Si−O結合を含むネットワークを形成するので化成処理皮膜の強度を向上させると同時に、有機基により塗膜との密着性を向上させる。
本発明においては反応性に優れるエポキシ基を分子内に含む、エポキシ系シランカップリング剤が好ましい。
このような観点から、シランカップリング剤の添加量は、水性化成処理液中、0.5〜50g/Lである。シランカップリング剤の添加量が前記下限値未満であると、塗膜との十分な密着性が得られない。またシランカップリング剤の添加量が前記上限値を超えると、化成処理皮膜が脆くなる。
本発明の化成処理液は、フェノール樹脂かシランカップリング剤のいずれかを含んでいればよい。しかし、本発明の化成処理液はフェノール樹脂とシランカップリング剤の双方を含んでいてもよい。この場合、双方の合計の添加量が、水性化成処理液中、0.3〜50g/Lであることが好ましい。
(D)その他の成分
本発明の化成処理液は、シリカやアルミナの微粒子をさらに含んでいてもよい。これらは化成処理皮膜に微分散して、皮膜の強度を向上させるとともに、皮膜の表面積を増大させて塗膜の密着性を向上させる。シリカやアルミナの微粒子の例には、シリカゾル、アルミナゾル、コロイダルシリカ、および溶融シリカが含まれる。これらは、水性化成処理液中、0〜10g/L添加されることが好ましい。
2.水性化成処理液の製造方法
本発明の水性化成処理液は、発明の効果を損なわない範囲で任意に製造できる。すなわち、各成分を、公知の混合手段で混合して得てよい。公知の混合手段の例には、ディスパーザー、ホモジナイザー、ミキサー等の分散機が含まれる。
本発明の水性化成処理液に用いられる溶剤は水であるが、水性の有機溶剤を含んでいてもよい。本発明の水性化成処理液は、固形分濃度が、3〜12質量%であることが好ましい。
3.本発明の水性化成処理液により得られる化成処理ステンレス鋼板
本発明の水性化成処理液をステンレス鋼板の表面に塗布し、加熱すると、化成処理ステンレス鋼板が得られる。塗布された膜のうち、乾燥前の膜を「塗布膜」、乾燥後の膜を「化成処理皮膜」と呼ぶ。化成処理皮膜は片面または両面に形成される。
ステンレス鋼板とは、板状のステンレスである。本発明においては、オーステナイト系またはフェライト系ステンレス鋼板を用いることが好ましい。
鋼板表面に塗布される化成処理液の量は、化成処理皮膜に所望の量のZrが含まれるように調整してよい。
本発明の化成処理皮膜は、Zrを6〜35mg/m含むことが好ましく、8〜25mg/m含むことがより好ましい。化成処理皮膜中のZrの量は、蛍光X線分光法による検量線法により測定できる。
本発明の化成処理皮膜は、フェノール樹脂を3〜20mg/m含むことが好ましく、5〜10mg/m含むことがより好ましい。化成処理皮膜中のフェノール樹脂の量は、赤外線分光法の吸光度法により測定できる。
本発明の化成処理皮膜は、シランカップリング剤を3〜20mg/m含むことが好ましく、3〜10mg/m含むことがより好ましい。化成処理皮膜中のシランカップリング剤の量は、赤外線分光法の吸光度法によるシランカップリング剤の有機官能基(エポキシ基やアミノ基等)の赤外線吸収ピークから測定できる。
4.塗装ステンレス鋼板
本発明の塗装ステンレス鋼板は、化成処理液の塗布に先立って、ステンレス鋼板表面の清浄化、活性化を行うことが好ましい。具体的には、鋼板表面の汚染物質をアルカリ脱脂、溶剤脱脂などにより除去する清浄化、および、リン酸塩溶液や硫酸性溶液などをスプレーして弱酸洗して表面の活性化を実施し、最後に湯洗等によって酸洗液を洗い流す。
本発明の塗装ステンレス鋼板は、本発明の化成処理ステンレス鋼板の上に、第1の塗膜、および第2の塗膜を有する。
第1の塗膜はプライマとも呼ばれ、鋼板の耐食性を向上させるとともに、第2の塗膜との密着性を向上させる。第1の塗膜には公知のものを用いてよいが、第1の塗膜は、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸またはメタクリル酸エステルを重合してなる樹脂である。これらの化合物は公知のものであればよい。
エポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基を含む化合物を重合してなる樹脂である。これらの化合物は公知のものであればよい。
ここで用いられるフェノール樹脂とは、フェノール骨格を含む樹脂であり、ノボラック型、レゾール型を問わず使用できる。プライマ用途のフェノール樹脂は水溶性の必要は無い。
(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂は、架橋されていてもよい。
第1の塗膜の厚みは、限定されないが、0.05〜3μmが好ましい。
本発明においては、第1の塗膜は(メタ)アクリル樹脂が好ましい。(メタ)アクリル樹脂は分子内にエステル基やカルボキシル基を有するので、化成処理皮膜中のZrの酸化物や水酸化物、フェノール樹脂、またはシランカップリング剤と化学反応を起こして、良好に密着する。そのため(メタ)アクリル樹脂を第1の塗膜とすると、耐熱水性に優れた塗装ステンレス鋼板が得られる。
(メタ)アクリル樹脂を第1の塗膜とする塗装ステンレス鋼板は、自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケットとして用いられる場合、極めて優れた耐熱水性を有する。シリンダーヘッドガスケットは、高温において不凍液(ロングライフクーラントともいう)であるエチレングリコールや水に接触させられる。エチレングリコールは水よりも塗膜を溶解させやすい。しかしながら、第1の塗膜を(メタ)アクリル樹脂とする塗装ステンレス鋼板は、化成処理皮膜と強固に密着しているため、高温下でエチレングリコールと接触させられても、塗膜はダメージを受けないと考えられる。
第2の塗膜は、第1の塗膜の上に形成される。本発明において第2の塗膜は、フッ素ゴムまたはニトリル−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
フッ素ゴムは公知のものを用いてよいが、その好ましい例には、フッ化ビニリデン−フルオロプロペン共重合体のポリオール加硫型フッ素ゴムが含まれる。ニトリル−ブタジエンゴムは公知のものを用いてよい。
第2の塗膜の厚みは、限定されないが、10〜50μmが好ましい。
第1および第2の塗膜は片面または両面に形成される。
本発明の塗装ステンレス鋼板は、発明の効果を損なわない程度で任意に製造できるが、以下その好ましい製造方法を記載する。
本発明の塗装ステンレス鋼板は、
(a)本発明の化成処理ステンレス鋼板に、第1の塗膜を形成する工程、
(b)前記第1の塗膜の上に、第2の塗膜を形成する工程、および
(c)前記鋼板を加熱する工程、を経て製造されることが好ましい。
(a)、(b)の工程において、塗料を鋼板に塗布する方法の例には、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、ナイフコートによる方法が含まれるが特に限定されない。塗布膜の厚みは、最終的に得られる塗膜が所望の膜厚となるように調整される。
第1の塗膜を形成する塗料は、前述の(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂を含むことが好ましい。また第2の塗膜を形成する塗料は、フッ素ゴム塗料、またはニトリル−ブタジエンゴム塗料であることが好ましい。
(c)の工程(「加硫工程」ともいう)は、100〜300℃において、20〜60分程度加熱して行われることが好ましい。
特に、後述するとおり、本発明の塗装ステンレス鋼板は、自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケットとして有用である。ガスケットは、高いシール性が求められるため、第2の塗膜には、高い耐久性が求められる。そのため、第2の塗膜は加硫されていることが好ましい。この加硫反応は公知の方法で行ってよいが、前述したように100〜300℃の高温で行われることが好ましい。
図1は、本発明の塗装ステンレス鋼板の概要を示す断面図である。図中、10はステンレス鋼板、20は化成処理皮膜、30は第1の塗膜、40は第2の塗膜である。
5.自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケット
本発明の自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケット(以下単に「ガスケット」ともいう)は、本発明の塗装ステンレス鋼板を含んでなる。
自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケットとは、シリンダーブロックとシリンダーヘッドの間をシールするために使用される部品である。本発明のガスケットは、無垢のステンレス鋼板を、両面に化成処理皮膜と第1および第2の塗膜が形成された本発明の塗装ステンレス鋼板(「両面塗装ステンレス鋼板」ともいう)で挟んで構成されることが好ましい。ガスケットの形状は特に限定されず、公知の形状としてよい。
図2は、本発明のガスケットの一部の断面図である。図中、50は両面塗装ステンレス鋼板、60は無垢のステンレス鋼板である。
[実施例1]
オキシ硝酸ジルコニウム(第一稀元素化学(株)製、ジルコゾールZN 固形分60%)を20g(Zrとして4.1g/L)、フェノール樹脂(群栄化学工業(株)製、レヂトップPL−4667 固形分50%)を12g、コロイダルシリカ(日産化学(株)製 スノーテックスOS 固形分20%)を20g準備して、1Lの純水に溶解して水性化成処理液を得た。
板厚0.2mmのSUS301Hステンレス鋼板の片面に前記化成処理液を塗布し、120℃で加熱して化成処理液を乾燥した。このようにして得た化成処理ステンレス鋼板を、蛍光X線分析装置および赤外分光分析装置を用いて表面分析した。その結果、化成処理皮膜中に、Zrは12mg/m、フェノール樹脂は6mg/m、シリカは12mg/m存在することが確認された。
前記の化成処理ステンレス鋼板の表面に、アクリル系塗料(DIC(株)アクリディックA−405)を定法により塗装して、乾燥膜厚が1μmの塗膜を形成した。
続いて、前記塗膜の上に、フッ素系ゴム塗料(ダイキン工業(株)製 ダイエルDPA−382)を定法により塗装して、乾燥膜厚が25μmの塗膜を形成した。
このようにして得られた塗装ステンレス鋼板は、以下のように評価された。
1)初期の塗膜密着性
塗装ステンレス鋼板に塗装面を外側にして180度曲げ加工を施した。曲げ加工部にセロハンテープを貼付し、当該テープを剥離した。曲げ加工部の状態を観察して、剥離が観察されなかったものを○、テープ貼り付け面積に対して10%以下の剥離が観察されたものを△、剥離面積が10%を超えたものを×と判定した。
2)熱水浸漬試験
曲げ加工を施していない塗装ステンレス鋼板を、120℃の熱水に240時間、500時間浸漬したサンプルを準備した。それぞれのサンプルについて、碁盤目試験(JIS−K5600 5−6に準拠)を実施した。カッターナイフによりステンレス鋼下地に達する間隔1mm、桝目100個の碁盤目状切込みを入れ、セロハンテープの貼り付け・引き剥がし後に塗膜の剥離状況をカウントした。残存率により耐熱水性を評価した。
3)熱クーラント液浸漬試験
トヨタ(株)製、ロングライフクーラント液と純水を体積比にして1:1混合して、クーラント液を調製した。
曲げ加工を施していない塗装ステンレス鋼板を、120℃の前記クーラント液に240時間、500時間浸漬したサンプルを準備した。それぞれのサンプルについて、2)熱水浸漬試験等同様に、碁盤目試験(JIS−K5600 5−6に準拠)を実施し、残存率により耐熱クーラント水性を評価した。
[実施例2]
化成処理皮膜中のZrが15mg/m、フェノール樹脂が8mg/m、シリカが15mg/mとなるようにした以外は実施例1と同様にして塗装ステンレス鋼板を得て評価した。
[実施例3]
オキシ硝酸ジルコニウム(第一稀元素化学(株)製、ジルコゾールZN 固形分60%)を20g(Zrとして4.1g/L)、エポキシ系シランカップリング剤(信越化学(株)製、KBM−403)を2g、コロイダルシリカ(日産化学(株)製 スノーテックスOS 固形分20%)を20g準備して、1Lの純水に溶解して水性化成処理液を得た。
この化成処理液を用いて、実施例1と同様にして化成処理ステンレス鋼板を得た。このようにして得た化成処理ステンレス鋼板を、蛍光X線分析装置および赤外分光分析装置を用いて表面分析したところ、化成処理皮膜中に、Zrは12mg/m、シランカップリング剤は4.2mg/m、シリカは12mg/m存在することが確認された。
前記の化成処理ステンレス鋼板の表面を用いて、実施例1と同様にして塗装ステンレス鋼板を得て、同様に評価した。
[実施例4]
エポキシ系シランカップリング剤の代わりに、アミノ系シランカップリング剤(信越化学(株)製、KBM−903)を用いた以外は、実施例3と同様にして、塗装ステンレス鋼板を得て、同様に評価した。
ただし、化成処理ステンレス鋼板の化成処理皮膜における各成分は、表2のとおりになるように調整された。
[比較例1]
オキシ硝酸ジルコニウム(第一稀元素化学(株)製、ジルコゾールZN 固形分60%)を17g(Zrとして3.5g/L)、1Lの純水に溶解して水性化成処理液を得た。この化成処理液を用いて、実施例1と同様にして化成処理ステンレス鋼板を得た。このようにして得た化成処理ステンレス鋼板を、蛍光X線分析装置を用いて表面分析したところ、化成処理皮膜中に、Zrは8.2mg/m存在することが確認された。
前記の化成処理ステンレス鋼板の表面を用いて、実施例1と同様にして塗装ステンレス鋼板を得て、同様に評価した。
[比較例2]
オキシ硝酸ジルコニウムの代わりにフッ化Zrアンモニウム(アルドリッチ製)を用いた以外は実施例4と同様にして、塗装ステンレス鋼板を得て、同様に評価した。
ただし、化成処理ステンレス鋼板の化成処理皮膜における各成分は、表2のとおりになるように調整された。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0005406505
実施例と比較例から、本発明の塗装ステンレス鋼板は、耐熱水性、耐熱クーラント性に優れた塗装ステンレス鋼板を与えることが明らかである。
本発明の水性化成処理液は、耐熱水性、耐熱クーラント性に優れた塗装ステンレス鋼板を与えるので、高熱水下等の環境条件で用いられるステンレス鋼板の化成処理に好適である。さらに本発明の水性化成処理液で処理されてなる塗装ステンレス鋼板は、自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケットとして特に好適である。
本発明の塗装ステンレス鋼板の一態様を示す断面図 本発明の本発明のガスケットの一部を示す断面図
符号の説明
10 ステンレス鋼板
20 化成処理皮膜
30 第1の塗膜
40 第2の塗膜
50 両面塗装ステンレス鋼板
60 無垢のステンレス鋼板

Claims (7)

  1. (A)オキシ硝酸ジルコニウムを金属Zr濃度にして1〜15g/L含み、かつ
    (B)フェノール樹脂を0.3〜20g/L含む、水性化成処理液。
  2. 前記フェノール樹脂は、酸溶解性である、請求項1記載の水性化成処理液。
  3. ステンレス鋼板の表面に、請求項1または請求項2に記載の水性化成処理液により形成された化成処理皮膜を有する、化成処理ステンレス鋼板。
  4. 請求項3に記載の化成処理ステンレス鋼板の上に、第1の塗膜、および第2の塗膜を有する塗装ステンレス鋼板。
  5. 前記第1の塗膜は、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂を含み、
    前記第2の塗膜は、フッ素ゴムまたはニトリル−ブタジエンゴムを含む、
    請求項4に記載の塗装ステンレス鋼板。
  6. 請求項4に記載の塗装ステンレス鋼板を含んでなる、自動車エンジンのシリンダーヘッドガスケット。
  7. ステンレス鋼板の表面に、請求項1または請求項2に記載の水性化成処理液を塗布する工程、および
    前記水性化成処理液が塗布されたステンレス鋼板を100〜300℃で加熱する工程を含む、
    表面処理ステンレス鋼板の製造方法。
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