JP6638345B2 - 石膏の製造方法およびセメント組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]重金属を含む廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(A)を含み、工程(A)では、廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させたときの廃硫酸のpHを3.0以下にする石膏の製造方法。
[2]工程(A)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する工程(B)、および水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を、石膏を分離除去した廃硫酸に添加して重金属の水酸化物を析出させる工程(C)をさらに含み、工程(C)では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を廃硫酸に添加して水酸化物を析出させたときの廃硫酸のpHを3.5以上10.0以下にする上記[1]に記載の石膏の製造方法。
[3]工程(C)で析出した水酸化物を廃硫酸から分離除去する工程(D)、および水酸化物を分離除去した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(E)をさらに含む上記[2]に記載の石膏の製造方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の石膏の製造方法により石膏を製造する工程、および石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程を含むセメント組成物の製造方法。
以下、本発明の石膏の製造方法を説明する。本発明の石膏の製造方法は、重金属を含む廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(A)を含む。
工程(A)では、重金属を含む廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる。
本発明の重金属は、比重が5を超える金属であり、重金属には、たとえば、鉄、亜鉛、クロム、鉛、カドミウム、銅、スズ、水銀、ニッケルおよびコバルトなどが挙げられる。廃硫酸には、鉄、亜鉛およびクロムが含まれていることが多い。
工程(A)で使用される廃硫酸は重金属を含むものであれば、とくに限定されない。重金属を含む廃硫酸は、たとえば、鋼板の酸洗に使用した後の硫酸および銅精錬で発生する硫酸などである。
工程(A)で使用されるカルシウム源は、カルシウムを含む化合物およびそれらを主成分とする各種材料であり、石膏以外のものであれば、とくに限定されない。カルシウム源には、たとえば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、フッ化カルシウムおよび塩化カルシウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、好ましいカルシウム源には、酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、貝殻や生コンスラッジなどのカルシウムの含有量の大きな廃棄物をカルシウム源として使用してもよい。これらの例示されたカルシウム源は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルシウム源の添加量は、カルシウム源を添加した廃硫酸のpHが3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下になる範囲に収まるよう、制御する。
工程(A)で析出する石膏は、二水石膏および/または無水石膏である。廃硫酸中の重金属はほとんど析出せずに、廃硫酸中に残っているので、工程(A)で析出する石膏中の重金属の含有量は小さい。
工程(A)では、カルシウム源を添加した廃硫酸の粘度などを調整する目的で、混合物に水を添加してもよい。本発明の石膏の製造方法で使用することができる水には、たとえば、イオン交換水、純水、蒸留水および水道水などが挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、後述の工程(F)で石膏を分離除去したときに発生するろ液を処理して得た排水を利用してもよい。
工程(B)では、工程(A)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する。
石膏を沈降させることによって、廃硫酸から石膏を分離除去してもよいし、石膏を含有する廃硫酸をろ過することによって廃硫酸から石膏を分離除去してもよい。また、液体サイクロン、デカンター、遠心分離機、フィルタープレスなどの固液分離装置を用いる分離方法を採用して廃硫酸から石膏を分離除去してもよい。これらの分離除去方法は、単独で実施してもよいし、2種以上を組み合わせて実施してもよい。
工程(C)では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を、石膏を分離除去した廃硫酸に添加して重金属の水酸化物を析出させる。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種は、廃硫酸中の重金属と反応して重金属の水酸化物を析出させるとともに、廃硫酸中の硫酸と反応して水溶性の硫酸塩を生成する。
工程(C)では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を廃硫酸に添加して重金属の水酸化物を析出させたときの廃硫酸のpHを、好ましくは3.5以上10.0以下にし、より好ましくは3.5以上5.0以下となるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の添加量を調整する。廃硫酸のpHを3.5以上10.0以下にすることにより、廃硫酸中の重金属の多くを水酸化物として析出させることができる。
工程(D)では、工程(C)で析出した重金属の水酸化物を廃硫酸から分離除去する。
工程(D)における分離除去の説明は、工程(B)における分離除去の説明と同様であるので、工程(D)における分離除去の説明は省略する。なお、工程(D)における分離除去の方法は、工程(B)における分離除去の方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、分離をより速やかにするために高分子凝集剤を添加してもよい。
工程(E)では、重金属の水酸化物を分離除去した廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる。
工程(E)では、重金属の水酸化物を分離除去した廃硫酸における重金属の含有率は、十分に低くなっているので、廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させることによって、重金属の含有率が低い石膏を得ることができる。また、工程(E)で、石膏をさらに析出させることによって、廃硫酸中のSO4成分の大部分を活用することができる。
工程(E)で用いるカルシウム源としては、たとえば、塩化カルシウムなどの水溶性カルシウム塩、もしくはカルシウムイオンを含有する水溶液などが挙げられる。
工程(E)で廃硫酸に添加するカルシウム源の添加量は、カルシウム源中のCaと廃硫酸中のSO4 2−とのモル比(Ca/SO4 2−)が1に近い量のカルシウム源を廃硫酸に添加することにより、廃硫酸中のSO4 2−のほとんどを石膏へと転化できる。これよりもモル比が高くなるとカルシウムが余剰となり、低くなると硫酸イオンが余剰となり、排水処理が必要となるので経済的ではない。なお、カルシウム源中のCaと廃硫酸中のSO4 2−とのモル比(Ca/SO4 2−)は、好ましくは0.9〜1.0であり、より好ましくは0.9〜0.95である。
工程(F)では、工程(E)で析出した石膏を廃硫酸から分離除去する。
工程(F)における分離除去の説明は、工程(B)における分離除去の説明と同様であるので、工程(F)における分離除去の説明は省略する。なお、工程(F)における分離除去の方法は、工程(B)における分離除去の方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法により石膏を製造する工程、および石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程を含む。すなわち、本発明のセメント組成物の製造方法は、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する。たとえば、セメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。また、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏をクリンカ原料の1つとして用いて製造したセメントクリンカに、本発明の石膏の製造方法により製造された石膏またはその他の石膏と少量混合成分とを加えて、セメント組成物を製造してもよい。
実施例および比較例の石膏を以下のように測定および評価した。
(1)廃硫酸のpH
pH計((株)堀場製作所 製、商品名:pHメータ D−51)、pH電極((株)堀場製作所 製、商品名:スリーブTough電極 9681−10D)を使用して、カルシウム源、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を添加した廃硫酸のpHを測定した。
(2)析出物の同定
X線回折装置(PANalytical社製、商品名:X’Pert Pro)を使用して、廃硫酸にカルシウム源、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を添加して廃硫酸から析出した析出物の同定を行った。
(3)析出物中の重金属の含有量
エネルギー分散型蛍光X線分析装置(SPECTRO社製、商品名:XEPOS)を使用して、廃硫酸にカルシウム源、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を添加して廃硫酸から析出した析出物中の鉄、亜鉛およびクロムの含有量を測定した。
(4)濾液中のSO4 2−の含有量
イオンクロマトグラフ装置(Dionex社製、商品名:ICS−2000)を使用して、廃硫酸を濾過して得られた濾液中のSO4 2−の含有量を測定した。
(5)析出物の色
廃硫酸を濾過して得られた析出物の色を目視で観察した。
上記pH計を使用してpHを測定しながら、pHが0.5になるように炭酸カルシウムスラリーを1000mLの廃硫酸に添加して、3時間撹拌した。次に、撹拌しながら上記廃硫酸に炭酸カルシウムスラリーを少しずつさらに添加していった。そして、廃硫酸のpHの値を表1に示す所定値にさせ終わったとき、30mLの廃硫酸をサンプリングした。サンプリングした廃硫酸を濾過してサンプリングした廃硫酸の析出物および濾液を得た。なお、炭酸カルシウムスラリーは、1Lの水に100gの炭酸カルシウムを添加することにより作製した。また、炭酸カルシウムを添加する前の廃硫酸中のFeの含有量は5.8質量%であり、亜鉛の含有量は3300mg/kgであり、クロムの含有量は150mg/kgであり、SO4 2−の含有量の含有量は19.4質量%であった。
上記炭酸カルシウムスラリーの添加で、廃硫酸のpHが2.0になったときに200mLの廃硫酸を分取して濾過を行い、得られた濾液に、廃硫酸のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加して実施例8の廃硫酸を作製した。実施例8の廃硫酸を濾過することにより、実施例8の析出物を得た。残った濾液に、塩化カルシウム水溶液を添加して攪拌を行い、実施例9の廃硫酸を作製した。実施例9の廃硫酸を濾過して実施例9の析出物を得た。
実施例1〜7のサンプリングした廃硫酸および比較例1〜5のサンプリングした廃硫酸の評価結果を表1に、実施例8および9の廃硫酸の評価結果を表2に示す。
Claims (2)
- 重金属を含む廃硫酸にカルシウム源を添加して石膏を析出させる工程(A)と、
前記工程(A)で析出した前記石膏を前記廃硫酸から分離除去する工程(B)と、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を、前記石膏を分離除去した廃硫酸に添加して前記重金属の水酸化物を析出させる工程(C)と、
前記工程(C)で析出した前記水酸化物を前記廃硫酸から分離除去する工程(D)と、
前記水酸化物を分離除去した前記廃硫酸に塩化カルシウムを添加して石膏を析出させる工程(E)と、
を含み、
前記工程(A)では、前記廃硫酸に前記カルシウム源を添加して前記石膏を析出させたときの前記廃硫酸のpHを3.0以下にし、
前記工程(C)では、前記水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を前記廃硫酸に添加して前記水酸化物を析出させたときの前記廃硫酸のpHを3.5以上10.0以下にする石膏の製造方法。 - 請求項1に記載の石膏の製造方法により石膏を製造する工程、および
前記石膏を製造する工程で製造された石膏を用いてセメント組成物を製造する工程を含むセメント組成物の製造方法。
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