本発明に係る搬送システムは、搬送の対象物である被搬送物を上昇移動させる上昇搬送部及び前記被搬送物を降下移動させる下降搬送部の少なくともいずれか一方の搬送部と、前記上昇搬送部からの前記被搬送物の搬入及び前記下降搬送部への前記被搬送物の搬出の少なくともいずれか一方を行う上空搬送部と、を有する搬送用経路を前記被搬送物の搬送方向を互いに反対方向とするように並設した搬送システムであって、前記上空搬送部は、所定高さ位置で搬入端側から搬出端側に下るように傾斜しており前記被搬送物を一定方向に搬送可能とする上空搬送経路を有する上空搬送装置で構成され、一方の搬送用経路の前記上昇搬送部と他方の搬送用経路の前記下降搬送部とは、並設された前記上空搬送装置の少なくとも一端側で各被搬送物の連絡を可能に立設され、前記上空搬送経路の搬入端又は搬出端の高さ位置に対応する上昇端と搬入位置又は搬出位置に対応する下降端との間を昇降する前記被搬送物の搬送用の一対の昇降部を有し、一回の昇降動作毎に前記被搬送物の搬入と搬出を行う昇降装置で構成され、前記昇降装置は、前記昇降部の昇降を支持する支柱と、前記支柱の所定位置で軸支され、前記昇降部の昇降ストロークを可変可能とする回転部材と、前記回転部材の周囲に掛けられ、一方の前記昇降部を上昇させると他方の前記昇降部を下降させるように一対の前記昇降部と所定位置でそれぞれ連結し、前記回転部材により案内されながら移動する牽引部材とを備え、別の作業ラインや工場内の通路の上方で跨ぐように関連する作業ライン同士を繋いで作業ライン同士の連携を図り、各被搬送物の往復搬送を行う構成のものであり、シンプルかつコンパクトな構成を実現し、省スペース化及び低コスト化を図ると共に、安全性の向上を図ろうとするものである。
本発明にかかる搬送システムに特徴的には、搬送システムに相互に搬送される被搬送物は、搬出する被搬送物と搬入する被搬送物とで重量差を有し、これら被搬送物の重量によるを重力の作用を利用して搬送を行うものである。このような搬送システムは、概略的には次のような搬送動作を行う。
すなわち、搬送システムにおいて、昇降装置は、その下部で第1の被搬送物であるワークが取り出された状態の通函(以下、単に空通函という。)と、その上部で上空搬送装置により搬送され、第1の被搬送物よりも重量を大とする第2の被搬送物であるワークが収納された状態の通函(以下、単に実通函という。)と、をそれぞれの所定の搬入位置に位置する2つの昇降部により受け取る。
昇降装置の上部で実通函を受け取った一方の昇降部は、昇降装置の下部で空通函を受け取った他方の昇降部よりも重くなり、空通函を受け取った昇降部に作用する重力に抗して下降するとともに、空通函を受け取った昇降部を上昇させ、空通函や実通函を所定の搬出位置まで搬送して停止する。
搬出位置まで下降搬送された実通函は、一方の作業ラインが設置してある側の作業者等によって取り出される。また、搬出位置まで上昇搬送された空通函は、他方の作業ラインが設置してある側へ向けて上空搬送装置により搬送される。
昇降装置の下部で実通函を搬出した昇降部は、昇降装置の上部で空通函を搬出した昇降部よりも軽くなる。すなわち、昇降装置の上部に位置する空通函を搬出した昇降部は、その自重によって下降するとともに、実通函を搬出した昇降部を上昇させて、それぞれの昇降部を搬入位置に戻す。
一方で上空搬送装置は、昇降部により上昇してきた実通函と実通函とを、それぞれの所定の搬入位置に位置する上空搬送経路の搬入端により受け取る。
実通函や空通函を受け取ったそれぞれの上空搬送経路は、空通函や実通函をこれら自重により搬出側に向けて下り傾斜で滑動させ、空通函や実通函を搬出端の搬出位置まで搬送する。
上空搬送経路の搬出位置まで搬送された実通函や空通函は、一方側で上述の昇降装置の搬入位置にある昇降部に実通函を搬送し、他方で他の作業側又は他方の昇降装置の搬入位置にある昇降部に空通函を搬送する。
このように、本発明にかかる搬送システムにおいて、昇降装置は、上昇搬送部と下降搬送部に搬送されるそれぞれ被搬送物の重量差により生じる重力の作用を利用して被搬送物の昇降推力を生起し、無動力又は小駆動力で重量の異なる被搬送物を上下方向に互い違いに昇降搬送するものであり、上空搬送装置は、被搬送物のそれぞれの自重によって生じる重力の作用により無動力で各被搬送物を上空搬送部で搬送左右方向に下り傾斜させて滑動搬送するものである。
以下、本発明の実施形態に係る搬送システムAについて図面を参照しながら詳説する。図1は、本実施形態に係る搬送システムAを工場内の通路Uに設置した状態を示し、図2は、搬送システムAの側面を示している。なお、以下の説明では、搬送システムAにおいて、平面視で互いに平行となる上空搬送装置3aおよび上空搬送装置3bの被搬送物の搬送方向(図1において2つの上空搬送経路の架設方向)を単に「搬送方向」とする。また、この搬送方向について、被搬送物1を受け取る側を「搬入側」とし、被搬送物1を送り出す側を「搬出側」とする。また、各昇降装置2において、作業ラインが設置してある側を単に「作業側」(図1において、搬入搬出部4が設置される側)とし、作業ラインが設置されている側とは逆側を「反作業側」(図1において、通路Uが存在する側)とする。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る搬送システムAは、被搬送物を上昇移動させる上昇搬送部20a及び被搬送物1を降下移動させる下降搬送部20bの少なくともいずれか一方の搬送部と、上昇搬送部20aからの被搬送物1の搬入及び下降搬送部20bへの被搬送物1の搬出の少なくともいずれか一方を行う上空搬送部30とを有する搬送用経路10について、被搬送物1のうち第1の被搬送物用の搬送用経路10aと、第1の被搬送物よりも重量を大とする第2の被搬送物用の搬送用経路10bとが、被搬送物1の搬送方向を互いに反対方向とするように並設したものである。
つまり、本実施形態に係る搬送システムAは、搬送の対象物である被搬送物1を、順次、搬入側で上昇移動させる上昇搬送部20aと、搬入側から搬出側へ向けて傾斜移動させる上空搬送部30と、搬出側で降下移動させる下降搬送部20bとが連通した状態で、被搬送物1を搬送方向に搬送可能とする搬送用経路10について、被搬送物1のうち所定重量を有する空通函1a用の搬送用経路10aと、空通函1aよりも重量を大とする実通函1b用の搬送用経路10bとを各搬送物の搬送用経路の搬入側と搬出側とを互いに反対方向にして隣接して並設したものである。
各搬送用経路の上空搬送部30は、図2に示すように所定高さ位置で搬入端31a側から搬出端31b側に下るように傾斜しており被搬送物1を一定方向に搬送可能とする上空搬送経路31を有する上空搬送装置3で構成される。
また、一方の搬送用経路10の上昇搬送部20aと他方の搬送用経路10の下降搬送部20bとは、並設された各前記上空搬送装置3の少なくとも一端側で各被搬送物の連絡を可能に立設され、上空搬送経路31の搬入端31a又は搬出端31bの高さ位置に対応する上昇端21aと搬入位置又は搬出位置に対応する下降端21bとの間を昇降可能とし、一回の昇降動作毎に被搬送物1の搬入と搬出を行う昇降装置2で構成される。
被搬送物1は、搬送用通路内を流通可能なものであれば特に限定されることはなく、ワークそのものや、パレットを通函としてワークを載荷して搬送することとしてもよい。本実施形態においては、通函として直方体形状で上方開口のプラスチックコンテナを用いている。
すなわち、搬送システムAは、工場内の通路Uを横断するように通路U幅方向の外側で左右対称となる対向位置に立設された一対の昇降装置2と、一対の昇降装置2との間に昇降装置2の上部位置に架設され、昇降装置2の上部位置で被搬送物1の搬送経路を連通した状態で、互いに搬送方向の搬入側と搬出側を違えた一対の上空搬送装置3とより構成している。以下、本実施形態に係る搬送システムAの昇降装置、及び上空搬送装置についてそれぞれ詳説する。
〔1.昇降装置〕
搬送システムAに係る昇降装置2は、図2に示すように、反作業側の所定高さ位置にある上空搬送装置3と、作業側の搬出位置又は搬入位置の高さに設置され、被搬送物1を各作業側で載置する搬入搬出部4と、の間で被搬送物1を上昇降下移動させるリフターとして機能する。1つの昇降装置2は、一方の作業側において、上空搬送装置3まで被搬送物1を送り出す昇降搬入用の昇降部5(以下、単に搬入用昇降部5aと称す。)と、他方の作業側から上空搬送装置3を経て送られてくる被搬送物を受け取るための昇降搬出用の昇降部5(以下、単に搬出用昇降部5bと称す。)とを有する。なお、以下の説明において、図3は、昇降装置の作業側正面を示し、図4は、支柱の横断面を示している。また、図5(a)は、駆動部の側面を示し、図5(b)は、駆動部の横断面を示している。
昇降装置2は、反作業側の所定高さ位置の上空搬送装置3との間で被搬送物1を搬送する上部搬入搬出口23と、作業側の所定の高さ位置で搬入搬出部4との間で被搬送物1を搬送する下部搬入搬出口24とを有する。被搬送物1を載荷していない状態のそれぞれの昇降部5は、被搬送物1を受け取る高さ位置に待機状態としている。
また、昇降装置2は、実通函1bを上昇端21aで搬入し下降端21bで搬出すると共に空通函1aを下降端21bで搬入し上昇端21aで搬出する実通函搬出用の昇降装置2aと、空通函1aを上昇端21aで搬入し下降端21bで搬出すると共に実通函1bを下降端21bで搬入し上昇端21aで搬出する実通函搬出用の昇降装置2bとに分けられる。
昇降装置2は、図3に示すように、工場の床等の設置面Sに立設された支柱6と、支柱6の下部に設けた駆動部7と、駆動部7の下方位置で支柱6の下部を貫通して挿入した回転軸8に軸支された回転径の異なる2つの回転部材9と、それぞれの回転部材9に対応するように支柱6表裏面の上部で従動回転軸11に軸支された従動回転部材12と、回転部材9と従動回転部材12に巻掛けられた牽引部材13と、牽引部材13の中途部で上昇端21a側に移動すると相対的に他方側が下降端21b側に移動するように連結され、牽引部材13により吊られた状態で昇降して空通函1aや実通函1bをそれぞれ支持するように支柱6を介して左右位置に並設した昇降部5とを備える。
支柱6は、昇降装置2を支持する基体となる部位で、図4に示すように、平断面視H形状のH型鋼を用いており、縦2本の部分に相当する部分であって互いに平行な一対の帯板状のフランジ部6aと、横1本の部分に相当する部分であって一対のフランジ部6a間の中央部を繋ぐ帯板状のウェブ部6bとを有する。支柱6は、ウェブ部6b外面を作業側に向けて所定の設置面Sに立設される。
支柱6下部のウェブ部6b面の略中央位置には、ウェブ部6b面に対して垂直方向に貫通して挿入された所定長さの回転軸8が回点自在に設けられる。そして、支柱6のウェブ部6bの両板面側において、2つの回転部材9が、一対のフランジ部6a間に納まるように回転軸8により軸着される。
2つの回転部材9は、回転軸8の軸方向視で円形状を有する部材であって回転径(直径)がそれぞれ異なり、ウェブ部6bを介して回転軸8を同軸上に位置させる。つまり、回転軸8を同心軸として2つの回転部材9がそれぞれ回転軸8に固定し、回転軸8が回転することで互いの回転部材9が一体的に同期回転することを可能としている。なお、本実施形態の回転部材9は、所定歯数のスプロケット9aと、スプロケット9aよりも歯数を多くしたスプロケット9bを用いているが、昇降ストロークを可変可能な機構を有するものであれば特に限定されない。
また、図5(a)及び図5(b)に示すように、支柱6の下部でウェブ部6b面に対し直交方向に突出した回転軸8の一端側の上方位置には、回転部材9に回転駆動力を付与するための駆動部7が設けられている。駆動部7は、図駆動源となるモータ7aと、モータ駆動軸7bと、モータ駆動軸7bに軸支された駆動スプロケット7cとで構成される。
駆動部7に付与される重量負荷は、牽引部材13を介して吊下げられる2つの昇降部5に載荷する各被搬送物1の重量の差により決定される。従って、この重量差が不意に大きくなりすぎた場合には、駆動部7に無用の負荷を与えてしまうこととなる。
このため、駆動部7には、過荷重により駆動部7に一定以上の負荷がかかった場合には作動を停止又はモータ駆動軸7bを空転させるトルクリミッター等の図示しない駆動制御手段が設けられ、一定の出力で作動させることで安全柵等の設置を不要としつつ駆動部に無用の負荷をかけてしまうことを防止している。駆動制御手段の設定の一例としては、被搬送物1を載荷した状態の2つの昇降部5のそれぞれの重量差が10kg以上となった場合に駆動停止させる例が挙げられる。
図5(a)に示すように、回転軸8の一軸端で、駆動スプロケット7cの厚みの略垂直下方位置には、駆動スプロケット7cと連動する従動スプロケット7dが軸支されている。そして、環状の駆動チェーン7eが、上端側で駆動スプロケット7cに、下端側で従動スプロケット7dに、巻き掛けられ、駆動チェーン7eを介してモータ7aの回転駆動力を回転軸8に伝達している。
また、図6及び図3に示すように、支柱6の上部のウェブ部6b面の略中央位置には、従動回転軸11に回動可能に軸支された従動回転部材12がウェブ部6bを介して2つ設けられている。また、従動回転軸11は、それぞれの従動回転部材12が別動となるように設けれられれば、共通にしても別々にしてもよい。また、従動回転部材12の形状等は、回転部材9に従動して回転するものであれば特に限定されない。
牽引部材13は、所定長さを有する無端の索条部材であり、支柱6のウェブ部6bの両側において、駆動部7の回転駆動力を伝える支柱6下部の回転部材9と、支柱6下部の従動回転部材12にそれぞれ巻掛けらる。すなわち、牽引部材13は、支柱6に設けた回転部材9の略下半部の円周に沿う部分と従動回転部材12の略上半部の円周に沿う部分とに巻き掛けて設けられる。
このような状態で、駆動部7と連動する回転部材9が駆動側となり、また、牽引部材13を介して連動回転する従動回転部材12が従動側となる。また、それぞれの回転部材に案内される牽引部材13は、支柱6のウェブ部6bの両側で互いに連動して移動する。つまり、牽引部材13のうち、回転部材9と従動回転部材12とを介して支柱6の上下方向で略平行直線状に張られた2つの部位が、上下昇降移動する部位(以下、昇降移動部13cと称す。)となる。なお、本実施形態の牽引部材13はチェーン13a、13bを用いており、回転部材9や従動回転部材12のスプロケットの回転駆動力を昇降装置2における上下昇降推力とすることを堅実としている。なお、牽引部材13は、回転部材9に巻き掛けられ、回転部材9の両側から垂下して回転部材9の回転力を上下推力に変換できる索条部材であれば特に限定されず、無端か有端かも問わない。
昇降部5は被搬送物1を載置して昇降の上下移動をする搬送リフターとして機能する部位であり、その昇降動作範囲の最上端位置である上昇端21aの位置は、上空搬送装置3の上空搬送経路31から被搬送物1を受け取る位置(上空搬送経路31の搬出端31bの高さ位置であって搬出用昇降部5bの高さ位置)又は被搬送物1を送り出す位置(上空搬送経路31の搬入端31aの高さ位置であって搬入用昇降部5aの高さ位置)としている。
一方で、昇降部5の昇降動作範囲の最下端位置である下降端21bの位置は、作業者等が搬入搬出部4から被搬送物1を受け取る位置(作業側で被搬送物1を搬入する高さ位置であって搬出用昇降部5bの高さ位置)又は被搬送物1を送り出す位置(作業側で被搬送物1を搬出する高さ位置であって搬入用昇降部5aの高さ位置)としている。
ここで、支柱6を介して左右に並設した搬入用昇降部5aと搬出用昇降部5bの昇降の上下移動距離、すなわち、上昇搬送部20aと下降搬送部20bの上下距離は異なる。より具体的には、それぞれ下降端21bを略同じ高さ位置とした2つの昇降部5において、搬入用昇降部5aの上昇端21aは、上空搬送装置3の上空搬送経路31のうち搬出端31bよりも高い位置にある搬入端31aに対応すべく、搬出用昇降部5bの上昇端21aよりも高くする必要があり、搬入用昇降部5aの上下移動距離は、搬出用昇降部5bの上下移動距離よりも長くなる。
従って、昇降装置2の1回の昇降動作で搬入用昇降部5aと搬出用昇降部5bとを互い違いに上昇端21aと下降端21bに同期して位置付けるためには、それぞれ異なる昇降の上下移動距離にあわせて、搬入用昇降部5a側と搬出用昇降部5b側の牽引部材13の移動速度を違える必要がある。
そこで、搬入用昇降部5a側と搬出用昇降部5b側とで直径を違え同心軸に一体回転するように固定した各回転部材9が、各回転部材一回転あたりのそれぞれのストロークを変化させることで、搬出用昇降部5bと搬入用昇降部5aの昇降の上下移動距離の差に応じて各昇降部をそれぞれの搬入位置や搬出位置に同期して位置づけることを可能としている。
特に、この搬出用昇降部5b側と搬入用昇降部5a側の回転部材9の直径の比率、すなわちギア比は、それぞれの昇降部5の上下移動のストロークや昇降部5への重量負荷を調整する上で重要である。
駆動側に一体回転可能に設けられた一方の昇降部5側と他方の昇降部5側の回転部材9は、昇降装置2において挺子の原理と滑車の原理を持つ輪軸として作用し、これら回転部材9のギア比は、それぞれの昇降部5のストロークや重量負荷に比例する。例えば、スプロケットを回転部材として用いた場合に、一方の昇降部側の歯数を、他方の昇降部側の歯数の2倍とした場合には、一方の昇降部側の昇降部のストロークは他方の昇降部側のストロークの2倍となり、また、一方の昇降部に載置した被搬送物の負荷重量は2倍となる。
このような各昇降部の昇降ストロークを可変可能とする機構としての回転部材は、その個数や形状において限定されることはない。例えば、本実施形態のように、一対の回転部材において、それぞれの回転径を違える他に、ピッチを違えた歯車や、変速ギアを配設することでそれぞれの昇降ストロークの可変を実現することができる。
本実施形態の搬入用昇降部5aと搬出用昇降部5bとの昇降の上下移動距離の調整は、駆動側の回転軸8に一体回転するよう取付けられるそれぞれの回転部材の直径を違えることで昇降ストロークの可変をすることで行う。
すなわち、従動側の従動回転軸11にそれぞれ別動回転するように取付けるスプロケット12a、12bの歯数は同一とし、駆動側の回転軸8に一体回転するように取付ける搬入用昇降部5a側のスプロケット9bの歯数は昇降搬入側のスプロケット9aより多くすることで、搬入用昇降部5aのストロークを搬出用昇降部5bのストロークより長くし、一回の昇降動作による搬入用昇降部5aの上下移動距離の差に対応可能としている。
昇降部5は、図6に示すように、牽引部材13と連結され支柱6に支持される連結支持部材14と、連結支持部材14に支持され被搬送物1が載る搬送載置面15を備える搬送支持部材16とを有する。
連結支持部材14は、図4及び図6に示すように、支柱6のフランジ部6aに沿って設ける基板14aと、基板14aの所定位置に設けられ支柱6のフランジ部6a面に当接させる複数のガイドローラ14bと、牽引部材13の中途部に取付けるアタッチメント14cと、アタッチメント14cと基板14aとを結合するブラケット14dと、基板14aの所定位置に取付けられ搬送支持部材16を下方位置から支持する複数の支持杆14eとより構成される。
連結支持部材14は、一方の昇降部5を上昇端21aに位置付けた場合、他方の昇降部5が下降端21bに位置付けた状態となるように、支柱6のウェブ部6b両側のそれぞれの牽引部材13の中途部に連結され、支柱6に支持される。
アタッチメント14cは、昇降部5と牽引部材13との連結を可能とする部材であって、牽引部材13のうち昇降移動部13cの中途部に設けらる。より具体的には、一方の昇降部5のアタッチメント14cは、支柱6のウェブ部6bの一側面側に設けた牽引部材13の左右一対の昇降移動部13cのうち、一方側上部に設けられる。
また、他方の昇降部5のアタッチメント14cは、ウェブ部6bの他側面側に設けた牽引部材13の左右一対の昇降移動部13cのうち、一方側の牽引部材13の昇降移動部13cに設けた側と同じ側の下部に設けられる。
ブラケット14dは、側面視コ字状に屈曲させた所定長さの平板部材であり、アタッチメント14cと基板14aとを連結する部材である。ブラケット14dは、側面視において略コ字状で上下方向でアタッチメント14cの長手と略同じ長さの底部の外側面を基板14aと接合面とする一方、底部の左右両側に設けられる2つの側壁部の内側面をアタッチメント14cの両側縁との接合面として設けられ、アタッチメント14cと基板14aとを連結する。
基板14aは、略直方体形状に沿う外形を有する。具体的には、図4に示すように、基板14aは、平面視で略コ字状ないしは略U字状をなし、側面視所定長さの平板部材であり、略コ字状ないしは略U字状の底部分であって略矩形板状の中央面部と、同じく略コ字状ないしは略U字状の両側部分であって中央面部の左右両側に設けられる略矩形板状の側面部とを有する。
基板14aは、支柱6に対して、基板14aの平面視で略コ字状ないしは略U字状の開口側からみた中央面部と支柱6の一端側のフランジ部6aの外面とを対向させる方向で、2つの側面部間に一端側のフランジ部6aが納まるように配設される。
ガイドローラ14bは、カムフォロワー等の回転部材であり、支柱6に複数箇所で当接させて昇降部5を支柱6により案内して正しく上下方向に移動させるように機能するものであり、基板14aの所定位置に複数設けられている。
より具体的には、ガイドローラ14bは、図4に示すように、基板14aの左右両側の側面部の内側において、左右方向を回転軸方向として側面部を左右方向に貫通した状態で設けられる支軸部により、また、基板14aの左右両側の側面部の外側において、左右方向に対して垂直方向(前後方向)を回転軸方向として側面部の外面に配設した状態で設けられる支軸部により、回転自在に側面部に支持される。
また、フランジ部6aの外方側に位置するガイドローラ14bはフランジ部6a外側面に、フランジ部6aの内方側に位置するガイドローラ14bはフランジ部6aの内側面に、フランジ部6aの厚み側に位置するガイドローラ14bはフランジ部6aの左右端縁の厚み面に接触するように基板14aにそれぞれ設けられる。
このような構成により、フランジ部6aが、その前後に配置されたガイドローラ14bによって挟まれ、また、左右方向において一端縁側と他端縁側とに配置されたガイドローラ14bによって挟まれた状態としている。
また、ガイドローラ14bは、図6に示すように、フランジ部6aの一端側に対して基板14aの上部位置とに下部位置にそれぞれ3個ずつ配設される。
また、フランジ部6aの他端側に対しても基板14aの同様の位置で同数のガイドローラ14bが配設されている。つまり、1つの昇降部5に備えられる基板14aには、合計で12個のガイドローラ14bが配設され、支柱6に対して昇降部5の左右前後方向への動きを規制するとともに上下方向への移動を支持する。
また、複数のガイドローラ14bを支柱6のフランジ部6aの周面に接触させて支柱6に取付けた基板14aの外側面には、複数の支持杆14eと搬送支持部材16とが基板14aの外方に向けて設けられる。
搬送支持部材16は、所定長さの棒状部材である支持杆を一辺とし、被搬送物1である空通函1aや実通函1bの通函の略四角柱形状に沿う外形を有する設置基部17と、設置基部17の上方で正面視左右側に設けた側面ガイド部18と、正面視で設置基部17の上面に所定間隔を隔てて左右対象となる位置に載置固定した一対(2列)のローラ搬送機構部19とを有する。
設置基部17は、ローラ搬送機構部19を設置するための基部となる部位で、搬送方向視コ字状として側部と底部を有する支持部材であり、図6及び図7に示すように、設置基部17底部面が水平となるように設置基部17の一側辺略中央外側を基板14a外側面の所定位置に配設される。設置基部17の下部には、設置基部17を下方から支持する支持杆14eが、その一端を基板14aの外側面の下部所定位置に、他端を設置基部17の底面の所定位置に複数配設される。
側面ガイド部18は、側面視で設置基部17の一側辺より長い直線棒状の支持杆であり、通函載荷状態で通函の両側面との間に所定の間隙を設けるように、且つ通函の両側面高さより低くして左右一対、設置基部17の側部内方に設けられている。1つの昇降部5は、搬送載置面15と平行となる所定の高さ位置で設けられた側面ガイド部18を搬送方向視で左右に2つ有する。
このような構成により、側面ガイド部18は、被搬送物1を載荷した状態の昇降部5の昇降移動中に昇降装置2内部で被搬送物1が昇降部5の載置位置から左右方向へ滑動して滑落してしまうことを規制し、昇降部5の上昇端21aと上空搬送経路31の搬入端31aや搬出端31bとの間で、また、昇降部5の下降端21bと搬入搬出部4との間で、被搬送物1の搬送方向への連絡を補助する。
ローラ搬送機構部19は、昇降部5において、平面視で被搬送物1を載置する面を形成すると共に上空搬送装置3や搬入搬出部4とに搬送方向に無駆動で被搬送物1を搬入搬出するように機能する部位である。
ローラ搬送機構部19は、平面視で回転軸方向を搬送方向に直交する方向とする複数の遊転ローラ19aと、これら遊転ローラ19aを搬送方向に所定の間隔を隔てて並んだ状態で回転自在に支持する支持枠部19bとより構成される。
遊転ローラ19aは、支持枠部19bを構成する所定の側壁間に架設された状態で回転自在に支持される。すなわち、側壁間に架設された状態の複数の遊転ローラ19aは、複数の遊転ローラ19aの上端を水平方向に沿う所定の仮想平面上に位置し、この仮想平面の位置が、昇降部5において1つの被搬送物1が載る搬送載置面15の位置となる。
搬送支持部材16は、後述する上空搬送装置3の複数の遊転ローラ32aにより形成された滑動搬送面33を水平面に対して傾斜角度で搬送方向に向けて下り傾斜させて設けられた上空搬送経路31に沿うように設けられる。一対のローラ搬送機構部19は、搬送載置面15を互いに同じ高さ位置とするとともに、平面視で互いに平行に、且つ搬送方向に向けて設置基部17の上面に左右対称となるように配設される。
また、一対のローラ搬送機構部19は、設置基部17に対して、側面視で上空搬送経路31の搬入端31a側又は搬出端31b側の仮想直線上(図2中、二点鎖線上)に位置するように設置基部17の上面に傾斜させて設ける。より具体的には、搬入用昇降部5aや搬出用昇降部5bは、側面視でそれぞれの上昇端21aに位置付けた場合に、上空搬送経路31の搬入端31a側と搬出端31b側を延長させた仮想直線上で、搬入端31a側に位置する搬入用昇降部5aと搬出端31b側に位置する搬出用昇降部5bのそれぞれのローラ搬送機構部19を、搬送載置面15を上側にして設置基部17上面部に傾斜させて設けられる。
つまり、1つの昇降装置2は、2つの上空搬送装置3の上空搬送経路31の搬入端31a側の仮想直線と搬出端31b側の仮想直線との関係において、それぞれの仮想直線上に位置するようにローラ搬送機構部19を傾けて設置基部17上に配設した搬入用昇降部5aと搬出用昇降部5bとを有する。
ローラ搬送機構部19は、搬入搬出部4や上空搬送装置3との間で被搬送物1を受け取る側の搬入端19cと被搬送物1を送り出す側の搬出端19dとを有し、搬入端31aを搬出端31bよりも高い位置として搬送載置面15の傾斜角度を水平面に対して約2〜6度搬送方向に向けて下り傾斜させて設けられる。
このような構成により、昇降装置2のそれぞれの昇降部5を上昇端に位置付けた場合に、平面視で上空搬送経路31の滑動搬送面33と、昇降部5のローラ搬送機構部19により形成された搬送載置面15とが略面一となり、搬送用経路10のうち上昇搬送部20a又は下降搬送部20bと上空搬送部30とが連通する。
そして、被搬送物1である通函は、昇降部5の搬送載置面15に載った状態、つまり通函の底面側における左右両側の所定部分を遊転ローラ19aの上端に接触させた状態で昇降部5に載置され昇降搬送される。
また、被搬送物1を載荷した状態の昇降部5を上昇端に位置付けた場合には、図8に示すように、搬入用昇降部5aの搬送載置面15から上空搬送経路31の滑動搬送面33の搬入端31aへ被搬送物1を送り出す一方、搬出用昇降部5bの搬送載置面15から上空搬送経路31の滑動搬送面33の搬出端31bを下ってきた被搬送物1を受け取ることが可能となる。
また、昇降装置2は、図2、図3、図5及び図8に示すように、高さを支柱6と略同じとし、平面視で支柱6や昇降部5を外方から囲むように4本の支持部材を立設し、所定高さ位置でそれぞれの支持部材間が架橋された外枠22を有する。
昇降装置2の作業側や反作業側の外枠22内方の所定の上下位置には、被搬送物1を載荷した状態の昇降部5の昇降作動中に被搬送物1が昇降装置2で前後方向に滑動することを規制するストッパとして、所定長さの平板形状部材である昇降搬送ガイド部25が設けられる。
昇降搬送ガイド部25の長さは、搬出用昇降部5bに載荷する被搬送物1に対しては搬入搬出部4の搬入搬出の高さ位置から上空搬送経路31の搬入端31aがある高さ位置までの長さとし、搬入用昇降部5aに載荷する被搬送物1に対しては被搬送物1の下部搬入搬出口24の上端縁高さ位置から上空搬送経路31の搬出端31bがある高さ位置よりも上方位置までの長さとしている。
昇降搬送ガイド部25は、昇降搬送ガイド部25の平板面をそれぞれ前後側に向け、搬送方向視で各昇降部の略中央に位置する外枠22の内方側に設けられる。搬出用昇降部5bに載荷する被搬送物1の後側面に対応する昇降搬送ガイド部25は、外枠22後側であってその内方側で、搬入搬出部4の搬入搬出の高さ位置と上空搬送経路の搬入端がある高さ位置の間に、搬送方向視で昇降部5の左右幅の略中央に位置するように設けられる。
また、搬入用昇降部5aに載荷する被搬送物1の前側面に対応する昇降搬送ガイド部25は、外枠22前側であってその内方側に、下部搬入搬出口24の上端縁高さ位置と上空搬送経路31の搬出端31bがある高さ位置の間に、搬送方向視で昇降部5の左右幅の略中央に位置するように設けられる。
このような構成により、実通函1bや空通函1aを載荷した状態の昇降部5が昇降する際に、昇降搬送ガイド部25の側面にこれら通函の前側面又は後側面の一端が摺接して昇降移動し、昇降作動中における搬送載置面15の下り傾斜による実通函1bや空通函1aの滑動を防止している。
また、空通函1aを支持する昇降部5は、実通函1bを支持する昇降部5よりも重量を大としている。すなわち、昇降装置2の昇降部5について、空通函1aを載置するための昇降部5(以下、単に空通函用昇降部と称す。)に、空通函用昇降部を構成する支持部材28aとして図示しない所定重量を有するウエイト部が設けられる。
空通函用昇降部に備えたウエイト部は、ウエイトにより重力の作用を回転部材9及び牽引部材13を介して実通函1bを載置するための昇降部(以下、実通函用昇降部)に上向きの引張力として伝達する。すなわち、空通函用昇降部に備えたウエイト部は、実通函用昇降部のカウンタウエイトとして機能する部分である。
ウエイト部のウエイトの重量は、実通函1bに収納するワークより軽く設定される。より具体的には、ウエイト部の重量は、それぞれの昇降部において被搬送物1を載荷していない状態(以下、単に非載荷状態という。)では、ウエイト部を備えた空通函用昇降部の重量が実通函用昇降部よりも重く、且つ、被搬送物1の載荷した状態(以下、単に載荷状態という。)では、実通函1b載荷状態の実通函用昇降部の重量が空通函1a載荷状態の空通函用昇降部よりも重くなるように設定される。
すなわち、ウエイト部を備えた空通函用昇降部の重量は、実通函に収納するワークの重量よりも軽く、且つ、回転部材9と牽引部材13との摺動摩擦力に抗して、自重による重力の作用で降下推力を生起するだけの重さとしている。具体的な各部材等の重量の一例としては、ウエイト部の重さが約5〜10kg、空通函1aの重さが約5kg、実通函1bの重さが約18〜23kg、非載荷状態の各昇降部の重さが約10kgという例が挙げられる。
このように構成した実通函搬出用の昇降装置2aと、実通函搬入用の昇降装置2bとにおいて、それぞれ次のような昇降部5の上下作動が行われる。
実通函搬出用の昇降装置2aにおいては、それぞれの昇降部が通函載荷状態にある場合、上昇端21aに位置する実通函1b載荷状態の実通函用昇降部の自重により無動力又は小動力で降下する一方で、これに伴い下降端21bに位置する空通函1a載荷状態の空通函用昇降部を上昇させて、実通函1b載荷状態の実通函用昇降部を下降端21bに、空通函1a載荷状態の空通函用昇降部を上昇端21aに位置付ける。
それぞれの昇降部が通函非載荷状態にある場合、上昇端21aに位置する空通函用昇降部が、その自重により無動力又は小動力で降下する一方で、これに伴い下降端21bに位置する実通函用昇降部を降下させて、実通函用昇降部を下降端21bに、空通函用昇降部を上昇端21aに位置付けて搬送待機状態とする。
一方、実通函搬入用の昇降装置2bにおいては、それぞれの昇降部が通函載荷状態にある場合、上昇端21aに位置する空通函1a載荷状態の空通函用昇降部の自重により、下降端21bに位置する実通函1b載荷状態の実通函用昇降部に上昇推力を補助的に付与すると共に駆動部7に生じる負荷を減少させて、実通函1b載荷状態の実通函用昇降部の上昇に要する駆動力を小とし、空通函1a載荷状態の空通函用昇降部を下降端21bに、実通函1b載荷状態の実通函用昇降部を上昇端21aに位置付ける。
それぞれの昇降部が通函非載荷状態にある場合、下降端21bに位置する空通函用昇降部と上昇端21aに位置する実通函用昇降部との重量差に抗した駆動力で空通函用昇降部を下降端21bに、実通函用昇降部を上昇端21aに位置付けて待機状態とする。
このように空通函用昇降部にウエイト部を備えることにより、昇降装置で頻繁に行われる重量差のある被搬送物の昇降動作において、被搬送物の重量差を昇降の作動源として利用しつつも実通函用昇降部と空通函用昇降部との重量差を輪軸の作用に利用して、昇降部の上昇時には駆動源に与える重量負荷を可及的抑制しつつも1つの駆動源の小駆動力で昇降の上下推力が生起すると共に、下降時における下降速度を抑制させ、安全面を向上させた昇降部の上下作動の原理を実現している。
〔2.上空搬送装置〕
次に、本実施形態に係る搬送システムAが備える上空搬送装置3について説明する。本実施形態の上空搬送装置3は、搬送システムAの各搬送用経路の上空搬送部30を構成するものであり、図1に示すように、所定高さ位置で搬入端31a側から搬出端31b側に下るように傾斜しており被搬送物1を一定方向に搬送可能とする上空搬送経路31を有して、搬送方向を互いに反対方向とするように2つ並設されている。
すなわち、並設された2つの上空搬送装置3は、それぞれ実通函搬送用の上空搬送経路と、空通函搬送用の上空搬送経路とを構成する。平面視において、これらの上空搬送経路の互いの搬入端31a側と搬出端31b側とを違え、搬送方向を平行として各上空搬送装置が隣接して設けられる。以下、上空搬送装置3の構成について詳細に説明する。
上空搬送装置3は、工場内の通路U等の上方位置(上空)で、工場の床面である設置面Sに左右対称となる位置に立設した一対の昇降装置2に架設され、一方の作業側の昇降装置2aの搬入用昇降部5aにより上昇してきた被搬送物1を、上空搬送経路31の一端の搬入端31aで受け取り、重力の作用により被搬送物1を上空搬送経路31を左右方向に搬入端31aから他端の搬出端31bまで下り傾斜させて滑動搬送し、搬出端31bの高さ位置で待機している搬出用昇降部5bに被搬送物1を送り出すシュータとして機能する。
上空搬送装置3は、被搬送物1を搬送方向に搬送する上空搬送経路31と、上空搬送経路31の架橋構造を支持する架橋支持部50とを有し、2つの昇降装置2a、2bとの間にそれぞれ架け渡される。
上空搬送経路31は、上述した昇降部5が有する搬送支持部材16と同様に、左右両側に配される一対(2列)のローラ搬送機構部32を有する。ローラ搬送機構部32は、図2に示すように、左右方向を回転軸方向とする複数の遊転ローラ32aと、これら遊転ローラ32aを搬送方向に所定の間隔を隔てて並んだ状態で回転自在に支持する支持枠部32bとを有する。
遊転ローラ32aは、支持枠部32bを構成する所定の側壁間に架設された状態で回転自在に支持される。ローラ搬送機構部32において、複数の遊転ローラ32aは、その上端が所定の仮想平面上(図2中、遊転ローラ32aの上端を結ぶ仮想直線上)に位置し、この仮想平面の位置が、被搬送物1が載る滑動搬送面33の位置となる。
一対のローラ搬送機構部32は、滑動搬送面33を互いに同じ高さ位置とするとともに、平面視で互いに平行に、且つ搬送方向視で左右両側に対称となるように設けられる。そして、被搬送物1である通函は、図8に示すように、上空搬送経路31の滑動搬送面33に載った状態、つまり通函の底面側における左右両側の所定部分を遊転ローラ32aの上端に接触させた状態で、自重により搬出端31b位置で待機状態、すなわち上昇端21aで待機する昇降部5に向けて搬送される。
上空搬送経路31は、一対のローラ搬送機構部32の複数の遊転ローラ32aの上端により形成される滑動搬送面33が、搬入端31aから搬出端31bにかけて下り傾斜するように設けられる。本実施形態の滑動搬送面33は、同搬送面を水平面に対して約2〜6度、搬入端31aから搬出端31bに向けて下り傾斜するように設けられる。
すなわち、上空搬送経路31は、その搬入端31aを一方の作業側に配設した昇降装置2bの搬入用昇降部5aの上昇端21aの高さ位置とし、搬出端31bの高さ位置を他方の作業側に配設した昇降装置2aの搬出用昇降部5bの上昇端21aの高さ位置であって搬入端31a側よりも低い位置とし、昇降装置2a、2bに架設される。
このように構成することにより、前述の搬出用昇降部5bと搬入用昇降部5aとがそれぞれの上昇端21aに位置した場合に、各昇降部5の搬送載置面15と上空搬送経路31の滑動搬送面33とが略面一となり、昇降装置2と上空搬送装置3との間で行われる被搬送物1の搬入搬出が無駆動で且つ滞りなく行われる。
架橋支持部50は、昇降装置2a、2b間に水平に架け渡される支持桁51と、上空搬送経路31に沿うように支持桁51に設けられる側面ガイド部52とを有する。
支持桁51は、所定長さを有する梯子状の桁部材を用いており、横2本の部分に相当する部分であって互いに所定間隔を隔てて平行に配設した一対の棒状の桁部51aと、一対の桁部51aの平行方向に直交する方向で所定間隔を隔てて間欠的に桁部51aの間を繋ぐ複数の棒状の架橋部51bと、を有する。
支持桁51は、上空搬送経路31を支持する部位であり、側面視で一方の昇降装置2の反作業側の外枠22上部と、他方の昇降装置2の反作業側の外枠22上部との間に、桁部51aを水平とするように架設される。同様にして、支持桁51は、実通函搬送用の上空搬送経路31と、空通函搬送用の上空搬送経路31とを区画するように、昇降装置2a、2bの間に架設される。
このように架設された一対の支持桁51は、一対のローラ搬送機構部32の支持枠部32bを、その下方位置で支持する。すなわち、一対の支持桁51下部のそれぞれの桁部51aや架橋部51bには、搬送方向で間欠的に上空搬送経路31を下方から支持する図示しない複数の支持杆が、滑動搬送面33の傾斜に沿うように設けられる。
側面ガイド部52は、昇降装置2の側面ガイド部18と同様に、側面視で上空搬送経路31の一側と略同じ長さの直線棒状の支持杆であり、通函載荷状態で通函の両側面との間に所定の間隙を設けるように、且つ通函の両側面高さより低くし、左右対称となる位置で支持桁51に設けられる。すなわち、1つの上空搬送装置3は、上空搬送経路31の所定の高さ位置で滑動搬送面33と平行となるように設けられた側面ガイド部52を搬送方向視で左右に2つ有する。
このような構成により、側面ガイド部52は、被搬送物1が上空搬送経路31の滑動搬送面33上を下り傾斜して滑動搬送する際には、搬送方向視で被搬送物1の左右方向への滑動して滑落してしまうことを規制するとともに、昇降部5の上昇端21aと上空搬送経路31の搬入端31aや搬出端31bとの間で、また、昇降部5の下降端21bと搬入搬出部4との間で、被搬送物1の搬送方向への連絡を補助する。
以上のように、本実施形態に係る昇降装置2及び上空搬送装置3を備えた搬送システムAによれば、外部動力の使用を可及的に抑制し、シンプルでコンパクトな構成を実現することができ、コストの低減を図るとともに、安全で且つ被搬送物を損傷させることなく、作業工程の作業効率を向上させることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する内容や構成等については同一の符号を付し適宜説明を省略する。本実施形態に係る搬送システムBは、完全無動力で被搬送物1を搬送する構成を備えるものである。なお、以下の説明において、図9は、本実施形態の作業側正面を示し、図10(a)は、本実施形態の昇降装置の基本的な構成、及び昇降原理を示し、図10(b)は支柱の横断面を示している。また、図11は、本実施形態の搬送システムBのブレーキローラを示している。
本実施形態に係る搬送システムBは、空通函1aと実通函1bとの重量差が大きい場合、すなわち、実通函1bに収納されるワークの重量が大きい場合に使用されるものであり、空通函1a用の搬送用経路10aと、実通函1b用の搬送用経路10bにおいて、空通函1aの上昇搬送部20aと実通函1bの下降搬送部20bとを互いに隣接して並設したものである。
各搬送用経路の上空搬送部30は、所定高さ位置において、搬入端31aを搬出端31bより高くして被搬送物1を一定方向に搬送可能とする上空搬送経路31を有する上空搬送装置3で構成され、空通函1a用の搬送用経路の上昇搬送部20aと実通函1b用の搬送用経路の下降搬送部20bとは、隣接して並設した各上空搬送装置3a、3bの少なくとも一端側で各被搬送物の連絡を可能に立設され、上空搬送経路31の搬入端31a又は搬出端31bの高さ位置に対応する上昇端21aと、搬入位置又は搬出位置に対応する下降端21bと、の間を昇降可能とし、一回の昇降動作毎に実通函1bの搬入と空通函1aの搬出を行う昇降装置60で構成される。
このような搬送システムBに係る昇降装置60は、図9に示すように、上昇端21aに位置する実通函1bを載荷した状態の昇降部5の重量による重力の作用を利用して、完全無動力で、実通函1bを載荷した状態の昇降部5を降下させるとともに空通函1aを載荷した状態の昇降部5を上昇させるものである。つまり、本実施形態に係る昇降装置60は、上昇搬送部20aの空通函1aの搬入用昇降部61と、下降搬送部20bの実通函1bの搬出用昇降部62とを備え、大重量のワークを収納した実通函1bを一方の作業側へ搬出する際に用いられる。
本実施形態の昇降装置60は、被搬送物1の上下昇降を支持する支柱6と、支柱6の表裏面の所定位置で軸支され、回転径が大小異なる一対の回転部材70と、それぞれの回転部材70の周囲に掛けられ、回転部材70により案内されながら移動する牽引部材13と、一方が上昇端21a側に移動すると相対的に他方側が下降端21b側に移動するようにそれぞれの牽引部材13の所定位置に連結され、牽引部材13により吊られた状態で昇降して空通函1aと実通函1bとをそれぞれ支持するように支柱6を介しての並設した2つの昇降部61、62と、を備える。
回転部材70は、図10(b)に示すように、支柱6上部のウェブ部6b面の略中央位置で、ウェブ部6b面に対して垂直方向に貫通して挿入された所定長さの回転軸71により同期回転するように軸着される。すなわち、回転半径の異なる一対の回転部材70が、一対のフランジ部6a間に納まるように支柱6上部のウェブ部6bの両板面側でそれぞれ同心回転軸71により軸着される。
かかる一対の回転部材70は、それぞれ歯数を違えたスプロケット70a、70bを用いている。空通函1aの搬入用昇降部61側のスプロケット70aの歯数は、実通函1bの搬出用昇降部62側のスプロケット70bの歯数よりも多くしている。なお、本実施形態においては、スプロケット70aを歯数15とし、スプロケット70bを歯数10としている。
空通函1aの搬入用昇降部61側のスプロケット70aは、実通函1bの搬出用昇降部62側のスプロケット70bと同軸回転するように回転軸71に設けられることで、実通函1bの搬出用昇降部62側のスプロケット70bの回転に同期して回転する。そして、これら一対の回転部材70に対し、牽引部材13としてチェーン13a、13bが支柱6のウェブ部6bの両側において、それぞれ巻掛けられる。
なお、1つの昇降部側に設けられる回転部材70の数は特に限定されることはなく、例えば、上述のごとく回転部材70に対応する従動回転部材を設けても良い。本実施形態の1つの昇降部側に設けられる回転部材は1つとし、回転部材に巻掛けられる牽引部材13が摺動する際に生起される摩擦抵抗を可及的小としている。
本実施形態の昇降装置60は特に上述の如く輪軸の作用を昇降作動に用いて無動力としたものであり、空通函1aの搬入用昇降部61、実通函1bの搬出用昇降部62、実通函1b、及び空通函1aといった各搬送部材の重量が、回転部材70と牽引部材13との間に生じる一定の摺動摩擦による抵抗に抗した昇降推力を生起させて昇降作動する上で重要となる。
すなわち、各昇降部61、62が被搬送物の載荷前後のそれぞれの状態において回転部材70と牽引部材13の間の一定の摺動摩擦抵抗以上であって昇降推力を生起させるだけの重量差を常時有するように、各搬送部材の重量が設定される。
具体的には、各搬送部材の重量は、それぞれの昇降部に対応する回転部材のギア比を加味した上で、実通函1bの搬出用昇降部62の重量から空通函1aの搬入用昇降部61の重量を引いた重量値、且つ、各昇降部が通函の非載荷状態において空通函1aの搬入用昇降部61の重量から実通函1bの搬出用昇降部62の重量を引いた重量値を、一定の摺動摩擦の抵抗力以上であって昇降作動力とする重力を生起する重量値とするよう設計している。
つまり、回転部材等の摺動摩擦抵抗に抗して昇降推力を生起させる重量をT、空通函1aの重量をa、実通函1bの重量をb、実通函1bの搬出用昇降部62の重量をc、空通函1aの搬入用昇降部61の重量をdとすると、各昇降部61、62の重量の関係は、各昇降部が通函を載荷していない状態においてはd−c≧Tとし、且つ、各昇降部がそれぞれの通函を載荷した状態においては(b+c)−(a+d)≧Tとなるように各搬送部材の重量設計がなされる。なお、空通函1aの重量aは、空通函1aの搬入用昇降部61に対する実際の負荷重量、すなわちスプロケット70aとスプロケット70bとのギア比を乗じて算出した正味の重量である。
また、被搬送物の載荷状態の各昇降部の重量差は、各昇降部に被搬送物を積載する数を複数、例えば被搬送物をそれぞれの昇降部に対して2個積みとすることで、上記一定の重量Tを生起させるように重量設計をしてもよい。
本実施形態に係る各昇降部61、62の重量の関係において、各搬送部材の重量は、通函の載荷、及び非載荷のそれぞれの状態における各昇降部61、62の重量差、すなわち摺動摩擦抵抗に抗して昇降推力を生起可能な重量差を常時3kg以上とするように設計されており、非載荷状態の各昇降部同士の重量差をd−c≧3kgとし、且つ、載荷状態の各昇降部同士の重量差を(b+c)−(a+d)≧3kgとしている。
このように重量設計された各搬送部材において、昇降装置60は、図10(a)に示すように、非載荷状態にある各昇降部61、62では、実通函1b非載荷状態の搬出用昇降部62よりも空通函1a非載荷状態の搬入用昇降部61の方が重くなり、この重量差による重量負荷が空通函1a非載荷状態の搬入用昇降部61にかかり重力の作用で上昇端21aに位置する搬入用昇降部61を降下させる一方、輪軸の作用で下降端21bに位置する実通函1b非載荷状態の搬出用昇降部62を上昇させて各昇降部61、62をそれぞれの搬送位置に待機させる。
また、載荷状態にある各昇降部61、62では、空通函1a載荷状態の搬入用昇降部61よりも実通函1b載荷状態の搬出用昇降部62の方が重くなり、この重量差による重量負荷が実通函1b載荷状態の搬出用昇降部62にかかり重力の作用で上昇端21aに位置する搬出用昇降部62を降下させる一方、輪軸の作用で下降端21bに位置する空通函1a載荷状態の搬入用昇降部61を上昇させて各昇降部61、62をそれぞれの搬送位置に待機させる。
以上のように、本発明に係る昇降装置60は、摺動摩擦抵抗に抗して常時無駆動で昇降推力を生起する重量差となるように各搬送部材を重量設計し、しかも、回動半径の異なる回転部材70、同心軸に固定して、一体的に回転する回転部材70一回転あたりのそれぞれのストロークを変化させることで、搬出用昇降部62と搬入用昇降部61の昇降の上下移動距離の差に対応して各昇降部を各搬送位置に同期して位置づけることを可能としている。
また、本発明に係る昇降装置60は、回転部材70を支点として、一方の昇降部を降下推力を生起させる力点とし、他方の昇降部を上昇推力を生起させる作用点とし、各昇降部において、被搬送物が載荷している場合と、載荷していない場合とで、作用点側と力点側が交互に転換することで昇降部を無動力で上下移動させて被搬送物の搬送を可能とするものとも言える。
また、本実施形態に係る搬送システムBにおいては、各昇降部61、62には支柱6側面に当接して回転するブレーキローラ80aが配設され、また、上空搬送経路31には被搬送物1の底面と当接して回転するブレーキローラ80bが配設される。
本実施形態に係るブレーキローラ80は、ローラ筒の内部に設けられて回転による遠心力で半径方向の外方へ移動するブレーキシューと、ローラ筒と一体回転するようにローラ筒の内周面側に設けられたブレーキドラム部を備えており、一定の遠心力を超えるとブレーキシューが半径方向外方のローラ内周面に当接し、ブレーキ力を発生させるものを用いている。
各昇降部61、62のブレーキローラ80aは、図9及び図11に示すように、支柱6のフランジ部6a外側面に接触させて、支柱6の上下方向に沿って回転して移動するように実通函1bの搬出用昇降部62と空通函1aの搬入用昇降部61とのそれぞれの所定位置に設けられる。すなわち、ブレーキローラ80aは、それぞれの昇降部61、62が上下方向に移動するに伴い支柱6のフランジ部6a外側面に当接して回転し、昇降部61、62に働く上下推力を一定とするように規制する。
上空搬送経路31のブレーキローラ80bは、上空搬送経路31のローラ搬送機構部32に間欠的に設けられる。より具体的には、ブレーキローラ80bは、ローラ搬送機構部32の構成において、支持枠部32bに搬送方向で所定の間隔を隔ててならんだ状態で回転自在に支持される複数の遊転ローラ32aのうち、所定数の遊転ローラ32aを隔てた位置に、同遊転ローラ32aが支持される位置で支持される。つまり、ブレーキローラ80bは、ローラ搬送機構部32において、所定数の遊転ローラ32aを介した位置で間欠的に支持枠部32bにより支持される。
このような構成により、ブレーキローラ80は、被搬送物1が搬送システムBの昇降装置60や上空搬送装置3を搬送移動する際には、被搬送物1の自重や各被搬送物1の重量差により生じる搬送推力が過度となった場合に、自動的にブレーキを作動させて過度の搬送推力を減衰させ、被搬送物を安全に搬送させるとともに被搬送物1が損傷してしまうことを防ぐことを可能としている。
以上のように、本実施形態に係る搬送システムBによれば、搬送の対象である被搬送物1の自重を効果的に利用することで、シンプルでコンパクトな構成を実現しつつも、省スペース化及び低コスト化を図ると共に安全性の向上させて、完全無動力で被搬送物1を搬送方向へ搬送することを可能としている。
このように本発明に係る搬送システムは、被搬送物である空通函や実通函の搬送用経路が並設できる構成を備えているため、これら各被搬送物の供給や回収をする作業者等が、搬送にあたって搬送システムの搬入口や搬出口を往来するような搬送作業の手間を与えることなく、各被搬送物の搬入搬出作業を迅速且つ容易として本来的な製造作業工程の効率を向上することができる。また、被搬送物が降下する際に、一方の被搬送物を支持した状態の昇降部の重さを、一方の被搬送物の下降推力としてだけでなく他方の被搬送物の上昇推力としても利用することができ、駆動力を可及的に抑制しつつも駆動源を共通化、または、駆動源を要することなく、各被搬送物の昇降を実現して、装置等の無用の設置コストを削減することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。