本発明に係る昇降搬送装置は、スプロケット等の回転部材に掛けられたチェーン等の索状部材の一端側に、搬送の対象である被搬送物としてのワークが載せられる荷台部を連結するとともに、索状部材の他端側にカウンタウエイトとして機能するウエイトを連結した構成を備え、重力を利用して荷台部を昇降させる構成のものである。本発明は、かかる構成において、ウエイトを、油等の液体が入れられた液体槽としての収容筒部内にピストン状に内装することで、荷台部の昇降に連動して収容筒部内を昇降するウエイトに対して液体によって抵抗を付与し、荷台部およびウエイトの昇降速度を調整する構成を備える。このような構成により、本発明に係る昇降搬送装置は、無動力でシンプルかつコンパクトな構成を実現し、省スペース化および低コスト化を図るとともに、汎用性および装置の移動性の向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。図1および図2に示すように、本実施形態に係る昇降搬送装置1は、自動車の製造工場において、例えば床面や台座上の支持面等の所定の設置面上に設けられた支持台2上に設置され、所定の製造工程で取り扱われる被搬送物としてのワーク3を、昇降動作によって搬送するものである。本実施形態では、昇降搬送装置1によって搬送されるワーク3は、自動車部品の一つであって自動車のボディを構成するパネル部品であり、所定のパレット4内に複数収容された状態で搬送される。ワーク3は、全体として概略矩形板状の外形を有し、立った姿勢で横方向に所定の数(例えば8個)重ねられた状態で、パレット4内に収容される。
本実施形態では、昇降搬送装置1は、自動車の製造工場等でワーク3の搬送に用いられる搬送システム10に適用されている。搬送システム10は、昇降搬送装置1と、第1の搬送機構としての上段シュータ40と、上段シュータ40の下方に設けられた第2の搬送機構としての下段シュータ50とを備える。
昇降搬送装置1は、概略的には、回転支持部11において回転部材としてのスプロケット12に掛けられた索状部材としてのチェーン13の一端側に、ワーク3を収容するパレット4が載せられる荷台部としてのリフター14を連結するとともに、チェーン13の他端側にウエイト部15のウエイト30を連結した構成を備え、重力を利用してリフター14を昇降させる構成を備える。このような昇降搬送装置1を備える搬送システム10は、概略的には次のような搬送動作を行う。
すなわち、搬送システム10において、昇降搬送装置1は、上段シュータ40によりワーク3が収容された状態のパレット(以下「実パレット」という。)4(4A)を、所定の搬入位置に位置するリフター14により受け取る。実パレット4Aを受け取ったリフター14は、ウエイト部15よりも重くなり、ウエイト部15に作用する重力に抗して下降して実パレット4Aを所定の搬出位置まで搬送して停止する。搬出位置まで搬送された実パレット4Aから、作業者等によってワーク3が取り出される。ワーク3が取り出された空の状態のパレット(以下「空パレット」という。)4(4B)は、下段シュータ50に導かれ、下段シュータ50により所定の位置まで搬送される。空パレット4Bが搬出されたリフター14は、ウエイト部15よりも軽くなり、ウエイト部15の重さによって上昇し、搬入位置に戻る。なお、図2は、搬送システム10を上段シュータ40および下段シュータ50側(図1において左側)から見た搬送システム10の概略構成を示す図であり、図2では、搬送システム10の一部の構成を省略している。
このような搬送動作を行う搬送システム10において、昇降搬送装置1、上段シュータ40、および下段シュータ50は、一体的な支持台2上に所定の位置関係で配置される。すなわち、搬送システム10が備える支持台2は、その設置面2a上において昇降搬送装置1、上段シュータ40、および下段シュータ50を所定の位置関係で支持する支持部として機能する。支持台2は、例えば、板状の部材や複数のフレーム部材等が組まれて所定の設置面2aを形成するように構成される。
そして、本実施形態の搬送システム10において、上段シュータ40と下段シュータ50とは、平面視(上面視)において、搬送面を互いに略一致させるように、つまり下段シュータ50の上に上段シュータ40が重なるように構成され、しかも、平面視で、搬送方向を互いに平行かつ反対方向とする。すなわち、上段シュータ40は、平面視で所定の直線方向に沿ってリフター14側に近付く方向を搬送方向とし、下段シュータ50は、平面視で上段シュータ40の搬送方向に沿う(平行な)方向であってリフター14側から遠ざかる方向を搬送方向とする。
以上のような搬送システム10が備える各構成について、以下詳細に説明する。なお、以下の説明では、平面視で互いに平行となる上段シュータ40および下段シュータ50の搬送方向(図1において左右方向)を単に「搬送方向」とし、この搬送方向について、リフター14に対して上段シュータ40および下段シュータ50が位置する側(図1において左側)を「反リフター側」あるいは「前側」とし、上段シュータ40および下段シュータ50に対してリフター14が位置する側(図1において右側)を「リフター側」あるいは「後側」とする。
本実施形態に係る昇降搬送装置1の構成について説明する。昇降搬送装置1は、重力を利用してワーク3を搬送するものであり、複数のスプロケット12を有する回転支持部11と、スプロケット12に掛けられた状態で回転支持部11に支持されスプロケット12により案内されながら移動するチェーン13と、パレット4に収容された状態のワーク3が載せられるリフター14と、カウンタウエイトとしてのウエイト30を有するウエイト部15と、ウエイト30を収容する収容筒部としてのシリンダ部20とを備える。
スプロケット12は、昇降搬送装置1の支持台2に対する所定の高さ位置において、所定の回転軸12aを中心に回転可能に設けられる。本実施形態に係る回転支持部11は、回転軸12aの方向を互いに平行とし、かつ回転軸12aの高さ位置を互いに略同じとする2つのスプロケット12を有する。スプロケット12は、所定の支持部材により支持された状態で設けられる。2つのスプロケット12のうち、一方のスプロケット12Aは、リフター14の昇降位置の上方に設けられ、他方のスプロケット12Bは、ウエイト30の昇降位置の上方に設けられる。
本実施形態では、各スプロケット12は、支持台2上に立設された直線状の支柱16の上端部から水平方向(搬送方向)に延設された支持ステー16aに支持された状態で設けられている。スプロケット12は、例えば支持台2から約4メートルの高さ位置に設けられる。なお、スプロケット12を支持するための構造は特に限定されず、スプロケット12の支持には支持台2上に設けられた適宜の支持部材が用いられる。
チェーン13は、回転支持部11において互いに略同じ高さ位置にある2つのスプロケット12(12A,12B)に対して上側から掛けられ、両側に垂下部分を有し、各垂下部分の下端部に、リフター14またはウエイト30を支持する。すなわち、チェーン13は、リフター14側のスプロケット12Aの水平方向に沿う径方向の一側(図1において右側)から垂下する第1垂下部13aと、ウエイト30側のスプロケット12Bの水平方向に沿う径方向の他側(図1において左側)から垂下する第2垂下部13bと、2つのスプロケット12A,12B間に架け渡された水平部13cとを有し、2つのスプロケット12A,12Bにより案内されながら移動することで、第1垂下部13aおよび第2垂下部13bの長さを変化させる。
チェーン13の一端部となる第1垂下部13aの下端部には、リフター14が連結される。一方、チェーン13の他端部となる第2垂下部13bの下端部には、ウエイト30が連結される。このように、チェーン13は、リフター14とウエイト30とを互いに連結するとともに、2つのスプロケット12に掛けられることで折り返され両端側を垂下させた態様で配される。したがって、チェーン13は、リフター14およびウエイト30の互いに反対方向となる昇降動作にともなって2つのスプロケット12により案内されながら移動する。なお、チェーン13は、ワーク3、パレット4、リフター14、およびウエイト部15(ウエイト30)の重量等に応じて所定の引張強度を有する。
リフター14は、ワーク3が収容されるパレット4が載せられる部分であり、チェーン13の一端側が連結されてチェーン13により吊られた状態、つまり上向きの張力を受けた状態で昇降する(図1、矢印A1参照)。本実施形態では、リフター14は、スプロケット12を支持する支柱16に沿って上下方向に移動可能、つまり昇降可能に設けられている。リフター14は、1台のパレット4が載る載置スペースを有する。
リフター14は、その昇降動作の上昇端の位置を、上段シュータ40から実パレット4Aを受け取る搬入位置とし、昇降動作の下降端の位置を、実パレット4Aからワーク3が取り出される位置であって下段シュータ50に空パレット4Bを受け渡す位置である搬出位置とする。つまり、昇降搬送装置1は、リフター14を搬入位置から搬出位置までの範囲で昇降動作させ、パレット4に収容された状態のワーク3を下降搬送する。リフター14は、具体的には、チェーン13の一端側が連結される部分であって支柱16に支持される部分である支持台部17と、支持台部17上に設けられてパレット4が載る搬送載置面を形成する搬送支持部18とを有する。
支持台部17は、複数のフレーム部材等によって平面視で略矩形状をなすように構成され、支柱16側(前側)に設けられた案内支持部17aによって支柱16に移動可能に係合した状態で、支柱16によって上下方向の移動がガイドされる。つまり、リフター14は、支持台部17の一部として設けられた案内支持部17aを介して、支柱16に対して上下方向にスライド移動可能に支持される。
ここで、支柱16による支持台部17の支持案内構造は、特に限定されるものではないが、かかる支持案内構造としては、例えば次のような構造が用いられる。すなわち、支柱16として、横断面形状がコ字状(U字状)の溝形鋼や、横断面形状がH字状となるH型鋼等が用いられる一方、案内支持部17a側にはガイドローラ等のガイド部材が設けられる。そして、支柱16においてコ字状あるいはH字状をなす部分が、案内支持部17a側に支持したガイド部材に対するガイド溝等として適宜利用されることで、案内支持部17aが支柱16に対してその長手方向つまり上下方向にスライド移動可能に案内支持される。
搬送支持部18は、平面視で回転軸方向を搬送方向に直交する方向とする複数のローラ18aと、これらのローラ18aを搬送方向に所定の間隔を隔てて並んだ状態で回転自在に支持する支持枠部18bとを含む一対の(2列の)ローラ搬送機構部19を有する(図3参照)。搬送支持部18による搬送方向は、平面視において上段シュータ40および下段シュータ50の搬送方向に沿う方向となる。
ローラ18aは、支持枠部18bを構成する所定の側壁間に架設された状態で回転自在に支持される。ローラ搬送機構部19において、複数のローラ18aは、その上端が水平方向に沿う所定の仮想平面(図3(a)、符号14F参照)上に位置し、この仮想平面の位置が、リフター14において1台のパレット4が載る搬送載置面の位置となる。リフター14は、搬送載置面を水平面に沿わせた状態(水平状態)で昇降動作するように支柱16に支持される。
一対のローラ搬送機構部19は、搬送載置面を互いに同じ高さ位置とするとともに、平面視で互いに平行に、かつ搬送方向視で左右両側に対称となるように設けられる(図3参照)。したがって、一対のローラ搬送機構部19は、リフター14の側面視、つまりローラ18aの回転軸方向視において互いに重なるように配置された状態で設けられる。
このような搬送支持部18に対し、パレット4は、その底面側における被搬送方向の左右両側の所定の部分を、ローラ搬送機構部19において搬送載置面を形成するローラ18aの上端に接触させて搬送載置面上にて載置・搬送される。一対のローラ搬送機構部19を有する搬送支持部18は、リフター14上におけるパレット4の移動をスムーズなものとしてリフター14に対するパレット4の搬入・搬出を補助する。
また、リフター14の下方における支持台2上には、リフター14において搬送支持部18を支持する支持台部17の下側の部分における所定の位置に接触し、下降端に達したリフター14を支持台2の設置面2aに対して所定の高さ位置に支持する支持突部14bが設けられている。なお、この支持突部14bは、リフター14側において支持台部17の一部として設けられてもよい。
ウエイト部15は、全体として円筒状の外形のウエイト30を有し、ウエイト30は、後述のとおりシリンダ部20内に収容された状態で上下方向に移動可能、つまり昇降可能に設けられる。ウエイト30は、チェーン13の他端側が連結されてチェーン13により吊られた状態、つまり上向きの張力を受けた状態で昇降する。本実施形態では、ウエイト部15は、後述のとおり2個のウエイト30を有する(図2参照)。
ウエイト部15は、ウエイト30によって重力の作用をスプロケット12およびチェーン13を介してリフター14に上向きの引張力として伝達する。すなわち、ウエイト部15は、ウエイト30によってリフター14に対するカウンタウエイトとして機能する部分であり、リフター14に対するパレット4の搬入・搬出によるリフター14側の重さの変化に応じて、リフター14を昇降させるための引張力を、スプロケット12およびチェーン13を介してリフター14に作用させる。ウエイト30は、リフター14が上昇端に位置する状態における位置を下降端の位置とし、リフター14が下降端に位置する状態における位置を上昇端の位置とする。
ウエイト部15の重さ、つまり2個のウエイト30の合計の重さは、リフター14よりも重くかつワーク3が載せられたリフター14よりも軽くなるように設定される。本実施形態では、ワーク3は、パレット4に所定の数だけ収容された状態でリフター14上に載せられることから、ウエイト部15の重さは、所定の数のワーク3を収容したパレット4(実パレット4A)が載った状態(以下「載荷状態」という。)のリフター14よりも軽くなるように、かつ、パレット4が載っていない状態(以下「非載荷状態」という。)のリフター14よりも重くなるように設定される。具体的な各部の重量の一例としては、ウエイト部15の重さ、つまり2個のウエイト30の合計の重さが320kg、リフター14の重さが150kg、所定の数のワーク3を収容したパレット4の重さが180kgという例が挙げられる。
このように、リフター14とウエイト30は、チェーン13により互いに連結されてチェーン13が掛けられた2つのスプロケット12からそれぞれ吊り下げられた状態、つまり重力の作用により相手側を上向きに引っ張った状態で昇降するように設けられる。そして、ウエイト部15は、載荷状態のリフター14よりも軽いことから、リフター14が載荷状態の場合、リフター14側が下降し、ウエイト部15側(ウエイト30側)が上昇する。
シリンダ部20は、ウエイト30をピストン状に収容するものであり、支持台2上において鉛直方向に配されたパイプ状のシリンダ21により構成されている。シリンダ21は、支持台2上において、ウエイト部15側のスプロケット12Bの下方の位置にて立設される。シリンダ21は、少なくとも、リフター14の昇降範囲に対応するウエイト30の昇降範囲の全体を含む長さを有する。つまり、ウエイト30のシリンダ21に内装された状態は、ウエイト30の昇降動作のストロークの全範囲内で維持される。
シリンダ21は、円筒状の部材であり、円筒状のウエイト30を同心配置させた状態で収容する。このため、シリンダ21内においては、チェーン13は、シリンダ21の中心軸に沿って鉛直方向に配される態様となる。シリンダ21は、内装するウエイト30との間にわずかな隙間を有する。つまり、シリンダ21の内周面とウエイト30の外周面との間には、若干の(例えば数ミリメートル程度)の隙間が存在する。シリンダ21は、所定の部材により下端が塞がれた有底の筒体である。また、シリンダ21の上端は、チェーン13を貫通させるとともにチェーン13の送り動作を許容する孔部が設けられた所定の蓋部材によって塞がれる。シリンダ21は、例えば、透明樹脂等により透明の部材として構成されたアクリルパイプ等の樹脂製の部材や、金属製の部材によって構成される。
このようにウエイト30をピストン状の部材として内装するシリンダ部20内、つまりシリンダ21内には、ウエイト30の昇降動作に抵抗を与える液体として油22が入れられている。油22としては、粘度等が考慮され、油圧作動油やタービン油等の工業用の潤滑油が適宜用いられる。
シリンダ21内において、油22は、少なくともウエイト30の昇降動作の範囲を含む深さとなるように貯溜される。すなわち、ウエイト30の昇降動作のストロークの全範囲内でウエイト30の全体が油22に浸かった状態が維持されるように、所定の量の油22がシリンダ21内に入れられる。なお、シリンダ21には、油22を入れ替えるための油22の排出口および供給口が所定の位置に設けられる。また、シリンダ21内の油22は、蒸発することで経時的に減少するため、シリンダ21内においてウエイト30との関係で所定の量の油22が維持されるように油22が適宜補充される。
以上のような構成を備える昇降搬送装置1に関し、本実施形態の搬送システム10においては、一体のリフター14に対して、回転支持部11、チェーン13、ウエイト30、およびシリンダ部20の各構成(以下まとめて「リフター昇降支持構成」という。)が2組設けられている(図2参照)。リフター昇降支持構成は、平面視において搬送方向に沿う方向に対して直交する方向(図2において左右方向、以下この方向を左右方向とする。)の両側に略左右対称に構成されている。
2組のリフター昇降支持構成は、シリンダ21内において油22内に浸かった状態のウエイト30を互いに同じ高さ位置として、互いに同期して連動しながらリフター14を昇降動作させる。すなわち、各リフター昇降支持構成が備えるウエイト30が、それぞれ回転支持部11の2つのスプロケット12に支持されたチェーン13を介してリフター14に連結される。このように、本実施形態のウエイト部15は、リフター14に対するカウンタウエイトとして、合計2個のウエイト30を有する。このため、2個のウエイト30の合計の重さが、非載荷状態のリフター14よりも重くかつ載荷状態のリフター14よりも軽くなるように設定される。
また、リフター14は、その支持台部17において、左右のリフター昇降支持構成それぞれのチェーン13の一端側の連結を受ける。具体的には、図3に示すように、支持台部17を構成する左右外側の各フレーム17bに、チェーン13の端部が連結される連結部14aが設けられており、この連結部14aに、各チェーン13の一端側の端部が連結される。チェーン13は、例えば、その一端側の端部に設けられた雄ネジ部分が連結部14aに設けられた雌ネジ部分にねじ込まれることで、連結部14aに連結される。ただし、チェーン13のリフター14に対する連結構造は特に限定されるものではなく、かかる連結構造としては、例えばフック等による係止構造等が適宜採用される。
また、図2に示すように、2組のリフター昇降支持構成は、リフター14側のスプロケット12A同士が左右方向に配された連結軸12bにより互いに連結されて同期回転することで、互いに同期して連動するように構成されている。連結軸12bは、リフター14側のスプロケット12Aの共通の回転軸12aに相当する。ただし、2組のリフター昇降支持構成を連動させるための構成としては、ウエイト部15側のスプロケット12B同士が連結軸により互いに連結される構成であったり、リフター14側およびウエイト部15側の両方のスプロケット12A,12B同士が互いに連結される構成であったりしてもよい。
次に、ウエイト30の詳細について、図4から図7を用いて説明する。図4に示すように、ウエイト30は、全体として円筒状の外形を有し、シリンダ部20のシリンダ21内におけるウエイト30の上方の空間とウエイト30の下方の空間とを連通させる液体通路としての油通路31と、シリンダ21内における下降動作時に油通路31を塞ぐ閉塞部材としての蓋体32とを有する。
油通路31は、円筒状の外形のウエイト30において、その筒軸方向(中心軸方向)に平行に貫通する孔部として設けられている。つまり、油通路31は、ウエイト30の上面30aおよび下面30bに開口することで、シリンダ21内におけるウエイト30の上側の空間とウエイト30の下側の空間とを互いに連通させる直線状の孔部である。したがって、シリンダ21内におけるウエイト30の上側の空間と下側の空間とは、ウエイト30の外周面30cとシリンダ21の内周面21cとの間の隙間23、および油通路31を介して互いに連続する。シリンダ21内において油22内に浸かった状態でウエイト30が設けられる構成において、油通路31は、ウエイト30の上昇動作時において油抜き孔として機能する。なお、シリンダ21の内周面21cとウエイト30の外周面30cとの間の隙間23は、実際は数ミリメートル程度であるが、図7においては便宜上の隙間23を誇張して示している。
本実施形態のウエイト30においては、油通路31として、ウエイト30の軸心方向視でウエイト30の径方向に沿う位置であって中心軸の位置から等距離の2箇所の位置に、互いに同径の孔部が設けられている。ただし、油通路31としての孔部を設ける位置・数や孔形状や孔径等は、ウエイト30の重さやシリンダ21内に入れられる油22の粘度やワーク3、パレット4、及びリフター14の重さ等、昇降搬送装置1における昇降条件等によって適宜設定される。つまり、油通路31としては、シリンダ21内において、ウエイト30の外周面30cとシリンダ21の内周面21cとの間の隙間23以外の部分で、ウエイト30の上側の空間とウエイト30の下側の空間とを互いに連通させるように設けられた通路であれば、その形状や大きさ等は特に限定されない。
図4に示すように、本実施形態では、ウエイト30は、円板状あるいは円柱状の外形を有する複数のウエイト体33により構成されている。複数のウエイト体33は、同心軸状に重ねられた状態でウエイト30の円筒形状の外形をなす。本実施形態では、共通の外形寸法を有する6個のウエイト体33が同心軸状に重ねられた状態で一体的に固定されることで、ウエイト30が構成されている。ウエイト30において、中心軸方向に隣り合うウエイト体33同士は、端面33b同士を互いに接触させた状態で固定される。
図6(a)、(b)、(c)に示すように、ウエイト体33は、円板状の外形を有する鋼材である。ウエイト体33の中心軸方向の両側において外周面33cと端面33bとがなす角部分には、面取部33aが形成されている。ウエイト体33には、ウエイト30において油通路31を形成する通路孔33dが設けられている。なお、図6(b)は、同図(a)におけるA方向矢視図であり、同図(c)は、同図(a)におけるB−B矢視断面図である。
通路孔33dは、ウエイト体33において、中心軸方向視でウエイト体33の径方向に沿う位置であって中心軸の位置から等距離の2箇所の位置に、互いに同径の孔部として設けられている。そして、各通路孔33dが連続するように6個のウエイト体33が重ねられることで、油通路31が形成される。このように、油通路31は、ウエイト体33に設けられ複数のウエイト体33が同心軸状に重ねられた状態でウエイト30の軸心方向に沿って連通する通路孔33dにより形成されている。
ウエイト体33は、6個重なった状態で、ウエイト30を筒軸方向に貫通する2本のボルト部材34および各ボルト部材34に螺合するナット35によって一体的に締結固定される。このため、ウエイト体33には、ボルト部材34を貫通させるボルト孔33eが2箇所に設けられている。ボルト孔33eは、ウエイト体33の両側の端面33bに開口する。
本実施形態では、2箇所のボルト孔33eは、2箇所の通路孔33dが配置される径方向に対して90°ずれた径方向に沿う位置であって中心軸の位置から等距離の2箇所の位置に設けられている。各ウエイト体33のボルト孔33eは、6個のウエイト体33が重ねられた状態において、ウエイト30の筒軸方向に沿う貫通孔を形成する。かかる貫通孔に対して、ウエイト30の上側からボルト部材34が挿通され、ウエイト30の下側に突出するボルト部材34の先端部分に、ナット35が螺合され締め付けられることにより、6個のウエイト体33が一体的に固定される。
このように2本のボルト部材34およびナット35によって6個のウエイト体33が一体的に固定された状態において、各ウエイト体33の外周面33cにより、ウエイト30の円柱面状の外周面30cが形成される。そして、一番上側のウエイト体33の上側の端面33bが、ウエイト30の上面30aとなり、一番下側のウエイト体33の下側の端面33bが、ウエイト30の下面30bとなる。なお、ウエイト30において複数のウエイト体33を一体的に固定するための構造は、本実施形態に限定されない。ウエイト体33を一体的に固定するための構造としては、例えば、ウエイト体33以外の部材を用いてウエイト30の筒軸方向の両側から挟み込む構造であったり、磁力を用いた構造であったりしてもよく、適宜の構造が採用される。
このように複数のウエイト体33により構成されるウエイト30において、6個のウエイト体33のうちの最上のウエイト体33Aに、チェーン13の他端側が連結される。具体的には、図5(a)に示すように、最上に位置するウエイト体33Aの上側の端面33bの中心部に、チェーン13の他端側の端部が連結される。本実施形態では、チェーン13の他端側の端部には、雄ネジ部分13fが設けられている。これに対し、ウエイト体33A側には、上側の端面33bに開口するネジ穴33fが設けられている。
このような構造により、チェーン13の雄ネジ部分13fがウエイト体33Aのネジ穴33fにねじ込まれることで、チェーン13の他端側の端部がウエイト体33Aに連結される。これにより、チェーン13の他端側の端部がウエイト30に連結される。ただし、チェーン13のウエイト30に対する連結構造は特に限定されるものではなく、かかる連結構造としては、例えばフック等による係止構造等が適宜採用される。
蓋体32は、シリンダ21内におけるウエイト30の下降動作時において、油通路31を塞ぐことで、シリンダ21内における油通路31によるウエイト30の上下の空間の連通状態を断つための閉塞部材である。本実施形態では、ウエイト30を構成する6個のウエイト体33のうちの最下のウエイト体33Bに、蓋体32が設けられている。
特に、本実施形態では、蓋体32は、ウエイト30の下降動作時における油22からの抵抗により、最下のウエイト体33Bの通路孔33dを下側から塞ぐように設けられている。蓋体32は、油通路31の(通路孔33dの)開口面積よりも大きい矩形板状あるいは円板状の部材であり、最下のウエイト体33Bの下側の端面33bに接触して油通路31(通路孔33d)の開口の全体を下側から覆うことで、油通路31(通路孔33d)を塞ぐ。
蓋体32によって油通路31が塞がれることで、シリンダ21内における油通路31によるウエイト30の上下の空間の連通が断たれた状態、つまり油通路31が閉じた状態となる。また、蓋体32が最下のウエイト体33Bの下側の端面33bから離間することで、シリンダ21内における油通路31によるウエイト30の上下の空間が連通した状態、つまり油通路31が開いた状態となる。
蓋体32は、最下のウエイト体33Bの下側、つまりウエイト30の下側において、回動支持機構37によって、油通路31を下側から開閉するように移動可能な状態で支持されている。図4に示すように、回動支持機構37は、蓋体32の油通路31を塞ぐ側の閉塞面32aと反対側の面から延出される支持アーム部37aと、支持アーム部37aを回動可能に支持する回動支持部37bとを有する。各油通路31を塞ぐ蓋体32に対して設けられる回動支持機構37は、ウエイト30の中心軸の位置を中心に対称的に構成される。
回動支持部37bは、2つの油通路31の開口中心が位置するウエイト30の所定の径方向において、油通路31の径方向の外側の位置に設けられている。回動支持部37bは、ウエイト30の中心軸方向視で、前記所定の径方向に直交する方向を回動軸方向として、支持アーム部37aを回動可能に支持する。回動支持部37bから前記所定の径方向に沿って内側に向けて支持アーム部37aが延出される。この支持アーム部37aに蓋体32が固定され、支持アーム部37aと蓋体32とが一体的に油通路31の下側の開口を開閉するように回動支持部37bにより回動可能に設けられる(図4、矢印B1参照)。
このように回動支持機構37によって支持される蓋体32は、ウエイト30の下降動作時においては油22から受ける抵抗によって自動的に油通路31を閉じるように、かつ、ウエイト30の上昇動作時においては油通路31を通過した油22から受ける抵抗によって自動的に油通路31を開くように構成される。このような蓋体32の動作状態を得るため、本実施形態では、図4に示すように、両側の蓋体32間に、バネ等の弾性部材38が架設されている。弾性部材38は、一側の端部を一方の蓋体32の閉塞面32aと反対側の面に突設された円環状の係止部32bに係止させるとともに、他側の端部を他方の蓋体32の係止部32bに係止させた状態で、両側の蓋体32間に架設される。弾性部材38としては、例えば弦巻バネ、板バネ等の各種バネやゴム等の弾性を有する部材が適宜採用される。
このような構成により、両側の蓋体32は、ウエイト30が停止した状態において、自重によって弾性部材38により互いに引っ張り合い、回動支持機構37によって所定の姿勢で支持される。そして、蓋体32は、ウエイト30の下降動作中には、油22の抵抗を受けて閉塞面32aをウエイト30の下面30bに接触させて油通路31を閉じ、ウエイト30の上昇動作中には、弾性部材38によって開き具合が規制されながら開いた状態となる。開いた状態の2つの蓋体32は、図4に示すような回動支持機構37の回動支持部37bの回動軸方向視において逆ハ字状をなす。
以上のように、本実施形態では、閉塞部材としてウエイト30の下側において回動支持機構37により油通路31を開閉可能に支持された蓋体32は、シリンダ21内におけるウエイト30の上昇・下降にともなって油22からの抵抗を受けて自動的に開閉するように構成されている。このような構成は、シリンダ21内で油22に浸かった状態で昇降するウエイト30において、油圧調整機構(油圧調整蓋)として機能する。具体的には本実施形態のウエイト30によれば次のような作用が得られる。
図7(a)に示すように、シリンダ21内におけるウエイト30の上昇時(矢印C1参照)、つまりリフター14の下降時においては、油通路31内に、上昇するウエイト30に対して相対的に下方へ向かう油22の流れが形成される(矢印C2参照)。つまり、シリンダ21内を上昇するウエイト30に対してその上側の油22が油通路31の上側の開口から油通路31内に流れ込み、相対的にウエイト30の下側へと流れる。
このようなウエイト30に対する油22の相対的な流れにより、油通路31の下側に位置する蓋体32は、油通路31の下側から流れ出る油22の圧力を受けてウエイト30の下面30bから離間する方向に回動し(矢印C3参照)、油通路31を開いた状態となる。蓋体32が開くことにより、シリンダ21内におけるウエイト30の上下の空間が連通した状態となることから、シリンダ21内を移動するウエイト30において、油通路31の開口面積分、受圧面の面積が少なくなり、油22から受ける抵抗が小さくなる。
このように、ウエイト30の上昇時(リフター14の下降時)においては、シリンダ21内におけるウエイト30の上下の空間は、シリンダ21の内周面21cとウエイト30の外周面30cとの間の隙間23と、2箇所の油通路31とによって連通した状態となる。このため、シリンダ21内におけるウエイト30の移動(上昇)にともない、シリンダ21内の油22はウエイト30に対して相対的に隙間23および油通路31を抜けることになる。
一方、図7(b)に示すように、シリンダ21内におけるウエイト30の下降時(矢印D1参照)、つまりリフター14の上昇時においては、ウエイト30と一体的に下降する蓋体32が下側から油22による抵抗を受けることで(矢印D2参照)、蓋体32は油通路31を閉じた状態となる。蓋体32が閉じることにより、シリンダ21内におけるウエイト30の上下の空間の連通が断たれて油通路31内を油22が流れない状態となることから、シリンダ21内を移動するウエイト30において、油通路31の開口面積分、受圧面の面積が多くなり、油22から受ける抵抗が増加する。
このように、ウエイト30の下降時(リフター14の上昇時)においては、シリンダ21内におけるウエイト30の上下の空間は、シリンダ21とウエイト30との間の隙間23のみによって連通した状態となる。このため、シリンダ21内におけるウエイト30の移動(下降)にともない、シリンダ21内の油22は、ウエイト30に対して相対的に隙間23のみを抜けることになる(矢印D3参照)。したがって、ウエイト30の下降時においては、ウエイト30の上昇時と比べてウエイト30の上下間を抜ける(通過する)油22の流量が少なくなり、ウエイト30に作用する油圧が増加して浮力によってウエイト30の移動(下降)の速度が遅くなる。こうした作用は、所定の通水空間においてピストン状の部材を押し込むことで細い通路から水を発射させる水鉄砲の原理に通じるものがある。
以上のようにウエイト30が備える油圧調整機構(油圧調整蓋)によれば、ウエイト30の上昇時には、ウエイト30に作用する油圧を小さくし、ウエイト30の移動速度を比較的速くすることができ、ウエイト30の下降時には、ウエイト30に作用する油圧を大きくし、ウエイト30の移動速度を比較的遅くすることができる。つまり、リフター14の上昇時の速度を下降時の速度に比べて遅くするというように、リフター14の上昇時と下降時で別々に移動速度を調整することが可能となる。
搬送システム10においては、載荷状態のリフター14が自重により下降することから、このリフター14の下降の速度を抑えるために、ウエイト部15においてある程度の重量が必要となる。このため、実パレット4Aの重量等によっては、ウエイト部15の重量に対してリフター14が圧倒的に軽い場合が生じる。具体的には、上記のような重量の例の場合、ウエイト部15の重さが320kgであるのに対し、リフター14の重さが150kgであり、重量差が170kgとなってリフター14側が圧倒的に軽くなる。このような場合、リフター14の上昇速度が速くなり安全性の面で問題が生じる可能性がある。そこで、上述したように油22を入れたシリンダ21内にウエイト30をピストン状に収容するとともにウエイト30に油圧調整機構(油圧調整蓋)を設けた構成によれば、ウエイト30の上昇時には油22の抵抗を低減させ、ウエイト30の下降時には油22の抵抗を増加させることで、ウエイト部15とリフター14との重量差に起因するリフター14の上昇速度の過度の増加を抑制することができ、高い安全性を得ることができる。
なお、ウエイト30が備える閉塞部材は、本実施形態のような蓋体32に限定されるものではない。蓋体32に関しては、その支持構成は、弾性部材38を用いた構成に限らず、例えば、各蓋体32が独立してバネ等の付勢部材によって最下のウエイト体33Bに対して所定の姿勢で支持される構成等であってもよい。つまり、蓋体32の支持構造としては、シリンダ21内におけるウエイト30の上昇・下降にともなって油22からの抵抗を受けて蓋体32を自動的に開閉する構造のものであれば、その構造は特に限定されない。また、閉塞部材としては、油通路31を下側から塞ぐ蓋体32に限らず、油通路31の上側の開口を塞ぐように設けられた部材や、油通路31の中途部分、つまりウエイト30の内部で油通路31を塞ぐように設けられた部材等であってもよい。
次に、本実施形態の搬送システム10が備える上段シュータ40について説明する。上段シュータ40は、重力を用いて実パレット4Aを搬送し、搬入位置で待機しているリフター14に実パレット4Aを受け渡す。すなわち、上段シュータ40は、昇降動作の範囲におけるワーク3の搬入位置に位置するリフター14側に向けて下り傾斜する上段搬送面を構成し、搬入位置に位置するリフター14に、パレット4に入れられた状態で自重により上段搬送面上を移動するワーク3を引き渡す搬送機構である。
上段シュータ40は、リフター14が有する搬送支持部18と同様に、左右両側に配される一対の(2列の)ローラ搬送機構部41を有する(図2参照)。すなわち、ローラ搬送機構部41は、左右方向を回転軸方向とする複数のローラ42と、これらのローラ42を搬送方向に所定の間隔を隔てて並んだ状態で回転自在に支持する支持枠部43とを含む。
ローラ42は、支持枠部43を構成する所定の側壁間に架設された状態で回転自在に支持される。ローラ搬送機構部41において、複数のローラ42は、その上端が所定の仮想平面(図1、符号40F参照)上に位置し、この仮想平面の位置が、パレット4が載る上段搬送面の位置となる。上段シュータ40は、複数のローラ42により形成される上段搬送面が、搬入位置にあるリフター14に向かう搬送方向の上手側(図1において左側)から下手側(同右側)にかけて下り傾斜するように構成されている。
一対のローラ搬送機構部41は、ローラ搬送機構部19と同様に、上段搬送面を互いに同じ高さ位置とするとともに、平面視で互いに平行に、かつ搬送方向視で左右両側に対称となるように設けられる(図1参照)。そして、パレット4(実パレット4A)は、リフター14のローラ搬送機構部19による搬送載置面に対する載置態様と同様の態様で上段搬送面上に載った状態、つまり底面側における左右両側の所定の部分をローラ42の上端に接触させた状態で、自重により搬入位置にあるリフター14へ向けて搬送される。
上段シュータ40を構成する一対のローラ搬送機構部41は、支持台2上に設けられた複数のフレーム部材45a等によって構成される支持部45により、支持台2に対して所定の位置に支持される。具体的には、上段シュータ40は、リフター14との関係において、2列のローラ搬送機構部41それぞれの上段搬送面の下手側が、搬入位置(上昇端の位置)にあるリフター14の2列のローラ搬送機構部19のそれぞれの搬送載置面に対して略連続するような位置に設けられる。なお、本実施形態の上段シュータ40は、その上段搬送面上に3,4台のパレット4が載る程度の搬送長さを有する。
続いて、本実施形態の搬送システム10が備える下段シュータ50について説明する。下段シュータ50は、搬出位置にあるリフター14から搬出された空パレット4Bを受け取り、重力を用いて空パレット4Bを所定の方向に搬送する。すなわち、下段シュータ50は、昇降動作の範囲において搬入位置よりも下方のワーク3の搬出位置に位置するリフター14から所定の方向に向けて下り傾斜する下段搬送面を構成し、搬出位置に位置するリフター14から、ワーク3が取り出されたパレット4(空パレット4B)を受け取り、自重により下段搬送面上を移動するパレット4を搬送する搬送機構である。
下段シュータ50は、搬送面の傾斜方向の点を除き、パレット4を搬送するための構造として上段シュータ40と略同じ構成を備える。すなわち、下段シュータ50は、複数のローラ52とこれらを支持する支持枠部53とを含む一対の(2列の)ローラ搬送機構部51を有する(図2参照)。そして、ローラ搬送機構部51において、複数のローラ52は、その上端が所定の仮想平面(図1、符号50F参照)上に位置し、この仮想平面の位置が、パレット4が載る下段搬送面の位置となる。下段シュータ50は、複数のローラ52により形成される下段搬送面が、搬出位置にあるリフター14側である搬送方向の上手側(図1において右側)から下手側(同左側)にかけて下り傾斜するように構成されている。
一対のローラ搬送機構部51は、下段搬送面を互いに同じ高さ位置とするとともに、平面視で互いに平行に、かつ搬送方向視で左右両側に対称となるように設けられる(図1参照)。そして、リフター14から受けたパレット4(空パレット4B)は、リフター14のローラ搬送機構部19による搬送載置面に対する載置態様と同様の態様で下段搬送面上に載った状態、つまり底面側における左右両側の所定の部分をローラ52の上端に接触させた状態で、自重により搬出位置にあるリフター14から所定の方向へ向けて搬送される。
下段シュータ50を構成する一対のローラ搬送機構部51は、上段シュータ40と同様に、支持台2上に設けられた複数のフレーム部材45a等によって構成される支持部45により、支持台2に対して所定の位置に支持される。具体的には、下段シュータ50は、リフター14との関係において、2列のローラ搬送機構部51それぞれの下段搬送面の上手側が、搬出位置(下降端の位置)にあるリフター14の2列のローラ搬送機構部19のそれぞれの搬送載置面に対して略連続するような位置に設けられる。なお、本実施形態の下段シュータ50は、上段シュータ40と略同じ程度の搬送長さを有する。
本実施形態に係る搬送システム10は、リフター14、上段シュータ40、および下段シュータ50の上を移動するパレット4の動作、あるいはリフター14の昇降動作等を利用して、パレット4の停止・搬送や、リフター14の作動の停止(ロック)・開始(ロック解除)等を自動的に行うための機構を備える。具体的には、搬送システム10は、搬送システム10の一連の動作の開始の際に用いられるリフター傾斜機構と、リフター14を搬出位置でロックするリフター下降端ロック機構と、上段シュータ40上において実パレット4Aを所定の待機位置にて停止させる実パレットストッパ機構と、リフター14を搬入位置でロックするリフター上昇端ロック機構とを備える。以下、各機構について説明する。
リフター傾斜機構について、図8を用いて説明する。リフター傾斜機構は、作業者による所定の操作を受けることで、パレット4において搬送載置面(図3、符号14F参照)を形成する搬送支持部18を、その搬送載置面が所定の向きに傾斜するように傾動させる。リフター傾斜機構は、下降端にあるリフター14上においてワーク3が搬出された後の空パレット4Bを、自重により下段シュータ50の下段搬送面上へと移動させるべく、リフター14の搬送載置面を傾斜させるための機構である。
図8(a)、(b)に示すように、リフター傾斜機構は、搬送載置面を形成する搬送支持部18を支持台部17に対して回動可能に支持する回動支持部61と、搬送支持部18を下側から押し上げる押圧機構部62とを有する。回動支持部61は、搬送支持部18の下端部であって搬送方向(図8(a)、(b)において左右方向)の前側(図8(a)、(b)において左側)の端部の位置に設けられる。回動支持部61は、左右方向を回動軸方向とし、支持台部17に対して搬送支持部18を回動可能に支持する。
押圧機構部62は、支持台部17において搬送方向の後側(図8(a)、(b)において右側)の端部の位置に設けられた回動支持部64により回動可能に支持された押圧アーム63と、回動支持部64から延出された操作杆65とを有する。回動支持部64は、左右方向を回動軸方向とし、支持台部17に対して押圧アーム63を回動可能に支持する。
押圧アーム63は、回動支持部64から回動支持部61側、つまり前側へと斜め上方向に延設され、回動支持部64により回動することで搬送支持部18を下側から押圧する。押圧アーム63の先端部には、搬送支持部18に接触する押圧部63aが設けられている。押圧部63aは、例えば左右方向を回転軸方向とするローラ部材により構成される。
操作杆65は、搬送方向について押圧アーム63とは反対側、つまり後側に延出され、その先端側が支持台部17より外側に突出するように設けられている。回動支持部64と操作杆65とは、図8(a)、(b)に示すような側面視で所定の角度関係を維持した状態で回動支持部64を中心に一体的に回動する。つまり、押圧アーム63と操作杆65は、回動支持部64を支点としてシーソーのごとく一体的に回動する。
このようなリフター傾斜機構によれば、図8(a)に示すように、リフター14において水平な搬送載置面上に空パレット4Bが載った状態から、作業者による足踏み動作等によって操作杆65が下方に押し下げられることにより、同図(b)に示すように、操作杆65と押圧アーム63が回動支持部64を中心に一体的に回動する(矢印D1参照)。これにより、押圧部63aによって搬送支持部18の下側に接触する押圧アーム63によって搬送支持部18が押し上げられる。
搬送支持部18は、押圧アーム63によって押し上げられることで、支持台部17側に設けられた回動支持部61を中心に、後側、つまり押圧機構部62が設けられた側が持ち上がるように回動する(矢印D2参照)。つまり、搬送支持部18が、その搬送載置面を搬送方向の前側を下側とする向きに傾斜させるように傾動する。このように搬送支持部18が傾動することで、搬送支持部18上の空パレット4Bは、自重によりリフター14上から下段シュータ50上へと移動する(矢印D3参照)。下段シュータ50上へと移動した空パレット4Bは、上述したように下り傾斜する下段搬送面上を自重により移動して搬送される。なお、操作杆65の操作によって搬送支持部18が傾動した状態(搬送支持部18の傾動姿勢)は、所定の保持機構(図示略)により保持される。以上のように、リフター傾斜機構によれば、作業者による足踏み動作等の操作によって、下降端にあるリフター14上の空パレット4Bを自動的に下段シュータ50へと受け渡す動作が行われる。
次に、リフター下降端ロック機構について、図9を用いて説明する。リフター下降端ロック機構は、上昇端から下降してきた載荷状態のリフター14が下降端に達することで、自動的にリフター14を下降端の位置にてロックする。
図9(a)〜(c)に示すように、リフター下降端ロック機構は、リフター14に設けられた係止突部71と、支持台2上に設けられた係合アーム72とを有する。係止突部71は、リフター14において、例えば支柱16に対してガイドされる部分である案内支持部17aの近傍等の、搬送方向の前側(図9(a)〜(c)において左側)の端部に設けられ、昇降動作するリフター14と一体的に移動する。係止突部71は、略水平方向に沿う面部であって係合アーム72を係止させる係止面部71aと、リフター14の下降動作にともなって係合アーム72に作用して係合アーム72を作動させるガイド面部71bとを有する。ガイド面部71bは、搬送方向の前側の斜め下(図9(a)〜(c)において左斜め下)を向く斜面を形成する部分である。係止突部71は、係止面部71aとガイド面部71bとによって搬送方向の前側に向けて側面視で略三角形状に突出する。
係合アーム72は、一端部である基端部が、支持台2あるいは支持台2上に固定された部材に設けられた回動支持部72aに支持されることで、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持された状態で設けられる。係合アーム72の他端部である先端部には、係止突部71に対して係合する部分である係合部72bが設けられている。係合部72bは、例えば左右方向を回転軸方向とするローラ部材により構成される。係合アーム72は、係止突部71に対して搬送方向の前側に設けられ、回動支持部72aを中心に回動して搬送方向の前側から係合部72bを係止面部71a上に係合させることで、下降端に達したリフター14の係止突部71により係止される。
係合アーム72は、回動支持部72aによる回動動作について、バネ等の所定の付勢部材(図示略)によって、係止突部71に係合する回動位置が自然状態における回動位置となるように付勢された状態で設けられている。すなわち、係合アーム72は、自然状態での回動位置で、係合部72bを、上方から下降してくるリフター14の係止突部71が干渉する(接触する)所定の位置に位置させる。
このようなリフター下降端ロック機構によれば、図9(a)に示すように、自然状態にある係合アーム72に対して、上方からリフター14が下降することで(矢印E1参照)、係止突部71がそのガイド面部71bを係合アーム72の係合部72bに接触させて干渉する。係合アーム72は、係止突部71によって上側から押されることで、係合部72bが接触するガイド面部71bの斜面にならって、付勢部材による付勢力に抗して前側に回動する(矢印E2参照)。そして、リフター14が下降端に達するとともに係止突部71の係止面部71aが係合アーム72の係合部72bによる係合を受ける位置に達することで、つまり下降する係止突部71を係合アーム72が相対的に乗り越えることで、係合アーム72が付勢部材による付勢力によって自然状態に戻る方向に回動し、係合部72bを係止面部71aに係合させた状態となる(図9(b)参照)。これにより、リフター14が下降端の位置にてロックされ、ウエイト部15から引っ張られることによるリフター14の上昇が規制される。
また、リフター下降端ロック機構は、下段シュータ50上を移動する空パレット4Bの動作を用いてリフター14の下降端の位置でのロック状態を自動的に解除させるためのロック解除機構を有する。このロック解除機構は、下段シュータ50上を移動する空パレット4Bの動作を用いて、係合アーム72を、付勢部材による付勢力に抗して係止突部71に係合する側と反対側に回動するように引っ張ることで、リフター14のロック状態を解除する。
このロック解除機構は、具体的には、図9(a)〜(c)に示すように、係合アーム72よりも搬送方向の前側の位置であって下段シュータ50の下側に設けられた解除用作動杆73と、解除用作動杆73を係合アーム72に連結する連結部材74とを有する。解除用作動杆73は、一端側が支持台2あるいは支持台2上に固定された部材に設けられた回動支持部73aに支持されることで、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持された状態で設けられる。解除用作動杆73は、その他端部73bを、下段シュータ50の下側から下段シュータ50の下段搬送面(図1、符号50F参照)上に突出させ、下段搬送面上を移動する空パレット4Bに干渉するように設けられる。つまり、解除用作動杆73は、下段搬送面上を移動する空パレット4Bの接触を受けることで、空パレット4Bの移動方向にならって倒れるように回動支持部73aを起点に回動するように設けられる。
連結部材74は、一端側が解除用作動杆73に回動可能に連結されるとともに、他端側が係合アーム72に回動可能に連結されることで、解除用作動杆73と係合アーム72とを互いに連結させる。これにより、連結部材74は、空パレット4Bによって倒されて回動(傾動)する解除用作動杆73に係合アーム72を連動させ、係合アーム72を、解除用作動杆73と同じ向き、つまり係合アーム72が付勢部材による付勢力に抗する向きに、係合アーム72の係止突部71に対する係合状態が解除されるまで回動(傾動)させる。
このようなロック解除機構によれば、実パレット4Aを載せたリフター14が(図9(a)参照)、下降端に達してリフター下降端ロック機構によってロックされた後(同図(b)参照)、リフター14上の実パレット4Aからワーク3が取り出されて、パレット4が空パレット4Bとなる。この状態から、上述のリフター傾斜機構によって空パレット4Bがリフター14上から下段シュータ50へと流されて下段シュータ50上を空パレット4Bが移動することで(矢印E3参照)、図9(c)に示すように、解除用作動杆73が他端部73bの部分から空パレット4Bにより押されて、回動支持部73aを起点に倒されるように回動する(矢印E4参照)。この解除用作動杆73の回動にともない、係合アーム72が、連結部材74によって引っ張られ、付勢部材による付勢力に抗して、係止突部71に対する係合状態を解除する向きに回動する(矢印E5参照)。これにより、下降端に位置するリフター14のロック状態が解除される。非載荷状態のリフター14は、下降端におけるロック状態が解除されることで、ウエイト部15の重量によって上昇することになる。
次に、実パレットストッパ機構について、図10を用いて説明する。実パレットストッパ機構は、上段シュータ40上において、実パレット4Aをリフター14の手前側となる上段搬送面(図1、符号40F参照)の下手側の端部の所定の待機位置に停止させる。そして、実パレットストッパ機構は、下降端から上昇してきたリフター14が上昇端に達することで、上段シュータ40上における実パレット4Aの停止状態を解除し、実パレット4Aを自重により自動的にリフター14上に搬入させる。
図10(a)、(b)に示すように、実パレットストッパ機構は、上段シュータ40の下手側の部分の下方において支持部45を構成するフレーム部材45a等に設けられた左右方向を回動軸方向とする回動支持部81と、回動支持部81により回動可能に支持された係止アーム82および作動杆83とを有する。係止アーム82は、回動支持部81から搬送方向の前側(図10(a)、(b)において左側)に延出され、上段シュータ40の下側から上段シュータ40の上段搬送面上に突出する係止部82aを有する。係止アーム82は、係止部82aを上段シュータ40上の実パレット4Aに対して下側から係止させることで、実パレット4Aを待機位置に停止させる。
作動杆83は、回動支持部81から搬送方向について係止アーム82とは反対側である後側(図10(a)、(b)において右側)に延出され、その先端側が上昇するリフター14に干渉するように設けられる。係止アーム82と作動杆83とは、図10(a)、(b)に示すような側面視で所定の角度関係を維持した状態で回動支持部81を中心に一体的に回動する。つまり、係止アーム82と作動杆83は、回動支持部81を支点としてシーソーのごとく一体的に回動する。
係止アーム82および作動杆83は、回動支持部81による回動動作について、バネ等の所定の付勢部材(図示略)によって、係止アーム82が係止部82aによって待機位置にある実パレット4Aを停止させる位置となるように付勢された状態で設けられている。すなわち、係止アーム82および作動杆83は、自然状態での回動位置で、係止部82aを上段シュータ40の上段搬送面上に突出させて待機位置の実パレット4Aに係止させた状態となる。
一方、リフター14側には、リフター14の上昇にともなって作動杆83に接触して作動杆83を下側から押し上げる押上部84が設けられている。すなわち、押上部84は、作動杆83に対して、リフター14が下方から上昇することで作動杆83に接触するような位置関係で設けられている。押上部84は、リフター14において、例えば支柱16に支持される案内支持部17aの近傍等の、搬送方向の前側の端部に設けられ、昇降動作するリフター14と一体的に移動する。押上部84は、作動杆83に対して下側から接触する押圧面部84aを有する。
このような実パレットストッパ機構によれば、図10(a)に示すように、上段シュータ40上の待機位置にて実パレット4Aが係止アーム82の係止部82aによって停止させられた状態から、ウエイト部15の作用によって上昇してきたリフター14が(矢印F1参照)、押上部84の押圧面部84aを作動杆83に接触させた状態で作動杆83を押し上げる。これにより、図10(b)に示すように、作動杆83および係止アーム82が回動支持部81を中心に一体的に回動し(矢印F2参照)する。
そして、リフター14が上昇端に達するとともに、係止アーム82がその回動によって係止部82aを上段シュータ40の上段搬送面の下方に移動させる(引っ込める)(矢印F3参照)。これにより、係止アーム82による待機位置における実パレット4Aの停止が解除される。実パレット4Aの停止が解除されることで、待機位置にあった実パレット4Aは、自重により上段シュータ40上を移動し、自動的にリフター14上へと搬入される(矢印F4参照)。なお、上述したようなリフター傾斜機構による搬送支持部18の傾動姿勢が保持された状態は、リフター14が上昇端に達することで、所定の解除機構(図示略)により自動的に解除される。
また、実パレットストッパ機構は、上述したような待機位置にある実パレット4Aを停止させる機構に加え、上段シュータ40上において、待機位置にある実パレット4Aの上手側に位置する他の実パレット4Aを所定の停止位置にて停止させる補助ストッパ機構を有する。補助ストッパ機構は、待機位置にあった実パレット4Aがその停止を解除されることでリフター14上に載り、載荷状態となったリフター14が下降する過程における所定のタイミングまで、他の実パレット4Aを所定の停止位置にて停止させるとともに、リフター14の下降にともなってその停止を解除して実パレット4Aを自重により下手側の待機位置へと移動させる。
補助ストッパ機構は、図10(a)、(b)に示すように、回動支持部81と同様に上段シュータ40の下手側の部分の下方において支持部45を構成するフレーム部材45a等に設けられた左右方向を回動軸方向とする回動支持部85と、回動支持部85により回動可能に支持された補助係止アーム86とを有する。回動支持部85は、搬送方向において回動支持部81の反リフター側であって回動支持部81と略同じ高さ位置に設けられている。
補助係止アーム86は、その長手方向の中途部が回動支持部85により支持され、回動支持部85を支点としてシーソーのごとく回動する。補助係止アーム86は、係止アーム82の係止部82aと同様に、上段シュータ40の下側から上段シュータ40の上段搬送面上に突出する係止部86aを有する。補助係止アーム86は、係止部86aを上段シュータ40上の実パレット4Aに対して下側から係止させることで、実パレット4Aを待機位置よりも上手側の所定の停止位置に停止させる。
補助係止アーム86の回動支持部85よりもリフター側の部分は、係止アーム82に対して連結部86bにおいて左右方向を回動軸方向として回動可能に連結されている。これにより、係止アーム82および作動杆83が回動支持部81によって待機位置にある実パレット4Aの停止状態を解除する方向、つまり係止アーム82側が下がる方向(図10(a)、(b)において左回りの方向)に回動することに連動して、補助係止アーム86は、回動支持部85によってリフター側の部分が下がる方向(同右回りの方向)に回動する。つまり、補助係止アーム86は、回動支持部85の軸方向視において、連結部86bを中心部分として、一体的に回動する係止アーム82および作動杆83に対して対称的な態様で回動する。
また、補助係止アーム86は、連結部86bによって係止アーム82と連結されることで、回動支持部85による回動動作について、係止アーム82とともに付勢された状態で設けられる。補助係止アーム86は、自然状態の係止アーム82に対応して、係止部86aによって所定の停止位置にある実パレット4Aの停止を解除させる回動位置に位置する(図10(a)参照)。そして、補助係止アーム86は、リフター14が上昇端に達することにともなう係止アーム82による待機位置の実パレット4Aの停止の解除にともない、係止アーム82の回動に連動して回動し、係止部86aを上段シュータ40の上段搬送面上に突出させて所定の停止位置にある実パレット4Aに係止させた状態となる。
このような補助ストッパ機構によれば、リフター14が上昇端に達することで係止アーム82による待機位置の実パレット4Aの停止状態が解除されることにともない、待機位置の上手側にある他の実パレット4Aが所定の停止位置にて停止させられる。すなわち、図10(b)に示すように、リフター14の上昇により押上部84によって作動杆83が押し上げられることで係止アーム82が係止部82aを下方に引っ込めるように係止アーム82が回動することにともない(矢印F2,F3参照)、補助係止アーム86が回動支持部85を中心として連結部86b側を下げるように回動し(矢印F5参照)、連結部86bを上段シュータ40の上段搬送面上に突出させる(矢印F6参照)。これにより、待機位置の実パレット4Aの上手側にあった他の実パレット4Aが所定の停止位置にて停止させられる。
そして、係止アーム82の回動によって待機位置における停止状態が解除された実パレット4Aが自重によりリフター14上に移動し(矢印F4参照)、載荷状態となったリフター14が下降することで、押上部84による作動杆83の押上げ状態が解除される。これにより、係止アーム82が付勢力によって自然状態に戻るように回動して係止部82aを上段搬送面上に突出させるとともに、補助係止アーム86が係止部86aを上段搬送面から引っ込める方向に回動する。これにより、補助係止アーム86によって所定の停止位置で停止させられていた実パレット4Aの停止が解除され、その実パレット4Aが自重により上段搬送面上を移動し、係止アーム82によって待機位置で自動的に停止させられる(図10(a)参照)。
続いて、リフター上昇端ロック機構について、図11を用いて説明する。リフター上昇端ロック機構は、下降端から上昇してきた非載荷状態のリフター14が上昇端に達することで、自動的にリフターを上昇端の位置にてロックする。
図11(a)〜(c)に示すように、リフター上昇端ロック機構は、上段シュータ40の下手側の部分において支持部45を構成するフレーム部材45a等に設けられた係止突部91と、リフター14の支持台部17に設けられた係合アーム92とを有する。係止突部91は、略水平方向に沿う面部であって係合アーム92を係止させる係止面部91aと、リフター14の上昇動作にともなって係合アーム92に作用して係合アーム92を作動させるガイド面部91bとを有する。ガイド面部91bは、搬送方向の後側の斜め下(図11(a)〜(c)において右斜め下)を向く斜面を形成する部分である。係止突部91は、係止面部91aとガイド面部91bとによって搬送方向の後側に向けて側面視で略三角形状に突出する。
係合アーム92は、一端部である基端部が、リフター14の支持台部17の前端部に設けられた回動支持部92aに支持されることで、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持された状態で設けられる。係合アーム92の他端部である先端部には、係止突部91に対して係合する部分である係合部92bが設けられている。係合部92bは、例えば左右方向を回転軸方向とするローラ部材により構成される。係合アーム92は、係止突部91に対して搬送方向の後側に設けられ、回動支持部92aを中心に回動して搬送方向の後側から係合部92bを係止面部91a上に係合させることで、上昇端に達したリフター14の係止突部91により係止される。
係合アーム92は、回動支持部92aによる回動動作について、バネ等の所定の付勢部材(図示略)によって、係止突部91に係合する回動位置が自然状態における回動位置となるように付勢された状態で設けられている。すなわち、係合アーム92は、自然状態での回動位置で、係合部92bを、リフター14の上昇にともなって係止突部91が干渉する(接触する)所定の位置に位置させる。
このようなリフター上昇端ロック機構によれば、図11(a)に示すように、係止突部91に対して、下方からリフター14が上昇することで(矢印G1参照)、自然状態にある係合アーム92がその係合部92bを係止突部91のガイド面部91bに接触させて干渉する。係合アーム92は、相対的に係止突部91によって上側から押されることで、係合部92bが接触するガイド面部91bの斜面にならって、付勢部材による付勢力に抗して後側に回動する(矢印G2参照)。そして、リフター14が上昇端に達するとともに係合アーム92の係合部92bが係止突部91の係止面部91aに係合する位置に達することで、つまり係合アーム92が相対的に下降する係止突部91を乗り越えることで、係合アーム92が付勢部材による付勢力によって自然状態に戻る方向に回動し、係合部92bを係止面部91aに係合させた状態となる(図11(b)参照)。これにより、リフター14が上昇端の位置にてロックされ、重力によるリフター14の下降が規制される。ここで、上述したようなリフター傾斜機構による搬送支持部18の傾動姿勢が保持された状態は、リフター14が上昇端に達することで、所定の解除機構(図示略)により自動的に解除される。
また、リフター上昇端ロック機構は、上段シュータ40からリフター14上に搬入された実パレット4Aの動作を用いてリフター14の上昇端の位置でのロック状態を自動的に解除させるためのロック解除機構を有する。このロック解除機構は、リフター14上に搬入される実パレット4Aの動作を用いて、係合アーム92を、付勢部材による付勢力に抗して係止突部91に係合する側と反対側に回動するように引っ張ることで、リフター14のロック状態を解除する。
このロック解除機構は、具体的には、図11(a)〜(c)に示すように、搬送方向におけるリフター14の後側(図11(a)〜(c)において右側)に設けられた解除用作動杆93と、解除用作動杆93を係合アーム92に連結する連結部材94とを有する。解除用作動杆93は、一端側が支持台部17に設けられた回動支持部93aに支持されることで、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持された状態で設けられる。解除用作動杆93は、その他端部93bを、リフター14の搬送載置面上に突出させ、搬送載置面上を移動する実パレット4Aに干渉するように設けられる。つまり、解除用作動杆93は、リフター14に搬入された実パレット4Aの接触を受けることで、実パレット4Aの移動方向にならって倒れるように回動支持部93aを起点に回動するように設けられる。
連結部材94は、一端側が解除用作動杆93に回動可能に連結されるとともに、他端側が係合アーム92に回動可能に連結されることで、解除用作動杆93と係合アーム92とを互いに連結させる。これにより、連結部材94は、実パレット4Aによって倒されて回動(傾動)する解除用作動杆93に係合アーム92を連動させ、係合アーム92を、解除用作動杆93と同じ向き、つまり係合アーム92が付勢部材による付勢力に抗する向きに、係合アーム92の係止突部91に対する係合状態が解除されるまで回動(傾動)させる。
このようなロック解除機構によれば、図11(b)に示すように、非載荷状態のリフター14が上昇端に達してリフター上昇端ロック機構によってロックされた後、同図(c)に示すように、待機位置での停止状態が解除された実パレット4Aがリフター14上に搬入されることで(矢印G3参照)、解除用作動杆93が他端部93bの部分から実パレット4Aにより押されて、回動支持部93aを起点に倒されるように回動する(矢印G4参照)。この解除用作動杆93の回動にともない、係合アーム92が、連結部材94によって引っ張られ、付勢部材による付勢力に抗して、係止突部91に対する係合状態を解除する向きに回動する(矢印G5参照)。これにより、上昇端に位置するリフター14のロック状態が解除される。載荷状態となったリフター14は、上昇端におけるロック状態が解除されることで、実パレット4Aの重量が加わって自重により重力により下降することになる。
なお、以上説明した各機構は、図面では模式的に示しているが、搬送システム10においては左右方向の所定の場所(例えば左右方向の中央部)に、一または複数箇所設けられる。
以上のような構成を備える本実施形態の昇降搬送装置1および搬送システム10の一連の動作について、図12から図15を用いて説明する。図12に示すように、搬送システム10の一連の動作においては、搬出位置である下降端に位置するリフター14上のパレット4から作業者10aによってワーク3が取り出された状態を動作前状態とする。
動作前状態では、下降端に位置するリフター14は、リフター下降端ロック機構(図9参照)により下降端の位置でロックされて上昇動作が規制されている。また、同じく動作前状態では、実パレットストッパ機構(図10参照)により、上段シュータ40上において、実パレット4Aが待機位置に停止させられているとともに、待機位置の実パレット4Aの上手側に他の実パレット4Aが停留している。
図12に示すように、作業者10aは、下降端に位置するリフター14上のパレット4からワーク3を搬出し終わると、リフター傾斜機構(図8参照)の操作杆65を足踏みによって操作する。これにより、リフター14の搬送支持部18が回動支持部61を起点に傾動して搬送載置面が傾き、搬送載置面上の空パレット4Bが自重によって搬送載置面上を下り、下段シュータ50へと流され、下段シュータ50の下段搬送面の傾斜によって自重により下段搬送面に沿って搬送される(矢印H1参照)。
下段シュータ50上における空パレット4Bの搬送の途中で、上述したリフター下降端ロック機構のロック解除機構によって、下段シュータ50上を移動する空パレット4Bにより解除用作動杆73が押されて、リフター下降端ロック機構によるリフター14の下降端におけるロックが解除される(図9参照)。これにより、図13に示すように、ウエイト部15よりも軽い非載荷状態のリフター14は、ウエイト部15の重量によってチェーン13により引っ張られて上昇する(矢印H2参照)。
図13に示すように、リフター14の上昇の過程では、シリンダ21内においてウエイト30が下降する(矢印H3参照)。ウエイト30の下降動作については、シリンダ21内の油22の抵抗によって、ウエイト30が有する油圧調整機構において蓋体32により油通路31が閉じられ、ウエイト30の下降速度が抑えられ、非載荷状態のリフター14の上昇の速度が抑えられる(図7(b)参照)。ここでは、上記の各部の重量の例によると、ウエイト部15の重量が320kgで非載荷状態のリフター14が150kgであり、重量差が170kgと大きいことから、ウエイト30の油圧抵抗が増加されることで、リフター14の上昇の速度が抑えられる。
図14に示すように、非載荷状態のリフター14が上昇端に達することにともない、リフター14は、リフター上昇端ロック機構(図11参照)により上昇端の位置で自動的にロックされて下降動作が規制される。なお、このリフター14の上昇端でのロックにともない、リフター14の下降端の位置における作業者10aの足踏み動作によって傾動した状態の搬送支持部18が搬送載置面を水平とする元の状態に戻る。
また、図14に示すように、非載荷状態のリフター14が上昇端に達することにともない、実パレットストッパ機構(図10参照)において、押上部84により作動杆83が押し上げられ、待機位置で停止していた実パレット4Aが、自重により上昇端でロックされた状態のリフター14上へと流れ込む(矢印H4参照)。なお、上段シュータ40に対しては、その上手側から実パレット4Aが搬送システム10の一連の動作のペースに応じた所定のペースで供給される。
リフター上昇端ロック機構によりロックされた状態のリフター14に実パレット4Aが流れ込むことで、リフター上昇端ロック機構の解除機構によって、リフター14上に流れ込んだ実パレット4Aにより作動杆83が押されて、リフター上昇端ロック機構によるリフター14の上昇端におけるロックが解除される(図11(c)参照)。これにより、図15に示すように、ウエイト部15よりも重い載荷状態となったリフター14は、ウエイト部15に作用する重力に抗して下降する(矢印H5参照)。
図15に示すように、リフター14の下降の過程では、シリンダ21内においてウエイト30が上昇する(矢印H6参照)。ウエイト30の上昇動作については、シリンダ21内の油22の抵抗によって、ウエイト30が有する油圧調整機構において蓋体32により油通路31が開かれ、ウエイト30に作用する油圧の抵抗が小さくなる(図7(a)参照)。ここでは、上記の各部の重量の例によると、ウエイト部15の重量が320kgで載荷状態のリフター14が330kgであり、重量差が10kgとわずかであることから、ウエイト30の油圧抵抗が低減されることで、ある程度のリフター14の下降の速度が確保される。
下降を開始した載荷状態のリフター14が下降端に達することにともない、リフター14は、リフター下降端ロック機構により下降端の位置で自動的にロックされて上昇動作が規制される。下降端に位置するリフター14上の実パレット4Aから、作業者10aによってワーク3が搬出される。これにより、搬送システム10は動作前状態に戻る(図12参照)。
以上のような搬送システム10の一連の動作が繰り返し行われる。この一連の動作は、実パレット4Aを空パレットに変換するための動作となる。すなわち、本実施形態の搬送システム10によれば、サイクルの開始時における作業者10aによる足踏みの動作等の所定の操作のみにより、実パレット4Aを空パレット4Bに変換するための一連の動作が自動的に行われる。
以上説明した本実施形態に係る昇降搬送装置1およびそれを備えた搬送システム10によれば、外部の動力や電気制御を必要とせず、シンプルでコンパクトな構成を実現することができ、コストの低減を図ることができるとともに、ワーク3の重量についての汎用性および装置の移動性を向上させることができる。
本実施形態に係る昇降搬送装置1および搬送システム10は、リフター14、ワーク3、パレット4、およびウエイト30に作用する重力、ならびにウエイト30に作用する浮力を利用し、リフター14に対する実パレット4Aおよび空パレット4Bの搬入・搬出によるリフター14の重量の変化によってリフター14を昇降させてワーク3を搬送し、無動力の実空パレット変換機を実現するものである。このため、電気やエア等の外部動力や電気制御等を用いずに動作することが可能となり、電気あるいはエアの供給源や、モータ等の駆動部や、制御盤やバルブ等の電気機器等の構成を設ける必要がなくなる。したがって、外部動力、モータや制御盤等の構成、およびこれらの構成に必要な配線工事が不要となり、装置構成をシンプルかつコンパクトにすることが可能となり、設備費用、電気やエアの使用料等のランニングコスト等を削減することができる。これにより、装置の設置に必要なスペースの省略、エネルギー費用の低減を図ることができるとともに、投資費用等のコストを大幅に削減することが可能となる。また、装置構成がシンプルになることから、始業点検や保守点検等のメンテナンスにかかる工数を減少させることができる。また、エアシーケンス・電気制御で回路を組むといった作業が不要となることから、回路を組むために必要な専門知識が不要となり、装置を取り扱う人材の確保が容易となる。
また、本実施形態に係る昇降搬送装置1によれば、例えば搬送するワークの重量が大幅に変更された場合等であっても、シリンダ21内の油22の種類を変える等、油22の粘度を変更することで、リフター14の速度を調整することが可能となる。つまり、ワークの重量が変わっても、装置を構成する機構の変更(取替え)を要することなく、油22の粘度を変更することで対応することが可能となる。このため、ワークの重量の面から高い汎用性を得ることができる。
したがって、例えば、ワークを載せたリフター14の重量が数十から数百キログラムにまで及ぶ場合であっても、シリンダ21内の油22の粘度を調整することで、シリンダ部20のボア径、つまりシリンダ21およびウエイト30の径を大きくしたり、ポンプ等の外部動力を用いたりすることなく、無動力での対応が可能となる。このように無動力での対応が可能となることから、例えば電気供給用の配線やエア供給用の配管等が不要となるため、いわゆる根の生えない設備を実現することができる。これにより、工場内等における設備のレイアウト変更等に際して搬送システム10の設備の移動を容易に短時間で行うことができる。
特に、設備の移動に関しては、無動力設備のため、設備の移動に際し、電気やエア等の原動力を用いた場合に必要となる原動力設備のばらし工程や原動力に対する配線・配管等の繋ぎ込みの工程等といった原動力工事が発生せず、短時間での移動が可能となる。
具体的には、本実施形態の搬送システム10を移動させる場合、例えば、図16に示すように、昇降搬送装置1、上段シュータ40、および下段シュータ50等が配設される支持台2を、所定のジャッキ95を用いてジャッキアップし、支持台2に移動用車輪96を取り付けることで、システム全体を容易に移動することができる。このように、本実施形態の搬送システム10の設備移動は、リフト等の重機を使用せずに行うことができるので、安全にしかも容易に作業を行うことができる。
また、本実施形態の搬送システム10によれば、上述したように一連の動作が作業者の足踏み動作等のワンタッチの動作のみで無動力のからくりによって自動的に行われることから、作業者の負担を軽減することができ、現場に喜ばれる設備を実現することができる。また、無動力の設備であることから、エネルギー消費量を削減し、原価を低減することができ、安全で環境に優しい設備を実現することができる。
また、本実施形態の昇降搬送装置1によれば、ウエイト部15を構成するウエイト30が、複数のウエイト体33により構成されている。このため、油22の粘度を変更することに加え、ウエイト体33の数の調整によって容易にウエイト部15の重量を調整することができるので、ワーク3の重さや数、あるいはパレット4の種類等に応じて、油22の粘度とウエイト30の重さの両面から、リフター14の昇降速度を微調整することが可能となり、高い汎用性を得ることができる。つまり、油22の粘度およびウエイト部15の重量を調整することにより、多様な重さのワーク3・パレット4の昇降を行うことが可能となる。
また、本実施形態の昇降搬送装置1においては、ウエイト30の油通路31が同心軸状に重ねられたウエイト体33の通路孔33dにより形成され、油通路31を塞ぐ閉塞部材が、油圧調整機構を構成する蓋体32である。このような構成によれば、ウエイト30の油通路31を油22の抵抗によって塞ぐための構成を、シンプルな構造で容易に実現することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する内容や構成等については同一の符号を付す等して適宜説明を省略する。本実施形態に係る搬送システム110は、作業者等に対する安全性を向上させた構成を備えるものである。
図17に示すように、本実施形態に係る搬送システム110は、リフター14の昇降位置に対する作業者の侵入を制限する安全装置としての安全シャッター120を備える。安全シャッター120は、リフター14の昇降位置に対して、下降端の搬出位置にあるリフター14上の実パレット4Aからワーク3を搬出する作業者10a(図12参照)が位置する側、つまり上段シュータ40等が設けられる側と反対側となる後側(図17において右側)に設けられる。安全シャッター120は、支持台2からリフター14の昇降範囲を含む高さ範囲で設けられる。
安全シャッター120は、上下方向に伸縮可能な遮蔽部としてのシャッター本体121を有し、このシャッター本体121の伸縮により開閉する。そして、安全シャッター120は、リフター14の昇降動作に連動して開閉するように構成されている。
図17に示すように、シャッター本体121は、リフター14の昇降動作にともなってスプロケット12の回転に連動して回転する回転部である巻取機122にワイヤ123を介して連結されている。そして、シャッター本体121は、リフター14の上昇動作に連動して伸長し、安全シャッター120を閉状態とし、リフター14の下降動作に連動して収縮し、安全シャッター120を開状態とする。
具体的には、シャッター本体121は、板状の部材が蛇腹状に折り曲げ可能に構成されたものであり、上下方向に伸縮するように設けられている。シャッター本体121を構成する板状の部材としては、例えば、金属製の鋼板やダンプラシート(プラスチックダンボールシート)等が適宜用いられる。
シャッター本体121の上端部121aは、支持台2上に立設された支柱等の所定の支持部材(図示略)に固定されることで、支持台2上において所定の位置に固定されている。一方、シャッター本体121の下端部121bには、ワイヤ123の一端部が連結されている。ワイヤ123は、例えばシャッター本体121の蛇腹状をなす各板部121cを貫通した状態で配されることで、シャッター本体121に対してその伸縮方向(図17において上下方向)に沿って配され、その下端部がシャッター本体121の下端部121bに連結されている。シャッター本体121は、その自重によって下端部121bが下がるように、つまり蛇腹状の部分を広げて伸長するように構成されている。
巻取機122は、回転可能に支持された滑車状の本体部122aを有し、この本体部122aの回転により、一端側がシャッター本体121に連結されるワイヤ123の巻取りおよび送出しを行う。つまり、本体部122aの所定の位置には、ワイヤ123の他端側が連結され、本体部122aの回転によって巻取機122から延出するワイヤ123の長さが変化する。巻取機122の本体部122aは、リフター14およびウエイト30が連結されるチェーン13を支持するスプロケット12の回転に連動して回転するように構成されている。
本実施形態では、本体部122aは、リフター14側のスプロケット12Aと同軸回転するように設けられることで、スプロケット12Aの回転に同期して回転する。すなわち、本体部122aは、チェーン13が掛けられるスプロケット12のうちのリフター14側の左右のスプロケット12A同士を互いに連結する連結軸12b(図2参照)を回転軸として、スプロケット12Aと同期回転するように設けられている。本体部122aは、例えば、スプロケット12Aと同様に左右方向の両側の2箇所に同軸配置されている。ただし、本体部122aの数や設ける位置等は特に限定されない。また、巻取機122とスプロケット12との連動構造は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、本体部122aとスプロケット12とが互いに平行な異なる回転軸に支持され、本体部122aとスプロケット12とがチェーンやベルト等によって連動する構造等であってもよい。
巻取機122から延出するワイヤ123は、スプロケット12Aの後方(図17において右方)の位置に配された滑車124に掛けられ、滑車124の水平方向に沿う径方向の後側から垂下する垂下部123aを有する。この垂下部123aが、シャッター本体121に対してその伸縮方向に沿って配され、垂下部123aの端部(下端部)が、シャッター本体121の下端部121bに連結される。
滑車124は、支持台2上において所定の高さ位置に設けられた支持ステー125に、スプロケット12と同様に左右方向を回転軸方向とする回転軸124aにより回転可能に支持される。支持ステー125は、例えば、スプロケット12を支持する支持ステー16aから延設される。
以上のような構成において、安全シャッター120が閉じた状態から(図17参照)、巻取機122の本体部122aのワイヤ123の巻取り方向の回転動作(矢印J1参照)によって、ワイヤ123が巻き取られることで、シャッター本体121の下端部121bが上方に引き上げられる(矢印J2参照)。これにより、図18に示すように、シャッター本体121の下端部121bが、固定の位置にある上端部121aに対して近付き、シャッター本体121が折り畳まれて収縮した状態となり、安全シャッター120が開いた状態となる。
一方、安全シャッター120が開いた状態から(図18参照)、巻取機122の本体部122aのワイヤ123の送出し方向の回転動作(矢印J3参照)によって、ワイヤ123が送り出されることで、シャッター本体121の下端部121bが自重によって下方に移動する(矢印J4参照)。これにより、図17に示すように、シャッター本体121の下端部121bが、固定の位置にある上端部121aから遠ざかり、シャッター本体121が広がって伸長した状態となり、安全シャッター120が閉じた状態となる。
このような安全シャッター120の開閉動作がリフター14の昇降動作に連動して所定のタイミングで行われるように、スプロケット12Aと巻取機122との連動機構が構成されている。具体的には、本実施形態では、リフター14の昇降動作範囲における下半部の範囲内における昇降動作に連動して、安全シャッター120の開閉動作が行われる構成が採用されている。
すなわち、図18に示すように、リフター14が下降端に位置し、安全シャッター120が開いた状態から、図19に示すように、リフター14がその昇降範囲における1/3から半分程度の所定の高さ位置まで上昇することで(矢印J5参照)、安全シャッター120は閉じた状態となる(矢印J6参照)。つまり、安全シャッター120は、リフター14の上昇の開始から閉じ始め、図19に示すようにリフター14がその昇降動作範囲の下半部における所定の高さ位置に達した時点で閉じた状態となり、その後、リフター14が上昇端に達するまで、閉じた状態を維持する。
そして、リフター14が安全シャッター120と連動する昇降動作範囲は、リフター14の上昇時と下降時とで共通となる。すなわち、リフター14が上昇端の位置から下降する過程では、図17に示すように安全シャッター120が閉じた状態から、図19に示すように、リフター14がその昇降範囲における1/3から半分程度の所定の高さ位置まで下降することで(矢印J7参照)、安全シャッター120は開き始める(矢印J8参照)。つまり、安全シャッター120は、閉じた状態において、下降を開始したリフター14が図19に示すようにその昇降動作範囲の下半部における所定の高さ位置に達した時点から開き始め、その後、リフター14が下降端に達することで、開いた状態となる。このように安全シャッター120が開いた後、作業者により、下降端のリフター14上の実パレット4Aからのワーク3の取出し作業が行われる。
このように、本実施形態では、リフター14の下降端の位置から昇降動作範囲の下半部における所定の高さ位置までのリフター14の昇降動作と、安全シャッター120の開閉動作とが連動する構成が採用されており、かかる構成において、リフター14の上昇にともなって安全シャッター120が閉じ、リフター14の下降にともなって安全シャッター120が開く。このような構成によれば、リフター14がその昇降動作範囲の下半部における所定の高さ位置よりも上の範囲内に位置する状態では、リフター14の上昇・下降にかかわらず安全シャッター120は閉じた状態となる。このようなリフター14と安全シャッター120との連動動作は、チェーン13が巻回されるスプロケット12Aと巻取機122の本体部122aとの回転比等によるリフター14および安全シャッター120の昇降(開閉)のタイミング・速度の調整によって実現される。
以上のように安全装置としての安全シャッター120を備える構成によれば、リフター14の昇降動作を用いて安全シャッター120を開閉することができるので、無動力でより高い安全性を得ることが可能となる。すなわち、リフター14が昇降する位置に対する作業者の侵入を規制する安全シャッター120を備えることで、昇降搬送装置1における安全性を高めることができる。しかも、その安全シャッター120についてリフター14の昇降動作を利用して自動的に開閉する構成を採用することで、安全シャッター120を開閉させるために動力源や制御盤等を設ける必要がなくなるので、装置構成をシンプルかつコンパクトにすることが可能となり、省エネ化・省スペース化を図ることができるとともに、投資費用等のコストを大幅に削減することが可能となる。
また、図17から図19に示すように、本実施形態の搬送システム110は、リフター14の落下防止のための安全装置として、安全ブロック130を備える。安全ブロック130は、リフター14が所定の速度以上の速度で落下したときに作動し、リフター14を停止させる落下防止用の牽引装置である。
安全ブロック130は、本体部131と、本体部131の一端側に設けられたフック状の部材等からなる係止部132と、本体部131の内部に設けられた巻取り保持機構等によって本体部131から延出・巻取り可能に設けられたワイヤロープ133とを有する。ワイヤロープ133は、本体部131内に設けられた所定の付勢手段によって自動的に巻き取られるように設けられている。ワイヤロープ133の端部には、フック状の部材等からなる係止部133aが設けられている。安全ブロック130は、本体部131から延出されるワイヤロープ133に急激に荷重がかかることでロックされるように構成されている。
このような安全ブロック130が、本体部131側の係止部132およびワイヤロープ133の端部の係止部133aを、それぞれ所定の場所に掛け止めた状態で設けられる。本体部131側の係止部132は、支持台2上においてリフター14の上方に設けられたスプロケット12Aを支持する支持ステー16a等の所定の支持部に設けられた係止部134に連結される。ワイヤロープ133の端部の係止部133aは、リフター14における所定の位置、例えばチェーン13の端部が連結される連結部14aが設けられる支持台部17のフレーム17b等に設けられた係止部135に連結される。
このような態様で設けられた安全ブロック130は、リフター14の昇降動作にともなってワイヤロープ133の本体部131からの延出長さを自動的に変化させる。なお、安全ブロック130は、リフター14に対して左右両側の2箇所に設けられる。
以上のように安全装置としての安全ブロック130を備える構成によれば、仮にリフター14を支持するチェーン13がリフター14の昇降動作時などにおいて切断した場合であっても、安全ブロック130のロックが作動することにより、リフター14の落下が防止される。これにより、昇降搬送装置1における安全性を確保することができる。
また、図18に示すように、本実施形態の搬送システム110は、システム全体を移動させるための車輪部140を備える。車輪部140は、支持台2に固定された支持体141と、支持体141に回転可能に支持された車輪142とを有する。つまり、車輪142は、支持体141を介して支持台2に対して回転可能に支持されている。
このように設けられた車輪部140は、昇降搬送装置1、上段シュータ40、および下段シュータ50を支持した状態の支持台2を、車輪142を介して移動可能に支持する。つまり、車輪部140によれば、搬送システム110の全体を床面150上において移動させることが可能となる。車輪部140は、例えば自由に移動方向を変えることができるキャスターである。なお、車輪部140は、搬送システム110において、所定の位置に所定の数設けられる。例えば、車輪部140は、前後方向所定の間隔を隔てた2箇所、および左右両側の2箇所の合計4箇所に配置される。また、搬送システム110の稼動時においては、車輪142の回転はロックされた状態とされる。
このように搬送システム110を全体的に移動させるための車輪部140を備える構成によれば、工場内等における設備のレイアウト変更等に際し、ジャッキを用いて支持台2をジャッキアップさせて移動用車輪を取り付ける手間を省略することができ、設備の移動を容易かつ安全に短時間で行うことができる。すなわち、支持台2を支持する車輪部140を備える構成は、上述したような根の生えない設備を実現することができる構成において、効果的に設備移動の作業効率および安全性を向上させることが可能となる。
以上説明した本発明の実施形態の昇降搬送装置および搬送システムが備える各構成については、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、チェーン13を支持する回転支持部11は、2つのスプロケット12(12A,12B)を有する構成であるが、回転支持部11としては、1つあるいは3つ以上のスプロケットを有する構成等であってもよく、少なくとも一つのスプロケット12を有する構成であればよい。また、上述した実施形態の昇降搬送装置1が備える回転部材と索状部材との組合せとしては、スプロケット12とチェーン13の組合せの代わりに、プーリとベルトの組合せ、あるいは滑車とロープの組合せ等が採用されてもよい。
また、上述した実施形態の昇降搬送装置1が備えるシリンダ部20において、シリンダ21内に収容される液体は油22であるが、これに限らず、シリンダ21内に収容される液体は、例えば水や他の溶液等であってもよい。また、シリンダ部20を構成するシリンダ21については、円筒状の部材に限らず、矩形状や多角形状の横断面形状を有する角筒状の部材であってもよい。これに応じて、シリンダ21内に収容されるウエイト30の形状も角筒状の外形であってもよい。同様にして、同心軸状に重ねられた状態でウエイト30の一体的な外形をなすウエイト体33についても、シリンダ21およびウエイト30の形状に応じて矩形・多角形の板状あるいは角柱状の外形を有するものが適宜採用される。例えば、収容筒部として箱型の容器を用い、この容器内に角材のウエイトを収容した構成等であっても、ウエイトおよびその収容空間の面積比率の調整等により、上述した実施形態のような円筒状のシリンダ21およびウエイト30の場合と同様の作用・効果を得ることができる。また、シリンダ21は、透明である必要はないが、例えばアクリルパイプ等の透明の部材を用いて構成することにより、シリンダ21内におけるウエイト30の動作や油22の状態(量や色等)の経時的な変化を外部から容易に視認することが可能となる。
[実施例]
以下では、本発明の実施例について説明する。本実施例は、上述したような昇降搬送装置1において、シリンダ21の内径、ウエイト30の外径、昇降物(ウエイト30)の重量、およびウエイト30の昇降ストロークを所定の値として、シリンダ21内に収容する油22の粘度(動粘度)を変えた場合のウエイト30の下降時間を測定したものである。
本実施例では、シリンダ21の内径を190mm、ウエイト30の外径を185mm、ウエイト30の重量を200kg、ウエイト30の昇降ストロークを1200mmとし、油22として、粘度(40℃、mm2/s(平方ミリメートル毎秒))が2.0の油(第1試料)と、粘度(40℃、mm2/s)が45.74の油(第2試料)の2種類の油を使用した。第1試料を用いた場合、下降時間は12秒であり、第2試料を用いた場合、下降時間は38秒であった。なお、参考例として、シリンダ21の内径を40mm、ウエイト30の外径を39mm、ウエイト30の重量を1kg、ウエイト30の昇降ストロークを1720mmとして、シリンダ21内に油22を入れない場合、つまりシリンダ21内を空気とした場合、下降時間は2秒という測定結果が得られた。
上記の計測結果では、油粘度を2.0(mm2/s)から45.74(mm2/s)に上げることにより、下降時間が12秒から38秒に増加している。この計測結果に基づき、油粘度(mm2/s)と下降時間(秒)とが比例関係にあるとした場合、図20(a)に示すようなグラフが得られる。本実施例により、ウエイト30が200kgという比較的重量物であっても、油22の粘度を調整することで、数十秒の単位という比較的広い範囲でウエイト30の下降時間を調整することが可能となることがわかる。
また、上記の計測結果に基づき、第1試料を使用した場合の下降時間である12秒を基準として、第2試料を使用した場合の下降時間が12秒となるようにウエイト30の重量を調整した場合、600kgという結果が得られた。この計測結果に基づき、油粘度(mm2/s)と昇降物の重量(kg)とが比例関係にあるとした場合、図20(b)に示すようなグラフが得られる。このグラフから、昇降物の下降時間(下降速度)を一定にしようとした場合、油22の粘度を調整することで、昇降物の重量について、数百キログラムの単位という比較的広い範囲で対応することが可能となることがわかる。
以上の実施例から、設備仕様を変更することなく、ウエイトの昇降動作に抵抗を与える油の粘度を変更することで、リフタースピード(荷台部の昇降速度(移動時間))の変更や、ワークあるいはパレット等の昇降物の重量の変更が容易にできるということが実証された。