JP6622363B2 - 抗リポアラビノマンナン抗体及び当該抗体を用いた抗酸菌症のイムノアッセイ - Google Patents

抗リポアラビノマンナン抗体及び当該抗体を用いた抗酸菌症のイムノアッセイ Download PDF

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Description

本発明は、結核菌をはじめとする抗酸菌のリポアラビノマンナンに特異的に結合するモノクローナル抗体、特に一本鎖抗体(scFv)及びその多価抗体に関する。
また本発明は、当該抗体を用いた抗酸菌検出方法、なかでも結核診断方法または結核診断法、並びに当該方法に使用される抗酸菌検出剤(例えば結核診断剤)及び抗酸菌検出用キット(例えば結核診断用キット)に関する。
さらに本発明は、当該抗体を用いて、結核に対する抗結核薬の治療効果を判定する方法、並びに当該方法に使用される、抗結核薬の治療効果を判定するためのキットに関する。
結核は、何千年もの間、人々を苦しめてきた感染症であり、19世紀には欧州の成人人口の1/4が結核により死亡したと推定される。生活水準の向上と20世紀における抗生物質の発見により、結核は1950年代までに先進工業国においては根絶されたも同然であった。しかしながら、結核は未だ再興感染症として猛威をふるっている。今日、世界人口の3人に1人が結核菌に感染していると推測されている(潜在性結核)。世界における新発生全結核患者は940万人とされ、そのうちの200万人が死亡していると概算されている。活動性結核患者のうち約95%が発展途上国に住んでおり、結核による死亡者の99%が発展途上国に集中しているのが現状である。
1990年代に入ってから、世界は、結核が途上国を中心にいまだに最大の感染症として増加を続けていることを改めて認識し、本格的な対策に乗り出した。世界保健機関(WHO)を中心とした直接監視下短期化学療法(DOTS:Directly Observed Treantment Short-couse)の展開、対策を当事国・援助国・援助機関の連携で進めるための「ストップ結核パートナーシップ」の設立、資金面で支えるシステムとしての「エイズ・結核・マラリア対策世界基金」の発足などによって、結核対策が世界的連携のもとで進められるようになった。結核対策における現存の技術は、全般的に何十年も改善されないままに使用されてきたものが多い。そのため、途上国で効果を発揮するには新技術の開発が急務とされている。
結核の診断は、結核菌の感染を早期に発見し、治療に導くことが最も重要である。特に排菌状態にある患者は、周囲に感染を拡大させるリスクが非常に高いため、周囲との接触がない環境に隔離して治療する必要がある。そのための検査として「結核の細菌学的診断」があり、なかでも喀痰塗沫検査が最も普及している。
喀痰塗抹検査は、喀痰塗抹標本を直接顕微鏡で観察検査する方法(喀痰塗抹標本の直接鏡検法)であり、一世紀以上前にロベルトコッホにより確立されたものである。臨床検査試料から結核の病原体を染色することによって、抗酸菌を同定する。今日用いられている結核の診断法は、コッホが用いた技術を実質的に用いて確立されたものである。結核菌塗沫検査は、途上国における標準的な結核診断法であり、また、新たな検査法の性能を評価する際の基準になっている。
喀痰塗抹検査よりも高感度な方法として、遺伝子増幅法が確立されている。遺伝子増幅法はDNAポリメラーゼを用いて連鎖反応的に特定のDNAを増幅する方法である。原理は、増幅しようとするDNAとその両端の配列に相補的な一対のDNAプライマーおよび耐熱性DNAポリメラーゼを用いて、温度変化を繰り返すことによって検査したいDNAを増幅するというものである。当該遺伝子増幅法は、感度的には満足されているが、操作性・設備・価格の面において途上国で使用するのが困難な状況である。
最近の世界的動向として、多剤耐性結核の蔓延を背景に、培養検査や核酸増幅検査の必要性に関心が向けられている。しかしながら、色々な細菌学的診断法がある中で、喀痰塗沫検査(喀痰の直接鏡検法)は依然として結核対策戦略の中核に位置付けられている。特に、結核が蔓延している資源に乏しい途上国では、喀痰塗抹検査は有効な診断方法であるばかりでなく、治療効果を判定する手段としても重要な役割を果たしている。
このように、喀痰塗抹検査は結核制圧の基本戦略の中核であるにも関わらず、多くの途上国では細菌学的検査従事者の数は絶対的に不足しており、その質にも問題が多いとされている。この検査の有効性は検査技師の技術に依存しているため、日常的な訓練および品質管理が必須であり、これが全体の費用が極めて増加する原因になっている。また、途上国では、検査室の環境、検査器具、検査技術等を整備するうえで必要な社会的基盤に多くの課題を抱えており、これらの要素が複雑に絡み合って、結果として検査の質に少なからず悪影響を与えている。
さらに、喀痰塗沫検査は抗酸菌を検出・同定するための検査であり、結核菌を検出する方法ではないため、当該検査で結核菌を同定することは不可能である。
先進国における結核治療は、結核菌が同定された後、薬剤による治療が開始されるのに対して、途上国で行われるDOTSプログラムにおいては、喀痰塗沫検査で抗酸菌が検出されると、結核菌の同定を行うことなく薬剤による治療が開始される。ここで、結核菌感染症と非結核性抗酸菌感染症とでは使用される薬剤は異なるにも関わらず、基本的に非結核性抗酸菌に対して治療効果の高い薬は開発されていないため、結核菌に対する薬剤で治療が行われる。このため、患者は薬剤による副作用というリスクが課せられることになる。かかるリスクの代表的な例としては、肝臓機能の低下や失明等の重篤な副作用や、薬剤耐性非結核性抗酸菌の蔓延等が指摘されている。
このように、従来の結核の診断やその治療法には、幾つかの問題点が存在しているにも関わらず、未だに1882年に開発されたコッホの喀痰塗沫検査法が、大きく改良されることなく結核の診断に使用されているのが現状である。途上国・新興国における検査室の環境、検査器具、検査技術等に必要な社会的基盤における課題を解決するためには、「電源や施設が整備された限られた場所に検体を集約してハイスループットで高感度・安価な検査方法を確立」、もしくは「電源を必要とする機器を用いない高感度・迅速・簡便・安価なポイントオブケアテスト(POCT)を確立」かの二通りの対策が考えられる。
途上国・新興国においても、限られた極一部の地域であれば電源や施設が整備されている。また、そのような地域では比較的高度な検査を行っている検査センターが既に存在しており、一部の富裕層の患者が利用することが可能な状態である。このような検査センターを利用することで、検査室の環境、検査器具、検査技術、人財等の課題を解決することができる。その場合、患者または診療現場から喀痰検体を検査センターに輸送する必要がある。遺伝子増幅検査や培養検査に用いる喀痰検体の輸送には幾つかの大きな制限が存在する。コンタミネーションや雑菌の増殖を防ぐために採痰後は速やかに冷蔵状態で輸送する必要がある。また、培養検査では菌が増殖できる状態であることが重要であるため、遺伝子検査以上の注意を要する。更に、検体を熱処理等の滅菌操作を加えた場合、両検査は実施できなくなるため、厳重に管理された状況で検体を輸送する必要がある。このような検体輸送における制限に対して、途上国・新興国では未だ対応できるシステムは構築されていないため、滅菌操作を加えた検体でも検出することが可能な測定方法の確立が重要となる。
POCTの場合は、臨床現場において、短時間で、特別な施設や器具を用いないで測定できるようにすることが重要である。POCTで最も応用されている技術はイムノクロマトグラフィーテスト(ICT)である。一般的にICTはELISA等の免疫測定法に比し感度が劣るとされている。したがって、POCTにより課題を解決するためには高感度に検出できる測定系を構築することが重要となる。さらには、POCTの場合は検査センター等で使用されている安全キャビネット等を用いた検査従事者に対する感染防御策をとることが困難であるため、検体からの感染リスクを低減させるための滅菌処理が不可欠である。
以上のように、「電源や施設が整備された限られた場所に検体を集約してハイスループットで高感度・安価な検査方法を確立」や「電源を必要とする機器を用いない高感度・迅速・簡便・安価なPOCTを確立」には、滅菌検体で高感度に検出できる測定法の構築が必要である。そのためには、標的抗原の選択が重要である。結核菌特異的な抗原としてはAg85などの蛋白抗原が報告されている。しかしながら、蛋白抗原は生体内での分解・消化が早く、感度を得ることが困難である。
抗酸菌における主要な抗原は、細胞膜および細胞壁の主要構成成分である糖脂質である。糖脂質抗原は生体内での安定性も高いことから、有望な標的抗原の一つとして考えられている。その中でも、LAMは菌体成分の15%を占めているとされ、量的にも注目される抗原である。生体検体中の抗酸菌LAMを検出することを目的として、幾つかのPoAbおよびMoAbを作成した報告がある(非特許文献1〜4参照)。そのうちの幾つかは、喀痰または尿中のリポアラビノマンナン(以下、「LAM」ともいう)を検出するためのELISAに応用されている。しかしながら、抗酸菌におけるLAMは、基本的構造がほとんど同じでマンノースキャップの構造に微小な違いが認められるだけである。特に抗酸菌感染症の起因菌として結核菌の次に多いMycobacterium aviumとは、マンノースキャップ構造もほとんど同じとされている(非特許文献5参照)。従って、抗酸菌のなかでも結核菌のLAMを特異的に検出することが可能なモノクローナル抗体が望まれている。
Aharona Glatman-Freedman, et al., "Monoclonal antibodies to surface antigens of Mycobacterium tuberculosis and their use in a modified Enzyme-Linked Immunosorbent Spot Assay for detection of Mycobacteria.", Journal of Clinical Microbiology, Nov. 1996, p.2795-2802 Lenka M. Pereira Arias-Bouda, et al.,"Development of antigen detection assay for diagnosis of tuberculosis using sputum samples.", Journal of Clinical Microbiology, June 2000, p.2278-2283 Beston Hamasur, et al., "Rapid diagnosis of tuberculosis by detection of maycobacterial lipoarabinomannan in urine." Journal of Microbiological Methods, 45, 2001, p.41-52 C. Boehme, et al. , "Detection of mycobacterial lipoarabinomannan with an antigen-capture ELISA in unprocessed urine of Tanzanian patients with suspected tuberculosis.", Transactions of the Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene, 99, 2005, p.893-900 Lipoarabinomannans: from structure to biosynthesis. Jerome Nigou, Martine Gilleron, germain Puzo., Biochimine 85 (2003) 153-166 Winterら、Annu. Rev. Immunol., 12:433, 1994 K. Zuberbuhler, Protein Engineering, Design & Selection, 22, 169 (2009)
本発明は、抗酸菌のリポアラビノマンナン(以下、「LAM」ともいう)に特異的に結合するモノクローナル抗体(以下、単に「MoAb」とも称する)、特に一本鎖抗体及びその多価抗体を提供することを目的とする。
また本発明は、当該抗体を用いた抗酸菌検出方法または結核診断法、並びに当該方法に使用される抗酸菌検出剤(例えば結核診断剤)及び抗酸菌検出用キット(例えば結核診断用キット)を提供することを目的とする。
さらに本発明は、当該抗体を用いて、結核に対する抗結核薬の治療効果を判定する方法、並びに当該方法に使用される、抗結核薬の治療効果を判定するためのキットを提供することを目的とする。
本発明者らは、免疫動物、免疫源、さらにMoAbの作製技術および選択方法を工夫することで、抗酸菌LAMを、他の細菌のLAMやそれと類似の構造を有する膜抗原と区別して特異的に、また遺伝子増幅方法に匹敵する高い感度で検出することが可能な抗体および測定法の確立に成功した。また本発明者らは、結核菌LAMを、非結核性抗酸菌LAMと区別して特異的に検出することが可能な抗体および測定法の確立にも成功した。
すなわち、本発明は下記の実施形態を有するものである。
(I)抗酸菌のリポアラビノマンナン(LAM)に特異的に結合するモノクローナル抗体(I-1)下記(A)〜(C)のいずれかに記載する、抗酸菌のLAMに対して結合性を有するモノクローナル抗体:
(A)下記(a)〜(c)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(d)〜(f)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなるモノクローナル抗体:(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(B)下記(g)〜(i)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(j)〜(l)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなるモノクローナル抗体:(g)配列番号31で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号32で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号33で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(j)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号35で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号36で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3
(C)下記(m)〜(o)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(p)〜(r)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなるモノクローナル抗体:(m)配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号48で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号49で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(p)配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号52で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
(I-2)(A)に記載するモノクローナル抗体の重鎖可変領域が配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるものである(I-1)記載のモノクローナル抗体。
(I-3)(A)に記載するモノクローナル抗体の軽鎖可変領域が配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるものである(I-1)または(I-2)に記載するモノクローナル抗体。
(I-4)(A)に記載するモノクローナル抗体のリンカーが、配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するものである(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
(I-5)(A)に記載するモノクローナル抗体が配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるものである、(I-1)乃至(I-4)の何れかに記載のモノクローナル抗体。
(I-6)(A)に記載するモノクローナル抗体が、結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)のLAMに対して特異的に結合性を有するモノクローナル抗体である、(I-1)乃至(I-5)の何れかに記載のモノクローナル抗体。
(I-7)(B)に記載するモノクローナル抗体の重鎖可変領域が配列番号37で示されるアミノ酸配列からなるものである(I-1)記載のモノクローナル抗体。
(I-8)(B)に記載するモノクローナル抗体の軽鎖可変領域が配列番号38で示されるアミノ酸配列からなるものである(I-1)または(I-7)に記載するモノクローナル抗体。
(I-9)(B)に記載するモノクローナル抗体のリンカーが、配列番号40で示されるアミノ酸配列を有するものである(I-1)、(I-7)及び(I-8)のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
(I-10)(B)に記載するモノクローナル抗体が配列番号39で示されるアミノ酸配列からなるものである、(I-1)、及び(I-7)乃至(I-9)の何れかに記載のモノクローナル抗体。
(I-11)(C)に記載するモノクローナル抗体の重鎖可変領域が配列番号53で示されるアミノ酸配列からなるものである(I-1)記載のモノクローナル抗体。
(I-12)(C)に記載するモノクローナル抗体の軽鎖可変領域が配列番号54で示されるアミノ酸配列からなるものである(I-1)または(I-11)に記載するモノクローナル抗体。
(I-13)(C)に記載するモノクローナル抗体のリンカーが、配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するものである(I-1)、(I-11)及び(I-12)のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
(I-14)(C)に記載するモノクローナル抗体が配列番号30で示されるアミノ酸配列からなるものである、(I-1)、及び(I-11)乃至(I-13)の何れかに記載のモノクローナル抗体。
(I-15)(B)または(C)に記載するモノクローナル抗体が、非結核性抗酸菌に対して結合性を有するものである、(I-1)、及び(I-7)乃至(I-14)の何れかに記載のモノクローナル抗体。
(I-16)(A)〜(C)のいずれかに記載するモノクローナル抗体が一価または二価の抗体である、(I-1)乃至(I-15)の何れかに記載のモノクローナル抗体。
(II)抗酸菌のリポアラビノマンナン(LAM)に特異的に結合するモノクローナル抗体を製造するための非ヒト動物の免疫方法、及び当該モノクローナル抗体の製造方法
(II-1)非ヒト動物に、免疫原としてBCGを投与することにより、BCGに対する体液性免疫応答を誘導する工程を有する、抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体を製造するための、非ヒト動物の免疫方法。
(II-2)非ヒト動物がウサギまたはニワトリである(II-1)に記載する免疫方法。
(II-3)抗酸菌が結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)である、(II-1)または(II-2)に記載の免疫方法。
(II-4)非ヒト動物に、免疫原としてBCGを投与することにより、BCGに対する体液性免疫応答を誘導し、抗酸菌のLAMに結合する抗体を産生させる工程、及び
当該非ヒト動物から当該抗体を産生する細胞を採取する工程を有する、
抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
(II-5)非ヒト動物に、免疫原としてBCGを投与することにより、BCGに対する体液性免疫応答を誘導する工程、
当該非ヒト動物から抗酸菌のLAMに結合する抗体に対するmRNAを調製する工程、当該mRNAを鋳型としてcDNAを調製する工程、及び
当該cDNAを用いたファージディスプレイ法により抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体を採取する工程
を有する抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
(II-6)非ヒト動物がウサギまたはニワトリである(II-4)または(II-5)に記載する製造方法。
(II-7)抗酸菌が結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)である、(II-4)乃至(II-6)のいずれかに記載の製造方法。
(II-8)抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体が(I-1)乃至(I-12)のいずれかに記載するモノクローナル抗体である、(II-4)乃至(II-7)のいずれかに記載する製造方法。
(II-9)結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体が、(I-1)乃至(I-6)において(A)に記載するモノクローナル抗体である、(II-4)乃至(II-8)のいずれかに記載する製造方法。
(II-10)非ヒト動物に、免疫原として(I-1)乃至(I-6)の(A)に記載するモノクローナル抗体とLAMとの複合体を投与することにより、当該複合体に対する体液性免疫応答を誘導し、抗酸菌のLAMに結合する抗体を産生させる工程、及び
当該非ヒト動物から当該抗体を産生する細胞を採取する工程を有する、
抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
(II-11)非ヒト動物に、免疫原として(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載す(A)のモノクローナル抗体とLAMとの複合体を投与することにより、当該複合体に対する体液性免疫応答を誘導する工程、
当該非ヒト動物から抗酸菌のLAMに結合する抗体に対するmRNAを調製する工程、当該mRNAを鋳型としてcDNAを調製する工程、及び
当該cDNAを用いたファージディスプレイ法により抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体を採取する工程
を有する、抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
(II-12)抗酸菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体が、(I-1)または(I-7)乃至(I-12)のいずれかに記載する(B)のモノクローナル抗体である、(II-10)または(II-11)に記載する製造方法。
(III)抗酸菌、好ましくは結核菌の検出方法
(III-1)下記の工程を有する、抗酸菌、好ましくは結核菌の検出方法:
(1)(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体を、被験者の生体試料と接触させる工程、及び
(2)上記モノクローナル抗体と抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌、好ましくは結核菌を測定する工程。
(III-2)上記結核菌の検出方法が、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体を用いる方法である、(II-1)に記載する検出方法。
なお、当該検出方法のうち、結核菌の検出方法は、被験者について結核罹患の有無を診断する方法(結核診断方法)と言い換えることができる。
(IV)結核診断剤または診断用キット
(IV-1)(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体を含む、結核診断剤。
(IV-2)(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体を結核菌検出試薬として含む、結核診断用キット。
(V)抗酸菌リポアラビノマンナン(LAM)の測定方法
(V-1)下記の工程を有する、被験試料中の抗酸菌LAMを測定する方法:
(1)(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体を、抗酸菌を含み得る被験試料と接触させる工程、及び
(2)上記モノクローナル抗体と抗酸菌のLAMとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌LAMを測定する工程。
(V-2)上記測定方法が、(2)工程として抗酸菌LAMを検出する工程を有する抗酸菌LAMの定性方法であるか、または(2)工程として抗酸菌LAMを定量する工程を有する抗酸菌LAMの定量方法である、(V-1)記載の方法。
(V-3)上記抗酸菌が結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)である、(V-1)または(V-2)に記載する方法。
(V-4)モノクローナル抗体として、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、(V-3)に記載する方法。
(VI)抗酸菌リポアラビノマンナン(LAM)の検出剤または検出用キット
(VI-1)(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体を含む、抗酸菌のリポアラビノマンナン検出剤。
(VI-2)モノクローナル抗体が、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体である、抗酸菌のリポアラビノマンナン検出剤。
(VI-3)上記抗酸菌が結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)である、(VI-2)に記載する方法。
(VI-4)(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体を抗酸菌のLAM検出用試薬として含む、抗酸菌のLAM検出用キット。
(VI-5)モノクローナル抗体が、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体である、(VI-4)に記載する抗酸菌のLAM検出用キット。
(VI-6)上記抗酸菌が結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)である、(VI-5)に記載する抗酸菌のLAM検出用キット。
(VII)滅菌検体での測定方法
(VII-1)下記の工程を有する被験試料について抗酸菌感染の有無を測定する方法 (1)検体試料を高熱煮沸滅菌、好ましくは高圧蒸気滅菌する工程、
(2) (I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体、好ましくは(I-1)乃至(I-6)または(I-7)乃至(I-10)のいずれかに記載する(A)または(B)のモノクローナル抗体を、滅菌処理した被験試料とそれぞれ接触させる工程、
(3)上記本発明のモノクローナル抗体と抗酸菌LAMとの結合反応を指標として、被験試料中の抗酸菌LAMを測定する工程、及び
(4)被験試料に抗酸菌LAMが検出された場合に、被験試料が抗酸菌に感染していると判断する工程。
(VII-2)上記モノクローナル抗体が(I-1)乃至(I-6)または(I-7)乃至(I-10)のいずれかに記載する(A)または(B)のモノクローナル抗体であり、上記抗酸菌が結核菌である、(VII-1)に記載する測定方法。
(VIII)抗結核薬の結核治療効果を判定する方法
(VIII-1)下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
(1)(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体を、抗結核薬投与前後の被験試料とそれぞれ接触させる工程、
(2)上記モノクローナル抗体と結核菌のLAMとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の被験試料中の結核菌LAMを測定する工程、及び
(3)抗結核薬投与前の被験試料に結核菌LAMが検出され、且つ抗結核薬投与後の被験試料に結核菌LAMが検出されない場合に抗結核薬の結核治療効果ありと、決定する工程。
(VIII-2)下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
(1)(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体を、抗結核薬投与前後の被験試料とそれぞれ接触させる工程、
(2)上記モノクローナル抗体と結核菌のLAMとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の被験試料中の結核菌LAMを定量する工程、及び
(3)抗結核薬投与後の被験試料中の結核菌LAM量(投与後測定値)と、抗結核薬投与前の被験試料中の結核菌LAM量(投与前測定値)を対比して、投与後測定値が投与前測定値よりも低い場合に抗結核薬の結核治療効果ありと、それ以外の場合に抗結核薬の結核治療効果なしと、決定する工程。
(IX)抗結核薬の結核治療効果判定用キット
(IX)(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体を含む、抗結核薬の結核治療効果判定用キット。
(X)抗酸菌(結核菌)検出具
(X-1)毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた、抗酸菌、好ましくは結核菌検出具であって、当該吸液片が
(1)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2)抗酸菌のLAMと特異的に反応する、標識されてなる(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体を担持した標識抗体部、
(3)下記に示す、テスト結果表示部を備えた判定部、
(a) 抗酸菌のLAMと特異的に反応する、非標識の(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体を固定したテスト結果表示部、
(4)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部を備えることを特徴とする、抗酸菌、好ましくは結核菌検出具。
(X-2)上記(3)判定部が、(a) テスト結果表示部と間隔をおいて、さらに下記に示すコントロール表示部を備えていることを特徴とする、(X-1)記載の抗酸菌、好ましくは結核菌検出具:
(b) 標識されてなる(I-1)乃至(I-16)のいずれかに記載するモノクローナル抗体と反応する非標識−抗体を固定したコントロール表示部。
(X-3)上記モノクローナル抗体が、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する(A)のモノクローナル抗体であって、抗酸菌が結核菌、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)である、(X-1)または(X-2)に記載する抗酸菌検出具。
本発明によれば、被験者の生体試料(喀痰、唾液、血液、肺洗浄液、胃液、尿、糞便、皮膚または膵液)中に存在する抗酸菌を、他の菌と特異的に検出することができる。本発明の抗酸菌の検出方法は、遺伝子増幅法による検出方法と同等の感度と特異性を有する。また本発明の抗酸菌の検出方法によれば、生体内の抗酸菌量を決定することもできるため、抗酸菌、特に結核の治療効果をモニタリングすることも可能である。さらに本発明の抗酸菌の検出方法によれば、測定対象の検体を滅菌処理した場合でも、滅菌処理から少なくとも1週間以内であれば、安定して精度高く抗酸菌を検出することができる。このため、感染防御のための特別な検体輸送システムが整備されていない地域でも、検体を滅菌処理することで郵送等の一般的な検体の輸送が可能である。
また、本発明の好ましい態様によれば、結核患者の生体試料中に存在する結核菌を、非結核性抗酸菌と区別して、特異的に検出することができる。このため、本発明により、結核菌感染の有無を精度高く診断することができる。また、結核患者に対する抗結核薬の治療効果を、精度高く判定することができる。
(A)および(B)とも、本発明の結核菌検出具(結核菌LAM検出具)の一態様を示す図(横から見た図)である。図(A)は、判定部(3)にテスト結果表示部(a)だけを有する態様、図(B)は、判定部(3)にテスト結果表示部(a)とコントロール表示部(b)の両方を含む態様である。符号10:支持体、符号21:試料採取部(1)を構成するシート、符号22:標識抗体部(2)を構成するシート、符号23:判定部(3) を構成するシート、符号24:液吸収部(4)を構成するシート、(a):テスト結果表示部、(b):コントロール表示部、(1):試料採取部、(2):標識抗体部、(3):判定部、(4):液吸収部、P:被験試料の流れる方法を示す矢印を意味する(図2も同じ)。 本発明の結核菌検出具(結核菌LAM検出具)の一態様を示す図(斜視図)である。 BGCワクチンおよびH37Ra死菌体をそれぞれ皮下免疫したウサギの血中抗体価を、M. tuberculosis LAM(―■―)およびM. avium LAM(−●−)をそれぞれ固相化した抗原プレートを用いたELISA法にて測定した結果を示す(参考例1(2))。(A)はBGCワクチンを免疫したウサギの結果を、(B)はH37Ra死菌体を免疫したウサギの結果を示す。 LAM反応性scFvのアミノ酸配列を示す。具体的には、上段は、HR37Ra死菌体を免疫したウサギの脾臓細胞から作製したscFv(Myco-scFv)のアミノ酸配列(配列番号30)、下段はBCGワクチンを免疫したウサギの脾臓細胞から作製したscFv(TB-scFv)のアミノ酸配列(配列番号12)を、それぞれ重鎖可変領域のCDR1〜CDR3領域、リンカー、及び軽鎖可変領域のCDR1〜CDR3領域の位置とともに、対比したものである。なお、N末端にセリン残基を4つ結合したリンカー配列のN末端側のアミノ酸領域がVH領域、C末端側の領域がVL領域を示す。 TB-scFvのLAM反応性評価の結果を示す。BCGワクチンを免疫したウサギより作成したTB-scFvのLAMに対する反応性を、M. tuberculosis LAMおよびM. avium LAMを個相化したプレートを用いてELISAにて評価した。■はM. tuberculosis LAMに対する反応性、●はM. aviumに対する反応性を示す。 抗酸菌LAM検出ELISAおよび結核菌LAM検出ELISAの評価の結果を示す。抗酸菌LAM検出ELISAおよび結核菌LAM検出ELISAのLAMに対する反応性を、精製したM. tuberculosis LAMおよびM. avium LAMをを用いて評価した。●は抗酸菌LAM検出ELISA のM. tuberculosis LAMに対する反応性、■は抗酸菌LAM検出ELISA のM. aviumに対する反応性、○は結核菌LAM検出ELISAのM. tuberculosis LAMに対する反応性、□は結核菌LAM検出ELISAのM. avium LAMに対する反応性を示す。 抗体組み合わせの評価結果を示す。抗体組み合わせの評価を抗酸菌LAM検出ELISAおよび結核菌LAM検出ELISAにて抗酸菌臨床分離株を用いて行った。各株に対する反応性は色の濃淡により示した。mycoは抗酸菌LAM検出ELISA、TBは結核菌LAM検出ELISAの結果を示す。 抗酸菌LAM検出イムノクロマトテストおよび結核菌LAM検出イムノクロマトテストの評価結果を示す。抗酸菌LAM検出イムノクロマトテストおよび結核菌LAM検出イムノクロマトのLAMに対する反応性を、精製したM. tuberculosis LAM(A及びB)、およびM. avium LAM(C及びD)を用いて評価した。図中、「myco」は抗酸菌LAM検出イムノクロマトテスト、「TB」は結核菌LAM検出イムノクロマトテストを示す。 LAMに対するニワトリ抗血清の抗体価を示す(実施例5)。−●−は精製した結核菌(M. tuberculosis)青山B株のLAMに対する反応性、―■―は精製したM. aviumのLAMに対する反応性を示す。 ニワトリscFvライブラリーより単離した一本鎖抗体G3-scFvのアミノ酸配列を、重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3領域、GSリンカー領域、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3領域の位置とともに示す。 二価抗体を用いたLAM検出用ELISAの反応性を示す(実施例7)。―●―は結核菌LAM検出用ELISAのBCGに対する反応性、―■―は抗酸菌LAM検出用ELISAのBCGに対する反応性を示す。 二価抗体を用いた抗酸菌LAM検出用ELISAの検出感度を示す(実施例8)。図中、表は、遺伝子増幅検査(NAAT)と抗酸菌LAM検出用ELISAの検出感度を対比したものである。 抗酸菌LAM検出用ELISAの口腔内細菌との交差反応性試験の結果を示す(実施例9)。図中、「Na」はN. asteroids、「Nf」はN. faroinica、「Sg」はStreptomyces、「Ca」はC. albicans、「Ai」はactinomycete、「Tp」はT. paurometabolumの菌体を意味する。これらの培養菌体及びBCG培養菌体からそれぞれ抽出したLAMを用いて、抗酸菌LAM検出用ELISAを行った結果を示す。 二価抗体を用いたLAM検出ELISAの抗酸菌臨床分離に対する反応性を示す(実施例10)。図中、Aは結核菌臨床分離株38株の測定結果、Bは非結核性抗酸菌29株(M. avium 23株、M. intracellulare 6株)の測定結果を示す。A及びBともに、図の黒棒は抗酸菌LAM検出用ELISAの測定結果、白棒は結核菌LAM検出用ELISAの測定結果を示す。Bの非結核性抗酸菌29株において、1〜23番がM. avium 23株、24〜29番がM. intracellulare 6株の結果である。 抗酸菌LAM検出用ELISAと結核菌LAM検出用ELISAにおける反応性の比率(抗酸菌LAM検出用ELISAの値/結核菌LAM検出用ELISAの値)を示す。 二価抗体を用いた抗酸菌LAM検出用ELISA(右図)及び結核菌LAM検出用ELISA(左図)の臨床喀痰検体に対する反応性を示す(実施例11)。I はSmear test(直接塗沫検査)陰性かつ遺伝子増幅検査陰性の検体群、IIはSmear testがscantyかつ遺伝子増幅検査陰性の検体、IIIはSmear test陰性かつ遺伝子増幅検査陽性の検体群、 IVはSmear testがscantyかつ遺伝子増幅検査陽性の検体群、 Vは Smear testが1+の検体群、VIはSmear testが2+の検体群、VIIはSmear testが3+の検体群の結果を示す。なお、Smear testで1+以上の検体は全て遺伝子増幅検査陽性である。また、点線は暫定的なカットオフ値を示す。 LAM検出用ELISAで検出されるLAM濃度と菌体量の相関関係を示す(実施例11)。I はSmear test陰性かつ遺伝子増幅検査陰性の検体群、IIはSmear test陰性かつ遺伝子増幅検査陽性の検体群、 IIIはSmear testがscantyかつ遺伝子増幅検査陽性の検体群、IVは Smear testが1+の検体群、VはSmear testが2+の検体群、VIはSmear testが3+の検体群の結果を示す。なお、Smear testで1+以上の検体は全て遺伝子増幅検査陽性である。また、線は各検体群におけるLAM濃度の平均値を示す。 滅菌処理に対する抗酸菌のLAMの安定性を示す。白棒は滅菌処理を行っていない菌体、黒棒は100℃で30分間煮沸処理した菌体、灰色棒は高圧蒸気滅菌(オートクレーブ 121℃にて15分)処理した菌体の測定結果を示す(実施例12)。 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)処理後のLAM保存安定性を示す。白棒は高圧蒸気滅菌処理直後の菌体を測定した結果、黒棒は高圧蒸気滅菌処理後7日間25℃に放置した菌体の測定結果を示す(実施例12)。
(I)抗酸菌LAMに特異的に結合するモノクローナル抗体
結核菌は、マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属(Mycobacterium)に属し、他のマイコバクテリウム属細菌とともに、抗酸菌と呼ばれる細菌群の一種である。しかし、37℃で増殖可能であるが28℃で増殖しない点、及び耐熱性のカタラーゼを有する点等で、他の抗酸菌(非結核性抗酸菌)と区別される。当該結核菌としては、結核菌(Mycobacterium tuberculosis、ヒト型結核菌)、ウシ型結核菌(M. bovis、ウシ型菌、ウシ菌)、マイコバクテリウム・アフリカンス (M. africans)、ネズミ型結核菌(M. microti)の4種類が知られている。このうち、ヒト型結核菌(M.tuberculosis)が結核の原因菌としてヒトへの病原性を示すほか、M. bovisとM. africansがまれにヒトに感染する。M. microtiはヒトに対する病原性を持たない。またM. bovisを長期間継代培養して弱毒化したものがBCGであり、結核予防のためのワクチン(弱毒生菌ワクチン)として利用されている。
本発明が対象とするモノクローナル抗体(以下、「MoAb」ともいう)は、抗酸菌を、生体内に存在する他の菌と区別して、特異的に認識することを特徴とする抗体である。より具体的には、抗酸菌のリポアラビノマンナン(LAM)と他の細菌のLAM類似抗原とを区別して、抗酸菌のLAMに特異的に結合することを特徴とする抗体である。ここでLAMは、結核菌を始めとするマイコバクテリウム属の細菌(抗酸菌)の細胞壁や細胞膜を構成する主要なリポグリカンの1つである。LAMは、通常、マンノシルホスファチジルイノシトールアンカー(MPI)、D−マンナンコア及びD−アラビナンドメインを含む糖バックボーンとキャッピングモチーフを含むが、菌の種類に応じて、分子内に含まれる糖(例えばマンノース)残基の数、糖鎖の分枝構造、アシル基の数、及びアシル基を構成する脂肪酸の種類が相違する。
本発明のMoAbには、具体的には、下記(a)〜(c)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(d)〜(f)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなる構造を有する抗体が含まれる。当該MoAbを便宜上「MoAb1」とも称する。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
また本発明のMoAbには、具体的には、下記(g)〜(i)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(j)〜(l)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなる構造を有する抗体も含まれる。当該MoAbを便宜上「MoAb2」とも称する。(g)配列番号31で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号32で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号33で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(j)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号35で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号36で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
さらに本発明のMoAbには、具体的には、下記(m)〜(o)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(p)〜(r)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなる構造を有する抗体も含まれる。当該MoAbを便宜上「MoAb3」とも称する。(m)配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号48で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号49で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(p)配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号52で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
ここで“CDR”とは、“Complementarity Determining Reagion”の略であり、相補性決定領域とも称される。CDRとはイムノグロブリンの可変領域に存在する領域であり、抗体が有する抗原への特異的な結合に深く関与する領域である。なかでも“重鎖CDR”とはイムノグロブリンの重鎖の可変領域に存在するCDRであり、“軽鎖CDR”とはイムノグロブリンの軽鎖の可変領域に存在するCDRを意味する。
重鎖可変領域は上記の重鎖CDR1〜CDR3を含む領域であり、また軽鎖可変領域は上記の軽鎖CDR1〜CDR3を含む領域である。これらCDR1〜CDR3の配置順序は特に制限されないが、重鎖可変領域も、また軽鎖可変領域もいずれも、好ましくはN側からC側の方向に、CDR1、CDR2及びCDR3の順で、連続または他のアミノ酸配列を介して、配置される。
本発明のMoAbの重鎖可変領域または/および軽鎖可変領域は、上記可変領域における上記CDR1〜CDR3以外の領域に、他のアミノ酸配列として、フレームワーク領域(以下、単に「FR」という)と称されるアミノ酸配列を有することができる。当該FRのアミノ酸配列は、イムノグロブリンの重鎖可変領域または軽鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)に由来するアミノ酸配列そのものであってもよいし、またその変異体であってもよいし、さらにFRに由来するアミノ酸配列の一部に制限酵素認識部位を導入するなど、一部改変したものであってもよい。
イムノグロブリンの重鎖可変領域において、例えば、重鎖可変領域のN末端と上記CDR1との間の領域は「FR1」、CDR1とCDR2との間の領域は「FR2」、CDR2とCDR3との間の領域は「FR3」、CDR3と重鎖可変領域のC末端との間の領域は「FR4」とそれぞれ定義される。また同様に、イムノグロブリンの軽鎖可変領域において、例えば、軽鎖可変領域のN末端と上記CDR1との間の領域は「FR1」、CDR1とCDR2との間の領域は「FR2」、CDR2とCDR3との間の領域は「FR3」、「CDR3」と可変領域のC末端との間の領域は「FR4」とそれぞれ定義される。
これらのFRは、抗原認識配列として重要な上記CDR1、CDR2及びCDR3をそれぞれ繋ぐリンカーとしての機能を有するとともに、可変領域の立体構造形成に寄与する領域でもある。
本発明のMoAb1の重鎖可変領域は、好ましくは配列番号7で示される119アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有し、また軽鎖可変領域は、好ましくは配列番号8で示される112アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する。重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す配列番号7中、N末端から30番目までの領域が重鎖可変領域の「FR1」、31番目から35番目のアミノ酸領域が重鎖可変領域の「CDR1」(配列番号1)、36番目から49番目のアミノ酸領域が「FR2」、50番目から65番目のアミノ酸領域が「CDR2」(配列番号2)、66番目から96番目のアミノ酸領域が「FR3」、97番目から106番目のアミノ酸領域が「CDR3」(配列番号3)及び107番目から119番目のアミノ酸領域が「FR4」に相当する。
また本発明のMoAb1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す配列番号8中、N末端から23番目までの領域が軽鎖可変領域の「FR1」、24番目から36番目のアミノ酸領域が軽鎖可変領域の「CDR1」(配列番号4)、37番目から51番目のアミノ酸領域が「FR2」、52番目から58番目のアミノ酸領域が「CDR2」(配列番号5)、59番目から89番目のアミノ酸領域が「FR3」、90番目から102番目のアミノ酸領域が「CDR3」(配列番号6)、及び103番目から112番目のアミノ酸領域が「FR4」に相当する。
本発明のMoAb2の重鎖可変領域は、好ましくは配列番号37で示される130アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有し、また軽鎖可変領域は、好ましくは配列番号38で示される116アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する。重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す配列番号37中、N末端から35番目までの領域が重鎖可変領域の「FR1」、36番目から40番目のアミノ酸領域が重鎖可変領域の「CDR1」(配列番号31)、41番目から54番目のアミノ酸領域が「FR2」、55番目から74番目のアミノ酸領域が「CDR2」(配列番号32)、75番目から106番目のアミノ酸領域が「FR3」、107番目から119番目のアミノ酸領域が「CDR3」(配列番号33)及び120番目から130番目のアミノ酸領域が「FR4」に相当する。
また本発明のMoAb2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す配列番号38中、N末端から、20番目までの領域が軽鎖可変領域の「FR1」、21番目から28番目のアミノ酸領域が軽鎖可変領域の「CDR1」(配列番号34)、29番目から44番目のアミノ酸領域が「FR2」、45番目から51目のアミノ酸領域が「CDR2」(配列番号35)、52番目から83番目のアミノ酸領域が「FR3」、84番目から95番目のアミノ酸領域が「CDR3」(配列番号36)、及び96番目から116番目のアミノ酸領域が「FR4」に相当する。
本発明のMoAb3の重鎖可変領域は、好ましくは配列番号53で示される121アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有し、また軽鎖可変領域は、好ましくは配列番号54で示される110アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する。重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す配列番号53中、N末端から30番目までの領域が重鎖可変領域の「FR1」、31番目から35番目のアミノ酸領域が重鎖可変領域の「CDR1」(配列番号47)、36番目から49番目のアミノ酸領域が「FR2」、50番目から65番目のアミノ酸領域が「CDR2」(配列番号48)、66番目から96番目のアミノ酸領域が「FR3」、97番目から108番目のアミノ酸領域が「CDR3」(配列番号49)及び109番目から121番目のアミノ酸領域が「FR4」に相当する。
また本発明のMoAb3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す配列番号54中、N末端から、23番目までの領域が軽鎖可変領域の「FR1」、24番目から34番目のアミノ酸領域が軽鎖可変領域の「CDR1」(配列番号50)、35番目から49番目のアミノ酸領域が「FR2」、50番目から56番目のアミノ酸領域が「CDR2」(配列番号51)、57番目から87番目のアミノ酸領域が「FR3」、88番目から100番目のアミノ酸領域が「CDR3」(配列番号52)、及び101番目から110番目のアミノ酸領域が「FR4」に相当する。
これらの配列番号7、37及び53に示される重鎖可変領域のFR1〜FR4に相当するアミノ酸配列、並びに配列番号8、38及び54に示される軽鎖可変領域のFR1〜FR4に相当するアミノ酸配列は、いずれも、本発明のMoAb1及びMoAb 2の効果が損なわない限り、変異導入が施されていてもよい。ここで「本発明MoAb1、MoAb 2及びMoAb3の効果」とは、特に言及しない限り、抗酸菌LAMへの結合性、好ましくは抗酸菌LAMへの特異的な結合性を意味する。中でも「本発明MoAb1の効果」とは、結核菌LAMへの結合性、好ましくは結核菌LAMへの特異的な結合性を意味する。かかる変異導入数は、共に特に制限されないが、変異前のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、同一性を有するように変異導入数とすることができる。なお、ここでいう変異導入としては、アミノ酸の置換、欠失及び挿入を挙げることができる。また、重鎖可変領域のFR1及び/または軽重鎖可変領域のFR4に制限酵素認識部位が導入されていてもよい。
また上記MoAb1及びMoAb3で示す重鎖可変領域FR1〜FR4及び軽鎖可変領域FR1〜FR4は、いずれもウサギに由来するアミノ酸配列であり、上記MoAb2で示す重鎖可変領域FR1〜FR4及び軽鎖可変領域FR1〜FR4は、いずれもニワトリに由来するアミノ酸配列であるが、本発明MoAbの効果を損なわない限り、いずれの動物種に由来するフレームワーク領域であってもよい。かかる動物種としては、特に制限されず、例えば、ヒト、ウサギ、ニワトリ、ウマ、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、マウス、ハムスター、及びラット等を挙げることができる。好ましくは、ウサギ、ニワトリまたはヒトに由来するアミノ酸配列であり、より好ましくはヒトである。なお、ヒト由来のFR1〜FR4のアミノ酸配列は、公知であり(Kabat, et al. US Department of Health AND human Services, NIH (1991),USA)、例えばNCBIのウェブサイトに記載されている。
本発明のMoAbは、上記構成を有する重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなる構造を有する。ここで「リンカー」は、本発明MoAbの効果を損なわない限り、特に制限されず、通常アミノ酸数が8〜30程度のアミノ酸配列、好ましくは8〜20程度のアミノ酸配列、より好ましくは8〜15程度のアミノ酸配列からなるリンカー配列を有するペプチドを挙げることができる。好ましいリンカー配列としては、制限はされないが、例えばGSリンカー配列〔(Gly-Gly-Gly-Ser:配列番号9)nまたは(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser:配列番号10)n [nは繰り返し回数]〕などが挙げられる。好ましくは、かかるGSリンカー配列を1〜3回(nは1〜3の整数)繰り返した配列を有するペプチドをリンカーとして用いる。後述する実施例では、上記GSリンカー配列を3回繰り返した配列(GGGGSGGGGSGGGGS:配列番号11)を有するペプチド(実施例1)、及び配列(GGGGSGGDGSGGGGS:配列番号40)を有するペプチド(実施例6)をリンカーとして用いている。
本発明のMoAb1の好ましい態様として、配列番号12に示すアミノ酸配列からなる一本鎖抗体を挙げることができる。またMoAb2の好ましい態様として、配列番号39に示すアミノ酸配列からなる一本鎖抗体を挙げることができる。さらにMoAb3の好ましい態様として、配列番号30に示すアミノ酸配列からなる一本鎖抗体を挙げることができる。
かかる本発明のモノクローナル抗体には、結核菌を、非結核性抗酸菌と区別して、特異的に認識することを特徴とする抗体が含まれる。より具体的には、結核菌のリポアラビノマンナン(LAM)と非結核性抗酸菌のLAMとを区別して、結核菌のLAMに特異的に結合することを特徴とする抗体である。当該モノクローナル抗体としては前述するMoAb1を挙げることができる。ここで本発明のMoAbが、非結核菌抗酸菌と区別して特異的に認識する結核菌としては、好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)及びウシ型結核菌(M. bovis)であり、より好ましくはヒト型結核菌(M.tuberculosis)である。
結核菌LAMに対する反応を競合法で比較した場合に、結核菌LAMに比し10倍以上の非結核性抗酸菌LAMが必要な場合は、結核菌LAMに対して特異的結合性を有するということができる。さらに、本発明のMoAbは、固定化抗体と検出抗体に用いてLAMを挟み込んで検出した場合に、結核菌LAMに比し非結核性抗酸菌LAMの反応性が1/100以下に低下した場合は、結核菌LAMに対して、より好適な結合特異性を有すると判断することができる。
抗体の親和性は、従来の技術を用いて、例えば125I標識IgG又はそのフラグメントの飽和結合等温線を測定するか、又はAnalyzing Data with GraphPad Prizm (1999), GraphPad Software Onc., San Diego, CAのMotilskyにより記載されるようにして非線形回帰分析を用いる非標識IgGによる125IgGの相同置換により、容易に測定することができる。その他、当業界で知られている方法で、測定することができるが、かかる方法として、Scatchardら、Ann.NY Acd. Sci., 51,660(1949)に記載されている方法を例示することができる。
本発明のMoAbは、制限はされないものの、抗原として結核菌を用いたファージディスプレイ法(G.Smith, Science, 228, 1315 (1985))に従って製造することができる。ここで結核菌としては、前述する結核菌(Mycobacterium tuberculosis、ヒト型結核菌)、ウシ型結核菌(M. bovis、ウシ型菌、ウシ菌)、マイコバクテリウム・アフリカンス、及びネズミ型結核菌を挙げることができる。好ましくは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis、ヒト型結核菌)、ウシ型結核菌(M. bovis、ウシ型菌、ウシ菌)、マイコバクテリウム・アフリカンスであり、より好ましくはウシ型結核菌である。前述するように、ウシ型結核菌(M. bovis)を長期間継代培養して弱毒化したものがBCGである。
当該BCGを抗原としてファージディスプレイを用いて、本発明のMoAbを製造する方法を実施例に記載する。前述するように、本発明のMoAbは、口腔内細菌などの他の細菌と区別して、抗酸菌を特異的に認識すること、より具体的には、他の細菌のLAM類似抗原と区別して、抗酸菌LAMに対して特異的に結合すること;好ましくは、非結核性抗酸菌と区別して、結核菌を特異的に認識すること、より具体的には、非結核性抗酸菌LAMと区別して、結核菌LAMに対して特異的に結合することを特徴とするが、かかるMoAbは、BCGを免疫原とすることにより作製することができる。
なお、BCGとは、前述するように、ウシ型結核菌(M. bovis)から作製される弱毒株であって、抗原性は有するものの、ヒトに対する毒性は消失または減弱されてなる細菌を意味するが、本発明ではそれのみならず、当該細菌から作製されるBCGワクチンをも包含して「BCG」と称する。
また本発明のモノクローナル抗体には、上記で説明する一本鎖抗体の多価抗体も含まれる。多価抗体には、二価抗体、三価抗体、及び四価抗体が含まれるが、好ましくは二価抗体である。これらの多価抗体は、定法に従って製造することができ(非特許文献7:K. Zuberbuhler, Protein Engineering, Design & Selection, 22, 169 (2009))、具体的には、例えば二価抗体の場合、一本鎖抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を、それぞれの定常領域の遺伝子と接合し、それを哺乳動物細胞で発現することが可能なベクターにクローニング後、哺乳動物細胞で形質転換して培養することで、製造することができる。
(II)抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体を製造するための非ヒト動物の免疫方法、及び当該モノクローナル抗体の製造方法
また本発明は、抗酸菌のLAMに特異的に結合するMoAbを製造するための非ヒト動物の免疫方法、及び当該免疫方法を利用した上記MoAbの製造方法に関する。より好ましくは、結核菌のLAMに特異的に結合するMoAbを製造するための非ヒト動物の免疫方法、及び当該免疫方法を利用した上記MoAbの製造方法に関する。
(II-1)免疫方法
抗酸菌LAMの基本的構造はほとんど同じで、マンノースキャップの構造に微小な違いが認められるだけである。かかる抗酸菌LAMに対する抗体を作製する場合、免疫原としてH37Rvなどのヒト型結核菌標準株を用いて非ヒト動物を免疫するのが一般的である。こうすることで、抗酸菌のLAMに広く反応する抗体を作製することができる。
これに対して、ウシ型結核菌(M. bovis)から作製される弱毒株またはそれから作製されるワクチン、すなわちBCGを免疫原として用いて非ヒト動物を免疫すると、非結核性抗酸菌のLAMと区別して結核菌のLAM、好ましくはヒト型結核菌のLAMに特異的に結合する、特異性の高い抗体を得ることができる。本発明は、好ましい態様として、ヒト結核菌のLAMに特異的に結合するMoAbを製造するための免疫法として、BCGを免疫原(免疫抗原)として用いて非ヒト動物を免疫する方法を提供する。
ここで非ヒト動物としては、ヒト以外の動物であればよく、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、サル、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、雌ウシ等の哺乳動物や、ニワトリ、アヒル、七面鳥及びうずら等の鳥類を挙げることができる。好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、及びウサギ等の哺乳動物(小動物)であり、より好ましくはウサギである。
結核菌のLAMに特異的に結合するMoAbを製造するための本発明の免疫方法は、BCGを免疫原(免疫抗原)として用いて非ヒト動物を免疫することを特徴とするものであり、免疫手法は特に制限されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
例えば、BCGを、必要に応じてアジュバントとともに、皮下、静脈内、または腹腔内に注射等により投与する方法が挙げられる。好ましくは皮下投与である。ここでアジュバントとしては、制限されないが、例えば、フロイドの完全アジュバント、及びフロイドの不完全アジュバントを例示することができる。なお、BCGの投与は、初回投与(初回免疫)後、2週間程度の間隔をあけて2〜5回程度行うことが好ましい。
斯くして免疫された非ヒト動物の脾臓細胞は、結核菌のLAM、好ましくはヒト型結核菌のLAMに特異性の高い抗体を製造するための細胞として有用である。当該脾臓は、BCG初回免疫から十数日〜数ヶ月後に、免疫非ヒト動物から取り出され、結核菌のLAM、好ましくはヒト型結核菌のLAMに特異性の高い抗体の製造及び取得に使用される。
具体的には、例えば、免疫非ヒト動物から摘出した脾臓から調製した細胞(抗体産生細胞)を、ポリエチレングリコール法や電気刺激等の定法に従ってミエローマ細胞と融合し、HAT選択培地を用いて培養することでハイブリドーマを取得し、次いでハイブリドーマの中から、限界希釈法などの定法を用いることで結核菌のLAMに結合する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることにより、結核菌のLAMに特異性の高いMoAbを産生するハイブリドーマを取得することができる。このようにしてクローニングされたハイブリドーマを定法に従って培養することで、所望の結核菌のLAM、好ましくはヒト型結核菌のLAMに特異性の高いMoAbを調製取得することができる。
結核菌及び非結核性抗酸菌の別をとわず、広く抗酸菌のLAMに選択的に結合するMoAbを調製取得する方法としては、上記で得られる結核菌のLAM、好ましくはヒト型結核菌のLAMに特異性の高い抗体とLAMの複合体を用いて、抗体を選択する方法を挙げることができる。この場合、免疫手法は特に制限されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。なお、ここで「複合体」とは、結核菌のLAMに特異性の高い抗体とLAMとが抗原抗体複合体を形成したことをいい、ELISAによる解析で当該複合体の生成を確認することができる。
(II-2)抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMに特異的に結合するMoAbの製造方法 抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMに特異的に結合するMoAbは、上記免疫方法で免疫された非ヒト動物(免疫非ヒト動物)を利用することにより製造することができる。
かかる方法として、一つの方法としては、前述するように、免疫非ヒト動物から脾臓を摘出し、摘出した脾臓から調製した細胞(抗体産生細胞)を、ポリエチレングリコール法や電気刺激等の定法に従ってミエローマ細胞と融合し、得られたハイブリドーマの中から抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMに特異的に結合するMoAbを産生するハイブリドーマを取得し、次いで当該ハイブリドーマを培養する方法を挙げることができる。斯くして、抗酸菌、好ましくは結核菌のLAM、より好ましくはヒト型結核菌のLAMに特異性の高いMoAbを調製取得することができる。ここで、ハイブリドーマの培養は、マウスやウサギなどの非ヒト動物の腹腔内で行っても、またディッシュなどを用いてインビトロで行ってもよい。前者の方法、つまり非ヒト動物の腹腔内でハイブリドーマを培養する場合は、培養後に当該非ヒト動物の腹水を採取し、その腹水から所望のMoAbを単離・精製する。後者の方法、つまりインビトロでハイブリドーマを培養する場合は、培養後に得られた培養液から所望のMoAbを単離・精製する。モノクローナル抗体の精製方法としては、抗体のサブクラスがIgGである場合は、例えばプロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いる方法を挙げることができる。
また抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMに特異的に結合するMoAbは、近年開発されたファージディスプレイ法(非特許文献6:Winterら、Annu. Rev. Immunol., 12:433, 1994)を用いることで製造することもできる。具体的には、上記の方法で免疫された免疫非ヒト動物から脾臓を摘出し、摘出した脾臓からTotal RNAまたはmRNAを調製し、当該RNAを鋳型としてcDNAを調製し、抗体可変領域をコードする一本鎖抗体(scFV:single chain fragment of variable region)の遺伝子を作製する。ここで抗体可変領域は、重鎖可変領域(VH領域)と軽鎖可変領域(LH領域)の2領域を含むものであればよく、その限りにおいて、VH領域とLH領域との間に任意のペプチドリンカーを含むものであってもよい。当該ペプチドリンカーとしては、例えば、(I)に記載するように、8〜30程度のアミノ酸配列からなるリンカー配列を有するペプチドを挙げることができ、当該リンカー配列としてはGSリンカー配列を例示することができる。
そして、当該遺伝子をファージミドベクターにクローニングして大腸菌に移入した後、ファージを感染させ、scFV抗体をファージ被膜上に発現させることができる(scFVディスプレイファージライブラリーの調製)。
非ヒト動物の免疫方法として、BCGを免疫原(免疫抗原)として用いた場合、上記のようにしてscFV抗体を発現させたscFVディスプレイファージライブラリーについて、免疫抗原として用いたBCGを用いたバイオパニング、次いで、結核菌のLAM、好ましくはヒト結核菌のLAMを固相化した抗原プレートを用いたバイオパニングを実施することで、結核菌のLAM、好ましくはヒト結核菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体(scFV抗体)を取得作製することが可能になる。
また、抗酸菌のLAMに特異性の高いMoAb(一本鎖抗体)を選択する方法として、scFV抗体を発現させたscFVディスプレイファージライブラリーから、抗LAM抗体を固相化した担体にLAMを捕捉させた抗体抗原複合体を用いたバイオパニングを実施することで、結核菌及び非結核性抗酸菌の別を問わず、広く抗酸菌のLAMに選択的に結合する一本鎖抗体(scFV抗体)を取得作製することが可能になる。
なお、ここでTotal RNAまたはmRNAの調製、cDNAの調製、ファージミドへのサブクローニングや大腸菌への移入、ファージの感染、抗酸菌のLAM、好ましくは結核菌のLAM、より好ましくはヒト結核菌のLAMに特異的に結合するモノクローナル抗体(scFV抗体)のスクリーニング方法(バイオパニング)は、公知の方法を用いて行うことができ、具体的には、後述する実施例の記載を参考にして実施することができる。
(III)抗酸菌、特に結核菌の検出方法、及びそれに使用する抗酸菌(特に結核菌)検出具
上記本発明のMoAbは、抗酸菌、好ましくは結核菌の検出に使用することができる。言い換えると、本発明のMoAbを用いることで、被験者が抗酸菌、特に結核菌を保有しているか否か、つまり被験者が抗酸菌、特に結核菌に感染しているか否かを診断・検査することができる。
本発明の抗酸菌、特に結核菌の検出(診断・検査)は、下記の(1)及び(2)の工程を行うことで実施することができる。
(1)本発明のMoAbを、被験者の生体試料(被験試料)と接触させる工程、及び
(2)本発明のMoAbと抗酸菌LAM、特に結核菌LAMとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する結核菌を測定する工程。
(1)の工程で本発明のMoAbと接触させる被験者の生体試料(被験試料)としては、抗酸菌、特に結核菌が存在しえる生体試料であればよく、例えば喀痰、唾液、血液(血清、血漿)、肺洗浄液、胃液、尿、糞便、皮膚、膵液等を挙げることができる。好ましくは喀痰、唾液、及び血液、より好ましくは喀痰、及び唾液である。
ここで測定の対象となる被験者は、好ましくはヒトであるが、その他、ウマ、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、マウス、ハムスター、及びラット等の動物を対象にすることもできる。
本発明のMoAbと生体試料を接触させる条件は、本発明のMoAbと抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMとの結合反応が損なわれない条件であれば特に制限されず、通常の免疫反応における条件が採用される。一般には45℃以下、好ましくは約4〜40℃、より好ましくは25〜40℃程度の温度条件下で、本発明のMoAbと抗酸菌、好ましくは結核菌を含み得る生体試料とを共存させ、約0.5〜40時間、好ましくは1〜20時間程度、放置もしくはインキュベーションする方法を挙げることができる。また、結合反応に使用される溶媒及びそのpHも、当該反応に悪影響を与えないものであれば特に制限されず、常法に従ってまたはそれに準じて、pHが約5〜9程度になるように、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩緩衝液、酢酸緩衝液等)を用いることもできる。
(1)の工程は、本発明のMoAbを固定化(固相化)した状態(固体の担体に結合させた状態)で行うことができる。当該固定化には、本発明のMoAbが固体の担体に脱着可能な状態で結合している場合と、脱着不可能な状態で結合している場合の両方が含まれる。
MoAbを固定化するために使用される固体の担体としては、この技術分野において慣用の各種の担体が利用でき、例えばガラス、セルロース粉末、セファデックス、セファロース、ポリスチレン、濾紙、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース、イオン交換樹脂、デキストラン、プラスチックフィルム、プラスチックチューブ、ナイロン、ガラスビーズ、絹、ポリアミン−メチルビニルエーテル−マレイン酸共重合体、アミノ酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体等の種々の素材からなるスティック、ビーズ、プレート(マイクロプレートを含む)、試験管等を広く例示することができる。
固定化方法についても特に制限はなく、各種固体担体に応じて、物理的結合及び化学的結合のいずれをも使用できる。例えば、共有結合法としてジアゾ法、ペプチド法(酸アミド誘導体法、カルボキシルクロライド樹脂法、カルボジイミド樹脂法、無水マレイン酸誘導体法、イソシアナート誘導体法、臭化シアン活性化多糖体法、セルロースカルボナート誘導体法、縮合試薬を使用する方法等)、アルキル化法、架橋試薬による担体結合法(例えば架橋試薬としてグルタールアルデヒド、ヘキサメチレンイソシアナート等を用いるもの)、Ugi反応による担体結合法等の化学的反応:或いはイオン交換樹脂のような担体を用いるイオン結合法:ガラスビーズ等の多孔性ガラスを担体として用いる物理的吸着法等が例示できる。
(2)の工程において本発明のMoAbは、任意の標識物質で標識した状態で使用することができる。ここで標識物質としては、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ等の酵素;フルオレセインイソシアネート、ローダミンなどの蛍光物質;32Pや125I等の放射性物質;金コロイドや白色コロイド等の金属コロイド、赤色や青色などの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックス及び天然ゴムラテックス等のラテックスなどの発色物質(呈色物質);化学発光物質などを例示することができる。これらの標識物質によるMoAbの標識は、各種標識物質に応じて定法に従って行うことができる。
(2)の工程は、本発明のMoAbと抗酸菌、好ましくは結核菌LAMとの結合反応で得られる免疫複合体(抗原抗体結合物)を検出・測定する工程である。ここで免疫複合体(抗原抗体結合物)の検出・測定方法並びにそれらの条件は、特に制限されることなく、通常の免疫測定法で用いられるものと同じか若しくはそれに準じた方法及び条件を採用することができる。具体的には、MoAbの標識に使用した標識物質の種類に応じて、例えば放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、凝集法、オクタロニー法(Ouchterlony)等の、一般の免疫化学的測定法において使用される種々の方法を利用することができる(例えば、「ハイブリドーマ法とモノクローナル抗体」、株式会社R&Dプランニング発行、第30−53頁、昭和57年3月5日発行など参照)。感度や簡便性の点から、好ましくはELISA法が、より好ましくはサンドイッチ法に従い実施することができる。
例えば、固相化サンドイッチ法によれば、測定対象である被験試料中の抗酸菌、好ましくは、結核菌は例えば次のようにして測定することができる。
まず、測定対象である抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMと特異的に抗原抗体反応する抗体を固定化(脱着可能な状態での固定化、及び脱着可能な状態での固定化を含む)してなる固相化抗体に、測定対象である抗酸菌、好ましくは結核菌を含み得る被験試料としての生体試料(例えば、喀痰、唾液または血液等)を加えて、抗原抗体反応を行わせる。次いで、未結合物質を例えば洗浄により除去して、測定対象である抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMと特異的に抗原抗体反応する抗体を加えて、上記で生成した抗原抗体結合物における測定対象菌と反応させ、反応によって生じた抗原抗体結合物(「抗体−抗酸菌−抗体」の複合物、好ましくは「抗体−結核菌−抗体」の複合物)の存在を検出するか(定性測定)、又はその量を測定する(定量測定)。当該方法において、本発明では、抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMと特異的に抗原抗体反応する抗体として、本発明のMoAb、好ましくはMoAb1を使用する。
上記抗原抗体結合物(「抗体−抗酸菌−抗体」の複合物、好ましくは「抗体−結核菌−抗体」の複合物)の測定は、抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMと抗原抗体反応を行ういずれか一方の抗体(本発明のMoAb、好ましくはMoAb1)として、前述する任意の標識物質で標識した抗体(標識化抗体)を使用することで簡便に行うことができる。より簡便には、金コロイド等の着色ラテックス粒子等を標識してなる抗体を用いたイムノクロマト法の採用を例示することができる。これら測定手法における各種手段の選択やそれらの改変等はいずれも当業者のよく知るところであり、本発明においてはそれら各手法のいずれによることもできる〔「臨床検査法提要」、金原出版、1995年等参照〕。
当該方法は、例えば、下記構造を有する抗酸菌検出具、好ましくは結核菌検出具(単に「検出具」ともいう)を用いることで実施することもできる。当該検出具は、ヒトや動物の体液(喀痰、唾液および尿を含む)における抗酸菌、好ましくは結核菌の存在、つまり抗酸菌、好ましくは結核菌の感染の有無を判定するための道具であって、毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えている。
当該吸液片は、
(i)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(ii)被験試料の抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMと特異的に反応する標識−抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb)を担持した標識抗体部、
(iii)下記に示す、テスト結果表示部を備えた判定部、
(a) 抗酸菌、好ましくは結核菌のLAMと特異的に反応する非標識−抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb)を固定したテスト結果表示部、および
(iv)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部を備えている。
なお、上記(iii)判定部は、(a)テスト結果表示部に加えて、それと間隔をおいて下記に示すコントロール表示部を備えていてもよい:
(b) 標識−抗抗酸菌LAM抗体(本発明MoAb)、好ましくは標識−抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb1)と反応する非標識−抗抗酸菌LAM抗体(本発明MoAb)、好ましくは非標識−抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb1)を固定したコントロール表示部。
当該検出具によれば、(a)テスト結果表示部の発色の有無で、被験試料中に抗酸菌、好ましくは結核菌の存在を判定することができる。
本発明の検出具は、毛細管作用またはクロマトグラフィー作用(本発明ではこれらを総じて「毛細管現象」という)によって、被験試料を移送できる材料からなる吸液片を備える。該吸液片は、シート状の細片(以下、「シート状細片」という)とすることができ、該シート状細
片は、1枚のシートにより、或いは複数枚のシートを重ね合わせるかまたは連結して、形成することができる。或いは、吸液片は、細長い棒状の細片とする等、液の吸収及び毛細管現象による移送が可能な種々の形態とすることができる。なお、本発明の検出具は、さらに上記の吸液片を支持する支持体を備えるものであってもよい。
この吸液片のための材料としては、溶媒(水、血清、尿その他の生体試料)、被験成分(結核菌等の抗酸菌)、及び被験成分を含む複合体(例えば、標識された抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb1)と結核菌との複合体[標識抗体−結核菌]、または当該複合体と非標識−抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb1)との複合体[標識抗体−結核菌−抗体])が、浸透可能な多孔構造又は毛細管構造を有し、被験成分を含む被験試料を(1)試料採取部に適用(採取、滴下、添加)した場合に、被験試料が、途中で上記抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb1)や複合体(標識抗体−結核菌)を含みながらも、多孔構造又は毛細管構造内を移動(展開)し得る材料であればよく、特に制限されない。例えば、前述する固体担体を挙げることができる。これらのうち、より好ましくは有機多孔質体である。なお、有機多孔質体の例としては、セルロースなどの天然繊維、セルロースアセテートなどの半合成繊維やニトロセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維などで形成された繊維集合体、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリスチレン、多孔質ポリメタクリル酸メチル、多孔質ナイロン、多孔質ポリスルフォン、多孔質フッ素樹脂、親水性基が導入されたフッ化ポリビニリデン等の多孔質合成樹脂などを挙げることができる。好ましくはセルロースなどの天然繊維、またはセルロースアセテートなどの半合成繊維やニトロセルロースなどのセルロース誘導体である。
吸液片の大きさは、特に制限されない。幅(短辺の長さ)が2〜20mm程度、好ましくは4〜10mm程度の範囲にあり、長さ(長辺の長さ)が20〜200mm、好ましくは30〜150mmの範囲にある大きさであることが好ましい。
以下、本発明の実施形態に係る検出具を、図面を参照しつつ説明する。
図1(A)および(B)に本発明の検出具の一態様を示す。当該図1(A)および(B)は、本発明の検出具を横からみた図である。かかる検出具において、吸液片は、被験試料を採取(添加)する試料採取部(1)、標識抗体部(2)、及びテスト結果表示部(a)を備えた判定部(3)、並びにこれらの試料採取部、標識抗体部、及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部(4)を備える。また図1(B)は、上記判定部(3)において、テスト結果表示部(a)に加えてコントロール表示部(b)を備える検出具を示す。
図1に示す例では、吸液片は、複数のシート片により形成されたシート状細片とされているが、シート状細片は同一材料からなる一枚のシートからなるものであってもよいし、また同一または異なる材質からなる複数枚のシート片で全体として一つのシートを形成してなるものであってもよい。なお、シート全体が複数枚のシートからなるものであってもよいし、部分的に複数枚のシートから形成される部分を有するものであってもよい。
図1で示す例では、支持体10の上に、シート状細片が接着されている。このシート状細片は、長手方向の一端側から他端側に順に、試料採取部(1)を形成するシート21、標識抗体部(2)を形成するシート22、判定部(3)を形成するシート23、液吸収部(4)を形成するシート24を備えている。また、図2に示すように、シート21の端部がシート22の端部と重なるように、またシート22の端部がシート23の端部と重なるように、さらにシート23の端部がシート24の端部と重なるように構成することもできる。かかる構成をとることで液の移動をよりスムーズにすることができる。
試料採取部(1)は、測定対象とする被験試料を吸収採取する部分(被験試料供給部)である。被験試料としては、本発明が測定対象とする被験者の生体試料を挙げることができる。
当該試料採取部(1)は、図1および図2に例示するように、シート状細片の端部(始端部)に位置することができる。
標識抗体部(2)は、前述するように試料採取部(1)の終端部と接触するか(図1)、または当該試料採取部(1)と一部を重なった状態で形成される(図2)。当該標識抗体部(2)は、被験試料に含まれる抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMと特異的に反応し結合する抗体を脱離可能な状態で含む。具体的には、本発明の検出具は、標識抗体部(2)を構成するシート22に、抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMと抗原抗体反応により特異的に結合する抗抗酸菌LAM抗体(本発明MoAb)、好ましくは抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb1)を脱離可能な状態で含む。ここで本発明MoAbは、前述する任意の標識物質で標識された状態で、すなわち標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)として、またMoAb1は標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)として使用される。
標識抗体部(2)は、シート状細片に採用される材料の中でも、標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)を脱離可能な状態で含み、試料採取部(1)から移動してきた被験試料中の被験成分(抗酸菌、好ましくは結核菌)と反応して形成される抗原-抗体複合体(抗酸菌LAMと標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)との複合体、好ましくは結核菌LAMと標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)との複合体)を、被験試料の判定部(3)への移動に伴って、図1中、矢印Pで示す方向に移動させることができる性質を備えた、親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。
なお、標識抗体部(2)に、標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは(標識−抗結核菌LAM抗体)(標識−本発明MoAb1)を脱離可能な状態で担持させる方法としては、制限されないが、標識−本発明MoAb、好ましくは標識−本発明MoAb1を含む溶液を標識抗体部(2)に含浸または付着させる方法を例示することができる。また、標識抗体部(2)に被験試料中に含まれる被験成分(抗酸菌、好ましくは結核菌)を漏れなく結合させるために、当該標識抗体部(2)には上記の標識−本発明MoAb、好ましくは標識−本発明MoAb1を過量に担持させておくことが好ましい。
判定部(3)は、上記試料採取部(1)から標識抗体部(2)を通って移動してきた被験試料をさらに液吸収部(4)まで移送する部分であって、その移送領域上に、移送する被験試料中に含まれる特定成分(抗酸菌LAMと標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)との複合体、好ましくは結核菌LAMと標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)との複合体)を捕捉して、その捕捉結果を表示する部分〔テスト結果表示部(a)〕を含む。このテスト結果表示部(a)に示される結果に基づいて、被験試料の抗酸菌、好ましくは結核菌の存在の有無が判定可能になることから、当該表示部(a)を含む領域を「判定部(3)」と称する。
本発明の検出具は、かかる判定部(3)において、テスト結果表示部(a)に加えて、コントロール表示部(b)を備えていてもよい。なお、かかるテスト結果表示部(a)、及びコントロール表示部(b)は、それぞれ順次間隔をおいて配置される。
テスト結果表示部(a)には、抗酸菌LAMと特異的に反応する非標識の抗体〔非標識−抗抗酸菌LAM抗体〕、好ましくは結核菌LAMと特異的に反応する非標識の抗体〔非標識−抗結核菌LAM抗体〕が過量に固定されている。このため、上記標識抗体部(2)での抗原抗体反応によって標識−本発明MoAbと結合した抗酸菌、好ましくは標識−本発明MoAb1と結合した結核菌は、標識−本発明MoAb、好ましくは標識−本発明MoAb1との複合体の状態で、このテスト結果表示部(a)に捕捉され、その捕捉量に応じた強さで、標識物質に起因する発色を呈する。
なお、ここで非標識−抗抗酸菌LAM抗体を構成する抗抗酸菌LAM抗体としては、抗酸菌のLAMと特異的に結合する本発明のMoAb(本発明MoAb)を同様に使用することができる。また、ここで非標識−抗結核菌LAM抗体を構成する抗結核菌LAM抗体としては、結核菌のLAMと特異的に結合する本発明のMoAb1(本発明MoAb1)を同様に使用することができる。
コントロール表示部(b)には、上記標識抗体部(2)に含有させた標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)と反応する非標識-抗体(第二抗体)が所定量、固定されている。当該コントロール表示部(b)は、被験試料の移動方向(図1中、pの方向)に、テスト結果表示部(a)と間隔をおいて、テスト結果表示部(a)およびコントロール表示部(b)の順で配置することができる。コントロール表示部(b)には、先行するシート片から移動してくる被験試料中に含まれる標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)と反応する非標識-抗体(第二抗体)が過剰量固定されている。
このため、かかるコントロール表示部(b)には、標識抗体部(2)から脱離して被験試料中に放出された標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)が捕捉され、コントロール表示部(b)に固定された上記第二抗体の量に応じた強さで、標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)の標識物質に起因する発色を呈する。
ここで非標識-抗体(第二抗体)は、標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)と結合するものであればよい。かかる非標識-抗体(第二抗体)は、制限されないが、例えば抗酸菌のLAM binding protein、陰イオン性粒子などを用いることができる。
本発明の検出具を用いた結核菌の測定は、判定部(3)におけるテスト結果表示部(a)における発色の有無を指標として行われる。この際、必要に応じて、判定部(3)におけるコントロール表示部(b)における発色の有無も判断に使用することができる。テスト結果表示部(a)における発色が認められない場合でも、上記コントロール表示部(b)で発色が認められる場合は、測定は正常に行われており、測定結果を陰性と判断することができる。しかし、上記コントロール表示部(b)で発色が認められない場合は、測定が正常に行われていないことを示し、テスト結果表示部(a)の結果をもって陰性と判断することはできない。
判定部(3)は、シート状細片に採用される材料の中でも、種々の成分を含む被験試料を、液吸収部(4)に毛細管現象によって移動させることができ、テスト結果表示部(a)に上記の非標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)を、またコントロール表示部(b)に上記の非標識-抗体(第二抗体)を安定に固定化できる性質を備えた、親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。
液吸収部(4)は、上記試料採取部(1)から標識抗体部(2)、及び判定部(3)(テスト結果表示部(a)、またはテスト結果表示部(a)とコントロール表示部(b))を通って、矢印Pの方向に移動してきた被験試料の残液を吸収する部分である。このため、液吸収部(4)は、シート状細片に採用される材料の中でも、親水性及び吸収性に優れていることが好ましいが、より好適には、吸収した液を離水しない性質を備えた材料または弾力性のある材料から構成されることが望ましい。かかる材料として、具体的には、濾紙や親水性繊維の不織布などを挙げることができ、濾紙と不織布との積層体も使用することができる。
本発明の検出具は、基本的に上記構成を備えたシート状細片からなるが、上記シート状細片に加えて、さらに支持体10を備えることもできる。かかる支持体10は、上記シート状細片を保持し得る材質及び形態を備えるものであれば特に制限されない。例えば、シート状細片の裏面(下層面)に積層して用いられるシート状の支持体であっても、またシート状細片を収納するハウジング形態の支持体であってもよい。
シート状の支持体としては、例えば各種プラスチック製のシート(プラスチックシート)、硬質紙、アルミ製等の金属(合金を含む)製シート、例えば異質又は同質の複数の紙を張り合わせた(貼り合わせた)複層紙、プラスチックシートと紙とを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、紙と金属製シートを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、プラスチックシートと紙と金属製シートを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、紙に防水用等のコーティングを施したものなどを挙げることができる。好ましくは防水機能を有するものである。
ハウジング形態の支持体は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル酸ポリマーなど、不透湿性の材料からなるものが好ましいが、紙製であっても撥水加工がされていれば用いることができる。ハウジングには、少なくとも、内部に収納される上記シート状細片の試料採取部(1)に対応して「採液窓」、判定部(3)のテスト結果表示部(a)に対応して「判定表示窓」、及びコントロール表示部(b)に対応して「コントロール表示窓」が形成されていることが望ましい。なお、「判定表示窓」と「コントロール表示窓」は、個々に形成されていてもよいが、一つの窓として形成されていてもよい。
前述するシート状細片を備える本発明の検出具は、その使用に際して、まず試料採取部(1)に被験試料を含浸させる。そうすると、試料採取部(1)に吸収された被験試料がシート状細片中を毛細管現象により浸透し、まず標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)が脱離可能なように担持されている標識抗体部(2)に至る。ここで、被験試料中の被験成分(結核菌)が上記標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)と抗原抗体反応により特異的に結合する。次いで、被験試料は、「抗酸菌と標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)との複合体」(「結核菌と標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)との複合体」)と、「結核菌と結合しなかった余剰の標識−結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)」(「結核菌と結合しなかった余剰の標識−結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)」)を伴いながら、判定部(3)のテスト結果表示部(a)に至る。テスト結果表示部(a)には抗酸菌と特異的に結合する非標識−抗抗酸菌LAM抗体(本発明MoAb)、好ましくは結核菌と特異的に結合する非標識−抗結核菌LAM抗体(本発明MoAb1)が安定に固定されているので、ここに被験試料中の「抗酸菌と特異的に結合した標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)」、好ましくは「結核菌と特異的に結合した標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)」が捕捉され集積される。その結果、テスト結果表示部(a)は、捕捉された標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは捕捉された標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)の標識物質に基づいて被験試料中に含まれる抗酸菌、好ましくは結核菌の量に応じた強度で発色する。これにより、被験試料中の抗酸菌、好ましくは結核菌の有無や量的割合が検知できる。
次に被験試料は、「抗酸菌と結合しなかった余剰の標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)」、好ましくは「結核菌と結合しなかった余剰の標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)」を伴いながら、判定部(3)のコントロール表示部(b)に至る。コントロール表示部(b)には標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)と結合する第二抗体〔非標識-抗体〕、好ましくは標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)と結合する第二抗体〔非標識-抗体〕が一定の量で安定に固定されているので、ここに被験試料中の上記の余剰の標識−抗抗酸菌LAM抗体(標識−本発明MoAb)、好ましくは標識−抗結核菌LAM抗体(標識−本発明MoAb1)が捕捉され集積される。その結果、コントロール表示部(b)は、コントロール表示部(b)に固定化された第二抗体の量(または、第二抗体と結合した標識-抗体の量)に応じた強度で発色する。
これらの他、本発明の検出具は、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形態様が可能である。上記の本発明の検出具には、他に当該検出具の使用方法や判定方法について説明した仕様書を添付することができ、本発明はかかる検出具と仕様書がセットとなった判定キットを提供するものである。
(IV)結核診断剤または診断用キット
前述する抗酸菌検出方法及び抗酸菌検出具は、被験者の生体試料中の抗酸菌の存在を検出するために使用される。特にモノクローナル抗体として本発明のMoAb1を用いる場合、上記抗酸菌として、好ましくは結核菌を例示することができる。つまり、前述する抗酸菌検出方法及び抗酸菌検出具は、被験者における抗酸菌、特に結核菌感染の有無を診断するために使用される。
従って、前述する本発明MoAb、好ましくはMoAb1は結核診断剤として有用であり、本発明は、かかる本発明MoAb、好ましくはMoAb1を含む結核診断剤を提供するものである。当該本発明MoAbは、任意の固体の担体に、脱着可能なようにまたは脱着不可能なように、固定化されていてもよいし、また任意の標識物質で標識されていてもよい。
また上記本発明の抗酸菌、特に結核菌検出方法を実施するに際しては、本発明のMoAb、好ましくはMoAb1を結核菌検出試薬として含む結核診断用キットを利用することによって、簡便に実施することができる。従って、本発明は、前記する結核検出方法を実施する為の結核診断用キットを提供するものである。当該結核診断用キットは、被験試料中に存在する結核菌を、抗原抗体反応を利用して検出測定するための試薬キットである。当該キットは、本発明のMoAb、好ましくはMoAb1を含むものであればよく、前述する結核菌検出具、本発明のMoAb、好ましくはMoAb1と反応する第二抗体、または抗体検出試薬等を含有していてもよい。また、当該診断用キットには、測定の実施の便益のために、更に適当な反応液、希釈液、洗浄液、反応停止液、標識活性測定試薬等が含まれていてもよい。
(V)抗酸菌LAM(特に結核菌LAM)の測定方法、抗酸菌LAM(特に結核菌LAM)検出剤または検出用キット
本発明のMoAbは、抗酸菌のリポアラビノマンナン(LAM)を特異的に認識し、結合する抗体である。このため、前述する本発明の抗酸菌検出方法は、抗酸菌LAMの測定にも応用することができる。
具体的には、本発明の抗酸菌LAMの測定方法は、下記の工程を行うことによって実施することができる。
(1)本発明MoAbを、抗酸菌を含み得る被験試料と接触させる工程、及び
(2)本発明MoAbと抗酸菌のLAMとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌LAMを測定する工程。
これらの(1)及び(2)の工程は、前述する「(II)抗酸菌の検出方法」で説明した(1)及び(2)工程にそれぞれ対応する工程であり、ここでも上記(II)での記載を援用することができる。また、当該抗酸菌LAMの測定も、前述する「(II)抗酸菌の検出方法」で説明した抗酸菌検出具を同様に使用して実施することができる(なお、この場合「抗酸菌LAM検出具」と言い換えることもできる)。
なお、上記本発明MoAbのうちMoAb1は、結核菌のリポアラビノマンナン(LAM)を特異的に認識し、結合する抗体であるため、上記する本発明の抗酸菌検出方法は、結核菌検出方法として、結核菌LAMの測定にも応用することができる。
ここで、抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMの測定は、抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMを検出するための定性測定、及び抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMの量を測定するための定量測定が含まれる。定量測定は、制限はされないが、例えば、本発明MoAbと既知量の抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMとの反応から予め検量線を作成しておき、当該検量線から、被験試料中に含まれる未知量の抗酸菌LAM、好ましくは結核菌LAMの量を算出する方法を例示することができる。
かかる測定において、本発明MoAbは抗酸菌LAM検出用試薬として有用であり、本発明は、かかる本発明MoAbを抗酸菌LAM検出用試薬として含む抗酸菌LAM検出剤を提供するものである。なかでも本発明のMoAb1は結核菌LAM検出用試薬として有用であり、本発明は、かかる本発明MoAb1を結核菌LAM検出用試薬として含む結核菌LAM検出剤を提供するものである。これらの本発明MoAbは、任意の固体の担体に、脱着可能なようにまたは脱着不可能なように、固定化されていてもよいし、また任意の標識物質で標識されていてもよい。
上記本発明の抗酸菌LAM測定方法を実施するに際しては、本発明のMoAbを抗酸菌LAM検出試薬として含む抗酸菌LAM検出用キットを利用することによって、簡便に実施することができる。また上記本発明の結核菌LAM測定方法を実施するに際しては、本発明のMoAbのうち、MoAb1を結核菌LAM検出試薬として含む結核菌LAM検出用キットを利用することによって、簡便に実施することができる。
従って、本発明は、前記する抗酸菌LAM測定方法を実施する為の抗酸菌LAM検出用キット、特に結核菌LAM測定方法を実施する為の結核菌LAM検出用キットを提供するものである。当該抗酸菌LAM検出用キット、特に結核菌LAM検出用キットは、被験試料中に存在する抗酸菌、特に結核菌のLAMを、抗原抗体反応を利用して検出測定するための試薬キットである。当該抗酸菌LAM検出用キットは、本発明のMoAbを含むものであり、また結核菌LAM検出用キットは本発明のMoAb1を含むものであればよく、前述する抗酸菌LAM検出具(または結核菌LAM検出具)、本発明のMoAb(またはMoAb1)と反応する第二抗体、または抗体検出試薬等を含有していてもよい。また、当該診断用キットには、測定の実施の便益のために、更に適当な反応液、希釈液、洗浄液、反応停止液、標識活性測定試薬等が含まれていてもよい。
(VI)滅菌検体での測定方法
(III)で前述する本発明の抗酸菌または結核菌検出方法は、バイオハザードフリーの測定方法として応用することができる。具体的には、本発明のバイオハザードフリーな測定方法は、下記の工程を行うことによって実施することができる。
(1)検体試料を高熱煮沸滅菌、好ましくは高圧蒸気滅菌する。
(2)本発明のMoAb、好ましくはMoAb1を、滅菌処理した被験試料とそれぞれ接触させる工程、
(3)上記本発明のMoAb、好ましくはMoAb1と結核菌LAMとの結合反応を指標として、被験試料中の結核菌LAMを測定する工程、及び
(4)被験試料に結核菌LAMが検出された場合に、被験試料が結核菌に感染していると判断する工程。
(VII)抗結核薬の結核治療効果を判定する方法
(III)で前述する本発明の抗酸菌、特に結核菌検出方法は、抗結核薬の結核治療効果の判定にも応用することができる。
具体的には、本発明の抗結核薬の結核治療効果の判定方法は、下記の工程を行うことによって実施することができる。
(1)本発明のMoAb、好ましくはMoAb1を、抗結核薬投与前後の被験試料とそれぞれ接触させる工程、
(2)上記本発明のMoAb、好ましくはMoAb1と結核菌LAMとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の被験試料中の結核菌LAMを測定する工程、及び
(3)抗結核薬投与前の被験試料に結核菌LAMが検出され、且つ抗結核薬投与後の被験試料に結核菌LAMが検出されない場合に抗結核薬の結核治療効果ありと、判断する工程。
これらの(1)及び(2)の工程は、前述する「(III)抗酸菌、特に結核菌の検出方法」で説明した(1)及び(2)の工程にそれぞれ対応する工程であり、被験試料として、結核に罹患した(結核菌に感染した)結核患者の被験試料であって、抗結核薬投与前(結核治療前)の被験試料および抗結核薬投与後(結核治療後)の被験試料を対象とする以外は、上記(III)に記載する方法を同様に実施することができる。また、(2)で行う結核菌LAMの測定も、前述する「(III)抗酸菌、特に結核菌の検出方法」で説明した結核菌検出具を同様に使用して実施することができる(なお、この場合「結核菌LAM検出具」と言い換えることもできる)。
ここで抗結核薬としては、従来より公知のリファンピシン、イソニアジド(イソニコチン酸ヒドラジッド)、ピラジナミド、ストレプトマイシンまたはその塩、エタンブトールまたはその塩を挙げることができるが、これらの抗結核薬に限らず、結核菌に対する殺菌作用(抗結核作用)が認められる承認または非承認の薬が含まれる。
上記(2)工程の結果、抗結核薬投与前の被験試料に結核菌LAM、言い換えると結核菌が検出され、且つ抗結核薬投与後の被験試料に結核菌LAM(結核菌)が検出されない場合には、当該抗結核薬について対象とする結核患者に対して結核治療効果があったと、抗結核薬の有効性を判断することができる。
一方、上記(2)工程の結果、抗結核薬投与前の被験試料に結核菌LAM、言い換えると結核菌が検出され、且つ抗結核薬投与後の被験試料にも結核菌LAM(結核菌)が検出された場合には、さらに抗結核薬投与前後で検出された結核菌の量を対比することができる。ここで、抗結核薬投与前後で結核菌量の低下が認められる場合は、当該抗結核薬について対象とする結核患者に対して結核治療効果がある可能性が示唆されるため、医療従事者に対して当該抗結核薬を継続的に使用するという治療の選択を与えることができる。これに対して、抗結核薬投与前後で結核菌量の低下が認められない場合は、当該抗結核薬について対象とする結核患者に対して結核治療効果がないと認められるため、医療従事者に対して当該抗結核薬の使用を中止し、他の治療に切り替えるという治療の選択を与えることができる。
かかる方法において、本発明MoAb、特にMoAb1は、抗結核薬の結核治療効果判定試薬として有用であり、本発明は、かかる本発明MoAb、特にMoAb1を結核治療効果判定試薬として含む、結核治療効果判定剤を提供するものである。当該本発明MoAb、特にMoAb1は、任意の固体の担体に、脱着可能なようにまたは脱着不可能なように、固定化されていてもよいし、また任意の標識物質で標識されていてもよい。
また上記本発明の判定方法を実施するに際しては、本発明のMoAb、好ましくはMoAb1を抗結核薬の結核治療効果判定試薬として含む結核治療効果判定用キットを利用することによって、簡便に実施することができる。従って、本発明は、前記する抗結核薬の結核治療効果判定方法を実施する為の結核治療効果判定用キットを提供するものである。当該結核治療効果判定用キットは、結核患者に対する抗結核剤による治療効果を、治療前後の被験試料中に存在する結核菌のLAMを、抗原抗体反応を利用して検出測定して、判定するための試薬キットである。当該キットは、本発明のMoAb、好ましくはMoAb1を含むものであればよく、前述する結核菌LAM検出具、本発明のMoAbと反応する第二抗体、または抗体検出試薬等を含有していてもよい。また、当該診断用キットには、測定の実施の便益のために、更に適当な反応液、希釈液、洗浄液、反応停止液、標識活性測定試薬等が含まれていてもよい。
活動性結核への一般的治療は、4種類以上の治療薬を6ヶ月間投与することにより行われる。結核感染が疑われる場合、まず、チール・ネールゼン染色又は蛍光染色による塗沫検査が行われる。喀痰検体1ml中に10,000個以上の菌があれば、塗沫陽性となる。喀痰塗沫陽性患者は感染源として臨床上、または公衆衛生上、特に重要とされている。そのため、塗沫陽性患者は結核病棟での入院治療が必要である。通院治療に切り替える一つの指標は、3日間連続して塗沫検査結果が陰性となることである。本発明による結核菌LAM検出法は喀痰、唾液、血液等の生体試料中のLAM濃度を定量することが可能である。従って、喀痰、唾液、血液等の生体試料中のLAMを測定することにより、治療薬剤有効性のモニタリングが可能で、かつ排菌状態の陰性化判断にも応用可能である。
本発明には下記の実施態様が含まれる。
項1.抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(A)及び(C)のモノクロ一ナル抗体を含む抗酸菌検出用キット:
(A)下記(a)〜(c)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(d)〜(f)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とがリンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(C)下記(m)〜(o)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(p)〜(r)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:
(m)配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号48で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号49で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(p)配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号52で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
項2.抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(B)のモノクローナル抗体をさらに含む、項1に記載の抗酸菌検出用キット:(B) 下記(g)〜(i)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(j)〜(l)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなることを特徴とする、モノクロ一ナル抗体:
(g)配列番号31で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h) 配列番号32で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号33で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(j)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号35で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号36で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
項3.抗酸菌のうち結核菌を特異的に検出するための試薬キットであることを特徴とする、項1または2に記載の抗酸菌検出用キット。
項4.抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(A)及び(C)のモノクロ一ナル抗体、または抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(A)、(B)及び(C)に記載する、モノクロ一ナル抗体を含む、結核診断剤:
(A)下記(a)〜(c)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(d)〜(f)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(C)下記(m)〜(o)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(p)〜(r)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:
(m)配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号48で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号49で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(p)配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号52で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(B) 下記(g)〜(i)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(j)〜(l)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなることを特徴とする、モノクロ一ナル抗体:
(g)配列番号31で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h) 配列番号32で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号33で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
(j)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号35で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号36で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
項5.下記の工程を有する、抗酸菌の検出方法:
(1)項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料(被験試料)と接触させる工程、及び
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌を測定する工程。
項6.下記の工程を有する、抗酸菌の検出方法:
(1)項1に記載する(A)のモノクローナル抗体及び項2に記載する(B)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料(被験試料)と接触させる工程、及び
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)及び(B)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌を測定する工程。
項7.抗酸菌のうち結核菌を特異的に検出する方法であることを特徴とする、項5または6に記載する抗酸菌の検出方法。
項8.下記の工程を有する、被験試料中の抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する方法:
(1)項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料(被験試料)と接触させる工程、及び
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する工程。
項9.下記の工程を有する、被験試料中の抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する方法:
(1)抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する項1に記載する(A)のモノクローナル抗体、及び項2に記載する(B)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料と接触させる工程、及び
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)及び(B)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する工程。
項10.前記測定方法が、
(2)の測定工程において抗酸菌リポアラビノマンナンを検出する工程を有する、抗酸菌リポアラビノマンナンの定性方法であるか、または
(2)の測定工程において抗酸菌リポアラビノマンナンを定量する工程を有する、抗酸菌リポアラビノマンナンの定量方法である、項8または9に記載の測定方法。
項11.抗酸菌リポアラビノマンナンのうち結核菌リポアラビノマンナンを特異的に測定する方法である、項8乃至10に記載する方法。
項12.下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
抗結核薬投与前後の各被験試料を対象として
(1)項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、抗結核薬投与前後の各被験試料と接触させる工程、
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された結核菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の各被験試料に存在する結核菌リポアラビノマンナンを測定する工程、及び
(3)抗結核薬投与前の被験試料に結核菌リポアラビノマンナンが検出され、且つ抗結核薬投与後の被験試料に結核菌リポアラビノマンナンが検出されない場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果ありと、決定する工程。
項13.下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
(1)項1に記載する(A)のモノクローナル抗体及び項2に記載する(B)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、抗結核薬投与前後の各被験試料と接触させる工程、
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)及び(B)のモノクローナル抗体に捕捉された結核菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の各被験試料中の結核菌リポアラビノマンナンを測定する工程、及び
(3)抗結核薬投与前の被験試料に結核菌リポアラビノマンナンが検出され、且つ抗結核薬投与後の被験試料に結核菌リポアラビノマンナンが検出されない場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果ありと、決定する工程。
項14.下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
(1)項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、抗結核薬投与前後の各被験試料と接触させる工程、
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された結核菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の各被験試料中の結核菌リポアラビノマンナンを定量する工程、及び
(3)抗結核薬投与後の被験試料中の結核菌リポアラビノマンナン量(投与後測定値)と、抗結核薬投与前の被験試料中の結核菌リポアラビノマンナン量(投与前測定値)を対比して、投与後測定値が投与前測定値よりも低い場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果ありと、それ以外の場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果なしと、決定する工程。
項15.下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
(1)項1に記載する(A)のモノクローナル抗体及び項2に記載する(B)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、抗結核薬投与前後の各被験試料と接触させる工程、
(2)項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)及び(B)のモノクローナル抗体に捕捉された結核菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の各被験試料中の結核菌リポアラビノマンナンを定量する工程、及び
(3)抗結核薬投与後の被験試料中の結核菌リポアラビノマンナン量(投与後測定値)と、抗結核薬投与前の被験試料中の結核菌リポアラビノマンナン量(投与前測定値)を対比して、投与後測定値が投与前測定値よりも低い場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果ありと、それ以外の場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果なしと、決定する工程。
項16.抗結核薬の結核治療効果判定用キットである、項1または2に記載する抗酸菌検出キット。
項17.毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた、抗酸菌検出具であって、当該吸液片が
(1)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2)抗酸菌のリポアラビノマンナンと特異的に反応する、標識されてなる項1または2に記載する(A)〜(C)のいずれかのモノクローナル抗体を担持した標識抗体部、
(3)下記に示す、テスト結果表示部を備えた判定部、
(a) 抗酸菌のリポアラビノマンナンと特異的に反応する、非標識の項1または2に記載する(A)〜(C)のいずれかのモノクローナル抗体とを固定したテスト結果表示部、
(4)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、抗酸菌検出具。
項18.上記(3)判定部が、
(a) テスト結果表示部と間隔をおいて、さらに下記に示すコントロール表示部を備えていることを特徴とする、項17記載の抗酸菌検出具:
(b) 標識されてなる項1または2に記載する(A)〜(C)のいずれかのモノクローナル抗体と反応する非標識−抗体を固定したコントロール表示部
を備えた判定部である、項17に記載する抗酸菌検出具。
項19.抗酸菌として結核菌を検出するためのものである、項17または18に記載する抗酸菌検出具。
項20.前記(A)〜(C)のモノクローナル抗体が一価又は二価の抗体であることを特徴とする、項1または2に記載の抗酸菌検出キット。
項21.前記(A)のモノクロ一ナル抗体が配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるものである、項1または2に記載の抗酸菌検出用キット。
項22.前記(B)のモノクローナル抗体が配列番号39で示されるアミノ酸配列からなるものである、項2に記載の抗酸菌検出用キット。
項23.前記(C)に記載するモノクローナル抗体が配列番号30で示されるアミノ酸配列からなるものである、項1または2に記載の抗酸菌検出用キット。
以下、本発明の構成及びその効果を、実施例を用いて説明する。但し、本発明は、かかる実施例の記載に何ら制限されるものではない。
[実施例1〜4]
1.材料の調製
(1-1)オリゴ化LAMの作製、及び免疫抗原の調製
ヒト型結核菌であるM. tuberculosisのLAM(青山B株由来、ナカライテスク)3mgを50mMの酢酸緩衝液(pH4.5)にて透析し、1mg/mLの濃度に調整した後、200mMの過ヨウ素酸水溶液を150μL添加し、遮光下4℃で7分間攪拌した。攪拌後エチレングリコールを35μL添加し、小型カラムPD-10(GE社製)でゲルろ過(0.1M炭酸水素ナトリウム、pH8.3) を行って1mLずつ分画した。分画サンプルは、フェノール−硫酸法にて糖を検出し、糖が検出された分画を純水にて透析を行った後に凍結乾燥した。
凍結乾燥したオリゴ化LAM 3mgを0.5mLの純水で溶解した。これにアセトニトリルに溶解した100mg/mLの1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸を12μL添加し、約1分間攪拌した後、0.2Mのトリエチルアミンを12μL添加して2分間攪拌した。次に、これに0.5M の炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8.5)で溶解した0.6Mのアジピン酸ジヒドラジドを0.53mL添加し、4℃で10時間攪拌した後、純水で約1時間透析した。
透析後の溶液にキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を300μg、200mMリン酸緩衝液(pH5.0)を30μL、100mM のN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを45μL添加した後、さらに、1Mのエチレンジクロリドを65μL添加して4℃で3時間以上攪拌した。最終的に、リン酸緩衝液で透析を行い、免疫抗原用のオリゴ化LAM-KLHとした。なお、当該オリゴ化LAM-KLHは、アジュバント(CompleteaまたはIncomplete Freund’s adjuvant, DIFCO社製)と1:1(オリゴ化LAM-KLH:アジュバンド[重量比])の割合で混合し、免疫源とした。
(1-2)BCGワクチン、及び免疫抗原の調製
BCGワクチンとして、日本ビーシージー製造(株)製の凍結乾燥BCGワクチン(承認番号20300AMZ00767000)を用いた。免疫には、当該凍結乾燥BCGワクチン100mg(湿重量)に生理食塩水1 mlを加えて混合したものを使用した。
(1-3)H37Ra死菌体、及び免疫抗原の調製
H37Ra死菌体として、DIFCO社製のM. TUBERCULOSIS H37Ra(凍結乾燥品)を用いた。免疫には、当該凍結乾燥H37Ra死菌体を100mg(乾重量)に生理食塩水1 mlを加えて混合したものを使用した。
(1-4)scFv断片作成用プライマーの作製
一本鎖抗体(scFv)の作製に用いたプライマーの名前、塩基配列、及び用途を表1に示す。VH領域増幅用プライマーとしてsense primer4種類とantisense primer1種類、VL領域増幅用プライマーとしてsense primer4種類とantisense primer4種類、重鎖可変領域断片と軽鎖可変領域断片とを連結するリンカー(GSリンカー)増幅用プライマーとしてsense primer1種類とantisense primer1種類、及び制限酵素(Sfi-I、Not-I)認識領域を増幅するためのプライマー2種類を合成した。なお、配列表の配列番号13〜29記載のアミノ酸配列は、当該表1に上から順番に記載するプライマーのアミノ酸配列に対応している。
(1-5)scFvファージライブラリーの作製
免疫抗原として、BCGワクチンまたはHR37Ra死菌体をそれぞれ用いてウサギを免疫した(上記(1-2)及び(1-3)、並びに参考例1(2)参照)。免疫終了後にウサギの脾臓を摘出し、RPMI(無血清)培地中で組織を溶かして、Total RNAを抽出し、得られたTotal RNAからcDNAを合成した。なお、Total RNAの抽出はRNA抽出キット(QIAGEN社)を用いて、操作手順書に従って行った。また、Total RNAからのcDNA合成は、cDNA合成キット(Invitrogen社)を用いて、操作手順書に従って行った。
合成したcDNAを鋳型として、上記表1に記載する特異的プライマーを用いて、VH遺伝子断片およびVL遺伝子断片を増幅した。具体的には、VH遺伝子断片は、RabVH-F1とRabVH-R、RabVH-F2とRabVH-R、RabVH-F3とRabVH-R、及びRabVH-F4とRabVH-Rの4種類のプライマーセットを用いて増幅した。VL遺伝子断片は、RabVκ-F1とRabVκ-R1、RabVκ-F1とRabVκ-R2、RabVκ-F1とRabVκ-R3、RabVκ-F2とRabVκ-R1、RabVκ-F2とRabVκ-R2、RabVκ-F2とRabVκ-R3、RabVκ-F3とRabVκ-R1、RabVκ-F3とRabVκ-R2、RabVκ-F3とRabVκ-R3、RabVλ-FとRabVλ-Rの10種類のプライマーセットを用いて増幅した。得られた遺伝子増幅産物は、1.5%アガロースゲル電気泳動により分離し、目的分子量の遺伝子増幅産物をゲルより抽出し、精製した。
精製したVH遺伝子増幅産物およびVL遺伝子増幅産物をGSリンカー(GGGGSGGGGSGGGGS:配列番号11)を用いて接合した。VH遺伝子増幅産物の3’末端に相同性配列を有するRS1とVH遺伝子を混合し、PCRを5サイクル行うことでVH遺伝子増幅産物の3’末端にGSリンカーを付加した。同様に、VL遺伝子増幅産物の5’末端に相同性配列を有するRS2とVL遺伝子を混合し、PCRを5サイクル行うことでVL遺伝子増幅産物の5’末端にGSリンカーを付加した。GSリンカーを付加したVH遺伝子増幅産物とVL遺伝子を混合し、PCRを10サイクル行うことでGSリンカーを介してVH遺伝子とVL遺伝子とが接合したscFv遺伝子(VH遺伝子/GSリンカー/VL遺伝子)を作製した。斯くして作製したscFv遺伝子を鋳型に、制限酵素配列を付加したプライマー(表1中、「RS-Sfi」および「RS-Not」参照)を用いて30サイクルPCRにて増幅し、最終的に制限酵素Sfi-IおよびNot-Iを用いて切断した。
次いで制限酵素で処理したscFv遺伝子を、抗体ディスプレイ用ファージミドベクターpCANTAB5E(GE社製)のSfi-I及びNot-I部位に挿入し、大腸菌JM109株を、エレクトロポーレーション法により形質転換した。その後、LB-Amp/Glu寒天培地(150μg/mL アンピシリン、1% グルコース、1.5% 寒天を含むLB培地)にて37℃で一晩培養し、生成したコロニーを全て回収した。
当該形質転換大腸菌を、波長600 nmの吸光度(OD600)= 0.2になるようにLB培地にて調製した後、ヘルパーファージM13K07(Invitrogen社製)(1012cfu)と混合し、 37℃で30分間静置培養し、さらに1LのLB-Amp/Kan液体培地(150μg/mLアンピシリン、100μg/mLカナマイシンを含むLB培地)にて、37℃で一晩培養することによりscFvディスプレイファージライブラリーを作製した。
最終的に、このscFvディスプレイファージライブラリーは、PEG/NaCl溶液にて濃縮して、約1x1012cfu/mL濃度になるようにPBSにて調製し、バイオパニングに使用した。
(1-6)可溶性scFv(一本鎖抗体)の作製
可溶性scFvは、大腸菌発現ベクターpET22b(+)(Novagen社製)を利用して作製した。目的とするscFv遺伝子を、sense primerとantisense primerにより増幅することで、5’末端にNot I、3’末端にNco Iの制限酵素配列を付加した。
Not IおよびNco Iにて処理したscFv遺伝子を大腸菌発現ベクターpET22b(+)に挿入した後、宿主大腸菌Rosseta(Novagen社)を形質転換した。形質転換した大腸菌は、LB-Amp/Glu寒天培地にて37℃で一晩培養し、コロニーを2 mLのLB-Amp液体培地にて25℃で8時間培養した。培養液2mlを200mlのLB-Amp液体培地に添加し、30℃にて16時間培養することにより培養上清に可溶性scFv(一本鎖抗体)を分泌させた。
培養上清からの可溶性scFvの精製は、Niセファロースを充填したカラム(Niカラム)(GE社製)用いたアフィニティー精製により行った。培養上清に3倍量の100mMリン酸緩衝液を加え、Niカラムに添加することにより可溶性scFvを結合させた。10mMイミダゾールを含む100mMリン酸緩衝液にてカラムを洗浄後、500mMイミダゾールを含む100mMリン酸緩衝液にて可溶性scFvを溶出させた。
次いで、溶出液をリン酸緩衝液で一晩透析することによりイミダゾールを除去し、可溶性scFv(一本鎖抗体)を取得した。
(1-7)抗体のビオチン標識
上記で調製した一本鎖抗体(scFv)、およびポリクローナル抗体(PoAb)のビオチン標識はPIERCE社のSulfo-NHS-LC-Biotin標識キットを用いて、奨励されているキット操作手順に従って行った。
2.測定方法
(2-1)血中抗体価の測定(ELISA)
各抗原を免疫したウサギ及びマウスから採取した血清の血中抗体価の確認は、下記のELISAにより行った。
精製したヒト型結核菌M. tuberculosisのLAM(青山B株由来、ナカライテスク)、または精製した非結核性抗酸菌M. aviumのLAM(血清型B株由来、ナカライテスク)をそれぞれ100μl/ml濃度になるようにPBSにて調製した。96ウエルマイクロプレートの各ウエルに各LAM溶液を100μL/ウエルの割合で添加し、4℃にて一晩反応後、1% スキムミルクを含むリン酸緩衝液中でブロッキングを行って、抗原プレートを作製した。
一次反応は、反応緩衝液(1% BSA[ウシ胎児アルブミン], 1%スキムミルク, 0.14M NaCl, 0.1% Tween 20を含むpH 7.8のトリス緩衝液)にて希釈したウサギ血清またはマウス血清を、上記抗原プレートの各ウエルに100μL添加し、25℃で1時間反応させることによって行った。次いで未反応抗体を3回洗浄することにより除去した。二次反応は、上記一次反応液に、反応緩衝液にて5,000倍希釈したHRP標識抗ウサギIgG(EPITOMICS社製)またはHRP標識抗マウスIgG(Zymed社製)を100μL添加し、25℃で1時間反応させることによって行った。次いで、未反応抗体を3回洗浄することにより除去した。
発色反応は、上記二次反応物に100μLのTMB[3,3’,5,5’-Tetramethylbenzidine]溶液を添加し、室温にて10分間放置することで行った。発色後、100μLの1N硫酸溶液を添加して反応を停止した。検出は、波長450-650 nmの吸光度(OD450-600nm)を測定することにより行った。
(2-2)バイオパニング
バイオパニングは、第1工程から第4工程からなる4つの工程により行った。
第1工程から第3工程として、免疫抗原(BCGワクチンまたはH37Ra死菌体)と結合するファージクローンの濃縮を行った。反応緩衝液(1% BSA, 1%スキムミルク, 0.14M NaCl, 0.1% Tween 20を含むpH 7.8のトリス緩衝液)にて1x1011 cfu/500μLに調製したscFvディスプレイファージライブラリー(「1.材料の調製」の(1-5)参照)をBCGワクチンまたはH37Ra死菌体1mgと混合し、25℃にて2時間反応した。反応後、遠心分離(10,000 rpm 10分)により集菌し、上清を除去した。集菌した菌体にPBSを添加し混合した後、再度遠心分離により集菌することで洗浄を行った。洗浄操作は5回行った。菌体に結合したファージは、500μLの溶出液(0.1% BSA を含む0.1N HCl溶液を1Mグリシン溶液にてpH2.2に調製)にて溶出後、500μLの中和液(1M トリス緩衝液pH9.1)を加えることにより中和した。中和したファージプールは、大腸菌JM109株に感染後、LB-Amp/Glu寒天培地にて37℃で一晩培養し、コロニーを回収した。LB培地にてOD 600 nm = 0.2になるように調製した形質転換大腸菌とヘルパーファージM13K07(Invitrogen社製)(1012cfu)を37℃で30分間静置培養した後、100 mLのLB-Amp/Kan液体培地を加えて、37℃で一晩培養した。ファージ培養液は、PEG/NaCl溶液にて濃縮して、約1x1012cfu/mL濃度にリン酸緩衝液にて調製した。菌体によるバイオパニングは3回行った。
第4工程として、M. tuberculosisの精製LAMまたはM. aviumの精製LAMを固相化した抗原プレート(精製LAM固相化マイクロタイタープレート)を用いたバイオパニングを行った。具体的には、第3工程で得られた菌体結合ファージプールを精製LAM固相化マイクロタイタープレートに添加し、25℃にて2時間反応後、未反応ファージを反応緩衝液にて10回洗浄することにより除去した。LAMに結合したファージを、100μLの溶出液にて溶出した後、100μLの中和液(1M トリス緩衝液pH9.1)を加えることにより中和した。中和したファージプールは、大腸菌JM109株に感染後、LB-Amp/Glu寒天培地にて37℃で一晩培養した。
参考例1 LAMに対する抗血清の作製
(1)LAMに対するポリクローナル抗体(PoAb)を作製するために、オリゴ化LAMをウサギに免疫した。オリゴ化LAMとして、具体的には、上記「1.材料の調製」の(1-1)に記載の方法で免疫抗原として作製したオリゴ化LAM-KLHを用いた。当該オリゴ化LAM-KLHを、アジュバント(フロイドの不完全アジュバント)と1:1(オリゴ化LAM-KLH:アジュバント[重量比])の割合で混合し、当該混合物を100μg、ウサギの皮下(2匹:Rab-1及び2)に投与し、その後、14日間隔で4回の免疫を行った。5回目の免疫終了後に採血を行い、上記「2.測定方法」の(2-1)に記載するELISA法に従って、ヒト型結核菌(M. tuberculosis)のLAM及び非結核性抗酸菌(M. Avium)のLAMに対する血中抗体価を測定した。
M. tuberculosisのLAMを固相化した抗原プレートで評価した結果、皮下免疫を行った2匹(Rab-1及び2)において、384,000倍希釈の血清で十分な抗体価の上昇が確認された。これらのウサギ(Rab-1及び2)の抗血清は、M. AviumのLAMを固相化した抗原プレートに対しても同様に結合反応を示し、ウサギ(Rab-1及び2)の抗血清はM. tuberculosisM. Aviumの両方のLAMに対して同等の反応性を示すことが確認された。つまり、オリゴ化LAM(オリゴ化LAM-KLH)を免疫抗原として調製したウサギの抗血清(ポリクローナル抗体)は、抗酸菌のLAM全般に反応し、結核菌LAMに対する特異性は認められなかった。
(2)次に、免疫抗原としてBCGワクチンおよびH37Ra死菌体をそれぞれ用いて、上記と同様に、14日間隔で4回ウサギに皮下免疫を行った。具体的には、上記「1.材料の調製」の(1-2)または(1-3)に記載の方法で調製したBCGワクチンまたはH37Ra死菌体をそれぞれ100mg含む生理食塩水1mlを1回免疫あたり全量、ウサギに皮下免疫した。
2回免疫後のウサギの血中抗体価を、上記と同様に、「2.測定方法」の(2-1)に記載するELISA法により測定した。具体的には、BCGワクチンおよびH37Ra死菌体をそれぞれ免疫したウサギから作製した血清の抗体価を、精製されたM. tuberculosis のLAMおよびM. avium のLAMをそれぞれ固相化した抗原プレートを用いて評価した。免疫抗原としてBCGワクチンを使用した場合の結果を図3(A)に、H37Ra死菌体を使用した場合の結果を図3(B)に示す。各図中、「−■−」は、M. tuberculosis のLAMに対する反応性、「−●−」は、M. avium のLAMに対する反応性を示す。
図3に示すように、BCGワクチンおよびH37Ra死菌体はいずれも濃度依存的にLAMに対して有意に抗体価が上昇することが確認された。また、M. tuberculosisM. avium のどちらのLAMに対しても同等の反応性を示した。
以上のように、オリゴ化LAM、BCGワクチンおよびH37Ra死菌体をそれぞれ免疫抗原とした場合、これらの抗原に対する抗血清(ポリクローナル抗体)はいずれも抗酸菌のLAM全般に反応し、結核菌LAMに対する特異性は認められなかった。
実施例1 LAMに対する一本鎖抗体(scFv)の作製
(1)LAMに対するscFvの作製
参考例1において、オリゴ化LAM、BCGワクチンまたはHR37Ra死菌体のそれぞれで免疫したウサギから採取した脾臓の細胞より、一本鎖抗体scFvを単離した。
具体的には、「1.材料の調製」の(1-5)に記載する方法に従って、各ウサギの脾臓からTotal RNAを調製し、これから合成したcDNAを鋳型として、表1に記載する各種のプライマーを用いてPCRを実施することにより、VH遺伝子増幅産物及びVL遺伝子増幅産物を調製した。
次いでVH遺伝子とVL遺伝子とをGSリンカー(GGGGSGGGGSGGGGS:配列番号11)を介して接合したscFv遺伝子(VH遺伝子/GSリンカー/VL遺伝子)を作製して、これから、「1.材料の調製」の(1-5)に記載する方法に従って、scFvディスプレイファージライブラリーを作製した。各ライブラリーのタイターは約106cfuであることから、106個の多様性を有したライブラリーであると推測できる。
BCGワクチンを免疫したウサギの脾臓細胞から作製したscFvディスプレイファージライブラリーは、抗原としてBCGワクチンを用いたバイオパニング(「2.測定方法」の(2-2)参照)を3回行った後に、4回目にM. tuburculosisのLAMを固相化したマイクロプレートを用いてバイオパニングを行った。
同様に、HR37Ra死菌体を免疫したウサギの脾臓細胞から作製したscFvディスプレイファージライブラリーは、抗原としてH37Ra死菌体によるバイオパニングを3回行った後に、4回目にM.tuburculosis のLAMを固相化したマイクロプレートによるバイオパニングを行った。
最終的に得られた各パニングプールより200クローンを無作為に選択し、LAM反応性クローンをスクリーニングした。その結果、各ライブラリーからそれぞれ約10クローン程度のLAM反応性クローンが得られた。
塩基配列を解析した結果、各ライブラリーから得られたクローンの塩基配列はほぼ一致していることが確認された。
以上の操作により、BCGワクチンを免疫したウサギの脾臓細胞のscFvディスプレイファージライブラリーおよびHR37Ra死菌体を免疫したウサギの脾臓細胞のscFvディスプレイファージライブラリーから、それぞれ1クローンのscFv(一本鎖抗体)を単離することに成功した。
HR37Ra死菌体を免疫したウサギの脾臓細胞から作製した一本鎖抗体scFv(Myco-scFv)のアミノ酸配列(配列番号30)及びBCGワクチンを免疫したウサギの脾臓細胞から作製した一本鎖抗体scFv(TB-scFv)のアミノ酸配列(配列番号12)を、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域;GSリンカー;及び軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域の位置とともに、図4に示す。
(2)scFvのLAM反応性
BCGワクチンを免疫したウサギの脾臓細胞から調製したscFvディスプレイファージライブラリーから得られた一本鎖抗体scFv(TB-scFv)、及びHR37Ra死菌体を免疫したウサギの脾臓細胞から調製したscFvディスプレイファージライブラリーから得られた一本鎖抗体scFv(Myco-scFv)のそれぞれについて、LAMに対する反応性を評価した。
具体的には、まず、各一本鎖抗体scFv(TB-scFv、Myco-scFv)を、「1.材料の調製」の(1-6)に記載する方法に従って可溶化して可溶性scFvを調製した。次いで、これらを同(1-7)に記載する方法に従ってビオチン標識し、精製したM. tuberculosisおよびM. aviumの LAMをそれぞれ固相化した抗原プレート(精製LAM固相化マイクロタイタープレート)に対する反応性を、「2.測定方法」の(2-1)に記載するELISA法により測定し評価した。
一本鎖抗体TB-scFvと、M. tuberculosisのLAM(−■−)およびM. aviumの LAM(−●−)のそれぞれとの反応性を図5に示す。図5に示すように、TB-scFvを、1000 ng/ml、500 ng/ml、250 ng/ml、125 ng/ml、62.5 ng/ml、31.25 ng/ml、15.625 ng/ml、及び7.8125 ng/mlの濃度でLAMを固相化した抗原プレートにて、M. tuberculosisのLAMおよびM. aviumの LAMを反応させた結果、M. tuberculosis のLAM(−■−)に対しては、TB-scFv 250 ng/ml濃度でOD値(450nm)が3を超えて反応が最大値に達しているのに対して、M. avium のLAM(−●−)には、TB-scFv 1000 ng/ml濃度でもOD値(450nm)は2程度であり反応が最大値に達していないことが確認された。一方、結果は示さないものの、Myco-scFvは、M. tuberculosistM. avium の両方のLAMに対して、ほぼ同等の反応性を示した。
以上の結果より、BCGワクチンを免疫原として調製された一本鎖抗体TB-scFvは、ヒト型結核菌M. tuberculosisのLAMに対して、非結核性抗酸菌M.aviumの LAMよりも強い反応性を有した特異的抗体であることが確認された。
実施例2 LAM検出ELISAの構築
参考例1及び実施例1で作製した抗体3種類(オリゴ化LAM免疫ウサギポリクローナル抗体(以下、「Myco-Poly」という)(参考例1)、H37Ra死菌体免疫ウサギモノクローナル抗体(Myco-svFv)及びBCGワクチン免疫ウサギモノクローナル抗体(TB-scFv)(以上、実施例1))の特徴を表2にまとめた。
これらの各抗体の反応特異性をもとに各抗体を組み合わせて、抗酸菌LAM検出用ELISAと結核菌 LAM検出用ELISAの2種類を構築した。
(1)抗酸菌LAM検出用ELISAの作製
抗酸菌LAM検出用ELISAの構築は、捕捉用抗体としてMyco-Polyをプレートに固相化し、また検出用抗体としてMyco-scFvをビオチン標識して使用した。
Myco-polyを10μg/ml濃度にリン酸緩衝液にて調製した。96ウエルマイクロプレートに100μL/ウエルの割合で添加し、4℃にて一晩反応後、1% スキムミルクを含むリン酸緩衝液中でブロッキングを行うことにより抗体プレートを作製した。
一次反応は、反応緩衝液(1% BSA, 1%スキムミルク, 0.14M NaCl, 0.1% Tween 20を含むpH 7.8のトリス緩衝液)にて希釈した抗酸菌を含み得る被験試料を、上記抗体プレートの各ウエルに100μLずつ添加し、25℃で1時間反応後、3回洗浄を行った。二次反応は、反応緩衝液にて5,000倍希釈したビオチン標識−抗Myco-scFvを、上記抗体プレートの各ウエルに100μLずつ添加し、25℃で1時間反応後、3回洗浄することにより未反応抗体を除去した。三次反応は、反応緩衝液にて10,000倍希釈したアビジン標識HRP(MILLIPORE社製)を100μL添加し、25℃で1時間反応後、3回洗浄することにより未反応アビジン標識HRPを除去した。
発色反応は、各ウエルに100μLのTMB溶液を添加して、室温にて10分間放置することによって行い、発色後、100μLの1N硫酸溶液を添加して反応を停止した。発色強度の検出は、波長450-650 nmの吸光度を測定することにより行った。
(2)結核菌LAM検出用ELISAの作製
結核菌LAM検出ELISAは、捕捉用抗体および検出用抗体ともにTB-scFvを用いて構築した。捕捉用抗体および検出用抗体としてTB-scFvを用いる以外は、上記(1)と同様にして、結核菌LAM検出ELISAを作製した。
(3)各LAM検出用ELISAの評価
(1)及び(2)でそれぞれ作製した抗酸菌LAM検出ELISAおよび結核菌LAM検出ELISAのLAMに対する反応性を、ヒト型結核菌(M. tuberculosis)の精製LAM及び抗酸菌(M. avium)の精製LAMを用いて評価した。
結果を図6に示す。図中、●は抗酸菌LAM検出ELISA のM. tuberculosis LAMに対する反応性、■は抗酸菌LAM検出ELISA のM. aviumに対する反応性、○は結核菌LAM検出ELISAのM. tuberculosis LAMに対する反応性、□は結核菌LAM検出ELISAのM. avium LAMに対する反応性を示す。
図6からわかるように、抗酸菌LAM検出用ELISAは、M. tuberculosisの LAM(−■−)およびM. aviumの LAM(―●―)ともに同等に検出することが可能であった。一方、結核菌LAM検出用ELISAは、結核菌(M. tuberculosis) のLAM に対しては100 ng/mlでOD値(450nm)が3以上になり反応がほぼ最大値に達しているのに対して、抗酸菌(M. avium)のLAMに対しては100ng/ml濃度でも殆ど反応性を示さないことが確認された。
実施例3 抗酸菌LAM検出用ELISA及び結核菌LAM検出用ELISAの抗酸菌および結核菌のLAMに対する抗体反応性の評価(抗酸菌臨床分離株使用)
実施例2で構築した抗酸菌LAM検出用ELISAと結核菌LAM検出用ELISAを用いて、抗酸菌および結核菌のLAMに対する抗体反応性を、図7に示す各種の抗酸菌臨床分離株を用いて評価した。
具体的には、抗酸菌臨床分離株として、M. tuberculosis 38株(図7のA表及びB表参照)の培養液、およびMAC症の起因菌であるM. avium 23株とM. intracellulare6株(図7のC表及びD表参照)の培養液を用いた。各抗酸菌臨床分離株を液体培地(10%ADC Enrichment : BD社製を含む7H9 Broth: BD社製)にてコンフレントまで37℃で培養し、培養液を-80℃にて凍結保存した。
凍結保存した培養液を融解した後、等量のY-PER(蛋白抽出試薬:Thermo社製)と混合した後、95℃にて10分間加熱処理を行った。遠心分離(10,000 rpm、10分)により集菌した後、上清を回収した。回収した上清に4倍量の反応緩衝液(1%スキムミルク、0.5%BSA、0.05%Tween 20、及び0.1% XL-IIを含むリン酸緩衝液)を加え、100μlを実施例2で構築した抗酸菌LAM検出用ELISAと結核菌LAM検出用ELISAに供して、LAMに対する抗体反応性を測定した。
ELISAによる測定結果は、標準品として用いた精製M. tuberculosisのLAMに対する抗体反応性と比較することにより値付けを行った。結果を図7に示す。
図7に示すように、抗酸菌LAM検出用ELISA(図7の各表中「myco」記載の列参照)では、M.tuberculosis 38株、M. avium 23株、M.intracellulare 6株全てに反応性を示した。一方、結核菌LAM検出用ELISA(図7の各表中「TB」記載の列参照)は、M.tuberculosis 38株中34株と、高い割合で反応性を示したが、M. avium 23株およびM. intracellulare 6株には全く反応性を示さなかった。
このように、実施例2で構築した抗酸菌 LAM検出用ELISAは、抗酸菌のLAMとの反応性に優れており、抗酸菌のLAMを広く検出できることが判明した。これに対して、実施例2で構築した結核菌 LAM検出用ELISAは、株間における反応性に違いがあり、抗酸菌LAM検出用ELISAに比べて反応が特異的であった。つまり、実施例2で構築した結核菌 LAM検出用ELISAは、結核菌のLAMを特異的に検出し、感度は90%、特異度は100%と良好な結果を示した。
以上の結果より、実施例2で構築した抗酸菌 LAM検出用ELISA(捕捉抗体:Myco-Poly、検出用抗体:Myco-scFv)によれば、広く抗酸菌のLAMを検出することが可能であり、また実施例2で構築した結核菌 LAM検出用ELISA(捕捉抗体:TB-scFv、検出用抗体:TB-scFv)によれば、非結核性抗酸菌のLAMと区別して、結核菌のLAMを特異的に検出することが可能であることが確認された。
実施例4 LAM検出用イムノクロマト法の構築
ELISAによって評価した抗体の組み合わせを用いて、抗酸菌LAM検出用と結核菌LAM検出用のイムノクロマトテストの構築を行った。
(1)抗酸菌LAM検出用イムノクロマト法
抗酸菌LAM検出用イムノクロマトテストの構築には、捕捉用抗体としてMyco-Polyをニトロセルロース膜に固相化し、また検出用抗体としてMyco-scFvを金コロイド標識して使用した。
ニトロセルロース膜(Millipore社製:キャピラリフロータイム240)に、Myco-Poly(捕捉用抗体)を3.0mg/mL(リン酸緩衝液)の濃度で塗布し、50℃で20時間乾燥した。吸収パッドをニトロセルロース基板に貼り付けたイムノクロマトストリップは、ラミネートシールを貼り、4mm幅に切断し1テスト用のストリップとした。
Myco-scFvの金コロイド標識には、40 nmのサイズの金コロイドを用いた。金コロイド(OD=1)にMyco-scFvを2.0 μg/mL 濃度で添加し、20分間、室温で反応させた。抗体結合時の緩衝液は2mM TES[N-Tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethanesulfonic acid](pH7.5)を用いた。金コロイド標識後、2mM Borax[Sodium Tetraborate Decahydrate],1.5% BSA(pH9.0)で300rpm、5分間、室温で反応することによりブロッキングを行った。ブロッキング操作後、4620×g、20分間、4℃で遠心分離を行い、上清を除去した。得られた沈渣を、金コロイド標識抗体希釈溶液(10mM Borax、5% Sucrose、1% BSA(pH9.0))に懸濁した後、0.1 μmフィルターでろ過した。
測定方法は、抽出液(72 mMリン酸2水素ナトリウム二水和物、4.5 % アルブミンウシ血清由来、0.9 % カゼイン、0.09 % Triton X-305、0.1 % アジ化ナトリウム、10.0 % Y-PER、水酸化ナトリウム適量、塩酸適量、 pH7.0)で、抗酸菌を含み得る被験試料を希釈した後、金コロイド標識抗体溶液を適量添加し、これに上記で作製したストリップを挿入して、被験試料を展開した。展開開始後7分でストリップを移し替えて、界面活性剤(0.1% Tween 20)を含有するリン酸緩衝液にて洗浄操作を8分間行った後、陽性・陰性の判定を目視で行った。
(2)結核菌LAM検出用イムノクロマト法
結核菌 LAM検出用イムノクロマトは、捕捉用抗体および検出用抗体ともにTB-scFvを用いて構築した。それ以外の構築方法および測定方法は、上記(1)の抗酸菌LAM検出用イムノクロマトテストの構築方法及び測定方法と同様にして行った。
(3)各LAM検出用イムノクロマト法の評価
(1)及び(2)でそれぞれ作製した抗酸菌LAM検出用イムノクロマトおよび結核菌LAM検出用イムノクロマトのLAMに対する反応性を、精製したM. tuberculosisのLAMおよびM. aviumのLAMを用いて評価した。
結果を図8に示す。
M. tuberculosis のLAMを、抗酸菌LAM検出用及び結核菌LAM検出用のイムノクロマト法にて測定した結果、いずれもテストにおいても、ラインを目視で確認することができた(myco:抗酸菌LAM検出用、TB:結核菌LAM検出用)(図A及びB)。同様に、M. avium のLAMを両検出系にて測定した結果、 抗酸菌LAM検出用イムノクロマトテスト(myco)は、図C及びDに示すように、M. tuberculosis のLAMを測定した場合と同等のラインを目視で確認することができた。一方、結核菌 LAM検出用イムノクロマト法(TB)では、1000ng/mlの高濃度においてもラインは検出されなかった(図D)。
以上の結果より、BCGワクチンを免疫原として調製した一本鎖抗体TB-scFvは、イムノクロマトテストにおいてもヒト型結核菌(M. tuberculosis)のLAMを特異的に検出することが可能であることが示された。
以上の実施例1〜4に示すように、今回、結核菌のLAMに特異的に反応する一本鎖抗体(scFv(TB-scFv))を単離し、当該TB-scFvでLAMを測定することで、結核菌のLAMを特異的に検出できる測定系の確立に成功した。TB-scFvを用いた測定系はELISAやイムノクロマトテストに応用でき、簡便・迅速な結核感染症の診断を可能とすると考えられる。
[実施例5〜12]
3.材料の調製
(3-1)BCGワクチン、及び免疫抗原の調製
BCGワクチンとして、日本ビーシージー製造(株)製の凍結乾燥BCGワクチン(承認番号20300AMZ00767000)を用いた。免疫には、当該凍結乾燥BCGワクチン100mg(湿重量)に生理食塩水1 mlを加えて混合したものを使用した。
(3-2)ニワトリscFvファージライブラリーの作製
免疫抗原としてBCGワクチンを用いてニワトリを免疫した(上記(3-1)及び実施例6参照)。免疫終了後、ニワトリから脾臓を摘出し、RPMI(無血清)培地中で組織を溶解し、Total RNAを抽出した。Total RNAの抽出はRNA抽出キット(QIAGEN社)を用いて、操作手順書に従って行った。またTotal RNAからのcDNA合成は、cDNA合成キット(Invitrogen社)を用いて、操作手順書に従って行った。
合成したcDNAを鋳型として、表3に記載するプライマーを用いてVH遺伝子断片およびVL遺伝子断片を増幅した。具体的には、VH遺伝子断片はSfi1-CκVH FとGSL-CκVH Rのプライマーセットにより、VL遺伝子断片はGSL-CκVL FとNot1-CκVL Rのプライマーセットによりそれぞれ増幅した。
得られた遺伝子増幅産物は、1.5%アガロースゲル電気泳動により分離し、目的分子量の遺伝子増幅産物をゲルより抽出し、精製した。
精製したVH遺伝子産物およびVL遺伝子産物をGSリンカー(配列番号40)により接合した。VH遺伝子産物の3’末端に相同性配列を有するCκVL-GSL-VH R(配列番号46)とVH遺伝子を混合し、PCRを5サイクル行うことでVH遺伝子の3’末端にGSリンカーを付加した。同様に、VL遺伝子産物の5’末端に相同性配列を有するCκVH-GSL-VL F(配列番号45)とVL遺伝子を混合し、PCRを5サイクル行うことでVL遺伝子の5’末端にGSリンカーを付加した。GSリンカーを付加したVH遺伝子とVL遺伝子を混合し、PCRを10サイクル行うことでVH遺伝子/GSリンカー遺伝子/VL遺伝子を接合したscFv遺伝子(ニワトリscFv遺伝子)を作成した。最終的に制限酵素Sfi IおよびNot Iを用いて切断した。
次いで制限酵素により処理したscFv遺伝子を、抗体ディスプレイ用ファージミドベクターpCANTAB5EのSfi-I及びNot-I部位に挿入し、大腸菌JM109株にエレクトロポーレーション法により形質転換した後、LB-Amp/Glu寒天培地(150μg/mL アンピシリン、1% グルコース、1.5% 寒天を含むLB培地)にて37℃で一晩培養し、生成したコロニーを全て回収した。
当該形質転換大腸菌を、波長600 nm の吸光度(OD600 nm)が 0.2になるようにLB培地にて調製した後、ヘルパーファージM13K07(1012cfu)と混合し、37℃で30分間静置培養した後、さらに1LのLB-Amp/Kan液体培地(150μg/mLアンピシリン、100μg/mLカナマイシンを含むLB培地)にて、37℃で一晩培養することにより、ニワトリのscFvディスプレイファージライブラリーを作製した。
最終的に、このscFvディスプレイファージライブラリーは、PEG/NaCl溶液にて濃縮して、約1x1012cfu/mL濃度になるようにPBSにて調製し、バイオパニングに使用した。
(3-3)ニワトリscFvライブラリーを用いた抗原バイオパニング
抗原バイオパニングは、第1工程から第4工程からなる4つの工程により行った。
第1工程から第3工程として、免疫抗原(BCGワクチン)と結合するファージクローンの濃縮を行った。反応緩衝液(1% BSA, 1%スキムミルク, 0.14M Nacl, 0.1% Tween 20を含むpH 7.8のトリス緩衝液)にて1x1011 cfu/500μLに調製したニワトリscFvディスプレイファージライブラリー(「3.材料の調製」の(3-2)参照)をBCGワクチン1mgと混合し、25℃にて2時間反応した。反応後、遠心分離(10,000 rpm 10分)により集菌し、上清を除去した。集菌した菌体にPBSを添加し混合した後、再度遠心分離により集菌することで洗浄を行った。洗浄操作は5回行った。菌体に結合したファージは、500μLの溶出液(0.1% BSA を含む0.1N HCl溶液を1Mグリシン溶液にてpH2.2に調整)にて溶出後、500μLの中和液(1M トリス緩衝液pH9.1)を加えることにより中和した。中和したファージプールは、大腸菌JM109株に感染後、LB-Amp/Glu寒天培地にて37℃で一晩培養し、コロニーを回収した。LB培地にてOD600 nm= 0.2に調製した形質転換大腸菌とヘルパーファージM13K07(1012cfu)を37℃で30分間静置培養した後、100 mLのLB-Amp/Kan液体培地を加えて、37℃で一晩培養した。ファージ培養液は、PEG/NaCl溶液にて濃縮して、約1x1012cfu/mL濃度にリン酸緩衝液にて調製した。菌体によるバイオパニングは3回行った。
第4工程として、TB-scFvを固相化したプレートにM. tuberculosisの精製LA
Mを反応させ、TB-scFVとLAMの複合体を用いたバイオパニングを行った。TB-scFvを5μg/ml濃度で固相化したマイクロプレートにM. tuberculosisの精製LAMを10μg添加して、25℃で1時間反応させた。洗浄後に、第3工程で得られた菌体結合ファージプールを添加し、25℃にて2時間反応させ、次いで、未反応ファージを反応緩衝液にて10回洗浄することにより除去した。TB-scFvとLAMの複合体に結合したファージを、100μLの溶出液にて溶出した後、100μLの中和液(1M トリス緩衝液pH 9.1)を加えることにより中和した。中和したファージプールは、大腸菌JM109株に感染後、LB-Amp/Glu寒天培地にて37℃で一晩培養した。
(3-4)LAM結合ニワトリscFvクローンの選択
LAM結合scFvは、LAMに特異的に反応するファージクローンの選択をファージELISA法により行った。上記(3-3)で説明するニワトリscFvライブラリーを用いた抗原バイオパニングの第4工程で得られたファージプールを単一コロニーとして培養し、得られた単一コロニーを50μLのLB-Amp培地にて37℃で8時間培養した。これに50μLのヘルパーファージM13K07(1012cfu/mL)液を感染させた後、400μLのLB-Amp/Kan液体培地を加えて37℃で一晩培養し、単一ファージクローンの培養液を作製した。
ファージELISAは、TB-scFvを5μg/ml濃度で固相化したマイクロプレートに、M. tuberculosisの精製LAMを10μg添加して25℃で1時間反応させ、TB-scFvとLAMの複合体を形成させて、当該複合体に反応するクローンをスクリーニングすることにより行った。一次反応は、90μLの反応緩衝液(1% BSA, 1%スキムミルク, 0.05% Tween 20を含むリン酸緩衝液)と10μLのscFvディスプレイファージ培養液をLAM固相化プレートに添加し、25℃で1時間反応することで行い、次いで未反応ファージを3回洗浄して除去した。二次反応は、上記一次反応液に、上記と同じ反応緩衝液にて5,000倍希釈したHRP標識抗M13ファージp8蛋白質抗体を100μL添加し、25℃で1時間反応させることで行った。次いで未反応抗体を3回洗浄して除去した。発色反応は、二次反応液に、100μLのTMB溶液を添加し、室温にて10分間反応させることで行い、発色した後、100μLの1N硫酸溶液にて反応を停止した。検出は、波長450-650 nm の吸光度(OD 450-650 nm)を測定することにより行った。
LAMに反応性を有するクローンをPCRすることによりscFv遺伝子を増幅し、ダイレクトシークエンス法により遺伝子配列を決定した。
(3-5)二価抗体を用いたELISAの評価に使用する検体
二価抗体を用いた抗酸菌LAM検出用ELISA及び結核菌LAM検出用ELISAの評価は、抗酸菌臨床分離株(M. tuberculosis 38株、M. avium 23株、M. intracellulare 6株)に加えて、BCG、口腔内細菌6種類(N. asteroids,N.farcinica, S. globisporus, C albicans, A. israelii, T. paurometabolum)、および喀痰検体(54例)を用いて行った。培養菌体および喀痰検体からのLAM抽出は全て同一条件で行った。サンプルに最終濃度が0.4MになるようにNaOHを添加して混合した後、30分間煮沸した。煮沸後にリン酸緩衝液を添加して中和した。
4.測定方法
(4-1)二価抗体の作製
一本鎖抗体scFvから二価抗体への改変は一般的手法により行った。ウサギ定常領域を有する哺乳動物細胞発現ベクター(商品名;pFUSEss-CHIg-rG*03およびpFUSE2ss-CLIg-rk1,InvivoGen社製)に、VH領域遺伝子およびVL領域遺伝子をMyc0-scFv(配列番号30)、TB-scFv(配列番号12)、およびG3-scFv(配列番号39)よりそれぞれクローニングし、VH発現ベクターおよびVL発現ベクターを作製した。VH発現ベクターとVL発現ベクターを混合し、CHO細胞に導入した。当該ベクター導入細胞を4日間培養した後に培養上清を回収し、培養上清からProtein A(Biorad社製)を用いて、それぞれ二価抗体(2価Myco-scFv、2価TB-scFv、および2価G3-scFv)を単離精製した。
(4-2)二価抗体のビオチン標識
二価抗体のビオチン標識はPIERCE社のSulfo-NHS-LC-Biotin標識キットを用いて、キットに付属の操作手順書の記載に従って行った。ビオチン標識化抗体は、ELISA測定系の構築に用いた。
(4-3)二価抗体を用いた抗酸菌LAM検出用ELISAの構築
二価抗体による抗酸菌LAM検出用ELISAは2価TB-scFv、2価G3-scFv、および2価Myco-scFv(「二価抗体の作製」の(4-1)参照)を用いて構築した。
2価TB-scFvと2価G3-scFvを同量混合し、5μg/ml濃度になるようにリン酸緩衝液にて調製した。これを96ウエルマイクロプレートに100μL/ウエルの割合で添加し、4℃にて一晩反応した後、1% スキムミルクを含むリン酸緩衝液中でブロッキングを行うことにより上記二価抗体を固相化した抗体プレートを作製した。
一次反応は、上記の抗体プレートのウエルに、反応緩衝液(1% BSA, 1%スキムミルク, 0.14M Nacl, 0.1% Tween 20を含むpH 7.8のトリス緩衝液)にて希釈したサンプルを100μL添加し、25℃で1時間30分反応させることにより行い、次いで3回の洗浄を行った。二次反応は、上記一次反応液に、上記と同じ反応緩衝液にて5,000倍希釈したビオチン標識2価Myco-scFvを100μL添加し、25℃で1時間30分反応させることで行い、次いで、未反応抗体を3回洗浄して除去した。三次反応は、上記二次反応物に、上記と同じ反応緩衝液にて10,000倍希釈したアビジン標識HRPを100μL添加し、25℃で1時間30分反応させることで行い、次いで未反応アビジン標識HRPを3回洗浄して除去した。発色反応は、三次反応物に100μLのTMB溶液を添加し、室温にて10分間反応させることで行った。発色後、100μLの1N硫酸溶液にて反応を停止した。検出は、波長450-650 nmの吸光度(OD 450-650 nm)を測定することにより行った。
(4-4)二価抗体を用いた結核菌LAM検出用ELISAの構築
二価抗体による結核菌LAM検出用ELISAは、捕捉用抗体に2価TB-scFvを用い、検出抗体にはビオチン標識した2価Myco-scFvを用いた。捕捉用抗体として2価TB-scFv、検出抗体としてビオチン標識2価Myco-scFvを用いる以外は、上記(4-3)に記載する抗酸菌LAM検出用ELISAと同様にして、結核菌LAM検出用ELISAを構築した。
実施例5 ニワトリへの免疫、及びLAMに対するニワトリ抗血清の抗体価評価
ニワトリへの免疫は、「3.試料の調製」(3-1)に記載する方法で調製したBCGワクチン(100mg湿重量/1ml生理食塩水)を全量、皮下免疫することで行った。14日間隔で4回の免疫を行った後、ニワトリの血中抗体価をELISAにより評価した。
精製したヒト型結核菌M. tuberculosisのLAM(青山B株由来、ナカライテスク)または、精製したM. aviumのLAM(血清型B株由来、ナカライテスク)を100μl/ml濃度になるようにPBSにて調整した。これを96ウエルマイクロプレートに100μL/ウエルの割合で添加し、4℃にて一晩反応後、1% スキムミルクを含むリン酸緩衝液中でブロッキングを行うことにより抗原プレートを作製した。
一次反応は、反応緩衝液(1% BSA, 1%スキムミルク, 0.14M Nacl, 0.1% Tween 20を含むpH 7.8のトリス緩衝液)にて希釈したニワトリ血清を、上記抗原プレートの各ウエルに100μLずつ添加し、25℃で1時間反応させることにより行い、次いで未反応抗体を3回洗浄して除去した。二次反応は、上記一次反応液に、上記と同じ反応緩衝液にて5,000倍希釈したHRP標識抗ニワトリIgYを100μL添加し、25℃で1時間反応させることにより行い、次いで未反応抗体を3回洗浄して除去した。発色反応は、100μLのTMB溶液を添加し、室温にて10分間反応させることによって行い、発色後、100μLの1N硫酸溶液を添加して反応を停止した。検出は、波長450-650 nmの吸光度(OD450-650 nm)を測定することにより行った。
結果を図9に示す。図中、「―■―」は、ニワトリ抗血清の精製M. tuberculosisLAMに対する反応性、「―●―」は、ニワトリ抗血清の精製M. avium LAMに対する反応性を示す。図9に示すように、BCGワクチンによるニワトリへの免疫により、LAMに対する抗体価が十分上昇することが確認された。また、結核菌のLAM及び抗酸菌のLAMのいずれに対しても同等の反応性を示した。
実施例6 LAMに対するニワトリscFv(一本鎖抗体)の作製
(1)LAMに対するニワトリscFv(一本鎖抗体)の作製
BCGワクチンを免疫したニワトリの脾臓細胞より一本鎖抗体scFvを単離した。具体的には、「3.材料の調製」の(3-2)に記載する方法に従って、ニワトリの脾臓からTotal RNAを調製し、これから合成したcDNAを鋳型として、表3に記載する各種のプライマーを用いてPCRを実施することにより、VH遺伝子増幅産物及びVL遺伝子増幅産物を調製した。次いで、VH遺伝子とVL遺伝子とをGSリンカー(配列番号40)を介して接合したニワトリ一本鎖抗体(VH遺伝子/GSリンカー/VL遺伝子)を作製して、これからscFvディスプレイファージライブラリーを作製した。各ライブラリーのタイターは約106cfuであることから、106個の多様性を有したライブラリーであると推測できる。
作製したscFvディスプレイファージライブラリーを用いて、BCGワクチンによるバイオパニングを3回行った。4回目のパニングは、TB-scFvとは異なるエピトープを認識する一本鎖抗体scFvを単離することを目的に、TB-scFvを固相化したマイクロプレートにM. tuburculosisのLAM(青山B株由来)を反応させて形成させた複合体を用いた。TB-scFvを固相化したマイクロプレートにM. tuburculosisのLAM溶液を反応させ、3回洗浄後にBCGパニングファージプールを添加し、2時間25℃にて反応した。反応後、3回洗浄し、LAM結合ファージを溶出した。最終的に各パニングプールより200クローンを無作為に選択し、LAM反応性クローンをTB-scFvとLAMの複合体を用いてスクリーニングを行った。各ライブラリーからそれぞれ約10クローン程度のLAM反応性クローンが得られた。塩基配列を解析した結果より、各ライブライーから得られたクローンの配列は殆ど一致していることが確認された。
以上のことより、BCGワクチンで免疫したニワトリの脾臓から調製したscFvディスプレイファージライブラリーから、1クローンの一本鎖抗体scFv(G3-scFv)を単離することに成功した。ニワトリ脾臓ライブラリーから単離した一本鎖抗体G3-scFvのアミノ酸配列(配列番号39)を、重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3領域、GSリンカー、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3領域の位置とともに、図10に示す。
(2)ニワトリscFv(一本鎖抗体)のLAM反応性
上記で作製したG3-scFvの反応性を精製M. tuberculosisのLAMおよびM. avium のLAMを固相化したプレートを用いて評価した。具体的には、G3-scFvを「1.材料の調製」の(1-6)に記載する方法に従って可溶化して可溶化G3-scFvを調製した。次いで同(1-7)に記載する方法に従ってビオチン標識し、精製したM. tuberculosisのLAMおよびM. avium のLAMをそれぞれ固相化した抗原プレート(精製LAM固相化マイクロタイタープレート)に対する反応性をELISA法により測定して評価した。
その結果、G3-scFvは、結核菌のLAM及び抗酸菌のLAMのいずれに対しても同等の反応性を示した。この結果から、ニワトリの一本鎖抗体G3-scFvは結核菌LAMを含む抗酸菌LAM全般に反応性を有する抗体であると考えられた。
実施例7 二価抗体を用いたLAM検出用ELISAの構築
実用化を考慮して、「二価抗体作製」の(4-1)に記載する方法に従って、実施例1及び6で作製した3種類の一本鎖抗体scFv(Myco-svFv、TB-scFv、G3-scFv)を二価抗体に改変し、当該二価抗体の反応特異性をもとに、抗酸菌LAM検出用ELISAと結核菌 LAM検出用ELISAの2種類を構築した。具体的には、抗酸菌LAM検出用ELISAは、捕捉用抗体として2価TB-scFvと2価G3-scFvを混合してプレートに固相化し、検出用抗体として2価Myco-scFvをビオチン標識したものを使用した。結核菌LAM検出用ELISAは、捕捉用抗体として2価TB-scFvをプレートに固相化し、検出用抗体として2価Myco-scFvをビオチン標識したものを使用した。詳細は、「4.測定方法」の(4-3)及び(4-4)に記載した通りである。
構築した抗酸菌LAM検出用ELISA及び結核菌LAM検出用ELISAの評価は、BCG培養菌体から抽出したLAMを測定することで行った(図11)。その結果、図11に示すように、抗酸菌LAM検出用ELISA(―■―)および結核菌LAM検出用ELISA(―●―)により、いずれも同等の感度でBCGのLAMを検出することが可能であった。
実施例8 二価抗体を用いたLAM検出ELISAの検出感度評価
二価抗体を用いたELISAの感度評価を行うため、BCG培養菌体を106cfu/mlから61 cfu/mlまで希釈し、その希釈液の一部より遺伝子を抽出して遺伝子増幅検査(NAAT)を行い、一部よりLAMを抽出して抗酸菌LAM検出用ELISAを行った。
抗酸菌LAM検出用ELISAの結果を図12に示す。図12中の表に示すように、遺伝子増幅検査(NAAT)の検出感度は、約500 cfu/mlであるのに対して、抗酸菌LAM検出用ELISAの検出感度は約250 cfu/mlであった。遺伝子増幅検査が標的としている繰り返し配列は、菌株により繰り返し数に違いがあるため、菌株により検出感度に差が出るとされている。BCGの繰り返し配列は少ないので遺伝子検査の感度が低く出ているが、一般的に繰り返し配列が多い菌株で検出感度が100 cfu/mlとされている。
以上の結果より、二価抗体を用いた本発明の抗酸菌LAM検出用ELISAは、遺伝子増幅検査より高いか、もしくは同等の検出感度を有する非常に高感度な免疫測定法であることが証明された。
実施例9 二価抗体を用いたLAM検出ELISAの交差反応性試験
口腔内細菌にはLAMの構成成分と類似した構造の膜抗原を有する種類が存在する。喀痰検体中の抗酸菌のLAMや結核菌のLAMを検出する場合、これら口腔内細菌との交差反応性が非常に問題となり、喀痰を用いた抗酸菌及び結核菌の検出免疫測定法を確立するうえで障害の一つとなっている。
ここでは、LAM検出ELISAの口腔内細菌への交差反応性を確認するため、N. asteroids(略称「Na」), N. farcinica(略称「Nf」), S. globisporus(略称「Sg」), C albicans(略称「Ca」), A. israelii(略称「Ai」), 及びT. paurometabolum(略称「Tp」)をそれぞれ液体培養し、106 cfu/mlおよび108cfu/ml(Caのみ107cfu/ml)に調整した後、BCG培養菌体と同様にしてLAMを抽出し、LAM検出用ELISAにて測定した。図13に抗酸菌LAM検出用ELISAの結果を示す。
図13からわかるように、コントロールに用いたBCGの反応性が105cfu/ml濃度で最大値に達しているのに対して、各口腔内細菌は108cfu/mlの高濃度菌体量でも全く反応性を示さなかった。結核菌LAM検出用ELISAでも全く同様の結果を示した。
以上の結果は、我々が取得した一本鎖抗体scFv(Myco-svFv、TB-scFv、G3-scFv)は抗酸菌および結核菌のLAMに対して高い親和性を有しており、これらを二価抗体として組合わせて用いることで抗酸菌(結核菌を含む)を、遺伝子増幅検査と同等の高感度化に検出することが可能であること、かつ口腔内細菌とは全く交差反応性を有しない非常に選択的で特異的な抗体および測定法であることが証明された。
実施例10 二価抗体を用いたLAM検出用ELISAの臨床分離株による評価
二価抗体を用いた抗酸菌LAM検出用ELISA及び結核菌LAM検出用ELISAを、抗酸菌臨床分離株を用いて評価した。
臨床分離株としてM. tuberculosis 38株、およびMAC症の起因菌であるM. avium 23株とM. intracellulare6株を用い、これらの培養菌体よりLAMを抽出し、二価抗体を用いた抗酸菌LAM検出用ELISA及び結核菌LAM検出用ELISAを行った。結果を図14に示す。図14のAは、結核菌臨床分離株(M. tuberculosis )38株に対する抗酸菌LAM検出用ELISA(黒棒)及び結核菌LAM検出用ELISA(白棒)の結果を示す。Bは、非結核性抗酸菌29株(M. avium 23株とM. intracellulare6株)に対する抗酸菌LAM検出用ELISA(黒棒)及び結核菌LAM検出用ELISA(白棒)の結果を示す。
抗酸菌LAM検出用ELISAおよび結核菌LAM検出用ELISAともに、M. tuberculosis 38株、M. avium 23株、M. intracellulare6株全てに反応性を示した。但し、抗酸菌LAM検出用ELISAは、結核菌および非結核性抗酸菌に同等に反応しているのに対し、結核菌LAM検出用ELISAは非結核性抗酸菌に対して低い反応性を示した。
結核菌と非結核性抗酸菌の別をLAM検出用ELISAの結果だけで鑑別することを目的に、抗酸菌LAM検出用ELISAの値と結核菌LAM検出用ELISAの値との比(抗酸菌LAM検出用ELISAの値/結核菌LAM検出用ELISAの値)を算出した(図15)。その結果、結核菌については両測定値の比が3倍を超えるのは38株中わずかに1株のみであった。一方、非結核性抗酸菌については、29株中23株が3倍以上の比を示した。
以上の結果は、LAM用検出用ELISAは株間差の影響をほとんど受けずにLAMを検出することが可能であること示している。さらに、両測定系の比(抗酸菌LAM検出用ELISAの値/結核菌LAM検出用ELISAの値)を算出することで、結核菌と非結核性抗酸菌を感度97%、特異性80%の良好な成績で鑑別(識別)することが可能あり、このことから本発明の方法が、「抗酸菌全般を検出でき、かつ、結核菌と非結核性抗酸菌との識別も可能」なLAM検出用ELISAとして、世界で初めての免疫測定系であることが証明された。
実施例11 二価抗体を用いたLAM検出ELISAの臨床喀痰検体による評価
実施例7で構築した二価抗体を用いたLAM検出用ELISAの性能を評価するため、54例の臨床喀痰検体を用いて評価を行った。評価は直接塗抹検査(Smear)および遺伝子増幅検査(NAAT)の両方から行った。直接塗抹検査および遺伝子増幅検査の結果を表4にまとめた。
直接塗抹検査で陽性例(3+、2+、1+、Scanty)は43例、遺伝子増幅検査で陽性例(+)は45例であった。これらのうち、両検査で陽性となったのが42例、両検査で陰性となったのが8例、さらに遺伝子増幅検査のみで陽性となったのが3例であった。
臨床喀痰検体からLAMを抽出し、抗酸菌LAM検出用ELISA及び結核菌LAM検出用ELISAによりそれぞれ測定した結果を表5及び図16に示す。表5には、抗酸菌LAM検出用ELISA及び結核菌LAM検出用ELISAの検出率も併せて示す。
表5に示すように、抗酸菌LAM検出用ELISAおよび結核菌LAM検出用ELISAの結果は殆ど同じであった。塗抹検査で1+以上の菌体量が確認されている群においては、ELISAの反応性が殆どの検体で最大値に達している。菌体量が少ないScantyに関しても、50%の検体においてELISAの反応性が最大値に達している。さらに、遺伝子増幅検査でのみ陽性と判定された菌体量が非常に少ない3例においても、全てが遺伝子増幅検査で陰性と判断された検体よりも高い値を示した。抗酸菌LAM検出用ELISAでは、遺伝子増幅検査で陽性と判断された全ての検体からLAMが検出できたが、遺伝子増幅検査で陰性と判断された検体からは1例もLAMを検出できなかった。すなわち、抗酸菌LAM検出用ELISAの感度及び特異性は遺伝子増幅検査と比較した場合100%一致した。結核菌LAM検出用ELISAにおいても、遺伝子増幅検査が陽性でかつSmear testでscantyと判定された1例のみが遺伝子増幅検査と不一致であった以外は全て遺伝子増幅検査と一致した。また不一致であった1例もカットオフ値をわずかに下回っただけであった。
以上の結果は、本発明のLAM検出用ELISAが、遺伝子増幅検査と同等の感度及び特異性で抗酸菌感染症患者をスクリーニングし選別できる検査であることを示している。
次に、LAM検出用ELISAの値が菌量と相関することを確認するため、希釈測定を行った。
喀痰検体よりの抽出溶液を5倍、25倍、及び125倍に希釈し、精製LAMを標準品として同時に測定し、LAM濃度を算出した。結果を図17に示す。
検体を遺伝子増幅検査および塗抹検査(Smear test)をもとに菌量により群分けし(I: 遺伝子増幅検査および塗抹検査ともに陰性、II: 遺伝子増幅検査陽性および塗抹検査陰性、III:遺伝子増幅検査陽性および塗抹検査scanty、IV:塗抹検査1+、V:塗抹検査2+、VI: 塗抹検査3+)、LAM濃度(pg/ml)と比較した。その結果、図17に示すように、菌量が少ない群から多い群(I→VI)にかけてLAM濃度の平均値も上昇しており、菌量とLAM濃度とは正の相関を示した。以上の結果より、LAM濃度を定量することで菌量を予測できることが示された。
これらの結果は、本発明の方法が遺伝子増幅検査と同等の感度及び特異性を有し、さらに菌量を決定できる検査であることを示しており、結核の治療モニタリング等に応用できることが証明された。
実施例12 LAMの安定性評価
喀痰検体を輸送する場合、感染性の問題で厳重な管理のもと輸送することが必要となる。この場合、コストが高くなり、さらに利用できる地域が限定されてくる。喀痰検体を採取後に滅菌した場合、通常の輸送をすることが可能となる。抗酸菌を完全に滅菌するには30分以上の煮沸や加圧蒸気滅菌(オートクレーブ等)による処理が必要である。このような処理を行った場合、LAMの構造が変化することが予測される。我々は、上記で構築したLAM検出ELISAが、過酷な滅菌処理に対して耐性であり、正しくLAMを検出できるか否かを検討した。
BCG培養菌体をオートクレーブ処理(121℃、20分)した菌体(オートクレーブ処理菌)、100℃にて30分間煮沸処理した菌体(煮沸処理菌)、及び未処理菌より、それぞれLAMを抽出し、抗酸菌LAM検出用ELISAにて測定を行った。結果を図18に示す。未処理菌(白棒)と、煮沸処理菌(黒棒)およびオートクレーブ処理菌(灰色棒)とを比較すると、どちらも全く同じ値であり、煮沸やオートクレーブのような過酷な処理を受けた菌体においても、未処理菌と同様に、LAMを測定することが可能であることが示された。
さらに、最も過酷な処理であるオートクレーブ処理(121℃、20分)した菌体を用いて保存安定性の評価を行った。オートクレーブ処理したBCG菌体を25℃にて7日間放置した後、抽出したLAMについて抗酸菌LAM検出用ELISAを行った。その結果(黒棒)と、オートクレーブ処理直後のBCG菌体から抽出したLAMに対する抗酸菌LAM検出用ELISAの結果(白棒)を、図19に示す。図19からわかるように、両者にほとんど差異はなく、オートクレーブ処理後に7日間放置した菌体においても処理直後の菌体と同等の結果が得られており、少なくとも滅菌処理後1週間は測定可能であることが示された。
以上の結果より、本測定系は加圧蒸気滅菌(オートクレーブ)のような過酷な処理を行った菌体を対象としても測定することが可能で、処理後少なくとも1週間は安定的に測定できることが確認できた。
したがって、特別な検体輸送システムが整備されていない地域においても、郵便等の一般的輸送システムによる検体発送が可能となり、時間的にも1週間程度の猶予があるため検体輸送の遅延も問題にならないと考えられる。
配列番号9及び10はGSリンカー配列の単位アミノ酸配列を、配列番号11及び40は本発明で使用したリンカー配列のアミノ酸配列を示す。配列番号13〜16は抗体重鎖可変領域のセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号17は抗体重鎖可変領域のアンチセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号18〜20及び24は抗体軽鎖可変領域のセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号21〜23及び25は抗体軽鎖可変領域のアンチセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号26はGSリンカーのセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号27はGSリンカーのアンチセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号28は制限酵素(Sfi-I)サイトのプライマーのアミノ酸配列:配列番号29は制限酵素(Not-I)サイトのプライマーのアミノ酸配列を示す(表1参照)。
また配列番号41は抗体重鎖可変領域のセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号42は抗体重鎖可変領域のアンチセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号43は抗体軽鎖可変領域のセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号44は抗体軽鎖可変領域のアンチセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号45はGSリンカーのセンスプライマーのアミノ酸配列:配列番号46はGSリンカーのアンチセンスプライマーのアミノ酸配列を示す(表3参照)。

Claims (20)

  1. 抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(A)及び(C)のモノクロ一ナル抗体を含む抗酸菌検出用キット:
    (A)下記(a)〜(c)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(d)〜(f)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
    (c)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
    (e)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
    (f)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
    (C)下記(m)〜(o)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(p)〜(r)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:
    (m)配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
    (n)配列番号48で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
    (o)配列番号49で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
    (p)配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
    (q)配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
    (r)配列番号52で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
  2. 抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(B)のモノクローナル抗体をさらに含む、請求項1に記載の抗酸菌検出用キット:
    (B) 下記(g)〜(i)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(j)〜(l)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなることを特徴とする、モノクロ一ナル抗体:
    (g)配列番号31で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
    (h) 配列番号32で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
    (i)配列番号33で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
    (j)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
    (k)配列番号35で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
    (l)配列番号36で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
  3. 抗酸菌のうち結核菌を特異的に検出するための試薬キットであることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗酸菌検出用キット。
  4. 抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(A)及び(C)のモノクロ一ナル抗体、または抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する、下記(A)、(B)及び(C)に記載する、モノクロ一ナル抗体を含む、結核診断剤:
    (A)下記(a)〜(c)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(d)〜(f)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
    (c)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
    (e)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
    (f)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
    (C)下記(m)〜(o)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(p)〜(r)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカ一を介して接合してなるモノクロ一ナル抗体:
    (m)配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
    (n)配列番号48で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
    (o)配列番号49で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
    (p)配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
    (q)配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
    (r)配列番号52で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
    (B) 下記(g)〜(i)の重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域と、下記(j)〜(l)の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域とが、リンカーを介して接合してなることを特徴とする、モノクロ一ナル抗体:
    (g)配列番号31で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
    (h) 配列番号32で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
    (i)配列番号33で示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、
    (j)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
    (k)配列番号35で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
    (l)配列番号36で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
  5. 下記の工程を有する、抗酸菌の検出方法:
    (1)請求項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料(被験試料)と接触させる工程、及び
    (2)請求項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌を測定する工程。
  6. 下記の工程を有する、抗酸菌の検出方法:
    (1)請求項1に記載する(A)のモノクローナル抗体及び請求項2に記載する(B)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料(被験試料)と接触させる工程、及び
    (2)請求項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)及び(B)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌を測定する工程。
  7. 抗酸菌のうち結核菌を特異的に検出する方法であることを特徴とする、請求項5に記載する抗酸菌の検出方法。
  8. 下記の工程を有する、被験試料中の抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する方法:
    (1)請求項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料(被験試料)と接触させる工程、及び
    (2)請求項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する工程。
  9. 下記の工程を有する、被験試料中の抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する方法:
    (1)抗酸菌のリポアラビノマンナンに対して結合性を有する請求項1に記載する(A)のモノクローナル抗体、及び請求項2に記載する(B)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、被験者の生体試料と接触させる工程、及び
    (2)請求項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)及び(B)のモノクローナル抗体に捕捉された抗酸菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、被験試料中に存在する抗酸菌リポアラビノマンナンを測定する工程。
  10. 前記測定方法が、
    (2)の測定工程において抗酸菌リポアラビノマンナンを検出する工程を有する、抗酸菌リポアラビノマンナンの定性方法であるか、または
    (2)の測定工程において抗酸菌リポアラビノマンナンを定量する工程を有する、抗酸菌リポアラビノマンナンの定量方法である、請求項8または9に記載の測定方法。
  11. 抗酸菌リポアラビノマンナンのうち結核菌リポアラビノマンナンを特異的に測定する方法である、請求項8に記載する方法。
  12. 下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
    抗結核薬投与前後の各被験試料を対象として
    (1)請求項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、抗結核薬投与前後の各被験試料と接触させる工程、
    (2)請求項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された結核菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の各被験試料に存在する結核菌リポアラビノマンナンを測定する工程、及び
    (3)抗結核薬投与前の被験試料に結核菌リポアラビノマンナンが検出され、且つ抗結核薬投与後の被験試料に結核菌リポアラビノマンナンが検出されない場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果ありと、決定する工程。
  13. 下記の工程を有する、抗結核薬の結核治療効果を判定する方法:
    (1)請求項1に記載する(A)のモノクローナル抗体を捕捉抗体として、抗結核薬投与前後の各被験試料と接触させる工程、
    (2)請求項1に記載する(C)のモノクローナル抗体を検出用抗体として、(1)工程で(A)のモノクローナル抗体に捕捉された結核菌のリポアラビノマンナンとの結合反応を指標として、抗結核薬投与前後の各被験試料中の結核菌リポアラビノマンナンを定量する工程、及び
    (3)抗結核薬投与後の被験試料中の結核菌リポアラビノマンナン量(投与後測定値)と、抗結核薬投与前の被験試料中の結核菌リポアラビノマンナン量(投与前測定値)を対比して、投与後測定値が投与前測定値よりも低い場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果ありと、それ以外の場合に、投与した抗結核薬について結核治療効果なしと、決定する工程。
  14. 抗結核薬の結核治療効果判定用キットである、請求項1または2に記載する抗酸菌検出キット。
  15. 毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた、抗酸菌検出具であって、当該吸液片が
    (1)被験試料を吸収採取する試料採取部、
    (2)抗酸菌のリポアラビノマンナンと特異的に反応する、標識されてなる請求項1または2に記載する(A)〜(C)のいずれかのモノクローナル抗体を担持した標識抗体部、
    (3)下記に示す、テスト結果表示部を備えた判定部、
    (a) 抗酸菌のリポアラビノマンナンと特異的に反応する、非標識の請求項1または2に記載する(A)〜(C)のいずれかのモノクローナル抗体を固定したテスト結果表示部、
    (4)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
    を備えることを特徴とする、抗酸菌検出具。
  16. 上記(3)判定部が、
    (a) テスト結果表示部と間隔をおいて、さらに下記に示すコントロール表示部を備えていることを特徴とする、請求項17記載の抗酸菌検出具:
    (b) 標識されてなる請求項1または2に記載する(A)〜(C)のいずれかのモノクローナル抗体と反応する非標識−抗体を固定したコントロール表示部
    を備えた判定部である、請求項15に記載する抗酸菌検出具。
  17. 前記(A)〜(C)のモノクローナル抗体が一価又は二価の抗体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗酸菌検出キット。
  18. 前記(A)のモノクロ一ナル抗体が配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるものである、請求項1または2に記載の抗酸菌検出用キット。
  19. 前記(B)のモノクローナル抗体が配列番号39で示されるアミノ酸配列からなるものである、請求項2に記載の抗酸菌検出用キット。
  20. 前記(C)に記載するモノクローナル抗体が配列番号30で示されるアミノ酸配列からなるものである、請求項1または2に記載の抗酸菌検出用キット。
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