JP6616987B2 - インピーダンス測定装置およびインピーダンス測定方法 - Google Patents
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Description
同期検波によるインピーダンス測定装置については、以下の先行技術文献がある。
図6は、従来の同期検波によるインピーダンス測定装置を説明する図である。
測定交流電流iは、定電流源10から、試料11(DUT:device under testの略)に供給される。なお、ここでは、試料11は、内部抵抗Rxをもつ電池である。抵抗(Rs)12は、測定交流電流iの電流値を検出するための電流検出用抵抗であり、定電流源10、試料11に直列に挿入されている。符号15は、測定交流電流iに応じて試料11に現れた検出信号(電圧信号)を増幅する増幅器である。同様に、符号16は、電流検出用抵抗(Rs)12で検出された電圧信号を増幅する増幅器である。増幅器15で増幅された電圧検出信号v1は、測定周波数を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)17を通して同期検波器20に入力される。また、測定交流電流iに同期する基準信号v2は増幅器16で増幅され同期検波器20に入力される。同期検波器20は、電圧検出信号v1を基準信号v2で同期検波し、その検波出力は、交流成分を除去するためのローパスフィルタ(LPF)22に入力され交流成分が除去されて、アナログデジタルコンバータ(ADC)23に入力される。アナログデジタルコンバータ23は、同期検波出力をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、図示されない演算装置に入力され、試料11の交流インピーダンス値、等価回路のパラメメータ等が演算され、これらの値は、図示しない表示装置等に表示され、あるいはプリントされて出力される。
定電流源10からは、測定交流電流として、i=Isin(ω1t)の正弦波が試料11に印加される。試料11の両端には、電池の内部抵抗Rxに対応した電圧が発生し、その電圧は増幅器15で増幅されてv1=iRxとして出力される。また、増幅器16からは、電流検出抵抗Rsに対応したv2=iRsが出力され、同期検波器20で同期検波される。ここで、v1、v2は、
v1=Vsin(ω1t)=IRxsin(ω1t)
v2=iRs=IRssin(ω1t)=ksin(ω1t)
である。なお、kは定数とする(IとRsは一定であるとする)
同期検波出力は、
v1×v2=kIRxsin(ω1t)sin(ω1t)
=1/2・kIRx[cos(0)−cos(2ω1t)]
交流成分をローパスフィルタで遮断すると、アナログデジタル変換器23の入力は、
VAD=1/2・kIRxcos(0)=1/2・kIRx
となり、これにより、試料の抵抗値Rxは、
Rx=2/k・(VAD/I)
により求めることができる。
図7のv1、v2、v1×v2、vADの波形がそれぞれ、図6の信号v1、v2、v1×v2、vADの信号波形になる。
例えば、測定周波数が1kHzであり、ノイズの周波数が1.01kHzであった場合、直流ではない低い交流成分は、除去できても少しであって、すべてを除くことはできない。また、バンドパスフィルタも測定周波数である中心周波数の近傍の周波数のノイズを除くことはできないから、測定周波数近傍のノイズを除去することは難しい。
例えば、ローパスフィルタは、図8に示すような周波数特性を有しており、高い周波数については十分取り除くことができるが、低い周波数は除去できない部分が残る。
本発明は、このような、測定交流電流と同一あるいは近い周波数のノイズ成分から生ずる影響を小さくして、測定誤差を少なくし、安定した測定が可能なインピーダンス測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
本実施の形態では、まず、測定周波数によって、試料に生ずるノイズレベルを測定する第一の測定ステップを実行し、次に測定したノイズレベルによって、ノイズの影響の少ない測定周波数によって試料のインピーダンスを測定する第二の測定ステップを実行する。
スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとする。そして、定電流源10から、測定しようとする周波数f(sin(ωit))を任意に指定して測定交流電流を電流検出用抵抗12に印加し、試料11には、測定交流電流を印加しない。電流検出用抵抗12に現れた電圧信号は、増幅器16によって増幅され、その出力信号は、分岐されて一方は、そのまま基準信号として同期検波器20に入力される。分岐された出力の他方の基準信号は、位相調整器19で、一方の基準信号に比べて位相が90°異なる基準信号とされて、もうひとつの同期検波器21に入力される。
測定用交流電流が印加されていない状態の試料に現れる検出信号は、増幅器15で増幅され、通過周波数が異なる複数のバンドパスフィルタ171〜17nに入力され、スイッチSW3で定電流源10が入力している測定周波数を通過させるバンドパスフィルタ17iの出力が選択されその出力が同期検波器20と21の双方に入力される。同期検波器20、21の出力は、スイッチSW4で順次選択されて、ローパスフィルタ22に入力される。ローパスフィルタ22は、スイッチSW4で順次選択された同期検波器20と21の出力のローパスフィルタ22を通して交流成分を除去してアナログデジタル変換器23に出力する。
定電流源10で測定周波数を設定して同期検波で参照する基準信号v2、v3が生成される。v3は、位相調整器19によって、v2とは位相差として90°(π/2)が与えられている。
v2=IRssin(ωNt)・・・・・(測定交流電流iと同位相 Nは1〜n)
v3=IRssin(ωNt+90°)・(測定交流電流iとの位相差90°)
試料11の両端から検出したv1をバンドパスフィルタ17のうち測定周波数sin(ωNt)を中心周波数とするバンドパスフィルタ17iを通した後の信号をv1’とする。バンドパスフィルタ171〜17nでは、スイッチSW3で測定周波数に適したバンドパスフィルタを選択して、v1を通過させる。
v1’=GBPFVxcos(ωxt+θ+θBPF)
GBPFは、バンドパスフィルタのゲイン、Vxは、試料(Rx)によって生ずるノイズの電圧、θは、ノイズの位相角、θBPFは、バンドパスフィルタによって生ずる位相角とする。
同期検波器20、21で、v1’をv2、v3で同期検波することにより、
同期検波器20の検波出力v1’×v2、同期検波器21の検波出力v1’×v3は、以下のように表される。
v1’×v2=1/2・GBPFvxIRs{cos(ωxt+θ+θBPF−ωNt
)}−cos(ωxt+θ+θBPF+ωNt)
v1’×v3=1/2・GBPFvxIRs{cos(ωxt+θ+θBPF−ωNt
−90°)}−cos(ωxt+θ+θBPF+ωNt+90°)
この同期検波されたv1’×v2、v1’×v3をローパスフィルタ22に通すことにより、測定周波数成分が除去され、ノイズ成分が残る。アナログデジタル変換された結果は、すべてノイズであり、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタで除去できない成分となる。
同期検波されたv1’×v2、v1’×v3の二乗和の平方根がノイズレベルとなる。
図2(a)は、ノイズの周波数が測定周波数f1と等しい場合であり、ローパスフィルタの出力には、直流成分のノイズが出力されている例である。図2(b)は、ノイズの周波数が測定周波数f2に近い場合で、ローパスフィルタの出力には、交流成分も現れている。図2(c)は、ノイズの周波数が測定周波数f3と相当に離れている場合であり、ローパスフィルタの出力は、ほぼゼロレベルである。
ここで、バンドパスフィルタの切替については、定電流源10の測定周波数の切替に対応するバンドパスフィルタを切り替えるときに、設定された複数の周波数に対応して順次手動で切り替えることも、順次自動で切り替えることも可能である。
そして、試料11に測定交流電流を与えてインピーダンスを測定するときは、図2の例であると、ノイズレベルの大きいf1、f2を避け、ノイズレベルの小さい周波数を選択する。
本発明では、測定対象の試料11にノイズが現れるような場合でも、ノイズレベルが小さく、ノイズの影響が小さい測定周波数によりインピーダンスの測定ができるため、測定誤差を小さくできる。また、ノイズにより測定値にばらつきが生ずることが少なくなるので、出力が安定し、また測定時間を短縮できる。
さらに、UPSのバッテリなど、検出信号にノイズが重畳しているような試料でも、ノイズの影響の小さい周波数を選んで測定することが可能である。
図4の等価回路は、電池の等価回路の一例を示す図である。電池の等価回路のモデルのひとつは、インダクタンスL1と抵抗Rsの直列回路と、抵抗R1とキャパシタンスC1の並列回路とが接続された回路で表すことができる。このとき、周波数の低い領域では、抵抗Rsと抵抗R1に流れる電流が大きく、周波数が高くなると、インダクタンスL1の占めるインピーダンス部分が大きく、キャパシタンスC1のインピーダンスが小さくなる。
コールコールプロット図は、測定試料に定電流源から与える周波数を走査して、電池のインピーダンスを測定する。このとき、電池の負荷装置で負荷を変更しながらインピーダンスを測定する場合や、UPSの電池を測定する場合、ノイズの影響を受けて、測定するインピーダンス値にばらつくと、図5(a)のようなものとなり、正確なコールコールプロット図が描けない可能性がある。
本発明でノイズの影響の小さい測定周波数を選んで電池のインピーダンスを測定できるので、測定できる周波数の数は少なくなるかもしれないがノイズの影響を小さくできるため、ノイズの影響の小さい測定インピーダンス値を用いることにより、図5(b)のように滑らかなコールコールプロット図を描くことが可能である。
11 試料(DUT)
12 電流検出用抵抗(Rs)
15、16 増幅器
17、171〜17N バンドパスフィルタ(BPF)
19 位相調整器
20、21 同期検波器
22 ローパスフィルタ(LPF)
23 アナログデジタル変換器
SW1〜SW4 スイッチ
Claims (6)
- 測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給する交流源と、
前記測定信号に同期する基準信号を生成する基準信号生成部と、
前記試料に現れる検出信号を前記基準信号で同期検波する同期検波部と、
前記同期検波部で同期検波された信号の直流成分を抽出して前記試料の交流インピーダンスを測定する手段と
を備えたインピーダンス測定装置であって、
前記基準信号生成部は、
前記試料に測定信号を供給しない状態で、所定の測定用周波数であって、位相が直交する二つの基準信号を生成する手段を備え、
前記同期検波部は、
測定信号を供給しない状態の試料に現れる検出信号を前記二つの基準信号でそれぞれ同期検波する手段を備えた
ことを特徴とするインピーダンス測定装置。 - 請求項1記載のインピーダンス測定装置であって、
前記同期検波部は、
通過周波数が異なる複数のバンドパスフィルタと、
前記交流源が与える測定信号の周波数により前記複数のバンドパスフィルタを選択する選択手段と
を備えることを特徴とするインピーダンス測定装置。 - 請求項1または2記載のインピーダンス測定装置であって、
前記交流源は、前記試料のインピーダンス測定を行うときは、前記試料に現れたノイズレベルが低い周波数の測定信号を供給する
ことを特徴とするインピーダンス測定装置。 - 請求項1から3のいずれか1項記載のインピーダンス測定装置であって、
前記試料は、電池であって、前記交流源は、定電流源である
ことを特徴とするインピーダンス測定装置。 - 測定対象の試料に所定周波数の測定信号を供給し、前記試料に現れる検出信号を前記測定信号に同期する基準信号で同期検波し、同期検波された信号の直流成分を抽出して前記試料の交流インピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、
前記試料に測定信号を供給しない状態で前記試料に現れる検出信号を直交する位相の第一と第二の基準信号でそれぞれ同期検波を行って、測定信号が供給されない状態で前記試料に現れるノイズレベルを測定する第一の測定ステップを複数周波数の測定信号で実行し、
前記第一測定ステップで測定した複数周波数の測定信号のうち、ノイズレベルの小さい周波数を選択して前記試料に測定信号を供給して前記試料のインピーダンスを測定する第二の測定ステップを実行する
ことを特徴とするインピーダンス測定方法。 - 請求項5に記載のインピーダンス測定方法であって、
前記試料に現れる検出信号を通過させる複数のバンドパスフィルタを備え、
前記第一の測定ステップで、複数のバンドバスフィルタを選択して、複数周波数の測定信号について、ノイズレベルを測定し、
前記第二の測定ステップで、ノイズレベルの少ない周波数のバンドパスフィルタを選択して前記試料のインピーダンス測定を実行する
ことを特徴とするインピーダンス測定方法。
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