〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を説明する。図1乃至図7は、本実施形態を示す図である。
まず、筋力補助装具1の構成を説明する。
図1は、筋力補助装具1の背面図である。図2は、筋力補助装具1の正面図である。
筋力補助装具1は、図1及び図2に示すように、衣服であるオーバーオール2と、オーバーオール2の後身頃21の外側に設けたコルセット締付力調節具3と、オーバーオール2の外側から腰部の回りに装着されるコルセット4とにより構成される。
オーバーオール2は、後身頃21と前身頃22の左右の上端間を左右のショルダーベルト23、24により繋がっている。なお、オーバーオール2を着用した装着者は左右のショルダーベルト23、24の長さを調節して自身の体にオーバーオール2をフィットさせる。前身頃22の幅方向中央には、チャック25が設けられている。
次に、コルセット締付力調節具3の構成を説明する。
図3は、コルセット締付力調節具3の正面図である。
コルセット締付力調節具3は、図1乃至図3に示すように、身丈方向に沿って延びる棒状の第1本体部31Aと第1伸縮部31Bで構成される第1作動体31、及び第2本体部32Aと第2伸縮部32Bで構成される第2作動体32を備える。第1本体体31Aと第2本体体32Aは、例えば複数本の細いファイバーを束ねて棒状に形成したものである。勿論、第1本体体31Aと第2本体部32Aは棒状に限定されるものではなく、板状等の形状であってもよい。第1作動体31と第2作動体32は、オーバーオール2の後身頃21の幅方向中央を境にして左右対称に配置される。第1作動体31は、第1本体部31Aの一端である上端にゴムなどの伸縮性部材で構成された帯状の第1伸縮部31Bが取り付けられている。また、第2作動体32は、第2本体部32Aの一端である上端にゴムなどの伸縮性部材で構成された帯状の第2伸縮部32Bが取り付けられている。
第1伸縮部31Bと第2伸縮部32Bの先端部にそれぞれ上スナップボタンS1の凹部33を取り付けている。後身頃21の上部27に第1伸縮部31Bと第2伸縮部32Bの上スナップボタンS1の凹部33が係合する上スナップボタンS1の凸部34が幅方向中央を境にして左右対称に設けられている。
また、第1本体部31Aと第2本体部32Aは、一端部である上端部側から他端部である下端部側に向かうに従って幅方向外側に延びる末広がり形状に形成される。特に、第1本体部31Aと第2本体部32Aは、上端部で略直線形状に形成されて平行に配置され、下端部で大きく左右に拡がっている。
第1本体部31Aと第2本体部32Aの下端部の先端部には、それぞれ第2スナップボタンS2の凹部35を取り付けている。後身頃21の臀部26に対応する位置に上方が開口した下部取り付け部材であるポケット部37が配置され、第2スナップボタンS2の凹部35が係合する第2スナップボタンS2の凸部36を幅方向の中央を境にして左右対称にポケット部37内に設けている。第1本体部31Aと第2本体部32Aの上部は、筒状の例えば布製のホルダー38内に挿通され、幅方向外側への移動を防止される。
第1作動体31と第2作動体32は、後身頃21の上部27に設けた左右の第1スナップボタンS1の凸部34に第1伸縮部31Bと第2伸縮部32Bに設けた第1スナップボタンS1の凹部33を係合する。さらに、第1本体部31Aと第2本体部32Aの下端部に設けた左右の第2スナップボタンS2の凹部35をそれぞれ後身頃21の臀部26に設けた第2スナップボタンS2の凸部36にポケット部37内で係合する。
すなわち、第1作動体31と第2作動体32は、第1スナップボタンS1と第2スナップボタンS2により後身頃21に身丈方向に沿って取り外し可能に取り付けられる。なお、第1スナップボタンS1、第2スナップボタンS2に代えて後身頃21に直接縫い込んでもよい。
第1作動体31と第2作動体32は、例えばカーボンファイバー製で、高剛性、高強度を有するとともに、弾性を有する。装着者が第1作動体31と第2作動体32を取り付けたオーバーオール2を着た状態で上体を前屈した場合、上端部と下端部の間で弧状に曲げ変形可能な弾性を有する。また、曲げ変形部分でコルセット4の締付力を調節可能とするための後述する引張部材を押しても変形、破損しない剛性及び強度を有する。第1作動体31と第2作動体32は、オーバーオール2と共に上体の前屈を検出する上体前屈検出手段をなしている。また、第1作動体31と第2作動体32は上体の前屈で形成される隙間dにより締付力調節作動手段を構成する。
次に、コルセット締付力調節具3の作動原理を説明する。
図4は、コルセット締付力調節具3の側面図で、(a)は装着者の直立姿勢での作動体の変形状態を示し、(b)は装着者の上体が前屈した前屈姿勢での作動体の変形状態を示す。
オーバーオール2を着用した装着者Pが、図4(a)に示すように上体P1が真っ直ぐな直立姿勢の場合、コルセット締付力調節具3の第1作動体31と第2作動体32は、真っ直ぐに立っている。逆に言えば、上体P1は第1作動体31と第2作動体32の復元力で直立姿勢となるように矯正されている。
次に、図4(b)に示すように上体P1を前屈した場合を説明する。コルセット締付力調節具3の第1作動体31と第2作動体32は、第1本体部31Aと第2本体部32Aが第1伸縮部31Bと第2伸縮部32Bを介して後身頃21の上部27に第1スナップボタンS1を介して取り付けられている。また、第1本体部31Aと第2本体部32Aの下端部が装着者Pの臀部P3を覆う後身頃21の臀部26に対応する位置に配置されるポケット部37で第2スナップボタンS2を介して取り付けられている。
したがって、装着者Pが前屈すると、第1作動体31と第2作動体32は、上端部の第1スナップボタンS1と下端部の第2スナップボタンS2とを力点とし、臀部P3の出っ張った部分P4を支点として背中側を凹面として湾曲する。装着者Pの上体P1が前屈すると、第1スナップボタンS1と第2スナップボタンS2との距離が長くなるので、第1伸縮部31Bと第2伸縮部32Bが伸びて前屈を可能とする。その際、腰部P2と第1作動体31と第2作動体32との間に隙間dが形成される。隙間dは前屈角度が大きくなるに従って広くなる。隙間dにより、コルセット4の更なる締付力を調節する。コルセット4の後述する袋状空間55内に、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lを腰当部40に対して後方に押し出す締付力調節作動手段を配置することにより、コルセット4の締付力を調節可能としている。
第1本体部31Aと第2本体部32Aの下端部が幅方向外側にそれぞれ広がっているため、前屈の際に上体P1を捩じっても、第1本体部31Aと第2本体部32Aの捩じれが抑制されて第1本体部31Aと第2本体部32Aの捩じれが小さく、確実に隙間dが形成される。
次に、コルセット4の構成を説明する。
図5は、コルセット4の実施形態を示し、(a)はコルセット4の内面側を示す正面図、(b)はコルセット4の外面側を示す背面図である。図6は、コルセット4にコルセット締付力調節具3を取り付けた状態を後身頃21側から見た斜視図である。図7は、コルセット4にコルセット締付力調節具3を取り付けた状態を前身頃22側から見た斜視図である。なお、コルセット4を腰部に装着した際に、身体側に向かう面を正面(又は内側)、身体側と反対側の面を背面(又は外側)とする。
コルセット4は、図5(a)に示すように、全体が帯状に形成されていて、伸縮性メッシュ素材(パワーネット)の腰当部40の右側に伸縮性メッシュ素材(パワーネット)の右締付力発生シート41Rと非伸縮性メッシュ素材(パワーネット)の右ベルト42Rが順に連設されており、腰当部40の右端部と右締付力発生シート41Rの左端部とが縫い合わされている。さらに、右締付力発生シート41Rの右端部と右ベルト42Rの左端部が縫い合わされている。
一方、腰当部40の左側に、伸縮性メッシュ素材の左締付力発生シート41Lと非伸縮性メッシュ素材の左ベルト42Lが順に連設されており、腰当部40の左端部と左締付力発生シート41Lの右端部とが縫い合わされている。さらに、左締付力発生シート41Lの左端部と左ベルト42Lの右端部が縫い合わされている。左ベルト42Lの内側先端部には、面ファスナー43のフック状に起毛したフック部43Aが所定範囲に設けられている。また、図5(b)に示すように、右ベルト42Rの外側先端部には、面ファスナー43のループ状に密集して起毛された起毛部43Bが所定範囲に設けられている。なお、各縫い合わせ部分にはバイアステープが縫合されている。
コルセット4の腰当部40の内側を身体の腰部に当てて腰に巻き、右ベルト42Rを先ず腹部に回し、次いで左ベルト42Lを右ベルト42Rの上に回す。その際、右ベルト42Rの起毛部43Bの上にフック部43Aを押し付けることで面ファスナー43が右ベルト42Rと左ベルト42Lを締結する。コルセット4を装着する装着者が直立した姿勢で左ベルト42Lと右ベルト42Rを引っ張って腰当部40、左締付力発生シート41L、右締付力発生シート41Rの伸縮による締付力(張力)を調節し、面ファスナー43のフック部43Aを起毛部43Bに押し付ける操作で装着者が適切と感じる締付力で腰部を締め付けることができる。なお、右ベルト42Rの先端部と左ベルト42Lの先端部同士を係合解除可能な係合手段として面ファスナー43を用いているが、ホック等を用いてもよい。
一方、コルセット4の外側は、腰当部40と重なるように、非伸縮性メッシュ素材の右締付力調節シート44Rが配置され、さらに右締付力調節シート44Rの外側に重なるように非伸縮性メッシュ素材の左締付力調節シート44Lが配置される。右締付力調節シート44Rは、一端(右端)が右締付力発生シート41Rと腰当部40との縫合部に縫合される。すなわち、右ベルト42Rを固定し、右締付力調節シート44Rを引っ張ると、右締付力発生シート41Rが伸びて張力が増し、さらなる締付力が付与される。逆に言えば、右ベルト42Rと右締付力調節シート44Rは伸びず、右締付力発生シート41Rの張力の反力を受けることになる。
右締付力調節シート44Rは、一端側のみを右締付力発生シート41Rの左端に縫い付けられており、他端部には、上下に二股に分かれた2つの右引張片45R、46Rが形成されている。各右引張片45R、46Rの先端部に長楕円リング形状の右小判カン47R、48Rが取り付けられている。
次に、左締付力調節シート44Lは、一端(左端)が左締付力発生シート41Lと腰当部40との縫合部に縫合される。すなわち、左ベルト42Lを固定し、左締付力調節シート44Lを引っ張ると、左締付力発生シート41Lが伸びて張力が増し、さらなる締付力が付与される。逆に言えば、左ベルト42Lと左締付力調節シート44Lは伸びず、左締付力発生シート41Lの張力の反力を受けることになる。
左締付力調節シート44Lは、一端側のみを左締付力発生シート41Lの右端に縫い付けられており、他端部には、上下に二股に分かれた2つの左引張片45L、46Lが形成されている。各左引張片45L、46Lの先端部に長楕円リング形状の左小判カン47L、48Lが取り付けられている。左締付力調節シート44Lは、左締付力発生シート41Lとの縫合部側である一端側に、右締付力調節シート44Rの右引張片45R、46Rがそれぞれ通る通し孔49、50が形成されている。
二つの右小判カン47R、48Rには、右連結カン52Rを通した右連結ベルト51Rの一端部151Rと他端部251Rがそれぞれ通されている。右連結ベルト51Rの一端部151Rと他端部251Rの端は腰当部40と左締付力発生シート41Lとの縫い付け部に縫い付けられている。また、二つの左小判カン47L、48Lには、左連結カン52Lを通した左連結ベルト51Lの一端部151Lと他端部251Lがそれぞれ通されている。左連結ベルト51Lの一端部151Lと他端部251Lの端は腰当部40と右締付力発生シート41Rとの縫い付け部に縫い付けられている。
したがって、右連結カン52Rには右締付力発生シート41Rの張力の半分が加わり、残りの半分は右連結ベルト51Rの一端部151Rと他端部251Rの端に加わる。同様に左連結カン52Lには左締付力発生シート41Lの張力の半分が加わり、残りの半分は左連結ベルト51Lの一端部151Lと他端部251Lの端に加わる。
右連結カン52Rに右締付力調節ベルト53Rが連結され、左連結カン50Lに左締付力調節ベルト53Lが連結されている。右締付力調節ベルト53Rの先端部には長さ調節バックル54の凹係合部54Rが取り付けられ、左締付力調節ベルト53Lの先端部には長さ調節バックル54の凸係合部54Lが取り付けられている。凸係合部54Lは長さ調節カンを備え、左締付力調節ベルト53Lとの取り付け長さを調節可能とする。
コルセット4を装着者の腰部に右ベルト42Rと左ベルト42Lを面ファスナー43で所定の締付力により装着した状態で、さらに長さ調節バックル54の凸係合部54Lと凹係合部54Rを緊張状態に調節して係合する。なお、長さ調節バックル54で右連結ベルト53Rと左連結ベルト53Lの先端部を取り外し可能に結合しているが、長さ調節バックル54に代えて面ファスナーを用いてもよい。また、右締付力調節ベルト53Rの先端部を左ベルト42Lに面ファスナーを利用して締結し、左締付力調節ベルト53Lの先端部を右ベルト42Rに面ファスナーを利用して締結するようにしてもよい。
本実施形態において、上下方向の長さが略等しい右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lを腰当部40で交差させているため、右締付力調節シート44Rの右引張片45R、46Rを通し孔49、50に通している。また、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lを介して右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lをそれぞれ均一に引っ張れるように、右引張片45R、46Rと左引張片45L、46Lに右連結ベルト51R、左連結ベルト51Lを連結している。そして、右連結ベルト51Rに右締付力調節ベルト53Rを連結し、左連結ベルト51Lに左締付力調節ベルト53Lを連結している。
右締付力調節ベルト53Rと右連結ベルト51Rにより、上下の右引張片45Rと右引張片46Rが所定位置に保持されている。このため、右締付力発生シート41Rの引っ張り力が右締付力調節シート44Rの上下方向において略均一に伝達される。したがって、右締付力発生シート41Rは上下方向において略均一に後方に向けて押し出され、右締付力発生シート41Rが高効率にさらなる締付力を発生することができる。左締付力発生シート41Lについても同様である。
コルセット4は、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lは交差するように腰当部40の外側に配置される。そして、腰当部40と右締付力調節シート44Rとの間に上下が開口した袋状空間55が形成される。袋状空間55内に、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lを腰当部40に対して外方に押し出す締付力調節作動手段を設け、前記締付力調節作動手段を動作させることで、コルセット4の締付力を大きくすることができる。
コルセット締付力調節具3の第1本体部31Aと第2本体部32Aは袋状空間55内を貫通する。その際、第1作動体31の第1本体部31Aと、第2作動体32の第2本体部32Aが腰当部40の外面に接する。
図6、図7に示すように、ポケット部37の左側部と右側部からそれぞれ左取り付けストラップ56Lと右取り付けストラップ56Rがそれぞれ延びている。左取り付けストラップ56Lの先端部は左締付力調節ベルト53Lに設けた長さ調節可能な左取り付けカン57Lに取り付けられ、右取り付けストラップ56Rの先端部は右締付力調節ベルト53Rに設けた長さ調節可能な右取り付けカン57Rに取り付けられる。
ポケット部37は、左取り付けストラップ56Lと右取り付けストラップ56Rの長さを調節することで、コルセット4を装着した装着者の臀部にずれなく固定される。
次に、装着者が筋力補助装具1を装着し、装着者の腰部にコルセット4を直立姿勢で適正な締付力で締め付けている場合を例にして、コルセット締付力調節具3によるコルセット4の締付力調節動作を説明する。
コルセット4は、腰当部40が装着者の腰部に押し当てられ、腰部回りを所定の締付力で締め付ける。所定の締付力は、パワーネットで構成される腰当部40と右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lの伸縮力によって設定される。その際、袋状空間55の内側に位置する腰当部40は腰部に当接し、袋状空間55の外側に位置する右締付力調節シート44Rは腰当部40に所定の緊張力で当接し、左締付力調節シート44Lが右締付力調節シート44Rの外側に所定の緊張力で当接している。
袋状空間55において、腰当部40に対して右締付力調節シート44Rを後方に押し出して袋状空間55を後方に向けて広げると、左締付力調節シート44Lも右締付力調節シート44Rと一体に後方に向けて押し出される。ここで、腰当部40と腰当部40の両側に配置される右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lと、右締付力調節シート44Rと、左締付力調節シート44Lと、長さ調節バックル54を介して連結され右締付力調節ベルト53R及び左締付力調節ベルト53Lは、閉ループを構成している。
したがって、腰当部40の後方で互いに交差する右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lを腰当部40に対して後方に押し出すと、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lが腰部回り方向に沿って互いに伸びる方向に引っ張られることになる。このため、コルセット4は、直立姿勢で設定した適正な締付力よりもさらに大きな締付力で腰部回りを締め付ける。
また、袋状空間55において、右締付力調節シート44Rを後方に押し出す力を解除すると、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lは右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lの弾性復元力で、右締付力調節シート44Rが腰当部40に当接した位置まで戻り、左締付力調節シート44Lが右締付力調節シート44Rに当接する。したがって、コルセット4は直立姿勢で設定した適正な締付力で再び腰部回りを締め付ける。
コルセット締付力調節具3は、図4(a)に示す装着者の直立姿勢から図4(b)に示す前屈姿勢に上体を変化させると、腰部P2の後方に第1本体部31Aと第2本体部32Aが締付力調節作動手段である隙間dを形成する。第1本体部31Aと第2本体部32Aはコルセット4の袋状空間55内に挿通されている。このため、筋力補助装具1を装着した装着者Pの前屈動作でコルセット締付力調節具3により生じる隙間dにより、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lが腰当部40に対して後方に押し出される。
上体の前屈深さが深くなると、第1本体部31Aと第2本体部32Aはより大きく湾曲し、隙間dが大きくなる。コルセット4の袋状空間55において、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lが腰当部40に対して後方に押し出される距離が長くなると、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lの張力が増し、コルセット4の締付力が強くなる。また、前屈姿勢が浅くなると、第1本体部31Aと第2本体部32Aの湾曲は小さくなり、隙間dが狭くなる。このため、コルセット4の袋状空間55において、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lが腰当部40に対して後方に押し出される距離が短くなり、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lの張力が減少し、コルセット4の締付力が弱くなる。その際、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lは、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lの張力により、腰当部40に向けて移動する。
このように、上体の前屈が深くなればなるほどコルセット4の締付力が強くなり、前屈が浅くなればなるほどコルセット4の締付力が弱くなり、直立姿勢に戻ると、適正な締付力となる。
したがって、前屈時にコルセット4に設定された適正な締付力よりも大きな締付力で腰部周りを締め付けて腹筋を補助することで腹圧が高められ、お腹側の支えがしっかりとなり、腰にかかる負担が軽減する。また、前屈姿勢から直立姿勢に上体が戻ると、元の適正な締付力に戻る。適正な締付力は、コルセット4がずれ落ちない程度の締付力を例示することができる。このため、上体を前屈させていない場合には腰への締付がないので、コルセット4を長時間装着しても腰周りの筋肉が萎えることを防止できる。
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態の筋力補助装具1によれば、コルセット4が腰部周りを締め付ける締付力は、直立姿勢から前屈姿勢に上体を曲げるに従って増加し、腹筋を補助することで腹圧が上体の前屈が深くなるに従って高められてお腹側の支えがしっかりとなり、腰にかかる負担が軽減する。また、上体が元の直立姿勢に戻ると、例えばコルセット4の装着時に設定した適正な締付力に戻る。
したがって、荷物の上げ下ろしを伴う作業に従事する作業者、前屈みでの作業が多い農作業、漁業、建築、土木等に従事する作業者だけでなく、家事労働者、店舗販売員、オフィスで働く人、階段の上り下りや椅子への着座にコルセットの助けが必要な人等が筋力補助装具1を長時間装着しても、上体の前屈状況下でコルセット4が腰周りを締め付け、上体が元の直立姿勢に戻ると、例えばコルセット4のずれ落ちを防止できる程度の腰への締付が殆ど発生しない締付力で腰を締め付けるので、腰への負担が軽減できる。また、中腰の姿勢が少ない運搬作業をはじめ立ち仕事やドライバーやオフィスワーク疾病により体が曲がってしまった人などは、第1作動体31及び第2作動体32が緩やかにコルセット4で締められていることによって体幹を高めることによりバランスをとり、疲労軽減につながる。
本実施形態のコルセット4によれば、上体を前屈させると、前屈動作に応じて締付力調節作動手段が作動し、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lを腰当部40の外側で外側に向けて押し出し、締付力が大きくなる。また、前屈姿勢から直立姿勢に上体が戻ると、締付力調節作動手段が逆方向に動作し、締付力が減少して直立姿勢で設定した適正な締付力、例えばコルセットが腰からずり落ちない程度の締付力に戻る。
このため、コルセット4は上体が前屈姿勢となる場合に腰周りを強い力で締め付けるので、腰への負担を軽減することができる。
本実施形態のコルセット4は、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lを腰当部40の外側で外側に向けて重ねて配置しているので、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lに対して右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lがそれぞれ均一に反力を受けることができる。このため、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lには全面にわたって偏りなく張力が発生するので、締付力を確実に増加させることができる。
また、本実施形態のコルセット4は、右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lの端部同士が右締付力調節ベルト53R及び左締付力調節ベルト53Lを介して連結されているので、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lの反力を等しく受けることができる。このため、右締付力発生シート41Rと左締付力発生シート41Lは右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lの押し出しで等しい張力を発生し、腰部を均一な締付力で締め付けることができる。
本実施形態のコルセット締付力調節具3によれば、装着者の前屈動作に応じて、第1作動体31と第2作動体32が装着者の腰部に対応する部分に隙間dを形成する動作をコルセット4の締付力の調節に供するようにしているため、簡単な構成でコルセット4の締付力を調節することができる。また、第1作動体31と第2作動体32の復元力により装着者の姿勢を真っ直ぐにする矯正作用を得ることができる。
さらに、コルセット締付力調節具3は第1伸縮部31Bと第2伸縮部32の伸縮により装着者の前屈を許容することができる。
また、コルセット締付力調節具3は、第1作動体31と第2作動体32の2つの作動体の隙間形成動作でコルセット4の右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lの押し出しを行うようにしているので、確実にコルセット4の締付力調節動作を行うことができる。
また、コルセット締付力調節具3は、第1作動体31の第1本体部31Aと第2作動体32の第2本体部32Aを下側に向かうに従って幅方向外側に広げるようにしているので、装着者が上体を捩じった状態で前屈しても、確実に隙間を形成することができる。
〔変形例〕
上記した実施形態では、コルセット締付力調節具3において、装着者の上体に身に着けた装着部材であるオーバーオール2が装着者の上体が前屈すると第1作動体31と第2作動体32の上端部を湾曲させるための力を作用する手段として使用されているが、これに限定されるものではない。装着部材として例えば、オーバーオール2に代えてエプロン、ビジネススーツ等の衣服、又は、図3中二点鎖線で示すベスト61であってもよい。さらに無端状のリングストラップに両腕を通して肩に掛けた形式のものであってもよい。この場合、前記リングストラップの背中側に第1作動体31と第2作動体32の上端部を連結する。
図8は、コルセット締付力調節具103の正面図である。なお、コルセット締付力調節具103において、図3に示す部材と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
図8に示す締付力調節具103は、カーボンファイバー製の棒状に形成された第1作動体131と第2作動体132を備える。第1作動体131と第2作動体132は、左右方向の中心線Lを中心に左巻きに複数回捩じった捩じり形状に一体に左右対称に形成されている。図8に示す例では、第1作動体131と第2作動体132を左巻きに捩じっているが、右巻きに捩じった構成であってもよい。
図3に示す実施形態の第1作動体31と第2作動体32は、第1本体部31A、第2本体部32Aの上端に第1伸縮部31B、第2伸縮部32Bを設け、第1伸縮部31B、第2伸縮部32Bの伸縮で前屈動作を許容している。
これに対し、図8に示す実施形態の第1作動体131と第2作動体132は、上端部に上下方向に沿って延びる長溝133を設け、上スナップボタンS1の凹部33が長溝133にスライド可能に係合する。上スナップボタンS1の凸部34は上体前屈検出手段として、図1に示すオーバーオール2、図3に示すベスト61、エプロン、ビジネススーツ、作業用のつなぎ服等に取り付けられる。上スナップボタンS1と長溝133が相対移動することで前屈動作を許容する。
第1作動体131と第2作動体132に下端部は、下方に向かうに従って左右方向の外側に向けて広がる末広がり形状に形成されている。
第1作動体131と第2作動体132の下端部に設けた下スナップボタンS2の凸部(不図示)は、図3に示すようにポケット部37に設けてもよく、また図7に示す右取り付けストラップ56R、左取り付けストラップ56Lに直接取り付けるようにしてもよい。
図8に示す実施形態のコルセット締付力調節具103は、第1作動体131と第2作動体132を左巻きの捩じり構造としているので、装着者が肩を左回転させる場合、第1作動体131と第2作動体132が捩じられてばね力が蓄勢される。そして、上体を右回りに回すと、前記蓄勢力のアシストで肩が楽に元に戻される。すなわち、左利きの人は左巻きのコルセット締付力調節具捩103を使用すれば楽な作業が行え、右利きの人は右巻きのコルセット締付力調節具103を使用することで楽な作業が行える。
図9は、コルセット104の背面図である。なお、コルセット104において、図5に示すコルセット4と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
図5に示すコルセット4は、腰当部40の外側に右締付力調節シート44Rと左締付力調節シート44Lが重なって合計3枚のシートが積層されている。これに対し、図9に示す実施形態のコルセット104は、右締付力調節シート144Rと左締付力調節シート144Lは上下方向に離隔して配置している。すなわち、腰当部40の外側に右締付力調節シート144Rと左締付力調節シート144Lがそれぞれ当接するように配置され、2層の積層構造としている。
右締付力調節シート144Rと左締付力調節シート144Lは、他端側を直接右締付力調節ベルト53R、左締付力調節ベルト53Lに縫い付けることができる。
本実施形態のコルセット104は、腰当部40の部分において右締付力調節シート144Rと左締付力調節シート144Lが重ならないようにした2層の積層構造としているため、腰当部40の部分の厚みを薄くすることができ、装着者の腰部回りがすっきりとなり、コルセット4の上から衣服を着用しても目立たなくなる。
コルセット4の袋状空間5内に配置する締付力調節作動手段として、通電により厚みが厚くなる圧電素子を例示でき、また前屈検出手段として角度センサー、又は角度センサーを搭載したスマートホンを例示できる。例えば、スマートホンと圧電素子を備えた圧電素子駆動回路とを無線通信で接続させれば、スマートホンをポケット等に入れた状態で前屈姿勢になると、圧電素子が駆動されて締付力を大きくすることができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図10乃至図13は、本実施形態を示す図である。
まず、図10に基づいて筋力補助装具400を説明する。なお、図10〜図13の示す部材に付す符号は、図1〜図9に示す部材と同じ部材には40又は400を加えた符号を付し、また構成の説明が不要な部材には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図10において、衣服であるベスト402の前身頃422は腰よりも下まで設けられているが、後身頃421の内側の状態を示すために一部のみを描いている。
筋力補助装具400は、図10に示すように、衣服であるベスト402と、ベスト402の後身頃421の内側に設けたコルセット締付力調節具403と、ベスト402の後身頃421の内側に設けた腰部の回りに装着されるコルセット404とにより構成される。ベスト402は前身頃422に設けた不図示のチャックにより脱ぎ着ができるようにしている。
ベスト402は、後身頃421の左右の首回りにそれぞれ一端部が固定されたショルダーテープ423、424が取り付けられている。左右のショルダーテープ423、424は、肩部を経て前身頃422の左右の上端部422aまで延びている。上端部422aの表面は面ファスナーの起毛部が設けられ、ショルダーテープ423、424の先端部側の内側に面ファスナーのフック部を設けている。左右のショルダーテープ423、424を上端部422aに対する上下方向の係合位置を調節することで、ベスト402の着衣者の両肩甲骨をコルセット締付力調節具403の弾性力によって内側に引き寄せる補助力を調節可能とする。この補助力により、着衣者の胸部が開き、楽な呼吸ができ、また誤嚥防止の効果が得られる。
後身頃421と前身頃422は、腰部に対応する部分から下では左右両端部を縫い合わせていないスリットSLとしており、後身頃421が背面側にめくれる状態になっている。なお、前記左右のスリットSLは、下端部に設けた面ファスナー422bにより脱着可能に固定される。
左右のスリットSLを構成する前身頃222の左右の端部には、コルセット404の腰当部440の両端部が縫い合わさっている。腰当部440は、非伸縮性のメッシュ素材の布地が用いられている。そして、腰当部440と後身頃421との間には袋状空間455が形成される。
コルセット締付力調節具403とコルセット404の説明は後述するが、袋状空間455内には、腰当部440側にコルセット404の右締付力調節シート444Rを配置し、後身頃421側に左締付力調節シート444Lを右締付力調節シート444Rと重なるように配置し、右締付力調節シート444Rと腰当部440との間にコルセット締付力調節具403の第1作動体431と第2作動体432が挿通される。また、締付力伝達ベルト458が右締付力調節シート444Rと第1作動体431と第2作動体432の間に配置される。
締付力伝達ベルト458の内側には、短尺の横長ベルト459の左右両端部が縫い付けられ、その間に作動体ガイド部材である作動体通し孔460が形成されている。作動体通し孔460には、第1作動体431と第2作動体432が挿通される。ベスト402の装着者が脚部の曲げ動作の際、第1作動体431と第2作動体432の曲げ動作に伴って第1作動体431と第2作動体432が左右方向に僅かに拡がると、左右方向に作用する分力を前後方向の押し動作に加わり、腹圧の補助に供される。
後身頃421の下端には、第1作動体431と第2作動体432の下部を保持して左右方向及び前後方向への移動を規制する布製のポケット部437が取り付けられている。ポケット部437は、ポケット内の内周面437aに面ファスナーのフック部が形成され、第1作動体431と第2作動体432の下部の外周面431a、432aには面ファスナーの起毛部が形成される。
したがって、第1作動体431と第2作動体432の下部をポケット部437内に差し込むと、左右方向の任意の位置で前後方向にしっかりと面ファスナーにより固定することができる。
次に、コルセット締付力調節具403の構成を図10及び図11に基づいて説明する。
コルセット締付力調節具403は、身丈方向に沿って延びる棒状の1又は複数の第1本体部431Aを細長い袋体状の第1袋体431C内に増減可能に収納する第1作動体431と、1又は複数の第2本体部432Aを第2袋体432C内に増減可能に収納する第2作動体432を備える。第1本体部431Aと第2本体部432Aは、例えば複数本の細いカーボンファイバーを束ねて棒状に形成したものである。勿論、第1本体部431Aと第2本体部432Aはプレート状であっても、FRP製であってもよい。
第1作動体431と第2作動体432は、ベスト402の後身頃421の幅方向中央を境にして交差配置される。第1袋体431Cと第2袋体42Cの上端部に、上スナップボタンS1の凹部33を取り付けている。
後身頃421の上部427に上スナップボタンS1の凹部33が係合する上スナップボタンS1の凸部34が幅方向中央を境にして左右対称に複数設けている。上スナップボタンS1の止まり位置を中心よりも左右方向において変更可能なので、作業の程度に応じて止まり位置を適宜選択でき、効果的な腹圧補助が達成できる。上スナップボタンS1の凸部34の取り付け位置、特に中心から遠い方の凸部34は、肩甲骨に対応して、例えば肩甲骨のすぐ内側等に設けるようにしてもよい。なお、第1実施形態に示す第1作動体31と第2作動体32についても、上部の取り付け位置の間隔を広くしたり狭くしたり変更可能としてもよい。
後身頃421の臀部426に対応する位置に下部取り付け部材であるポケット部437が配置され、第1作動体431と第2作動体432の下部外周面431a、432aの起毛部がポケット部437の内種面のフック部に係合する。
第1作動体431と第2作動体432とは交差した状態に取り付けており、図11では内側に左肩側から右臀部側に斜めに向けて第1作動体431を取り付け、外側に右肩側から左臀部側に斜めに向けて第2作動体432を取り付けている。頭上から第1作動体431と第2作動体432を見ると、左巻きバネの形態をなしている。このため、右利きの装着者では、作業時に大きな捩じりばね力が作用し、より一層腹圧補助を図ることができる。なお、左利きの装着者は、逆に第1作動体431を外側に、第2作動体432を内側にして交差させるとよい。
図13に示すように、第1袋体431C及び第2袋体432Cは、上スナップボタンS1が設けられる上端部に袋体の開口4311を設け、第1作動体本体431A、第2作動体本体432Aの追加、交換、削減作業が容易に行える。
次に、コルセット404の構成を図10〜図12に基づいて説明する。
図11に示すコルセット404は、図5に示すコルセット4と同様に、全体が帯状に形成されていて、非伸縮性メッシュ素材の腰当部440の右側に伸縮性メッシュ素材の右締付力発生シート441Rと非伸縮性メッシュ素材の右ベルト442Rが順に連設されており、腰当部440の右端部と右締付力発生シート441Rの左端部とが縫い合わされている。さらに、右締付力発生シート441Rの右端部と右ベルト442Rの左端部が縫い合わされている。同様に、腰当部440の左側に、伸縮性メッシュ素材の左締付力発生シート441Lと非伸縮性メッシュ素材の左ベルト442Lが順に連設され、同様に縫合されている。
右ベルト442Rと左ベルト442Lの外面は全体的に面ファスナー43の起毛部が設けられ、左ベルト442Lの先端部内側に面ファスナーのフック部が形成されている。なお、各縫い合わせ部分にはバイアステープが縫合されている。
図12に示すように、腰当部440の右端部には、右バイアステープTRを用いて右締付力調節シート444Rの右端部が縫合され、左端部には左バイアステープTLを用いて左締付力調節シート444Lの左端部が縫合されている。右締付力調節シート444Rと左締付力調節シート444Lの縫合部側の幅方向中央部には、右通し孔449、左通し孔450が形成されている。
右締付力調節シート444Rと左締付力調節シート444Lの先端部は先すぼみ形状に絞られて右中央引張片部445R、左中央引張片部445Lが形成されている。腰当部440に対し外側に向けて、右締付力調節シート444Rが重なり、次に左締付力調節シート444Lが重なる。右締付力調節シート444Rは右バイアステープTLによる縫合部で右締付力発生シート441Rと一体化し、左締付力調節シート444Lは右バイアステープTRによる縫合部で左締付力発生シート441Lと一体化する。
右中央引張片部445Rは左通し孔450を通して左締付力発生シート441Lの外面側に出る。左中央引張片部445Lは左締付力調節シート444Lが右締付力調節シート444Rよりも外側に位置しているため、右側のスリットSLを通して右締付力発生シート441Rの外面側に出る。右中央引張片部445Rの先端部には右第1連結カン446Rが取り付けられ、左中央引張片部445Lの先端部には左第1連結カン446Lが取り付けられる。
図12に示すように、締付力伝達ベルト458を左右の通し孔449、450を通して腰当部440と右締付力調節シート444Rとの間に通している。右通し孔449を通して右締付力発生シート441Rの外側に出た締付力伝達ベルト458の右端部は、左締付力調節シート444Lに連結されている左第1連結カン446Lを通して左ループ部458Lを形成し、折り返した先端部を右バイアステープTRの縫合部で縫合される。左ループ部458Lには、左第2連結カン447Lが通されている。
左通し孔450を通して左締付力発生シート441Lの外側にでた締付力伝達ベルトの左端部は、右第1連結カン446Rを通して右ループ部458Rを形成し、折り返した先端部を左バイアステープTLの縫合部で縫合される。右ループ部458Rには、右第2連結カン447Rが通されている。
右ベルト442Rと右締付力発生シート441Rとの縫合部には、左締付力調節ベルト453Lの一端が縫合され、先端側が左第2連結カン447Lを通して右ベルト442Rの先端部側に向けて引っ張られる。同様に、左ベルト442Lと左締付力発生シート441Lとの縫合部に一端が縫合された右締付力調節ベルト453Rは、先端側が右第2連結カン447Rを通して左ベルト442Lの先端部側に向けて引っ張られる。左締付力調節ベルト453Lと右締付力調節ベルト453Rの先端部の内側には面ファスナーのフック部が設けられている。
上記した構成のコルセット403の装着は、第1実施形態のコルセット4と同様に装着者が直立姿勢で左右のベルト442L、442Rを面ファスナーで腰の回りに固定する。次いで、右手で左締付力調節ベルト453Lを、左手で右締付力調節ベルト453Rを引っ張ると、それぞれ左右の第2連結カン447L、447Rが引っ張られ、第1連結カン446L、446Rを引っ張りながら締付力伝達ベルト458を両側から引張り、腰当部440及び左右のベルト442L、442Rが装着者の腰周りに締めつかられた状態になる。
この装着状態で、装着者が前屈すると、第1作動体231及び第2作動体232に生じる曲げ力で締付力伝達ベルト458が外側に向けて押し出され、重なっている左右の締付力調節シート444L、444Rも外側に向けて押し出される。したがって、第1作動体231及び第2作動体232に生じる曲げ力により、締付力伝達ベルト458から加わる締付力が左右の締付力発生シート442L、442Rに均等に加わり、さらに、左右の締付力調節シート444L、444Rを介して個々に左右の締付力発生シート442L、442Rにも加わる。
このため、装着者の前屈動作により第1作動体231及び第2作動体232の曲げ変形で生じる曲げ力が効率よく締付力に変換され、少しの前屈動作でも腹圧の補助力を確実に加えることができる。
〔変形例〕
図14は、第2実施形態の変形例を示す作動体ガイド部材500の斜視図である。第2実施形態において、締付力伝達ベルト458の内側に短尺の横長ベルト459の左右両端部を縫い付けて形成した作動体ガイド部材である作動体通し孔460内に第1作動体431と第2作動体432を通しているが、締付力伝達ベルト458に対し第1作動体431と第2作動体432を個々に左右方向において拘束し、上端における両作動体431、432の取り付け位置の変更にも対応できるようにするようにしてもよい。作動体ガイド部材500は、プラスチック樹脂等により扁平の十字形状に形成され、上下方向に第1作動体431が貫通する上下開口501が形成され、左右方向に締付力伝達ベルト458が貫通する左右開口502が形成されている。
作動体ガイド部材500を使用すると、第1作動体431と第2作動体432に対する保持面積が大きくなり、前屈動作時に第1作動体431と第2作動体432に加わる左右方向の力を効率よく取り出して腹圧への補助力を増すことができる。
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、連結ベルトを不要とし、腰周りの膨らみが少なくなり、装着していることが衣服の上から分かりづらくなった。また、締付力伝達ベルト458により、装着者の僅かな前屈動作でも確実に腹圧補助力を発生させることができる。
また、第1作動体431、第2作動体432の作動体本体の本数を増減可能にしているので、作業内容、体調に合わせて最適な腹圧補助力を得ることができる。
さらに、左右のショルダーテープ423、424の取り付け位置を調節することで、第1作動体431と第2作動体432の曲げ力の作用で肩甲骨が狭くなるように矯正され、胸が拡がって呼吸が楽になる効果も得られる。