JP6612643B2 - 織機の織段防止方法及びその装置 - Google Patents

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Description

本発明は、織機の起動に際し、織布の織前を経糸送出側へ移動させる織段防止方法及びそのための装置に関するものである。
緯入れ不良等により織機が停止した場合、その織機の停止期間中において、経糸が張力や自重等の影響によって時間の経過と共に徐々に伸びることが原因で、織前が織布巻取側へ徐々に移動するといった現象が発生する。そして、そのように織前が移動した状態で製織を開始(再開)すると、それに起因して織布に織段(所謂、停止段)が発生してしまう。そこで、従来より、この織段(停止段)の発生を防止することを目的として、製織の開始に先立って織前を経糸送出側へ向けて移動させることで織前を補正し、それによって前記した織段の発生の防止を図ることが行われている。また、その織前の移動(補正)は、織機におけるその織前の移動に寄与する織前位置変位部材(例えば、経糸を送り出す経糸ビーム、製織された織布が巻き掛けられる服巻ロール等)を駆動することによって行われる。
なお、その織前の補正について、前記のような経糸の伸びのみを考慮するものであれば、織前を正規の位置(製織中における筬打ち時の位置として設定された位置)に戻すだけで良い。しかし、織機においては、製織の開始(起動)直後では筬による筬打ち力が不足した状態となっているため、その筬打ち力不足も前記した織段の発生の原因となる場合がある。そこで、前記のように製織の開始に先立って織前を補正するにあたり、その筬打ち力不足を考慮し、織前を前記正規の位置よりも経糸送出側に移動させる場合もある。因みに、前記のような経糸の伸びや筬打ち力不足を考慮して製織の開始前に織前を補正する動作はキックバック動作とも呼ばれ、それを実行するための織機の制御はキックバック制御とも呼ばれている。
そして、そのようなキックバック制御に関する従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1による従来技術は、前記した筬打ち力の不足を補うために行われるキックバック制御を前提としたものであるが、特許文献1には、そのキックバック動作におけるキックバック量(織前の移動量)を、織機の停止時間に比例させて変更する、すなわち、織機の停止期間中における経糸の伸びに対応させて変更する、ということも開示されている。また、特許文献1には、送出モータの回転量を経糸ビームに巻かれた経糸の巻径に反比例させて変更し、経糸ビームの前記巻径に関わらずキックバック量が予め設定した量となるように制御することも開示されている。
特開昭61−083355号公報
ところで、織機においては、製織の進行に伴い、経糸ビームに巻かれた経糸の巻径が次第に小さくなるため、それに伴い、経糸ビーム上の経糸の引き出し点からその引き出された経糸が巻き掛けられるテンションロールまでの距離が長くなり、前記引き出し点から織前に至る経糸の経路長が長くなる。すなわち、織機においては、製織の進行に伴う前記巻径の変化に伴って前記経路長が変化するものとなっており、前記巻径が大きいほど前記経路長が短く、前記巻径が小さいほど前記経路長が長くなるものとなっている。
なお、前記した織機の停止期間中における経糸の伸びについては、停止時間が同じ場合において、経糸の単位長さあたりの伸び量が一定であるとすると、経糸ビームから織前に至る経糸全体の伸び量(全体伸び量)は、前記経路長が長いほど大きくなる。従って、その全体伸び量は、前記巻径が大きいほど小さく、前記巻径が小さいほど大きくなる。
そして、前記した織機の停止期間中における織前の巻取側への移動は、その停止期間中における経糸の伸びが原因であり、その移動量は、前記全体伸び量に応じたものとなっている。そのため、停止時間が同じであっても、製織開始後の初期の前記巻径が大きいときと製織が進行して前記巻径が小さくなったときとでは、織前の移動量が異なる(前記巻径が小さいほど移動量が大きくなる)ものとなる。
しかしながら、前記した従来技術においては、前記キックバック動作において、キックバック量を一定にすることしか考えられていない。そのため、その従来技術では、前記巻径によって織前の移動量が異なることに伴い、前記巻径によっては、設定されたキックバック量と実際の織前の移動量とが対応しない状態が生じるため、製織中の全期間に亘り、織機の停止に伴って発生する織段(停止段)を有効に防止することができないという問題がある。
そこで、本発明は、製織中の全期間に亘り、織機の停止に伴って発生する織段(停止段)を有効に防止することができる織機のための織段防止方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による織段防止方法は、織機の起動に際し、織布の織前の移動に寄与する織前位置変位部材を駆動することによって前記織前を経糸送出側へ移動させる織段防止方法において、前記織前の移動量を決定するための情報である移動量関連情報であって、経糸ビームに巻かれた経糸の巻径に関しての予め設定された設定範囲において前記巻径が小さいほど前記移動量が大きくなるように定められた移動量関連情報を予め織機に記憶させておき、起動の時点における前記巻径が前記設定範囲に含まれる場合には、その時点における前記巻径と前記移動量関連情報とに基づいて前記織前位置変位部材を駆動することを特徴とする。
また、本発明による織段防止装置は、織機の起動に際し、織布の織前の移動に寄与する織前位置変位部材を駆動することによって前記織前を経糸送出側へ移動させる織段防止装置において、経糸ビームに巻かれた経糸の巻径を求める巻径検出装置と、前記織前の移動量を決定するための情報である移動量関連情報であって、前記巻径に関しての予め設定された設定範囲において前記巻径が小さいほど前記移動量が大きくなるように定められた移動量関連情報が記憶される記憶器と、前記織前位置変位部材の駆動を制御する駆動制御装置であって、起動の時点における前記巻径が前記設定範囲に含まれる場合には、前記巻径検出装置で求められた当該起動の時点における前記巻径と前記記憶器に記憶された前記移動量関連情報とに基づいて前記織前位置変位部材の駆動を制御する駆動制御装置とを備えることを特徴とする。
なお、ここで言う「(織前の移動に寄与する)織前位置変位部材」とは、織前を移動させることができる部材であってモータ等の駆動手段によって織前を移動させる方向に駆動されるように設けられた部材であり、例えば、織前に連なる経糸を送り出す経糸ビームや、織前に連なる織布が巻き掛けられる服巻ロールがそれに相当する。また、経糸ビームと織前との間で経糸が巻き掛けられるテンションロールも、織前位置変位部材として含むことができる。但し、本発明が対象とする織前位置変位部材は、それらのうちの少なくとも1つである。また、「駆動制御装置」は、前記駆動手段の駆動を制御する制御装置を含むものである。
また、「移動量関連情報」とは、前記巻径の前記設定範囲における織前の経糸送出側への前記移動量を決定するための情報であって、例えば、前記巻径とその前記巻径に対応する前記移動量とが関連付けられたデータベースや、前記巻径を変数とした演算式であって前記巻径が代入されることによりその前記巻径に対応する前記移動量が求められる演算式等がそれに相当する。但し、その移動量関連情報は、前記巻径に基づき、前記移動量そのものが求められるように定められたものに限らず、その前記移動量が得られるような織前位置変位部材の駆動量、或いは、その織前位置変位部材を駆動する前記駆動手段(モータ等)の駆動量が求められるように定められたものであっても良い。そして、その移動量関連情報は、その求められる前記移動量や前記駆動量が、前記巻径が小さいほど大きくなるように定められたものである。
また、前記した本発明において、移動量関連情報を、前記巻径の前記設定範囲の始点から前記設定範囲の中間部分までの前半の部分範囲と前記中間部分から前記設定範囲の終点までの後半の部分範囲とで、その部分範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記移動量の変化が異なるように定められた情報としても良い。
さらに、移動量関連情報は、前記設定範囲の始点を基準とする前記起動の時点における前記巻径の減少量に対する前記起動の時点における前記移動量の増加分の割合が、前記設定範囲内の前記各起動の時点で異なるように定められているものとしても良い。また、移動量関連情報は、前記巻径の前記設定範囲内に設定されることによって前記設定範囲を2以上の区間に分割する1以上の境界値を含むと共に、前記境界値によって定められる前記各区間内においては前記巻径の変化に対する前記移動量の変化の割合が一定であって、且つ、その前記割合が前記各区間毎に異なるように定められたものであっても良い。
本発明によれば、織機の起動に際し行われるキックバック動作において、そのキックバック量(織前の移動量)が、移動量関連情報に従ってその起動の時点における前記巻径が小さいほど大きくなるように変更される。それにより、製織期間中における織機の各停止時点では当然ながら前記巻径は異なっており、それに伴い、停止時間が同じであっても経糸の伸び量が異なる(停止期間中における織前の移動量が異なる)状態となっているが、その各状態における織機停止に伴う織段(停止段)の発生を有効に防止することができる。
なお、キックバック動作は、織機停止後の起動(製織運転開始)の時点(正確には、その起動の直前)に行われるものであり、本発明では、その起動の時点における前記巻径に基づいて織前位置変位部材の駆動が制御される。但し、前記巻径は、織機が停止した時点から前記起動までの間において殆ど変化することがない。従って、本発明で言う「起動の時点における前記巻径」は、前記起動の時点において検出や演算によって求められるものに限らず、前記起動の前の停止中におけるいずれかの時点で求められたものであっても良い。また、織機によっては、制御等のために製織運転中に前記巻径を逐次的に求めているものがあり、前記停止前の製織運転中において最終的に求められた前記巻径を、起動の時点における前記巻径として利用することも可能である。
また、各起動時点におけるキックバック量を決定するための移動量関連情報を、前記設定範囲内における前記した前半の部分範囲と後半の部分範囲とでその部分範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記移動量の変化が異なるように定められたものとすることにより、より有効に織段(停止段)の発生を防止することが可能となる。
詳しくは、前記経路長は、大掴みに捉えた場合、前記したように前記巻径の変化に伴って順次長くなる傾向を示すものである。そのため、前記した本発明において、前記設定範囲における前記巻径と前記移動量との関係が、前記巻径の変化に対し一定の割合で前記移動量が変化するようなものとなる、すなわち、前記設定範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記移動量の変化が直線的な傾向を示すようなものとなるように移動量関連情報を定めたとしても、前記した従来技術と比べると、織段(停止段)の発生を防止する効果は高くなる。
しかし、前記経路長は、詳細には、所定の前記巻径の変化に対し一定量ずつ変化するものではなく、その変化量がその前記巻径の変化に伴って一方向に順次変わっていく傾向を示すものとなっている。従って、前記設定範囲を前記した前半の部分範囲と後半の部分範囲とで分けて捉えると、両部分範囲では、その部分範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記経路長の変化量は異なっている。そこで、移動量関連情報を、その部分範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記移動量の変化が両部分範囲で異なるように定められたものとすることにより、その移動量関連情報によって求められる前記移動量を各起動の時点における実際の前記全体伸び量により近付けることができ、その結果として、前記巻径の変化に対する前記移動量の変化の割合が前記設定範囲に亘って一定となるように移動量関連情報が設定される場合と比べ、より有効に織段(停止段)の発生を防止することができる。
また、前記のように、前記経路長は、所定の前記巻径の変化に対しその変化量が前記巻径の変化に伴って一方向に順次変わっていく傾向を示すものとなっている。すなわち、前記経路長は、前記巻径の変化に伴い、二次曲線的に変化するものとなっている。そこで、移動量関連情報を、前記設定範囲の始点を基準とした場合の前記巻径の減少量に対する前記移動量の増加分の割合が前記設定範囲内の各起動の時点で異なるように定められたものとする、すなわち、前記巻径に対する前記移動量が前記巻径の変化に伴って二次曲線的に変化するようなものとして定めることにより、さらに有効に織段(停止段)の発生を防ぐことが可能となる。
なお、前記のような前記経路長(前記全体伸び量)の変化の傾向に合わせ、移動量関連情報を前記巻径の変化に伴って前記移動量が二次曲線的に変化するようなものとして定めることは、織段(停止段)の発生の防止という点で最も有効である。但し、移動量関連情報をそのような移動量の変化が表れるようなものに定めようとすると、移動量関連情報の内容自体が複雑なものとなる。しかも、経糸の種類や製織条件等によって前記経路長(前記全体伸び量)の変化の傾向が異なることから、移動量関連情報をそのそれぞれ(組み合わせ)に応じて設定する必要が有り、そのために、その移動量関連情報の設定作業が非常に面倒なものとなってしまう。
それに対し、移動量関連情報を、前記巻径の変化に対する前記移動量の変化の割合が一定となるようなものとして定めれば、すなわち、前記のように前記移動量が直線的な傾向を示すように増加するようなものとすれば、その設定作業を容易化することができる。そこで、移動量関連情報を、前記設定範囲を2以上の区間に分割する1以上の前記境界値を含み、前記設定範囲が任意の前記巻径において2以上の区間に分割されるものとし、その上で、各前記区間では前記のような直線的な傾向(一定の割合)で前記移動量が変化すると共に、その変化の割合が各前記区間で異なるように定められたものとすることにより、その移動量関連情報に従った前記移動量の変化を、直線的な傾向を示すものとしつつも、前記した二次曲線的な変化に近付けることが可能となる。それにより、移動量関連情報の設定作業を容易化しつつも、有効に織段(停止段)の発生を防ぐことが可能となる。
本発明が適用される織機の一例を示す説明図である。 本発明による織段防止装置の一例を示すブロック図である。 本発明による移動量関連情報を入力設定するための入力画面の一例を示す説明図である。 本発明の一例を示す説明図である。 本発明の一例を示す説明図である。 本発明の他の例を示す説明図である。 本発明の他の例を示す説明図である。 本発明の他の例を示す説明図である。
以下では、本発明による織機の織段防止装置の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明による織段防止装置が適用される織機(例えば、空気噴射式織機)の一例である。織機1において、経糸ビーム2からシート状に送り出された経糸Wは、ガイドロール3及びテンションロール4に巻き掛けられて案内された後、綜絖H及び筬Rを経て織前CFに導かれる。なお、経糸Wは、対応する綜絖Hの上下動によって開口運動が与えられ、1製織サイクル中の所定の期間において開口を形成する。そして、経糸Wによって形成された開口に対し緯入れ装置(図示略)によって緯糸Yが挿入され、その緯糸Yが筬Rによって織前CFに筬打ちされることにより織布Fが製織される。また、そのように製織された織布Fは、織前CFからガイドロール5に巻き掛けられて案内された後、服巻ロール6及び2本のニップロール7、7を経由し、巻取ロール8に巻き取られる。
なお、製織された織布Fは、服巻ロール6と2本のニップロール7、7とでニップ(狭持)された状態となっており、服巻ロール6が回転駆動されると共にその服巻ロール6の回転に対し従動回転するニップロール7の回転に伴って移動される。そこで、製織中においては、服巻ロール6は、予め設定された緯糸密度と主軸MSの回転数とに基づいて回転駆動され、それにより、織布Fは、巻取ロール8側へ牽引される。また、製織中において、織布Fが前記のように服巻ロール6等によって牽引されることに伴い、織前CFにおいて織布Fに連なる経糸Wも牽引される。そこで、経糸Wを送り出す経糸ビーム2の回転駆動を制御することにより、経糸Wの張力が予め定められた目標張力に維持されるように制御される。このように、織機1においては、服巻ロール6及び経糸ビーム2が回転駆動されると共に、その駆動が制御されることにより、織前CFを順次移動させつつ製織が行われている。
また、その経糸ビーム2は、送出モータM3によって回転駆動され、服巻ロール6は、巻取モータM2によって回転駆動される。因みに、各綜絖Hは、織機1の主軸MS(もしくは専用の駆動モータ)を駆動源とする開口駆動装置22によって上下方向に駆動され、筬Rは、主軸MSを駆動源とする筬駆動装置23によって前後方向に揺動(筬打ち)駆動される。但し、主軸MSは、主軸モータM1によって回転駆動される。
図2は、前記の各モータの駆動の制御等を行う織機1における織機制御装置30を示している。この織機制御装置30は、主制御装置24と、送出モータM3の駆動を制御する送出制御装置20と、巻取モータM2の駆動を制御する巻取制御装置21とを含んでいる。また、主制御装置24は、主軸モータM1の駆動を制御する制御器28と、その制御器28に接続された記憶器26とを含んでいる。そして、送出制御装置20及び巻取制御装置21のそれぞれは、主制御装置24に含まれている制御器28及び記憶器26に対し接続されている。
また、織機1は、経糸ビーム2に巻かれた経糸Wの巻径を検出するための巻径検出装置を備えている。この巻径検出装置は、図1に示すように、経糸ビーム2の近傍において経糸ビーム2に巻かれたシート状の経糸Wの表面に対向するように設けられた距離センサ10と、その距離センサ10からの信号に基づいて前記巻径を求める巻径検出器27とで構成されている。但し、距離センサ10は、経糸ビーム2上における経糸Wまでの距離を検出するものであり、その検出した距離に応じた距離信号を巻径検出器27に出力するものである。また、巻径検出器27は、前記の織機制御装置30に含まれており、送出制御装置20及び主制御装置24における制御器28に接続されると共に、求めた前記巻径を送出制御装置20及び制御器28に対し出力するものとなっている。
また、主制御装置24における記憶器26には、織機1における入力設定装置25が接続されている。なお、その入力設定装置25は、例えば、タッチパネル式の表示画面を有するものであって、その表示画面に表示される設定画面等によって各種の設定値や条件等の製織条件を入力設定可能なものである。そして、その入力設定装置25によって入力設定された前記製織条件は、主制御装置24における記憶器26に送られ、その記憶器26において記憶される。因みに、入力設定装置25によって入力設定されて記憶器26に記憶される製織条件は、例えば、緯糸密度の設定値や、主軸MSの回転数(回転速度)の設定値、経糸Wの張力の目標の設定値を含む。
そして、製織中においては、主制御装置24における制御器28は、前記のように入力設定装置25によって入力設定されて主制御装置24における記憶器26に記憶された主軸MSの回転数の設定値に従い、主軸モータM1を駆動する。また、主軸モータM1には、主軸モータM1の回転量を検出するエンコーダENが接続されており、主軸モータM1の回転量に応じた回転量信号Sが、そのエンコーダENから制御器28に対し出力(フィードバック)されている。そして、主軸モータM1は、前記の回転数の設定値とエンコーダENからの回転量信号Sとに基づき、その駆動が制御される。それにより、主軸MSは、主軸モータM1の回転数に応じた回転数で回転駆動される。
因みに、主軸モータM1の回転数と主軸MSの回転数とは所定の比率で対応していることから、制御器28はエンコーダENからの回転量信号Sに基づき、主軸MSの回転数を認識し得るものとなっている。そこで、制御器28は、前記の回転量信号Sに基づいて主軸MSの回転数(回転速度)を求めると共に、その求めた主軸MSの回転数を巻取制御装置21及び送出制御装置20に対し送るものとなっている。
巻取制御装置21は、主制御装置24における記憶器26に記憶された緯糸密度の設定値と制御器28で求められた主軸MSの回転数とに基づいて織布Fの巻取に関する基本速度を求めると共に、その基本速度に従って巻取モータM2が駆動されるように巻取モータM2の駆動を制御している。それにより、服巻ロール6は、製織中において、設定された緯糸密度に応じた速度で織布Fを牽引するように巻取モータM2によって回転駆動される。
送出制御装置20は、主制御装置24における記憶器26に記憶された緯糸密度の設定値と主軸MSの回転数(回転速度)とに基づいて経糸Wの送出に関する基本速度を求めると共に、その基本速度を巻径検出器27によって求められた経糸ビーム2の前記巻径に基づいて補正し、その補正された基本速度に従って送出モータM3が駆動されるように送出モータM3の駆動を制御している。
但し、送出制御装置20は、前記の通り、経糸Wの張力が予め定められた目標張力に維持されるように、送出モータM3の駆動を制御する。そのための構成として、織機1は、経糸Wが巻き掛けられるテンションロール4に接続されて経糸Wの張力を検出する張力検出器9を備えている。また、主制御装置24における記憶器26には、経糸Wの張力の目標値(目標張力値)が記憶されている。そして、送出制御装置20は、記憶器26に記憶された経糸Wの目標張力値と張力検出器9によって検出された経糸Wの検出張力値とを比較し、必要に応じて前記の送出に関する基本速度をさらに補正する。それにより、経糸ビーム2は、製織運転中において、経糸Wがその張力を前記の目標張力値に維持された状態で送り出されるように、送出モータM3によって回転駆動される。
以上のような織機1において、何らかの停止原因が発生した場合や作業者によって運転停止釦(図示略)が操作されると、制御器28に対し停止信号Sbが入力され、織機1が停止される。そして、その停止原因が解消されることに伴い、或いは、運転釦(図示略)が操作されることに伴い、起動信号Saが制御器28に入力され、その制御器28への起動信号Saの入力に伴い、前述のような停止期間中における経糸Wの伸びに起因する織段(所謂、停止段)の発生を防止するために、その停止後の織機1の起動時(起動直前)において、主軸MSを停止させたままの状態で織前CFの位置が経糸送出側へ移動するように織機1を動作させる所謂キックバック動作が実行される。また、そのキックバック動作における織前CFの移動量(キックバック量)は、前記のような経糸Wの伸びに加え、起動直後における筬打ち力不足も考慮されたものとされる。
その上で、本発明は、そのキックバック動作を実行すべく織機1において行われるキックバック制御のために、前記巻径を変数として含む前記のキックバック量(織前CFの移動量)を決定するための情報である移動量関連情報を予め織機に記憶させておき、キックバック制御に際しては、起動の時点における前記巻径とその移動量関連情報とに基づき、織前CFの移動に寄与する織前位置変位部材を駆動するものである。但し、その移動量関連情報は、前記巻径に関しての予め設定された設定範囲において、前記巻径が小さいほどキックバック量(織前CFの移動量)が大きくなるように定められた情報である。
そのキックバック量(織前CFの移動量)について、前述したように、経糸Wの前記全体伸び量は、前記巻径の変化に対し前記巻径が小さいほど大きくなることから、前記巻径の前記設定範囲の始点をP1、終点をP3とすると、その始点P1における前記全体伸び量よりも終点P3における前記全体伸び量の方が大きくなる。そして、本発明においては、その始点P1及び終点P3におけるキックバック量(織前CFの移動量)は、その前記全体伸び量に合わせるかたちで予め定められるものとする。すなわち、そのキックバック量(織前CFの移動量)は、始点P1における移動量よりも、前記巻径が始点P1よりも小さい終点P3における移動量の方が大きくなるように予め定められるものとなっている。
また、本実施例では、キックバック動作は、経糸ビーム2及び服巻ロール6を回転駆動することで行われるものとする。従って、本実施例では、経糸ビーム2及び服巻ロール6が、キックバック動作時においては、本発明による織段防止装置における織前位置変位部材として機能するものとなっている。
但し、前記のキックバック動作時における経糸ビーム2及び服巻ロール6の回転駆動について、本実施例では、織前CFが、その時点の前記巻径に対応する目標の位置(以下、単に「目標位置」と言う。)よりも経糸送出側へ一旦移動された後に、織布巻取側へ移動されて前記目標位置となるように、経糸ビーム2及び服巻ロール6が回転駆動されるものとする。従って、キックバック動作時においては、経糸ビーム2は、経糸Wを巻き取る方向に逆転駆動された後に経糸Wを送り出す方向に正転駆動され、服巻ロール6は、その経糸ビーム2の回転に連動するように、織布Fを織前CF側へ戻す方向に逆転駆動された後に織布Fを牽引する方向に正転駆動される。そして、その経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転及び正転駆動の結果として、織前CFが、前記目標位置まで移動する移動量(キックバック量)だけ移動した状態となるものとする。
因みに、前記のように織前CFを前記目標位置よりも経糸送出側へ大きく移動させた後に前記目標位置(織布巻取側)へ向けて織前CFを戻すようなキックバック動作は、織前CFをより確実に前記目標位置にまで移動させることを目的としたものである。
より詳しくは、逆転動作のみで織前CFを前記目標位置へ向けて移動させようとすると、織布Fとガイドロール5等との間の摩擦抵抗や経糸Wとテンションロール4、ガイドロール3、及び経糸Wが挿通される部材(筬R、綜絖H等)との間の摩擦抵抗が原因で、その逆転に伴う経糸W及び織布Fの変位分が経糸W及び織布Fの張力変化によって吸収されてしまい、その逆転量に相当する分だけ織前CFが移動しない場合がある。そこで、その前記摩擦抵抗に打ち勝って移動するように経糸W及び織布Fを経糸送出側へ向けて一旦大きく移動させ、その上で、織前CFが前記目標位置となるように、経糸W及び織布Fを戻す方向(織布巻取側)へ移動させることで、織前CFが前記目標位置に移動した状態となるようにするものである。
なお、前記のようなキックバック動作時における経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量及び正転量について、当然ながら逆転量の方が大きい値に設定されるものであり、また、その逆転量から正転量を減算した経糸ビーム2及び服巻ロール6の最終的な逆転量(最終逆転量)は、前記摩擦抵抗が存在しないと仮定したときの、前記目標位置まで織前CFを逆転のみで移動させる場合の逆転量に相当する。そして、キックバック量は、その最終逆転量に応じたものとなる。
また、その逆転量(前記のように経糸W及び織布Fを経糸送出側へ向けて大きく移動させる逆転量)について、前記摩擦抵抗は、前記巻径に関係無く略一定と見なすものとする。そこで、本実施例では、その逆転量は、前記巻径に応じた前記最終逆転量に対し、所定の逆転量を加えた回転量とされるものとする。従って、正転量については、その所定の逆転量に対応した正転量(所定の逆転量と同じ回転量の正転方向への回転量)となる。すなわち、本実施例では、正転量は、固定値として設定される。
なお、前記摩擦抵抗について、前記巻径の変化により経糸Wのガイドロール3に対する巻き掛け角度が変化することから、厳密には、前記摩擦抵抗は変化する。しかし、その前記摩擦抵抗の変化は非常に小さいものである。従って、本実施例では、その前記巻径の変化による前記摩擦抵抗の変化を無視し、前記摩擦抵抗が前記巻径に関係無く一定と見なすものとする。因みに、経糸Wのガイドロール3に対する巻き掛け角度と前記巻径との関係は、織機1におけるガイドロール3と経糸ビーム2との配置関係等により異なる。
また、前記では、逆転について、織前CFが逆転量に相当する分だけ移動しないことを考慮して大きく逆転させると述べたが、正転については、その大きい逆転に伴って経糸W及び織布Fの張力が高まった状態で行われるため、前記摩擦抵抗の影響は受け難い。従って、正転量については、逆転量に相当する分だけ移動した織前CFを前記目標位置まで戻す移動量に相当する回転であっても問題無い。
その上で、移動量関連情報は、前記設定範囲内での前記巻径に対する前記のようなキックバック動作に対するキックバック制御のために設定される情報であることから、前記設定範囲に関する情報(以下、「設定範囲情報」と言う。)を含む。そして、本実施例では、その設定範囲情報は、前記設定範囲の始点P1及び終点P3となる前記巻径の設定値を含んでいる。さらに、本実施例では、前記設定範囲内に1つの境界が定められることにより、前記設定範囲が2つの区間に分割されているものとする。そのために、前記設定範囲情報は、前記設定範囲内に定められる境界値としての切換点P2となる前記巻径の設定値を含んでいるものとする。
さらに、移動量関連情報は、前記のようなキックバック動作に対するキックバック制御のためのキックバック量(織前CFの移動量)に関する情報(以下、「キックバック量情報」と言う。)を含んでいる。そして、そのキックバック量情報は、前記したキックバック動作時における経糸ビーム2の逆転量、及び服巻ロール6の逆転量について、前記の始点P1、切換点P2及び終点P3のそれぞれに対応させたかたちで設定されたその逆転量の設定値を含んでいる。その上で、本実施例では、前記設定範囲における前記各点P1、P2、P3の間の経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量は、前記各点P1、P2、P3における前記設定値に基づく演算式により求めるものとする。そのため、本実施例では、移動量関連情報に含まれる前記キックバック量情報は、その演算式も含んでいる。
また、その演算式は、本実施例では、各区間における始点と終点との間(P1−P2、P2−P3)を直線補間する式(直線補間式)を含むものとする。従って、前記のように2つの区間を含む始点P1から終点P3までの前記設定範囲に対しては、各区間に対応した2つの前記直線補間式が設定されたものとなる。また、その各前記直線補間式は、前記最終逆転量を求める式であるものとする。その演算式について、より詳しくは、次の通りである。但し、以下の説明では、前記の2つの区間について、始点P1から切換点P2までの区間を区間α、切換点P2から終点P3までの区間を区間βとする。
区間αに対応する前記直線補間式は、始点P1及び切換点P2として設定される前記巻径と、その各点P1、P2に対し設定される経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量の設定値から求められる各点P1、P2での前記最終逆転量とから求められる係数(a)に対し、その区間の始点P1からの前記巻径の減少量(ΔD1)を変数として乗算し、それに始点P1における前記最終逆転量(K1)を加算する式(a×ΔD1+K1)となっている。同様に、区間βに対応する前記直線補間式は、切換点P2及び終点P3として設定される前記巻径と、その各点P2、P3に対し設定される経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量の設定値から求められる各点P2、P3での前記最終逆転量とから求められる係数(b)に対し、その区間の始点P2からの前記巻径の減少量(ΔD2)を変数として乗算し、それに始点P2における前記最終逆転量(K2)を加算する式(b×ΔD2+K2)となっている。
その上で、前記のように正転量については固定値であることから、前記直線補間式で求められた前記最終逆転量に固定値である正転量を加算することで逆転量が求められる。従って、前記キックバック量情報に含まれる演算式は、この加算のための式(加算式)も含んでいる。
なお、前記のように、設定される各点P1、P2、P3を除く時点の前記巻径(Dx)での前記最終逆転量(Kx)は前記のような直線補間によって求められるものであるから、その前記巻径Dxが含まれる区間の始点(P1又はP2)での前記最終逆転量(K1又はK2)からの逆転量の増加量ΔK(=Kx−K1又はKx−K2)は、その前記巻径(Dx)の前記始点(P1又はP2)からの前記巻径の減少量ΔD(=D1−Dx又はD2−Dx)に比例したものとなる。言い換えれば、前記巻径の減少量ΔDに対する前記最終逆転量の増加量ΔKの割合(ΔK/ΔD)は一定となる。
また、横軸を前記巻径とすると共に縦軸を前記最終逆転量として、前記巻径と前記最終逆転量との関係をグラフで描くと、そのグラフは、図4で示すように、各区間α、βの始点(P1、P2)における前記最終逆転量と終点(P2、P3)における前記最終逆転量とを直線で結んだものとなる。すなわち、各区間α、βにおいて、前記巻径の変化(減少)に対し前記最終逆転量が一定の割合で直線的に変化(増加)するグラフとなる。
また、前記のように、キックバック量(織前CFの移動量)は、経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量に応じたものとなることから、前記巻径とキックバック量との関係についても、前記のグラフと同じ傾向を示すものとなる。すなわち、キックバック量は、各区間α、βにおいて、前記巻径の変化に伴って一定の割合で直線的に変化するものとなる。
以上で説明したような移動量関連情報に含まれる前記設定範囲情報及び前記キックバック量情報は、織機制御装置30における主制御装置24の記憶器26に予め(製織開始前に)記憶されているものとする。従って、本実施例では、前述のように製織のために設定された製織条件等が記憶される記憶器26が、織段防止装置における記憶器としても兼用されている。
また、本実施例では、前記のような移動量関連情報(前記設定範囲情報及び前記キックバック量情報)に含まれる各設定値の入力設定が織機1における入力設定装置25を用いて行われるものとし、その入力設定が、図3に示すような入力設定装置25における入力画面40によって行われる。
その入力画面40について、より詳しくは、入力画面40は、始点P1として設定される前記巻径の設定値が入力設定される入力欄41aと、切換点P2として設定される前記巻径の設定値が入力設定される入力欄41bと、終点P3として設定される前記巻径の設定値が入力設定される入力欄41cとが、横方向に並べて設けられた(表示される)ものとなっている。なお、それぞれの前記巻径の設定値は、図示のように「cm」を単位として設定されるものとなっている。
また、入力画面40は、始点P1、切換点P2及び終点P3の各点とその各点P1、P2、P3に対し設定される経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量との対応関係が容易に視認できるように、経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量の設定値を入力設定するための入力欄が、前記各点P1、P2、P3に関する入力欄41a、41b、41cのそれぞれの下側に、縦方向に並べて設けられた(表示される)ものとなっている。但し、前述したように本実施例では、経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量は固定値であるため、図示の例では、経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量の入力欄を始点P1の下側にのみ設けており、切換点P2及び終点P3には、その始点P1の入力欄に入力設定された経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量の設定値が表示されるものとなっている。
その正転量及び逆転量の入力欄について、具体的には、始点P1の入力欄41aの下側に、経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量の設定値と、前記巻径が始点P1の時点における経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量の設定値とを入力設定するための入力欄42aが縦並びに設けられ(表示され)るものとなっている。また、切換点P2の入力欄41bの下側に、前記巻径が切換点P2の時点における経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量の設定値を入力設定するための入力欄42bが縦並びに設けられ(表示され)ると共に、入力欄42aに入力設定された経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量の設定値が表示されるものとなっている。さらに、終点P3の入力欄41cの下側に、前記巻径が終点P3の時点における経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量の設定値を入力設定するための入力欄42cが縦並びに設けられ(表示され)ると共に、入力欄42aに入力設定された経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量の設定値が表示されるものとなっている。
なお、その正転量及び逆転量の設定値は、図示のように「mm」を単位として設定されるものとなっている。すなわち、本実施例では、その正転量及び逆転量の設定値には、その回転量に相当する経糸W及び織布Fの移動量が設定されるものとなっている。より詳しくは、経糸ビーム2(服巻ロール6)の正転及び逆転に伴い、その経糸ビーム2(服巻ロール6)上において、経糸W(織布F)がその回転量に相当する分だけ移動すると見なされる。そこで、本実施例では、その移動量(回転量相当値)が、正転量及び逆転量の代替値として設定されるものとなっている。因みに、その移動量(回転量相当値)は、その回転量と経糸ビーム2における前記巻径(服巻ロール6の直径)とから求められる円弧長と一致する。
そして、その各入力欄41a〜41c、42a〜42cに対し、例えば、表示画面40に表示されるテンキー(図示略)を作業者が操作することにより、それぞれの前記各設定値が入力設定される。また、入力画面40には、実行ボタン43が設けられている。そして、前記のように各入力欄41a〜41c、42a〜42cに対し前記の各設定値が入力設定された後、実行ボタン43が操作(タッチ)されることにより、入力設定された各設定値が確定された状態となり、その各設定値が記憶器26に送られて記憶器26に記憶される。
なお、本実施例では、経糸ビーム2の満巻時の前記巻径(図示の例では、90cm)を始点P1として設定し、経糸ビーム2上の経糸Wがすべて消費され尽くした消尽時を終点P3として設定するものとする。すなわち、本実施例では、経糸ビーム2上における経糸Wの満巻時から消尽時までの前記設定範囲において、本発明に基づくキックバック制御が行われるものとなっている。但し、前記の消尽時について、経糸ビーム2は、そのバレル(図示略)上に経糸Wが巻かれるものとなっており、また、巻径検出装置による前記巻径の検出は、そのバレルの径を含めたものとして検出される。従って、経糸Wの消尽時においても、巻径検出装置の検出値は、0ではなくバレルの径に相当するものとなるため、消尽時を終点とする場合には、入力欄41cには、バレルの径(図示の例では、20cm)が設定される。
また、切換点P2は、その切換点P2で画定される前記した各区間内の前記巻径における織機1の停止時点において、前記演算式によって求められた経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量によるキックバック量(織前CFの移動量)を、実際の経糸Wの前記全体の伸び量に応じた所望のキックバック量に近付けるために設定されるものである。より詳しくは、以下の通りである。
先ず前提として、織機1においては、経糸Wの経路長(より詳しくは、経糸ビーム2上における経糸Wの引き出し点から織前CFまでの経路長)は、製織の進行による前記巻径の変化に対し二次曲線的に変化する。また、織機1の停止期間中における経糸Wの前記全体伸び量は、経糸Wの単位長さあたりの伸び量が一定であるとすると、その時点における経糸Wの前記経路長に応じたものとなる。従って、停止時間が同じであると想定した場合における経糸Wの前記全体の伸び量は、前記巻径の変化に対し二次曲線的に変化するものとなる。
なお、織機の停止期間中においては、その前記全体伸び量の分だけ織前CFが変位し、キックバック動作は、その織前CFの変位を補正するために行われるものであるから、前記した所望のキックバック量は、その織機停止期間中における織前CFの変位量(前記全体伸び量)に応じたものとなる。但し、前記したように、本実施例のキックバック動作は、織機1の起動直後の筬打ち力不足をも補うように行われるものであるから、前記所望のキックバック量は、前記した前記全体伸び量に応じた経糸送出側への織前CFの移動量に対し、その筬打ち力不足を補うための経糸送出側への織前CFの移動量(以下、「補償移動量」とも言う。)を加えたものとなる。因みに、前記の筬打ち力不足は、織機1の起動時における主軸MSの回転数の立ち上がり時においてその回転数が定常運転時の回転数よりも低いことに起因するものである。従って、前記補償移動量は、前記巻径や停止時間に関わらず一定の値となる。
このように、各前記巻径の時点における前記所望のキックバック量は、前記全体伸び量に応じた織前CFの移動量に対し一定の前記補償移動量を加えたものであり、また、前記全体伸び量は、前記のように前記巻径の変化に対し二次曲線的に変化するものであるから、前記所望のキックバック量は、前記全体伸び量と同様に、前記巻径の変化に対し二次曲線的に変化するものとなる。そこで、横軸を前記巻径とし、縦軸をキックバック量としたグラフ上において前記巻径と前記所望のキックバック量との関係を描くと、図5において破線で示すようなものとなる。
また、本実施例では、前記のように前記キックバック量情報には、前記各点P1、P2、P3における経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量の設定値が含まれている。但し、その前記各点P1、P2、P3における各設定値は、後述のように、その時点において、前記所望のキックバック量でキックバック動作が行われるような所望の前記最終逆転量を予め求め、それに基づいて設定されているものとする。従って、前記各点P1、P2、P3におけるキックバック量を図5のグラフ上において点(黒丸)で示すと、それぞれの点は前記した破線上に位置するものとなる。
以上を踏まえた上で、例えば、前記設定範囲情報が、始点P1から終点P3までの前記設定範囲内に切換点P2を含まない場合、言い換えると、前記キックバック量情報が始点P1から終点P3までの途中の時点(切換点P2)における経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量の設定値を含んでおらず、それに代えて、始点P1と終点P3との間における各前記巻径の時点での前記最終逆転量を前記のような直線補間により求めるための演算式を含んでいるものとした場合、その前記巻径と各前記巻径の時点におけるキックバック量との関係は、図5のグラフにおいて一点鎖線で示すようなものとなる。そして、その場合は、図5のグラフから明らかなように、特に前記設定範囲の中間部の前後において、前記所望のキックバック量と実際に実行されるキックバック動作時におけるキックバック量(実際のキックバック量)との差が大きいものとなる。
これに対し、前記設定範囲情報が、切換点P2を含むと共に、その切換点P2における経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量の設定値を前記キックバック量情報として含むものとすれば、その前記巻径と各前記巻径の時点におけるキックバック量との関係は、図5のグラフにおいて実線で示すような折れ線SLとなる。そして、その場合には、図5のグラフに示すように、前記所望のキックバック量と前記実際のキックバック量との差を小さくすることができる、すなわち、前記実際のキックバック量を前記所望のキックバック量により近付けることができるものとなる。従って、本実施例では、移動量関連情報は、前記設定範囲情報として切換点P2を含むと共に、前記キックバック量情報としてその切換点P2における経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量の設定値を含むものとしてある。
なお、その場合において、前記各区間における前記実際のキックバック量と前記所望のキックバック量との差は、切換点P2として設定される前記巻径に応じて決定される。そこで、切換点P2については、その2つのキックバック量の差が前記各区間においてより小さくなるような前記巻径が設定される。そして、その切換点P2となる前記巻径については、例えば、図5に示すような前記巻径とキックバック量との関係を示すグラフを描いてみることで、より好ましい値を求めることが可能となる。その切換点P2の求め方について、より詳しくは、以下の通りである。
先ずは、製織を実行する織機1における前記巻径と前記所望のキックバック量との関係を示すグラフを描く。そのために、その織機1における所定の間隔毎の前記巻径(始点P1及び終点P3として設定される前記巻径を含む)の時点での前記経路長を求める。因みに、その前記経路長については、その織機1における経糸ビーム2とテンションロール4(ガイドロール3)との位置関係等から求めることができる。
次いで、その各前記巻径の時点での前記経路長に基づき、各前記巻径の時点での前記経路長に応じた前記全体伸び量を求める。但し、織機1の停止に伴う前記全体伸び量は、停止時間の経過と共に変化する(大きくなる)。そこで、前記全体伸び量を求めるにあたっては、その各前記巻径の時点において織機1が停止したと仮定した上で、その停止時間が予め定めた所定の停止時間(基準の停止時間)であると想定して求めるものとする。すなわち、各前記巻径の時点において織機1が前記基準の停止時間だけ停止した場合における前記全体伸び量を求めるものとする。
なお、各前記巻径の時点における前記全体伸び量は、その時点における前記経路長から一義的に決定されるものではなく、その製織において用いられる経糸Wの種類や製織条件(経糸Wの設定張力等)に応じて異なるものとなる。すなわち、経糸Wの種類が異なると、経糸Wの設定張力が同じ場合であっても、経糸Wの単位長さあたりの伸び量が異なることに伴って前記全体伸び量が異なるものとなり、また、製織条件(特に、経糸Wの設定張力)が異なると、経糸Wの種類が同じであっても、前記全体伸び量が異なるものとなるからである。
従って、各前記巻径の時点についての前記経路長に応じた前記全体伸び量は、その前記経路長に加え、経糸Wの種類及び経糸Wの設定張力を踏まえて求められる。具体的には、例えば、そのときの製織に使用される種類の経糸Wについて予め試験等を行い、製織時における設定張力と同じ張力を前記基準の停止時間と同じ時間だけ仕掛けた際の経糸Wの伸び量を実測し、そこからその前記基準の停止時間でのその経糸Wの単位長さあたりの伸び量を求める。その上で、その単位長さあたりの伸び量を各前記巻径の時点毎の前記経路長に乗算することで、各前記巻径の時点における前記全体の伸び量を求めることができる。また、その経糸Wの物性或いは過去のデータ等から、張力及び時間との関係におけるその経糸Wの伸び率が求められている場合には、各前記巻径の時点における前記経路長に基づき、演算によって各前記巻径の時点における前記全体伸び量を求めることも可能である。
そして、そのようにして求められた各前記巻径の時点での前記全体伸び量に対し、前記補償移動量を加えることで、各前記巻径の時点における前記所望のキックバック量が求まる。その上で、前記した横軸を前記巻径とし、縦軸をキックバック量とするグラフ上において、各前記巻径に対し前記のように求められた前記所望のキックバック量をプロットし、そのプロットした点を(なめらかに)線で結ぶことにより、図5において破線で示すような、二次曲線的な変化の傾向を示す曲線DLがグラフ上に描かれる。そして、その曲線DL(図5における破線)が、始点P1から終点P3までの前記設定範囲における前記巻径と前記所望のキックバック量との関係を示すものとなる。
因みに、そのようにして描かれた前記巻径と前記所望のキックバック量との関係を示す曲線DLは、各前記巻径の時点における前記経路長(織機1の構成)、その製織に使用される経糸Wの種類、製織時における経糸Wの設定張力等によって異なるものとなる。また、その曲線DLは、前記のように始点P1から終点P3までの前記巻径の前記設定範囲における前記巻径と前記所望のキックバック量との関係を示すものであるから、その始点(図5に示す破線の左端)は、前記設定範囲の始点P1として設定される前記巻径の時点における前記所望のキックバック量を示し、終点(図5に示す破線の右端)は、前記設定範囲の終点P3として設定される前記巻径の時点における前記所望のキックバック量を示すものとなっている。
その上で、そのグラフにおいて、前記設定範囲における始点P1と終点P3との間の任意の前記巻径を、切換点P2として設定してみる。そして、図5に示すように、その前記巻径の位置に縦軸と平行な直線を引き、その直線と前記曲線DLとが交差する位置に点(黒丸)をプロットする。なお、仮にその前記巻径がそのまま切換点P2として設定される場合には、その交差する位置(プロットされた点)が、切換点P2における前記所望のキックバック量を示すものとなる。そして、前記曲線DLの始点とそのプロットされた点とを直線で結ぶと共に、そのプロットされた点と前記曲線DLの終点とを直線で結び、それによって描かれた折れ線SL(図5において実線で示す折れ線)を前記曲線DLと比較し、その折れ線SLと前記曲線DLとの差を確認する。
さらに、切換点P2として設定される前記巻径を変更し、前記と同様にして折れ線SLを描いてみる。そして、その変更した後の折れ線SLと前記曲線DLとの差を確認し、変更前のその差と比較して、どちらが前記曲線DLに近い形かを判断する。そして、このような切換点P2としての前記巻径の変更、及びその変更した前記巻径に基づいて描いた折れ線SLと前記曲線DLとの差の確認とを繰り返すことにより、最も適当と思われる前記巻径を切換点P2として設定する。因みに、本実施例では、切換点P2の前記巻径として40cmを設定している。
以上のようにして切換点P2として設定される前記巻径が求められると共に、その前記巻径(切換点P2)と図5に示すグラフの前記曲線DLとから、切換点P2での前記所望のキックバック量が求められる。また、始点P1及び終点P3での前記所望のキックバック量については、前述のように前記曲線DLを描く段階で求められている。そして、そのように求められた前記設定範囲の始点P1、切換点P2及び終点P3の各時点における前記所望のキックバック量に基づき、その各時点における経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量を求めることが行われる。
なお、その織機1におけるキックバック量(織前CFの移動量)と経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量との関係については、予め行われた試験、或いは過去の製織データ等から求められているものとする。そして、その予め求められている関係と前記のように求められた前記各時点の前記所望のキックバック量とから、前記各時点における前記所望のキックバック量に応じた経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量が求められる。
因みに、その経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量は、一般的には、同じ値ではなく、異なる値とされる。何故なら、経糸Wと織布Fとでは同じ張力(経糸Wの張力及び織布Fの張力)に対する経糸W及び織布Fの伸び量が異なる(経糸Wの伸び量の方が大きい)と共に経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転時(経糸W及び織布Fの移動時)に経糸Wに作用する前記摩擦抵抗と織布Fに作用する前記摩擦抵抗とでは前記経糸Wに作用する前記摩擦抵抗の方が大きいため、経糸W及び織布Fの張力を低下させることなく織前CFの位置を前記所望のキックバック量に相当する量だけ移動させるには、経糸ビーム2の前記最終逆転量と服巻ロール6の前記最終逆転量とを異なる値(具体的には、経糸ビーム2の前記最終逆転量の方が大きい値)とする必要があるためである。そして、前記のように求められる結果として、本実施例では、始点P1、切換点P2及び終点P3の前記各時点における経糸ビーム2の最終逆転量は、順に0.2mm、0.4mm、0.5mmとされ、服巻ロール6の最終逆転量は、順に0.1mm、0.3mm、0.4mmとされている。
次に、経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量が決定される。その経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量は、前述のように、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転時に経糸W及び織布Fに作用する前記摩擦抵抗に打ち勝って経糸W及び織布Fが経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量に相当する移動量だけ移動するような状態となる程度の正転量(移動量)が設定される。また、前述のように、その設定される正転量については、経糸ビーム2及び服巻ロール6のそれぞれに対し固定値であり、始点P1、切換点P2及び終点P3のそれぞれに対し同じ値が設定される。
なお、前記摩擦抵抗は、製織に使用される糸(緯糸Y、経糸W)の種類や製織条件(織り組織、緯糸密度、経糸Wの設定張力)等により異なる。そこで、その設定される正転量については、前記の糸の種類や製織条件等を踏まえ、予め行われた試験或いは過去のデータ等に基づいて決定される。但し、前記のように、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転時に経糸W及び織布Fに作用する前記摩擦抵抗は異なる(経糸Wに作用する前記摩擦抵抗の方が大きい)ことから、経糸ビーム2と服巻ロール6とで異なる正転量が設定される。因みに、本実施例では、以上に基づき、経糸ビーム2の正転量が1.2mmとされ、服巻ロール6の正転量が1.0mmとされている。
その上で、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量は、前述のように、経糸ビーム2及び服巻ロール6のそれぞれの前記最終逆転量に正転量を加算した値となることから、始点P1、切換点P2及び終点P3の各時点における経糸ビーム2の逆転量は、それぞれ1.4mm、1.6mm、1.7mmとなる。また、服巻ロール6の逆転量は、それぞれ1.1mm、1.3mm、1.4mmとなる。そして、以上のように求められた移動量関連情報における前記設定範囲情報に含まれる始点P1、切換点P2及び終点P3の前記各時点における前記巻径の設定値、並びに移動量関連情報における前記キックバック量情報に含まれる経糸ビーム2、服巻ロール6の正転量及び逆転量の設定値は、入力設定装置25の入力画面40において入力設定され、主制御装置24における記憶器26に記憶される。
また、前記のように始点P1、切換点P2及び終点P3の各時点における各設定値が入力設定装置25の入力画面40から入力設定されると、その入力設定された各設定値に基づき、制御器28が、各区間α、βについての前述の演算式における前記直線補間式及び前記加算式を作成し、その作成された演算式が記憶器26に記憶される。
なお、前記直線補間式は、記憶器26に記憶されている各区間α、βに応じた基礎式(前述のa×ΔD1+K1及びb×ΔD2+K2)と入力設定された前記の各設定値とに基づいて作成されるものであり、制御器28は、記憶器26から各区間α、βに応じた前記基礎式を読み出し、前記各設定値から係数a又は係数bを求めると共に、必要な設定値を代入して前記直線補間式を作成する。具体的には、本実施例の場合について、区間αにおける経糸ビーム2の前記最終逆転量RL1xを求めるための前記直線補間式は、始点P1、切換点P2における前記巻径がそれぞれ90cm、40cmであり、経糸ビーム2の前記最終逆転量がそれぞれ0.2mm(=1.4−1.2)、0.4mm(=1.6−1.2)であることから、係数aは、a=(0.4−0.2)/(90−40)=0.004となり、その前記直線補間式は、RL1x=0.004×(90−Dx)+0.2となる。
また、経糸ビーム2の逆転量を求めるための前記加算式は、前記最終逆転量に正転量を加算する式であって、設定された固定値である正転量の設定値を代入したものとして作成される。但し、そのための基礎式も前記直線補間式と同様に記憶器26に記憶されており、制御器28は、その基礎式を読み出して前記加算式を作成する。そして、経糸ビーム2の正転量が1.2mmであることから、区間αにおける経糸ビーム2の逆転量(RL1)を求めるための前記加算式は、RL1=RL1x+1.2となる。同様の求め方により、区間αにおける服巻ロール6の前記最終逆転量RT1xを求めるための前記直線補間式は、RT1x=0.004×(90−Dx)+0.1となり、区間αにおける服巻ロール6の逆転量RT1を求めるための前記加算式は、RT1=RT1x+1.0となる。
また、区間βについては、経糸ビーム2の前記最終逆転量RL2xを求めるための前記直線補間式は、係数bが0.005となることから、RL2x=0.005×(40−Dx)+0.4となり、区間βにおける経糸ビーム2の逆転量RL2を求めるための前記加算式は、RL2=RL2x+1.2となる。さらに、服巻ロール6の前記最終逆転量RT2xを求めるための前記直線補間式は、RT2x=0.005×(40−Dx)+0.3となり、区間βにおける服巻ロール6の逆転量RT2を求めるための前記加算式は、RT2=RT2x+1.0となる。そして、そのようにして制御器28において作成された演算式は、制御器28から記憶器26に送られ、記憶器26に記憶される。
なお、以上で説明したように、本実施例は、区間α、βにおける前記最終逆転量を前記直線補間式を用いて求めることから、各区間内において前記巻径の変化に対する前記最終逆転量の変化の割合は一定となっている。また、前述のように、前記設定範囲を2つの区間α、βに分割するための切換点P2は、その切換点P2に基づいて求められる各区間α、βのための前記直線補間式による前記巻径と前記最終逆転量との関係が、二次曲線的な変化を示す前記巻径と前記所望のキックバック量(前記最終逆転量)との関係に近付くように設定される。従って、区間αと区間βとでは、前記巻径の変化に対する前記最終逆転量の変化の割合が異なるものとなっている。さらに、前記巻径と前記最終逆転量との関係が前記のように設定されることからして、本実施例では、前記設定範囲の始点P1から前記設定範囲の中間部分までの区間(前半の部分範囲)と、その中間部分から前記設定範囲の終点P3までの区間(後半の部分範囲)とで、前記巻径の変化に対する前記最終逆転量の変化が異なるものとなる。
以上のような本実施例における織段防止装置について、その作用は以下の通りである。
製織運転中の織機1が停止した後の再起動の時点において、主制御装置24における制御器28に織機1の起動信号(図示略)が入力されると、先ず、制御器28は、巻径検出装置における巻径検出器27によって検出された経糸ビーム2の前記巻径の検出値Dx(その再起動の時点における前記巻径)が前記巻径の前記設定範囲の区間α(始点P1と切換点P2との間)又は区間β(切換点P2と終点P3との間)のどちらに含まれているかによって定まる検出値Dxと切換点P2として設定された前記巻径の設定値D2との大小関係の比較を実行する。すなわち、検出値Dxが区間αに含まれる場合には検出値Dx>設定値D2となり、検出値Dxが区間βに含まれる場合には検出値Dx<設定値D2となるため、そのいずれかであるかを判断する。なお、検出値Dxが設定値D2と等しい場合(再起動の時点の前記巻径が切換点P2として設定された前記巻径と等しい場合)については、後述のようにする。
そして、検出値Dx>設定値D2と判断された場合には、制御器28は、記憶器26から区間αについての経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量を求めるための前記直線補間式と経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量を求めるための前記加算式とを読み出し、その読み出した前記直線補間式及び前記加算式と前記巻径の検出値Dxとから、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量を求める。同様に、検出値Dx<設定値D2と判断された場合には、制御器28は、記憶器26から区間βについての経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量を求めるための前記直線補間式と経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量を求めるための前記加算式とを読み出し、その読み出した前記直線補間式及び前記加算式と前記巻径の検出値Dxとから、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量を求める。
なお、前述のように経糸Wの前記全体伸び量は、織機1の停止時間によって変化するものであるのに対し、前記直線補間式で求められる経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量は前記基準の停止時間についてのものである。そのため、実際の停止時間が前記基準の時間と大きく異なる場合には、その求められた前記最終逆転量を停止時間に基づいて補正する必要がある。そこで、記憶器26には、その補正のための停止時間に応じた補正係数が記憶されているものとする。その上で、前記最終逆転量を求めるにあたっては、制御器28が、計測された停止時間に応じた前記補正係数を記憶器26から読み出し、前記のように前記直線補間式から求められた経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量に対し、その読み出した前記補正係数を乗じることで、実際の停止時間(t)に応じた経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量を求めるものとすれば良い。従って、移動量関連情報における前記キックバック量情報に含まれる演算式は、その前記補正係数を乗じるための演算式(補正式)も含んでいる。
因みに、前記補正係数については、停止時間と経糸Wの前記全体伸び量との関係に基づき、前記基準の停止時間における前記全体伸び量を基準として求められるものである。具体的には、各巻径の時点における停止時間と前記全体伸び量との関係は同じであるとみなし、ある任意の前記巻径での織機1の停止状態における前記全体伸び量を所定の時間間隔毎に実測する、或いは、時間と単位長さあたりの伸び量との関係が分かっている場合には、任意の前記巻径における初期の経路長(停止状態での時間経過が0の時点における経路長)に基づいて計算で求める等により、各停止時間(前記基準の停止時間を含む)での前記全体伸び量を求める。その上で、前記基準の停止時間での前記全体伸び量を1とみなしたときの各停止時間における前記全体伸び量の換算値が、前記補正係数となる。
但し、停止時間の経過に対する前記全体伸び量の変化の度合いはそれほど大きくはないため、停止時間が異なっていてもその時間差が小さい場合には、前記全体伸び量の差は小さい。そして、そのような場合には、同じキックバック量でのキックバック動作であっても織段が発生する可能性は低い。従って、前記補正係数は、予め定めた時間範囲毎にその値が設定される(同じ時間範囲に含まれる停止時間に対応する値を同じとする)ものであっても良く、本実施例では、前記基準の停止時間を基準とする時間範囲に対応させて設定されるものとする。その上で、本実施例では、その時間範囲を、前記基準の停止時間を含む時間範囲(中期の時間範囲)と、その中期の時間範囲よりも短い停止時間の範囲(初期の時間範囲)と、前記中期の時間範囲以上の停止時間の範囲(終期の時間範囲)とに分け、そのそれぞれに対し前記補正係数が設定されているものとする。
なお、実際の停止時間が前記基準の停止時間と同じである場合には、前述の前記基準の停止時間について設定された前記直線補間式で求められた前記最終逆転量が、そのまま実際の停止時間に対する前記最終逆転量となる。すなわち、その場合には、求められた前記最終逆転量に対する補正が行われないものであるから、前記基準の停止時間に応じた前記補正係数は、1.0となる。従って、前記した前記中期の時間範囲に対し設定される前記補正係数は、1.0である。そして、前記前記初期の時間範囲に対しては、その1.0よりも小さい前記補正係数が設定され、前記終期の時間範囲に対しては、その1.0よりも大きい前記補正係数が設定される。
具体的には、例えば、前記基準の停止時間を10分とし、その前後5分の範囲である5分≦停止時間<15分を前記中期の時間範囲(前記基準の停止時間と同じ前記最終逆転量でのキックバック動作が行われる範囲)に定めるとすると、記憶器26には、停止時間:5≦t<15(分)に対応させるかたちで前記補正係数として1.0が設定、記憶される。また、前記のように求められた各停止時間と前記全体伸び量との関係に基づき、停止時間が5分未満である場合に適当な前記補正係数が0.98であると定められるとすると、停止時間が5分未満である前記初期の時間範囲については、記憶器26には、停止時間:t<5(分)に対応するかたちで前記補正係数として0.98が設定、記憶される。同様に、前記終期の時間範囲について、適当な前記補正係数が1.02であると定められるとすると、停止時間が15分以上である前記終期の時間範囲については、記憶器26には、t≧15(分)に対応するかたちで前記補正係数として1.02が設定、記憶される。
また、織機1の実際の停止時間tについては、前記のように制御器28に対し停止信号Sbが入力された時点から、起動信号Saが入力されるまでの経過時間を制御器28に内蔵されたタイマー(図示略)によりカウントすることにより求められるものとすれば良い。そして、制御器28は、その求められた実際の停止時間tが前記初期の時間範囲、前記中期の時間範囲、及び前記終期の時間範囲のどの時間範囲に含まれているかを判別し、前記補正係数を決定する。
その上で、制御器28は、前記巻径の検出値Dxと前記直線補間式とから求められた経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量とその決定された前記補正係数とを前記補正式により乗じて実際の停止時間tに対応する前記最終逆転量を求め、さらに、その求められた前記最終逆転量と前記加算式とから経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量を求める。
なお、前記巻径の検出値Dxが切換点P2として設定された前記巻径の設定値D2と等しい(検出値Dx=設定値D2)場合については、そのときの経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量は、区間α及び区間βについての前記直線補間式のいずれを用いても求めることが可能であるため、前述の検出値Dxと設定値D2との比較において検出値Dx=設定値D2と判断された場合に、制御器28がそのいずれかの前記直線補間式を記憶器26から読み出すように設定されるものとしても良い。すなわち、前記の検出値Dxと設定値D2との比較を、Dx>D2であるかDx≦D2であるかという判断、又はDx≧D2であるかDx<D2であるかという判断が行われるものとしても良い。そして、その場合においても、前記と同様にして経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量及び逆転量が前記演算式によって求められる。
但し、前記巻径が設定値D2である場合における経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量は、移動量関連情報における前記キックバック量情報に含まれている。従って、求め方を統一する場合には前記のように演算式を用いて求めるものとなるが、それに代えて、検出値Dx=設定値D2と判断された場合に、記憶器26に記憶されている前記キックバック量情報に含まれる逆転量を記憶器26から読み出し、それを使用するものであっても良い。
同様に、経糸ビーム2が満巻状態での製織開始直後に織機が停止した場合、すなわち、再起動時点の前記巻径の検出値Dxが始点P1として設定された前記巻径の設定値D1と等しい場合、前記に基づけば、検出値Dx>設定値D2なので、区間αについての前記直線補間式を用いて前記最終逆転量が求められ、そこから経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量が求められることとなる。また、経糸ビーム2上の経糸Wが消尽される直前に織機が停止した場合、すなわち、再起動時点の前記巻径の検出値Dxが終点P3として設定された前記巻径の設定値D3と等しい場合についても同様である。しかし、この前記巻径の検出値Dx=設定値D1、及び検出値Dx=設定値D3と判断された場合についても、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量は前記キックバック量情報に含まれているため、前記のように演算式によって求めることに代えて、記憶器26から読み出して使用するものとしても良い。
そして、制御器28は、前記のようにして求められた経糸ビーム2の逆転量及び記憶器26から読み出した固定値として設定されている経糸ビーム2の正転量を送出制御装置20へ送ると共に、求められた服巻ロール6の逆転量及び記憶器26から読み出した固定値として設定されている服巻ロール6の正転量を巻取制御装置21へ送る。その上で、送出制御装置20及び巻取制御装置21は、その制御器28から送られてきた経糸ビーム2、服巻ロール6の正転量及び逆転量に基づいて送出モータM3、巻取モータM2の駆動を制御することにより前記織前位置変位部材である経糸ビーム2及び服巻ロール6が回転駆動されてキックバック動作が行われる。そして、その結果として、織前CFが前記巻径の検出値Dxに応じた経糸送出側の位置へ移動するものとなり、その状態で織機1の運転が開始される。
なお、以上で説明したように、本実施例では、前記織前位置変位部材である経糸ビーム2及び服巻ロール6は、主制御装置24における制御器28において経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量及び逆転量が求められると共に、送出制御装置20及び巻取制御装置21においてその駆動が制御されるものとなっている。従って、本実施例では、主制御装置24における制御器28、送出制御装置20及び巻取制御装置21が本発明の織段防止装置における駆動制御装置に相当する。
そして、そのような本実施例の織段防止装置によれば、経糸ビーム2及び服巻ロール6を前記織前位置変位部材とする場合において、再起動時点に行われるキックバック動作のためのそれぞれの駆動量(正転量、逆転量)がその再起動時点における前記巻径(経糸Wの前記全体伸び量)に応じたものとされるため、そのキックバック動作時におけるキックバック量が前記所望のキックバック量に近いものとなり、より有効に織段(停止段)を防止することが可能となる。
なお、本発明については、以上で説明した実施例(前記実施例)に限定されるものではなく、以下のような変形した実施形態でも実施が可能である。
(1)前記実施例では、移動量関連情報が、前記設定範囲情報として、前記設定範囲の始点P1及び終点P3に加え、その始点P1と終点P3との間に設定される境界値としての切換点P2を含んでいる。より詳しくは、前記実施例では、各巻径の時点(少なくとも前記設定範囲情報に含まれる前記巻径を除く前記巻径の時点)における織前位置変位部材(経糸ビーム2、服巻ロール6)の前記最終逆転量が、移動量関連情報における前記キックバック量情報に含まれる前記演算式であって直線補間を用いて前記最終逆転量を求める前記演算式によって求められる場合において、その前記キックバック量情報(前記演算式)に基づいて求められる前記最終逆転量、すなわち、その求められた前記最終逆転量に応じて実際に実行されるキックバック動作のキックバック量(実際のキックバック量)を前記所望のキックバック量に近付けるために、移動量関連情報は、前記設定範囲情報として前記のような境界値(切換点P2)を含むものとされている。
しかし、本発明においては、移動量関連情報は、前記設定範囲情報として、そのような境界値(切換点P2)を含むものに限らず、移動量関連情報における前記キックバック量情報に基づいて求められる前記実際のキックバック量と前記所望のキックバック量との差が前記設定範囲内のいずれの前記巻径においても許容可能な範囲内に収まるのであれば、境界値を含まないものであっても良い。すなわち、前記実施例のように直線補間を用いて前記最終逆転量を求める場合において、移動量関連情報は、前記設定範囲情報については前記設定範囲の始点及び終点のみを含むものであっても良い。
なお、前記で言う許容可能な範囲とは、前記のキックバック量の差(前記実際のキックバック量と前記所望のキックバック量との差)について、その差によって生じる織段(停止段)の程度が、その製織される織物に求められる品質において問題無いと判断される範囲である。但し、その範囲は、その製織される織物によって異なる。
より詳しくは、前記のように前記設定範囲情報が境界値(切換点)を含まない(前記設定範囲の始点及び終点のみが設定される)場合であって、各前記巻径の時点における織前位置変位部材の前記最終逆転量が前記キックバック量情報に含まれる各点における前記最終逆転量に対する直線補間によって求められる場合、前記巻径とその求められる前記最終逆転量に応じた前記実際のキックバック量との関係は、図6(a)のグラフにおいてSL1で示されるように、前記設定範囲の始点P1におけるキックバック量と終点P3におけるキックバック量とを結ぶ直線として描かれるものとなる。
一方、前述のように、前記所望のキックバック量は経糸Wの前記全体伸び量に対応するものであり、その前記全体伸び量は織機1の構成で定まる各前記巻径の時点における前記経路長、その製織に使用される経糸Wの種類、及び製織時における経糸Wの設定張力値等から求められるものであるが、それらに基づいて前記全体伸び量を求めた結果、前記の条件等によっては、前記巻径と前記全体伸び量に対応する前記所望のキックバック量との関係が、例えば図6(a)のグラフにおいてDL1に示されるような、比較的直線に近い曲線として描かれるものとなる場合がある。
そして、その場合には、各前記巻径の時点における前記実際のキックバック量と前記所望のキックバック量との差(図6(a)のグラフにおける直線SL1と曲線DL1との縦軸方向における差)は、前記所望のキックバック量が例えば図5のグラフで示されるような変化の傾向を示す場合と比べて小さくなる。しかも、図6(a)のグラフから分かるように、前記差は前記巻径の前記設定範囲に亘って一定ではなく、前記設定範囲の始点P1側や終点P3側においてはより小さくなっている。
なお、前記実際のキックバック量と前記所望のキックバック量とに差があると織段が発生する虞があるが、その織段の程度は前記差が小さいほど小さくなる。また、製織される織物に対し求められる品質は様々であり、織物によってはある程度の織段が許容されるものもある。さらに、起動時点の前記全体伸び量(織前CFの変位量)と前記実際のキックバック量との関係においてどの程度の織段が発生するかについては、例えば試験等によって予め把握することが可能である。
そこで、前記のように求められる各前記巻径における前記所望のキックバック量と、移動量関連情報における前記設定範囲情報に前記設定範囲の始点P1及び終点P3のみが含まれている場合を想定したときの前記実際のキックバック量との差について、その差が最大となる時点(前記巻径)において発生が想定される織段の程度が、製織しようとする織物において品質上許容できると判断される場合には、境界値は省略可能である。すなわち、そのような場合において、移動量関連情報は、前記設定範囲情報として境界値を含まないものであっても良い。
また、前記駆動量が設定される各点間のキックバック量を直線補間によって求める場合に設定される境界値について、前記実施例では、その移動量関連情報おける前記設定範囲情報に含まれる境界値を1つ(切換点P2)のみとしたが、本発明では、その境界値は1つに限らず、2つ以上であっても良い。すなわち、本発明においては、移動量関連情報は、前記設定範囲情報として前記設定範囲を分割するための境界値を2つ以上含むものであっても良い。なお、その場合には、前記設定範囲は3つ以上の区間に分割されるものとなる。そして、その場合には、前記実施例のような境界値(切換点P2)が1つの場合(前記設定範囲を2つの区間に分割する場合)と比べ、各区間において前記実際のキックバック量と前記所望のキックバック量との差を小さくすることができる。
具体的には、例えば前記設定範囲情報に3つの境界値(切換点P2a、P2b、P2c)が含まれる場合で言うと、前記巻径とキックバック量との関係を示すグラフにおいては、図6(b)に示すように、前記設定範囲が4つの区間(区間α1、β1、γ1、δ1)に分割されるかたちとなる。その場合、そのグラフ上に描かれた前記巻径と前記所望のキックバック量との関係を示す曲線DL2を見ると、前記設定範囲を1つ又は2つの区間に分割する場合と比べ、区間毎の曲線はより直線に近いかたちとなる。従って、その場合には、各区間において始点と終点との間を直線補間することによって求められる前記実際のキックバック量と、前記所望のキックバック量との差が小さくなる。
なお、そのように移動量関連情報が、前記設定範囲情報として2つ以上の境界値を含むものとする場合において、その境界値の数や、その境界値の前記巻径については、前記実施例の考え方に基づき、各前記巻径の時点における前記実際のキックバック量と前記所望のキックバック量との差を考慮した上で適宜に設定すれば良い。但し、その差を考慮するにあたっては、前記のように、そのときに製織される織物の品質も考慮される。
(2)前記実施例及び前記(1)の例では、各前記巻径の時点(少なくとも移動量関連情報における前記設定範囲情報に含まれる前記巻径を除く前記巻径の時点)における織前位置変位部材の前記最終逆転量が演算式を用いた演算によって求められるものとし、その上で、その演算式を、織前位置変位部材の前記駆動量が設定される各点間を直線補間する式(直線補間式)としている。しかし、本発明においては、前記最終逆転量が演算で求められる場合におけるその演算式は、そのような前記直線補間式に限らず、二次関数を用いた演算式(二次関数式)であっても良い。
詳しくは、前述のように、前記所望のキックバック量は、前記巻径の変化に対し二次曲線的に変化する。それに対し、前記直線補間式で前記最終逆転量を求めた場合における前記巻径の変化に対する前記実際のキックバック量の変化は前述のように直線的に変化するかたちとなるため、求められる前記最終逆転量に応じた前記実際のキックバック量の前記巻径の変化に対する変化が前記二次曲線的なものとなるように、すなわち、求められる前記最終逆転量に応じた前記実際のキックバック量が前記所望のキックバック量により近付いたものとなるように、その前記最終逆転量を求めるための演算式を前記二次関数式としても良い。
なお、前記二次関数式は、前記実施例のように各前記巻径の時点(前記設定範囲の始点P1及び終点P3を含む)における前記所望のキックバック量を求めた上で、始点P1及び終点P3に加え、前記のように前記所望のキックバック量が求められた各前記巻径の時点のうちの始点P1、終点P3を除いた1つの前記巻径の時点(中間点Px)を任意に選択することにより、その3つの時点における前記巻径及び前記所望のキックバック量から求めることができる。因みに、前記所望のキックバック量と各前記巻径との関係が図7(a)のグラフにおいて破線の曲線DL3で描かれるような場合において、前記のようにして求めた前記二次関数式に基づいて各前記巻径の時点における前記最終逆転量を求めた場合、その前記最終逆転量に応じた前記実際のキックバック量と前記巻径との関係は、例えば図7(a)のグラフにおいて実線の曲線SL3で描かれるようなものとなる。
但し、前述のように、求められる前記所望のキックバック量と各前記巻径との関係は、グラフで示すと前記のように二次曲線的な曲線で描かれるが、そのときの経糸の種類や経糸Wの設定張力等の製織条件によっては、その曲線は、例えば図7(a)に示すように、前記のようにして求められた前記二次関数式から求められる各前記巻径の時点における前記最終逆転量に応じた前記実際のキックバック量と各前記巻径との関係として描かれる前記曲線とは一致しない場合がある。従って、そのような場合には、前記巻径の前記設定範囲における少なくとも一部において、前記所望のキックバック量と前記実際のキックバック量との間に差が生じた状態となる。そして、その差の状態は、前記のようにして前記二次関数式を求めるにあたり、任意に選択される中間点Pxをどの前記巻径とするかによって異なるものとなる。
そこで、前記のような場合、前記二次関数式を求めるにあたっては、例えば、中間点Pxを適宜変更してそれぞれについて前記二次関数式を求め、その求められた前記二次関数式から求められる各前記巻径の時点における前記最終逆転量に応じて前記実際のキックバック量と各前記巻径との関係(曲線)をグラフ上に描いてみて、その元となる前記所望のキックバック量と前記巻径との関係を示す曲線とを比較し、最も適当と判断される前記二次関数式を決定すれば良い。
因みに、前記のようにして求めた前記二次関数式よって求められる前記最終逆転量に応じた前記実際のキックバック量は、前記巻径の変化に対し二次曲線的に変化することから、この例では、前記巻径と前記実際のキックバック量との関係は、始点P1における前記巻径及び前記実際のキックバック量(=前記所望のキックバック量)を基準とすると、その基準からの前記巻径の時点における前記巻径の減少量に対する前記実際のキックバック量の増加分の割合が、前記設定範囲内の各前記巻径の時点で異なるものとなる。従って、この例では、前記設定範囲の始点P1から前記設定範囲の中間部分までの前半の部分範囲と、その中間部分から前記設定範囲の終点P3までの後半の部分範囲とで、その部分範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記実際のキックバック量の変化が異なるものとなる。
なお、以上では、前記最終逆転量を求めるための演算式を、始点P1から終点P3に亘る前記設定範囲の全体に対応した1つの前記二次関数式としている。すなわち、前記巻径の前記設定範囲を前記実施例等のように複数の区間に分割されたものとはせずに1つの区間とし、その上で、その1つの演算式(前記二次関数式)により、各前記巻径の時点における前記最終逆転量が求められるものとしている。しかし、前記最終逆転量を求めるための演算式を前記のようにして求められる前記二次関数式とする場合においても、前記実施例等のように前記設定範囲を複数の区間に分割し、その区間毎に前記二次関数式が設定されるものとしても良い。
(3)以上で説明した実施形態は、各巻径の時点(少なくとも移動量関連情報における前記設定範囲情報に含まれる前記巻径を除く前記巻径の時点)における織前位置変位部材の逆転量が、移動量関連情報における前記キックバック量情報に含まれる演算式を用いて演算によって求められる例である。しかし、本発明において、その逆転量の求め方は、演算で求めるものに限らず、各前記巻径に織前位置変位部材の逆転量(又は前記最終逆転量)を対応させるかたちで作成されたデータベースを設定しておき、そのデータベースを用いて求めるものであっても良い。そして、その場合には、そのデータベースが移動量関連情報に含まれるものとなる。
図8(a)、(b)は、それぞれ織前位置変位部材である経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量に関するデータベースの一例である。すなわち、この例は、前記実施例等において前記直線補間式或いは前記二次関数式を用いて求めていた経糸ビーム2及び服巻ロール6の最終逆転量が、そのそれぞれについての前記最終逆転量を経糸ビーム2の各前記巻径(Dn)に対応させるかたちで設定されたデータベースを用いて求められる例である。
因みに、図8の例では、経糸ビーム2及び服巻ロール6についての各データベースは、前記巻径の前記設定範囲の始点(Dn=90cm)から終点(Dn=20cm)までの間において、前記巻径が2cm間隔で設定され、その各前記巻径に対し前記最終逆転量が設定されたものとなっている。但し、その2cm毎の各前記巻径は、具体的には、その前記巻径をDnとすると、Dn≦Dx<Dn−1に対応しているものとする。例えば、Dn=86cmに対し設定された前記最終逆転量が適用されるのは、前記巻径の検出値Dxが86≦Dx<84(cm)の範囲となる。
さらに、図8に示す例では、データベースは、各前記巻径に対する前記最終逆転量が、織機1の停止時間tの経過に対する時間範囲毎に設定されたものとなっている。具体的には、そのデータベースは、その時間範囲として前記実施例と同様にt<5(分)、5≦t<15(分)、t≧15(分)の3つの時間範囲が設定されたものとなっており、それら各時間範囲に対し前記巻径毎の前記最終逆転量が設定されたものとなっている。
そして、そのデータベースは、前記のように移動量関連情報に含まれるものであり、前記キックバック量情報に含まれる演算式と同様に、記憶器に記憶される。それにより、製織中の織機1が停止した後の再起動の時点においては、例えば前記実施例の演算器28により、前記巻径の検出値Dxと織機1の実際の停止時間tとに基づき、記憶器に記憶されているデータベースからその前記巻径の検出値Dx及び実際の停止時間tに応じた経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量が読み出される。その結果、前記実施例で前記直線補間式を用いて求めた場合と同様に、経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量が求められた状態となる。その上で、前記実施例と同様に、その求めた前記最終逆転量に基づいて経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量が求められるものとすれば良い。すなわち、その求めた前記最終逆転量と記憶器に記憶されている経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量とから前記加算式を用いて経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量が求められる。
なお、織前位置変位部材の逆転量を求めるためのデータベースは、以上のように各前記巻径に織前位置変位部材の前記最終逆転量を対応させるかたちで設定されたものに限らず、各前記巻径に織前位置変位部材の逆転量そのものを対応させるかたちで設定されるものであっても良い。そして、その場合には、前記加算式を用いることなく前記巻径の検出値Dxからデータベースを用いて直接的に織前位置変位部材の逆転量が求められる。従って、その場合には、移動量関連情報における前記キックバック量情報には、織前位置変位部材の逆転量を求めるための演算式が含まれないものとなる。
(4)移動量関連情報における前記設定範囲情報に含まれる前記設定範囲について、以上の例では、経糸ビーム2上における経糸Wの満巻時から消尽時までの範囲がその前記設定範囲として設定されている。すなわち、経糸ビーム2の満巻時の前記巻径が前記設定範囲の始点として設定され、且つ、経糸Wの消尽時の前記巻径が前記設定範囲の終点として設定され、その満巻時及び消尽時の前記巻径の設定値が前記設定範囲情報に含まれている。しかし、本発明においては、移動量関連情報における前記設定範囲情報に含まれる前記巻径の前記設定範囲は、そのような範囲に限らない。
例えば、前記設定範囲の始点として設定される前記巻径は、経糸ビーム2の満巻時における前記巻径よりも小さい前記巻径であっても良い。詳しくは、準備工程において経糸Wが巻き付けられた経糸ビーム2は、内層から外層に亘って一様の張力で経糸Wが巻き付けられているとは限らず、外層側の部分において経糸Wが高い張力で巻き付けられているものがある。その理由は、経糸ビーム2の製織工場等での保管時等において、巻き付けられた経糸Wが自重によって下がり、その巻き姿が円形から崩れた状態となることを防止するためである。すなわち、巻き付け時の張力をより高い状態とすることでその巻き付けられた状態での経糸Wの伸びが抑えられるため、経糸ビーム2の外層側の部分における経糸Wの巻き付け張力をより高くしてその外側の部分の経糸Wを伸びにくい状態とすることで、前記のような巻き姿の崩れを防ぐことを目的としたものである。
その場合、そのような経糸ビーム2を用いた製織においては、前記のように経糸ビーム2の外層側の部分に対し経糸Wが高い張力で巻き付けられることに伴って経糸ビーム2から織前CFに至る経糸Wがその経糸Wの種類との兼ね合いで伸びにくい状態となっている製織開始時(経糸ビーム2の満巻時)からの初期の前記巻径の範囲(先範囲)においては、その前記先範囲での織機停止期間中における前記全体伸び量(織前CFの移動量)が、前記巻径(前記経路長)が異なっていても大きくは異ならない場合がある。そして、その場合には、キックバック量を一定としても、製織される織物の品質に対する影響が小さいため、品質上において許容できる場合がある。従って、その場合には、前記先範囲に対し設定されるキックバック量を一定とし、前記先範囲の終了時点における前記巻径を本発明における前記設定範囲の始点として設定するものとしても良い。
また、前記設定範囲の終点として設定される前記巻径が、経糸Wの消尽時における前記巻径よりも大きい前記巻径であっても良い。詳しくは、経糸Wの前記全体伸び量は、前述のように前記巻径の変化に対し二次曲線的に変化する、すなわち、前記巻径が小さくなるほど前記巻径の変化に対する前記全体伸び量の変化(増加)の割合が小さくなっている。そして、経糸Wの種類等によっては、前記巻径がある程度以上に小さくなる経糸Wの消尽時までの終期の前記巻径の範囲(後範囲)においては、キックバック量を一定としても、製織される織物の品質に対する影響が小さいため、品質上において許容できる場合がある。従って、その場合には、前記後範囲に対し設定されるキックバック量を一定とし、前記後範囲の開始時点における前記巻径を本発明における前記設定範囲の終点として設定するものとしても良い。
なお、以上のように前記巻径の前記設定範囲が設定された場合における前記巻径の前記設定範囲外のキックバック量(一定)について、経糸ビーム2の満巻時の前記巻径よりも小さい前記巻径が前記設定範囲の始点として設定される場合は、前記先範囲のキックバック量は、例えば、経糸ビーム2の満巻時の前記巻径に基づいて設定すれば良い。その上で、前記設定範囲の始点におけるキックバック量については、経糸Wの張力が連続性を持って変化することからして、その前記先範囲に対し設定されたキックバック量と同じキックバック量が設定されるものとするのが好ましい。同様に、前記後範囲のキックバック量については、前記設定範囲の終点として設定した前記巻径に設定されたキックバック量と同じキックバック量とされるものとするのが好ましい。
因みに、以上で説明した移動量関連情報における前記設定範囲情報に含まれる前記巻径の前記設定範囲の例について、前記巻径とキックバック量との関係をグラフとして描くと、例えば、図7(b)に示すようなものとなる。詳しくは、始点P1と終点P3との間に切換点P2(境界値)が設けられる場合は、その前記巻径と前記実際のキックバック量との関係は、実線で示す折れ線SL4のようなものとなり、また、始点P1と終点P3との間で切換点P2(境界値)が省略できる場合は、その関係は、一点鎖線で示す折れ線SL5のようなものとなる。
(5)キックバック動作のための織前位置変位部材としての経糸ビーム2及び服巻ロール6の回転駆動について、前記実施例では、経糸ビーム2及び服巻ロール6を逆転駆動した後に正転駆動する態様で両者を連動させて(同時に)回転駆動するものとした。しかし、本発明においては、織前位置変位部材を経糸ビーム2及び服巻ロール6とする場合におけるその回転駆動の態様は、前記実施例のものに限らず、その逆であっても良い。すなわち、経糸ビーム2及び服巻ロール6を、先ず正転駆動した後に逆転駆動する態様としても良い。
また、本発明におけるキックバック動作は、経糸ビーム2と服巻ロール6とを同時に回転駆動することによって行われるものに限らず、経糸ビーム2と服巻ロール6とが予め設定された順序で回転駆動されるものであっても良い。例えば、前記実施例の経糸ビーム2及び服巻ロール6を逆転駆動させた後に正転駆動させる態様において、経糸ビーム2が逆転駆動された後に服巻ロール6が逆転駆動され、その後に経糸ビーム2が正転駆動されて最後に服巻ロール6が正転駆動されるといった順序でキックバック動作が行われるものとしても良く、或いは、服巻ロール6が逆転駆動された後に経糸ビーム2が逆転駆動され、その後に服巻ロール6が正転駆動されて最後に経糸ビーム2が正転駆動されるといった順序でキックバック動作が行われるものとしても良い。
さらに、前記した経糸ビーム2及び服巻ロール6を正転駆動した後に逆転駆動する態様においても、同様に経糸ビーム2と服巻ロール6とが予め設定された順序で回転駆動されるものであっても良い。そして、その場合においても、経糸ビーム2及び服巻ロール6が回転駆動される順序を逆にするものとしても良い。
なお、キックバック動作における経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量について、前記実施例では、前記摩擦抵抗が前記巻径の変化に関わらず略一定であると見なした上で、その正転量が固定値として設定されるものとした。しかし、前述の通り、前記巻径が変化すると経糸Wとガイドロール3との接触面積が変化するため、前記摩擦抵抗は、厳密には前記巻径の変化により変化するものである。そのため、経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量については、固定値に限られるものではなく、前記巻径の変化に応じて変化する前記摩擦抵抗の大きさに対応させるかたちで前記巻径の変化に応じて変化させるものとしても良い。因みに、その場合における経糸ビーム2及び服巻ロール6の正転量の求め方については、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転量の求め方と同様に、演算式やデータベースを用いて求めるものとすれば良い。
また、前記実施例では、キックバック動作に関し、織前CFを前記摩擦抵抗に打ち勝つように移動させるために、織前CFを一旦経糸送出側へ大きく移動させるものとした。しかし、製織される織物や経糸Wの種類により前記摩擦抵抗が無視できるほど小さい場合は、キックバック動作においては、織前CFをそのように移動させる必要が無く、織前CFを直接的に前記目標位置へ移動させる、すなわち、経糸ビーム2及び服巻ロール6の逆転駆動のみを行うことにより織前CFを前記目標位置へ移動させるものとしても良い。なお、その場合は、その逆転量が前記実施例における経糸ビーム2及び服巻ロール6の前記最終逆転量に相当することとなる。
(6)前記実施例では、経糸ビーム2及び服巻ロール6を織前位置変位部材とし、その両方を回転駆動することによってキックバック動作が行われる構成となっているが、本発明の織段防止装置は、経糸ビーム2及び服巻ロール6のうちの一方のみを回転駆動することによってキックバック動作が行われる、すなわち、経糸ビーム2及び服巻ロール6のうちの一方のみが織前位置変位部材となるものであっても良い。
その上で、前記実施例では、経糸ビーム2及び服巻ロール6を織前位置変位部材とする場合において、移動量関連情報に含まれるキックバック量(織前CFの移動量)に関する情報としての前記キックバック量情報は、その経糸ビーム2及び服巻ロール6の駆動量(正転量、逆転量)に関する情報として設定されるかたちとなっている。
詳しくは、織前CFの移動は経糸W及び/又は織布Fを移動させることによって為されるものであるが、その経糸W及び/又は織布Fの移動量がそのままキックバック量となる訳では無いため、前記キックバック量情報については、織前CFを前記目標位置まで移動させるのに必要な経糸W及び/又は織布Fの移動量を求めた上で、その移動量での経糸W及び/又は織布Fの移動が為されるような設定とされるのが好ましい。その上で、前記の場合で言うと、経糸W及び織布Fの移動は経糸ビーム2及び服巻ロール6を回転駆動した結果として為されるものであって直接の駆動対象は経糸ビーム2及び服巻ロール6であり、また、織機における設定情報は駆動対象の駆動の制御に用いられるものであるから、前記実施例では、前記キックバック量情報の設定は、経糸W及び織布Fを移動させる織前位置変位部材である経糸ビーム2及び服巻ロール6の駆動量に関する情報(前記各点の前記最終逆転量、その前記最終逆転量から求められる演算式、固定値としての正転量等)として設定されるかたちとなっている。
一方で、設定値等を決定するにあたっては、その設定値等をキックバック量と直接的に関係する経糸W及び織布Fの移動量とした方がその決定が行い易い。そして、織機においては、経糸ビーム2及び服巻ロール6の駆動量(回転量)と経糸W及び織布Fの移動量とは所定の対応関係にあることから、前記実施例では、設定される前記キックバック量情報は、織前位置変位部材の駆動量に関する情報を設定するというかたちとしつつも、実際に設定される情報は、その経糸ビーム2及び服巻ロール6の制御量としての駆動量(回転量)に関する情報ではなく、その駆動量の代替値としての経糸W及び織布Fの移動量(単位「mm」)に関する情報としている。
しかし、本発明においては、経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6を織前位置変位部材とする場合において、移動量関連情報に含まれる前記キックバック量情報として設定される情報は、前記実施例のような経糸W及び/又は織布Fの移動量に関する情報に限らず、その経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6の制御量としての駆動量(回転量)に関する情報であっても良い。また、そのように経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6の駆動量に関する情報が前記キックバック量情報として設定される場合において、その設定される情報は、その経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6の回転量に関する情報として設定されるものであっても良いし、経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6を駆動する駆動手段である送出モータM3及び/又は巻取モータM2の駆動量に関する情報として設定されるものであっても良い。
また、前記実施例と同様に経糸W及び/又は織布Fの移動量に関する情報が前記キックバック量情報として設定される場合において、その設定される情報は、前記実施例のように単位を「mm」とした経糸W及び/又は織布Fの移動量に関するものに限らず、例えば、1製織サイクルにおける経糸W及び織布Fの移動量を1単位として、その単位で経糸W及び織布Fの移動量が設定されたものであっても良い。因みに、前記した送出モータM3及び/又は巻取モータM2の駆動量に関する情報以外の情報が前記キックバック量情報として設定される場合には、停止時の前記巻径から求められた経糸W及び/又は織布Fの移動量、或いは経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6の回転量に基づいて制御器が送出モータM3及び/又は巻取モータM2の駆動量を求め、それによって送出モータM3及び/又は巻取モータM2の駆動が制御されるものとすれば良い。
さらに、前記のように、織前位置変位部材の駆動量についての情報でなく、織前位置変位部材が駆動されることによって移動する物(前記実施例では、経糸W、織布F)の移動量についての情報が前記キックバック量情報として設定される場合において、その前記キックバック量情報として設定される情報は、前記目標位置まで織前CFを移動させるのに必要な経糸Wや織布Fの移動量に関する情報として設定されるものに限らず、その織前CFの移動量そのものに関する情報として設定されるものとしても良い。そして、その場合には、停止時の前記巻径から求められたその織前CFの移動量(キックバック量)に基づき、例えば、制御器がそれに応じた経糸W及び/又は織布Fの移動量、或いは経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6の駆動量を求め、それに基づいて経糸ビーム2及び服巻ロール6が駆動されるものとすれば良い。
(7)また、本発明による織段防止装置は、前記のように経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6を回転駆動してキックバック動作を行う、すなわち、経糸ビーム2及び/又は服巻ロール6を織前位置変位部材として構成されたものに限らず、例えば、経糸Wが巻き掛けられるテンションロール4やガイドロール3、或いは織布Fが巻き掛けられるガイドロール5を変位させることによってキックバック動作を行うように構成されたものであっても良い。そして、その場合は、テンションロール4やガイドロール3、ガイドロール5が織前位置変位部材となる。なお、その場合におけるテンションロール4やガイドロール3、ガイドロール5を変位させるための構成は、例えば、エアシリンダ等のアクチュエータを駆動装置として用いたものとすれば良い。そして、その場合は、その駆動装置の駆動を制御するための制御装置が本発明の織段防止装置における駆動制御装置に含まれるものとなる。
(8)前記実施例における織段防止装置では、移動量関連情報(前記設定範囲情報及び前記キックバック量情報)に含まれる各設定値が、織機1の入力設定装置25の入力画面40から直接的に入力設定される構成とした。しかし、移動量関連情報(前記設定範囲情報及び前記キックバック量情報)に含まれる各設定値は、入力画面40から直接的に入力設定されるものに限らず、例えばメモリカード等の外部記憶媒体に記憶されたその各設定値が入力設定装置25から読み込まれることにより入力設定される構成であっても良い。
さらに、前記実施例の織段防止装置では、経糸ビーム2に巻かれた経糸Wの前記巻径を求めるための巻径検出装置として、非接触式の距離センサ10を用いた構成が採用されているが、本発明の織段防止装置における巻径検出装置は、そのような構成の装置に限らず、他の公知の巻径検出装置であっても良い。例えば、巻径検出装置は、経糸ビーム2上の経糸Wの表面に対し接触すると共にその接触状態が維持されるように設けられた部材を用い、前記巻径の変化(減少)に伴うその部材の位置をセンサ等で検出することにより前記巻径を求める装置であっても良い。また、巻径検出装置は、前記のようにセンサを用いて直接的に前記巻径を求めるように構成された装置に限らず、製織中における単位期間あたりの送出モータM3の回転量又は経糸ビーム2の回転量から演算によって間接的に前記巻径を求めるように構成された装置であっても良い。
なお、本発明は、以上で説明した例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
1 織機 2 経糸ビーム
3 ガイドロール 4 テンションロール
5 ガイドロール 6 服巻ロール
7 ニップロール 8 巻取ロール
9 張力検出器 10 巻径検出器
20 送出制御装置 21 巻取制御装置
22 開口駆動装置 23 筬駆動装置
24 主制御装置 25 入力設定装置
26 記憶器 27 巻径検出器
28 制御器 30 織機制御装置
40 入力画面
41a、41b、41c、42a、42b、42c 入力欄
43 実行ボタン
M1 主軸モータ M2 巻取モータ
M3 送出モータ
EN エンコーダ MS 主軸
W 経糸 Y 緯糸
F 織布 CF 織前
R 筬 H 綜絖
S 回転量信号 Sa 起動信号
Sb 停止信号
α、β、α1、β1、γ1、δ1 区間
P1 始点 P3 終点
P2、P2a、P2b、P2c 切換点 Px 中間点
DL、DL1、DL2、DL3 所望のキックバック量
SL、SL1、SL2、SL3、SL4 実際のキックバック量(折れ線、曲線)
t 停止時間 Dx、Dn 巻径

Claims (8)

  1. 織機の起動に際し、織布の織前の移動に寄与する織前位置変位部材を駆動することによって前記織前を経糸送出側へ移動させる織段防止方法において、
    前記織前の移動量を決定するための情報である移動量関連情報であって、経糸ビームに巻かれた経糸の巻径に関しての予め設定された設定範囲において前記巻径が小さいほど前記移動量が大きくなるように定められた移動量関連情報を予め織機に記憶させておき、
    起動の時点における前記巻径が前記設定範囲に含まれる場合には、その時点における前記巻径と前記移動量関連情報とに基づいて前記織前位置変位部材を駆動することを特徴とする織機の織段防止方法。
  2. 前記移動量関連情報は、前記設定範囲の始点から前記設定範囲の中間部分までの前半の部分範囲と前記中間部分から前記設定範囲の終点までの後半の部分範囲とで、その部分範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記移動量の変化が異なるように定められていることを特徴とする請求項1に記載の織機の織段防止方法。
  3. 前記移動量関連情報は、前記設定範囲の始点を基準とする前記起動の時点における前記巻径の減少量に対する前記起動の時点における前記移動量の増加分の割合が、前記設定範囲内の前記各起動の時点で異なるように定められていることを特徴とする請求項2に記載の織機の織段防止方法。
  4. 前記移動量関連情報は、前記設定範囲内に設定されることによって前記設定範囲を2以上の区間に分割する1以上の境界値を含むと共に、前記境界値によって定められる前記各区間内においては前記巻径の変化に対する前記移動量の変化の割合が一定であって、且つ、その前記割合が前記各区間毎に異なるように定められていることを特徴とする請求項2に記載の織機の織段防止方法。
  5. 織機の起動に際し、織布の織前の移動に寄与する織前位置変位部材を駆動することによって前記織前を経糸送出側へ移動させる織段防止装置において、
    経糸ビームに巻かれた経糸の巻径を求める巻径検出装置と、
    前記織前の移動量を決定するための情報である移動量関連情報であって、前記巻径に関しての予め設定された設定範囲において前記巻径が小さいほど前記移動量が大きくなるように定められた移動量関連情報が記憶される記憶器と、
    前記織前位置変位部材の駆動を制御する駆動制御装置であって、起動の時点における前記巻径が前記設定範囲に含まれる場合には、前記巻径検出装置で求められた当該起動の時点における前記巻径と前記記憶器に記憶された前記移動量関連情報とに基づいて前記織前位置変位部材の駆動を制御する駆動制御装置とを備えることを特徴とする織機の織段防止装置。
  6. 前記移動量関連情報は、前記設定範囲の始点から前記設定範囲の中間部分までの前半の部分範囲と前記中間部分から前記設定範囲の終点までの後半の部分範囲とで、その部分範囲に亘る前記巻径の変化に対する前記移動量の変化が異なるように定められた情報であることを特徴とする請求項5に記載の織機の織段防止装置。
  7. 前記移動量関連情報は、前記設定範囲の始点を基準とする前記起動の時点における前記巻径の減少量に対する前記起動の時点における前記移動量の増加分の割合が、前記設定範囲内の前記各起動の時点で異なるように定められていることを特徴とする請求項6に記載の織機の織段防止装置。
  8. 前記移動量関連情報は、前記設定範囲内に設定されることによって前記設定範囲を2以上の区間に分割する1以上の境界値を含むと共に、前記境界値によって定められる前記各区間内においては前記巻径の変化に対する前記移動量の変化の割合が一定であって、且つ、その前記割合が前記各区間毎に異なるように定められていることを特徴とする請求項6に記載の織機の織段防止装置。
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