JP6605940B2 - ジェル状化粧料 - Google Patents
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前記の水溶性高分子として、アクリル系高分子が知られている。例えば、高粘度でありながら不快な使用感のないジェル状皮膚化粧料として、アクリル系高分子化合物と、水溶性多糖類とを併用したジェル状皮膚化粧料が知られている(特許文献1)。また、アクリル系高分子として、アクリロイルジメチルタウレート・ビニルピロリドン共重合体と、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレン共重合体、ポリアクリル酸又はその塩、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、ポリアクリルアミド、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される1種以上の増粘剤と水と香料と炭素数1〜6の1〜3価アルコールとを含有するゲル状フレグランス組成物が知られている(特許文献2)。さらにまた、特許文献3には、アクリル系高分子として、アクリル酸系ポリマーを含有し、自己サンタン剤を配合した透明な自己サンタン性水性ゲルが記載されている。
しかし、組成物を高粘性とするためには、組成物に増粘剤を多量に配合しなければならなかった。このため、得られる組成物や化粧料は、使用時にべたつきやぬるつきなど高分子由来の不快な特性を示すことが多く、使用感が好ましくないなどの問題があった。
一方、化粧料において「糸ひき」と呼ばれる現象、つまり、化粧料を指ですくい取るときに糸を引く現象が生じる場合があるが、特に口唇化粧料の場合、唇をすり合わせた際の糸引き発生は、品質上避けるべき欠点として指摘されている。
(1)(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーと多価アルコールを含むジェル状化粧料であって、多価アルコールとしてジグリセリン45〜80質量%と、ソルビトール及び/又はマルチトールを含有し、ジグリセリンとソルビトール及び/又はマルチトールとの質量比が7:1〜1:1であることを特徴とするジェル状化粧料。
(2)多価アルコールの合計含有量が、化粧料あたり80〜95質量%である請求項1に記載のジェル状化粧料。
(3)(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを化粧料あたり0.5〜1質量%含有する(1)または(2)に記載のジェル状化粧料。
(4)油剤を含有しないか又は油剤の含有量が化粧料あたり1質量%未満である(1)〜(3)のいずれかに記載のジェル状化粧料。
(5)水の含有量が15質量%以下である(1)〜(4)のいずれかに記載のジェル状化粧料。
(6)B型粘度計(測定条件;4号ローター、6rpm、30秒、25℃)で測定した粘度が80000〜200000mPa・sである(1)〜(5)のいずれかに記載のジェル状化粧料。
(7)口唇用途である(1)〜(6)のいずれかに記載のジェル状化粧料。
(8)ジャー容器用である(1)〜(7)のいずれかに記載のジェル状化粧料。
また、本発明のジェル状化粧料は、80000〜200000mPa・sという高い粘性を持ち、ジャー容器に充填する化粧料として特に好ましい化粧料となる。
本発明のジェル状化粧料は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの含有量が少なくても増粘するため、任意で補助的に配合する水溶性高分子の含有量を低減あるいは配合しなくてもよく、これらの水溶性高分子物由来のべたつきやぬるつきの無い使用感の良好なジェル状化粧料となる。また、本発明のジェル状化粧料は糸引きしない。
さらに、油剤を含有しないか油剤の含有量が1質量%未満のジェル状化粧料は、透明又は半透明の外観を呈する、美しいジェル状化粧料となり、さらにまた、油剤に代わって多価アルコールによる保湿効果が十分発揮された好ましい保湿性を有する。
以下に、本発明の構成成分について詳細に説明する。
<(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー>
本発明で用いる(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーとは、ヒドロキシエチルアクリル酸とアクリルジメチルタウリンナトリウムの共重合体であり、市販されているものを使用することができる。例えば、SEPPIC社(フランス)製のSIMULGEL NS、SEPINOV EMT10等を使用することができる。SIMULGEL NSは、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー37.5質量%、スクワラン25.5質量%、ポリソルベート60が5.5質量%、水30質量%、イソステアリン酸ソルビタン1.5質量%からなる混合原料である。SEPINOV EMT10は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー100質量%である。
本発明のジェル状化粧料は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを0.5〜1質量%、より好ましくは0.5〜0.9質量%、さらにより好ましくは0.5〜0.7質量%配合することが好ましい。
本発明において、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーと下記に述べる特定の多価アルコールとを組み合わせることで、本化粧料に必要な粘度(80000〜200000mPa・s)を付与できる。1質量%を超えて配合する必要はない。
本発明のジェル状化粧料は、多価アルコールとして、ジグリセリンと、ソルビトール及び/又はマルチトールを含む。
(1)ジグリセリン
ジグリセリンは、グリセリン2分子を脱水縮合反応させ、蒸留、精製してつくられ、4つの水酸基を持つ多価アルコールである。阪本薬品工業(株)製のジグリセリン801等市販されている化粧料規格の製品を入手して用いることができる。
ソルビトールは、グルコースを還元し、アルデヒド基をヒドロキシ基に変換して得られる糖アルコールの一種である。ソルビットまたはグルシトールともいう。三菱商事フードテック(株)製のソルビットD−70等市販されている製品を入手して用いることができる。ソルビットD−70は、ソルビトール70質量%と水30質量%から成る混合原料である。
マルチトールは、酵素糖化法によって澱粉からつくられる二糖類のマルトースを原料として高圧下で接触還元して得られる糖アルコールの一種である。三菱商事フードテック(株)製のアマルティシロップ等の市販されている製品を入手して用いることができる。アマルティシロップは、マルチトール75質量%と水25質量%から成る混合原料である。
なお、本発明においては、これら3成分の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で多価アルコールを含有させることができる。このような多価アルコールとして、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等を例示できる。
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、植物油のような油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーンを含有させることができる。アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー以外の水溶性高分子、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、香料、pH調整剤、乾燥剤等を含有させることができる。また、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、抗癌剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、等を挙げることができる。
また、プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
表1に実施例1〜6の組成、表2に比較例1〜8の組成を示す。
[粘度の測定]
化粧料を直径約3cmのガラス容器に充填後25℃に保存して、製造翌日の粘度をB型粘度計(4号ローター、6rpm、30秒)にて測定した。
化粧料を指にとり、親指と人差し指に挟んで、両指の間を広げることを繰り返した時の指の間に糸を引くかを専門パネラーにより目視観察した。
評価基準は以下のとおりとした。
○:糸引きがほとんどみられない(10mm未満の糸引きは、○の評価に含めた)
△:糸引きがわずかにある(5回に1回程度の低頻度で10mm以上の糸引きが認められる)
×:糸引きがある(10mm以上の糸引きが、いつも認められる)
実施例1〜6の化粧料の粘度は、105300〜148000mPa・sであった。この粘度は、ジャー容器に充填して使用するのに適した粘性である。
糸引きについては、実施例1〜4は「〇」評価であり殆ど糸引きは観察されなかった。実施例5、6はわずかに糸引きが観察されたがいずれも5回に1回程度の頻度の糸引きであり、実用上問題はなかった。また、実施例1〜6の化粧料は、いずれも透明な外観の美しいジェル状を呈していた。
比較例2は増粘せずジェル状の化粧料とはならなかった。また比較例3、5、6の化粧料は、いずれも粘度がジャー容器に充填して使用するために必要な80000mPa・s以下であり目的に合致しなかった。比較例4は粘度が81300mPa・sを示したものの、強い糸引きが観察され、本発明の目的に合致しなかった。糸引きがあると、例えばジャー容器からジェルをすくい取るときに、取り出しにくく使用性が悪い。また、使用時に不快な印象を与えるので、化粧料の設計品質上好ましくない。
比較例8は、ジグリセリンと併用する多価アルコールとしてグリセリンを使用した組成であるが、本発明が必要とする粘度にならなかった。
(本願の増粘効果)
比較例1は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量が0.6質量%であり、補助的増粘剤としてキサンタンガムを0.1質量%含有し、多価アルコールを全く含まず水を98.3質量%含む組成であるが、組成物の粘度は6770mPa・sであった。これに対して、実施例1および2は、比較例1の組成から、水を多価アルコールであるジグリセリンと、ソルビトール(市販されている70%水溶液)又はマルチトール(市販されている75%水溶液)に置き換えた組成であるが、粘度は148000mPa・s(実施例1)、128400mPa・s(実施例2)となり、高い粘性の組成物が得られた。計算すると、実施例1の組成物は比較例1の組成物の約22倍の粘度であり、実施例2の組成物は比較例1の組成物の約19倍の粘度である。このことから、本発明の構成をとることにより、著しく増粘した組成物が得られることが分かった。また、実施例3〜6は、補助的増粘剤としてのキサンタンガムを配合していない組成であるが、123600mPa・s(実施例3)、105300mPa・s(実施例4)、115700mPa・s(実施例5)、133000mPa・s(実施例6)と、いずれも高い粘性が得られている。このことから、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーと、ジグリセリンと、ソルビトール及び/又はマルチトールという構成をとることで、補助的増粘剤を配合しなくても、著しい増粘組成物が得られることが確認できた。また、グリセリンは特に必要ないことが確認された。
一方、多価アルコールを実施例とほぼ同量含むが、本発明の構成とするジグリセリンと、ソルビトール又はマルチトールを組み合わせて配合していない比較例2〜8の組成物は、増粘しないか(比較例2)、増粘の程度が低かった。具体的には、31300mPa・s(比較例3)、51700mPa・s(比較例5)、73300mPa・s(比較例6)、29200mPa・s(比較例7)、48800mPa・s(比較例8)であり、実施例で得られた100000mPa・sを超えるものは無かった。比較例4は81300mPa・sと本試験の中では比較的高めの粘性であったが、糸引きが認められ、使用性が悪く(評価×)、化粧料の品質としては不適合であった。
なお、前述したとおり、実施例1〜6の組成物に「糸引き」はほとんどみられないか(評価○)、わずかに認められる程度(評価△)であり、実使用では問題とならない使用性であった。さらに、実施例1〜6に、べたつき・ぬるつきはなく、使用感も全く問題なかった。
以上のことから、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーと、ジグリセリンと、ソルビトール及び/又はマルチトールの一種以上を組み合わせると著しく増粘した組成物となること、またこの組成物は糸引きがなく使用性が良好であること、また高分子特有のべたつきやぬるつきの少ない、使用感が良好なジェル状化粧料になることがわかった。
以下に、本発明のジェル状化粧料の処方例を例示する。
美白・保湿ジェル
(配合成分) (質量%)
1.SEPINOV EMT10(SEPPIC社) 0.6
2.ジグリセリン 60
3.ソルビトールD−70(70%水溶液) 30
4.1,2−ペンタンジオール 1
5.ソウハクヒエキス 1
6.精製水 残余
1〜6の成分を混合し美白・保湿ジェルを得た。ジャー容器に充填した処方例1の美白・保湿ジェルは透明で美しく、ぬるつきやべたつきや糸引きがなく、保湿性の高い優れた使用感であった。
口唇用保湿ジェル
(配合成分) (質量%)
1.SIMULGEL NS(SEPPIC社) 1.5
2.ジグリセリン 50
3.ソルビトールD−70(70%水溶液) 27
4.1,2−ペンタンジオール 1
5.メチルグルセス 5
6.ジプロピレングリコール 2
7.キサンタンガム 0.2
8.ヒアルロン酸Na 0.1
9.精製水 残余
1〜9の成分を混合し口唇用保湿ジェルを得た。ジャー容器に充填した処方例2の口唇用保湿ジェルは透明で美しく、ぬるつきやべたつきや糸引きがなく、優れた使用感であった。また保湿効果に優れていた。
粒子含有保湿パック化粧料
(配合成分) (質量%)
1.SIMULGEL NS(SEPPIC社) 1.6
2.ジグリセリン 70
3.マルチトール(75%水溶液) 23
4.1,2−ペンタンジオール 1
5.1,3−ブチレングリコール 1
6.ポリエチレン末 0.12
7.精製水 残余
1〜7の成分を混合し粒子含有保湿パック化粧料を得た。ジャー容器に充填した処方例3の粒子含有パック化粧料はジェル状であり、透明で美しく、ぬるつきやべたつきや糸引きがなく、優れた使用感であった。また保湿効果に優れていた。
Claims (8)
- (アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーと多価アルコールを含むジェル状化粧料であって、多価アルコールとしてジグリセリン45〜80質量%と、ソルビトール及び/又はマルチトールを含有し、ジグリセリンとソルビトール及び/又はマルチトールとの質量比が7:1〜1:1であることを特徴とするジェル状化粧料。
- 多価アルコールの合計含有量が、化粧料あたり80〜95質量%である請求項1に記載のジェル状化粧料。
- (アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを化粧料あたり0.5〜1質量%含有する請求項1または2に記載のジェル状化粧料。
- 油剤を含有しないか又は油剤の含有量が化粧料あたり1質量%未満である請求項1〜3のいずれかに記載のジェル状化粧料。
- 水の含有量が15質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のジェル状化粧料。
- B型粘度計(測定条件;4号ローター、6rpm、30秒、25℃)で測定した粘度が80000〜200000mPa・sである請求項1〜5のいずれかに記載のジェル状化粧料。
- 口唇用途である請求項1〜6のいずれかに記載のジェル状化粧料。
- ジャー容器用である請求項1〜7のいずれかに記載のジェル状化粧料。
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