以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、本明細書で説明する各図において、膜や層、基板などの厚さや領域の大きさ等の各構成要素の大きさは、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
なお、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるものであって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
(実施の形態1)本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電池用電極について、図2及び図3を用いて説明する。図2に電極の斜視図を、図3(A)、(B)に、活物質の断面図を示す。
図2は、電極200の斜視図である。図2では電極200を矩形のシート形状で示しているが、電極200の形状はこれに限らず、任意の形状を適宜選択することができる。図2においては、活物質層202は集電体201の一方の面にのみ形成しているが、活物質層202は集電体201の両面に形成してもよい。また、活物質層202は集電体201の全面に形成する必要はなく、タブと接続するための領域等、非塗布領域を適宜設ける。
集電体201には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体201は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体201は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。また、集電体201の表面に、グラファイトなどを用いてアンダーコート層を設けてもよい。
図3(A)、(B)は、電極200の活物質層202を構成する活物質の粒子の、断面の模式図である。
活物質の外周には、活物質を覆う第3の領域143に、グラフェンが形成される。活物質は図のように第一の領域141と第二の領域142という、2つの領域から構成されてもよい。グラフェンは、リチウムマンガン複合酸化物の表面の全体に設けられてもよく、一部のみに設けられてもよい。また、粒子において、露出した劈開面を覆うようにグラフェンが形成されることが好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の劈開面の少なくとも一部にグラフェンが設けられていればよい。劈開面の少なくとも一部にグラフェンが覆われた活物質を電極に用いることにより、電池の電圧の低下や、放電容量の低下を抑制することができる。これにより、充放電に伴う電池のサイクル特性を向上させることができる。
グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。そのため、当該活物質を含む電極を電池に用いることにより、電池が充放電を繰り返すことで、リチウムマンガン複合酸化物が膨張収縮したとしても、体積変化でリチウムマンガン複合酸化物がさらに劈開して割れてしまうことを防止することができる。
活物質層は複数の活物質から構成されており、複数の活物質は互いに接触することで電気伝導の経路を形成している。接触状態については、隣接する活物質の、表面を覆うように形成されたグラフェンどうしが接触する、という状態でも良い。また、一方の活物質の、グラフェンが形成されていない部分と、他方の活物質のグラフェンが形成されている部分が接触することもあれば、両方の活物質の表面の、グラフェンが形成されていない部分どうしが接触することもあるが、複数の活物質によって活物質層を形成すると、複数の活物質粒子どうしの接触により、活物質粒子の表面のグラフェンが互いに接触することで三次元的に導電経路が形成され、活物質層の導電性を確保することが可能となる。
グラフェンは、実施の形態2で説明する蓄電池用電極の製造方法において、還元剤を用いて酸化グラフェンを還元することによって形成される。なお、該蓄電池用電極の製造方法においては、活物質、酸化グラフェン及び還元剤を混合するため、活物質層202に還元剤が残存していてもよい。また、還元剤は、酸化グラフェンを還元するのと同時に酸化される。従って、活物質層202には、還元剤が酸化されることにより生成される誘導体(以下、還元剤の酸化誘導体と呼ぶ)が含まれていてもよい。
活物質層202に還元剤又は還元剤の酸化誘導体が存在することは、EDX(energy dispersive X−ray spectrometry)分析、XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)、又はToF−SIMS(Time−of−flight secondary ion mass spectrometry)等の分析手段により検出することができる。
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、あるいはそれらの誘導体を用いることができる。特に、アスコルビン酸及びヒドロキノンは、ヒドラジンや水素化硼素ナトリウムに比べ還元力が弱いため安全性が高く、工業的に利用しやすい点において好ましい。
還元剤は、酸化グラフェンを還元する反応により、還元剤の酸化誘導体となる。ここでは例として、アスコルビン酸の酸化還元反応について説明する。アスコルビン酸は、酸化されてデヒドロアスコルビン酸となる。従って、還元剤としてアスコルビン酸を用いた場合は、還元剤の酸化誘導体として、デヒドロアスコルビン酸が活物質層202に残存していてもよい。また、還元剤としてアスコルビン酸を用いる場合に限らず、還元剤の酸化誘導体が活物質層202に残存していてもよい。
グラフェンは、炭素が形成する六角形の骨格を平面状に延ばした結晶構造をもつ炭素材料である。グラフェンはグラファイト結晶の一原子面を取り出したものであり、電気的、機械的又は化学的な性質に驚異的な特徴を有することから、グラフェンを利用した高移動度の電界効果トランジスタや高感度のセンサ、高効率な太陽電池、次世代向けの透明導電膜など、様々な分野での応用が期待され注目を浴びている。
本明細書において、グラフェンは単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含むものである。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存してもよい。実施の形態2で説明する蓄電池用電極の製造方法により、酸化グラフェンを還元する反応の効率を高めることができる。なお、グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上20atomic%以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。
酸化グラフェンは、Hummers法と呼ばれる酸化法を用いて作製することができる。Hummers法は、グラファイト粉末に、過マンガン酸カリウムの硫酸溶液、過酸化水素水等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む混合液を作製する。酸化グラファイトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が結合する。このため、複数のグラフェンの層間距離がグラファイトと比較して長くなり、層間の分離による薄片化が容易となる。次に、酸化グラファイトを含む混合液に、超音波振動を加えることで、層間距離が長い酸化グラファイトを劈開し、酸化グラフェンを分離するとともに、酸化グラフェンを含む混合液を作製することができる。そして、酸化グラフェンを含む混合液から溶媒を取り除くことで、粉末状の酸化グラフェンを得ることができる。
酸化グラフェンは、過マンガン酸カリウム等の酸化剤の量を適宜調整することで形成してもよい。例えば、グラファイト粉末に対して酸化剤の量を増加させることで、酸化グラフェンの酸化度(炭素に対する酸素の重量比)を高めることができる。従って、製造する酸化グラフェンの量に合わせて、原料となるグラファイト粉末に対する酸化剤の量を決定すればよい。
なお、酸化グラフェンの作製は過マンガン酸カリウムの硫酸溶液を用いたHummers法に限られず、例えば硝酸、塩素酸カリウム、又は硝酸ナトリウム等を使用するHummers法、又はHummers法以外の酸化グラフェンの作製方法を適宜用いてもよい。
また、酸化グラファイトの薄片化は、超音波振動の付加の他、マイクロ波やラジオ波、又は熱プラズマの照射や、物理的応力の付加により行ってもよい。
作製した酸化グラフェンは、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を有する。酸化グラフェンはNMPに代表される極性溶媒の中においては、官能基の酸素がマイナスに帯電するため、NMPと相互作用する一方で異なる酸化グラフェンどうしとは反発し、凝集しにくい。このため、極性溶媒中においては、酸化グラフェンが均一に分散しやすい。
活物質は、原料化合物を所定の比率で混合し焼成した焼成物を、適当な手段により粉砕、造粒及び分級した、平均粒径や粒径分布を有する二次粒子からなる粒状の活物質である。このため、図3(A)及び図3(B)においては、活物質を模式的に示しているが、この形状に限られるものではない。
電極200を蓄電池の正極として用いる場合には、活物質としては、リチウムイオンを挿入及び脱離することが可能な材料を用いることができる。例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、又はスピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン含有複合酸化物等が挙げられる。
オリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩としては、例えば、一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上)が挙げられる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
特にLiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、高電位、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため、好ましい。
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、Li2MnO3、LiNi0.8Co0.2O2等のNiCo系(一般式は、LiNixCo1−xO2(0<x<1))、LiNi0.5Mn0.5O2等のNiMn系(一般式は、LiNxMn1−xO2(0<x<1))、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系(NMCともいう。一般式は、LiNixMnyCo1−x−yO2(x>0、y>0、x+y<1))が挙げられる。さらに、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li2MnO3−LiMO2(M=Co、Ni、Mn)等も挙げられる。
特に、LiCoO2は、容量が大きい、LiNiO2に比べて大気中で安定である、LiNiO2に比べて熱的に安定である等の利点があるため、好ましい。
スピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン含有複合酸化物としては、例えば、LiMn2O4、Li1+xMn2−xO4(0<x<2)、LiMn2−xAlxO4(0<x<2)、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン含有複合酸化物に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1−xMxO2(M=Co、Al等(0<x<2)))を混合すると、マンガンの溶出を抑制する、電解液の分解を抑制する等の利点があり好ましい。
また、正極活物質として、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、jは0以上2以下)で表される複合ケイ酸塩を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げられる。
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等が挙げられる。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有するリチウムバナジウム含有複合酸化物、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物系、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
正極活物質の粒径は、例えば5nm以上100μm以下が好ましい。
また、正極活物質として、組成式LiaMnbMcOdで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICP−MS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
リチウムマンガン複合酸化物の原料としては、マンガン化合物およびリチウム化合物を用いることができる。また、マンガン化合物およびリチウム化合物の原料と共に、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物の原料を用いることができる。マンガン化合物としては、例えば、二酸化マンガン、三二酸化マンガン、四三酸化マンガン、水和マンガン酸化物、炭酸マンガン、硝酸マンガンなどを用いることができる。また、リチウム化合物としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウムなどを用いることができる。
リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子は、第1の領域および第2の領域の有してもよい。また、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子は、さらに第3の領域を有してもよい。
第2の領域は、第1の領域の外側の少なくとも一部に接する。ここで、外側とは、粒子の表面により近いことを示す。第3の領域は、第2の領域の外側の少なくとも一部に接することが好ましい。
また、第2の粒子が層状の領域を有する場合に、例えばその厚さは0.1nm以上30nm以下であることが好ましく、1nm以上15nm以下であることがより好ましい。
第1の領域および第2の領域は、リチウムと、酸素と、を有する。また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかはマンガンを有する。また、また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかは元素Mを有する。
また、第1の領域および第2の領域は、マンガンと、元素Mと、の両方を有することがより好ましい。
また、第3の領域は、本発明の一態様であるリチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の、表面と一致する領域を有することが好ましい。
また、第3の粒子が層状の領域を有する場合に、例えばその厚さは0.1nm以上30nm以下であることが好ましく、1nm以上20nm以下であることがより好ましく、2nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。
図3(A)に、粒子が第1の領域として領域141、第2の領域として領域142、および第3の領域として領域143を有する例を示す。
図3(A)に示すように、領域142は、領域141の表面に少なくとも一部が接する。また、領域143は、領域142の表面に少なくとも一部が接する。
また、図3(B)に示すように、領域141は、領域142に覆われない領域を有してもよい。また、領域142は、領域143に覆われない領域を有してもよい。また、例えば領域141に領域143が接する領域を有してもよい。また、領域141は、領域142および領域143のいずれにも覆われない領域を有してもよい。
本発明の一態様である、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を用いて蓄電装置を作製した場合、電池反応、例えば充電や放電に対して、第3の領域は第1の領域および第2の領域と比較して、より安定であることが好ましい。
ここで、第2の領域は、第1の領域と異なる結晶構造を有してもよい。または、第2の領域は、第1の領域と異なる向きの結晶を有してもよい。
例えば、第2の領域はスピネル型構造を有し、かつ第1の領域は層状岩塩型構造を有することが好ましい。
または、例えば、第1の領域および第2の領域は層状岩塩型構造を有し、かつ、第1の領域の有する結晶の第1の面と、第2の領域の有する結晶の第2の面と、が平行であることが好ましい。
ここで、第1の面が層状岩塩型構造の{0 0 1}面は、第2の結晶が有する{1 0 0}面、{1 3 −1}面または{−1 3 1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。または、第1の面が層状岩塩型構造の{1 0 0}面は、第2の結晶が有する{0 0 1}面、{1 3 −1}面または{−1 3 1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。または、第1の面が層状岩塩型構造の{1 3 −1}面は、第2の結晶が有する{0 0 1}面、{1 0 0}面または{−1 3 1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。または、第1の面が層状岩塩型構造の{−1 3 1}面は、第2の結晶が有する{0 0 1}面、{1 0 0}面または{1 3 −1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。
また、例えば、第1の領域および第2の領域は層状岩塩型構造を有し、かつ、第1の領域の有する結晶の第1の方位と、第2の領域の有する結晶の第2の方位と、が平行であることが好ましい。ここで。第1の領域が有する結晶と、第2の領域が有する結晶の、結晶方位について説明する。
ここで、<1 0 0>、<1 1 0>および<−1 1 0>の3つの結晶方位を第1群とする。また、<0 0 1>、<0 1 1>および<0 1 −1>を第2群とする。また、<−3 2 3>、<3 1 6>および<6 −1 3>を第3群とする。また、<3 2 −3>、<3 −1 6>および<6 1 3>を第4群とする。
第1の領域が有する結晶は、第1群乃至第4群のうち一つの群から選ばれるいずれかの方位を有する。第2の領域が有する結晶は、第1群乃至第4群のうち、第1の領域が有する結晶が有する方位が選ばれる群以外の3つの群のうち一つの群から選ばれるいずれかの方位を有する。
上記、組み合わせの一例について、以下に具体例をあげて説明する。ここでは(001)面と(100)面について説明する。以下では具体的に記載するため、結晶の対称性を考慮しない指数の記載方法を取る。
図4にLi2MnO3の結晶構造をb軸の負の方向からみた図を示す。ここで、図4に示す破線Aで囲んだ領域が有する層A−1および層A−2を、層A−2側から、層A−1および層A−2に垂直な方向から見た図を図5(A)に示す。ここで層A−1は酸素を有し、層A−2はリチウムおよびマンガンを有する。
また、図4に示す破線Bで囲んで領域が有する層B−1および層B−2を、層B−2側から層B−1と層B−2に垂直な方向から見た図を図5(B)に示す。
図5(A)では、酸素原子の上に、リチウムまたはマンガンが、[110]方向または[−100]方向または[1−10]方向にずれて積層している。同様に図5(B)では酸素が形成する六角形構造の上に、リチウムまたはマンガンが、[0−11]方向または[00−1]方向または[011]方向にずれて積層している。また、図5(A)に破線Cで示す領域において、マンガンをリチウムに変えると、図5(B)と同様の構成となる。つまり、金属原子の種類は異なるものの、金属原子の位置は大よそ一致する。これらのことから、2つの構造は共通点が多く、積層する場合の整合性が良いと考えられる。
また、第2の領域は、第1の領域と異なる組成を有することが好ましい。
例えば、第1の領域と第2の領域の組成を分けて測定し、第1の領域がリチウム、マンガン、元素Mおよび酸素を有し、第2の領域がリチウム、マンガン、元素Mおよび酸素を有し、第1の領域のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa1:b1:c1:d1で表され、第2の領域のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa2:b2:c2:d2で表される場合について説明する。なお、第1の領域と第2の領域のそれぞれの組成は、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)を用いたEDX(エネルギー分散型X線分析法)で測定することができる。EDXを用いた測定では、リチウムの組成の測定が困難な場合がある。そのため、以下では、第1の領域と第2の領域の組成の違いは、リチウム以外の元素について述べる。ここで、d1/(b1+c1)は2.2以上が好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.35以上3以下であることがさらに好ましい。また、d2/(b2+c2)は2.2未満であることが好ましく、2.1未満であることがより好ましく、1.1以上1.9以下であることがさらに好ましい。またこの場合でも、第1の領域と第2の領域を含むリチウムマンガン複合酸化物粒子全体の組成は、前述の0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。
また、第2の領域が有するマンガンは、第1の領域が有するマンガンと異なる価数を有してもよい。また、第2の領域が有する元素Mは、第1の領域が有する元素Mと異なる価数を有してもよい。
ここで、各領域の組成や、元素の価数に空間的な分布がある場合には、例えば複数の箇所についてその組成や価数を評価し、その平均値を算出し、該領域の組成や価数としてもよい。
また、第2の領域と第1の領域との間に、遷移層を有してもよい。ここで遷移層とは、例えば組成が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶構造が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶の格子定数が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。
または、第2の領域と第1の領域との間に、混合層を有してもよい。ここで混合層とは、例えば異なる結晶方位を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる結晶構造を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる組成を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。
ここで、第1の領域は、層状岩塩型構造を有することが好ましい。また、第2の領域は、スピネル型構造、または層状岩塩型構造のいずれか一を少なくとも有することが好ましい。
ここで、例えば、本発明の一態様の「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」を用いて蓄電池等を作製する場合、蓄電池を作製するまでの各工程において第1の領域乃至第3の領域が形成される場合がある。
例えば、第1の領域乃至第3の領域は、電極作製前、例えば粒子の合成後に形成されてもよい。あるいは、電極形成の過程において形成されてもよい。また、例えば粒子の合成後に形成された第1の領域乃至第3の領域の厚さや組成、および結晶構造等が、電極形成の過程において変化してもよい。
また、第1の領域乃至第3の領域は、蓄電池等を作製する各工程の熱処理において、形成されてもよい。
リチウムマンガン複合酸化物の作製工程において、S15等に示す、一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物の解砕処理工程は、電池の特性を左右する重要な工程である。解砕処理工程では、一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物に、シェア(すりつぶしの応力)をかけることにより、粉末のリチウムマンガン複合酸化物を形成する。このとき、リチウムマンガン複合酸化物が層状岩塩型の結晶構造を有する場合には、層と平行となる面または層と垂直となる面において、一次粒子が劈開して、割れてしまうことがある。一次粒子が劈開して割れてしまったものを、本明細書等では、劈開面を有する粒子、または劈開面が露出した粒子と呼ぶ。なお、割れてしまった一次粒子には、劈開面を有さないものも含まれる。
また、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物のように、劈開性を有する活物質は、解砕処理時だけでなく、電極作製工程において、電極に圧力を加えて成形する際に、活物質層に圧力がかかることにより、活物質がさらに割れてしまうことがある。
また、捲回型の電池を製造する際には、電極の捲回時に大きな応力が作用する。また、電極の捲回体を筐体に収納した場合であっても、常に捲回軸の外側に向かう応力が作用するため、活物質がさらに割れてしまうおそれがある。
このように、リチウムマンガン複合酸化物の一次粒子が劈開して割れてしまうと、電池の放電容量の低下や、サイクル特性の低下を招く原因となる。
このような場合にも、リチウムマンガン複合酸化物の劈開面において、少なくとも一部に炭素を含む層を設けることが好ましい。また、炭素を含む層は、劈開面の全てを覆っていても良いし、劈開面を有するリチウムマンガン複合酸化物の全体を覆っていても良い。
本発明の一態様は、粒子を覆う第3の領域143に、グラフェンが形成される。グラフェンは、リチウムマンガン複合酸化物の表面の全体に設けられてもよく、一部のみに設けられてもよい。また、粒子において、露出した劈開面を覆うようにグラフェンが形成されることが好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の劈開面の少なくとも一部にグラフェンが設けられていればよい。劈開面の少なくとも一部にグラフェンが覆われた活物質を電極に用いることにより、電池の電圧の低下や、放電容量の低下を抑制することができる。これにより、充放電に伴う電池のサイクル特性を向上させることができる。
グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。そのため、当該活物質を含む電極を電池に用いることにより、電池が充放電を繰り返すことで、リチウムマンガン複合酸化物が膨張収縮したとしても、体積変化でリチウムマンガン複合酸化物がさらに劈開して割れてしまうことを防止することができる。
また、電極作製工程において、電極に圧力を加えて成形する際に、活物質にかかる圧力をグラフェンの機械的強度により緩和することができる。これにより、活物質がさらに劈開して割れてしまうことを防止することができる。
さらに、捲回型の電池においては、電極の捲回時に大きな応力が作用した場合や、電極の捲回体を筐体に収納した場合に、電極に常に捲回軸の外側に向かう応力がかかったとしても、これにより、活物質がさらに劈開して割れてしまうことを防止することができる。
なお、リチウムマンガン複合酸化物を含む前記正極活物質は、塩基性を示す場合があり、電極の作製工程において使用する結着剤、導電助剤、溶媒と、を混練してスラリーまたはペーストを形成する際、リチウムマンガン複合酸化物の示す塩基性によって結着剤のゲル化が加速し、スラリーやペーストの粘度が極端に上昇し、電極の形成が困難になる場合がある。
一方、酸化グラフェンの水溶液は酸性を示す。このため、酸化グラフェンの水溶液に対して、リチウムマンガン複合酸化物を添加することにより酸塩基反応が生じ、リチウムマンガン複合酸化物の塩基性が緩和される。
その結果、後の工程で結着剤や導電助剤を添加して混練しても、スラリーやペーストのゲル化を低減できる。このため、ステップS17における、酸化グラフェンの水溶液に対して、前記リチウムマンガン複合酸化物を添加するという工程は、結着剤や導電助剤との混練、集電体への塗工という後の工程に対してのマージンが拡大するという効果もあり、電極作製工程を安定に進める上で、有効な方法である。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、やアルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物及びリチウムマンガン含有複合酸化物において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)、を用いてもよい。
また、製造する蓄電池用電極を蓄電池の負極として用いる場合には、活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料を用いることができる。
リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料としては、炭素系材料が挙げられる。炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
また、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料として、他には、例えば、Ga、Si、Al、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Zn、Cd、In等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特に、シリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このような元素を用いた材料としては、例えば、Mg2Si、Mg2Ge、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
また、負極活物質として、SiO、SnO、SnO2、二酸化チタン、リチウムチタン酸化物、リチウム−黒鉛層間化合物、五酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
また、リチウムマンガン複合酸化物は、例えば、一次粒子の平均粒子径が、5nm以上50μm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。また比表面積が5m2/g以上15m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEMによる観察、またはレーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。また比表面積は、ガス吸着法により測定することができる。
また、活物質層202は第2の導電助剤を有してもよい。活物質層202がグラフェンと第2の導電助剤を有する場合、活物質層中の電気伝導の三次元のネットワークをより複雑な形状にすることができるので、蓄電装置の使用中に活物質層202中の電気電導経路が切断するのを抑制することができる。第2の導電助剤としては、例えば、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。また、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。また、炭素繊維として、気相成長炭素繊維(VGCF:Vapor−Grown Carbon Fiber)を用いることができる。VGCFの代表値は、繊維径150nm、繊維長10μm以上20μm以下、真密度2g/cm3、比表面積13m2/gである。なお、繊維径とは、SEMで観察して、二次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に外接する真円の径のことを指す。また、真密度とは、物質自身が占める体積だけを密度算定用の体積とする密度のことを指す。また、比表面積とは、対象物について単位質量あたりの表面積または単位体積あたりの表面積のことである。
針状の形状を有するVGCFは、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、VGCFを導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
また、導電助剤として粒状の材料を用いることもできる。粒状の材料としては、代表的には直径3nm以上500nm以下のアセチレンブラックや、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラックを用いることができる。
薄片状や、針状、繊維状の導電助剤は、活物質どうしをつなぐ役目を果たし、電池の劣化を抑制する。また、これらの材料は、活物質層202の形状を維持する構造体、或いは緩衝材としても機能する。活物質層202の形状を維持する構造体、或いは緩衝材としても機能するということは、活物質の膨張、収縮が繰り返される場合や、二次電池を曲げた時などで、集電体と活物質との間で剥がれが生じにくくなる。また、上記材料に代えてアセチレンブラックや、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラックを用いてもよいが、VGCFを用いると、活物質層202の形状を維持するための強度が大きくできるため、好ましい。活物質層202の形状を維持するための強度が大きくできると、二次電池の曲げなどの変形による劣化を防止することができる。
以上に示した活物質層202は、活物質層202の総重量に対して、活物質を80wt%以上95wt%以下、グラフェンを0.1wt%以上8wt%以下、結着剤を1wt%以上10wt%以下の割合で含有することが好ましい。また、活物質層202が、第2の導電助剤を有する場合は、グラフェンと第2の導電助剤を合計した重量が、活物質層202の総量に対して、0.1wt%以上8wt%以下であると好ましい。
本実施の形態に示すように、粒状の活物質の表面を包むよう酸化グラフェンの被膜が形成され、それらが接触していることで、高密度化された活物質層を含む蓄電池用電極を提供することができる。
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載されているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様として、グラフェンを蓄電池用電極に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、グラフェンまたは酸化グラフェンは、容量が非常に大きいキャパシタであるスーパーキャパシタのための電極として用いたり、酸素還元電極触媒として用いたり、潤滑油より低摩擦な分散水の材料として用いたり、表示装置や太陽電池などのための透光性を有する電極として用いたり、ガスバリア材として用いたり、機械的強度が高くて軽量なポリマー材料として用いたり、放射能汚染水に含まれるウランやプルトニウムを検出するための高感度ナノセンサの材料として用いたり、放射性物質を取りのぞくための材料として用いたり、することができる。または例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様として、グラフェンを蓄電池用電極に適用しなくてもよい。例えば、本発明の一態様として、リチウムイオン二次電池に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な二次電池、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、固体電池、空気電池、亜鉛空気電池、リチウム空気電池、一次電池、キャパシタ、または、電気二重層キャパシタ、ウルトラ・キャパシタ、スーパーキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、などに適用してもよい。または例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に適用しなくてもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)本実施の形態では、実施の形態1で例示した活物質、導電助剤、結着剤を用いて、図2に示す活物質層202を含む電極200を製造する方法について、図1を参照して説明する。
まず本発明の一態様である「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の作製方法について説明する。本実施の形態では、まず、リチウムマンガン複合酸化物を合成する。その後、リチウムマンガン複合酸化物に被覆層を形成し、第1の領域、第2の領域および第3の領域を有する粒子を得る。
リチウムマンガン複合酸化物の原料は、実施の形態1に示す材料を用いることができる。本実施の形態では、マンガン化合物としてMnCO3、リチウム化合物としてLi2CO3、およびNiOを出発原料として用いる。
はじめに、図1のステップS11に示すように、出発原料として、Li2CO3とMnCO3とNiOとを用い、それぞれを秤量する。
例えば、出発原料として、Li2CO3とMnCO3とNiOとを用いる場合、秤量の割合(モル比)をLi2CO3:MnCO3:NiO=1:0.7:0.3とすると、最終生成物であるリチウムマンガン複合酸化物として、Li2Mn0.7Ni0.3O3が作製されることとなる。この場合、リチウムマンガン複合酸化物の原子数比は、Li:(Mn+Ni)=2:1となる。
本発明の一態様では、リチウムマンガン複合酸化物の原子数比がLi:(Mn+Ni)=2:1からずれるように、出発原料の秤量の割合(モル比)を調整する。
本実施の形態では、出発原料の秤量の割合(モル比)をLi2CO3:MnCO3:NiO=0.84:0.8062:0.318となるように秤量する。
次に、図1のステップS12に示すように、Li2CO3、MnCO3、およびNiOを混合する。出発原料の混合方法については特に制限はなく、公知の解砕機や粉砕機を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ローラーミルなどが挙げられる。また、解砕・粉砕の方式は、乾式でもよいし、湿式でもよい。湿式の際に用いることができる溶媒としても特に制限はなく、例えば、水、アルコール、アセトンなどを用いることができる。
出発原料を混合する際に、湿式で行う場合には、図1のステップS13に示すように、混合された出発原料に含まれる溶媒を蒸発させるための加熱処理を行う。ここで行う加熱処理は、50℃以上150℃以下で行えばよい。加熱処理を行うことにより、混合された出発原料に含まれる溶媒を蒸発させて、混合原料を得る。
次に、図1のステップS14に示すように、坩堝に混合原料を入れ、800℃以上1000℃以下で焼成を行う。焼成時間は、例えば、5時間以上20時間以下とし、焼成ガスにAirガス(乾燥空気)を用い、流量を10L/minとする。焼成雰囲気は、大気雰囲気としてもよいし、酸素ガスを用いた雰囲気としてもよい。混合原料に焼成を行うことにより、焼成物(リチウムマンガン複合酸化物)が形成される。
焼成によって合成された複数の一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物は、複数の一次粒子が焼結して大きな二次粒子が形成された状態となっている。そこで、図1のステップS15に示すように、複数の一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物に対して、解砕処理を行う。焼成物に解砕処理を行うことにより、焼成物を砕いて一次粒子にする、又は一次粒子に近い紛体にする。本明細書等において、解砕処理には、焼結物が粉砕される操作も含む。なお、粉砕とは、一次粒子をさらに砕く操作をいう。解砕処理解砕処理は、出発原料の混合方法と同様に、公知の解砕機や粉砕機を用いることができる。例えば、ボールミルや、ビーズミルなどを用いることができる。また、解砕・粉砕の方式は、乾式でもよいし、湿式でもよい。湿式の際に用いることができる溶媒としても特に制限はなく、例えば、水、アルコール、アセトンなどを用いることができる。
ここで、解砕・粉砕を行った後の粒子の大きさについては、例えば粒子の比表面積を測定することにより評価することができる。リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の比表面積を増加させることにより、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を正極に用いた蓄電池を作製する場合に、例えば粒子と電解液との接触面積を増やすことができる。電解液との接触面積を増やすことにより、蓄電池の反応速度を高めることができ、例えば出力特性を向上させることができる。
解砕処理を行うことにより、粒子の比表面積が増加する場合があり好ましい。リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の比表面積は例えば、0.1m2/g以上が好ましい。また、粒子の比表面積が大きくなり過ぎると、該粒子を用いて作製する電極において、表面積に対して結着剤の量が不足する場合があり、強度が低下する場合がある。ここで結着剤の量を増やすと、単位重量および単位体積あたりの電極の容量が低下する場合がある。よって、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の比表面積は例えば、1m2/g以上50m2/g以下が好ましく、5m2/g以上30m2/g以下がより好ましい。
本実施の形態では、一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物の解砕処理を、ビーズミルを用いて、アセトンを用いた湿式法により行う。
解砕処理を行う際に、湿式で行う場合には、解砕処理後に溶媒を蒸発させるための加熱処理を行う。ここで行う加熱処理は、ステップS13と同様に行えばよい。その後、真空乾燥を行うことにより、粉末状のリチウムマンガン複合酸化物を得る。
次に、加熱処理を行う。加熱処理は、図1のステップS16に示すように、坩堝に解砕処理後のリチウムマンガン複合酸化物を入れ、300℃以上1000℃以下、好ましくは600℃以上900℃以下で加熱処理を行う。加熱時間は、例えば、5時間以上20時間以下とし、ガスにAirガス(乾燥空気)を用い、流量を10L/minとする。加熱雰囲気は、大気雰囲気としてもよいし、酸素ガスを用いた雰囲気としてもよい。
以上の工程により、組成式LiaMnbMcOdで表されるリチウムマンガン複合酸化物を形成することができる。本実施の形態では、原料材料の秤量の割合(モル比)を、Li2CO3:MnCO3:NiO=0.84:0.8062:0.318とすることにより、組成式Li1.68Mn0.8062M0.318O3で表されるリチウムマンガン複合酸化物を形成することができる。
また、ステップS15に示す解砕処理を行った後のリチウムマンガン複合酸化物は、解砕処理の衝撃により、結晶性の乱れが生じる場合がある。また、リチウムマンガン複合酸化物に酸素欠損が生じる場合がある。よって、真空乾燥を行った後の粉末状のリチウムマンガン複合酸化物に、再度加熱処理を行うことが好ましい。
解砕処理後のリチウムマンガン複合酸化物に熱処理を行うことにより、酸素欠損を修復するとともに、解砕処理時の結晶性の乱れを回復させることができる。また、再度加熱処理を行った後の粉末状のリチウムマンガン複合酸化物に、再度、解砕処理を行っても良く、この場合の解砕処理は、図1のステップS15と同様の方法を用いて行うことができる。
ここで、Li2CO3:MnCO3:NiO=0.84:0.8062:0.318の原料を用い、図1に示すステップS11乃至S16に沿ってリチウムマンガン複合酸化物を作製し、その温度安定性を評価した。具体的には、DSC(示差走査熱量測定)を用いて評価を行った。262.2℃で発熱がみられた。それより低い温度においては、DSC評価において安定であった。よって、本発明の一態様のリチウムマンガン複合酸化物は、260℃以下の高い温度においても安定であることがわかる。
本実施の形態に示すリチウムマンガン複合酸化物は、原子数比をLi:(Mn+Ni)=2:1からずれるように調整している。このため、原子数比がLi:(Mn+Ni)=2:1となるリチウムマンガン複合酸化物を電極に用いる場合と比較して、電圧が増加し、放電容量も増加する。
以上の工程により、粒子状のリチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。ここで、リチウムマンガン複合酸化物は、第1の領域および第2の領域の有することが好ましい。第2の領域は、第1の領域の外側の少なくとも一部に接する。ここで、外側とは、粒子の表面により近いことを示す。
第1の領域および第2の領域は、リチウムと、酸素と、を有する。また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかはマンガンを有する。また、また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかは元素Mを有する。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外の金属元素、またはシリコン、リンであることが好ましく、Ni、Ga、Fe、Mo、In、Nb、Nd、Co、Sm、Mg、Al、Ti、Cu、またはZnから選ばれた金属元素、Si、またはPのいずれかであることがより好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。
次に、得られるリチウムマンガン複合酸化物に被覆層を設ける。被覆層は、炭素を有することが好ましい。炭素は導電性が高いため、炭素で被覆された粒子を蓄電池の電極に用いることにより、例えば電極の抵抗を低くすることができる。また、被覆層は酸化グラフェンを有してもよく、還元した酸化グラフェンを有してもよい。
または、被覆層は金属化合物を有してもよい。ここで、金属としては例えばコバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、リチウム、炭素等が挙げられる。金属化合物の一例として、被覆層はこれらの金属との酸化物や、フッ化物などを有してもよい。
本実施の形態では、被覆層として、少なくとも一部に炭素を含む層を設ける。炭素を含む層として、グラフェンを用いることが好ましい。グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、X線光電子分光法(XPS)で測定した場合にグラフェン全体の2%以上20%以下、好ましくは3%以上15%以下である。
炭素を含む層の膜厚は、0.4nm以上40nm以下とすることが好ましい。
次に、リチウムマンガン複合酸化物に炭素を含む層を設ける方法について説明する。本実施の形態では、炭素を含む層として、酸化グラフェン(Graphene Oxideno;GOと略記する)を還元することによって得られたグラフェン(Reduced Graphene Oxide;RGOと略記する)を用いる。
酸化グラフェンは、Hummers法、Modified Hummers法、又は黒鉛類の酸化等、種々の合成法を用いて作製することができる。
例えば、Hummers法は、鱗片状グラファイト等のグラファイトを酸化して、酸化グラファイトを形成する手法である。形成された酸化グラファイトは、グラファイトがところどころ酸化されることでカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が結合したものであり、グラファイトの結晶性が損なわれ、層間の距離が大きくなっている。このため超音波処理等により、容易に層間を分離して、酸化グラフェンを得ることができる。
また、酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう。)は一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下である。フレークサイズが大きいほど、リチウムマンガン複合酸化物の表面を覆いやすくなるため好ましい。
まず、酸化グラフェンと水とを混練機に入れ、酸化グラフェンの分散溶液を作製する。以下ではこれを、酸化グラフェンの水溶液、と示す。この時、酸化グラフェンの濃度は、0.5wt%以上5wt%以下とすることが好ましい。0.5wt%未満であると、リチウムマンガン複合酸化物の表面を覆うことが困難となる。また、5wt%を超えると、電極体積が嵩張り、電極重量が重くなってしまう。
また、リチウムマンガン複合酸化物は、塩基性を示す場合があり、後に示す、電極の作製工程において使用する結着剤、導電助剤、溶媒と、を混練してスラリーまたはペーストを形成する際、リチウムマンガン複合酸化物の示す塩基性によって結着剤のゲル化が加速し、スラリーやペーストの粘度が極端に上昇し、電極の形成が困難になる場合がある。
一方、酸化グラフェンの水溶液は酸性を示す。このため、ステップS17において、酸化グラフェンの水溶液に対して、リチウムマンガン複合酸化物を添加することにより酸塩基反応が生じ、リチウムマンガン複合酸化物の塩基性が緩和される。
その結果、後の工程で結着剤や導電助剤を添加して混練しても、スラリーやペーストのゲル化を低減できる。このため、ステップS17における、酸化グラフェンの水溶液に対して、前記リチウムマンガン複合酸化物を添加するという工程は、結着剤や導電助剤との混練、集電体への塗工という後の工程に対してのマージンが拡大するという効果もあり、電極作製工程を安定に進める上で、有効な方法である。
次に、図1に示すステップS17に示すように、分散溶液にリチウムマンガン複合酸化物を入れ、固練りを行う。なお、固練りとは、高粘度による混練をいう。固練りを行うことにより、リチウムマンガン複合酸化物の粉体の凝集をほどくことができ、酸化グラフェンとリチウムマンガン複合酸化物とを、より均一に分散させることができる。
次に、酸化グラフェンとリチウムマンガン複合酸化物との混合物をベルジャーにて減圧乾燥した後、乳鉢で解砕することにより、酸化グラフェンが被覆されたリチウムマンガン複合酸化物を得る。
次に、図1に示すステップS18に示すように、リチウムマンガン複合酸化物の表面に被覆された酸化グラフェンに還元処理を行う。酸化グラフェンの還元処理は、熱処理によって行っても良いし、還元剤を用いて溶媒中で反応させて行っても良い。本実施の形態では、酸化グラフェンを、還元剤を用いて溶媒中で反応させる。
酸化グラフェンを、還元剤を用いて溶媒中で反応させることにより、リチウムマンガン複合酸化物の表面に被覆された酸化グラフェンは還元され、グラフェンが形成される。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されず、一部の酸素は、グラフェンに残存していてもよい。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上20atomic%以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。この還元処理は、室温以上150℃以下、好ましくは室温以上80℃以下の温度で行うことが好ましい。還元処理の際、加熱を行うことにより、還元反応を促進させることができる。また、酸化グラフェンの還元時間は、3分以上10時間以下とすることができる。
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンあるいはそれらの誘導体を用いることができる。例えば、アスコルビン酸およびヒドロキノンは、ヒドラジンや水素化硼素ナトリウムに比べ還元力が弱いため安全性が高く、工業的に利用しやすい点において好ましい。
溶媒には、極性溶媒を用いることができる。還元剤を溶解することができるものであれば、材料に限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンのいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
還元剤および溶媒を含む還元液としては、エタノールおよびアスコルビン酸の混合液、または水、アスコルビン酸および水酸化リチウムの混合液を用いることができる。本実施の形態では、アスコルビン酸、水、および水酸化リチウムを含む還元液を用いる場合について説明する。
酸化グラフェンが被覆されたリチウムマンガン複合酸化物を、還元液中で反応させることにより、酸化グラフェンは、アスコルビン酸によりプロトンが付加される。その後、H2Oが脱離することにより、酸化グラフェンが還元される。
還元処理後、図1に示すステップS19に示すように、粉体の回収を行う。ここでは、還元液のろ過を行う。ここで得られる物質を、物質Aと呼ぶ。ろ過には、吸引濾過等を用いればよい。または、遠心分離を用いて物質Aと、液体と、を分離してもよい。
次に、得られた物質Aを洗浄する。洗浄は、例えば、還元液に含まれる溶媒として挙げた溶液を用いて行うとよい。なお、還元液に含まれる溶媒と同一の溶液としてもよいし、異なる溶液を用いてもよい。
次に、乾燥を行う。この乾燥工程は、例えば、50℃以上500℃未満、より好ましくは120℃以上400℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、極性溶媒や水分をよく蒸発あるいは除去させる。当該乾燥工程においても、酸化グラフェンの還元を促進させることができる。減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行ってもよいし、大気圧でおこなってもよい。また、ガスとして、空気を用いてもよいし窒素や、その他の不活性ガスを用いてもよい。
ここで、物質Aは例えば二次粒子を形成することが好ましい。
ここで、物質Aが二次粒子を形成する場合の二次粒径は、その平均値が例えば好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは1μm以上20μm以下である。ここで粒径は、例えば粒度分布計を用いて測定される粒径を指す。または、物質Aが二次粒子を形成する場合に、その二次粒子の粒径を指してもよい。二次粒子の粒径は、前述の粒度分布計の他に、例えば顕微鏡による粒子の観察により算出することができる。また、粒径は、例えばその断面の面積から円換算の直径を算出すればよい。
なお、物質Aを洗浄した後に、物質Aを溶媒に分散させた溶液を作製し、溶液にスプレードライ処理を行って、乾燥させてもよい。スプレードライを行うことにより、物質Aが例えば二次粒子を形成して、粒径が変化する場合がある。
また、スプレードライ後に、さらに熱処理を行うことが好ましい。例えば、50℃以上500℃未満、より好ましくは120℃以上400℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、極性溶媒や水分をよく蒸発あるいは除去させる。当該乾燥工程においても、酸化グラフェンの還元を促進させることができる。また、乾燥は、減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行ってもよいし、大気圧でおこなってもよい。また、ガスとして、空気を用いてもよいし窒素や、その他の不活性ガスを用いてもよい。
以上の工程により、酸化グラフェンは還元され、リチウムマンガン複合酸化物の表面にグラフェンを形成することができる。
なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離させる必要はなく、一部の酸素が、グラフェンに残存していてもよい。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合に、全体の2%以上20%以下、好ましくは、3%以上15%以下である。
還元処理後に熱処理を行うことにより、熱処理を行う前と比較して得られるグラフェンの電気伝導度をより高めることができる場合がある。
還元処理後に熱処理を行うことにより、例えば、本発明の一態様の「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」において、第1の領域乃至第3の領域が形成される場合がある。「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」が有する第1の領域乃至第3の領域は、熱処理前に形成されてもよい。あるいは、熱処理の過程において形成されてもよい。また、例えば被覆層形成前や、被覆層形成後、および還元処理後に形成された第1の領域乃至第3の領域の厚さや組成、および結晶構造等が、熱処理の過程において変化してもよい。
また、熱処理を行うことにより、例えば、結着剤が有する元素と、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子と、が反応する場合がある。一例として、結着剤にPVdFを用いる場合において、PVdFが有するフッ素と、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子のリチウム、マンガン、および元素Mのいずれかまたは複数と、が金属フッ化物を形成してもよい。
または、リチウムマンガン複合酸化物の被覆層、例えばここでは炭素を含む層の例を示したが、被覆層に含まれる元素と、フッ素と、が結合を形成してもよい。例えば被覆層として炭素を含む層を用いる場合には、フッ化炭素物が形成されてもよい。ここで、該被覆層は、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の有する第3の領域と一致してもよいし、第3の領域と、リチウムマンガン複合酸化物の一部と、を有しても構わない。また、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の有する第2の領域は、例えば該被覆層の一部を有してもよい。
以上の工程により、リチウムマンガン複合酸化物の表面の少なくとも一部にグラフェンが設けられた粒子を形成することができる。
グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。そのため、当該粒子を含む電極を電池に用いることにより、例えば当該電極の電気伝導性をより高めることができる。
次に、電極200の作製方法について説明する。
まず、電極合剤組成物を作製する。電極合剤組成物は、例えば上述した活物質を用い、結着剤や導電助剤等を添加して、溶媒とともに混練することで作製することができる。電極合剤組成物は、スラリー状であっても、ペースト状であってもよい。なお、溶媒としては、例えば、水や、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)などを用いることができる。安全性とコストの観点から、水を用いることは好ましい。
一例として電極200が蓄電池用の正極である場合を説明する。ここでは活物質として本発明の一態様に係る活物質を用い、導電助剤としてアセチレンブラックを用い、結着剤としてPVdFを用い、溶媒としてNMPを用いる例について説明する。
まず、本発明の一態様に係る活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンと、を混合する。これらの混合物に、所定の粘度になるまでNMPを添加し、混練することで、電極合剤組成物を形成することができる。この工程において、混練と極性溶媒との添加を複数回繰り返し行ってもよい。電極合剤組成物は、スラリー状でもペースト状であってもよい。
以上の工程により、活物質、導電助剤、結着剤の分散状態が均一な電極合剤組成物を形成することができる。
ここで、集電体上に、アンダーコートを形成してもよい。なお、アンダーコートとは、接触抵抗の低減や、集電体と活物質層との密着性向上のための被覆層をいう。アンダーコートとして、例えば、炭素層、金属層、炭素および高分子を含む層、並びに金属および高分子を含む層を用いることができる。集電体上にアンダーコートを形成することにより、後に形成される集電体と活物質層との接触抵抗を低減することができる。また、集電体と活物質層との密着性を高めることができる。なお、アンダーコートは、導電助剤としてグラフェンを用いる場合には、酸化グラフェンの還元工程において、還元液によって溶解しないものが好ましい。
また、アンダーコートとしては、例えば、黒鉛やアセチレンブラックなどの分散水溶液、または当該水溶液に高分子を混ぜたものを用いることができ、例えば、黒鉛と、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA)との混合物、また、ABとPVdFとの混合物などを用いることができる。また、黒鉛とPAAとの配合比は、黒鉛:PAA=95:5から50:50の範囲、ABとPVdFとの配合比は、AB:PVdF=70:30から50:50の範囲とすればよい。
なお、活物質層と集電体との密着性や、電極強度、接触抵抗に問題がなければ、アンダーコートは、必ずしも集電体に形成する必要はない。
次に、スラリーを集電体の片面又は両面に、例えば、ドクターブレード法等の塗布法などにより設ける。
次に、集電体上に設けたスラリーを、通風乾燥又は減圧(真空)乾燥等の方法で乾燥させることにより活物質層を形成する。この乾燥は、例えば、50℃以上180℃以下の熱風を用いて行うとよい。このステップにより、活物質層中に含まれる極性溶媒を蒸発させる。なお、雰囲気は特に限定されない。
ここで、この活物質層を、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法により圧力を加えることで、活物質層の密度を高めてもよい。また、プレスを行う際に、90℃以上180℃以下、好ましくは120℃以下の熱を加えることにより、アンダーコートや活物質層に含まれる結着剤(例えば、PVdF)を、電極の特性を変化させない程度に軟化させることにより、集電体と活物質層との密着性をさらに高めることができる。
次に、活物質層を乾燥させる。乾燥は、減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行うとよい。この乾燥工程は、例えば、50℃以上600℃以下、さらにこのましくは120℃以上500℃以下、より好ましくは200℃以上400℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、活物質層に存在する極性溶媒や水分をよく蒸発あるいは除去させる。
ここで、例えば本発明の一態様の「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」を用いて電極を作製し、該電極を用いて蓄電池を作製する場合、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」が有する第1の領域乃至第3の領域は、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の作製過程、および蓄電池作製過程のいずれの過程において形成されていてもよい。
さらに、活物質層が形成された集電体にプレスを行ってもよい。これにより、活物質層と集電体との密着性を高めることができる。また、活物質層の密度を高めることができる。また、プレスを行う際に、90℃以上180℃以下、好ましくは120℃以下の熱を加えることにより、アンダーコートや活物質層に含まれる結着剤(例えば、PVDF)を、電極の特性を変化させない程度に軟化させることにより、集電体と活物質層との密着性をさらに高めることができる。
最後に、所定のサイズに集電体および活物質層を打ち抜くことにより、電極が作製される。
また、本実施の形態で説明したように、酸性を示す酸化グラフェンの水溶液に、強い塩基性を示す活物質を添加して酸塩基反応が生じることで、活物質の強い塩基性が緩和され、結着剤のゲル化を防止することが可能となり、その結果、強度が高く、外的な衝撃によって破壊されにくい電極を作製することができる。従って、本実施の形態で説明した電極の製造方法を用いて蓄電池を作製することにより、蓄電池のサイクル特性及びレート特性を向上させることができる。また、蓄電池の製造方法を簡略化することができる。また、強度が高く、例えば外的な衝撃によって破壊されにくい蓄電池を作製することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電池用電極について、実施の形態1および2とは異なる例について説明する。図9(A)に活物質層の平面図を、図9(B)及び図10に、活物質層の縦断面図を示す。
本実施の形態に示す蓄電池の電極の、活物質粒子に対する導電助剤の配置状態等の構造は実施の形態1と異なるものである。ただし、蓄電池のそれ以外の構成要素である正極集電体、正極活物質、負極集電体、負極活物質、他の導電助剤、電解液等は実施の形態1に示す材料等を利用することが可能である。
図9(A)及び図9(B)は、活物質層202の上面及び縦断面を、図10はさらに総断面の拡大を、それぞれ示した模式図である。活物質層202は、導電助剤としてのグラフェン204と、粒状の活物質203と、結着剤(バインダともいう。図示せず)と、を含む。活物質層202は、グラフェン以外の導電助剤(第2の導電助剤ともいう。図示せず)を有していてもよい。
図9(A)に示す活物質層202の上面図のように、複数の粒状の活物質203は、複数のグラフェン204によって被覆されている。一枚のシート状のグラフェン204は、複数の粒状の活物質203と接続する。特に、グラフェン204がシート状であるため、粒状の活物質203の表面の一部を包むように面接触することができる。活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン204は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の活物質203とグラフェン204との電気伝導性を向上させることができる。
また、複数のグラフェン204どうしも面接触している。これはグラフェン204の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元してグラフェンとするため、活物質層202に残留するグラフェン204は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで電気伝導の経路を形成している。
図9(A)に示す活物質層202の上面図において、グラフェン204は必ずしも活物質層202の表面でのみ他のグラフェンと重なり合うものではなく、グラフェン204の一部は活物質層202の間に設けられる。また、グラフェン204は炭素分子の単層又はこれらの積層で構成される極めて薄い膜(シート)であるため、個々の粒状の活物質203の表面をなぞるようにその表面の一部を覆って接触しており、活物質203と接していない部分は複数の粒状の活物質203の間で撓み、皺となり、あるいは引き延ばされて張った状態を呈する。
活物質層202の縦断面においては、図9(B)に示すように、活物質層202の内部において概略均一にシート状のグラフェン204が分散する。図9(B)においてはグラフェン204を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。活物質層202の上面についての説明と同様に、複数のグラフェン204は、複数の粒状の活物質203を包むように、あるいは覆うように形成されているため、互いに面接触している。また、グラフェン204どうしも互いに面接触することで複数のグラフェン204により電気伝導のネットワークを形成している。図9(B)をさらに拡大した模式図が図4である。複数の粒状の活物質203の表面上に張り付くようにグラフェン204が被覆するとともに、グラフェンどうしもまた接触してネットワークを形成している。
図9(A)、図9(B)及び図10で示したように、シート状の複数のグラフェン204は活物質層202の内部において三次元的に分散しており、これらが互いに面接触することで、三次元の電気伝導性のネットワークを形成している。また、それぞれのグラフェン204は、複数の粒状の活物質203を被覆し面接触している。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)本実施の形態では、実施の形態3で例示した活物質、導電助剤、結着剤を用いて、活物質層202を含む電極200を製造する方法について、図6乃至図8を参照して説明する。
まず、活物質、酸化グラフェン、及び分散媒を混練し、第1の混合物を形成する(ステップS101)。このとき、第2の導電助剤を加えてもよい。活物質、酸化グラフェン、第2の導電助剤については、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。
分散媒としては、極性溶媒を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。特にNMPは、酸化グラフェンをよく分散させることができるため、好ましい。
次に、これらの混合物に固練り(高粘度の状態で混練)を行うことで、酸化グラフェン及び活物質の凝集をほどくことができる。また、酸化グラフェンは、極性溶媒中において官能基の酸素がマイナスに帯電するため、異なる酸化グラフェンどうしで凝集しにくい。このため、活物質と酸化グラフェンをより均一に分散させることができる。
次に、第1の混合物に還元剤を添加し混合することにより酸化グラフェンを還元して第2の混合物を形成する(ステップS102)。還元剤は少量の溶媒で溶かしてから第1の混合物に添加すると、混合が容易になり好ましい。このステップにより、酸化グラフェンを還元し、グラフェンとすることができる。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されず、一部の酸素は、グラフェンに残存してもよい。
還元剤としては、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール等、還元剤の溶解性が高く、沸点が低い溶媒を選択して用いることができる。
還元剤を添加した混合物を、30℃以上200℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下で加熱してもよい。加熱により酸化グラフェンの還元反応を促進することができる。なお、雰囲気は特に限定されない。
ここで、還元剤を添加せず、酸化グラフェンを有する混合物を加熱することにより酸化グラフェンを還元すること(熱還元ともいう)ができる。ただし、熱還元によって酸化グラフェンを十分に還元させるためには、高温での加熱が必要となる。従って、電極作製に用いる材料又は装置の耐熱温度等の制限によって、酸化グラフェンを十分に還元する温度にまで加熱することができず、還元が不十分になる場合がある。一方、本発明の一態様では、還元剤を添加することで、高温で加熱をせずとも酸化グラフェンを還元することができる。従って、ステップS102に示す方法により、穏和な条件で酸化グラフェンを還元する反応の効率を高めることができる、といえる。
還元剤の量は、第1の混合物に含まれる酸化グラフェンの重量に対して、5wt%以上500wt%以下の割合とするとよい。また、還元剤の量は、ステップS101で使用した酸化グラフェンの酸化度に応じて変更してもよい。
ここで、高密度な活物質を用いると、活物質層202の密度が高くなることがある。高密度な活物質としては、例えば、組成式LixMnyMzOwで表されるリチウムマンガン複合酸化物、LiCoO2、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系等が挙げられる。活物質層202を形成した後に酸化グラフェンの還元処理を行うと、酸化グラフェンを十分に還元することができない場合がある。これは活物質層202内の空隙が非常に少なく、還元剤が活物質の深層にまで十分に浸透しないことが原因であると考えられる。
本発明の一態様は、ステップS102に示すように、活物質層を形成する前の第1の混合物に還元剤を添加することで、酸化グラフェンを還元するものである。第1の混合物中に還元剤を添加することで、還元剤が混合物中に広く行き渡り、第2の混合物に含まれる酸化グラフェンを高い反応効率で、還元することができる。従って、後のステップS104において、酸化グラフェンが高い反応効率で還元された活物質層202を形成することができる。
また、塩基性を有する活物質を用いると、第2の混合物が塩基性となる場合がある。例えば、塩基性を有する活物質としては、組成式LixMnyMzOwで表されるリチウムマンガン複合酸化物等が挙げられる。このとき、続くステップS103において、例えば、結着剤としてPVdFを第2の混合物に加えると、混合物が強い塩基性であることによりPVdFがゲル化し、第3の混合物を均一に混練することが困難になる場合がある。しかし、ステップS101において、酸性を示す酸化グラフェンの水溶液に、強い塩基性を示す活物質を添加して酸塩基反応が生じることで、第2の混合物が強い塩基性となるのを抑制することができる。従って、続くステップS103において、PVdFのゲル化を抑制することができるため、均一に混練された第3の混合物を作製することができる。従って、結着剤が均一に分布した活物質層を形成することができるため、均一な厚みを有する電極を作製することができる。また、強度が高く、例えば外的な衝撃によって破壊されにくい電極を作製することができる。
また、酸に対して不安定な活物質や、結着剤を用いる場合は、ステップS102において、還元剤として塩基を用いると、好ましい。酸に対して不安定な活物質としては、例えば、LiCoO2、LiFePO4等が挙げられる。また、酸に対して不安定な結着剤としては、例えば、SBR等が挙げられる。また、還元剤として用いることのできる塩基としては、例えば、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、水素化硼素ナトリウム、又はN,N−ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
このように、本発明の一態様では、酸化グラフェンの水溶液を用いて酸塩基反応を生じさせることで、塩基性を有する活物質と、強い塩基性の混合物中でゲル化する結着剤とを組み合わせて、均一な厚みを有する電極や強度が高い電極を作製することができる。また、還元剤として塩基を用いることで、酸に対して不安定な活物質や、結着剤を用いた電極を作製することもできる。本発明の一態様を適用することで、活物質や結着剤に用いる材料やその組み合わせの選択の幅が広がり、好ましい。
ここで、第2の混合物を、減圧雰囲気下、20℃以上80℃以下、5分以上10時間以下で乾燥させることにより、還元剤とともに添加した溶媒を除去する操作を行ってもよい。
次に、第2の混合物に結着剤を加え、固練りを行い、第3の混合物(ペーストともいう)を形成する(ステップS103)。結着剤としては、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。
次に、第3の混合物を集電体に塗布して、乾燥させることにより活物質層を形成する(ステップS104)。乾燥工程は、20℃以上170℃以下、1分以上10時間以下加熱することにより、分散媒を蒸発させることによって行う。なお、雰囲気は特に限定されない。
なお、図7に示すように、前記ステップS101の後に、前記第1の混合物に還元剤を添加するまでをステップS105とし、第3の混合物に対して還元し(ステップS106)、その後、還元した第3の混合物を用いて集電体に塗布して乾燥させて活物質層を形成してもよい(ステップS107)。
また、図8に示すように、前記ステップS101の後に、前記第1の混合物に還元剤を添加して第2の混合物を形成するまでをステップS108とし、その後第2の混合物に結着剤を加えて固練りを行って第3の混合物を形成し(ステップS109)、第3の混合物を集電体に塗布して形成した活物質層に対して還元を行うことも可能である(ステップS110)。
以上の工程により、活物質203にグラフェン204が均一に分散された活物質層202を有する電極200が作製することができる。なお、乾燥工程の後、電極200に対して、加圧工程を行っても良い。
本実施の形態で説明したように、活物質、酸化グラフェンを含む第1の混合物に、還元剤を添加し、後の工程で加熱することにより、穏和な条件で酸化グラフェンを還元することができる。また、酸化グラフェンを還元する反応の効率を高めることができる。また、グラフェンを含む第2の混合物を用いて第3の混合物を作製し、集電体に塗布し、乾燥させることによって、穏和な条件でグラフェンを導電助剤として含む電極を作製することができる。また、均一な厚みを有する電極を作製することができる。また、強度が高く、外的な衝撃によって破壊されにくい電極を作製することができる。従って、本実施の形態で説明した電極の製造方法を用いて蓄電池を作製することにより、蓄電池のサイクル特性及びレート特性を向上させることができる。また、蓄電池の製造方法を簡略化することができる。また、強度が高く、例えば外的な衝撃によって破壊されにくい蓄電池を作製することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)本実施の形態では、本発明の一態様を用いた蓄電装置の様々な形態について説明する。
[コイン型蓄電池]図11(A)は、コイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図11(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。正極活物質層306は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、正極活物質層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。導電助剤としては、導電助剤としては比表面積が大きい材料が望ましく、アセチレンブラック(AB)等を用いることができる。また、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンといった炭素材料を用いることもできる。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。負極活物質層309は、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、負極活物質層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。正極活物質層306と負極活物質層309との間には、セパレータ310と、電解質(図示せず)とを有する。
負極活物質層309に用いる負極活物質としては、実施の形態1で示した材料を用いる。電池を組み立てる前に実施の形態1または実施の形態2に示した装置を用い、負極307に対して電解液中で酸化および還元処理を行う。
また、正極集電体305や負極集電体308などの集電体としては、実施の形態1で示した材料を用いる。
正極活物質層306、負極活物質層309には、リチウムイオンを挿入および脱離することが可能な材料を用いることができ、例えば、実施の形態1で示した材料を用いる。また、電池を組み立てる前に実施の形態1に示した装置を用い、正極304に対して電解液中で酸化および還元処理を行う。
セパレータ310としては、絶縁体を用いることができ、例えば、セルロース(紙)や、空孔が設けられたポリプロピレンや空孔が設けられたポリエチレンを用いることができる。
電解液は、電解質として、キャリアイオンを有する材料を用いる。電解質の代表例としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩がある。これらの電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)、を用いてもよい。
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンを移送可能な材料を用いる。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、蓄電池の薄型化および軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、ポリアクリル酸ゲル、ポリメタクリル酸ゲル、ポリアクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電池の破裂や発火などを防ぐことができる。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図11(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
また、図11(C)に円筒型の蓄電池の一例を示す。図11(C)は、円筒型の蓄電池600の断面を模式的に示した図である。円筒型の蓄電池600は正極キャップ(電池蓋)601と電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン形やラミネート型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604および負極606は、上述したコイン形の蓄電池の正極および負極と同様に製造すればよいが、円筒型の蓄電池600に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン形、および円筒型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、およびセパレータが複数積層された構造、正極、負極、およびセパレータが捲回された構造であってもよい。
[薄型蓄電池1]図12に、蓄電装置の一例として、薄型の蓄電池について示す。図12は、薄型の蓄電池の一例を示す。薄型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図12は薄型の蓄電池500の外観図を示す。また、図13(A)および図13(B)は、図12に一点鎖線で示すA1−A2断面およびB1−B2断面を示す。薄型の蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。
正極503または負極506の少なくとも一方には、本発明の一態様である電極を用いる。また、正極503または負極506の両方に、本発明の一態様である電極を用いてもよい。
まず、正極503の構成について説明する。正極503には、本発明の一態様に係る電極を用いることが好ましい。ここでは、正極503に、実施の形態1に示す電極を用いる例を示す。
電解液508、セパレータ507としては実施の形態1に示した材料を使用することができる。
セパレータ507は袋状に加工し、正極503または負極506のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。例えば、図14(A)に示すように、正極503を挟むようにセパレータ507を2つ折りにし、正極503と重なる領域よりも外側で封止部514により封止することで、正極503をセパレータ507内に確実に担持することができる。そして、図14(B)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と負極506とを交互に積層し、これらを外装体509内に配置することで薄型の蓄電池500を形成するとよい。
ここで、正極活物質として、実施の形態1に示すリチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を用い、正極503として実施の形態1に示す電極を用い、負極活物質として、シリコンを有する活物質を用いる例について説明する。
シリコンを有する活物質、例えばシリコンや、SiOは、活物質重量および活物質体積あたりの容量が大きく、蓄電池の重量あたりおよび体積あたりの容量を高めることができる。
図15(B)は、リード電極に集電体を溶接する例を示す。例として、正極集電体501を正極リード電極510に溶接する例を示す。正極集電体501は、超音波溶接などを用いて溶接領域512で正極リード電極510に溶接される。また、正極集電体501は、図15(B)に示す湾曲部513を有することにより、蓄電池500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができ、蓄電池500の信頼性を高めることができる。
図12および図13に示す薄型の蓄電池500において、正極リード電極510および負極リード電極511を用いて正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させて正極リード電極510および負極リード電極511を外側に露出している。また、外部との電気的接触を得る端子の役割を正極集電体501および負極集電体504で兼ねることもできる。その場合は、リード電極を用いずに、正極集電体501および負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図12では正極リード電極510と負極リード電極511は同じ辺に配置されているが、図16に示すように、正極リード電極510と負極リード電極511を異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の蓄電池は、リード電極を自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の生産性を高めることができる。
薄型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
また図12では、一例として、向かい合う正極と負極の組の数を5組としているが、勿論、電極の組は5組に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
上記構成において、蓄電池500の外装体509は、曲率半径30mm以下もしくは曲率半径10mm以下で屈曲することができる。蓄電池500の外装体であるフィルムは、1枚または2枚で構成されており、積層構造の蓄電池である場合、湾曲させた電池の断面構造は、外装体であるフィルムの2つの曲線で挟まれた構造となる。
面の曲率半径について、図17を用いて説明する。図17(A)において、曲面1700を切断した平面1701において、曲面の形状である曲線1702の一部を円の弧に近似して、その円の半径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。図17(B)に曲面1700の上面図を示す。図17(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図を示す。曲面を平面で切断するとき、曲面に対する平面の角度や切断位置に応じて、断面に現れる曲線の曲率半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする。
2枚のフィルムを外装体として電極・電解液など1805を挟む蓄電池500を湾曲させた場合には、蓄電池500の曲率中心1800に近い側のフィルム1801の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側のフィルム1803の曲率半径1804よりも小さい(図18(A))。蓄電池500を湾曲させて断面を円弧状とすると曲率中心1800に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲率中心1800から遠いフィルムの表面には引っ張り応力がかかる(図18(B))。外装体の表面に凹部または凸部で形成される模様を形成すると、このように圧縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみによる影響を許容範囲内に抑えることができる。そのため、蓄電池500は、曲率中心に近い側の外装体の曲率半径が10mm以上好ましくは30mm以上となる範囲で変形することができる。
なお、蓄電池500の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にすることができ、例えば図18(C)に示す形状や、波状(図18(D))、S字形状などとすることもできる。蓄電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、2枚の外装体の曲率中心に近い方の外装体の曲率半径が、10mm以上好ましくは30mm以上となる範囲で二次電池が変形することができる。
[薄型蓄電池2]図19に、図12とは異なる薄型蓄電池の例として、蓄電池100aを示す。図19(A)は蓄電池100aの斜視図、図19(B)は蓄電池100aの上面図である。図19(C)は、図19(B)の一点破線D1−D2における断面図である。なお、図19(C)では図を明瞭にするため、正極111、負極115、セパレータ103、正極リード121、負極リード125、および封止層120を抜粋して示す。
ここで図20を用いて、図19に示す蓄電池100aの作製方法の一部について説明する。
まずセパレータ103上に、負極115を配置する(図20(A))。このとき、負極115が有する負極活物質層が、セパレータ103と重畳するように配置する。
次に、セパレータ103を折り曲げ、負極115の上にセパレータ103を重ねる。次に、セパレータ103の上に、正極111を重ねる(図20(B))。このとき、正極111が有する正極活物質層が、セパレータ103および負極活物質層と重畳するように配置する。なお、集電体の片面に活物質層が形成されている電極を用いる場合は、正極111の正極活物質層と、負極115の負極活物質層がセパレータ103を介して対向するように配置する。
セパレータ103にポリプロピレン等の熱溶着が可能な材料を用いている場合は、セパレータ103同士が重畳している領域を熱溶着してから次の電極を重ねることで、作製工程中に電極がずれることを抑制できる。具体的には、負極115または正極111と重畳しておらず、セパレータ103同士が重畳している領域、たとえば図20(B)の領域103aで示す領域を熱溶着することが好ましい。
この工程を繰り返すことで、図20(C)に示すように、セパレータ103を挟んで正極111および負極115を積み重ねることができる。
なお、あらかじめ繰り返し折り曲げたセパレータ103に、複数の負極115および複数の正極111を交互に挟むように配置してもよい。
次に、図20(C)に示すように、セパレータ103で複数の正極111および複数の負極115を覆う。
さらに、図20(D)に示すように、セパレータ103同士が重畳している領域、例えば図20(D)に示す領域103bを熱溶着することで、複数の正極111と複数の負極115を、セパレータ103によって覆い、結束する。
なお、複数の正極111、複数の負極115およびセパレータ103を、結束材を用いて結束してもよい。
このような工程で正極111および負極115を積み重ねるため、セパレータ103は、1枚のセパレータ103の中で、複数の正極111と複数の負極115に挟まれている領域と、複数の正極111と複数の負極115を覆うように配置されている領域とを有する。
換言すれば、図13の蓄電池100aが有するセパレータ103は、一部が折りたたまれた1枚のセパレータである。セパレータ103の折りたたまれた領域に、複数の正極111と、複数の負極115が挟まれている。
蓄電池100aの、外装体107の接着領域、および正極111、負極115、セパレータ103および外装体107の形状、正極リード121および負極リード125の位置形状以外の構成は、実施の形態1の記載を参酌することができる。また、正極111および負極115を積み重ねる工程以外の蓄電池100aの作製方法は、実施の形態1に記載の作製方法を参酌することができる。
[薄型蓄電池3]図21に、図19と異なる薄型蓄電池の例として蓄電池100bを示す。図21(A)は蓄電池100bの斜視図、図21(B)は蓄電池100bの上面図である。図21(C1)は第1の電極組立体130、図21(C2)は第2の電極組立体131の断面図である。図21(D)は、図21(B)の一点破線E1−E2における断面図である。なお、図21(D)では図を明瞭にするため、第1の電極組立体130、電極組立体131およびセパレータ103を抜粋して示す。
図21に示す蓄電池100bは、正極111と負極115の配置、およびセパレータ103の配置が図13の蓄電池100aと異なる。
図21(D)に示すように、蓄電池100bは、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131を有する。
図21(C1)に示すように、第1の電極組立体130では、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極111a、セパレータ103、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極115a、セパレータ103、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極111aがこの順に積層されている。また図21(C2)に示すように、第2の電極組立体131では、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極115a、セパレータ103、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極111a、セパレータ103、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極115aがこの順に積層されている。
さらに図21(D)に示すように、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131は、巻回したセパレータ103によって覆われている。
ここで図22を用いて、図21に示す蓄電池100bの作製方法の一部について説明する。
まずセパレータ103上に、第1の電極組立体130を配置する(図22(A))。
次に、セパレータ103を折り曲げ、第1の電極組立体130の上にセパレータ103を重ねる。次に、第1の電極組立体130の上下に、セパレータ103を介して、2組の第2の電極組立体131を重ねる(図22(B))。
次に、セパレータ103を、2組の第2の電極組立体131を覆うように巻回させる。さらに、2組の第2の電極組立体131の上下に、セパレータ103を介して、2組の第1の電極組立体130を重ねる(図22(C))。
次に、セパレータ103を、2組の第1の電極組立体130を覆うように巻回させる(図22(D))。
このような工程で複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131を積み重ねるため、これらの電極組立体は、渦巻き状に巻回されたセパレータ103の間に配置される。
なお、最も外側に配置される電極組立体130の正極111aは、外側には正極活物質層を設けないことが好ましい。
また図21(C1)および(C2)では、電極組立体が電極3枚とセパレータ2枚を有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。電極を4枚以上、セパレータを3枚以上有する構成としてもよい。電極を増やすことで、蓄電池100bの容量をより向上させることができる。また電極を2枚、セパレータを1枚有する構成としてもよい。電極が少ない場合、より湾曲に強い蓄電池100bとすることができる。まだ図21(D)では、蓄電池100bが第1の電極組立体130を3組、第2の電極組立体を2組有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。さらに多くの電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体を増やすことで、蓄電池100bの容量をより向上させることができる。またより少ない電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体が少ない場合、より湾曲に強い蓄電池100bとすることができる。
蓄電池100bの、正極111と負極115の配置、およびセパレータ103の配置の他は、図19についての記載を参酌することができる。
[蓄電システムの構造例]また、蓄電システムの構造例について、図23、図24、図25を用いて説明する。ここで蓄電システムとは、例えば、蓄電装置を搭載した機器を指す。本実施の形態で説明する蓄電システムは、本発明の一態様を用いた蓄電装置である、蓄電池を有する。
図23(A)および図23(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システムは、回路基板900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図23(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端子952と、を有し、蓄電池913の、ラベル910が貼られる面にアンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、および回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900と重なる位置に設けられていてもよい。なお、アンテナ914およびアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。または、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電システムは、アンテナ914およびアンテナ915と、蓄電池913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電システムの構造は、図23に限定されない。
例えば、図24(A−1)および図24(A−2)に示すように、図23(A)および図23(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図24(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図24(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図24(A−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図24(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914およびアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
または、図24(B−1)および図24(B−2)に示すように、図23(A)および図23(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図24(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図24(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図24(B−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914およびアンテナ915が設けられ、図24(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914およびアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
または、図25(A)に示すように、図23(A)および図23(B)に示す蓄電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
または、図25(B)に示すように、図23(A)および図23(B)に示す蓄電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図23(A)および図23(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
本実施の形態で示す蓄電池や蓄電システムには、本発明の一態様に係る電極が用いられている。そのため、蓄電池や蓄電システムの容量の大きくすることができる。また、エネルギー密度を高めることができる。また、信頼性を高めることができる。また、寿命を長くすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)本実施の形態では、本発明の一態様を用いた蓄電装置である、可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例について説明する。
先の実施の形態に示す可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を図26に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図26(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図26(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図26(C)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
図26(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、および蓄電装置7104を備える。また、図26(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
図26(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧および作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行および解除、省電力モードの実行および解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極部材を備える蓄電装置を有している。例えば、図26(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
図26(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の蓄電装置を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態7)
本実施の形態では、蓄電装置を搭載することのできる電子機器の一例を示す。
図27(A)および図27(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図27(A)および図27(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。図27(A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図27(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図27(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図27(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様の蓄電体を用いる。
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電体を用いた蓄電体9635は可撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図27(A)および図27(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができるため好適である。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図27(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図27(C)にブロック図を示し説明する。図27(C)には、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図27(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
図28に、他の電子機器の例を示す。図28において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図28において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、蓄電装置8103等を有する。図28では、蓄電装置8103が、筐体8101および光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
なお、図28では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図28において、室内機8200および室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図28では、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図28では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図28において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図28では、蓄電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態8)本実施の形態では、車両に蓄電装置を搭載する例を示す。
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、またはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図29において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図29(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーターを駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図29(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図29(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された蓄電装置(図示せず)を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両同士で電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態9)本実施の形態では、上記実施の形態で説明した材料を含む電池セルと組み合わせて用いることができる電池制御ユニット(Battery Management Unit:BMU)、および該電池制御ユニットを構成する回路に適したトランジスタについて、図30乃至図36を参照して説明する。本実施の形態では、特に直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットについて説明する。
直列に接続された複数の電池セルに対して充放電を繰り返していくと、電池セル間の特性のばらつきに応じて、容量(出力電圧)が異なってくる。直列に接続された電池セルでは、全体の放電時の容量が、容量の小さい電池セルに依存する。容量にばらつきがあると放電時の容量が小さくなる。また、容量が小さい電池セルを基準にして充電を行うと、充電不足となるおそれがある。また、容量の大きい電池セルを基準にして充電を行うと、過充電となるおそれがある。
そのため、直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットは、充電不足や、過充電の原因となる、電池セル間の容量のばらつきを揃える機能を有する。電池セル間の容量のばらつきを揃える回路構成には、抵抗方式、キャパシタ方式、あるいはインダクタ方式等あるが、ここではオフ電流の小さいトランジスタを利用して容量のばらつきを揃えることのできる回路構成を一例として挙げて説明する。
オフ電流の小さいトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(OSトランジスタ)が好ましい。オフ電流の小さいOSトランジスタを蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成に用いることで、電池から漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。
チャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、In−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いる。酸化物半導体膜を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
ここで、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
試料面と略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
なお、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(Siトランジスタ)に比べてバンドギャップが大きいため、高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。直列に電池セルを接続する場合、数100Vの電圧が生じることになるが、このような電池セルに適用される蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成には、前述のOSトランジスタで構成することが適している。
図30には、蓄電装置のブロック図の一例を示す。図30に示す蓄電装置1300は、端子対1301と、端子対1302と、切り替え制御回路1303と、切り替え回路1304と、切り替え回路1305と、変圧制御回路1306と、変圧回路1307と、直列に接続された複数の電池セル1309を含む電池部1308と、を有する。
また、図30の蓄電装置1300において、端子対1301と、端子対1302と、切り替え制御回路1303と、切り替え回路1304と、切り替え回路1305と、変圧制御回路1306と、変圧回路1307とにより構成される部分を、電池制御ユニットと呼ぶことができる。
切り替え制御回路1303は、切り替え回路1304および切り替え回路1305の動作を制御する。具体的には、切り替え制御回路1303は、電池セル1309毎に測定された電圧に基づいて、放電する電池セル(放電電池セル群)、および充電する電池セル(充電電池セル群)を決定する。
さらに、切り替え制御回路1303は、当該決定された放電電池セル群および充電電池セル群に基づいて、制御信号S1および制御信号S2を出力する。制御信号S1は、切り替え回路1304へ出力される。この制御信号S1は、端子対1301と放電電池セル群とを接続させるように切り替え回路1304を制御する信号である。また、制御信号S2は、切り替え回路1305へ出力される。この制御信号S2は、端子対1302と充電電池セル群とを接続させるように切り替え回路1305を制御する信号である。
また、切り替え制御回路1303は、切り替え回路1304、切り替え回路1305、および変圧回路1307の構成を踏まえ、端子対1302と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士が接続されるように、制御信号S1および制御信号S2を生成する。
切り替え制御回路1303の動作の詳細について述べる。
まず、切り替え制御回路1303は、複数の電池セル1309毎の電圧を測定する。そして、切り替え制御回路1303は、例えば、所定の閾値以上の電圧の電池セル1309を高電圧の電池セル(高電圧セル)、所定の閾値未満の電圧の電池セル1309を低電圧の電池セル(定電圧セル)と判断する。
なお、高電圧セルおよび低電圧セルを判断する方法については、様々な方法を用いることができる。例えば、切り替え制御回路1303は、複数の電池セル1309の中で、最も電圧の高い、又は最も電圧の低い電池セル1309の電圧を基準として、各電池セル1309が高電圧セルか低電圧セルかを判断してもよい。この場合、切り替え制御回路1303は、各電池セル1309の電圧が基準となる電圧に対して所定の割合以上か否かを判定する等して、各電池セル1309が高電圧セルか低電圧セルかを判断することができる。そして、切り替え制御回路1303は、この判断結果に基づいて、放電電池セル群と充電電池セル群とを決定する。
なお、複数の電池セル1309の中には、高電圧セルと低電圧セルが様々な状態で混在し得る。例えば、切り替え制御回路1303は、高電圧セルと低電圧セルが混在する中で、高電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を放電電池セル群とする。また、切り替え制御回路1303は、低電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を充電電池セル群とする。また、切り替え制御回路1303は、過充電又は過放電に近い電池セル1309を、放電電池セル群又は充電電池セル群として優先的に選択するようにしてもよい。
ここで、本実施形態における切り替え制御回路1303の動作例を、図31を用いて説明する。図31は、切り替え制御回路1303の動作例を説明するための図である。なお、説明の便宜上、図31では4個の電池セル1309が直列に接続されている場合を例に説明する。
まず、図31(A)の例では、電池セル1309のa乃至dの電圧を電圧Va乃至電圧Vdとすると、Va=Vb=Vc>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路1303は、連続する3つの高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路1303は、低電圧セルDを充電電池セル群として決定する。
次に、図31(B)の例では、Vc>Vb=Va>>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する2つの低電圧セルa、bと、1つの高電圧セルcと、1つの過放電間近の低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路1303は、高電圧セルcを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路1303は、低電圧セルdが過放電間近であるため、連続する2つの低電圧セルaおよびbではなく、低電圧セルdを充電電池セル群として優先的に決定する。
最後に、図31(C)の例では、Va>Vb=Vc=Vdの関係にある場合を示している。つまり、1つの高電圧セルaと、連続する3つの低電圧セルb乃至dとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路1303は、高電圧セルaを放電電池セル群と決定する。また、切り替え制御回路1303は、連続する3つの低電圧セルb乃至dを充電電池セル群として決定する。
切り替え制御回路1303は、上記図31(A)乃至(C)の例のように決定された結果に基づいて、切り替え回路1304の接続先である放電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S1と、切り替え回路1305の接続先である充電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S2を、切り替え回路1304および切り替え回路1305に対してそれぞれ出力する。
以上が、切り替え制御回路1303の動作の詳細に関する説明である。
切り替え回路1304は、切り替え制御回路1303から出力される制御信号S1に応じて、端子対1301の接続先を、切り替え制御回路1303により決定された放電電池セル群に設定する。
端子対1301は、対を成す端子A1およびA2により構成される。切り替え回路1304は、この端子A1およびA2のうち、いずれか一方を放電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セル1309の正極端子と接続し、他方を放電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セル1309の負極端子と接続することにより、端子対1301の接続先を設定する。なお、切り替え回路1304は、制御信号S1に設定された情報を用いて放電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路1305は、切り替え制御回路1303から出力される制御信号S2に応じて、端子対1302の接続先を、切り替え制御回路1303により決定された充電電池セル群に設定する。
端子対1302は、対を成す端子B1およびB2により構成される。切り替え回路1305は、この端子B1およびB2のうち、いずれか一方を充電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セル1309の正極端子と接続し、他方を充電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セル1309の負極端子と接続することにより、端子対1302の接続先を設定する。なお、切り替え回路1305は、制御信号S2に設定された情報を用いて充電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路1304および切り替え回路1305の構成例を示す回路図を図32および図33に示す。
図32では、切り替え回路1304は、複数のトランジスタ1310と、バス1311および1312とを有する。バス1311は、端子A1と接続されている。また、バス1312は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ1310のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バス1311および1312と接続されている。また、複数のトランジスタ1310のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セル1309の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタ1310のうち、最上流に位置するトランジスタ1310のソース又はドレインの他方は、電池部1308の最上流に位置する電池セル1309の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ1310のうち、最下流に位置するトランジスタ1310のソース又はドレインの他方は、電池部1308の最下流に位置する電池セル1309の負極端子と接続されている。
切り替え回路1304は、複数のトランジスタ1310のゲートに与える制御信号S1に応じて、バス1311に接続される複数のトランジスタ1310のうちの1つと、バス1312に接続される複数のトランジスタ1310のうちの1つとをそれぞれ導通状態にすることにより、放電電池セル群と端子対1301とを接続する。これにより、放電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セル1309の正極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか一方と接続される。また、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル1309の負極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか他方、すなわち正極端子と接続されていない方の端子に接続される。
トランジスタ1310には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、放電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、放電電池セル群の出力電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタ1310が接続された電池セル1309と端子対1301とを絶縁状態とすることができる。
また、図32では、切り替え回路1305は、複数のトランジスタ1313と、電流制御スイッチ1314と、バス1315と、バス1316とを有する。バス1315および1316は、複数のトランジスタ1313と、電流制御スイッチ1314との間に配置される。複数のトランジスタ1313のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バス1315および1316と接続されている。また、複数のトランジスタ1313のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セル1309の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタ1313のうち、最上流に位置するトランジスタ1313のソース又はドレインの他方は、電池部1308の最上流に位置する電池セル1309の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ1313のうち、最下流に位置するトランジスタ1313のソース又はドレインの他方は、電池部1308の最下流に位置する電池セル1309の負極端子と接続されている。
トランジスタ1313には、トランジスタ1310と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、充電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、充電電池セル群を充電するための電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタ1313が接続された電池セル1309と端子対1302とを絶縁状態とすることができる。
電流制御スイッチ1314は、スイッチ対1317とスイッチ対1318とを有する。スイッチ対1317の一端は、端子B1に接続されている。また、スイッチ対1317の他端は各々、別のバスに接続しており、一方のスイッチはバス1315に接続され、他方のスイッチはバス1316に接続されている。スイッチ対1318の一端は、端子B2に接続されている。また、スイッチ対1318の他端は各々、別のバスに接続しており、一方のスイッチはバス1315に接続され、他方のスイッチはバス1316に接続されている。
スイッチ対1317およびスイッチ対1318が有するスイッチは、トランジスタ1310およびトランジスタ1313と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。
切り替え回路1305は、制御信号S2に応じて、トランジスタ1313、および電流制御スイッチ1314のオン/オフ状態の組み合わせを制御することにより、充電電池セル群と端子対1302とを接続する。
切り替え回路1305は、一例として、以下のようにして充電電池セル群と端子対1302とを接続する。
切り替え回路1305は、複数のトランジスタ1313のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セル1309の正極端子と接続されているトランジスタ1313を導通状態にする。また、切り替え回路1305は、複数のトランジスタ1313のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル1309の負極端子に接続されているトランジスタ1313を導通状態にする。
端子対1302に印加される電圧の極性は、端子対1301と接続される放電電池セル群、および変圧回路1307の構成によって変わり得る。また、充電電池セル群を充電する方向に電流を流すためには、端子対1302と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士を接続する必要がある。そこで、電流制御スイッチ1314は、制御信号S2により、端子対1302に印加される電圧の極性に応じてスイッチ対1317およびスイッチ対1318の接続先をそれぞれ切り替えるように制御される。
一例として、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対1302に印加されている状態を挙げて説明する。この時、電池部1308の最下流の電池セル1309が充電電池セル群である場合、スイッチ対1317は、制御信号S2により、当該電池セル1309の正極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対1317のバス1316に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対1317のバス1315に接続されるスイッチがオフ状態となる。一方、スイッチ対1318は、制御信号S2により、当該電池セル1309の負極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対1318のバス1315に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対1318のバス1316に接続されるスイッチがオフ状態となる。このようにして、端子対1302と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対1302から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
また、電流制御スイッチ1314は、切り替え回路1305ではなく、切り替え回路1304に含まれていてもよい。この場合、電流制御スイッチ1314、制御信号S1に応じて、端子対1301に印加される電圧の極性を制御することにより、端子対1302に印加される電圧の極性を制御する。そして、電流制御スイッチ1314は、端子対1302から充電電池セル群に流れる電流の向きを制御する。
図33は、図32とは異なる、切り替え回路1304および切り替え回路1305の構成例を示す回路図である。
図33では、切り替え回路1304は、複数のトランジスタ対1321と、バス1324およびバス1325とを有する。バス1324は、端子A1と接続されている。また、バス1325は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ対1321の一端は、各々、別のバスに接続している。トランジスタ1322のソース又はドレインの一方は、バス1324と接続されている。また、トランジスタ1323のソース又はドレインの一方は、バス1325と接続されている。また、複数のトランジスタ対の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セル1309の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対1321のうち、最上流に位置するトランジスタ対1321の他端は、電池部1308の最上流に位置する電池セル1309の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対1321のうち、最下流に位置するトランジスタ対1321の他端は、電池部1308の最下流に位置する電池セル1309の負極端子と接続されている。
切り替え回路1304は、制御信号S1に応じてトランジスタ1322およびトランジスタ1323の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対1321の接続先を、端子A1又は端子A2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタ1322が導通状態であれば、トランジスタ1323は非導通状態となり、その接続先は端子A1になる。一方、トランジスタ1323が導通状態であれば、トランジスタ1322は非導通状態となり、その接続先は端子A2になる。トランジスタ1322およびトランジスタ1323のどちらが導通状態になるかは、制御信号S1によって決定される。
端子対1301と放電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対1321が用いられる。詳細には、制御信号S1に基づいて、2つのトランジスタ対1321の接続先がそれぞれ決定されることにより、放電電池セル群と端子対1301とが接続される。2つのトランジスタ対1321のそれぞれの接続先は、一方が端子A1となり、他方が端子A2となるように、制御信号S1によって制御される。
切り替え回路1305は、複数のトランジスタ対1331と、バス1334およびバス1335とを有する。バス1334は、端子B1と接続されている。また、バス1335は、端子B2と接続されている。複数のトランジスタ対1331の一端は、各々、別のバスに接続している。トランジスタ1332を介して接続する一端は、バス1334と接続されている。また、トランジスタ1333を介して接続する一端は、バス1335と接続されている。また、複数のトランジスタ対1331の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セル1309の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対1331のうち、最上流に位置するトランジスタ対1331の他端は、電池部1308の最上流に位置する電池セル1309の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対1331のうち、最下流に位置するトランジスタ対1331の他端は、電池部1308の最下流に位置する電池セル1309の負極端子と接続されている。
切り替え回路1305は、制御信号S2に応じてトランジスタ1332およびトランジスタ1333の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対1331の接続先を、端子B1又は端子B2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタ1332が導通状態であれば、トランジスタ1333は非導通状態となり、その接続先は端子B1になる。逆に、トランジスタ1333が導通状態であれば、トランジスタ1332は非導通状態となり、その接続先は端子B2になる。トランジスタ1332およびトランジスタ1333のどちらが導通状態となるかは、制御信号S2によって決定される。
端子対1302と充電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対1331が用いられる。詳細には、制御信号S2に基づいて、2つのトランジスタ対1331の接続先がそれぞれ決定されることにより、充電電池セル群と端子対1302とが接続される。2つのトランジスタ対1331のそれぞれの接続先は、一方が端子B1となり、他方が端子B2となるように、制御信号S2によって制御される。
また、2つのトランジスタ対1331のそれぞれの接続先は、端子対1302に印加される電圧の極性によって決定される。具体的には、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対1302に印加されている場合、上流側のトランジスタ対1331は、トランジスタ1332が導通状態となり、トランジスタ1333が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対1331は、トランジスタ1333が導通状態、トランジスタ1332が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。また、端子B1が負極、端子B2が正極となるような電圧が端子対1302に印加されている場合は、上流側のトランジスタ対1331は、トランジスタ1333が導通状態となり、トランジスタ1332が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対1331は、トランジスタ1332が導通状態、トランジスタ1333が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。このようにして、端子対1302と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対1302から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
変圧制御回路1306は、変圧回路1307の動作を制御する。変圧制御回路1306は、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数とに基づいて、変圧回路1307の動作を制御する変圧信号S3を生成し、変圧回路1307へ出力する。
なお、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数が充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数よりも多い場合は、充電電池セル群に対して過剰に大きな充電電圧が印加されることを防止する必要がある。そのため、変圧制御回路1306は、充電電池セル群を充電できる範囲で放電電圧(Vdis)を降圧させるように変圧回路1307を制御する変圧信号S3を出力する。
また、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数以下である場合は、充電電池セル群を充電するために必要な充電電圧を確保する必要がある。そのため、変圧制御回路1306は、充電電池セル群に過剰な充電電圧が印加されない範囲で放電電圧(Vdis)を昇圧させるように変圧回路1307を制御する変圧信号S3を出力する。
なお、過剰な充電電圧とする電圧値は、電池部1308で使用される電池セル1309の製品仕様等に鑑みて決定することができる。また、変圧回路1307により昇圧および降圧された電圧は、充電電圧(Vcha)として端子対1302に印加される。
ここで、本実施形態における変圧制御回路1306の動作例を、図34(A)乃至(C)を用いて説明する。図34(A)乃至(C)は、図31(A)乃至(C)で説明した放電電池セル群および充電電池セル群に対応させた、変圧制御回路1306の動作例を説明するための概念図である。なお図34(A)乃至(C)は、電池制御ユニット1341を図示している。電池制御ユニット1341は、上述したように、端子対1301と、端子対1302と、切り替え制御回路1303と、切り替え回路1304と、切り替え回路1305と、変圧制御回路1306と、変圧回路1307とにより構成される。
図34(A)に示される例では、図31(A)で説明したように、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、図31(A)を用いて説明したように、切り替え制御回路1303は、高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定し、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。そして、変圧制御回路1306は、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数の比に基づいて、放電電圧(Vdisの昇降圧比Nを算出する。
なお放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数よりも多い場合に、放電電圧を変圧せずに端子対1302にそのまま印加すると、充電電池セル群に含まれる電池セル1309に、端子対1302を介して過剰な電圧が印加される可能性がある。そのため、図34(A)に示されるような場合では、端子対1302に印加される充電電圧(Vcha)を、放電電圧よりも降圧させる必要がある。さらに、充電電池セル群を充電するためには、充電電圧は、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の合計電圧より大きい必要がある。そのため、変圧制御回路1306は、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数の比よりも、昇降圧比Nを大きく設定する。
変圧制御回路1306は、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数の比に対して、昇降圧比Nを1乃至10%程度大きくするのが好ましい。この時、充電電圧は充電電池セル群の電圧よりも大きくなるが、実際には充電電圧は充電電池セル群の電圧と等しくなる。ただし、変圧制御回路1306は昇降圧比Nに従い充電電池セル群の電圧を充電電圧と等しくするために、充電電池セル群を充電する電流を流すこととなる。この電流は変圧制御回路1306に設定された値となる。
図34(A)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数が3個で、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の数が1個であるため、変圧制御回路1306は、1/3より少し大きい値を昇降圧比Nとして算出する。そして、変圧制御回路1306は、放電電圧を当該昇降圧比Nに応じて降圧し、充電電圧に変換する変圧信号S3を変圧回路1307に出力する。そして、変圧回路1307は、変圧信号S3に応じて変圧された充電電圧を、端子対1302に印加する。そして、端子対1302に印加される充電電圧によって、充電電池セル群に含まれる電池セル1309が充電される。
また、図34(B)や図34(C)に示される例でも、図34(A)と同様に、昇降圧比Nが算出される。図34(B)や図34(C)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数以下であるため、昇降圧比Nは1以上となる。よって、この場合は、変圧制御回路1306は、放電電圧を昇圧して受電電圧に変換する変圧信号S3を出力する。
変圧回路1307は、変圧信号S3に基づいて、端子対1301に印加される放電電圧を充電電圧に変換する。そして、変圧回路1307は、変換された充電電圧を端子対1302に印加する。ここで、変圧回路1307は、端子対1301と端子対1302との間を電気的に絶縁している。これにより、変圧回路1307は、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル1309の負極端子の絶対電圧と、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル1309の負極端子の絶対電圧との差異による短絡を防止する。さらに、変圧回路1307は、上述したように、変圧信号S3に基づいて放電電池セル群の合計電圧である放電電圧を充電電圧に変換する。
また、変圧回路1307は、例えば絶縁型DC(Direct Current)−DCコンバータ等を用いることができる。この場合、変圧制御回路1306は、絶縁型DC−DCコンバータのオン/オフ比(デューティー比)を制御する信号を変圧信号S3として出力することにより、変圧回路1307で変換される充電電圧を制御する。
なお、絶縁型DC−DCコンバータには、フライバック方式、フォワード方式、RCC(Ringing Choke Converter)方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、およびフルブリッジ方式等が存在するが、目的とする出力電圧の大きさに応じて適切な方式が選択される。
絶縁型DC−DCコンバータを用いた変圧回路1307の構成を図35に示す。絶縁型DC−DCコンバータ1351は、スイッチ部1352とトランス部1353とを有する。スイッチ部1352は、絶縁型DC−DCコンバータの動作のオン/オフを切り替えるスイッチであり、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)やバイポーラ型トランジスタ等を用いて実現される。また、スイッチ部1352は、変圧制御回路1306から出力される、オン/オフ比を制御する変圧信号S3に基づいて、絶縁型DC−DCコンバータ1351のオン状態とオフ状態を周期的に切り替える。なお、スイッチ部1352は、使用される絶縁型DC−DCコンバータの方式によって様々な構成を取り得る。トランス部1353は、端子対1301から印加される放電電圧を充電電圧に変換する。詳細には、トランス部1353は、スイッチ部1352のオン/オフ状態と連動して動作し、そのオン/オフ比に応じて放電電圧を充電電圧に変換する。この充電電圧は、スイッチ部1352のスイッチング周期において、オン状態となる時間が長いほど大きくなる。一方、充電電圧は、スイッチ部1352のスイッチング周期において、オン状態となる時間が短いほど小さくなる。なお、絶縁型DC−DCコンバータを用いる場合、トランス部1353の内部で、端子対1301と端子対1302は互いに絶縁することができる。
本実施形態における蓄電装置1300の処理の流れを、図36を用いて説明する。図36は、蓄電装置1300の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、蓄電装置1300は、複数の電池セル1309毎に測定された電圧を取得する(ステップS001)。そして、蓄電装置1300は、複数の電池セル1309の電圧を揃える動作の開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS002)。この開始条件は、例えば、複数の電池セル1309毎に測定された電圧の最大値と最小値との差分が、所定の閾値以上か否か等とすることができる。この開始条件を満たさない場合は(ステップS002:NO)、各電池セル1309の電圧のバランスが取れている状態であるため、蓄電装置1300は、以降の処理を実行しない。一方、開始条件を満たす場合は(ステップS002:YES)、蓄電装置1300は、各電池セル1309の電圧を揃える処理を実行する。この処理において、蓄電装置1300は、測定されたセル毎の電圧に基づいて、各電池セル1309が高電圧セルか低電圧セルかを判定する(ステップS003)。そして、蓄電装置1300は、判定結果に基づいて、放電電池セル群および充電電池セル群を決定する(ステップS004)。さらに、蓄電装置1300は、決定された放電電池セル群を端子対1301の接続先に設定する制御信号S1、および決定された充電電池セル群を端子対1302の接続先に設定する制御信号S2を生成する(ステップS005)。蓄電装置1300は、生成された制御信号S1および制御信号S2を、切り替え回路1304および切り替え回路1305へそれぞれ出力する。そして、切り替え回路1304により、端子対1301と放電電池セル群とが接続され、切り替え回路1305により、端子対1302と放電電池セル群とが接続される(ステップS006)。また、蓄電装置1300は、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数とに基づいて、変圧信号S3を生成する(ステップS007)。そして、蓄電装置1300は、変圧信号S3に基づいて、端子対1301に印加される放電電圧を充電電圧に変換し、端子対1302に印加する(ステップS008)。これにより、放電電池セル群の電荷が充電電池セル群へ移動される。
また、図36のフローチャートでは、複数のステップが順番に記載されているが、各ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。
以上、本実施形態によれば、放電電池セル群から充電電池セル群へ電荷を移動させる際、キャパシタ方式のように、放電電池セル群からの電荷を一旦蓄積し、その後充電電池セル群へ放出させるような構成を必要としない。これにより、単位時間あたりの電荷移動効率を向上させることができる。また、切り替え回路1304および切り替え回路1305により、放電電池セル群および充電電池セル群が各々個別に切り替えられる。
さらに、変圧回路1307により、放電電池セル群に含まれる電池セル1309の個数と充電電池セル群に含まれる電池セル1309群の個数とに基づいて、端子対1301に印加される放電電圧が充電電圧に変換され、端子対1302に印加される。これにより、放電側および充電側の電池セル1309がどのように選択されても、問題なく電荷の移動を実現できる。
さらに、トランジスタ1310およびトランジスタ1313にOSトランジスタを用いることにより、充電電池セル群および放電電池セル群に属しない電池セル1309から漏洩する電荷量を減らすことができる。これにより、充電および放電に寄与しない電池セル1309の容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは、Siトランジスタに比べて熱に対する特性の変動が小さい。これにより、電池セル1309の温度が上昇しても、制御信号S1、S2に応じた導通状態と非導通状態の切り替えといった、正常な動作をさせることができる。
以下、本発明の一態様について実施例を用いて具体的に説明する。本実施例では、実施の形態2で示した方法により、正極を作製した結果について説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
正極活物質としてリチウムマンガン複合酸化物の合成を行った。出発材料としてLi2CO3とMnCO3とNiOを用い、Li:Mn:Ni=1.68:0.8062:0.318(モル比)となるようにそれぞれを秤量した。
次に、NiOの粉末にエタノールを加えた後、ボールミルで周速12m/秒、粉砕時間0.5時間で粉砕し、これに前記秤量したLi2CO3とMnCO3とNiOを混合し、周速10m/秒、粉砕時間0.5時間で粉砕した。
次いで、前記混合材料のエタノールを揮発させた後、坩堝に入れ、材料を合成した。ここでは1000℃、10時間の条件で焼成を行った。焼成の雰囲気は空気とし、ガス流量は10L/分とした。
次いで、焼成した粒子の焼結を解くために解砕処理を行った。解砕処理は、エタノールを加えた後、ボールミルで周速12m/秒、解砕処理は10時間行った。
次いで、解砕処理後にエタノールを揮発させるための加熱を行い、ニッケルを有するリチウムマンガン複合酸化物を得た。これを第1の混合物とした。
第1の混合物については、さらに導電助剤である酸化グラフェン(GO)を、前記ニッケルを有するリチウムマンガン複合酸化物の粒子に被覆するため、混練した。混練は前記ニッケルを有するリチウムマンガン複合酸化物に対してGOが2重量%となるような比率で混合し、混練回転数80rpm、混練時間30分×2回、混練後の乾燥が70℃、12時間という条件で行った。これを第2の混合物とした。
さらに、第2の混合物については、GOの還元処理のため、少量の水に溶解させたL−アスコルビン酸を加えて混練し、60℃で加熱することにより酸化グラフェンを還元した。これを第3の混合物とした。
第1の混合物の水素イオン濃度を測定するため、水10に対し、第1の混合物が1となるような重量比率で混合した。これを水溶液Aとした。
第2の混合物の水素イオン濃度を測定するため、水10に対し、第2の混合物が1となるような重量比率で混合した。これを水溶液Bとした。
第3の混合物の水素イオン濃度を測定するため、水10に対し、第3の混合物が1となるような重量比率で混合した。これを水溶液Cとした。
上記水溶液A、B、C、の水素イオン濃度と、第1の混合物、第2の混合物と第3の混合物に導電助剤としてアセチレンブラック(AB)を5重量%と結着剤としてPVdFを5重量%添加して作製したスラリーの流動性の関係は表1のようになった。表1では、結着剤を添加した際にゲル化しやすければ「NG」、ゲル化しにくければ「OK」と示したが、水溶液Aでは、pH11.6と高く、結着剤として塩基性に弱いPVdFを用いた時に、ゲル化してしまうpHが観測された。一方で、水溶液B、Cでは、pH11以下を示しており、PVdFがゲル化しにくいpHを示した。
最後に、得られた第3の混合物を用いて電極を作製した。活物質として第3の混合物を用い、導電助剤として、アセチレンブラック(AB)を用い、結着剤としてPVdFを用いた。まず、PVdFと、ABとを極性溶媒であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とを混練した。混練の回転数は、2000rpm、混練の時間は1回を5分とした。さらに、活物質として試料Cを添加して混練した。混練の回転数は、2000rpm、混練の時間は1回を5分として、5回繰り返した。さらに、NMPを添加して混練した。混練の回転数は、2000rpm、混練の時間は1回を10分として、2回繰り返した。以上の工程により、スラリー状の電極合剤組成物を得た。電極合剤組成物の配合は、重量比で第3の混合物:AB:PVdF=90:5:5とした。
第1の混合物に酸化グラフェンを混合することで、塩基性が低下し、その結果、中和工程をすることなくスラリーの流動性が改善することが確認できた。
本実施例では、実施例1で作製したスラリーを用いて電極を作製し、ハーフセルを作製した。
該電極合剤組成物を集電体であるアルミニウム箔上に塗布した。なお、アルミニウム箔表面には、あらかじめアンダーコートを施した。その後、通風乾燥炉にて、80℃、30分乾燥させた。
次に、ロールプレス機を用いて電極のプレスを行った。電極塗工後の膜厚に対して、膜厚を20%減少させるようにプレス圧を調整して行った。また、プレス温度を120℃とした。
その後、さらに熱処理を行った。熱処理条件として、減圧雰囲気(1kPa)、270℃において10時間の処理を行った。以上の工程により、本発明の一態様である「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」を有する電極Xを得た。
次に、得られた電極Xを用いてハーフセルを作製した。セルには、コインセルを用いた。また、ハーフセルの対極にはリチウムを用いた。また、電解液は、電解質としてLiPF6を用い、非プロトン性有機溶媒であるECとDECを1:1の体積比で混合させた混合溶液を用いた。また、セパレータとしてはポリプロピレン(PP)を用いた。
次に、作製したハーフセルに対して、25℃において充放電特性の測定を行った。充電は、30mA/g定電流、上限電圧4.8Vで行い、放電は、30mA/g定電流、下限電圧2Vで行った。得られた充放電カーブを図37(A)に、サイクル特性を図37(B)に示す。図37中、700は初回の充電特性、701は2回目の充電特性、702は初回の放電特性、703は2回目の放電特性、704は充電容量のサイクル特性、705は放電容量のサイクル特性を示した。本発明の一態様の、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を用いることにより、260mAh/gを超える高い放電容量と10サイクル後でも初期放電容量に比べて98%維持する高いサイクル特性を得ることが出来た。