JP2016196386A - リチウムマンガン複合酸化物、粒子、二次電池、電子機器 - Google Patents

リチウムマンガン複合酸化物、粒子、二次電池、電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】蓄電装置の重量あたりの容量を高める。また、電極の重量あたりの容量を高める。また、正極活物質を有する粒子の重量あたりの容量を高める。また、正極活物質を有する粒子の重量あたりのリチウムイオンの量を増大させ、高いエネルギー密度を実現する。また、正極において、より高い電位で電池反応を安定に行う。【解決手段】二次電池の正極の活物質として、リチウムと、マンガンと、Mで表される元素と、酸素と、を有するリチウムマンガン複合酸化物を用い、酸化グラフェンを有するグラフェンで被覆する。酸化グラフェンを有するグラフェンを用いて粒子を被覆することにより、炭素が欠損し、酸素が結合した欠陥などが多くなることでLiを通しやすくなる傾向が生じ、一方で、繰り返し充放電時の活物質の構造は安定に保たれるようになる。【選択図】図1

Description

本発明は、物、方法、または製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、撮像装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。特に、本発明の一態様は、二次電池の構造及びその作製方法に関する。特にリチウムイオン二次電池の正極活物質に関する。
近年、スマートフォンやタブレット等の携帯用電子機器が急速に普及している。また、環境問題のへの関心の高まりから、ハイブリッドカーや電気自動車への注目が集まり、二次電池の重要性が増している。二次電池としては、ニッケル水素電池や、鉛蓄電池や、リチウムイオン二次電池などが挙げられる。中でも、リチウムイオン二次電池は、高容量、且つ、小型化が図れるため、開発が盛んに行われている。
二次電池の基本的な構成は、正極と負極との間に電解質(電解液または固体電解質)を介在させたものである。正極及び負極としては、それぞれ集電体と、集電体上に設けられた活物質層と、を有する構成が代表的である。リチウムイオン二次電池の場合は、リチウムを吸蔵及び放出することができる材料を、正極及び負極の活物質として用いる。
リチウムイオン二次電池において、正極活物質として、例えば、特許文献1に示されている、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、リン酸ニッケルリチウム(LiNiPO4)などの、リチウム(Li)と鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)とを含むオリビン構造を有するリン酸化合物などが知られている。
特開平11−25983号公報
本発明の一態様は、蓄電装置の体積あたり、または/および重量あたりの容量を高めることを課題の一とする。また、本発明の一態様は、電極の体積あたり、または/および重量あたりの容量を高めることを課題の一とする。
または、本発明の一態様は、正極活物質を有する粒子の体積あたり、または/および重量あたりの容量を高めることを課題の一とする。または、本発明の一態様は、正極活物質を有する粒子の体積あたり、または/および重量あたりのリチウムイオンの量を増大させ、高いエネルギー密度を実現することを課題の一とする。
または、本発明の一態様は、正極活物質を有する正極において、より高い電位で電池反応を安定に行うことを課題の一とする。
または、本発明の一態様は、充放電サイクルにおける容量低下の抑制された蓄電装置を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、低コストで作製できる正極活物質を提供することを課題の一とする。
または、リチウムイオン二次電池の正極活物質として要求される特性として、イオン伝導度および電気伝導度が高いことが望まれる。従って、本発明の一態様は、イオン伝導度および/または電気伝導度が高い正極活物質を提供することを課題の一とする。
または、本発明の一態様は、新規な物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、新規な正極活物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、正極活物質を有する新規な粒子を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、新規な蓄電装置を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、新規な電池を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、新規なリチウムイオン二次電池を提供することを課題の一とする。
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
本発明の一態様はLiMnで表されるリチウムマンガン複合酸化物において、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた元素であって、0≦a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たし、リチウムマンガン複合酸化物は、リチウムを透過する機能を有する膜で被覆されていることを特徴とする前記リチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、前述のリチウムを透過する機能を有する膜の厚さは1nm以上10nm以下であることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、前述の元素Mはリチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンであることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、リチウムマンガン複合酸化物は、第1の領域と、前述の第1の領域と結晶構造が異なる第2の領域と、を有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、前述の膜が、炭素を有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、前述の膜が、グラフェンを有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、前述の膜が、酸化グラフェンを有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、前述の膜が、負電荷を有する置換基を有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物である。
また、本発明の一態様は、前述のリチウムを透過する機能を有する膜で被覆されているリチウムマンガン複合酸化物を正極に用いることを特徴とする二次電池である。
また、本発明の一態様は、前述の二次電池と、半導体装置と、表示装置と、を有する電子機器である。
本明細書に示す発明は、二次電池に用いる活物質として利用可能なリチウムマンガン複合酸化物の粒子に対して、Liを透過しやすく、それ以外の金属元素は透過しにくい機能を有する膜で被覆したことが特徴である。リチウムマンガン複合酸化物を被覆する材料としては酸化グラフェンを還元したグラフェンを用いることが好ましい。
ここで、リチウムマンガン複合酸化物を被覆する材料として、酸化グラフェンを有するグラフェンを用いることによる効果を示す。グラフェンを用いてリチウムマンガン複合酸化物を被覆した粒子を有する活物質は、被覆していない粒子による活物質と比較して導電性は向上するが、一方で、欠陥が無くフレークサイズの大きいグラフェンはLiの移動がフレークの端部から起こらず、Liを通しにくい傾向が示唆されており、活物質に対してLiの挿入や脱離を行うことが難しくなる。
一方、酸化グラフェンを有するようにすると、炭素が欠損し、酸素が結合した欠陥などが多くなることでLiを通しやすくなる傾向があることが示唆されている。なかでもグラフェンの一部の炭素が欠損し、酸素原子で置換、結合されている構造の酸化グラフェンであれば、その傾向が強く、好ましい。
さらに酸化グラフェンが有する、負電荷を有する置換基、または、置換基としてカルボキシル基を有することで、Liとの間にクーロン引力が働き、Liの酸化グラフェンを有するグラフェンのシートに対しての透過性が、より容易となるように作用する。
このため、酸化グラフェンを混在させることでLiの透過性を確保する。一方、活物質は酸化グラフェンを有するグラフェンの被覆を有するために、繰り返し充放電時の活物質の構造は安定に保たれる。
本発明の一態様により、蓄電装置の体積あたり、または/および重量あたりの容量を高めることができる。また、本発明の一態様により、電極の体積あたり、または/および重量あたりの容量を高めることができる。
また、本発明の一態様により、正極活物質を有する粒子の体積あたり、または/および重量あたりの容量を高めることができる。また、本発明の一態様により、正極活物質を有する粒子の体積あたり、または/および重量あたりのリチウムイオンの量を増大させ、高いエネルギー密度を実現することができる。
また、本発明の一態様により、正極活物質を有する正極において、より高い電位で電池反応を安定に行うことができる。
また、本発明の一態様により、充放電サイクルにおける容量低下の抑制された蓄電装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、低コストで作製できる正極活物質を提供することができる。
また、リチウムイオン二次電池の正極活物質として要求される特性として、イオン伝導度および電気伝導度が高いことが望まれる。従って、本発明の一態様により、イオン伝導度および/また電気伝導度が高い正極活物質を提供することができる。
また、本発明の一態様により、新規な物質を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規な正極活物質を提供することができる。また、本発明の一態様により、正極活物質を有する新規な粒子を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規な蓄電装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規な電池を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規なリチウムイオン二次電池を提供することができる。
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
本発明の一態様の粒子を示す図。 活物質の製造方法を説明するフローチャート。 本発明の一態様の粒子を示す図。 電極を示す模式図。 薄型の蓄電池を説明する図。 電極の断面図を説明する図。 薄型の蓄電池を説明する図。 薄型の蓄電池を説明する図。 薄型の蓄電池を説明する図。 面の曲率半径を説明する図。 フィルムの曲率半径を説明する図。 二次電池の構成の例を説明する斜視図、上面図および断面図。 二次電池の作製方法の例を説明する図。 二次電池の構成の例を説明する斜視図、上面図および断面図。 二次電池の作製方法の例を説明する図。 コイン型蓄電池を説明する図。 円筒型蓄電池を説明する図。 蓄電装置の例を説明するための図。 蓄電装置の例を説明するための図。 蓄電装置の例を説明するための図。 蓄電装置の例を説明するための図。 蓄電装置の例を説明するための図。 電子機器の一例を説明する図。 電子機器の一例を説明する図。 電子機器の一例を説明する図。 電子機器の一例を説明する図。 本発明の一態様を説明するブロック図。 本発明の一態様を説明する概念図。 本発明の一態様を説明する回路図。 本発明の一態様を説明する回路図。 本発明の一態様を説明する概念図。 本発明の一態様を説明するブロック図。 本発明の一態様を説明するフローチャート。 サイクル特性を示す図。 サイクル特性を示す図。 本発明の一態様の粒子の断面を説明する図。 本発明の一態様の粒子の断面を説明する図。 X線光電子分光法の測定結果を示す図。 結晶構造を説明する図。 結晶構造を説明する図。 本発明の一態様を説明する概念図と、エネルギー変化を示す図。 本発明の一態様を説明する概念図と、エネルギー変化を示す図。
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、図において、大きさ、膜(層)の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜的に用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関わる物質のみを指すが、本明細書等においては、本来の『活物質』を被覆する層も含んでもよい。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」について説明する。また、該粒子を有する電極についても説明する。
本発明の一態様のリチウムマンガン複合酸化物は、組成式LiMnで表すことができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましい。また、0≦a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。また、リチウムマンガン複合酸化物は、層状岩塩型の結晶構造を有するものであることが好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物は、層状岩塩の結晶構造およびスピネル型の結晶構造を有するものであってもよい。また、リチウムマンガン複合酸化物は、例えば、平均粒子径が、5nm以上50μm以下であることが好ましい。
<合成>
次に、本発明の一態様である「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の作製方法について説明する。本実施の形態では、まず、リチウムマンガン複合酸化物を合成する。その後、リチウムマンガン複合酸化物に被覆層を形成し、第1の領域、第2の領域および第3の領域を有する粒子を得る。
リチウムマンガン複合酸化物の原料としては、マンガン化合物およびリチウム化合物を用いることができる。また、マンガン化合物およびリチウム化合物の原料と共に、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物の原料を用いることができる。マンガン化合物としては、例えば、二酸化マンガン、三二酸化マンガン、四三酸化マンガン、水和マンガン酸化物、炭酸マンガン、硝酸マンガンなどを用いることができる。また、リチウム化合物としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウムなどを用いることができる。
本実施の形態では、マンガン化合物としてMnCO、リチウム化合物としてLiCO、およびNiOを出発原料として用いる。
はじめに、図2のステップS11に示すように、出発原料として、LiCOとMnCOとNiOとを用い、それぞれを秤量する。
例えば、出発原料として、LiCOとMnCOとNiOとを用いる場合、秤量の割合(モル比)をLiCO:MnCO:NiO=1:0.7:0.3とすると、最終生成物であるリチウムマンガン複合酸化物として、LiMn0.7Ni0.3が作製されることとなる。この場合、リチウムマンガン複合酸化物の原子数比は、Li:(Mn+Ni)=2:1となる。
本発明の一態様では、リチウムマンガン複合酸化物の原子数比がLi:(Mn+Ni)=2:1からずれるように、出発原料の秤量の割合(モル比)を調整する。
本実施の形態では、出発原料の秤量の割合(モル比)をLiCO:MnCO:NiO=0.84:0.8062:0.318となるように秤量する。
次に、図2のステップS12に示すように、LiCO、MnCO、およびNiOを混合する。出発原料の混合方法については特に制限はなく、公知の解砕機や粉砕機を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ローラーミルなどが挙げられる。また、解砕・粉砕の方式は、乾式でもよいし、湿式でもよい。湿式の際に用いることができる溶媒としても特に制限はなく、例えば、水、アルコール、アセトンなどを用いることができる。
出発原料を混合する際に、湿式で行う場合には、図2のステップS13に示すように、混合された出発原料に含まれる溶媒を蒸発させるための加熱処理を行う。ここで行う加熱処理は、50℃以上150℃以下で行えばよい。加熱処理を行うことにより、混合された出発原料に含まれる溶媒を蒸発させて、混合原料を得る。
次に、図2のステップS14に示すように、坩堝に混合原料を入れ、800℃以上1000℃以下で焼成を行う。焼成時間は、例えば、5時間以上20時間以下とし、焼成ガスにAirガス(乾燥空気)を用い、流量を10L/minとする。焼成雰囲気は、大気雰囲気としてもよいし、酸素ガスを用いた雰囲気としてもよい。混合原料に焼成を行うことにより、焼成物(リチウムマンガン複合酸化物)が形成される。
焼成によって合成された複数の一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物は、複数の一次粒子が焼結して大きな二次粒子が形成された状態となっている。そこで、図2のステップS15に示すように、複数の一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物に対して、解砕処理を行う。焼成物に解砕処理を行うことにより、焼成物を砕いて一次粒子にする、又は一次粒子に近い紛体にする。本明細書等において、解砕処理には、焼結物が粉砕される操作も含む。なお、粉砕とは、一次粒子をさらに砕く操作をいう。解砕処理解砕処理は、出発原料の混合方法と同様に、公知の解砕機や粉砕機を用いることができる。例えば、ボールミルや、ビーズミルなどを用いることができる。また、解砕・粉砕の方式は、乾式でもよいし、湿式でもよい。湿式の際に用いることができる溶媒としても特に制限はなく、例えば、水、アルコール、アセトンなどを用いることができる。
ここで、解砕・粉砕を行った後の粒子の大きさについては、例えば粒子の比表面積を測定することにより評価することができる。リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の比表面積を増加させることにより、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を正極に用いた蓄電池を作製する場合に、例えば粒子と電解液との接触面積を増やすことができる。電解液との接触面積を増やすことにより、蓄電池の反応速度を高めることができ、例えば出力特性を向上させることができる。
解砕処理を行うことにより、粒子の比表面積が増加する場合があり好ましい。リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の比表面積は例えば、0.1m/g以上が好ましい。また、粒子の比表面積が大きくなり過ぎると、該粒子を用いて作製する電極において、表面積に対してバインダー量が不足する場合があり、強度が低下する場合がある。ここでバインダー量を増やすと、単位重量および単位体積あたりの電極の容量が低下する場合がある。よって、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の比表面積は例えば、1m/g以上50m/g以下が好ましく、1m/g以上10m/g以下がより好ましい。
本実施の形態では、一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物の解砕処理を、ビーズミルを用いて、アセトンを用いた湿式法により行う。
解砕処理を行う際に、湿式で行う場合には、解砕処理後に溶媒を蒸発させるための加熱処理を行う。ここで行う加熱処理は、ステップS13と同様に行えばよい。その後、真空乾燥を行うことにより、粉末状のリチウムマンガン複合酸化物を得る。
次に、加熱処理を行う。加熱処理は、図2のステップS16に示すように、坩堝に解砕処理後のリチウムマンガン複合酸化物を入れ、300℃以上1000℃以下、好ましくは600℃以上900以下で加熱処理を行う。加熱時間は、例えば、5時間以上20時間以下とし、ガスにAirガス(乾燥空気)を用い、流量を10L/minとする。加熱雰囲気は、大気雰囲気としてもよいし、酸素ガスを用いた雰囲気としてもよい。
以上の工程により、組成式LiMnで表されるリチウムマンガン複合酸化物を形成することができる。本実施の形態では、原料材料の秤量の割合(モル比)を、LiCO:MnCO:NiO=0.84:0.8062:0.318とすることにより、組成式Li1.68Mn0.80620.318で表されるリチウムマンガン複合酸化物を形成することができる。
また、ステップS15に示す解砕処理を行った後のリチウムマンガン複合酸化物は、解砕処理の衝撃により、結晶性の乱れが生じる場合がある。また、リチウムマンガン複合酸化物に酸素欠損が生じる場合がある。よって、真空乾燥を行った後の粉末状のリチウムマンガン複合酸化物に、再度加熱処理を行うことが好ましい。
解砕処理後のリチウムマンガン複合酸化物に熱処理を行うことにより、酸素欠損を修復するとともに、解砕処理時の結晶性の乱れを回復させることができる。また、再度加熱処理を行った後の粉末状のリチウムマンガン複合酸化物に、再度、解砕処理を行っても良く、この場合の解砕処理は、図5のステップS15と同様の方法を用いて行うことができる。
ここで、LiCO:MnCO:NiO=0.84:0.8062:0.318の原料を用い、図2に示すステップS11乃至S16に沿ってリチウムマンガン複合酸化物を作製し、その温度安定性を評価した。具体的には、DSC(示差走査熱量測定)を用いて評価を行った。262.2℃で発熱がみられた。それより低い温度においては、DSC評価において安定であった。よって、本発明の一態様のリチウムマンガン複合酸化物は、260℃以下の高い温度においても安定であることがわかる。
本実施の形態に示すリチウムマンガン複合酸化物は、原子数比をLi:(Mn+Ni)=2:1からずれるように調整している。このため、原子数比がLi:(Mn+Ni)=2:1となるリチウムマンガン複合酸化物を電極に用いる場合と比較して、電圧が増加し、放電容量も増加する。
以上の工程により、粒子状のリチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。ここで、リチウムマンガン複合酸化物は、第1の領域および第2の領域の有することが好ましい。第2の領域は、第1の領域の外側の少なくとも一部に接する。ここで、外側とは、粒子の表面により近いことを示す。
第1の領域および第2の領域は、リチウムと、酸素と、を有する。また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかはマンガンを有する。また、また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかは元素Mを有する。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外の金属元素、またはシリコン、リンであることが好ましく、Ni、Ga、Fe、Mo、In、Nb、Nd、Co、Sm、Mg、Al、Ti、Cu、またはZnから選ばれた金属元素、Si、またはPのいずれかであることがより好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。
<被覆層>
次に、得られるリチウムマンガン複合酸化物に被覆層を設ける。被覆層は、炭素を有することが好ましい。炭素は導電性が高いため、炭素で被覆された粒子を蓄電池の電極に用いることにより、例えば電極の抵抗を低くすることができる。また、被覆層は酸化グラフェンを有してもよく、還元した酸化グラフェンを有してもよい。
または、被覆層は金属化合物を有してもよい。ここで、金属としては例えばコバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、リチウム、炭素等が挙げられる。金属化合物の一例として、被覆層はこれらの金属との酸化物や、フッ化物などを有してもよい。
本実施の形態では、被覆層として、少なくとも一部に炭素を含む層を設ける。炭素を含む層として、グラフェンを用いることが好ましい。グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸化グラフェンが残存する場合、酸素の割合は、X線光電子分光法(XPS)で測定した場合にグラフェン全体の2%以上20%以下、好ましくは3%以上15%以下である。
炭素を含む層の膜厚は、1nm以上50nm以下とすることが好ましい。より好ましくは1nm以上20nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは1nm以上10nm以下とすることが好ましい。
次に、リチウムマンガン複合酸化物に炭素を含む層を設ける方法について説明する。本実施の形態では、炭素を含む層として、酸化グラフェン(Graphene Oxideno;GOと略記する)を還元することによって得られたグラフェン(Reduced Graphene Oxide;RGOと略記する)を用いる。
酸化グラフェンは、Hummers法、Modified Hummers法、又は黒鉛類の酸化等、種々の合成法を用いて作製することができる。
例えば、Hummers法は、鱗片状グラファイト等のグラファイトを酸化して、酸化グラファイトを形成する手法である。形成された酸化グラファイトは、グラファイトがところどころ酸化されることでカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が結合したものであり、グラファイトの結晶性が損なわれ、層間の距離が大きくなっている。このため超音波処理等により、容易に層間を分離して、酸化グラフェンを得ることができる。
また、酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう。)は一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下である。フレークサイズが大きいほど、リチウムマンガン複合酸化物の表面を覆いやすくなるため好ましい。
まず、酸化グラフェンと水とを混練機に入れ、酸化グラフェンの分散溶液を作製する。この時、酸化グラフェンは、0.5wt%以上10wt%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5wt%以上6wt%とすることが好ましい。0.5wt%未満であると、リチウムマンガン複合酸化物の表面を覆うことが困難となる。また、10wt%を超えると、電極体積が嵩張り、電極重量が重くなってしまう。
次に、図2に示すステップS17に示すように、分散溶液にリチウムマンガン複合酸化物を入れ、固練りを行う。なお、固練りとは、高粘度による混練をいう。固練りを行うことにより、リチウムマンガン複合酸化物の粉体の凝集をほどくことができ、酸化グラフェンとリチウムマンガン複合酸化物とを、より均一に分散させることができる。
次に、酸化グラフェンとリチウムマンガン複合酸化物との混合物をベルジャーにて減圧乾燥した後、乳鉢で解砕することにより、酸化グラフェンが被覆されたリチウムマンガン複合酸化物を得る。
次に、図2に示すステップS18に示すように、リチウムマンガン複合酸化物の表面に被覆された酸化グラフェンに還元処理を行う。酸化グラフェンの還元処理は、熱処理によって行っても良いし、還元剤を用いて溶媒中で反応させて行っても良い。本実施の形態では、酸化グラフェンを、還元剤を用いて溶媒中で反応させる。
酸化グラフェンを、還元剤を用いて溶媒中で反応させることにより、リチウムマンガン複合酸化物の表面に被覆された酸化グラフェンは還元され、グラフェンが形成される。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されず、一部の酸素は、グラフェンに残存していてもよい。グラフェンに酸化グラフェンが残存する場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上20atomic%以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。この還元処理は、室温以上150℃以下、好ましくは室温以上80℃以下の温度で行うことが好ましい。還元処理の際、加熱を行うことにより、還元反応を促進させることができる。また、酸化グラフェンの還元時間は、3分以上10時間以下とすることができる。
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンあるいはそれらの誘導体を用いることができる。例えば、アスコルビン酸およびヒドロキノンは、ヒドラジンや水素化硼素ナトリウムに比べ還元力が弱いため安全性が高く、工業的に利用しやすい点において好ましい。
溶媒には、極性溶媒を用いることができる。還元剤を溶解することができるものであれば、材料に限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンのいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
還元剤および溶媒を含む還元液としては、エタノールおよびアスコルビン酸の混合液、または水、アスコルビン酸および水酸化リチウムの混合液を用いることができる。本実施の形態では、アスコルビン酸、水、および水酸化リチウムを含む還元液を用いる場合について説明する。
酸化グラフェンが被覆されたリチウムマンガン複合酸化物を、還元液中で反応させることにより、酸化グラフェンは、アスコルビン酸によりプロトンが付加される。その後、HOが脱離することにより、酸化グラフェンが還元される。
還元処理後、図2に示すステップS19に示すように、粉体の回収を行う。ここでは、還元液のろ過を行う。ここで得られる物質を、物質Aと呼ぶ。ろ過には、吸引濾過等を用いればよい。または、遠心分離を用いて物質Aと、液体と、を分離してもよい。
次に、得られた物質Aを洗浄する。洗浄は、例えば、還元液に含まれる溶媒として挙げた溶液を用いて行うとよい。なお、還元液に含まれる溶媒と同一の溶液としてもよいし、異なる溶液を用いてもよい。
次に、乾燥を行う。この乾燥工程は、例えば、50℃以上500℃未満、より好ましくは120℃以上400℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、極性溶媒や水分をよく蒸発あるいは除去させる。当該乾燥工程においても、酸化グラフェンの還元を促進させることができる。減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行ってもよいし、大気圧でおこなってもよい。また、ガスとして、空気を用いてもよいし窒素や、その他の不活性ガスを用いてもよい。
ここで、物質Aは例えば二次粒子を形成することが好ましい。
ここで、物質Aが二次粒子を形成する場合の二次粒径は、その平均値が例えば好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは1μm以上20μm以下である。ここで粒径は、例えば粒度分布計を用いて測定される粒径を指す。または、物質Aが二次粒子を形成する場合に、その二次粒子の粒径を指してもよい。二次粒子の粒径は、前述の粒度分布計の他に、例えば顕微鏡による粒子の観察により算出することができる。また、粒径は、例えばその断面の面積から円換算の直径を算出すればよい。
なお、物質Aを洗浄した後に、物質Aを溶媒に分散させた溶液を作製し、溶液にスプレードライ処理を行って、乾燥させてもよい。スプレードライを行うことにより、物質Aが例えば二次粒子を形成して、粒径が変化する場合がある。
また、スプレードライ後に、さらに熱処理を行うことが好ましい。例えば、50℃以上500℃未満、より好ましくは120℃以上400℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、極性溶媒や水分をよく蒸発あるいは除去させる。当該乾燥工程においても、酸化グラフェンの還元を促進させることができる。また、乾燥は、減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行ってもよいし、大気圧でおこなってもよい。また、ガスとして、空気を用いてもよいし窒素や、その他の不活性ガスを用いてもよい。
以上の工程により、酸化グラフェンは還元され、リチウムマンガン複合酸化物の表面にグラフェンを形成することができる。
なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離させる必要はなく、一部の酸素が、グラフェンに残存していてもよい。グラフェンに酸化グラフェンが残存する場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合に、全体の2%以上20%以下、好ましくは、3%以上15%以下である。
還元処理後に熱処理を行うことにより、熱処理を行う前と比較して得られるグラフェンの電気伝導度をより高めることができる場合がある。
還元処理後に熱処理を行うことにより、例えば、本発明の一態様の「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」において、第1の領域乃至第3の領域が形成される場合がある。「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」が有する第1の領域乃至第3の領域は、熱処理前に形成されてもよい。あるいは、熱処理の過程において形成されてもよい。また、例えば被覆層形成前や、被覆層形成後、および還元処理後に形成された第1の領域乃至第3の領域の厚さや組成、および結晶構造等が、熱処理の過程において変化してもよい。
また、熱処理を行うことにより、例えば、バインダーが有する元素と、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子と、が反応する場合がある。一例として、バインダーにPVdFを用いる場合において、PVdFが有するフッ素と、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子のリチウム、マンガン、および元素Mのいずれかまたは複数と、が金属フッ化物を形成してもよい。
または、リチウムマンガン複合酸化物の被覆層、例えばここでは炭素を含む層の例を示したが、被覆層に含まれる元素と、フッ素と、が結合を形成してもよい。例えば被覆層として炭素を含む層を用いる場合には、フッ化炭素物が形成されてもよい。ここで、該被覆層は、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の有する第3の領域と一致してもよいし、第3の領域と、リチウムマンガン複合酸化物の一部と、を有しても構わない。また、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の有する第2の領域は、例えば該被覆層の一部を有してもよい。
以上の工程により、リチウムマンガン複合酸化物の表面の少なくとも一部にグラフェンが設けられた粒子を形成することができる。
図1に、本実施の形態に示す方法により作製した、表面の少なくとも一部にグラフェンが設けられたリチウムマンガン複合酸化物の模式図を示す。図1において、リチウムマンガン複合酸化物を示す粒子137は、酸化グラフェンを有するグラフェンを示す膜135に被覆されている。膜135は上述に示したように酸化グラフェンを還元して得られたグラフェンであり、一部に酸化グラフェンが残存している。このため、炭素が欠損し、酸素が結合した欠陥などが多く存在している。このため、膜135をグラフェンのみで構成するよりも、膜135が有するLiイオン136の透過性が、より高まる。
グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。そのため、当該粒子を含む電極を電池に用いることにより、例えば当該電極の電気伝導性をより高めることができる。
以上の工程により、本発明の一態様の粒子を得ることができる。本発明の一態様の粒子は、リチウムマンガン複合酸化物を有する。また、本発明の一態様の粒子は、第1の領域乃至第3の領域を有することが好ましい。
本発明の一態様は、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子である。
本発明の一態様である、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子は、第1の領域および第2の領域を有する。また、本発明の一態様である、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子は、第3の領域を有することが好ましい。
第2の領域は、第1の領域の外側の少なくとも一部に接する。ここで、外側とは、粒子の表面により近いことを示す。第3の領域は、第2の領域の外側の少なくとも一部に接することが好ましい。
また、第2の粒子が層状の領域を有する場合に、例えばその厚さは0.1nm以上30nm以下であることが好ましく、1nm以上15nm以下であることがより好ましい。
第1の領域および第2の領域は、リチウムと、酸素と、を有する。また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかはマンガンを有する。また、また、第1の領域および第2の領域の少なくともいずれかは元素Mを有する。
また、第1の領域および第2の領域は、マンガンと、元素Mと、の両方を有することがより好ましい。
また、第3の領域は、本発明の一態様であるリチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の、表面と一致する領域を有することが好ましい。
また、第3の粒子が層状の領域を有する場合に、例えばその厚さは0.1nm以上30nm以下であることが好ましく、1nm以上20nm以下であることがより好ましく、2nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。
図3(A)に、粒子が第1の領域として領域134、第2の領域として領域132、および第3の領域として領域133を有する例を示す。
図3(A)に示すように、領域132は、領域134の表面に少なくとも一部が接する領域を有する。また、領域133は、領域132の表面に少なくとも一部が接する。
また、図3(B)に示すように、領域134は、領域132に覆われない領域を有してもよい。また、領域132は、領域133に覆われない領域を有してもよい。また、例えば領域134に領域133が接する領域を有してもよい。また、領域134は、領域132および領域133のいずれにも覆われない領域を有してもよい。
本発明の一態様である、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を用いて蓄電装置を作製した場合、電池反応、例えば充電や放電に対して、第3の領域は第1の領域および第2の領域と比較して、より安定であることが好ましい。
ここで、第2の領域は、第1の領域と異なる結晶構造を有してもよい。または、第2の領域は、第1の領域と異なる向きの結晶を有してもよい。
例えば、第2の領域はスピネル型構造を有し、かつ第1の領域は層状岩塩型構造を有することが好ましい。
または、例えば、第1の領域および第2の領域は層状岩塩型構造を有し、かつ、第1の領域の有する結晶の第1の面と、第2の領域の有する結晶の第2の面と、が平行であることが好ましい。
ここで、第1の面が層状岩塩型構造の{0 0 1}面は、第2の結晶が有する{1 0 0}面、{1 3 −1}面または{−1 3 1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。または、第1の面が層状岩塩型構造の{1 0 0}面は、第2の結晶が有する{0 0 1}面、{1 3 −1}面または{−1 3 1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。または、第1の面が層状岩塩型構造の{1 3 −1}面は、第2の結晶が有する{0 0 1}面、{1 0 0}面または{−1 3 1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。または、第1の面が層状岩塩型構造の{−1 3 1}面は、第2の結晶が有する{0 0 1}面、{1 0 0}面または{1 3 −1}面の少なくともいずれか一のいずれかであることが好ましい。
また、例えば、第1の領域および第2の領域は層状岩塩型構造を有し、かつ、第1の領域の有する結晶の第1の方位と、第2の領域の有する結晶の第2の方位と、が平行であることが好ましい。ここで。第1の領域が有する結晶と、第2の領域が有する結晶の、結晶方位について説明する。
ここで、<1 0 0>、<1 1 0>および<−1 1 0>の3つの結晶方位を第1群とする。また、<0 0 1>、<0 1 1>および<0 1 −1>を第2群とする。また、<−3 2 3>、<3 1 6>および<6 −1 3>を第3群とする。また、<3 2 −3>、<3 −1 6>および<6 1 3>を第4群とする。
第1の領域が有する結晶は、第1群乃至第4群のうち一つの群から選ばれるいずれかの方位を有する。第2の領域が有する結晶は、第1群乃至第4群のうち、第1の領域が有する結晶が有する方位が選ばれる群以外の3つの群のうち一つの群から選ばれるいずれかの方位を有する。
上記、組み合わせの一例について、以下に具体例をあげて説明する。ここでは(001)面と(100)面について説明する。以下では具体的に記載するため、結晶の対称性を考慮しない指数の記載方法を取る。
図39にLiMnOの結晶構造をb軸の負の方向からみた図を示す。ここで、図39に示す破線Aで囲んだ領域が有する層A−1および層A−2を、層A−2側から、層A−1および層A−2に垂直な方向から見た図を図40(A)に示す。ここで層A−1は酸素を有し、層A−2はリチウムおよびマンガンを有する。
また、図39に示す破線Bで囲んで領域が有する層B−1および層B−2を、層B−2側から層B−1と層B−2に垂直な方向から見た図を図40(B)に示す。
図40(A)では、酸素原子の上に、リチウムまたはマンガンが、[110]方向または[−100]方向または[1−10]方向にずれて積層している。同様に図40(B)では酸素が形成する六角形構造の上に、リチウムまたはマンガンが、[0−11]方向または[00−1]方向または[011]方向にずれて積層している。また、図40(A)に破線Cで示す領域において、マンガンをリチウムに変えると、図40(B)と同様の構成となる。つまり、金属原子の種類は異なるものの、金属原子の位置は大よそ一致する。これらのことから、2つの構造は共通点が多く、積層する場合の整合性が良いと考えられる。
また、第2の領域は、第1の領域と異なる組成を有することが好ましい。
例えば、第1の領域がマンガン、元素Mおよび酸素を有し、第2の領域がマンガン、元素Mおよび酸素を有し、第1の領域のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa1:b1:c1:d1で表され、第2の領域のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa2:b2:c2:d2で表される場合について説明する。ここで、d1÷(b1+c1)は2.2以上が好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.35以上3以下であることがさらに好ましい。また、d2÷(b2+c2)は2.2未満であることが好ましく、2.1未満であることがより好ましく、1.1以上1.9以下であることがさらに好ましい。
また、第2の領域が有するマンガンは、第1の領域が有するマンガンと異なる価数を有してもよい。また、第2の領域が有する元素Mは、第1の領域が有する元素Mと異なる価数を有してもよい。
ここで、各領域の組成や、元素の価数に空間的な分布がある場合には、例えば複数の箇所についてその組成や価数を評価し、その平均値を算出し、該領域の組成や価数としてもよい。
また、第2の領域と第1の領域との間に、遷移層を有してもよい。ここで遷移層とは、例えば組成が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶構造が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶の格子定数が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。
または、第2の領域と第1の領域との間に、混合層を有してもよい。ここで混合層とは、例えば異なる結晶方位を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる結晶構造を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる組成を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。
ここで、第1の領域は、層状岩塩型構造を有することが好ましい。また、第2の領域は、スピネル型構造、または層状岩塩型構造のいずれか一を少なくとも有することが好ましい。
ここで、例えば、本発明の一態様の「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」を用いて蓄電池等を作製する場合、蓄電池を作製するまでの各工程において第1の領域乃至第3の領域が形成される場合がある。
例えば、第1の領域乃至第3の領域は、電極作製前、例えば粒子の合成後に形成されてもよい。あるいは、電極形成の過程において形成されてもよい。また、例えば粒子の合成後に形成された第1の領域乃至第3の領域の厚さや組成、および結晶構造等が、電極形成の過程において変化してもよい。
また、第1の領域乃至第3の領域は、蓄電池等を作製する各工程の熱処理において、形成されてもよい。
リチウムマンガン複合酸化物の作製工程において、S15等に示す、一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物の解砕処理工程は、電池の特性を左右する重要な工程である。解砕処理工程では、一次粒子が焼結したリチウムマンガン複合酸化物に、シェア(すりつぶしの応力)をかけることにより、粉末のリチウムマンガン複合酸化物を形成する。このとき、リチウムマンガン複合酸化物が層状岩塩型の結晶構造を有する場合には、層と平行となる面または層と垂直となる面において、一次粒子が劈開して、割れてしまうことがある。一次粒子が劈開して割れてしまったものを、本明細書等では、劈開面を有する粒子、または劈開面が露出した粒子と呼ぶ。なお、割れてしまった一次粒子には、劈開面を有さないものも含まれる。
また、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物のように、劈開性を有する活物質は、解砕処理時だけでなく、電極作製工程において、電極に圧力を加えて成形する際に、活物質層に圧力がかかることにより、活物質がさらに割れてしまうことがある。
また、捲回型の電池を製造する際には、電極の捲回時に大きな応力が作用する。また、電極の捲回体を筐体に収納した場合であっても、常に捲回軸の外側に向かう応力が作用するため、活物質がさらに割れてしまうおそれがある。
このように、リチウムマンガン複合酸化物の一次粒子が劈開して割れてしまうと、電池の放電容量の低下や、サイクル特性の低下を招く原因となる。
このような場合にも、リチウムマンガン複合酸化物の劈開面において、少なくとも一部に炭素を含む層を設けることが好ましい。また、炭素を含む層は、劈開面の全てを覆っていても良いし、劈開面を有するリチウムマンガン複合酸化物の全体を覆っていても良い。
本発明の一態様は、粒子を覆うように、グラフェン、もしくは酸化グラフェンを有するグラフェンが形成される。グラフェン、もしくは酸化グラフェンを有するグラフェンは、図3(A)に示す第3の領域133と一致していてもよい。すなわち、リチウムマンガン複合酸化物の表面の全体に設けられてもよく、一部のみに設けられてもよい。また、粒子において、露出した劈開面を覆うようにグラフェン、もしくは酸化グラフェンを有するグラフェンが形成されることが好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の劈開面の少なくとも一部にグラフェン、もしくは酸化グラフェンを有するグラフェンが設けられていればよい。劈開面の少なくとも一部にグラフェン、もしくは酸化グラフェンを有するグラフェンが覆われた活物質を電極に用いることにより、電池の電圧の低下や、放電容量の低下を抑制することができる。これにより、充放電に伴う電池のサイクル特性を向上させることができる。
グラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。そのため、当該活物質を含む電極を電池に用いることにより、電池が充放電を繰り返すことで、リチウムマンガン複合酸化物が膨張収縮したとしても、体積変化でリチウムマンガン複合酸化物がさらに劈開して割れてしまうことを防止することができる。
また、電極作製工程において、電極に圧力を加えて成形する際に、リチウムマンガン複合酸化物にかかる圧力をグラフェンの機械的強度により緩和することができる。これにより、リチウムマンガン複合酸化物がさらに劈開して割れてしまうことを防止することができる。
さらに、捲回型の電池において、電極の捲回時に大きな応力が作用した場合や、電極の捲回体を筐体に収納した場合に、電極に常に捲回軸の外側に向かう応力がかかったとしても、これにより、リチウムマンガン複合酸化物がさらに劈開して割れてしまうことを防止することができる。
<電極の構成>
次に、本発明の一態様である粒子を用いた電極について説明する。
図4(A)は電極100を俯瞰した図であり、図4(B)は図4(A)の破線で囲んだ部分の断面を示す図である。電極100は、集電体101上に活物質層102が設けられた構造である。なお、図4(A)では集電体101の両面に活物質層102が設けられている例を示すが、集電体101の片面のみに活物質層102が設けられていてもよい。
集電体101は、蓄電装置内で顕著な化学変化を引き起こさずに高い導電性を示す限り、特別な制限はない。例えば、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、タンタル、マンガン等の金属、およびこれらの合金、焼結した炭素などを用いることができる。また、銅またはステンレス鋼を炭素、ニッケル、チタン等で被覆してもよい。また、シリコン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。また、集電体101は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状、多孔質状および不織布を包括する様々な形態等の形状を適宜用いることができる。さらに、活物質層との密着性を上げるために集電体101は表面に細かい凹凸を有していてもよい。また、集電体101は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
活物質層102は、活物質を含む。活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関わる物質のみを指すが、本明細書等では、本来「活物質」である材料に加えて、導電助剤やバインダーなどを含めたものも、活物質層と呼ぶ。
活物質として、負極活物質を用いる場合は、例えば、炭素系材料、合金系材料等を用いることができる。
また、炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
黒鉛にリチウムイオンが挿入するとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)の電位は、リチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1以上0.3V以下 vs.Li/Li)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
負極活物質として、合金化材料を用いることができる。ここで、合金化材料とは、キャリアイオンとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料も用いることができる。例えば、Ga、Si、Al、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Zn、Cd、In等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特に、シリコンは理論容量が4200mAh/gと高いため、蓄電装置の容量を高めることができる。このような元素を用いた化合物材料としては、例えば、SiO、MgSi、MgGe、SnO、SnO、MgSn、SnS、VSn、FeSn、CoSn、NiSn、CuSn、AgSn、AgSb、NiMnSb、CeSb、LaSn、LaCoSn、CoSb、InSb、SbSn等がある。
ここで、蓄電装置の容量を高めるためには、負極活物質として、シリコンを有する材料、例えばシリコンや、SiO等を用いることが特に好ましい。ここで、SiOとは、珪素と酸素を有する化合物であり、珪素と酸素の原子数比を珪素:酸素=α:βとすると、αは、βの近傍の値を有することが好ましい。ここで近傍の値を有するとは、例えばαとβの差の絶対値は、βの値に対して好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であればよい。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO)、リチウムチタン酸化物(LiTi12)、リチウム−黒鉛層間化合物(Li)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型構造をもつLi3−xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm)を示し、好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO、Cr等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、CuN、Ge等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF、BiF等のフッ化物でも起こる。
活物質として正極活物質を用いる場合には、リチウムイオンを挿入および脱離することが可能な材料を用いることができる。例えば、オリビン型構造、層状岩塩型構造、またはスピネル型構造、NASICON型結晶構造を有する材料等を用いることができる。
本実施の形態では、正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を用いる場合について説明するが、他の活物質を有していても良い。他の活物質としては、例えば、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn、V、Cr、MnO等の化合物を材料として用いることができる。
または、オリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPOの代表例としては、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、LiMnPO、LiFeNiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO、LiNiCoPO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFeNiCoPO、LiFeNiMnPO、LiNiCoMnPO(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFeNiCoMnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム金属リン酸化合物が挙げられる。
または、一般式Li(2−j)MSiO(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有複合ケイ酸塩を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiOの代表例としては、Li(2−j)FeSiO、Li(2−j)NiSiO、Li(2−j)CoSiO、Li(2−j)MnSiO、Li(2−j)FeNiSiO、Li(2−j)FeCoSiO、Li(2−j)FeMnSiO、Li(2−j)NiCoSiO、Li(2−j)NiMnSiO(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FeNiCoSiO、Li(2−j)FeNiMnSiO、Li(2−j)NiCoMnSiO(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FeNiCoMnSiO(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウムシリケート化合物が挙げられる。
また、活物質として、A(XO(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるNASICON型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe(MnO、Fe(SO、LiFe(PO等が挙げられる。また、正極活物質として、LiMPOF、LiMP、LiMO(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物、NaF、FeF等のペロブスカイト型フッ化物、TiS、MoS等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO等の逆スピネル型の結晶構造を有する材料、バナジウム酸化物系(V、V13、LiV等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物およびリチウム含有複合リン酸塩およびリチウム含有複合ケイ酸塩において、リチウムを、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)などのキャリアで置換した化合物を用いてもよい。
正極活物質の平均粒径は、例えば、5nm以上50μm以下が好ましい。
また、活物質層102は導電助剤を有してもよい。導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また、炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)又はグラフェンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
活物質層102は、バインダーを有することが好ましく、バインダーは水溶性の高分子を有することがより好ましい。また、活物質層102は複数の種類のバインダーを有してもよい。
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアクリロニトリル(PAN)、等の材料を用いることが好ましい。
またバインダーとして、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などのゴム材料を用いることができる。これらのゴム材料は、水溶性高分子と併用して用いると、さらに好ましい。これらのゴム材料は、ゴム弾性を有し、伸び縮みしやすいため、充放電に伴う活物質の膨張収縮や、電極の曲げなどに伴うストレスに強く、信頼性の高い電極を得ることができる一方で、疎水基を有し水に溶けにくい場合がある。このような場合には、水溶液中で粒子が水に溶解しない状態で分散するので、活物質層102の形成に使用する溶剤を含む組成物(電極合剤組成物ともいう)を、塗布するために適した粘度にまで高めることが難しいことがある。この際に、粘度調整機能の高い水溶性高分子、例えば多糖類を用いると、溶液の粘度を適度に高める効果が期待できるうえに、ゴム材料と互いに均一に分散し、均一性の高い良好な電極、例えば電極膜厚や電極抵抗の均一性が高い電極を得ることができる。
水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉、などを用いることができる。
バインダーはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
<電極の作製方法>
次に、本発明の一態様である電極100の作製方法について説明する。
まず、電極合剤組成物を作製する。電極合剤組成物は、例えば上述した活物質を用い、バインダーや導電助剤等を添加して、溶媒とともに混練することで作製することができる。電極合剤組成物は、スラリー状であっても、ペースト状であってもよい。なお、溶媒としては、例えば、水や、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)などを用いることができる。安全性とコストの観点から、水を用いることは好ましい。
一例として電極100が蓄電池用の正極である場合を説明する。ここでは活物質として本発明の一態様に係る活物質を用い、導電助剤としてアセチレンブラックを用い、バインダーとしてPVdFを用い、溶媒としてNMPを用いる例について説明する。
まず、本発明の一態様に係る活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンと、を混合する。これらの混合物に、所定の粘度になるまでNMPを添加し、混練することで、電極合剤組成物を形成することができる。この工程において、混練と極性溶媒との添加を複数回繰り返し行ってもよい。電極合剤組成物は、スラリー状でもペースト状であってもよい。
以上の工程により、活物質、導電助剤、バインダーの分散状態が均一な電極合剤組成物を形成することができる。
ここで、集電体上に、アンダーコートを形成してもよい。なお、アンダーコートとは、接触抵抗の低減や、集電体と活物質層との密着性向上のための被覆層をいう。アンダーコートとして、例えば、炭素層、金属層、炭素および高分子を含む層、並びに金属および高分子を含む層を含む層を用いることができる。集電体上にアンダーコートを形成することにより、後に形成される集電体と活物質層との接触抵抗を低減することができる。また、集電体と活物質層との密着性を高めることができる。なお、アンダーコートは、導電助剤としてグラフェンを用いる場合には、酸化グラフェンの還元工程において、還元液によって溶解しないものが好ましい。
また、アンダーコートとしては、例えば、黒鉛やアセチレンブラックなどの分散水溶液、または当該水溶液に高分子を混ぜたものを用いることができ、例えば、黒鉛と、ポリアクリル酸ナトリウム(PAA)との混合物、また、ABとPVdFとの混合物などを用いることができる。また、黒鉛とPAAとの配合比は、黒鉛:PAA=95:5から50:50の範囲、ABとPVdFとの配合比は、AB:PVdF=70:30から50:50の範囲とすればよい。
なお、活物質層と集電体との密着性や、電極強度、接触抵抗に問題がなければ、アンダーコートは、必ずしも集電体に形成する必要はない。
次に、スラリーを集電体の片面又は両面に、例えば、ドクターブレード法等の塗布法などにより設ける。
次に、集電体上に設けたスラリーを、通風乾燥又は減圧(真空)乾燥等の方法で乾燥させることにより活物質層を形成する。この乾燥は、例えば、50℃以上180℃以下の熱風を用いて行うとよい。このステップにより、活物質層中に含まれる極性溶媒を蒸発させる。なお、雰囲気は特に限定されない。
ここで、この活物質層を、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法により圧力を加えることで、活物質層の密度を高めてもよい。また、プレスを行う際に、90℃以上180℃以下、好ましくは120℃以下の熱を加えることにより、アンダーコートや活物質層に含まれるバインダ(例えば、PVdF)を、電極の特性を変化させない程度に軟化させることにより、集電体と活物質層との密着性をさらに高めることができる。
次に、活物質層を乾燥させる。乾燥は、減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行うとよい。この乾燥工程は、例えば、50℃以上600℃以下、さらにこのましくは120℃以上500℃以下、より好ましくは200℃以上400℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、活物質層に存在する極性溶媒や水分をよく蒸発あるいは除去させる。
ここで、例えば本発明の一態様の「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」を用いて電極を作製し、該電極を用いて蓄電池を作製する場合、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」が有する第1の領域乃至第3の領域は、「リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子」の作製過程、および蓄電池作製過程のいずれの過程において形成されていてもよい。
<プレス>
さらに、活物質層が形成された集電体にプレスを行ってもよい。これにより、活物質層と集電体との密着性を高めることができる。また、活物質層の密度を高めることができる。また、プレスを行う際に、90℃以上180℃以下、好ましくは120℃以下の熱を加えることにより、アンダーコートや活物質層に含まれるバインダ(例えば、PVDF)を、電極の特性を変化させない程度に軟化させることにより、集電体と活物質層との密着性をさらに高めることができる。
最後に、所定のサイズに集電体および活物質層を打ち抜くことにより、電極が作製される。
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載されているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様として、リチウムイオン二次電池に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な二次電池、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、固体電池、空気電池、一次電池、キャパシタ、または、リチウムイオンキャパシタ、などに適用してもよい。または、例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に適用しなくてもよい。
また、本発明の一態様として、グラフェン、または、酸化グラフェンを有する場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、グラフェンまたは酸化グラフェンは、容量が非常に大きいキャパシタであるスーパーキャパシタのための電極として用いたり、酸素還元電極触媒として用いたり、潤滑油より低摩擦な分散水の材料として用いたり、表示装置や太陽電池などのための透明電極として用いたり、ガスバリア材として用いたり、機械的強度が高くて軽量なポリマー材料として用いたり、放射能汚染水に含まれるウランやプルトニウムを検出するための高感度ナノセンサの材料として用いたり、放射性物質を取りのぞくための材料として用いたりしてもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である電極を用いた蓄電装置の一例を示す。
なお、本明細書等において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子および装置全般を指す。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池、リチウムイオンキャパシタ、および電気二重層キャパシタなどを含む。
〈薄型蓄電池〉
[薄型蓄電池1]
図5に、蓄電装置の一例として、薄型の蓄電池について示す。図5は、薄型の蓄電池の一例を示す。薄型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図5は薄型の蓄電池500の外観図を示す。また、図6(A)および図6(B)は、図5に一点鎖線で示すA1−A2断面およびB1−B2断面を示す。薄型の蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。
正極503または負極506の少なくとも一方には、本発明の一態様である電極を用いる。また、正極503または負極506の両方に、本発明の一態様である電極を用いてもよい。
まず、正極503の構成について説明する。正極503には、本発明の一態様に係る電極を用いることが好ましい。ここでは、正極503に、実施の形態2に示す電極100を用いる例を示す。
電解液508の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、またはパーフルオロアルキルホスフェート等が挙げられる。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、例えばLiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN(CFSO、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(CSO等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
また、蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
また、電解液にビニレンカーボネート(VC)、プロパンスルトン(PS)、tert−ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、LiBOBなどの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1weight%以上5weight%以下とすればよい。
また、ポリマーを電解液で膨潤させたゲル電解質を用いてもよい。ゲル電解質(ポリマーゲル電解質)の例としては、担体としてホストポリマーを用い、上述の電解液を含有させたものが挙げられる。
ホストポリマーの例を以下に説明する。ホストポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF−HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
セパレータ507としては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
セパレータ507は袋状に加工し、正極503または負極506のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。例えば、図7(A)に示すように、正極503を挟むようにセパレータ507を2つ折りにし、正極503と重なる領域よりも外側で封止部514により封止することで、正極503を袋状に加工されたセパレータ507の袋の内部に確実に担持することができる。そして、図7(B)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と負極506とを交互に積層し、これらを外装体509で囲まれた領域の内側に配置することで薄型の蓄電池500を形成するとよい。
ここで、正極活物質として、実施の形態1に示すリチウムマンガン複合酸化物を有する粒子を用い、正極503として実施の形態1に示す電極を用い、負極活物質として、シリコンを有する活物質を用いる例について説明する。
シリコンを有する活物質、例えばシリコンや、SiOは、活物質重量および活物質体積あたりの容量が大きく、蓄電池の重量あたりおよび体積あたりの容量を高めることができる。
ここで、蓄電池の充電および放電において、キャリアイオンの挿入・脱離反応以外に、電解液の分解反応が生じる場合がある。この分解反応は、正極においても負極においても生じる可能性がある。特に負極においては、その電池反応の電位の低さに電解液が耐性を有さず分解する場合が多い。このような分解反応は、不可逆な反応である場合が多い。不可逆な反応が生じることにより蓄電装置の充放電効率は低下し、容量減少の要因となる場合がある。
このような場合に、蓄電池に用いる負極506または正極503と、対極と、電解液と、をあらかじめ設けた電池を作製し、不可逆な反応をあらかじめ生じさせた後、該電池から負極506または正極503を取り出し、蓄電池を作製することにより、不可逆な反応による蓄電池の容量減少を抑制することができるため好ましい。ここで対極として、キャリアイオンを有する材料を用いればよい。例えば、キャリアイオンを有する金属や、キャリアイオンを有する化合物を用いることができる。キャリアイオンを有する金属として、例えばリチウム等が挙げられる。また、キャリアイオンを有する化合物として、例えば、実施の形態1において正極活物質や負極活物質として挙げた材料を用いることができる。
次に、蓄電池を作製した後のエージングについて説明する。蓄電池を作製した後に、エージングを行うことが好ましい。エージング条件の一例について以下に説明する。まず初めに0.001C以上0.2C以下のレートで充電を行う。温度は例えば室温以上、50℃以下とすればよい。このときに、電解液の分解が生じ、ガスが発生した場合には、そのガスがセル内にたまると、電解液が電極表面と接することができない領域が発生してしまう。つまり電極の実効的な反応面積が減少し、実効的な電流密度が高くなることに相当する。また、本発明の一態様のリチウムマンガン複合酸化物を有する粒子は、正極活物質として用いた場合に、高い反応電位を有する。正極活物質が高い反応電位を有する場合には、蓄電池の電圧を高めることができ、蓄電池のエネルギー密度を高めることができるため好ましい。
ここで、このような高い反応電位に対して、電解液が耐性を有さない場合がある。例えば、正極の表面において、電解液が分解し、ガスを発生する場合がある。このような場合には、ガスを抜くことが好ましい。
また、過度に電流密度が高くなると、電極の抵抗に応じて電圧降下が生じ、黒鉛へのリチウム挿入が起こると同時に、黒鉛表面へのリチウム析出も生じてしまう。このリチウム析出は容量の低下を招く場合がある。例えば、リチウムが析出した後、表面に被膜等が成長してしまうと、表面に析出したリチウムが再溶出できなくなり、容量に寄与しないリチウムが増える。また、析出したリチウムが物理的に崩落し、電極との導通を失った場合にも、やはり容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。よって、電極が電圧降下によりリチウム電位まで到達する前に、ガスを抜くことが好ましい。
また、プレスを行いながらエージングを行ってもよい。例えば、薄型の蓄電池を作製した後、プレス機を用いてプレスを行いながら充放電を行ってもよい。
本発明の一態様のリチウムマンガン複合酸化物は、大きな放電容量を有するため好ましい。また、本発明の一態様のリチウムマンガン複合酸化物は、その電池反応の電位が高く、その電位の高さと放電容量の大きさから高いエネルギー密度を有するため、好ましい。
一方、蓄電池の正極として高い電池反応を有する活物質を用いた場合、電解液が分解しやすい場合がある。ここで電解液が分解することにより、正極表面近傍にガスが発生する場合がある。
プレスを行いながらエージングを行うことにより、発生したガスを、プレスを行っている領域以外の領域、例えば蓄電池の周辺部分に追い出せる場合があり、好ましい。
ここで、例えば加熱を行いながらプレスを行ってもよい。また、エージングの前後でプレスを行ってもよいが、プレスを行いながらエージングを行うことがより好ましい。
また、ガス抜きを行った後に、室温よりも高い温度、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下において、例えば1時間以上100時間以下、充電状態で保持してもよい。初めに行う充電の際に、表面で分解した電解液は黒鉛の表面に被膜を形成する。よって、例えばガス抜き後に室温よりも高い温度で保持することにより、形成された被膜が緻密化する場合も考えられる。
図8(B)は、リード電極に集電体を溶接する例を示す。例として、正極集電体501を正極リード電極510に溶接する例を示す。正極集電体501は、超音波溶接などを用いて溶接領域512で正極リード電極510に溶接される。また、正極集電体501は、図8(B)に示す湾曲部513を有することにより、蓄電池500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができ、蓄電池500の信頼性を高めることができる。
図5および図6に示す薄型の蓄電池500において、正極リード電極510および負極リード電極511を用いて正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させて正極リード電極510および負極リード電極511を外側に露出している。また、外部との電気的接触を得る端子の役割を正極集電体501および負極集電体504で兼ねることもできる。その場合は、リード電極を用いずに、正極集電体501および負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図5では正極リード電極510と負極リード電極511は同じ辺に配置されているが、図9に示すように、正極リード電極510と負極リード電極511を異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の蓄電池は、リード電極を自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の生産性を高めることができる。
薄型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
また図5では、一例として、向かい合う正極と負極の組の数を5組としているが、勿論、電極の組は5組に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
上記構成において、二次電池の外装体509は、曲率半径10mm以上好ましくは曲率半径30mm以上の範囲で変形することができる。二次電池の外装体であるフィルムは、1枚または2枚で構成されており、積層構造の二次電池である場合、湾曲させた電池の断面構造は、外装体であるフィルムの2つの曲線で挟まれた構造となる。
面の曲率半径について、図10を用いて説明する。図10(A)において、曲面1700を切断した平面1701において、曲面の形状である曲線1702の一部を円の弧に近似して、その円の半径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。図10(B)に曲面1700の上面図を示す。図10(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図を示す。曲面を平面で切断するとき、曲面に対する平面の角度や切断位置に応じて、断面に現れる曲線の曲率半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする。
2枚のフィルムを外装体として電極・電解液など1805を挟む二次電池を湾曲させた場合には、二次電池の曲率中心1800に近い側のフィルム1801の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側のフィルム1803の曲率半径1804よりも小さい(図11(A))。二次電池を湾曲させて断面を円弧状とすると曲率中心1800に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲率中心1800から遠いフィルムの表面には引っ張り応力がかかる(図11(B))。外装体の表面に凹部または凸部で形成される模様を形成すると、このように圧縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみによる影響を許容範囲内に抑えることができる。そのため、二次電池は、曲率中心に近い側の外装体の曲率半径が10mm以上好ましくは30mm以上となる範囲で変形することができる。
なお、二次電池の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にすることができ、例えば図11(C)に示す形状や、波状(図11(D))、S字形状などとすることもできる。二次電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、2枚の外装体の曲率中心に近い方の外装体の曲率半径が、10mm以上好ましくは30mm以上となる範囲で二次電池が変形することができる。
[薄型蓄電池2]
図12に、図5とは異なる薄型蓄電池の例として、蓄電池100aを示す。図12(A)は蓄電池100aの斜視図、図12(B)は蓄電池100aの上面図である。図12(C)は、図12(B)の一点破線D1−D2における断面図である。なお、図12(C)では図を明瞭にするため、正極111、負極115、セパレータ103、正極リード121、負極リード125、および封止層120を抜粋して示す。
ここで図13を用いて、図12に示す蓄電池100aの作製方法の一部について説明する。
まずセパレータ103上に、負極115を配置する(図13(A))。このとき、負極115が有する負極活物質層が、セパレータ103と重畳するように配置する。
次に、セパレータ103を折り曲げ、負極115の上にセパレータ103を重ねる。次に、セパレータ103の上に、正極111を重ねる(図13(B))。このとき、正極111が有する正極活物質層が、セパレータ103および負極活物質層と重畳するように配置する。なお、集電体の片面に活物質層が形成されている電極を用いる場合は、正極111の正極活物質層と、負極115の負極活物質層がセパレータ103を介して対向するように配置する。
セパレータ103にポリプロピレン等の熱溶着が可能な材料を用いている場合は、セパレータ103同士が重畳している領域を熱溶着してから次の電極を重ねることで、作製工程中に電極がずれることを抑制できる。具体的には、負極115または正極111と重畳しておらず、セパレータ103同士が重畳している領域、たとえば図13(B)の領域103aで示す領域を熱溶着することが好ましい。
この工程を繰り返すことで、図13(C)に示すように、セパレータ103を挟んで正極111および負極115を積み重ねることができる。
なお、あらかじめ繰り返し折り曲げたセパレータ103に、複数の負極115および複数の正極111を交互に挟むように配置してもよい。
次に、図13(C)に示すように、セパレータ103で複数の正極111および複数の負極115を覆う。
さらに、図13(D)に示すように、セパレータ103同士が重畳している領域、例えば図13(D)に示す領域103bを熱溶着することで、複数の正極111と複数の負極115を、セパレータ103によって覆い、結束する。
なお、複数の正極111、複数の負極115およびセパレータ103を、結束材を用いて結束してもよい。
このような工程で正極111および負極115を積み重ねるため、セパレータ103は、1枚のセパレータ103の中で、複数の正極111と複数の負極115に挟まれている領域と、複数の正極111と複数の負極115を覆うように配置されている領域とを有する。
換言すれば、図16の蓄電池100aが有するセパレータ103は、一部が折りたたまれた1枚のセパレータである。セパレータ103の折りたたまれた領域に、複数の正極111と、複数の負極115が挟まれている。
蓄電池100aの、外装体107の接着領域、および正極111、負極115、セパレータ103および外装体107の形状、正極リード121および負極リード125の位置形状以外の構成は、実施の形態1の記載を参酌することができる。また、正極111および負極115を積み重ねる工程以外の蓄電池100aの作製方法は、他の実施の形態に記載の作製方法を参酌することができる。
[薄型蓄電池3]
図14に、図12と異なる薄型蓄電池の例として蓄電池100bを示す。図14(A)は蓄電池100bの斜視図、図14(B)は蓄電池100bの上面図である。図14(C1)は第1の電極組立体130、図14(C2)は第2の電極組立体131の断面図である。図14(D)は、図14(B)の一点破線E1−E2における断面図である。なお、図14(D)では図を明瞭にするため、第1の電極組立体130、電極組立体131およびセパレータ103を抜粋して示す。
図14に示す蓄電池100bは、正極111と負極115の配置、およびセパレータ103の配置が図16の蓄電池100aと異なる。
図14(D)に示すように、蓄電池100bは、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131を有する。
図14(C1)に示すように、第1の電極組立体130では、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極111a、セパレータ103、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極115a、セパレータ103、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極111aがこの順に積層されている。また図14(C2)に示すように、第2の電極組立体131では、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極115a、セパレータ103、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極111a、セパレータ103、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極115aがこの順に積層されている。
さらに図14(D)に示すように、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131は、巻回したセパレータ103によって覆われている。
ここで図15を用いて、図14に示す蓄電池100bの作製方法の一部について説明する。
まずセパレータ103上に、第1の電極組立体130を配置する(図15(A))。
次に、セパレータ103を折り曲げ、第1の電極組立体130の上にセパレータ103を重ねる。次に、第1の電極組立体130の上下に、セパレータ103を介して、2組の第2の電極組立体131を重ねる(図15(B))。
次に、セパレータ103を、2組の第2の電極組立体131を覆うように巻回させる。さらに、2組の第2の電極組立体131の上下に、セパレータ103を介して、2組の第1の電極組立体130を重ねる(図15(C))。
次に、セパレータ103を、2組の第1の電極組立体130を覆うように巻回させる(図15(D))。
このような工程で複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131を積み重ねるため、これらの電極組立体は、渦巻き状に巻回されたセパレータ103の間に配置される。
なお、最も外側に配置される電極組立体130の正極111aは、外側には正極活物質層を設けないことが好ましい。
また図14(C1)および(C2)では、電極組立体が電極3枚とセパレータ2枚を有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。電極を4枚以上、セパレータを3枚以上有する構成としてもよい。電極を増やすことで、蓄電池100bの容量をより向上させることができる。また電極を2枚、セパレータを1枚有する構成としてもよい。電極が少ない場合、より湾曲に強い蓄電池100bとすることができる。まだ図14(D)では、蓄電池100bが第1の電極組立体130を3組、第2の電極組立体を2組有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。さらに多くの電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体を増やすことで、蓄電池100bの容量をより向上させることができる。またより少ない電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体が少ない場合、より湾曲に強い蓄電池100bとすることができる。
蓄電池100bの、正極111と負極115の配置、およびセパレータ103の配置の他は、図12についての記載を参酌することができる。
〈コイン型蓄電池〉
次に蓄電装置の一例として、コイン型の蓄電池の一例について、図16を参照して説明する。図16(A)はコイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図16(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。正極活物質層306は、正極活物質層502の記載を参照すればよい。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。負極活物質層309は、負極活物質層505の記載を参照すればよい。またセパレータ310は、セパレータ507の記載を参照すればよい。また電解液は、電解液508の記載を参照すればよい。
なお、コイン型の蓄電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図16(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
〈円筒型蓄電池〉
次に蓄電装置の一例として、円筒型の蓄電池を示す。円筒型の蓄電池について、図17を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は、図17(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図17(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケルや、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604および負極606は、上述した薄型の蓄電池の正極および負極と同様に製造すればよい。また、円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO)系半導体セラミックス等を用いることができる。
図17に示すような円筒型の蓄電池のように電極を捲回する際には、捲回時に電極に大きな応力が作用する。また、電極の捲回体を筐体に収納した場合に、電極には常に捲回軸の外側に向かう応力が作用する。このように電極に大きな応力が作用したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、円筒型および薄型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、およびセパレータが複数積層された構造、正極、負極、およびセパレータが捲回された構造であってもよい。例えば、他の蓄電池の例を図18乃至図22に示す。
〈蓄電池の構成例〉
図18および図19に、薄型の蓄電池の構成例を示す。図18(A)に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。
捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止容器などで覆うことにより角型の二次電池が作製される。
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
図18(B)および図18(C)に示す蓄電池990は、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
また、図18(B)および図18(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
また、可撓性を有する部分が薄型の蓄電池のみである蓄電装置ではなく、外装体や、封止容器を樹脂材料などにすることによって可撓性を有する蓄電装置を作製することができる。ただし、外装体や、封止容器を樹脂材料にする場合、外部に接続を行う部分は導電材料とする。
例えば、可撓性を有する別の薄型蓄電池の例を図19に示す。図19(A)の捲回体993は、図18(A)に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略することとする。
図19(B)および図19(C)に示す蓄電池990は、外装体991の内部に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、外装体991、992の内部で電解液に含浸される。外装体991、992は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。外装体991、992の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときに外装体991、992を変形させることができ、可撓性を有する薄型蓄電池を作製することができる。
本発明の一態様に係る活物質を含む電極を、可撓性を有する薄型蓄電池に用いることにより、薄型蓄電池を繰り返し折り曲げることによって電極に応力が作用したとしても、活物質が劈開したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
以上により、劈開面の少なくとも一部にグラフェンで覆われた活物質を電極に用いることにより、電池の電圧の低下や、放電容量の低下を抑制することができる。これにより、充放電に伴う電池のサイクル特性を向上させることができる。
〈蓄電システムの構造例〉
また、蓄電システムの構造例について、図20乃至図22を用いて説明する。ここで蓄電システムとは、例えば、蓄電装置を搭載した機器を指す。
図20(A)および図20(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システムは、回路基板900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図20(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端子952と、を有し、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、および回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914およびアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電システムは、アンテナ914およびアンテナ915と、蓄電池913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電システムの構造は、図20に示す構造に限定されない。
例えば、図21(A−1)および図21(A−2)に示すように、図20(A)および図20(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図21(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図21(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図21(A−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図21(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914およびアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
または、図21(B−1)および図21(B−2)に示すように、図20(A)および図20(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図21(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図21(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図21(B−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914およびアンテナ915が設けられ、図21(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914およびアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図22(A)に示すように、図20(A)および図20(B)に示す蓄電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図22(B)に示すように、図20(A)および図20(B)に示す蓄電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図20(A)および図20(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
本実施の形態で示す蓄電池や蓄電システムには、本発明の一態様に係る電極が用いられている。そのため、蓄電池や蓄電システムの容量の大きくすることができる。また、エネルギー密度を高めることができる。また、信頼性を高めることができる。また、寿命を長くすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例について説明する。
実施の形態2に示す可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を図23に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図23(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図23(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図23(C)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
図23(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図23(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
図23(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極部材を備える蓄電装置を有している。例えば、図23(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
図23(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の蓄電装置を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、蓄電装置を搭載することのできる電子機器の一例を示す。
図24(A)および図24(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図24(A)および図24(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。図24(A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図24(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図24(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図24(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電体を用いた蓄電体9635は可撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図24(A)および図24(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面又は二面に蓄電体9635を配置することで効率的に充電を行う構成とすることができるため好適である。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図24(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図24(C)にブロック図を示し説明する。図24(C)には、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図24(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力電送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
図25に、他の電子機器の例を示す。図25において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図25において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、蓄電装置8103等を有する。図25では、蓄電装置8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
なお、図25では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図25において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図25では、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図25では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図25において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図25では、蓄電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、車両に蓄電装置を搭載する例を示す。
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図26において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図26(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーター8106を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図26(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図26(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄電装置8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
上記実施の形態で説明した材料を含む電池セルと組み合わせて用いることができる電池制御ユニット(Battery Management Unit:BMU)、及び該電池制御ユニットを構成する回路に適したトランジスタについて、図27乃至図33を参照して説明する。本実施の形態では、特に直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットについて説明する。
直列に接続された複数の電池セルに対して充放電を繰り返していくと、電池セル間の特性のばらつきに応じて、容量(出力電圧)が異なってくる。直列に接続された電池セルでは、全体の放電時の容量が、容量の小さい電池セルに依存する。容量にばらつきがあると放電時の容量が小さくなる。また、容量が小さい電池セルを基準にして充電を行うと、充電不足となる虞がある。また、容量の大きい電池セルを基準にして充電を行うと、過充電となる虞がある。
そのため、直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットは、充電不足や、過充電の原因となる、電池セル間の容量のばらつきを揃える機能を有する。電池セル間の容量のばらつきを揃える回路構成には、抵抗方式、キャパシタ方式、あるいはインダクタ方式等あるが、ここではオフ電流の小さいトランジスタを利用して容量のばらつきを揃えることのできる回路構成を一例として挙げて説明する。
オフ電流の小さいトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(OSトランジスタ)が好ましい。オフ電流の小さいOSトランジスタを蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成に用いることで、電池から漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。
チャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、In−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Sn、Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いる。酸化物半導体膜を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:zとすると/yは、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z/yは、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z/yを1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
ここで、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
試料面と略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
なお、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(Siトランジスタ)に比べてバンドギャップが大きいため、高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。直列に電池セルを接続する場合、数100Vの電圧が生じることになるが、このような電池セルに適用される蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成には、前述のOSトランジスタで構成することが適している。
図27には、蓄電装置のブロック図の一例を示す。図27に示す蓄電装置BT00は、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07と、直列に接続された複数の電池セルBT09を含む電池部BT08と、を有する。
また、図27の蓄電装置BT00において、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される部分を、電池制御ユニットと呼ぶことができる。
切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の動作を制御する。具体的には、切り替え制御回路BT03は、電池セルBT09毎に測定された電圧に基づいて、放電する電池セル(放電電池セル群)、及び充電する電池セル(充電電池セル群)を決定する。
さらに、切り替え制御回路BT03は、当該決定された放電電池セル群及び充電電池セル群に基づいて、制御信号S1及び制御信号S2を出力する。制御信号S1は、切り替え回路BT04へ出力される。この制御信号S1は、端子対BT01と放電電池セル群とを接続させるように切り替え回路BT04を制御する信号である。また、制御信号S2は、切り替え回路BT05へ出力される。この制御信号S2は、端子対BT02と充電電池セル群とを接続させるように切り替え回路BT05を制御する信号である。
また、切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04、切り替え回路BT05、及び変圧回路BT07の構成を踏まえ、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士が接続されるように、制御信号S1及び制御信号S2を生成する。
切り替え制御回路BT03の動作の詳細について述べる。
まず、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09毎の電圧を測定する。そして、切り替え制御回路BT03は、例えば、所定の閾値以上の電圧の電池セルBT09を高電圧の電池セル(高電圧セル)、所定の閾値未満の電圧の電池セルBT09を低電圧の電池セル(低電圧セル)と判断する。
なお、高電圧セル及び低電圧セルを判断する方法については、様々な方法を用いることができる。例えば、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09の中で、最も電圧の高い、又は最も電圧の低い電池セルBT09の電圧を基準として、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判断してもよい。この場合、切り替え制御回路BT03は、各電池セルBT09の電圧が基準となる電圧に対して所定の割合以上か否かを判定する等して、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判断することができる。そして、切り替え制御回路BT03は、この判断結果に基づいて、放電電池セル群と充電電池セル群とを決定する。
なお、複数の電池セルBT09の中には、高電圧セルと低電圧セルが様々な状態で混在し得る。例えば、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルと低電圧セルが混在する中で、高電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を放電電池セル群とする。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を充電電池セル群とする。また、切り替え制御回路BT03は、過充電又は過放電に近い電池セルBT09を、放電電池セル群又は充電電池セル群として優先的に選択するようにしてもよい。
ここで、本実施形態における切り替え制御回路BT03の動作例を、図28を用いて説明する。図28は、切り替え制御回路BT03の動作例を説明するための図である。なお、説明の便宜上、図28では4個の電池セルBT09が直列に接続されている場合を例に説明する。
まず、図28(A)の例では、電池セルa乃至dの電圧を電圧Va乃至電圧Vdとすると、Va=Vb=Vc>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、連続する3つの高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルDを充電電池セル群として決定する。
次に、図28(B)の例では、Vc>Va=Vb>>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する2つの低電圧セルa、bと、1つの高電圧セルcと、1つの過放電間近の低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルcを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルdが過放電間近であるため、連続する2つの低電圧セルa及びbではなく、低電圧セルdを充電電池セル群として優先的に決定する。
最後に、図28(C)の例では、Va>Vb=Vc=Vdの関係にある場合を示している。つまり、1つの高電圧セルaと、連続する3つの低電圧セルb乃至dとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルaを放電電池セル群と決定する。また、切り替え制御回路BT03は、連続する3つの低電圧セルb乃至dを充電電池セル群として決定する。
切り替え制御回路BT03は、上記図28(A)乃至(C)の例のように決定された結果に基づいて、切り替え回路BT04の接続先である放電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S1と、切り替え回路BT05の接続先である充電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05に対してそれぞれ出力する。
以上が、切り替え制御回路BT03の動作の詳細に関する説明である。
切り替え回路BT04は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S1に応じて、端子対BT01の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された放電電池セル群に設定する。
端子対BT01は、対を成す端子A1及びA2により構成される。切り替え回路BT04は、この端子A1及びA2のうち、いずれか一方を放電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を放電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子対BT01の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT04は、制御信号S1に設定された情報を用いて放電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路BT05は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S2に応じて、端子対BT02の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された充電電池セル群に設定する。
端子対BT02は、対を成す端子B1及びB2により構成される。切り替え回路BT05は、この端子B1及びB2のうち、いずれか一方を充電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を充電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子対BT02の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT05は、制御信号S2に設定された情報を用いて充電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例を示す回路図を図29及び図30に示す。
図29では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10と、バスBT11及びBT12とを有する。バスBT11は、端子A1と接続されている。また、バスBT12は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バスBT11及びBT12と接続されている。また、複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタBT10のうち、最上流に位置するトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT10のうち、最下流に位置するトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10のゲートに与える制御信号S1に応じて、バスBT11に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つと、バスBT12に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つとをそれぞれ導通状態にすることにより、放電電池セル群と端子対BT01とを接続する。これにより、放電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか一方と接続される。また、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか他方、すなわち正極端子と接続されていない方の端子に接続される。
トランジスタBT10には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、放電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、放電電池セル群の出力電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタBT10が接続された電池セルBT09と端子対BT01とを絶縁状態とすることができる。
また、図29では、切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13と、電流制御スイッチBT14と、バスBT15と、バスBT16とを有する。バスBT15及びBT16は、複数のトランジスタBT13と、電流制御スイッチBT14との間に配置される。複数のトランジスタBT13のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バスBT15及びBT16と接続されている。また、複数のトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタBT13のうち、最上流に位置するトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT13のうち、最下流に位置するトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
トランジスタBT13には、トランジスタBT10と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、充電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、充電電池セル群を充電するための電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタBT13が接続された電池セルBT09と端子対BT02とを絶縁状態とすることができる。
電流制御スイッチBT14は、スイッチ対BT17とスイッチ対BT18とを有する。スイッチ対BT17の一端は、端子B1に接続されている。また、スイッチ対BT17の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバスBT15に接続され、他方のスイッチはバスBT16に接続されている。スイッチ対BT18の一端は、端子B2に接続されている。また、スイッチ対BT18の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバスBT15に接続され、他方のスイッチはバスBT16に接続されている。
スイッチ対BT17及びスイッチ対BT18が有するスイッチは、トランジスタBT10及びトランジスタBT13と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じて、トランジスタBT13、及び電流制御スイッチBT14のオン/オフ状態の組み合わせを制御することにより、充電電池セル群と端子対BT02とを接続する。
切り替え回路BT05は、一例として、以下のようにして充電電池セル群と端子対BT02とを接続する。
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT10のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されているトランジスタBT13を導通状態にする。また、切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT10のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子に接続されているトランジスタBT13を導通状態にする。
端子対BT02に印加される電圧の極性は、端子対BT01と接続される放電電池セル群、及び変圧回路BT07の構成によって変わり得る。また、充電電池セル郡を充電する方向に電流を流すためには、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士を接続する必要がある。そこで、電流制御スイッチBT14は、制御信号S2により、端子対BT02に印加される電圧の極性に応じてスイッチ対BT17及びスイッチ対BT18の接続先をそれぞれ切り替えるように制御される。
一例として、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対BT02に印加されている状態を挙げて説明する。この時、電池部BT08の最下流の電池セルBT09が充電電池セル群である場合、スイッチ対BT17は、制御信号S2により、当該電池セルBT09の正極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対BT17のバスBT16に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対BT17のバスBT15に接続されるスイッチがオフ状態となる。一方、スイッチ対BT18は、制御信号S2により、当該電池セルBT09の負極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対BT18のバスBT15に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対BT18のバスBT16に接続されるスイッチがオフ状態となる。このようにして、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対BT02から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
また、電流制御スイッチBT14は、切り替え回路BT05ではなく、切り替え回路BT04に含まれていてもよい。この場合、電流制御スイッチBT14、制御信号S1に応じて、端子対BT01に印加される電圧の極性を制御することにより、端子対BT02に印加される電圧の極性を制御する。そして、電流制御スイッチBT14は、端子対BT02から充電電池セル群に流れる電流の向きを制御する。
図30は、図29とは異なる、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例を示す回路図である。
図30では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタ対BT21と、バスBT24及びバスBT25とを有する。バスBT24は、端子A1と接続されている。また、バスBT25は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ対BT21の一端は、それぞれトランジスタBT22とトランジスタBT23とにより分岐している。トランジスタBT22のソース又はドレインの一方は、バスBT24と接続されている。また、トランジスタBT23のソース又はドレインの一方は、バスBT25と接続されている。また、複数のトランジスタ対の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対BT21のうち、最上流に位置するトランジスタ対BT21の他端は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT21のうち、最下流に位置するトランジスタ対BT21の他端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT04は、制御信号S1に応じてトランジスタBT22及びトランジスタBT23の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT21の接続先を、端子A1又は端子A2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタBT22が導通状態であれば、トランジスタBT23は非導通状態となり、その接続先は端子A1になる。一方、トランジスタBT23が導通状態であれば、トランジスタBT22は非導通状態となり、その接続先は端子A2になる。トランジスタBT22及びトランジスタBT23のどちらが導通状態になるかは、制御信号S1によって決定される。
端子対BT01と放電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT21が用いられる。詳細には、制御信号S1に基づいて、2つのトランジスタ対BT21の接続先がそれぞれ決定されることにより、放電電池セル群と端子対BT01とが接続される。2つのトランジスタ対BT21のそれぞれの接続先は、一方が端子A1となり、他方が端子A2となるように、制御信号S1によって制御される。
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタ対BT31と、バスBT34及びバスBT35とを有する。バスBT34は、端子B1と接続されている。また、バスBT35は、端子B2と接続されている。複数のトランジスタ対BT31の一端は、それぞれトランジスタBT32とトランジスタBT33とにより分岐している。トランジスタBT32により分岐する一端は、バスBT34と接続されている。また、トランジスタBT33により分岐する一端は、バスBT35と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT31の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対BT31のうち、最上流に位置するトランジスタ対BT31の他端は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT31のうち、最下流に位置するトランジスタ対BT31の他端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じてトランジスタBT32及びトランジスタBT33の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT31の接続先を、端子B1又は端子B2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタBT32が導通状態であれば、トランジスタBT33は非導通状態となり、その接続先は端子B1になる。逆に、トランジスタBT33が導通状態であれば、トランジスタBT32は非導通状態となり、その接続先は端子B2になる。トランジスタBT32及びトランジスタBT33のどちらが導通状態となるかは、制御信号S2によって決定される。
端子対BT02と充電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT31が用いられる。詳細には、制御信号S2に基づいて、2つのトランジスタ対BT31の接続先がそれぞれ決定されることにより、充電電池セル群と端子対BT02とが接続される。2つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、一方が端子B1となり、他方が端子B2となるように、制御信号S2によって制御される。
また、2つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、端子対BT02に印加される電圧の極性によって決定される。具体的には、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対BT02に印加されている場合、上流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT32が導通状態となり、トランジスタBT33が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT33が導通状態、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。また、端子B1が負極、端子B2が正極となるような電圧が端子対BT02に印加されている場合は、上流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT33が導通状態となり、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT32が導通状態、トランジスタBT33が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。このようにして、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対BT02から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
変圧制御回路BT06は、変圧回路BT07の動作を制御する。変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、変圧回路BT07の動作を制御する変圧信号S3を生成し、変圧回路BT07へ出力する。
なお、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数よりも多い場合は、充電電池セル群に対して過剰に大きな充電電圧が印加されることを防止する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池セル群を充電できる範囲で放電電圧(Vdis)を降圧させるように変圧回路BT07を制御する変圧信号S3を出力する。
また、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数以下である場合は、充電電池セル群を充電するために必要な充電電圧を確保する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池セル群に過剰な充電電圧が印加されない範囲で放電電圧(Vdis)を昇圧させるように変圧回路BT07を制御する変圧信号S3を出力する。
なお、過剰な充電電圧とする電圧値は、電池部BT08で使用される電池セルBT09の製品仕様等に鑑みて決定することができる。また、変圧回路BT07により昇圧及び降圧された電圧は、充電電圧(Vcha)として端子対BT02に印加される。
ここで、本実施形態における変圧制御回路BT06の動作例を、図31(A)乃至(C)を用いて説明する。図31(A)乃至(C)は、図28(A)乃至(C)で説明した放電電池セル群及び充電電池セル群に対応させた、変圧制御回路BT06の動作例を説明するための概念図である。なお図31(A)乃至(C)は、電池制御ユニットBT41を図示している。電池制御ユニットBT41は、上述したように、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される。
図31(A)に示される例では、図28(A)で説明したように、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、図28(A)を用いて説明したように、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定し、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。そして、変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電地セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に基づいて、放電電圧(Vdis)の昇降圧比Nを算出する。
なお放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数よりも多い場合に、放電電圧を変圧せずに端子対BT02にそのまま印加すると、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09に、端子対BT02を介して過剰な電圧が印加される可能性がある。そのため、図31(A)に示されるような場合では、端子対BT02に印加される充電電圧(Vcha)を、放電電圧よりも降圧させる必要がある。さらに、充電電池セル群を充電するためには、充電電圧は、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の合計電圧より大きい必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電地セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比よりも、昇降圧比Nを大きく設定する。
変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電地セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に対して、昇降圧比Nを1乃至10%程度大きくするのが好ましい。この時、充電電圧は充電電池セル群の電圧よりも大きくなるが、実際には充電電圧は充電電池セル群の電圧と等しくなる。ただし、変圧制御回路BT06は昇降圧比Nに従い充電電池セル群の電圧を充電電圧と等しくするために、充電電池セル群を充電する電流を流すこととなる。この電流は変圧制御回路BT06に設定された値となる。
図31(A)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が3個で、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の数が1個であるため、変圧制御回路BT06は、1/3より少し大きい値を昇降圧比Nとして算出する。そして、変圧制御回路BT06は、放電電圧を当該昇降圧比Nに応じて降圧し、充電電圧に変換する変圧信号S3を変圧回路BT07に出力する。そして、変圧回路BT07は、変圧信号S3に応じて変圧された充電電圧を、端子対BT02に印加する。そして、端子対BT02に印加される充電電圧によって、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09が充電される。
また、図31(B)や図31(C)に示される例でも、図31(A)と同様に、昇降圧比Nが算出される。図31(B)や図31(C)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数以下であるため、昇降圧比Nは1以上となる。よって、この場合は、変圧制御回路BT06は、放電電圧を昇圧して受電電圧に変換する変圧信号S3を出力する。
変圧回路BT07は、変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を充電電圧に変換する。そして、変圧回路BT07は、変換された充電電圧を端子対BT02に印加する。ここで、変圧回路BT07は、端子対BT01と端子対BT02との間を電気的に絶縁している。これにより、変圧回路BT07は、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧と、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧との差異による短絡を防止する。さらに、変圧回路BT07は、上述したように、変圧信号S3に基づいて放電電池セル群の合計電圧である放電電圧を充電電圧に変換する。
また、変圧回路BT07は、例えば絶縁型DC(Direct Current)−DCコンバータ等を用いることができる。この場合、変圧制御回路BT06は、絶縁型DC−DCコンバータのオン/オフ比(デューティー比)を制御する信号を変圧信号S3として出力することにより、変圧回路BT07で変換される充電電圧を制御する。
なお、絶縁型DC−DCコンバータには、フライバック方式、フォワード方式、RCC(Ringing Choke Converter)方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、及びフルブリッジ方式等が存在するが、目的とする出力電圧の大きさに応じて適切な方式が選択される。
絶縁型DC−DCコンバータを用いた変圧回路BT07の構成を図32に示す。絶縁型DC−DCコンバータBT51は、スイッチ部BT52とトランス部BT53とを有する。スイッチ部BT52は、絶縁型DC−DCコンバータの動作のオン/オフを切り替えるスイッチであり、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)やバイポーラ型トランジスタ等を用いて実現される。また、スイッチ部BT52は、変圧制御回路BT06から出力される、オン/オフ比を制御する変圧信号S3に基づいて、絶縁型DC−DCコンバータBT51のオン状態とオフ状態を周期的に切り替える。なお、スイッチ部BT52は、使用される絶縁型DC−DCコンバータの方式によって様々な構成を取り得る。トランス部BT53は、端子対BT01から印加される放電電圧を充電電圧に変換する。詳細には、トランス部BT53は、スイッチ部BT52のオン/オフ状態と連動して動作し、そのオン/オフ比に応じて放電電圧を充電電圧に変換する。この充電電圧は、スイッチ部BT52のスイッチング周期において、オン状態となる時間が長いほど大きくなる。一方、充電電圧は、スイッチ部BT52のスイッチング周期において、オン状態となる時間が短いほど小さくなる。なお、絶縁型DC−DCコンバータを用いる場合、トランス部BT53の内部で、端子対BT01と端子対BT02は互いに絶縁することができる。
本実施形態における蓄電装置BT00の処理の流れを、図33を用いて説明する。図33は、蓄電装置BT00の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、蓄電装置BT00は、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧を取得する(ステップS101)。そして、蓄電装置BT00は、複数の電池セルBT09の電圧を揃える動作の開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS102)。この開始条件は、例えば、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧の最大値と最小値との差分が、所定の閾値以上か否か等とすることができる。この開始条件を満たさない場合は(ステップS102:NO)、各電池セルBT09の電圧のバランスが取れている状態であるため、蓄電装置BT00は、以降の処理を実行しない。一方、開始条件を満たす場合は(ステップS102:YES)、蓄電装置BT00は、各電池セルBT09の電圧を揃える処理を実行する。この処理において、蓄電装置BT00は、測定されたセル毎の電圧に基づいて、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判定する(ステップS103)。そして、蓄電装置BT00は、判定結果に基づいて、放電電池セル群及び充電電池セル群を決定する(ステップS104)。さらに、蓄電装置BT00は、決定された放電電池セル群を端子対BT01の接続先に設定する制御信号S1、及び決定された充電電池セル群を端子対BT02の接続先に設定する制御信号S2を生成する(ステップS105)。蓄電装置BT00は、生成された制御信号S1及び制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05へそれぞれ出力する。そして、切り替え回路BT04により、端子対BT01と放電電池セル群とが接続され、切り替え回路BT05により、端子対BT02と放電電池セル群とが接続される(ステップS106)。また、蓄電装置BT00は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、変圧信号S3を生成する(ステップS107)。そして、蓄電装置BT00は、変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を充電電圧に変換し、端子対BT02に印加する(ステップS108)。これにより、放電電池セル群の電荷が充電電池セル群へ移動される。
また、図33のフローチャートでは、複数のステップが順番に記載されているが、各ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。
以上、本実施形態によれば、放電電池セル群から充電電池セル群へ電荷を移動させる際、キャパシタ方式のように、放電電池セル群からの電荷を一旦蓄積し、その後充電電池セル群へ放出させるような構成を必要としない。これにより、単位時間あたりの電荷移動効率を向上させることができる。また、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05により、放電電池セル群及び充電電池セル群が各々個別に切り替えられる。
さらに、変圧回路BT07により、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と充電電池セル群に含まれる電池セルBT09群の個数とに基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧が充電電圧に変換され、端子対BT02に印加される。これにより、放電側及び充電側の電池セルBT09がどのように選択されても、問題なく電荷の移動を実現できる。
さらに、トランジスタBT10及びトランジスタBT13にOSトランジスタを用いることにより、充電電池セル群及び放電電池セル群に属しない電池セルBT09から漏洩する電荷量を減らすことができる。これにより、充電及び放電に寄与しない電池セルBT09の容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは、Siトランジスタに比べて熱に対する特性の変動が小さい。これにより、電池セルBT09の温度が上昇しても、制御信号S1、S2に応じた導通状態と非導通状態の切り替えといった、正常な動作をさせることができる。
本実施例では、Liイオンと、グラフェン、または酸化グラフェンとの距離を近接させつつその距離を変動させたときのエネルギー変化を計算により調べた。
エネルギーの計算のためのシミュレーション手法として、平面波基底擬ポテンシャル法に基づく第一原理計算ソフトCASTEPを用いた。
まず、図41(A)に模式的に示すように、炭素原子225を32個有するグラフェンシート220を周期条件の最小単位とし、Liイオン222とグラフェンシートの距離をrとし、rを変えた時のエネルギー変化を調べた。図41(B)はrを0オングストローム乃至10オングストローム(0nm乃至1nm)の範囲で変化させたときのエネルギー変化である。図41(B)の横軸はグラフェンシート220とLiイオン222との距離(オングストローム)、縦軸はエネルギー(eV)を示す。
グラフェンに誘起される分極により弱い引力が働き、rが2オングストローム(0.2nm)でエネルギーが最低となった。さらに距離を近づけるとエネルギーが上昇し、rが0の場合は7eVとなった。しかし、電池の電圧は5V程度であり、7eVのエネルギー障壁を超えるほどにはエネルギーが足りていないことが分かった。グラフェンを透過することは難しいことが示唆された。
つぎに、酸化グラフェンを還元してグラフェンへ変化させたときに、一部に酸化グラフェンが残存している状態を想定し、前述の、周期条件の最小単位である、図42(A)に示すように、炭素原子を32個有するグラフェンシート220の炭素原子225を1個無くし、さらにその周囲の炭素原子225を酸素原子226で合計3個置き換えた、酸化グラフェンシート224を用い、同様に酸化グラフェンシート224とLiイオンの距離rを変えた時のエネルギー変化を調べた。図42(B)はrを0オングストローム乃至4オングストローム(0nm乃至0.4nm)の範囲で変化させたときのエネルギー変化である。炭素原子から置換した酸素がマイナスに帯電することでLiイオンとの間にクーロン引力が働き、エネルギー障壁がグラフェンに誘起される分極により弱い引力が働くことが確認できた。rが1.5オングストローム(0.15nm)でエネルギーが最低となった。さらに図42(B)から分かるように、どのrでもエネルギー障壁が0eV以下であり、エネルギー障壁が無いことが分かった。したがって、Liイオンを透過する傾向があることが示唆された。
本実施例では、実施の形態1に示した方法を用いて、炭素を有する層で被覆したリチウムマンガン複合酸化物を作製し、さらにサイクル特性を測定した。
(リチウムマンガン複合酸化物の合成)
出発材料としてLiCOとMnCOとNiOを用い、LiCO:MnCO:NiO=0.84:0.8062:0.318(モル比)となるようにそれぞれを秤量した。次に、これらの粉末にアセトンを加えた後、ボールミルで混合して混合粉末を調製した。
次いで、アセトンを揮発させるための加熱を行い、混合原料を得た。
次いで、坩堝に混合原料を入れ、新規材料を合成した。ここでは1000℃、10時間の条件で焼成を行った。焼成ガスに空気を用い、流量は10L/min.とした。
次いで、焼成した粒子を、粒子径に基づいて分級した。粒子の分級はスプレードライ装置を使用した。その結果、リチウムマンガン複合酸化物を得た。ここで得られた試料を、試料Xとする。
(炭素を有する層での被覆)
酸化グラフェン0.0303gと水1.05gを、混練機を用いて混練し、酸化グラフェンの水分散溶液を作製した。1回目の混練では水の量を全量の3分の1とし、2回目に更に3分の1を追加し、3回目に更に3分の1を追加した。混練の回転数は2000rpm、混練の時間は1回を5分とし、3回繰り返した。
次に、作製した水分散溶液に合成で得られたリチウムマンガン複合酸化物(試料X)を添加した。添加量は、酸化グラフェンの量が、試料Xに対して2重量パーセントとなるようにした。混合物に対して固練りを6回行った。固練りは混練機を使用し、回転数は2000rpmとし、1回の固練り時間は5分とした。
得られた混合物を、ベルジャーを用いて、温度50℃で減圧乾燥した後、アルミナ乳鉢で解砕し、酸化グラフェンが被覆されたリチウムマンガン複合酸化物を得た。
(酸化グラフェンの還元)
次に、リチウムマンガン複合酸化物の表面に被覆した酸化グラフェンを還元した。還元剤としてアスコルビン酸を用い、溶媒として濃度80体積%のエタノール水溶液を用いた。濃度80体積%のエタノール水溶液1Lに対して、アスコルビン酸13.5gと水酸化リチウム3.12gを入れて、還元のための溶液を作製した。得られた粉末を溶液に入れ、60℃で3時間処理して還元した。
次に、得られた溶液を吸引ろ過によりろ過を行った。ろ過には、粒子保持能1μmのろ紙を用いた。その後、遠心分離機を用いて純水で洗浄し、スプレードライ装置にて乾燥を行った。その後、170℃、減圧下で10時間、乾燥を行った。ここで得られた粉体を、試料Aとする。
(電極の作製)
試料Aを正極活物質に用いて電極を作製した。試料Aと、導電助剤であるアセチレンブラック(AB)と、樹脂としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを極性溶媒の一つであるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とを混合し、スラリーを得た。スラリーの配合は、重量比で試料A:PVdF:AB=90:5:5とした。次に、該スラリーを集電体上に塗布した後、乾燥させた。なお、集電体表面には、あらかじめアンダーコートを施した。
ここで得られた電極を、電極Aとする。また、比較用の電極として、試料Xを用いた電極を作製した。原料の混合や焼成温度、時間については、リチウムマンガン複合酸化物の合成方法として記載した条件を用いた。作製した電極を比較電極Cとする。
(サイクル特性の測定)
電極Aおよび比較電極Cを用いて、ハーフセルを作製した。ハーフセルの対極にはリチウムを用いた。また、電解液は電解質としてLiPFを用い、非プロトン性有機溶媒であるエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1の体積比で混合させた混合溶液を用いた。また、セパレータとしてはポリプロピレン(PP)を用いた。
サイクル特性を測定した結果を図34に示す。縦軸が正極活物質で規格化した容量(mAh/g)であり、横軸がサイクル回数である。充電条件は、定電流充電、終止電圧4.1V、放電条件は、定電流放電、であった。放電条件は、定電流放電、終止電圧2.0Vであった。また、充電と放電の電流密度は同じとした。図34からわかるように、電極Aを用いたセル容量の特性112(黒丸)は、比較電極Cを用いたセルの特性113(白丸)と比べて、優れたサイクル特性を示し、特性が改善した。
本実施例では、実施例2にて作製したリチウムマンガン複合酸化物の試料Xに対する酸化グラフェン(GO)の被覆量を変化させ、酸化グラフェンの被覆量とサイクル特性の関係を調べた。
試料Xに対する酸化グラフェンの質量比を、表1に示す割合で混合し、実施例2に示す方法で酸化グラフェンを試料Xに被覆し、さらに還元処理を行い、実施例2に示す、導電助剤とバインダを混合してスラリーを作製し、このスラリーを用いて電極を作製した。
本実施例では、酸化グラフェンによる被覆の効果を考察するため、リチウムマンガン複合酸化物を被覆した酸化グラフェンの膜厚を見積もった。ここではリチウムマンガン複合酸化物の粒子を単一粒径の球と仮定し、酸化グラフェンがリチウムマンガン複合酸化物を均一に被覆したと仮定して酸化グラフェンの膜厚を算出した。酸化グラフェンの密度はグラファイトと同じ2.2g/cmを用いた。
また、リチウムマンガン複合酸化物の粒径が大きくなるほど比表面積が小さくなる傾向になった。
表1には算出した膜厚を示した。たとえば、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの重量比が2重量パーセントの場合、リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が1.6m/gであれば6nmが算出した酸化グラフェンの膜厚になる。
酸化グラフェンの質量比を固定して、リチウムマンガン複合酸化物の比表面積で比較すると、比表面積が小さい方が酸化グラフェンの膜厚が厚くなった。
(サイクル特性の測定)
本実施例では電極Aを用いて、ハーフセルを作製した。ハーフセルの対極にはリチウムを用いた。また、電解液は電解質としてLiPFを用い、非プロトン性有機溶媒であるエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1の体積比で混合させた混合溶液を用いた。また、セパレータとしてはポリプロピレン(PP)を用いた。
サイクル特性を測定した結果を図35に示す。縦軸が正極活物質で規格化した容量(mAh/g)であり、横軸がサイクル回数である。充電条件は、定電流充電、終止電圧4.1V、放電条件は、定電流放電であった。放電条件は、定電流放電、終止電圧2.0Vであった。また、充電と放電の電流密度は同じとした。図35には、リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.1m/gの場合のサイクル特性を線151、153、155で示した。リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が、6重量パーセントの場合の特性を線151で、4重量パーセントの場合の特性を線153で、2重量パーセントの場合の特性を線153で、それぞれ示した。酸化グラフェン質量比が6重量パーセントである場合(線151)が、もっとも充電容量の低下が少なく、良好なサイクル特性となった。
また、リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が1.6m/gの場合は、酸化グラフェンの質量比が2重量パーセントとした場合がもっとも充電容量の劣化が少なく、良好なサイクル特性となった(線157)。
また、図35には比較のため、酸化グラフェンで被覆していないリチウムマンガン複合酸化物を電極に用いてハーフセルを作製し、サイクル特性を評価した結果を線159に示した。図35から分かるように、酸化グラフェンで被覆しないと、サイクル特性評価の初期の段階で充電容量が大幅に低減した。
このようにリチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの被覆の有無が、サイクル特性に影響し、酸化グラフェンの被膜を有することで、サイクル特性が向上することが分かった。
本実施例では、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの被覆状態を確認するため、リチウムマンガン複合酸化物の粒子およびその周辺の断面を、透過型電子顕微鏡で観察した。
測定条件として、試料をFIB法により薄片化し、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー製H−9000NAR)で観察した。加速電圧は200kVであった。
図36に観察結果を示した。図36は、リチウムマンガン複合酸化物に対して酸化グラフェンを6重量パーセントの割合で混合し、実施例1に示す電極の作製方法を利用して電極として作製したものを、FIB法で薄片化した試料の観察結果である。図36(A)は倍率27,500倍の明視野像、図36(B)は図36(A)の破線で囲んだ領域116をさらに拡大したもので、倍率550,000倍の明視野像、図36(C)は図2(B)の破線で囲んだ領域117を拡大したもので、倍率2,050,000倍の像である。
図36(B)、(C)から分かるように、リチウムマンガン複合酸化物に対して酸化グラフェンが被覆されていることが確認できた。
次に、リチウムマンガン複合酸化物に対して酸化グラフェンを2重量パーセントの割合で混合し、実施例1に示す電極の作製方法を利用して電極として作製したものを、FIB法で薄片化して、上述の透過型電子顕微鏡でリチウムマンガン複合酸化物とその周辺を観察した。図37は、その結果である。
図37(A)は倍率27,500倍の明視野像、図37(B)は図37(A)の破線で囲んだ領域118をさらに拡大したもので、倍率550,000倍の明視野像、図37(C)は図37(B)の破線で囲んだ領域119を拡大したもので、倍率2,050,000倍の像である。
図37(B)、(C)から分かるように、酸化グラフェンの濃度が低くなったことで膜厚が薄くなっても、リチウムマンガン複合酸化物に対して酸化グラフェンが被覆されていることが確認できた。
本実施例では、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの被覆状態を確認するため、X線光電子分光法により、粒子の表面分析を行った。
試料A、および被覆前の試料である試料Xの、X線光電子分光法によるNi2pスペクトル(線171、172、173)、Mn2pスペクトル(線174、175、176)、Li1sスペクトル(線177、178、179)、O1sスペクトル(線180、181、182)、および、C1sスペクトル(線183、184、185)、を図38に示す。図38(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の各グラフの横軸は測定電子の原子核に対する束縛エネルギーの値を示し、縦軸は光電子強度を示す。
図38(A)はNi2pのスペクトルであり、線171はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が1.6m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が6重量パーセントの場合の特性である。線172はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物を酸化グラフェンで被覆していない場合の特性である。線173はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が2重量パーセントの場合の特性である。Ni2pのスペクトルにつき、Ni2p1/2は束縛エネルギーが870eVから885eVまでの範囲で、中心が873eVと882eV付近に表れるスペクトルがピーク意を持つ。また、Ni2p3/2は束縛エネルギーが852eVから870eVまでの範囲で、中心が856eVと862eV付近に表れるスペクトルがピーク意を持つ。
図38(B)はMn2pのスペクトルであり、線174はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が1.6m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が6重量パーセントの場合の特性である。線175はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物を酸化グラフェンで被覆していない場合の特性である。線176はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が2重量パーセントの場合の特性である。Mn2pのスペクトルにつき、Mn2p1/2は束縛エネルギーが652eVから658eVまでの範囲で、中心が654eV付近に表れるスペクトルがピーク意を持つ。また、Mn2p3/2は束縛エネルギーが640eVから648eVまでの範囲で、中心が643eV付近に表れるスペクトルがピーク意を持つ。
図38(C)はLi1sのスペクトルであり、線177はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が1.6m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が6重量パーセントの場合の特性である。線178はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物を酸化グラフェンで被覆していない場合の特性である。線179はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が2重量パーセントの場合の特性である。Li1sのスペクトルにつき、束縛エネルギーが53eVから56eVまでの範囲で、中心が54eV付近に表れるスペクトルがピーク意を持つ。
図38(D)はO1sのスペクトルであり、線180はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が1.6m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が6重量パーセントの場合の特性である。線181はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物を酸化グラフェンで被覆していない場合の特性である。線182はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が2重量パーセントの場合の特性である。O1sのスペクトルにつき、束縛エネルギーが528eVから532eVまでの範囲で、中心が530eV付近に表れるスペクトルが金属と酸素尾結合に起因するピーク意を持つ。また、530eVkら533eVの範囲で532eVに表れるスペクトルが金属と水酸基、金属と炭酸基の結合に起因するピーク意を持つ。
図38(E)はC1sのスペクトルであり、線183はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が1.6m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が6重量パーセントの場合の特性である。線185はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物を酸化グラフェンで被覆していない場合の特性である。線184はリチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/g、リチウムマンガン複合酸化物に対する酸化グラフェンの質量比が2重量パーセントの場合の特性である。C1sのスペクトルにつき、束縛エネルギーが283eVから287eVまでの範囲で、中心が285eV付近に表れるスペクトルが炭素原子と炭素原子の間の単結合、炭素原子と炭素原子の間の二重結合、炭素と水素の結合に起因するピーク意を持つ。また、287eVkら289eVの範囲で中心が288eVに表れるスペクトルがカルボニル基、エステル基に起因するピーク意を持つ。また、288eVkら292eVの範囲で中心が290eVに表れるスペクトルが炭酸基に起因するピーク意を持つ。
図38によれば、リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が8.5m/gよりも1.6m2/gの方が、リチウムマンガン複合酸化物由来を示唆するNi、Mn、金属と酸素の結合のピークが低下していることが分かった。さらに、酸化グラフェンでリチウムマンガン複合酸化物を被覆することで、酸化グラフェン由来と示唆される炭素と炭素の単結合、炭素と炭素の二重結合、炭素と水素の単結合のピークが増大したことが分かった。
リチウムマンガン複合酸化物の粒径を大きくすることで比表面積を小さくし、酸化グラフェンの質量比を大きくすることで酸化グラフェンが被覆された領域が増加し、リチウムマンガン複合酸化物の成分であるMn,Niの溶出が抑制されていることを示唆する結果となった。本実施例に示す方法により、サイクル特性が向上した。
100a 蓄電池
100b 蓄電池
103 セパレータ
103a 領域
103b 領域
107 外装体
111 正極
111a 正極
115 負極
115a 負極
120 封止層
121 正極リード
125 負極リード
130 電極組立体
131 電極組立体
112 特性
113 特性
116 領域
117 領域
118 領域
119 領域
132 領域
133 領域
134 領域
135 膜
136 Liイオン
137 粒子
151 線
153 線
155 線
157 線
159 線
171 線
172 線
173 線
174 線
175 線
176 線
177 線
178 線
179 線
180 線
181 線
182 線
183 線
184 線
185 線
S11 ステップ
S12 ステップ
S13 ステップ
S14 ステップ
S15 ステップ
S16 ステップ
S17 ステップ
S18 ステップ
S19 ステップ
S101 ステップ
S102 ステップ
S103 ステップ
S104 ステップ
S105 ステップ
S106 ステップ
S107 ステップ
S108 ステップ
100 電極
101 集電体
102 活物質層
220 グラフェンシート
222 Liイオン
224 酸化グラフェンシート
225 炭素原子
226 酸素原子
300 蓄電池
301 正極缶
302 負極缶
303 ガスケット
304 正極
305 正極集電体
306 正極活物質層
307 負極
308 負極集電体
309 負極活物質層
310 セパレータ
500 蓄電池
501 正極集電体
502 正極活物質層
503 正極
504 負極集電体
505 負極活物質層
506 負極
507 セパレータ
508 電解液
509 外装体
510 正極リード電極
511 負極リード電極
512 溶接領域
513 湾曲部
514 封止部
600 蓄電池
601 正極キャップ
602 電池缶
603 正極端子
604 正極
605 セパレータ
606 負極
607 負極端子
608 絶縁板
609 絶縁板
611 PTC素子
612 安全弁機構
900 回路基板
910 ラベル
911 端子
912 回路
913 蓄電池
914 アンテナ
915 アンテナ
916 層
917 層
918 アンテナ
919 端子
920 表示装置
921 センサ
922 端子
951 端子
952 端子
981 フィルム
982 フィルム
990 蓄電池
991 外装体
992 外装体
993 捲回体
994 負極
995 正極
996 セパレータ
997 リード電極
998 リード電極
1700 曲面
1701 平面
1702 曲線
1703 曲率半径
1704 曲率中心
1800 曲率中心
1801 フィルム
1802 曲率半径
1803 フィルム
1804 曲率半径
7407 蓄電装置
7408 リード電極
7409 集電体
7100 携帯表示装置
7104 蓄電装置
7206 入出力端子
7300 表示装置
9632a 領域
9632b 領域
9634 充放電制御回路
8000 表示装置
8004 蓄電装置
8024 蓄電装置
8103 蓄電装置
8203 蓄電装置
8304 蓄電装置
A−1 層
A−2 層
B−1 層
B−2 層
A1 端子
A2 端子
B1 端子
B2 端子
S1 制御信号
S2 制御信号
S3 変圧信号
BT00 蓄電装置
BT01 端子対
BT02 端子対
BT03 切り替え制御回路
BT04 切り替え回路
BT05 切り替え回路
BT06 変圧制御回路
BT07 変圧回路
BT08 電池部
BT09 電池セル
BT10 トランジスタ
BT11 バス
BT12 バス
BT13 トランジスタ
BT14 電流制御スイッチ
BT15 バス
BT16 バス
BT17 スイッチ対
BT18 スイッチ対
BT21 トランジスタ対
BT22 トランジスタ
BT23 トランジスタ
BT24 バス
BT25 バス
BT31 トランジスタ対
BT32 トランジスタ
BT33 トランジスタ
BT34 バス
BT35 バス
BT41 電池制御ユニット
BT51 絶縁型DC−DCコンバータ
BT52 スイッチ部
BT53 トランス部

Claims (10)

  1. LiMnで表されるリチウムマンガン複合酸化物において、
    元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた元素であって、
    0≦a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たし、
    前記リチウムマンガン複合酸化物は、リチウムを透過する機能を有する膜で被覆されている前記リチウムマンガン複合酸化物。
  2. 請求項1において、
    前記リチウムを透過する機能を有する膜の厚さは1nm以上10nm以下であることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
  3. 請求項1または請求項2において、
    元素Mはリチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンであることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
    前記リチウムマンガン複合酸化物は、第1の領域と、前記第1の領域と結晶構造が異なる第2の領域と、を有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
    前記膜は、炭素を有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
    前記膜は、グラフェンを有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
    前記膜は、酸化グラフェンを有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
    前記膜は、負電荷を有する置換基を有することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
  9. 請求項1乃至請求項8に記載の粒子を有する正極に用いることを特徴とする二次電池。
  10. 請求項9に記載の二次電池と、
    半導体装置と、表示装置と、
    を有する電子機器。
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