本発明の実施の形態について、図面を用いて以下、詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書で説明する各図において、膜や層、基板などの厚さや領域の大きさ等の各構成要素の大きさは、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
なお、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるものであって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分または同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、本明細書等において、蓄電装置(電池セル)用の正極および負極の双方を併せて電極とよぶことがあるが、この場合、電極は正極および負極のうち少なくともいずれか一方を示すものとする。
ここで、充電レートおよび放電レートについて説明する。例えば、容量X[Ah]の二次電池を定電流充電する際に、充電レート1Cとは、ちょうど1時間で充電終了となる電流値I[A]のことであり、たとえば、充電レート0.2Cとは、I/5[A](すなわち、ちょうど5時間で充電終了となる電流値)のことである。同様に、放電レート1Cとは、ちょうど1時間で放電終了となる電流値I[A]のことであり、たとえば、放電レート0.2Cとは、I/5[A](すなわち、ちょうど5時間で放電終了となる電流値)のことである。
ここで、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入・脱離に関わる物質のみを指すが、本明細書等では、本来「活物質」である材料に加えて、導電助剤やバインダーなどを含めたものも、活物質層と呼ぶ。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置(電池セル)の構成の一例を説明する。
[電池セルの構成]
ここで、本発明の一態様である電池セルの一例について、図1を用いて説明する。図1に、電池セルの負極の断面図の一例を示す。図1に示す負極506は、負極集電体504と、負極集電体504に接する負極活物質層505と、負極活物質層505と接する被膜515と、負極集電体504を覆う被膜516と、を有する。
なお、本発明の一態様における「被膜」とは、電池セルの充電または放電を行うよりも以前に、あらかじめ人工的に設けられた膜とは明確に区別されるものであり、加熱により集電体の表面が酸化して生じる膜、または電解液と活物質層との間で起こる分解反応で生じる膜である。被膜は、不動態膜としての役割を有する場合がある。この被膜により、充電または放電でのリチウムイオン以外のイオンの分解反応を抑制できる場合があり、電池セルの容量低下を抑制できる可能性がある。なお、負極活物質層の表面に形成される被膜(被膜515)を負極活物質層の一部として捉えることもできるが、本明細書等では、理解を容易にするため、負極活物質層の表面に形成される被膜と負極活物質層を区別するものとして説明する。また、被膜は負極集電体の一部の表面にも形成される場合もある。
被膜は、加熱により集電体の表面が酸化されて形成されるものと電池反応により形成されるものがある。被膜515は主に電池反応により形成される。また、被膜516は加熱により集電体の表面が酸化されて形成される。なお、被膜515と被膜516とは、成分が異なる場合がある。被膜515は、負極活物質層505を構成する元素、または電解液を構成する元素を主として含む。また、被膜516は、負極集電体504を構成する金属元素の少なくとも一を含む酸化物を有する。
なお、被膜515と被膜516の境界付近は、被膜515の成分と被膜516の成分とが混在する領域を有する場合がある。また、被膜515と被膜516の境界から離れていても被膜515が被膜516を構成する成分を含むことがあり、また、被膜516が被膜515を構成する成分を含むことがある。
また、被膜516が形成された後に、負極集電体504、負極活物質層505および被膜516を電解液に浸す、または電池反応を行うことで被膜515が形成される。また、被膜516が電解液によって部分的に溶解してしまうことがあり、溶解した際に露出した負極集電体504と反応して被膜516が溶解した領域に導電体が形成されることがある。被膜516が溶解した領域に導電体が形成されると、導電体と電解液との間で起こる分解反応が生じてしまう。分解反応は不可逆な反応であることが多く、電池セルの容量の損失に繋がってしまう。このため、被膜516が電解液によって部分的に溶解してしまうことを抑制するために被膜516が溶解して負極集電体504が露出しない程度の膜厚であることが好ましく、たとえば、5nm以上50nm以下であることが好ましい。
なお、被膜516は電解液を注入する前に形成されるため、被膜516の形成によって電解液が分解されることがない。このため、被膜516を設けることで後に電解液を注入して起こる電解液の分解を抑制することができ、電池セルの容量の損失を低減することができる。
図2(A)に、図1に示す負極506を含む電池セルを示し、図2(B)に、図2(A)に示す電池セル500が有する正極503、負極506およびセパレータ507を拡大した図を示す。電池セル500は、正極503と、負極506と、正極503および負極506に挟まれたセパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内は、電解液508で満たされている。なお、正極503は、正極集電体501と、正極集電体501を挟んで向かい合う正極活物質層502aおよび正極活物質層502bと、を有しているがこれに限られず、正極活物質層502aまたは正極活物質層502bの一方を設けない構成としてもよい。また、負極506は、負極集電体504と、負極集電体504を挟んで向かい合う負極活物質層505_1および負極活物質層505_2と、を有しているがこれに限られず、負極活物質層505_1または負極活物質層505_2の一方を設けない構成としてもよい。また、被膜515_1および被膜515_2は、負極活物質層505_1および負極活物質層505_2と接している。また、被膜516は、負極集電体504を覆っている。なお、図2(B)に示す正極活物質層502aおよび正極活物質層502bは、負極活物質層505_1および負極活物質層505_2のように正極集電体501に接して活物質層が設けられているが、図面の簡略化のため層状で図示している。
ここで、電池セル500の動作について説明する。ここでは例として電池セル500がリチウムイオン電池である場合について述べる。また、ここでは例として正極活物質にLiFePO4を、負極活物質に黒鉛を、用いるリチウムイオン電池を示すが、本発明の一態様の蓄電池に用いる活物質は、これに限定されない。
図3(A)に、リチウムイオン二次電池を充電する場合における、電池セル500と、充電器1122との接続構成を示す。電池セル500がリチウムイオン二次電池である場合、充電時において正極では以下の数式(1)の反応が起こる。
また、充電時において負極では、以下の数式(2)の反応(図1中のLi+参照)が起こる。
ここで例えば電解液は、電池反応の電位において、電極表面で分解することがある。このような分解反応は不可逆な反応であることが多い。そのため、電池セルの容量の損失に繋がる場合がある。特に負極においては電池反応の電位が低く、電解液の還元分解が生じやすく、容量が低減しやすい。
ここで、負極の反応について更に詳しく述べる。数式(2)で表される反応を、第1の反応と呼ぶ。
一方、負極において、充電時に生じる数式(2)以外の反応が生じる場合がある。例えば、電解液が電極の表面で分解する可能性がある。また、例えば電解液の溶媒としてイオン液体を用いた場合、該イオン液体のカチオン等が活物質の層間に挿入する場合もある。これらの反応は、不可逆な反応である場合が多い。このように、数式(2)以外の反応のうち、不可逆な反応を第2の反応と呼ぶ。
第2の反応は不可逆な反応であるため、第2の反応が起こると充電と比較して放電の容量が小さくなってしまう。また、負極集電体と電解液の反応(第2の反応)により、負極集電体が溶出し、負極活物質層の表面に負極集電体の成分が析出することがある。よって、電池セルの容量を低下する要因となる。よって、第2の反応はできる限り起こらないことが好ましい。
上記第2の反応を抑制するために、本実施の形態では、図1のように負極集電体の表面を酸化させて負極集電体を覆う被膜を設ける構成とする。このようにすることで負極集電体が電解液と接する領域が小さくなり、第2の反応が起こるのを抑制しつつ、第1の反応が適切に起こるようにすることができる。
また、第2の反応により、負極表面に被膜が形成される場合がある。形成された被膜は不動態膜としての役割を有する場合がある。この不動態膜の存在により、充電または放電でのリチウムイオン以外のイオンの分解反応を抑制できる場合がある。よって、被膜は、電池セルの容量低下を抑制できる可能性がある。
次に、放電について説明する。図3(B)に、リチウムイオン二次電池を放電する場合における、電池セル500と、充電器1123との接続構成を示す。放電時において、正極では以下の数式(3)の反応が起こる。
また、放電時において負極では、以下の数式(4)の反応が起こる。
負極において、(4)の反応以外に、電解液の分解等の不可逆な反応が生じる場合を考える。その場合には、放電の容量と比較して、次の充放電サイクルにおける充電の容量が低下する場合がある。つまり不可逆な反応が生じ続けると、充放電サイクルに伴い、徐々に容量が低下する場合がある。
ここで、電解液の溶媒としてイオン液体を用いた場合に生じる第2の反応について、詳しく説明する。
イオン液体が有するカチオンやアニオンは電荷をもつため、例えば電極表面などで電気二重層を形成することができ、電気二重層キャパシタなどの蓄電装置に用いることができる。
一方、イオン液体が有するカチオンやアニオンは、電極表面で分解する場合がある。分解反応の多くは不可逆な反応であり、電池セルの容量の低下を招く可能性がある。
また、イオン液体が有するカチオンやアニオンは、例えば黒鉛などに代表される層間化合物において、層間へ挿入する場合や、挿入後に脱離する場合がある。
これらの不可逆な反応が、第2の反応の一例である。第2の反応は、数式(1)乃至数式(4)の反応と並行して生じると考えられる。第2の反応と比較して、電池動作の正常な反応、すなわち数式(1)乃至数式(4)の反応の方が起こりやすい環境をつくることは、電池セルの容量を高めるために好ましい。
本発明の一態様のように、図1のように負極集電体の表面を酸化させて負極集電体を覆う被膜を設ける構成とすることで負極集電体の表面が露出する領域を小さくし、電解液の分解を抑制することができる。また、負極集電体の溶出を抑制することができる。
次に、電池セル500の正極503および負極506の大きさの関係および位置の関係について説明する。電池セル500において、正極と負極の面積は概略同じであることが好ましい。例えば、セパレータを挟んで向かい合う正極と負極の面積は、概略同じであることが好ましい。例えば、セパレータを挟んで向かい合う正極活物質層の面積と負極活物質層の面積は概略同じであることが好ましい。
例えば、図2(B)において、正極503のセパレータ507側の面の面積と負極506のセパレータ507側の面の面積は概略同じであることが好ましい。正極503の負極506側の面の面積と負極506の正極503側の面の面積を概略同じとすることにより、負極が正極と重ならない領域を小さくする(あるいは理想的にはなくす)ことができ、電池セルの不可逆容量を減少することができるため好ましい。または、図2(B)において、正極活物質層502aのセパレータ507側の面の面積と負極活物質層505_1のセパレータ507側の面の面積は概略同じであることが好ましい。
また、図2(B)の一例に示すように、正極503の端部と負極506の端部は概略揃うことが好ましい。また、正極活物質層502aと負極活物質層505_1の端部は概略揃うことが好ましい。
ここで電解液の溶媒としてイオン液体を用いた場合を考える。イオン液体のカチオンおよびアニオンは電荷を持つため、有機溶媒などの分子と比較して電極表面、例えば活物質層や集電体の表面近傍に、より存在しやすいと考えられる。よって活物質層の表面や集電体の表面での分解反応も、より生じやすいと考えられる。また、キャリアイオン、例えばリチウムイオンの電池反応を阻害してしまう可能性も考えられる。よって、電解液の溶媒としてイオン液体を用いた場合には、電界の分布や、リチウム濃度の影響をより顕著に受けやすい可能性がある。
次に、電解液の溶媒として用いることのできるイオン液体の例を説明する。
電解液の溶媒として、例えば四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、または四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンを含むイオン液体を用いた場合、イミダゾリウムカチオン等の芳香族カチオンを含むイオン液体と比較して還元電位が低く、蓄電池の不可逆容量を小さくすることができる場合がある。しかしながら、該イオン液体の粘性が高いため、イオン(例えば、リチウムイオン)の伝導性が低い。また、該イオン液体をリチウムイオン電池に用いた場合、低温環境下(とくに0℃以下)において、該イオン液体(より、具体的には該イオン液体を有する電解質)の抵抗が高くなり、充放電速度を高めることが困難である。
電解液の溶媒として、イミダゾリウムカチオン等の芳香族カチオンを含むイオン液体を用いた場合、脂肪族化合物のカチオンを含むイオン液体と比較して粘度が低く、充放電速度を高めることができるため好ましい。一方、イミダゾリウムカチオン等の芳香族カチオンは、電池セルの構成材料である活物質や集電体などの表面で還元分解しやすい場合がある。その結果、不可逆容量が増大してしまうことがある。また、充放電サイクルに伴う容量の低下を招く場合がある。これらの現象は、イミダゾリウムカチオン等の芳香族カチオンの還元電位の高さに由来する可能性がある。また、例えばこれらの現象は、イミダゾリウムカチオンの構造に由来する可能性がある。したがって、イミダゾリウムカチオン等の芳香族カチオンにおいて、電池セルの構成材料である活物質や集電体などの表面での還元分解を抑制することが特に好ましい。
また、例えば四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンを含むイオン液体においても、比較的還元電位が低いものの、例えば高温での充放電サイクル下においては電池セルの構成材料である活物質や集電体などの表面での還元分解が生じる可能性がある。
本発明の一態様により、例えば電池セル500の活物質層や集電体などの表面で生じる電解液の分解反応を抑制し、電池セルの容量を高めることができる。
また、負極集電体504および正極集電体501の表面においても、電解液508との不可逆な反応が生じる場合がある。よって、正極集電体501や、負極集電体504は、電解液との反応が小さいことが好ましい。
正極集電体501および負極集電体504として、例えば、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、タンタル、マンガン等の金属、およびこれらの合金、焼結した炭素などを用いることができる。また、銅またはステンレス鋼を炭素、ニッケル、チタン等で被覆してもよい。また、シリコン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。
また、ステンレス等を用いることにより、電解液との反応をより小さくすることができる場合があるため好ましい。
また、正極集電体501および負極集電体504は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状、多孔質状および不織布を包括する様々な形態等の形状を適宜用いることができる。さらに、活物質層との密着性を上げるために正極集電体501および負極集電体504は表面に細かい凹凸を有していてもよい。また、正極集電体501および負極集電体504は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
また、正極503および負極506はそれぞれタブ領域を有してもよい。タブ領域は、電池セルの端子として機能するリード電極と接続してもよい。例えば、タブ領域の一部をリード電極と溶接してもよい。正極503に設けられるタブ領域は、正極集電体の少なくとも一部が露出していることが好ましい。また、負極506に設けられるタブ領域は、負極集電体の少なくとも一部が露出していることが好ましい。集電体の一部が露出することにより、リード電極と集電体との間の接触抵抗を小さくすることができる。
一方、集電体表面を露出させることにより、電解液508と集電体の反応が生じやすくなる場合がある。よって、集電体の表面が露出する領域の面積は、小さいこと、またはなくすことが好ましい。
正極活物質層は、正極活物質を有する。正極活物質としては、リチウムイオンが挿入および脱離が可能な材料を用いることができ、例えば、オリビン型構造、層状岩塩型構造、またはスピネル型構造、NASICON型結晶構造を有する材料等を用いることができる。正極活物質に用いることのできる材料については、後の実施の形態で詳細を説明する。
また、負極活物質層は、負極活物質を有する。負極活物質としては、例えば炭素系材料、合金系材料等を用いることができる。負極活物質に用いることのできる材料については、後の実施の形態で詳細を説明する。
また、正極活物質層および負極活物質層は、導電助剤を有してもよい。導電助剤としては例えば炭素材料、金属材料、および導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。導電助剤に用いることのできる材料については、後の実施の形態で詳細を説明する。
また、正極活物質層および負極活物質層は、バインダーを有してもよい。バインダーに用いることのできる材料については、後の実施の形態で詳細を説明する。
セパレータ507としては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
電解液508の溶媒は、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を有することが好ましい。イオン液体は一つまたは複数の種類を組み合わせて用いればよい。イオン液体を有する電解液508を用いることで、電池セルの内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、電池セルの破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。該有機カチオンとして、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンや、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンが挙げられる。また、該アニオンとして、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオン等が挙げられる。電解液508の溶媒として用いることのできるイオン液体については、実施の形態2で詳細を説明する。
また、電解液508の溶媒として、上述のイオン液体に非プロトン性有機溶媒を混合して用いてもよい。非プロトン性有機溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、またはこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert−ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)などの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1weight%以上5weight%以下とすればよい。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、例えばアルカリ金属塩であるLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、またはこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。また、電解質の濃度は、高い方が好ましく、例えば0.8mol/kg以上が好ましく、1.5mol/kg以上がさらに好ましい。
また、電池セルに用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
また、ポリマーを電解液で膨潤させたゲル電解質を用いてもよい。ゲル電解質(ポリマーゲル電解質)の例としては、担体としてホストポリマーを用い、上述の電解液を含有させたものが挙げられる。
ホストポリマーの例を以下に説明する。ホストポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVdFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVdF−HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
また、電解液と組み合わせて、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いてもよい。例えば、固体電解質を活物質層の表面に形成してもよい。また、固体電解質と電解液を組み合わせて用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる場合がある。
外装体509は、電解液と接する面、すなわち内側の面は電解液と顕著な反応を生じないことが好ましい。また、電池セル500の外部から電池セル内に水分が混入すると、電解液の成分等と水との反応が生じる場合がある。よって外装体509は、水分の透過性が低いことが好ましい。
[薄型蓄電池]
ここで、本発明の一態様を用いた電池セル500の一例について、図4を用いて説明する。図4(A)に、電池セル500の一例として、薄型の蓄電池の形態を示す。また、図5(A)に図4に示す一点鎖線A1−A2における断面を、また、図5(B)に図5に示す一点鎖線B1−B2における断面をそれぞれ示す。ここで電池セル500は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510および負極リード電極511を有する。
また、図4(B)に正極503の外観図を示す。ここで正極503は、正極集電体501および正極活物質層502を有する。また、正極503は、タブ領域281を有することが好ましい。タブ領域281の一部は、正極リード電極510と溶接されることが好ましい。タブ領域281は正極集電体501が露出する領域を有することが好ましく、正極集電体501が露出する領域に正極リード電極510を溶接することにより、接触抵抗をより低くすることができる。また、図4(B)ではタブ領域281の全域において正極集電体501が露出している例を示すが、タブ領域281は、その一部に正極活物質層502を有してもよい。
また、図4(C)に負極506の外観図を示す。
ここで負極506は、負極集電体504および負極活物質層505、図5に示す被膜515、被膜516を有する。被膜515は、先述した第2の反応により形成されるため、負極活物質層505を構成する元素、または電解液を構成する元素の少なくとも一を含む。なお、図面の簡略化のため負極活物質層および被膜515は層状で図示しているが実際には図1のような構造を有している。被膜516は、加熱により負極集電体504の表面が酸化されて形成されるため、負極集電体504を構成する金属元素のうち少なくとも一を含む酸化物を有する。また、負極506は、タブ領域282を有することが好ましい。タブ領域282の一部は、負極リード電極511と溶接されることが好ましい。タブ領域282は負極集電体504が露出する領域を有することが好ましく、負極集電体504が露出する領域に負極リード電極511を溶接することにより、接触抵抗をより低くすることができる。また、図4(C)ではタブ領域282の全域において負極集電体504が露出している例を示すが、タブ領域282は、その一部に負極活物質層505を有してもよい。
図4(A)に示す薄型の蓄電池は、可撓性の外装体を用いることで可撓性を有する構成とすることができる。可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装することができ、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
なお、図4(A)では正極と負極の端部が概略揃う例を示すが、正極の端部が負極の端部よりも、少なくとも一部が外側に位置していてもよい。
電池セル500は、正極リード電極510および負極リード電極511を有してもよい。正極リード電極510は、正極503に電気的に接続することが好ましい。例えば、正極503のタブ領域281に正極リード電極510を溶接すればよい。同様に、負極リード電極511は、負極506に電気的に接続することが好ましい。例えば、負極506のタブ領域282に負極リード電極511を溶接すればよい。正極リード電極510および負極リード電極511は外装体の外側に露出し、外部との電気的接触を得る端子として機能することが好ましい。
また、正極集電体501および負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割を兼ねることもできる。その場合は、リード電極を用いずに、正極集電体501および負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図4では正極リード電極510と負極リード電極511は、蓄電池の同じ辺に配置されているが、図6に示すように、正極リード電極510と負極リード電極511を蓄電池の異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の蓄電池は、リード電極を自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の蓄電装置(電池セル)を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電装置(電池セル)を用いた製品の生産性を高めることができる。
薄型の蓄電池において、外装体509として例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
上記構成において、二次電池の外装体509は、曲率半径10mm以上好ましくは曲率半径30mm以上の範囲で変形することができる。二次電池の外装体であるフィルムは、1枚または2枚で構成されており、積層構造の二次電池である場合、湾曲させた電池の断面構造は、外装体であるフィルムの2つの曲線で挟まれた構造となる。
また、図5に示す蓄電池では一例として、正極と負極を3組用いたが、勿論、用いる正極と負極の組は3組には限定されない。用いる電極の組は多くてもよいし、少なくてもよい。電極の組が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極の組が少ない場合には、より薄型化が可能となり、より可撓性に優れた蓄電池とすることができる。また、図5では向い合う正極活物質層と負極活物質層を5組としているが、勿論、向かい合う電極正極活物質層と負極活物質層の組は5組に限定されない。
[薄型蓄電池の作製方法]
次に、電池セル500が薄型の蓄電池である場合について、その作製方法の一例を説明する。
正極503、負極506およびセパレータ507を積層する。
まず、正極503の上にセパレータ507を配置する。その後、セパレータ507の上に負極506を配置する。正極と負極を2組以上用いる場合は、更に負極506の上にセパレータを配置した後、正極503を配置する。このようにセパレータを正極と負極の間に挟みながら正極と負極を交互に積層する。
あるいは、セパレータ507を袋状にしてもよい。まず、セパレータ507上に正極503を配置する。次いで、セパレータ507を図7(A)の破線で示した部分で折り、セパレータ507で正極503を挟む。なお、ここでは正極503をセパレータ507で挟む例について説明したが、負極506をセパレータ507で挟んでもよい。
ここで、正極503の外側のセパレータ507の外周部分を接合して、セパレータ507を袋状(またはエンベロープ状)とすることが好ましい。セパレータ507の外周部分の接合は、接着材などを用いて行ってもよいし、超音波溶接や、加熱による融着により行ってもよい。
本実施の形態では、セパレータ507としてポリプロピレンを用いて、セパレータ507の外周部分を加熱により接合する。図7(A)に接合部514を示す。このようにして、正極503をセパレータ507で覆うことができる。
次に、図7(B)に示すように負極506と、セパレータに覆われた正極503を交互に重ねる。また、封止層115を有する正極リード電極510および負極リード電極511を準備する。
次に、図8(A)に示すように、正極503のタブ領域281に、封止層115を有する正極リード電極510を接続する。図8(B)は接続部の拡大を示す。接合部512に圧力を加えながら超音波を照射して、正極503のタブ領域281および正極リード電極510を電気的に接続する(超音波溶接)。このとき、タブ領域281に湾曲部513を設けるとよい。
湾曲部513を設けることによって、電池セル500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができる。よって、電池セル500の信頼性を高めることができる。
次に、同様の方法を用いて負極506のタブ領域282に負極リード電極511を電気的に接続すればよい。
次に、外装体509上に、正極503、負極506およびセパレータ507を配置する。
次に、外装体509を、図8(C)の外装体509の中央付近に破線で示した部分で折り曲げる。
次に、図9に、外装体509の外周を熱圧着により接合した部位を、接合部118として示す。電解液508を入れるための導入口119以外の外装体509の外周部を、熱圧着により接合する。熱圧着の際、リード電極に設けられた封止層115も溶けてリード電極と外装体509との間を固定することができる。また、外装体509とリード電極との間の密着性を向上することができる。
そして、減圧雰囲気下、或いは不活性ガス雰囲気下で所望の量の電解液508を導入口119から外装体509の内側に入れる。そして、最後に、導入口119を熱圧着により接合する。このようにして、薄型の蓄電池である電池セル500を作製することができる。
次に、電池セル500を作製した後のエージングについて説明する。電池セル500を作製した後に、エージングを行うことが好ましい。エージング条件の一例について以下に説明する。まず初めに0.001C以上0.2C以下のレートで充電を行う。温度は例えば室温以上50℃以下とすればよい。このときに、電解液の分解が生じ、ガスが発生した場合には、そのガスがセル内にたまると、電解液が電極表面と接することができない領域が発生してしまう。つまり、電極の実効的な反応面積が減少し、実効的な電流密度が高くなることに相当する。
過度に電流密度が高くなると、電極の抵抗に応じて電圧降下が生じ、黒鉛へのリチウムの挿入が起こると同時に、黒鉛表面にリチウムが析出してしまう。このリチウムの析出は容量の低下を招く場合がある。例えば、リチウムが析出した後、表面に被膜等が成長してしまうと、表面に析出したリチウムが再溶出できなくなり、容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。また、析出したリチウムが物理的に崩落し、電極との導通を失った場合にも、やはり容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。よって、電極の電位が電圧降下によりリチウム電位まで到達する前に、ガスを抜くことが好ましい。
ガス抜きを行う場合には、例えば薄型の蓄電池の外装体の一部を切断し、開封すればよい。ガスにより外装体が膨張している場合には、再度、外装体の形を整えることが好ましい。また、再封止の前に必要に応じて電解液を足してもよい。
また、ガス抜きを行った後に、室温よりも高い温度、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下において、例えば1時間以上100時間以下の間、充電状態で保持してもよい。初めに行う充電の際に、表面で分解した電解液は被膜を形成する。よって、例えばガス抜き後に室温よりも高い温度で保持することにより、形成された被膜が緻密化する場合も考えられる。
また、例えば、繰り返し折り曲げを行う電子機器に搭載する蓄電池では、折り曲げに伴い外装体において徐々に劣化が生じる、または場合によっては亀裂が生じやすくなることもある。また、充放電に伴い活物質等の表面と電解液が接することにより電解液の分解反応が生じ、ガスなどが発生することがある。ガス発生により外装体が膨張すると、折り曲げに伴い、外装体が破壊しやすくなることがある。本発明の一態様を用いることにより、電解液の分解を抑制することができるため、例えば充放電に伴うガス発生などを抑えることができる場合がある。その結果、外装体の膨張や変形、および外装体の破損などを抑えることができるため、外装体への負荷が小さくなり、好ましい。
また、本発明の一態様の電極を用いることにより、電解液の分解が抑制されるため、過剰な被膜の成長も抑えることができる場合がある。被膜成長が厚くなる場合には、充放電サイクルに伴い電極の抵抗が増大する。このような抵抗の増大により、電極の電位が、リチウムが析出する電位に達しやすくなる。また、例えば、負極においては、折り曲げた時のストレスによりリチウムの析出が生じる可能性がある。本発明の一態様を用いることにより、折り曲げた時のストレスに対して丈夫であり、例えばリチウムの析出が生じる可能性を小さくすることができる場合がある。
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載されているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様として、リチウムイオン二次電池に適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な蓄電装置に適用してもよい。例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、電池、一次電池、二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム空気電池、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、固体電池、空気電池、一次電池、コンデンサ、リチウムイオンキャパシタなどに適用してもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である蓄電装置(電池セル)に用いられる非水溶媒について説明する。
本発明の一態様に係る蓄電装置(電池セル)に用いられる非水溶媒は、イオン液体を有することが好ましい。イオン液体は一つまたは複数の種類を組み合わせて用いればよい。該イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。
該有機カチオンとして、例えば芳香族カチオンや、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオン等を用いることが好ましい。
芳香族カチオンとしては、例えば5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンであることが好ましい。5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンとしてはベンゾイミダゾリウムカチオン、ベンゾオキサゾリウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン等がある。単環式化合物である5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンとしてはオキサゾリウムカチオン、チアゾリウムカチオン、イソオキサゾリウムカチオン、イソチアゾリウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン等がある。化合物の安定性、粘度およびイオン伝導度、並びに合成の簡易さから、単環式化合物である5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンであることが好ましく、特にイミダゾリウムカチオンは粘度の低下が期待できるため、より好ましい。
また、上記イオン液体におけるアニオンとして、例えば、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO3F−)、フルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン(BF4 −)、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン(PF6 −)またはパーフルオロアルキルリン酸アニオン等が挙げられる。そして、1価のアミドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)2N−(n=0以上3以下)、1価の環状のアミドアニオンとしては、(CF2SO2)2N−などがある。1価のメチドアニオンとしては、(CnF2n+1SO2)3C−(n=0以上3以下)、1価の環状のメチドアニオンとしては、(CF2SO2)2C−(CF3SO2)などがある。フルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(CmF2m+1SO3)−(m=0以上4以下)などがある。パーフルオロアルキルホウ酸アニオンとしては、{BFn(CmHkF2m+1−k)4−n}−(n=0以上3以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。パーフルオロアルキルリン酸アニオンとしては、{PFn(CmHkF2m+1−k)6−n}−(n=0以上5以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンを有するイオン液体として、例えば、一般式(G1)で表すことができる。
一般式(G1)中において、R1は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R2乃至R4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R5は、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される直鎖を表し、A−は、1価のイミドアニオン、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオンのいずれか一を表す。
また、R5に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコシキ基などが挙げられる。
なお、一般式(G1)で表されるイオン液体のカチオンの当該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のどちらであってもよい。例えば、エチル基、tert‐ブチル基である。また、一般式(G1)で表されるイオン液体のカチオンにおいて、R5は酸素−酸素結合(ペルオキシド)を持たないことが好ましい。酸素‐酸素間の単結合は非常に壊れやすく、反応性が高いために爆発性を有する可能性がある。このため、酸素−酸素結合を含むカチオンを有し、該カチオンを有するイオン液体は電池セルには適さない。
また、イオン液体は、6員環のヘテロ芳香環を含んでもよい。例えば、下記一般式(G2)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G2)中において、R6は、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される直鎖を表し、R7乃至R11は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、A−は、1価のイミドアニオン、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオンのいずれか一を表す。
また、R6に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコシキ基などが挙げられる。
また、四級アンモニウムカチオンを有するイオン液体として、例えば、下記一般式(G3)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G3)中、R12〜R17は、それぞれ独立に、炭素数が1〜20のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表し、A−は、1価のイミドアニオン、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオンのいずれか一を表す。
また、イオン液体として、例えば、四級アンモニウムカチオンおよび1価のアニオンから構成され、下記一般式(G4)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G4)中、R18〜R24は、それぞれ独立に、炭素数が1〜20のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表し、A−は、1価のイミドアニオン、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオンのいずれか一を表す。
また、イオン液体として、例えば、四級アンモニウムカチオンおよび1価のアニオンから構成され、下記一般式(G5)で表されるイオン液体を用いることができる。
一般式(G5)中、nおよびmは1以上3以下である。αは0以上6以下とし、nが1の場合αは0以上4以下であり、nが2の場合αは0以上5以下であり、nが3の場合αは0以上6以下である。βは0以上6以下とし、mが1の場合βは0以上4以下であり、mが2の場合βは0以上5以下であり、mが3の場合βは0以上6以下である。なお、αまたはβが0であるとは、無置換であることを表す。また、αとβが共に0である場合は除くものとする。XまたはYは、置換基として炭素数が1〜4の直鎖状若しくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1〜4の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、または炭素数が1〜4の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。また、A−は、1価のイミドアニオン、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、パーフルオロアルキルホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、またはパーフルオロアルキルリン酸アニオンのいずれか一を表す。
四級スピロアンモニウムカチオンにおいて、スピロ環を構成する二つの脂肪族環は5員環、6員環または7員環のいずれかである。
たとえば、上記一般式(G1)のカチオンの具体例として、例えば構造式(111)乃至構造式(174)が挙げられる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に用いることのできる正極および負極の具体的な構成と作製方法を説明する。
負極集電体504および正極集電体501としては、実施の形態1で示した負極集電体504および正極集電体501に記載の材料を用いることができる。
負極活物質としては、例えば炭素系材料、合金系材料等を用いることができる。炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
負極活物質には、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な合金系材料または酸化物も用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、合金系材料としては、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、及びIn等のうち少なくとも一つを含む材料が挙げられる。このような元素は炭素に対して容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。このような元素を用いた合金系材料としては、例えば、Mg2Si、Mg2Ge、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等が挙げられる。
また、負極活物質として、SiO、SnO、SnO2、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi(3−x)MxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示すため好ましい。負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができて好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物を用いることができる。
負極活物質は、反応電位が低いほど、電池セルの電圧を高めることができるため好ましい。一方、電位が低い場合には、電解液を還元する力も強まるため、例えば電解液に用いる有機溶媒等は還元分解される恐れがある。電解液が電気分解されない電位の幅を電位窓(potential window)という。本来、負極は、その電極電位が電解液の電位窓内にある必要があるが、例えばリチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタの負極に用いる活物質の多くは、その電位はほぼ全ての電解液の電位窓を越えている。特に黒鉛や、シリコンなどの反応電位が低い材料では、蓄電池の電圧を高くできる利点がある一方で、電解液の還元分解がよりしやすい問題がある。
正極活物質としては、リチウムイオンが挿入および脱離が可能な材料を用いることができ、例えば、オリビン型構造、層状岩塩型構造、またはスピネル型構造、NASICON型結晶構造を有する材料等を用いることができる。
例えば、正極活物質として、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を材料として用いることができる。
または、リチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム金属リン酸化合物が挙げられる。
または、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有複合ケイ酸塩を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウムシリケート化合物が挙げられる。
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるNASICON型化合物を用いることができる。NASICON型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等が挙げられる。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物、NaF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有する材料、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物およびリチウム含有複合リン酸塩およびリチウム含有複合ケイ酸塩において、リチウムを、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)などのキャリアで置換した化合物を用いてもよい。
正極活物質の平均粒径は、例えば5nm以上50μm以下が好ましい。
また、例えば正極活物質としてオリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩を用いた場合には、リチウムの拡散経路が一次元であるため、リチウム拡散が遅い。よって、オリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩を用いた場合、充放電の速度を高めるためには正極活物質の平均粒径は、例えば好ましくは5nm以上、1μm以下とするとよい。または、正極活物質の比表面積は、例えば好ましくは10m2/g以上50m2/g以下とするとよい。
オリビン構造を有する正極活物質では、例えば層状岩塩型の結晶構造を有する活物質などと比較して充放電に伴う構造変化がきわめて少なく、結晶構造が安定であるため、過充電などの動作に対しても安定であり、正極活物質として用いた場合に安全性の高い電池セルを実現することができる。
また、負極活物質層505および正極活物質層502は、導電助剤を有してもよい。導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)またはグラフェンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
薄片状のグラフェンは、高い導電性を有するという優れた電気特性、および柔軟性並びに機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、または2層以上100層以下の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上11atomic%以下、好ましくは3atomic%以上10atomic%以下である。
また、負極活物質層505および正極活物質層502は、バインダーを有することが好ましい。
バインダーとしては、例えば水溶性の高分子を含むことが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉、などを用いることができる。
また、バインダーとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。これらのゴム材料は、前述の水溶性高分子と併用して用いると、さらに好ましい。
または、バインダーとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、等の材料を用いることが好ましい。
バインダーは上記のうち二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
次に、負極506および正極503の作製方法について説明する。
[負極の作製方法]
まず、負極506の作製方法について説明する。
まず、負極活物質層505を形成するためのスラリーを作製する。スラリーは、例えば上述した負極活物質を用い、バインダーや導電助剤等を添加して、溶媒とともに混練することで作製することができる。また溶媒としては、例えば、水や、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)などを用いることができる。安全性とコストの観点から、水を用いることは好ましい。
混練は、混練機を用いて行えばよい。ここで、混練機として様々な混練機を用いることができる。例えば、遊星型混練機や、ホモジナイザ―などを用いればよい。
負極集電体504には、表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等が挙げられる。表面処理を行うことにより、負極集電体504の、スラリーに対するぬれ性を高めることができる。また、負極集電体504と、負極活物質層505との密着性を高めることができる。
ここでアンダーコートとは、集電体上にスラリーを塗布する前に、活物質層と集電体との界面抵抗を低減する目的や、活物質層と集電体との密着性を高める目的で集電体上に形成する膜を指す。なお、アンダーコートは、必ずしも膜状である必要はなく、島状に形成されていてもよい。また、アンダーコートが活物質として容量を発現しても構わない。アンダーコートとしては、例えば炭素材料を用いることができる。炭素材料としては例えば、黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
次に、作製したスラリーを負極集電体504上に塗布する。
塗布には、ブレード法などを用いればよい。また、塗布には連続塗工機などを用いてもよい。
ここで、正極503および負極506は、積層される複数の正極同士または複数の負極同士を電気的に接続するために、タブ領域を有することが好ましい。また、タブ領域にはリード電極を電気的に接続することが好ましい。タブ領域の少なくとも一部は、集電体が露出することが好ましい。
タブ領域を設ける方法の一例を、図10に示す。図10(A)は帯状の正極集電体501に、正極活物質層502が形成された例を示す。点線に示すように正極503を切断することにより、図10(B)に示す正極503を作製することができる。このように正極503を作製することにより、タブ領域281の少なくとも一部において、正極集電体501の表面を露出させることができる。ここでは正極503の例を示すが、負極506のタブ領域282も同様に設けることができる。
あるいは、タブ領域281やタブ領域282を設けるために、塗布した正極活物質層502や負極活物質層505の一部を剥がし、集電体を露出させてもよい。
次に、負極集電体504上に塗布したスラリーを、通風乾燥または減圧(真空)乾燥等の方法で乾燥し、負極活物質層505を形成する。この乾燥は、例えば、30℃以上160℃以下の熱風を用いて行うとよい。なお、雰囲気は特に限定されない。
このようにして形成された負極活物質層505の厚さは、例えば好ましくは5μm以上300μm以下、より好ましくは10μm以上150μm以下であればよい。また、負極活物質層505の活物質担持量は、例えば好ましくは2mg/cm2以上50mg/cm2以下であればよい。
また、負極活物質層505は負極集電体504の片面に形成されている。これに限られず、負極活物質層505は負極集電体504の両面に形成されていてもよい。
この負極活物質層505を、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスして圧密化してもよい。
次に、加熱処理を行い、負極集電体504を覆う被膜516を形成する。この加熱処理は、酸素を含む雰囲気下(たとえば大気雰囲気下)、50℃以上200℃以下の温度で、2時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上行う。このような加熱処理を行うことで負極集電体504の表面が酸化されて被膜516を形成することができる。また、被膜516は電解液を注入する前に形成されるため、被膜516の形成によって電解液が分解されることがない。このため、該被膜516を設けることで電解液を注入して起こる電解液の分解を抑制することができ、電池セルの容量の損失を低減することができる。
以上のステップにより、負極506を作製することができる。
なお、負極活物質層505に、予め挿入(以下プレドープ)を行っても良い。負極活物質層505にプレドープを行う方法は特に限定されないが、例えば、電気化学的に行うことができる。例えば、電池組み立て前に、対極としてリチウム金属を用いて、後述の電解液中において、リチウムを負極活物質層505にプレドープすることができる。
[正極の作製方法]
次に、正極503の作製方法について説明する。正極503の作製方法については、負極506の作製方法を参照することができる。
まず、正極活物質層502を形成するためのスラリーを作製する。スラリーは、例えば上述した正極活物質を用い、バインダーや導電助剤等を添加して、溶媒とともに混練することで作製することができる。溶媒としては、負極活物質層505で説明した溶媒を用いることができる。
混練は、負極と同様に、混練機を用いて行えばよい。
正極集電体501には、負極と同様に、表面処理を行ってもよい。
次に、正極スラリーを集電体上に塗布する。
正極集電体501上に塗布したスラリーを、通風乾燥または減圧(真空)乾燥等の方法で乾燥し、正極活物質層502を形成する。この乾燥は、例えば、50℃以上160℃以下の熱風を用いて行うとよい。なお、雰囲気は特に限定されない。
なお、正極活物質層502は正極集電体501の両面に形成されていてもよいし、片面のみに形成されていてもよい。または、部分的に両面に正極活物質層502が形成されている領域を有しても構わない。
この正極活物質層502を、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスして圧密化してもよい。
このようにして形成された正極活物質層502の厚さは、例えば好ましくは5μm以上300μm以下、より好ましくは10μm以上150μm以下であればよい。また、正極活物質層502の活物質担持量は、例えば好ましくは2mg/cm2以上50mg/cm2以下であればよい。
以上のステップにより、正極503を作製することができる。
また、正極活物質層502は、グラフェンを有することが好ましい。グラフェンは、接触抵抗の低い面接触を可能とするものであり、また、薄くても導電性が非常に高く、少ない量でも効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。
例えば、正極活物質としてオリビン型構造のリチウム含有複合リン酸塩を用いた場合には、リチウムの拡散経路が一次元であるため、リチウム拡散が遅く、充放電の速度を高めるためには活物質の平均粒径は、例えば好ましくは5nm以上、1μm以下とするとよい。または、活物質の比表面積は、例えば好ましくは10m2/g以上50m2/g以下とするとよい。
このように平均粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このような場合には、導電性が非常に高く少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェンを用いることが、特に好ましい。
正極活物質層502がバインダーを有する場合には、先に記載したバインダーを用いればよい。ここで例えば、PVdFは酸化耐性が高く、特に正極の電池反応において、反応電位が高い場合でも安定である。また、例えば水溶性高分子は、分散性が高く、小さい活物質でも均一に分散し合うことができ、より少ない量でも機能を発揮することができる。また、水溶性高分子を含む膜が活物質表面を覆う、または膜が活物質表面に接することにより電解液の分解を抑えることができる。
なお、酸化グラフェンは、酸化グラフェン、正極活物質、導電助剤および結着剤の混合物の総重量に対して、0.1weight%以上10weight%以下、好ましくは0.1weight%以上5weight%以下、さらに好ましくは0.2weight%以上1weight%以下の割合で含まれていればよい。一方、正極ペーストを集電体に塗布し、還元した後のグラフェンは、正極活物質層の総重量に対して、0.05weight%以上5weight%以下、好ましくは0.05weight%以上2.5weight%以下、さらに好ましくは0.1weight%以上0.5weight%以下の割合で含まれていればよい。これは、酸化グラフェンの還元により、グラフェンの重量がほぼ半減するためである。
なお、混練後にさらに溶媒を添加して合物の粘度調整を行ってもよく、混練と極性溶媒の添加を複数回繰り返し行ってもよい。
この正極活物質層502を、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスして圧密化してもよい。
次に、正極活物質層502は、グラフェンを有する正極503の作製方法について説明する。
図11に、正極活物質層502の縦断面図を示す。正極活物質層502は、粒状の正極活物質522と、導電助剤としてのグラフェン521と、結着剤(バインダーともいう。図示せず)と、を含む。
正極活物質層502の縦断面においては、図11に示すように、正極活物質層502の内部において概略均一にシート状のグラフェン521が分散する。図11においてはグラフェン521を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層または多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン521は、複数の粒状の正極活物質522を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質522の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。また、グラフェン521どうしも互いに面接触することで、複数のグラフェン521により三次元的な電気伝導のネットワークを形成している。
これはグラフェン521の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元してグラフェンとするため、正極活物質層502に残留するグラフェン521は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで電気伝導の経路を形成している。
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の従来の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン521は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の正極活物質522とグラフェン521との電気伝導性を向上させるができる。よって、正極活物質522の正極活物質層502における比率を増加させることができる。これにより、蓄電池の放電容量を増加させることができる。
ここでは正極にグラフェンを用いる例について説明したが、負極にもグラフェンを用いてもよい。
次に、グラフェンを導電助剤に用いた正極の作製方法の一例を説明する。まず、活物質、バインダーおよび酸化グラフェンを用意する。
酸化グラフェンは、後に導電助剤として機能するグラフェン521の原材料である。酸化グラフェンは、Hummers法、Modified Hummers法、または黒鉛類の酸化等、種々の合成法を用いて作製することができる。なお、本発明に係る蓄電池用電極の製造方法は、酸化グラフェンの剥離の程度により制限されるものではない。
例えば、Hummers法は、鱗片状グラファイト等のグラファイトを酸化して、酸化グラファイトを形成する手法である。形成された酸化グラファイトは、グラファイトがところどころ酸化されることでカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が結合したものであり、グラファイトの結晶性が損なわれ、層間の距離が大きくなっている。このため超音波処理等により、容易に層間を分離して、酸化グラフェンを得ることができる。
また、酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう。)は一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下である。特にフレークサイズが粒状の正極活物質の平均粒径よりも小さい場合、複数の正極活物質522との面接触がしにくくなるとともに、グラフェン相互の接続が難しくなるため、正極活物質層502の電気伝導性を向上させることが困難となるためである。
上記のような酸化グラフェン、活物質および結着剤に溶媒を加えて正極ペーストを作製する。溶媒としては、水や、N−メチルピロリドン(NMP)やジメチルホルムアミド等の極性を有する有機溶媒を用いることができる。
このように、粒子状の活物質、グラフェンおよび結着剤を有する活物質層を用いると、シート状のグラフェンが粒子状の合金系材料を包み込むように二次元的に接触し、さらにグラフェンどうしも重なるように二次元的に接触するため、活物質層内において、巨大な三次元の電子伝導経路のネットワークが構築される。このような理由から、導電助剤として一般的に用いられる粒子状のアセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)を用いた場合に電気的に点接触となるのに対し、高い電子伝導性を有する活物質層を形成することができる。
また、グラフェンを用いることにより、例えば粒径の小さい活物質などを用いた場合においても、繰り返しの充放電を行った後でも導電パスを確保し続けることができ、良好なサイクル特性を得ることができるため好ましい。
また、グラフェン同士が結合することにより、網目状のグラフェン(以下グラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは粒子間を結合するバインダーとしても機能することができる。よって、結着剤の量を少なくすることができる、または使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、電池セルの容量を増加させることができる。
次に、酸化グラフェンの還元を行うことが好ましい。還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
還元剤を用いた還元方法の例を以下に説明する。まず還元剤を含む溶媒中で反応させる。このステップにおいて、活物質層に含まれる酸化グラフェンは還元され、グラフェン521が形成される。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は必ずしも全て脱離される必要はなく、一部の酸素は、グラフェンに残存してもよい。グラフェン521に酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上11atomic%以下、好ましくは3atomic%以上10atomic%以下である。この還元処理は、室温以上150℃以下の温度で行うことが好ましい。
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、LiAlH4、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンあるいはそれらの誘導体を用いることができる。
溶媒には、極性溶媒を用いることができる。還元剤を溶解することができるものであれば、材料は限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)およびジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種または二種以上の混合液を用いることができる。
その後、洗浄し、乾燥する。乾燥は、減圧(真空)下または還元雰囲気下にて行うとよい。この乾燥工程は、例えば、真空中で50℃以上160℃以下の温度で、10分以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、正極活物質層502に存在する極性溶媒や水分をよく蒸発、揮発あるいは除去させる。乾燥後に、プレスを行ってもよい。
あるいは、乾燥炉等を用いて乾燥を行ってもよい。乾燥炉を用いる場合は、例えば30℃以上200℃以下の温度で、30秒以上20分以下の乾燥を行えばよい。または、温度は段階的に上げてもよい。
なお、還元剤を用いた上記の還元反応は、加熱によって反応を促進することができる。また、化学還元後に乾燥させて、さらに加熱してもよい。
また、還元剤を用いる還元を行わない場合は、熱処理により還元を行えばよい。例えば、減圧(真空)下にて、150℃以上の温度で、0.5時間以上30時間以下で行うことができる。
以上のステップにより、正極活物質522にグラフェン521が均一に分散された正極活物質層502を作製することができ、正極503を作製することができる。
ここで、酸化グラフェンを用いた電極においては還元を行うことが好ましく、化学還元の後に熱還元を行う条件を用いて還元することがより好ましい。ここで、熱還元では酸素原子を例えば二酸化炭素として脱離するのに対し、化学還元では化学反応を用いて還元を行うことによって、グラフェンのsp2結合を形成している炭素の原子の割合を増やすことができる。また、化学還元を行った後に、さらに熱還元を行うことにより、形成されるグラフェンの導電性をさらに向上させることができるため好ましい。
また、正極としてLiFePO4を用いることにより、過充電などの外部負荷に対しても安定で、安全性の高い蓄電池を実現することができる。よって例えば、持ち運びを行うモバイル機器や、身体に身に着けるウェアラブル機器等に用いる蓄電池として、特に優れている。
ここで、蓄電池が有する正極の総容量と、蓄電池が有する負極の総容量の比について説明する。下記数式(5)で定義されるRを正極/負極容量比とする。ここで正極容量とは蓄電池が有する正極の総容量であり、負極容量とは、蓄電池が有する負極の総容量である。
ここで、正極容量および負極容量の算出には、例えば理論容量等を用いてもよい。あるいは、実測値に基づく容量などを用いてもよい。一例として、LiFePO4と黒鉛を用いる場合には、容量を算出する際に、活物質重量あたりの容量としてそれぞれ170mAh/gと、372mAh/gを用いればよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いた蓄電装置の様々な形態について説明する。
[捲回体を用いた蓄電池の構成例]
次に、図12乃至図13に、本発明の一態様を用いた蓄電装置である、捲回体を用いた蓄電池の構成例を示す。図12に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。
捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止容器などで覆うことにより角型の二次電池が作製される。
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
ここで、負極994が正極995と重ならない面積は、小さいほど好ましい。図12(B)は、捲回体993の負極994の幅1091が、正極995の幅1092よりも小さい例を示す。また、負極994の端部は、正極995の内側に位置する。このような構成とすることにより、負極994がすべて、正極995と重なる、または負極994と正極995が重ならない領域の面積を小さくすることができる。
また、負極994の面積に対して、正極995の面積が大きすぎると、正極995の余剰部分が多くなり、例えば体積あたりの蓄電池の容量が小さくなってしまう。よって例えば、負極994の端部が正極995の端部よりも内側に位置する場合には、正極995の端部と負極994の端部の距離は3mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.1mm以下がさらに好ましい。あるいは、正極995と負極994の幅の差は、6mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
または、幅1091と幅1092を概略同じ値とし、負極994の端部を正極995の端部と概略揃えることが好ましい。
また、負極994は、負極集電体の表面を酸化させて負極集電体を覆う被膜を設ける構成とすることで負極集電体が電解液と接する領域が小さくなり、上述した第2の反応が起こるのを抑制しつつ、第1の反応が適切に起こるようにすることができる。
図13(A)および図13(B)に示す蓄電池990は、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
また、図13(A)および図13(B)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
また、蓄電装置の外装体や、封止容器を樹脂材料などにすることによって可撓性を有する蓄電装置を作製することができる。ただし、外装体や、封止容器を樹脂材料にする場合、外部に接続を行う部分は導電材料とする。
図13とは異なる別の薄型蓄電池の例を図14に示す。図14(A)の捲回体993は、図12および図13(A)に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略することとする。
図14(A)および図14(B)に示す蓄電池990は、外装体991の内部に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、外装体991、992の内部で電解液に含浸される。外装体991、外装体992は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。外装体991、外装体992の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときに外装体991、外装体992を変形させることができ、可撓性を有する薄型蓄電池を作製することができる。
[円筒型蓄電池]
次に、図12乃至図14と同様に捲回体を用いた蓄電装置の一例として、円筒型の蓄電池を示す。円筒型の蓄電池について、図15を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は図15(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図15(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるアルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、アルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604および負極606は、上述した薄型の蓄電池の正極および負極と同様に製造すればよい。また、円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
ここで、負極606が正極604と重ならない面積は、小さいほど好ましい。例えば、負極994の端部が正極995の端部よりも内側に位置することが好ましい。また、正極604の端部と負極606の端部の距離は3mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.1mm以下がさらに好ましい。あるいは、正極604の幅1093と、負極606の幅1094の差は、6mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
または、幅1093と幅1094を概略同じ値とし、負極606の端部を正極604の端部と概略揃えることが好ましい。
また、負極994は、負極集電体の表面を酸化させて負極集電体を覆う被膜を設ける構成とすることで負極集電体が電解液と接する領域が小さくなり、上述した第2の反応が起こるのを抑制しつつ、第1の反応が適切に起こるようにすることができる。
また、第2の反応により、負極表面に被膜が形成される場合がある。形成された被膜は不動態膜としての役割を有する場合がある。この不動態膜の存在により、充電または放電でのリチウムイオン以外のイオンの更なる分解反応を抑制できる場合がある。よって、被膜は、蓄電装置の容量低下を抑制できる可能性がある。
また、負極集電体の表面を酸化させて負極集電体を覆う被膜は、電解液を注入する前に形成されるため、被膜の形成によって電解液が分解されることがない。このため、該被膜を設けることで電解液を注入して起こる電解液の分解を抑制することができ、蓄電装置の容量の損失を低減することができる。
[コイン型蓄電池]
次に蓄電装置の一例として、本発明の一態様を用いた蓄電装置である、コイン型の蓄電池の一例を、図16を用いて説明する。図16(A)はコイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図16(B)および図16(C)は、その断面図の例を示す。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。正極活物質層306は、正極活物質層502の記載を参照すればよい。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。負極活物質層309は、負極活物質層505の記載を参照すればよい。またセパレータ310は、セパレータ507の記載を参照すればよい。また電解液は、電解液508の記載を参照すればよい。
なお、コイン型の蓄電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
ここで、正極304と負極307の形状および面積は概略同じであることが好ましく、かつ、正極304の端部と負極307の端部が概略揃うことが好ましい。図16(B)は、正極304の端部と負極307の端部が揃う例を示す。
または、負極307の面積は、正極304の面積よりも大きく、かつ、正極304の端部は負極307の端部よりも内側に位置することが好ましい。図16(C)は、正極304の端部が負極の307の端部よりも内側に位置する例を示す。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のあるアルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、アルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図16(B)および図16(C)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、円筒型および薄型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、およびセパレータが複数積層された構造、正極、負極、およびセパレータが捲回された構造であってもよい。
[蓄電システムの構造例]
また、蓄電システムの構造例について、図17、図18、図19を用いて説明する。ここで蓄電システムとは、例えば、蓄電装置を搭載した機器を指す。本実施の形態で説明する蓄電システムは、本発明の一態様を用いた蓄電装置である、蓄電池を有する。
図17(A)および図17(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システムは、回路基板900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図17(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端子952と、を有し、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、および回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914およびアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。または、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電システムは、アンテナ914およびアンテナ915と、蓄電池913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電システムの構造は、図17に限定されない。
例えば、図18(A−1)および図18(A−2)に示すように、図17(A)および図17(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図18(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図18(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図18(A−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図18(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914およびアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
または、図18(B−1)および図18(B−2)に示すように、図17(A)および図17(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図18(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図18(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図18(B−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914およびアンテナ915が設けられ、図18(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914およびアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
または、図19(A)に示すように、図17(A)および図17(B)に示す蓄電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
または、図19(B)に示すように、図17(A)および図17(B)に示す蓄電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図17(A)および図17(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
本実施の形態で示す蓄電池や蓄電システムには、本発明の一態様に係る電極が用いられている。そのため、蓄電池や蓄電システムの容量の大きくすることができる。また、エネルギー密度を高めることができる。また、信頼性を高めることができる。また、寿命を長くすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いた蓄電装置である、可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例について説明する。
先の実施の形態に示す可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を図20に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図20(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図20(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図20(C)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
図20(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、および蓄電装置7104を備える。また、図20(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
図20(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧および作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行および解除、省電力モードの実行および解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極部材を備える蓄電装置を有している。例えば、図20(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
図20(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の蓄電装置を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、蓄電装置を搭載することのできる電子機器の一例を示す。
図21(A)および図21(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図21(A)および図21(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。図21(A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図21(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図21(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図21(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様の蓄電体を用いる。
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電体を用いた蓄電体9635は可撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図21(A)および図21(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができるため好適である。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図21(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図21(C)にブロック図を示し説明する。図21(C)には、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図21(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
図22に、他の電子機器の例を示す。図22において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図22において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、蓄電装置8103等を有する。図22では、蓄電装置8103が、筐体8101および光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
なお、図22では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図22において、室内機8200および室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図22では、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図22では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図22において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図22では、蓄電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態7)
本実施の形態では、車両に蓄電装置を搭載する例を示す。
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、またはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図23において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図23(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーターを駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図23(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図23(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両同士で電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態8)
上記実施の形態で説明した電池セルと組み合わせて用いることができる電池制御ユニット(Battery Management Unit:BMU)、及び該電池制御ユニットを構成する回路に適したトランジスタについて、図29乃至図35を参照して説明する。本実施の形態では、特に直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットについて説明する。
直列に接続された複数の電池セルに対して充放電を繰り返していくと、電池セル間の特性のばらつきに応じて、容量(出力電圧)が異なってくる。直列に接続された電池セルでは、全体の放電時の容量が、容量の小さい電池セルに依存する。容量にばらつきがあると放電時の容量が小さくなる。また、容量が小さい電池セルを基準にして充電を行うと、充電不足となる虞がある。また、容量の大きい電池セルを基準にして充電を行うと、過充電となる虞がある。
そのため、直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットは、充電不足や、過充電の原因となる、電池セル間の容量のばらつきを揃える機能を有する。電池セル間の容量のばらつきを揃える回路構成には、抵抗方式、キャパシタ方式、あるいはインダクタ方式等あるが、ここではオフ電流の小さいトランジスタを利用して容量のばらつきを揃えることのできる回路構成を一例として挙げて説明する。
オフ電流の小さいトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(OSトランジスタ)が好ましい。オフ電流の小さいOSトランジスタを蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成に用いることで、電池から漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。
チャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、In−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Sn、Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いる。酸化物半導体膜を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
ここで、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
試料面と略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
なお、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(Siトランジスタ)に比べてバンドギャップが大きいため、高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。直列に電池セルを接続する場合、数百Vの電圧が生じることになるが、このような電池セルに適用される蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成には、前述のOSトランジスタで構成することが適している。
図29には、蓄電装置のブロック図の一例を示す。図29に示す蓄電装置700は、端子対701と、端子対702と、切り替え制御回路703と、切り替え回路704と、切り替え回路705と、変圧制御回路706と、変圧回路707と、直列に接続された複数の電池セル709を含む電池部708と、を有する。
また、図29の蓄電装置700において、端子対701と、端子対702と、切り替え制御回路703と、切り替え回路704と、切り替え回路705と、変圧制御回路706と、変圧回路707とにより構成される部分を、電池制御ユニットと呼ぶことができる。
切り替え制御回路703は、切り替え回路704及び切り替え回路705の動作を制御する。具体的には、切り替え制御回路703は、電池セル709毎に測定された電圧に基づいて、放電する電池セル(放電電池セル群)、及び充電する電池セル(充電電池セル群)を決定する。
さらに、切り替え制御回路703は、当該決定された放電電池セル群及び充電電池セル群に基づいて、制御信号S1及び制御信号S2を出力する。制御信号S1は、切り替え回路704へ出力される。この制御信号S1は、端子対701と放電電池セル群とを接続させるように切り替え回路704を制御する信号である。また、制御信号S2は、切り替え回路705へ出力される。この制御信号S2は、端子対702と充電電池セル群とを接続させるように切り替え回路705を制御する信号である。
また、切り替え制御回路703は、切り替え回路704、切り替え回路705、及び変圧回路707の構成を踏まえ、端子対702と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士が接続されるように、制御信号S1及び制御信号S2を生成する。
切り替え制御回路703の動作の詳細について述べる。
まず、切り替え制御回路703は、複数の電池セル709毎の電圧を測定する。そして、切り替え制御回路703は、例えば、所定の閾値以上の電圧の電池セル709を高電圧の電池セル(高電圧セル)、所定の閾値未満の電圧の電池セル709を低電圧の電池セル(定電圧セル)と判断する。
なお、高電圧セル及び低電圧セルを判断する方法については、様々な方法を用いることができる。例えば、切り替え制御回路703は、複数の電池セル709の中で、最も電圧の高い、又は最も電圧の低い電池セル709の電圧を基準として、各電池セル709が高電圧セルか低電圧セルかを判断してもよい。この場合、切り替え制御回路703は、各電池セル709の電圧が基準となる電圧に対して所定の割合以上か否かを判定する等して、各電池セル709が高電圧セルか低電圧セルかを判断することができる。そして、切り替え制御回路703は、この判断結果に基づいて、放電電池セル群と充電電池セル群とを決定する。
なお、複数の電池セル709の中には、高電圧セルと低電圧セルが様々な状態で混在し得る。例えば、切り替え制御回路703は、高電圧セルと低電圧セルが混在する中で、高電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を放電電池セル群とする。また、切り替え制御回路703は、低電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を充電電池セル群とする。また、切り替え制御回路703は、過充電又は過放電に近い電池セル709を、放電電池セル群又は充電電池セル群として優先的に選択するようにしてもよい。
ここで、本実施形態における切り替え制御回路703の動作例を、図30を用いて説明する。図30は、切り替え制御回路703の動作例を説明するための図である。なお、説明の便宜上、図30では4個の電池セル709が直列に接続されている場合を例に説明する。
まず、図30(A)の例では、電池セルa乃至dの電圧を電圧Va乃至電圧Vdとすると、Va=Vb=Vc>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路703は、連続する3つの高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路703は、低電圧セルDを充電電池セル群として決定する。
次に、図30(B)の例では、Vc>Va=Vb>>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する2つの低電圧セルa、bと、1つの高電圧セルcと、1つの過放電間近の低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路703は、高電圧セルcを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路703は、低電圧セルdが過放電間近であるため、連続する2つの低電圧セルa及びbではなく、低電圧セルdを充電電池セル群として優先的に決定する。
最後に、図30(C)の例では、Va>Vb=Vc=Vdの関係にある場合を示している。つまり、1つの高電圧セルaと、連続する3つの低電圧セルb乃至dとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路703は、高電圧セルaを放電電池セル群と決定する。また、切り替え制御回路703は、連続する3つの低電圧セルb乃至dを充電電池セル群として決定する。
切り替え制御回路703は、上記図30(A)乃至図30(C)の例のように決定された結果に基づいて、切り替え回路704の接続先である放電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S1と、切り替え回路705の接続先である充電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S2を、切り替え回路704及び切り替え回路705に対してそれぞれ出力する。
以上が、切り替え制御回路703の動作の詳細に関する説明である。
切り替え回路704は、切り替え制御回路703から出力される制御信号S1に応じて、端子対701の接続先を、切り替え制御回路703により決定された放電電池セル群に設定する。
端子対701は、対を成す端子A1及び端子A2により構成される。切り替え回路704は、この端子A1及びvA2のうち、いずれか一方を放電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セル709の正極端子と接続し、他方を放電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セル709の負極端子と接続することにより、端子対701の接続先を設定する。なお、切り替え回路704は、制御信号S1に設定された情報を用いて放電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路705は、切り替え制御回路703から出力される制御信号S2に応じて、端子対702の接続先を、切り替え制御回路703により決定された充電電池セル群に設定する。
端子対702は、対を成す端子B1及び端子B2により構成される。切り替え回路705は、この端子B1及び端子B2のうち、いずれか一方を充電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セル709の正極端子と接続し、他方を充電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セル709の負極端子と接続することにより、端子対702の接続先を設定する。なお、切り替え回路705は、制御信号S2に設定された情報を用いて充電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路704及び切り替え回路705の構成例を示す回路図を図31及び図32に示す。
図31では、切り替え回路704は、複数のトランジスタ710と、バス711及び712とを有する。バス711は、端子A1と接続されている。また、バス712は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ710のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バス711及び712と接続されている。また、複数のトランジスタ710のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セル709の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタ710のうち、最上流に位置するトランジスタ710のソース又はドレインの他方は、電池部708の最上流に位置する電池セル709の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ710のうち、最下流に位置するトランジスタ710のソース又はドレインの他方は、電池部708の最下流に位置する電池セル709の負極端子と接続されている。
切り替え回路704は、複数のトランジスタ710のゲートに与える制御信号S1に応じて、バス711に接続される複数のトランジスタ710のうちの1つと、バス712に接続される複数のトランジスタ710のうちの1つとをそれぞれ導通状態にすることにより、放電電池セル群と端子対701とを接続する。これにより、放電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セル709の正極端子は、端子対の端子A1又は端子A2のいずれか一方と接続される。また、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル709の負極端子は、端子対の端子A1又は端子A2のいずれか他方、すなわち正極端子と接続されていない方の端子に接続される。
トランジスタ710には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、放電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、放電電池セル群の出力電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタ710が接続された電池セル709と端子対701とを絶縁状態とすることができる。
また、図31では、切り替え回路705は、複数のトランジスタ713と、電流制御スイッチ714と、バス715と、バス716とを有する。バス715及び716は、複数のトランジスタ713と、電流制御スイッチ714との間に配置される。複数のトランジスタ713のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バス715及び716と接続されている。また、複数のトランジスタ713のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セル709の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタ713のうち、最上流に位置するトランジスタ713のソース又はドレインの他方は、電池部708の最上流に位置する電池セル709の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ713のうち、最下流に位置するトランジスタ713のソース又はドレインの他方は、電池部708の最下流に位置する電池セル709の負極端子と接続されている。
トランジスタ713には、トランジスタ710と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、充電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、充電電池セル群を充電するための電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタ713が接続された電池セル709と端子対702とを絶縁状態とすることができる。
電流制御スイッチ714は、スイッチ対717とスイッチ対718とを有する。スイッチ対717の一端は、端子B1に接続されている。また、スイッチ対717の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバス715に接続され、他方のスイッチはバス716に接続されている。スイッチ対718の一端は、端子B2に接続されている。また、スイッチ対718の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバス715に接続され、他方のスイッチはバス716に接続されている。
スイッチ対717及びスイッチ対718が有するスイッチは、トランジスタ710及びトランジスタ713と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。
切り替え回路705は、制御信号S2に応じて、トランジスタ713、及び電流制御スイッチ714のオン/オフ状態の組み合わせを制御することにより、充電電池セル群と端子対702とを接続する。
切り替え回路705は、一例として、以下のようにして充電電池セル群と端子対702とを接続する。
切り替え回路705は、複数のトランジスタ710のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セル709の正極端子と接続されているトランジスタ713を導通状態にする。また、切り替え回路705は、複数のトランジスタ710のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル709の負極端子に接続されているトランジスタ713を導通状態にする。
端子対702に印加される電圧の極性は、端子対701と接続される放電電池セル群、及び変圧回路707の構成によって変わり得る。また、充電電池セル群を充電する方向に電流を流すためには、端子対702と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士を接続する必要がある。そこで、電流制御スイッチ714は、制御信号S2により、端子対702に印加される電圧の極性に応じてスイッチ対717及びスイッチ対718の接続先をそれぞれ切り替えるように制御される。
一例として、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対702に印加されている状態を挙げて説明する。この時、電池部708の最下流の電池セル709が充電電池セル群である場合、スイッチ対717は、制御信号S2により、当該電池セル709の正極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対717のバス716に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対717のバス715に接続されるスイッチがオフ状態となる。一方、スイッチ対718は、制御信号S2により、当該電池セル709の負極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対718のバス715に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対718のバス716に接続されるスイッチがオフ状態となる。このようにして、端子対702と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対702から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
また、電流制御スイッチ714は、切り替え回路705ではなく、切り替え回路704に含まれていてもよい。この場合、電流制御スイッチ714、制御信号S1に応じて、端子対701に印加される電圧の極性を制御することにより、端子対702に印加される電圧の極性を制御する。そして、電流制御スイッチ714は、端子対702から充電電池セル群に流れる電流の向きを制御する。
図32は、図31とは異なる、切り替え回路704及び切り替え回路705の構成例を示す回路図である。
図32では、切り替え回路704は、複数のトランジスタ対721と、バス724及びバス725とを有する。バス724は、端子A1と接続されている。また、バス725は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ対721の一端は、それぞれトランジスタ722とトランジスタ723とにより分岐している。トランジスタ722のソース又はドレインの一方は、バス724と接続されている。また、トランジスタ723のソース又はドレインの一方は、バス725と接続されている。また、複数のトランジスタ対の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セル709の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対721のうち、最上流に位置するトランジスタ対721の他端は、電池部708の最上流に位置する電池セル709の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対721のうち、最下流に位置するトランジスタ対721の他端は、電池部708の最下流に位置する電池セル709の負極端子と接続されている。
切り替え回路704は、制御信号S1に応じてトランジスタ722及びトランジスタ723の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対721の接続先を、端子A1又は端子A2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタ722が導通状態であれば、トランジスタ723は非導通状態となり、その接続先は端子A1になる。一方、トランジスタ723が導通状態であれば、トランジスタ722は非導通状態となり、その接続先は端子A2になる。トランジスタ722及びトランジスタ723のどちらが導通状態になるかは、制御信号S1によって決定される。
端子対701と放電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対721が用いられる。詳細には、制御信号S1に基づいて、2つのトランジスタ対721の接続先がそれぞれ決定されることにより、放電電池セル群と端子対701とが接続される。2つのトランジスタ対721のそれぞれの接続先は、一方が端子A1となり、他方が端子A2となるように、制御信号S1によって制御される。
切り替え回路705は、複数のトランジスタ対731と、バス734及びバス735とを有する。バス734は、端子B1と接続されている。また、バス735は、端子B2と接続されている。複数のトランジスタ対731の一端は、それぞれトランジスタ732とトランジスタ733とにより分岐している。トランジスタ732により分岐する一端は、バス734と接続されている。また、トランジスタ733により分岐する一端は、バス735と接続されている。また、複数のトランジスタ対731の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セル709の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対731のうち、最上流に位置するトランジスタ対731の他端は、電池部708の最上流に位置する電池セル709の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対731のうち、最下流に位置するトランジスタ対731の他端は、電池部708の最下流に位置する電池セル709の負極端子と接続されている。
切り替え回路705は、制御信号S2に応じてトランジスタ732及びトランジスタ733の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対731の接続先を、端子B1又は端子B2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタ732が導通状態であれば、トランジスタ733は非導通状態となり、その接続先は端子B1になる。逆に、トランジスタ733が導通状態であれば、トランジスタ732は非導通状態となり、その接続先は端子B2になる。トランジスタ732及びトランジスタ733のどちらが導通状態となるかは、制御信号S2によって決定される。
端子対702と充電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対731が用いられる。詳細には、制御信号S2に基づいて、2つのトランジスタ対731の接続先がそれぞれ決定されることにより、充電電池セル群と端子対702とが接続される。2つのトランジスタ対731のそれぞれの接続先は、一方が端子B1となり、他方が端子B2となるように、制御信号S2によって制御される。
また、2つのトランジスタ対731のそれぞれの接続先は、端子対702に印加される電圧の極性によって決定される。具体的には、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対702に印加されている場合、上流側のトランジスタ対731は、トランジスタ732が導通状態となり、トランジスタ733が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対731は、トランジスタ733が導通状態、トランジスタ732が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。また、端子B1が負極、端子B2が正極となるような電圧が端子対702に印加されている場合は、上流側のトランジスタ対731は、トランジスタ733が導通状態となり、トランジスタ732が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対731は、トランジスタ732が導通状態、トランジスタ733が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。このようにして、端子対702と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対702から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
変圧制御回路706は、変圧回路707の動作を制御する。変圧制御回路706は、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セル709の個数とに基づいて、変圧回路707の動作を制御する変圧信号S3を生成し、変圧回路707へ出力する。
なお、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数が充電電池セル群に含まれる電池セル709の個数よりも多い場合は、充電電池セル群に対して過剰に大きな充電電圧が印加されることを防止する必要がある。そのため、変圧制御回路706は、充電電池セル群を充電できる範囲で放電電圧(Vdis)を降圧させるように変圧回路707を制御する変圧信号S3を出力する。
また、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セル709の個数以下である場合は、充電電池セル群を充電するために必要な充電電圧を確保する必要がある。そのため、変圧制御回路706は、充電電池セル群に過剰な充電電圧が印加されない範囲で放電電圧(Vdis)を昇圧させるように変圧回路707を制御する変圧信号S3を出力する。
なお、過剰な充電電圧とする電圧値は、電池部708で使用される電池セル709の製品仕様等に鑑みて決定することができる。また、変圧回路707により昇圧及び降圧された電圧は、充電電圧(Vcha)として端子対702に印加される。
ここで、本実施形態における変圧制御回路706の動作例を、図33(A)乃至図33(C)を用いて説明する。図33(A)乃至図33(C)は、図30(A)乃至図30(C)で説明した放電電池セル群及び充電電池セル群に対応させた、変圧制御回路706の動作例を説明するための概念図である。なお、図33(A)乃至図33(C)は、電池制御ユニット741を図示している。電池制御ユニット741は、上述したように、端子対701と、端子対702と、切り替え制御回路703と、切り替え回路704と、切り替え回路705と、変圧制御回路706と、変圧回路707とにより構成される。
図33(A)に示される例では、図30(A)で説明したように、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、図30(A)を用いて説明したように、切り替え制御回路703は、高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定し、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。そして、変圧制御回路706は、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数を基準とした時の、充電電地セル群に含まれる電池セル709の個数の比に基づいて、放電電圧(Vdisの昇降圧比Nを算出する。
なお、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セル709の個数よりも多い場合に、放電電圧を変圧せずに端子対702にそのまま印加すると、充電電池セル群に含まれる電池セル709に、端子対702を介して過剰な電圧が印加される可能性がある。そのため、図33(A)に示されるような場合では、端子対702に印加される充電電圧(Vcha)を、放電電圧よりも降圧させる必要がある。さらに、充電電池セル群を充電するためには、充電電圧は、充電電池セル群に含まれる電池セル709の合計電圧より大きい必要がある。そのため、変圧制御回路706は、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数を基準とした時の、充電電地セル群に含まれる電池セル709の個数の比よりも、昇降圧比Nを大きく設定する。
変圧制御回路706は、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数を基準とした時の、充電電地セル群に含まれる電池セル709の個数の比に対して、昇降圧比Nを1%乃至10%程度大きくするのが好ましい。この時、充電電圧は充電電池セル群の電圧よりも大きくなるが、実際には充電電圧は充電電池セル群の電圧と等しくなる。ただし、変圧制御回路706は昇降圧比Nに従い充電電池セル群の電圧を充電電圧と等しくするために、充電電池セル群を充電する電流を流すこととなる。この電流は変圧制御回路706に設定された値となる。
図33(A)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数が3個で、充電電池セル群に含まれる電池セル709の数が1個であるため、変圧制御回路706は、1/3より少し大きい値を昇降圧比Nとして算出する。そして、変圧制御回路706は、放電電圧を当該昇降圧比Nに応じて降圧し、充電電圧に変換する変圧信号S3を変圧回路707に出力する。そして、変圧回路707は、変圧信号S3に応じて変圧された充電電圧を、端子対702に印加する。そして、端子対702に印加される充電電圧によって、充電電池セル群に含まれる電池セル709が充電される。
また、図33(B)や図33(C)に示される例でも、図33(A)と同様に、昇降圧比Nが算出される。図33(B)や図33(C)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セル709の個数以下であるため、昇降圧比Nは1以上となる。よって、この場合は、変圧制御回路706は、放電電圧を昇圧して受電電圧に変換する変圧信号S3を出力する。
変圧回路707は、変圧信号S3に基づいて、端子対701に印加される放電電圧を充電電圧に変換する。そして、変圧回路707は、変換された充電電圧を端子対702に印加する。ここで、変圧回路707は、端子対701と端子対702との間を電気的に絶縁している。これにより、変圧回路707は、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル709の負極端子の絶対電圧と、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セル709の負極端子の絶対電圧との差異による短絡を防止する。さらに、変圧回路707は、上述したように、変圧信号S3に基づいて放電電池セル群の合計電圧である放電電圧を充電電圧に変換する。
また、変圧回路707は、例えば絶縁型DC(Direct Current)−DCコンバータ等を用いることができる。この場合、変圧制御回路706は、絶縁型DC−DCコンバータのオン/オフ比(デューティー比)を制御する信号を変圧信号S3として出力することにより、変圧回路707で変換される充電電圧を制御する。
なお、絶縁型DC−DCコンバータには、フライバック方式、フォワード方式、RCC(Ringing Choke Converter)方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、及びフルブリッジ方式等が存在するが、目的とする出力電圧の大きさに応じて適切な方式が選択される。
絶縁型DC−DCコンバータを用いた変圧回路707の構成を図34に示す。絶縁型DC−DCコンバータ751は、スイッチ部752とトランス部753とを有する。スイッチ部752は、絶縁型DC−DCコンバータの動作のオン/オフを切り替えるスイッチであり、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)やバイポーラ型トランジスタ等を用いて実現される。また、スイッチ部752は、変圧制御回路706から出力される、オン/オフ比を制御する変圧信号S3に基づいて、絶縁型DC−DCコンバータ751のオン状態とオフ状態を周期的に切り替える。なお、スイッチ部752は、使用される絶縁型DC−DCコンバータの方式によって様々な構成を取り得る。トランス部753は、端子対701から印加される放電電圧を充電電圧に変換する。詳細には、トランス部753は、スイッチ部752のオン/オフ状態と連動して動作し、そのオン/オフ比に応じて放電電圧を充電電圧に変換する。この充電電圧は、スイッチ部752のスイッチング周期において、オン状態となる時間が長いほど大きくなる。一方、充電電圧は、スイッチ部752のスイッチング周期において、オン状態となる時間が短いほど小さくなる。なお、絶縁型DC−DCコンバータを用いる場合、トランス部753の内部で、端子対701と端子対702は互いに絶縁することができる。
本実施形態における蓄電装置700の処理の流れを、図35を用いて説明する。図35は、蓄電装置700の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、蓄電装置700は、複数の電池セル709毎に測定された電圧を取得する(ステップS001)。そして、蓄電装置700は、複数の電池セル709の電圧を揃える動作の開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS002)。この開始条件は、例えば、複数の電池セル709毎に測定された電圧の最大値と最小値との差分が、所定の閾値以上か否か等とすることができる。この開始条件を満たさない場合は(ステップS002:NO)、各電池セル709の電圧のバランスが取れている状態であるため、蓄電装置700は、以降の処理を実行しない。一方、開始条件を満たす場合は(ステップS002:YES)、蓄電装置700は、各電池セル709の電圧を揃える処理を実行する。この処理において、蓄電装置700は、測定されたセル毎の電圧に基づいて、各電池セル709が高電圧セルか低電圧セルかを判定する(ステップS003)。そして、蓄電装置700は、判定結果に基づいて、放電電池セル群及び充電電池セル群を決定する(ステップS004)。さらに、蓄電装置700は、決定された放電電池セル群を端子対701の接続先に設定する制御信号S1、及び決定された充電電池セル群を端子対702の接続先に設定する制御信号S2を生成する(ステップS005)。蓄電装置700は、生成された制御信号S1及び制御信号S2を、切り替え回路704及び切り替え回路705へそれぞれ出力する。そして、切り替え回路704により、端子対701と放電電池セル群とが接続され、切り替え回路705により、端子対702と放電電池セル群とが接続される(ステップS006)。また、蓄電装置700は、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セル709の個数とに基づいて、変圧信号S3を生成する(ステップS007)。そして、蓄電装置700は、変圧信号S3に基づいて、端子対701に印加される放電電圧を充電電圧に変換し、端子対702に印加する(ステップS008)。これにより、放電電池セル群の電荷が充電電池セル群へ移動される。
また、図35のフローチャートでは、複数のステップが順番に記載されているが、各ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。
以上、本実施形態によれば、放電電池セル群から充電電池セル群へ電荷を移動させる際、キャパシタ方式のように、放電電池セル群からの電荷を一旦蓄積し、その後充電電池セル群へ放出させるような構成を必要としない。これにより、単位時間あたりの電荷移動効率を向上させることができる。また、切り替え回路704及び切り替え回路705により、放電電池セル群及び充電電池セル群が各々個別に切り替えられる。
さらに、変圧回路707により、放電電池セル群に含まれる電池セル709の個数と充電電池セル群に含まれる電池セル709群の個数とに基づいて、端子対701に印加される放電電圧が充電電圧に変換され、端子対702に印加される。これにより、放電側及び充電側の電池セル709がどのように選択されても、問題なく電荷の移動を実現できる。
さらに、トランジスタ710及びトランジスタ713にOSトランジスタを用いることにより、充電電池セル群及び放電電池セル群に属しない電池セル709から漏洩する電荷量を減らすことができる。これにより、充電及び放電に寄与しない電池セル709の容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは、Siトランジスタに比べて熱に対する特性の変動が小さい。これにより、電池セル709の温度が上昇しても、制御信号S1、S2に応じた導通状態と非導通状態の切り替えといった、正常な動作をさせることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
[実施例]
本実施例では、本発明の一態様を用いた蓄電装置として、先の実施の形態で示した薄型の蓄電池を作製し、その特性について評価を行った。
薄型の蓄電池には、1組の正極503と負極506を用いた。なお、正極503の負極506側の面の面積と負極506の正極503側の面の面積を概略同じにした。
[電極の作製]
まず、正極および負極の作製について説明する。
まず、負極活物質層の配合および作製条件について説明する。活物質に比表面積6.3m2/g、平均粒径15μmの球状化天然黒鉛を用いた。また結着剤としてCMC−Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)およびSBRを用いた。用いたCMC−Naの重合度は600から800、1%水溶液として用いた場合の水溶液粘度は300mPa・sから500mPa・sの範囲の値であった。電極を作製するためのスラリーの配合は、黒鉛:CMC−Na:SBR=97:1.5:1.5(重量%)とした。
次に、負極用のスラリーの作製について、図24のフローを用いて説明する。
まず、CMC−Naの粉末と活物質とを混合し、混練機で混練した(Step1)。混練した混合物を第1の混合物とする。
次に、第1の混合物に少量の水を添加し、固練りを行い、第2の混合物を得た(Step2)。この際、水は少しずつ加えていくと、例えばCMC−Naや活物質の凝集を防げるため好ましい。
次に、溶媒をさらに添加し、混練機を用いて混練した(Step3)。混練した混合物を第3の混合物とする。SBRを加える前に、あらかじめ粘度を低くすることにより、強撹拌によるSBRの分離・沈殿を防ぐことができる場合があり、好ましい。また、撹拌による気泡の混入を少なくすることができる場合があり、好ましい。
次に、SBRの50wt%水分散液を添加し、混練で混練した(Step4)。その後、減圧下での脱泡を行い、電極塗布用のスラリーを得た(Step5)。
次に、連続塗工機を用いて、集電体にペーストの塗布を行った。集電体には膜厚18μmの圧延銅箔を用いた。塗工速度は、0.75m/min.とした。
次に、塗布した電極を、乾燥炉を用いて乾燥した。乾燥条件は大気雰囲気下で行った。乾燥温度および時間は、50℃で120秒間の乾燥を行った後に80℃で120秒間とした。
さらに減圧雰囲気下で100℃、10時間の乾燥を行った。
以上の工程により、集電体の片面に負極活物質層を作製した。
その後、さらに、加熱処理を行った。加熱処理は、大気雰囲気下で、100℃、10時間行い、集電体の表面に被膜を形成した。
以上の工程により、負極を作製した。
次に、正極の配合および作製条件について説明する。活物質に比表面積9.2m2/gのLiFePO4を用い、結着剤としてPVdFを用い、導電助剤としてグラフェンを用いた。なお、グラフェンは、スラリーを作製する際には酸化グラフェンであり、電極塗布後に還元処理を施すことでグラフェンとした。電極を作製するためのスラリーの配合は、LiFePO4:酸化グラフェン:PVdF=94.4:0.6:5.0(重量%)とした。
次に、正極用のスラリーの作製方法について、図25のフローを用いて説明する。
初めに、酸化グラフェンの粉末と溶媒であるNMPを、混練機を用いて混練し、第1の混合物を得た(Step1)。
次に、第1の混合物に活物質を添加し、混練機を用いて固練りを行い、第2の混合物を得た(Step2)。固練りを行うことで、活物質の凝集をほどくことができ、また酸化グラフェンをより均一に分散させることができる。
次に、第2の混合物にPVdFを添加し、混練機を用いて混練して第3の混合物を得た(Step3)。
次に、第3の混合物に溶媒であるNMPを添加し、混練機を用いて混練した(Step4)。以上の工程により、スラリーを作製した。
次に、作製したスラリーを、あらかじめアンダーコートを施したアルミ集電体(20μm)に塗布した。塗布には連続塗工機を用い、塗工速度は1m/min.とした。その後、乾燥炉を用いて乾燥を行った。乾燥条件は、80℃4分間とした。その後、電極の還元を行った。
還元条件としては、まず化学還元を行い、その後熱還元を行った。まず、化学還元の条件について説明する。還元に用いた溶液は、溶媒としてNMP:水を9:1で混合した溶媒を用い、アスコルビン酸とLiOHをそれぞれ77mmol/Lと73mmol/Lの濃度になるように加えた。還元処理は、60℃で1時間行った。その後、エタノールで洗浄し、減圧雰囲気下、室温で乾燥を行った。次に、熱還元の条件について説明する。化学還元を行った後、熱還元を行った。熱還元は減圧雰囲気下で170℃10時間の処理を行った。
次に、正極活物質層を、ロールプレス法によりプレスして圧密化した。以上の工程により、正極を作製した。
作製した負極活物質層および正極活物質層の活物質担持量、厚さおよび密度を表1に示す。表1に示す値は、蓄電池を作製する際に用いた電極の各測定値の平均、最大値、および最小値を示す。
次に、電解液として、溶媒として下記の構造式に示す1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(EMI−FSA)を用い、電解質としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiN(CF3SO2)2,略称:LiTFSA)を用いた。LiTFSAをEMI−FSAに溶解させ、LiTFSAの濃度が1mol/kgの電解液を準備した。
また、セパレータは、厚さ50μmの溶剤紡糸再生セルロース繊維(TF40,日本高度紙工業株式会社製)を用いた。セパレータは、縦24mm、横45mmの矩形状に切断した。また、外装体には、アルミの両面に、樹脂層を被覆したフィルムを用いた。
[蓄電池の作製]
次に、薄型の蓄電池を作製した。薄型の蓄電池の作製方法を図26のフローを用いて説明する。まず、できあがった正極および負極を切断した。また、セパレータを切断した(Step1)。
次に、タブ領域上の正極活物質および負極活物質を剥がして、集電体を露出させた(Step2)。
次に、外装体を半分に折り、積層した正極、セパレータおよび負極を挟んだ(Step3)。この時、正極および負極は、正極活物質層と、負極活物質層が向かい合うように積層した。
次に、加熱により外装体の3辺のうち、電解液を注入する辺以外を接合した(Step4)。この時、リード電極に設けられた封止層が外装体の封止部に重なるように配置した。
外装体の辺Aおよび辺Bの封止を行った後、外装体と、外装体で包まれた正極、セパレータおよび負極を乾燥した(Step5)。乾燥条件は、減圧下で80℃、10時間とした。
次に、アルゴンガス雰囲気下で、封止されていない1辺から電解液を注入した(Step6)。その後、減圧雰囲気下で、加熱により外装体の1辺を封止した(Step7)。以上の工程により、薄型の蓄電池Aを作製した。また、集電体の片面に負極活物質層を作製した後に加熱処理を行わなかった負極を用いた薄型の蓄電池Bを作製した。
[初回充放電特性評価]
次に、蓄電池Aおよび蓄電池Bの初回充放電および充放電サイクルについて測定を行った。該測定は、充放電測定機(東洋システム社製)を用いて、評価温度は100℃で行った。充電条件4Vを上限として定電流充電を行った。また、放電条件は、2Vを下限として定電流放電を行った。充放電を概略0.3Cのレートで行った。なお、レートの算出は正極活物質重量あたり170mA/gの電流値を1Cとした。
図27に初回充放電特性を示し、図28に充放電サイクル特性を示す。なお、図27は、横軸が容量(mAh/g)を、縦軸が電圧(V)を示す。図28は、横軸がサイクル数(回)、縦軸が放電容量(mAh/g)を示す。
図27(A)は蓄電池Aの初回充放電特性を示し、図27(B)は蓄電池Bの初回充放電特性を示す。図27(A)および図27(B)より、負極活物質層を作製した後に加熱処理を行った負極を用いた蓄電池Aが加熱処理を行わなかった蓄電池Bより良好な特性が得られることが分かった。また、図28より、蓄電池Aは蓄電池Bのようなサイクルの途中で容量が大きく低下する変曲点がみられず、放電容量の劣化も緩やかであり、良好なサイクル特性を有していることが確認できた。