JP6599228B2 - エッチング特徴を有する強化ガラス物品およびそれを形成する方法 - Google Patents

エッチング特徴を有する強化ガラス物品およびそれを形成する方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2012年4月13日付け出願の「エッチング特徴を有する強化ガラス物品およびその形成方法」と題する米国仮特許出願番号61/623,722の利益を主張し、その全ての開示内容を参照としてここで援用する。
本明細書は、概して、強化ガラス物品、より具体的には、エッチング特徴を有する強化ガラス物品、並びに、そのような強化ガラス物品を組み込んでいる電子装置、および強化ガラス物品にエッチング特徴を形成する方法に関する。
薄い強化ガラスパネルは、消費者電子装置における種々の用途を有する。例えば、そのような強化ガラスパネルは、携帯電話、GPS装置、テレビおよびコンピューターモニターのようなディスプレイ装置、および種々の他の電子装置に組み込まれたLCDおよびLEDディスプレイ用のカバーシートおよび/またはタッチスクリーンとして用いることができる。強化ガラスパネルの使用が拡張し続けるにつれて、ガラスパネルの幾何学的複雑さも増している。例えば、ある用途では、触知差別化および/または装飾的目的のために強化ガラスパネルの表面中にエッチング特徴を必要とする場合がある。近年、フィルム、塗料または他の材料を配置し、次に、機械加工(例えば、コンピューター数値制御機械加工による)することにより、タッチ装置上のオン/オフボタンの窪みまたはエンボス表面のような目視基準を提供し、そこで、目視基準は、接触または視覚による識別を容易にする特定の構造を有することで、強化ガラス用途にそのような視覚的または機能的特徴が提供される。他の場合には、タッチディスプレイの封入包装材料上にその特徴が提供される。
しかしながら、強化カバー物品の表面上にエッチング特徴を直接提供することが望ましいであうろ。
本開示の第一の態様は、第一の表面と第二の表面とを有する非強化ガラス物品を提供すること、および非強化ガラス物品の第一の表面上にレーザービームの焦点を合わせて第一の表面から材料を切除することを含んでなるエッチング特徴を有する強化ガラス物品を作製する方法である。このレーザービームは、非強化ガラス物品に実質的に透過性の波長を有する。この方法は、さらに、所望のエッチング特徴により定められる境界中にレーザービームを並進させてレーザービームの並進により第一の表面から材料を、エッチング特徴を形成する深さまで切除すること、およびエッチング特徴の形成後に化学強化プロセスにより非強化ガラス物品を化学的に強化することを含む。強化ガラス物品は、強化ガラス物品の第一の表面および第二の表面からそれぞれ層の所定の深さまで広がっている圧縮応力下の第一の強化表面層および第二の強化表面層、および、第一の強化表面層と第二の強化表面層との間にある引張応力下の中心領域を有する。エッチング特徴の深さは、エッチング特徴が圧縮応力層中にあるようにその層の深さより小さい。
本開示の第二の態様は、非強化ガラス物品を化学的に強化する前に、エッチング特徴を化学的にエッチングしてエッチング特徴の表面の表面粗さを減少させる前記態様の方法である。
本開示の第三の態様は、エッチング特徴の表面が、エッチング特徴の外側の第一の表面の領域よりも大きな粗さを有するようにレーザービームを操作するいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第四の態様は、レーザービームが、約20マイクロメートルである非強化ガラス物品の第一の表面上の焦点を合わせたビームスポットを含むいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第五の態様は、レーザービームが連続波レーザービームであるいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第六の態様は、レーザービームがパルス状レーザービームであるいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第七の態様は、パルス状レーザービームが10フェムト秒より大きなパルス幅を有する第六の態様の方法である。
本開示の第八の態様は、パルス状レーザービームが1ピコ秒〜500000ピコ秒のパルス幅を有する第六の態様の方法である。
本開示の第九の態様は、パルス状レーザービームが約100MHzより小さな周波数でパルスを発する第六〜第八のいずれかの態様の方法である。
本開示の第十の態様は、パルス状レーザービームが非強化ガラス物品の切除閾値より大きな平均出力を有する第六〜第九のいずれかの態様の方法である。
本開示の第十一の態様は、レーザービームが、約10ピコ秒のパルス幅、約100kHzの周波数、および約1.8Wの平均出力を有するパルス状レーザービームである第六の態様の方法である。
本開示の第十二の態様は、パルス状レーザービームを、約10cm/s〜約120cm/sの範囲の走査速度で非強化ガラス物品の第一の表面上で並進させるいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第十三の態様は、非強化ガラス物品が、非強化アルカリアルミノシリケートガラス、非強化アルミノシリケートガラス、または非強化ソーダ石灰ガラスを含むいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第十四の態様は、非強化ガラス物品が、1mm未満の厚さを有するいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第十五の態様は、欠陥の寸法が約10マイクロメートル〜約40マイクロメートルの範囲内であるいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第十六の態様は、強化ガラス物品の層の深さが約5マイクロメートルより大きく、表面圧縮力が約100MPaより大きいいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第十七の態様は、レーザービームの並進が、所望のエッチング特徴の境界中でレーザービームを並進させて第一の方向に沿って複数の第一の欠陥線を形成し、所望のエッチング特徴の境界中でレーザービームを並進させて第二の方向に沿って複数の第二の欠陥線を形成し、複数の第一の欠陥線が複数の第二の欠陥線と交差することを含むいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第十八の態様は、レーザービームの並進が、一以上のさらなるレーザービーム通過において複数の第一の欠陥線および複数の第二の欠陥線に沿ってレーザービームを並進させることをさらに含む第十七の態様の方法である。
本開示の第十九の態様は、レーザービームの並進が、所望のエッチング特徴の境界中に交差網掛欠陥模様を形成するいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第二十の態様は、レーザービームの並進が、所望のエッチング特徴の境界中において渦巻き模様でレーザービームを並進させることを含むいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第二十一の態様は、エッチング特徴の圧縮強度が、エッチング特徴の外側の強化ガラス物品の表面の圧縮強度に実質的に等しいいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第二十二の態様は、材料の一以上の薄層がエッチング特徴上に配されるように強化ガラス物品の表面上に材料の一以上の薄層を適用することをさらに含むいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第二十三の態様は、一以上の薄層が、ホログラフ層、玉虫色層、艶消し層、またはそれらの組み合わせを含む第二十二の態様の方法である。
本開示の第二十四の態様は、レーザービームの並進が、複数の欠陥線がエッチング特徴の境界中に回折格子を作るように所定の分離距離で分離された複数の欠陥線を作るいずれかの前記態様の方法である。
本開示の第二十五の態様は、強化ガラス物品の第一の表面および第二の表面からそれぞれ層の所定の深さまで広がっている圧縮応力下の第一の強化表面層および第二の強化表面層、および第一の強化表面層と第二の強化表面層との間にある引張応力下の中心領域を有する強化ガラス物品である。この強化ガラス物品は、さらに、第一の表面または第二の表面中に、層の深さより小さな深さを有すると共に少なくとも一つのエッチング特徴の外側の第一の表面または第二の表面の表面粗さより大きな表面粗さを有する少なくとも一つのエッチング特徴を含み、少なくとも一つのエッチング特徴はレーザー切除により形成される。
本開示の第二十六の態様は、強化ガラス物品が、強化アルカリアルミノシリケートガラス、強化アルミノシリケートガラス、または強化ソーダ石灰ガラスを含む第二十五の態様の強化物品である。
本開示の第二十七の態様は、強化ガラス物品が、イオン交換プロセスにより化学的に強化される第二十五または第二十六の態様の強化物品である。
本開示の第二十八の態様は、強化ガラス物品が、1mm未満の厚さを有する第二十五〜第二十七のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第二十九の態様は、欠陥深さが、約10マイクロメートル〜約40マイクロメートルの範囲内である第二十五〜第二十八のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十の態様は、強化ガラス物品の層の深さが5マイクロメートルより大きく表面圧縮力が約100MPaより大きい第二十五〜第二十九のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十一の態様は、強化ガラス物品が、約0.7mmの厚さ、少なくとも10マイクロメートルの層の深さおよび約750MPaより大きな表面圧縮力を有するアルカリアルミノシリケートガラスであり、欠陥深さが約40マイクロメートルより小さい第二十五〜第三十のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十二の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴が、交差網掛欠陥模様を形成する複数の交差欠陥線により定められる第二十五〜第三十一のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十三の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴が、少なくとも一つのエッチング特徴の境界中の一以上の渦巻き欠陥線により定められる第二十五〜第三十二のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十四の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴の圧縮強度が、少なくとも一つのエッチング特徴の外側の強化ガラス物品の表面の圧縮強度に実質的に等しい第二十五〜第三十三のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十五の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴が、少なくとも一つのエッチング特徴を強化ガラス物品の周囲表面から分離する壁を含む第二十五〜第三十四のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十六の態様は、壁が実質的に垂直である第三十五の態様の強化物品である。
本開示の第三十七の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴の不透明性が、少なくとも一つのエッチング特徴の外側の強化ガラス物品の不透明性より大きい第二十五〜第三十六のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十八の態様は、エッチング特徴が所定の分離距離で分離された複数の欠陥線を含み、その分離距離は、複数の欠陥線がエッチング特徴の境界中に回折格子を作るような距離である第二十五〜第三十七のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第三十九の態様は、強化ガラス物品の表面およびエッチング特徴の上に配された材料の一以上の薄層をさらに含む第二十五〜第三十八のいずれかの態様の強化物品である。
本開示の第四十の態様は、強化カバーガラスの第一の表面および第二の表面からそれぞれ層の所定の深さまで広がる圧縮応力下の第一の強化表面層および第二の強化表面層、および第一の強化表面層と第二の強化表面層との間にある引張応力下の中心領域を有する強化カバーガラスを含む電子装置である。この強化カバーガラスは、さらに、第一の表面または第二の表面中に、層の深さより小さな欠陥深さおよび少なくとも一つのエッチング特徴の外側の第一または第二の表面の表面粗さより大きな表面粗さを有するレーザー切除により形成された少なくとも一つのエッチング特徴を含む。
本開示の第四十一の態様は、強化カバーガラスがタッチスクリーンとして構成され、少なくとも一つのエッチング特徴が電子装置の少なくとも一つのソフトキーの輪郭をなす第四十の態様の電子装置である。
本開示の第四十二の態様は、少なくとも一つのソフトキーがオン/オフボタンである第四十一の態様の電子装置である。
本開示の第四十三の態様は、強化カバーガラスが、強化アルカリアルミノシリケートガラス、強化アルミノシリケートガラスまたは強化ソーダ石灰ガラスを含む第四十〜第四十二のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第四十四の態様は、強化カバーガラスが、イオン交換プロセスにより化学的に強化されている第四十〜第四十三のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第四十五の態様は、強化カバーガラスが、1mm未満の厚さを有する第四十〜第四十四のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第四十六の態様は、欠陥深さが、約10マイクロメートル〜約40マイクロメートルの範囲内である第四十〜第四十五のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第四十七の態様は、強化カバーガラスの層の深さが5マイクロメートルより大きく表面圧縮力が約100MPaより大きい第四十〜第四十六のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第四十八の態様は、強化カバーガラスが、約0.7mmの厚さ、約40マイクロメートルの層の深さおよび約750MPaより大きな表面圧縮力を有するアルカリアルミノシリケートガラスを含み、欠陥深さが約40マイクロメートルより小さい第四十〜第四十七のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第四十九の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴が、交差網掛欠陥模様を形成する複数の交差欠陥線により定められる第四十〜第四十八のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第五十の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴が、少なくとも一つのエッチング特徴の境界中の一以上の渦巻き欠陥線により定められる第四十〜第四十九のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第五十一の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴の圧縮強度が、少なくとも一つのエッチング特徴の外側の強化カバーガラスの表面の圧縮強度に実質的に等しい第四十〜第五十のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第五十二の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴が、少なくとも一つのエッチング特徴を強化カバーガラスの周囲表面から分離する壁を含む第四十〜第五十一のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第五十三の態様は、壁が実質的に垂直である第五十二の態様の電子装置である。
本開示の第五十四の態様は、少なくとも一つのエッチング特徴の不透明性が、少なくとも一つのエッチング特徴の外側の強化カバーガラスの不透明性より大きい第四十〜第五十三のいずれかの態様の電子装置である。
本開示の第五十五の態様は、第一の表面および第二の表面を含む強化ガラス基板を提供することを含んでなるエッチング特徴を有する強化ガラス物品を作製する方法であって、強化ガラス物品が、強化ガラス物品の第一の表面および第二の表面からそれぞれ層の所定の深さまで広がる圧縮応力下の第一の強化表面層および第二の強化表面層、および第一の強化表面層と第二の強化表面層との間にある引張応力下の中心領域を含む、方法である。この方法は、さらに、強化ガラス基板の第一の表面および/または第二の表面の上に材料の一以上の層を配し、材料の一以上の層の上にレーザービームの焦点を合わせ、所望のエッチング特徴により定められる境界中においてレーザービームを強化ガラス基板に対して並進させることを含んでなり、レーザービームの並進により、材料の一以上の層の第一の表面から、材料の一以上の層中にエッチング特徴を形成する深さまで材料が切除され、強化ガラス基板は、レーザービームから損傷を受けないままである。
本開示の第五十六の態様は、エッチング特徴が所定の分離距離で分離された複数の欠陥線を含み、その分離距離は、複数の欠陥線がエッチング特徴の境界中に回折格子を作るような距離である第五十五の態様の方法である。
本開示の第五十七の態様は、エッチング特徴が、分離前に母ガラスシートにより定められる複数の強化ガラス物品に形成される第五十六の態様の方法である。
ここに記載の実施の形態のさらなる特徴および利点が、以下の詳細な説明に示され、部分的には、その記載から当業者に容易想到である、または、以下の詳細な説明、請求の範囲および添付の図面を含むここに記載の実施の形態を実施することにより理解される。
前記一般的記載および以下の詳細な説明は種々の実施の形態を説明し、請求対象の性質および特徴の理解のための概観と骨格を提供することを意図していると解すべきである。添付の図面は、種々の実施の形態のさらなる理解を提供するために含まれ、この明細書の一部に組み込まれると共に構成する。図面は、ここに記載の種々の実施の形態を説明し、記述と一緒になって、請求対象の原理と操作を説明するために役立つ。
ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、エッチング特徴を有する強化カバーガラスを有する一例の電子装置を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、ガラス基板中にエッチング特徴を形成するために用いられる一例のレーザーエッチングシステムを模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、欠陥線を特定の模様として刻印するレーザー微小機械加工プロセスに付された非強化ガラス物品を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、欠陥線をもう一つの模様として刻印するレーザー微小機械加工プロセスに付された非強化ガラス物品を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、欠陥線をさらにもう一つの模様として刻印するレーザー微小機械加工プロセスに付された非強化ガラス物品を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、パルス状走査レーザービームを模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、非強化ガラス物品の表面上にビームスポットを時間をかけて発生させるパルス状走査レーザービームを模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、非強化ガラス物品の表面上にビームスポットを時間をかけて発生させる複数のレーザーパルスバーストを含むパルス状走査レーザービームを模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、レーザー走査速度と、非強化ガラス物品の表面上のビームスポット間の距離との関係を模式的かつ図式的に説明する。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、レーザーパルス周波数と、非強化ガラス物品の表面上のビームスポット間の距離との関係を模式的かつ図式的に説明する。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、エッチング特徴を有するガラス物品の輪郭を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、エッチング特徴を有する強化ガラス物品の断面図を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、回折格子として構成されたエッチング特徴を有する強化ガラス物品の断面図を模式的に示す。 図13Aに示すエッチング特徴の近接図を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、表面に適用された一以上の薄層を有する図13Aに示された強化ガラス物品を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、強化ガラス物品の表面に適用された一以上の薄層を含み、その一以上の薄層はその中に形成されたエッチング特徴を有する強化ガラス物品を模式的に示す。 ここに記載され説明された一以上の実施の形態による、強化ガラス物品の裏面に適用された一以上の薄層を含み、その一以上の薄層はその中に形成されたエッチング特徴を有する強化ガラス物品を模式的に示す。
レーザー微小機械加工されたエッチング特徴を有する強化ガラス物品、並びにそのようなエッチング特徴を作製する方法、およびレーザー微小機械加工されたエッチング特徴を有する強化ガラス物品を組み込んでいる電子装置の種々の実施の形態を、ここで、詳細に参照する。本開示の実施の形態は、装飾的、触知的および他の機能的目的のためのレーザー微小機械加工された形状、ロゴおよび他の輪郭を含むように修飾された表面を有する強化ガラス物品、および、それを製造する方法を提供する。エッチング特徴は、触知的差別化を提供することができ、それは、非限定例であるオン/オフボタンまたは「ホーム」ボタンのような仮想ボタン(すなわち、ソフトキー)の位置を示すことができる。強化ガラス物品の表面中のエッチング特徴は、強化ガラス物品の非接触表面と同程度の圧縮応力抵抗を有し得る。
ここで図1を参照すると、レーザー切除微小機械加工により形成されたエッチング特徴112を有する強化ガラス物品110を含む一例の電子装置105を、ここに示され記載された一以上の実施の形態に従って模式的に示す。母ガラスシートから形成することができる強化ガラス物品110は、電子装置における強化カバーガラスとして構成することができる。ここに記載の強化ガラス物品110は、エッチング特徴が望ましい任意のガラス構成要素として構成することもできる(例えば、冷蔵庫、テレビ等のような電化製品のガラス表面)。そのようなものとして、エッチング特徴112を有する強化ガラス物品110は、電子装置における強化カバーガラスとしての用途に制限されない。強化ガラス物品110は、実質的に平坦なガラス物品である、または、例えば、曲面もしくは造形ガラス物品として構成してよい。
エッチング特徴112は、装飾、触知および他の機能を提供するために、任意に設計された形状、ロゴ、輪郭等を有していてよい。例えば、エッチング特徴112は、強化ガラス物品110の表面中に部分的に広がっていてよく、エッチング特徴112と、強化ガラス物品110の残りの表面との間に触知的相違を提供する表面粗さを有する。表面粗さは、二乗平均平方根、例えば(RRMS)で測定することができる。エッチング特徴112は、電子装置105または他のアセンブリーの種々のボタンに関して使用者に触知的フィードバックを提供することができる。非限定的例として、図1に示す強化ガラス物品110は、電子装置105にタッチスクリーンの性能を提供する一以上のタッチ層を有し、エッチング特徴112は、「ホーム」ボタン、「オン/オフ」ボタン等を提供するタッチスクリーンの領域と組み合わせることができる。例えば、ガラス表面上のエッチング特徴112の視覚的および触知的標と電子装置105をオンおよびオフする機能との組み合わせは、電子装置をオンまたはオフすることができる容量センサー上にレーザーエッチング特徴112を配置することにより達成することができる。ガラスの高い引っ掻きおよび損傷抵抗は、通常およびその特別の配置において、このタイプの機能に重要となり得、「仮想」ボタンは繰り返す機械的作動による失敗を起こし難いというさらなり利益を伴う。エッチング特徴112の表面粗さは、強化ガラス物品110の残りの表面と異なり(例えば、大きく)、そのために、使用者は接触のみの感覚を用いて特定のボタンの位置を探すことができる。前述のように、エッチング特徴112は、強化ガラス物品110の不透明性を人の目に見えるように変化させることもできる。従って、任意の形状にしたエッチング特徴を、機能的目的に加えて装飾的目的で用いることができる。
例示的エッチング特徴112は、3つのレーザーエッチング領域113a−113cにより定められる円の中の逆「Y」形状114を示している。3つのレーザーエッチング領域113a−113cの外側の強化ガラス物品の表面は、レーザービームの適用にするエッチングはなされていない。例示的エッチング特徴112は、前述のようにタッチボタンとして用いることができる。逆「Y」形状および3つのレーザーエッチング領域113a−113cは、強化ガラス物品110のユーザーに異なる感触を提供する。ここに記載の強化ガラス物品および電子装置の実施の形態は、図1に示す例示的エッチング特徴112に限定されないことを理解すべきである。
以下により詳細に説明するように、エッチング特徴112を、まず、非強化ガラス基板(例えば、ガラス基板シートまたは小さな予め分離されたガラス基板物品)において作製し、それを次に、化学強化または熱的焼き戻しのような強化プロセスにより強化する。イオン交換プロセスにより強化されたもののような化学強化ガラスは、その優れた強度および損傷抵抗のためにタッチパネル、携帯ディスプレイおよび他の用途において広範囲の用途を見つけた。これらの強度特性は、強化ガラス物品が、表面との高度の接触に晒される装置用のカバーガラスとして作用する場合に、重要である。化学強化ガラス物品の損傷抵抗は、イオン交換によりガラス基板上に形成された表面圧縮層151a、151bの結果である(図12を参照、以下に詳細に説明する)。表面圧縮力は、ガラス基板の内部における張力下の引張領域152により平衡が保たれる。750Mpaを超える表面圧縮力および40マイクロメートルを超える層の圧縮深さ(DOL)は、化学強化ガラス物品(例えば、Corning社製のGorilla(登録商標)Glass)において容易に達成される。ソーダ石灰ガラスのような他のガラスを、典型的に500MPaを下回る表面圧縮力および15マイクロメートルを下回るDOLで、化学的に強化することもできる。
一つの実施の形態において、約64mol%〜約68mol%のSiO;約12mol%〜約16mol%のNaO;約8mol%〜約12mol%のA1;0mol%〜約3mol%のB;約2mol%〜約5mol%のKO;約4mol%〜約6mol%のMgO;および0mol%〜約5mol%のCaOを含み、66mol%≦SiO+B+CaO≦69mol%;NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10mol%;5mol%≦MgO+CaO+SrO≦8mol%;(NaO+B)−A1≧2mol%;2mol%≦NaO−A1≦6mol%;および4mol%≦(NaO+KO)−A1≦10mol%であるアルカリアルミノシリケートガラスから強化ガラス物品が作製される。
もう一つの実施の形態において、約60mol%〜約70mol%のSiO;約6mol%〜約14mol%のA1;0mol%〜約15mol%のB;0mol%〜約15mol%のLiO;0mol%〜約20mol%のNaO;0mol%〜約10mol%のKO;0mol%〜約8mol%のMgO;0mol%〜約10mol%のCaO;0mol%〜約5mol%のZrO;0mol%〜約1mol%のSnO;0mol%〜約1mol%のCeO;約50 ppm未満のAs;および約50ppm未満のSbを含み、12mol%≦LiO+NaO+KO≦20mol%および0mol%≦MgO+CaO≦10mol%であるアルカリアルミノシリケートガラスから強化ガラス物品が作製される。
もう一つの実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスはSiOおよびNaOを含み、ガラスは、ガラスが35キロポアズ(3.5キロパスカル)の粘度を有する温度T35kpを有し、ジルコンが分解してZrOおよびSiOを形成する温度TbreakdownはT35kpより高い。一部の実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、約61 mol%〜約75mol%のSiO;約7 mol%〜約15mol%のA1;0mol%〜約12mol%のB;約9 mol%〜約21mol%のNaO;0 mol%〜約4mol%のKO;0mol%〜約7mol%のMgO;および0mol%〜約3mol%のCaOを含む。
もう一つの実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも50mol%のSiOと、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される少なくとも一種の調整剤とを含み、[(A1(mol%)+B(mol%))/(Σアルカリ金属調整剤(mol%))]>1である。一部の実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、50mol%〜約72mol%のSiO;約9mol%〜約17mol%のA1;約2mol%〜約12mol%のB;約8mol%〜約16mol%のNaO;および0mol%〜約4mol%のKOを含む。
もう一つの実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、SiO、A1、P、および少なくとも一つのアルカリ金属酸化物(RO)を含み、0.75≦[(P(mol%)+RO(mol%))/M(mol%)]≦1.2であり、M=A1+Bである。一部の実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、約40mol%〜約70mol%のSiO;0mol%〜約28mol%のB;0mol%〜約28mol%のA1;約1mol%〜約14mol%のP;および約12mol%〜約16mol%のROを含み、ある実施の形態においては、約40 mol%〜約64mol%のSiO;0mol%〜約8mol%のB;約16mol%〜約28mol%のA1;約2mol%〜約12%のP;および約12mol%〜約16mol%のROを含む。
さらに他の実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約4mol%のPを含み、(M(mol%)/RO(mol%))<1であり、M=A1+Bであり、ROはアルカリアルミノシリケートガラス中に存在する1価および2価カチオン酸化物の合計である。一部の実施の形態において、1価および2価カチオン酸化物は、LiO、NaO、KO,RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOからなる群より選択される。一部の実施の形態において、ガラスは0mol%のBを含む。
さらにもう一つの実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約50mol%のSiOおよび少なくとも約11mol%のNaOを含み、圧縮応力は少なくとも約900MPaである。一部の実施の形態において、ガラスは、さらに、A1および、B、KO、MgOおよびZnOの少なくとも一つを含み、−340+27.1・A1−28.7・Β+15.6・NaO−61.4・ΚO+8.1・(MgO+ZnO)≧0mol%である。特別の実施の形態において、ガラスは、約7mol%〜約26mol%のA1;0mol%〜約9mol%のB;約11mol%〜約25mol%のNaO;0mol%〜約2.5mol%のKO;0mol%〜約8.5mol%のMgO;および0mol%〜約1.5mol%のCaOを含む。
一部の実施の形態において、前記アルカリアルミノシリケートガラスは、リチウム、ホウ素、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、アンチモンおよびヒ素の少なくとも一つを実質的に含まない(すなわち、0mol%を含む)。
一部の実施の形態において、前記アルカリアルミノシリケートガラスは、スロット延伸、溶融延伸、再延伸等のような当該分野で知られているプロセスによりダウンドロー可能であり、液粘度が少なくとも130キロポアズ(13キロパスカル)である。
アルミノシリケートガラス、ソーダ石灰ガラスおよびガラスセラミクスのような他の材料を用いて、ここに記載の実施の形態によりレーザー機械加工することもできる。
そこから強化ガラス物品110を作製するガラス基板の厚さは、強化ガラス物品110を用いる特定の用途に依存する。限定はしない一例として、ガラス基板の厚さは約0.3mm〜約1.5mmの範囲内である。他の厚さも可能である。さらに、ガラス物品は、用途に依り、種々の寸法を取ることができる。
通常、エッチング特徴112は、エッチング特徴112が所望の構造、視覚的特徴および深さを有するように、レーザービームを用いて非強化ガラス物品またはガラス基板シートをレーザー切除することにより作製することができる。レーザービームは、所望のエッチング特徴の境界中に欠陥を作る超短パルス状レーザービームまたは連続波(CW)レーザービームであってよい。超短パルス状レーザービームの場合、短いレーザーパルスとガラス材料との間の相互作用の非熱的切除特性により、欠陥が少なく残留応力の小さな加工表面が得られる。エッチングされたガラス物品を、次に、以下に記載の強化プロセスにより強化することができる。
ここで図2を参照して、一例のレーザーエッチングシステム100を模式的に説明する。本開示の実施の形態は、図2に示す例示的レーザーエッチングシステム100に限定されず、実施の形態は、説明したものより多い、少ないおよび/または異なる構成要素を含んでよいと解すべきである。通常、説明したレーザーエッチングシステム100は、レーザー130、レーザービーム調節光学系132、および走査装置134を含む。レーザービーム調節光学系132および走査装置134により焦点を合わされたまたは他の実施の形態で調節された後、走査レーザービーム122がレーザー光が吸収されるように非線形光学的吸収を誘発する非線形形態で作用すると共に、走査レーザービーム122と、加工される非強化ガラス物品108のガラス材料との間にエネルギー転移があるように、波長および強度を有するレーザービーム120を発するようにレーザー130を構成することができる。非強化ガラス物品108は、一部の実施の形態において、平坦、曲面または他の形状であってよい。実施の形態は、非強化ガラス物品のいかなる特定の形状にも限定されない。レーザービーム120は、ガラス材料に対して非線形光学的吸収を起こすことができる任意の波長を有することができる。一つの実施の形態において、レーザービーム120の波長は約350nm〜約1070nmの範囲内である。非限定的例として、約355nm、約532nmおよび/または約1064nmの波長を有するレーザービーム120を発するようにレーザー130を操作することができる。レーザー130は、非強化ガラス物品108の切除閾値より大きな平均出力で操作することもできる。一つの実施の形態において、非強化ガラス物品108に送られる走査レーザービーム122の平均出力は、約1.5Wより大きい。もう一つの実施の形態において、非強化ガラス物品108に送られる走査レーザービーム122の平均出力は、約8Wより大きい。レーザービーム120は、特定の用途に依り、パルス状レーザービームまたはCWレーザービームであってよい。
レーザービーム調節光学系132は、走査装置134による走査に備えて、レーザービーム120の焦点を合わせるおよび/または視準を合わせる一以上の光学的構成成分として構成することができる。一つの実施の形態において、レーザービーム調節光学系132は、レーザービーム120の視準を合わせる一以上の視準レンズ、レーザービーム120の焦点を動的に調整する一以上の動的集束レンズ、またはそれらの組み合わせを含む。他の光学的構成成分もレーザービーム調節光学系132に含まれてよい(例えば、ビーム拡大器)。
走査装置134は、エッチング特徴の所望の形状に従って非強化ガラス物品108の表面109を走査レーザービーム122が切除するようにx−およびy−軸にそってレーザービーム120を走査することができるレーザースキャナーとして構成される。このように、走査レーザービーム122を、非強化ガラス物品108の表面109に沿って並進させる。走査装置134は、一対の個々に駆動される亜鉛めっき走査ミラーとして構成することができる。非限定的な一例として、走査装置134は、SCANLAB ABから販売されているintelliSCAN(登録商標)モデルレーザースキャンヘッドであってよい。走査装置134は、z−軸に反って、走査レーザービーム122のビームウエストの位置を制御するために、f−θレンズのような集束レンズ136をさらに含んでよい。非強化ガラス物品108に対してレーザービーム122を並進させることは、レーザービーム122の不動を維持しつつ非強化ガラス物品108を並進させることも含み得ると解すべきである。あるいは、レーザービーム122と非強化ガラス物品108とを同時に動かして、非強化ガラス物品108に対してレーザービーム122を並進させることができる。
図2には一つのレーザービーム122しか示されていないが、複数のレーザービーム122を、一以上の非強化ガラス物品108に投射して、一以上のエッチング特徴112を同時に切除し得ると解すべきである。例えば、複数のレーザー130を提供する、および/または、ビームスプリッターを用いて、レーザービーム120を、一以上の非強化ガラス物品108に向けられた複数のレーザービーム122に分割することができる。非限定的な一例として、処理能力を増すために、複数の同期されたレーザービーム122を利用することができる。
走査レーザービーム122の走査速度Sは、限定はされないが、エッチング特徴112の所望の表面粗さ、所望の部品作製処理能力、レーザービームの周波数、走査レーザービーム122がパルス状レーザービームであるかCWレーザービームであるか、レーザーパルスの周波数およびレーザーパルスの強度、を含む種々の要因に基づいて選択することができる。種々の走査速度および走査速度の考察を、以下に詳細に説明する。
レーザー130、レーザービーム調節光学系132および走査装置134の一以上を、制御ソフトウェア、レーザーエッチングシステム100の構成要素を制御するように構成されたアプリケーション特異的ハードウェア、またはそれらの組み合わせを起動している汎用コンピューターとして構成することができる計算装置139により制御することができる。さらに、レーザー130、レーザービーム調節光学系132および走査装置134の一以上は、配電網、発電機またはバッテリー電源のような電源138から電力を受けることができる。レーザーエッチングプロセスは、母ガラスシートの複数のガラス物品(すなわち、母ガラスシートからガラス物品を分離する前)、または個々のガラス物品(すなわち、母ガラスシートから予め分離されたガラス物品)をレーザーエッチングするように構成することができる。
ここで図3を参照すると、レーザー130は、一連のレーザー光パルスを含むレーザービーム120を発することができる超短パルスレーザーとして構成することができる。レーザー光パルスの存続時間は、10フェムト秒〜CWの範囲内である。パルス状レーザービーム122(すなわち、一連のレーザーパルスを含む走査レーザービーム122)は、非線形光学吸収により、非強化ガラス物品108の表面中にレーザー修飾領域または欠陥を作る一連のビームスポット124を作る。ビームスポット124は、例えば、約20マイクロメートルの直径を有することができる。しかしながら、20マイクロメートルを超えるまたは下回る直径を、ある実施の形態で利用することができる。図3は、非線形光学吸収レーザー切除により形成された複数のレーザー修飾領域を含む複数の水平欠陥線115、並びに、前回のビームスポット124’および最新のビームスポット124を示す。「水平」および「垂直」のような用語の使用は、これらの用語は例として用いているだけなので、方向的制限は意図していない。最新のビームスポット124は、パルスオーバーラップPOの距離だけ、前回のビームスポット124’に重なっている。パルスオーバーラップPOの大きさは、ビームスポットの直径、走査速度Sおよび走査レーザービーム122のパルス周波数fに依存する。ある実施の形態において、パルス周波数fは、10kHz〜500kHzの範囲内である。一部の実施の形態において、パルス周波数fは、約100MHzより小さい。しかしながら、用途に依存して、より大きいまたはより小さい周波数を利用することができる。
ビームスポット124により形成されたレーザー修飾領域の品質は、走査レーザービーム122とガラス材料との間でいかにエネルギーが移るか、および、走査レーザービーム122により提供されたエネルギーに、その材料がいかに反応するかにより決まる。走査レーザービーム122の波長および材料の吸収スペクトルが、どれだけの線形吸収が起こるかを決め、レーザー強度およびガラス材料の光学的特性が、レーザーとガラス材料との間の相互作用中に存在する非線形光学的現象があるかどうかに影響する。レーザーとガラスの相互作用がどれだけ長く続くか、および走査レーザービーム122から移ってきたエネルギーを材料がどれだけ速く放出するかに依存して、差異はあれ熱の負荷または消失がある。例えば、高度に吸収性の波長を有する走査レーザービーム122をCWモードで操作して非強化ガラス物品108の表面を切除すると、多量の熱が発生すると共に加熱影響領域が作られ、そこで、応力が蓄積し始め、欠陥および亀裂が形成される。しかしながら、パルス状走査レーザービーム122を用いて同じ操作を行うと(例えば、図3に示すように)、パルス状走査レーザービーム122からガラス材料へのエネルギー移動は、例えば、レーザー光パルス幅、繰り返し速度(すなわち、周波数f)および平均出力を介してエネルギーの「線量」を調整することにより、良好に制御される。レーザー130をCWモードで操作すると望ましいエッチング特徴が作られる用途があるが、通常は、走査レーザービーム122のパルス幅が長いほど、エッチング特徴112の品質がより低くなる。
走査線上を非強化ガラス物品108を横切って走査レーザービーム122を走査して複数の水平欠陥線115を形成するように、走査装置134をプログラムすることができる。図3に示す実施の形態では、水平欠陥線115は水平分離距離dShだけ分離される。水平分離距離dShは、レーザー光の連続パルス間のパルス重複POの量に影響する。一部の実施の形態において、複数の水平欠陥線115を横切って走査レーザービーム122の多重走査を行うように走査装置134を制御することができる。図3に示す欠陥線(および図4の垂直欠陥線116)は、非強化ガラス物品108の表面上に刻印された欠陥を概略的に点線として表すだけであり、実際の修飾された領域または欠陥を表していないことに留意すべきである。
ここで図4を参照すると、複数の水平欠陥線115および複数の垂直欠陥線116を形成してエッチング特徴112’中に交差網掛欠陥模様を形成する実施の形態が模式的に示されている。例えば、複数の水平欠陥線115は、走査レーザービーム122の連続的水平走査により発生し、複数の垂直欠陥線116は走査レーザービーム122の連続的垂直走査により発生する。複数の水平欠陥線115は、水平分離距離dShだけ分離し、複数の垂直欠陥線は、垂直分離距離dsvだけ分離している。水平分離距離dShおよび垂直分離距離dsvの値は、それぞれ水平および垂直走査中のパルス重複POに影響を与える。
二次元模様(例えば、非強化ガラス物品108の表面109を横切るx−およびy−方向)、およびデカルトの極または曲線座標に基づく三次元模様(例えば、非強化ガラス物品の表面109および本体中への多様な深さを横切るx−およびy−方向)のような他の欠陥線模様も発生させることができる。例えば、所望のエッチング特徴112の周辺部中に任意の欠陥線(すなわち、ランダム欠陥模様)を形成することができる。図5は、円形または渦巻き状欠陥線117模様を有するエッチング特徴112’’を示す。走査パターン、欠陥の寸法(例えば、レーザー切除により形成された修飾領域の幅および長さ)、修飾領域または欠陥の深さ、パルス重複POの量、繰り返し走査数、走査線の間の分離距離、および他のパラメーターが、エッチング特徴112の審美的および触知的特性に影響を与え得る。欠陥線の間の間隔および/または欠陥線の方向が、エッチング特徴112の全体に渡って変化する、種々の欠陥模様も提供することができる。任意の欠陥線模様を提供することができる。
図6−10は、走査レーザービームの走査速度S、レーザーパルス繰り返し速度(すなわち、周波数f)および非強化ガラス物品上のビームスポットの間の距離dの間の関係を示している。ビームスポットの間の距離dは、連続ビームスポットの間のパルス重複POを提供する場合と提供しない場合がある。まず図6を参照すると、一連のレーザーパルス123を含むパルス状走査レーザービーム122が示されている。一連のレーザーパルス123の個々のパルスは、パルス幅pwを有し、個々のパルスは、周波数fで発生するので、一連のレーザーパルスは、1/fで定義される期間τだけ発生する。パルス幅pwは、一部の実施の形態において、10フェムト秒と短い。パルス幅pwは、現行のおよび開発途中のレーザーを用いて、できるだけ短くすることもできる(例えば、1アト秒と短い)。
図7は、走査レーザービーム122をx−軸方向に走査速度Sで走査したときの非強化ガラス物品の表面上に照射された複数のビームスポット124a−124nを示す。走査レーザービーム122をy−軸方向に走査することにより、同様のビームスポットを形成し得ると解すべきである。レーザーパルスシリーズ123aは、個々のパルス125aが非強化ガラス物品の表面上に照射されビームスポット124aをその上に形成する時に一点に一連のレーザーパルス123があることを示している。レーザーパルスシリーズ123bは、次の連続的な個々のレーザーパルス125bが非強化ガラス物品の表面上に照射され、先のビームスポット124aから距離dだけ分離している次のビームスポット124bを形成する時に次の点に一連のレーザーパルス123があることを示している。同様に、レーザーパルスシリーズ123bに続いて個々のレーザーパルス125cによりビームスポット124cを形成するものとして、レーザーパルスシリーズ123cを示す。従って、走査速度Sおよび一連のレーザーパルス123の周波数fは、連続ビームスポットの間、すなわち、非強化ガラス物品の表面中の修飾領域の間の距離dに影響を与える。図9および10を参照して以下に説明するように、レーザーパルス123の周波数fは、走査レーザービーム122の走査速度Sの変化よりも、2つのビームスポットの間(および、従って、欠陥または修飾領域の間)の距離に大きな影響を有する。
ここで図8を参照すると、もう一つの実施の形態において、周期τを有する一以上の迅速レーザーパルスからなる複数のレーザーパルスバースト125a’−125c’を含む一連のレーザーパルス123a’−123c’によりビームスポットが形成される。レーザーパルスバーストは周期τを有する。例えば、3つのレーザーパルスからなるレーザーパルスバースト125a’は、ビームスポット124a’を作る。同様に、レーザーパルスバースト125b’はビームスポット124b’を作り、レーザーパルスバースト125c’はビームスポット124c’を作る。レーザーバースト速度(すなわち、周波数)の変化は、走査レーザービーム122の走査速度Sの変化よりも、2つのビームスポットの間の間隔に大きな影響を与える。
図9および10は、走査速度Sとビームスポット間距離との関係、およびレーザーパルス周波数fとビームスポット間距離との関係を、それぞれ示している。レーザーパルスにより作られた修飾領域の間隔は、強化プロセス後の強化ガラス物品110中のエッチング特徴112の特性(例えば、表面粗さ、不透明性、等)に影響を与え得る。図9は、遅い走査速度Sでx−軸に沿って非強化ガラス物品を横切るように走査される一定周波数f(200kHz)での第一の一連のレーザーパルス126、および、第一の一連のレーザーパルス126と同じ一定周波数fで発生するが速い走査速度Sで走査される第二の一連のレーザーパルス127を示す。遅い走査速度Sは、連続ビームスポット間に距離dを作り、早い走査速度Sは、ビームスポットが互いに重なり合うように、距離dより小さな連続ビームスポット間距離dを作る。従って、走査レーザービームの走査速度を増すと、ビームスポットにより作られる修飾領域の間の距離が小さくなる。
図9は、走査速度S(mm/s)の関数として連続ビームスポットの間の距離d(マイクロメートル)をプロットするチャート140も提供する。走査速度Sと連続ビームスポット間距離dとの間に線形関係がある。
ここで図10を参照すると、レーザーパルス周波数fと、連続ビームスポット間距離dとの間の関係は、非線形である。図10は、一定走査速度S(200mm/s)および低い周波数fで非強化ガラス物品の表面を横切るように走査される第一の一連のレーザーパルス128、および第一の一連のレーザーパルス128と同じ一定走査速度Sで、しかし高い周波数fで非強化ガラス物品の表面を横切るように走査される第二の一連のレーザーパルス129を示す。高い周波数fは、ビームスポットが互いに重なり合うように、距離dより小さな連続ビームスポット間距離dを作る。従って、レーザーパルスの周波数を増すと、ビームスポットにより作られる修飾領域の間の距離が小さくなる。図10は、周波数fと、連続ビームスポット間距離dとの間の非線形関係を示すチャート141も提供する。
走査速度、レーザーパルス周波数、パルス幅、平均レーザー出力、通過回数、網掛模様などのような前述の種々のパラメーターを調節して、所望のエッチング特徴の深さおよび表面粗さを達成することができる。これらのパラメーターの実際の値は、機械加工される材料に依存する。図11は、エッチング特徴112が約5マイクロメートルのエッチング深さを有するCorning Gorilla Glassのレーザー機械加工表面のプロフィールを示す。エッチング特徴112は、実質的に垂直の外周壁119を有する。外周壁119は、エッチング特徴112を、ガラス基板の周囲の表面から分離する。外周壁119の角度は、エッチング特徴112の触知感覚に、および、外周壁が応力集中点となるので、エッチング特徴112の損傷抵抗に影響を与え得る。図11は、エッチング特徴112が、特別の表面粗さを有することも示している。表面粗さは、前述のパラメーターを調節することにより変化させることができる。
非強化ガラス物品108は、前述のレーザー機械加工プロセスによりエッチング特徴112が形成された後に、化学強化プロセスに付することができる。一つの実施の形態において、非強化ガラス物品108を、ガラスの外表面に近いガラスの層中でガラスの小さな金属イオンを同じ価数の大きな金属イオンに置き換えるまたは交換するイオン交換プロセスにより化学的に強化する。小さなイオンを大きなイオンに置き換えると、層の深さ(DOL)側に広がるガラス物品またはシートの表面の中に圧縮応力が生じる。
一つの実施の形態において、金属イオンは1価アルカリ金属イオン(例えば、Na、K、Rb、等)であり、ガラス中の小さな金属イオンに置き換わる大きな金属イオンの少なくとも一種の溶融塩(例えば、KNO、KSO、KCl、等)を含む浴中にガラス物品108を浸漬することによりイオン交換が成される。あるいは、Ag、Tl、Cu、等のような他の1価カチオンを、ガラス材料中でアルカリ金属カチオンと置き換えることができる。ガラス物品を強化するために用いられるイオン交換プロセスとしては、ガラスを単一の浴に浸漬する、または、ガラスを同種または異なる組成の複数の浴に浸漬し、浸漬間に洗浄および/またはアニーリング工程を設けることが挙げられるが、これらに限定されない。
図12は、エッチング特徴112を有する強化ガラス物品150の断面図を示す。化学強化プロセスは、強化ガラス物品150の第一および第二の表面からそれぞれ広がっている圧縮応力下の第一および第二強化層151a,151bを誘発する。第一および第二強化層151a,151bはDOL側に広がっている。第一および第二強化層151a,151bの圧縮力は、張力下の中心領域152の張力により均衡が取られる。ガラス材料の組成および強化プロセスに依り、DOLは5マイクロメートルより大きく、第一および第二強化層151a,151bの表面圧縮力は100MPaより大きい。750MPaを超える表面圧縮力および40マイクロメートルを超えるDOLは、Corning社製のGorilla Glassにより容易に達成される。一部の実施の形態において、エッチング特徴を、次に、化学的にエッチングして、レーザー微小機械加工中に形成された欠陥を鈍く(例えば、火炎プロセス)して、さらに、全強度に対する機械加工領域の影響を均等にすることができる。
非強化ガラス物品108を化学強化に付すると、エッチング特徴112を定めるレーザー加工領域と、機械加工されていない表面(すなわち、非接触表面)とが、同時に強化される。強化ガラス物品150の圧縮強度を、特にエッチング特徴112の領域において保つために、エッチング特徴112のエッチング特徴深さdが、強化ガラス物品150の層の深さより小さいことを確保することが望ましい。しかしながら、エッチング特徴深さdが層の深さより大きな実施の形態、特に、層の深さが浅い場合のそのような実施の形態も考えられる。Gorilla Glassの場合、第一および第二強化層151a、151bの深いDOL故に、エッチング特徴112の欠陥または修飾領域の大部分が高圧縮応力により凝固し、それにより強力なガラス物品が得られる。
ガラス物品のエッチング特徴領域と非エッチング表面との間における表面粗さおよび傷密度の差により引き起こされるエッチング特徴の弱点が原因でガラス物品が破壊しないように化学強化プロセスを操作することが望ましい。化学強化プロセスの初期段階にエッチング特徴領域に誘発される応力の量を減らして、中央部の亀裂の形成を防止することができる。化学強化の初期段階における応力を減少させる複数の方法があるが、それらの全ては個々にまたは互いに組み合わせて行うことができる。浴中の大きなイオン(例えば、K)の量が、その応力を初期に低くさせるが、化学強化プロセスの全体を通しても低く留まり、ガラス物品に所望の強化層を達成させることもできる。さらに、化学強化プロセス中の熱サイクルは、浴を予め加熱し、続いて、熱作用を緩和させるためにガラス物品をゆっくり冷却することにより調節することができる。
エッチング特徴が化学強化浴の高応力環境中にある場合、ガラス物品が中央部の亀裂および破損を生じず、むしろ、化学強化の初期の数分間にガラス物品が損なわれないままであるように応力を充分に再分配させるように、エッチング特徴の欠陥を緩和するような化学的エッチングを利用することもできる。さらに、エッチング特徴とガラス物品の残りの表面との間の表面粗さの相違を少なくするためにガラス物品の非エッチング特徴面を僅かに粗面化するように化学的エッチングを用いることもできる。
一部の実施の形態において、非強化ガラス物品を、エッチング特徴のレーザー微小機械加工の前に、まず、強化することができる。従って、エッチング特徴を、レーザーにより直接、強化表面層に微小機械加工することができる。
一部の実施の形態において、エッチング特徴深さdおよび欠陥線(例えば、水平欠陥線115および/または垂直欠陥線116)の間の分離距離(例えば、水平分離距離dShおよび/または垂直分離距離dsv)は、エッチング特徴112の欠陥線が回折格子効果を作るような程度とすることができる。ここで図13Aおよび13Bを参照して、一例のエッチング特徴112を模式的に示す。図13Bは、図13Aに示すエッチング特徴の近接図である。図示するエッチング特徴112は、前述のようにレーザーで加工された複数の水平欠陥線115を含む(図3も参照されたい)。水平欠陥線115は、隣接水平欠陥線115の間の水平分離距離dShにより定められる線間隔を有する。この線間隔によって、水平線115が、角度の付いたファセット118を有する回折格子を定め、入射光Iを幾つかのビームに分割および回折し(例えば、回折ビームDまたは回折ビームD)、エッチング特徴112の存在および位置のユーザーへのさらなる視覚的インジケーターを提供する光Rを反射する。この線間隔によって、所望の回折格子効果が達成される。回折格子効果は透過的または反射的である。非限定的な一例として、線間隔は、典型的には約1〜3マイクロメートルである水平分離距離dSh(または垂直間隔距離dsv、または他の構造の欠陥線の間の他の間隔距離)により定めされる。水平欠陥線は、図示の実施の形態の断面で見た場合に三角溝として構成される。しかしながら、実施の形態は三角溝に限定されず、他の溝形状が可能であると理解すべきである。
レーザー切除および/または化学強化の前または後にガラス物品の表面に種々の層を適用することもできる。例えば、一部の実施の形態において、水、油(例えば、皮脂)および他の物質の蓄積を防止するためにガラス物品の表面に、疎水性および/または疎油性塗膜のような層を適用することができる。ガラス物品に装飾性または他の機能を提供する他の薄膜層も適用することができる。非限定的な一例として、スマートフォン用のカバーガラスにおいて、不透明材料の層をガラス表面に適用することによりディスプレイを囲んでいる領域は通常は隠される。種々の薄膜層としては、金属、非導電性の金属または金属酸化物、または、ガラス物品に、すなわちガラス物品のエッチング特徴または非エッチング表面に適用される他の酸化物材料が挙げられるが、これらに限定されない。
審美的目的で、材料の一以上の薄層をガラス物品に適用することもできる。例えば、材料の一以上の薄層をエッチング特徴に、およびガラス物品の表面の周囲領域に堆積させて、ホログラフ、玉虫色、および/または艶消し審美性を、ガラス物品の表面に提供することができる。ここで図14を参照すると、一以上のエッチング特徴112を有するガラス物品108の表面109に、一以上の薄層170を適用することができる。図14は、回折格子効果を作るための線間隔を有する水平線115上に一以上の薄層170が堆積されるように、図13Aおよび13Bに示すガラス物品108に適用された一以上の薄層170を模式的に示す。一以上の薄層170は、エッチング特徴112の形状に従う。一部の実施の形態において、一以上の薄層170はエッチング特徴に局所的のみ提供される、またはガラス物品の表面109のさらなる領域を覆うことができる。水平線以外の模様(例えば、渦巻き模様、交差網掛模様、一次元模様、二次元模様、ランダム模様、変化に富む模様、等)のエッチング特徴を有するガラス物品108の表面に、一以上の薄層170を適用することができると解すべきである。
一以上の薄層170のために選択される材料のタイプは、所望の審美効果に依存する。例えば、ホログラフまたは玉虫色効果を達成するために、金属(例えば、Al、Cu、Au)および/または誘電材料(例えば、MgF、シリカ、Ta、およびZnS)のような反射性材料を、エッチング特徴112および周囲領域の上に堆積させることができる。限定はされないが物理的蒸着、化学的蒸着、イオンビーム蒸着、分子線エピタキシーおよびスパッター蒸着のような任意の既知のまたは開発途上の技術により材料の薄層を適用することができる。一部の実施の形態において、エッチング特徴の回折格子が、特定の色(例えば、赤色)の波長のみを回折するように、材料が選択される。一以上の薄層170の材料と協力してエッチング特徴が玉虫色効果を提供するように微小特徴を作るためにエッチング特徴のエッチング模様を選択することができる。
非限定的な一例として、一以上の薄層の厚さは、回折される光の波長と対応する。例えば、一以上の薄層の厚さは、約数百ナノメートルである。材料または用途に依り、他の厚さを用いることができる。
前述したように、エッチング特徴112およびガラス物品108の周囲領域の光沢を低下させる(すなわち、艶消し概観を提供する)ために、一以上の薄層170をエッチング特徴112 (および、ガラス物品108の周囲領域)に適用することもできる。例えば、エッチング特徴112および/またはガラス物品108の周囲領域の反射性を低下させるために、ポリマー材料の一以上の薄層を提供することもできる。
ここで図15を参照すると、レーザー加工の前にガラス物品の第一の表面109に、一以上の薄層180を提供することができる。一以上の薄層180(例えば、金属、非導電性金属、非導電性金属酸化物または他の酸化物材料の層)をガラス物品108の第一の表面109にまず適用する実施の形態を図15に模式的に示す。前述のようなエッチング特徴182の所望の模様(例えば、規則正しい、変化に富んだ、またはランダムな一次元もしくは二次元模様)で走査線185を形成するように一以上の薄層180のみが切除されるように走査レーザービーム122が操作される。そのような実施の形態において、ガラス物品108はレーザーにより切除されない。ガラス物品108の表面中のエッチング特徴112に関して前述したように、一以上の薄層180中のエッチング特徴182は、一以上の薄層180の周囲領域とは異なる概観および性質を有する。一以上の薄層180およびエッチング特徴182は、ホログラフ、玉虫色、および/または艶消し審美性を作る。
ガラス物品108の第二の表面111(すなわち、裏面)に一以上の薄層190が適用される実施の形態を図16に模式的に示す。レーザービーム122は、ガラス物品108を損傷または他の影響を与えないが、第二の表面111において一以上の薄層190を切除して、エッチング特徴192を定める損傷線195を形成するように、操作することができる。一以上の薄層190は、ガラス物品108の裏面111から、または上面109からガラス物品108を通して加工することができる。
ここに記載の実施の形態は、以下の実施例によりさらに明確となる。サンプルとしての非強化ガラス物品を、355nmの波長、100kHzの周波数(すなわち、繰り返し速度)および1.8Wの平均出力で操作される市販の10ピコ秒パルス状レーザー(Lumera Laser製のRapidシリーズ)を用いてレーザー機械加工した。f−θレンズおよび一対の亜鉛めっき走査ミラー(SCANLAB ABから販売されているintelliSCAN モデルレーザースキャンヘッド)を用いて0.7mm厚Gorilla Glassサンプル(例えば、コード2318およびコード2319)の上をパルス状レーザービームを走査した。焦点を合わせたレーザービームは、直径が約12マイクロメートルのビームスポット寸法を有し、交差網掛模様(図4を参照)に従って特定の速度で走査し、エッチングすべき所望の深さに依り一回以上繰り返した。このレーザーエッチングシステムを用いて、交差網掛模様を用いて10cm/sの走査速度で1回通過させて、深さ10マイクロメートルのエッチング特徴を達成した。走査速度を25cm/sとすると測定されたエッチング深さは10マイクロメートルに増え、交差網掛模様を2回繰り返した。より長い波長(例えば、532nm、1064nm)を用いると、同様の特徴が得られると予想され、高い効率、高い処理量および低いコスト故に、製造において好ましい。エッチング特徴は、図1に示すような幾何的構造を有する。
サンプルを、イオン交換化学強化プロセス(KNO浴、410℃、7時間)に付して、第一および第二の強化表面層を形成することにより強度を増した。エッチング特徴のガラス基板強度への影響を特徴付けるために、サンプルを圧縮応力と引張応力の両方の条件下にリング・オン・リング強度試験に付した。圧縮モードで応力をかけるパターンで試験を行う場合は、レーザーエッチング特徴を内側(すなわち、直径のより小さな)リングに接触するように配し、引張モードでは反対の構造とした。
2つの異なるエッチング深さ(5マイクロメートルおよび25マイクロメートル)で10個の対照サンプル(非エッチング特徴)の1セットと5個のサンプルの数セットを準備し、圧縮および引張応力下に測定した。表1に示すように、対照セット(非エッチング特徴)の測定された平均リング・オン・リング強度は140MPaであり、圧縮表面上のエッチング特徴を試験した場合に平均強度は実質的に変化しなかった。引張表面上でエッチング特徴を試験した場合には平均強度の著しい低下が観察された(エッチング深さ5マイクロメートルについて18%低下、およびエッチング深さ25マイクロメートルについて44%低下)。しかしながら、大部分の用途において、ユーザーがエッチング特徴に力を加えるので、エッチング特徴上に誘発される応力は、圧縮応力である。
Figure 0006599228
本開示の実施の形態は、装飾、触知および他の機能的目的のためにレーザー微小機械加工された形状、ロゴおよび他の輪郭を含むように修飾された表面を有する強化ガラス物品、および、それを製造する方法を提供すると解すべきである。特に、Gorilla Glassおよび他のガラス組成を用いた場合、エッチング特徴を、タッチパネルまたは他の2D/3D装置および用途に用いることができ、化学強化プロセスにより提供されたより大きな引っ掻きおよび損傷抵抗の差別的利点を有する一方、そのようなエッチング特徴も有する。エッチング特徴は触知差別を提供し、それにより、例えば、装置の表面上の基準点の位置を決めることができる。そのようなエッチング特徴は、例えば、オン/オフボタンまたは「ホーム」ボタンのような仮想ボタンの位置を示すこともできる。限定はされないが接触感知装置(例えば、携帯電話、タブレット、ラップトップまたはデスクトップコンピューター、テレビ、等)およびラベル、ロゴ、装飾のような他の用途、および自動車、建築または電気製品における他の機能を含む種々の用途のために、エッチング特徴を強化ガラス物品の上に提供することができる。エッチング特徴は、強化ガラス物品の非エッチング表面と同等の圧縮応力抵抗を維持する。
請求対象の精神および範囲から離れることなく、ここに記載の実施の形態に、種々の修飾および変化を設け得ることが当業者には明らかである。すなわち、添付の請求の範囲およびその等価事項の範囲内の修飾および変化であれば、ここに記載の種々の実施の形態のそのような修飾および変化は明細書に包含されるものとする。

Claims (7)

  1. エッチング特徴を有する強化ガラス物品を作製する方法であって、
    第一の表面および第二の表面を含む非強化ガラス物品を提供する工程、
    前記非強化ガラス物品に実質的に透過性の波長を含むレーザービームを該非強化ガラス物品の第一の表面上に焦点を合わせて前記第一の表面から材料を切除する工程、
    所望のエッチング特徴により定められる境界中で前記レーザービームを前記非強化ガラス物品に対して並進させ、該レーザービームの並進によりエッチング特徴を形成する深さまで前記第一の表面から材料を切除する工程、および
    前記エッチング特徴を形成後に化学強化プロセスにより前記非強化ガラス物品を化学的に強化する工程、
    を含んでなり、
    前記レーザービームを並進させる工程において、前記レーザービームが、複数の欠陥線が前記エッチング特徴の境界中に回折格子を作るような分離距離で分離された複数の欠陥線を作り、
    前記強化ガラス物品は、該強化ガラス物品の第一の表面および第二の表面からそれぞれ層の所定の深さまで広がっている圧縮応力下の第一の強化表面層および第二の強化表面層、および、第一の強化表面層と第二の強化表面層との間にある引張応力下の中心領域を有し、
    前記エッチング特徴の深さは、該エッチング特徴が圧縮応力層中にあるようにその層の深さより小さいことを特徴とする方法。
  2. 材料の一以上の薄層が前記エッチング特徴上に配されるように前記強化ガラス物品の表面上に該材料の一以上の薄層を適用する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記レーザービームが、10フェムト秒より大きなパルス幅を有するパルス状レーザービームであり、
    前記パルス状レーザービームを、10cm/s〜120cm/sの範囲内の走査速度で非強化ガラス物品の第一の表面上を並進させ、および
    前記パルス状レーザービームが10kHz〜500kHzの範囲内の周波数でパルスを発することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記レーザービームを並進させる工程が、所望のエッチング特徴の境界中で該レーザービームを並進させて第一の方向に沿って複数の第一の欠陥線を形成し、所望のエッチング特徴の境界中で該レーザービームを並進させて第二の方向に沿って複数の第二の欠陥線を形成する工程を含み、前記複数の第一の欠陥線が前記複数の第二の欠陥線と交差する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記レーザービームを並進させる工程が、前記レーザービームを並進させて所望のエッチング特徴の境界中に二次元模様または三次元模様を形成する工程を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 強化ガラス物品の第一の表面および第二の表面からそれぞれ層の所定の深さまで広がっている圧縮応力下の第一の強化表面層および第二の強化表面層、および該第一の強化表面層と該第二の強化表面層との間にある引張応力下の中心領域、および、前記第一の表面または前記第二の表面中の、層の深さより小さな深さを有すると共に少なくとも一つのエッチング特徴の外側の第一の表面または第二の表面の表面粗さより大きな表面粗さを有する少なくとも一つのエッチング特徴を含んでなり、
    前記少なくとも一つのエッチング特徴はレーザーエッチング特徴であり、所定の分離距離で分離された複数の欠陥線を含み、該分離距離は、前記複数の欠陥線が前記少なくとも一つのエッチング特徴の境界中に回折格子を作るような距離である、強化ガラス物品。
  7. 前記強化ガラス物品の表面および前記エッチング特徴の上に配された材料の一以上の薄層をさらに含む、請求項に記載の強化ガラス物品。
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