JP6598142B2 - シリカガラスルツボの歪測定装置、シリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

シリカガラスルツボの歪測定装置、シリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリカガラスルツボの歪測定装置、シリコン単結晶の製造方法、シリカガラスルツボの歪測定方法、位相差マップ、インゴットおよびホモエピタキシャルウェーハに関する。
シリカガラスルツボの製造方法は、一例では、平均粒径100μm〜400μm程度のシリカ粉を回転するカーボンモールドの内側に遠心力を利用して堆積させてシリカ粉層を形成するシリカ粉層形成工程と、モールド側からシリカ粉層を減圧しながら、シリカ粉層をアーク熔融させることによってシリカガラス層を形成するアーク熔融工程を備える(この方法を「回転モールド法」と称する)。
アーク熔融工程の初期には、シリカ紛層の最表面全体を薄くガラス化した、いわゆるシール層を形成し、その後、強く減圧することによって気泡を除去して透明シリカガラス層(以下、「透明層」と称する。)を形成し、その後、減圧を弱くすることによって気泡が残留した気泡含有シリカガラス層(以下、「非透明層」と称する。)を形成する。これにより、内表面側に透明層を有し、外表面側に非透明層を有する例えば二層構造のシリカガラスルツボが形成される。
ルツボの製造に使用されるシリカ粉には、天然石英を選鉱し、次に不純物を除去する精製過程を経て、純度が99%以上のものを粉砕して製造される天然シリカ粉(結晶質)や化学合成によって製造される合成シリカ粉(ガラス)がある。このうち天然シリカ粉は、天然物を原料としているので、物性・形状・サイズにばらつきが生じやすい。シリカ粉の物性・形状・サイズが変化すると、シリカ粉の溶融状態が変化する。
すなわち、アーク熔融の際、最初にシリカ粉が焼結し、体積拡散後、さらに温度が上がって粒界がなくなり、ガラス化、Si−O−Siのネットワーク構造が構成される。この焼結の速度やガラス化速度が変化していく。具体的には、例えばシリカ粉が小さかったり、同じ体積でも表面積が大きい形状だったりすると、焼結速度やガラス化速度が速くなる。シリカ粉が小さいと、隣り合うシリカ粉の間の空間も小さくなり、減圧にて気泡を除去する速度よりも速く焼結およびガラス化が進むため、製造されたガラスルツボ中の気泡は小さく、多くなる。このように、焼結速度やガラス化速度によってアーク熔融後のガラスの分子構造や含有される気泡などが変化することになる。
このため、同じ条件でアーク熔融を行っても、製造されるルツボの形状、内径・外形の真円度、透明層および非透明層の肉厚、透明層と非透明層との境界面での真円度(垂直方向の波打ち)などにばらつきが生じてしまう。
300mmシリコンウェーハ用の結晶引き上げに使用されるような口径32インチ(約81cm)のシリカガラスルツボでは、透明層の肉厚は約1mm以上10数mm以下程度、非透明層の肉厚は約5mm以上50mm以下程度である。シリカガラスルツボの口径が大きくなるほど、上記のようなばらつき顕著に表れる。
また、アーク熔融工程の後に冷却工程を経て熔融したシリカガラスを固化する。この冷却工程では、冷却速度や冷却ガスの吹き付けなどの冷却方法によってシリコンと酸素と結合の仕方(例えば、6員環、8員環)や、シリコンと酸素との結合構造における原子間の空隙の大きさが変わる。例えば、8員環等の員環の大きい構造の存在割合が高くなると、空隙も多くなる。このように、ルツボの製造における熔融工程や冷却工程などの諸条件によって材料原子の結合の状態が複雑に変化することから、シリカガラスルツボの冷却後の内部残留応力の分布が変わり、ルツボの強度(CZ引き上げ中の変形)に影響を及ぼすことになる。
特許文献1には、アーク熔融後の硬化時における各層の収縮量の相違によってシリカガラスルツボの各層に異なる内部応力が存在することが記載されている。また、特許文献2には、ルツボの内層が緻密化する際に生じる内部応力を緩和することで、亀裂や剥離などの不具合の発生を抑制できることが記載されている。
特開2013−112597号公報 特開2013−095652号公報 特開2014−094851号公報 特開2011−225409号公報 特開2005−015288号公報 特開2011−093778号公報 特開2010−013306号公報 特開2005−082474号公報 特開2010−132498号公報 特開2010−163297号公報 特開2010−053015号公報 特開2010−215460号公報 特開2011−068531号公報 特開2011−107882号公報 特開2011−219319号公報 特開2011−246341号公報 特開2012−250866号公報 特開2013−216505号公報 特開2015−089854号公報 特開2016−018927号公報 特表2014−528643号公報 特開2008−219002号公報
田島道夫監修,「シリコン結晶技術」,日本学術信号界第145委員会 技術の伝承プロジェクト編集員会,2015年1月20日 第2刷発行,p.88−111
シリカガラスルツボの品質は、シリカガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げ(例えば、CZ法)を行った場合のシリコン単結晶の品質と密接に関連する。例えば、製造されたシリカガラスルツボの形状のばらつきは、シリコン単結晶の歩留まりの悪化に繋がる。シリカガラスルツボの不純物(例えば、ガラス中の不純物金属元素)や異物の混入、は、シリコン単結晶の有転位化に繋がる。シリカガラスルツボの内表面の滑らかさ(見た目で分かるような凹凸)、表面付近の気泡の量、大きさによっては、ルツボ表面の欠け、気泡の割れ、潰れによるシリコン内への微小な破片(ルツボから剥離した粒子など)がシリコン融液へ脱落する。これがシリコンインゴット中に混入することにより、シリコンインゴットが有転位化することに繋がる。シリカガラスルツボの肉厚の分布、外形形状によっては、引き上げ中にシリカガラスルツボの変形具合(側壁部の倒れ、ゆがみ、底部の盛り上がりなど)が変わり、ルツボ内容量の変化によってシリコン融液の液面降下速度のずれが発生してしまう。シリカガラスルツボの外側の微小な孔が所定以上の大きさであったり、欠けやクラックがあったりすると、引き上げ中にシリカガラスルツボが割れる可能性もある。シリカガラスルツボの外径寸法のばらつきや形状のばらつき、外側表面に所定以上の突起があることで、シリカガラスルツボをカーボンサセプタ内に入れる際に不具合が生じたり、カーボンサセプタとの間に必要以上の隙間が生じたりすることになる。
また、シリコン単結晶の引き上げ装置では、シリカガラスルツボに材料となる多結晶シリコンを投入し、1420℃以上に加熱して溶融する。そして、シリコン融液に種結晶を接触させて所定の速度で引き上げていく。この際、シリコン融液の液面の上方において、引き上げられるシリコン単結晶の周辺には熱遮蔽部材が設けられる。シリコン融液の液面と熱遮蔽部材の先端との高さは、シリコン単結晶の固液界面付近の温度勾配を制御する上で非常に重要となる。
特許文献3〜6には、シリコン単結晶の成長速度をV、固液界面付近での温度勾配をGとした場合のV/Gを規定して、欠陥特性に優れたシリコン単結晶を製造する技術が開示されている。
特許文献7には、CZ法によって製造されたシリコン単結晶ウェーハにおける欠陥の判定方法が記載されている。ここでは、欠陥として、例えば、単結晶育成の際の引上げ速度と、凝固直後の単結晶内温度分布(引上げ軸方向の結晶内温度勾配)に依存して発生するCOP(Crystal Originated Particle)や、育成中の結晶の熱履歴に依存して発生するOSF(Oxidation Induced Stacking Fault)が挙げられている。
特許文献8には、低欠陥のシリコン単結晶を効率よく引上げることができるシリコン単結晶の製造方法が開示されている。この製造方法では、予想結晶直径と目的結晶直径との偏差に応じて引上速度とヒータ温度を変動させる引き上げ方法(ADC:自動直径制御)を行っている。
特許文献9には、装置の特性によるバラツキが無く、直径および酸素濃度の変動を抑制しながら単結晶を製造することができるシリコン単結晶の製造方法およびその製造装置が開示されている。この製造方法では、水平磁場を印加しながら単結晶の引き上げを行う磁場の中心位置を測定し、単結晶製造前、及び/又は、単結晶製造中に渡って、測定された磁場の中心位置と単結晶の回転軸となる引上軸とを水平方向に2〜14mmの範囲でずらすようにしている。
特許文献10には、結晶引上中の液面位置を正確に検出することによって、シリコン融液の融液面の位置を正確に制御し(ギャップ一定制御)、所望の結晶特性を備えた高品質なシリコン単結晶を製造することが可能なシリコン単結晶の製造方法の開示されている。この製造方法では、無欠陥領域が得られるようにV/Gを高精度に制御するため一定の引上速度で引上げを行うとき融液面に対面してその一部を覆うように配された遮熱部材との間隔Δtの測定を行っている。
特許文献11には、結晶欠陥の少ない高品質の単結晶を作製することが可能なチョクラルスキー法による単結晶の製造方法、およびこの製造方法により作製された単結晶が開示されている。この技術では、単結晶の引き上げ速度の操作量の上下限値の算出により引き上げ速度移動平均値を予め設定した許容範囲内に制御(引き上げ速度制御)している。
特許文献12には、水平方向に磁場を印加するMCZ法によるシリコン単結晶の引上げにおいて、シリコン単結晶の結晶欠陥の分布を容易に解析することが可能なシリコン単結晶の欠陥解析方法が開示されている。この技術では、シリコン融液の物性値を用いて、層流モデルによりシリコン融液の対流を算出し、シリコン単結晶の引上げ時の温度分布を予測することによって、シリコン単結晶の欠陥(COPのない結晶)を解析している。
特許文献13には、引上げ方向全域にわたって欠陥が少なく、かつこの欠陥のバラツキが少ないシリコン単結晶の引き上げ方法(シミュレーション技術)が開示される。この引き上げ方法では、COP及び転位クラスタを形成させないシリコン単結晶を引き上げるための上限引き上げ速度及び下限引き上げ速度をそれぞれvA及びvBとし、COP及び転位クラスタを形成させないシリコン単結晶を引上げるための引き上げ速度の速度マージンを(vA−vB)とするとき、シリコン単結晶の引き上げバッチ毎に速度マージンの中央値(vA+vB)/2を目標引上げ速度として実際の引上げ速度をフィードバックしながらシリコン単結晶を順次引上げるようにしている。
特許文献14には、シリコンウェーハの製造における複数のプロセスにて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を有する製造ラインに対して生産計画を提示する工程計画立案システム、工程計画立案方法、及びプログラム(シミュレーション技術)が開示される。この工程計画立案システムは、プロセス別に個々の生産装置を経て得られる工程経路ごとの品質情報を蓄積したデータベースから該品質情報を取得して、生産装置の組合せによって得られるシリコンウェーハの品質分布を統計学的に推定する品質分布推定手段と、生産装置の組合せによって得られる品質分布に基づいて、製造するシリコンウェーハに対して要求される品質規格を満たす生産装置の組合せを判定する生産装置組合せ判定手段と、判定した生産装置の組合せに基づいて、プロセス別に選択可能な複数の生産装置を経て得られる工程経路を決定し、生産計画を提示する工程計画決定手段と、を備えている。
特許文献15には、結晶欠陥の発生を低減できる単結晶の製造方法、および単結晶から結晶欠陥が発生した部位を効率よく検知して除去することができる半導体ウェーハの製造方法が開示される。この製造方法では、チョクラルスキー法により単結晶を引き上げる過程において、検出される単結晶の直径と引き上げ速度の目標値に基づき、引き上げ速度の操作を制限するスパンおよびヒータ温度の設定値を演算し、引き上げ速度をスパン内で操作するとともに、ヒータ温度を設定値に操作して単結晶の直径を制御する際に、引き上げ速度の実績値から算出される移動平均の揺らぎを制御している(引き上げ速度制御)。
特許文献16には、熱輻射シールドの内側にパージチューブが設置されている場合であっても液面レベルを正確に測定するシリコン単結晶引き上げ装置が開示される。この装置は、チャンバ内においてシリコン融液を支持するルツボと、ルツボ内のシリコン融液を加熱するヒータと、ルツボの上方に配置された熱輻射シールドと、熱輻射シールドの内側に設けられた不活性ガスの整流する略円筒状のパージチューブと、シリコン融液の液面に映る熱輻射シールドの鏡像をパージチューブ越しに撮影するCCDカメラと、熱輻射シールドの鏡像の位置からシリコン融液の液面レベルを算出する液面レベル算出部と、シリコン融液の液面レベルと鏡像の位置との関係を示す換算テーブルを作成する換算テーブル作成部と、を備える。この液面レベル算出部は、換算テーブルに基づいて液面レベルを算出している(液面レベル測定)。
特許文献17には、半導体単結晶の直径変動を低減し、その直径制御の操作量である引き上げ速度の変動を抑制し、設定通りの半導体単結晶を引き上げて、高品質な半導体単結晶を製造する引き上げ方法が開示される。この引き上げ方法では、半導体原料をヒータにより融解してるつぼに半導体融液を貯留し、予め設定された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら半導体単結晶を引上げる。そして、ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを特定の評価機能に基づいて評価する。この特定の評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら半導体単結晶を引き上げている。すなわち、CZ炉製造の過去の実績値を次のCZ育成に適用している。
特許文献18には、遮熱部材と融液面との間隔をより高精度に制御可能とする引き上げ装置が開示される。この引き上げ装置では、シリコン融液面の一部を覆うように配される遮熱部材の少なくとも円形の開口を含む実像と、該遮熱部材がシリコン融液の表面に映った遮熱部材の鏡像とを撮像して求めた実像と鏡像との間隔からシリコン融液の液面位置を算出し、遮熱部材と液面位置の間隔Δtを制御している(ギャップ一定制御)。
特許文献19には、引き上げ単結晶の酸素濃度を、適切に制御することが可能なシリコン単結晶製造方法が開示される。この製造方法では、熱遮蔽体を具備する引き上げ装置を使用してチョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造する際に、対結晶径空隙率(単結晶の外面と熱遮蔽体の下端開口縁部との間の空隙部の面積/単結晶の断面積)に応じて装置内に導入する不活性ガスの前記空隙部における流速(Arフロー)を調整して、結晶の酸素濃度を制御している。
特許文献20には、エピタキシャルシリコンウェーハであって、エピタキシャル欠陥の密度が少なく、ウェーハの径方向全域にわたってゲッタリング能力に優れるエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法が開示される。この製造方法は、酸素濃度が9×1017atoms/cm〜16×1017atoms/cmの範囲にあり、転位クラスタおよびCOPを含まず、かつ酸素析出抑制領域を含むシリコンウェーハに対して、酸素析出物の密度を高くするための熱処理を施す予備熱処理工程と、予備熱処理工程の後、シリコンウェーハの表面上にエピタキシャル層を形成するエピタキシャル層形成工程とを含んでいる(COPの検出の評価方法)。
固液界面付近(シリコンインゴットとシリコン融液界面付近)の引上げ軸方向の温度勾配を正確に制御するためには、シリコン融液の液面と熱遮蔽部材の先端との高さを安定させる必要がある。一方、シリコンインゴットの径方向の温度勾配も均一にし、シリコン単結晶(インゴット)から切り出されるシリコンウェーハの欠陥を実質的にゼロにすることが望まれる。しかし、CZ引き上げ中における高温でシリカガラスルツボが変形すると内容量が変化するため、シリコン融液の液面高さ(シリカガラスルツボ内の多結晶シリコンを溶融してからシリコン単結晶引き上げ終了時までの、シリコン融液の液面高さ(図17(a)の高さH0))も変化することになる。液面高さが変わることで、液面と熱遮蔽部材の先端との高さも変わり、温度勾配を正確に制御することが困難になる。温度勾配の変化は固液界面でのCOPが実質的にゼロとなる結晶育成につながる。言い換えると、温度勾配の制御が不十分であると、シリコン単結晶の成長において欠陥を発生させる原因となる。シリコン単結晶(シリコンインゴット)は円筒形であり、直胴部の全長2000mm、直径300mm〜320mmが標準である。
シリカガラスルツボの品質を左右する要因の一つとして、シリカガラスルツボの厚さ方向(肉厚方向)における内部残留応力の分布が挙げられる。しかしながら、いずれの特許文献においてもシリカガラスルツボの厚さ方向における内部残留応力を正確に測定する技術は開示されていない。このため、内部残留応力とシリコン単結晶の引き上げを行う際のシリコン単結晶の品質との関係を的確に把握したシリカガラスルツボを提供することができないという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、シリカガラスルツボの肉厚方向における内部残留応力を正確に測定することができるシリカガラスルツボの歪測定装置、シリコン単結晶の製造方法、シリカガラスルツボの歪測定方法、位相差マップ、インゴットおよびエピタキシャルウェーハを提供するものである。
実施形態に係るシリカガラスルツボの歪測定装置は、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボの歪を測定する装置であって、側壁部の側方に配置され、偏光光を側壁部に向けて照射する発光部と、側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を取り込む撮像部と、撮像部で取り込んだ映像に基づきシリカガラスルツボの歪の分布を出力する出力部と、を備える。
このような構成によれば、発光部からシリカガラスルツボの側壁部に照射された偏光光はシリカガラスルツボ内に進入して、内部で反射、拡散していく。この際、シリカガラスルツボの内部残留応力に基づく歪みによって複屈折が生じる。複屈折の生じた光は側壁部の上端面から撮像部で取り込まれる。そして、側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を取り込むことで、シリカガラスルツボの厚さ方向における歪の分布が得られる。
実施形態に係るシリカガラスルツボの歪測定装置は、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボの歪を測定する歪測定装置であって、測定対象となるシリカガラスルツボを載置する台座を有する架台と、架台に設けられ、シリカガラスルツボの少なくとも側壁部に偏光を照射する発光部と、移動可能に設けられ、シリカガラスルツボの少なくとも側壁部の上端面の偏光に応じた映像を取り込む撮像部と、撮像部で取り込んだ映像に基づきシリカガラスルツボの歪の分布を出力する出力部と、を備える。
このような構成によれば、測定対象となるシリカガラスルツボを台座に載置した状態で、発光部からシリカガラスルツボの側壁部に偏光を照射する。照射された偏光はシリカガラスルツボ内に進入して、内部で反射、拡散していく。この際、シリカガラスルツボの内部残留応力に基づく歪みによって複屈折が生じる。複屈折の生じた光は側壁部の上端面から撮像部で取り込まれる。そして、側壁部の上端面の偏光に応じた映像を取り込むことで、シリカガラスルツボの厚さ方向における歪の分布が得られる。
実施形態に係るシリカガラスルツボの歪測定装置は、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボの歪を測定する歪測定装置であって、測定対象となるシリカガラスルツボを載置する台座を有する架台と、架台に設けられ、シリカガラスルツボに偏光光を照射する発光部と、移動可能に設けられ、シリカガラスルツボに照射された偏光光に応じた映像を取り込む撮像部と、撮像部で取り込んだ映像に基づきシリカガラスルツボの歪の分布を出力する出力部と、台座、発光部および撮像部を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、シリカガラスルツボと撮像部との相対的な位置を移動して撮像することを繰り返すことで、シリカガラスルツボの全周分の歪を測定する。
このような構成によれば、測定対象となるシリカガラスルツボを台座に載置した状態で、発光部からシリカガラスルツボに偏光光を照射する。照射された偏光光はシリカガラスルツボ内に進入して、内部で反射、拡散していく。この際、シリカガラスルツボの内部残留応力に基づく歪みによって複屈折が生じる。複屈折の生じた光は撮像部で取り込まれる。そして、偏光光に応じた映像を取り込むことで、シリカガラスルツボの歪の分布が得られる。このような偏光光を用いたシリカガラスルツボの歪の測定において、コントローラの制御によってシリカガラスルツボの全周分の歪を自動的に測定することができる。
実施形態に係るシリカガラスルツボは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備え、歪測定装置で測定されたものである。歪測定装置は、側壁部の側方に配置され、偏光光を側壁部に向けて照射する発光部と、側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を取り込む撮像部と、撮像部で取り込んだ映像に基づきシリカガラスルツボの歪の分布を出力する出力部と、を備える。シリカガラスルツボは、歪測定装置の出力部から出力された分布として、側壁部の厚さ方向において内表面から途中まで設けられた第1領域と、側壁部の厚さ方向において第1領域よりも外側に設けられ、第1領域とは異なる歪分布を有する第2領域と、を備える。
実施形態に係るシリカガラスルツボは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備え、側壁部の厚さ方向において内表面から途中まで設けられ、内部残留応力として圧縮応力を有する第1領域と、側壁部の厚さ方向において第1領域よりも外側に設けられ、内部残留応力として引っ張り応力を有する第2領域と、を有し、歪の抑制された基準ガラスに向けて照射し、透過した偏光における赤、緑、青の中心波長の相対強度の順番が、側壁部に向けて照射し、透過した偏光における赤、緑、青の中心波長の相対強度の順番と同じになっている。
このような構成によれば、シリカガラスルツボの厚さ方向に沿った内部残留応力がバランスしているため、歪分布が複雑に入り組むシリカガラスルツボに比べて強度の高いシリカガラスルツボとなる。
実施形態に係るシリカガラスルツボは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボであって、側壁部における厚さ方向において内表面から途中まで設けられた第1領域を有し、第1領域は、内表面に沿って実質的に一様な圧縮応力を有する。
このような構成によれば、シリカガラスルツボの厚さ方向における内表側に設けられた第1領域が、内表面に沿って実質的に一様な圧縮応力を有するため、歪分布が複雑に入り組むシリカガラスルツボに比べて強度の高いシリカガラスルツボとなる。
実施形態に係るシリカガラスルツボの歪測定方法は、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボの歪を測定する歪測定方法であって、側壁部の側方から側壁部に向けて偏光光を照射する工程と、側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を撮像部で取り込む工程と、撮像部で取り込んだ映像に基づきシリカガラスルツボの歪の分布を出力する工程と、を備える。
このような構成によれば、測定対象となるシリカガラスルツボに照射された偏光光はシリカガラスルツボ内に進入して、内部で反射、拡散していく。この際、シリカガラスルツボの内部残留応力に基づく歪みによって複屈折が生じる。複屈折の生じた光は撮像部で取り込まれる。そして、偏光光に応じた映像を取り込むことで、シリカガラスルツボの歪の分布が得られる。このような偏光光を用いたシリカガラスルツボの歪の測定を、測定領域を移動させて繰り返すことで、シリカガラスルツボの全周分の歪を測定することができる。
実施形態に係る位相差マップは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、側壁部と底部との間に設けられ底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボの歪の分布を表す位相差マップであって、シリカガラスルツボの所定の領域に入射した偏光の透過によって生じる位相差を前記領域の位置に対応付けして濃淡または数値で表示したものである。このような構成によれば、シリカガラスルツボの歪の分布を視覚的に容易に把握することができる。
実施形態に係るシリコン単結晶の引き上げ装置は、上記シリカガラスルツボと、シリカガラスルツボの外側を覆うサセプタと、を備える。サセプタはカーボンによって構成されていてもよい。シリカガラスルツボの内周面と、引き上げられる前記シリコン単結晶との間には、熱を遮蔽する遮蔽板が設けられていてもよい。このような構成によれば、強度の高いシリカガラスルツボの外側をサセプタで覆う構成のため、シリコン単結晶の引き上げにおいてシリカガラスルツボの割れなどを生じさせることのない信頼性の高い引き上げ装置となる。
実施形態に係るシリコン単結晶の製造方法は、上記シリカガラスルツボ内にシリコン材料を投入して溶融する工程と、シリカガラスルツボ内に保持されたシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる工程と、を備える。このような構成によれば、シリカガラスルツボの信頼性によって純度の高いシリコン単結晶を引き上げることができる。
実施形態に係るインゴットは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えシリカガラスルツボであって、歪測定装置で測定されたシリカガラスルツボを用いて引き上げられたシリコン単結晶のインゴットである。例えば、歪測定装置は、側壁部の側方に配置され、偏光光を側壁部に向けて照射する発光部と、側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を取り込む撮像部と、撮像部で取り込んだ映像に基づきシリカガラスルツボの歪の分布を出力する出力部と、を備える。インゴットは、肩部と、肩部から連続する直胴部と、直胴部から連続する尾部と、を有し、直胴部の結晶欠陥が実質的にゼロである。このような構成によれば、インゴットから切り出したウェーハを用いて製造した半導体装置の電気的特性の安定化および劣化抑制を図ることができる。
実施形態に係るホモエピタキシャルウェーハは、上記のシリコン単結晶のインゴットの用いたウェーハによる基板部と、この基板部の上に設けられたシリコン単結晶のホモエピタキシャル層と、を備えている。
(a)および(b)は、シリカガラスルツボを例示する模式図である。 (a)は本実施形態に係るシリカガラスルツボの一部の拡大断面図、(b)は内部残留応力の例を示す図である。 (a)〜(c)は、シリカガラスルツボの歪の分布を例示する写真である。 シリカガラスルツボの製造工程を概略的に示すフローチャートである。 (a)および(b)は、シリカガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。 (a)および(b)は、シリカガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。 シリカガラスルツボの歪測定装置を例示する模式図である。 (a)〜(c)は、内部残留応力の分布の測定例を示す図である。 (a)〜(c)は、側壁部を透過した偏光の画像を取り込んだ例を示す図である。 (a)および(b)は、偏光に応じた検出範囲について例示する模式図である。 (a)および(b)は、ロボットアーム型歪測定システムを例示する模式図である。 (a)および(b)は、ロボットアーム型歪測定システムによる歪測定方法を例示する模式図である。 (a)および(b)は、測定領域を説明する模式図である。 (a)および(b)は、位相差分布を測定する撮像部を示す模式図である。 (a)および(b)は、位相差分布の測定例を示す図である。 本実施形態に係る引上げ装置の全体構成を示す模式図である。 (a)〜(c)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを用いたシリコン単結晶の製造方法を説明する模式図である。 シリコン単結晶のインゴットを例示する模式図である。 (a)〜(c)は引き上げ制御を説明する模式図である。 ルツボの内径の変動量を示す図である。 ボロンコフ理論に基づいて各種の欠陥が発生する状況を説明する模式図である。 単結晶育成時の引き上げ速度と欠陥分布との関係を示す模式図である。 エピタキシャルウェーハを例示する模式断面図である。 ルツボ製造からウェーハ製造までの工程を例示するフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
<シリカガラスルツボ>
図1(a)および(b)は、シリカガラスルツボを例示する模式図である。
図1(a)にはシリカガラスルツボ11の斜視図が示され、図1(b)にはシリカガラスルツボ11の断面図が示される。
測定対象であるシリカガラスルツボ11は、相対的に曲率の高いコーナ部11bと、上面に開口した縁部を有する円筒状の側壁部11aと、直線または相対的に曲率の低い曲線からなるすり鉢状の底部11cと、を有する。
本実施形態において、コーナ部11bは、側壁部11aと底部11cを連接する部分であり、コーナ部11bの曲線の接線がシリカガラスルツボ11の側壁部11aと重なる点から、底部11cと共通接線を有する点までの部分のことを意味する。言い換えると、シリカガラスルツボ11の側壁部11aにおいて曲がり始める点が、側壁部11aとコーナ部11bとの境界である。さらに、シリカガラスルツボ11の底の曲率が実質的に一定の部分が底部11cであり、シリカガラスルツボ11の底の中心からの距離が増したときに曲率が変化し始める点が、底部11cとコーナ部11bとの境界である。
シリカガラスルツボ11の肉厚方向(厚さ方向とも言う。)において内表面側には透明層13が設けられ、外表面側には非透明層15が設けられる。
透明層13とは、実質的に気泡を含まない層である。ここで、「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因でシリコン単結晶の単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率および気泡サイズのことを意味する。例えば、透明層13の気泡含有率は0.1%以下であり、気泡の平均直径は100μm以下である。
透明層13は合成シリカガラスを内表面側に含むことが好ましい。合成シリカガラスとは、例えばケイ素アルコキシドの加水分解により合成された原料を溶融して製造されたシリカガラスを意味する。一般に合成シリカは天然シリカに比べて金属不純物の濃度が低く、OH基の濃度が高いという特性を有している。例えば、合成シリカに含まれる各金属不純物の含有量は0.05ppm未満であり、OH基の含有量は30ppm以上である。ただし、Al等の金属不純物が添加された合成シリカも知られていることから、合成シリカか否かは一つの要素に基づいて判断されるべきものではなく、複数の要素に基づいて総合的に判断されるべきものである。このように、合成シリカガラスは天然シリカガラスと比べて不純物が少ないことから、ルツボからシリコン融液中へ溶出する不純物の増加を防止することができ、シリコン単結晶化率を高めることができる。
非透明層15には多数の気泡が内在する。非透明層15は、この気泡によって白濁した状態に見える層のことである。非透明層15は天然シリカガラスからなることが好ましい。天然シリカガラスとは、天然水晶、ケイ石等の天然質原料を溶融して製造されたシリカガラスを意味する。一般に天然シリカは合成シリカに比べて金属不純物の濃度が高く、OH基の濃度が低いという特性を有している。例えば、天然シリカに含まれるAlの含有量は1ppm以上、アルカリ金属(Na,KおよびLi)の含有量はそれぞれ0.1ppm以上、OH基の含有量は60ppm未満である。
なお、天然シリカか否かは一つの要素に基づいて判断されるべきものではなく、複数の要素に基づいて総合的に判断されるべきものである。天然シリカは、合成シリカに比べて高温における粘性が高いことから、ルツボ全体の耐熱強度を高めることができる。また、天然質原料は合成シリカに比べて安価であり、コスト面でも有利である。
図2(a)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボの一部の拡大断面図、図2(b)は、内部残留応力の例を示す図である。
図2(a)には、図1(b)に示すA部の拡大断面図が示される。図2に示すように、本実施形態に係るシリカガラスルツボ11は、側壁部11aの厚さ方向において内表面ISから途中まで設けられた第1領域R1と、側壁部11aの厚さ方向において第1領域R1よりも外側に設けられた第2領域R2とを備える。第2領域R2は、第1領域R1とは異なる歪分布を有する。
ここで、第1領域R1内では第1の内部残留応力を有し、第2領域R2内では第2の内部残留応力を有する。第1領域R1と第2領域R2との境界では内部残留応力がゼロになっている。
また、側壁部11aにおける厚さ方向において外表面から途中まで第3領域R3が設けられていてもよい。第3領域R3は、シリカの焼結体および粉体を含む。第3領域R3は、シリカガラスルツボ11の最外周に設けられ、シリカガラスルツボ11を製造する際にシリカ粉のガラス化が行われずに焼結体および粉体として残る部分である。第3領域R3の厚さは、薄いものであれば0.1mm以上0.3mm以下程度(原料のシリカ粉の1個の直径分の厚さ)、厚いものであれば0.5mm以上3mm以下程度(原料のシリカ粉の数個分の厚さ)である。
図2(b)には、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの厚さ方向における内部残留応力の測定結果が示される。図2(b)において横軸は内部残留応力の値であり、「+」は圧縮応力、「−」は引っ張り応力を示す。また、図2(b)において縦軸は側壁部11aの厚さ方向を示し、「IN」は内表面側、「OUT」は外表面側を示す。
このように、シリカガラスルツボ11の第1領域R1では、内表面側の圧縮応力が最も高く、そこから外側に向けて徐々に(ほぼ一定の傾斜で)圧縮応力が弱くなる。そして、内部残留応力がゼロになる部分を境界として第2領域R2が始まる。第2領域R2では、内部残留応力が引っ張り応力になる。第2領域R2の引っ張り応力は大きな変化なく推移するが、外表面近くになると引っ張り応力が徐々に弱くなる。
そして、内部残留応力がゼロになる部分を超えると再び圧縮応力となる。第2領域R2の外側には第3領域R3がある。第3領域R3はシリカガラスルツボ11を製造する際にシリカがガラス化せずに焼結体になっている部分および外表面にシリカ粉が残る部分であるため、この部分での内部残留応力の測定はできない。
本実施形態に係るシリカガラスルツボ11においては、厚さ方向に層状の歪の分布が生じている。シリカガラスルツボ11において、第1領域R1および第2領域R2は周方向において連続している。すなわち、第1領域R1および第2領域R2のそれぞれは少なくとも周方向に大きな応力変化は生じていない(実質的に一様な応力分布)。
このように、シリカガラスルツボ11の厚さ方向における内側と外側とで相対的に異なる2種類の歪分布を有するシリカガラスルツボ11では、歪分布が複雑に入り組むルツボに比べて高い強度を有することになる。歪分布が入り組む状態とは、内部残留応力を有する領域が厚さ方向に層状になっていない場合や、周方向で連続しない場合である。このように歪分布が入り組むことで、歪分布の境界部分で亀裂や剥離などが発生しやすくなる。上記のように、シリカガラスルツボ11の厚さ方向に歪分布が層構造になっており、周方向に連続していることで、シリカガラスルツボ11の表面方向に歪分布の境界(急激な変化)がなく、亀裂や剥離の発生が抑制される。
シリカガラスルツボ11において、第1領域R1の内部残留応力は圧縮応力であり、第2領域R2の内部残留応力は引っ張り応力であることが望ましい。このような応力分布によれば、シリカガラスルツボ11の内表面の強度が向上する。シリカガラスルツボ11を用いてシリコン単結晶の引き上げを行う場合、シリカガラスルツボ11内に材料の多結晶シリコンを充填する。この際、シリカガラスルツボ11の内表面に衝撃が加わりやすい。第1領域R1が圧縮応力になっていることで、多結晶シリコン充填の際の衝撃に対する十分な耐性が得られる。さらに、シリカガラスルツボ11の厚さ方向における外表面側には気泡層が設けられる。このため、もしシリカガラスルツボ11の内表面にクラックが発生しても、気泡層の気泡によってクラックの伸びが止まることになる。したがって、第2領域R2が引っ張り応力であっても、クラックの伸びを抑制することができる。
なお、図示するシリカガラスルツボ11では、第1領域R1と第2領域R2との2層構造の例を示したが、3層以上の構造であってもよい。また、第1領域R1および第2領域R2のような歪分布の層構造は、少なくとも透明層13内に設けられていればよいが、シリカガラスルツボ11の厚さ全体において設けられていることが望ましい。
図3(a)〜(c)は、シリカガラスルツボの歪の分布を例示する写真である。
図3は、シリカガラスルツボ11を約10mm厚にスライスした試料の歪分布を測定した結果である。歪分布は、円偏向光を用いた光弾性歪測定器で測定している。写真に示される白い部分(輝度の高い部分)が圧縮応力の領域であり、黒い部分(輝度の低い部分)が引っ張り応力の領域である。
図3(a)に示す試料(1)は、外径32インチのシリカガラスルツボである。試料P1では、内側に残留圧縮応力の層(第1領域R1)が設けられ、外側に残留引っ張り応力の層(第2領域R2)が設けられる。このように歪分布が綺麗な層構造になっていることで、シリカガラスルツボの強度が向上する。
図3(b)に示す試料P2は、外径32インチのシリカガラスルツボである。試料P2では歪分布が一様であり層構造になっていない。このようなシリカガラスルツボは、試料P1のシリカガラスルツボに比べて強度が低い。
図3(c)に示す試料P3は、外径40インチのシリカガラスルツボである。試料P3では、内側に残留圧縮応力の層(第1領域R1)が設けられる。第1領域R1の外側には、歪は入り組むものの第1領域R1とは異なる歪分布を有する第2領域R2が設けられる。試料P3は外径40インチの超大型のシリカガラスルツボである。このような超大型のシリカガラスルツボであっても第1領域R1および第2領域R2を有することで、十分な強度を得ることができる。
シリカガラスルツボ11の外径が23インチ以上の大型ルツボや、40インチ以上の超大型ルツボにおいては、シリカガラスルツボ11の厚さ方向における内部残留応力の分布による亀裂、割れ、剥離等の影響が大きい。特に、ルツボ外径を大型化する際、外径の増加率に比べて肉厚の増加率は高くなる。つまり、ルツボ外径の大型化に対して肉厚は相対的に厚くなる傾向にある。このため、ルツボ外径が大型化するほど肉厚方向の応力分布が複雑になり、強度不足を起こしやすい。本実施形態のように、シリカガラスルツボ11の厚さ方向における内部残留応力の分布が層構造になっていることは、このような大型、超大型ルツボにおける強度の向上に特に有効である。
<シリカガラスルツボの製造方法>
図4は、シリカガラスルツボの製造工程を概略的に示すフローチャートである。また、図5及び図6は、シリカガラスルツボの製造方法を説明するための模式図である。
シリカガラスルツボ11は回転モールド法によって製造される。図4に示すように、回転モールド法では、カーボンモールドへのシリカ粉層の形成(ステップS101)、アーク熔融および減圧(ステップS102)、冷却(ステップS103)、リムカットおよびエッジ処理(ステップS104)によってシリカガラスルツボ11を製造する。
先ず、ステップS101に示すカーボンモールドへのシリカ粉層の形成では、図5(a)に示すように、シリカガラスルツボ11の外形に合わせたキャビティを有するカーボンモールド20を用意する。そして、カーボンモールド20を回転させながら第1シリカ粉201を供給し、スクレーパを使用して掻き取り、所定の厚さまで成形する。これにより、モールド内面に沿ったシリカ粉層を形成する。カーボンモールド20は一定速度で回転しているので、供給された第1シリカ粉201は遠心力によってモールド内面に張り付いたまま一定の位置に留まり、その形状が維持される。第1シリカ粉201は、非透明層となることから、天然シリカ粉であることが好ましい。
次に、図5(b)に示すように、第1シリカ粉の層が形成されたカーボンモールド20内に透明層13の原料となる第2シリカ粉202を供給し、シリカ粉層をさらに厚く形成する。第2シリカ粉202は、モールド内面の第1シリカ粉201の上に所定の厚さにて供給される。第2シリカ粉202は、合成シリカ粉であることが好ましいが、天然シリカ粉であってもよい。
次に、ステップS102に示すアーク熔融および減圧では、図6(a)に示すように、カーボンモールド20のキャビティ内にアーク電極30を設置し、カーボンモールド20を回転させながらカーボンモールド20の内側からアーク放電を行い、シリカ粉層全体を1720℃以上に加熱して熔融する。この際、全周にわたり薄いシリカガラスのシール層を形成する。そして、この加熱と同時にカーボンモールド20側から減圧し、カーボンモールド20に設けた通気孔21を通じてシリカ内部の気体を外層側に吸引し、加熱中のシリカ粉層内の空隙を脱気することにより、ルツボ内表面の気泡を除去する。これにより、実質的に気泡を含まない透明層13を形成する。
カーボンモールド20には図示しない冷却手段が設けられている。これにより、シリカガラスルツボ11の外表面となる部分(第3領域R3となる部分)のシリカをガラス化させないようにする。冷却手段による冷却温度は、シリカがガラス化せずに焼結体および粉体として残る温度である。
その後、加熱を続けながら脱気のための減圧を弱め又は停止し、気泡を残留させることにより、多数の微小な気泡を内包する非透明層15を形成する。
次いで、ステップS103に示す冷却では、アーク電極30への電力供給を停止して、熔融したシリカガラスを冷却してシリカガラスルツボ11の形状を構成する。冷却を行う際には、シリカガラスルツボ11の内表面となるシリカガラスに冷却ガスが吹き付けられる。冷却速度、冷却ガスの吹き付け方など、冷却条件によってシリカガラスルツボ11の内部残留応力の分布が決定される。
この際、予め測定された歪分布のデータベースに基づいて冷却条件を調整することによって、所望の歪み分布を有するシリカガラスルツボ11を製造することができる。
ここで、シリカガラスを冷却する際、シリカガラスルツボ11とカーボンモールド20との熱収縮の差によってシリカガラスルツボ11に圧力が加わる。例えば、シリカガラスの線膨張率は約10−7/Kであり、1000℃で全長の0.01%、すなわち直径1mのシリカガラスルツボ11では約0.1mm縮むことになる。一方、カーボンの線膨張率は約10−6/Kであり、内径1mであれば約1mm縮むことになる。
この冷却の際、シリカガラスルツボ11の外表面に設けられた第3領域R3のシリカの焼結体および粉体がクッションとしての役目を果たす。つまり、シリカガラスが全てガラス化していると、冷却の際のカーボンモールド20の熱収縮による圧力をシリカガラスルツボ11が直接受けることになるが、カーボンモールド20と当接するシリカガラスルツボ11の外表面に第3領域R3(シリカの焼結体および粉体)があることで、これがクッションとなってカーボンモールド20から圧力を緩和することができる。カーボンモールド20からの圧力が緩和されることで、冷却時にルツボの壁部内にクラックが形成されることを防ぐことができ、シリコン単結晶引き上げ時のシリカガラスルツボ11の変形を抑制することができる。
シリカガラスの冷却を行う際、シリカガラスルツボ11の内表面となる部分の温度を例えば2次元サーモグラフによって測定しながら冷却ガスを吹き付けるようにしてもよい。この場合、回転しているシリカガラスルツボ11の内表面の温度を測定することで、所定領域の温度測定を繰り返すことで、内表面全体の温度を測定することができる。また、所定領域の温度を測定し、間をシミュレーションによって計算してもよい。また、シリカガラスの冷却に特に重要なコーナ部11bの温度を測定してもよい。さらに、シリカガラスルツボ11の内表面全体を測定範囲とする2次元サーモグラフによって1度に内表面全体の温度をしてもよい。シリカガラスルツボ11の内表面となる部分の温度を観察しながら冷却ガスの量、範囲、時間などを制御することで、第1領域R1および第2領域R2を有するシリカガラスルツボ11が構成される。
そして、ステップS104に示すリムカットおよびエッジ処理では、図6(b)に示すように、カーボンモールド20から取り出したシリカガラスルツボ11の側壁部11aの上端側の一部を切断してシリカガラスルツボ11の高さを調整する。その後、上端面TPの縁である内周縁および外周縁に面取り加工を施して面取り部Cを形成する。シリカガラスルツボ11の上端面TPには、シリカガラスルツボ11を搬送する際に用いられる真空吸着器が取り付けられる。したがって、上端面TPには真空吸着を行うため必要な平坦度が要求される。また、面取り部Cを設けることで、上端面TPに突き出たバリ等が除去され、平坦度が向上する。これにより、真空吸着での吸着力が向上するとともに、上端面TPの角部に残留しているクラックが除去され、結晶引き上げ時の割れと変形が防止される。
リムカットにおいては、シリカガラスルツボ11の中心軸に対して直角にダイヤモンドカッターを当てるが、薄いダイヤモンドカッターが気泡の方向へ曲がりやすく、必ずしも直角にリムカットされない。また、リムカットの際に上端面TPに欠けが生じる場合もある。
シリカガラスルツボ11の重量は、32インチ型(直径約81.3cm)で約50kg〜60kg、36インチ型(直径約91.4cm)で約80kg〜90kg、40インチ型(直径約101.6cm)で約90kg〜110kgになる。さらに、シリカガラスルツボ11に多結晶シリコンを充填した場合、32インチ型で約300kg〜500kg、36インチ型で約400kg〜800kg、40インチ型で約500kg〜1000kgにもなる。したがって、リムカットにおいて形成される上端面TPには、このような重量のシリカガラスルツボ11を真空吸着するために必要な平坦度や平面度が必要になる。
また、シリカガラスルツボ11の肉厚は10mm〜15mmであって均等ではなく、部位によって厚さが異なる。すなわち、シリカガラスルツボ11の製造時において、ルツボ外側はカーボンモールドで拘束されているため、比較的設計図通りに製造できる。しかし、ルツボ内側はカーボンモールドで拘束されておらず、セラミックを超高温でアーク熔融することから、機械加工のように設計図通りに製造することは難しい。例えば、ルツボ内側は高さ方向に波打つような形状になることが多い。したがって、シリカガラスルツボ11の製品ごとの製造ばらつきを安定させることは非常に困難である。
シリカガラスルツボ11の製造方法では、シリカ粉の熔融の段階でエネルギーによるSiとOとの結合の切断と、冷却によるSiとOとの結合とが行われる。エネルギーによるSiとOとの結合の切れ方は、熱エネルギーによる切断、光エネルギーによる切断、アークによって生成されたラジカルによる切断が考えられる。さらに、シリカ粉の原材料によっても切れ方は変わる。例えば、天然シリカ紛であれば産出地、合成シリカ紛であれば合成方法によって変わる。
また、SiとOとの結合の仕方は、材料や冷却方法によって変わる。例えば、熔融したシリカ粉を冷却する際の方法によって6員環や8員環といったSi−Oの結合状態が変化することになる。また、第1シリカ粉と第2シリカ粉の材料の相違、内側と外側との冷却速度の相違など、各種の条件によってSiとOとの結合の状態が変わるため、製造されるシリカガラスルツボ11の内部残留応力の分布も変わることになる。
上記シリカガラスルツボの製造方法において、冷却(ステップS103)とリムカットおよびエッジ処理(ステップS104)との間でアニール処理を行ってもよい。
アニール処理では、予め取得してあるルツボ製造条件と歪との関係に応じた加熱条件でシリカガラスルツボ11にアニールを施す。すなわち、同じ条件で製造したシリカガラスルツボ11について予め歪を測定しておく。例えば、後述する歪測定装置100やロボットアーム型歪測定システム200によってシリカガラスルツボ11の歪分布を測定してデータベースに保存しておく。そして、アーク熔融および冷却が完了したシリカガラスルツボ11について、このデータベースに保存された歪分布に基づいて、アニールの温度や時間を決定し、この決定した条件に基づきシリカガラスルツボ11にアニールを施す。
ここで、歪低減のための電気炉を用いたアニール処理の一例を示す。アニール処理は以下の条件の範囲内で適宜設定される。
昇温速度:室温から所定の温度(石英ガラスの歪点から徐冷点の間の温度)まで1時間〜十数時間(100℃/時間から1000℃/時間)
保持温度:歪点(約1100℃)〜徐冷点(約1200℃)
保持時間:約5分〜2時間
降温速度:0.5℃/分〜1℃/分
上記ステップS104においては、このようなアニール処理において、データベースに保存された歪分布に基づきアニール条件を変化させる。
例えば、データベースに保存されたシリカガラスルツボ11の内表面の歪が予め定めた基準よりも大きい場合には、次のようなアニール処理を行う。
保持温度:1150℃
保持時間:1時間
降温速度:1℃/分
また、データベースに保存されたシリカガラスルツボ11の内表面の歪が予め定めた基準よりも小さい場合には、次のようなアニール処理を行う。
保持温度:1150℃
保持時間:15分
降温速度:1℃/分
また、データベースに保存されたシリカガラスルツボ11の内表面の歪が予め定めた基準と同じ場合には、アニールを行わない。
つまり、この例では、基準に対して歪が大きいほど保持時間を長くする。一方、基準に対して歪が小さいほど保持時間を短くする。なお、歪とアニール条件との対応は一例であり、所望の歪を得るためにアニール条件を調整すればよい。
このように、予め測定された歪分布のデータベースに基づいてアニール条件を調整することによって所望の歪分布を有するシリカガラスルツボ11を製造することができる。
<シリカガラスルツボの歪測定装置>
図7は、シリカガラスルツボの歪測定装置を例示する模式図である。
歪測定装置100は、上記のようなシリカガラスルツボ11の歪を非破壊で測定する装置である。歪測定装置100は、発光部110と、撮像部120と、出力部130とを備える。
発光部110は、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの側方である外側に配置され、偏光を側壁部11aに向けて照射する。なお、発光部110は、シリカガラスルツボ11の内側に配置されていてもよい。発光部110は、光源111と、第1偏光手段112と、第2偏光手段113とを含む。光源111は、例えば白色光を出射する白色光源である。なお、光源111としては、赤外線光などの所定波長の単色光を出射する単色光源、LED光を出射するLED光源、レーザ光を出射するレーザ光源であってもよい。
第1偏光手段112は、光源111から出射された光から直線偏光成分を取り出す。また、第2偏光手段113は、第1偏光手段112を介して取り出された直線偏光成分の光を回転偏光成分の光に変換する。本実施形態では、第2偏光手段113は直線偏光成分の光を円偏光成分の光に変換する。第1偏光手段112は、光源111と側壁部11aとの間に配置され、第2偏光手段113は、第1偏光手段112と側壁部11aとの間に配置される。これにより、光源111から出射された光は、第1偏光手段112を介して直線偏光となり、第2偏光手段113を介して円偏光になる。側壁部11aには円偏光が照射される。
第1偏光手段112および第2偏光手段113としては、透過型や反射型が用いられる。本実施形態では、第1偏光手段112として透過型の偏光板が用いられる。また、第2偏光手段113としては透過型のλ/4板が用いられる。
撮像部120は、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの上端面TPの偏光に応じた映像を取り込む。撮像部120は、例えば側壁部11aの上方に配置され、発光部110から側壁部11aに進入して、内部で反射、拡散した偏光を取り込む。
撮像部120は、例えば受光部121と、第3偏光手段122と、第4偏光手段123とを含む。受光部121は、CCDやCMOSなどの受光素子を有する。第3偏光手段122は、受光部121と側壁部11aの上端面TPとの間に設けられ、直線偏光成分よりも回転偏光成分の光を多く透過する光学手段である。第3偏光手段122は、第2偏光手段113と同様なλ/4板が用いられる。
第4偏光手段123は、第3偏光手段122と受光部121との間に配置される。第4偏光手段123は、第3偏光手段122を通過した円偏光を直線偏光に変換する光学手段である。
出力部130は、撮像部120で取り込んだ映像に基づきシリカガラスルツボ11の歪の分布を出力する。出力部130は、撮像部120の受光部121で取り込んだ像に基づく信号を受けて、シリカガラスルツボ11の歪みの分布を画像の濃淡や色によって表すように変換を行う。
本実施形態に係る歪測定装置100によってシリカガラスルツボ11の歪を測定するには、先ず、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの側方(例えば、外側)に発光部110を配置し、側壁部11aの上端面TPの上方に撮像部120を配置する。次に、発光部110の光源111から光(例えば、白色光)を出射する。光源111から出射された光は第1偏光手段を透過することで直線偏光に変換され、第2偏光手段113を通過することで円偏光に変換される。
この円偏光はシリカガラスルツボ11の側壁部11aから内部に進入して、反射、拡散していく。ここで、シリカガラスルツボ11に内部残留応力があると、この応力に基づく複屈折が生じる。したがって、円偏光がシリカガラスルツボ11の内部で反射、拡散する際に複屈折によって位相差が発生する。位相差による偏光状態の変化はシリカガラスルツボ11の内部残留応力の分布によって決定される。
次に、撮像部120によって、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの上端面TP側の光を取り込む。この映像には、シリカガラスルツボ11の内部で反射、拡散して偏光状態に変化が発生し、上端面TPから外部に出た光も含まれる。撮像部120では、この光から第3偏光手段122で円偏光成分を取りだし、第4偏光手段123によって直線偏光に変換して受光部121で取り込む。
そして、受光部121で取り込んだ光に基づく信号を出力部130によって処理し、シリカガラスルツボ11の内部残留応力の分布として出力する。具体的には、撮像部120に向かう光のうち円偏光成分が多いほど受光量が大きくなる。つまり、シリカガラスルツボ11の歪み基づく複屈折によって、側方から入射された円偏光の偏光状態が変化するため、撮像部120によってシリカガラスルツボ11の上端面TPの撮像領域に応じた円偏光の量を得ることで、シリカガラスルツボ11の厚さ方向に沿った内部残留応力に基づく歪みの分布を得られることになる。
本実施形態では、シリカガラスルツボ11の上端面TP側の映像を撮像部120によって取り込むため、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの発光部110の位置から上側の歪みを累積したものに相当する分布が得られる。したがって、発光部110の高さを変えることで、累積される歪みの量が変化する。例えば、発光部110の高さを上端面TPに近い側(高い位置)にすると、歪みの累積量が少なくなり、反対に発光部110の底部11cに近い側(低い位置)にすると、歪みの累積量が多くなる。
このような特性を利用して、発光部110の高さを上下に移動させながら、各位置(各高さ)での歪みの分布を測定してもよい。また、各高さで測定した歪みの分布を用いて、所定の2つの高さでの歪みの分布の差分を求めることで、その2つの高さの間での歪みの累積の分布を得ることもできる。
図8(a)〜(c)は、内部残留応力の分布について説明する図である。
図8(a)には、シリカガラスルツボ11の上端面側から見た歪分布の測定結果が示される。この測定結果によれば、シリカガラスルツボ11の厚さ方向に沿って第1領域R1と第2領域R2とが設けられていることが分かる。すなわち、第1領域R1は、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの内表面から厚さ方向に所定の位置まで設けられ、第2領域R2は側壁部11aの厚さ方向の所定位置から外表面まで設けられている。各歪分布の厚さがほぼ一定であり、周方向に連続して設けられていることで、亀裂、割れ、剥離等の不具合が抑制されたシリカガラスルツボ11が提供される。
また、図8(b)には、図8(a)に示すラインSLにおける応力バランスが例示される。ここで、「+」は圧縮応力を示し、「−」は引っ張り応力を示している。シリカガラスルツボ11の厚さ方向のラインSLに沿った応力バランスとしては、第1領域R1は圧縮応力、第2領域R2は引っ張り応力となっている。すなわち、側壁部11aの厚さ方向において、第1領域R1から第2領域R2に向けて内部残留応力は圧縮応力から、内部残留応力がゼロになる境界領域を経て、引っ張り応力に変化する。側壁部11aの厚さ方向における内部残留応力は、引っ張り応力を有する第2領域R2よりも、圧縮応力を有する第1領域R1のほうが薄くなる。
シリカガラスルツボ11は、円筒形で底が閉じた形状で、透明層(ルツボの内側)と非透明層(ルツボの外側)とを有し、常温から高温(約1500℃から1600℃程度)までの環境下で使用される。すなわち、例えば自動車用ガラスのように平板状で全体が透明であり常温でのみ使用されるガラスとは異なる。また、シリカガラスルツボ11には気泡層や外側の凹凸があり、自動車用などの透明で平板状のガラスとは全く異なる。このようなシリカガラスルツボ11において、偏光状態を測定することは非常に困難である。
本実施形態のように、シリカガラスルツボ11の厚さ方向における内側である第1領域R1が圧縮応力、境界領域(内部残留応力がゼロの領域)を経て外側である第2領域R2が引っ張り応力になっていることで、シリコン単結晶の引き上げ時のシリカガラスルツボ11の温度(約1500℃から1600℃程度)によって互いの応力が緩和しあうことになる。
円筒形で底が閉じているシリカガラスルツボ11においてこのような応力緩和が生じることで、シリコン単結晶引き上げ時にシリカガラスルツボ11の変形(側壁部11aの倒れ、ゆがみ、底部11cの盛り上がりなど)が抑制される。
シリコン単結晶(シリコンインゴット)の引き上げ時において、固液界面付近(シリコンインゴットとシリコン融液界面付近)の引上げ軸方向の温度勾配を正確に制御するためには、シリコン融液の液面と熱遮蔽部材の先端との高さを安定させる必要がある。一方、シリコンインゴットの径方向の温度勾配も均一にし、シリコン単結晶(インゴット)から切り出されるシリコンウェーハの欠陥を実質的にゼロにすることが望まれる。
また、シリコン単結晶引き上げ時においては、シリカガラスルツボ11内のシリコン融液の周縁部の温度(約1500℃)から、シリカガラスルツボ11の中心部であるシリコン融液とシリコン単結晶との界面(以下、「固液界面」と言う。)の温度(約1420℃)まで、シリコン融液をシリコン単結晶の引き上げに必要な温度まで確実に加熱する必要がある。
また、シリカガラスルツボ11の口径が32インチ以上で大きくなるほど、ヒータとシリカガラスルツボ11の中心との距離が離れるため、より強力なヒータが用いられ、シリカガラスルツボ11の温度(約1500℃から1600℃程度)も高くなる。
したがって、シリカガラスルツボ11の口径が大きくなるほど、後述するように高温時の変形を抑制するために必要なシリカガラスルツボの耐変形特性は厳しくなる。
一方、常温時においては、シリカガラスルツボ11に多結晶シリコンを充填する際、多結晶シリコンの塊の角がシリカガラスルツボ11の内表面に当たることになる。シリカガラスルツボ11の常温時の強度が不足していると、多結晶シリコン充填時に割れや欠けを起こすことになる。
本実施形態のように、シリカガラスルツボ11の厚さ方向における内側である第1領域R1が圧縮応力、境界領域(内部残留応力がゼロの領域)を経て外側である第2領域R2が引っ張り応力になっていることで、常温時における強度を確保して、多結晶シリコン充填時の割れや欠けを抑制することができる。
このように、シリカガラスルツボ11においては、常温時に必要な性質と、シリコン単結晶(シリコンインゴット)の引き上げにおける高温時(約1500℃から1600℃程度)に必要な性質とを兼ね備える必要がある。
上記のような常温時に必要な特性、および高温時(約1500℃から1600℃程度)に必要な特性の両方を兼ね備えるため、本実施形態に係るシリカガラスルツボ11においては、ラインSL上での第1領域R1での圧縮応力と、第2領域R2での引っ張り応力との総和がゼロになっていることが望ましい。さらに、ラインSLをシリカガラスルツボ11の上下方向に移動させて、側壁部11a、コーナ部11bおよび底部11cの各高さ位置での第1領域R1での圧縮応力と、第2領域R2での引っ張り応力との総和がゼロになっていることがより好ましい。このように圧縮応力と引っ張り応力との総和がゼロになっていることで、シリカガラスルツボ11の常温時における強度を確保して、多結晶シリコン充填時の割れや欠けを抑制することができるとともに、加熱された際の厚さ方向の内部残留応力における圧縮と引っ張りとが互いに打ち消し合うようにバランスが保たれ、シリカガラスルツボ11の形状の崩れを抑制することができる。
図8(c)には、歪測定装置100によって取り込んだシリカガラスルツボ11の上端面TPの映像の例が示される。偏光を用いることで、シリカガラスルツボ11の側壁部11aの厚さ方向における歪分布を画像の濃淡で的確に把握することができる。図8(c)に示す映像では、圧縮応力を有する第1領域R1が内側に設けられ、引っ張り応力を有する第2領域R2が外側に設けられている様子が綺麗に現れている。また、この映像から、第2領域R2の外側にある第3領域R3も把握することができる。
ここで、側壁部11aにおける厚さ方向(肉厚方向)に沿った圧縮応力と引っ張り応力との総和がゼロとは、歪が抑制された基準ガラス(ブランク)に向けて照射し、透過した偏光における赤、緑、青の中心波長の相対強度の順番が、側壁部11aに向けて照射し、透過した偏光における赤、緑、青の中心波長の相対強度の順番と同じになっていることを含む。
なお、照射する偏光のなかに赤、緑、青のいずれかの波長の偏光が存在しない場合には、その波長は順番から除外しておく。
基準ガラスとしては、測定対象のシリカガラスルツボ11と同様な条件で製造されたシリカガラスルツボの側壁部のサンプル片(例えば、10cm×10cm)を用意し、例えば1200℃、24時間程度のアニールを行って、断面観察などで歪が抑制された(歪が実質的に無い)ことが確認されたものである。そして、この基準ガラスに偏光を照射し、透過した際の赤、緑、青の中心波長の相対強度の順番を測定しておく。
相対強度は、光源から偏光フィルタを通過し、シリカガラスルツボ11の外側(または内側)から入射する直前の光の赤、緑、青のそれぞれの強度をI1(R,G,B)として、対象物を透過した際の偏光の赤、緑、青のそれぞれの強度をI2(R,G,B)とした場合、I2(R,G,B)/I1(R,G,B)で表される。
そして、側壁部11aに向けて照射した偏光を赤、緑、青の成分に分けて、それぞれの中心波長の相対強度の順番を得ておき、基準ガラスを透過した後の赤、緑、青の相対強度の順番が変わらない場合、総和がゼロであるとする。
例えば、側壁部11aに照射する偏光として、赤、緑、青の順で相対強度が高いと、全体として黄色の光となる。この光を側壁部11aに照射して、透過した偏光をみた場合、相対強度が変わらなければ同じ黄色であり、相対強度の順番が変わらなければ色の変化は少ない。この程度であれば側壁部11aの厚さ方向に沿った圧縮応力と引っ張り応力との総和がゼロであるとして、高強度のシリカガラスルツボ11となる。
図9(a)〜(c)は、側壁部を透過した偏光の画像を取り込んだ例を示す図である。
図9(a)〜(c)に示す図のいずれについても、側壁部11aに赤、緑、青の中心波長における相対強度が特定の順番となる偏光を入射している。
図9(a)および(b)に示す例では、透過した偏光の赤、緑、青の相対強度の順番が、照射した際の順番と同じになっている。これらの例では、このような状態において側壁部11aの厚さ方向に沿った圧縮応力と引っ張り応力との総和がゼロとなる。また、測定領域において色味のほぼ一定であり、測定領域全体にわたり応力総和がゼロになっていることが分かる。
一方、図9(c)に示す例では、透過した偏光の赤、緑、青の相対強度の順番が、基準ガラスを透過した際の順番と異なっている。このような状態では、側壁部11aの厚さ方向に沿った圧縮応力と引っ張り応力との総和がゼロとは言えない。また、測定領域において色味に変化が生じており、測定領域の面内において応力総和に変化が発生していることが分かる。
歪測定装置100において、上端面の偏光に応じた映像を撮像部120で取り込む場合、発光部110からシリカガラスルツボ11の側壁部11aへ照射する光の入射角度を調整可能にする機構を設けてもよい。すなわち、発光部110から側壁部11aへ入射された光の側壁部11aの内部での反射(拡散)において、側壁部11aの表面に対する光の入射角度をブリュースター角にすることで、側壁部11aの表面でのp偏光の反射率をゼロにすることができる。これにより、側壁部11aに直線偏光成分を多く入射することができ、不要な偏光成分の入射を抑えて側壁部11aの内部残留応力分布の映像を鮮明に取得することができる。
上記のように、本実施形態に係る歪測定装置100によれば、シリカガラスルツボ11の厚さ方向における歪みの分布を正確に測定することが可能になる。また、この歪測定装置100では、シリカガラスルツボ11を破壊することなく厚さ方向の歪みを測定することができ、製品そのものの歪みを検査することが可能になる。
なお、本実施形態では第2偏光手段113および第3偏光手段122として直線偏光を円偏光に変換する光学手段を用いているが、直線偏光を楕円偏光に変換する光学手段を用いてもよい。楕円偏光を用いることで、受光部121での光の検出範囲を設定することができる。
図10(a)および(b)は、偏光に応じた検出範囲について例示する模式図である。
図10(a)には円偏光を利用した場合の検出範囲が示され、図10(b)には楕円偏光を利用した場合の検出範囲が示される。
図9(a)および(b)に示す例では、図中矢印の直線方向の偏光板を用いた光量(図10中矢印の長さに対応)でシリカガラスルツボ11の内部残留応力を測定する。
この場合、直線偏光に近い楕円偏光である例えば位相差(π/16=−0.19)と位相差+0.19で光量が同じになるため内部残留応力の大きさの違いが区別できない。したがって、図10(a)に示す円偏光(π/4=0.78)を利用する場合、検出範囲は、位相差+0.78〜位相差0までの範囲となる。つまり、シリカガラスルツボ11に内部残留応力がなく入射した光が偏光されない状態(円偏光のまま)から、内部残留応力にて偏光されて直線偏光となる状態(図10(a)では位相差0の直線偏光の状態)まで、測定することができる。
一方、図10(b)に示す楕円偏光を利用する場合(図10(b)では例えば位相差((7/16)π=+1.37))、検出範囲は、位相差+1.37〜位相差0までの範囲となる。つまり、シリカガラスルツボ11に内部残留応力がなく入射した光が偏光されない状態(楕円偏光のまま)から、内部残留応力にて偏光されて直線偏光となる状態まで、測定することができる。これにより、楕円偏光を利用すると、円偏光を利用する場合よりも内部残留応力の測定範囲が広くなる。
さらに、楕円偏光を利用することで、次のような効果を得ることができる。
空気中からシリカガラスルツボ11の内表面へ円偏光を照射した場合、シリカガラスルツボ11の表面への入射角度によってs偏光およびp偏光の反射率が異なる場合がある。s偏光およびp偏光の反射率が異なると、シリカガラスルツボ11の表面でs偏光成分およびp偏光成分の一方が他方よりも多く反射され、シリカガラスルツボ11の中に入るときに減衰する。これにより、円偏光状態が崩れて楕円偏光となってシリカガラスルツボ11の中に入ることになる。このまま測定を行うと、歪の無い部分でも歪があるかのように観察されてしまうおそれがある。そのため、あらかじめ反射による減衰分を考慮して、s偏光成分およびp偏光成分のいずれか一方を他方に比べて大きくした楕円偏光をシリカガラスルツボ11に照射する。これにより、シリカガラスルツボ11の中に入射された後の偏光状態が円偏光になって、本来の内部残留応力の大きさを正確に測定することが可能となる。
シリカガラスルツボ11の内部残留応力の大きさが測定できれば、シリカガラスルツボ11の変形を正しく予測することができる。
<ロボットアーム型歪測定システム>
図11(a)および(b)は、ロボットアーム型歪測定システムを例示する模式図である。
図11(a)に示すように、ロボットアーム型歪測定システム200は、多関節型のロボットアーム210と、ロボットアーム210に取り付けられた撮像部120と、測定対象のシリカガラスルツボ11を載置する架台220と、発光部110と、コントローラ250と、出力部130とを備える。
架台220は、横架台221と、横架台221に対して略垂直に取り付けられた縦架台222とを備える。横架台221には発光部110の下方照射部110Aが設けられ、縦架台222には発光部110の側方照射部110Bが設けられる。下方照射部110Aおよび側方照射部110Bのそれぞれには光源111と、第1偏光手段112と、第2偏光手段113が設けられる。光源111と第1偏光手段112との間には光源111から照射された光を拡散させる拡散板115が設けられていてもよい。下方照射部110Aは測定対象のシリカガラスルツボ11の外径以上の長さを有し、側方照射部110Bは測定対象のシリカガラスルツボ11の高さ以上の長さを有する。
架台220の横架台221にはスライドレール223が設けられているとよい。スライドレール223には、スライドレール223に沿って水平移動可能な台座224が設けられる。測定対象のシリカガラスルツボ11は台座224の上に載置され、スライドレール223に沿って測定位置まで移動される。
コントローラ250は、ロボットアーム210の動作を制御する。コントローラ250は、測定対象のシリカガラスルツボの設計データ(CADデータ等)を利用して、ロボットアーム210の位置を制御し、撮像部120による撮像領域を制御する。ここで、CADデータとしては、ルツボの外径、内径、高さ(ルツボの底部11cから上端面TPまでの高さ、側壁部11aの高さ)、肉厚、曲率(底部11cからコーナ部11bの曲率)、3次元座標データ(ルツボ外表面、内表面、リム端面、有限要素法のメッシュ、ポリゴンデータなど)が挙げられる。設計データを利用することで、撮像部120とシリカガラスルツボの測定箇所との位置関係を正確に設定することができる。なお、コントローラ250には出力部130が設けられていてもよい。
<歪測定方法>
図12(a)および(b)は、ロボットアーム型歪測定システムによる歪測定方法を例示する模式図である。
図12(a)には、シリカガラスルツボ11の上端面TP側に撮像部120を配置して歪測定を行う例が示される。先ず、コントローラ250は台座224の位置を制御して、シリカガラスルツボ11を測定の基準位置に配置する。次に、コントローラ250はロボットアーム210を制御して撮像部120をシリカガラスルツボ11の上端面TPの上方に配置する。そして、撮像部120による撮像方向を下向きにする。
この状態で、側方照射部110Bからシリカガラスルツボ11の側壁部11aに向けて光を照射し、撮像部120によってシリカガラスルツボ11の上端面TPの映像を取り込む。撮像部120で取り込んだ映像に基づく信号は出力部130に送られる。出力部130は、撮像部120から送られた信号に基づき歪の分布を出力する。これにより、例えば図8に示すような歪の分布を得ることができる。
コントローラ250は、1箇所の歪測定が終了した後、台座224を一定量回転させてシリカガラスルツボ11を所定角度回転させる。この状態で、先と同様に撮像部120によって上端面TPの映像を取り込み、出力部130によって歪の分布を出力する。この動作を繰り返すことで、シリカガラスルツボ11の上端面TPの1周分の歪の分布を自動的に得ることができる。
なお、コントローラ250は、側方照射部110Bの縦方向に並ぶ複数の光源111について、全て同じ光量で照射するようにしてもよいし、いずれかの光源111の光量を他の光源111の光量よりも多くするようにしてもよい。縦方向に並ぶ複数の光源111の光量を個別に調整することで、擬似的に光源111の上下位置を調整することと等価となる。
図12(b)には、シリカガラスルツボ11の内表面IS側に撮像部120を配置して歪測定を行う例が示される。先ず、コントローラ250は台座224の位置を制御して、シリカガラスルツボ11を測定の基準位置に配置する。次に、コントローラ250はロボットアーム210を制御して撮像部120をシリカガラスルツボ11の内側の所定高さに配置する。そして、撮像部120による撮像方向を内表面ISと向かい合うように調整する。
この状態で、下方照射部110Aおよび側方照射部110Bからシリカガラスルツボ11に向けて光を照射し、撮像部120によってシリカガラスルツボ11を透過した光の映像を取り込む。撮像部120で取り込んだ映像に基づく信号は出力部130に送られる。出力部130は、撮像部120から送られた信号に基づき歪の分布を出力する。これにより、シリカガラスルツボ11の内表面IS側からみた歪の分布を得ることができる。
コントローラ250は、1箇所の歪測定が終了した後、ロボットアーム210を制御して撮像部120の撮像領域を、先の撮像領域の下側に隣接する領域になるよう調整する。そして、この状態で、先と同様に撮像部120によって上端面TPの映像を取り込み、出力部130によって歪の分布を出力する。この動作を繰り返すことで、図13(a)に示すように、シリカガラスルツボ11の内表面ISの縦1列分の歪の分布を得ることができる。
一例として、1つの測定領域MRの大きさを100mm×100mmとした場合、側壁部11aの上端面TPから底部11cの中心までの長さが790mmであると、縦1列分は約8個の測定領域MRが割り当てられる。つまり、縦1列分は8枚の画像で測定することができる。
コントローラ250は、縦1列分の歪の分布を測定した後、台座224を一定量回転させてシリカガラスルツボ11を所定角度回転させる。この状態で、先と同様に撮像部120によって内表面ISの隣の縦1列分の歪の分布を得る。この動作を繰り返すことで、図13(b)に示すように、シリカガラスルツボ11の内表面ISの全周分の歪の分布を自動的に得ることができる。シリカガラスルツボ11の内表面ISの全周分の歪の分布を得ることで、シリカガラスルツボ11内の局所的な歪の分布の変化も把握することができる。
一例として、シリカガラスルツボ11の内表面ISの円周が2450mmの場合、円周方向に約25個の測定領域MRが割り当てられる。つまり、内表面ISの全周では、約200個の測定領域MRが割り当てられることから、約200枚の画像によって全周分の歪の分布を測定することができる。例えば、1枚の画像の取得に10秒要するとした場合、シリカガラスルツボ11の内表面ISの全体の歪は約34分で自動的に取得できることになる。
上記のようなロボットアーム型歪測定システム200による歪の測定においては、シリカガラスルツボ11のCADデータ等を利用してロボットアーム210および撮像部120の位置を制御することで、ロボットアーム210および撮像部120とシリカガラスルツボ11との干渉を避けつつ、撮像部120と測定領域との位置関係を正確かつ迅速に設定することができる。
<位相差分布測定>
図14(a)および(b)は、位相差分布を測定する撮像部の例を示す模式図である。
図14に示す撮像部120は、受光部121の画素ごとに方向を持った偏光素子122Bを備える。図14(b)に示すように、偏光素子122Bは、受光部121の各画素に対応した偏光方向を有する。この例では、縦または横に隣接する2つの画素に対応した偏光方向が互いに45度ずれている。したがって、偏光素子122Bは、縦横2×2画素に対応して45度ずつ相違する4つの偏光方向を有することになる。
この撮像部120を用いることで、画素毎の位相差の測定を行うことができ、縦横2×2画素を1単位とした位相差分布を得ることができる。
図15(a)および(b)は、位相差分布の測定例を示す図である。
図15(a)には、256画素×256画素に対応した受光部121および偏光素子122Bによって受光した位相差分布画像が示される。位相差を濃淡や色によって表すことで、位相差分布を視覚的に認識することができる。
また、図15(b)には、図15(a)に示す位相差分布画像に対応した位相差数値が示される。受光部121の各画素で取り込んだ信号の強度(輝度情報)によって、その画素に対応した偏光素子122Bの偏光方向との位相差が得られる。すなわち、信号の強度を得ることで、位相差の数値が得られる。位相差を数値で得ることによって、歪の分布を定量的に解析することができる。例えば、歪の標準偏差や歪の総和といった統計処理を容易に行うことができる。図15(a)に示す位相差の濃淡、図15(b)に示す位相差の数値の表示は位相差マップの一例である。位相差マップは、所定領域の歪の分布図であり、図15(a)に示す例では所定領域における歪の大きさの違いが濃淡のパターンで表される。
また、図14に示す撮像部120の構成を図11に示すロボットアーム型歪測定システム200に適用することで、図13(a)に示すようなシリカガラスルツボ11の内表面ISの縦1列分の歪の分布を位相差マップとして得ることができる。また、図13(b)に示すようなシリカガラスルツボ11の全周分の歪の分布を位相差マップとして得ることもできる。すなわち、ロボットアーム型歪測定システム200によって、2次元および3次元の位相差マップを得ることができる。
<引き上げ装置>
図16は、本実施形態に係るシリコン単結晶の製造装置である引き上げ装置の全体構成を示す模式図である。
引き上げ装置500の外観を形成するチャンバ510の内部には、シリコン融液23を収容するルツボCRが設けられ、このルツボCRの外側を覆うようにカーボンサセプタ520が設けられる。引き上げ装置500で使用されるルツボCRは、本実施形態に係るシリカガラスルツボ11である。カーボンサセプタ520は鉛直方向に平行な支持軸530の上端に固定される。カーボンサセプタ520に嵌合したルツボCRは、カーボンサセプタ520とともに支持軸530によって所定の方向に回転するとともに、シリコン融液の液面を炉内のヒータ540に対して一定の高さに制御できるように(温度勾配が一定となるように)、上下方向に移動可能になっている。
ルツボCRおよびカーボンサセプタ520の外周面はヒータ540により囲まれている。ヒータ540は、さらに保温筒550により包囲される。シリコン単結晶の育成における原料溶解の過程では、ヒータ540の加熱によりルツボCR内に充填された高純度の多結晶シリコン原料が加熱、溶解されてシリコン融液23になる。
引き上げ装置500のチャンバ510の上端部には引上げ手段560が設けられる。この引上げ手段560にはルツボCRの回転中心に向かって垂下されたワイヤケーブル561が取り付けられ、ワイヤケーブル561を巻き取りまたは繰り出す引上げ用モータ(図示せず)が配備される。ワイヤケーブル561の下端には種結晶24が取り付けられる。引き上げ中、種結晶24は回転し、成長とともにシリコン単結晶25(インゴット)も回転する。
育成中のシリコン単結晶25を囲繞するように、シリコン単結晶25と保温筒550との間に円筒状の熱遮蔽部材570が設けられる。熱遮蔽部材570は、コーン部571と、フランジ部572とを有する。このフランジ部572を保温筒550に取り付けることにより熱遮蔽部材570が所定位置(ホットゾーン)に配置される。育成されるシリコン単結晶25のボディ部の直径は、表面切削後において例えば450mmにできるように、引上げ時には削り代を含めて最大で約465mm程度である。この際、本発明のシリカガラスルツボを使用した場合は、引き上げ時のシリカガラスルツボの変形が防止できるため、カーボンサセプタ520、熱遮蔽部材570の寸法と取り付けのクリアランスが広くなる。
引き上げ装置500では、ルツボCRの周囲をカーボンサセプタ520で覆った状態でヒータ540によってルツボCRの加熱が行われる。近年ではルツボCRの直径が32インチ以上と大きくなっており、多結晶シリコン原料を溶解するために約1500℃から1600℃程度に加熱される。この際、ルツボCR加熱によって膨張するが、周囲をカーボンサセプタ520で覆われているため外側には膨張できず、開口している上側へと膨張する。
ルツボCRとして本実施形態に係るシリカガラスルツボ11では、第1領域R1および第2領域R2ともに側壁部11aの上下方向に実質的に一様な歪の領域が連続することから、加熱時にルツボCRの膨張があっても亀裂、割れ、剥離、内側への倒れ等を起こすことなく安定した形状を維持することができる。
ここで、シリコン単結晶引き上げ中のルツボCRと、ホットゾーンであるコーン部571との隙間Dは、なるべく狭くする必要がある。すなわち、ヒータ540からの熱を効率よくルツボCRの中心部まで到達させ、固液界面を約1420℃に加熱するために、例えば32インチ以上の大口径のルツボCRでは隙間Dを、例えば30mm〜40mm程度と狭くする必要がある。また、シリコン単結晶引き上げが進むと、ルツボCR中のシリコン融液が減少する。そこでシリコン融液の液面を炉内のヒータ540に対して一定の高さにするためにルツボCRが上昇すると、コーン部571とルツボCRとの隙間Dは狭くなっていく。このような状況で、もしルツボCRの内側への倒れが発生すると、ルツボCRが熱遮蔽部材570(コーン部571)に接触することになる。
シリコン単結晶25の引き上げ中において、ルツボCRは回転していることから、ルツボCRの内側への倒れが発生して直胴部が回転しながら熱遮蔽部材570に接触すると、熱遮蔽部材570やルツボCRの破損に繋がる。熱遮蔽部材570が破損すると、シリコン単結晶25の引き上げを中止せざるを得ない、また、ルツボCRが破損した場合にはシリコン融液の漏れに繋がり、引き上げ装置が破損し、高額かつ長期間の修理が必要になる。
また、シリコン融液の液面とコーン部571との高さHの制御は、シリコン単結晶25の固液界面付近の温度勾配を制御する上で非常に重要であり、0.1mm単位で制御する必要がある(非特許文献1参照)。
ルツボCRの変形が発生すると、ルツボCRの容積の変化によって液面の位置が変わり、高さHが変化してしまい、結晶品質(結晶の直径、結晶中の欠陥等)の低下を招き、結晶の歩留まりが悪くなる。
また、冷却ガスは、図中矢印Fに示すように、シリコン単結晶25とコーン部571との間から高さHに示す部分を通り、隙間Dを介して外側へ流れていく。したがって、隙間Dや高さHが変わると、冷却ガスの流速が変わってしまい、設定された温度勾配が変化してしまうことによって結晶品質の低下を招くことになる。
このルツボCRの倒れや変形が抑制されることで、ルツボCRと熱遮蔽部材570との接触が回避され、また、設定された温度勾配によって引き上げを行うことができ、結晶品質の優れたシリコン単結晶25を製造することができる。よって、シリコン単結晶の製造歩留まりの向上を図ることができる。
<シリコン単結晶の製造方法>
図17(a)〜(c)は、本実施形態に係るシリカガラスルツボを用いたシリコン単結晶の製造方法を説明する模式図である。
図17(a)に示すように、シリコン単結晶の引き上げ時には、シリカガラスルツボ11内に多結晶シリコンを充填し、この状態でシリカガラスルツボ11の周囲に配置されたヒータで多結晶シリコンを加熱して熔融させる。これにより、シリコン融液23を得る。この際、本発明のシリカガラスルツボを用いることにより、充填中のルツボの破損を防止することができる。
シリコン融液23の体積は、多結晶シリコンの質量によって定まる。したがって、シリコン融液23の液面23aの初期の高さ位置H0は、多結晶シリコンの質量とシリカガラスルツボ11の内表面の三次元形状によって決まる。すなわち、シリカガラスルツボ11の内表面の三次元形状が定まると、シリカガラスルツボ11の任意の高さ位置までの容積が特定され、これにより、シリコン融液23の液面23aの初期の高さ位置H0が決定される。
シリコン融液23の液面23aの初期の高さ位置H0が決定された後は、種結晶24の先端を高さ位置H0まで下降させてシリコン融液23に接触させる。そして、ワイヤケーブル561を回転させながらゆっくりと引き上げることによって、シリコン単結晶25を成長させる。この際、シリカガラスルツボ11は、ワイヤケーブル561の回転とは反対に回転される。
図17(b)に示すように、シリコン単結晶25の直胴部(直径が一定の部位)を引き上げているときに、液面23aがシリカガラスルツボ11の側壁部11aに位置している場合には、一定の速度で引き上げると液面23aの降下速度Vmはほぼ一定になるので、引き上げの制御は容易である。
しかし、図17(c)に示すように、液面23aがシリカガラスルツボ11のコーナ部11bに到達すると、液面23aの下降に伴ってその面積が急激に縮小するので、液面23aの降下速度Vmが急激に大きくなる。降下速度Vmは、コーナ部11bの内表面形状に依存している。
シリカガラスルツボ11の内表面の三次元形状を正確に測定しておくことで、コーナ部11bの内表面形状が分かり、したがって、降下速度Vmがどのように変化するのかを正確に予測することができる。そして、この予測に基づいて、シリコン単結晶25の引き上げ速度等の引き上げ条件が決定される。この際、本実施形態のシリカガラスルツボ11を使用することにより、予測した形状から変形することが少ないので、降下速度Vmの予測精度がより向上する。これにより、コーナ部11bにおいても有転移化を防止し、かつ引き上げを自動化することが可能になる。
本実施形態に係るシリコン単結晶の製造方法では、シリコン単結晶25の引き上げ時にシリカガラスルツボ11の加熱による変形(側壁部11aの倒れ、歪み、底部11cの盛り上がりなど)が抑制されるため、シリカガラスルツボ11の内表面の三次元形状から求めた液面23aの降下速度Vmのずれが抑制され、結晶化率の高いシリコン単結晶25を歩留まり良く製造することが可能になる。なお、アルゴン雰囲気、減圧下(約660Pa〜13kPa程度)にてシリコン単結晶の引き上げは行なわれている。
<シリコン単結晶のインゴット>
図18は、シリコン単結晶のインゴットを例示する模式図である。
シリコン単結晶のインゴット600は、本発明のシリカガラスルツボ11を引き上げ装置500にセットして、上記のシリコン単結晶の製造方法によって引き上げることで製造される。シリカガラスルツボ11は、例えば本実施形態に係る歪測定装置100で測定されている。
インゴット600は、種結晶24側の肩部610と、肩部610から連続する直胴部620と、直胴部620から連続する尾部630とを有する。なお、インゴット600において種結晶24は除去されている場合もある。肩部610の径は、種結晶24側から直胴部620にかけて漸増する。直胴部620の径はほぼ一定である。尾部630の径は、直胴部620から離れるに従い漸減していく。
インゴット600の品質は、引き上げを行うシリカガラスルツボ11の品質と密接に関連する。例えば、シリカガラスルツボ11の不純物(例えば、ガラス中の不純物金属元素)や異物の混入は、インゴット600におけるシリコン単結晶の有転位化に繋がる。また、シリカガラスルツボ11の内表面の滑らかさ(見た目で分かるような凹凸)、表面付近の気泡の量、大きさによっては、ルツボ表面の欠け、気泡の割れ、潰れによるシリコン内への微小な破片(ルツボから剥離した粒子など)がシリコン融液へ脱落すると、これがインゴット中に混入して有転位化することに繋がる。
また、インゴット600の品質は、インゴット600の製造における引き上げ制御にも大きく左右される。以下に、インゴット600の品質と引き上げ制御との関係の具体例を説明する。
図19(a)〜(c)は引き上げ制御を説明する模式図である。
図19(a)に示すように、シリコン単結晶の成長速度をVg、シリコン単結晶の引き上げ速度をV、シリコン融液の液面の低下速度をVm、ルツボの上昇速度をC、とした場合、次の関係が成り立つ。
Vg=V+Vm−C
このうち液面低下速度Vmは、ルツボ内容積とシリコン単結晶の成長速度Vgとの関数fによって決まる(図19(b)参照)。従来の技術においては、この関数fを用いた計算によって液面低下速度Vmを求めている。また、引き上げ速度Vおよびルツボ上昇速度Cは引き上げ装置の条件として既知であるため、これによりシリコン単結晶の成長速度Vg=V+Vm−Cを求めている。
しかしながら、実際の引き上げにおいては、高温に曝されるためルツボの内面形状が変形し、内容積も変化することになる(図19(c)参照)。引き上げ装置では、シリカガラスルツボはカーボンサセプタに内挿される。したがって、シリカガラスルツボの外周面はカーボンサセプタに嵌合している状態になる。このため、シリカガラスルツボは外側には変形せず、内側のみに変形することになる。ルツボの内容積が変化してしまうと、液面低下速度Vmの計算が不正確になってしまい、シリコン単結晶の成長速度Vgを正確に定めることができなくなる。この成長速度Vgは、結晶欠陥の発生における重要な要素である。したがって、成長速度Vgを正確に制御できないと、インゴット600の品質に大きな影響を与えることになる。
シリコン融液液面位置のルツボ内半径をR、シリコン単結晶(インゴット)の直径をr、シリコン融液の密度をρL、シリコン単結晶の密度をρsとすると、液面がルツボ直胴部にある場合、以下の式が成り立つ。
Vg=ρL/ρs・(R/r)・Vm
Vg/Vm=ρL/ρs・(R/r)=k
ルツボの内側の半径の変動率をαとすると、以下の式が成り立つ。
Vg=ρL/ρs・(αR/r)・Vm
Vg=α・{ρL/ρs・(αR/r)・Vm}
このことから、Vgのずれにはαの2乗が寄与する。したがって、Rが1%変動すると、Vgは約2%変動することになる。
R=0.797m、r=0.3m、ρL=2570kg/m、ρs=2300kg/mとすると、k=7.95、1/k=0.126となる。
例えば、シリコンウェーハの厚さ1mm分に相当するシリコン単結晶(インゴット)を製造する場合、シリコン融液の液面の低下は0.126mmとなる。インゴットからシリコンウェーハを切り出す際の切断幅(ブレード等の幅)や切り出した後の研磨を考慮すると、シリコンウェーハの厚さは700μm〜800μm程度となる。インゴットのどこを切り出してもCOPが実質的にゼロとなるようにするためには、インゴットの直胴部の全域において、COPが実質的にゼロとなるようにする必要がある。また、後述する3次元構造の半導体デバイスなど、構造部がシリコンウェーハの厚さの1/10〜1/100以下の範囲に収まる場合、シリコン単結晶の引き上げにおいては、シリコンウェーハの厚さの1/10〜1/100以下の引き上げ制御(COPを実質的にゼロにするための引き上げ制御)が必要である。この場合、シリコン融液の液面の低下をコントロールするためには、0.01mm以下の精度のコントロールする必要がある。
このように、シリカガラスルツボ11の内側の径が1%変動すると、シリコン単結晶の成長速度Vgは2%変動することになる。また、シリカガラスルツボ11のコーナ部11bにおけるシリコン融液の液面の低下速度Vmは、シリカガラスルツボ11の直胴部におけるシリコン融液の液面の低下速度よりも高くなる。したがって、ルツボ内径の変動が液面低下の変動に与える影響は、ルツボ直胴部よりもコーナ部11bのほうが大きい。
本実施形態では、実際に引き上げに使用するシリカガラスルツボ11の厚さ方向における内部残留応力を正確に測定できるため、この内部残留応力と、使用後のルツボ内径の変化との関係(操業実績に基づくルツボ内径変動量のシミュレーション)によって、使用前(シリコン単結晶の引き上げを行う前)のシリカガラスルツボ11の段階で、使用中のルツボの内径変動量を推定することができる。これにより、従来技術のように、全くルツボの変形を考慮しない場合に比べ、シリコン単結晶の成長速度Vgの目標値からのずれを低減することができ、インゴット600の直胴部620の全長にわたり欠陥を抑制(実質的にゼロに)することができる。
図20は、ルツボの内径の変動量を示す図である。
図20において横軸はルツボの内径の変動量を示し、縦軸はルツボの底部からの高さを示している。
図20のプロットは測定値である。また、線Lは、各高さでの測定値の平均を繋いだものである。
線Lで示すように、ルツボ内径の変動(すなわち、ルツボ内容積の変動)が平均的に起こることが分かる。本実施形態のように、ルツボの内面形状を基準にシリコン単結晶の上昇速度Aを変えればシリコン単結晶の全長にわたって欠陥のできない範囲に収まるようシリコン単結晶の成長速度Vgをコントロールすることが可能になる。
一方、従来技術では、CZ単結晶育成中のフィードバック制御を、ADC(自動直径制御)と液面制御との組み合わせのみで行っている。すなわち、従来技術では、実際の使用におけるルツボの形状については全く考慮されておらず、しかもルツボの形状変化を正確に把握できていないため、シリコン単結晶の引き上げにおいて成長速度Vgを正確にコントロールすることができない。すなわち、従来技術では、上記のような液面降下速度Vmが0.01mm以下の精度に対応したVgのコントロールには全く対応しておらず、半導体デバイス、特に3次元構造のデバイスの性能を十分に引き出すためのシリコン単結晶(インゴット)を製造することができるシリカガラスルツボにはなっていない。
ここで、今までのルツボの製造履歴・検査結果・使用結果からルツボの挙動をシミュレーション技術によって推定することは可能である(ルツボの挙動の例)。ここからルツボの変形について以下のことが分かる。
(1)肉厚が薄めの部分での変動量が大きい。
(2)重量の大きいルツボほど変形量が多い。
(3)外径の小さいルツボほど内面の変形量が大きい。
(4)偏心している部分での変形量が多い。
(5)カーボンサセプタの対称形でない部分でルツボの変形が生じやすい。
(6)シリカガラスルツボはセラミックでもあり、ルツボ内周面は完全な真円にはなっていない。
上記のように、Vg=V+Vm−Cによってシリコン単結晶の成長速度Vgを制御するためには、ルツボの情報を正確に把握していることが必要である。したがって、過去からのすべてのルツボの情報を関連づけて記録しておき、検索可能な状態にしておくことが望まれる。
また、シリコン単結晶の成長速度(Vg)と、固液界面付近での引き上げ軸方向の温度勾配(G)との関係を規定することがインゴット600の結晶欠陥の発生を抑制する上で重要となる。ここで、引き上げ軸方向の温度勾配(G)は、固体側よりも融液側の方が高い(言い換えると、融液側よりも固体側の方が低い)。また、引き上げ軸と直交する方向(径方向)の面内(径方向の断面の面内)の温度勾配は一定である。
本発明のシリカガラスルツボ11は、シリコン単結晶の引き上げの際の変形や倒れが抑制されるため、シリコン融液の液面と熱遮蔽部材の先端との高さHを安定させることができる。このようなシリカガラスルツボ11を用いてシリコン単結晶の引き上げを行い、得られたインゴット600においては、直胴部620における結晶欠陥は実質的にゼロである。例えば、直胴部620におけるCOP(Crystal Originated Particle)が実質的にゼロとなる。COPは、結晶欠陥の一つで、単結晶の格子点にシリコン原子がない(空孔が集まった)微細な欠陥のことを言う。COPがあることで、半導体装置の電気的特性(リーク電流、抵抗値分布、キャリア移動度など)を劣化させる原因となる。
ここで、COPの発生について説明する。
図21は、ボロンコフ理論に基づいて各種の欠陥が発生する状況を説明する模式図である。
図21に示すように、ボロンコフ理論では、引き上げ速度をV(mm/min)、インゴット(シリコン単結晶)の固液界面近傍における引き上げ軸方向の温度勾配をG(℃/mm)としたとき、それらの比であるV/Gを横軸にとり、空孔型点欠陥の濃度と格子間シリコン型点欠陥の濃度を同一の縦軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を模式的に表現している。そして、空孔型点欠陥の発生する領域と格子間シリコン型点欠陥の発生する領域の境界となる臨界点が存在することを示している。
V/Gが臨界点を下回ると、格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢な単結晶が育成される。V/Gが臨界点より小さい(V/G)Iを下回る範囲では、単結晶内で格子間シリコン型点欠陥が支配的であって、格子間シリコン点欠陥の凝集体が存在する領域[I]が出現する。
一方V/Gが臨界点を上回ると、空孔型点欠陥濃度が優勢な単結晶が育成される。V/Gが臨界点より大きい(V/G)vを上回る範囲では、単結晶内で空孔型点欠陥が支配的であって、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域[V]が出現し、COPが発生する。
図22は、単結晶育成時の引き上げ速度と欠陥分布との関係を示す模式図である。
図22に示す欠陥分布は、引き上げ速度Vを徐々に低下させながらシリコン単結晶を育成し、育成した単結晶を中心軸(引き上げ軸)に沿って切断して板状試片とし、その表面の欠陥の発生状況を示したものである。欠陥分布は、板状試片の表面にCuデコレーションさせ、熱処理を施した後、その板状試片をX線トポグラフ法により観察し、欠陥の発生状況を評価した結果である。
図22に示すように、引き上げ速度を高速にして育成を行った場合、単結晶の引き上げ軸方向と直交する面内全域にわたり、空孔型点欠陥の凝集体(COP)が存在する領域[V]が発生する。引き上げ速度を低下させていくと、単結晶の外周部からOSF領域がリング状に出現する。このOSF領域は、引き上げ速度の低下に伴ってその径が次第に縮小し、引き上げ速度がV1になると消滅する。これに伴い、OSF領域に代わって無欠陥領域[P](領域[PV])が出現し、単結晶の面内全域が無欠陥領域[P]で占められる。そして、引き上げ速度がVまでに低下すると、格子間シリコン型点欠陥の凝集体(LD)が存在する領域[I]が出現し、ついには無欠陥領域[P](領域[PI])に代わって単結晶の面内全域が領域[I]で占められる。
本実施形態において、上記に示すCOPが実質的にゼロとは、COPの検出数が実質的に0個であることをいう。COPはパーティクルカウンタによって検出される。パーティクルカウンタでは0.020μm以上のパーティクルがウェーハ表面(半導体デバイス形成面)に30個以下しか検出されない場合に実質的に0個となる。本明細書において「0.020μmのCOP」とは、例えばTencor社製のSPシリーズ、またはこの装置と同等性能を有する半導体用およびシリコンウェーハ用のパーティクルカウンタ装置で測定した場合に、0.020μmのパーティクルサイズとして検出されるCOPのことをいう。
上記説明したように、直胴部620のCOPが実質的にゼロとなるインゴット600は、例えば直径300mm、厚さ約1mmにスライスされてシリコンウェーハとなる。インゴット600から切り出したシリコンウェーハを用いて製造した半導体装置では、電気的特性の安定化、劣化抑制を図ることができる。
なお、COPを検出する方法はパーティクルカウンタ以外であってもよい。例えば、表面欠陥検査装置を用いる方法、ウェーハの表面に所定厚さの酸化膜を形成した後、外部電圧を印加して、ウェーハ表面の欠陥部位で酸化膜を破壊するとともに銅を析出させ、この析出した銅を肉眼、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)などで観察することにより欠陥(COP)を検出する方法などが挙げられる。インゴット600の直胴部620では、このような検出方法ではCOPが検出されない(実質的にゼロとなる)。
本発明のインゴット600におけるより好ましい形態は、直胴部620の全てにおいて、ベーカンシーと呼ばれる点欠陥(空孔)が凝集した領域(COPが存在するV−Rich領域)がなく、OSF(Oxidation Induced Stacking Fault)が検出されず、インタースティシャルと呼ばれる格子間型の点欠陥が存在する領域(I−Rich領域)がないこと、すなわち直胴部620の全てがニュートラル領域になっていることである。ここで、ニュートラル領域は、欠陥が全くない領域のほか、僅かにベーカンシーやインタースティシャルが含まれていても凝集した欠陥として存在しないか、検出不可能なほど小さい領域を含む。
このように、直胴部620の結晶欠陥がゼロになっていることで、インゴット600から切り出したウェーハを用いて製造した半導体装置の電気的特性の安定化および劣化抑制を図ることができる。
<ホモエピタキシャルウェーハ>
また、このウェーハを基板部としたホモエピタキシャルウェーハ(以下、単に「エピタキシャルウェーハ」とも言う。)を構成してもよい。図23は、エピタキシャルウェーハを例示する模式断面図である。エピタキシャルウェーハ700は、インゴット600から切り出したウェーハの基板部710と、基板部710の上に設けられたシリコン単結晶のエピタキシャル層720と、を備えている。本実施形態において、エピタキシャル層720はシリコンのホモエピタキシャル層である。エピタキシャル層720の厚さは、約0.5μm〜20μmである。
エピタキシャルウェーハ700の製造方法の一例を示す。先ず、基板部710をエピタキシャル炉の中で約1200℃まで加熱する。次に、炉内に気化した四塩化珪素(SiCl)、三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl)を流す。これにより、基板部710の表面上にシリコン単結晶の膜が気相成長(エピタキシャル成長)し、エピタキシャル層720が形成される。
結晶欠陥が実質的にゼロであるインゴット600から切り出したウェーハを用いてエピタキシャルウェーハ700を構成することにより、結晶欠陥が実質的にゼロとなるエピタキシャル層720を形成することができる。
近年、半導体集積回路の微細化が進み、従来のプレーナ型トランジスタでは限界に近づいてきている。そこで、Fin型のFET(フィン型電界効果トランジスタ)構造と呼ばれているトランジスタが提唱されるようになった(例えば、特許文献21、22参照)。
従来のプレーナ型では、シリコンウェーハ表面の内部に、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)構造が構成される。
プレーナ型では、ソース、ドレインを2次元的に構成している。ところが、Fin型のFETは、シリコン表面の上層にFINと呼ばれるチャネル領域を有し、シリコンウェーハと接しており三次元構造のMOSFETとなっている。
プレーナ型はゲート長で微細化を進めたが、Fin型のFETではフィン(Fin)幅を最少寸法として管理される。フィン幅が20nm程度、つまりCOPと同程度のFin型FETもある。
そこで、フィン(Fin)直下のシリコンウェーハの表面品質として、COPのサイズを極限まで低減することを求められている。
このような3次元構造は、Fin型FETのほか、3次元NAND型のフラッシュメモリでも採用される。
このような半導体デバイスを製造するためには、品質を向上させたホモエピタキシャルウェーハが要望されている。
シリコンウェーハを用いてホモエピタキシャル層を成膜する際、シリコンウェーハのCOPのサイズをより小さく、より少なくする必要がある。シリコンウェーハ上のCOPを抑制するために熱処理する方法もあるが、シリコン単結晶のインゴットの段階でCOPを実質的にゼロにするために、引き上げ時におけるシリコン融液のコントロールをすることが重要である。本願発明者らは、シリコン融液の液面変動とシリカガラスルツボとの関係に着目して、シリコン融液をコントロールできることを見出した。
なお、エピタキシャル層720は、基板部710の表面の全面に形成されていても、部分的に形成されていてもよい。これにより、結晶の完全性が求められる場合や、抵抗率の異なる多層構造を必要とする場合に対応できる高品質なエピタキシャルウェーハ700を提供することができる。
<ルツボ製造からシリコン単結晶製品製造までの工程>
図24は、ルツボ製造からウェーハ製造までの工程を例示するフローチャートである。
図24に示すステップS201〜S206まではルツボの製造工程であり、ステップS207〜S214まではインゴットの製造工程であり、ステップS215〜S221まではシリコンウェーハの製造工程であり、ステップS222〜S227まではエピタキシャルウェーハの製造工程である。
ステップS201〜S214に示すルツボ製造からインゴット製造までの一連の工程を、ルツボ−インゴット製造工程と言うことにする。
ステップS201〜S221に示すルツボ製造からシリコンウェーハ製造までの一連の工程を、ルツボ−シリコンウェーハ製造工程と言うことにする。
ステップS201〜S227に示すルツボ製造からエピタキシャルウェーハ製造までの一連の工程を、ルツボ−エピウェーハ製造工程と言うことにする。
ルツボ−インゴット製造工程、ルツボ−シリコンウェーハ製造工程およびルツボ−エピウェーハ製造工程のそれぞれにおいて、一貫した製造条件の制御および品質管理を行うため、本実施形態では、各工程を一括管理する一貫制御システムが用いられる。
本実施形態では、ルツボ製造に起因してシリコン単結晶製品(インゴット、シリコンウェーハ、エピタキシャルウェーハ)の品質までを想定した生産管理を一貫制御システムが用いられる。
従来では、例えばシリコン単結晶の引き上げによってインゴットを製造する場合、ADC(自動直径制御)で直胴部の直径を一定に制御している。直径約300mmの直胴部を全長2000mmまで引き上げる時間は、0.5mm/分として約4000分必要となる。また、シリコンインゴット製造における全体としては、(1)シリカガラスルツボへの多結晶シリコンの充填時にシリカガラスルツボが割れないように慎重に装填する作業、(2)多結晶シリコンの溶融、(3)Dashネッキング(転位除去)工程、(4)シリコンインゴットの肩部の形成、(5)直胴部全長2000mmの引き上げ、(6)シリコンインゴットに転位が入らないようにテール絞りを行い、(7)炉を冷却してシリコンインゴットの回収、を行う。このような一連の処理を行い、直径300mm、直胴部の全長2000mmのシリコンインゴットを1本製造するためには、約7日程度を費やすことになる。
この間の制御は、主に引き上げ速度と重量の関係のみで、直胴部の直径の一定、全長でのCOPフリーの引き上げを目指している。引き上げにおいて重要なシリコン融液の液面とコーン部571との高さHは、引き上げ速度が速いと高く、引き上げ速度が遅いと低くなる。従来では、高さHの制御を引き上げ装置ごとの個体差とオペレータの経験で行っている。
本実施形態では、ルツボの内面変形量を予測することによって、引き上げ時の高さHをより一定に制御できるようにしている。すなわち、引き上げ装置においてルツボはカーボンサセプタ520内に収められ、多結晶シリコンの充填によって例えば500kgの重量となる。また、引き上げ中のルツボは約1600℃の高温となり、シリコン融液によって外側に押され、カーボンサセプタ520との隙間がなくなる。カーボンサセプタ520は変形しないため、結果としてルツボはカーボンサセプタ520からの反力で内側に変形しやすくなる。
本実施形態の一貫制御システムでは、今まで使用してきたルツボの製造履歴・使用前の内部残留応力の測定結果、使用後の形状変化などの情報を蓄積し、引き上げ装置、引き上げ条件との関係から、引き上げ時のルツボの挙動、変形を使用前に事前に計算しておく。これにより、予測される引き上げ中のルツボの変形から、ルツボの内容積の変動が分かり、引き上げ中の高さHを厳密に制御することができる。したがって、結晶欠陥が実質的にゼロとなるインゴットの製造、このインゴットからのシリコンウェーハの製造、およびこのシリコンウェーハを用いたエピタキシャルウェーハの製造へと一貫した制御を行うことが可能となる。
以上説明したように、実施形態によれば、シリカガラスルツボ11の内部残留応力を正確に測定することができる。
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
11…シリカガラスルツボ
11a…側壁部
11b…コーナ部
11c…底部
13…透明層
15…非透明層
20…カーボンモールド
21…通気孔
23…シリコン融液
23a…液面
24…種結晶
25…シリコン単結晶
30…アーク電極
100…歪測定装置
110…発光部
110A…下方照射部
110B…側方照射部
111…光源
112…第1偏光手段
113…第2偏光手段
115…拡散板
120…撮像部
121…受光部
122…第3偏光手段
122B…偏光素子
123…第4偏光手段
130…出力部
200…ロボットアーム型歪測定システム
201…第1シリカ粉
202…第2シリカ粉
210…ロボットアーム
220…架台
221…横架台
222…縦架台
223…スライドレール
224…台座
250…コントローラ
500…引き上げ装置
510…チャンバ
520…カーボンサセプタ
530…支持軸
540…ヒータ
550…保温筒
560…引上げ手段
561…ワイヤケーブル
570…熱遮蔽部材
571…コーン部
572…フランジ部
600…インゴット
610…肩部
620…直胴部
630…尾部
700…エピタキシャルウェーハ
710…基板部
720…エピタキシャル層
CR…ルツボ
H0…高さ位置
IS…内表面
MR…測定領域
R1…第1領域
R2…第2領域
TP…上端面
V…引き上げ速度
Vg…成長速度
Vm…降下速度

Claims (11)

  1. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボの歪を測定する歪測定装置であって、
    前記側壁部の側方に配置され、偏光光を前記側壁部に向けて照射する発光部と、
    前記側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を取り込む撮像部と、
    前記撮像部で取り込んだ前記映像に基づき前記シリカガラスルツボの歪の分布を出力する出力部と、
    を備えたシリカガラスルツボの歪測定装置。
  2. 前記発光部は、
    光源と、
    前記光源から出射された光から直線偏光成分を取り出す第1偏光手段と、
    前記第1偏光手段を介して取り出された直線偏光成分の光を回転偏光成分の光に変換する第2偏光手段と、
    を含む請求項1記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  3. 前記撮像部は、
    受光部と、
    前記受光部と、前記側壁部の前記上端面との間に設けられ、直線偏光成分よりも回転偏光成分の光を多く透過する第3偏光手段と、
    を含む請求項2記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  4. 測定対象となるシリカガラスルツボを載置する台座を有する架台をさらに備え、
    前記発光部は前記架台に設けられ、
    前記撮像部は移動可能に設けられた、
    請求項1〜3のいずれか1つに記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  5. 前記撮像部を移動可能に支持するアームと、
    前記シリカガラスルツボの設計データを利用して前記アームの位置を制御し、前記撮像部による撮像領域を制御するコントローラと、
    をさらに備えた請求項4記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  6. 前記台座、前記発光部および前記撮像部を制御するコントローラをさらに備え、
    前記コントローラは、前記シリカガラスルツボと前記撮像部との相対的な位置を移動して撮像することを繰り返すことで、前記シリカガラスルツボの全周分の歪を測定する、請求項4記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  7. 前記コントローラは、前記シリカガラスルツボの少なくとも前記上端面の1周分の歪を測定する制御を行う請求項6記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  8. 前記コントローラは、前記シリカガラスルツボの内表面の全体の歪を測定する制御を行う請求項6記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  9. 前記撮像部を移動可能に支持するアームをさらに備え、
    前記コントローラは、前記シリカガラスルツボの設計データを利用して前記アームの位置を制御し、前記撮像部による撮像領域を制御する請求項6記載のシリカガラスルツボの歪測定装置。
  10. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えシリカガラスルツボであって、歪測定装置で測定された前記シリカガラスルツボを用いてシリコン単結晶を製造する方法であって、
    前記歪測定装置は、
    前記側壁部の側方に配置され、偏光光を前記側壁部に向けて照射する発光部と、
    前記側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を取り込む撮像部と、
    前記撮像部で取り込んだ前記映像に基づき前記シリカガラスルツボの歪の分布を出力する出力部と、を備え、
    前記シリカガラスルツボは、
    前記歪測定装置の前記出力部から出力された前記分布として、
    前記側壁部の厚さ方向において内表面から途中まで設けられた第1領域と、
    前記側壁部の厚さ方向において前記第1領域よりも外側に設けられ、前記第1領域とは異なる歪分布を有する第2領域と、を備え、
    前記シリコン単結晶を製造する方法は、
    前記シリカガラスルツボ内にシリコン材料を投入して溶融する工程と、
    前記シリカガラスルツボ内に保持されたシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる工程と、を備えたシリコン単結晶の製造方法。
  11. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記側壁部と前記底部との間に設けられ前記底部の曲率よりも高い曲率を有するコーナ部と、を備えるシリカガラスルツボの歪を測定する歪測定方法であって、
    前記側壁部の側方から前記側壁部に向けて偏光光を照射する工程と、
    前記側壁部の上端面の偏光光に応じた映像を撮像部で取り込む工程と、
    前記撮像部で取り込んだ前記映像に基づき前記シリカガラスルツボの歪の分布を出力する工程と、
    を備えたシリカガラスルツボの歪測定方法。
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