JP6595715B2 - 固体電解質組成物、全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質および正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。さらに、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車や大型蓄電池等への応用が期待されている。
<1>周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質と、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩と、多分岐ポリマーとを含む固体電解質組成物であって、
多分岐ポリマーが、コア部と、コア部に結合する少なくとも3本のアーム部とを有してなり、アーム部が、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩の金属イオンを溶解している固体電解質組成物。
<2>アーム部が、アルキレンオキサイド基、カーボネート基、エステル基、アミド基またはシリコーン基を有する繰り返し単位を少なくとも1種含有するポリマー構造を含む<1>に記載の固体電解質組成物。
<5>アーム部の質量平均分子量が500以上1,000,000以下である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<8>コア部が、分子量200以上の原子群である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<11>周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/またはリチウムビスオキサレ−トボラ−トである<1>〜<10>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<12>周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの挿入および放出可能な活物質を含む<1>〜<11>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<13>周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質100質量部に対して、多分岐ポリマーを0.1質量部以上10質量部以下含有する<1>〜<12>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<14> <1>〜<13>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物の層を基材上に有する全固体二次電池用シート。
<15>正極活物質層と負極活物質層と無機固体電解質層とを具備する全固体二次電池であって、正極活物質層、負極活物質層および無機固体電解質層の少なくとも1層が、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物の層である全固体二次電池。
<16> <1>〜<13>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を基材上に適用する工程を含む全固体二次電池用シートの製造方法。
<17> <16>に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「アクリル」というときにはアクリロイル基を有する構造群を広く指し、例えば、α位に置換基を有する構造を含むものとする。ただし、α位にメチル基を有するものをメタクリルと呼び、これを含む意味で(メタ)アクリルなどと称することもある。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基および連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e−)が供給され、そこにリチウムイオン(Li+)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li+)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。以下、図1の層構成を有する全固体二次電池を全固体二次電池シートと称することもある。
本発明の固体電解質組成物は、上記負極活物質層、正極活物質層、固体電解質層の成形材料として好ましく用いることができる。本発明の固体電解質組成物は、上記負極活物質層および/または固体電解質層の成形材料として用いることが特に好ましい。また、本発明の全固体二次電池用シートは、上記負極活物質層、正極活物質層、固体電解質層として好適である。
本明細書において、正極活物質層(以下、正極層とも称す。)と負極活物質層(以下、負極層とも称す。)をあわせて電極層または活物質層と称することがある。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質と、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩と、多分岐ポリマーとを含有する。本発明の固体電解質組成物を層構成材料として作製した全固体二次電池は、放電容量維持率が高く、製造後一定期間保存後の放電容量の低下が抑制され、かつ従来よりも過酷な環境で充放電された場合にも異常が発生しにくい。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
全固体二次電池を構成する正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層の少なくとも1層において、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩の金属イオンを溶解しているアーム部を持つ多分岐ポリマーがバインダーとして含有されることで、固体粒子(例えば、電極活物質および硫化物系無機固体電解質)の結着性が向上し、固体粒子界面の状態を良好にするだけでなく、上記金属イオンが多分岐ポリマー内部に取り込まれるため、上記界面における金属イオン伝導性を向上させることができると考えられる。その結果、本発明の固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池は、サイクル特性および製造後一定期間保存後の放電容量に優れる。
また、上記多分岐ポリマーが硫化物系無機固体電解質粒子間の界面に存在することで、デンドライト生成時の成長が抑制されるため、短絡等の電池異常が発生しにくいと考えられる。
無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオンおよびアニオンが解離または遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、LiFSI、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
例えば下記式(I)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
La1Mb1Pc1Sd1Ae1 式(I)
式中、LはLi、NaおよびKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましい。d1はさらに、2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1はさらに、0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mであらわされる元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
上記硫化物系無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において固形分(固形成分)とは、窒素雰囲気下80℃で揮発ないし蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
本発明に用いられる周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩(以下、金属塩ともいう)は特に制限されないが、金属塩を構成する金属イオンとしてはリチウムイオンが好ましい。金属イオンが遊離しやすいことから、金属塩を構成するアニオンとしては、かさ高いアニオンが好ましい。かさ高いアニオンの具体例として、PF6 −、BF4 −、TFSIおよびBETIが挙げられる。本発明に用いられる多分岐ポリマーのアーム部に、金属イオンをより効率的に溶解させる観点から、有機アニオンがより好ましい。有機アニオンの具体例として、TFSI、BETI、FSIおよびトリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。
以下、本発明に用いられる金属塩の具体例を記載する。
これらのなかで、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、Li(Rf1SO3)、LiN(Rf1SO2)2、LiN(FSO2)2、及びLiN(Rf1SO2)(Rf2SO2)が好ましく、LiPF6、LiBF4、LiN(Rf1SO2)2、LiN(FSO2)2、及びLiN(Rf1SO2)(Rf2SO2)などのリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、Rf1、Rf2はそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
なお、本発明において、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩の含有量が上記範囲内にあることにより、本発明の固体電解質組成物を用いて全固体二次電池を構成する各層を形成する際に、金属の塩が析出することなく、多分岐ポリマーのアーム部に金属イオンを溶解させた状態で全固体二次電池を用いることが可能となり、イオン伝導性と電池性能の向上を両立することが出来る。
本発明に用いられる多分岐ポリマーは、コア部と、上記コア部に結合する少なくとも3本のアーム部とを有してなる。このコア部は、分子量200以上の原子群であることが好ましく、分子量300以上の原子群であることがより好ましい。上限は、5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,000以下であることが特に好ましい。コア部の分子量が上記範囲にあることにより、多分岐ポリマーに金属の塩の金属イオンが効率的に溶解され、この金属イオンを溶解した多分岐ポリマーと無機固体電解質とがより効果的に相互作用することが可能となるからである。
このコア部は4価の炭素原子のみでないことが好ましい。上記コア部は、後述の式(B)のL−(X)nで表される連結基が好ましい。アーム部は、後述の式(B)の(P1)nであることが好ましい。
上記多分岐ポリマーのコア部に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有することが好ましく、酸素原子を有することがより好ましい。アーム部との連結位置(アーム部と直結する位置)に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を有することが好ましく、酸素原子を有することがより好ましい。
−(CRf 2)n1−O(C=O)−(CRf 2)n1−S− ・・・ (1a)
式中n1は0〜10の整数を表す。Rfは水素原子または置換基を示し、水素原子が好ましい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子)、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アシル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜3が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜10がより好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜5がより好ましい)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルファニル基、アミノ基、アミド基、酸性基(カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基等)などが挙げられる(この置換基群を置換基Tとよぶ)。酸性基はそれぞれその塩でもよい。対イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン等が挙げられる。
本発明に用いる多分岐ポリマーは、アーム部を有する。アーム部の構造としては、ポリエチレン鎖を主鎖としてもつ構造が好ましい。その側鎖としては、下記式(A)の−L1−R2が挙げられる。アーム部の質量平均分子量は、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましい。上限としては、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
アーム部の質量平均分子量が上記範囲にあることにより、金属イオンの溶解性と流動性を両立することができ、広い温度範囲で良好な特性(例えば、イオン伝導性)を示すことが可能となるからである。
メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート
・カーボネート基を有する化合物
ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、炭素数3〜6のアルキレン骨格を有するポリカーボネート
・エステル基を有する化合物
バレロラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、ポリカルボキシエチルアクリレート
・アミド基を有する化合物
ナイロン6、ポリグリシン、ポリアラニン、ナイロン66
・シリコーン基を有する化合物
ポリジメチルシロキサンモノメチルアクリレート、ジメチルシクロポリシロキサン、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン
すなわち、本発明に用いられる多分岐ポリマーは、アーム部を構成するポリマー構造の側鎖に周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩の金属イオンを溶解する基として(以下、「金属イオン溶解基」とも称する。)アルキレンオキサイド基、カーボネート基、エステル基、アミド基またはシリコーン基を含むことが好ましい。本発明に用いられる多分岐ポリマーが側鎖に金属イオン溶解基を含むことで、金属イオン溶解基を運動性高く保持し、金属イオンを良好に溶解させることができるからである。
−L1−R2の好ましい具体例として、−C(=O)−(金属溶解基を含む繰り返し単位)n3−アルコキシ基が挙げられる。なお、n3は、2以上の整数を示す。
アーム部の主鎖をなす構成成分として金属イオン溶解基を含むアーム部としては、下記式(C)で表される構造であることが好ましい。
L11に含まれる金属イオン溶解基の割合は特に制限されないが、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。上限は制限なく、100質量%以下である。
R12は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルコキシ基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜10がより好ましい)またはヒドロキシ基を示す。好ましくは、R12が直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。R12がアルキル基、アルコキシ基またはアリール基を示す場合、さらに置換基Tを有していてもよい。
*はコア部との連結部位を示す。
−L11−R12の具体例として、−LX−(金属溶解基を主鎖中に含む繰り返し単位)n4−アルキル基または−(金属溶解基を主鎖中に含む繰り返し単位)n4−アルコキシ基が挙げられる。なお、n4は2以上の整数を示す。
本発明に用いられる多分岐ポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、1,700以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、3,500以上であることが特に好ましい。上限は3,000,000以下であることが好ましく、1,500,000以下であることがより好ましく、1,000,000以下であることがさらに好ましく、500,000以下がさらに好ましく、100,000以下が特に好ましい。
なお、本発明に用いられる多分岐ポリマーのアーム部の質量平均分子量は、500以上が好ましく、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。上限としては10,000,000以下であることが好ましく、1,000,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。
カラム:TOSOH TSKgel Super AWM−H(商品名)をつないだカラム
キャリア:10mMLiBr/N−メチルピロリドン
(条件2)・・・優先
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H、TOSOH TSKgel Super HZ4000、TOSOH TSKgel Super HZ2000(いずれも商品名)をつないだカラム
キャリア:テトラヒドロフラン
多分岐ポリマー粒子を任意の溶媒(固体電解質組成物の調製に用いる分散媒体。例えば、ヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた体積平均粒子径を平均粒子径とする。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製して測定し、その平均値を採用する。
なお、作製された全固体二次電池からの測定は、例えば、電池を分解し電極を剥がした後、その電極材料について上記多分岐ポリマー粒子の平均粒子径の測定方法に準じてその測定を行い、あらかじめ測定していた多分岐ポリマー粒子以外の粒子の平均粒子径の測定値を排除することにより行うことができる。
本発明に用いられる多分岐ポリマーは、例えば、「高分子の合成(下)」講談社、第IV編 開環重合の項目を参照して、通常の方法により合成することができる。
多分岐ポリマーの合成法は、合成したアーム部ポリマーを少なくとも三官能以上のコア部とカップリングする方法であって良い。また、三官能以上のコア部から逐次又は連鎖的に重合し、アーム部ポリマーを形成する方法であってもよい。連鎖移動剤を用いてラジカル重合を行う方法も挙げることができる。連鎖移動剤としては、チオール含有化合物を挙げることができ、少なくとも三官能以上のチオール含有化合物存在下、ラジカル重合を行う方法がプロセス上簡便であり、好ましい。このように、エンチオール反応を利用してアーム部とコア部とを連結する場合には、コア部の基質側にチオール(スルファニル)基があっても、アーム部の基質側にチオール基があってもよい。本発明においては、必要により、特定の便宜からコア部の基質側にチオール基があるものとして規定する。
なお、本明細書において固形成分とは、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒体以外の成分を指す。
上記多分岐ポリマーは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の多分岐ポリマーの合成には、重合開始剤を含有させることが好ましい。なかでもラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
熱によって開裂して開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド及びメチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジイソブチリルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びm−トルイルベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセンなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチル)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン及び2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート及びジブチルペルオキシトリメチルアジペートなどのアルキルパーエステル類;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオジカーボネート、α−クミルペルオキシネオジカーボネート、t−ブチルペルオキシネオジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(1,1−ブチルシクロヘキサオキシジカーボネート)、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t−アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート及び1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボキシ)ヘキサンなどのパーオキシカーボネート類;1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン及び(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートなどが挙げられる。
アゾ系の重合開始剤として使用するアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名 V−65)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等が挙げられる(特開2010−189471など参照)。あるいは、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピネート)(商品名 V−601、和光純薬社製)なども好適に用いられる。
このようなラジカル重合開始剤としては、ベンゾインエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔IRGACURE651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔IRGACURE184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン〔DAROCUR1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン〔IRGACURE2959、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン〔IRGACURE127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン〔IRGACURE907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1〔IRGACURE369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モノホリニル)フェニル]−1−ブタノン〔IRGACURE379、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド〔DAROCUR TPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド〔IRGACURE819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム〔IRGACURE784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]〔IRGACURE OXE 01、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)〔IRGACURE OXE 02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕などを挙げることができる。
これらのラジカル重合開始剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤の含有量はモノマー100質量部に対して0.01質量部〜20質量部の量で適用することが好ましい。
本発明に用いられる多分岐ポリマーの合成には、重合禁止剤を添加してもよい。上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル等を用いることができる。
重合反応の温度は特に限定されず、適用するモノマーや反応媒体によって調整すればよいが、例えば、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が特に好ましい。上限は特にないが、150℃以下であることが実際的である。
本発明の固体電解質組成物は、固形成分を分散させるため分散媒体を含有することが好ましい。分散媒体の具体例としては下記のものが挙げられる。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である金属酸化物が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質、負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極用組成物(正極用組成物、負極用組成物)ということがある。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、CuおよびVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、PまたはBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物および(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8およびLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4およびLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類ならびにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩およびLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4およびLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体およびリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、AlおよびIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵および放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
また、正極活物質または負極活物質を含む電極表面は硫黄またはリンで表面処理されていてもよい。
さらに、正極活物質または負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線または活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていても良い。
本発明の固体電解質組成物は更に高分子成分としてバインダーを含有してもよい。
本発明で使用するバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
アクリル樹脂としては、各種の(メタ)アクリルモノマー類、(メタ)アクリルアミドモノマー類、およびこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体が挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えばポリ(メタ)アクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体が挙げられる。
その他の樹脂としては例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーは、固体の状態で使用しても良いし、ポリマー粒子分散液またはポリマー溶液の状態で用いてもよい。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
本発明の固体電解質組成物は分散剤を含有してもよい。分散剤を添加することで電極活物質及び無機固体電解質のいずれかの濃度が高い場合や、粒子径が細かく表面積が増大する場合においてもその凝集を抑制し、均一な活物質層及び固体電解質層を形成することができる。分散剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。一般的には粒子吸着と立体反発および/または静電反発を意図した化合物が好適に使用される。
本発明の固体電解質組成物は、導電助剤を含有してもよい。導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維やカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェンやフラーレンなどの炭素質材料であっても良いし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いても良い。またこれらの内1種を用いても良いし、2種以上を用いても良い。
以下、本発明の固体電解質組成物の調製方法の一例を記載する。
まず、上記分散媒体(例えば、アセトニトリル)に、本発明に用いられる多分岐ポリマーおよび周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩を分散させ、20〜60℃で5〜120分間撹拌する。続いて、減圧乾燥することにより、多分岐ポリマーと周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩を含むポリマー組成物を得る。
次いで、無機固体電解質および上記で調製したポリマー組成物を分散媒体の存在下で分散して、スラリー化することで固体電解質組成物を調製することができる。
スラリー化は、各種の混合機を用いて無機固体電解質と、ポリマー組成物と、分散媒体とを混合することにより行うことができる。混合装置としては、特に限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサ―、ブレードミキサ―、ロールミル、ニーダーおよびディスクミルが挙げられる。混合条件は特に制限されないが、例えば、ボールミルを用いた場合、150〜700rpm(rotation per minute)で1時間〜24時間混合することが好ましい。
活物質、粒子分散剤等の成分を含有する固体電解質組成物を調製する場合には、上記の無機固体電解質およびポリマー組成物の分散工程と同時に添加及び混合してもよく、別途添加及び混合してもよい。
本発明の全固体二次電池用シートは、全固体二次電池に好適に用いることができ、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、基材上に固体電解質層を有するシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう)、基材上に電極活物質層又は電極活物質層と固体電解質層を有するシート(全固体二次電池用電極シート)及び固体電解質層及び/又は活物質層(電極層)からなるシート(基材を有さないシート)等が挙げられる。本願明細書において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートということがある。
全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、固体電解質層と保護層とを基材上に、この順で有するシートが挙げられる。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、後記集電体で説明する材料、有機材料および無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびセルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラスおよびセラミック等が挙げられる。
このシートは、本発明の固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
ここで、本発明の固体電解質組成物は、例えば、上記の方法によって調製できる。
電極シートを構成する各層の構成および層厚は、上述の、本発明の全固体二次電池において説明した各層の構成および層厚と同じである。
電極シートは、本発明の、活物質を含有する固体電解質組成物を金属箔上に製膜(塗布乾燥)して、金属箔上に活物質層を形成することにより、得られる。活物質を含有する固体電解質組成物を調製する方法は、活物質を用いること以外は、上記固体電解質組成物を調製する方法と同じである。
本発明の全固体二次電池は、正極と、この正極に対向する負極と、正極及び負極の間の固体電解質層とを有する。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有する。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、本発明の固体電解質組成物を用いて形成される。
固体電解質組成物で形成された活物質層および/または固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。
なお、全固体二次電池用シートは、電池性能に影響を与えない範囲内で分散媒体を含有してもよい。具体的には、全質量中1ppm以上10000ppm以下含有してもよい。
全固体二次電池用シートを20mm角で打ち抜き、ガラス瓶中で重テトラヒドロフランに浸漬させる。得られた溶出物をシリンジフィルターでろ過して1H−NMRにより定量操作を行う。1H−NMRピーク面積と溶媒の量の相関性は検量線を作成して求める。
全固体二次電池10においては、正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2のいずれかが本発明の固体電解質組成物を用いて形成されている。
すなわち、固体電解質層3が本発明の固体電解質組成物で形成されている場合、固体電解質層3は、無機固体電解質と、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩と、多分岐ポリマーとを含む。固体電解質層は、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含まない。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する無機固体電解質及び多分岐ポリマーは、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウムまたはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウムおよびアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金またはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金およびステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
上記の各層を配置して全固体二次電池の基本構造を作製することができる。用途によってはこのまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためにはさらに適当な筐体に封入して用いる。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金およびステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
本発明の全固体二次電池用シートは、本発明の固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
上記態様により、基材と固体電解質層とを有するシートである全固体二次電池用シートを作製することができる。
その他、塗布等の工程については、下記全固体二次電池の製造に記載の方法を使用することができる。
全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造は、常法によって行うことができる。具体的には、全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。以下詳述する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極用組成物)として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極用材料(負極用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。さらに、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
固体電解質組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布およびバーコート塗布が挙げられる。
このとき、固体電解質組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒体をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒体が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布しても良いし、塗布乾燥プレスを同時および/または逐次行っても良い。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
〔1〕正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層の少なくとも1層が導電助剤を含有する全固体二次電池。
〔2〕固体電解質層が、分散媒体によって、導電助剤および硫化物系無機固体電解質が分散されたスラリーを湿式塗布し製膜される全固体二次電池の製造方法。
〔3〕上記全固体二次電池作製用の活物質を含有する固体電解質組成物。
〔4〕上記固体電解質組成物を金属箔上に適用し、製膜してなる全固体二次電池用電極シート。
〔5〕上記固体電解質組成物を金属箔上に適用し、製膜する全固体二次電池用電極シートの製造方法。
〔6〕固体電解質層および負極活物質層の少なくとも1層が本発明の固体電解質組成物から形成された全固体二次電池。
無機固体電解質とは、上述した高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−S系ガラス、LLTやLLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがある。上記のイオン輸送材料としての電解質と区別する際には、これを「電解質塩」または「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては、例えばLiTFSIが挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。
(多分岐ポリマーPA−1の合成)
還流冷却器、ガス導入コックを付した200mL三つ口フラスコに、下記表1に示すアーム部形成化合物のモノマー1(メトキシポリエチレングリコールアクリレート(数平均分子量450)(Aldrich社製))33.0g、下記表1に示すコア形成化合物C−1(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート))(和光純薬工業株式会社製))1.5g、メチルエチルケトン70.0gを添加し、2回窒素置換した。続けて、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V−65、和光純薬工業株式会社製)3.0gを添加し、更に2回窒素置換した後、窒素気流下70℃で3時間加熱した。NMRにより、残存モノマー由来ピークの消失と、コア部であるチオール水素ピークの消失を確認するまで加熱を継続した。石油エーテルを加え、固体を析出させ、多分岐ポリマーPA−1を得た(収量:20.1g)。
還流冷却器、滴下漏斗を付した1000mL三つ口フラスコに、下記表2に示すコア形成化合物C−4(ブタンテトラカルボン酸(東京化成工業社製))1.2g、下記表2に示すアーム部形成化合物(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量5000)(Aldrich社製))120g、テトラヒドロフラン500gを添加した。別途調製したEDCI/HCl(1−エチル−3−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)(東京化成社製)4.3g、トリエチルアミン2.4g、テトラヒドロフラン50gの混合溶液を滴下漏斗に移し、三つ口フラスコに1時間かけて全量を滴下した。
滴下後、50℃で12時間加熱し、NMRにより、ブタンテトラカルボン酸由来のピーク消失を確認後、反応を停止し、反応終了後、石油エーテルを加え、固体を析出させ、多分岐ポリマーPA−5を得た(収量:100g)。
還流冷却器、滴下漏斗を付した500mL三つ口フラスコを窒素置換し、ペンタエリスリトール(Aldrich社製)1.2g、ジエトキシエタン50g、NaH0.4gを添加し、80℃で2時間加熱した。滴下漏斗に、バレロラクトン30g移し、100℃で加熱した状態で4時間かけて全量を滴下した。滴下後、100℃で12時間加熱し、原料由来のピークが消失したことを確認したのち、石油エーテルを加え、固体を析出させ、PA−7を得た(収量:10g)。
還流冷却器、滴下漏斗を付した100mL三つ口フラスコを窒素置換し、ジペンタエリスリトール(Aldrich社製)0.02g、ジエトキシエタン10g、NaH0.01gを添加し、80℃で2時間加熱した。ポリプロピレンカーボネート(Aldrich社製 )10g及びジエトキシエタン50gを計量し、三角フラスコにて撹拌し、100℃で加熱した三口フラスコに4時間かけて全量を添加した。滴下後、100℃で12時間加熱し、ジペンタエリスリトールの水酸基由来のピークが消失したことを確認した後、石油エーテルを加え、固体を析出させ、PA−8を得た(収量:5.8g)。
ポリマー分子量:多分岐ポリマーの質量平均分子量
アーム部分子量:多分岐ポリマーのアーム部の質量平均分子量
コア部分子量:多分岐ポリマーのコア部の分子量
C−1〜C−9:下記記載の化合物
(後述のC−4'〜C−9'は、C−4〜C−9由来のコア部の構造を示す。波線部は、多分岐ポリマー中での結合部位であることを示す。)
(1)ポリマー組成物LPA−1の調製
乾燥雰囲気下(露点−40℃)で200mLナスフラスコに回転子を投入し、上記で合成した多分岐ポリマーPA−1を8.0g、LiTFSIを2.0g秤量し、添加した。続いて、脱水したアセトニトリル100mLを添加し、40℃に加熱し、60分間撹拌することでポリマー液を得た。これをアルミニウム製パンの上に流し込み、80℃で2時間減圧乾燥することでポリマー組成物LPA−1を調製した。
7Li−NMR測定により、LiTFSI塩のピークが高磁場にシフトしていること並びに、1H−NMRによりPA−1のエチレンオキサイドに関係するピークが低磁場にシフトしていることを確認した。これにより、多分岐ポリマーのアーム部にリチウムイオンが溶解したことを確認した。
下記表3に記載の組成に変えた以外は、上記ポリマー組成物LPA−1と同様の方法で、ポリマー組成物LPA−2〜14およびLEX−1〜4を調製した。
EX−1:特開2015−164125号公報の実施例P−1に記載のポリマー
EX−2:特開2009−176484号公報の実施例に記載の、ポリエチレンオキシド(PEO)とポリプロピレンオキシド(PPO)との共重合体
LEX−3はLITFSI 20質量%で作製した処、成膜時に塩の析出が観察されたため、金属塩の濃度を薄くして評価した。
−Li−P−S系ガラスの合成−
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.HamGa,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンとの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃及び回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス、LPSと表記することがある。)6.20gを得た。
<固体電解質組成物の調製例>
(1)固体電解質組成物S−1の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成した硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラス9.7g、バインダーとして下記表4に記載のポリマー組成物0.3g、分散媒体としてヘプタン(90g)とジブチルエーテル(10g)との混合溶媒を15g投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続けた。このようにして、固体電解質組成物S−1を調製した。
下記表4に記載の組成に変えた以外は、上記固体電解質組成物S−1と同様の方法で、固体電解質組成物S−2〜S−14およびT−1〜T−5を調製した。
ここで、固体電解質組成物S−1〜S−14が本発明の固体電解質組成物であり、固体電解質組成物T−1〜T−5が比較の固体電解質組成物である。
LPS:上記で合成したLi−P−S系ガラス
(1)正極用組成物AS−1の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径3mmのジルコニアビーズを50個投入し、上記で調製した固体電解質組成物S−1を2g加えた。これに正極活物質LCOを3g加え、その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間攪拌を続け、正極用組成物AS−1を調製した。
下記表5に記載の組成に変えた以外は、上記正極用組成物AS−1と同様の方法で、正極用組成物AS−6、AS−13、AT−2、AT−4およびAT−5を調製した。
ここで、正極用組成物AS−1、AS−6およびAS−13が本発明の固体電解質組成物であり、正極用組成物AT−2、AT−4およびAT−5が比較の固体電解質組成物である。
LCO:LiCoO2(コバルト酸リチウム)、体積平均粒子径10μm
NMC:LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、体積平均粒子径6μm
(1)負極用組成物BS−1の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径3mmのジルコニアビーズを50個投入し、上記で調製した固体電解質組成物S−1を2g加えた。これに負極活物質として黒鉛を3g加え、その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数100rpmで15分間攪拌を続け、負極用組成物BS−1を調製した。
下記表6に記載の組成に変えた以外は、上記負極用組成物BS−1と同様の方法で、負極用組成物BS−2〜BS−14およびBT−1〜BT−5を調製した。
ここで、負極用組成物BS−1〜BS−14が本発明の固体電解質組成物であり、負極用組成物BT−1〜BT−5が比較の固体電解質組成物である。
ハードカーボン:体積平均粒子径5μm
黒鉛:体積平均粒子径15μm
(1)試験No.101の全固体二次電池の作製
(全固体二次電池シートの作製)
上記で調製した正極用組成物AT−5を厚み20μmのアルミ箔(集電体)上に、アプリケーター(商品名 SA−201ベーカー式アプリケータ、テスター産業社製)により塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、正極用組成物を乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧し(180MPa、1分)、正極活物質層/アルミ箔の積層構造を有する全固体二次電池用正極シートを作製した。正極活物質層の厚みは90μmであった。
次いで、得られた固体電解質層上に、上記で調製した負極用組成物BS−1を、上記ベーカー式アプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、厚み100μmの負極活物質層を形成した。負極活物質層上に厚み20μmの銅箔を合わせ、ヒートプレス機を用いて、120℃加熱しながら加圧し(600MPa、1分)、図1に示す層構成を有する全固体二次電池シートを作製した。
下記表7に記載の組成に変えた以外は、上記試験No.101の全固体二次電池と同様の方法で、試験No.102〜131およびe101〜e110の全固体二次電池を作製した。
ここで、試験No.101〜131の全固体二次電池が本発明の全固体二次電池であり、試験No.e101〜e110の全固体二次電池が比較の全固体二次電池である。
上記で作製した全固体二次電池について下記3つの試験を行った。以下、試験方法を記載する。また、結果を下記表7にまとめて記載する。
上記で作製した全固体二次電池を用い、30℃の環境下、充電電流値0.35mAおよび放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。
その後、サイクル試験として、30℃の環境下、充放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜3.0Vの充放電を繰り返す試験を実施した。
1サイクル目の放電容量と100サイクル目の放電容量とを測定した。下記表7に、下記式により算出した放電容量維持率(%)を記載する。
放電容量維持率(%)=100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量×100
上記で作製した全固体二次電池を用い、30℃の環境下、充電電流値0.35mAおよび放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。その後、0℃の環境下、充電電流値0.7mAの条件で4.2Vまで充電した後、30℃の環境下、放電電流値0.35mAの条件で3.0Vまで放電する充放電を行い、異常発生の有無について、下記基準により評価した。下記表7の異常発生評価の列に結果を示す。なお、本試験は、従来の一般的な全固体二次電池稼働の試験に比べて、厳しい条件で評価を行っている。
A:10個の全固体二次電池のうち、9〜10個が異常なく充放電を行った。
B:10個の全固体二次電池のうち、7〜8個が異常なく充放電を行った。
C:10個の全固体二次電池のうち、5〜6個が異常なく充放電を行った。
D:10個の全固体二次電池のうち、3〜4個が異常なく充放電を行った。
E:10個の全固体二次電池のうち、0〜2個が異常なく充放電を行った。
「異常」とは、充電時または放電時に電池電圧が0.1V以上低下したことを意味する。
上記で作製した全固体二次電池を用い、30℃の環境下、充電電流値0.35mAおよび放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。その後、30℃の環境下、充放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜3.0Vの充放電を5サイクル繰り返す試験を実施した。その後、30℃の環境下、充電電流値0.35mAの条件で4.2Vまで充電し、放電電流値0.7mAの条件で4.1Vまで放電したのち、全固体二次電池を取り外し、30℃の恒温槽中に1週間静置した。
1週間後に、30℃の環境下、放電電流値0.7mAの条件で3.0Vまで放電し、充電電流値0.35mAおよび放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜3.0Vの充放電を行い、その際の放電容量値を保存後放電容量とした。
保存時劣化率T(%)=(保存前における放電容量値―保存後放電容量値)/保存前放電容量値×100
A:0≦T≦15
B:15<T≦35
C:35<T≦50
D:50<T≦75
E:75<T≦100
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 2032型コインケース
12 全固体二次電池シート
13 全固体二次電池
Claims (17)
- 周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質と、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩と、多分岐ポリマーとを含む固体電解質組成物であって、
前記多分岐ポリマーが、コア部と、該コア部に結合する少なくとも3本のアーム部とを有してなり、前記アーム部が、前記周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩の金属イオンを溶解している固体電解質組成物。 - 前記アーム部が、アルキレンオキサイド基、カーボネート基、エステル基、アミド基またはシリコーン基を有する繰り返し単位を少なくとも1種含有するポリマー構造を含む請求項1に記載の固体電解質組成物。
- 前記アーム部を構成するポリマー構造の主鎖が、アルキレンオキサイド基、カーボネート基および/またはエステル基を含んで構成される請求項1または2に記載の固体電解質組成物。
- 前記アーム部の質量平均分子量が500以上1,000,000以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記コア部が、分子量200以上の原子群である請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記多分岐ポリマーと前記周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩との合計100質量%中、前記周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩を5質量%〜60質量%含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/またはリチウムビスオキサレ−トボラ−トである請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの挿入および放出可能な活物質を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する硫化物系無機固体電解質100質量部に対して、前記多分岐ポリマーを0.1質量部以上10質量部以下含有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解質組成物の層を基材上に有する全固体二次電池用シート。
- 正極活物質層と負極活物質層と無機固体電解質層とを具備する全固体二次電池であって、前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記無機固体電解質層の少なくとも1層が、請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解質組成物の層である全固体二次電池。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を基材上に適用する工程を含む全固体二次電池用シートの製造方法。
- 請求項16に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
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