JP6595431B2 - 固体電解質組成物、全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池の製造方法 - Google Patents

固体電解質組成物、全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体電解質組成物、全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池ならびに全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、負極及び正極の間に挟まれた電解質とを有し、両極間にリチウムイオンを往復移動させることにより充放電を可能とした蓄電池である。リチウムイオン二次電池には、従来、電解質として有機電解液が用いられてきた。しかし、有機電解液は液漏れを生じやすく、また、過充電または過放電により電池内部で短絡が生じ発火するおそれもあり、安全性と信頼性のさらなる向上が求められている。
上記問題の解決策として、有機電解液に代えて、高分子固体電解質を用いた全固体二次電池の研究が進められている。全固体二次電池は負極、電解質および正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができる。また、高分子固体電解質は柔軟性および曲げ加工性に優れ、薄型軽量化が可能である。そのため、電子ペーパー等の柔軟性が求められる電池等への応用が期待されている。
上記のような各利点から、次世代のリチウムイオン電池として、高分子固体電解質を用いた全固体二次電池、全固体二次電池を作製するための組成物およびシートの開発が進められている(非特許文献1等)。
しかし、高分子固体電解質は、一般的にはイオン伝導度が有機電解液に比べて低く、高いイオン伝導度を有する高分子固体電解質の開発が求められている。
上記要求に応えるため、高分子固体電解質に使用される高分子の面から各種の研究がなされている。例えば、特許文献1に記載の発明では、環状分子に線状高分子が包接される包接化合物において、この環状分子を架橋点とする架橋物と電解質塩化合物とを含有する高分子固体電解質が記載されている。また、特許文献2に記載の発明では、環状分子と会合してロタキサンを生成する線状分子を含む移送用分子錯体、およびこの移送用分子錯体と電解質とを含む電解質組成物が記載されている。
特開2003−257236号公報 特表平11−507467号公報
NEDO技術開発機構,燃料電池・水素技術開発部,蓄電技術開発室「NEDO次世代自動車用蓄電池技術開発 ロードマップ2013」(平成25年8月)
近年、モバイル用の全固体二次電池として注目されている金属リチウムポリマー電池は、負極が金属リチウムであるため高容量であり、電解質が高分子固体電解質であることから形態の自由度が高い。しかし、リチウムイオンの還元反応により析出するリチウムが樹枝状(デンドライト)で析出し、高分子固体電解質を突き破って短絡することがあるので、高分子固体電解質には、高い膜強度が求められている。高い電池性能を満たすには、イオン伝導度の向上と高い膜強度の両立が必要であり、上記特許文献1または2に記載の発明では十分とはいえない。
すなわち、本発明は、全固体二次電池の作製に用いることにより、全固体二次電池の放電容量及びサイクル特性を高めることができる、固体電解質組成物及び全固体二次電池用シートを提供することを課題とする。また、本発明は、放電容量が大きく、優れたサイクル特性を有する全固体二次電池を提供することを課題とする。また、本発明は、この固体電解質組成物を用いた全固体二次電池用シートの製造方法および全固体二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らが種々検討した結果、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>
環状分子を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A)と、電解質塩(B)と、化合物(C)とを含有する固体電解質組成物であって、
上記の化合物(A)を構成する環状分子が、ピラノース構造を有し、かつ、下記式(1)で表される構造を有する置換基を環状分子上に少なくとも一つ有し、
下記条件1または2を満たす、固体電解質組成物。

条件1:上記化合物(A)を構成する線状分子の末端及び上記化合物(C)が、各々独立にスルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
条件2:上記化合物(C)が、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
Figure 0006595431
式中、L炭素数2〜12のアルキレン基を示し、Xは酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示し、nは1以上の整数である。
<2>
上記の化合物(A)を構成する線状分子の重量平均分子量が、30,000以上である<1>に記載の固体電解質組成物。
<3>
上記の化合物(A)を構成する線状分子の両末端が、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する<1>または<2>に記載の固体電解質組成物。
<4>
上記化合物(C)が、下記式(2)で表される<1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
Figure 0006595431
式中、Lは2価の連結基を示し、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基または炭素数1〜30のヘテロ原子を含む炭化水素基を示し、mおよびnは各々独立に0〜4の整数であって、mとnの和は4である。
<5>
重合開始剤(D)を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<6>
上記の化合物(A)を構成する線状分子の末端の少なくとも1つが、下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
Figure 0006595431
式中、Lは2価の連結基を示す。
<7>
環状分子を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A)と、電解質塩(B)と、化合物(C)とを含有する層を有する全固体二次電池用シートであって、
上記の化合物(A)を構成する環状分子が、ピラノース構造を有し、かつ、下記式(1)で表される構造を環状分子上に少なくとも一つ有し、
上記の化合物(A)を構成する線状分子の末端および上記化合物(C)が、下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している全固体二次電池用シート。
Figure 0006595431
式中、Lは2価の連結基を示し、Xは酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示し、Lは2価の連結基を示し、nは1以上の整数である。
<8>
金属リチウム上に、上記の化合物(A)と電解質塩(B)と化合物(C)とを有する層を有する<7>に記載の全固体二次電池用シート。
<9>
正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層を具備する全固体二次電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記固体電解質層の少なくとも1層が、<7>に記載の全固体二次電池用シートである全固体二次電池。
<10>
上記負極活物質層が金属リチウムである<9>に記載の全固体二次電池。
<11>
<1>〜<6>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程を含む全固体二次電池用シートの製造方法。
<12>
<11>に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、メタアクリル及び/又はアクリルを意味する。また、単に「アクリロイル」又は「(メタ)アクリロイル」と記載するときは、メタアクリロイル及び/又はアクリロイルを意味する。
本明細書において、単に「分子量」と記載する場合、繰り返し単位構造を有する構造を含む化合物、置換基及び連結基については、数平均分子量を意味する。
本明細書において、重量平均分量は、特段の断りがない限り、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC−8220(東ソー(株)社製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、m−クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)社製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
本発明の固体電解質組成物は、全固体二次電池の作製に用いることにより、全固体二次電池の放電容量及びサイクル特性をより高めることができる。本発明の全固体二次電池用シートは、全固体二次電池に用いることにより、全固体二次電池の放電容量及びサイクル特性をより高めることができる。本発明の全固体二次電池は、放電容量が大きく、サイクル特性に優れる。さらに、本発明の全固体二次電池用シートの製造方法および全固体二次電池の製造方法によれば、上記の優れた性能を有する全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池を製造することができる。
本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池を模式化して示す縦断面図である。 本発明の別の好ましい実施形態に係る全固体二次電池を模式化して示す縦断面図である。 本発明に用いられる化合物(A)を模式的に示した分子構造図である。 本発明の好ましい実施形態に係る化合物(A)の架橋物を模式的に示した分子構造図である。 実施例で作製した全固体二次電池(コイン電池)を模式的に示す縦断面図である。
<好ましい実施形態>
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。図中、全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電により電球が点灯するようにされている。
図2は、本発明の別の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。同図において、全固体二次電池100は、負極側からみて、負極101、固体電解質層103、正極活物質層104、正極集電体105を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位106に電子が供給される。図示した例では、作動部位106に電球を採用しており、放電により電球が点灯するようにされている。ここで、負極101が金属リチウムである全固体二次電池100が、金属リチウムポリマー電池である。
本発明の固体電解質組成物は、上記負極活物質層、固体電解質層及び/又は正極活物質層の成形材料として好ましく用いることができる。また、本発明の全固体二次電池用シートは、上記負極活物質層、固体電解質層及び/又は正極活物質層として好適である。
本明細書において、正極活物質層(以下、正極層とも称す。)と負極活物質層(以下、負極層とも称す。)をあわせて電極層または活物質層と称することがある。
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されない。なお、一般的な電池の寸法を考慮すると、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層4、固体電解質層3および負極活物質層2の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることがさらに好ましい。
<固体電解質組成物>
本発明の固体電解質組成物は、環状分子の環を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A)と、電解質塩(B)と、化合物(C)とを含有する。
以下、組成物中の各成分について詳述する。なお、例えば、電解質塩(B)を「電解質塩」のように、成分に符号を付さずに記載することがある。
(環状分子の環を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A))
本発明に用いられる環状分子の環(以下、環状分子とも略す。)を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A)は、擬ロタキサン、ポリ擬ロタキサンと呼ばれ、線状分子の末端をかさ高い置換基で封鎖して、環状分子が線状分子から抜けないようにした化合物はロタキサン、ポリロタキサンなどと呼ばれることがある。本明細書においては、その架橋物を含めた総称として、ポリロタキサン化合物と称する。本発明の好ましいポリロタキサン化合物を模式的に図3に示している。本実施形態のポリロタキサン化合物は線状分子21に環状分子22が複数挿通した構造を有している。線状分子21の末端は末端置換基24により封止され、環状分子が抜け落ちない構造とされている。
また、本発明に用いられる上記化合物(A)を構成する環状分子22は、ピラノース構造を有し、かつ、後述の式(1)で表される構造を環状分子上に少なくとも一つ有する。図3においては模式的に、後述の式(1)で表される構造を有する置換基Aが、環状分子22に結合している。すなわち、「式(1)で表される構造を環状分子上に有する」とは、図3に示すように、環状分子の環を構成する原子、又は、環状分子の環を構成する原子が有する置換基上の原子が、共有結合を介して後述の式(1)で表される構造を有することを意味する。ただし、環状分子の環を構成する構造自体に含まれる後述の式(1)で表される構造、例えば、ピラノース構造自体又はピラノース環同士の結合に含まれる後述の式(1)で表される構造は、化合物(A)を構成する環状分子が環状分子上に有する後述の式(1)で表される構造には該当しない。
本発明においては、後述の式(1)で表される構造を環状分子の外側に有することが、イオン伝導度をより効果的に向上できる点から好ましい。「環状分子の外側」とは、環状分子22を線状分子21の軸方向に観察した際に、線状分子21が存在する側(環の内側)に対して、環状分子22の環の外側の領域を意味する。具体的には、例えば、環状分子22がα−シクロデキストリン環である場合、α−シクロデキストリン環を構成するグルコピラノース環の2位、3位又は6位のヒロドキシ基における酸素原子を介して存在する後述の式(1)で表される構造が、α−シクロデキストリン環の「環状分子の外側」に位置する。ただし、環状分子の外側に有する後述の式(1)で表される構造は、環状分子が線状分子上を線状分子に沿って移動(スライディングして移動、とも言う。)し、後述の式(1)で表される構造が、電解質塩(B)における周期律表第1族又は第2属に属する金属イオン(好ましくはリチウムイオン)と相互作用可能な限り、厳密に環状分子の外側に位置することを要しない。
さらに、本発明の固体電解質組成物は下記条件1または2を満たす。
条件1:上記化合物(A)を構成する線状分子の末端及び上記化合物(C)が、各々独立にスルファニル基(−SH)又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
条件2:上記化合物(C)が、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
本発明の固体電解質組成物を用いて全固体二次電池用シート及び全固体二次電池を作製した際には、層中に存在する化合物(A)及び/又は化合物(C)は、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する基(以下、「連結鎖形成基」と称す。)による重合反応又は連鎖移動反応の結果、結合を形成し、連結される。
本発明の全固体二次電池用シート及び全固体二次電池の好ましい1つの態様では、隣接するポリロタキサン化合物20同士は、上記反応により、連結鎖(架橋鎖)23により連結(連結の中でも架橋が好ましく、以下、「架橋」を用いて説明する。)されている。この連結鎖23は、末端置換基(以下、「末端基」とも称す。)24が有する連結鎖形成基同士の結合、又は、末端置換基24が有する連結鎖形成基と化合物(C)が有する連結鎖形成基との結合により形成される。このようにして、本実施形態においては、ポリロタキサン化合物の架橋物200と電解質塩(B)により、高分子固体電解質が形成されている。本発明においては、ポリロタキサン化合物における線状分子の末端置換基を架橋点とした架橋物が形成されることにより、高分子固体電解質の膜強度が向上される。さらに、化合物(C)を介してポリロタキサン化合物における線状分子の末端置換基が結合することにより、高分子固体電解質の膜強度がさらに向上する。又、本発明の別の好ましい1つの態様では、化合物(C)が有する連結鎖形成基同士が結合することでポリマーが形成される。なお、このような架橋構造は、あらかじめ架橋したものを添加してもよく、あるいは、固体電解質組成物のペーストの状態で形成しても、固体電解質組成物を用いて全固体二次電池用シート又は全固体二次電池を形成する際に架橋させてもよい。
対して、特許文献2に記載の線状分子の片末端基がメタクリルアミド基であるポリロタキサンを本発明の化合物(C)を介さずに重合した、ポリ(メタクリルアミド)基を片末端に有するポリロタキサンは、連結主鎖に対して、かさ高い側鎖が存在する構造となるため、十分な重合度を得ることが出来ず、膜強度が不十分であり、ポリロタキサン同士が立体反発して存在するため、リチウムイオン伝導に不利である。このため、このポリ(メタクリルアミド)基を片末端に有するポリロタキサンを用いて作製した全固体二次電池は、電池容量、サイクル特性が不十分である。
1)線状分子
上記線状分子は、環状分子が線状分子上をスライディングして移動可能であって、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリウレア、ヘテロ環を主鎖に有するポリマー、又はポリエン構造を含む化合物であることが好ましい。
ポリオレフィンは下記式(1−1)で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
Figure 0006595431
11はアルキレン基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)またはアルケニレン基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜3が特に好ましい)である。分子中に複数あるL11は互いに異なっていてもよい。L11はさらに置換基Tを有していてもよい。この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
ポリエーテルは下記式(1−2)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006595431
21は、連結基であり、アルキレン基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい)、アルケニレン基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が特に好ましい)、アリーレン基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、あるいはこれらの組み合わせに係る基であることが好ましい。上記の連結基は、さらに置換基Tを有していてもよい。分子内に複数あるL21は互いに同じでも異なっていてもよい。また、上記の連結基(アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基)は、ヘテロ原子を含む連結基を介在してもよい。ヘテロ原子を含む連結基の例としては、酸素原子、硫黄原子、イミノ基(>NR)、アンモニウム連結基(>NR ・M)、カルボニル基が挙げられる。ここでRは、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2または3が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜15がより好ましく、7〜11が特に好ましい)であることが好ましい。Mは対アニオンであり、PF を例示できる。
この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
ポリシロキサンは下記式(1−3)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006595431
31およびR32はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2または3が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜15がより好ましく、7〜11が特に好ましい)である。このアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基はさらに置換基Tを有していてもよい。分子内に複数あるR31およびR32は互いに同じでも異なっていてもよい。
この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
ポリエン構造を含む化合物は下記式(1−4)または(1−5)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006595431
41、R42、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜18がより好ましく、7〜12が特に好ましい)である。このアルキル基、アリール基、アラルキル基はさらに置換基Tを有していてもよい。分子内に複数あるR41、R42、R51、R52は互いに同じでも異なっていてもよい。
この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
ポリエステルは下記式(1−6)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006595431
はL21と同義の基である。
この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリウレアは下記式(1−7)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006595431
はL21と同義の基である。X、Yはそれぞれ独立にOまたはNRである。
この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
ポリアクリレートは下記式(1−8)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006595431
はL21と同義の基である。R81は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、シアノ基、またはヒドロキシ基である。R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2または3が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜18がより好ましく、7〜12が特に好ましい)、ポリエーテル基(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドが好ましい)である。このアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基はさらに置換基Tを有していてもよい。分子内に複数あるR81およびR82は互いに同じでも異なっていてもよい。
この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
ヘテロ環を主鎖に有するポリマーは、下記式(1−9)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006595431
Arは、ヘテロ環基であり、ヘテロ脂肪族環基(炭素数1〜12が好ましく、2〜5がより好ましい)、ヘテロ芳香族環基(炭素数1〜12が好ましく、2〜5がより好ましい)が好ましい。ヘテロ環基は、カチオンになっていてもよく、対アニオンを伴う構造となっていてもよい。ヘテロ環の例としては、チオフェン環、ピリジン環(ピリジニウム環でもよい)、ピロール環(ピロリニウム環でもよい)、フラン環、ピラジン環(ピラジニウム環でもよい)、ピリミジン環(ピリミジニウム環でもよい)、ピペリジン環(ピペリジニウム環でもよい)、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ピロリジン環(ピロリジニウム環でもよい)、イミダゾール環(イミダゾリニウム環でもよい)、ピラゾール環(ピラゾリニウム環でもよい)、モルホリン環(モルホリニウム環でもよい)が挙げられる。上記ヘテロ脂肪族環基、ヘテロ芳香族環基のヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかまたはその組合せであることが好ましい。ヘテロ環基は連結基L21を介してまたは介さずに置換基Tを有していてもよい。
Zは単結合、アルキレン基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、O、S、NR、CO、またはこれらの組み合わせであることが好ましく、単結合またはアルキレン基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)がより好ましい。
この繰り返し単位は分子中にモル比で、50%以上存在することが好ましく、60%以上存在することがより好ましく、70%以上存在することが特に好ましい。上限は100%である。
線状分子としては、中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラヒドロフランなどのポリエーテル、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース、ポリアンモニウム塩、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン、ポリチオフェン、ポリメタクリル酸メチルおよびポリアクリル酸などのポリアクリレート、ポリエステルならびにポリカーボネートを好ましく挙げることができる。さらに、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネートまたはポリエーテルが好ましく、ポリエーテルが特に好ましい。なお、本明細書においてアクリレートとは、α位の炭素に任意の置換基を有していてもよい意味であり、その例としては上記R81が挙げられる。
本発明において好適に採用される線状分子の構造単位の例を以下に示すが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
Figure 0006595431
線状分子の重量平均分子量の下限は、20,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましく、100,000以上が特に好ましい。上限としては、1,000,000以下が好ましく、600,000以下がより好ましく、300,000以下が特に好ましい。上記好ましい範囲とすることで、環状分子(包接化合物)が線状分子上で自由に動くことができ、合成時に、環状分子が線状分子に貫通されることが容易になる。
1−2)線状分子の末端置換基
上記線状分子は、その末端にかさ高い置換基(末端基)を有することが、線状分子から環状分子がはずれないように固定することができるため好ましい。末端基の分子量は特に限定されないが、70以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。上限は1,000以下であることが実際的である。末端基のかさ高さは、環状分子の環の大きさとの関係で定めればよく、環状分子が抜け出ない大きさであればよい。環状分子の連結原子数に対して、末端基の分子量>連結原子数×3という関係で末端基の分子量を設定することができる。末端基の分子量>連結原子数×5が好ましく、末端基の分子量>連結原子数×8がさらに好ましい。上限としては、末端基の分子量<連結原子数×100が実際的である。連結原子数とは環を構成する連結に関与する原子の数であり、例えば、α−シクロデキストリンは30である。
バインダーの線状分子の両末端に置換基を導入する場合、環状分子が線状分子から抜け落ちることを防ぐためかさ高いものが好ましい。末端基は、環状分子の開口部の大きさにより異なり環状分子が抜けない程度の大きさの置換基が適宜選択されることが好ましい。
具体的には、フェニル基含有基、シクロデキストリン構造含有基、アダマンタン構造含有基が挙げられる。なかでも、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、2,4,6−トリニトロフェニル基などのニトロフェニル基類;トリフェニルメチル基(トリチル基)、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジtert−ブチルフェニル基、アダマンチル基、ピレニル基、ナフチル基、フルオレセイン基、シクロデキストリン基などを含む基が挙げられる。
本発明においては、上記化合物(A)および後述の化合物(C)は下記条件1又は2を満たす。
条件1:化合物(A)を構成する線状分子の末端及び化合物(C)が、各々独立にスルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
条件2:化合物(C)が、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
上記線状分子の末端及び/又は後述の化合物(C)は、上記条件1又は2に記載するように、ラジカル重合反応及び/又はラジカル重合反応における連鎖移動反応により結合を形成可能な、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する基(連結鎖形成基)を有する。この連結鎖形成基は加熱、光照射等の処理を施すことにより、化合物(A)を連結等し、膜強度を向上させることができる。連結鎖形成基は、ヘテロ原子を有する連結基(O、S、CO、NR等)や前述のL21を介在して上記線状分子の末端置換基及び/又は後述の化合物(C)に導入されていてもよい。
炭素−炭素不飽和結合を有する基としては、アルケニル基またはアルケニル基含有基(いずれも炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましく、2または3が特に好ましい)が好ましく、ビニル基、アリル基、アクリロイル基およびアクリロイルオキシ等が挙げられる。なお上記アクリロイル基およびアクリロイルオキシ基は、α位の炭素に所定の置換基を有していてもよく、たとえば、α位に前述のR81を有する置換基を含む意味である。例えば、メタアクリロイル基、メタアクリロイルオキシ基が含まれる。
本発明においては、上記条件1が好ましく、上記化合物(A)を構成する線状分子の末端がスルファニル基を有し、上記化合物(C)が炭素−炭素不飽和結合を有すること、または、上記化合物(A)を構成する線状分子の末端が炭素−炭素不飽和結合を有し、上記化合物(C)がスルファニル基を有することがより好ましく、上記化合物(A)を構成する線状分子の末端がスルファニル基を有し、上記化合物(C)が炭素−炭素不飽和結合を有することがさらに好ましい。
上記線状分子の両末端が、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有することが好ましい。
本発明において好適に採用される線状分子の末端置換基の例を以下に示すが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。
Figure 0006595431
線状分子の末端をかさ高い置換基で置換する方法は特に限定されない。例えば、線状分子としてポリエチレングリコールの両末端にアミノ基を有するポリマーを用い、両末端のアミノ基を2,4−ジニトロフェニルフルオライドと反応させることにより、上記かさ高い封鎖基としての2,4−ジニトロフェニル基で末端を置換することができる。また、上記の2,4−ジニトロフェニルフルオライドの代わりに、トリチルブロマイド、2,4,6−トリニトロフェニルフルオライド、3,5−ジメチル安息香酸クロライド、3,5−tertブチル安息香酸クロライド、1−フロオロピレン等を使用すれば、それぞれトリチル基、2,4,6−トリニトロフェニル基、ピレン基で末端を置換することができる。
また線状分子としてポリエチレングリコールの両末端にカルボキシル基を有するポリマーを用い、両末端のカルボン酸基にアダマンチルアミン、シクロデキストリンを反応させることでそれぞれアダマンチル基、シクロデキストリンを導入することができる。
環状分子に線状分子を串刺し状に包接させる方法は特に限定はなく、常法が適用できる。環状分子としてα−、β−またはγ−シクロデキストリンを用い、線状分子としてポリエーテル類を用いる場合は、両成分を水性媒体中で攪拌及び/又は混合して、反応させることで得られる。特に線状分子としてポリプロピレングリコールを用いる場合は、ポリプロピレングリコールが分散状態であることがあるので、超音波攪拌するのが好ましい。
化合物(A)における線状分子と環状分子の割合は、(線状分子のモル数):(環状分子のモル数)の比で、好ましくは1:1〜1:1,000、より好ましくは1:5〜1:500、特に好ましくは1:10〜1:200である。線状分子と環状分子の割合は、H−および13C−NMRスペクトル、光吸収、元素分析などにより測定できる。
ポリロタキサン化合物については公知の文献を適宜参照して本発明に適用することができる。例えばポリロタキサンの製造方法についてはWO08/108411、無溶媒でのポリロタキサンの製造方法についてはWO10/024431、光架橋性ポリロタキサンについてはWO11/105532、ポリロタキサンのポリマー電解質についてはWO06−090819、特開2003−257236、特開2004−327271などを参照することができる。
本発明の固体電解質組成物においては、上記化合物(A)が有するスルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する基(連結鎖形成基)が一部反応して結合を形成していてもよい。この場合、上記化合物(A)を構成する線状分子の末端の少なくとも1つが、下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合していることが好ましい。
Figure 0006595431
式中、Lは2価の連結基を示す。
上記式中、Sはスルファニル基由来の原子であり、Lは、炭素−炭素不飽和結合由来の構造である。すなわち、Lは、具体的には、−CH−C(R81)−で表される。ここで、R81は前述のR81であり、水素原子またはメチル基が好ましく、Cは、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(A)または化合物(C)に由来する炭素−炭素不飽和結合以外の構造と連結する。
すなわち、「下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している」とは、化合物(A)と化合物(C)との反応の結果、上記式(3)で表される連結基に相当する化合物(A)と化合物(C)との結合が形成され、上記式(3)で表される連結基を介して化合物(A)同士が互いに結合していることを意味する。
2)環状分子
上記環状分子は、ピラノース構造を有し、かつ、後述の式(1)で表される構造を環状分子上に少なくとも一つ有する。
ピラノース構造としては、リボピラノース、アラビノピラノース、キシロピラノース、リキソピラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノースおよびタロピラノースが挙げられ、なかでも、グルコピラノースが好ましい。
環状分子は、ピラノース構造が構造単位として複数連結して環をなした構造であることが好ましく、環状分子内の構造単位は同一でも異なっていてもよい。
環状分子において、構造単位の数は特に限定されないが、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5個以上が特に好ましい。上限は、30個以下が好ましく、20個以下がより好ましく、15個以下が特に好ましい。
環状分子としては、α−(1,4)グリコシド結合により連結したグルコピラノースの繰り返し単位を含む環状多糖、すなわちシクロデキストリンが好ましく、具体的には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリン等が好ましく挙げられる。
シクロデキストリンにおいて、後述の式(1)で表される構造を有する置換基を有し得る、環状分子上の基としては、ヒドロキシ基が該当する。
Figure 0006595431
2−2)環状分子の置換基
本発明に用いられる化合物(A)は、上記環状分子上に、下記式(1)で表される構造を有する置換基を有する。
Figure 0006595431
式中、Lは2価の連結基を示し、Xは酸素原子、硫黄原子またはイミノ基(>NR)を示し、nは1以上の整数である。
における2価の連結基としては、前述の式(1−2)におけるL21が挙げられ、なかでもアルキレン基が好ましく、具体的には、エチレン、プロピレンおよびイソプロピレン等が好ましく挙げられる。
イミノ基におけるRは、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
Xは、酸素原子または硫黄原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
は、2〜1,000が好ましく、2〜500がより好ましく、3〜100がさらに好ましい。
上記式(1)で表される構造を有する置換基は、環状分子上に、1価の置換基として存在していても、2価の置換基として存在していてもよく、環状分子を構成する異なる2つの構造単位を繋ぐ2価の置換基として存在していてもよい。
上記式(1)で表される構造を有する置換基と環状分子との結合部の構造は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、合成を考慮すると、エステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、アミド結合、カーボネート結合、カルバメート結合、ウレタン結合およびウレア結合が好ましく挙げられ、エステル結合、エーテル結合またはスルフィド結合がより好ましく、エーテル結合がさらに好ましい。
上記式(1)で表される構造を有する1価の置換基としては、具体的には、末端が水素原子、アルキル基またはアリール基である(ポリ)アルキレンオキシ基、末端が水素原子、アルキル基またはアリール基である(ポリ)アルキレンスルフィド基、および、クラウンエーテル構造を有するアルキル基またはアリール基が挙げられる。クラウンエーテル環の環を構成する原子数は12〜18が好ましく、環を構成する酸素原子数は4〜6が好ましい。
また、上記式(1)で表される構造を有する2価の置換基としては、具体的には、(ポリ)アルキレンオキシ基および(ポリ)アルキレンスルフィド基が挙げられる。
上記式(1)で表される構造を有する置換基は、1価の基である末端が水素原子、アルキル基またはアリール基である(ポリ)アルキレンオキシ基、もしくは、2価の基である(ポリ)アルキレンオキシ基が好ましく挙げられる。
環状分子1分子辺りの上記置換基の数は、本発明の効果を奏する限り特に制限されるものではないが、1〜100個が好ましく、3〜80個がより好ましく、5〜50個がさらに好ましい。
環状分子がシクロデキストリンである場合、上記式(1)で表される構造を導入する前の環状分子が有する全てのヒドロキシ基に対する、導入された上記式(1)で表される構造を有する基(以下、「環状分子上への置換基導入率」と称す。)の割合は、5〜100%が好ましく、10〜100%がより好ましく、20〜100%がさらに好ましい。
本発明において好適に採用される環状分子の置換基の例を以下に示すが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。なお、nは上記式(1)におけるnと同義であり、波線が環状分子と結合する箇所を示す。ただし、環状分子との結合部の構造は、環状分子および置換基を導入するための化合物のいずれか由来の原子である。
Figure 0006595431
環状分子上に式(1)で表される構造を導入する方法は特に限定されない。例えば、環状分子を線状分子が貫通したポリロタキサン構造を形成した後に、式(1)で表される構造を有する化合物を環状分子と反応させる方法が挙げられる。例えば、環状分子がシクロデキストリンである場合、シクロデキストリン上の水酸基を反応点として利用することで、環外に置換基を導入出来る。シクロデキストリンと対応する酸クロライドなどとの反応により、エステル結合を介した置換基が導入出来るなど、例えば、J. Polym. Sci. Part A, 2006, 44, 6312に記載の方法などの常法によって、種々の置換基導入が可能になる。
本発明の固体電解質組成物中の化合物(A)の含有量は特に制限されないが、後述の活物質(E)を含有しない場合、固体電解質組成物の固形分中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方上限は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。後述の活物質(E)を含有する場合、固体電解質組成物の固形分中、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方上限は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
化合物(A)の含有量が上記範囲内にあることにより、本発明の固体電解質組成物を用いて全固体二次電池の層を形成した際に、イオン伝導と膜強度を両立することができる。
本明細書において、「固形分」とは、全固体二次電池を形成した際に蒸発せずに残存する成分を言い、具体的には後述の分散媒(G)以外の成分を意味する。
(電解質塩(B))
本発明に用いられる電解質塩は、化合物(A)に可溶である限り特に制限されないが、周期律表第1族又は第2属に属する金属の塩(以下、金属塩ともいう)が好ましく用いられる。金属塩を構成する金属イオンとしては、周期律表第1族又は第2属に属する金属イオンであればよく、リチウム、ナトリウム、カリウム及びマグネシウム等のイオンが挙げられ、なかでもリチウムイオンが好ましい。金属イオンが遊離しやすいことから、金属塩を構成するアニオンとしては、かさ高いアニオンが好ましい。かさ高いアニオンの具体例として、PF 、BF 、TFSIおよびBETIが挙げられる。分散媒(G)および化合物(A)への溶解性の観点から、有機アニオンがより好ましい。有機アニオンの具体例として、TFSI、BETI、FSIおよびトリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。
以下、本発明に用いられる金属塩の具体例を記載する。
(L−1)無機リチウム塩:LiPF、LiBF、LiAsFおよびLiSbF等の無機フッ化物塩;LiClO、LiBrOおよびLiIO等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl等の無機塩化物塩等。
(L−2)含フッ素有機リチウム塩:LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩(Li(RfSO));LiN(FSO;LiN(CFSO、LiN(CFCFSOおよびLiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩(LiN(RfSO又はLiN(RfSO)(RfSO));LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]およびLi[PF(CFCFCFCF]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。ここで、RfおよびRfはそれぞれ独立にパーフルオロアルキル基を示す。
(L−3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレートおよびリチウムジフルオロオキサラトボレート等。
これらのなかでも、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、Li(RfSO)並びにLiN(FSO、LiN(RfSO及びLiN(RfSO)(RfSO)等のリチウムイミド塩から選択されるリチウム塩が好ましく、LiPF、LiBF並びにLiN(FSO、LiN(RfSO及びLiN(RfSO)(RfSO)などのリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、RfおよびRfはそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
本発明において、十分な溶解性を有するため、LiCFSO(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiBETI(リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)またはLiBOB(リチウムビスオキサレ−トボラ−ト)が好ましく、LiTFSIまたはLiFSIがより好ましい。
なお、本発明において、電解質塩は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物中の電解質塩(B)の含有量は特に制限されないが、上記化合物(A)と電解質塩(B)との合計100質量%中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方上限は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
電解質塩(B)の含有量が上記範囲内にあることにより、本発明の固体電解質組成物を用いて全固体二次電池を構成する各層を形成した際に、十分なイオン伝導度とすることができる。
(化合物(C))
本発明の固体電解質組成物は、化合物(C)を有する。
この化合物(C)は、本発明の固体電解質組成物を用いて全固体二次電池を作製した際に、膜強度を付与することができる限り特に制限されるものでない。具体的には、ラジカル重合反応及び/又はラジカル重合反応における連鎖移動反応により結合を形成可能なスルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する基(連結鎖形成基)を有する。
化合物(C)は、1分子中に上記反応性置換基を1〜20個有することが好ましく、2〜15個有することがより好ましく、2〜10個有することがさらに好ましい。
化合物(C)は、なかでも炭素−炭素不飽和結合を有することが好ましく、下記式(2)で表されることがより好ましい。
Figure 0006595431
式中、Lは2価の連結基を示し、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基または炭素数1〜30のヘテロ原子を含む炭化水素基を示し、mおよびnは各々独立に0〜4の整数であって、mとnの和は4である。
における2価の連結基は、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、アルキレン基、もしくはこれらを組み合わせてなる基が挙げられる。組み合わせてなる基としては、−(アルキレン基−O)m1−、−O−(アルキレン基−O)m1−、−C(=O)O−(アルキレン基−O)m1−、−(アルキレン基−C(=O)O)m1−、−O−C(=O)O−(アルキレン基−O)m1−及び−O−(アルキレン基−O−C(=O)O)m1−が挙げられる(m1は1〜20であり、1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい。)。
なかでも、Lにおける2価の連結基は、−O−、−C(=O)O−、−(アルキレン基−O)m1−、−C(=O)O−(アルキレン基−O)m1−、−(アルキレン基−C(=O)O)m1−又は−O−(アルキレン基−O)m1−が好ましく、−O−、−C(=O)O−、−(アルキレン基−C(=O)O)m1−又は−C(=O)O−(アルキレン基−O)m1−がより好ましく、−C(=O)O−又は−C(=O)O−(アルキレン基−O)m1−がさらに好ましい。なお、L中に複数存在するアルキレン基は、同一でも異なっていてもよい。
およびRにおけるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
およびRにおける炭素数1〜30の炭化水素基は、アルキル基(炭素数は1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。)、アルケニル基(炭素数は2〜30が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。)及びアリール基(炭素数は5〜30が好ましく、5〜20がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。)が好ましく挙げられる。
およびRにおける炭素数1〜30のヘテロ原子を含む炭化水素基は、上記RおよびRにおける炭素数1〜30の炭化水素基がヘテロ原子を置換基中に含むものが挙げられる。ヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びケイ素原子が挙げられ、酸素原子または硫黄原子が好ましく、−OH、−SH、−O−又は−C(=O)O−として含まれることがさらに好ましい。また、Rにおける炭素数1〜30の炭化水素基が、*−L−C(R)=CH(ここで、L及びRは、式(2)におけるL及びRと同義であり、*はRにおける炭素数1〜30の炭化水素基との結合部位を示す。)で置換されていることも好ましい。
上記の炭素数1〜30の炭化水素基および炭素数1〜30のヘテロ原子を含む炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基を有する基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子またはフッ素原子)で置換された基が挙げられる。
は2〜4の整数が好ましく、nは0〜2の整数が好ましい。
固体電解質組成物を調製する際の分散性を考慮すると、固体電解質組成物を調製する際には低粘度で混合しやすく、全固体二次電池を形成する過程で重合反応により結合し、膜強度を付与することが好ましい。
上記点からは、化合物(C)の25℃における粘度は、0.1〜100,000mPa・sが好ましく、1〜50,000mPa・sがより好ましく、分子量は、50〜100,000が好ましく、80〜50,000がより好ましい。化合物(C)が繰返し単位を有する場合には、上記分子量は重量平均分子量として適用する。
本発明において好適に採用される化合物(C)の例を以下に示すが、本発明がこれに限定して解釈されるものではない。なお、l、mおよびnは繰り返し単位数を表し、各々独立に、1〜500が好ましく、1〜100がより好ましい。
Figure 0006595431
Figure 0006595431
Figure 0006595431
本発明の固体電解質組成物中の化合物(C)の含有量は特に制限されないが、上記化合物(A)1質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.02〜3質量部がより好ましく、0.03〜1質量部が特に好ましい。
化合物(C)の含有量が上記範囲内にあることにより、本発明の固体電解質組成物を用いて全固体二次電池を構成する各層を形成した際に、高分子固体電解質の膜強度が向上され、サイクル特性が向上する。
本明細書において、置換または無置換を明記していない化合物、部分構造ないし基については、特段に断りがない限り、その化合物、部分構造ないし基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。これは置換または無置換を明記していない化合物についても同義である。
本明細書において、単に「置換基」と規定した場合、特段に断りがない限り、下記置換基Pが参照される。また、具体的な基、例えば、アルキル基と規定した場合、特段に断りがない限り、下記置換基Pの対応する具体的な基、例えば、この場合、アルキル基が参照される。
好ましい置換基としては、下記置換基Pが挙げられる。
置換基Pとしては、下記の基が挙げられる。
〔置換基P〕
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、環員数は好ましくは3〜8員環で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等、ただし本明細書においてアルキル基というときには通常シクロアルキル基を含む意味である。)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5〜20のシクロアルケニル基、環員数は好ましくは5〜8員環で、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、4−メチルシクロヘキセニル等、ただし本明細書においてアルケニル基というときには通常シクロアルケニル基を含む意味である。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは2〜20のヘテロ環基、好ましくは、環構成原子として酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択される少なくとも1つを有する5または6員環のヘテロ環基が好ましく、ヘテロ環基のヘテロ環は飽和、不飽和または芳香族ヘテロ環であっても構わない。例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル、ピロリドン基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20のアミノ基で、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20のアシル基で、ホルミル基、アルカノイル基、アルケノイル基。アルキノイル基、シクロアルカノイル基、シクロアルケノイル基、アリーロイル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、アクリロイル、メタクリロイル、シクロプロパノイル、シクロヘキサオイル、シクロヘキセノイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、シクロプロパノイルオキシ、シクロヘキサノイルオキシ、シクロヘキセノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、メタクリロイルアミノ、シクロプロパノイルアミノ、シクロヘキサノイルアミノ、シクロヘキセノイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチノイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホリル基で、リン酸基(−OP(=O)(OH))を含み、例えば、−OP(=O)(R)、ホスホニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホニル基でホスホン酸基(−P(=O)(OH))を含み、例えば、−P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(R)、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
ここで、Rは水素原子または置換基(アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい)を表す。
また、これらの置換基Pで挙げた各基は、上記の置換基Pがさらに置換していてもよい。
例えば、アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基(好ましくは炭素数7〜23のアラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル等)が挙げられる。
なお、化合物、置換基および連結基等がアルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アルキニル基および/またはアルキニレン基等を含むとき、特段の断りがない限り、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。
(重合開始剤(D))
本発明の固体電解質組成物は、重合開始剤(D)を含有することが好ましい。
重合開始剤(D)は、上記化合物(A)の線状分子の末端及び/又は上記化合物(C)におけるラジカル重合反応(ラジカル重合反応における連鎖移動反応を含む。)を開始させる目的で添加されるため、ラジカル重合開始剤が好ましく、常用されているラジカル重合開始剤を採用すればよい。
熱によって開裂して開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド及びメチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジイソブチリルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びm−トルイルベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセンなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチル)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン及び2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート及びジブチルペルオキシトリメチルアジペートなどのアルキルパーエステル類;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオジカーボネート、α−クミルペルオキシネオジカーボネート、t−ブチルペルオキシネオジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(1,1−ブチルシクロヘキサオキシジカーボネート)、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t−アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート及び1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボキシ)ヘキサンなどのパーオキシカーボネート類;1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン及び(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートなどが挙げられる。
アゾ系の重合開始剤として使用するアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名 V−65)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等が挙げられる(特開2010−189471など参照)。あるいは、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピネート)(商品名 V−601、和光純薬社製)なども好適に用いられる。
ラジカル重合開始剤として、上記の熱ラジカル重合開始剤の他に、光、電子線又は放射線で開始ラジカルを生成するラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤とも称す。)を用いることができる。
光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインアルキルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔IRGACURE651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔IRGACURE184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン〔DAROCUR1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン〔IRGACURE2959、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン〔IRGACURE127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン〔IRGACURE907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1〔IRGACURE369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕および2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モノホリニル)フェニル]−1−ブタノン〔IRGACURE379、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕等のアセトフェノン系、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド〔DAROCUR TPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕およびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド〔IRGACURE819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕等のアシルホスフィンオキサイド系、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム〔IRGACURE784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕等のチタノセン系ならびに1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]〔IRGACURE OXE 01、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕およびエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)〔IRGACURE OXE 02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕等のオキシムエステル系などを挙げることができる。
ラジカル重合開始剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤(D)の含有量は、化合物(A)及び化合物(C)の有する上記反応性置換基の量にあわせて常法で使用される量であれば特に制限されない。化合物(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部の量で適用することが好ましい。
(活物質(E))
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質(E)を含有してもよい。以下、活物質(E)を単に活物質とも称する。
活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である金属酸化物が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質、負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極用組成物(正極用組成物、負極用組成物)ということがある。
−正極活物質−
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、CuおよびVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、PまたはBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物および(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNiO(ニッケル酸リチウム)LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])およびLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO4、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMnおよびLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO(リン酸鉄リチウム[LFP])およびLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類ならびにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩およびLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiOおよびLiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物を有する遷移金属酸化物が好ましく、オリビン型リン酸鉄塩がより好ましく、LFPがさらに好ましい。
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。例えば、0.1〜50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて測定することができる。
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、50〜85質量がさらに好ましく、55〜80質量%が特に好ましい。
−負極活物質−
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体およびリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、AlおよびIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵および放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維および活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカーならびに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、SbおよびBiの1種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、ならびにカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、SiO、GeO、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Bi、SnSiO、GeS、SnS、SnS、PbS、PbS、Sb、SbおよびSnSiSが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOであってもよい。
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはLiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
本発明においては、Si系の負極を適用することもまた好ましい。一般的にSi負極は、炭素負極(黒鉛およびアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の平均粒子径は、0.1〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、通常の粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミルおよび旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式および湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の平均粒子径は、前述の正極活物質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜80質量%であることが好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
正極活物質および負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi,Nb、Ta,W,Zr、Al,SiまたはLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、LiTi12,LiTi,LiTaO,LiNbO,LiAlO,LiZrO,LiWO,LiTiO,Li,LiPO,LiMoO,LiBO,LiBO,LiCO,LiSiO,SiO,TiO,ZrO,Al,B等が挙げられる。
また、正極活物質または負極活物質を含む電極表面は硫黄またはリンで表面処理されていてもよい。
さらに、正極活物質または負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線または活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていても良い。
(導電助剤(F))
本発明の固体電解質組成物は、導電助剤を含有することも好ましい。導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン、フラーレンなどの炭素質材料であっても良いし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いても良い。なかでも、ABおよびVGCFが好ましく用いられる。またこれらのうち1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
導電助剤の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%がより好ましい。
(その他の成分)
本発明の固体電解質組成物は、上記の化合物(A)、電解質塩(B)、化合物(C)、重合開始剤(D)、活物質(E)及び導電助剤(F)の他に、全固体二次電池で常用される成分(以下、「その他の成分」と称す。)を、本発明の効果を奏する限り、含有することができる。
その他の成分としては、例えば、過充電防止剤、難燃剤及びSEI剤(正極被膜剤)などの添加剤が挙げられる。
(分散媒(G))
本発明の固体電解質組成物は、化合物(A)、電解質塩(B)及び化合物(C)等を分散(溶解を含む意味で使用する。以下同様。)させるため分散媒を含有することが好ましい。分散媒の具体例としては下記のものが挙げられる。
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
エーテル化合物溶媒としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、アルキルアリールエーテル(アニソール)、テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2−、1,3−及び1,4−の各異性体を含む)、t−ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、が挙げられる。
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
アミノ化合物溶媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ペンタン、シクロペンタンなどが挙げられる。
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、ブチロニトリルなどが挙げられる。
分散媒は常圧(1気圧)での沸点が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがさらに好ましい。上記分散媒は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、芳香族化合物溶媒またはニトリル化合物溶媒が好ましく、トルエンまたはアセトニトリルがより好ましい。
なお、本発明の固体電解質組成物中の分散媒(G)の含有量は特に制限されないが、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%が特に好ましい。
(固体電解質組成物の調製)
本発明の固体電解質組成物は、例えば、化合物(A)、電解質塩(B)および化合物(C)を分散媒(G)の存在下で撹拌、分散することで調製することができる。
具体的には、各種の混合機を用いて化合物(A)、電解質塩(B)、化合物(C)および分散媒(G)を混合することにより行うことができる。混合装置としては、特に限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサー、ブレードミキサー、ロールミル、ニーダーおよびディスクミルが挙げられる。混合条件は特に制限されないが、例えば、150〜700rpm(rotation per minute)で1時間〜24時間混合することが好ましい。
活物質(E)、導電助剤(F)等の成分を含有する固体電解質組成物を調製する場合には、上記の化合物(A)、電解質塩(B)および化合物(C)の分散工程と同時に添加及び混合してもよく、別途添加及び混合してもよい。
調整後の固体電解質組成物は、ラジカル重合反応による化合物(A)及び/又は化合物(C)の結合を抑制したい場合、例えば長期保存する場合には、重合が開始しない条件(例えば、冷暗所)で保存することが好ましい。
[全固体二次電池用シート]
本発明の全固体二次電池用シートは、環状分子を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A)と、電解質塩(B)と、化合物(C)とを含有する層を有する全固体二次電池用シートであって、上記の化合物(A)を構成する環状分子が、ピラノース構造を有し、かつ、下記式(1)で表される構造を環状分子上に少なくとも一つ有し、上記の化合物(A)を構成する線状分子の末端および上記化合物(C)が、下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している。
Figure 0006595431
式中、Lは2価の連結基を示し、Xは酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示し、Lは2価の連結基を示し、nは1以上の整数である。
上記式(1)および式(3)は、化合物(A)の項で記載した式(1)および式(3)と同義である。
ここで、「上記の化合物(A)を構成する線状分子の末端および上記化合物(C)が、下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している」とは、化合物(A)と化合物(C)との反応の結果、上記式(3)で表される連結基に相当する化合物(A)と化合物(C)との結合が形成され、上記式(3)で表される連結基を介して化合物(A)同士が互いに結合していることを意味する。
また、上記の化合物(A)および化合物(C)が上記式(3)で表される連結基を介して互いに連結してなる高分子化合物は、電解質塩(B)とともに、高分子固体電解質を形成する。
本発明の全固体二次電池用シートは、全固体二次電池に好適に用いることができ、その用途に応じて種々の態様を含む。全固体二次電池に用いられる全固体二次電池用シートとしては、例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう)及び電極又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)が挙げられる。本発明において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートということがある。
全固体二次電池用シートは、固体電解質層又は活物質層(電極層)を有するシートで、例えば、基材上に固体電解質層又は活物質層(電極層)を有するシートの態様が挙げられる。以降、この態様のシートについて詳細に説明する。
この全固体二次電池用シートは、基材と固体電解質層又は活物質層を有していれば、他の層を有してもよいが、活物質を含有するものは後述する全固体二次電池用電極シートに分類される。他の層としては、例えば、保護層、集電体、コート層(集電体、固体電解質層、活物質層)等が挙げられる。
全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、固体電解質層と保護層とを基材上に、この順で有するシートが挙げられる。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、後記集電体で説明した材料、有機材料および無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびセルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラスおよびセラミック等が挙げられる。
本発明の全固体二次電池用シートにおいては、金属リチウム上に、上記の化合物(A)と電解質塩(B)と化合物(C)とを有する層を有することも好ましい。このシートにおいては、金属リチウムが負極集電体と負極活物質層の機能を層する。
全固体二次電池用シートの固体電解質層の層厚は、上述の、本発明の全固体二次電池において説明した固体電解質層の層厚と同じである。
このシートは、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
ここで、本発明の固体電解質組成物は、上記の方法によって、調製できる。
本発明の全固体二次電池用電極シート(単に「電極シート」ともいう。)は、全固体二次電池の活物質層を形成するためのシートであって、集電体としての金属箔上に活物質層を有する電極シートである。この電極シートは、通常、集電体及び活物質層を有するシートであるが、集電体、活物質層及び固体電解質層をこの順に有する態様、並びに、集電体、活物質層、固体電解質層及び活物質層をこの順に有する態様も含まれる。
電極シートを構成する各層の層厚は、上述の、本発明の全固体二次電池において説明した各層の層厚と同じである。また、電極シートを構成する各層の構成は、後記、本発明の全固体二次電池において説明した各層の構成と同じである。
電極シートは、本発明の固体電解質組成物を金属箔上に製膜(塗布乾燥)して、金属箔上に活物質層を形成することにより、得られる。
[全固体二次電池]
本発明の全固体二次電池は、正極と、この正極に対向する負極と、正極及び負極の間の固体電解質層とを有する。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有する。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有する。なお、集電体および活物質層、両方の機能を兼ね備える場合には、区別される必要はない。
正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1つの層は、本発明の固体電解質組成物を用いて形成されることが好ましい。
以下に、図1を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
〔正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層〕
全固体二次電池10においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも1つの層が本発明の固体電解質組成物を用いて作製されている。
本発明の固体電解質組成物を用いて形成された正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、固体電解質組成物の固形分におけるものと基本的に同じである。ただし、化合物(A)を構成する線状分子の末端が、上記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している点で異なるため、成分種及びその含有量比は、厳密には結合前の状態を意味する。
正極活物質層4及び/又は負極活物質層2が、活物質を含有する本発明の固体電解質組成物を用いて作製されている場合、正極活物質層4及び負極活物質層2は、上記の化合物(A)と電解質塩(B)と化合物(C)を含み、それぞれ、正極活物質又は負極活物質をさらに含む。
正極活物質層4及び負極活物質層2が含有する化合物(A)と、電解質塩(B)および化合物(C)は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
〔集電体(金属箔)〕
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウムまたはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウムおよびアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金またはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金およびステンレス鋼がより好ましい。
なお、本発明の全固体二次電池においては、負極活物質層が金属リチウムであることも好ましい。
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層や部材等を適宜介在ないし配設してもよい。また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
〔筐体〕
上記の各層を配置して全固体二次電池の基本構造を作製することができる。用途によってはこのまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためにはさらに適当な筐体に封入して用いる。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金およびステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
[全固体二次電池用シートの製造]
本発明の全固体二次電池用シートは、本発明の固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
上記態様により、化合物(A)と、電解質塩(B)と、化合物(C)とを含有する層を基材上に有する全固体二次電池用シートを作製することができる。
その他、塗布等の工程については、下記全固体二次電池の製造に記載の方法を使用することができる。
なお、本発明の全固体二次電池用シートは、電池性能に影響を与えない範囲内で、上記層中に分散媒(G)を含有してもよく、具体的には、0.1ppm以上10000ppm以下含有してもよい。
なお、本発明の全固体二次電池用シートの上記層中の分散媒(G)の含有割合は、以下の方法で測定することができる。
全固体二次電池用シートを20mm角で打ち抜き、ガラス瓶中で重テトラヒドロフランに浸漬させる。得られた溶出物をシリンジフィルターでろ過してH−NMRにより定量操作を行う。H−NMRピーク面積と溶媒の量の相関性は検量線を作成して求める。
[全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造]
全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造は、常法によって行うことができる。具体的には、全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。以下詳述する。
本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質組成物を、基材(例えば、集電体となる金属箔)上に塗布し、塗膜を形成(製膜)する工程を含む(介する)方法により、製造できる。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極用組成物)として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極用材料(負極用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シートを作製する。また、負極集電体である金属箔上に、負極用材料(負極用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して負極活物質層を形成し、全固体二次電池用負極シートを作製する。次いで、これらシートのいずれか一方の活物質層の上に、上記のようにして、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートの他方を、固体電解質層と活物質層とが接するように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。さらに、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
上記の形成法の組み合わせによっても全固体二次電池を製造することができる。例えば、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート、全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池用固体電解質シートをそれぞれ作製する。次いで、全固体二次電池用負極シート上に、基材から剥がした固体電解質層を積層した後に、上記全固体二次電池用正極シートと張り合わせることで全固体二次電池を製造することができる。この方法において、固体電解質層を全固体二次電池用正極シートに積層し、全固体二次電池用負極シートと張り合わせることもできる。
(各層の形成(成膜))
固体電解質組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布およびバーコート塗布が挙げられる。
このとき、固体電解質組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒(G)を除去し、化合物(A)に電解質塩(B)が溶解した高分子固体電解質を形成することができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
本発明の固体電解質組成物が重合開始剤(D)を含有する場合には、重合開始反応を開始するため、加熱又は光照射を行うことが好ましい。加熱及び光照射は、使用する重合開始剤(D)に併せて適宜調整することができるが、加熱は50〜200℃で5分間〜1時間行うことが好ましく、光照射は、HOYA社製UL750を用いて、30〜6,000mW/cmのUV光を10秒間〜3分間照射することが好ましい。加熱による重合反応については、上記固体電解質組成物の乾燥処理と同時に行われることが好ましい。
塗布した固体電解質組成物、又は、全固体二次電池を作製した後に、各層又は全固体二次電池を加圧することが好ましい。また、各層を積層した状態で加圧することも好ましい。加圧方法としては油圧シリンダープレス機等が挙げられる。加圧力としては、特に限定されず、一般的には50〜1500MPaの範囲であることが好ましい。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。
加圧は塗布溶媒又は分散媒をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布しても良いし、塗布乾燥プレスを同時および/または逐次行っても良い。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
加圧中の雰囲気としては、特に限定されず、大気下、乾燥空気下(露点−20℃以下)および不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)などいずれでもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
(初期化)
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
[全固体二次電池の用途]
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
本発明の好ましい実施形態によれば、以下のような各応用形態が導かれる。
〔1〕正極活物質層および負極活物質層の少なくとも1層が導電助剤(F)を含有する全固体二次電池。
〔2〕正極活物質層および負極活物質層の少なくとも1層が、分散媒(G)によって、化合物(A)と電解質塩(B)と導電助剤(F)と、活物質(E)とが分散されたスラリーを湿式塗布し製膜される全固体二次電池の製造方法。
〔3〕上記固体電解質組成物を金属箔上に適用し、製膜してなる電池用電極シート。
〔4〕上記固体電解質組成物を金属箔上に適用し、製膜する電池用電極シートの製造方法。
上記好ましい実施形態の〔2〕および〔4〕に記載するように、本発明の全固体二次電池および電池用電極シートの好ましい製造方法は、いずれも湿式プロセスである。これにより、正極活物質層および負極活物質層の少なくとも1層における高分子固体電解質と活物質(E)の密着性が高まり効率的なイオン伝導パスを維持することができ、電池質量あたりのエネルギー密度(Wh/kg)および出力密度(W/kg)が高い全固体二次電池を製造することができる。
全固体二次電池とは、正極、負極、電解質がともに固体で構成された二次電池を言う。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は高分子全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質として、ポリエチレンオキサイド(PEO)等の高分子化合物にLiTFSI等の電解質塩が溶解した高分子固体電解質を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、特開2015−088486号公報に記載のLi−P−S系ガラス、LLT(LixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕)及びLLZ(LiLaZr12)等の無機固体電解質を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、高分子全固体二次電池に無機化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質及び添加剤として無機化合物を適用することができる。
高分子固体電解質とは、上述した無機化合物がイオン伝導媒体となる無機固体電解質とは区別されるものであり、高分子化合物がイオン伝導媒体となる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがある。上記のイオン輸送材料としての電解質と区別する際には、これを「電解質塩」または「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては、例えばLiTFSIが挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。
本発明において「固体電解質組成物」というときには、高分子固体電解質を形成し得る高分子化合物(高分子化合物を形成し得る成分を含む)及び電解質塩を含有する組成物だけでなく、高分子固体電解質を含有する組成物を含み、両方の態様が混在していてもよい。
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、「室温」は25℃を意味する。
[参考例1]
<ポリロタキサンの合成>
(1)ポリロタキサンT1の合成
ポリロタキサンを、Macromolecules 2005,38,7524を参照し、以下のようにして合成した。
両末端をカルボン酸化した重量平均分子量35,000のポリエチレンオキシド3.0gとα−シクロデキストリン6.0gを100mLの水に溶解し、5℃で12時間静置した後、凍結乾燥して白色粉末を得た。この白色粉末8.0g、1−アダマンチルアミン0.10g、BOP試薬(ベンゾトリアゾリル−N−ヒドロキシトリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩)0.27g、エチルジイソプロピルアミン0.11mLを脱水したDMF100mLに溶解し、4℃で12時間撹拌した。その後、遠心分離と洗浄を繰返し、ポリロタキサンT1を7.5g得た。
(2)ポリロタキサンAの合成
ポリロタキサンT1 5.0gを1M NaOH水溶液500mLに溶解し、氷浴上で撹拌しているこの溶液中に、プロピレンオキシド3.8gを4時間かけて滴下し、0℃で12時間撹拌した。その後、分液、再沈澱の操作を繰返し、洗浄したポリロタキサンAを5.0g得た。H−NMRにより、環状分子であるα−シクロデキストリン環の外側の水酸基にプロピレンオキシド基が導入され、環状分子上へのプロピレンオキシド基の導入率が90%であることを確認した。
下記表1記載の構成となるように原料、配合比等を変更した以外はポリロタキサンAの合成と同様にして、ポリロタキサンB〜Gを合成した。また、下記表1記載の構成となるように原料、配合比等を変更した以外はポリロタキサンT1の合成と同様にしてポリロタキサンTを合成した。
Figure 0006595431
<表の注>
軸状分子:末端基と共に線状分子を形成し得る分子を意味する。
PEO:ポリエチレンオキシド
PPO:ポリプロピレンオキシド
片/両:末端基が線状分子の片末端又は両末端を置換していることを意味する。
CD:シクロデキストリン
T−、A−:上述で例示した、線状分子の末端基および環状分子上の置換基を意味する。
環状分子/線状分子(Mol比):線状分子に対する環状分子のモル比を意味する。
繰り返し数n:上述の環状分子上の例示置換基におけるnを意味する。
環状分子上への置換基導入率:シクロデキストリンが有する全てのヒドロキシ基に対する、導入された置換基(A−1等)の割合
[実施例、比較例]
固体電解質層用組成物、正極用組成物、全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池を下記の通り作製し、全固体二次電池の性能評価を行った。
<各固体電解質組成物の調製>
(1)固体電解質層用組成物E−1の調製
上記で合成したポリロタキサンC 60.0gと、LiTFSI 30.0gと、トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレート3EG-A、繰り返し数n=3)9.0gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬工業株式会社製)1.0gとを、アセトニトリル150.0gに添加し、回転数300rpmで2時間撹拌を続け、固体電解質層用組成物E−1を調製した。
(2)固体電解質層用組成物E−2〜E−7、CE−1およびCE−2の調製
下記表2の組成に変えたこと以外は、固体電解質層用組成物E−1と同様の方法で、固体電解質層用組成物E−2〜E−7、CE−1およびCE−2を調製した。
Figure 0006595431
<表の注>
化合物(A)の列に記載のC〜GおよびT:それぞれ上記表1に示すポリロタキサンC〜GおよびT
LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド
C−11:トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレート3EG-A、繰り返し数n=3)
C−15、18および19:上述の例示の化合物(C)を意味する。
D−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬工業株式会社製)
化合物(A)、電解質塩(B)、化合物(C)および重合開始剤(D)の合計含有量は100gであり、各質量%は、これらの合計を100質量%とした質量%を意味する。また、分散媒(G)の含有量はいずれも150gである。
(3)正極用組成物P−1の調製
上記で合成したポリロタキサンA 15.5gと、LiTFSI 14.0gと、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートPTMGA−250、繰り返し数3)5.0gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(和光純薬工業株式会社製)0.5gと、リン酸鉄リチウム(LFP)60.0gと、アセチレンブラック5.0gとを、アセトニトリル100.0gに添加し、回転数300rpmで2時間撹拌を続け、正極用組成物P−1を調製した。
(4)正極用組成物P−2〜P−12およびCP−1〜CP−3の調製
下記表3の組成に変えたこと以外は、正極用組成物P−1と同様にして正極用組成物P−2〜P−12およびCP−1〜CP−3を調製した。
Figure 0006595431
<表の注>
化合物(A)の列に記載のA〜GおよびT:それぞれ上記表1に示すポリロタキサンA〜GおよびT
C−9、10、11、13、15、18、19および22:上述の例示の化合物(C)を意味する。
D−2:クメンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製、商品名:パークミルH)
LFP:リン酸鉄リチウム
VGCF:気相成長炭素繊維
AB:アセチレンブラック
化合物(A)、電解質塩(B)、化合物(C)、重合開始剤(D)、活物質(E)および導電助剤(F)の合計含有量は100gであり、各質量%は、これらの合計を100質量%とした質量%を意味する。また、分散媒(G)の含有量はいずれも100gである。
<全固体二次電池用シートの作製>
上記で調製した正極用組成物を厚み20μmのアルミ箔(集電体)上に、アプリケーター(商品名:SA−201ベーカー式アプリケーター、テスター産業社製)により塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧し(20MPa、1分間)、アルミ箔上に正極活物質層が積層された正極シートを作製した。
上記で作製した正極シートの正極活物質層上に、上記で調製した固体電解質層用組成物を、アプリケーターにより塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で6時間加熱し、乾燥させた。正極シート上に固体電解質層を形成したシートを、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧(30MPa、1分間)し、固体電解質層/正極活物質層/アルミ箔の積層構造を有する全固体二次電池用シートを作製した。
<全固体二次電池の製造>
上記で製造した、正極活物質層上に固体電解質層を有する全固体二次電池用シートを直径13.0mmの円板状に切り出し、直径14.5mmの円板状に切り出した厚み100μmのリチウム箔(負極層)と固体電解質層とが向かい合うように、スペーサーとワッシャー(ともに図5において図示しない)を組み込んだステンレス製の2032型コインケース16に入れた。上記の様にして、No.101〜113、c11およびc12の全固体二次電池18を製造した。
2032型コインケース中の全固体二次電池シート17は、図2の構成を有し、全固体二次電池用シート(アルミ箔/正極活物質層/固体電解質層)/リチウム箔の積層構造を有する。正極層および固体電解質層の層厚は、それぞれ順に30μmおよび40μmであった。
<評価>
上記で製造したNo.101〜113、c11およびc12の全固体二次電池について、以下の試験を行い、結果を後記表4に記載した。
[試験例1]放電容量
上記で製造した全固体二次電池を、東洋システム(株)製の充放電評価装置「TOSCAT−3000」(商品名)により測定した。
充電は電池電圧が4.0Vになるまで、電流値0.5mAで行い、放電は電池電圧が3.0Vになるまで、電流値0.5mAで行った。これを1サイクルとして同様の充放電を繰り返し、3サイクル目の放電容量を電池の放電容量とした。正極面積100cmでの放電容量を下記表4において、「容量」と記載した。なお、放電容量220mAh以上が本試験の合格レベルである。
−サイクル特性の評価−
上記で製造した全固体二次電池のサイクル特性を、東洋システム(株)製の充放電評価装置「TOSCAT−3000」(商品名)により測定した。充電は電池電圧が4.0Vになるまで、電流値0.5mAで行い、放電は電池電圧が3.0Vになるまで、電流値0.5mAで行った。これを1サイクルとして同様の充放電を繰り返し、3サイクル目の放電容量の80%を維持できる充放電の繰り返し回数を測定し、下記評価基準により電池のサイクル特性を評価した。なお、サイクル特性A〜Cが本試験の合格レベルである。
(評価基準)
A:50回以上
B:40回以上50回未満
C:30回以上40回未満
D:20回以上30回未満
E:20回未満
Figure 0006595431
<表の注>
正極層の目付量:正極層の単位面積(cm)当たりの塗布物の質量(mg)を意味する。
固体電解質層の目付量:固体電解質層の単位面積(cm)当たりの塗布物の質量(mg)を意味する。
表4から明らかなように、本発明の規定を満たすNo.101〜113の全固体二次電池は、放電容量が大きく、サイクル特性に優れることが分かる。
これに対して、本発明の規定を満たさない固体電解質組成物を用いて作製した、いずれの層も化合物(C)を含有しない比較のNo.c11の全固体二次電池および環状分子上に置換基を有しないポリロタキサンを用いた比較のNo.c12の全固体二次電池は、放電容量およびサイクル特性がいずれも合格レベルに達しなかった。
1 負極集電体
2 負極活物質層
101 負極
3、103 固体電解質層
4、104 正極活物質層
5、105 正極集電体
6、106 作動部位
10、100 全固体二次電池
16 2032型コインケース
17 全固体二次電池シート
18 全固体二次電池
20 ポリロタキサン化合物
21 線状分子
22 環状分子
23 反応性基による連結鎖(架橋鎖)
24 末端置換基
A 式(1)で表される構造を有する置換基
200 ポリロタキサン化合物の架橋物

Claims (12)

  1. 環状分子を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A)と、電解質塩(B)と、化合物(C)とを含有する固体電解質組成物であって、
    前記の化合物(A)を構成する環状分子が、ピラノース構造を有し、かつ、下記式(1)で表される構造を有する置換基を環状分子上に少なくとも一つ有し、
    下記条件1または2を満たす、固体電解質組成物。

    条件1:上記化合物(A)を構成する線状分子の末端及び上記化合物(C)が、各々独立にスルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
    条件2:上記化合物(C)が、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する。
    Figure 0006595431
    式中、L炭素数2〜12のアルキレン基を示し、Xは酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示し、nは1以上の整数である。
  2. 前記の化合物(A)を構成する線状分子の重量平均分子量が、30,000以上である請求項1に記載の固体電解質組成物。
  3. 前記の化合物(A)を構成する線状分子の両末端が、スルファニル基又は炭素−炭素不飽和結合を有する請求項1または2に記載の固体電解質組成物。
  4. 前記化合物(C)が、下記式(2)で表される請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
    Figure 0006595431
    式中、Lは2価の連結基を示し、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基または炭素数1〜30のヘテロ原子を含む炭化水素基を示し、mおよびnは各々独立に0〜4の整数であって、mとnの和は4である。
  5. 重合開始剤(D)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  6. 前記の化合物(A)を構成する線状分子の末端の少なくとも1つが、下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
    Figure 0006595431
    式中、Lは2価の連結基を示す。
  7. 環状分子を線状分子が貫通した構造を有する化合物(A)と、電解質塩(B)と、化合物(C)とを含有する層を有する全固体二次電池用シートであって、
    前記の化合物(A)を構成する環状分子が、ピラノース構造を有し、かつ、下記式(1)で表される構造を環状分子上に少なくとも一つ有し、
    前記の化合物(A)を構成する線状分子の末端および前記化合物(C)が、下記式(3)で表される連結基を介して互いに結合している全固体二次電池用シート。
    Figure 0006595431
    式中、Lは2価の連結基を示し、Xは酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示し、Lは2価の連結基を示し、nは1以上の整数である。
  8. 金属リチウム上に、前記の化合物(A)と電解質塩(B)と化合物(C)とを有する層を有する請求項7に記載の全固体二次電池用シート。
  9. 正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層を具備する全固体二次電池であって、前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記固体電解質層の少なくとも1層が、請求項7に記載の全固体二次電池用シートである全固体二次電池。
  10. 前記負極活物質層が金属リチウムである請求項9に記載の全固体二次電池。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程を含む全固体二次電池用シートの製造方法。
  12. 請求項11に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
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