以下に、本発明の実施形態に係る苗移植機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本明細書では苗移植機の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
図1には、本発明の実施例の乗用型苗移植機の側面図を示し、図2には、図1の乗用型苗移植機の平面図を示す。図3には、本実施例の苗移植機の苗植付部の要部を示し、図4には、本実施例の苗移植機の苗植付部の側面図を示す。図5には、本実施例の苗移植機の苗植付部の苗抜き装置の背面図を示し、図6には、図5の苗抜き装置の側面図を示す。図7には、本実施例の苗移植機の苗植付部の植付伝動機構部の伝動機構図を示し、図8には、本実施例の苗移植機の苗植付部の植付伝動機構部の一部の背断面図を示す。図9には、駆動ケースの背断面図を示し、図10には、図9のS1−S1線断面図を、図11には、図9のS2−S2線断面図を示す。図12には、本実施例の苗移植機で用いられる苗箱の一部の平面図を示し、図13には、本実施例の苗移植機の一部の構成を示すブロック図を示す。
実施形態に係る苗移植機1は、図12に示された苗箱Cに収容されたポット苗N(図5及び図6に示す)を圃場に植え付けるものである。苗箱Cは、ゴム等の弾性材料で構成され、マット状に形成されている。苗箱Cは、ポット苗Nを収容する円筒状のポットC1を複数設けている。苗箱Cが苗植付部3のポット苗載置部24上に積載されると、複数のポットC1が、左右方向に並ぶ。左右方向に並ぶ複数のポットC1は、生育列C2を構成する。生育列C2は、前後方向、即ち、ポット苗載置部24における苗箱Cの移動方向に複数設けられることとなる。
図1及び図2に示す通り、苗移植機1は、走行車体2と、走行車体2の後部(後方側)に装着された苗植付部3と、動力伝達機構(ミッションケース21やHST302等)と、整地装置6と、制御装置5(図13)等を備えている。
走行車体2は、走行するための左右一対の前輪12a,12a及び左右一対の後輪(走行車輪)12b,12bからなる4つの車輪12を有し、該4つの車輪12を駆動輪とする4輪駆動車となっている。左右の後輪12b,12bは、圃場面と接触する際に生じる推進力を強めるべく、後輪12bの左右幅よりも幅広な、板状のラグ体を外周縁部に所定間隔毎に設けている。
しかしながら、湿田等、泥土の抵抗が非常に大きく、走行が妨げられやすい圃場では、4輪駆動で、且つ後輪12bにラグ体を備えていても、安定した走行ができないことがある。この問題を解消すべく、左右の後輪12b,12bの機体外側に、該後輪12bよりも僅かに小径である第1補助車輪(外側補助車輪)12c,12cを各々着脱自在に設けている。更に、左右の後輪12b,12bの機体内側に、第1補助車輪12c,12cよりも小径である第2補助車輪(内側補助車輪)12d,12dを着脱自在に設け、左右の後輪12b,12b及び左右の第1補助車輪12c,12cが沈んだ際に接地して、走行車体2の姿勢を安定させる構成としている。
また、第2補助車輪12d,12dは、左右の後輪12b,12bに駆動力を伝動する左右の後輪ギヤケース12g,12gにできるだけ密着させ、後輪12bや第1補助車輪12c等ができるだけ機体外側に寄らない構成とする。
走行車体2は、図1に示す通り、メインフレーム10と、メインフレーム10に搭載されたエンジン11等を有している。この苗移植機1において、エンジン11の駆動力は、走行車体2を前進または後退させるために使用されるだけでなく、苗植付部3を駆動させるためにも使用される。
エンジン11は、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関であって、出力軸から駆動力を出力する。出力軸は、走行車体2の左側方から突出している。エンジン11は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ13aよりも上方に突出させた状態で配置されている。このとき、エンジン11の出力軸は、フロアステップ13aの床面よりも下方に位置している。
ここで、フロアステップ13aは、走行車体2の前部(前方側)とエンジン11の後部(後方側)との間に渡って設けられており、メインフレーム10上に取り付けられている。フロアステップ13aは、その一部が格子状となっており、靴に付いた泥を圃場に落とせる構成としている。また、フロアステップ13aの後方には、後輪12b,12bのフェンダを兼ねたリアステップ13bが設けられている。このリアステップ13bは、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン11の左右それぞれの側方に配置されている。
エンジン11は、これらのフロアステップ13aとリアステップ13bとから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン11を覆うエンジンカバー14が配設されている。即ち、エンジンカバー14は、フロアステップ13aとリアステップ13bとから上方に突出した状態で、エンジン11を覆っている。
また、走行車体2には、エンジンカバー14の上部に操縦席15が設置されており、操縦席15の前方で、且つ、走行車体2の前部には、フロントカバー16が配設されている。このフロントカバー16は、フロアステップ13aの床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ13aの前方側を左右に分断している。
このフロントカバー16の内部には、制御装置5、操作パネル等の操作装置、ステアリング機構及びエンジン用燃料の燃料タンク等が配設されている。また、フロントカバー16の上部には、各種操作レバー等や計器類、ハンドル17が配設されている。このハンドル17は、作業者が回転操作することにより、前輪12a,12aをステアリング操舵する操舵部材として設けられており、フロントカバー16内のステアリング機構等を介して前輪12a,12aをステアリング操舵(転舵)させることが可能になっている。
また、フロントカバー16の上部に設けられた各種操作レバーとしては、走行車体2の前後進、停止及び移動速度を切り換える主変速レバー303(図14)が配設されている。
また、フロントカバー16の下部内側に設けられた各種操作レバーとしては、走行車体2が路上を走行する「路上走行モード」と、走行車体2が走行しながら圃場に苗を植え付ける「作業走行モード」等とを切り換える副変速操作レバー313等が配設されている。
また、フロアステップ13aにおけるフロントカバー16の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗箱C等を載せておく予備苗枠18が配置されている。予備苗枠18は、補給用の苗箱C等を載せる予備苗載台18aを上下方向に複数段備えている。また、走行車体2のフロントカバー16の左右それぞれの側方には、線引きマーカー19が設けられている。
また、走行車体2の操縦席15の後方に施肥装置20(図1、図2)が設けられている。施肥装置20は、肥料ホッパ20aに貯留されている粒状の肥料を植付作業中に一定量ずつ圃場に放出する。
動力伝達機構は、メインフレーム10の前部に設置されたミッションケース21等を備えている。メインフレーム10の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギヤケース12g,12gがローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース12g,12gから外向きに突出する後輪車軸12xに後輪12b,12bが取り付けられている。エンジン11の駆動力は、第1ベルト伝動装置(図示せず)、第2ベルト伝動装置(図示せず)を介してミッションケース21に伝動される構成としている。
ミッションケース21内のミッションで変速された駆動力が前輪12a及び後輪12bに伝達されるとともに、伝動軸、中間ギヤケース等を介して苗植付部3に伝動される。
苗植付部3は、本実施形態では、8条植えの構成で、苗植付部3の昇降機構22によって、昇降自在に走行車体2の後部に設けられている。苗植付部3の昇降機構22は、昇降リンク機構22aと、昇降用シリンダ22bとを有しており、苗植付部3は、昇降リンク機構22aを介して走行車体2に取り付けられている。昇降リンク機構22aは、走行車体2の後部と苗植付部3とを連結させる上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム10の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム23に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部3に回転自在に連結されることにより、苗植付部3を昇降可能に走行車体2に連結している。昇降用シリンダ22bは、ロッドを伸縮させることで、リンクを回転させて、苗植付部3を昇降させる。
苗植付部3は、図3及び図4等に示す通り、ポット苗載置部24と、苗箱搬送装置32と、苗取出装置33(図11)と、苗搬送装置34と、苗抜き装置35と、苗横送り装置36と、苗植付装置37と、植付伝動機構部25(図7)等を備える。また、苗植付部3は、駆動ケース41や植付伝動フレーム45が一体に構成されている。なお、ポット苗載置部24と、苗箱搬送装置32と、苗取出装置33と、苗搬送装置34と、苗抜き装置35と、苗横送り装置36と、苗植付装置37とを1対1で対応させて、これら対応させたものを複数設け、対応するもの同士で2条分のポット苗Nを圃場に植え付けるものである。
さらに、ポット苗載置部24と苗箱搬送装置32と苗取出装置33と苗搬送装置34と苗抜き装置35と苗横送り装置36と苗植付装置37とで構成されるユニットを左右方向に複数並べて設けている。本実施形態では、ポット苗載置部24と苗箱搬送装置32と苗取出装置33と苗搬送装置34と苗抜き装置35と苗横送り装置36と苗植付装置37とで構成されるユニットが合計4つ設けられている。
ポット苗載置部24は、走行車体2の後部に設けられ、且つポット苗Nを複数収容した苗箱Cを積載するものである。ポット苗載置部24は、図4等に示す通り、隣接する2条ずつで共用の後下がりに傾斜した上下2段のポット苗箱導入部30,30が左右並列に4組設けられ、これら各組のポット苗箱導入部30,30の後端部には、苗箱主搬送路31,31が接続されて苗箱Cを移送する。上下2段のポット苗箱導入部30,30は、駆動ケース41から上方に延びる苗載台支持フレーム46を介して支持されている。
苗箱主搬送路31は、上下2段のポット苗箱導入部30,30から順に1個ずつ供給される苗箱Cを前半は下向きに搬送し、途中から円弧に沿って搬送方向を徐々に変え、後半は上向きに搬送する側面視略U字状に形成されている。
苗箱主搬送路31の後端部には、苗取出位置で苗を取り出された後の空の苗箱Cを複数個上下に重ねた状態で収容することのできる空箱収容部27が設けられている。苗箱主搬送路31には、ポット苗箱導入部30にある苗箱Cを送り出す供給ローラ29a,29bによる苗箱供給装置29が備えられ、載置されている苗箱Cはポット苗箱導入部30,30の底面の空転ローラ29cにより傾斜に沿って自重で後方に滑り落ちる。
苗箱供給装置29は、ポット苗導入部30の後端部に設けられている。苗箱供給装置29は、苗箱Cの左右縁部を把持して苗箱Cを苗箱主搬送路31側に繰り出す左右各一対の供給ローラ29a,29bと、該供給ローラ29a,29bの前方に位置し、外周部に形成された突起がポットC1とポットC1の隙間に下側から係合して苗箱Cを送る幅広の送りローラ29dとが設けられている。供給ローラ29b及び送りローラ29dは、それぞれモータM1,M2で回転駆動される。
苗箱搬送装置32は、ポット苗載置部24に積載された苗箱Cを一つの生育列C2のポット苗毎に間欠的に苗植付装置37(即ち、空箱収容部27側)に送り出すものである。苗箱Cは、最終的に空箱収容部27に移動させるが、その途中で苗植付装置37に苗が移動するよう、苗箱Cから苗を取り出す。つまり、途中で空箱になる。
苗箱搬送装置32は、図3に示す通り、苗箱主搬送路31に設けられ、左右一対の苗送り回動部材60,60及び係止爪61,61とからなる。苗送り回動部材60,60は、走行車体2の走行に連動して回動することで、苗箱Cを空箱収容部27側に間欠的に送るものである。苗送り回動部材60,60は、苗箱主搬送路31に沿って上下に往復動し、下動するときには苗箱Cの左右端縁部にポットC1のピッチと同ピッチで穿設された苗箱送り用の角孔C3(図12)に係合し、上動するときは角孔C3との係合が外れて次の角孔C3まで乗り越す作動構成としている。
係止爪61,61は、苗送り回動部材60,60の動作と連動し、苗送り回動部材60,60が下動するときには、角孔C3から外れ、苗送り回動部材60,60が上動するときには、角孔C3に係合して苗箱を支える作動構成としている。これら苗送り回動部材60,60及び係止爪61,61の作動により、苗箱主搬送路31に沿って苗箱Cが、ポットC1が配列されて構成された生育列C2の1ピッチ分ずつ間欠的に送られる。
苗箱搬送装置32の送り作動は、苗取出装置33の苗押出しピン72(図11)が苗箱CのポットC1内に挿入されていない時に行われる。また、苗送り回動部材60,60及び係止爪61,61の搬送上手側には、係止爪61,61が先行する苗箱Cの角孔C3から抜け出るのに連動して苗箱主搬送路31に突出し、苗箱主搬送路31を滑り落ちてくる後続の苗箱Cを一旦受け止める遮断爪63,63が設けられている。
苗箱搬送装置32の作動機構は、図10に示す通り、駆動ケース41の上部を貫通する第一伝動軸64に苗箱送りカム65を設け、苗箱作動アーム66に回動自在に支承されたローラ67をカム65の外周面に常時当接させるべく、苗箱作動アーム66をスプリング68で付勢している。苗箱送りカム65の回転により、苗箱作動アーム66が揺動し、その苗箱作動アーム66の揺動が苗箱送り駆動軸69を介して苗箱送り駆動アーム70,70に伝えられ、苗送り回動部材60,60を上下に往復動させる。カム65がローラ67に接触、非接触を繰り返すことにより、回動部材60,60を上下動させて、苗箱Cを送る構成としている。
苗取出装置33(図11)は、苗取出位置P(図3等)で苗箱CのポットC1からポット苗Nを取り出すものである。苗取出装置33は、苗箱Cの生育列C2を構成する左右方向に並んだポットC1に対し同数同ピッチで並んだ苗押出しピン72(図11)が、前後方向に摺動自在に支持された左右一対のスライド軸73,73と一体に作動すべく設けられている。スライド軸73にはラック73aが形成され、そのラック73aに駆動ケース41内の第一扇形ギヤ74が噛み合っている。
また、第一扇形ギヤ74が取り付けられているギヤ軸75には、別の第二扇形ギヤ76が取り付けられ、第二扇形ギヤ76は、支持軸78に回動自在に支持された苗取出作動アーム79のギヤ部79aと噛み合っている。苗取出作動アーム79のギヤ部79aと反対側の端部にはローラ80が回転自在に支承されており、そのローラ80が苗取出カム81のガイド溝81aに嵌り込んでいる。苗取出カム81の回転によりスライド軸73,73が前後にスライドし、該スライド軸73,73が後方にスライドするときに、苗押出しピン72が苗取出位置Pにある苗箱Cの一列分の生育列C2のポットC1に対し、ポットC1底部の切れ目からポットC1内に挿入され、ポット苗Nを後方に押し出す。苗箱送りカム65と苗取出カム81は、第一伝動軸64に回転自在に嵌合する共通の筒体64aに一体形成されている。
苗搬送装置34は、苗取出装置33によって取り出されたポット苗Nを下側前方に弧を描くような軌跡でもって苗抜き装置35に向かって搬送するものである。苗搬送装置34は、苗押出しピン72により苗箱CのポットC1から押し出されるポット苗Nの床土部N1(図6)を保持する苗ホルダー83を備えている。
該苗ホルダー83は、図3に示す通り、上下2本ずつの揺動リンク84,85に連結された支持部材86,86に左右両端が固定されており、上記揺動リンク84,85の揺動により円弧軌跡を描いて往復動するようになっている。苗搬送装置34は、図8に示すように、第一伝動軸64の回転がアーム88、伸縮ロッド89、アーム90を介して苗搬送伝動ケース91の入力軸92に反復回動運動として伝達され、更に、入力軸92から一対の伝動ギヤ93、94を介して、揺動リンク85に取り付けられている苗搬送駆動軸95に反復回動運動を伝達されるように構成されている。
苗抜き装置35は、苗搬送装置34からポット苗Nを抜き出すものである。苗抜き装置35は、図5及び図6に示す通り、苗ホルダー83を前後に通り抜け可能な櫛状の苗叩き100を備えている。回動自在に設けた左右方向の苗叩き取付軸101に苗叩きアーム102を取り付け、更にその苗叩きアーム102に回動可能に取り付けた回動アーム103に苗叩き100を一体的に取り付けている。回動アーム103は、長孔103aの範囲内でボルト102aを介して回動可能である。叩きアーム102に取り付けたローラ104が、カム軸105に取り付けられた苗叩きカム106のカム面に当接するようにスプリング107にて付勢している。苗叩きカム106が回転すると、苗叩きカム106の凹部106aにローラ104が嵌り込むときスプリング107の張力により苗叩き100が素早く下向きに回動し、直ぐに元の位置に復帰するように作動する。
苗抜き装置35は、苗ホルダー83が移動軌跡下端に移動してきたとき、苗ホルダー83に保持されているポット苗Nを苗叩き100が受け止め、苗ホルダー83のみを通過させてポット苗Nを抜き出す。そして、苗叩き100が下向きに回動し、抜き出されたポット苗Nを苗横送り装置36の苗送りベルト113,113上に叩き落とす。
苗横送り装置36は、苗抜き装置35によって抜き出された生育列C21列分のポット苗Nを半分ずつ左右両側に横送りするものである。苗横送り装置36は、図5に示すように、苗植付部3の図示しないメインフレームに架設された苗横送り駆動軸110の駆動ローラ111と、従動ローラ112とに巻き掛けた左右一対の苗送りベルト113,113を、それぞれ左右外側へ移動するように左右対称に設けている。
苗送りベルト113,113の横送り部の下側には、落下するポット苗Nの重みで苗送りベルト113,113が橈むのを防止する撓み防止板114が設けられている。苗抜き装置35により抜き落とされた生育列C2一列分のポット苗Nは、各苗送りベルト113,113の上に整列、落下し、これを受けた苗送りベルト113,113が左右半分ずつの苗をそれぞれ左右両側に搬送する。苗送りベルト113で搬送された苗Nは、一対の植付ガイド115,115の間に落し込まれる。
苗植付装置37は、苗取出装置33で取り出され、苗横送り装置36によって供給されるポット苗Nを取って圃場に植え付けるものである。苗植付装置37は、図3に示すように、植付伝動フレーム45の後端部に設けられた植付駆動軸120と一体回転する回転ケース121に一対の苗植込具122、122を取り付けている。苗植込具122、122は、植付駆動軸120が回転すると、閉ループの先端軌跡を描いて移動する。各苗植込具122は、植付ガイド115,115の間に落し込まれたポット苗Nを交互に一株ずつ取り、それを植付ガイド115,115の間を移動させて圃場に植え付ける。
植付伝動機構部25は、図7に示すように、走行車体2から駆動力が伝達される入力軸130がベベルギヤ131,132を介して第二伝動軸133と連動連結している。第二伝動軸133は、8組のベベルギヤ135,136を介して各条の苗横送り駆動軸110へ駆動力を伝達する。隣接する一対の苗横送り駆動軸110,110は、互いに逆向きに回転するようになっている。
また、各植付伝動フレーム45内には、第二伝動軸133に取り付けたスプロケット137aと植付駆動軸120に取り付けたスプロケット137bに掛け渡した伝動チェーン137が設けられている。該伝動チェーン137により第二伝動軸133から植付駆動軸120へ駆動力が伝達される。
更に、第二伝動軸133は、図7及び図8に示すように、その外端部でベベルギヤ140,141を介して、左右2本の上下伝動軸142の下端部とそれぞれ連動連結している。左側の上下伝動軸142は、その上端部がベベルギヤ143,144を介して第一ユニット・第二ユニット用の第一伝動軸64と連動連結すると共に、その中間部がベベルギヤ147,148を介して第一ユニット・第二ユニット用の苗叩きカム軸105と連動連結している。同様に右側の上下伝動軸142は、第三ユニット・第四ユニット用の第一伝動軸64及び苗叩きカム軸105と連動連結している。
また、図1及び図2で示す通り、苗植付部3の下方には、走行車体2の移動と共に、圃場上を滑走して整地するフロート38が設けられている。該フロート38は、苗植付部3の左右両側下部に設けられる左右一対の外側フロート(第1整地部材)38o,38oと、該左右の外側フロート38o,38oの左右間に設ける左右一対の内側フロート(第2整地部材)38i,38iの合計4枚で構成される。
これら左右の外側フロート38o,38oと左右の内側フロート38i,38iは、各々左右方向に所定間隔を空けて配置しており、外側フロート38oと内側フロート38iの左右間の前方に、後輪12b,12b、及び機体外側から2番目の苗植付装置37,37の植付伝動フレーム45が位置する。
左右の内側フロート38i,38iの回動軸には、圃場の凹凸を通過する際の回動量を検知する仰角センサ(ポテンショメータ)43を設け、該仰角センサ43の検知する回動角度が変化すると、電磁弁(図示省略)を開閉させて昇降用シリンダ22bを伸縮させ、苗植付部3の植付作業高さを自動的に上下動させて、苗の植付深さを揃える構成としている。
しかしながら、適切な植付深さは圃場の土質等によって異なるものであり、苗植付部3を決まった量だけ昇降させていると、かえって苗の植付深さが乱れ、苗の生育が悪くなることがある。例えば、土質の柔らかい圃場では、僅かな角度変化でも苗植付部3を昇降しなければ植付深さが乱れやすく、逆に硬い圃場では、大きな角度変化があったときのみ苗植付部3を昇降させないと、苗植付部3が頻繁に昇降してしまい、機体が揺れたり、苗の植付前に苗植付部3の作業高さが変化し、植付深さが不適切になる問題がある。
この問題を解消すべく、図14の操縦部の要部平面図に示すように、走行車体2のフロントカバー16には、苗植付部3を昇降させる仰角センサ43(図13)の検知角度を補正する、感度調節ダイヤル300を設けている。感度調節ダイヤル300を「軟」側に操作すると敏感になって、仰角センサ43が僅かでも回動角度を検知すると苗植付部3を昇降させると共に、「硬」側に操作すると鈍感になって、仰角センサ43が大きな角度を検知したときのみ苗植付部3を昇降させる構成になる。
これにより、圃場の土質に合わせて適切な植付深さを維持することができるので、苗の生育が安定する。
しかしながら、苗植付部3の自動昇降を利用せず、作業位置に合わせて作業者が手動で昇降操作する際には、上記の自動昇降機構は不要である。従って、仰角センサ43が左右の内側フロート38i,38iの回動を検知しても電磁弁を作動させない「油圧ロック」ポジションを設定する。
そして、カバー16には、感度調節ダイヤル300の他に、エンジン回転数を増減させるアクセル操作ダイヤル301を設けている。該アクセル操作ダイヤル301は、感度調節ダイヤル300よりも機体前側で、且つHST(油圧式無段変速装置)302の出力及び前後進を操作する主変速レバー(HSTレバー)303よりも機体内側に配置する。
上記構成により、アクセル操作ダイヤル301よりも機体前側には他の調節部材が配置されないので、アクセル操作ダイヤル301の操作時に他の調節部材に作業者が触れにくくなり、作業者の意図しない設定変更が生じず、作業能率や苗の植付精度が向上する。
また、整地装置6は、苗植付部3の下方で且つフロート38の前方に設けられ、圃場を整地するものである。整地装置6は、エンジン11からの駆動力により回転される1以上のロータ39(39a,39b)を備える。
制御装置5は、苗移植機1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置5は、例えば、ミッションを制御する変速制御、昇降機構22による苗植付部3の昇降制御、エンジン11を制御するエンジン制御、苗植付部3のポット苗Nの植付制御等を実行している。
苗移植機1は、圃場にポット苗Nを植え付ける際には、昇降機構22により苗植付部3が対地作業位置(ポット苗Nの植付位置)まで下降される。苗移植機1は、圃場内を走行しながら整地装置6のロータ39及びフロート38が圃場の表面を均す。そして、苗移植機1は、苗植付部3の苗植付装置37の回転ケース121、植付駆動軸120と一体に回転しながら苗植込具122がポット苗Nを圃場に植え付ける。
また、苗移植機1は、圃場への苗の植え付けを終了すると、苗植付部3の昇降機構22により苗植付部3が非作業位置まで上昇される。そして、苗移植機1は、圃場間を移動したり、圃場外に移動したりする。
図15には、ロータ支持構造の全体平面図を示し、図16には、図15の一部平面図を示し、図17には、ロータ支持構造の全体側面図を示し、図18及び図19には、図17の一部側面図を示す。尚、図18には、ロータ装置を最下降位置まで下降させた場合の図を示し、図19には、ロータ装置を最上昇位置まで上昇させた場合の図を示している。
ここで、改めて、ロータ装置の全体構成の具体例について説明する。
整地装置6は、苗植付部3の左右中央部に設けたセンターロータ(中央整地体)39aと、センターロータ39aの左右にそれぞれ設けたサイドロータ(側部整地体)39bとから構成され、センターロータ39a及びサイドロータ39bは、複数のロータ羽根(整地体)39aa,39baをロータ回転軸39ab,39bbに装着して構成されている。
また、後輪ギヤケース12g内のギヤからロータ伝動軸40等を介して左側のサイドロータ39bのロータ回転軸39bbへ動力が伝達され、更にセンターロータ39aのロータ回転軸39abと右側のサイドロータ39bのロータ回転軸39bbにはロータ伝動ケース150,150内の一対のチェーン(図示せず)から動力伝達される。整地装置6は、ローリング機構Kにより支点Sを中心にローリングする。
図15に示すように、苗植付部3の一部であるローリングフレーム160が昇降リンク機構22aの後端部に連結されており、前後軸芯S周りにローリング自在に支持されている。
ローリング機構Kは、左右方向に押し引き操作される一対のローリングバネ162,162を押し引き駆動するギヤ機構及びモータ164と、その動きを検出するローリングポテンショ166を備えて構成されている。ローリング機構Kのローリングバネ162を押し引き駆動することによって、苗植付装置37が昇降リンク機構22aの後部下部の前後軸芯S周りにローリング駆動される。
そして、センターロータ39a及びサイドロータ39bの前後を、それぞれ上方から支持する吊下げバネ201とロータホルダ(吊下げ部材)203を備えて構成し、これを昇降機構22の後端部に起設したロータ支持フレーム(整地支持部材)205により、苗植付部3の下方位置において高さ調節可能に支持する。
図20及び図21には、梁フレーム213とロータ支持フレーム205との組み付けを説明するための要部の模式図を示す。図20(A)は組み付け前の側面図を示し、図20(B)は組み付け後の側面図を示している。また、図21(平面図)の左側には組み付け前の状態を示し、右側には組み付け後の状態を示している。
ロータ支持フレーム205は、梁フレーム213から吊り下げられており、左右方向に長手方向を有する梁フレーム213の取付ステー218とロータ支持フレーム205の上部の取付具225とを、取り付け線219に示すように、取付ステー218及び取付具225の取付孔227にボルト230及びナット231を用いて取り付けることで、植付フレーム214の大枠を形成している。
センターロータ39a及びサイドロータ39bの支持構造について説明すると、ロータホルダ203は、その上部に遊動連結する回動連結アーム(上部連結部材)207と、同じく下部に連結するロータアーム(下部連結部材)209とを介してロータ支持フレーム205に対して上下動作可能に連結するとともに、操作具として揺動動作可能な調節レバー211を回動連結アーム207と連結して高さ調節操作可能に構成する。即ち、ロータアーム209の上部は各ロータ支持フレーム205の下部を連結する連結支持フレーム215に回動可能に連結し、更にロータアーム209の下部にはサイドロータ39bが回動可能に連結している。また、回動連結アーム207は、一端部が梁フレーム213に固着した上側回動連結アーム207aと該上側回動連結アーム207aの他端部に一端部が回動可能に連結し、他端部がロータホルダ203の上端部に固着する下側回動連結アーム207bからなる。
また、ロータアーム209は、一端部が連結支持フレーム215に回動可能に連結する上側ロータアーム(第1整地連結アーム)209aと該上側ロータアーム209aの他端部に一端部が回動可能に連結し、他端部がサイドロータ39bのロータ支持部材221に回動可能に連結する下側ロータアーム(第2整地連結アーム)209bからなる。ロータホルダ203の下部はロータ支持部材221に回動可能に連結している。
調節レバー211は梁フレーム213の前側で、上側回動連結アーム207aに連結(溶着)しており、調節レバー211を矢印A方向(図18)に回すと、上側回動連結アーム207aが梁フレーム213を中心に矢印B方向に回動して、それに伴い下側回動連結アーム207bに上端部が固着するロータホルダ203が上動し、ロータ支持部材221を介して圃場面Lに対してロータ39が上昇する。即ち、調節レバー211は上側回動連結アーム207aを引き上げたり引き下げたりするものである。
尚、具体的には、植付フレーム214は、梁フレーム213、ロータホルダ203、ロータ支持フレーム205、回動連結アーム207、ロータアーム209、ローリングフレーム160などにより構成されている。
ローリングフレーム160のリンク受けフレーム161は昇降リンク機構22aに連結しており、苗植付部3は、ローリング機構K(ローリングフレーム160)及び延長フレーム9(図1)を介して昇降機構22の昇降リンク機構22aの後部に着脱自在に装着されている。
そして、ロータホルダ203は、後輪12bと第1補助車輪12cとの間、及び後輪12bと第2補助車輪12dとの間に配置されているため、ロータ39の下降時にも、これらの車輪と干渉しない。従って、ロータホルダ203の破損が防止される。また、苗植付部3の下降が遅れて苗の植付が遅れることが防止され、苗の植付精度が向上する。
また、ロータホルダ203は、ロータ支持フレーム205よりも後ろに配置することで、ロータ39が上下動しても車輪に近づくことがない。即ち、ロータ39は吊り下げられているので、苗植付部3の昇降時に揺れて前後に振れることがある。しかし、上記構成により、ロータ39と後輪12b、第1補助車輪12c、第2補助車輪12dとの干渉を防止できる。また、ロータホルダ203は、後輪12bや第1補助車輪12cや第2補助車輪12dよりも後方に配置することで、これらの車輪との干渉を防止できる。
そして、ロータホルダ203は、ロータホルダ203の上下間の上方から下方にかけて機体の左右内側から外側に向かう屈曲部203a(図16)が形成されている。屈曲部203aの曲げを大きくすることで、後輪12b、第1補助車輪12c、第2補助車輪12dが圃場から持ち上げた泥土が付着しても落ち易くなる。屈曲部203aは傾斜姿勢なので、泥土が載っても滑り落ちやすく、泥が落ちやすい。また、屈曲部203aのうち、車輪から離間する位置には泥土が付きにくいので、泥の塊がロータホルダ203の上下に付着しにくく、泥の重量による走行抵抗を小さく抑えることができる。
従って、これらの車輪に付着した泥とロータホルダ203に付着した泥とが走行抵抗となり、走行性や操作性が低下することを防止できる。また、泥土の重量によりロータホルダ203に負荷がかかることを防止できるので、ロータ39等の荷重による摩耗が軽減され、耐久性が向上する。
また、複数のロータアーム209は、その下部同士を連結パイプ217で連結している。これにより、各ロータアーム209がむやみに揺れ動くことなく、動きが安定する。具体的には、下側ロータアーム209bの長手方向中心線N(図18)より下側部分に連結パイプ217が回動可能に連結している。下側ロータアーム209bの前端部はロータホルダ203の下部に連結していることから、図18及び図19に示すようにロータホルダ203の上動に連動して後端部(上側ロータアーム209aとの連結部)を支点として上動する。
この時、連結パイプ217を下側ロータアーム209bの長手方向中心線Nより上側に配置した場合は、ロータ支持フレーム205と連結パイプ217との距離が近くなるが、なるべく下側に配置することで、ロータ支持フレーム205との干渉を防止できる。
そして、上側回動連結アーム207aと下側回動連結アーム207bとの交差角度θは、図18及び図19に示すように、鋭角(90°以下)となるように連結している。ロータ39の最下降位置からの調節レバー211の操作により上側回動連結アーム207aが回動すると交差角度θは小さくなるため、ロータ39の最下降位置の時のθが鋭角となる連結機構にすれば良い。
ロータホルダ203の上端部の延長線上に下側回動連結アーム207bが固着していることから、上側回動連結アーム207aとロータホルダ203との交差角度も鋭角となることで、強度が確保される。即ち、ロータ39が上動してもロータ39等の重量による荷重を分散させることができるので(二辺の交差角が鋭角となるトラス構造)、強度を確保でき、荷重による回動連結アーム207の回動軸部(上側回動連結アーム207aと下側回動連結アーム207bとの連結部)の摩耗が防止され、耐久性が向上する。
図22及び図23には、苗移植機1のロータ支持構造の他の例(側面図)を示す。図22には、ロータ装置を最下降位置まで下降させた場合の図を示し、図23には、ロータ装置を最上昇位置まで上昇させた場合の図を示している。
この例では、上側ロータアーム209aを側面視でL字型としている。ロータホルダ203の上昇により下側ロータアーム209bが上方に回動した際に、上側ロータアーム209aのL字の開口部の空間Qがあることで、上側ロータアーム209aを側面視で円弧状とした場合(図17)に比べて下側ロータアーム209bの上昇可能範囲が更に広くなる。
通常、苗植付部3を上昇させると整地装置6は圃場面から離間するが、この整地装置6ではセンターロータ39aが左右のサイドロータ39bよりも前方に突出するため、スプリング等で吊る必要がある。しかし、スプリングが経年劣化で付勢力が弱まる等の要因により、センターロータ39aが上方に十分吊り上げられず、圃場面に接触してしまうことがある。特に、苗植付部3を上昇させて旋回する際、苗植付部3が低い位置にある際に、圃場端の地面にロータ39が接触し、接触跡が残され、最後に圃場端に苗を植え付ける際、植付深さが乱れる原因となることがある。
しかし、上側ロータアーム209aを側面視でL字型とすることで、ロータ39をより上方まで移動させることができ、ロータ39が圃場面に接触して圃場を荒らすことが防止される。
そして、本実施形態の苗移植機ではロータホルダ203を前傾姿勢に配置しているが、図22及び図23に示す例では、図17等に示した場合よりも更にロータホルダ203を前傾姿勢に配置しており、具体的には、ロータホルダ203の下部がサイドロータ39bの鉛直線E上に対して前方に傾く姿勢になっている。
ロータ39が石等の障害物によって上方に押し上げられる時に、ロータホルダ203の下部がサイドロータ39bの鉛直線上に位置する場合は、真上に上昇して上下動が激しくなり、ロータ39やロータホルダ203等に負荷が掛かる。
一方、ロータホルダ203の下部がサイドロータ39bの鉛直線上に対して前方に傾いていると、障害物に当たった場合にロータ39が障害物に追従して緩やかに上下動し、機体前側上方に向かって移動しやすくなる。従って、ロータ39やロータホルダ203等に負荷がかかり破損することが防止される。
また、図22及び図23に示すようにロータホルダ203を前傾姿勢とし、ロータホルダ203をロータ支持フレーム205よりも機体前側に配置することで、ロータホルダ203とその上にあるロータ支持フレーム205との距離(間隔)が広くなる。従って、ロータ39を上昇させるときにロータホルダ203の上方移動範囲が広くなるため、ロータホルダ203がロータ支持フレーム205と干渉しにくくなって、ロータホルダ203の上方移動を妨げないため、ロータ39の上昇可能範囲が広くなり、ロータ39が圃場面に接触して圃場を荒らすことが防止される。
また、ロータ39の上昇可能範囲が広くなることでロータ39の整地作業位置をより上方に設定できるので、圃場の土質に適した整地が行え、整地性や苗の植付精度が向上する。例えば、土質が柔らかいところでは、ロータ39の作業高さを高めに設定すると、ロータ39が土を掻き混ぜ、圃場を荒らしてしまうことを防止できる。
図24及び図25には、連結支持フレームの形状を変えた場合の図を示す。図24は苗移植機のロータ支持構造の他の例(側面図)であり、図25(A)は、図17に示した連結支持フレーム215部分の平面図を示し、図25(B)は、図24に示した連結支持フレーム216部分の平面図を示す。
この例の苗移植機は、ロータホルダ203の後ろに連結支持フレーム216を配置した点で、図17に示した苗移植機とは異なり、その他の点では同様の構成である。図17に示した連結支持フレーム215は機体の左右中央部に位置するローリングフレーム160から左右一直線に延びるフレームであるが、連結支持フレーム216はローリングフレーム160の左右からそれぞれ後端部に突出して該突出部から左右方向に延びる平面視でL字型の形状である。
図17に示したようにロータホルダ203の前に連結支持フレーム215があると、ロータホルダ203下部にあるロータ39が上昇する際に、最高位置が高いと連結支持フレーム215と干渉することも考えられる。しかし、ロータホルダ203の後ろに連結支持フレーム216を配置することで、ロータ39が上昇しても連結支持フレーム216と干渉することがなく、ロータ39の最高位置をより高くすることが出来る。従って、作業者の要望や圃場条件に応じた作業形態で整地することが可能となり、適用範囲が広がる。
また、本実施例の苗移植機1では、燃料タンク内の燃料が少なくなると、タンク内の燃料センサ56(フロートセンサ等)によって燃料が所定位置未満であることを検出し、燃料ランプが点灯するが、タンク内の燃料が少なくなった時にはアクセル操作ダイヤル301を高い側(アクセル操作ダイヤル301の中央位置を2500rpmとすると、それより高い側)に操作しても、エンジン回転数の上昇を抑えてエコモード等のランプを点灯させ、モータパネル等で作業者に報知する報知装置50(図13)を備えている。尚、ランプの点灯ではなく、ブザーなどの音声で報知したり、これらを併用する構成でも良い。
即ち、燃料が少ないとエンジン回転数が上昇しにくいエンジン制御がなされる。例えば、アクセル操作ダイヤル301を最高位置にすると、エンジン回転数は2800〜3000rpmまで上昇するが、2500rpm程度に抑えると良い。2500rpmは、苗の植付作業時の標準的な回転数であり、よく基準にされている。
本構成により、燃費を良くすることができ、また報知装置50によって作業者にも認識されるため、燃料ゲージの確認を促し、適正な駆動制御が可能となる。
また、アクセル操作ダイヤル301と感度調節ダイヤル300を連動させて、アクセル操作ダイヤル301を高い側にすると、感度調節ダイヤル300が「硬」側になるように設定される構成としても良い。制御装置5により、どちらか一方の操作が行われると、他方の対応する制御を変更する構成である。なお、これらのダイヤルは自動で動かないので、見た目では分からないが、例えば、アクセル操作ダイヤル301の操作を中央位置(2500rpm)以上に操作すると、感度調節ダイヤル300を「硬」側に操作した時と同じく、植付部3を自動上昇させる仰角センサ43の角度を大きく補正(100rpm分ごとに0.5度ぐらい)する。なお、逆の場合は角度を下げる。
即ち、アクセル操作ダイヤル301を高い側にした場合は、圃場の凹凸が激しく、仰角センサ43が大きな角度を検知したときのみ苗植付部3を昇降させる構成とする。
本構成により、苗の植え付け時に、車速を高速にした場合の油圧制御の感度が鈍感になって苗植付部3が頻繁に上下動することが抑制され、植え付け姿勢が安定する。
図26には、主変速レバー303及びレバーガイド305の平面図を示す。
主変速レバー303はレバーガイド305に沿って回動操作することにより、前後進、停止及び移動速度を手動で切り換わるように構成されている。即ち、中立位置305aから前進側(前に倒す)又は後進側(後ろに倒す)に操作するほど高速となる。
そして、図26に示すように、レバーガイド305内の前進側又は後進側に主変速レバー303が操作されると、主変速レバー303の回動基部に設けた主変速センサ(ポテンショメータ等)303a(図13)により主変速レバー303の操作位置が検出され、更に中立位置305aの前進側と後進側にそれぞれ設けたリミットスイッチ(センサ)307a,307bによって主変速レバー303の動きが検出される。
主変速センサ303aによって検出される中立位置305aからの操作量と操作方向に応じて制御装置5によりHST制御モータ(図13)302a(正転で前進側、逆転で後進側)でトラニオン軸(図示せず)を回動させるトラニオンアーム(図示せず、トラニオン軸に直結している)を作動させて、トラニオン軸の回動角度が所定角度になるまで回動させる。トラニオン軸の回動方向及び回動角度はトラニオンアームに設けたトラニオン軸センサ(ポテンショメータ等で良い)297によって検出される。トラニオン軸の回動角度により斜板(図示せず)の傾斜角度を変化させてHST302の出力を無段状に変更させることができる。
主変速レバー303を中立位置305aから前進側に操作すると、前進側リミットスイッチ307aに接触して前進側への操作を検知し、後進側に操作すると、後進側リミットスイッチ307bに接触して後進側への操作を検知し、機体が前進又は後進するが、1回のレバー操作では、初心者等の操作に慣れていない作業者の場合、操作ミス等をして前進に入れたつもりが後進に入っていたりすることもあり得る。
そこで、中立位置305aから前進側又は後進側への複数回のレバー操作があるときのみ、HST制御モータ302aに出力して前進又は後進走行が可能となる構成とすれば、作業者の本来の意図に合った走行が可能となり、安全性が向上する。
例えば、主変速レバー303を中立位置305aから前進側へ2回操作をすると、前進走行が可能となり、主変速レバー303を中立位置305aから後進側へ2回操作をすると、後進走行が可能となる構成とする。この場合、前進側では前進側リミットスイッチ307aが3回検知し、後進側では後進側リミットスイッチ307bが3回検知することになる。即ち、操作手順としてはまず前進側リミットスイッチ307aが中立から前進で一回検知、次に前進から中立に戻すことで前進側リミットスイッチ307aが2回目の検知、再び中立から前進で3回目の検知となる。
また、前進のつもりが後進に入れてしまい(ここで後進側リミットスイッチ307bが1回検知)、中立に戻して(ここで後進側リミットスイッチ307bが2回目の検知)前進に入れた場合(ここで前進側リミットスイッチ307aが1回目の検知、トータルで3回目の検知)、また中立に戻して(ここで前進側リミットスイッチ307aが2回目の検知、トータルで4回目の検知)前進に入れ直さないと(ここで前進側リミットスイッチ307aが3回目の検知、トータルで5回目の検知)前進しない。即ち、同じ側のリミットスイッチの3回検知が条件になる。
1回のレバー操作では作業者の操作ミスの場合もあり得るが、主変速レバー303の複数回の操作を走行の条件とすることで、レバー操作の再確認が行える時間の余裕ができ、作業者の本来の意図に合った走行が可能となり、安全性や作業性が向上する。
また、本実施例の苗移植機では、エンジン回転数を増減させるアクセル操作ダイヤル301をフロントカバー16に設けているが、その一方で踏み込み操作によりエンジン回転数を増減できるアクセルペダル310をフロアステップ13aに設けている。アクセル操作ダイヤル301は作業前、または作業中に操作し、エンジン回転数の基準値を設定するものであり、アクセルペダル310は作業者が踏み操作している間、強制的にエンジン回転数を増加させるものである。
図27(A)及び図28(A)にはアクセルペダル310部分の側面図(模式図)を示し、図27(B)及び図28(B)にはアクセルペダル310部分の平面図(模式図)を示す。図27にはアクセルペダル310を踏む前の状態を示し、図28にはアクセルペダル310を踏んだ時の状態を示している。
苗の植付作業では、アクセル操作ダイヤル301により作業に適した、比較的低い回転数に制御されるが、路上走行の場合は作業速よりも高速で走行するため、アクセルペダル310の操作によってエンジン回転数も比較的高い回転数に制御される。
このアクセルペダル310は、フロアステップ13aよりも低い位置にあり、使用時に蓋(図示せず)を取って穴13abに足を入れて操作するものである。アクセルペダル310の踏み面となる上部プレート310aの下面に側面視T字型の下部プレート310bの本体部310baが固着しており、下部プレート310bの前端基部に設けたトルクスプリング311によって踏み面が水平になるように上方に付勢されている。図27(C)には、アクセルペダル310の上部プレート310aと下部プレート310b部分の背面図を示す。図27(C)に示すように、上部プレート310aは長方形の平板であり、下部プレート310bの本体部310baは、前後方向の細い棒状(又は板状)部材であり、足部310bbは上下方向の細い棒状(又は板状)部材である。
下部プレート310bの足部310bbにはスロットルワイヤー314が連結しており、作業者が足312を入れて踵でアクセルペダル310を踏むと、矢印J方向に回動してスロットルワイヤー314が、エンジン回転数を上げる方向(矢印F方向)に引かれる。足部310bbの回動はストッパ316により規制される。
一般的なアクセルペダルは、フロアステップ13a上に突出しており、つま先や足裏で前方に踏み込む構造のものが主流であるが、踏んでいると段々足が前に出ていってしまい、ペダルから足が離れてしまう。また、フロアステップ13aの上面に突出しているため、作業者の歩行の邪魔になる。フロアステップ13a上で歩行する場合とは、苗や肥料の補充、走行車体2からの乗り降り等、植付作業時に作業者が一般的に行う、歩行を伴う行動全てを言う。
しかし、本構成により、フロアステップ13aよりも下にアクセルペダル310があることで、蓋をして穴13abを塞げば歩行の際の障害にならない。また、フロアステップ13aの取り外し時にもアクセルペダル310が邪魔にならず、簡単に組み外しが可能となる。メンテナンスを丁寧にしたり、より大規模な修理等を行ったりする場合に、フロアステップ13aを外し、フレーム等に付着した泥土を取る必要がある。また、前に踏み込む構造ではなく、踵で後ろに踏み込む構造であるため、足が前に滑ることなく使いやすい。従って、走行操作に慣れない作業者でも操作性に優れる。
また、前記主変速装置であるHST302を経て駆動されるミッションケース21内の連動機構に副変速装置315が配置され、前記ハンドル17の脇に設けた副変速レバー313(図1、図29参照)によって、副変速装置315のギヤ機構が切り替わり、ギヤ機構の組み合わせによって走行速度が変更される。副変速レバー313をレバーガイド313bに沿って操作することで、高速の「路上走行モード」と低速の「作業走行モード」と走行系統に伝動しない中立の何れかに切り替わるように構成している。
図30には、ミッションケース21内のHST302と副変速装置315の伝動機構図(平面図)を示す。
副変速装置315の各部伝動軸の駆動力の回転速度はHST302の出力によって変わってくるが、ギヤ機構の組み合わせにより、上限が変更される。「路上走行モード」(移動)の場合は、走行速ギヤ315aのギヤ比により高速回転する構成のため、HST302の出力が低くても走行速度は速くなる。「作業走行モード」(植付速)では、植付速ギヤ315bのギヤ比により低速回転する構成のため、HST302の出力を高くしても走行速度は上がりにくく、比較的低速で走行する。
この「作業走行モード」では、比較的低速ではあるものの、微妙な速度コントロールができず、トラックに苗移植機1を積む時は、より低速にする方が安全面でも好ましい。そこで、副変速レバー313の操作位置に超低速となる「積み下ろしモード」(積下速)を設けると良い。
「積み下ろしモード」では、植付速ギヤ315bのギヤ比よりも更に低速で回転するギヤ比で組まれた積下速ギヤ315cによって、HST302の出力を高くしても走行速度が殆ど上がらない状態になる。本構成により、トラックに苗移植機1を積む時には副変速レバー313を「積み下ろしモード」に操作して、作業走行モードよりも低速にすることで安全性を高めることができる。
また、副変速レバー313の操作により走行モードを変更できるため、作業者は操縦席14に座ったままで操作でき、操作性にも優れる。
また、副変速レバー313の操作によらずに、自動で「積み下ろしモード」になるようにしても良い。
左右の前輪12aと後輪12bの側方に電極板320を設け、通電がなければ制御装置5により圃場外であると判断して仰角センサ43により所定角度以上の大きな角度を検出したら積み下ろし作業であると判断し、「積み下ろしモード」に切り替わる構成である。圃場には水が張っており、路上走行時の比較的乾燥した道路とは電極板320の抵抗値が変わってくるため、通電状態が判定できる。
副変速レバー313の操作位置は、副変速レバー313基部にある副変速センサ(副変速操作位置検出部材)313a(図13)によって検出される。そして、副変速機構を切り替える副変速切替モータ330(図13)を設けることで、 副変速レバー313を操作しなくても、自動的に副変速レバー313の操作位置が「積み下ろしモード」に切り替わることで、作業者がレバー操作を忘れていても、超低速となることで安全である。即ち、副変速切替モータ330によって、副変速レバー313が回動することで手動操作と同じようにギヤが切り替わる。
また、自動で「積み下ろしモード」になる場合は、制御装置5により昇降用シリンダ22bを作動させて、苗植付部3も自動的に上昇する構成とする。トラックに苗移植機1を積む時には苗植付部3も上昇させることで、歩み板(苗移植機をトラックに乗せるために使用するはしごのような足場)に苗植付部3が当たって破損することを防止できる。
図31には、ウインチ400を使用時の苗移植機の要部平面図を示す。
また、副変速レバー313の操作位置に、ウインチ400を使用する時の「ウインチモード」を設けても良い。通常は、ウインチ400を使用する時に「作業走行モード」で行うが、ウインチ400のパワーを確保しつつ車輪12a,12bを回転させるのは、地盤が緩く深いと、湿田から脱出する際には走行車体2の走行速度が速くなって車輪12a,12bが空回りし、ウインチ400の抵抗になってしまう。脱出移動の際には走行速度は低速、HST302やエンジン11の出力は高いことが望ましいが、副変速装置315を「植付速」とし、この状態でHST302やエンジン11の出力を上げると、脱出移動には速くなり過ぎ、車輪12a,12bが滑ってウインチ400による移動が円滑に行われなくなることがある。
「ウインチモード」では、副変速装置315のギヤを、植付走行速度よりも遅い速度しか出ない組み合わせ(図34のウインチ速ギヤ315d)に切り替えることで、HST302やエンジン11の出力を高くしても、車輪12a,12bが滑るような速度が出ることを防止でき、ウインチ400の抵抗になることが防止される。上述の「積み下ろしモード」(積下速ギヤ315c)に変えて、「ウインチモード」(ウインチ速ギヤ315d)を設けても良いし、図33に示すように、両モードを併用しても良い。「ウインチ」では、圃場から脱出する移動を伴うため、植付作業ほどではないが相応の速度を必要とする。一方、「積下速」では極低速とすることで安全性を向上させる必要がある。従って、両モードを設ける場合は、「ウインチ」の方が「積下速」よりも「植付速」に近くなる。
なお、ウインチ400の動力源は専用のウインチモータM(走行車体の伝動系とは独立している)であり、リール412のリール軸411を回転させる。ウインチ400は、機体フレームに装着するウインチフレーム414及びウインチフレーム414上でリール412を受けるリールブラケット442を介して走行車体2に連結している。ウインチフレーム414には左右位置調節用の長孔441があり、リールブラケット442の取り付け位置を調節できる。
「ウインチモード」では、図32、34に示す通り、副変速装置315のギヤ伝動を「ウインチ」に切り替えることにより、走行車体2の走行速度が遅くなるため、車輪12a,12bが空回りすることなくウインチ400の抵抗とならない。従って、湿田からの脱出が容易になり、作業性が向上する。
また、ウインチ400のワイヤ408を引き出した時に、自動で「ウインチモード」になるようにすると、作業性がより向上する。ウインチ400のワイヤ408を引き出すと、ウインチ400のリール412の回転(リール軸411の回転)が、リール軸回転センサ(ポテンショメータ等)340によって検出されることで、制御装置5により副変速切替モータ330を作動させて「ウインチモード」に切り替わる。
また、この際にウインチ400の巻き速度と車速を同じ速度にすると湿田からの脱出力が向上する。ウインチ400の巻き速度はリール軸回転センサ340により検出され、車速は車速センサ342(図13)によって検出される。ウインチ400の巻き速度はウインチモータMの制御装置5によりコントロールされる。