以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、実施形態1に係る止水装置の概略構成を表す正面図である。図1に示す実施形態の止水装置1は、開口部Oから構造物Sの内部に水が浸入することを防止するものである。開口部Oは、構造物Sの壁部Wなどに形成され、構造物Sの一方の空間側(例えば、屋外側)と他方の空間側(例えば、屋内側)とを連通するように形成される。なお、防止とは、阻止や抑制などの意味を含むものとする。
このような構造物Sの開口部Oには、開閉体としてシャッターや開閉扉が配置されていることが多い。例えば、地下駐車場の入口や、店舗の入口等にもシャッターや開閉扉が配置されていることが多い。シャッターは、隙間が多い構造であるため、ゲリラ豪雨や洪水時のように想定以上の降水量となるとシャッターの隙間を介して浸水して施設が被害に遭う可能性がある。また、開閉扉は、扉間および各扉と開口部との間に隙間があるため、同様に施設が被害に遭う可能性がある。
図1に示す実施形態の止水装置1は、ビル,家屋,倉庫等の構造物を含む構造物Sに形成された開口部Oを開放あるいは閉塞する開閉体(開閉扉)2を通して構造物Sの内部に水が浸入することを防止するものである。
なお、以下の説明では、水平方向に沿った方向であって後述する枠体3の一対の縦枠部材(方立)31が向かい合う方向を「幅方向」という。また、上流側(屋外側)から下流側(屋内側)に向かう方向を「屋内外方向」という。また、枠体3の一対の縦枠部材31が延在する方向を「上下方向」という。ここで、屋内側とは、水の浸入を防止、すなわち、水の浸入を阻止や抑制したい側であり、屋外側とは、浸入可能性のある水が流れてくる側のことである。なお、屋外側や屋内側とは、水が浸入する可能性がある場合の上流側や下流側を意味する便宜上の文言である。本発明は、例えば廊下等の通路のような家屋や部屋等の概念が必ずしも明確にならない場所に配置された扉に対しても適用できる。ここで、「幅方向」とは屋内外方向と直交し、一対の枠部材が離間して配置される方向であり、「上下方向」とは屋内外方向および幅方向と直交する方向である。
開閉扉2は、図1に示すように、枠体3の屋内側に配置され、幅方向にスライド可能に支持された両開き式の一対の扉21を有する。開閉扉2は、扉21が開口部Oを閉塞させる閉塞位置と、開口部Oを開放させる開放位置とに亘って枠体3に対して幅方向にスライドすることで、開口部Oを開放あるいは閉塞する。具体的に、開閉扉2は、一対の扉21が互いに近付いて開口部Oを閉塞し、一対の扉21が互いに離間して開口部Oを開放する。このような扉21の移動は、手動でなされても、モータ等の駆動装置によって自動でなされてもよい。また、開閉扉2が後述する止水板4と接触しないため、開閉扉2は、止水板4を開口部Oに配置した状態で開閉可能である。
扉21は、図示しないガイドレールによって案内される。ガイドレールは、開口部Oの上下両端に配置され、壁部Wの表面と平行である。扉21の上下方向両端部は、それぞれガイドレールの溝部に挿入されている。溝部は、開閉方向、すなわち、幅方向に延在しており、扉21を幅方向にスライド自在に案内する。図1に示すように、扉21の幅方向の両端には、扉21よりも厚い扉側縦方立21aが配置されている。また、扉21の下端部には、扉21よりも厚い扉側幅木21bが配置されている。扉側縦方立21aの厚みは、扉側幅木21bの厚みと等しい。なお、本発明でいう床面(床部)Fとは、説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、通常の床面Fのみならず、コンクリート面や地面等の開口部Oの下方に位置する面を総称する。
枠体3は、図1に示すように、開口部Oの周囲の壁部Wよりも厚く、防錆性を有する金属材で構成されている。枠体3は、開口部Oの周囲を囲むように構造物Sに配置されている。枠体3は、左右一対の縦枠部材(方立)31と、上枠部材32と、下枠部材(幅木)33とを含んで構成される。一対の縦枠部材31と上枠部材32と下枠部材33とは、それぞれ板状の金属材により中空状の断面形状に形成されている。
縦枠部材31は、開口部Oの幅方向の両端部に一対が配置され、上下方向に延在している。一対の縦枠部材31は、開閉扉2よりも屋外側に配置されている。一対の縦枠部材31は、幅方向において開口部Oの空間部分を挟んで対向する対向面31aを有している。上枠部材32は、開口部Oの上部に配置されている。下枠部材33は、開口部Oと隣接する壁部Wの下部において床面Fの上方に配置されている。上枠部材32および下枠部材33は、幅方向に延在している。一対の縦枠部材31の上端部と上枠部材32の両端部とは、開口部Oの内面側にて連結されている。また、一対の縦枠部材31の下端部と下枠部材33の一端部とは、連結されている。このように構成された枠体3は、全体として開口部Oに対応した形状である。
止水板4は、浸水時、屋外側からの水圧によって屋内側、すなわち、縦枠部材31に押圧されて押し付けられる。止水板4は、開口部Oの下部の領域を閉塞することが可能な幅および高さを有する直方体状である。止水板4は、防錆性を有する板状の金属材を加工してパネル状に形成されている。止水板4は、人が跨ぐことで開閉扉2を介して構造物Sの出入りが可能である。止水板4は、開口部Oの幅、すなわち、対向する縦枠部材31間の幅よりも大きな幅で、人が跨ぐことができる高さ、具体的には例えば、数10cmに設定されている。止水板4は、開口部Oの床面Fから数10cmの高さを閉塞し、浸水時に屋内側への水の浸入を防止する。この止水板4は、屋外側の床面Fに配置される。
また、止水板4は、持ち運び自在な重量であり、浸水時の水圧に耐え得る剛性を有している。止水板4は、より詳しくは、アルミを含む防錆性を有する軽量の金属板を断面形状がコの字型に加工して骨材とし、4つの骨材を組み合わせた四角形のフレームを有する。このフレームの正面および背面の開口部が四角形のパネルでそれぞれ閉塞されて、止水板4は、形成される。また、フレームとパネルとで囲われた内部の空間に充填剤を充填することで、止水板4は、軽量で剛性の高いものとなる。この止水板4は、浸水時、屋外側からの水圧によって屋内側、すなわち、縦枠部材31に押圧されて押し付けられる。
縦止水ゴム(第1止水部材)5は、図2ないし図4に示すように、止水板4の屋内側面(屋内側の側面)4aの幅方向の両端部に一対が配置されている。縦止水ゴム5は、屋内側面4aにおいて幅方向の端部に、止水板4の短手方向(高さ方向)全長に亘って配置されている。縦止水ゴム5は、図4に示すように、止水板4が枠体3に配置された状態で、止水板4と枠体3の縦枠部材31との間に介在する。このとき、縦止水ゴム5は、縦枠部材31に押圧されて弾性変形している。一対の縦止水ゴム5は、一対の縦枠部材31に密接している。このため、一対の縦止水ゴム5は、止水板4と一対の縦枠部材31の当接部との間を水が流れることを抑制する。すなわち、一対の縦止水ゴム5は、一対の縦枠部材31において屋外側から屋内側に水が浸入することを抑制する。
底面止水ゴム(第2止水部材)6は、図4に示すように、止水板4の床面Fと対向する面、すなわち、止水板4の底面に長手方向(幅方向)全長に亘って配置されている。底面止水ゴム6は、止水板4が枠体3に配置された状態で、止水板4と床面Fとの間に介在する。このとき、底面止水ゴム6は、床面Fに押圧されて弾性変形している。このため、底面止水ゴム6は、床面Fに密接している。このため、底面止水ゴム6は、止水板4と床面Fの当接部との間を水が流れることを抑制する。すなわち、底面止水ゴム6は、屋外側から屋内側に水が浸入することを抑制する。
押圧機構7は、図4に示すように、止水板4が床面Fに対して立位した状態(以下、「立位状態」という)において、止水板4を床面Fに押圧するものである。押圧機構7は、縦枠部材31に固定された後述する固定機構8と止水板4との間で幅方向周りに回転自在に支持されるものである。より詳しくは、押圧機構7は、固定機構8に対して幅方向周りに回転自在、かつ、止水板4に対して幅方向周りに回転自在に配置されている。押圧機構7は、枠部材31に対応して止水板4の幅方向における端部に一対が配置される。押圧機構7は、止水板4を床面Fに押圧することが可能な強度を有する、例えば、金属製である。押圧機構7は、後述する取付金具10に固定されている。押圧機構7は、当接部71と鍔部72と押圧部73と回転軸74とを備える。
当接部71は、止水板4の立位状態において、屋内側面4aに当接可能に構成されているものである。当接部71には、止水板4の立位状態において、止水板4を縦枠部材31に押圧する押圧力が作用する。また、当接部71は、図5に示すように、止水板4が床面Fに対して傾斜した状態(以下、「傾斜状態」という)において、屋内側面4aから離間するように構成されているものである。この当接部71は、幅方向視において、屋内側面4aと当接する側、すなわち、屋内外方向の屋外側が直線状に形成され、屋内側面4aと当接する側と反対側、すなわち、屋内外方向の屋内側が屋内側に凸な曲線状に形成された板材で形成されている。当接部71は、厚み方向が幅方向と一致して配置されている。当接部71は、止水板4の立位状態における上下方向の下部に貫通孔(不図示)が形成されている。この貫通孔は、幅方向に貫通している。貫通孔は、後述する回転軸74の軸部が回転自在に挿入されている。
鍔部72は、止水板4を傾斜状態から立位状態へする際に、ユーザーによって把持される部分である。鍔部72は、当接部71より屋内側に配置されている。鍔部72は、当接部71と一体に形成されている。本実施形態では、幅方向視において、鍔部72は、当接部71の曲線状の端面から幅方向に突設された板状に形成されている。鍔部72は、幅方向において当接部71より突出している。言い換えると、鍔部72は、当接部71に対してフランジ状に形成されている。これにより、鍔部72は、止水板4を傾斜状態から立位状態とする際に、止水板4の屋内側面4aと対向し、屋内側面4aより屋内側、かつ、当接部71に対して幅方向における少なくともいずれか一方の側に空間部Aを形成する。空間部Aは、止水板4が立位状態となった状態においても、止水板4の屋内側面4aと対向し、屋内側面4aより屋内側、かつ、当接部71に対して幅方向における少なくともいずれか一方の側に形成されている。空間部Aは、止水板4の配置時にユーザーが鍔部72を把持する際にユーザーの指先を位置させることができる程度の大きさを有する。
押圧部73は、止水板4の立位状態において、止水板4の上下方向の上端より上方に位置する。押圧部73は、当接部71および鍔部72と一体に形成されている。押圧部73は、止水板4の立位状態において、当接部71および鍔部72の上方に位置する。より詳しくは、押圧部73は、当接部71および鍔部72とともに幅方向視において略くの字形に形成されている。押圧部73は、止水板4の立位状態における上部、かつ、屋内側の端部にねじ孔(不図示)が形成されている。言い換えると、ねじ孔は、上記の略くの字形の形状の曲げ部近傍に形成されている。このねじ孔は、幅方向に貫通している。ねじ孔は、後述するノブ85の軸部85aが螺合可能である。押圧部73は、後述する保持機構9を係止するアーム受具73aが配置されている。アーム受具73aが保持機構9と係止することによって、アーム受具73aは、止水板4の姿勢を起立状態に保持するようになっている。より詳しくは、押圧部73が保持機構9と係止すると、枠部材31に固定された固定機構8と止水板4との間における回転が規制されて、押圧機構7の姿勢が固定される。
回転軸74は、押圧機構7を止水板4の屋内側面4aに対して幅方向周りに回転自在とする回転軸である。この回転軸74により、当接部71を有する押圧機構7は、止水板4に対して幅方向周りに回転自在に配置されている。
固定機構8は、一対の押圧機構7に対して幅方向周りに回転自在に支持され、一対の枠部材31に着脱自在にそれぞれ固定されるものである。本実施形態における固定機構8は、止水板4に対して幅方向における位置を変化させることで、枠部材31の幅方向において対向する対向面31a(図4,図5参照)にそれぞれ接触するとともに、対向面31aを幅方向外側にそれぞれ押圧することで、枠部材31にそれぞれ固定される。固定機構8は、接触部材81と第1緩衝部材82と第2緩衝部材83と支持部材84とノブ85とを備える。
接触部材81は、枠部材31に接触するものである。本実施形態における接触部材81は、上下方向視においてL字型の板材で形成されている。接触部材81は、対向面31aと屋外側面31bと接触する。接触部材81は、幅方向において枠部材31をそれぞれ押圧することが可能な強度を有する、例えば、金属製である。
第1緩衝部材82は、接触部材81の対向面31aと対向する部分に配置される。第1緩衝部材82は、接触部材81と対向面31aとの間に介在する。第1緩衝部材82は、接触部材81が枠部材31と直接接触することで、枠部材31が損傷することを抑制するものである。第1緩衝部材82は、例えば、弾性変形が小さい硬質ゴムなどにより構成されている。
第2緩衝部材83は、接触部材81の屋外側面31bと対向する部分に配置される。第2緩衝部材83は、接触部材81と屋外側面31bとの間に介在する。第2緩衝部材83は、接触部材81が枠部材31と直接接触することで、枠部材31が損傷することを抑制するものである。第2緩衝部材83は、例えば、弾性変形が小さい硬質ゴムなどにより構成されている。
支持部材84は、接触部材81の幅方向において対向面31a側と反対側に取り付けられている。支持部材84は、屋内外方向視において、幅方向において接触部材81側と反対側に向かって突出する凸型状に形成されており、接触部材81との間で空間部84aが形成されている。支持部材84は、板厚方向に貫通し、空間部84aと連通する挿入孔(不図示)が形成されている。
ノブ85は、接触部材81を幅方向周りに回転自在に支持するものである。ノブ85は、軸部85aと把持部85bとを有する。軸部85aは、棒状であり、外周面に雄ねじが形成されている。軸部85aの幅方向における両端部のうち、一方の端部、すなわち先端部が支持部材84の挿入孔に挿入され、他方の端部が把持部85bに固定されている。軸部85aは、押圧部73のねじ孔に、先端部が幅方向における外側、すなわち枠部材31と対向するように螺合されている。ノブ85は、幅方向周りに回転することで、押圧部73に対する幅方向における位置が変化する。つまり、ノブ85は、幅方向周りに回転しなければ、押圧部73に対する幅方向における位置は変化しない。軸部85aは、支持部材84の空間部84aに位置している先端部に抜け止め部材85c(図6参照)が取り付けられている。つまり、ノブ85は、接触部材81を幅方向周りに回転自在に支持された状態で、接触部材81から先端部が抜けることが規制されている。これらにより、固定機構8は、押圧機構7に対して、幅方向周りに回転自在に支持され、枠部材31に着脱自在にそれぞれ固定される。把持部85bは、軸部85aを幅方向周りに回転させるものであり、ユーザーが把持するものである。把持部85bは、軸部85aよりも大きな外径で形成されている。なお、把持部85bは、ユーザーによる把持を容易とするために、外周面に凹凸が形成されていてもよい。
保持機構9は、一対の枠部材31に対する止水板4の位置関係を保持するものである。より詳しくは、保持機構9は、止水板4を立位状態で保持することで、枠部材31に対する止水板4の位置関係を保持するものである。本実施形態における保持機構9は、押圧機構7にそれぞれ対応して一対設けられており、上下方向視において、止水板4と押圧機構7の当接部71との間の屋内外方向における距離が広がることを規制するものである。保持機構9は、後述する取付金具10に固定されている。保持機構9は、止水板4に対して押圧機構7と反対側、すなわち、屋外側面4bに取り付けられている。保持機構9は、レバー91とアーム92とを備える、いわゆるパチン錠である。
レバー91は、アーム92を幅方向周りに回転自在としたり、アーム92を押圧機構7に係止した状態で保持したりするものである。レバー91は、固定部と可動部とを備えている。固定部は、後述する取付金具10に固定されている。可動部は、第1回動軸91aによって固定部に対して幅方向周りに回転自在に支持されている。
アーム92は、押圧機構7に係止するものである。本実施形態におけるアーム92は、アーム受具73aに係止するものである。アーム92は、上下方向視において、屋内外方向に延在する略矩形状部材であり、屋内外方向における一方の端部に支持孔(不図示)が形成されている。支持孔は、幅方向に形成された貫通孔であり、第2回転軸92aが幅方向周りに回転自在に挿入されるものである。第2回転軸92aがレバー91の固定部に幅方向に平行に固定されているので、アーム92は、止水板4に対して幅方向周りに回転自在に支持されている。
取付金具10は、押圧機構7と保持機構9とが組み付けられている金具である。取付金具10は、矩形状の板材を、止水板4を板厚方向に挟持可能なコの字状に曲げ加工して形成されている。取付金具10において止水板4の屋内側面4aと対向する面10aには、押圧機構7が組み付けられている。取付金具10において止水板4の屋外側面4bと対向する面10bには、保持機構9が組み付けられている。取付金具10の面10a,10bには、板厚方向に貫通する貫通孔が対向して形成されている。取付金具10は、止水板4を挟持した状態で締結部材11によって止水板4に固定されている。
締結部材11は、止水板4の屋内側面4a,屋外側面4bをそれぞれ板厚方向に貫通して形成された貫通孔および取付金具10の面10a,10bに形成された貫通孔を貫通した状態で締結されている。このように締結部材11を締結することにより、取付金具10が止水板4に取り付けられる。
位置決め部材12は、図1に示すように、止水板4の立位状態において、止水板4の下部を一対の縦枠部材31に固定するものである。具体的に、位置決め部材12は、一対の枠部材31に対して突っ張らせることで、止水板4を枠部材31に対して固定するものである。位置決め部材12は、止水板4の幅方向の両端部に対応して一対設けられている。位置決め部材12は、屋内側面4aの幅方向の両端部、かつ、上下方向の下部に配置されている。
上記のように構成される止水装置1の使用方法について説明する。開口部Oに止水板4を配置する際、ユーザーは、保管場所から止水板4を運搬する。
ユーザーは、開口部Oにおける止水板4の配置位置に、屋外側から止水板4を載置する。具体的に、ユーザーは、底面止水ゴム6を止水板4の配置位置、すなわち、止水板4の幅方向における端部が一対の縦枠部材31と当接する位置に合わせて、止水板4を傾斜状態とする。このとき、ユーザーは、縦止水ゴム5の両方の下端部が枠部材31に密接するように、止水板4の下端部を枠部材31に押し当てながら床面Fに置くようにする。また、このとき、保持機構9のアーム92は、押圧機構7のアーム受具73aとの係合が解除されている。
そして、ユーザーは、止水板4を把持して傾斜状態を維持したまま、固定機構8を一対の枠部材31に固定する。具体的に、ユーザーは、一対の接触部材81を、それぞれ順番に枠部材31の対向面31aおよび屋外側面31bに第1緩衝部材82および第2緩衝部材83を介して当接させる。そして、ユーザーは、把持部85bを把持してノブ85を幅方向周りに回転させて一対の接触部材81が一対の枠部材31を幅方向における外側に押圧するようにする。このようにして、図5に示すように、一対の接触部材81を一対の枠部材31に対して突っ張らせることで、接触部材81を枠部材31に対して固定する。固定機構8が枠部材31に固定されると、止水板4は、ユーザーが支持しなくても傾斜状態を維持する。このとき、止水装置1を幅方向視において、軸部85aと回転軸74と止水板4および床面Fの接地点を結ぶ線がくの字状となる。
そして、ユーザーは、一方の手で屋外側から止水板4を床面Fおよび縦枠部材31に押圧しながら、止水板4を傾斜状態から立位状態とする。このとき、例えば、ユーザーは、屋内側から止水板4を支持するために他方の手で屋内側から押圧機構7の鍔部72を把持して空間部Aに指先を位置させてもよい。この空間部Aは、止水板4を傾斜状態から立位状態とする際に、止水板4の屋内側面4aと対向し、屋内側面4aより屋内側、かつ、当接部71に対して幅方向における少なくともいずれか一方の側に形成されている。このため、止水板4を傾斜状態から立位状態とする際であっても、ユーザーは、指先を空間部Aに位置させておけば、当接部71と止水板4との間に指先が位置することが回避される。また、鍔部72は幅方向において当接部71より突設され、当接部71に対してフランジ状に形成されている。このため、当接部71をユーザーが屋内側から把持しようとしても、ユーザーの手は、当接部71より先に鍔部72に接触する。このように、鍔部72がユーザーの把持し易いフランジ状に形成されているため、止水板4を傾斜状態から立位状態とする際に、ユーザーが不用意に当接部71を把持することが抑制され、当接部71と止水板4との間に指先が位置することが抑制される。
また、止水板4が傾斜状態から立位状態となるとき、止水板4の上下方向における上部は、固定機構8の中心、すなわち軸部85aを中心に回転する。止水板4の上下方向における上部の回転中心は、枠部材31に対する相対移動を行えない軸部85aであるため、回転軸74の軌跡により、枠部材31に近づきながら、上下方向のうち下方に移動する。従って、底面止水ゴム6には、下方の押圧力が作用し、弾性変形する。つまり、底面止水ゴム6は、止水板4が傾斜状態から立位状態となることで、止水板4により床面Fに押圧されて床面Fと密接する。また、縦止水ゴム5は、止水板4が傾斜状態から立位状態となることで、枠部材31とそれぞれ密接する。
そして、ユーザーは、止水板4が立位状態となったら、保持機構9のアーム92をアーム受具73aに係止させる。そして、ユーザーは、レバー91の可動部の下部側を下方に押し下げて固定部と重ねた状態で、アーム92をアーム受具73aに係止させた状態で保持する。このようにして、止水板4は、開口部Oに配置される。これにより、縦止水ゴム5により枠部材31と止水板4との間を止水し、底面止水ゴム6により床面Fと止水板4との間を止水する。
なお、2人のユーザーによって、開口部Oに止水板4を配置してもよい。具体的には、2人のユーザーは、保管場所から止水板4の幅方向をそれぞれ把持して運搬して、開口部Oにおける止水板4の配置位置に、屋外側から止水板4を載置する。そして、例えば、一方のユーザーが止水板4の幅方向の中央部を支持した状態で、他方のユーザーが固定機構8を一対の枠部材31に固定する。そして、一方のユーザーが屋外側から止水板4を床面Fおよび縦枠部材31に押圧しながら、止水板4を傾斜状態から立位状態とする。このとき、他方のユーザーは、屋内側から止水板4を支持するために屋内側から押圧機構7の鍔部72を把持して空間部Aに指先を位置させる。このようにして、2人のユーザーによって、止水板4は、開口部Oに配置される。
開口部Oに配置された止水板4を取り外す際、ユーザーは、一方の手で止水板4を把持した状態で、他方の手でノブ85を緩める。そして、ユーザーは、固定機構8を縦枠部材31から取り外し、止水板4を開口部Oから取り外す。このときも、例えば、ユーザーは、他方の手で屋内側から鍔部72を把持してもよい。そして、ユーザーは、止水板4を保管場所まで運搬して収納する。このようにして、開口部Oに配置された止水板4は、取り外される。
以上で説明した実施形態に係る止水装置1は、押圧機構7に鍔部72が形成されているので、止水板4の屋内側面4aと対向し、屋内側面4aより屋内側、かつ、当接部71に対して幅方向における少なくともいずれか一方の側に空間部Aが形成されている。このため、例えば、止水板4を傾斜状態から立位状態とする際に、ユーザーは、屋内側から他方の手で鍔部72を把持して空間部Aに指先を位置させることができる。このように、止水板4を傾斜状態から立位状態とする際であっても、ユーザーは、指先を空間部Aに位置させておけば、当接部71と止水板4との間に指先が位置することを回避できる。また、鍔部72は幅方向において当接部71より突設され、当接部71に対してフランジ状に形成されている。このため、当接部71をユーザーが屋内側から把持しようとしても、ユーザーの手は、当接部71より先に鍔部72に接触する。このように、鍔部72がユーザーの把持し易いフランジ状に形成されているため、止水板4を傾斜状態から立位状態とする際に、ユーザーが不用意に当接部71を把持することが抑制され、当接部71と止水板4との間に指先が位置することが抑制される。しかも、本実施形態において、空間部Aは、当接部71に対して幅方向の両側に形成されているので、ユーザーは、空間部Aの位置を意識する必要がない。
これに対して、押圧機構7に鍔部72が形成されていない場合や、当接部71と鍔部72とが幅方向において同じ幅に形成されている場合について説明する。この場合は、止水板4の屋内側面4aと対向し、屋内側面4aより屋内側、かつ、当接部71に対して幅方向における少なくともいずれか一方の側に空間部Aが形成されていない。このため、止水板4を傾斜状態から立位状態とするときに、ユーザーが屋内側から止水板4を支持するために押圧機構7を把持すると、ユーザーの指先は、当接部71と止水板4との間に位置し易い状態となる。すなわち、ユーザーは、指先が当接部71と止水板4との間に位置しないように注意を払う必要があり、作業性が悪化するおそれがある。
止水装置1は、押圧機構7に鍔部72が形成され、空間部Aが形成されているので、ユーザーは、鍔部72を視認することで、当接部71と止水板4との間に指先を位置させないように注意することができる。
また、止水装置1は、止水板4の配置、取り外しに工具を必要とせず、短時間で容易に配置、取り外しができる。
上記実施形態において、押圧機構7と固定機構8と保持機構9との構成を説明したが、押圧機構7と固定機構8と保持機構9との構成は、これに限定されない。すなわち、押圧機構は、止水板4の屋内側面4aに対して、幅方向周りに回転自在に支持され、一対の枠部材31にそれぞれ対応して一対が設けられるものであればよい。また、固定機構は、一対の押圧機構に対して、幅方向周りに回転自在に支持され、一対の枠部材31に着脱自在にそれぞれ固定されるものであればよい。さらにまた、保持機構は、一対の枠部材31に対する止水板4の位置関係を保持するものであればよい。
また、止水装置1を開閉扉2が配置される開口部Oに配置するものとして説明したが、開閉扉2は止水板4と接触しないため、開閉扉2が配置されない開口部Oであっても止水装置1を適用することができる。
また、縦止水ゴム5は、短手方向(高さ方向)全長に亘って配置されているものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、止水装置1が適用される場所の予測浸水時水位よりも高くなればよい。すなわち、縦止水ゴム5は、止水板4の底面から予測浸水時水位+αの高さまで配置されていればよい。
なお、上述した本発明の実施形態に係る止水装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る止水装置は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。