JP6573409B2 - 調味液 - Google Patents
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しかしながら、これらはいずれもスープに関する技術であって、水で煮出すことを前提としている技術である。そして、水で煮出す場合と異なり、調味液で煮出す場合は、焦げ付きなどの別の問題が生じるので、煮出し条件は全く異なるものであり、格別の創意工夫が必要である。したがって、これら従来技術は、水に代えて、調味液で煮出すことについて何らの示唆を与えるものでなく、ましてや、本発明の炊き出し条件について全く示唆を与えるものではない。よって、本発明とは、本質的に無関係である。
以上のとおり、調理感や焼成感のある、香ばしい香りと旨味が付与された調味液を誰でも簡単に製造できる方法はこれまで知られていなかった。
さらに、本発明の好ましい一態様によれば、塩分が8〜15質量%であり、フェニルアラニンの含量が200mg/100ml以上であり、バリンの含量が255mg/100ml以上であり、かつ、アラニンの含量が460mg/100ml以上である、前記調味液を提供することができる。
さらに、本発明の好ましい一態様によれば、塩分が8〜15質量%であり、イソロイシンの含量が220mg/100ml以上であり、バリンの含量が220mg/100ml以上であり、リジンの含量が200mg/100ml以上であり、かつ、アラニンの含量が400mg/100ml以上である、前記調味液を提供することができる。
また、本発明の調味液は、焼成した動植物性のガラを使用して製造するので、生の動物性ガラを使用して製造した調味液に比べて、調味液中のアミノ酸組成(すなわち、調理感や焼成感に必要なアミノ酸の含量)が向上し、全体的に香ばしい香りや旨味が付与された調味液(実施例)を提供することができる。
本発明の一態様である、動植物性ガラを焼成する工程と、前記焼成された動植物性ガラと炊き出し用溶液とを一緒に炊き出す工程とを含む、香ばしい香りと旨味が付与された調味液の製造方法について、以下詳しく説明する。
本発明の「動植物性ガラ」とは、動物から畜肉を取り去った後の骨、植物から通常食する部分を取り去った後の残り等を総称したものであり、具体的には、鶏肉を取り去った後の骨である鶏ガラ、豚肉を取り去った後の骨である豚ガラ、野菜から食する部分を取り去った後の野菜ガラ等が挙げられる。そして、本発明においては、これら鶏ガラ、豚ガラおよび野菜ガラからなる群から選択される1種もしくは2種以上の動植物性ガラを用いることが好ましい。なお、本発明の動植物性ガラは生のまま購入もしくは準備されることが多いが、事前に、煮る、蒸す等の処理を行ってもよい。
上述したような動植物性ガラを購入もしくは準備し、これを焼成する工程である。より詳細には、所要の量の動植物性ガラを焼き網、鉄板等の上に載せ、例えば、200℃以上の温度で、直火、スチーム、電気ヒーター(IH、ハロゲン、シーズー等)などの熱源を用いて焼成を行う。焼成を行う際には、ジェットオーブン等のスチームオーブンで予備加熱を行い、動植物性ガラの温度を上げて、その表面を熱変性させ、次いで、シュバンクバーナー等の赤外線バーナーで焦げ目をつけることが好ましい。このように熱源による予備加熱と焦げ目付けとを併せて、上記焼成する工程が構成されることもある。
焼成時の温度としては特に制限されないが、焼成温度としては、200〜400℃であることが好ましく、250〜350℃であることがより好ましく、280〜320℃であることがさらに好ましい。また、焼成時間としては、どのような熱源を用いるか等にもよるので特に制限されないが、例えば、0.5〜30分であることが好ましく、1〜15分であることがより好ましく、2〜10分であることがさらに好ましい。
上述のように動植物性ガラを焼成することによって、余分な水分や脂肪分を減少させ、生の動植物性ガラが持つ独特の臭みを除去することができる。また、生の動植物性ガラを用いる場合と比較して、調味液における灰汁や臭みの発生を抑制することができる。さらに、その後の炊き出す工程において、旨味成分であるアミノ酸の抽出を効率良く行うことができる。また、焼成時の動植物性ガラに程よく焦げ目をつけることで、焼成感ないし香ばしい香りを調味液に付与することができる。
なお、焼成処理が終了した後は、できるだけ早く次の炊き出す工程へ移すことが好ましいが、場合によっては、焼成機から焼き網、鉄板等と一緒に焼成した動植物性ガラを取りだして、適宜放熱し冷却してもよい。冷却温度は任意であるが室温(20℃)でよく、冷却時間も特に制限はないが、15〜60分程度放熱し冷却すればよい。放熱後の焼成された動植物性ガラを箱詰めし、適宜、冷蔵庫等で保存しておけば、次回の製造時に使用することができる。
本発明の炊き出し用溶液としては、液体状又は半固体状(ペースト状)の調味料に該当するものであれば特に制限されない。例えば、醤油、たまり醤油などの醤油系、醸造酢、合成酢などの酢系、味噌、白味噌などの味噌系、酒みりんなどの酒系、動物脂、植物脂などの油系、ウスターソース、とんかつソースなどのソース系、だし、ブイヨンなどの旨味系、コンソメ、クリームソースなどの西洋料理のソース系、練りごま、ココナッツミルクなどの具材のペースト物、粉砕物又は粉末に関する調味料を挙げることができる。炊き出し用溶液として、これらの調味料を単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも特に醤油系の調味料が炊き出し用溶液として最も好ましく、醤油系の調味料の具体例としては、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、白醤油、再仕込み醤油などが挙げられる。
上述で定義した炊き出し用溶液を購入もしくは用意し、これを前述の焼成された動植物性ガラと一緒に炊き出す工程である。より詳細には、所要の量の焼成された動植物性ガラを、炊き出し用溶液を収容した鍋ないし釜の中に入れて、適度な温度で調味液と一緒に炊き出せば、焼成された動植物性ガラに由来する香ばしい香りと旨味が付与された調味液を製造することができる。
焼成された動植物性ガラに対する炊き出し用溶液の割合としては、焼成された動植物性ガラを100質量%とした場合、炊き出し用溶液は100〜1000質量%であることが好ましく、200〜800質量%であることがより好ましく、300〜600質量%であることがさらに好ましい。
炊き出し温度としては、例えば、80〜130℃であることが好ましく、85〜125℃であることがより好ましく、90〜120℃であることがさらに好ましい。また、炊き出し時間としては、例えば、60〜360分であることが好ましく、100〜300分であることがより好ましく、150〜200分であることがさらに好ましい。
本発明では、上述した特定の条件(温度条件及び時間条件)で、アミノ酸や糖質を含む液体状又は半固体状(ペースト状)の炊き出し用溶液と一緒に焼成した動植物性ガラを炊き出すことにより、熟成感や一体感を付与した調味液を製造することができる。また、上述のような特定の条件を採用することにより、焼成ガラの香りや旨味を抽出する媒体として、焦げ付きやすい炊き出し用溶液を用いても焦げつかず、かつ、焼成された動植物性ガラの旨味を十分に抽出することができる。
なお、炊き出す工程が終了した後、焼成された動植物性ガラと炊き出し用溶液とをそのまま放置して、適宜放熱させ冷却してもよい。また、冷却温度は特に制限されないが、室温(20℃)でよく、冷却時間も任意であるが、30〜120分程度放熱して冷却する。
本発明の調味液としては、炊き出し工程後の調味液をそのまま流通に付してもよいが、この炊き出し後の調味液をベースとして、さらに必要なその他の原材料を加えて、特定の使用用途に適した調味液に加工しても構わない。すなわち、例えば、豚丼、焼き鳥、ジンギスカンなど、各種料理に適する調味液へ加工するために、本発明の製造方法は、その他の原材料を加える工程をさらに有していても構わない。その他の原材料しては、一般的に調味液に配合される原材料であれば特に制限されず、使用することができる。例えば、肉類、野菜類、キノコ類、卵類、穀粉類、澱粉類などの食品類に加えて、上述した液体状又は半固体状(ペースト状)の調味料のほか、食塩、岩塩などの塩分系、砂糖、デキストリンなどの甘味料系、胡椒、スパイスなどの香辛料系、ハーブ、ミントなどのハーブ系のような固形状の調味料を含み、野菜、魚貝、畜肉エキスなどのエキス類、フレーバー類、脱脂粉乳などの乳製品、食物繊維、乳化剤、酸化防止剤、増粘剤、ミネラル、酵素、香料、色素などを挙げることができる。そして、これらその他の原材料を1種又は2種以上組み合わせて適宜使用することができる。上記その他の原材料を加える方法として、従来公知の方法で構わない。
本発明は、さらに上述のごとき製造方法で製造された、焼成された動植物性ガラから抽出された成分を含む調味液自体にも関する。
本発明の調味液はBrix値で規定することができる。本発明においてBrix値(糖度)は、品温20℃における屈折率を測定し、純蔗糖溶液(サッカロース)の質量/質量パーセントに換算した値を意味する。Brix値の測定は、一般に市販されている糖度計を用いて行えばよく、例えば、市販のデジタル糖度計を好適に使用することができる。本発明の調味液のBrix値は、20〜40であることが好ましく、25〜35であることがより好ましく、28〜32であることがさらに好ましい。
また、本発明の調味液はpHで規定することができる。本発明の調味液のpHは、4.0〜6.0であることが好ましく、4.5〜5.5であることがより好ましく、4.7〜5.0であることがさらに好ましい。
さらに、本発明の調味液は塩分で規定することができる。本発明の調味液の塩分は、8〜15質量%であることが好ましく、9〜13質量%であることがより好ましく、10〜12質量%であることがさらに好ましい。
Brix値、pH及び/又は塩分を調整する方法としては、上述した数値範囲に入るような炊き出し用溶液を製造することが挙げられる。より具合的には、液体状又は半固体状(ペースト状)の調味料に水等を適宜加えて調整すればよい。
後述するように、焼成された動植物性ガラを使用した調味液は、生の動植物性ガラを使用した調味液よりも好ましいアミノ酸組成を構成していると考えられる。したがって、本発明の調味液は、例えば、フェニルアラニン、バリン及びアラニンの含量によっても規定することができる。
すなわち、本発明の調味液のフェニルアラニンの含量が、200mg/100ml以上であることが好ましく、210mg/100ml以上であることがより好ましく、220mg/100ml以上であることがさらに好ましい。また、本発明の調味液のバリンの含量は、255mg/100ml以上であることが好ましく、260mg/100ml以上であることがより好ましく、270mg/100ml以上であることがさらに好ましい。さらに、本発明の調味液のアラニンの含量は、460mg/100ml以上であることが好ましく、470mg/100ml以上であることがより好ましく、480mg/100ml以上であることがさらに好ましい。
上述のような数値範囲にあると、生の動植物性ガラを使用して炊き出した調味液よりも調理感や焼成感があるものが得られる。
アミノ酸含量を調整する方法としては、上述した数値範囲となるような炊き出し用溶液を製造することが挙げられる。また、炊き出し時間や炊き出し温度を適宜調整することも挙げられる。
すなわち、本発明の調味液のイソロインの含量が、220mg/100ml以上であることが好ましく、230mg/100ml以上であることがより好ましく、240mg/100ml以上であることがさらに好ましい。また、本発明の調味液のバリンの含量は、220mg/100ml以上であることが好ましく、230mg/100ml以上であることがより好ましく、240mg/100ml以上であることがさらに好ましい。さらに、本発明の調味液のリジンの含量は、200mg/100ml以上であることが好ましく、210mg/100ml以上であることがより好ましく、220mg/100ml以上であることがさらに好ましい。加えて、本発明の調味液のアラニンの含量は、400mg/100ml以上であることが好ましく、420mg/100ml以上であることがより好ましく、440mg/100ml以上であることがさらに好ましい。
バリンは、必須アミノ酸の一種で、筋肉を強化したり、疲労回復効果がある。レバーや子牛肉などの肉類、脱脂粉乳やプロセスチーズ、落花生に多く含まれている。バリンは体内で合成することができない必須アミノ酸である。また、成長を促進したり、血液の中にある窒素のバランスを調整する効果がある。バリンはロイシン、イソロイシンとともにBCAAと呼ばれ、運動時のエネルギー補給としてスポーツサプリメントなどに配合されている。
アラニンは、肝機能を強化し、アルコールの分解を促進するアミノ酸の一種である。また運動時のエネルギー源であるグルコースを生成するため、長時間の運動時に必要な成分である。牛や豚のレバーなどのほか、しじみやあさりなどの貝類にも多く含まれている。
イソロイシンは、必須アミノ酸の一種で、筋肉を強化したり、疲労を回復させる効果がある。鶏肉やサケ、プロセスチーズ、牛乳などに多く含まれている。イソロイシンは、バリン、ロイシンとともにBCAAと呼ばれ、運動時のエネルギー補給としてスポーツサプリメントなどに配合されている。
リジンは、必須アミノ酸のひとつで、人体を構成するたんぱく質の組み立てに必要な栄養素である。穀類には余り多く含まれていないため、肉類や魚介類、牛乳やチーズなどの乳製品、納豆や豆腐などの大豆製品、豆類からの摂取が基本となる。ブドウ糖の代謝を良くして集中力を高めたり、カルシウムなどの吸収を促進するほか、肝臓機能の強化などの効果が確認されている。
調味液の原料として、豚ガラ2kgを用意し、これらを鉄板の上に万遍なく並べて置き、ジェットオーブン(スチーム)に入れて300℃で4分間加熱した。続いてシュバンクバーナーで2分間焼成した(ここまでが焼成工程)。焼成するにつれて、徐々に豚ガラに焦げ目がつき、香ばしい香りが出てきた。焼成後の豚ガラを目視により観察すると、豚ガラ全体に対する焦げ目の付いた焼成ガラの割合は50%であった。次に、少量の水を含む10kgの濃口醤油(醤油の割合80%、炊き出し用溶液に相当)を準備し、これを寸胴鍋の中に投入した。次いで、これに上記のように焼成した豚ガラを入れて火にかけ、120℃の温度で180分間炊き出した。得られた焼きガラ醤油(本発明の調味液に相当)を熟練した5名のパネラーにより味覚試験を行った。その結果、全員とも、調理感や焼成感があり、香ばしい香りと旨味が付与された調味液であると評価した。以上の結果を表1にまとめた。
調味液の原料として、豚ガラ2kgを用意した。実施例1と異なり、上述の焼成工程は行わなかった。少量の水を含む10kgの濃口醤油(醤油の割合80%、炊き出し用溶液に相当)を準備し、これを寸胴鍋の中に投入した。次いで、これに上記した生のままの豚ガラを入れて火にかけ、120℃の温度で180分間炊き出した。得られたガラ醤油を熟練した5名のパネラーにより味覚試験を行った。その結果、全員とも、調理感や焼成感は少なく、実施例1に比べて香ばしい香りや旨味に乏しい調味液であると評価した。その結果を表1にまとめた。
なお、生ガラで炊き出したガラ醤油(比較例1)は、醤油に比べて、イソロイシン、バリン、リジン及びアラニンにおいて明らかに増加していた。したがって、比較例1の生のガラ醤油よりもアミノ酸含量が増加している、実施例1の焼成ガラ醤油は、これらのアミノ酸において醤油よりも味の決め手となるアミノ酸含量が増加していることは明白である。ここで、イソロイシン、バリン及びリジンは苦味に関係するが、アラニンは甘味に関係する。これらのアミノ酸において増加がみられたので、苦味、甘味が向上しており、醤油よりも、全体的に香ばしい香りと旨味が向上していることがデータによっても裏付けされた。このように、動植物性ガラを焼成する工程を経ることで、最終的に調味液に含まれるアミノ酸含量を変化させることができることは、本発明の重要な特徴の1つである。
調味液の原料として、鶏ガラ2kgを用意し、これらを鉄板の上に万遍なく並べて置き、ジェットオーブン(スチーム)に入れて300℃で4分間加熱した。続いてシュバンクバーナーで300℃で2.5分間焼成した(ここまでが焼成工程)。焼成するにつれて、徐々に鶏ガラに焦げ目がつき、香ばしい香りが出てきた。焼成後、鉄板上に並べられた鶏ガラ全体を目視により観察すると、全鶏ガラ中に焦げ目の付いた焼成鶏ガラの割合は50%であった。次に、少量の水を含む10kgの濃口醤油(醤油の割合83.3%、炊き出し用溶液に相当)を準備し、これを寸胴鍋の中に投入した。次いで、これに上記のようにして得られた焼成鶏ガラを入れて火にかけ、120℃の温度で180分間炊き出した。このようにして得られた焼き鶏ガラ醤油(本発明の調味液に相当)を熟練した5名のパネラーにより味覚試験を実施した。その結果、全員とも、調理感や焼成感があり、香ばしい香りと旨味が付与された調味液であると評価した。
以上のように、調味液の原料を豚ガラから鶏ガラに代えても同様に、香ばしい香りと旨味が付与された焼きガラ醤油を製造することができた。その結果を表1にまとめた。
Claims (3)
- 焼成した動植物性ガラ(但し、焙乾処理されたものを除く)から抽出された成分を含む醤油系の調味液であって、前記醤油系の調味液は、前記焼成した動植物性ガラと醤油系の調味料とを一緒に炊き出してなる調味液であり、Brix値が20〜40であり、かつ、pHが4.0〜6.0である、前記調味液。
- さらに、塩分が8〜15質量%であり、フェニルアラニンの含量が200mg/100ml以上であり、バリンの含量が255mg/100ml以上であり、かつ、アラニンの含量460mg/100ml以上である、請求項1に記載の調味液。
- さらに、塩分が8〜15質量%であり、イソロイシンの含量が220mg/100ml以上であり、バリンの含量が220mg/100ml以上であり、リジンの含量が200mg/100ml以上であり、かつ、アラニンの含量400mg/100ml以上である、請求項1に記載の調味液。
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