JP6572706B2 - 耐候性鋼材の製造方法 - Google Patents
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Description
錆層の形成を促進する方法としては、例えば、特許文献1、2に記載の方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載した方法によって得られる錆層の外観と、実際の大気暴露によって経年変化する錆層の外観との相関関係について、特許文献1、2には何ら評価されていない。すなわち、特許文献1、2には、所定の暴露期間の大気暴露を実際に行った場合に得られる錆層の外観と同等の外観を得るには、錆層の形成をどの程度促進させれば良いのかを評価し得る方法が何ら提案されていない。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、耐候性鋼材の表面における錆層の形成を促進する処理を施す促進処理工程と、前記促進処理工程を経た耐候性鋼材の表面に形成された錆層の外観を評価する評価工程とを含み、前記評価工程は、前記耐候性鋼材の表面において、L*a*b*表色系の色度a*又はL*C*h表色系の彩度C*を測定パラメータとして測定する測定工程と、前記測定工程で測定した測定パラメータと、予め取得した前記測定パラメータと実際の暴露期間との相関関係とに基づき、前記耐候性鋼材の暴露相当期間を算出する算出工程とを含み、前記評価工程の前記算出工程において算出した暴露相当期間が、所望する暴露期間と同等になるまで、前記促進処理工程及び前記評価工程を繰り返し実行することを特徴とする耐候性鋼材の製造方法を提供する。
また、本発明において、「算出した暴露相当期間が、所望する暴露期間と同等になる」とは、両期間が同一になる場合に限るものではなく、両期間の差が予め定めた所定の値以下になることを意味する。
さらに、本発明において、算出した暴露相当期間と所望する暴露期間との差を小さくするには、促進処理工程を1回実行した後毎に評価工程を実行することが好ましい。しかしながら、本発明は、これに限るものではなく、例えば、所望する暴露期間が長い場合(促進処理工程の回数を大きくしなければ、暴露相当期間が所望する暴露期間と同等にならない場合)には、評価工程を実行する手間を軽減するために、促進処理工程を複数回実行した後毎に評価工程を実行することも可能である。この場合、上記の「複数回」は必ずしも一定の値にする必要は無く、暴露相当期間が所望する暴露期間に近づくまでは大きな値にすることで、評価工程を実行する手間を軽減する一方、暴露相当期間が所望する暴露期間に近づいてからは、算出した暴露相当期間と所望する暴露期間との差を小さくし易いように、「複数回」を小さな値にすることも考えられる。
この場合、耐候性鋼材試料としては、その母材(錆層を除く部分)が、本発明によって製造する耐候性鋼材の母材と同種の組成である鋼材試料を用いることが好ましい。
T=(K1・A)−K2 ・・・(1)
本発明者らは、所望する暴露期間を経た錆層の外観と同等の外観を有する錆層を安定して形成可能な耐候性鋼材の製造方法を提供するという課題を解決するために鋭意検討した結果、実際に大気暴露された耐候性鋼材の暴露期間と、耐候性鋼材の表面(耐候性鋼材の表面に形成された錆層)において測色計で測定したL*a*b*表色系の色度a*又はL*C*h表色系の彩度C*との間に良好な相関関係があることを見出した。
そして、前記用意した複数の耐候性鋼材試料の表面において、測色計を用いてL*a*b*表色系の色度a*、b*、明度L*及びL*C*h表色系の彩度C*の4つの測定パラメータを測定した。具体的には、コニカミノルタ製食品用測色計「カラーリーダーCR13」(測定視野:約φ8mm)を用いて各耐候性鋼材試料の表面3箇所の色度a*、b*、明度L*を測定すると共に、測定した色度a*、b*からC*=((a*)2+(b*)2)1/2の計算式によって彩度C*を算出して、耐候性鋼材試料毎に各測定パラメータの平均値を求めた。
図1から明らかなように、実際の暴露期間と、色度a*又は彩度C*との間には良好な相関関係があることが分かった。そして、この相関関係は、色度a*又は彩度C*をAとし、実際の暴露期間をT(年)とし、K1及びK2を正の定数としたときに、以下の式(1)で表わしたときに最も精度良く近似されることが分かった。
T=(K1・A)−K2 ・・・(1)
色度a*については、上記式(1)のK1=0.1077、K2=2.41であり、彩度C*については、上記式(1)のK1=0.0848、K2=2.604であった。
本発明は、上記本発明者らの知見に基づき完成したものである。
図2は、本発明の一実施形態に係る耐候性鋼材の製造方法を説明するフロー図である。
図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、促進処理工程S1と、評価工程S2とを含んでいる。
具体的には、本実施形態の促進処理工程S1は、最初に実行するときには耐候性鋼材の表面に処理液を塗布して乾燥させ、2回目以降に実行するときには耐候性鋼材の表面に水を散布して乾燥させる工程であり、前記処理液は、Cu及びPと、LiCl、MgCl2及びCaCl2からなる群から選ばれる1種以上の塩とを含む溶液であることが好ましい。
本実施形態の促進処理工程S1は、耐候性鋼材の表面に処理液を塗布する塗布ステップ(最初の1回のみ)と、処理液が塗布された耐候性鋼材を乾燥させる処理液乾燥ステップ(最初の1回のみ)と、処理液が乾燥することで形成された処理層(錆層)を熟成させるための熟成ステップ(2回目以降)とを含んでいる。また、本実施形態では、好ましい態様として、塗布ステップを実行する前の耐候性鋼材からミルスケールなどを除去するための準備ステップ(最初の1回のみ)も含んでいる。以下、各ステップについて、順次説明する。
熟成ステップは、屋外で実施されることが好ましいが、特にこれに限定されない。熟成ステップは、例えば、平日の8時から17時の間に屋外で実施され、相対湿度90%以下のときに、30分毎に30秒間水が散布され(散布ステップ)、次の散布までの間に自然乾燥される(水乾燥ステップ)。
散布ステップは、錆層における保護性の錆の剥離を生じ難い水圧で水が霧状に散布されることが好ましいが、特にこれに限定されない。散布ステップは、水として水道水を用いることができるが、特にこれに限定されない。
評価タイミングの定め方には特に制限はなく、1回目の促進処理工程S1を実行する前に所定回数の促進処理工程S1を実行した後毎に評価工程S2を実行すると定めても良いし、後述する評価工程S2の算出工程S22において算出した暴露相当期間と所望する暴露期間との差の大きさに応じた回数(例えば、両者の差が大きければ大きな回数とし、差が小さければ小さな回数とする)の促進処理工程S1を実行した後に評価工程S2を実行すると定めても良い。
なお、評価タイミングに達していなければ、再び、促進処理工程S1の実行を繰り返す。ただし、前述のように、促進処理工程S1に含まれる準備ステップ、塗布ステップ及び処理液乾燥ステップは、最初の1回のみ実行するため、促進処理工程S1の実行を繰り返すときには、熟成ステップ(散布ステップ及び水乾燥ステップ)のみが繰り返し実行されることになる。
具体的には、図2に示すように、評価工程S2は、測定工程S21と、算出工程S22とを含んでいる。
具体的には、前述した図1に示す相関関係を取得した場合と同様に、測色計を用いて耐候性鋼材表面の複数箇所(例えば3箇所)の色度a*、b*、明度L*を測定すると共に、測定した色度a*、b*から計算式によって彩度C*を算出して、複数箇所の色度a*及び彩度C*をそれぞれ平均化すればよい。
なお、図1に示すような相関関係を取得する場合(耐候性鋼材試料の表面を測定する場合)に用いる測色計と、耐候性鋼材の表面を測定する場合に用いる測色計とは、同じものを用いることが好ましいが、双方共に色度a*及び彩度C*を測定し得る限りにおいて、特にこれに限定されない。また、平均化する箇所の数(すなわち、測定箇所の数)も同じにすることが好ましいが、特にこれに限定されない。例えば、耐候性鋼材試料の表面の面積に比べて、耐候性鋼材の表面の面積の方が格段に広いのであれば、耐候性鋼材については、平均化する箇所の数(測定箇所の数)を増やす方が、表面に形成された錆層の外観を適正に評価できる可能性がある。さらに、耐候性鋼材の表面に形成された錆層の外観が高い均一性を有する場合には、各測定パラメータを1箇所についてのみ測定することも可能である。
図3は、算出工程S22を説明する説明図である。図3に黒丸で示すデータ点は、測定工程S21で測定した色度a*の値に対応する近似曲線(相関関係を近似する近似曲線)上の点である。また、各データ点近傍に記載された数字は、促進処理工程S1の熟成ステップの実行回数を日単位で表わしたものである。0日とは、未だ熟成ステップは実行されずに、準備ステップ、塗布ステップ及び処理液乾燥ステップのみが実行された状態を意味する。
図3に示すように、例えば、熟成ステップを全体で38日実行した後に測定工程S21で測定した色度a*=6.5であったとすれば、予め取得した相関関係(T=(0.1077×a*)−2.41)にこの値を代入することにより、暴露期間T=2.4年に相当する暴露相当期間が算出される。なお、図3では、測定パラメータとして色度a*を用いた場合を例示しているが、彩度C*を用いる場合も同様である。
図3を参照して具体的に説明すれば、例えば、所望する暴露期間が5年であり、促進処理工程S1の熟成ステップを全体で38日実行した後に評価工程S2の算出工程S22において算出した暴露相当期間2.4年が、所望する暴露期間5年と同等になっていないと判断すれば、促進処理工程S1及び評価工程S2を繰り返し実行することになる。そして、図3に示すように、促進処理工程S1の熟成ステップを全体で52日実行した後に評価工程S2の算出工程S22において算出される暴露相当期間は約5年となる。暴露相当期間5年が、所望する暴露期間5年と同等になっていると判断されることで、耐候性鋼板の製造は終了する。
Claims (4)
- 耐候性鋼材の表面における錆層の形成を促進する処理を施す促進処理工程と、
前記促進処理工程を経た耐候性鋼材の表面に形成された錆層の外観を評価する評価工程とを含み、
前記評価工程は、
前記耐候性鋼材の表面において、L*a*b*表色系の色度a*又はL*C*h表色系の彩度C*を測定パラメータとして測定する測定工程と、
前記測定工程で測定した測定パラメータと、予め取得した前記測定パラメータと実際の暴露期間との相関関係とに基づき、前記耐候性鋼材の暴露相当期間を算出する算出工程とを含み、
前記評価工程の前記算出工程において算出した暴露相当期間が、所望する暴露期間と同等になるまで、前記促進処理工程及び前記評価工程を繰り返し実行することを特徴とする耐候性鋼材の製造方法。 - 前記評価工程の前記算出工程で用いる前記相関関係は、
実際に大気暴露され、その暴露期間が既知であり、なお且つ暴露期間がそれぞれ異なる複数の耐候性鋼材試料を用意する工程と、
前記用意した複数の耐候性鋼材試料の表面において、L*a*b*表色系の色度a*又はL*C*h表色系の彩度C*を測定パラメータとして測定する工程と、
前記測定した測定パラメータと、前記複数の耐候性鋼材試料の実際の暴露期間とに基づき、前記測定パラメータと前記実際の暴露期間との相関関係を近似する近似式を算出する工程と、
によって取得されることを特徴とする請求項1に記載の耐候性鋼材の製造方法。 - 前記評価工程の前記算出工程で用いる前記相関関係は、前記測定パラメータをAとし、前記実際の暴露期間をT(年)とし、K1及びK2を正の定数として、以下の式(1)で表わされることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐候性鋼材の製造方法。
T=(K1・A)−K2 ・・・(1) - 前記促進処理工程は、最初に実行するときには前記耐候性鋼材の表面に処理液を塗布して乾燥させ、2回目以降に実行するときには前記耐候性鋼材の表面に水を散布して乾燥させる工程であり、
前記処理液は、Cu及びPと、LiCl、MgCl2及びCaCl2からなる群から選ばれる1種以上の塩とを含む溶液であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の耐候性鋼材の製造方法。
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