JP2009069143A - 金属材料の耐候性評価方法、金属材料及び金属材料の腐食促進試験装置 - Google Patents

金属材料の耐候性評価方法、金属材料及び金属材料の腐食促進試験装置 Download PDF

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浩志 梶山
Junichiro Hirasawa
淳一郎 平澤
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Abstract

【課題】 紫外線等の光が照射される屋外使用環境を模擬した条件下での金属材料の耐候性評価方法を提供する。
【解決手段】 下記の工程(A)、下記の工程(B)及び下記の工程(C)の各工程をそれぞれ1回以上行うことにより耐食性を評価することを特徴とする。 工程(A):金属材料に付着した、塩化物イオンを含む塩水の平均粒径が1〜500μmであり、且つ塩分付着量が0.1〜10000mg/m2であって、塩化物イオンを含む塩分を付着させる時間を10分間以内として、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる工程。 工程(B):金属材料に対して、乾燥工程及び湿潤工程での露点変動が±5℃以内の範囲内で温度及び相対湿度を変化させて設定した乾燥工程と湿潤工程とを繰り返すことを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行う工程。 工程(C):金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程。
【選択図】 図1

Description

本発明は、各種製品や構造物等に屋外で使用されるクロメートフリー表面処理鋼板等の金属材料の耐候性評価方法、及び、当該評価方法によって評価された金属材料、並びに、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験装置に関するものである。
表面処理鋼板等の金属材料は、OA機器(複写機、パソコン等)、AV機器(テレビ、ビデオ等)、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品に大量に使用されている。表面処理鋼板の種類としては、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、化成処理鋼板、塗装鋼板等がある。中でも、化成処理鋼板としてはクロメ−ト処理鋼板が多く使われていたが、クロメート処理鋼板の皮膜中に含有されるクロムの環境負荷への影響を考慮し、クロメートフリー表面処理鋼板も検討され、既に実用化されている。現在、国内においては、クロメート材がクロメートフリー表面処理鋼板へほぼ代替されつつある。
ところで、家電製品の市場の国際化により、特に高温多湿な東南アジア等を想定した製品設計が今後必要になると予想される。また、日本の家電業界各社は、環境保全・省資源の観点から、「グリーン調達制度」を制定して家電製品のリサイクルや部品のリユースの推進を図っており、今後、製品や部品の使用期間が延長されていくと予測される。これらのことから、製品の寿命設計が益々重要になる。また、クロメートフリー表面処理鋼板等の新しい材料の使用拡大、市場の国際化、リユース等による使用期間の延長が図られている。
表面処理鋼板等の金属材料の製品設計は暴露試験結果に基づいて行われるが、長期暴露試験は長時間を要するという問題があり、用途によっては10年以上の時間を要する。また、家電製品の使用される環境では、一般に腐食速度が小さいことから定量的なデータが少ない。特に、クロメートフリー表面処理鋼板等の新しい金属材料では使用実績が短く、長期耐食データがないという問題点もある。そのために、家電製品等の製品設計を行う上で、家電製品に使用される金属材料の寿命を短期間で予測することのできる耐候性評価方法の重要性が増している。
従来の家電製品向けの金属材料の耐食性評価方法としては、塩水噴霧試験等の腐食促進試験と、家電製品の実際の使用環境における長期暴露試験とが行われてきた。しかしながら、長期暴露試験には前記問題点があり、また、塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2000)では、家電製品の使用されている実際の腐食環境との相関が低いと考えられ、長期寿命との相関も不明である。
また、塩水噴霧・乾燥・湿潤等を組み合わせた複合サイクル腐食試験方法も数多く開発されている(例えばJIS H 8502:1999の中性塩水噴霧サイクル試験方法)。しかしながら、従来の複合サイクル腐食試験も実環境を適切に再現しておらず、実際の腐食環境を適切に再現した腐食促進試験法はいまだに存在しない。また更に、金属材料の耐食性の序列が腐食促進試験法の種類によって逆転してしまうという現象もあった。これは、金属材料によって好適な環境が異なるため、例えば塩分の多い環境では耐食性を示すが塩分の少ない環境では耐食性が劣る材料や、逆に塩分の多い環境では耐食性を示さないが塩分の少ない環境では耐食性を示す材料があるためである。
このような中で、腐食促進性のある耐候性評価試験方法として、従来、キセノンランプ法(JIS K 5600-7-7:2008)または紫外線蛍光ランプ法(JIS K 5600-7-8:1999)による腐食促進耐候性試験(JIS K 5600-7-8:1999)が行われてきた。しかしながら、この試験は、皮膜の屋外耐候性に影響を与えるとされている塩化物が使用されておらず、実際の腐食環境との相関が低いと考えられ、長期寿命との相関も不明である。
実際に家電製品の使用される環境では、塗装された冷延鋼板に糸状さびが発生し、塗装された亜鉛めっき鋼板ではブリスター(水疱状の塗装膜膨れ)が発生しない。しかし、従来の塩水噴霧試験や複合サイクル腐食試験では、塗装された冷延鋼板に糸状さびが発生せず、塗装された亜鉛めっき鋼板ではブリスターが発生し、実際の家電製品の腐食環境を再現できていない。また、実際の環境では、塗装された亜鉛めっき鋼板は塗装された冷延鋼板に比べて耐食性に優れるが、従来の塩水噴霧試験や複合サイクル腐食試験では、塗装された亜鉛めっき鋼板の方が塗装された冷延鋼板よりも耐食性に劣る場合があった。
また、家電製品の使用環境も多種多様であり、塩分量の多い屋外環境、温度の高い屋外環境、湿度の高い屋内環境、塩分量が少なく湿度が低い屋内環境等が挙げられる。これらの使用環境に対して塩水噴霧試験等の1種類の腐食促進試験により評価し、製品設計することは、耐食性が不足する場合や過剰品質になる場合もある。
そこで、これらの試験法に対して、前記問題点を改善するための複合サイクル腐食試験方法が幾つか提案されている。
例えば、非特許文献1には、試験片に塩水を付着させた後に、露点温度を一定(33℃)にした湿潤工程と乾燥工程とを繰り返す腐食促進試験方法が提案されている。この試験方法は、湿潤工程(35℃、相対湿度90%)7時間−移行時間1時間−乾燥工程(42℃、相対湿度60%)3時間−移行時間1時間を1サイクルとしたサイクル腐食試験である。
非特許文献2には、試験片に塩水を付着させた後に露点温度を一定にした湿潤工程と乾燥工程とを繰り返し実施し、海岸付近の腐食環境を模擬した腐食試験が提案されている。この試験方法は、乾燥工程(20℃、相対湿度65%)11時間−移行時間1時間−湿潤工程(13℃、相対湿度95%)11時間−移行時間1時間を1サイクルとしている。
特許文献1には、試験片に塩水を付着させた後に、実際の腐食環境を模擬して試験片に連続的な温度変化を与え、乾燥と湿潤とを繰り返す腐食促進試験方法が提案されている。
特許文献2には、試験片の表面に水溶性塩類及び固型粒子を付着させ、水溶性塩分の成分及び付着量を変化させることにより腐食環境条件の影響を制御する耐食性試験法が提案されている。
特許文献3には、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる(A)の工程と、金属材料に温度と相対湿度をステップ状に変化させて設定した乾燥工程及び湿潤工程を行うことを1サイクルとし、このサイクルを1乃至複数回行う(B)の工程と、からなり、(A)の工程と(B)の工程とからなる工程を1乃至複数回行って耐食性を評価することを特徴とする金属材料の耐食性評価方法が提案されている。
特許文献4には、恒温恒湿槽内にて、試験体に対して光線の照射と各種水の散布または噴霧を所定のサイクルに基づいて連続的または断続的に実施することを特徴とする複合劣化促進方法が提案されている。
特許文献5には、紫外線放射放電ランプを有し、紫外線と紫外線域より長い波長の光を試料に照射する耐候性試験装置において、試験装置本体の内部に収納してなる紫外線光源と試料台との間に、紫外線及び可視光を透過する仕切り板を設け、同仕切り板の下側に短波長をカットするフィルターを配置し、更にフィルターと試料台との間に冷却風を送るように構成したことを特徴とする耐候性試験装置が提案されている。
特開平10−253524号公報 特開昭56−79237号公報 特開2003−329573号公報 特開2003−279469号公報 特開平9−210897号公報 VOLVO Corporate Standard STD 1027,1375(established 1995-06 JB) 材料と環境 第49巻 第2号 P.72(2000)
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
即ち、非特許文献1では、湿潤工程時間/(乾燥工程時間+湿潤工程時間)が70%と極めて長く、家電製品が使用されている環境とは異なっていることから、実際の使用環境における腐食現象を再現できないという問題点があった。
非特許文献2では、家電用鋼板等の耐食性評価方法として用いた場合、温度が低く促進性が低いこと、及び、乾燥工程の湿度が65%と高く乾燥が不十分であり、家電製品が使用されている環境を模擬していないという問題点があった。
特許文献1では、対象となる環境を再現できる可能性はあるが、指定された環境毎に試験サイクルを組まなければならず、汎用性に欠けるという問題点があった。また、サイクルが複雑で、条件設定に時間を費やすという問題点もあった。
特許文献2では、塩分量の多い厳しい腐食環境(例えば、NaCl付着量:1mg/cm2、5mg/cm2、10mg/cm2)のみで試験を実施しており、実環境に近いマイルドな腐食環境における評価については記載されていない。
特許文献3では、光線を照射する工程がないことから、紫外線等の光が照射される屋外使用環境を再現できないという問題点があった。この問題点は、非特許文献1、2及び特許文献1、2の方法も同様に有している。
特許文献4では、試験片表面に塩水を噴霧するが、試験片の表面へ付着させる塩分量を制御しないために、表面の濡れ性によって塩分付着量が変化し、試験結果のバラツキが大きくなるという問題点があった。
特許文献5では、実環境を想定した塩分付着工程や乾燥と湿潤との繰り返し工程がないために、実環境における腐食状態を再現できない場合が多いという問題点があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、紫外線等の光が照射される屋外使用環境を模擬した条件下における金属材料の耐候性評価方法を提供するとともに、当該耐候性評価方法によって評価された金属材料、並びに、前記耐候性評価方法を行うための金属材料の腐食促進試験装置を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、下記の工程(A)、下記の工程(B)及び下記の工程(C)の各工程をそれぞれ1回以上行うことにより耐食性を評価することを特徴とするものである。
工程(A):金属材料に付着した、塩化物イオンを含む塩水の平均粒径が1〜500μmであり、且つ塩分付着量が0.1〜10000mg/m2であって、塩化物イオンを含む塩分を付着させる時間を10分間以内として、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる工程。
工程(B):金属材料に対して、乾燥工程及び湿潤工程での露点変動が±5℃以内の範囲内で温度及び相対湿度を変化させて設定した乾燥工程と湿潤工程とを繰り返すことを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行う工程。
工程(C):金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程。
第2の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、下記の工程(A)、下記の工程(B)、下記の工程(C)及び下記の工程(D)の各工程をそれぞれ1回以上行うことにより耐食性を評価することを特徴とするものである。
工程(A):金属材料に付着した、塩化物イオンを含む塩水の平均粒径が1〜500μmであり、且つ塩分付着量が0.1〜10000mg/m2であって、塩化物イオンを含む塩分を付着させる時間を10分間以内として、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる工程。
工程(B):金属材料に対して、乾燥工程及び湿潤工程での露点変動が±5℃以内の範囲内で温度及び相対湿度を変化させて設定した乾燥工程と湿潤工程とを繰り返すことを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行う工程。
工程(C):金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程。
工程(D):洗浄水の温度を20〜60℃、洗浄時間を1分以上12時間以下として、金属材料の表面を、塩分を含まない洗浄水で洗浄する工程。
第3の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第2の発明において、前記工程(D)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内で行うことを特徴とするものである。
第4の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第2または第3の発明において、前記工程(A)の1回の実施に対し、前記工程(D)の金属材料の表面を、塩分を含まない洗浄水で洗浄する工程を1〜2回以上実施することを特徴とするものである。
第5の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第1ないし第4の発明の何れかにおいて、前記工程(A)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内で行うことを特徴とするものである。
第6の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第1ないし第5の発明の何れかにおいて、前記工程(C)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内で行うことを特徴とするものである。
第7の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第1ないし第6の発明の何れかにおいて、前記工程(A)の1回の実施に対し、前記工程(B)の乾燥工程と湿潤工程との繰り返しからなる1サイクルを2〜21回実施することを特徴とするものである。
第8の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第1ないし第7の発明の何れかにおいて、前記工程(A)の1〜7回の実施に対し、前記工程(C)の金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程を1回実施することを特徴とするものである。
第9の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第1ないし第8の発明の何れかにおいて、前記工程(B)において、乾燥工程及び湿潤工程は下記の条件範囲内で行うことを特徴とするものである。
乾燥工程:温度;20〜60℃、相対湿度;70%以下、保持時間;2〜12時間。
湿潤工程:温度;20〜50℃、相対湿度;80〜96%、保持時間;2〜12時間。
第10の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第1ないし第9の発明の何れかにおいて、前記工程(B)において、乾燥工程の保持時間を、湿潤工程の保持時間と同等かそれ以上とすることを特徴とするものである。
第11の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第1ないし第10の発明の何れかにおいて、前記工程(C)は、照射時間を1〜24時間とすることを特徴とするものである。
第12の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、下記の条件(E)及び/または下記の条件(F)の2水準以上について、第1ないし第11の発明の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法を行うことを特徴とするものである。
条件(E):前記工程(A)における塩分付着量条件。
条件(F):前記工程(B)における乾燥工程の条件と湿潤工程の条件との組み合わせからなる条件。
第13の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第12の発明において、前記条件(F)が、下記の条件(G)及び/または下記の条件(H)であることを特徴とするものである。
条件(G):露点条件。
条件(H):湿潤率条件(湿潤率=湿潤工程保持時間/(乾燥工程保持時間+湿潤工程保持時間))。
第14の発明に係る金属材料の耐候性評価方法は、第12または第13の発明に記載の金属材料の耐候性評価方法により2水準以上で耐候性を評価し、該評価結果に基づき、前記水準間を外れる領域での耐候性を外挿して評価することを特徴とするものである。
第15の発明に係る金属材料は、第14の発明に記載の金属材料の耐候性評価方法により予測した実構造物の腐食の情報及び/または前記情報を示す記号が添付されていることを特徴とするものである。
第16の発明に係る金属材料は、第14の発明に記載の金属材料の耐候性評価方法により予測した実構造物の腐食の情報を含む電子情報が納入先に送付されていることを特徴とするものである。
第17の発明に係る金属材料の腐食促進試験装置は、第1ないし第14の発明の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法を行うためのものである。
本発明によれば、紫外線を含む光が照射される屋外使用環境を模擬した腐食促進試験を実施し、金属材料の耐候性に及ぼす支配的環境因子の影響を評価するようにしたので、材料の適用可能範囲を明らかにすることができる。また、短期間の試験で、適切且つ高精度に金属材料の耐候性評価を行うことが可能となる。そして、本発明は、屋外で使用される家電製品等の部材の設計に特に有効な発明であるといえる。
以下、本発明について詳述する。
[実施形態1]
本発明に係る金属材料の耐候性評価方法について、図1及び図2を参照して説明する。図1及び図2は、本発明の第1の実施形態の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。図1及び図2に示される腐食促進試験では、実際の環境を模擬するために種々の環境因子を組み合わせた、下記の工程(A)、下記の工程(B)及び下記の工程(C)の各工程を少なくとも1回行うサイクルを1回以上行う。
工程(A):金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる工程。
工程(B):金属材料に対して、温度と相対湿度を変化させて設定した乾燥工程及び湿潤工程を繰り返すことを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行う工程。
工程(C):金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程。
図1に示すように、工程(A)、工程(B)、工程(C)を順次行うサイクル(A→B→C)を繰り返すこともでき、また、図2に示すように、工程(A)及び工程(B)を行った後、工程(C)及び工程(B)を行うサイクル(A→B→C→B)を繰り返すこともできる。
工程(A)は、塩分を付着させる工程であり、従来の塩水噴霧試験のように塩水によって試験片の腐食を進行させるのではなく、試験片の腐食を生じさせない塩分付着工程であることが特徴である。この特徴によって、屋外で使用される家電製品等の腐食状況の再現が可能となる。従来の塩水噴霧試験においては、上記したとおり、塩水による腐食が試験片のあらゆる場所で無作為に生じるため、屋外で使用される家電製品等の腐食状況の再現はできない。更に、この塩水噴霧と、乾燥及び湿潤を組み合わせた非特許文献1等に開示されたサイクル腐食試験では、塩水噴霧過程で生じた腐食が、乾燥、湿潤を経て、次の塩水噴霧試験では別の箇所で塩水腐食が生じることになり、やはり、屋外で使用される家電製品等の腐食状況の再現はできない。一方、本願の工程(A)は塩分付着工程であり、工程(A)で塩分が付着した箇所において、工程(B)の乾燥、湿潤サイクルの湿潤工程において結露して高濃度の塩水環境となり腐食が生じ、再度乾燥工程で乾燥し、次の湿潤工程で再度結露し、高濃度の塩水環境で腐食が繰り返し再現される。このように本発明においては、工程(B)の乾燥、湿潤サイクルの湿潤工程において、工程(A)で付着した塩分のある箇所において試験片が腐食するものであって、更に、工程(C)が組み合わさることにより、実際の屋外で使用される家電製品等の腐食状況の再現が可能となる。
先ず、工程(A)について説明する。
工程(A)においては、金属材料に付着した塩化物イオンを含む塩水の平均粒径が1〜500μmとなるように、塩化物イオンを含む塩水を噴霧して金属材料の表面に塩分を付着させる(スプレーにより液膜ができたり、液が表面を洗い流すことがないように、噴霧された液滴がそのまま若しくは合体しつつもなお液滴として付着した状態を現出させる)。付着した塩水の平均粒径が500μmを超えると試験結果のバラツキが大きくなり、一方、塩水の平均粒径が1μm未満では塩分の付着に時間がかかり、更に塩分付着量の制御が困難になり、試験結果にバラツキを生じることになる。特に、100〜300μmの範囲が好ましい。
従来から、塩水噴霧試験装置は使用されており、JIS Z 2371:2000に塩水噴霧装置の一例として、噴霧塔方式とノズル方式の2種類が記載されている。本発明の耐候性評価方法にこれらの塩水噴霧装置を適用した場合、付着させる塩水の粒径のバラツキが大きいという問題があった。また、噴霧装置内の各所に試験片を配置して塩水の供給を行っているため、試験片の配置位置によって付着する塩水の粒径や噴霧量のバラツキが大きく制御が困難であるといった問題もあった。
これに対して、例えば、図3は、本発明における金属材料表面への塩分付着方法の一実施態様を示す図であり、本発明において、金属材料の表面に塩分を付着させる方法として好ましい形態である。図3においては、まずコンプレッサー1よりエアトランスフィルター2を介して圧縮空気をエアブラシ3に送る。次いで、エアブラシ3では目的の塩分の粒径に合わせ所定のノズル径に調整されており、エアブラシ3により、予め評価面4がシールされた金属材料5へ塩水を噴霧する。
このように、本発明においては、金属材料の表面に塩分を付着させる方法は特に限定はしないが、金属材料に付着した塩水の平均粒径を前述の範囲に制御することが重要である。このためには、スプレーノズルの噴霧形状、噴霧量、噴霧圧力、噴霧角度、噴霧距離を適宜選択することによって付着させる塩水の平均粒径を調整する必要があり、付着させる塩水の平均粒径は1〜500μmとする。尚、金属材料に付着する前の塩水の平均粒径は、液浸法、レーザー法(フランホーヘル回折法、ドップラー法)等で測定することができる。
本発明において、金属材料の表面に塩分を付着させる方法としては、例えば、塩水スプレー、塩水浸漬、塩水噴霧、塩水滴下等の方法を用いることができる。塩水スプレーのスプレーノズルの種類としては、一流体スプレーノズル(圧力をもって送られる液体が微細化して噴霧されるノズル)、二流体スプレーノズル(圧搾空気等の高速の流体を利用して液体を微細化するノズル)等がある。二流体スプレーノズルにも液体の供給方式の違いにより、液加圧タイプ(液体を加圧して二流体ノズルに供給)、サクションタイプ(圧搾空気の力で液体を吸い上げて噴霧)がある。流量分布が均等となる点からスプレーノズルを選択することが好ましい。塩水を用いることからノズルの材料はステンレス等の耐食金属を用いることが好ましい。
尚、金属材料の表面に付着した塩水の平均粒径は、工程(A)後に金属材料を湿潤状態で取り出し、光学顕微鏡観察を行って付着している塩水の粒径を測定し、平均値を求めることにより得られる。付着した塩水の粒径は最大径とそれに直交する径の平均値とする。
金属材料の表面に塩分を付着させるために使用する塩水としては、海塩または人工海塩、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム−塩化マグネシウム混合物、塩化ナトリウム−塩化カルシウム混合物、岩塩等の水溶液を用いることができる。例えば、家電製品の使用される環境では飛来海塩が製品の腐食に影響を及ぼすことから、使用する塩水としては海塩または人工海塩、塩化ナトリウム−塩化マグネシウム混合物、塩化ナトリウムの水溶液を用いることが好ましい。特に、海塩または人工海塩の水溶液が好ましい。
また、工程(A)において、金属材料の表面に付着した塩化物イオンを含む塩分付着量は、0.1〜10000mg/m2とする。この範囲とすることにより屋外環境における塩害地域、塩分の少ない地域、並びに屋内環境での塩分付着量をカバーできるからである。特に、エアコン室外機等の家電製品が使用される屋外環境における塩分付着量は、沖縄等の塩害地域を想定する場合10〜10000mg/m2の範囲であり、内陸部等比較的塩分の少ない地位を想定する場合1〜100mg/m2の範囲であり、テレビ、VTR等の家電製品が使用される屋内環境を想定する場合の塩分付着量は0.1〜10mg/m2の範囲とすることが好ましい。
塩分付着量の制御は、塩水濃度、噴霧圧力、噴霧時間等を調整して行えばよい。塩分付着量の測定は、金属材料に付着させた塩水の質量を測定し塩分質量に換算する方法、蒸留水または脱イオン水を含浸した脱脂綿等で金属材料表面を払拭し、付着したClイオンをイオンクロマトグラフィー等により分析し、Cl濃度から使用した塩の質量に換算する方法等がある。
更に、工程(A)において、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる時間(以下、「所要時間」と称す)は10分間以内とする。10分間を越えて試験片を塩水に接触させると塩水溶液による試験片の腐食が進行することがあり、実際の腐食環境における腐食との相関が低くなるためである。特に、3分以内とすることが好ましい。
また、工程(A)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内の頻度で行うことが好ましい。168時間に1回以上とすることで、塩分の化学反応や脱落等により付着塩分量が変化することがなく、評価結果の再現性が良好であるためである。また、24時間に1回以下とすることで、試験片に塩分を接触させる頻度が適度であり、塩水溶液による試験片の腐食が進行することがなく、実際の腐食環境における腐食との相関が高くなるからである。
次いで、工程(B)について説明する。
工程(B)では、実際の環境における昼夜の温度差による夜間の結露現象を模擬しており、試験装置の温度・湿度の制御のばらつきや変化を考慮して、乾燥工程と湿潤工程との露点変動は±5℃以内とする。例えば、図4において、条件1、条件2で示されるような露点一定条件とすることが望ましい。尚、図4は、本発明に係る耐候性評価方法での乾燥工程と湿潤工程との条件を示す図であり、図4中に示される曲線は露点が一定となる温度(℃)と相対湿度(%)を示している。ここで、露点とは空気中の水蒸気の圧力が飽和蒸気圧に等しくなる温度である。図4中の条件1及び条件2の乾燥工程と湿潤工程の具体的な条件を表1に示す。
Figure 2009069143
表1に示すように、乾燥工程及び湿潤工程は、互いに異なる温度、相対湿度に設定される。乾燥工程から湿潤工程へ移行(または逆方向に移行)すると、温度と相対湿度が変化する。乾燥工程から湿潤工程までの移行時間及び湿潤工程から乾燥工程までの移行時間を予め所定の時間に設定するのが好ましい。これは、移行時間を設定しない場合、試験装置によって乾燥工程から湿潤工程までの移行時間や、湿潤工程から乾燥工程までの移行時間に差が生じ、試験結果のばらつきが生じることがあるためである。乾燥工程から湿潤工程までの移行時間及び湿潤工程から乾燥工程までの移行時間は、それぞれ0.5〜3時間、0.5〜3時間とすることが好ましい。この範囲とすると、試験結果のばらつきを極めて小さくできるからである。
また、工程(A)で付着した塩分が工程(B)で金属材料の表面から直ちに流出してしまうことを防止する観点から、工程(B)は、先ず乾燥工程を行うことが好ましい。また、工程(A)で付着させた塩分を予め乾燥させた後、工程(B)を行ってもよい。
乾燥工程と湿潤工程の条件について、家電製品が使用される環境の場合、乾燥工程の保持時間を、湿潤工程の保持時間と同等かそれ以上とする、つまり、(乾燥工程の保持時間)≧(湿潤工程の保持時間)とすることが好ましい。これは、家電製品の使用される屋外の環境や屋内の環境を想定した場合、湿潤時間の方が長くなると家電用鋼板等の腐食形態や耐食性の序列が実際の腐食環境と合わなくなるためである。例えば、実際に家電製品の使用される環境では、塗装された冷延鋼板に糸状さびが発生し、塗装された亜鉛めっき鋼板ではブリスターが発生しない。しかし、(乾燥工程の保持時間)<(湿潤工程の保持時間)とすると、塗装された冷延鋼板に糸状さびが発生せず、塗装された亜鉛めっき鋼板ではブリスターが発生してしまい、実際の家電製品の腐食形態を再現できなくなる。
また、工程(B)においては、乾燥工程では、温度:20〜60℃、相対湿度:70%以下、保持時間:2〜12時間とし、湿潤工程では、温度:20〜50℃、相対湿度:80〜96%、保持時間:2〜12時間として行うことが好ましい。以下、これについて説明する。
乾燥工程の乾燥温度は、20℃以上60℃以下とすることが好ましい。これは、家電製品の使用される環境を想定した場合、乾燥温度が60℃を超えると、家電用鋼板等の腐食形態や耐食性の序列が実際の腐食環境と合わなくなる場合があるからである。家電用鋼板等としては主に亜鉛系めっき鋼板が使用されている。これは亜鉛が鉄に対して犠牲溶解し、鉄を防食する機能を有しているからである。しかし、乾燥条件下での温度が60℃を超えると鉄が亜鉛に対して犠牲溶解する場合があり、60℃を超えることが少ない実際の環境と異なった腐食現象を呈してしまう場合があるためである。一方、乾燥温度が20℃未満では、腐食の促進効果が小さく試験に時間を費やす。より好ましくは40℃以上60℃以下である。
乾燥工程の相対湿度は70%以下とすることが好ましい。家電製品の使用される環境では飛来海塩が製品の腐食に影響を及ぼし、その海塩は塩化ナトリウムと塩化マグネシウムがその主成分である。塩化ナトリウムの飽和臨界蒸気圧は相対湿度換算で約75〜78%であり80%以下で乾燥するが、塩化マグネシウムの飽和臨界蒸気圧は相対湿度換算で約30〜35%であり海塩に含まれる化学物質では最も低く乾燥しにくい。そのため、家電製品の使用される屋外の環境や屋内の乾燥した環境を想定した場合、実環境における家電用鋼板等の腐食形態を再現するためには乾燥工程の相対湿度を70%以下に設定することが好ましい。より好ましくは40%以下である。
湿潤工程の温度及び相対湿度は、乾燥工程の条件との露点変動が±5℃以内になるように設定すればよいが、温度は20℃以上50℃以下とすることが好ましい。温度が20℃未満では腐食の促進効果が小さく試験に時間がかかる。一方、湿潤条件下での温度が50℃を超えると乾燥工程の温度が60℃を越えてしまうため、鉄が亜鉛に対して犠牲溶解する場合があり、60℃を超えることが少ない実際の環境と異なった腐食現象を呈してしまう場合があるためである。
湿潤工程の相対湿度は80%以上96%以下とすることが好ましい。湿潤工程の相対湿度が80%未満であると湿潤の影響が不十分となり評価に時間がかかるためである。塩化物の中で塩化ナトリウムは飽和臨界蒸気圧が相対湿度換算で約75〜78%である。従って、何れの塩化物も相対湿度を80%以上にしておくと表面は化学凝縮作用により湿潤状態を保つことができる。一方、相対湿度が96%を超えると結露によって生成した水膜厚さが厚くなりすぎて付着塩分が流されやすくなるためである。
乾燥工程及び湿潤工程の保持時間は何れも2時間以上12時間以下であることが好ましい。乾燥工程及び湿潤工程の保持時間が2時間未満では、試験装置内の腐食環境が一定にならず試験装置内の場所によって試験結果のばらつきが大きくなったり、複数の試験装置によって腐食環境に差が生じ、試験結果にばらつきが生じたりするためである。一方、12時間を超えると、実際の腐食環境と合わなくなり、更に耐食性の評価に長時間を要することになるからである。
工程(B)は、実際の使用環境における昼夜の温度差による夜間の結露現象を模擬した試験であることから、工程(A)によって金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させたなら、工程(B)の乾燥工程と湿潤工程とを繰り返すことを1サイクルとし、このサイクルを2〜21回行うことが好ましい。このサイクル数を2回以上とすることで、昼夜の温度差を模擬した乾湿繰り返し回数が適度となり、金属材料の実際の耐候性を評価できるようになるからである。つまり、1回の工程(A)に対して工程(B)を2回以上行うことが好ましい。また、このサイクル数は21回以下であることが好ましい。21回以下とすることにより、塩分の化学反応や脱落等による付着塩分量が変化することがないためである。この場合、例えば図2(A→B→C→B)に示すように、工程(B)を繰り返すときには、工程(A)の1回に対する工程(B)の合計のサイクル数の和が2〜21回となるようにすればよい。
このように、工程(B)の乾燥、湿潤サイクルを繰り返すことにより、工程(A)で塩分が付着した箇所において、湿潤工程において結露し高濃度の塩水環境となり腐食が生じ、乾燥し、再度の湿潤工程で腐食するというサイクルが繰り返される。
次に、工程(C)について説明する。
工程(C)は、紫外線を含む光が照射される屋外使用環境を模擬しており、金属材料の表面に紫外線を含む光を照射することにより劣化を促進させる。特に有機樹脂は紫外線による劣化が生じやすいため、有機樹脂層を有するクロメートフリー表面処理鋼板が屋外で使用されるときを模擬する耐候性評価方法とすることは特に好ましい。
金属材料の表面に紫外線を含む光を照射する放射光源は特に限定せず、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、UVランプ等を用いればよい。キセノンランプであればJIS K 5600-7-7:2008「促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)」に準拠し、UVランプであればJIS K 5600-7-8:1999「促進耐候性(紫外線蛍光ランプ法)」に準拠して行うことがより好ましい。紫外線等の光の照射時間は1時間〜24時間で行われるのが好ましい。光の照射時間が1時間未満では、光による劣化効果が小さいためである。一方、照射時間が24時間を超えると、連続的な光照射による劣化の影響が大きくなり、実際の腐食環境と合わなくなることがあるからである。より好ましくは、2〜6時間である。
工程(C)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内の頻度で行うことが好ましい。168時間に1回以上とすることで、光による劣化効果が得られるためである。一方、24時間に1回以下とすることで、光による劣化の影響が適度であり、実際の腐食環境と合致するからである。
工程(C)は、工程(B)のように繰り返し行う必要はなく、また、分割して行うことも必要ではなく、工程(A)の1〜7回に対して1回実施するのが好ましい。繰り返して行ったり分割したりすると、実際の腐食環境と合わなくなる恐れがある。
また、本発明で対象とする金属材料は、家電製品等に使用される表面処理鋼板等の全てであるが、特に、有機樹脂層を有するクロメートフリー表面処理鋼板とすることが好ましい。更に、有機樹脂層の厚さは0.1μm〜1mmであることがより好ましい。この厚さの有機樹脂層を有する表面処理鋼板とすると、屋外で使用されたときの紫外線による有機樹脂層の劣化を再現できるからである。有機樹脂層に含まれる有機樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が例示できる。これらの有機樹脂を含む有機樹脂層を有する化成処理冷延鋼板、化成処理めっき鋼板、塗装冷延鋼板、塗装めっき鋼板等のクロメートフリー表面処理鋼板を本発明で対象とする金属材料とすることが好ましい。
[実施形態2]
図5〜図12は、本発明の第2の実施形態であり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。図5〜図12に示される腐食促進試験では、実際の環境を模擬するために、前述した工程(A)、工程(B)、工程(C)に、更に下記の工程(D)を加え、工程(A),工程(B)、工程(C)及び工程(D)の各工程を少なくとも1回行うサイクルを1回以上行う。
工程(D):金属材料の表面を、塩分を含まない洗浄水で洗浄する工程。
図5に示すように、工程(A)、工程(B)、工程(D)、工程(C)を順次行うサイクル(A→B→D→C)、図6に示すように、工程(A)、工程(B)、工程(C)、工程(D)を順次行うサイクル(A→B→C→D)、図7に示すように、工程(A)、工程(B)及び工程(C)を順次行った後、工程(B)と工程(D)を行うサイクル(A→B→C→B→D)、図8に示すように、工程(A)、工程(B)及び工程(D)を順次行った後、工程(B)と工程(C)を行うサイクル(A→B→D→B→C)、図9に示すように、工程(A)と工程(B)を行った後、工程(D)、工程(C)及び工程(B)を順次行うサイクル(A→B→D→C→B)、図10に示すように、工程(A)と工程(B)を行った後、工程(C)、工程(D)及び工程(B)を順次行うサイクル(A→B→C→D→B)、図11に示すように、工程(A)、工程(B)、工程(D1)及び工程(C)を順次行った後、工程(B)及び工程(D2)を順次行うサイクル(A→B→D1→C→B→D2)、及び、図12に示すように、工程(A)、工程(B)、工程(C)及び工程(D1)工程を順次行った後、工程(B)及び工程(D2)を順次行うサイクル(A→B→C→D1→B→D2)等を繰り返すことができる。
工程(A),工程(B)、工程(C)は前述した[実施形態1]と同一であるので説明を省略し、以下、工程(D)について説明する。
工程(D)は、雨で表面の付着塩分が流される雨ざらしの屋外使用環境を模擬しており、金属材料の表面を、塩分を含まない洗浄水で洗浄して、塩分を除去するとともに腐食を促進させる。工程(D)は、洗浄水の温度:20〜60℃、洗浄時間:1分〜12時間で行う。洗浄水のみならず、雰囲気温度も20〜60℃とすることが好ましい。以下、これについて説明する。
金属材料の表面の塩分を除去するために使用する塩分を含まない洗浄水としては、蒸留水、脱イオン水、水道水、雨水、人工雨水、希薄水溶液等を用いることが出来る。洗浄水に物質が含まれると金属材料の表面に残存する可能性があることから、洗浄水に含まれる物質の濃度としては0.1質量%以下であることが望ましい。ここで、塩分とは、海塩または人工海塩、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム−塩化マグネシウム混合物、塩化ナトリウム−塩化カルシウム混合物、岩塩等であり、「塩分を含まない」とはこれら塩分の含有量が0.1質量%以下であることを意味する。
本発明においては、金属材料の表面を洗浄する方法は特に限定しないが、シャワー、噴霧、浸漬の何れかによって行えばよい。シャワーまたは噴霧による方法では金属材料表面1dm2当たり0.1リットル以上の流水をかけることが好ましく、一方、浸漬による方法では1dm2当たり1リットル以上の洗浄水に浸漬することが好ましい。
洗浄水の温度は20℃以上60℃以下とする。これは、家電製品の使用される環境を想定した場合、温度が60℃を超えると家電用鋼板等の腐食形態や耐食性の序列が実際の腐食環境と合わなくなる場合があるからである。家電用鋼板等としては主に亜鉛系めっき鋼板が使用されている。これは亜鉛が鉄に対して犠牲溶解し鉄を防食する機能を有しているからである。しかし、温度が60℃を超えると鉄が亜鉛に対して犠牲溶解する場合があり、60℃を超えることが少ない実際の環境と異なった腐食現象を呈してしまう場合があるためである。一方、温度が20℃未満では腐食の促進効果が小さく試験に時間がかかる。この観点から、雰囲気温度も20℃以上60℃以下とすることが好ましい。
洗浄工程の洗浄時間は1分以上12時間以下とする。洗浄時間が1分未満では、塩分の洗浄効果が小さく、塩分が残存することがあるためである。一方、洗浄時間が12時間を超えると、実際の腐食環境と合わなくなり、更に耐食性の評価に長時間を要することになるからである。より好ましくは1分以上1時間以内である。
工程(D)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内の頻度で行うことが好ましい。168時間に1回以上とすることで、塩分の洗浄効果が適度になるためである。一方、24時間に1回以下とすることで、実際の腐食環境と合致し、耐食性の評価に長時間を要することがないからである。
工程(D)は、雨で表面の付着塩分が流される雨ざらしの屋外使用環境を模擬した試験であり、1回の工程(A)に対して工程(D)を1回実施すればよい。特に工程(A)の前に工程(D)を実施することにより、塩分が洗浄され、工程(A)を実施した後の付着塩分量のばらつきが小さくなるので好ましい。一方、図11及び図12のように、1回の工程(C)の前及び後に1回の工程(D)を実施し、1回の工程(A)に対して合計2回の工程(D)を実施することもできる。但し、1回の工程(A)に対して工程(D)を3回以上実施することは、評価試験が煩雑になるのみならず、洗浄が過多になって実際の腐食環境と合わなくなる恐れがあることから、必要としない。
また、環境因子に関し、イオウ酸化物の影響を考慮する必要がある場合は、前記腐食促進試験の過程で、雰囲気にイオウ酸化物(SOx)供給工程を付加することもできる。
[実施形態3]
金属材料の耐食性に及ぼす環境因子の影響は金属材料の種類によって様々であることから、環境因子を変化させて腐食促進試験を行い、各金属材料の耐食性の特性を調べることが望ましい。図13は環境因子として塩分付着量を例にとり、腐食促進試験の或る試験期間における塩分付着量と腐食量の関係を示した図である。また、ここで腐食量とは、塗装膜の膨れ幅(または、単に、膨れ幅)や亜鉛めっきや下地鋼材の腐食量等を示す。図13からも明らかなように、金属材料No.1、No.2、No.3の塩分付着量と腐食量との関係の直線の傾きは異なり、塩分付着量水準a、b、cにおいて、金属材料No.1、No.2、No.3の腐食量の序列が入れ替わっている。
このように、或るひとつの水準で腐食促進試験を行うことは耐食性評価の判断を間違う可能性がある。よって、環境因子の水準を変化させて腐食促進試験を行い、金属材料の耐食性の特性を調べることが好ましい。例えば、工程(A)における塩分付着量条件(「条件(E)」と定義する)、または、工程(B)における乾燥工程の条件と湿潤工程の条件との組み合わせからなる条件(「条件(F)」と定義する)、若しくは、条件(E)及び条件(F)の2水準以上に対して、金属材料の耐食性評価を行うことが好ましい。
その他の条件として、工程(A)では、塩分種類、付着させる回数、時間、温度の2水準以上に対して耐食性評価を行ってもよい。
条件(F)としては、露点条件(「条件G」と定義する)、並びに、乾燥工程の温度、湿度、保持時間、及び湿潤工程の温度、湿度、保持時間の組み合わせ、そして、湿潤率条件(「条件H」と定義する)が挙げられる。ここで、湿潤率は、「湿潤率=(湿潤工程保持時間/(乾燥工程保持時間+湿潤工程保持時間))」の式で表される。
中でも、条件(G)(=工程(B)の露点条件)及び条件(H)(=工程(B)の湿潤率条件)は、実際の環境で支配的環境因子となることが多いことからその影響を調べる点で好ましく、条件(G)及び/または条件(H)の2水準以上に対して、耐食性評価を行うことが好ましい。
本発明の金属材料の耐食性評価方法においては、上記した条件の中から適宜選択した条件の2水準以上に対して行えばよい。条件の選択の仕方はそれが支配的環境因子となるかどうかに基づいて決めることができる。尚、支配的環境因子とは、その条件レベルが材料の耐食性(腐食量や腐食寿命)に影響を及ぼすような条件のことである。
例えば、支配的環境因子が塩分付着量である場合、条件(E)(=工程(A)の塩分付着量)は少なくとも2水準以上で評価する。支配的環境因子が温度である場合、工程(B)の乾燥工程の温度と湿潤工程の温度について少なくとも2水準以上で評価する。支配的環境因子が湿潤率である場合には、条件(H)を少なくとも2水準以上の条件で行う。支配的環境因子が塩分付着量と温度である場合には、条件(E)については少なくとも2水準以上とし、工程(B)の乾燥工程の温度と湿潤工程の温度も少なくとも2水準以上とし、両方の条件を変えた組み合わせ条件で行えばよい。支配的環境因子が塩分付着量と湿潤率である場合、条件(E)を少なくとも2水準以上とし、また、条件(H)を少なくとも2水準以上とし、両方の条件を変えた組み合わせ条件で行えばよい。この場合、前記で得られる組み合わせ条件毎に行ってもよく、試験負荷を低減する観点から前記で組み合わされた条件のうちから選ばれた複数の条件で行ってもよい。
以上からなる金属材料の耐食性評価方法により、本発明では、更に、評価時の水準間範囲を外れる領域での耐食性を評価することが可能となる。具体的には、先ず、本発明の金属材料の評価方法により2水準以上の条件で耐食性を評価する。次いで、評価時の水準間範囲を外れる水準(領域)での耐食性を、この評価結果を基づき外挿して予測し評価する。実際の腐食環境は、従来の腐食促進試験法に比べてマイルドな傾向がある。例えば、実際の腐食環境における塩分付着量は腐食促進試験における塩分付着量に比べて少ない場合が多い。そこで、塩分付着量の少ない腐食促進試験を行うことが好ましいが、腐食速度が小さく評価に時間がかかるという問題がある。そこで、塩分付着量の多い条件を含む少なくとも2水準以上の塩分付着量を設定し腐食促進試験を行い、塩分付着量の小さい環境の腐食量を外挿して予測することができる。
図14は、或る金属材料について3水準の塩分付着量a、b、c(a>b>c)を設定して腐食促進試験を行ったときの腐食量の経時変化を示した模式図である。図15は、図14に基づき、試験期間t1、t2、t3、t4(t1<t2<t3<t4)における塩分付着量と腐食量との関係を示した模式図である。図14及び図15より、塩分付着量a、b、cにおける各試験期間の腐食量を外挿して塩分付着量d(d<c)の腐食量を予測することができる。図16は、上記結果に基づいて予測した塩分付着量dにおける腐食量の経時変化を示した模式図である。
また、腐食寿命についても上記腐食量と同様に各試験期間の腐食寿命を外挿することにより予測することができる。図17は、図14及び図15の結果に基づいて、塩分付着量を例に取り、塩分付着量と腐食寿命の関係を示した模式図である。尚、腐食寿命とは外観の変化(さび発生時間等)や図14の腐食量の経時変化において腐食量のしきい値に達する時間(例えば塗装膜の膨れ幅が5mmに達する時間等)を表す。
このように、2水準以上で行った耐食性評価結果に基づき、評価時の水準間範囲を外れる水準(領域)での耐食性を外挿し予測することにより、腐食量や腐食寿命等の金属材料の腐食情報を得ることが可能となる。そして、評価した金属材料を実機等の各部位(以下、実構造物と称す)に用いる場合に、この実構造物の腐食情報が得られることになり、腐食を予測した情報及び/または前記情報を示す記号を金属材料に添付することが可能となる。
[実施形態4]
本発明の金属材料の耐食性評価方法を用いることにより、実構造物の腐食の進行を予測した金属材料の受注、製造及び販売を行うことが可能である。
図18は鋼材の表面処理過程の一例を示すフローチャート図である。図18に示すように、以下のstep61からstep67までの各工程での処理を鋼材に対して行うことになる。尚、図18の符号「S」は「step」を略したものである。
鋼材の脱脂工程(step61):塗装前の鋼材の表面に付着した油分や汚れを除去する。
鋼材の研磨工程(step62):ブラシで、鋼材表面の酸化皮膜を除去し、表面を活性化させる。後工程の化成処理性が改善する。
化成処理工程(step63):りん酸塩処理、クロメート処理、クロメートフリー処理等を行う。塗装膜密着性を改善する前処理的役割と鋼材の耐食性を改善する機能的役割がある。本発明の金属材料の耐食性評価方法により鋼材の寿命が予測できた場合であって、更に高寿命を期待する場合には、この化成処理に反映させることができる。
塗装工程(step64):塗料をコーティングする工程。ロールコーティング、スプレーコーティングが一般的である。
焼付け工程(step65):塗料の乾燥、硬化、塗装膜の形成。要求される耐食性に応じて塗装、焼付を2、3回繰り返す場合がある。
検査工程(step66):塗装膜のピンホール、光沢むら、色調等を検査する。
保護フィルムの貼り付け工程(step67):実施しない場合もあるが、客先からの要望で、保護フィルムを張り付けて出荷する場合がある。
以上のようにして製造された表面処理鋼材に対して、本発明の金属材料の耐食性評価方法により予測した実構造物の腐食の情報及び/またはその情報を示す記号を添付する。尚、この添付とは機械的に添付するだけでなく、表面処理鋼材とその情報とが何らかの関連付けがなされている場合も含む。例えば上記の耐食性を評価した際の情報(鋼材の膨れ幅に関するデータ等)またはそれを示す記号を表面処理鋼材に付記することが好ましい。また、その情報またはそれに関連するデータを電子情報として納入先に送付したりすることも好ましい。この電子情報はCDやフロッピーディスク等の記録媒体でもよいし、ネットワークを介して納入先に送付(送信)してもよい。
[実施形態5]
上述の[実施形態4]においては表面処理鋼材として塗装鋼材の耐食性評価について説明した。しかし、本願発明が適用される金属材料は、塗装鋼材に限定されず、化成処理鋼材及びめっき処理鋼材にも適用される。また、本発明は腐食環境下で使用される耐候性鋼材等の鋼材、非鉄金属材料等の金属材料についても適用可能である。
図19は各処理鋼材の経年変化を示した図である。図19において、(A)は塗装鋼材、(B)は化成処理鋼材、(C)はめっき処理鋼材に対応する。塗装鋼材6は、図19(A)に示されるように、鋼9の上にめっき層10、化成処理層11及び塗装膜12が順次形成されたものである。図19(A)によると、塗装膜12はめっき層10等より耐食性が高いので、塗装膜12が経年変化する前に、めっき層10が経年変化し、その切断端部は酸化して白錆13となり、その部位は膨張して塗装膜12の切断端部が膨れ上がっている。その膨れ上がった塗装膜12の端部からの幅Wを膨れ幅といい、腐食の程度を示すパラメータとなる。また、化成処理鋼材7は、図19(B)に示されるように、鋼9の上にめっき層10及び化成処理層11が順次形成されたものである。図19(B)によると、化成処理層11は耐食性が低いので腐食してめっき層10が露出すると、めっき層10が酸化して白錆13となっている。また、めっき処理鋼材8は、図19(C)に示されるように、鋼9の上にめっき層10が形成されたものである。図19(C)によると、めっき層10が酸化して白錆13となり、また、めっき層10が剥がれると鋼9が酸化して赤錆14が発生している。
このように、塗装鋼材6、化成処理鋼材7及びめっき処理鋼材8は、それぞれ経年変化し、その外観寿命は、塗装鋼材の寿命>化成処理鋼材の寿命>めっき処理鋼材の寿命という関係にある。よって、本発明は、寿命が長い鋼材の寿命予測に適用した場合に有用であるから、特に、化成処理鋼材7及び塗装鋼材6に適用した場合にその有用性が顕著なものとなるといえる。
[実施形態6]
図20〜図22は、本発明に係る金属材料の耐候性評価方法を行うための腐食促進試験装置の構成の一例を示す概略図である。本発明の腐食促進試験装置は、図20〜図22に示すように、塩分付着装置、乾燥湿潤試験装置、光照射装置とで構成され、必要に応じて洗浄装置も追加される。これらの図において、符号15はスプレーノズル、16は紫外線照射ランプ、17は試験片、18はステージである。
図20に示す腐食促進試験装置では、塩分付着装置、乾燥湿潤試験装置、光照射装置、洗浄装置が一体装置となっており、定期的に塩分付着を行い、その後、乾燥工程及び湿潤工程の繰り返し、光照射工程、洗浄工程を行う。図21に示す腐食促進試験装置では、一体装置となった塩分付着装置・洗浄装置が、一体装置となった乾燥湿潤試験装置・光照射装置と横並びに配置されており、試験片17(金属材料)は定期的に塩分付着装置・洗浄装置と乾燥湿潤試験装置・光照射装置との間を自動的に移動する。図22に示す腐食促進試験装置では、塩分付着装置と洗浄装置とが一体装置となり、一方、乾燥湿潤試験装置及び光照射装置は別々の装置になっており、塩分付着装置・洗浄装置、乾燥湿潤試験装置及び光照射装置が横並びに配置され、定期的に試験片17(金属材料)は、塩分付着装置・洗浄装置、乾燥湿潤試験装置、光照射装置との間を手動で移動する。
以上のように、本発明の腐食促進試験装置としては、特にその構成は限定しないが、耐候性の評価を行うに当たって、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる工程(A)、金属材料に対して、温度と相対湿度を変化させて設定した乾燥工程及び湿潤工程を行うことを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行う工程(B)、及び、金属材料の表面に紫外線を含む光を照射する工程(C)を実施可能な構成とすることが必須である。また、必要に応じて、金属材料の表面を洗浄水で洗浄する工程(D)を実施可能な装置を追加することが出来る。
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらに限定されるものではない。
塗装された冷延鋼板(有機樹脂層厚:50μm、樹脂種:エポキシ樹脂)及び塗装された溶融亜鉛めっき鋼板(有機樹脂層厚:50μm、樹脂種:エポキシ樹脂)の被評価材(100mm×100mm)に対して、NTカッター(登録商標)を用いて塗膜に長さ70mmのカット傷を入れ、表2、表3、表4及び表5に示す条件で、工程(A)(塩分付着工程)、工程B(乾燥工程と湿潤工程との繰り返し)、工程(C)(光照射工程)を順次行う耐食性評価試験を実施した(本発明例1〜24)。一部の本発明例では、工程(D)(洗浄工程)も実施した。また、比較のために、表6に示す条件で比較例1,2も実施した。比較例1,2ともに、工程(C)(光照射工程)及び工程(D)(洗浄工程)は不実施とした。尚、塩水付着工程は、乾燥工程の開始時に行った。塩水濃度は質量%で示す。また、乾燥工程と湿潤工程との間に移行時間を設ける場合は表の工程(B)の欄に示した。本発明例23〜24は塩水濃度条件、つまり塩分付着量条件を複数設定し、複数の耐食性評価を行った。試験後に試験片表面の塩水付着状況と腐食状況、及び塗膜表面の変色を観察した。ここで、塩水スプレーは液加圧タイプの二流体スプレーノズルを使用し、噴霧された塩化物イオンを含む霧状の塩水の粒径はドップラー法により計測して平均粒径を求めた。また、1回目の塩分付着工程の噴霧直後の試験片を取り出し、付着した塩水の粒径を光学顕微鏡により10点の塩水付着部を観察し、その平均を求めた。また、塩分付着量は、1回目の塩分付着後の金属材料の試験面を、脱イオンを含浸した脱脂綿で払拭し、この脱脂綿を脱イオン水へ浸漬し、溶出したCl濃度をイオンクロマトグラフィーで測定し、試験面積から換算して求めた。紫外線を含む光照射工程は、キセノンランプを使用した。試験期間は28日とした。ここで、実際に家電製品の使用される環境では、塗装冷延鋼板に糸状さびが発生し、塗装亜鉛めっき鋼板ではブリスターは発生しない。
Figure 2009069143
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得られた結果を表7に示す。
Figure 2009069143
表7に示すように、本発明例1〜24の試験条件(本発明例23,24の複数の塩分付着量条件を設け、複数の耐食性評価を行った場合ではその全ての場合)では、塗装された冷延鋼板に糸状さびが発生し、塗装された亜鉛めっき鋼板ではブリスターが発生しないことが確認できた。また、途膜表面の変色が認められ、屋外環境における紫外線による塗膜劣化を再現できていることが確認できた。この結果から、本発明例の試験条件は、家電製品の腐食環境を再現していることが確認できた。
一方、比較例1,2の試験条件では、塗装された冷延鋼板に糸状さびが発生せず、塗装された亜鉛めっき鋼板ではブリスターが発生していることから、家電製品の腐食環境を再現していないことが分かった。また、塗膜表面の変色が認められず、屋外環境における紫外線による塗膜劣化を再現できていなかった。
本発明に係る金属材料の耐候性評価方法を適用するに当たって、その適用範囲は限定することなく、幅広く用いることができる。また本発明の金属材料は、紫外線等の光が照射される屋外使用環境を模擬した腐食試験条件による腐食の情報が添付されているため、例えば、エアコン室外機等の家電製品、住宅の屋根や外壁等建材等で有用な材料といえる。
本発明の第1の実施形態の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第1の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明における金属材料表面への塩分付着方法の一実施態様を示す図である。 本発明の耐候性評価方法での乾燥工程と湿潤工程との条件を示す図である。 本発明の第2の実施形態の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 本発明の第2の実施形態の他の一つであり、金属材料の耐候性評価を行うための腐食促進試験の工程を示す図である。 環境因子として塩分付着量を例にとり、腐食促進試験の或る試験期間における塩分付着量と腐食量の関係を示した図である。 3水準の塩分付着量を設定して腐食促進試験を行ったときの腐食量の経時変化を示した模式図である。 図14に基づき、試験期間t1、t2、t3、t4における塩分付着量と腐食量との関係を示した模式図である。 図14及び図15の結果から予測した塩分付着量dにおける腐食量の経時変化を示した模式図である。 図14及び図15の結果に基づいて、塩分付着量を例に取り、塩分付着量と腐食寿命の関係を示した模式図である。 鋼材の表面処理過程の一例を示すフローチャート図である。 塗装鋼材、化成処理鋼材及びめっき処理鋼材の経年変化を示す模式図である。 本発明の金属材料の耐候性評価方法を行うための腐食促進試験装置の一例を示す概略図である。 本発明の金属材料の耐候性評価方法を行うための腐食促進試験装置の他の一例を示す概略図である。 本発明の金属材料の耐候性評価方法を行うための腐食促進試験装置の他の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 コンプレッサー
2 エアトランスフィルター
3 エアブラシ
4 評価面
5 金属材料
6 塗装鋼材
7 化成処理鋼材
8 めっき処理鋼材
9 鋼
10 めっき層
11 化成処理層
12 塗装膜
13 白錆
14 赤錆
15 スプレーノズル
16 紫外線照射ランプ
17 試験片
18 ステージ

Claims (17)

  1. 下記の工程(A)、下記の工程(B)及び下記の工程(C)の各工程をそれぞれ1回以上行うことにより耐食性を評価することを特徴とする、金属材料の耐候性評価方法。
    工程(A):金属材料に付着した、塩化物イオンを含む塩水の平均粒径が1〜500μmであり、且つ塩分付着量が0.1〜10000mg/m2であって、塩化物イオンを含む塩分を付着させる時間を10分間以内として、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる工程
    工程(B):金属材料に対して、乾燥工程及び湿潤工程での露点変動が±5℃以内の範囲内で温度及び相対湿度を変化させて設定した乾燥工程と湿潤工程とを繰り返すことを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行う工程
    工程(C):金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程
  2. 下記の工程(A)、下記の工程(B)、下記の工程(C)及び下記の工程(D)の各工程をそれぞれ1回以上行うことにより耐食性を評価することを特徴とする、金属材料の耐候性評価方法。
    工程(A):金属材料に付着した、塩化物イオンを含む塩水の平均粒径が1〜500μmであり、且つ塩分付着量が0.1〜10000mg/m2であって、塩化物イオンを含む塩分を付着させる時間を10分間以内として、金属材料の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる工程
    工程(B):金属材料に対して、乾燥工程及び湿潤工程での露点変動が±5℃以内の範囲内で温度及び相対湿度を変化させて設定した乾燥工程と湿潤工程とを繰り返すことを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行う工程
    工程(C):金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程
    工程(D):洗浄水の温度を20〜60℃、洗浄時間を1分以上12時間以下として、金属材料の表面を、塩分を含まない洗浄水で洗浄する工程
  3. 前記工程(D)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内で行うことを特徴とする、請求項2に記載の金属材料の耐候性評価方法。
  4. 前記工程(A)の1回の実施に対し、前記工程(D)の金属材料の表面を、塩分を含まない洗浄水で洗浄する工程を1〜2回以上実施することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の金属材料の耐候性評価方法。
  5. 前記工程(A)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内で行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法。
  6. 前記工程(C)は、168時間に1回〜24時間に1回の範囲内で行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法。
  7. 前記工程(A)の1回の実施に対し、前記工程(B)の乾燥工程と湿潤工程との繰り返しからなる1サイクルを2〜21回実施することを特徴とする、請求項1ないし請求項6の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法。
  8. 前記工程(A)の1〜7回の実施に対し、前記工程(C)の金属材料の表面に、紫外線を含む光を照射する工程を1回実施することを特徴とする、請求項1ないし請求項7の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法。
  9. 前記工程(B)において、乾燥工程及び湿潤工程は下記の条件範囲内で行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項8の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法。
    乾燥工程:温度;20〜60℃、相対湿度;70%以下、保持時間;2〜12時間
    湿潤工程:温度;20〜50℃、相対湿度;80〜96%、保持時間;2〜12時間
  10. 前記工程(B)において、乾燥工程の保持時間を、湿潤工程の保持時間と同等かそれ以上とすることを特徴とする、請求項1ないし請求項9の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法。
  11. 前記工程(C)は、照射時間を1〜24時間とすることを特徴とする、請求項1ないし請求項10の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法。
  12. 下記の条件(E)及び/または下記の条件(F)の2水準以上について、請求項1ないし請求項11の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法を行うことを特徴とする、金属材料の耐候性評価方法。
    条件(E):前記工程(A)における塩分付着量条件
    条件(F):前記工程(B)における乾燥工程の条件と湿潤工程の条件との組み合わせからなる条件
  13. 前記条件(F)が、下記の条件(G)及び/または下記の条件(H)であることを特徴とする、請求項12に記載の金属材料の耐候性評価方法。
    条件(G):露点条件
    条件(H):湿潤率条件(湿潤率=湿潤工程保持時間/(乾燥工程保持時間+湿潤工程保持時間))
  14. 請求項12または請求項13に記載の金属材料の耐候性評価方法により2水準以上で耐候性を評価し、該評価結果に基づき、前記水準間を外れる領域での耐候性を外挿して評価することを特徴とする、金属材料の耐候性評価方法。
  15. 請求項14に記載の金属材料の耐候性評価方法により予測した実構造物の腐食の情報及び/または前記情報を示す記号が添付されていることを特徴とする金属材料。
  16. 請求項14に記載の金属材料の耐候性評価方法により予測した実構造物の腐食の情報を含む電子情報が納入先に送付されていることを特徴とする金属材料。
  17. 請求項1ないし請求項14の何れか1つに記載の金属材料の耐候性評価方法を行うための、金属材料の腐食促進試験装置。
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