JP2001303281A - 耐候性に優れた表面処理鋼材の製造方法 - Google Patents
耐候性に優れた表面処理鋼材の製造方法Info
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Abstract
期間で生成させて無塗装使用時の流れ錆を抑制しうる耐
候性に優れた表面処理鋼材の製造方法を提供すること。 【解決手段】 鋼材表面を、下記A群のイオンから選ば
れた1種または2種以上を合計で0.001 〜0.3mol/l含有
し、あるいはさらに下記B群のイオンから選ばれた1種
または2種以上を合計で3.0 ×10-5〜0.03mol/l 含有す
るpH2.5 以上7.0未満の液1〜5mg/cm2で1〜60分間湿
潤し、次いで乾燥し、次いで洗浄する工程を繰り返す。 (A群)Feイオン、Niイオン、Cuイオン、Coイオン、Cr
イオン、リン酸イオン (B群)Moイオン、Tiイオン、Wイオン、Alイオン、Mg
イオン、Srイオン、モリブデン酸イオン、チタン酸イオ
ン、タングステン酸イオン
Description
面処理鋼材の製造方法に関し、詳しくは、鋼材表面に防
食性を有する錆層を早期に形成させ、流れ錆の発生を防
止した耐候性に優れた表面処理鋼材の製造方法に関す
る。ここに、鋼材は、厚鋼板、薄鋼板、棒鋼、形鋼を含
むものとする。
加し大気中における耐食性を向上させた耐候性鋼は、大
気曝露環境において腐食の原因である酸素、水を通しに
くい安定錆と呼ばれる錆層を数年で形成し、地鉄の腐食
が抑制される。また、この安定錆は普通鋼の錆に比べて
茶褐色で景観にも調和するので、近年、建築外装材や橋
梁等の鋼構造物への使用が増えてきている。耐候性鋼は
防錆塗料の塗布が不要であり、いわゆる裸使用が可能な
メンテナンスフリーで安価な高耐食材料である。
合、従来の耐候性鋼では安定錆が形成されるまでに数年
かかるため、その間錆汁と呼ばれる流れ錆が生じ構造物
およびその土台を著しく汚すという景観上の問題があっ
た。加えて、その期間には浮き錆と呼ばれる剥離性の錆
も少なからず発生し、問題となっていた。さらに、耐候
性鋼では、海岸地帯で使用される場合、飛来する海塩粒
子の作用により安定錆が形成されにくく、腐食の抑制が
認められないという問題もあった。
て、WO99/66093号公報に、C,Si,Mn,P,S,Al,C
u,Ni,Bを特定量含み、あるいはさらにMoを特定量含
み、P,Cu,Ni,Mo,Bの各量が所定の関係を満たすよ
うに成分設計された高海岸耐候性鋼が開示されている
が、この鋼材でもやはり曝露初期の流れ錆は少なからず
発生していた。
ることでその解決を図る方法がこれまで種々検討されて
きた。まず、鋼板表面への塗膜により腐食環境を遮断す
ることが広く行われている。また、特開昭49−11739 号
公報には鋼板表面に、水、腐食液あるいは両者を適用し
て発錆させてから、半透性膜を形成せしめた耐候性錆層
形成鋼材が開示されている。
食性能を有した錆層を形成し、流れ錆を防止する方法も
提案されている。例えば特開平1−142088号公報には酸
性溶液で耐候性鋼板表面を処理した後リン酸塩被膜を形
成させる表面処理方法が開示されている。また、特公平
7−37672 号公報には特殊な組成の錆付け処理液で処理
した錆付け耐候性鋼板が開示されている。また、特許27
65425 号公報には平均結晶粒径200nm 以下の錆層あるい
は平均結晶粒径200nm 以下のα−FeOOH で覆われている
鋼材が開示されている。
鋼表面に塗膜を形成する方法では、塗膜の防食性が高い
ため、安定錆層が生成するまでに数十年の長期間を要
し、その期間、塗膜の劣化により剥離などが生じ、外観
上見苦しくなる問題や、環境により特に劣化が激しい場
合には再塗装の必要が生じて、耐候性鋼材の利点である
メンテナンスフリー性が生かされない問題、あるいは、
塗膜下の腐食進行度合いの違いにより色むらが生じる問
題などがあった。
材に半透性膜を塗布する前に腐食液にて鋼材表面の発錆
を促して流れ錆や剥離錆の抑制効果を高めようとするも
のであるが、同公報第2図に示されるように、錆層自体
の防食効果は不十分であり、また、錆促進処理と塗膜塗
布という2つの処理を行うため工程も繁雑である。これ
に対し、特開平1−142088、特公平7−37672 、特許27
65425 の各号公報所載の技術は、塗料を用いず予め防食
性能を有した錆層を形成して流れ錆の生成を抑制しよう
とするもので、何れにおいても、耐候性を有した錆層の
形成を主眼点として腐食処理液や錆層の形成方法が検討
されている。
載の技術では、pH≦2.3 の酸性腐食液を1回塗布し乾燥
させて錆層を形成し、該錆層にリン酸塩被膜を施す必要
があり、錆付けとリン酸塩被膜の2処理を行うため工程
が繁雑である。なお、リン酸塩被膜処理は簡易な防錆処
理(防錆プライマー処理)として知られている。また、
特公平7−37672 号公報所載の技術では、腐食処理液に
含まれるイオンの濃度を低くし、実際の曝露環境に近づ
けた腐食環境中で耐候性錆層を形成するが、同公報第1
図に示されるように、曝露初期の腐食抑制効果は必ずし
も十分なものではでなく、この間にやはり流れ錆を発生
するという問題があり、さらには錆付け処理に数日もの
長期間を要する問題もあった。
は、平均結晶粒径200nm 以下の錆層または平均結晶粒径
200nm 以下のα−FeOOH で覆われた鋼材を得るには、硫
酸クロム溶液を塗布して曝露するか、曝露によって生じ
た錆上に硫酸クロム溶液を塗布すればよいのであるが、
溶液を塗布して曝露するだけでは、場所によっては降雨
により硫酸クロムが流されてしまいその効果が十分では
なく、同じ建造物あるいうは橋梁で、場所によって錆の
進行などにむらができて外観上見苦しいという問題があ
った。なお、これに関連して、特許2666673 号公報等
に、塗料中に硫酸クロム等の錆安定化に有効な物質を含
有する塗料が開示されているが、前述のように塗膜では
防食性が高すぎて安定錆層の生成までに長期間を要する
問題がある。
鋼板に予め防食性に富む錆層を生成させてその後の曝露
での流れ錆低減を図ることは重々検討されてきたのであ
るが、当該錆層をむらなく短期間で生成させる手段につ
いては全く検討されていなかった。そこで、本発明は、
鋼材表面に防食性に富む錆層をむらなく短期間で生成さ
せて無塗装使用時の流れ錆を抑制しうる耐候性に優れた
表面処理鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
生させるには、鋼板上に水を供給すればよいが、常に水
が存在した状態(湿潤状態)では鋼板に密着した錆は生
成しない。鋼板に密着した錆を生成させるには、水と鉄
との反応生成物である水酸化第一鉄を、乾燥工程により
酸化、結晶化する必要がある。耐候性鋼に生じる錆も自
然の曝露環境中で湿潤、乾燥の繰り返しにより徐々に形
成される。メカニズムは必ずしも明らかではないが、耐
食性に優れた緻密で密着した錆層が、湿潤→乾燥(乾
湿)の繰り返しによって生成することは、かなり以前か
ら知られている(例えば特開昭49−11739 号公報の実施
例参照)。
に富む錆層の早期生成は望めない。そこで、本発明者ら
は、乾湿繰り返し処理の中身を詳細に検討し、その結
果、鋼板表面上の液の量と存在時間、液のpH、液中に存
在するイオンの種類および量を特定の範囲に保ち、さら
に、乾燥後に洗浄を導入することにより、耐候性に優れ
た錆層を短期間で生成させうることを見いだすに到り、
以下の通りの本発明をなした。
選ばれた1種または2種以上を合計で0.001 〜0.3mol/l
含有するpH2.5 以上7.0 未満の液1〜5mg/cm2で1〜60
分間湿潤し、次いで乾燥し、次いで洗浄する工程を繰り
返すことを特徴とする耐候性に優れた表面処理鋼材の製
造方法。 記 (A群)Feイオン、Niイオン、Cuイオン、Coイオン、Cr
イオン、リン酸イオン (2)前記液がさらに下記B群のイオンから選ばれた1
種または2種以上を合計で3.0 ×10-5〜0.03mol/l 含有
することを特徴とする(1)記載の方法。
イオン、Srイオン、モリブデン酸イオン、チタン酸イオ
ン、タングステン酸イオン (3)前記洗浄は洗浄水100mg/cm2 以上にて行う(1)
または(2)に記載の方法。
面上に液が鋼材表面積1cm2 当たりXmgの量で存在する
ことを意味する。
液(湿潤液という)は、水に所定種の成分を所定の濃度
となるように溶解してなる水溶液からなる。本発明で
は、湿潤状態での鋼材表面上の液量を1〜5mg/cm2の範
囲に記載した。この液量が1mg/cm2未満では腐食の進行
が遅く錆形成に長時間を要し、一方、5mg/cm2超では錆
/地鉄界面への酸素の供給が不十分となり腐食生成物と
して非密着性のFe3O4 を生じて耐候性錆層が形成されに
くい。鋼材表面上の液量を1〜5mg/cm2の範囲に制御す
るための給液方法は、定量自動給液を容易になしうる噴
霧法や塗布法が好ましい。なお、前記特開昭49−11739
号公報所載の方法では鋼材を液中に浸漬する浸漬法によ
り鋼材表面を湿潤しているが、浸漬法では腐食の進行が
遅く、密着性錆層が形成されにくい。
分とした。この継続時間が1分未満では腐食があまり進
行せず耐候性錆層の形成に要する繰り返し回数が多くな
り、一方、60分超では錆中にFe3O4 が多く生成し、また
粗大な針状の錆も生じるため錆層の耐候性が劣化する。
本発明では湿潤の次に必ず乾燥を行う。鋼材表面の乾燥
が不十分のまま次の湿潤に移行すると錆の結晶化過程で
粗大な針状の錆が生成し錆層の耐候性が劣化する。また
場合によってはむらのある錆が生成し、外観上の問題も
生じる。
燥後の洗浄を省くと、前回の湿潤液中の種々の成分が局
所的に残留かつ濃縮し、かかる局所は、次回の湿潤の際
にそこの成分濃度が他所よりも高い濃化部分となり、か
ような濃化部分が生成すると、緻密で耐食性に優れた錆
層の形成が阻害されたり既に生成した錆層が破壊された
りして、錆層の防食性が劣化する。
回数(サイクル数)は、10〜300 回が好ましい。サイク
ル数が10回未満では形成した錆層の厚さが薄すぎて曝露
環境での流れ錆発生を防止することが難しく、一方、30
0 回超では錆層の防食性が飽和して時間を空費するだけ
となり経済的に不利である。また、乾燥の所要時間は特
に限定されず、例えば鋼材のサイズや乾燥用装置の仕様
によって適宜設定すればよいのであるが、錆層形成期間
を短縮するためには乾燥完了後に遅滞なく次の洗浄に移
行するのが好ましい。
満に規定した。地鉄の電気化学的な溶解が十分な速度で
進行するためには液が酸性側にある必要があることから
液のpHを7.0 未満とした。一方、pHが2.5 を下回る酸性
液では地鉄の溶解が進みすぎ、湿潤状態を維持するため
の液噴霧の度に地鉄の溶解と共に錆が除去されてしまう
ため密着した錆が形成されにくい。
から選ばれた1種または2種以上の総イオン濃度(A群
イオン濃度という)が0.001 〜0.3mol/lになる液とし
た。その原理は未だ解明されていないが、A群のイオン
には腐食を促進し錆層の形成を早めると同時に、形成さ
れる錆層を緻密にして耐食性を高める効果がある。湿潤
液のAイオン濃度が0.001mol/l未満ではその効果に乏し
く、一方0.3mol/l超では錆の結晶化過程で結晶成長速度
が過大となり錆が粗大化して耐候性が劣化する。
から選ばれた1種または2種以上の総イオン濃度(B群
イオン濃度という)が3.0 ×10-5〜0.03mol/l になる液
が好ましい。かかる液で湿潤すれば、さらに錆層が緻密
化し、より一層耐候性優れた錆層を形成することができ
る。湿潤液のB群イオン濃度が3.0 ×10-5mol/l 未満で
はこの効果に乏しく、一方、0.03mol/l 超では、錆の結
晶化過程で結晶成長速度が過大となり錆が粗大化して耐
候性が劣化する。
B群のイオンを生成しうる塩化物、硫酸塩、酸などを所
定の濃度、pHとなるように水に溶解すればよい。本発明
では、洗浄は、鋼材表面に洗浄水100mg/cm2 以上を供給
して行うのが好ましい。洗浄水の量が100mg/cm2 に満た
ないと洗浄効果に乏しい。また、用いる洗浄水としては
純水、イオン交換水、水道水、一般的な工業用水のいず
れも用いることができる。
した耐候性錆層を短期間で形成されてなる表面処理鋼材
では、無塗装使用時の流れ錆発生が大幅に低減し、景観
上のあるいは環境汚染の問題が解決される。この効果は
安定錆が形成されにくいとされる海岸地帯でも発揮さ
れ、海岸に近い地域でも鋼材からの流れ錆発生が格段に
低減する。
S G3114 に規定されたSMA400AW,SMA400AP,SMA400BW,SMA
400BP,SMA400CW, SMA400CP,SMA490AW,SMA490AP,SMA490B
W,SMA490BP,SMA490CW, SMA490CP,SMA570W,SMA570P のい
ずれかに該当するものが好ましく、また、とくに海岸地
帯での使用に供する場合には、前記WO99/66093号公報所
載の鋼組成を有する高海岸耐候性鋼材が好適である。
×65×8mmの鋼板(供試材)を採取し、表面をショット
ブラスト加工して、図1に示す錆促進処理装置の槽1内
に安置し、湿潤→乾燥→洗浄を繰り返す錆促進処理を行
った。なお、鋼AはJIS G3114 に規定の耐候性鋼に属
し、鋼Bは前記WO99/66093号公報所載の高海岸耐候性鋼
に属する。
液(湿潤液)をポンプ3で槽上部に設置したスプレーノ
ズル4に送給することにより行われる。湿潤工程では、
鋼板毎に均一な液量が供給されるようにノズル配置を定
め、鋼板表面上の液量はスプレー時間を変えることによ
り調整した。なお給液後は加湿装置5を用いて槽内を湿
度80%以上に保ち鋼板表面上の液の蒸発逃散を防いだ。
乾燥工程では、ブロワ6で槽内にドライエアを導入する
ことにより鋼板表面上の液量を0.3mg/cm2 まで低下させ
た。洗浄工程では、鋼板表面に洗浄水を供給した。
液の組成とpHおよび液量(鋼板単位面積当たり)、湿潤
時間、洗浄水の種類と水量(鋼板単位面積当たり)、サ
イクル数を種々変えた。上記錆促進処理後に鋼板を槽か
ら取り出し、図2に示すように、架台10に試験片(鋼
板)Sを取り付け、この架台を、塩水噴霧→乾燥→湿潤
を繰り返し行う塩乾湿複合サイクル腐食試験機に試験角
度(鋼板面と水平面とのなす角度)15°で取り付け、同
試験機を稼働させて塩乾湿複合サイクル腐食試験を行っ
た。サイクル腐食条件は、{0.1 %食塩水噴霧35℃×6
時間→60℃×2時間乾燥→40℃×2時間湿潤}×5サイ
クルとした。
ート白板11に付着した流れ錆による着色を色差計にて測
定した。着色は、色立体上のL,a,b 値で測定される。流
れ錆が付着していないブランク部のL,a,b 値と着色部の
L,a,b 値から色立体上の距離を計算し、色差とした。着
色部の測定点は最も激しく着色した上部の1点とその1
cm下、2cm下の計3点とし、これら3点の色差を積算し
た値(3点積算色差という)により耐流れ錆性を評価し
た。ここに、流れ錆が目立たなくなる3点積算色差は15
以下である。実験条件と結果を表2〜3に示す。
て15以下であり、流れ錆は極めて軽度である。
い防食性能を有した耐候性錆層が短期間で形成され、無
塗装使用時の流れ錆発生が大幅に低減し、景観上のある
いは環境汚染の問題が解決され、しかもこの効果は安定
錆が形成されにくいとされる海岸地帯でも発揮され、海
岸に近い地域でも鋼材からの流れ錆発生が格段に低減す
るという優れた効果を奏する。
Claims (3)
- 【請求項1】 鋼材表面を、下記A群のイオンから選ば
れた1種または2種以上を合計で0.001 〜0.3mol/l含有
するpH2.5 以上7.0 未満の液1〜5mg/cm2で1〜60分間
湿潤し、次いで乾燥し、次いで洗浄する工程を繰り返す
ことを特徴とする耐候性に優れた表面処理鋼材の製造方
法。 記 (A群)Feイオン、Niイオン、Cuイオン、Coイオン、Cr
イオン、リン酸イオン - 【請求項2】 前記液がさらに下記B群のイオンから選
ばれた1種または2種以上を合計で3.0 ×10-5〜0.03mo
l/l 含有することを特徴とする請求項1記載の方法。 記 (B群)Moイオン、Tiイオン、Wイオン、Alイオン、Mg
イオン、Srイオン、モリブデン酸イオン、チタン酸イオ
ン、タングステン酸イオン - 【請求項3】 前記洗浄は洗浄水100mg/cm2 以上にて行
う請求項1または2に記載の方法。
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JP2000123598A JP4415449B2 (ja) | 2000-04-25 | 2000-04-25 | 耐候性に優れた表面処理鋼材の製造方法 |
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