JP3331547B2 - 劣化促進試験方法 - Google Patents

劣化促進試験方法

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JP3331547B2 JP2000116204A JP2000116204A JP3331547B2 JP 3331547 B2 JP3331547 B2 JP 3331547B2 JP 2000116204 A JP2000116204 A JP 2000116204A JP 2000116204 A JP2000116204 A JP 2000116204A JP 3331547 B2 JP3331547 B2 JP 3331547B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】金属、塗膜、ゴム、化学材
料、樹脂材料などの劣化促進試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属、塗膜、ゴム、化学材料、樹脂材料
などの耐候性、耐光性、耐腐食性評価試験、いわゆる材
料の劣化促進試験方法は、ISO、JIS規格等で促進
耐候性試験、腐食促進試験という名称で多く採用されて
いる。
【0003】促進耐候性試験は、大気環境下の劣化因子
である光(特に紫外線)、温度、湿度、降雨(水噴霧)
を試験機で再現させ、材料の劣化を調べる試験で、人工
光源(紫外線カーボンアーク灯、サンシャインカーボン
アーク灯、キセノンアークランプ、紫外線蛍光ランプ、
メタルハライドランプ)、スプレー装置等を有し、屋外
自然暴露との相関性を見ながら、長期期間使用後(5
年、10年若しくはそれ以上)の結果を、短期間で調べ
るものである。
【0004】その促進暴露(耐候性)試験方法の一例と
して、JIS A 1415(高分子系建築材料の実験
室光源による暴露試験方法)がある。この規格に記載さ
れている試験条件は、図1で示すように、光照射120
分中12分降雨(水噴霧)を1サイクルとして連続試験
を行う。その際のブラックパネル温度(以下BPT)
は、63±3℃(試験槽内温度;約42℃)、相対湿度
50±5%である。
【0005】上記試験条件における劣化作用は、塗膜を
例にとると、光(特に紫外線)が、高分子化合物の結合
エネルギーの弱い部分を解離させ、励起状態にする。降
雨を擬似化した水噴霧及び湿度、いわゆる水分は、同じ
く高分子化合物の化学変化を引き起こし、塗膜中へ浸透
し、膨潤させ、塗膜内部に酸素を運び、素地に達し、腐
食させる。また、試験槽内に存在する酸素は、化学変化
を引き起こし、励起された水素と結合し、酸化され、高
分子化合物の主鎖の切断、橋かせとなる。このような作
用から劣化が促進される。
【0006】また、腐食性促進試験方法として、古くか
ら採用されている規格として、JIS Z 2371
(塩水噴霧試験方法)がある。この試験は、腐食因子の
内の1因子である「5vol%中性塩化ナトリウム溶
液」を試験槽の中央部に位置する噴霧塔からミストマイ
ザーで試験槽内に該溶液を試験片の上方に噴霧させ、噴
霧された溶液が、自然落下し、試料片に降り注ぐもの
で、試験槽温度を35±2℃に保ち、連続試験し、耐食
性を調べる最も基本的な試験法である。
【0007】また、単一腐食因子でなく、複数の腐食因
子を用い、サイクル的に試験する複合サイクル試験方法
として、代表的な例として、JASO M 609 (自
動車用材料腐食試験方法)がある。このサイクルは、図
2で示すように、塩水噴霧(5vol%中性塩化ナト
リウム溶液)を試験槽内温度35±1℃で2時間、乾
燥(60±1℃)を相対湿度20〜30%RHで4時
間、湿潤(95%RH以上)を試験槽内温度50±1
℃で2時間を1サイクルとして、任意回数繰り返し行
う。この試験方法は、塗装鋼板について塗膜下腐食を評
価対象とし、塗膜フクレ及び塗膜剥離(はくり)幅の測
定を規定している。
【0008】複合サイクル試験で、光照射(紫外線劣
化)と組み合わせ防食性能を評価する試験方法として
は、JIS K 5621(一般さび止めペイント)が
ある。これは、前処理として、サンシャインウェザーメ
ーターで60時間光照射を行い、塩水噴霧(5vol
%中性塩化ナトリウム溶液)を試験槽内温度35±2℃
で0.5時間、湿潤試験(95±3%RH)を試験槽
内温度30±2℃で1.5時間、熱風乾燥試験(50
±2℃)で2時間、温風乾燥試験(30±2℃)で2
時間、からを1サイクル(合計時間6時間)とし
て、28サイクル行うものである。この試験法は、光照
射(紫外線)劣化後の腐食進行を評価するのに適してい
ると言われている。
【0009】その他複合サイクル試験で、5vol%中
性塩化ナトリウム溶液中に試料片を水没させる浸漬試験
を含んだ試験方法の代表例として、SAE J 104
7がある。この試験方法は、浸漬試験(5vol%中
性塩化ナトリウム溶液)、液温52℃で5分、乾燥
(12%RH)、試験槽内温度52℃で3時間、湿潤
(98%RH)、試験槽内温度52℃で4時間55分、
からを1サイクル(合計時間8時間)として任意回
数サイクル行うものがある。
【0010】複合サイクル腐食試験に関しては、上記以
外に塩水噴霧、湿潤、乾燥、浸漬の試験項目の順序や組
合せを変えたり、試験時間を変えたサイクル試験パター
ンが、他にも数多く文献に紹介されている。
【0011】上記腐食促進試験で用いられる各劣化因子
の材料に対する劣化作用は、塩水噴霧、浸漬に使用され
る塩水(5vol%中性塩化ナトリウム溶液)は、材料
に化学変化を引き起こし、電導性を高め金属の腐食を起
こさせ、湿潤における水分が、酸素キャリアの役目をな
し腐食進行を促し、乾燥は、材料に熱作用を与え、複合
材料間で見られる各材料独自の熱膨張係数の差で引き起
こされる歪で被試験体の疲労劣化をさせる。このような
上記劣化因子を複合化させることで、腐食がより促進さ
れる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】促進耐候性試験、腐食
促進試験方法は、屋外自然暴露試験との相関性を取りな
がら、材料の耐久性、寿命を調べるのに大変有効な試験
として、産業のあらゆる分野において広く普及し、使用
されている。しかし、一方で試験に要する時間や試験に
使われる劣化因子の問題がある。
【0013】新材料の研究開発競争は、日々激しさを増
しており、該新材料の性能の評価を正確に、しかも出来
るだけ短時間で調べられる試験法が切望されている。
【0014】現状試験結果を得るのにどれくらいの時間
が必要とするかは、試験後の材料特性評価項目によって
異なるが、促進耐候性試験結果の一例をあげると、
(社)自動車技術会の外装キセノン分科会の報告書で
は、自動車外装部品に使用される塗料、プラスチックを
色差、光沢で評価した場合、光源の放射照度が300〜
400nmで60W/m、102分光照射後、18分
間光照射及び水噴霧、BPT63±3℃の条件で、沖縄
暴露2年が光の積算放射照度量600MJ/mとの間
に相関性が見られるとある。前記積算放射照度量600
MJ/mを時間に換算すると約2778時間、日数に
換算すると2778時間÷24時間=約116日に相当
する。
【0015】一方、腐食試験結果の一例をあげると、J
ASO M 609のテクニカルレポートに腐食減量で
評価した場合、鋼板については45サイクル(8h×4
5サイクル=360時間÷24時間=15日)が沖縄暴
露の約1年、塗装材については180サイクル(8h×
180サイクル=1440時間÷24時間=60日)が
沖縄暴露の約1年6ヶ月にほぼ相当すると報告がある。
【0016】上記のことから、屋外暴露結果1年から2
年の結果を得るのに、昼夜連続運転試験をしても、約2
週間から約3ヶ月が必要である。また、それからの多岐
に渡る評価解析を含めると、最低でも約半年が必要とさ
れる。つまり、日数的には1年を3分の1から2分の1
程度にしか、短縮できないことになる。仮に、材料の製
品寿命を10年と設定し、材料の10年後の結果を得る
為には、試験機に掛けて、連続運転試験をしても、約1
年6ヶ月以上必要となる。
【0017】耐候性、耐腐食性試験に使われている劣化
因子による劣化パターンに視点を移してみると、耐候性
試験の場合、劣化因子の内、光(特に紫外線)と水分が
劣化因子の中心である。光(特に紫外線)は、化合物の
結合エネルギーの弱い部分を解離(破壊)し、励起状態
にするのを誘発し、そこに水分が加わることで加水分解
を引き起こし劣化を促進させる。塗膜の劣化パターンで
見てみると、光(特に紫外線)で塗膜表面の結合エネル
ギーが解離(破壊)された部分に、水が加わると浸透圧
の関係で塗膜中に水分が侵入し、塗膜を膨張させ、フク
レ、ひび割れ等を引き起こす。また、水が塗膜を通っ
て、被塗物(金属)面に達した場合、加水分解によって
腐食が始まり、腐食生成物によって塗膜が浮き上がり、
被塗物と塗膜層間に剥離(はくり)現象引き起こす。
【0018】耐腐食性試験では、金属が周囲の環境中の
特に水(湿気)、塩分によって化学的又は電気化学的に
侵され、錆が現れる現象を再現させることに主眼が置か
れている為、主要な劣化因子は、湿潤(湿り気)状態、
いわゆる水分と塩水溶液である。塗膜を例にすると、水
分の塗膜に対する劣化作用に関しては上記で説明した通
りで、塩水溶液は塗膜の伝導性を高め、被塗面(金属)
の腐食を促進させる。
【0019】確かに、上記に取り上げた劣化因子は、そ
れぞれ劣化促進作用の中核を為すものであるが、他にも
劣化を促進させる重要な因子がある。それは、「温度
(又は熱)」と「溶液濃度」である。
【0020】工業材料が置かれている環境を考えてみる
と、屋外の自然環境においても、日々繰り返される昼夜
の温度差があり、屋外と屋内における温度差もあるよう
に、自然環境下でも、実際材料は、「温度ショック」を
受けている。例えば、夏場の冷房の効いた屋内と太陽が
燦燦と降り注ぐ屋外、冬場の暖房の効いた屋内と寒風吹
き荒ぶ屋外が、それであり、また、自動車を例にとる
と、ボンネットはエンジンから発せられる熱(温度)と
外気に曝され、常にボンネットの表側と裏側に強烈な温
度差が生じている。冬場、ボンネットから立ち上る湯気
を見れば、理解ができる。
【0021】また、近年、新聞紙上等で、酸性雨による
森林被害や建物の被害が、報告されているが、これは、
濃度面から言うと、本来中性である雨が、酸性化し、p
H濃度が高くなってきていると言える。
【0022】温度は、上昇すると材料の化学反応速度を
増加させる作用をもつ。材料は、熱(温度)によって膨
張する。材料には、それぞれ独自の熱膨張係数があり、
膨張の割合は材料によって異なる。よって、塗膜と金属
などの被塗物とが合わさった場合、それぞれの熱膨張係
数の違いによって、層間劣化、物性疲労が起こること
は、知られている。
【0023】各材料が持っている独自の熱膨張係数を利
用して、材料に対し、直接材料の表側と裏側とに温度差
をつけたり、温度差をつけた所定の試験温度を複数設定
し、それをサイクル的に試験を行い、強制的に「温度シ
ョック」を与えれば、材料の膨張−収縮が繰り返され、
膨張−収縮の速度を増加させ、機械的劣化(疲労)作用
を材料に与えることで、劣化を促進させる事が出来る。
【0024】上記から、強制的な「温度差」が材料の劣
化促進に与える影響は、大きい。よって、「温度差」と
いう劣化因子を複合サイクル試験において、光(特に紫
外線)、水分、塩水等と同レベルの試験項目の一つとし
て取り上げ、試験することができれば、従来の試験法よ
りも、より促進のある劣化試験方法を提供できる。
【0025】しかし、上記で取り上げた従来の複合サイ
クル試験法の中に「温度」の概念が全く考慮されていな
いという訳ではでなく、上記で取り上げたJASO M
609から「温度」に関する要素を抜き出すと、塩
水噴霧、試験槽内温度35±2℃で2時間、乾燥、槽
内温度60±1℃で4時間、湿潤、槽内温度50±1
℃で2時間である。確かに、各試験過程において、温度
条件が設定されており、各試験過程での温度条件が異な
っているから、各試験過程に移ることで、「温度差」も
存在する。しかし、これは、各試験温度条件を見比べ
て、結果的に、「温度差」が存在していると言うだけ
で、元々「温度差」、「温度ショック」という劣化因子
を一試験項目条件として、この試験法に効果的に盛り込
んでいる訳ではない。
【0026】上記で見出される「温度差」、温度変化
は、各試験過程の試験時間からみて、大変ゆるやかな動
きをしている。しかも、熱(温度)の材料への伝わり方
は、材料(試験片)が置かれている場所の周囲の調節さ
れた雰囲気温度、いわゆる空気温度が間接的に材料に伝
わるため、材料(試験片)への熱(温度)の伝達速度も
ゆるやかである。
【0027】「温度差」という劣化因子は、急激に温度
の差を材料に与える事で、材料の劣化を促進させ、劣化
現象を顕著に再現できる。このことから、従来の複合サ
イクル試験において、「温度差」という劣化因子の概念
が、一試験項目として取扱われ、一試験条件を成し、試
験に盛り込まれているものはない。
【0028】また、「溶液濃度」に関しては、耐候試験
の水噴霧の溶液は、蒸留水又は脱イオン水でpH7、腐
食試験関係では、塩水噴霧試験方法の溶液は、5vol
%中性塩化ナトリウム溶液でpHが6.5〜7.2、キ
ャス試験方法の溶液は、CASS溶液(5vol%中性
塩化ナトリウム溶液に塩化第二銅、氷酢酸を添加した溶
液)でpHが3.1〜3.3、酸性雨試験方法の溶液
は、人工酸性雨溶液(5vol%中性塩化ナトリウム溶
液に硝酸、硫酸を添加した溶液)でpH3.5である。
【0029】濃度による物の劣化に関しては、pHが1
0以上のアルカリ性環境では、金属体の腐食速度は非常
に遅く、pHが4.3以下の酸性の環境における金属体
の腐食速度は、急速に進行する。pHが中性あるいは中
性に近い環境における金属体の腐食速度は、中程度であ
る。
【0030】上記の各溶液を腐食速度の関係から比較す
ると、pHが中性の水噴霧に使用される蒸留水又は脱イ
オン水や塩水噴霧試験に使用される5vol%中性塩化
ナトリウム溶液よりも、CASS溶液や人工酸性雨溶液
の方が腐食速度が早い。
【0031】上記で取り上げた試験溶液は、従来腐食性
試験において、ほとんど一試験法に一種類の試験溶液し
か使用しない。ましてや、温度差をつけた試験溶液を使
用している試験方法はない。
【0032】本発明は、材料の劣化促進に効果のある
「温度差」及び「濃度差」の劣化因子を、一試験項目と
して取り扱い、従来の複合サイクル試験方法に、組み込
み、より促進性のある劣化促進試験方法を提供すること
を目的としている。
【0033】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本出願人は、何故、従来の複合サイクル試験方法の
中に、「温度差」及び「濃度差」の劣化因子が、一試験
項目として取り扱われていない、或いは取り扱えなかっ
た原因を再考し、その原因が、試験機の温度調節手段に
あることに気づいた。
【0034】つまり、複合サイクル試験を行う為の複合
サイクル試験機や、電子部品材料の温度サイクル試験を
行う恒温槽における温度調節は、試験槽内に存在する空
気を試験槽とヒ−タや冷凍機等からなる温度調節装置と
の間を循環させて制御している。そのために、ある低い
設定温度からある高い設定温度に移行する場合、又はそ
の逆に移行する場合、設定温度まで到達するのに瞬間的
ではなく時間を要する。ましてや、設定温度の差を大き
くすればするほど、試験槽の容積が大きければ大きいほ
ど、設定温度までの到達時間は長くなる。前記到達時間
を短くしようとすれば、大掛かりな装置と電源容量が必
要となる。
【0035】短い時間間隔で「温度差」を与えること
で、効果的に材料劣化が促進されることを考慮すると、
試験槽内の空気温度を制御して「温度差」劣化試験を行
うことは、困難である。
【0036】そこで、本発明では、まず、試験片への温
度(熱)の伝達媒体(手段)を、従来の「空気」ではな
く、「液体」にした。
【0037】温度(熱)の伝達媒体(手段)を「液体」
にすることで、装置的にも、従来の複合サイクル試験機
に複数個の温度調節可能な溶液タンク、試験片に直接溶
液を与える為の噴霧ノズルやシャワーノズル、配管、溶
液供給の回路を切換えるための電磁弁等を追加すること
で、試験片表面に所定温度に調節された液体(本発明で
いう試験溶液)を与え、温度(熱)を直接伝達すること
ができる。前記試験溶液を試験片表面に与える手段とし
ては、噴霧、散水、冠水等何れの手段を使ってもよく、
試験片と試験溶液供与装置との距離は5cm以内の近距
離であることが好ましい。該試験装置であれば、従来の
塩水噴霧、乾燥、湿潤を繰り返し行う複合サイクル試験
も問題無く行える。
【0038】また、温度(熱)の伝達媒体(手段)を
「液体」にすることで、独立した「温度差」劣化促進因
子の試験項目が追加できるばかりでなく、「濃度差」と
いう劣化促進因子を「温度差」の中に付加することがで
きる。よって、様々な試験溶液の種類の組合せが可能に
なる。例えば、水と5vol%中性塩化ナトリウム溶
液、5vol%中性塩化ナトリウム溶液と人工酸性雨溶
液、或いは水と人工酸性雨溶液等の組合せができる。
【0039】従来の試験方法においては、上記で取り上
げたJASO M 609でも判るように、塩水噴霧試
験終了後に乾燥試験、乾燥試験終了後に湿潤試験、湿潤
試験終了後に再び塩水噴霧試験を行うというように、各
試験が横並びの状態で、1試験終了後に次試験が続いて
行き、決して、2つの試験項目を同時に、いわゆる2つ
の試験項目を重ね合わせた形で試験は、行われていな
い。唯一、2つの試験項目を重ね合わせたものとして、
耐候性試験に、光照射及び水噴霧(降雨)の試験条件が
ある。しかし、本発明では、温度(熱)の伝達媒体(手
段)を「液体」にすることで、試験装置的にもシンプル
な構成ですみ、「温度差」及び「濃度差」の試験項目を
独立して取扱う事が出来るので、任意の1試験項目過程
中に自由に加えられる特徴がある。
【0040】例えば、光照射(特に紫外線)試験過程中
では、例えば、紫外線で高分子材料の高分子化合物の結
合エネルギーが解離させられている状態の時に、本発明
の溶液を手段とする「温度差」の試験を重ね合わせれ
ば、熱膨張率による物性疲労が加わり、劣化の促進をよ
り速めることができる。
【0041】湿潤試験過程中で、本発明の溶液を手段と
する「温度差」+「濃度差」の試験を重ね合わせれば、
腐食発生を速めることができるし、発生後の腐食進行を
も速めることができる。
【0042】乾燥試験過程中で、本発明の溶液を手段と
する「温度差」+「濃度差」の試験を重ね合わせれば、
より厳しい熱膨張率による物性疲労が加わり、劣化の促
進を速めることができる。
【0043】本発明における各試験溶液の供給時間に関
しては、短時間の方が好ましい。その理由として、「結
露」との兼ね合いである。耐候性試験の中に、一試験条
件(項目)として、「結露」試験がある。この試験は、
試験片で光が照射される面を表とし、裏面側からノズル
で冷水を掛けたり、電子冷却素子を用いたりして、試験
片裏面を冷やし、試験片表面に露を結ばせ、試験片表面
の劣化を見るものである。本発明においても、試験片表
面に冷えた溶液を与える為、長い時間与え続けると、試
験片裏面に結露し、試験片裏面からの劣化を引き起こす
恐れがあるので、結露を引き起こさない程度の供給時間
を設定することが、好ましい。
【0044】
【実施例】次に本発明の劣化促進試験方法の実施例を図
に基づき説明する。
【0045】図3は、従来の複合サイクル試験方法JA
SO M 609をベースに本発明の試験方法を組み入
れた試験の実施例1である。
【0046】これは、乾燥試験過程中に温度差劣化試験
を組み入れた一試験方法例で、該乾燥試験過程中で試験
槽内の空気温度が60±1℃に調節されている為、試験
片もほぼ60℃に保たれた状態で4時間放置される。そ
の放置されている時間に、直接水供与過程として、p
H7の蒸留水又は脱イオン水を溶液温度約7℃で2分、
該過程終了後、直接水供与過程として、pH7の蒸留
水又は脱イオン水を溶液温度約70℃で2分行う過程を
1サイクルとして、該サイクルを間欠的且つ任意回数行
うものである。
【0047】上記試験法例は、本発明の温度差劣化因子
を効果的に使うもので、試験槽内空気温度に暖められた
試験片に直接7℃の冷水を与え一気に冷却し、すぐ70
℃の温水を与えて、ほぼ試験槽内空気温度に試験片の温
度を戻すもので、試験片の表面にとって、かなり厳しい
負荷(物性疲労)が与えられ、劣化を促進することがで
きる。
【0048】図4は、同じく従来の複合サイクル試験方
法JASO M 609をベースに、図3で示した温度
差劣化因子に濃度差劣化因子を加えた試験方法の実施例
2である。
【0049】これは、湿潤試験過程中で、試験片が試験
槽内温度とほぼ同じ50℃に保たれ2時間放置されてい
る過程に、直接CASS溶液供与過程として、pH
3.1〜3.3のCASS溶液を溶液温度50℃で2
分、該過程終了後、直接水供与過程として、pH7の
蒸留水又は脱イオン水を溶液温度約7℃で2分行う過程
を1サイクルとして、該サイクルを間欠的且つ任意回数
行うものである。
【0050】上記試験法例は、湿潤環境下で腐食進行状
態にある材料(試験片)表面が、濃度差を付けたCAS
S溶液を与えることで、腐食促進速度を更に速め、直接
7℃の冷水を与えられ一気に冷却されることで、物性疲
労を起こし、試料表面の歪、ひび割れ等の劣化を促進す
る効果を得ることができる。更に、CASS溶液供与過
程から水供与過程の順番にしておけば、湿潤試験過程か
ら塩水噴霧試験過程に移行する際に、試験片についたC
ASS溶液を一旦洗い流して、塩水噴霧試験過程へ移行
できる。
【0051】図5は、温度差劣化因子に濃度差劣化因子
を加えた試験方法の実施例2を更に複合化した実施例3
である。
【0052】これは、乾燥試験過程中で、試験片が試験
槽内温度とほぼ同じ60℃に保たれ4時間放置されてい
る過程に、直接水供与過程として、pH7の蒸留水又
は脱イオン水を溶液温度約7℃で2分、該過程終了後、
直接水供与過程として、pH7の蒸留水又は脱イオン
水を溶液温度約70℃で2分、該過程終了後、直接C
ASS溶液供与過程として、pH3.1〜3.3のCA
SS溶液を溶液温度35℃で2分、該過程終了後、直
接CASS溶液供与過程として、pH3.1〜3.3の
CASS溶液を溶液温度50℃で2分行う過程を1サイ
クルとして、該サイクルを間欠的且つ任意回数行うもの
である。
【0053】この試験法例は、水とCASS溶液との濃
度差劣化と各試験溶液においても温度差劣化の試験を行
うもので、湿潤環境下で腐食進行状態にある材料(試験
片)表面が、濃度差を付けたCASS溶液を与えること
で、腐食促進速度を更に速め、各試験溶液においても温
度差を与えることにより、物性疲労を起こし、試料表面
の歪、ひび割れ等の劣化を促進する効果を得ることがで
きる。
【0054】
【発明の効果】本発明は、以下に記載されるような効果
を奏する。
【0055】まず、試験片への温度(熱)の伝達媒体
(手段)を、従来の「空気」ではなく、「液体」にした
こと、つまり、温度(熱)の概念を「液体」に含ませる
ことで、材料の劣化因子である温度ショックいわゆる温
度差劣化試験を単独の試験条件(項目)として、従来の
複合サイクル試験法の中に、存在させることができた。
【0056】更に、液体にした利点として、温度差劣化
試験の組合せができるだけでなく、試験溶液の種類の組
合せ、濃度差の劣化因子を含んだ劣化促進試験の組合せ
加えることができ、試験パターンのバリエーションを増
やすことができた。
【0057】しかも、本発明における温度差及び濃度差
劣化試験条件は、従来の複合サイクル試験での任意の試
験過程中(但し、浸漬試験過程中は除く。)、例えば、
乾燥試験過程中とか湿潤試験過程中等に自由に重ね合わ
せることができるため、様々な形で、材料の物性劣化
(錆、試料表面の歪、ひび割れ、フクレ、剥れ、孔食
等)の再現試験及び促進試験が可能となるばかりでな
く、試験時間の短縮も可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の耐候性試験方法のフローチャート図。
【図2】従来の複合サイクル試験方法(JASO M
609)のフローチャート図。
【図3】本発明の劣化促進試験方法の実施例1のフロー
チャート図。
【図4】本発明の劣化促進試験方法の実施例2のフロー
チャート図。
【図5】本発明の劣化促進試験方法の実施例3のフロー
チャート図。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属、塗膜、ゴム、化学材料、樹脂材料
    などを塩水噴霧、湿潤、及び乾燥の試験過程を、任意な
    組合せで繰り返し試験する複合サイクル試験において、 前記試験過程の任意な一過程中、該試験過程で所定の雰
    囲気温度に維持された試験槽内に載置された試験片表面
    に対し、 a)所定温度に調節された試験溶液(A)、 b)前記試験溶液(A)と異なる温度に調整された試験
    溶液(B)、 c)前記試験溶液(A)及び(B)と異なる種類、濃度
    で、所定温度に調節された試験溶液(C)、 d)前記試験溶液(C)と異なる温度に調整された試験
    溶液(D)を、直接与え、上記a)、b)、c)、d)
    の条件を、任意に組合わせたものをサイクルとして、前
    記複合サイクル試験の任意の一試験過程中に組合せて、
    所定時間、所定回数繰り返し、温度差及び濃度差劣化因
    子を効果的に与えることにより、材料の劣化を一層促進
    させることを特徴とした劣化促進試験方法。
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