JP6515384B2 - 耐候性鋼材および耐候性鋼材の製造方法 - Google Patents

耐候性鋼材および耐候性鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐候性鋼材および耐候性鋼材の製造方法に関し、より詳しくは、意匠性付与を目的として外観に錆層を形成させた耐候性鋼材およびその製造方法に関する。
耐候性鋼は、Cu、Ni、Cr、P、Mo等の元素が少量含有された低合金鋼が用いられる。この低合金鋼は、大気中での曝露により腐食される過程で、鋼表面に腐食要因の透過が抑制される錆層が形成される。この腐食要因の透過が抑制される錆層は、保護性を有する錆層と呼ばれる。耐候性鋼は、この錆層による保護性から、構造物のライフサイクルコストを抑える材料として注目されている。
そして、この錆層はその色が経年により落ち着いた茶色に変化するため、耐候性鋼は、この茶色を外観の意匠性に用いることで、建築物の外壁材などに注目されている。この錆層の形成を促進させる方法は、特許5655280号公報や特許5532009号公報の方法がある。
例えば、特許5655280号公報には、耐候性鋼材表面にpHが2以上2.6未満であり、モル比が0.1≦Cu/P≦20である硫酸銅(II)およびリン酸(HPO)を含む水溶液を塗布しかつ乾燥させる方法により製造される早期錆熟成耐候性鋼材が開示されている。早期熟成耐候性鋼材は、鋼材表面に、モル比で1.2≦Cu/P≦20であるCu、PとFeの成分を含む錆層(処理層ともいう)で覆われている。
また例えば、特許5532009号公報には、耐候性鋼材の表面が、少なくとも、モル比が0.1≦Cu/P≦20であるCuとP、および塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムから選ばれる1種以上の塩を含む処理層で覆われている早期錆熟成耐候性鋼材が開示されている。
特許5655280号公報 特許5532009号公報
特許5655280号公報および特許5532009号公報の早期熟成耐候性鋼材は、処理層の形成を促進させることが可能である。しかしながら、特許5655280号公報および特許5532009号公報の技術は、処理層の安定化を促進する観点からは開発がなされていない。
本発明の目的は、処理層の安定化を促進可能な耐候性鋼材および耐候性鋼材の製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態による耐候性鋼材は、基材と、基材の表面に処理液を塗布しかつ乾燥させて形成され、表面を覆う処理層とを備える。処理液は、pHが2以上2.6未満である。処理液は、モル比で0.1≦Cu/P≦20を満たすCuおよびPと、LiCl、MgCl、およびCaClからなる群から選ばれる1種以上の1質量%以上10質量%以下の塩と、2価のSnイオンおよび4価のSnイオンからなる群から選ばれる1種以上の0.02質量%以上のSnイオンとを含む。
本発明の一実施形態による耐候性鋼材の製造方法は、基材の表面に処理液を塗布するステップと、処理液の塗布された基材を乾燥させるステップとを含む。処理液は、pHが2以上2.6未満である。処理液は、モル比で0.1≦Cu/P≦20を満たすCuイオンおよびHPOと、LiCl、MgCl、およびCaClからなる群から選ばれる1種以上の1質量%以上10質量%以下の塩と、2価のSnイオンおよび4価のSnイオンからなる群から選ばれる1種以上の0.02質量%以上のSnイオンとを含む。
本発明によれば、処理層の安定化を促進させることができる。
図1は、曝露相当外観の年数と測色結果との関係を示すグラフである。 図2は、外観相当経過年数と曝露日数との関係を示すグラフである。
本発明者らは、処理層の安定化を促進させるため、種々の検討を行い、以下の(A)〜(D)の知見を得た。
(A)耐候性鋼は、耐候性鋼材の処理液を塗布していない基材に相当する。耐候性鋼は、処理液を塗布していない状態であっても、大気中に曝露され続けることで、経年により処理層に相当する錆層が形成される。耐候性鋼の曝露相当外観の年数とその外観の測色結果aとの間には、図1に示すように、一定の関係を有する。なお、図1中の測色結果aは、JIS Z8781−4:2013で規格されるL表色系の色度である。
基材は、表面に、Clイオン(塩化物イオン)を含む塩と、HPO(リン酸)およびCuイオン(銅イオン)とを含む処理液が塗布されることで、塩により適度に制御される乾燥条件(湿度)のもと、HPOとの共存下においてCuイオンにより基材に含まれるFe(鉄)が酸化される。これによって、基材は、表面に処理層が形成される。処理層は、緻密な錆の結晶が成長することで、層の厚さが増し、測色結果aの値が低下する。したがって、耐候性鋼材は、その外観の測色結果aの値を図1の関係に対応させ、これにより得られる年数を処理層の外観経過相当年数とすることができる。その結果、耐候性鋼材は、外観経過相当年数により、処理層の熟成状態を評価することができることが分かった。なお、処理層の安定化とは、処理層の厚さが増して茶色となることである。
(B)処理液に含まれるClイオンは、基材表面の吸湿性を高くして錆の生成を促進する反面、その錆の成分としてβ−FeOOHが生成されやすくなる。β−FeOOHは、経年により減少する。β−FeOOHは、基材表面への密着性が悪く、緻密性に欠ける。このため、耐候性鋼材は、β−FeOOHが生成されることで、大気中での曝露による処理層の厚さの増加が妨げられる。換言すると、β−FeOOHの生成は、処理層の安定化を妨げる一要因であることが分かった。また、β−FeOOHは黄色を帯びた錆である。耐候性鋼材は、β−FeOOHが生成されると、処理層の外観が茶色とならずに黄色などの鮮やかな色になる。このため、耐候性鋼材は、β−FeOOHが減少し、かつ処理層の厚さが増すまで、外観の意匠性を用いにくい。
(C)表1は、Sn(錫)を含まない処理液で製造された耐候性鋼材の曝露7日後の処理層の組成をX線回折により定量分析した結果である。この耐候性鋼材では、表1に示すように、β−FeOOHが定量値として8〜15%程度検出されることが分かった。また、Snを含む処理液で製造される耐候性鋼材では、曝露7日後の処理層からβ−FeOOHがほぼ検出されないことが分かった。なお、表1の冬実験は、冬に実験された耐候性鋼材の結果であり、表1の夏実験は、夏に実験された耐候性鋼材の結果である。
Figure 0006515384

(D)β−FeOOHができる条件の塩化鉄溶液にSnイオンを入れると、β−FeOOHができにくくなり、代わりにα−FeOOHができやすくなることが分かった。耐候性鋼材は、α−FeOOHが多く生成することで、より早期にくすんだ色になると考えられる。また、β−FeOOHに比較してα−FeOOHが多くなると、緻密なさびの安定化に働く。β−FeOOHは塩化物イオンが配位するとそのままではβ−FeOOHの結晶構造に決定されるところ、Snイオンが存在することで、Snイオンが触媒的に塩化物イオンを捕捉して、α−FeOOHの構造に変化すると考えられる。
本発明者らは、前述の知見に基づいて本発明を完成させた。まず、本発明の一実施形態の概要を説明する。
耐候性鋼材は、基材と、基材の表面に処理液を塗布しかつ乾燥させて形成され、表面を覆う処理層とを備える。処理液は、pHが2以上2.6未満である。処理液は、モル比で0.1≦Cu/P≦20を満たすCuおよびPと、LiCl、MgCl、およびCaClからなる群から選ばれる1種以上の1質量%以上10質量%以下の塩と、2価のSnイオンおよび4価のSnイオンからなる群から選ばれる1種以上の0.02質量%以上のSnイオンとを含む。
この場合、耐候性鋼材は、Snイオンにより処理層におけるβ−FeOOHの生成が抑制され、保護性の錆の成長が助長される。そのため、耐候性鋼材は、早期に処理層の厚さを増加させて、処理層の安定化を促進させることができる。その結果、耐候性鋼材は、処理層による熟成した色の外観を早期に得ることができる。なお、熟成した色とは、黄色などの鮮やかな色に比べてくすんだ色であり、例えば茶色である。また、早期とは、処理液を塗布した翌日(塗布翌日ともいう)から遅くとも塗布から2週間程度のこととする。
好ましくは、2価のSnイオンは、SnCl、SnSO、およびSnBr からなる群から選ばれる1種以上である。4価のSnイオンは、SnClである。
耐候性鋼材の製造方法は、基材の表面に処理液を塗布するステップと、処理液の塗布された基材を乾燥させるステップとを含む。処理液は、pHが2以上2.6未満である。処理液は、モル比で0.1≦Cu/P≦20を満たすCuイオンおよびHPOと、LiCl、MgCl、およびCaClからなる群から選ばれる1種以上の1質量%以上10質量%以下の塩と、2価のSnイオンおよび4価のSnイオンからなる群から選ばれる1種以上の0.02質量%以上のSnイオンとを含む。
この場合、製造方法により製造される耐候性鋼材は、Snイオンによりβ−FeOOHの生成が抑制され、処理層の安定化を促進させることができる。その結果、耐候性鋼材は、熟成した色の外観を有する処理層を早期に得ることができる。
好ましくは、2価のSnイオンは、SnCl、SnSO、およびSnBr からなる群から選ばれる1種以上である。4価のSnイオンは、SnClである。
[耐候性鋼材]
以下、本発明の一実施形態による耐候性鋼材について詳細に説明する。
耐候性鋼材に用いられる基材は、例えば、耐候性鋼が好ましく、具体的には、JISのSMA、SPA−H、SPA−C、ニッケル系の耐候性鋼などが好ましいが、特にこれらに限定されない。耐候性鋼は、処理液が塗布されない状態にあっても、数十年などの長期に亘り大気中で曝露されることで、表面に意匠性を有する錆層が形成される。
基材の表面は、処理層で覆われる。換言すると、耐候性鋼材は、処理層を外観に有する。処理層は、錆層である。処理層は、基材の表面に処理液を塗布しかつ乾燥させて形成される。処理層は、処理液に含有される化学成分(元素)を含む。処理液は、例えば基材の表面全体に塗布される。基材の表面は、処理液によりほぼ均一に濡れる。
基材に処理液を塗布する方法は、例えば、スプレー、ローラー、または刷毛などを用いる周知の塗装方法が適用可能であるが、特にこれらに限定されず、浸漬などであってもよい。処理液の塗布環境は、例えば、相対湿度50%の室内で室温、例えば25℃±15℃の環境が好ましいが、特にこれらに限定されない。処理液を塗布された基材を乾燥させる方法は、錆の成長の観点から、加熱乾燥に比べて、自然乾燥、特に屋内での自然乾燥が好ましいが、特に自然乾燥に限定されない。
処理液は、pHが2以上2.6未満である。処理液は、Cu(銅)およびP(燐)を含む。処理液は、pHが2未満では、酸性が強くなりすぎて、基材の表面にPを含む防食性の塩結晶を生成させ、処理層の形成を抑制する。一方、処理液は、pHが2.6を超えると、基材の表面のFeの溶解性が悪くなり、ぬれ性が劣り、錆の生成を促進することができず、かつ処理層の均一な形成を妨げる。処理液の溶媒は、例えば水が好ましいが、特にこれに限定されず、水を含むアルコールなどの有機溶媒であってもよい。
Cuは、処理液にCuイオン(Cu2+)で存在する。Cuは、Fe(鉄)に対して酸化作用をもたらすために処理液に含まれる。Cuは、硫酸銅および塩化銅からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましいが、特にこれに限らない。Cuイオン(Cu2+)は、Niイオン(ニッケルイオン)およびAgイオン(銀イオン)などのFeイオンよりも電気化学的電位が貴の他の金属イオンに比べて、価格面などから望ましい。このため、処理液は、Feイオンよりも電気化学的電位が貴の他の金属イオンでCuイオンを置換可能である。Pは、HPO(リン酸)であることが好ましいが、特にこれに限定されない。CuおよびPは、モル比で0.1≦Cu/P≦20を満たす条件で処理液に含まれる。CuおよびPは、Cu/Pが0.1未満では、処理層の形成を充分に促進することができない。これは、Cuイオンの量が不十分であるためと考えられる。一方、CuおよびPは、Cu/Pが20を超えると、基材の表面の大部分をCuが覆い、処理層の形成を抑制する。
処理液は、LiCl(塩化リチウム)、MgCl(塩化マグネシウム)、およびCaCl(塩化カルシウム)からなる群から選ばれる1種以上の塩を含む。1種以上の塩は、総量1質量%以上10質量%以下の範囲で処理液に含まれる。例えばLiClは飽和塩水の平衡湿度が相対湿度で15%であり、MgClは飽和塩水の平衡湿度が相対湿度で33.6%であり、CaClは飽和塩水の平衡湿度が相対湿度で32.3%である。1種以上の塩は平衡湿度が低い塩である。このため、処理液は、1種以上の塩を含むことにより、塗布された基材の表面の乾燥を遅らせる。その結果、耐候性鋼材は、製造場所や製造時期などでの湿度の違いが軽減される。1種以上の塩は、処理液の含有量が1質量%未満では効果が少ない。一方、1種以上の塩は、含有量が10質量%以上ではほぼ効果が一定となる。このため、効果の点においては、1種以上の塩は10質量%を超えて含ませることが可能である。
耐候性鋼材は、Sn(錫)が基材表面上に添加された状態で、処理層が形成される。処理液は、2価のSnイオン(Sn2+)および4価のSnイオン(Sn4+)からなる群から選ばれる1種以上のSnイオンを含む。1種以上のSnイオンは、総量0.02質量%以上で処理液に含まれる。1種以上のSnイオンは、過剰に含ませてもその効果が飽和するため、総量0.2質量%以下で処理液に含まれることが好ましいが、特にこれに限定されない。2価のSnイオンは、SnCl(塩化錫(II))、SnSO(硫酸錫(II))、およびSnBr (臭化錫(II))からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましいが、特にこれらに限定されない。4価のSnイオンは、SnCl(塩化錫(IV))であることが好ましいが、特にこれに限定されない。
ここで、例えば、図2に示すように、本実施形態であるSnを含む処理液で製造される耐候性鋼材(図2中の▲印参照)は、無処理の耐候性鋼(図2中の点線参照)やSnを含まない処理液で製造される耐候性鋼材(図2中の○印参照)に比べて、早期の外観経過相当年数の値を大きくすることができる。これは、Snイオンにより、処理層のβ−FeOOHの生成が抑制され、かつ緻密な錆の結晶の成長が助長され、早期に処理層の厚さが増すためと考えられる。なお、無処理の耐候性鋼は、処理液による錆層の形成促進を行わずに、大気中での曝露のみで錆層を形成させた基材である。
以上のことから、耐候性鋼材は、Snにより処理層の厚さを早期に増加させて、処理層の安定化を促進することができる。その結果、耐候性鋼材は、処理層による熟成した色の外観を早期に得ることができる。
[製造方法]
次に、本実施形態による耐候性鋼材の製造方法の一例を説明する。なお、耐候性鋼材の説明と重複する説明は省略する。
耐候性鋼材の製造方法は、例えば基材からミルスケールなどを除去するための準備ステップと、基材の表面に処理液を塗布するための塗布ステップと、処理液の塗布された基材を乾燥させるための乾燥ステップと、処理層を熟成させるための熟成ステップとを含む。
準備ステップでは、例えば、ブラスト処理が実施される。ブラスト処理は、例えば、ショットブラストや、グリットブラスト、サンドブラストなどであるが、特にこれらに限定されない。基材は、ブラスト処理により、表面に均一な処理層が形成されやすくなる。その結果、耐候性鋼材は、処理層による保護性や意匠性を得やすくなる。なお、準備ステップは、随意的に実施されるステップであり、必須のステップではない。準備ステップでは、ブラスト処理の後に、ワイヤブラシなどを用いてブラスト処理により生じた錆を除去する錆落とし処理がさらに実施されてもよい。
塗布ステップは、準備ステップの次に行われる。処理液を塗布する方法は、例えば周知の塗装方法が適用可能であるが、特にこれらに限定されない。塗布環境は、例えば相対湿度50%で室温の室内が好ましいが、特にこれらに限定されない。なお、製造方法は、準備ステップを含まない場合などにおいて、塗布ステップから始めてもよい。
処理液は、pHが2以上2.6未満である。処理液は、LiCl、MgCl、およびCaClからなる群から選ばれる1種以上の塩と、CuイオンおよびHPOと、2価のSnイオンおよび4価のSnイオンからなる群から選ばれる1種以上のSnイオンとを含む。1種以上の塩は、総量1質量%以上10質量%以下で処理液に添加されることが好ましい。
CuイオンおよびHPOは、モル比で0.1≦Cu/P≦20を満たす条件で処理液に含まれる。Cuイオンは、硫酸銅および塩化銅からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましいが、特にこれに限らない。
1種以上のSnイオンは、総量0.02質量%以上で処理液に添加される。1種以上のSnイオンは、総量0.2質量%以下で処理液に添加されることが好ましいが、特にこれに限定されない。2価のSnイオンは、SnCl、SnSO、およびSnBr からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましいが、特にこれらに限定されない。4価のSnイオンは、SnClであることが好ましいが、特にこれに限定されない。
乾燥ステップは、塗布ステップ後、直ちに行われる。基材を乾燥させる方法は、自然乾燥が好ましいが、特にこれに限定されない。乾燥ステップは、室内(屋内)で実施されることが好ましいが、屋外で実施されてもよい。屋外で実施される場合、基材を屋外に移動させるための移動ステップを更に含む。
熟成ステップは、乾燥ステップ後、直ちに行われることが好ましい。例えば、熟成ステップは、塗布ステップの翌日に行われる。この場合、塗布ステップと熟成ステップとの間が乾燥ステップの乾燥期間である。なお、熟成ステップは、随意的に実施されるステップであり、必須のステップではない。
熟成ステップは、例えば、基材の表面(処理層)に1日1回以上水を散布するための散布ステップと、水が散布された基材を大気中に曝露させるための曝露ステップとを含む。熟成ステップは、少なくとも1回(1日)実施されることが好ましく、より好ましくは継続して数日間繰り返し実施されることである。熟成ステップは、屋外で実施されることが好ましいが、特にこれに限定されない。乾燥ステップが屋内で実施され、熟成ステップが屋外で実施されることが好ましいが、特に限定されない。
散布ステップは、処理層における保護性の錆の剥離を生じにくい水圧で水が霧状に散布されることが好ましいが、特にこれに限定されない。散布ステップは、水に水道水を用いることができるが、特にこれに限定されない。曝露ステップは、水が散布された基材を大気中に曝露させるステップである。曝露ステップは、水が散布された基材を自然乾燥させるステップでもあるが、特にこれに限定されない。
以上の製造方法により製造される耐候性鋼材は、Snイオンにより、処理層の安定化を促進させ、熟成した色の外観を早期に得ることができる。また、耐候性鋼材は、熟成ステップにより、処理層に毎日湿気を供給し、日々の錆の成長を助長させることができる。更に、耐候性鋼材は、散布される水により、Clイオンを耐候性鋼材外に流出させることで、Clイオンの錆成長への悪影響を軽減させることができる。
次に、実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表2は、試験No.1〜24の各試験片における、製造条件および実験結果である。表2のpHからCaCl質量%までの欄は、処理液の条件である。表2の硫酸銅 ★塩化銅は、質量%である。質量%の値の前に★印を示した試験No.10、13、16、および24の各試験片は硫酸銅の代わりに塩化銅を用い、他の各試験片は全て硫酸銅を用いた。試験No.17〜19の各試験片は、処理液にSnイオンを添加してない。
Figure 0006515384

試験No.1〜24の各実験では、耐候性鋼材として、JIS SPA−Hのミルスケール付き鋼材から得た試験片(150mm×75mm×5mm)を用いた。試験片は、表2に示す製造条件で、準備ステップ、塗布ステップ、乾燥ステップ、および熟成ステップを行い、供試材とした。試験No.1〜16の各試験片が実施例であり、試験No.17〜24の各試験片が比較例である。
準備ステップではブラスト処理が実施された。塗布および乾燥ステップは、湿度の低い1月の実験室内(相対湿度50%、平均気温20℃)で実施された。塗布ステップでは、表面が均一に濡れるように、表面全体に処理液を1回刷毛塗りした。乾燥ステップでは、実験室内で乾燥された。試験No.1〜24の各試験片は、塗布ステップの翌日(塗布翌日ともいう)に、乾燥後の外観が評価された。
外観の評価後、各試験片は、実験室外(屋外)に移動させ、熟成ステップが実施された。このため、曝露ステップでは、大気中で曝露された。散布ステップでは、表面に毎日噴霧器で水道水が散布された。各試験片は、曝露7日後、水道水が散布される前に外観が評価された。なお、表2の外観経過相当年数は、知見(A)に基づく。曝露日数は、屋外に移動させた塗布翌日を0日後として数えており、曝露7日後の外観の評価は熟成ステップを7回実施した後の状態である。試験No.1〜24の全ての実験は、冬季(1月)に行っており、屋外の湿度が夏季に比べて低くなりやすい環境での実験であった。
表2のβ−FeOOH質量%は、塗布翌日の処理層におけるβ−FeOOHの含有量である。処理層は、塗布翌日のβ−FeOOHの含有量が3質量%以下であることが好ましいが、特にこれに限定されない。試験No.1〜16および22〜24の各試験片は、塗布翌日の処理層中のβ−FeOOHの含有量が5質量%以下であったのに対し、試験No.17〜21の各試験片は、6質量%以上であった。そして、試験No.1〜16の各試験片は、3質量%以下であった。ここで、試験No.1〜16の各処理液は、試験No,22〜24の各処理液と違い、モル比でCu/Pが0.1以上20以下を満たすCuおよびPを含む。
このように、塗布翌日のβ−FeOOHは、処理液に0.02質量%以上のSnイオンを含むことで、生成が抑制され、処理液がモル比(Cu/P)が0.1以上20以下を満たすCuおよびPを含んだことで、さらに生成が抑制された。
処理層は、塗布翌日の外観経過相当年数が0.9年以上であることが好ましく、曝露7日後の外観経過相当年数が1年以上であることが好ましい。試験No.1〜16の各試験片は、塗布翌日の外観経過相当年数が1年であったのに対して、試験No.17〜24の各試験片は、0.7年以下であった。そして、試験No.22〜24の各試験片は、0.1年以下であった。試験No.1〜16の各試験片は、曝露7日後の外観経過相当年数が1.2年であったのに対して、試験No.17〜24の各試験片は、0.85年以下であった。そして、試験No.22〜24の各試験片は、0.5年以下であった。
このように、β−FeOOHが3質量%以下であった各試験片は、塗布翌日および曝露7日後の各外観経過相当年数を大きくすることができた。具体的には、試験No.1〜16の各試験片は、熟成ステップ前である塗布翌日の外観経過相当年数が、試験No.17〜24の各試験片の曝露7日後の外観経過相当年数以上であった。
本発明によれば、意匠性の付与を目的として錆層を表面に形成させた外壁材に利用できる。

Claims (2)

  1. 基材の表面に処理液を塗布するステップと、
    前記処理液の塗布された前記基材を乾燥させるステップとを含み、
    前記処理液は、pHが2以上2.6未満であり、
    モル比で0.1≦Cu/P≦20を満たすCuイオンおよびHPOと、
    LiCl、MgCl、およびCaClからなる群から選ばれる1種以上の1質量%以上10質量%以下の塩と、
    2価のSnイオンおよび4価のSnイオンからなる群から選ばれる1種以上の0.02質量%以上のSnイオンとを含む、耐候性鋼材の製造方法。
  2. 請求項に記載の耐候性鋼の製造方法であって、
    前記2価のSnイオンは、SnCl、SnSO、およびSnBr からなる群から選ばれる1種以上であり、
    前記4価のSnイオンは、SnClである、耐候性鋼材の製造方法。
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