以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図8を参照して、本発明の第1実施形態における鍵盤装置100について説明する。図1(a)は、第1実施形態における鍵盤装置100が搭載される電子鍵盤楽器1の上面図であり、図1(b)は、図1(a)の矢印Ib方向視における電子鍵盤楽器1の正面図である。
なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、電子鍵盤楽器1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。この場合、左右方向は、電子鍵盤楽器1を奏者から視た方向が基準とされ、前後方向は、電子鍵盤楽器1の奏者側が「前方(正面)」とされる。図2以降においても同様であるので、以下においてその説明は省略する。
図1に示すように、電子鍵盤楽器1は、複数(例えば、88)の鍵(白鍵101及び黒鍵102)が配設される鍵盤装置100と、その鍵盤装置100の周囲を取り囲む上面視枠状のパネル部2とを備える。パネル部2は、鍵盤装置100の正面(図1(a)下側の面)及び背面(図1(a)上側の面)にそれぞれ対向配置される正面パネル2a及び上部パネル2bと、それら正面パネル2a及び上部パネル2bの左右方向(矢印L−R方向)端部どうしを接続する端パネル2cとを主に備える。
正面パネル2aの上面および端パネル2cの上面は、図1(b)に示すように、その高さ方向(矢印U−D方向)位置が、白鍵101の上面(打鍵面)と下端との間にそれぞれ位置する。よって、白鍵101は、正面のうちの下端側(図1(b)下側)の部分が正面パネル2aによって遮蔽され、正面のうちの上面(打鍵面)側の部分が外部に視認可能に露出される。
また、白鍵101のうちの端パネル2cに隣接する白鍵101(即ち、左右端にそれぞれ位置する白鍵101。後述する白鍵101A’,101C’)は、端パネル2cを臨む側の側面のうちの下端側の部分が端パネル2cによって遮蔽され、端パネル2cを臨む側の側面のうちの上面(打鍵面)側の部分が外部に視認可能に露出される。
上部パネル2bの上面(図1(a)紙面手前側面)には、例えば、LEDや液晶ディスプレイなどから形成され各種の状態を表示するための表示装置、ボリューム調整やモード変更などを行うための複数の操作子などが配設される(いずれも図示せず)。また、上部パネル2bの背面には、例えば、電源スイッチ、MIDI信号やオーディオ信号を入出力するための複数のジャックなどが配設される(いずれも図示せず)。
図2は、鍵盤装置100の部分拡大斜視図であり、1オクターブに対応する部分のみが部分的に図示される。なお、図2では、音名がFの白鍵101(後述する白鍵101F)が押鍵された状態が図示される。
図2に示すように、鍵盤装置1は、樹脂材料または鋼板等により形成されるシャーシ110と、そのシャーシ110に基端側(図2右奥側)が回動自在に支持される複数の鍵(白鍵101及び黒鍵102)と、それら白鍵101及び黒鍵102に対応してそれぞれ配設されると共に鍵の押鍵または離鍵に連動して回動されるハンマー120とを主に備えて構成される。
白鍵101及び黒鍵102はシャーシ110の上面側(図2上側)に配設されると共に、ハンマー120はシャーシ110の内部空間に配設され、それぞれシャーシ110の左右方向(矢印L−R方向)へ列設される。なお、白鍵101及び黒鍵102に対し、それらをシャーシ110により回動可能に軸支(支持)する構造、それらの回動をガイドする構造、及び、それらの押鍵または離鍵に連動してハンマー120を回動させる構造は、白鍵101及び黒鍵102の両者で実質的に同一であるので、以下、白鍵101における構造についてのみ説明し、黒鍵102における構造の説明は省略する。
シャーシ110には、その基端側(矢印B側)に鍵回動軸(図示せず)が形成されると共に、前後方向(矢印F−B方向)略中央部にハンマー回動軸111が形成される。鍵回動軸には、白鍵101の基端側に形成された軸支孔103が外嵌されると共に、ハンマー回動軸111には、ハンマー120の先端側(矢印F側)に形成された軸支孔123が外嵌され、これにより、シャーシ110に白鍵101とハンマー120とがそれぞれ回動自在に軸支(支持)される。
ハンマー120は、白鍵101の押鍵または離鍵に連動して回動することによりアコースティックピアノと同様のタッチ重さを付与するための部材であり、樹脂材料から形成されるハンマー本体121と、そのハンマー本体121の後端側(矢印B方向側)に連結され錘としての役割を担うために金属材料から形成される質量体122とからなる。ハンマー120は、軸支孔123よりも後端側に質量体122が位置するので、質量体122の自重により先端側(矢印F方向側)に形成される受け部124を上方へ持ち上げる方向に付勢される。
白鍵101には、その下面側から下方(矢印D方向)へ向けて延設される略尖形形状のハンマー係合部104が長手方向(矢印F−B方向)略中央部に形成される。ハンマー係合部104は、ハンマー120の上面であって軸支孔123よりも先端側(矢印F方向)となる部分の上面(即ち、受け部124の摺動面)に当接される。これにより、白鍵101は、押鍵時には、ハンマー120の質量により所定のタッチ重さが付与される一方、離鍵時には、ハンマー120の質量により持ち上げられ、初期位置へ復帰される。
ここで、詳細には、白鍵101のハンマー係合部104が係合される受け部124は、ハンマー120の前後方向(矢印F−B方向)に沿って延設されハンマー係合部104の先端が当接される摺接面と、その摺接面の周囲に立設される壁部とから上面側が開放された箱状に形成される。受け部124には、その摺動面をハンマー係合部104が摺動する際の摩耗やノイズ(擦過音)の発生を防止するために、粘性材料(グリス等の潤滑剤)が充填される。
シャーシ110の下方には、ハンマー回動軸111よりも前方側(正面側、矢印F側)となる位置に鍵スイッチ130が配設される。鍵スイッチ130は、白鍵101の押鍵情報を検出するためのスイッチであり、ハンマー120の受け部124の下面を臨む姿勢で配設される。白鍵101が押鍵され、ハンマー120の先端側(受け部124)が下方へ押し下げられることで、鍵スイッチ130がオンされ、このオン動作に基づいて、白鍵101の押鍵が検出される。なお、鍵スイッチ130には、第1スイッチ及び第2スイッチが配設されており、これら第1スイッチ及び第2スイッチがオン動作される時間差に基づいて、白鍵101の押鍵情報(ベロシティ)が検出される。
ここで、白鍵101が押鍵されると、図2に示すように、その押鍵された白鍵101に隣接する白鍵101の左右側面の一部を奏者が視認可能となる。この場合、本実施形態の鍵盤装置100によれば、後述するように、白鍵101の左右側面に、木質材料(本実施形態では、スプルース材)からなる木質部材140S,140Lが配設されており、白鍵101が、打鍵面および正面を除き、木質材料から構成されているかのように奏者に認識させることができる。これにより、白鍵101に木質感を付与して、高級感を醸し出すことができる。
次いで、図3及び図4を参照して、白鍵101の概略構成について説明する。図3は、白鍵101の斜視図であり、図4は、図3の仮想平面Sで切断した断面を矢印U方向視した白鍵101の断面図である。
なお、以下においては、説明の便宜のため、白鍵101を音名(C,D,E,・・・)に応じて個別に特定する場合には、符号(例えば「101」)の最後に対応する音名(例えば「C」)を付して、白鍵101Cのように記載する。この場合、音名がA,Cに対応し、且つ、複数の鍵のうちの左右方向(図1矢印L−R方向)両端にそれぞれ配設される鍵については、白鍵101A’,101C’と記載する。
図3に示すように、白鍵101は、隣り合う白鍵101との間に黒鍵102を配設するための段差が形成され、この段差の数や形成位置に応じて、9種類の形状からなる。鍵盤装置100の複数(本実施形態では、88)の鍵は、9種類の形状の白鍵101と1種類の黒鍵102とを組み合わせて構成される(図1参照)。
詳細には、白鍵101C,101Dの間、白鍵101D,101Eの間、白鍵101F,101Gの間、白鍵101G,101Aの間、及び、白鍵101A,101Bの間には、黒鍵102が配設される一方、白鍵101E,101Fの間、及び、白鍵101B,101Cの間には、黒鍵102が配設されないため(図1参照)、白鍵101Cと白鍵101E、白鍵101Fと白鍵101B、及び、白鍵101Gと白鍵101Aは、それぞれ上面視において矢印F−B方向に沿う仮想線を対象軸とする線対称の形状とされ、白鍵101Dは、上面視において自身の中心線を対称軸とする線対称の形状とされる。
また、白鍵101A’は、隣り合う白鍵101Bとの間に黒鍵102が配設され、白鍵101C’は、隣り合う白鍵101Bとの間に黒鍵が配設されず、且つ、白鍵101A’,101C’は、左右側面のうちの一方の側面が端パネル2cに隣接されるため、上述した白鍵101C〜101Bのいずれとも異なる形状とされる。なお、白鍵101C’は、電子鍵盤楽器1の上面視(図1(a)参照)における鍵可視範囲においてその中心線を対称軸とする線対称の形状とされる。
白鍵101C,101E,101F,101B,101A’は、下面側(矢印D方向側)が開放される箱状に樹脂材料から形成されるベース部材130C,130E,130F,130B,130A’と、そのベース部材130C,130E,130F,130B,130A’の左右側面にそれぞれ貼り付けられると共に木質材料から断面矩形の長尺板状に形成される木質部材140S,140Lとを備える。
白鍵101D,101G,101Aは、下面側(矢印D方向側)が開放される箱状に樹脂材料から形成されるベース部材130D,130G,130Aと、そのベース部材130D,130G,130Aの左右側面にそれぞれ貼り付けられると共に木質材料から断面矩形の長尺板状に形成される木質部材140Sとを備える。
白鍵101C’は、下面側(矢印D方向側)が開放される箱状に樹脂材料から形成されるベース部材130C’と、そのベース部材130C’の左右側面にそれぞれ貼り付けられると共に木質材料から断面矩形の長尺板状に形成される木質部材140Lとを備える。
白鍵101C’を除く白鍵101C〜101B,101A’は、隣り合う白鍵101との間に黒鍵102を配設するための段差が基端側(矢印B方向側)に形成されるため、それら白鍵101C〜101B,101A’のベース部材130C〜130B,130A’は、前方側(矢印F方向側、正面側)に位置する幅広部WKと、その幅広部WKの基端側(矢印B方向側)に接続されると共に幅広部WKよりも左右方向(矢印L−R方向)寸法が小さく(狭く)される幅狭部NKとの2つの部分を有して形成される。
以上より、白鍵101を、その形状から、第1の群と、第2の群と、第3の群とに分類する。即ち、第1の群は、ベース部材130C,130E,130F,130B,130A’の左右側面のうちの一方の側面(段差が形成されない側の側面)に、長手方向寸法の長い木質部材140Lが幅広部WK及び幅狭部NKにわたって配設されると共に、他方の側面(段差が形成される側の側面)に、長手方向寸法の短い木質部材140Sが幅広部WKのみに配設される白鍵101C,101E,101F,101B,101A’からなる群である。
第2の群は、ベース部材130D,130G,130Aの左右側面において、長手方向寸法が短い木質部材140Sが幅広部WKのみにそれぞれ配設される白鍵101D,101G,101Aからなる群である。また、第3の群は、ベース部材130C’の左右側面において、長手方向寸法が長い木質部材140Lがそれぞれ配設される白鍵101C’からなる群である。
ここで、各群を構成する白鍵101どうしは、実質的に同一の構成であるので、以下においては、白鍵101E及び白鍵101Dを第1の群および第2の群の代表例として、それら白鍵101E及び白鍵101Dについて説明することで、各群における他の白鍵101についての説明を省略する。
次いで、図5から図7を参照して、第2の群の代表例としての白鍵101Dについて説明する。図5(a)は、ベース部材130Dの部分拡大側面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線におけるベース部材130Dの断面図である。なお、図5(b)では、正面パネル2aの上面の位置が二点鎖線を用いて模式的に図示される。
図5に示すように、ベース部材130Dは、打鍵面が上面(図5(b)上側面)に形成される上板部131と、その上板部131の下面から下方へ延設されると共に左右方向(矢印L−R方向)に所定間隔を隔てて対向配置される一対の側板部132と、それら上板部131及び側板部132の長手方向(矢印F−B方向)一端側(図5(a)左側)の端面に接続される前板部133とを主に備え、これら各板部131〜133が樹脂材料からインジェクション成形により一体に形成される。
側板部132の外面(ベース部材130Dの左右側面)には、貼付面132a及び外殻面132bが形成される。貼付面132aは、木質部材140Sを貼り付けるための平坦面であり、図5(a)に示すように、上板部131の下面および前板部133の背面に連接される側面視L字状の領域として形成される。外殻面132bは、側板部132の外面のうちの貼付面132aの残部(非形成領域)に形成される平坦面である。なお、貼付面132aは、外殻面132bよりも内側(図5(a)紙面奥側)へ奥まって位置される。
貼付面132aの外縁には、上板部131の下面(図5(a)下側面)及び前板部133の背面(図5(a)右側面)にそれぞれ連接される2辺の外縁に沿って2本の凹溝134が直線状に延設される。凹溝134は、断面矩形の凹状に凹設される溝であり、後述するように、木質部材140Sの内側面における外縁(稜線部分)から突出するささくれを、この凹溝134により形成される空間によって受け入れる(逃がす)ことで、木質部材140Sの内側面を貼付面132aに密着可能とし、木質部材140Sの浮き上がりを防止する。
また、上板部131の下面および前板部133の背面に沿って凹溝134が凹設されることで、かかる凹溝134の凹設の分、上板部131と側板部132との連接部分および前板部133と側板部132との連接部分における厚み寸法が部分的に大きく(厚く)なることを抑制することができる。即ち、これら各接続部分およびその近傍における厚み寸法を均一化して、成形時のヒケが上板部131および前板部133に発生することを抑制することができる。その結果、白鍵101Dにおける上面(打鍵面)及び正面の外観が損なわれることを抑制することができる。
ここで、2本の凹溝134のうちの前板部133の背面に沿って延設される凹溝134は、木質部材140Sの外縁を越えて下方(矢印D方向)へ延設される(図6(a)参照)。これにより、前板部133全体としての厚み寸法をより均一化して、成形時のヒケの発生を抑制することができる。一方で、かかる凹溝134の下方への延設は、図5(b)に示すように、正面パネル2aの上面を若干越える位置までとされる。これにより、奏者が視認可能な範囲(即ち、正面パネル2aの上面よりも上方に露出する領域)では、前板部133の正面にヒケが発生することを抑制しつつ、奏者が視認不能な範囲(正面パネル2aにより遮蔽される領域)では、前板部133と側板部132との接続部分の厚み寸法を確保して、その剛性の向上を図ることができる。
図6(a)は、白鍵101Dの部分拡大側面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線における白鍵101Dの断面図である。
ここで、図6(b)では、シャーシ110(図2参照)の上面から立設されるガイドポスト160が模式的に図示される。ガイドポスト160は、白鍵101Dが軸支孔103を中心として回動する際にその白鍵101Dの回動をガイドするための部位であり、樹脂材料から円柱状に形成され、ベース部材130Dの空洞(即ち、一対の側板部132の対向間)に挿通される。
なお、ガイドポスト160には、ゴム状弾性体から有底筒状に形成されるカバー部材161が外嵌される。カバー部材161の外面には、凹溝(図示せず)が複数凹設され、その凹溝に充填(塗布)された粘性材料(グリス等の潤滑剤)を保持可能に形成される。これにより、ベース部材130Dの側板部132との間の摺動性が向上される。
図6に示すように、木質部材140Sは、木質材料から断面矩形の長尺板状体として形成される部材であり、その内側面が、ベース部材130Dの側板部132における貼付面132aに接着剤により接着固定されることで、ベース部材130Dの左右側面に配設される。
上述したように、ベース部材130Dの貼付面132aには、凹溝134が凹設されるので、木質部材140Sの内側面(貼付面132aに接着固定される面)における外縁にささくれ(切削加工に伴い木質部材140Sの内側面における外縁(稜線部分)から突出する突起状の部位)が発生している場合であっても、そのささくれを凹溝134に収容して、ベース部材130Dの貼付面132aに木質部材140Sの内側面を密着させやすくすることができる。
これにより、木質部材140Sが浮き上がり、上板部131及び前板部133の左右端面(図6(b)左側または右側の面)と木質部材140Sの外側面(貼付面132aへの接着面と反対側の面)との間に段差が形成されることを抑制することができる。その結果、白鍵101Dの外観が損なわれることを抑制することができると共に、隣接する白鍵101を押鍵する際に段差に奏者の指が引っ掛かることを抑制することができる。
また、このように、貼付面132aの外縁に沿って凹溝134が凹設されていることで、ベース部材130Dの貼付面132aと木質部材140Sの内側面との間(接着面どうしの間)から流出した接着剤を凹溝134に収容させることができるので、ベース部材130Dにおける上板部131及び前板部133と木質部材140Sとの境界部分を抜けて外部(白鍵101Dの左右側面)へはみ出した接着剤を拭き取って除去するための工程を省略することができる。
なお、貼付面132aの外形は、図6(a)に示すように、木質部材140Sの外形よりも大きくされる。これにより、凹溝134が非形成とされる領域においても、ベース部材130Dの貼付面132aと木質部材140Sの内側面との間(接着面どうしの間)から流出した接着剤が、木質部材140Sの外側面(図6(a)紙面手前側面)まで溢れてくることを防止できる。
特に、本実施形態では、貼付面132aの外縁であって、ベース部材130Dにおける上板部131の下面および前板部133の背面にそれぞれ連接される2辺の外縁に沿って2本の凹溝134が凹設されるので、木質部材140Sの側面を、図6(a)に示すように、上板部131の下面および前板部133の背面にそれぞれ密着させることができる。即ち、木質部材140Sの側面と上板部131の下面および前板部133の背面との間に隙間が形成され、外観が損なわれることを抑制することができる。一方で、貼付面132aの2辺の外縁のみに凹溝134を設け、残りの2辺の外縁については、凹溝134の凹設を省略することで、その分、ベース部材130Dの剛性を高めることができる。
ここで、本実施形態では、木質部材140Sは、その厚み寸法(矢印L−R方向寸法)が5mmとされる。これは、木質部材140Sの厚み寸法が小さ過ぎる(薄い)場合には、その分、一対の側板部132の対向間の距離が拡大されるため、ベース部材130Dの空洞が大きくなる。よって、打鍵面(上板部131の上面)に奏者の爪が当接された際に空洞が共鳴しやすくなり、不快な音が発生する。一方で、木質部材140Sの厚み寸法が大き過ぎる(厚い)場合には、その分、製品重量が嵩む。また、一対の側板部132の対向間の距離が狭まるため、ガイドポスト160を細くする必要が生じ、その剛性が確保できない。
これに対し、本実施形態では、木質部材140Sの厚み寸法を5mmとすることで、ベース部材130Dの空洞(一対の側板部132の対向間に形成される空間の体積)を適正として、打鍵面に奏者の爪が当接された際に、空洞を共鳴し難くして、不快な音の発生を抑制しつつ、製品全体としての軽量化と、ガイドポスト160の剛性の確保とを図ることができる。
なお、白鍵101Dの横幅寸法(厚み寸法、矢印L−R方向寸法)は、アコースティックピアノにおける白鍵の横幅寸法に合わせるために、21mm〜23mmの範囲に設定されることが好ましく(本実施形態では、22.5mmに設定される)、ベース部材130D(上板部131、側板部132及び前板部133)の肉厚寸法(厚み寸法)は、剛性確保と成形性との兼ね合いから、1〜3mmの範囲に設定されることが好ましい(本実施形態では2mmに設定される)。この場合、白鍵101Dにおいて、木質部材140Sの厚み寸法は、2mm以上かつ14.5mm以下の範囲に設定されることが好ましい。
即ち、樹脂材料のみから構成される白鍵では、その白鍵の横幅寸法を22.5mmに設定した場合、白鍵の肉厚寸法を最大の3mmに設定することで、空洞の横幅寸法(矢印L−R方向に対応する寸法)が最少の16.5mm(=22.5mm−3mm×2)となる。即ち、白鍵の肉厚寸法を3mmよりも小さく(薄く)すると、その分、空洞の横幅寸法が大きくなる。
これに対し、白鍵101Dによれば、白鍵101Dの横幅寸法を22.5mmに設定した場合、木質部材140Sの厚み寸法が2mm以上であれば、白鍵101D(上板部131、側板部132及び前板部133)の肉厚寸法を最少の1mmに設定した場合であっても、空洞の横幅寸法(一対の側板部132の対向間の距離、矢印L−R方向寸法)を16.5mm(=22.5mm−(2mm+1mm)×2)とでき、その結果、白鍵101Dの空洞の横幅寸法を、樹脂材料のみから構成される白鍵における空洞の横幅寸法と同等以下とすることができる。
一方、木質部材140Sの厚み寸法が14.5mm以下であれば、白鍵101D(上板部131、側板部132及び前板部133)の肉厚寸法を最少の1mmに設定し、木質部材140Sの他方の厚み寸法を最少の2mmとすることで、空洞の横幅寸法(一対の側板部132の対向間の距離、矢印L−R方向寸法)を4mm(=22.5mm−(2mm+14.5mm)−(1mm)×2)とすることができ、その結果、ガイドポスト160の剛性を確保できる。
なお、木質部材140Sの厚み寸法は、4mm以上かつ10.5mm以下の範囲に設定されることがより好ましい。即ち、木質部材140Sの厚み寸法が4mm以上であれば、白鍵101D(上板部131、側板部132及び前板部133)の肉厚寸法を最少の1mmに設定した場合であっても、空洞の横幅寸法(一対の側板部132の対向間の距離、矢印L−R方向寸法)を12.5mm(=22.5mm−(4mm+1mm)×2)とでき、その結果、白鍵101Dの空洞を樹脂材料のみから構成される白鍵における空洞よりも十分に小さくすることができる。
一方、木質部材140Sの厚み寸法が10.5mm以下であれば、白鍵101D(上板部131、側板部132及び前板部133)の肉厚寸法を2mmに設定した場合であっても、木質部材140Sの他方の厚み寸法を最少の4mmとすることで、空洞の横幅寸法(一対の側板部132の対向間の距離、矢印L−R方向寸法)を4mm(=22.5mm−(4mm+10.5mm)−(2mm)×2)とすることができ、よって、ベース部材130D及びガイドポスト160の両者の剛性を確保できる。
本実施形態では、図6(b)に示すように、木質部材140Sの外側面に対し、ベース部材130Dにおける上板部131の左右端面が面一となるように、貼付面132aからの上板部131の左右方向(矢印L−R方向)への突出寸法および木質部材140Sの厚み寸法が設定される。
なお、木質部材140Sの外側面は、本実施形態のように、ベース部材130Dにおける上板部131の左右端面と面一となる位置に配設されるか、或いは、ベース部材130Dにおける上板部131の左右端面よりも内側(側板部132の貼付面132a側)に奥まって配設され、木質部材140Sの外側面とベース部材130Dにおける上板部131の左右端面との間の段差寸法が、0mm以上かつ0.2mm以下の範囲に設定されることが好ましい。
このように、木質部材140Sの外側面と上板部131の左右端面とが面一とされるか、或いは、木質部材140Sの外側面が上板部131の左右端面よりも内側に奥まって配設されることで、白鍵101Dの上面視において、上板部131(打鍵面)から木質部材140Sが左右に突出して視認されることを回避でき、また、内側へ奥まる寸法が0.2mm以下とされることで、段差を最小限として、白鍵101Dの側面視においても、ベース部材130D(上板部131)と木質部材140Sとの一体感を形成して、その外観の向上を図ることができる。併せて、隣接する白鍵101を押鍵または離鍵する際に段差に指が引っ掛かることを抑制することができる。
この場合、木質材料から形成される木質部材140Sは、金型で成形されるベース部材130Dと比較して、寸法公差が大きく、木質部材140Sの長手方向に沿ってその厚み寸法にばらつきがあり、また、ベース部材130D自体も寸法公差を有するため、ベース部材130Dの側板部132における貼付面132aに木質部材140Sを接着固定したのみでは、木質部材140Sの外側面と上板部131の左右端面との間の段差寸法が長手方向(矢印F−B方向)の全体または一部において上述した範囲内に収まらないことがある。また、白鍵101D自体の横幅寸法(矢印L−R方向寸法)も規定の範囲内に収まらないことがある。そのため、エンドミルやフライスなどの切削工具を白鍵101Dの左右側面を長手方向に沿って移動させ切削加工を施すことで、上述した段差寸法や横幅寸法を調整することが必要となる。
これに対し、本実施形態では、ベース部材130Dにおける側板部132の外殻面132bが、図6(b)に示すように、木質部材140Sの外側面よりも内側(側板部132の貼付面132a側)へ奥まって配設されるので、白鍵101Dの左右側面に切削加工を施す際には、木質部材140Sと同時に切削加工される樹脂材料部分を上板部131の左右端面のみとし、ベース部材130Dの切削加工される領域を最小限に抑えることができる。よって、ベース部材130Dが損傷することを抑制することができる。
即ち、木質材料と樹脂材料とでは、その切削加工に適した条件が異なる。そのため、本実施形態のように、白鍵101Dの左右側面において、ベース部材130Dにおける側板部132の外殻面132bが、木質部材140Sの外側面よりも内側に逃げていることで、切削工具の加工刃が切削加工する領域を、比較的薄肉の上板部131の左右端面のみとすることができ、加工刃が樹脂材料部分の広い範囲にわたって当たることを回避できる。よって、加工刃の不要な巻き込みによって、ベース部材130Dに割れや欠けなどの損傷が生じることを抑制することができる。
図7(a)は、白鍵101Dの下面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における白鍵101Dの断面図である。
ここで、第1の群(白鍵101C,101E,101F,101B,101A’)では、長手方向寸法の長い木質部材140Lが、ベース部材130C等の全長(即ち、幅広部WK及び幅狭部NK)にわたって配設されるため(図4参照)、かかる木質部材140Lによりベース部材130D等が補強され、白鍵101C等全体としての剛性が確保される。一方で、第2の群(白鍵101D,101G,101A)では、長手方向寸法の短い木質部材140Sが、ベース部材130D等の幅広部WKのみに配設され、ベース部材130D等の幅狭部NKには配設されないため(図4参照)、ベース部材130D等の幅狭部NKにおける剛性が低く、白鍵101D等全体としての剛性を十分に確保できないおそれがある。
この場合、ベース部材130D等を補強する方法として、ベース部材130D等に補強部分を一体に形成する(例えば、上板部131を部分的に厚肉とする)方法が考えられるが、かかる方法を採用した場合には、厚み寸法の不均一性から成形時にヒケが発生しやすくなり、外観や歩留りの悪化を招く一方で、ヒケの問題を回避できる程度の厚肉化では、剛性を十分に向上させることができない。
また、第2の群(白鍵101D,101G,101A)では、第1の群(白鍵101C,101E,101F,101B,101A’)と比較して、長手方向寸法の長い木質部材140Lがベース部材130D等の幅狭部NKに配設されないことから、その分、空洞の横幅寸法(側板部132の対向間距離)が大きくなる(図4参照)。そのため、第2の群では、空洞が大きくなり、打鍵面に奏者の爪が当接された際に空洞が共鳴して不快な音が発生しやすい。
そこで、本実施形態では、第2の群(白鍵101D,101G,101A)に、ベース部材130D等よりも剛性が高い材料(木質材料)からなる剛性部材150を、ベース部材130D等の長手方向に沿って配設することで、成形時のヒケの問題を発生させることなく、白鍵101D等全体としての剛性を向上させる。また、剛性部材150を、ベース部材130D等の空洞に内装することで、その分、空洞を小さくして、打鍵面に爪が当接された際の不快な音の発生を抑制する。以下、第2の群の代表例としての白鍵101Dを用いて、剛性部材150の詳細構成について説明する。
図7に示すように、剛性部材150は、木質材料(本実施形態では、MDF材(Medium Density Fiberboard:中密度繊維板))から断面正方形の長尺棒状に形成される部材であり、ベース部材130Dの空洞に内装され、上板部131の下面(図7(b)下側面)に接着剤により接着固定される。これにより、剛性部材150の体積の分、ベース部材130Dの空洞を小さくして、空洞の共鳴を抑制することができる。
更に、剛性部材150が配設(接着固定)されることで、ベース部材130Dにおける上板部131自体の剛性を高めることができるので、打鍵面に奏者の爪が当接された際の上板部131の振動を抑制することができる。その結果、例えば、側板部132の内壁面に剛性部材150を配設する場合と比較して、空洞へ振動が伝達され難い状態として、空洞の共鳴を抑制できるので、不快な音の発生をより効果的に抑制することができる。
特に、本実施形態では、剛性部材150が木質材料からなるので、ベース部材130Dの変形や破損の抑制と製品全体としての軽量化との両者を達成しつつ、不快な音が発生することも効果的に抑制することができる。即ち、木質材料は、樹脂材料と比較して剛性が高い一方で、金属材料と比較して比重が小さい(即ち、単位重量あたりの体積が大きい)。よって、剛性部材150を木質材料から構成することで、同じ重量の樹脂材料で構成する場合と比較して、ベース部材130Dの剛性をより向上させることを可能としつつ、同じ重量の金属材料で構成する場合と比較して、空洞の体積をより小さくすることを可能とし、その結果、軽量化と、剛性の向上と、空洞の共鳴抑制(不快な音の発生抑制)とを同時に達成することができる。
なお、本実施形態では、剛性部材150は、その長手方向に直交する平面で切断した断面が正方形に形成されると共に、長手方向に沿って断面積が一定の棒状体として形成されるので、長手方向および周方向における方向性をなくすことができる。よって、剛性部材150をベース部材130Dの空洞に内装(挿入)する際には、剛性部材150の周方向および長手方向の向きを考慮する必要がないので、その内装(挿入)作業の作業性の向上を図ることができる。また、剛性部材150自体の形状が単純化されるので、かかる剛性部材150を切削加工により製造する際の製造コストの削減も図ることができる。
ベース部材130Dにおける上板部131の下面(図7(b)下側面)には、そのベース部材130Dの長手方向(矢印F−B方向)に沿って所定間隔を隔てて対向配置される一対の突起部135a,135bが突設される。これら一対の突起部135a,135bの対向間に剛性部材150が配設される。
この場合、一対の突起部135a,135bの対向間隔は、剛性部材150の長手方向寸法よりも若干大きな寸法(本実施形態では1.05倍の寸法)に設定され、一方の突起部135aは幅広部WKにおける上板部131の下面に、他方の突起部135bは幅狭部NKにおける上板部131の下面に、それぞれ配設される。
よって、剛性部材150は、ベース部材130Dの幅広部WKと幅狭部NKとの境界を長手方向(矢印F−B方向)に跨いで配設される。これにより、幅広部WKと幅狭部NKとの境界(即ち、押鍵時の外力が作用された際に応力が集中しやすい部位)の応力を、剛性部材150を介してベース部材130D全体に効果的に分散させることができ、その結果、白鍵101Dが強打される際のベース部材130Dの変形や破損を抑制することができる。
また、剛性部材150は、その一端(先端、矢印F方向側)が、ベース部材130Dの長手方向に直交する方向視(矢印R−L方向視)において、幅広部WK(側板部132の貼付面132a)に配設される木質部材140Sの一部と重なる位置に配設される。即ち、剛性部材150と木質部材140Sとは、長手方向(矢印F−B方向)に沿って所定量の重なり代を有する。
この場合、木質部材140S及び剛性部材150は、木質材料から形成されると共にベース部材130Dと比較して厚み寸法が大きくされるため、ベース部材130Dよりも剛性が高い。そのため、仮に、これら木質部材140Sと剛性部材150とが長手方向(矢印F−B方向)において重ならない領域がベース部材130Dに存在すると、押鍵時の外力がベース部材130Dに作用された際に、かかる領域に応力が集中し、ベース部材130Dの変形や破損を招きやすくなる。
これに対し、本実施形態では、上述したように、木質部材140Sと剛性部材150とがベース部材130Dの長手方向に直交する方向視において重なる部分(重なり代)を有するので、押鍵時の外力がベース部材130Dに作用された際には、木質部材140S及び剛性部材150を介して応力をベース部材130D全体に分散させることができ、その結果、白鍵101Dが強打される際のベース部材130Dの変形や破損を抑制することができる。
また、剛性部材150は、その他端(後端、矢印B方向側)が、ベース部材130Dの長手方向に直交する方向視(矢印R−L方向視または矢印U−D方向視)において、幅狭部NK(側板部132の下方)に配設されるハンマー係合部104を越える位置に配設される。即ち、剛性部材150は、ベース部材130Dの長手方向(矢印F−B方向)に沿ってハンマー係合部104を跨ぐ位置に配設される。
これにより、白鍵101Dの押鍵に伴いハンマー120(受け部124)からハンマー係合部104に反力が作用する際には、ハンマー係合部104に作用する反力を、剛性部材150を介してベース部材130D全体に分散させることができるので、ベース部材130Dのハンマー係合部104近傍に応力が集中することを抑制することができる。その結果、白鍵101Dが強打される際のベース部材130Dの変形や破損を抑制することができる。
ここで、剛性部材150の一端および他端(矢印F方向端部および矢印B方向端部)には、上述したように、一対の突起部135a,135bが配設される。そのため、剛性部材150を、ベース部材130Dにおける上板部131の下面(図7(b)下側面)に接着固定する工程おいて、かかる剛性部材150が長手方向(矢印F−B方向)に変位することを突起部135a,135bにより規制することができる。即ち、長手方向への剛性部材150の位置ずれを抑制することができる。その結果、ベース部材130Dに対して剛性部材150を適正な位置に配設(接着固定)でき、剛性部材150による剛性向上効果を確実かつ安定して発揮させることができる。
なお、一対の突起部135a,135bの対向間隔は、上述したように、剛性部材150の長手方向寸法よりも大きくされ、突起部135a,135bと剛性部材150の一端および他端との間には所定の隙間が形成される。よって、剛性部材150を、上板部131とハンマー係合部104との間に挿通させつつ、上板部131の下面に配設する際には、上述した隙間の分、その作業性を確保することができる。
一方で、上述した隙間は、剛性部材150の長手方向(矢印F−B方向)における配設位置を不定とさせるところ、本実施形態では、剛性部材150が突起部135a又は突起部135bに当接される位置まで位置ずれしたとしても、剛性部材150と木質部材140Sとの長手方向における重なり代が確保され、かつ、剛性部材150がハンマー係合部104を長手方向に跨ぐことができるように、上述した隙間の寸法が設定される。よって、剛性部材150による剛性向上効果を確実に発揮させることができる。
一対の突起部135a,135bのそれぞれは、図7(a)に示すように、上板部131の下面と一対の側板部132の対向面(内壁面)とに連接される。即ち、一対の突起部135a,135bのそれぞれは、ベース部材130Dの空洞を区画する左右の内壁面に連接される。
よって、ベース部材130Dにおける上板部131の下面に剛性部材150の一側面を接着剤により接着固定する場合には、これら上板部131の下面と剛性部材150の一側面との間(接着面どうしの間)から流出する接着剤を堰き止めるための壁として一対の突起部135a,135bを機能させることができる。
次いで、図8を参照して、第1の群の代表例としての白鍵101Eについて説明する。図8(a)は、白鍵101Eの側面図であり、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は、それぞれ図8(a)のVIIIb−VIIIb線、VIIIc−VIIIc線およびVIIId−VIIId線における白鍵101Eの断面図である。
なお、図8(b)から図8(d)では、理解を容易とするために、木質部材140Lの厚み寸法と木質部材140Sの厚み寸法との比率が実際よりも拡大された状態で模式的に図示される。また、図8(b)では、シャーシ110(図2参照)の上面から立設されるガイドポスト160が模式的に図示される。
図8に示すように、白鍵101Eは、ベース部材130Eの左右側面のうちの一方の側面(図8(a)紙面奥側の面)に長手方向寸法の短い木質部材140Sが配設されると共に、他方の側面(図8(a)紙面手前側の面)に長手方向寸法の長い木質部材140Lが配設される。
この場合、ベース部材130Eは、長手方向寸法が長い木質部材140Lを配設可能とするために、左右側面のうちの一方の側面に対して、他方の側面における貼付面132a及び外殻面132bの形成範囲が長手方向に長くされる点を除き、上述したベース部材130Dと実質同一に構成される。よって、ベース部材130Dと同一の部分には同一の符号を付して、その構成および作用効果の説明は省略する。
ここで、白鍵101Eのように、ベース部材130Eの左右側面に長手方向寸法が異なる木質部材140L,140Sがそれぞれ配設される場合には、左右への反り(白鍵101E(前板部133)を正面視(矢印B方向視)した際に白鍵101Eの後端側が左右いずれかの方向(矢印L方向または矢印R方向)に位置するように白鍵101Eが湾曲した状態となること)が発生するおそれがある。
即ち、白鍵101Eの場合、幅広部WKでは、ベース部材130Eの左右両側にそれぞれ木質部材140L,140Sが配設され(図4参照)、左右バランスが比較的均一となるため、左右への反りは比較的発生し難いが、幅狭部NKでは、ベース部材130Eの左右片側のみに木質部材140Lの配設される領域が形成され(図4参照)、かかる領域では、温度や湿度が変化すると、樹脂材料と木質材料との間の膨張率の差異に起因して、左右への反りが発生しやすい。
このような左右への反りが発生すると、左右に列設される白鍵101どうしの間の隙間が不均一となり(図1(a)参照)、外観が損なわれるだけでなく、白鍵101どうしの接触等により、演奏に不具合が生じるおそれもある。これに対し、白鍵101Eでは、長手方向寸法の短い木質部材140Sの厚み寸法(左右方向寸法、矢印L−R方向寸法)を、長手方向寸法の長い木質部材140Lの厚み寸法よりも大きな寸法に設定することで、その左右への反りを抑制する。
即ち、木質部材140L,140Sの左右への反りの大きさは、高さ寸法(矢印U−D方向寸法)及び厚み寸法(矢印L−R方向寸法)が同一の場合、長手方向寸法の短い木質部材140Sよりも長手方向寸法の長い木質部材140Lの方が大きくなる。そのため、長手方向寸法の異なる木質部材140L,140Rがベース部材130Eの左右側面にそれぞれ配設されると、長手方向寸法の長い木質部材140Lの左右への反りの影響を受けて、白鍵101E全体としても同方向への反りが発生する。また、高さ寸法(矢印U−D方向寸法)及び長手方向寸法(矢印F−B方向寸法)が同一の場合には、厚み寸法(矢印L−R方向寸法)の小さい(薄い)ものの方が左右への反りが小さくなる。
これに対し、白鍵101Eによれば、長手方向寸法の短い木質部材140Sの厚み寸法が、長手方向寸法の長い木質部材140Lの厚み寸法よりも大きな寸法に設定される(即ち、長手方向寸法の長い木質部材140Lの厚み寸法が相対的に小さく(薄く)される)ので、その分、長手方向寸法の長い木質部材140Lが左右へ反ることによる影響を小さくして、白鍵101E全体としての左右への反りの発生を抑制することができる。なお、木質部材140S,140Lのいずれか一方のみの厚み寸法を変更するのであれば、木質部材140Lの厚み寸法を小さくするのが好ましい。厚み寸法の変更量が同一であれば、木質部材140Sよりも木質部材140Lの方が左右への反りの大きさを小さくでき、その分、白鍵101Eの左右への反りの抑制に寄与するからである。
併せて、白鍵101Eによれば、長手方向寸法の短い木質部材140Sの厚み寸法が大きくされることで、その分、ベース部材130Eの空洞の横幅寸法(側板部132の対向間隔)を小さくでき、その結果、打鍵面に奏者の爪が当接された際に空洞が共鳴することを抑制して、不快な音を発生し難くできる。
また、白鍵101Eは、木質部材140Lと木質部材140Sとが、互いの木裏側どうし又は木表側どうしを向い合せる向きで、ベース部材130Eの左右側面(貼付面132a)に配設される。これにより、木質部材140Lの反りの向きと木質部材140Sの反りの向きとを互いに逆方向として、打ち消し合わせることができるので、その分、白鍵101E全体としての左右への反りを抑制することができる。
なお、木質部材140L,140Sの木表および木裏とは、丸太を板目に製材した場合に、丸太の樹皮に近い方の面が木表、丸太の芯に近い方の面が木裏である。この場合、木質部材140L,140Rは、木裏側が突出する(木表側が凹む)ように反る。
図4に戻って説明する。本実施形態では、上述したように、第1の群(白鍵101C,101E,101F,101B,101A’)及び第2の群(白鍵101D,101G,101A)のうちの第2の群のみに剛性部材150が配設されるので、第1の群における白鍵101の重量と、第2の群における白鍵101の重量との差異を小さくできる。これにより、奏者が白鍵101を操作(押鍵または離鍵)する際の操作感を、第1の群および第2の群の各鍵において均一化することができる。
なお、1枚の木質部材140S及び1枚の木質部材140Lの合計の重量と、2枚の木質部材140S及び1本の剛性部材150の合計の重量とが同一となるように、これら木質部材140S,140L及び剛性部材150を形成することが好ましい。第1の群における白鍵101の重量と、第2の群における白鍵101の重量との差異を小さくできるからである。
また、この場合、第1の群におけるベース部材130C,130E,130F,130B,130A’及び第2の群におけるベース部材130D,130G,130Aのそれぞれの重量を同一の重量に設定することが更に好ましい。第1の群における白鍵101の重量と、第2の群における白鍵101の重量とを同一の重量とでき、奏者が白鍵101を操作(押鍵または離鍵)する際の操作感の第1の群および第2の群の各鍵における均一化をより高めることができるからである。
次いで、図9を参照して、第2実施形態における鍵盤装置について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図9(a)は、第2実施形態におけるベース部材2130Dの部分拡大側面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線におけるベース部材2130Dの断面図である。なお、図9(a)及び図9(b)では、木質部材140Sの外形が二点鎖線を用いて模式的に図示される。
図9に示すように、ベース部材2130Dの貼付面132aには、第1実施形態の場合と同様に、上板部131の下面(図9(a)下側面)及び前板部133の背面(図9(a)右側面)にそれぞれ連接される2辺の外縁に沿って2本の凹溝134が凹設されるのに加え、第2実施形態では、それら2本の凹溝134との間に所定間隔を隔てつつ対向する位置に2本の凹溝2134が更に凹設される。即ち、貼付面132aには、その添付面132aに配設される木質部材140Sの内側面(貼付面132aに接着固定される面)における外縁4辺をそれぞれ含む領域に凹溝134,2134が凹設される。
これにより、木質部材140Sの内側面における外縁4辺のうちのいずれの辺からささくれが突出される場合であっても、そのささくれを、4本の凹溝134,2134のいずれかによって確実に受け入れる(逃がす)ことができる。その結果、木質部材140Sの内側面をベース部材2130Dの貼付面132aに密着させ、木質部材140Sの浮き上がりや隙間の形成を確実に防止することができる。
また、このように、木質部材140Sの内側面における外縁4辺に対応して4本の凹溝134,2134がそれぞれ凹設されることで、ベース部材2130Dの貼付面132aと木質部材140Sの内側面との間(接着面どうしの間)から接着剤がいずれの方向へ流出したとしても、かかる接着剤を4本の凹溝134,2134のいずれかに確実に収容させることができる。
次いで、図10を参照して、第3実施形態から第5実施形態における鍵盤装置について説明する。なお、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図10(a)は、第3実施形態における白鍵3101Dの断面図であり、図10(b)は、第4実施形態における白鍵4101Dの断面図であり、図10(c)は、第5実施形態における白鍵5101Dの断面図である。なお、これら図10(a)から図10(c)に示す断面は、図6(b)に示す断面に対応する。
図10(a)から図10(c)に示すように、第3実施形態から第5実施形態では、ベース部材3130D〜5130Dにおける貼付面132aへの凹溝134(図6参照)の凹設が省略される一方、木質部材3140S〜5140Sにおける内側面(貼付面132aに接着固定される面)の外縁に、面取り加工が施されることで、面取り部M3〜M5が形成される。
面取り部M3は、木質部材3140Sの内側面の外縁(稜線部分)を断面矩形に除去することで形成され、面取り部M4,M5は、木質部材4140S,5140Sの内側面の外縁(稜線部分)を斜めに除去することで形成される。なお、面取り部M4は、二等辺三角形を角から除去する45°のC面取りにより形成される。また、面取り部M5は、三辺のうちの一の辺の長さが木質部材5140Sの厚み寸法(矢印L−R方向寸法)と同一とされる不等辺三角形を角から落とすC面取りにより形成される。
第3実施形態から第5実施形態によれば、面取り部M3〜M5の形成によって、木質部材3140S〜5140Sの内側面(貼付面132aに接着固定される面)における外縁からささくれを除去しておくことができるので、ベース部材3130D〜5130Dの貼付面132aに木質部材3140S〜5140Sの内側面を密着させやすくすることができる。これにより、木質部材3140S〜5140Sが浮き上がり、上板部131及び前板部133の左右端面との間に段差が形成されることを抑制することができる。その結果、白鍵3101D〜5101Dの外観が損なわれることを抑制することができると共に、隣接する白鍵101を押鍵する際に段差に奏者の指が引っ掛かることを抑制することができる。
また、このように、木質部材3140S〜5140Sの内側面(貼付面132aに接着固定される面)における外縁に面取り部M3〜M5が形成されることで、ベース部材3130D〜5130Dの貼付面132aと木質部材3140S〜5140Sの内側面との間(接着面どうしの間)から流出した接着剤を、面取り部M3〜M5によって形成される空間に収容させることができるので、ベース部材3130D〜5130Dにおける上板部131及び前板部133と木質部材140Sとの境界部分を介して外部へはみ出した接着剤を拭き取って除去するための工程を省略することができる。
なお、本実施形態では、面取り部M3〜M5が形成される辺は、木質部材3140S〜5140Sにおける内側面の外縁4辺のうち、ベース部材3130D〜5130Dにおける上板部131の下面および前板部133の背面にそれぞれ連接される側の2辺のみとされる。これにより、木質部材3140S〜5140Sの側面とベース部材3130D〜5130Dにおける上板部131の下面および前板部133の背面との間に隙間が形成されて外観が損なわれることを抑制可能としつつ、面取り加工に要する工数を抑制して、製造コストの低減を図ることができる。
次いで、図11を参照して、第6実施形態における鍵盤装置について説明する。図11は、第6実施形態における白鍵6101Dの断面図である。なお、図11に示す断面は、図7(b)に示す断面に対応する。また、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図11に示すように、第6実施形態におけるベース部材6130Dは、打鍵面が上面(図11上側面)に形成されると共に内部に剛性部材6150が埋設される上板部6131と、一対の側板部132及び前板部133とが樹脂材料からインジェクション成形(インサート成形)により一体に形成される。
剛性部材6150は、金属材料から長尺の平板形状に形成される部材であり、その長手方向をベース部材6130Dの長手方向(矢印F−B方向)に沿わせつつ、打鍵面に平行な姿勢で上板部6131に埋設される。これにより、ベース部材6130Dの上板部6131自体の剛性を高めることができるので、打鍵面に奏者の爪が当接された際の上板部6131の振動を抑制することができる。その結果、例えば、側板部132に剛性部材6150が埋設される場合と比較して、空洞へ振動が伝達され難い状態として、空洞の共鳴を抑制することができるので、不快な音の発生を効果的に抑制することができる。
また、第6実施形態によれば、剛性部材6150の上板部6131への埋設は、ベース部材6130Dをインジェクション成形する工程において同時に行うことができるので、例えば、第1実施形態の場合のように(図7参照)、剛性部材150をベース部材130Dに固定するために接着剤を塗布する(或いは、両面テープを貼着する)作業や、ベース部材130Dの空洞に剛性部材150を内装する作業を行う必要がないので、その分、製造コストの削減を図ることができる。
なお、剛性部材6150は、第1実施形態の場合と同様に、一端(先端、矢印F方向側)が木質部材140S(図7(a)参照)の一部と重なる位置に配設され、かつ、他端(後端、矢印B方向側)がハンマー係合部104を越える位置に配設される。これにより、上述したように、白鍵6101Dが強打される際のベース部材6130Dの変形や破損を剛性部材6150の剛性を利用して抑制することができる。
次いで、図12(a)から図12(c)を参照して、第7実施形態および第8実施形態における鍵盤装置について説明する。
図12(a)は、第7実施形態における白鍵7101Dの部分拡大断面図であり、図12(b)は、ベース部材7130Dに剛性部材150を配設する工程における白鍵7101Dの部分拡大断面図である。なお、図12(a)及び図12(b)に示す断面は、図7(b)に示す断面に対応する(但し、図7(b)に対して、上下方向が反転して図示される)。また、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図12(a)及び図12(b)に示すように、第7実施形態では、ベース部材7130Dにおける上板部131の下面(図12(a)上側面)から突設される一対の突起部135a,7135b(突起部135aについては図7参照)のうちの後端側(矢印B方向側)に位置する突起部7135bが、その突設先端を円弧状に湾曲させて形成される。即ち、突起部7135bは、ベース部材7130Dの左右方向に直交する平面で切断した断面において、突設先端側の断面積が小さくされる。これにより、剛性部材150を突起部7135bの突設先端で滑らせつつ、上板部131の下面に配設する際には、剛性部材150と突起部7135bとの間の摩擦抵抗を低減でき、剛性部材150をスムーズに配設することができる。
特に、本実施形態では、上板部131の下面に剛性部材150を配設する作業は、剛性部材150の一端(矢印F方向側)を、ハンマー係合部104よりも後端側(矢印B方向側)から上板部131とハンマー係合部104との間に挿通させつつ行われる(図7(b)参照)。そのため、この配設作業の後半では、剛性部材150を上板部131側へ寝かせる必要があり、また、一対の側板部132の対向間隔も狭いため、剛性部材150の他端側(矢印B方向側)を突起部7135bの突設先端に載置した上で(図12(b)参照)、かかる剛性部材150を前方(矢印F方向)へ向けて押し込むこととなる。よって、突起部7135bの突設先端を円弧状に湾曲させ、剛性部材150を滑らせる際の摩擦抵抗を低減できることが特に有効となる。
図12(c)は、第8実施形態における白鍵8101Dの部分拡大断面図である。なお、図12(c)に示す断面は、図7(b)に示す断面に対応する(但し、図7(b)に対して、上下方向が反転して図示される)。また、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図12(c)に示すように、第8実施形態では、ベース部材8130Dにおける上板部131の下面(図12(c)上側面)から突設される一対の突起部135a,8135b(突起部135aについては図7参照)のうちの後端側(矢印B方向側)に位置する突起部8135bが、延設部8135b1を備える。延設部8135b1は、突起部8135bの突設先端部分から他方の延設部135aへ向けて延設される部位であり、上板部131の下面との間に剛性部材150を介装可能な間隔を隔てて形成される。
これにより、ベース部材8130Dにおける上板部131の下面に剛性部材150が配設された状態では、上板部131の下面と突起部8135bの延設部8135b1との間に剛性部材150を介装させることができるので、かかる剛性部材150を、ベース部材8130Dにおける上板部131の下面に保持することができる。よって、例えば、剛性部材150を上板部131の下面に接着固定するための接着剤を硬化させる工程や製品状態で鍵が強打された場合などにおいて、剛性部材150がベース部材8130Dから脱落することを抑制することができる。
なお、突起部8135bの延設部8135b1の上面には、延設部8135b1の延設先端側(矢印F方向側)ほど上板部131の下面へ近接する向きに傾斜される傾斜面が形成される。よって、剛性部材150の後端を延設部8135b1の上面(傾斜面)により案内させることができ、上板部131の下面に剛性部材150をスムーズに配設することができる。
また、突起部8135bは、傾斜面の形成により、突設先端側が先細となる断面台形状に形成される。即ち、突起部8135bは、ベース部材8130Dの左右方向に直交する平面で切断した図12(c)に示す断面において、突設先端側の断面積が小さくされる。これにより、剛性部材150を突起部8135bの突設先端で滑らせつつ、上板部131の下面に配設する際には、剛性部材150と突起部8135bとの間の摩擦抵抗を低減でき、剛性部材150をスムーズに配設することができる。
この場合、突起部8135bは、左右の側板部132(図7参照)から切り離されている(非接続とされている)ことが好ましい。剛性部材150を上板部131の下面に配設する際には、剛性部材150の後端側(矢印B方向側)の角を延設部8135b1の傾斜面に当接させることで、突起部8135bを後方(矢印B方向)へ向けて反る姿勢に弾性変形させて、剛性部材150を配設しやすくできるからである。また、突起部8135bが弾性変形可能とされることで、一対の突起部135a,8135bの対向間隔を剛性部材150の全長に近づけて、延設部8135b1が剛性部材150を係合する状態を形成しやすくできるからである。
また、突起部8135bを左右の側板部132(図7参照)から切り離す(非接続とする)場合、突起部8135bの基端側(上板部131の下面との接続側)のみを部分的に左右の側板部132に接続しても良い。突起部8135bの弾性的な変形性を確保しつつ、接着剤を堰き止めるための壁としての機能も確保できるからである。
次いで、図13を参照して、第9実施形態における鍵盤装置について説明する。図13(a)は、第9実施形態における白鍵9101Dの下面図であり、図13(b)は、図13(a)のXIIIb−XIIIb線における白鍵9101Dの断面図である。なお、図13(b)では、剛性部材9150が突起部9135bの凹欠部9135b1に載置された状態が図示される。また、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図13(a)及び図13(b)に示すように、第9実施形態では、ベース部材9130Dにおける上板部131の下面(図13(a)紙面手前側の面)から突設される一対の突起部135a,9135bのうちの後端側(矢印B方向側)に位置する突起部9135bが、凹欠部9135b1を備える。
凹欠部9135b1は、ベース部材9130Dの長手方向視(矢印F−B方向視)において、突起部9135bの突設先端をV字状に凹欠して形成される部位であり(図13(b)参照)、上板部131へ近接するに従って間隔(矢印L−R方向寸法)が狭くなる一対の傾斜面を有する。一対の傾斜面は、その最少の間隔が剛性部材9150の幅寸法(矢印L−R方向寸法)よりも小さくされ、かつ、最大の間隔が剛性部材9150の幅寸法よりも大きくされる。
これにより、剛性部材9150を突起部9135bの突設先端で滑らせつつ、ベース部材9130Dにおける上板部131の下面に配設する(矢印F方向への押し込む)際には、図13(b)に示すように、剛性部材9150の左右の角のみを凹欠部9135b1の一対の傾斜面に接触させることができ、剛性部材9150と突起部9135bとの間の摩擦抵抗を低減することができるので、その分、剛性部材9150をスムーズに配設する(矢印F方向へ押し込む)ことができる。
更に、剛性部材9150の配設(矢印F方向への押し込み)の際には、剛性部材9150の左右の角のみを突起部9135bの突設先端(凹欠部9135b1の傾斜面)に接触させる構成とされることで、剛性部材9150の上面(図13(b)右側面)と突起部9135bの突設先端との間に隙間を形成することができるので、剛性部材9150の上面に塗布した接着剤が突起部9135bの突設先端で掻き取られることを抑制することができる。
また、第9実施形態では、ベース部材9130Dに対向壁部9136a,9136bが配設される。対向壁部1936a,9136bは、剛性部材9150のベース部材9130Dに対する左右方向(矢印L−R方向)への位置決めを行うための部位であり、ベース部材9130Dにおける上板部131の下面(図13(a)紙面手前側の面)から突設されると共に、左右方向に沿って所定間隔を隔てつつ対向配置される一対の板状体としてそれぞれ形成される。対向壁部9136a,9136bの一対の板状体は、剛性部材9150の幅寸法よりも若干大きな間隔を有しており、その対向間に剛性部材9150が配設可能とされる。
これにより、剛性部材9150がベース部材9130Dにおける上板部131の下面に配設された状態では、剛性部材9150がベース部材9130Dに対して左右方向へ変位(位置ずれ)することを対向壁部9136a,9136bにより規制できるので、剛性部材9150をベース部材9130Dに対して適正な位置に配設することができる。その結果、剛性部材9150を配設することによる効果を確実に発揮させることができる。また、剛性部材9150をベース部材9130Dにおける上板部131の下面に配設する工程では、対向壁部9136a,9136bをそれぞれ目印として配設作業をするができるので、左右方向への位置合わせを容易として、その作業性の向上を図ることができる。
次いで、図14を参照して、第10実施形態における鍵盤装置について説明する。図14は、第10実施形態における白鍵10101の断面図であり、図4に対応する。
第1実施形態では、ベース部材130C〜130B,130A’の幅狭部NKに木質部材140Lが配設されない又は片面のみに配設される(即ち、幅狭部NKへの木質部材140Lの配設数が最大1枚とされる)場合を説明したが、第10実施形態のベース部材10130C〜10130B,10130A’の幅狭部NKには、その左右側面に木質部材141L等がそれぞれ配設される。なお、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
ここで、第10実施形態におけるベース部材10130C〜10130B,10130A’は、第1実施形態におけるベース部材130C〜130B,130A’に対し、幅狭部NKの幅寸法(矢印L−R方向寸法)が小さく(狭く)されると共に、幅狭部NKの左右側面のうちの少なくとも一方の側面における貼付面132aが幅広部WKとの境界を越えて前面側(矢印F方向側)へ延設される点を除き、他の構成は実質的に同一とされる。また、第10実施形態における木質部材141S,142S,141L,142L,151M〜154Mは、第1実施形態における木質部材140S,140Lに対し、厚み寸法および長手方向寸法が異なる一方、幅寸法(矢印U−D方向)は同一に設定される。以下、異なる部分についてのみ説明し、同一の部分の説明は省略する。
図14に示すように、白鍵10101C,10101E,10101F,10101Bには、ベース部材10130C,10130E,10130F,10130Bの左右側面(貼付面132a)に合計3枚の木質部材141S,141L,151Mが貼り付けられる。なお、白鍵10101C及び白鍵10101Fと白鍵10101E及び10101Bとは、それぞれ矢印F−B方向に沿う仮想線を対象軸とする線対称の形状とされる。
具体的には、ベース部材10130C,10130E,10130F,10130Bの左右側面のうちの一方の側面は、幅広部WKの側面と幅狭部NKの側面とが面一に配設され、かかる一方の側面には、木質部材141Lが貼り付けられる。上記左右側面のうちの他方の側面は、幅狭部NKの側面が、幅広部WKの側面よりも内側へ奥まって配設されると共に幅広部WKとの境界を越えて前面側(矢印F方向側)へ延設され、かかる他方の側面には、幅広部WKの側面に木質部材141Sが貼り付けられると共に、延設された部分を含む幅狭部NKの側面に木質部材151Mが貼り付けられる。
この場合、木質部材141Lと木質部材151Mとは、その厚み寸法が略同一の寸法に設定される。よって、幅狭部NKには、その左右側面に略同一の厚み寸法の木質部材141L,151Mがそれぞれ貼り付けられる。また、幅狭部NKの他方の側面には、木質部材151Mが幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される。なお、本実施形態では、木質部材141L,151Mの厚み寸法は、木質部材141Sの厚み寸法の略1/2の寸法に設定される。また、木質部材141Lと木質部材151Mとは、互いの木裏側どうし又は木表側どうしを向い合せる向きで、ベース部材11130C等の左右側面(貼付面132a)に配設される。
白鍵10101Dには、ベース部材10130Dの左右側面(貼付面132a)に合計4枚の木質部材142S,152Mが貼り付けられる。なお、白鍵10101Dは、上面視において自身の中心線を対称軸とする線対称の形状とされる。
具体的には、ベース部材10130Dの左右側面は、幅狭部NKの側面が、幅広部WKの側面よりも内側へ奥まって配設されると共に幅広部WKとの境界を越えて前面側(矢印F方向側)へ延設される。これら左右側面には、幅広部WKの左右側面に木質部材142Sが貼り付けられると共に、延設された部分を含む幅狭部NKの側面に木質部材152Mが貼り付けられる。
よって、幅広部WKおよび幅狭部NKには、それらの左右側面に略同一の厚み寸法の木質部材142S,152Mがそれぞれ貼り付けられる。また、幅狭部NKの左右側面には、木質部材152Mが幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される。この場合、木質部材152Mは、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分(即ち、矢印L−R方向視において木質部材142Sに重なる部分)の厚み寸法が他の部分よりも小さい(薄い)寸法に設定される。
なお、本実施形態では、木質部材142Sの厚み寸法が、木質部材141Sの厚み寸法よりも小さい(薄い)寸法に設定されると共に、木質部材152Mの厚み寸法よりも大きい(厚い)寸法に設定される。また、木質部材152Mは、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分の厚み寸法が小さい(薄い)寸法に設定される点を除き、木質部材151Mと略同一の寸法に設定される。
また、本実施形態では、木質部材152Mは、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分の厚み寸法が、ベース部材10130Dの側板部132の厚み寸法と同等の寸法または側板部132の厚み寸法よりも大きい(厚い)寸法に設定される。更に、一対の木質部材152Mは、互いの木裏側どうし又は木表側どうしを向い合せる向きで、ベース部材11130Dの左右側面(貼付面132a)に配設される。
白鍵10101G,10101Aには、ベース部材10130G,10130Aの左右側面(貼付面132a)に合計4枚の木質部材142S,151M,153Mが貼り付けられる。なお、白鍵10101Gと白鍵10101Aとは、矢印F−B方向に沿う仮想線を対象軸とする線対称の形状とされる。
具体的には、ベース部材10130G,10130Aの左右側面のうちの一方の側面は、幅狭部NKの側面が幅広部WKの側面よりも内側へ奥まって配設され、かかる一方の側面には、幅広部WK及び幅狭部NKにそれぞれ木質部材142S及び153Mが貼り付けられる。上記左右側面のうちの他方の側面は、幅狭部NKの側面が、幅広部WKの側面よりも内側へ奥まって配設されると共に幅広部WKとの境界を越えて前面側(矢印F方向側)へ延設され、かかる他方の側面には、幅広部WKの側面に木質部材142Sが貼り付けられると共に、延設された部分を含む幅狭部NKの側面に木質部材151Mが貼り付けられる。
この場合、木質部材151Mと木質部材153Mとは、その厚み寸法が略同一の寸法に設定される。よって、幅狭部NKには、その左右側面に略同一の厚み寸法の木質部材151M,153Mがそれぞれ貼り付けられる。また、幅狭部NKの他方の側面には、木質部材151Mが幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される。なお、木質部材151Mと木質部材153Mとは、互いの木裏側どうし又は木表側どうしを向い合せる向きで、ベース部材11130G等の左右側面(貼付面132a)に配設される。
白鍵10101A’には、ベース部材10130A’の左右側面(貼付面132a)に合計3枚の木質部材142S,142L,154Mが貼り付けられる。
具体的には、ベース部材10130A’の左右側面のうちの一方の側面は、幅広部WKの側面と幅狭部NKの側面とが面一に配設され、かかる一方の側面には、木質部材142Lが貼り付けられる。上記左右側面のうちの他方の側面は、幅狭部NKの側面が、幅広部WKの側面よりも内側へ奥まって配設されると共に幅広部WKとの境界を越えて前面側(矢印F方向側)へ延設され、かかる他方の側面には、幅広部WKの側面に木質部材142Sが貼り付けられると共に、延設された部分を含む幅狭部NKの側面に木質部材154Mが貼り付けられる。
この場合、木質部材142Lと木質部材154Mとは、その厚み寸法が略同一の寸法に設定される。よって、幅狭部NKには、その左右側面に略同一の厚み寸法の木質部材142L,154Mがそれぞれ貼り付けられる。また、幅狭部NKの他方の側面には、木質部材151Mが幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される。
なお、木質部材154Mは、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分(即ち、矢印L−R方向視において木質部材142Sに重なる部分)の厚み寸法が他の部分よりも小さい(薄い)寸法に設定される。本実施形態では、木質部材154Mは、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分の厚み寸法が、ベース部材10130A’の側板部132の厚み寸法と同等の寸法または側板部132の厚み寸法よりも大きい(厚い)寸法に設定される。また、本実施形態では、木質部材142Sの厚み寸法が、木質部材142Lの厚み寸法と略同一の寸法に設定される。また、木質部材142Lと木質部材154Mとは、互いの木裏側どうし又は木表側どうしを向い合せる向きで、ベース部材11130A’の左右側面(貼付面132a)に配設される。
以上のように、第10実施形態によれば、白鍵10101C〜10101B,10101A’は、それらのベース部材10130C〜10130B,10130A’における幅狭部NKの左右側面に木質部材141L等がそれぞれ配設されると共に、それら幅狭部NKの左右側面に配設される木質部材141L等の厚み寸法が略同一の寸法に設定される。これにより、白鍵10101C〜10101B,10101A’の剛性を左右均等とすることができるので、強打された白鍵10101C〜10101B,10101A’が捩じれるように撓むことを抑制できる。その結果、隣り合う鍵(白鍵101又は黒鍵102)との干渉を抑制して、演奏時のがたつきを抑制できる。
ここで、例えば、ベース部材10130C〜10130B,10130A’における幅狭部NKの片面(左右側面のうちの一方または他方)のみに木質部材141L等が配設される場合には、温度や湿度が変化した際の樹脂材料と木質材料との間の膨張率の差異に起因して、左右いずれか一方への反りが発生しやすい。これに対し、本実施形態によれば、幅狭部NKの左右側面に配設される木質部材141L等の厚み寸法が略同一の寸法に設定されるので、木質部材の反りの影響を左右で均一として、鍵全体としての反りを抑制することができる。
また、ベース部材10130C〜10130B,10130A’が幅広部WKと幅狭部NKとを有する構造では、これら幅広部WKと幅狭部NKとの境界に応力が集中するおそれがある。この場合、ベース部材10130C〜10130B,10130A’の幅広部WKと幅狭部NKとの境界において、上板部131及び側板部132を連結するリブを一体成形して、剛性を高めることで、応力集中を抑制することが考えられる。しかしながら、剛性を高められる程度の厚み寸法でリブを一体成形すると、部分的に厚み寸法の大きい(厚い)部位が形成され、成形時のヒケが上板部131及び側板部132に発生することで、上面(打鍵面)及び側面の外観が損なわれる。一方、ヒケの発生を抑制できる程度の厚み寸法のリブでは、応力集中を十分に抑制することができない。
これに対し、本実施形態では、幅狭部NKの側面であって、幅広部WKの側面よりも内側へ奥まって配設される幅狭部NKの側面が、幅広部WKとの境界を越えて前面側(矢印F方向側)へ延設されるので、この延設された部分を含む幅狭部NKの側面に木質部材151M,152M,154Mが配設されることで、かかる木質部材151M,152M,154Mが幅広部WKと幅狭部NKとの境界を跨いで配設される形態を形成できる。これにより、ベース部材10130C〜10130B,10130A’の幅広部WKと幅狭部NKとの境界(即ち、応力が集中しやすい部位)の応力を、樹脂材料の剛性よりも高い剛性の木質材料からなる木質部材151M,152M,154Mを介して、鍵全体に効果的に分散させることができ、その結果、強打された際にベース部材10130C〜10130B,10130A’が変形や破損することを抑制できる。
特に、本実施形態では、木質部材152M,154Mは、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分の厚み寸法が小さい(薄い)寸法に設定される場合であっても、かかる部分の厚み寸法が、ベース部材10130D,10130A’の側板部132の厚み寸法と少なくとも同等以上の寸法に設定されるので、リブを一体成形する場合と比較して、確実に剛性を高めることができる。
次いで、図15を参照して、第11実施形態における鍵盤装置について説明する。図15(a)は、第11実施形態における白鍵11101Eの側面図であり、図15(b)は、図15(a)のXVb−XVb線における白鍵11101Eの断面図であり、図15(c)は、図15(a)のXVc−XVc線における白鍵11101Eの断面図である。
なお、図15(a)では、木質部材140Lの長手方向端部が部分的に省略されて図示される。また、図15(b)では、木質部材140Lの厚み寸法と木質部材140Sの厚み寸法との比率が実際よりも拡大された状態で模式的に図示される。
第1実施形態では、ベース部材130C〜130B,130A’,130C’の側板部132の貼付面132aに凹溝134が凹設される場合を説明したが、第11実施形態におけるベース部材11130Eの側板部132には、貼付面132aに凹溝134が凹設されることに加え、貫通孔11137が貫通形成される。なお、上述した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
ここで、第11実施形態では、貫通孔11137が貫通形成される形態の代表例として、白鍵11101Eを用いて説明する。白鍵11101Eは、第1実施形態における白鍵101Eに対し、貫通孔11137が側板部132に貫通形成される点のみが異なり、他の構成は同一である。以下、異なる部分についてのみ説明し、同一の部分の説明は省略する。
図15に示すように、ベース部材11130Eの側板部132には、その厚み方向(矢印L−R方向)に沿って貫通孔11137が貫通形成される。貫通孔11137は、側板部132の貼付面132aと木質部材140L,140Sの内側面との間(接着面どうしの間)に介在する接着剤を受け入れて側板部132の背面側(貼付面132aの反対面側)へ回り込ませるための通路の役割を担う部位であり、断面円形の孔として貫通形成される。
なお、本実施形態では、木質部材140Lが配設される側(図15(b)右側)の側板部132には、ベース部材11130Eの長手方向に沿って位置を違えつつ3箇所に貫通孔11137が貫通形成される一方、木質部材140Sが配設される側(図15(b)左側)の側板部132には、1箇所のみに貫通孔11137が貫通形成される。
このように、白鍵11101Eによれば、ベース部材11130Eの側板部132であって、木質部材140L,140Sが貼り付けられる領域(貼付面132a)に、貫通孔11137が貫通形成されるので、側板部132の貼付面132aに木質部材140L,140Sを接着剤により接着固定する際には、側板部132の貼付面132aと木質部材140L,140Sの内側面との間に介在する接着剤を、貫通孔11137を介して側板部132の背面側(貼付面132aの反対面側)へ流出させる(回り込ませる)ことができる。これにより、側板部132の背面側に回り込んだ接着剤がアンカー効果を発揮して(図15(b)の拡大部分を参照)、側板部132(貼付面132a)に対する木質部材140L,140Sの接着強度の向上を図ることができる。
また、上述したように、ベース部材11130Eは、下面側(矢印D方向側)が開放される箱状に形成されるので、貫通孔11137を介して側板部132の背面側へ流出される接着剤の流出状態を、下面側の開放部分から視認することができる。よって、側板部132の貼付面132aに木質部材140L,140Sを接着固定した後であっても、貫通孔11137からの接着剤の流出状態を視認することで、接着剤の塗布状態を確認することができ、その結果、接着不良を発見することができる。
更に、貫通孔11137は、ベース部材11130Eの長手方向に沿って位置を違えつつ複数箇所に貫通形成されるので、比較的長い領域(貼付面132a又は(及び)木質部材140L)に接着剤を塗布する際に、その領域の一部に接着剤が塗布されない塗布不良が発生した場合であっても、その発見をしやすくすることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記各実施形態では、木質部材140S,140L等をスプルース材から形成すると共に、剛性部材150,9150をMDF材から形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られず、上記各実施形態の場合とは逆としても良く、或いは、他の木質材料を採用しても良い。また、例えば、木質部材140S,140LをMDF材や合板で形成し、外観を良くするために、木質部材140S,140Lの外観面(外側面)にスプルース材の突板、或いは、木目模様の塩ビシートを貼り付けても良い。
上記各実施形態では、貼付面132aのうちの木質部材140S等が当接される領域が平坦面として形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、かかる領域に1又は複数の溝が凹設されていても良く、或いは、1又は複数の凹や凸が形成されていても良い。
上記各実施形態では、木質部材140S,140L等および剛性部材150等の固定の手段として、接着剤を利用する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、両面テープを採用しても良い。また、木質部材140S,140L等または剛性部材150等を樹脂材料から形成する場合には、固定の手段として、超音波溶着を採用しても良い。
上記各実施形態では、剛性部材150,9150を木質材料から、剛性部材6150を金属材料から、それぞれ形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、剛性部材150,9150を金属材料や樹脂材料から、剛性部材6150を木質材料から、それぞれ形成しても良い。
上記各実施形態では、白鍵101A’,101C’の左右側面に木質部材140S,140Lをそれぞれ配設する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、白鍵101A’,101C’左右側面のうちの一方の側面(即ち、パネル部2の端パネル2cに隣接する側の側面、図1参照)については、木質部材140Lの配設を省略しても良い。この場合には、木質部材140Lを省略できる分、製品コストの削減を図ることができる。また、一方の側面を遮蔽可能な高さ位置に端パネル2cを配置することで、一方の側面が奏者に視認されることを回避できる。
上記各実施形態では、鍵盤装置100が88鍵である場合を説明したが、かかる鍵の数は一例であり、鍵の数を89鍵以上または87鍵以下とすることは当然可能である。よって、左右方向に列設される複数の鍵のうちの左端および右端に配置される鍵は、上記各実施形態の場合のように、白鍵101A’,101C’である必要はなく、他の白鍵101C〜101Bのいずれであっても良い。
上記各実施形態では、貼付面132aに凹溝134,2134が形成される場合には、木質部材140S,140Lへの面取り部M3等の形成が省略される一方、木質部材3130S〜5140Sに面取り部M3〜M5が形成される場合には、貼付面132aへの凹溝134,2134の形成が省略されたが、必ずしもこれに限られるものではなく、凹溝134,2134と面取り部M3〜M5との両者をそれぞれ同時に形成することは当然可能である。
上記各実施形態では、剛性部材150,9150が断面正方形の棒状体として形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の断面形状を採用することは当然可能である。他の断面形状としては、長方形、多角形、円形、或いは、楕円形などが例示される。なお、断面形状を円形とした場合には、周方向における方向性をなくすことができ、ベース部材130D等への配設作業の作業性の向上を図ることができる。
上記各実施形態では、剛性部材150,6150,9150が長手方向に沿って断面積(幅寸法および厚み寸法)が一定の棒状体または平板状体として形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものでなく、長手方向に沿って断面積が変化するように形成しても良い。
例えば、剛性部材の幅寸法(矢印L−R方向寸法)を先端側(矢印F方向側)ほど大きくし、上板部131と剛性部材との当接面積が先端側ほど大きくなるようにしても良い。この場合には、奏者の爪が比較的広い範囲で当接される白鍵101の先端側(幅広部WK)では剛性部材の幅寸法を大きくして、不快な音の発生を抑制可能としつつ、奏者の爪が当接される範囲が比較的狭い基端側(幅狭部NK)では剛性部材の幅寸法を小さくして、製品重量の軽量化を図ることができる。なお、かかる幅寸法は、長手方向に沿って連続的に変化するものであっても良く、或いは、幅広部WKと幅狭部NKとにおいて幅寸法が異なるものであっても良い。
上記第8実施形態では、延設部8135b1を基端側(矢印B方向側)の突起部8135のみに設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、先端側(矢印F方向側)の突起部135aにも延設部8135b1を設けることは当然可能である。この場合には、剛性部材150の一端および他端が、先端側および基端側の延設部8135b1によりそれぞれ係合可能となることで、剛性部材150の脱落をより確実に抑制することができる。
上記第10実施形態では、木質部材152M,154Mにおいて、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分の厚み寸法を他の部分よりも小さい(薄い)寸法に設定する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、木質部材151Mにおいて、幅狭部NKと幅広部WKとの境界を跨いで配設される部分の厚み寸法を他の部分よりも小さい(薄い)寸法に設定しても良い。これにより、木質部材151Mを貼付面132aに貼り付ける際には、貼付面132aのうちの幅広部WKとの境界を越えて前面側(矢印F方向側)へ延設される部分へ木質部材151Mを設置(幅広部WKにおける貼付面132aの背面側との間の隙間へ挿入)しやすくできる一方で、樹脂材料よりも剛性が高い木質材料から木質部材151Mは形成されるため、厚み寸法を小さく(薄く)しても剛性向上による効果を十分に確保することができる。
上記第11実施形態では、木質部材140Lが配設される貼付面132aには3箇所に、木質部材140Sが配設される貼付面132aには1箇所に、それぞれ貫通孔11137が貫通形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、前者においては2箇所以下または4箇所以上に、後者においては2箇所以上に貫通孔11137を貫通形成することは当然可能である。この場合、複数の貫通孔11137の配置は横一列に列設されるものに限定されず、千鳥状の配置であっても良く、複数列が列設される配置であっても良い。
上記第11実施形態では、第1実施形態における白鍵101Eに貫通孔11137を設ける場合を一例として説明した、かかる例示に限定されるものではなく、第1実施形態における他の白鍵101C等や他の実施形態における白鍵10101C等に貫通孔11137を設けることは当然可能である。
ここで、鍵盤装置100は、上述したように、シャーシ110により回動可能に軸支(支持)される構造、その回動をガイドする構造、及び、押鍵または離鍵に連動してハンマー120を回動させる構造は、白鍵101及び黒鍵102の両者で実質的に同一に形成される。この場合、上記各実施形態ではその説明を省略したが、アコースティックピアノの鍵盤のように所定の鍵域毎にキータッチを変化させる、或いは、白鍵101と黒鍵102との間でのキータッチ(トルク感)の差異を小さくして、演奏操作性および演奏感覚を向上させるために、摺動部に塗布する粘性材料(グリス等の潤滑剤)の粘度を、所定の鍵域毎に、或いは、白鍵101と黒鍵102とで、異ならせる手段を採用しても良い。
粘性材料の粘度を異ならせる手段としては、例えば、白鍵101の受け部124(図2参照)に充填される粘性材料(グリス等の潤滑剤)の粘度を、黒鍵102の受け部に塗布される粘性材料の粘度よりも高くする第1の手段、白鍵101の受け部124に塗布される粘性材料の粘度を、黒鍵102の受け部に充填される粘性材料の粘度よりも低くする第2の手段、白鍵101のカバー部材161(図6参照)に塗布される粘性材料の粘度を、黒鍵102のカバー部材161に塗布される粘性材料の粘度よりも高くする第3の手段、白鍵101のカバー部材161に塗布される粘性材料の粘度を、黒鍵102のカバー部材161に塗布される粘性材料の粘度よりも低くする第4の手段、第1の手段または第2の手段のうちの一方と第3の手段または第4の手段のうちの一方とを組み合わせる第5の手段などが例示される。
<その他>
<手段>
技術的思想1の鍵盤装置は、打鍵面と反対側となる下面側が開放される箱状に樹脂材料から形成されると共に基端側が回動可能に支持されるベース部材と、そのベース部材の左右側面にそれぞれ配設されると共に木質材料から矩形板状に形成される一対の木質部材とを備えた鍵を複数備えるものであり、前記一対の木質部材は、少なくとも一方の木質部材の厚み寸法が2mm以上かつ14.5mm以下の範囲に設定される。
技術的思想2の鍵盤装置は、技術的思想1記載の鍵盤装置において、前記ベース部材の左右側面のうちの一方の側面に配設される木質部材の長手方向寸法が他方の側面に配設される木質部材の長手方向寸法と異なる場合、前記長手方向寸法の短い木質部材の厚み寸法が、前記長手方向寸法の長い木質部材の厚み寸法よりも大きな寸法に設定される。
技術的思想3の鍵盤装置は、技術的思想1記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、そのベース部材の長手方向における前面側に位置する幅広部と、その幅広部に連設され前記ベース部材の長手方向における基端側に位置すると共に前記幅広部よりも前記ベース部材の左右方向における幅寸法が小さくされる幅狭部とを備え、前記ベース部材の前記幅狭部の左右側面に前記木質部材がそれぞれ配設されると共に、それら前記幅狭部の左右側面に配設される前記木質部材の厚み寸法が略同一の寸法に設定される。
技術的思想4の鍵盤装置は、技術的思想1から3のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記木質部材は、互いの木裏側どうし又は木表側どうしを向い合せる向きで前記ベース部材の左右側面にそれぞれ配設される。
技術的思想5の鍵盤装置は、技術的思想1から4のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材の左右側面には、その左右側面に当接される前記木質部材の内側面における外縁4辺のうちの少なくとも1辺を含む領域に凹溝が凹設される。
技術的思想6の鍵盤装置は、技術的思想5記載の鍵盤装置において、前記ベース部材の凹溝は、前記木質部材の内側面における前記外縁4辺のうち、前記ベース部材の打鍵面側に位置する1辺と前記ベース部材の前面側に位置する1辺との少なくとも2辺を含む領域に凹設される。
技術的思想7の鍵盤装置は、技術的思想5又は6に記載の鍵盤装置において、前記ベース部材の凹溝は、前記木質部材の内側面における前記外縁4辺のうち、前記ベース部材の打鍵面側に位置する1辺を含む領域、或いは、前記ベース部材の前面側に位置する1辺を含む領域のうちの少なくとも一方の領域に前記凹溝が凹設されると共に、その凹溝が前記木質部材の外縁を越えて延設される。
技術的思想8の鍵盤装置は、技術的思想1から7のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材のうちの前記左右側面が形成される側板部には、前記木質部材が配設される領域に貫通孔が貫通形成される。
技術的思想9の鍵盤装置は、技術的思想8記載の鍵盤装置において、前記貫通孔は、前記ベース部材の長手方向に位置を違えて複数が配設される。
技術的思想10の鍵盤装置は、技術的思想1から9のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材の左右側面に当接される前記木質部材の内側面における外縁4辺のうちの少なくとも1辺には、面取り加工により面取り部が形成される。
技術的思想11の鍵盤装置は、技術的思想10記載の鍵盤装置において、前記木質部材の面取り部は、前記木質部材の内側面における前記外縁4辺のうち、前記ベース部材の打鍵面側に位置する1辺と前記ベース部材の前面側に位置する1辺との少なくとも2辺に形成される。
技術的思想12の鍵盤装置は、技術的思想1から11のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記木質部材の外側面は、前記ベース部材の打鍵面の左右端面と面一となる位置に配設されるか又は前記ベース部材の打鍵面の左右端面よりも内側に奥まって配設され、前記木質部材の外側面と前記ベース部材の打鍵面の左右端面との間の段差寸法が、0mm以上かつ0.2mm以下の範囲に設定される。
技術的思想13の鍵盤装置は、技術的思想12記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、前記木質部材よりも下方に配設される部分が、前記木質部材の外側面よりも内側に奥まって配設される。
技術的思想14の鍵盤装置は、技術的思想1から13のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、そのベース部材の長手方向における前面側に位置する幅広部と、その幅広部に連設され前記ベース部材の長手方向における基端側に位置すると共に前記幅広部よりも前記ベース部材の左右方向における幅寸法が小さくされる幅狭部とを備え、前記複数の鍵は、前記ベース部材の左右側面のうちの一方の側面には前記木質部材が前記幅広部および幅狭部に配設されると共に他方の側面には前記木質部材が前記幅広部のみに配設される第1の群と、前記ベース部材の左右側面には前記木質部材が前記幅広部のみに配設される第2の群と、を備え、少なくとも前記第2の群における鍵には、前記ベース部材よりも剛性が高い材料から形成される剛性部材が、前記ベース部材の長手方向に沿って少なくとも幅狭部に配設される。
技術的思想15の鍵盤装置は、技術的思想14記載の鍵盤装置において、前記剛性部材は、前記ベース部材の幅広部と幅狭部との境界を跨いで配設される。
技術的思想16の鍵盤装置は、技術的思想14又は15に記載の鍵盤装置において、前記剛性部材の一端は、前記ベース部材の長手方向に直交する方向視のうちの左右方向視において、前記ベース部材の幅広部に配設される前記木質部材の少なくとも一部と重なる。
技術的思想17の鍵盤装置は、技術的思想14から16のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記鍵の押鍵または離鍵に連動して回動変位し前記鍵にアクション荷重を付与するハンマーを備え、前記ベース部材は、そのベース部材の下方から突設されると共に前記ハンマーに係合可能とされ、前記鍵の押鍵に伴い前記ハンマーを押し下げるハンマー係合部を備え、前記剛性部材の他端は、前記ベース部材の長手方向に直交する方向視において、前記ハンマー係合部の少なくとも一部と重なる。
技術的思想18の鍵盤装置は、技術的思想14から17のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記剛性部材は、前記下面が開放した箱状に形成される前記ベース部材の空洞に内装される。
技術的思想19の鍵盤装置は、技術的思想18記載の鍵盤装置において、前記剛性部材は、前記ベース部材のうちの前記打鍵面が上面に形成される上板部の下面に配設される。
技術的思想20の鍵盤装置は、技術的思想14から19のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記剛性部材は、木質材料からなる。
技術的思想21の鍵盤装置は、技術的思想20記載の鍵盤装置において、前記第1の群および第2の群のうちの前記第2の群における鍵のみに前記剛性部材が配設されることで、前記第1の群における鍵の重量と第2の群における鍵の重量とが略同一の重量とされる。
技術的思想22の鍵盤装置は、技術的思想18から21のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記剛性部材は、その剛性部材の長手方向に直交する平面で切断した断面が矩形の板状または円形の棒状に形成される。
技術的思想23の鍵盤装置は、技術的思想14から17のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記剛性部材は、金属材料からなり、前記ベース部材のうちの前記打鍵面が上面に形成される上板部に埋設される。
技術的思想24の鍵盤装置は、技術的思想19記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、前記上板部の下面から突設されると共に前記ベース部材の長手方向に沿って所定間隔を隔てて対向配置される一対の突起部を備え、それら一対の突起部の対向間に前記剛性部材が配設される。
技術的思想25の鍵盤装置は、技術的思想24記載の鍵盤装置において、前記ベース部材の一対の突起部は、前記ベース部材の前記空洞を区画する左右の内壁面に連接される。
技術的思想26の鍵盤装置は、技術的思想24又は25に記載の鍵盤装置において、前記ベース部材における一対の突起部のうちの少なくとも一方の突起部は、前記ベース部材の左右方向に直交する平面で切断した断面において、突設先端側の断面積が小さくされる。
技術的思想27の鍵盤装置は、技術的思想24又は25に記載の鍵盤装置において、前記ベース部材における一対の突起部のうちの少なくとも一方の突起部は、前記剛性部材を介装可能な間隔を前記上板部の下面との間に隔てつつ他方の突起部へ向けて延設される延設部を備える。
技術的思想28の鍵盤装置は、技術的思想24又は25に記載の鍵盤装置において、前記ベース部材における一対の突起部のうちの少なくとも一方の突起部は、その突設先端を前記ベース部材の長手方向視において前記剛性部材の左右方向における幅寸法よりも大きなV字状に凹欠して形成される凹欠部を備える。
技術的思想29の鍵盤装置は、技術的思想24から28のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、前記上板部の下面から突設されると共に前記ベース部材の左右方向に沿って所定間隔を隔てて対向配置される対向壁部を備え、その対向壁部の対向間に前記剛性部材が配設される。
技術的思想30の鍵盤装置は、技術的思想1から13のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、そのベース部材の長手方向における前面側に位置する幅広部と、その幅広部に連設され前記ベース部材の長手方向における基端側に位置すると共に前記幅広部よりも前記ベース部材の左右方向における幅寸法が小さくされる幅狭部とを備えると共に、前記幅狭部における左右側面のうちの少なくとも一方の側面が前記幅狭部と幅広部との境界を越えて延設され、前記木質部材は、前記幅狭部の一方の側面に配設されることで、前記幅狭部と幅広部との境界を跨いで配設される。
<効果>
技術的思想1記載の鍵盤装置によれば、一対の木質部材は、少なくとも一方の木質部材の厚み寸法が2mm以上に設定されるので、その分、下面側が開放された箱状に形成されるベース部材の空洞の体積を小さくすることができる。その結果、打鍵面に奏者の爪が当接された際に、空洞を共鳴し難くして、不快な音の発生を抑制することができる。
一方、少なくとも一方の木質部材の厚み寸法は、14.5mm以下に設定されるので、樹脂材料に比較して重量が嵩む木質材料の使用量を低減して、製品全体としての軽量化を図ることができる。また、ベース部材の空洞が小さくなり過ぎることを抑制できるので、ベース部材の空洞に挿通したガイドポストにより鍵の回動をガイドする構造において、ガイドポストの剛性を確保することができる。
なお、一対の木質部材は、一方の木質部材および他方の木質部材の両者の厚み寸法がそれぞれ2mm以上かつ14.5mm以下の範囲に設定されていても良い。
技術的思想2記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、鍵全体としての反りを抑制できる。
即ち、木質材料からなる木質部材には反りが発生するところ、かかる木質部材の反りの大きさは、長手方向寸法の短い木質部材よりも長手方向寸法の長い木質部材が大きくなる。そのため、長手方向寸法の異なる木質部材がベース部材の左右側面にそれぞれ配設されると、長手方向寸法の長い木質部材の反りの影響を受けて、鍵全体として反りが発生する。これに対し、技術的思想2によれば、長手方向寸法の短い木質部材の厚み寸法が、長手方向寸法の長い木質部材の厚み寸法よりも大きな寸法に設定されるので、その分、長手方向寸法の長い木質部材の反りの影響を小さくして、鍵全体としての反りを抑制することができる。
技術的思想3記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材には、幅狭部の左右側面に木質部材がそれぞれ配設されると共に、それら幅狭部の左右側面に配設される木質部材の厚み寸法が略同一の寸法に設定されるので、鍵の幅狭部における剛性を左右均等として、強打される際に鍵が捩じれるように撓むことを抑制できる。その結果、隣り合う鍵との干渉を抑制して、演奏時の鍵のがたつきを抑制できる。また、幅狭部の左右側面に配設される木質部材の厚み寸法が略同一の寸法に設定されるので、幅狭部の左右側面のうちの一方の側面のみに木質部材が配設される場合と比較して、木質部材の反りの影響を小さくして、鍵全体としての反りを抑制することができる。
技術的思想4記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1から3のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の左右側面には、互いの木裏側どうし又は木表側どうしを向い合せる向きで木質部材がそれぞれ配設されるので、木質部材どうしの反りの向きを互いに逆方向として、打ち消し合わせることができ、その結果、鍵全体としての反りを抑制できる。
技術的思想5記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1から4のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の左右側面には、木質部材の内側面における外縁4辺のうちの少なくとも1辺を含む領域に凹溝が凹設されるので、木質部材の内側面における外縁にささくれ(切削加工に伴い木質部材の角から突出する突起状の部位)が発生している場合には、そのささくれを凹溝に収容させることができ、ベース部材の左右側面に木質部材の内側面を密着させやすくすることができる。その結果、ベース部材と木質部材との間に隙間または段差が形成されることを抑制できる。
また、ベース部材の左右側面に木質部材が接着剤を利用して接着固定される場合には、両者の接着面から流出した接着剤を凹溝に収容させることができるので、はみ出した接着剤を拭き取って除去する工程を省略することができる。
技術的思想6記載の鍵盤装置によれば、技術的思想5記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の凹溝は、木質部材の内側面における外縁4辺のうち、ベース部材の打鍵面側に位置する1辺を含む領域に凹設されるので、ベース部材の打鍵面側において、ささくれを凹溝に収容させることができる。その結果、ベース部材の打鍵面における左右端面よりも木質部材が突出して段差が形成されることを抑制でき、隣接する鍵を押鍵する際に段差に指が引っ掛かることを抑制できる。また、ベース部材の打鍵面における左右端面と木質部材との間に隙間が形成されることを抑制して、外観が損なわれることを抑制できる。
また、木質部材の内側面における外縁4辺のうち、ベース部材の前面側に位置する1辺を含む領域に凹溝が凹設されるので、ベース部材の前面側において、ささくれを凹溝に収容させることができる。その結果、ベース部材の前面側における左右端面と木質部材との間に隙間が形成されることを抑制して、外観が損なわれることを抑制できる。
技術的思想7記載の鍵盤装置によれば、技術的思想5又は6に記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の凹溝であって、木質部材の内側面における外縁4辺のうち、ベース部材の打鍵面側に位置する1辺を含む領域、或いは、ベース部材の前面側に位置する1辺を含む領域のうちの少なくとも一方の領域に凹溝が凹設されると共に、その凹溝は、木質部材の外縁を越えて延設されるので、ベース部材の上面(打鍵面)或いは前面における厚み寸法をより均一として、成形時のヒケの発生を抑制できる。その結果、外観が損なわれることを抑制できる。
技術的思想8記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1から7のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材のうちの左右側面が形成される側板部には、木質部材が配設される領域に貫通孔が貫通形成されるので、ベース部材の左右側面に木質部材が接着剤を利用して接着固定される場合には、両者の接着面の間に介在する接着剤が貫通孔内へ流入されると共に反対側の開口から流出される(反対側の面に回り込む)。これにより、反対側の面に回り込んだ接着剤がアンカー効果を発揮して、接着強度の向上を図ることができる。また、反対側の開口からの接着剤の流出状態を視認することで、接着剤の塗布状態を確認することができる。
技術的思想9記載の鍵盤装置によれば、技術的思想8記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、貫通孔は、ベース部材の長手方向に位置を違えて複数が配設されるので、例えば、接着剤が部分的に塗布されていない場合に、その発見をしやすくすることができる。
技術的思想10記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1から9のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、木質部材の内側面における外縁4辺のうちの少なくとも1辺には面取り加工により面取り部が形成されるので、木質部材の内側面における外縁にささくれが発生することを抑制して、ベース部材の左右側面に木質部材の内側面を密着させやすくすることができる。その結果、ベース部材と木質部材との間に隙間または段差が形成されることを抑制できる。
また、ベース部材の左右側面に木質部材が接着剤を利用して接着固定される場合には、両者の接着面から流出した接着剤を、ベース部材の左右側面と木質部材の面取り部との間の空間に収容させることができるので、はみ出した接着剤を拭き取って除去する工程を省略することができる。
技術的思想11記載の鍵盤装置によれば、技術的思想10記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、木質部材の内側面における外縁4辺のうち、ベース部材の打鍵面側に位置する1辺に面取り部が形成されるので、ベース部材の打鍵面側において、ささくれがベース部材と木質部材との間に介在することを抑制できる。その結果、ベース部材の打鍵面における左右端面よりも木質部材が突出して段差が形成されることを抑制でき、隣接する鍵を押鍵する際に段差に指が引っ掛かることを抑制できる。また、ベース部材の打鍵面における左右端面と木質部材との間に隙間が形成されることを抑制して、外観が損なわれることを抑制できる。
また、木質部材の内側面における外縁4辺のうち、ベース部材の前面側に位置する1辺に面取り部が形成されるので、ベース部材の前面側において、ささくれがベース部材と木質部材との間に介在することを抑制できる。その結果、ベース部材の前面側における左右端面と木質部材との間に隙間が形成されることを抑制して、外観が損なわれることを抑制できる。
技術的思想12記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1から11のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、木質部材の外側面は、ベース部材の打鍵面の左右端面と面一となる位置に配設されるか又はベース部材の打鍵面の左右端面よりも内側に奥まって配設される場合には、木質部材の外側面とベース部材の打鍵面の左右端面との間の段差寸法が、0mm以上かつ0.2mm以下の範囲に設定されるので、ベース部材と木質部材との一体感を形成して、外観の向上を図りつつ、隣接する鍵を押鍵および離鍵する際に段差に指が引っ掛かることを抑制することができる。
技術的思想13記載の鍵盤装置によれば、技術的思想12記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材は、木質部材よりも下方に配設される部分が、木質部材の外側面よりも内側に奥まって配設されるので、白鍵の左右側面に切削加工を施す際には、木質部材と同時に切削加工されるベース部材の領域を最小限に抑え、かかるベース部材が損傷することを抑制することができる。
技術的思想14記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1から13のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、鍵全体としての剛性の向上を図ることができる。
ここで、第1の群における鍵は、長手方向寸法の長い木質部材がベース部材の幅広部および幅狭部に配設される、即ち、ベース部材の全長にわたって木質部材が配設されるため、鍵全体の剛性が確保される。一方で、第2の群における鍵では、長手方向寸法の短い木質部材がベース部材の幅広部のみに配設され、ベース部材の幅狭部には木質部材が配設されないため、ベース部材の幅狭部における剛性が低く、鍵全体としての剛性が低下する。
これに対し、技術的思想14では、少なくとも第2の群における鍵には、ベース部材よりも剛性が高い材料から形成される剛性部材が、ベース部材の長手方向に沿って少なくとも幅狭部に配設されるので、その分、鍵全体としての剛性の向上を図ることができる。
技術的思想15記載の鍵盤装置によれば、技術的思想14記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材は、ベース部材の幅広部と幅狭部との境界を跨いで配設されるので、かかるベース部材の幅広部と幅狭部との境界(即ち、応力が集中しやすい部位)の応力を剛性部材を介して鍵全体に効果的に分散させることができ、その結果、鍵が強打される際のベース部材の変形や破損を抑制することができる。
技術的思想16記載の鍵盤装置によれば、技術的思想14又は15に記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材の一端は、ベース部材の長手方向に直交する方向視のうちの左右方向視において、ベース部材の幅広部に配設される木質部材の少なくとも一部と重なるので、鍵が強打される際のベース部材の変形や破損を抑制することができる。即ち、木質部材および剛性部材はベース部材よりも剛性が高いため、これら木質部材と剛性部材とがベース部材の長手方向に直交する方向視(左右方向視や上下方向視)において重ならない領域が存在する場合、かかる領域に応力が集中し、ベース部材の変形や破損を招く。これに対し、技術的思想16では、木質部材と剛性部材とがベース部材の長手方向に直交する方向視(左右方向視)において重なるので、これら木質部材および剛性部材を介して応力を鍵全体に分散させることができ、その結果、鍵が強打される際のベース部材の変形や破損を抑制することができる。
技術的思想17記載の鍵盤装置によれば、技術的思想14から16のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材は、その他端が、ベース部材の長手方向に直交する方向視において、ベース部材の下方から突設されるハンマー係合部の少なくとも一部に重なるので、かかるベース部材のハンマー係合部が押鍵時にハンマーから受ける反力を剛性部材を介して鍵全体に効果的に分散させることができ、その結果、鍵が強打される際のベース部材の変形や破損を抑制することができる。
なお、剛性部材はハンマー係合部を跨いで配設されることが好ましい。剛性部材による分散効果をより高めることができるからである。
技術的思想18記載の鍵盤装置によれば、技術的思想14から17のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材は、下面が開放した箱状に形成されるベース部材の空洞に内装されるので、その分、空洞の体積を小さくすることができる。その結果、打鍵面に奏者の爪が当接された際に、空洞を共鳴し難くして、不快な音の発生を抑制することができる。
なお、内装とは、ベース部材の空洞内に剛性部材が配置されていれば足りる趣旨である。よって、剛性部材は、ベース部材の空洞を区画する内壁面に直接配設されていても良く、或いは、ベース部材の空洞を区画する内壁面から立設するリブ状の部位に配設され、ベース部材の空洞を区画する内壁面との間に隙間を有していても良い。
技術的思想19記載の鍵盤装置によれば、技術的思想18記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材は、ベース部材のうちの打鍵面が上面に形成される上板部の下面に配設されるので、空洞の体積を小さくすることができるだけでなく、ベース部材の上板部(即ち、打鍵面)自体の剛性を高めることができ、その結果、打鍵面に奏者の爪が当接された際に不快な音が発生することをより効果的に抑制することができる。
技術的思想20記載の鍵盤装置によれば、技術的思想14から19のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材が木質材料からなるので、ベース部材の変形や破損の抑制と製品全体としての軽量化との両者を達成しつつ、不快な音が発生することも効果的に抑制することができる。即ち、木質材料は、樹脂材料に比して剛性が高い一方で、金属材料に比して比重が小さい(即ち、単位重量あたりの体積が大きい)。よって、剛性部材を木質材料から構成することで、剛性向上によるベース部材の変形や破損および不快な音の発生を抑制しつつ、製品重量の軽量化を図ることができると共に、ベース部材の空洞の体積をより小さくして、共鳴による不快な音の発生を抑制することができる。
技術的思想21記載の鍵盤装置によれば、技術的思想20記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の第1の群および第2の群のうちの第2の群のみに剛性部材が配設されることで、第1の群における鍵の重量と第2の群における鍵の重量とが略同一の重量とされるので、奏者が鍵を操作(押鍵または離鍵)する際の操作感を第1の群および第2の群の各鍵において均一化することができる。
なお、このような各鍵の重量を略同一とすることは、ベース部材と木質部材とのみから鍵が構成される従来品では達成不可能であり、技術的思想21のように、第1の群における鍵には長手方向寸法が長い木質部材と短い木質部材とを配設する一方で、第2の群における鍵には長手方向寸法が短い木質部材のみを配設し、かつ、第2の群における鍵のみに剛性部材を配設すると共に剛性部材を木質材料から構成し、長手方向寸法が長い木質部材の重量を剛性部材の重量とを相殺させることで、初めて可能となったものであり、これにより、第1の群および第2の群の各鍵における操作感を均一化できるという従来品では奏し得ない効果を奏することができる。
技術的思想22記載の鍵盤装置によれば、技術的思想18から21のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材は、その剛性部材の長手方向に直交する平面で切断した断面が矩形または円形となる棒状に形成されるので、周方向における方向性をなくすことができる。よって、剛性部材をベース部材の空洞に内装する作業の作業性の向上を図ることができる。また、剛性部材の形状が単純化されるので、かかる剛性部材を製造する際の製造コストの削減を図ることができる。
技術的思想23記載の鍵盤装置によれば、技術的思想14から17のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、剛性部材は、金属材料からなり、ベース部材のうちの打鍵面が上面に形成される上板部に埋設されるので、打鍵面(上板部)の剛性を高めることができ、その結果、打鍵面に奏者の爪が当接された際に不快な音が発生することを抑制することができる。
また、技術的思想23によれば、剛性部材の上板部への埋設は、ベース部材を成形する工程において同時に行うことができるので、剛性部材をベース部材に固定するために接着剤を塗布するなどの作業やベース部材の空洞に剛性部材を内装する作業を行う必要がなく、その分、製造コストの削減を図ることができる。
技術的思想24記載の鍵盤装置によれば、技術的思想19記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材は、上板部の下面から突設されると共にベース部材の長手方向に沿って所定間隔を隔てて対向配置される一対の突起部を備え、それら一対の突起部の対向間に剛性部材が配設されるので、剛性部材をベース部材の上板部の下面に配設する工程おいて、剛性部材が長手方向に変位することを突起部により規制して、ベース部材の長手方向に位置ずれすることを抑制することができる。よって、剛性部材をベース部材の上板部の下面における適正な位置に配設することができる。
技術的思想25記載の鍵盤装置によれば、技術的思想24記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の一対の突起部は、ベース部材の空洞を区画する左右の内壁面に連接されるので、ベース部材の上板部の下面に剛性部材を接着剤により接着固定する場合には、接着剤が流出することを防止する壁として突起部を機能させることができる。
技術的思想26記載の鍵盤装置によれば、技術的思想24又は25に記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の一対の突起部のうちの少なくとも一方の突起部は、ベース部材の左右方向に直交する平面で切断した断面において、突設先端側の断面積が小さくされるので、剛性部材を突起部の突設先端で滑らせつつ、ベース部材の上板部の下面に配設(空洞に挿入)する際には、剛性部材と突起部との間の摩擦抵抗を低減できる。よって、剛性部材をスムーズに配設(挿入)することができる。
なお、突設先端側の断面積が小さくされる形状としては、例えば、突設先端を円弧状に湾曲させる形状や、傾斜面の形成により突設先端ほど先細となる断面三角形状あるいは断面台形状などが例示される。
技術的思想27記載の鍵盤装置によれば、技術的思想24又は25に記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材における一対の突起部のうちの少なくとも一方の突起部は、剛性部材を介装可能な間隔を上板部の下面との間に隔てつつ他方の突起部へ向けて延設される延設部を備えるので、かかる延設部と上板部の下面との間に剛性部材を介装することで、ベース部材の上板部の下面に配設された剛性部材を保持することができる。よって、例えば、剛性部材をベース部材へ接着固定するための接着剤を硬化させる工程や製品状態で鍵が強打された場合などにおいて、剛性部材がベース部材から脱落することを抑制することができる。
技術的思想28記載の鍵盤装置によれば、技術的思想24又は25に記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材における一対の突起部のうちの少なくとも一方の突起部は、その突設先端をベース部材の長手方向視において剛性部材の左右方向における幅寸法よりも大きなV字状に凹欠して形成される凹欠部を備えるので、剛性部材を突起部の凹欠部で滑らせつつ、ベース部材の上板部の下面に配設(空洞に挿入)する際には、剛性部材の角のみが凹欠部に接触されるので、剛性部材と突起部との間の摩擦抵抗を低減できる。よって、剛性部材をスムーズに配設(挿入)することができる。更に、剛性部材と凹欠部との接触が剛性部材の角のみとされるので、剛性部材の内側面に塗布した接着剤が掻き取られることを抑制することができる。
技術的思想29記載の鍵盤装置によれば、技術的思想24から28のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材は、上板部の下面から突設されると共にベース部材の左右方向に沿って所定間隔を隔てて対向配置される対向壁部を備え、その対向壁部の対向間に剛性部材が配設されるので、剛性部材がベース部材の上板部の下面に配設された際には、剛性部材がベース部材に対して左右方向に変位することを対向壁部により規制することができ、その結果、剛性部材をベース部材に対して適正な位置に配設することができる。また、剛性部材をベース部材の上板部の下面に配設する工程では、対向壁部を目印として配設作業をすることができるので、左右方向への位置合わせを容易として、その作業性の向上を図ることができる。
技術的思想30記載の鍵盤装置によれば、技術的思想1から13のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材の幅狭部における左右側面のうちの少なくとも一方の側面が幅狭部と幅広部との境界を越えて延設され、その幅狭部の一方の側面に配設される木質部材が幅狭部と幅広部との境界を跨いで配設されるので、ベース部材の幅広部と幅狭部との境界(即ち、応力が集中しやすい部位)の応力を木質部材を介して鍵全体に効果的に分散させることができ、その結果、鍵が強打される際のベース部材の変形や破損を抑制することができる。