JP6566725B2 - シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置 - Google Patents

Description

本発明は、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に関し、特に、ベースプレートに係合可能なロック機構を有するシートベルトリトラクタ及び該シートベルトリトラクタを備えたシートベルト装置に関する。

自動車等の車両には、一般に、乗員が着座する腰掛部と乗員の背面に位置する背もたれ部とを備えたシートに乗員を拘束するシートベルト装置が設けられている。かかるシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、車体側に設けられ前記ウェビングを案内するガイドアンカーと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、前記シートの側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたトングと、を有し、前記トングを前記バックルに嵌着させることによってウェビングにより乗員をシートに拘束している。

かかるシートベルトリトラクタは、ウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールに巻き取り力を付与するスプリングユニットと、車両の急減速を検知するビークルセンサと、該ビークルセンサによって作動し前記スプールを前記ベースフレームに係合させるロック機構と、車両衝突時等の緊急時に前記ウェビングの弛みを除去するプリテンショナと、を備えていることが多い（例えば、特許文献１及び特許文献２参照）。

特開２０１４−８０１２１号公報 特開２０００−２８９５７１号公報

上述したロック機構は、例えば、特許文献２に記載されたように、スプールの端部に接続されたベースロック（ロッキングベースともいう。）と、該ベースロックに対して径方向外方に移動可能に配置されたロックプレート（パウルともいう。）と、ベースフレームに形成された開口部の内縁に形成されたラチェット歯（係合歯ともいう。）と、を含むことが多い。

ところで、上述したロックプレート（パウル）は、特許文献２に記載されたように、ロックベース（ロッキングベース）に形成された凹部（収容部）に配置されており、通常時（非ロック時）は、ベースフレームのラチェット歯（係合歯）と係合しない位置に退避している。ロックプレート（パウル）は、車両衝突時等の緊急時には、ベースロックに対して径方向外方に移動して、ベースフレームのラチェット歯（係合歯）に係合するように構成されていることから、収容部に遊嵌状に配置されている。したがって、シートベルトリトラクタに振動等が生じた場合には、ロックプレート（パウル）が収容部の壁面に衝突して異音を生じることとなる。

本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、異音の発生を抑制することができる、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。

本発明によれば、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備えたシートベルトリトラクタにおいて、前記ロック機構は、前記スプールの端部に配置されたロッキングベースと、前記ロッキングベースの外周よりも外側に突出可能に配置されたパウルと、該パウルを前記ロッキングベースに対して内側に付勢するパウルスプリングと、前記ロッキングベースに対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギアと、を備え、前記パウルは、前記ロッキングベースの外周よりも内側に位置した状態で前記スプールの回転方向に対する一方向の前記パウルの移動を拘束する第一拘束部と、該第一拘束部により移動が拘束された状態で前記スプールの回転方向に対する反対方向の前記パウルの移動を拘束する第二拘束部と、を備え、前記パウルは、前記スプール又は前記ロッキングベースに形成された凹部に収容されており、前記第一拘束部は、前記凹部が形成された部品に接触する部分であり、前記第二拘束部は、前記ロックギアに接触する部分であり、前記第一拘束部及び前記第二拘束部は、前記凹部が形成された部品及び前記ロックギアに対して楔形状を構成している、ことを特徴とするシートベルトリトラクタが提供される。

また、本発明によれば、乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、車体側に設けられ前記ウェビングを案内するガイドアンカーと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、乗員が着座するシートの側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたトングと、を備えたシートベルト装置において、前記シートベルトリトラクタは、前記ウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記スプールの端部に配置されたロッキングベースと、前記ロッキングベースの外周よりも外側に突出可能に配置されたパウルと、該パウルを前記ロッキングベースに対して内側に付勢するパウルスプリングと、前記ロッキングベースに対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギアと、を備え、前記パウルは、前記ロッキングベースの外周よりも内側に位置した状態で前記スプールの回転方向に対する一方向の前記パウルの移動を拘束する第一拘束部と、該第一拘束部により移動が拘束された状態で前記スプールの回転方向に対する反対方向の前記パウルの移動を拘束する第二拘束部と、を備え、前記パウルは、前記スプール又は前記ロッキングベースに形成された凹部に収容されており、前記第一拘束部は、前記凹部が形成された部品に接触する部分であり、前記第二拘束部は、前記ロックギアに接触する部分であり、前記第一拘束部及び前記第二拘束部は、前記凹部が形成された部品及び前記ロックギアに対して楔形状を構成している、ことを特徴とするシートベルト装置が提供される。

上述した本発明に係るシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置において、前記ロックギアは、前記第一拘束部により前記パウルの移動が拘束された状態で前記凹部が形成された部品に係止可能な係止部を備えていてもよい。

また、前記ロックギアは、前記パウルの移動を案内するカム孔及びガイド壁を有し、前記第二拘束部は、前記カム孔及び前記ガイド壁によって構成されていてもよい。

また、前記カム孔及び前記ガイド壁は、略周方向に形成された第一ガイド部と、略径方向に形成された第二ガイド部と、を有し、前記第二拘束部は、前記第二ガイド部の前記第一拘束部に対して遠い側の面によって構成されていてもよい。

上述した本発明に係るシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置によれば、ロック機構を構成するパウルの収容時（非作動時）に、スプールの回転方向の両方に対して第一拘束部及び第二拘束部によりパウルの移動を拘束することができ、ロッキングベースに対する相対移動を抑制することができ、異音の発生を抑制することができる。

本発明の一実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す部品展開図である。 図１に示したロックギアを示す説明図であり、（Ａ）は表側から見た斜視図、（Ｂ）は裏側から見た斜視図、を示している。 図１に示したシートベルトリトラクタの作用を示す説明図であり、（Ａ）は通常状態、（Ｂ）はロック機構作動状態、を示している。 シートベルトリトラクタの変形例を示す説明図であり、（Ａ）は通常状態、（Ｂ）はロック機構作動状態、を示している。 本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。

以下、本発明の実施形態について図１〜図５を用いて説明する。ここで、図１は、本発明の一実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す部品展開図である。図２は、図１に示したロックギアを示す説明図であり、（Ａ）は表側から見た斜視図、（Ｂ）は裏側から見た斜視図、を示している。図３は、図１に示したシートベルトリトラクタの作用を示す説明図であり、（Ａ）は通常状態、（Ｂ）はロック機構作動状態、を示している。なお、図１において、説明の便宜上、ウェビングの図を省略してある。

本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ１は、図１に示したように、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプール２と、スプール２を回転可能に収容するベースフレーム３と、スプール２の回転を規制するロック機構４と、を備え、ロック機構４は、スプール２の端部に配置されたロッキングベース４１と、ロッキングベース４１に配置されるとともにロッキングベース４１の外周よりも外側に突出可能に配置されたパウル４２と、パウル４２をロッキングベース４１に対して内側に付勢するパウルスプリング４３と、ロッキングベース４１に対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギア４４と、を備え、パウル４２は、ロッキングベース４１の外周よりも内側に位置した状態でスプール２の回転方向に対する一方向のパウル４２の移動を拘束する第一拘束部４２ａと、第一拘束部４２ａにより移動が拘束された状態でスプール２の回転方向に対する反対方向のパウル４２の移動を拘束する第二拘束部４２ｂと、を備えている。

スプール２は、ウェビングを巻き取る巻胴であり、例えば、一端はスプリングユニット５に回転可能に支持されており、他端はロッキングベース４１に接続されており、ロッキングベース４１は、キャップ６１を介してリテーナカバー６に回転可能に支持されている。スプリングユニット５は、スプール２を巻き取り方向に付勢する部品であり、ゼンマイバネを内蔵している。リテーナカバー６は、ロック機構４やビークルセンサ７を収容する部品である。なお、スプリングユニット５及びリテーナカバー６は、直接的又は間接的にベースフレーム３に固定される。

また、シートベルトリトラクタ１は、車両衝突時等の緊急時にウェビングの弛みを除去するプリテンショナ８を有していてもよい。本実施形態では、ロッキングベース４１に隣接するベースフレーム３の内側にプリテンショナ８が配置されており、図１では、スプール２を回転させる質量体を放出するパイプ８１のみを図示している。なお、プリテンショナ８の配置は、図示したものに限定されず、プリテンショナ８は、ロッキングベース４１に隣接するベースフレーム３の外側に配置されていてもよいし、スプリングユニット５の内側に配置されていてもよい。

ベースフレーム３は、例えば、略角型Ｕ字形状の断面を有するフレーム構造体であり、背面を構成する壁部材の両端に側面を構成する一対の壁部材が形成されている。この側面を構成する一対の壁部材にスプール２の端部（ロッキングベース４１を含む）を挿通する開口部３１が形成されている。また、側面を構成する一対の壁部材の先端には、正面を構成するタイプレートが接続されていてもよい。図１に示したように、開口部３１の内縁には係合歯３２が形成されている。

ベースフレーム３の側面部には、ビークルセンサ７を係止する開口部３３が形成されていてもよい。ビークルセンサ７は、例えば、球形の質量体７１と、質量体７１の移動によって揺動されるセンサレバー７２と、質量体７１及びセンサレバー７２を収容して開口部３３に係止させるセンサカバー７３と、を有している。かかるビークルセンサ７によれば、車体に所定値以上の減速や傾きが生じると、質量体７１の釣り合いが崩れてセンサレバー７２を上方に押し上げ、センサレバー７２の先端がロックギア４４に係合し、ロックギア４４の回転が規制される。

ロック機構４は、例えば、ロッキングベース４１と、パウル４２と、パウルスプリング４３と、ロックギア４４と、パウル４２のスプール２の軸方向の移動を規制するプロテクトカバー４５と、ロックギア４４に揺動可能に配置されたフライホイール４６と、フライホイール４６の先端を径方向内側に付勢するフックスプリング４７と、を有している。

ロッキングベース４１は、図１に示したように、ベースフレーム３の開口部３１に挿通され、外周部が係合歯３２と対峙するように配置される。ロッキングベース４１は、パウル４２の収容部を形成可能な厚さを有し、表面にパウル４２を収容する凹部４１１が形成されている。また、ロッキングベース４１は、スプール２の回転軸を構成する軸部４１２と、プロテクトカバー４５を固定する複数の突起４１３と、を有している。

凹部４１１は、例えば、図３（Ａ）に示したように、ロッキングベース４１の外周に沿って軸部４１２の近傍まで幅広に形成された拡幅部４１１ａと、拡幅部４１１ａから軸部４１２を迂回して反対側の外周に向かって延びるように形成されたガイド部４１１ｂと、を備えている。拡幅部４１１ａは、ガイド部４１１ｂから遠い側に形成された第一壁面部４１１ｃと、ガイド部４１１ｂから近い側に形成された第二壁面部４１１ｄと、を有している。

なお、図３（Ａ）及び図３（Ｂ）において、説明の便宜上、ロックギア４４の構成部品を実線で表示し、ベースフレーム３の係合歯３２、ロッキングベース４１、パウル４２及びパウルスプリング４３を一点鎖線で表示し、ロッキングベース４１及びパウル４２の表面を灰色に塗り潰して表示している。

第一壁面部４１１ｃは、スプール２の回転方向の一方向（図では時計回り方向）に対して対向するように形成されている。また、第二壁面部４１１ｄは、スプール２の回転方向の反対方向（図では反時計回り方向）に対して対向するように形成されている。また、第一壁面部４１１ｃと第二壁面部４１１ｄとの間隔は、ロッキングベース４１の外周から中心に向かって狭くなるように形成されていてもよい。

また、第一壁面部４１１ｃは、例えば、スプール２の回転方向の反対方向（図では反時計回り方向）に凸な形状を有していてもよい。また、第二壁面部４１１ｄは、例えば、スプール２の回転方向の反対方向（図では反時計回り方向）に凹な形状を有していてもよい。なお、第二壁面部４１１ｄは、ガイド部４１１ｂを構成する壁面部と略同一の曲率で連なるように形成されていてもよい。

パウル４２は、例えば、図３（Ａ）に示したように、ロッキングベース４１の凹部４１１を構成する拡幅部４１１ａに収容される頭部４２１と、ロッキングベース４１の凹部４１１を構成するガイド部４１１ｂに収容される尾部４２２と、を有している。パウル４２は、図示したように、凹部４１１と実質的に同一の外形を有し、凹部４１１に遊嵌状に配置される。頭部４２１の外周には、ロッキングベース４１の外周に沿って形成された歯部４２１ａが形成されている。

また、頭部４２１は、拡幅部４１１ａの第一壁面部４１１ｃに沿って接触するように形成された第一拘束部４２ａを有している。第一拘束部４２ａは、図示したように、第一壁面部４１１ｃの凸形状に対応した凹形状を有している。かかる形状により、第一拘束部４２ａは、第一壁面部４１１ｃに接触しながらロッキングベース４１の外周よりも外側に向かって移動可能に構成される。

尾部４２２は、ガイド部４１１ｂに配置されることにより、頭部４２１がロッキングベース４１の外周よりも外側に移動したり内側に移動したりする際における、パウル４２の姿勢を安定させる機能を有している。

また、パウル４２は、図１及び図３（Ａ）に示したように、ロックギア４４に形成された開口部（カム孔４４ｅ）に挿通され、ロッキングベース４１とロックギア４４との間で相対回転を生じた場合に、パウル４２を移動させるパウルピン４２３を有している。

なお、パウル４２は、ロッキングベース４１に対して、スライドによって外周よりも外側に向かって移動可能に構成されていてもよいし、回動によって外周よりも外側に向かって移動可能に構成されていてもよい。また、パウル４２を収容するロッキングベース４１の凹部４１１は、図示した形状に限定されるものではなく、パウル４２の形状や構成によって適宜変更可能である。

上述したように、本実施形態では、スプール２の端部にロッキングベース４１が接続され、その端部表面にパウル４２を収容する凹部４１１を形成しているが、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、スプール２の端部の外周に環状のロッキングベース４１が接続されている場合やスプール２とロッキングベース４１とが一体に形成されている場合には、スプール２の端部表面にパウル４２を収容する凹部４１１を形成するようにしてもよい。したがって、本実施形態において、「凹部４１１が形成された部品」とは、ロッキングベース４１又はスプール２を意味している。

ロックギア４４は、例えば、図１、図２（Ａ）及び図２（Ｂ）に示したように、ロッキングベース４１に対面するように配置される円盤部４４ａと、円盤部４４ａの外縁に沿って外側に向かって立設された外周壁４４ｂと、を有している。外周壁４４ｂの外面には、ビークルセンサ７のセンサレバー７２と係合可能な係合歯４４ｃが形成されている。

また、円盤部４４ａには、図２（Ａ）に示したように、ロッキングベース４１の軸部４１２を挿通する挿通孔４４ｄ、パウルピン４２３を挿通する略Ｖ字形状のカム孔４４ｅ、カム孔４４ｅの外周に沿って外側に向かって立設されパウルピン４２３を案内するガイド壁４４ｆ、パウルスプリング４３との干渉を回避するための開口部４４ｇ、フライホイール４６を回動可能に支持する支持ピン４４ｈ、パウルスプリング４３の一端を支持するフックピン４４ｉ等が形成されている。

カム孔４４ｅ及びガイド壁４４ｆは、パウル４２の移動を案内するカム機構を形成しており、パウル４２をロッキングベース４１の外周よりも外側に押し出すように案内する機能を有している。また、カム孔４４ｅ及びガイド壁４４ｆは、パウル２の移動軌跡を変更するために、例えば、略周方向に形成された第一ガイド部４４１と、略径方向に形成された第二ガイド部４４２と、を有している。かかる第一ガイド部４４１及び第二ガイド部４４２は、例えば、外周方向に凸な略Ｖ字形状を形成している。なお、パウル４２を案内するガイド部の形状は、略Ｖ字形状に限定されるものではなく、略Ｕ字形状、略Ｊ字形状、略Ｃ字形状等であってもよい。

パウルスプリング４３は、図３（Ａ）に示したように、一端がフックピン４４ｉに係止され、他端がパウルピン４２３に係止されており、開口部４４ｇ内でコイル部が伸縮可能に配置されている。パウル４２は、図示したように、通常時（ロック機構４の非作動時）には、パウルスプリング４３により、第一拘束部４２ａが第一壁面部４１１ｃに押し付けられるように付勢されている。

また、円盤部４４ａの裏面側には、図２（Ｂ）に示したように、ロッキングベース４１に係止可能な突起状の係止部４４ｊが形成されている。また、図１及び図３（Ａ）に示したように、ロッキングベース４１の表面には、係止部４４ｊを挿入可能な長穴４１４が形成されている。長穴４１４は、ロッキングベース４１の回転方向に沿って形成されており、図の反時計回り方向に第一端面４１４ａを有し、図の時計回り方向に第二端面４１４ｂを有している。

係止部４４ｊ及び第一端面４１４ａは、図３（Ａ）に示したように、パウル４２の第一拘束部４２ａを第一壁面部４１１ｃに押し付けた状態で、パウルピン４２３が第二ガイド部４４２の第一壁面部４１１ｃに近い側の面に接触する前に、互いに接触するように形成される。すなわち、パウルスプリング４３によりパウル４２を内側に引き込んだ際に、パウル４２の第一拘束部４２ａがロッキングベース４１の第一壁面部４１１ｃに接触し、パウル４２及びロッキングベース４１が図の時計回りに移動した後、係止部４４ｊと第一端面４１４ａとが接触し、ロッキングベース４１とロックギア４４との相対回転が規制される。したがって、ロックギア４４は、第一拘束部４２ａによりパウル４２の移動が拘束された状態でロッキングベース４１に係止可能な係止部４４ｊを備えていることとなる。

そして、パウル４２がパウルスプリング４３により、さらに内側に引き込まれると、パウルピン４２３は、第二ガイド部４４２の第一壁面部４１１ｃから遠い側の面に接触して移動することとなる。このパウルピン４２３が第二ガイド部４４２に接触する部分により、パウル４２の第二拘束部４２ｂが形成される。

ここで、パウル４２の第一拘束部４２ａがロッキングベース４１の第一壁面部４１１ｃに接触する部分の延長線をＬｐ１とし、パウル４２の第二拘束部４２ｂがロックギア４４の第二ガイド部４４２に接触する部分の延長線をＬｐ２とすれば、図３（Ａ）に示したように、延長線Ｌｐ１と延長線Ｌｐ２とは、ロッキングベース４１の軸部４１２付近で交差するように形成される。すなわち、第一拘束部４２ａは、ロッキングベース４１に接触する部分であり、第二拘束部４２ｂは、ロックギア４４に接触する部分であり、第一拘束部４２ａ及び第二拘束部４２ｂは、ロッキングベース４１及びロックギア４４に対して楔形状を構成することとなる。

このように、パウル４２に楔形状を構成する第一拘束部４２ａ及び第二拘束部４２ｂを形成することにより、パウル４２の収容時（ロック機構４の非作動時）に、パウル４２をロッキングベース４１及びロックギア４４によって両側から挟持することができ、スプール２の回転方向の両方に対してパウル４２の移動を拘束することができ、ロッキングベース４１に対するパウル４２の相対移動を抑制することができる。したがって、シートベルトリトラクタ１に振動が生じた場合であっても、パウル４２の移動を規制することができ、異音の発生を抑制することができる。

また、プロテクトカバー４５は、ロッキングベース４１の軸部４１２及び突起４１３を挿通する開口部の他、パウル４２のパウルピン４２３を挿通する切欠部４５ａやロックギア４４の係止部４４ｊを挿通する開口部４５ｂを有している。

また、リテーナカバー６は、ロックギア４４の外周壁４４ｂの外周を覆う略円筒形状の凸部６２を有し、この凸部６２の内側には、ロックギア４４の外周壁４４ｂの内側に配置される内周壁（図示せず）が形成されている。したがって、ロック機構４を組み付けた際に、ロックギア４４の外周壁４４ｂは、内周壁と凸部６２との間に挿通され、フライホイール４６は内周壁の内側に配置される。内周壁の内面には、フライホイール４６の先端と係合可能な爪（図示せず）が形成されている。

上述した構成のロック機構４によれば、通常時（ウェビングの引き出し加速度が所定の閾値以下の場合）は、スプール２の回転に伴ってロッキングベース４１及びロックギア４４が一緒に回転することとなる。したがって、通常時には、スプール２（ロッキングベース４１）とロックギア４４とが相対回転をしないことから、図３（Ａ）に示したように、パウル４２はベースフレーム３の係合歯３２と干渉しない位置に退避した状態を維持する。このとき、パウル４２は、ロッキングベース４１及びロックギア４４によって移動が拘束されていることから異音を生じない。

そして、ウェビングが通常の引き出し加速度よりも早い場合、すなわち、ウェビングの引き出し加速度が所定の閾値を超えた場合には、フライホイール４６が揺動してリテーナカバー６の爪（図示せず）に係合し、ロックギア４４の回転が規制される。また、ビークルセンサ７が作動した場合も、センサレバー７２の先端がロックギア４４の外周壁４４ｂの外面に形成された係合歯４４ｃと係合し、ロックギア４４の回転が規制される。

このように、ロックギア４４の回転が規制されると、スプール２（ロッキングベース４１）とロックギア４４との間に相対回転を生じ、この相対回転に伴ってパウル４２が凹部４１１に沿ってスライドし、図３（Ｂ）に示したように、パウル４２の歯部４２１ａがベースフレーム３の開口部３１の内縁に形成された係合歯３２に接近して係合することとなる。その結果、ロッキングベース４１（スプール２）の回転が規制され、ウェビングの引き出しが規制される。

図３（Ｂ）に示したロック機構４の作動時に、ロックギア４４の係止部４４ｊは、ロッキングベース４１に形成された長穴４１４に沿って移動することとなる。したがって、長穴４１４の長さ（第一端面４１４ａから第二端面４１４ｂまでの回転方向距離）は、パウル４２がベースフレーム３に係合するまでの間に生じるロッキングベース４１とロックギア４４との相対回転量よりも大きくなるように設計される。

上述した実施形態では、ロックギア４４の裏面に突起状の係止部４４ｊを形成し、ロッキングベース４１の表面に長穴４１４を形成しているが、ロッキングベース４１の表面に突起を形成し、ロックギア４４の裏面に長穴形状の係止部を形成するようにしてもよい。

次に、上述したシートベルトリトラクタ１の変形例について、図４（Ａ）及び図４（Ｂ）を参照しつつ説明する。ここで、図４は、シートベルトリトラクタの変形例を示す説明図であり、（Ａ）は通常状態、（Ｂ）はロック機構作動状態、を示している。なお、上述した実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。

また、図４（Ａ）及び図４（Ｂ）において、説明の便宜上、ロックギア４４の構成部品を実線で表示し、ベースフレーム３の係合歯３２、ロッキングベース４１、パウル４２及びパウルスプリング４３を一点鎖線で表示し、ロッキングベース４１及びパウル４２の表面を灰色に塗り潰して表示している。

図４（Ａ）及び図４（Ｂ）に示した変形例は、第二拘束部４２ｂの配置を変更したものである。具体的には、本変形例は、ロッキングベース４１の凹部４１１を構成する第二壁面部４１１ｄの先端部に、軸部４１２に向かって傾斜した傾斜面４１１ｅを形成し、パウル４２の頭部４２１に傾斜面４１１ｅと接触可能な凸部（第二拘束部４２ｂ）を形成したものである。第二拘束部４２ｂは、図示したように、第一拘束部４２ａの反対側、例えば、頭部４２１と尾部４２２との境界付近に形成される。

かかる変形例では、パウルスプリング４３によりパウル４２を内側に引き込んだ際に、パウル４２の第一拘束部４２ａがロッキングベース４１の第一壁面部４１１ｃに接触した後、パウルピン４２３がガイド壁４４ｆに接触し、ロックギア４４が位置決めされる。そして、パウル４２がパウルスプリング４３により、さらに内側に引き込まれると、第二拘束部４２ｂが傾斜面４１１ｅに接触し、パウル４２が位置決めされる。

ここで、パウル４２の第一拘束部４２ａがロッキングベース４１の第一壁面部４１１ｃに接触する部分の延長線をＬｐ１とし、パウル４２の第二拘束部４２ｂがロッキングベース４１の傾斜面４１１ｅに接触する部分の延長線をＬｐ２とすれば、図４（Ａ）に示したように、延長線Ｌｐ１と延長線Ｌｐ２とは、ロッキングベース４１の軸部４１２付近で交差するように形成される。すなわち、第一拘束部４２ａ及び第二拘束部４２ｂは、ロッキングベース４１に接触する部分であり、第一拘束部４２ａ及び第二拘束部４２ｂは、ロッキングベース４１に対して楔形状を構成することとなる。

かかる変形例によれば、パウル４２の収容時（ロック機構４の非作動時）に、パウル４２をロッキングベース４１の第一壁面部４１１ｃ及び傾斜面４１１ｅによって両側から挟持することができ、スプール２の回転方向の両方に対して第一拘束部４２ａ及び第二拘束部４２ｂによりパウル４２の移動を拘束することができ、ロッキングベース４１に対するパウル４２の相対移動を抑制することができる。したがって、シートベルトリトラクタ１に振動が生じた場合であっても、パウル４２の移動を規制することができ、異音の発生を抑制することができる。

次に、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置について、図５を参照しつつ説明する。ここで、図５は、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。なお、図５において、説明の便宜上、シートベルト装置以外の部品については、一点鎖線で図示している。

図５に示した本実施形態に係るシートベルト装置１００は、乗員を拘束するウェビングＷと、ウェビングＷの巻き取りを行うシートベルトリトラクタ１と、車体側に設けられウェビングＷを案内するガイドアンカー１０１と、ウェビングＷを車体側に固定するベルトアンカー１０２と、乗員が着座するシートＳの側面に配置されたバックル１０３と、ウェビングＷに配置されたトング１０４と、を備え、シートベルトリトラクタ１は、例えば、図１〜図４（Ｂ）に示した構成を有している。

以下、シートベルトリトラクタ１以外の構成部品について、簡単に説明する。シートＳは、例えば、乗員が着座する腰掛部Ｓ１と、乗員の背面に位置する背もたれ部Ｓ２と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部Ｓ３と、を備えている。シートベルトリトラクタ１は、例えば、車体のＢピラーＰに内蔵される。

また、一般に、バックル１０３は腰掛部Ｓ１の側面に配置されることが多く、ベルトアンカー１０２は腰掛部Ｓ１の下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー１０１は、ＢピラーＰに配置されることが多い。そして、ウェビングＷは、一端がベルトアンカー１０２に接続され、他端がガイドアンカー１０１を介してシートベルトリトラクタ１に接続されている。

したがって、トング１０４をバックル１０３に嵌着させる場合、ウェビングＷはガイドアンカー１０１の挿通孔を摺動しながらシートベルトリトラクタ１から引き出されることとなる。また、乗員がシートベルトを装着した場合や降車時にシートベルトを解除した場合には、シートベルトリトラクタ１のスプリングユニット５の作用により、ウェビングＷは一定の負荷がかかるまで巻き取られる。

上述したシートベルト装置１００は、前部座席における通常のシートベルト装置に、上述した実施形態に係るシートベルトリトラクタ１を適用したものであるが、例えば、ガイドアンカー１０１を省略して後部座席に適用するようにしてもよい。

本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、車両以外の乗物に使用されるシートベルト装置に適用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。

１ シートベルトリトラクタ
２ スプール
３ ベースフレーム
４ ロック機構
５ スプリングユニット
６ リテーナカバー
７ ビークルセンサ
８ プリテンショナ
３１ 開口部
３２ 係合歯
３３ 開口部
４１ ロッキングベース
４２ パウル
４２ａ 第一拘束部
４２ｂ 第二拘束部
４３ パウルスプリング
４４ ロックギア
４４ａ 円盤部
４４ｂ 外周壁
４４ｃ 係合歯
４４ｄ 挿通孔
４４ｅ カム孔
４４ｆ ガイド壁
４４ｇ 開口部
４４ｈ 支持ピン
４４ｉ フックピン
４４ｊ 係止部
４５ プロテクトカバー
４５ａ 切欠部
４５ｂ 開口部
４６ フライホイール
４７ フックスプリング
６１ キャップ
６２ 凸部
７１ 質量体
７２ センサレバー
７３ センサカバー
８１ パイプ
１００ シートベルト装置
１０１ ガイドアンカー
１０２ ベルトアンカー
１０３ バックル
１０４ トング
４１１ 凹部
４１１ａ 拡幅部
４１１ｂ ガイド部
４１１ｃ 第一壁面部
４１１ｄ 第二壁面部
４１１ｅ 傾斜面
４１２ 軸部
４１３ 突起
４１４ 長穴
４１４ａ 第一端面
４１４ｂ 第二端面
４２１ 頭部
４２１ａ 歯部
４２２ 尾部
４２３ パウルピン
４４１ 第一ガイド部
４４２ 第二ガイド部

Claims (5)

1. 乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールの回転を規制するロック機構と、を備えたシートベルトリトラクタにおいて、
   前記ロック機構は、前記スプールの端部に配置されたロッキングベースと、前記ロッキングベースの外周よりも外側に突出可能に配置されたパウルと、該パウルを前記ロッキングベースに対して内側に付勢するパウルスプリングと、前記ロッキングベースに対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギアと、を備え、
   前記パウルは、前記ロッキングベースの外周よりも内側に位置した状態で前記スプールの回転方向に対する一方向の前記パウルの移動を拘束する第一拘束部と、該第一拘束部により移動が拘束された状態で前記スプールの回転方向に対する反対方向の前記パウルの移動を拘束する第二拘束部と、を備え、
   前記パウルは、前記スプール又は前記ロッキングベースに形成された凹部に収容されており、
   前記第一拘束部は、前記凹部が形成された部品に接触する部分であり、前記第二拘束部は、前記ロックギアに接触する部分であり、前記第一拘束部及び前記第二拘束部は、前記凹部が形成された部品及び前記ロックギアに対して楔形状を構成している、
   ことを特徴とするシートベルトリトラクタ。
2. 前記ロックギアは、前記第一拘束部により前記パウルの移動が拘束された状態で前記凹部が形成された部品に係止可能な係止部を備える、ことを特徴とする請求項１に記載のシートベルトリトラクタ。
3. 前記ロックギアは、前記パウルの移動を案内するカム孔及びガイド壁を有し、前記第二拘束部は、前記カム孔及び前記ガイド壁によって構成されている、ことを特徴とする請求項１に記載のシートベルトリトラクタ。
4. 前記カム孔及び前記ガイド壁は、略周方向に形成された第一ガイド部と、略径方向に形成された第二ガイド部と、を有し、前記第二拘束部は、前記第二ガイド部の前記第一拘束部に対して遠い側の面によって構成されている、ことを特徴とする請求項３に記載のシートベルトリトラクタ。
5. 乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、車体側に設けられ前記ウェビングを案内するガイドアンカーと、前記ウェビングを車体側に固定するベルトアンカーと、乗員が着座するシートの側面に配置されたバックルと、前記ウェビングに配置されたトングと、を備えたシートベルト装置において、
   前記シートベルトリトラクタは、請求項１〜４の何れか一項に記載のシートベルトリトラクタである、ことを特徴とするシートベルト装置。