JP6561485B2 - 内燃機関の冷却ファン構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動二輪車等の車両におけるエンジン、特に強制空冷式のエンジンに好適な内燃機関の冷却ファン構造に関するものである。
所謂、スクータ等の自動二輪車等に搭載される内燃機関において、その放熱部であるシリンダ及びシリンダヘッドをシュラウドで覆い、クランクシャフトの軸端部に設けた冷却ファンでシュラウド内に冷却風を導入し、その冷却風をシリンダヘッドまわりにあてる冷却構造がある。この例の自動二輪車を始めとして、家電製品等を含めて遠心式の冷却ファンを用いる強制空冷式の冷却装置が種々使用されている。
例えば特許文献1に記載のものにおいて、内燃機関のクランク軸に取付けられ、変化する回転数に応じて羽根車により冷却風を発生させる遠心式冷却ファンにおいて、羽根車の羽根立設面上に、複数の羽根からなる羽根群が立設され、羽根車取付け面から各羽根先端までの高さが複数種類とされる。
特許第5215962号公報
従来車両の冷却装置において冷却ファンでシュラウド内に導入した冷却風によりシリンダヘッドまわりを冷却するが、一方で冷却ファンの送風効率等は、その駆動エネルギー等との関係で燃費等に著しく影響するため極めて重要な要素である。従来では特に冷却ファン自体における形状との関係で、冷却ファンの効率に配慮したものは実質的になく、冷却ファンの回転翼もしくは回転羽根の出口角度あるいは羽根高さの調整等に留まっていたのが実情であった。
なお、特許文献1に係る冷却ファンでは複数の羽根を有するが、その羽根自体における特に形状等に関して特別な工夫はなされていない。また、羽根枚数も多いため構造が複雑であり、このことが送風効率等に影響する。
本発明はかかる実情に鑑み、簡素な構成としながら、有効にファン効率を向上し得る内燃機関の冷却ファン構造を提供することを目的とする。
本発明による内燃機関の冷却ファン構造は、エンジンのクランクシャフトの動力によって一体回転する冷却ファンを備えた内燃機関の冷却ファン構造であって、前記冷却ファンは、エンジンケースにより形成される収容部に配置されると共に前記クランクシャフトの軸端部に同軸に設定された回転軸のまわりに回転する回転羽根を有し、前記クランクシャフトの軸端部とは反対側の前記回転軸の先端側から空気を吸い込み、半径方向外側に吐出した後、前記クランクシャフト側へと前記回転軸方向に空気を流し、前記回転羽根は、前記収容部の内周面との間隙が、前記クランクシャフトの前記軸端部側に向かうにつれて次第に大きくなるように形成されると共に、半径方向内側縁が半径方向外側縁よりも回転方向前側に位置し、前記回転羽根の回転で空気導入開口部から巻き込まれた空気が、上流から下流への空気流となって前記間隙に流入するようにし、前記回転羽根の回転方向後側の半径方向外側縁が階段状に形成されてなる段部により、前記間隙が形成され、前記回転羽根の負圧側において、前記段部相互間の幅広の段差部位に対応してリブが形成されることを特徴とする。
本発明によれば、実質的に回転羽根の形状のみの変更により、ファン効率を有効に向上し、装置の簡素化及び軽量化等を図ることができる。
本発明に係る自動二輪車の全体構成を示す側面図である。 本発明に係る自動二輪車におけるパワーユニットの構成例を示す前方斜視図である。 本発明に係る自動二輪車におけるパワーユニットの構成例を示す右側面図である。 本発明に係る自動二輪車におけるパワーユニットの構成例を示す平断面図である。 本発明の内燃機関の冷却ファン構造に係る冷却ファンの右方斜視図である。 本発明の内燃機関の冷却ファン構造に係る冷却ファンの左方斜視図である。 本発明の内燃機関の冷却ファン構造に係る冷却ファンの左方正面図である。 本発明に係る自動二輪車におけるパワーユニットのシュラウドを取り外した状態を示す前方斜視図である。 本発明の内燃機関の冷却ファン構造に係る冷却ファンの側面図である。 図9AのC部拡大図である。 本発明の内燃機関の冷却ファン構造に係る冷却ファンの作用を示す平断面図である。 図10AのD部拡大図である。
以下、図面に基づき、本発明による内燃機関の冷却ファン構造における好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る車両としての自動二輪車の側面図である。先ず、図1を用いて、自動二輪車の全体構成について説明する。なお、図1を含め、以下の説明で用いる図においては、必要に応じて車両の前方を矢印Frにより、車両の後方を矢印Rrにより示し、また、車両の側方右側を矢印Rにより、車両の側方左側を矢印Lにより示す。
車両100は、鋼製あるいはアルミニウム合金製でなる複数の車体フレームにより車体骨格が形成され、車体フレームに対する各種部品の艤装を経て構成される。詳細図示を省略するが、車体フレームの一部であるダウンチューブは、その前端がステアリングヘッドパイプに結合しており、ステアリングヘッドパイプから略下方向に向けて延出し、その下端部付近でアンダーフレーム101と接続する。このアンダーフレーム101は略後方に延出する。アンダーフレーム101の後部側には、車体フレームの一部として左右一対で構成されるリヤフレーム102が結合し、その一対のそれぞれが概して後上方に傾斜して延出する。
また、ステアリングヘッドパイプは、フロントフォーク103を左右方向に回動可能に支持し、フロントフォーク103の上方にはハンドルバー104が固定されると共に、下端側には前輪105が回転可能に支持される。前輪105には、これと一体回転するブレーキディスク106が装備される。
更に、アンダーフレーム101の後端には、エンジン11(詳しくは図2等参照)を含むパワーユニット10を支持するためのブラケットが付設形成され、このブラケットに設けたステー107を介して、スイング軸108のまわりに上下方向に揺動可能にスイング式パワーユニット10が支持される。なお、パワーユニット10は、エンジン11の後述するシリンダアセンブリや、クランクケース及びベルト/プーリを用いてなる無段変速機を内包する動力伝動装置をユニット化したものであり、その車両前方側にてステー107に揺動可能に連結し、車両後方側にて動力伝動装置により後輪109を回転可能に支持する。後輪109の車軸側とリヤフレーム102との間はショックアブソーバ110によって連結され、パワーユニット10全体としてスイングアームとして機能する。
また、図1に示されるようにパワーユニット10の上方には、ライダーが着座するためのシート111が設置され、アンダーフレーム101の上方にはシート111に着座したライダーが足を載せるステップボード112が、ステップフレームに支持される。なお、ステップボード112は車両外観を構成するレッグフレームカバー113と一体的に形成される。また、パワーユニット10とシート111との間には、シート111により開閉される物品等の収納スペースとして構成されたラゲッジボックスを有している。
車両外観としては、各種車体カバーが車体フレーム等の適所に支持されて被着される。フロントレッグシールド114は車両前面側を覆うと共にウィンカ等が実装され、上述のステップボード112と一体的に連なる。リヤフレームカバー115はシート111の下方乃至車両後方側を覆うと共に、ウィンカやブレーキランプが実装される。前輪105及び後輪109の上方はそれぞれフロントフェンダ116及びリヤフェンダ117によって覆われる。
次に、図2〜図4等を参照してパワーユニット10について説明する。図2はパワーユニット10の前方斜視図、図3はシュラウドを取り外した状態の右側面図、図4は平断面図である。パワーユニット10の基本構成において空冷式4サイクル単気筒エンジン11を有し、このエンジン11は本例では例えばSOHCエンジンとする。エンジン11は、左右方向に水平配置されるクランクシャフト12(図2では一点鎖線により略記する)を回転自在に支持・収容するクランクケース13と、クランクケース13に対して前方に順次シリンダ14、シリンダヘッド15及びシリンダヘッドカバー16が結合し、そのシリンダ軸線Zが略水平方向に設定される。この場合、シリンダヘッド15側が適度に高くなるようにシリンダ14のシリンダ軸線Zはかなり前傾して、即ち略水平に近いかたちで傾斜する。
クランクシャフト12の軸端部にはエンジン冷却用の遠心式の冷却ファン17が軸着されており、この冷却ファン17が後述のように冷却風を発生する。この場合、所定の冷却風流路を形成すべく、シリンダ14、シリンダヘッド15及び冷却ファン17がシュラウド18によって覆われる。このためシリンダ14及びシリンダヘッド15におけるシュラウド18によって覆われた部位は、図2のように実質的に外観に現われない。
パワーユニット10は更に、クランクケース13と一体的に結合する動力伝動装置19を含み、この動力伝動装置19としてベルト及びプーリ等を用いてなる無段変速機を有する。この例では図4のようにクランクケース13は左右2つ割りに分割構成され(クランクケース13R、クランクケース13L)、動力伝動装置19のケーシング20はクランクケース13Lと結合する。ケーシング20内にはベルト及びプーリ等を含んでなる無段変速機が配置構成され、クランクシャフト12と後輪109の車軸とが動力伝動装置19によって連結される。
また、図2等では図示を省略するが、動力伝動装置19の上面側にはエアクリーナ等を含んでなる吸気系が配置構成される。この吸気系において、エアクリーナからその前方に順次、吸気ホース、スロットルボディ及びインテークパイプ(吸気管)等が接続される。このインテークパイプは、図2に示されるシリンダヘッド15のインテークポート(吸気ポート)21に連通し、これらの部材により構成される吸気通路を介して、エアクリーナからシリンダヘッド15のインテークポート21に清浄化された空気が供給される。なお、インテークパイプの途中適所には燃料噴射装置が装着され、インテークポートに向けて燃料を噴射するようになっている。
一方、エンジン11からの排気ガスを排気する排気系において、この例ではシリンダヘッド15の下面側にはエキゾーストポート(排気ポート)が設けられる。このエキゾーストポートには、エキゾーストパイプ(排気管)が結合する。エキゾーストパイプはエキゾーストポートとの接続部から一旦右方へ延出し、その後、後方へ湾曲して更に冷却ファン17の下方付近を通って後方へ延設される。エキゾーストパイプは更に、車両後部においてマフラ22(図1参照)に接続する。エンジン11内で生成された燃焼ガスが排気ガスとして、エキゾーストポートからエキゾーストパイプを通り、最終的にマフラ22から排気される。
次に、パワーユニット10を冷却する冷却系において、前述のようにシリンダ14、シリンダヘッド15及び冷却ファン17はシュラウド18によって覆われる(図2、図4等参照)。つまり、冷却ファン17を含めシリンダ14及びシリンダヘッド15は、図4に示されるようにシュラウド18により囲繞される。シュラウド18は合成樹脂あるいはプラスチック材料により形成され、クランクケース13やシリンダブロックの外壁適所にビス等の固定手段によってぴったりと、即ち基本的には取付相手であるシリンダブロック等との接合部に隙間が生じないように取付固定される。シリンダ14等の外周面から突設された各冷却フィン23(図3、図4参照)の頂部とシュラウド18の内面とは、一定の隙間が形成されるように間隔が開けられている。
ここで、クランクシャフト12は、図4において一点鎖線により略記するが、クランクケース13R及びクランクケース13Lによって、ベアリングを介して回転自在に支持される。この例では図4のようにクランクシャフト12の右側の軸端部側に冷却ファン17が一体的に結合し、この冷却ファン17には、図3にも示されるようにクランクシャフト12を中心とする周方向に沿って複数の回転羽根24が配設される。なお、この回転羽根24等を含む冷却ファン17の詳細については後述するものとする。冷却ファン17は、クランクシャフト12と一体回転するように結合する。冷却ファン17のエンジン11内方側にオルタネータ25(図4において二点鎖線により概略図示する)が隣接配置され、該オルタネータ25のロータ(図示せず)がクランクシャフト12に同軸に固定され、クランクシャフト12と一体回転する。
シュラウド18の形状等に関して、冷却ファン17に対応するシュラウド18の右側部には、冷却ファン17の回転軸(クランクシャフト12)と同心の空気導入開口部18aが開設される。シュラウド18は空気導入開口部18aから更にシリンダヘッド15の右側面対応部位まで、その側壁18b(右側壁)が前方へ延出する。シュラウド18の側壁18bは、平面視において図4に示されるように左右幅で空気導入開口部18aから先端に向って幅狭になる、つまり側壁18bは、図4の平面視で前方に向けてシリンダ軸線Zに接近するように大きな曲率半径で湾曲形成される。
上記構成の冷却ファン構造の基本的作用において、エンジン11が始動してクランクシャフト12が回転すると、クランクシャフト12の軸端部側に取り付けられた冷却ファン17の回転羽根24が、図3の矢印Aのように回転する。これにより冷却ファン17の周囲の空気が巻き込まれて、空気導入開口部18aからシュラウド18内へ図4の矢印AINのように導入される。冷却風の主流は矢印A1のようにシュラウド18の内壁に沿ってシリンダヘッド15方向へと流れる。冷却風はその後、上方及び下方等に分岐し、それらの分岐した冷却風はシリンダ14及びシリンダヘッド15の周囲を通り抜けて、冷却風排風口から排出される。
また、本実施形態において図5及び図6に示されるように冷却ファン17は、その回転軸26のまわりに配設された複数の回転羽根24を有する。なお、図5は冷却ファン17を右方から見た斜視図であり、図6は冷却ファン17を左方(クランクシャフト12側)から見た斜視図である。各回転羽根24は回転軸26の軸方向視で、その回転方向(図5、矢印A)前端側がかぎ型状に湾曲形成されている。ここで、冷却ファン17の回転軸26は図5等において一点鎖線により略記するが、クランクシャフト12の右側の軸端部側に同軸に設定される。
冷却ファン17は、回転方向に沿って所定ピッチ間隔で配設された複数の回転羽根24と、クランクシャフト12の右側の軸端部側に支持されるベース部27と、回転羽根24を挟んでベース部27とは回転軸26の軸方向反対側に配置される補強円環部28とを含んで構成され、これらは合成樹脂材料により一体成形することができる。ベース部27は回転軸26を中心とする概略円盤状を呈し、具体的な取付構造として例えば、クランクシャフト12の右側の軸端部に固着したブラケットに対して、複数の取付用ボス部29にてボルト等によって締結するものであってよく、ベース部27はクランクシャフト12と同期回転する。また、補強円環部28はリング状もしくはドーナッツ状を呈する。
図7は、冷却ファン17を左方(クランクシャフト12側)から見た正面図であり、この図7も参照して、ベース部27と補強円環部28は同心配置され、ベース部27の外径が補強円環部28の内径と略一致する。回転羽根24のかぎ型状に湾曲形成された部位、即ちその前端側には開口部30を有する。各回転羽根24の開口部30は、冷却ファン17の回転方向における正圧側(図7において特定の回転羽根24について図示し、正圧側を(+)で、また負圧側を(−)でそれぞれ示すが、全ての回転羽根24について同様である)に開口する。
また、各回転羽根24の前端側にてかぎ型を形成する円弧部31を有し、この円弧部31は冷却ファン17の回転軸26を指向して配置される。円弧部31は回転羽根24の回転方向前端に位置し、回転軸26に対向するように形成される。
また、図5及び図6に示されるように各回転羽根24は、回転軸26方向に幅あるいは高さを持ち、回転軸26の先端側(右方側)で補強円環部28を介して相互に連結される。この場合、かぎ型の開口部30が、補強円環部28の内方側まで突設される。換言すると開口部30が形成される回転羽根24の前端側は、補強円環部28とは直接繋がっておらず、図5のように補強円環部28の内方に露呈する。
一方、各回転羽根24は回転軸26の基端側(左方側)で、ベース部27を介して相互に連結され、その回転方向前端側が該ベース部27に接続される。この場合、回転羽根24の回転方向後端側は図5及び図6等に示されるように、開口部30から補強円環部28の外周側に向けて概略弓状に湾曲して延設され、該補強円環部28に接続される。より具体的には回転羽根24の回転方向後端側は、円弧部31の略中心を通る回転軸26に関する半径方向に対して回転方向と反対方向へなびくように形成するとよい。なお、かかる回転羽根24の形状効果として、導入される空気流に対する整流作用に寄与する。
更に、各回転羽根24は回転軸26の軸方向視で、かぎ型の開口部30とは反対側の負圧側(図7において(−)で示される)にリブ32が設けられる。図示例では回転羽根24の回転方向後端側の上述した弓状湾曲部位に1又は複数、本例では2つのリブ32を有し、各回転羽根24の負圧側においてかぎ型状部位から回転方向後端までの間に、これらのリブ32により凹部33が形成される。この場合、リブ32は図7に示されるように、回転羽根24(の回転方向後端側)に対して鋭角で交差するように形成するとよい。なお、かかる回転羽根24及びリブ32の形状効果として、導入される空気流に対する整流作用に寄与する。これらの回転羽根24及びリブ32、凹部33等について、各図において特定のものについて符号を付するが、全ての回転羽根24について同様である。
ここで、本実施形態における主要な作用効果等として先ず、クランクシャフト12を駆動源として冷却ファン17の回転羽根24が回転すると(例えば図3、矢印A)、冷却ファン17の周囲の空気が巻き込まれて、空気導入開口部18aからシュラウド18内へ導入される。その際、回転羽根24の前端側から正圧側(図7の(+)領域)に流れる風は、かぎ型の開口部30に発生する小渦によって整流され、これにより空気抵抗が減少する。
この場合、円弧部31は回転羽根24の回転方向前端に位置し、冷却ファン17の回転軸26を指向して配置される。このように回転羽根24の回転方向前端側に大きな円弧部31を設けることで、回転羽根24が風を切る際の空気抵抗が減少する。そして、回転羽根24の空気抵抗が減少することで、所謂メカロス(機械的損失)が低減し、冷却ファン17の作動効率(ファン効率)を高め、結果として燃費性能向上等にも寄与することができる。
本発明では特に冷却ファン17は次に述べるように、クランクシャフト12を支持するエンジンケースの収容部に配置され、各回転羽根24は、収容部を形成するエンジンケースとの間隙が、エンジン中央側に向かうにつれて次第に大きくなるように形成される。ここで、図4及び図8を参照してクランクケース13を構成する右側のクランクケース13Rの一部として、その側壁34から更に右方に突出させたエンジンケース35を有する。このエンジンケース35により、図3あるいは図8等に示されるように冷却ファン17の周囲を囲むように収容部36が形成される。そして、エンジンケース35、即ち収容部36の内周面と回転羽根24(の外周縁部)との間には所定の間隙g(図4参照)が設定される。冷却ファン17の回転羽根24が収容部36内で回転することで、前述のようにシュラウド18内へ空気が導入される。
そして、本発明では更に図9Aに示すようにエンジンケース35により形成される収容部36の内周面36aと回転羽根24との間に形成される間隙gは、図9Aの一点鎖線Bのようにエンジン中央側(図9Aにおいて左方(矢印L))に向かうにつれて次第に大きくなる。
より具体的には図6及び図9Aに示されるように回転羽根24は、回転軸26方向の基端側(左方側)であって回転方向後端側の部位が階段状に形成されて、図9Bに示すようにその階段状を形成する複数の段部37(37A,37B,37C,37D,...)が設けられる。なお、図9Bは図9AのC部拡大図を示す。これらの段部37A、37B,37C,37D,...は、図9Aの一点鎖線Bに沿うように形成される。そして、収容部36の内周面36aとの間にそれぞれ間隙g1,g2,g3,g4,...が形成され、それらの大小関係は、g1<g2<g3<g4である。
また、段部37A,37B,37C,37D,...により形成される階段状の部位は、図6に示されるようにベース部27とは直接繋がらない回転羽根24の後端側、即ちベース部27の外周縁よりも外側に位置して形成される。なお、段部37A〜37Dの数量等につき、図示例の場合にのみ限定されず、適宜増減可能である。
更に、複数の段部37A,37B,37C,37D,...における相互間の段差は一定でなく、所定の段差が大きく幅広に設定される。例えば図9Bの例では段部37A及び段部37B間の段差と、段部37C及び段部37D間の段差とが大きく設定される。これら大きな段差の部位に対応して、回転羽根24の裏側において前述のリブ32が配置形成される。
本発明の内燃機関の冷却ファン構造は上記のように構成されており、次にその主要な作用効果等について説明する。図10A及び図10Bを参照して、冷却ファン17の回転羽根24の回転により空気導入開口部18aから巻き込まれた空気(図10B、矢印AIN)は、図10Bの矢印Wのようにその上流から下流への空気流となって間隙gに流入する。その際、上流から下流へ流れるに従って、矢印W1,W2,W3で示すようにその風量が次第に増加する。ここで、空気流の通路面積が一定の場合、このように風量が増加した空気流は下流側程、圧力が高くなり、その流れ難い部位が生じ、つまり許容限度を超えるとそのままでは行き詰まってしまう。本発明では上述のように収容部36の内周面36aと回転羽根24との間隙gをエンジン中央側、つまり空気流の圧力が高まる下流側で大きくすることで、下流側付近での空気流の通路面積を風量に合せて次第に広げる。このように圧力が高まる部位の通路面積を他の部位よりも大きく確保することにより、スムーズな空気流を形成し、空気抵抗を減少することができる。この場合、階段状の複数の段部37を通過する空気が小渦を発生させ、冷却ファン17とエンジンケース35(収容部36)の間を通過中の空気の乱流渦発生を防止し、更に空気流をスムーズにして空気抵抗を減少することができる。そして、冷却ファン17としての送風効率(ファン効率)が実質的に向上する。
この場合、回転羽根24における回転方向後端側の部位を階段状に形成し、図9Bに示したように複数の段部37A,37B,37C,37D,...により形成される間隙g1,g2,g3,g4,...を下流側(左方側、即ち回転軸26の基端側)程大きくすることで、下流側付近の通路面積を有効に広げることができる。
その際、階段状の部位はベース部27の外周縁よりも外側に位置して形成され、つまり実質的に空気流の通路とならないベース部27を避けて、その外側に段部37A,37B,37C,37D,...が形成される。段部37をこのように配置形成することで、間隙g1,g2,g3,g4,...による空気流の下流側付近での通路面積拡大効果を実行あらしめる。
更に、複数の段部37A,37B,37C,37D,...間で形成される段差のうち幅広に設定された所定の段差にリブ32が配置形成される。
このように幅広の段差にリブ32を設けることにより、凹部33を形成するためのスペースを有効に確保する。そして凹部33にて小渦を発生させ易くして、段部37の階段状部位を通過する空気により小渦が発生することで、冷却ファン17とエンジンケース35(収容部36)の間を通過する空気の乱流発生を防止することにより、この点でも空気流をスムーズにして空気抵抗を減少することができる。
以上のように収容部36及び回転羽根24の間隙gをエンジン中央側程大きくし、空気流の下流側付近の通路面積を風量に合せて次第に広げる。実質上、別部品等を追加することなく回転羽根24の形状のみの変更工夫により、簡素な構成でありながら、冷却ファン17としての送風量は従来品と変わらずに、つまり送風量を同等以上に確保しながら回転羽根24の枚数を実質的に少なくすることができる。このように冷却ファン17の送風性能を確保維持した上で、装置の軽量化等を図ることができ、その際、回転羽根24の枚数が減ることで、導入される空気の風の通路面積が広がり、この点でも空気抵抗が減少する。
ここで、上記実施形態において、回転羽根24の所定部位を階段状に形成する例を説明したが、図9Aの一点鎖線Bのように収容部36の内周面36aと鋭角で交差する直線に沿って、例えば概略三角形状の切欠き構造を形成することでも同等の効果が得られる。この場合、そのような切欠き構造にあっては成形が容易である等の利点がある。
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態における回転羽根24やこれに設ける段部37A〜37Dあるいはリブ32の数量等は図示例のもののみに限定されず、必要に応じて増減可能である。
10 パワーユニット、11 エンジン、12 クランクシャフト、13 クランクケース、14 シリンダ、15 シリンダヘッド、16 シリンダヘッドカバー、17 遠心式冷却ファン、18 シュラウド、19 動力伝動装置、20 ケーシング、21 インテークポート、23 冷却フィン、24 回転羽根、25 オルタネータ、26 回転軸、27 ベース部、28 補強円環部、29 取付用ボス部、30 開口部、31 円弧部、32 リブ、33 凹部、34 側壁、35 エンジンケース、36 収容部、36a 内周面、37,37A〜37D 段部、100 車両、g,g1〜g4 間隙。

Claims (2)

  1. エンジンのクランクシャフトの動力によって一体回転する冷却ファンを備えた内燃機関の冷却ファン構造であって、
    前記冷却ファンは、エンジンケースにより形成される収容部に配置されると共に前記クランクシャフトの軸端部に同軸に設定された回転軸のまわりに回転する回転羽根を有し、
    前記クランクシャフトの軸端部とは反対側の前記回転軸の先端側から空気を吸い込み、半径方向外側に吐出した後、前記クランクシャフト側へと前記回転軸方向に空気を流し、
    前記回転羽根は、前記収容部の内周面との間隙が、前記クランクシャフトの前記軸端部側に向かうにつれて次第に大きくなるように形成されると共に、半径方向内側縁が半径方向外側縁よりも回転方向前側に位置し
    前記回転羽根の回転で空気導入開口部から巻き込まれた空気が、上流から下流への空気流となって前記間隙に流入するようにし、
    前記回転羽根の回転方向後側の半径方向外側縁が階段状に形成されてなる段部により、前記間隙が形成され、
    前記回転羽根の負圧側において、前記段部相互間の幅広の段差部位に対応してリブが形成されることを特徴とする内燃機関の冷却ファン構造。
  2. 前記クランクシャフトの前記軸端部側にて前記回転軸を中心とする円盤状のベース部が支持されると共に、該ベース部に前記回転羽根が結合し、
    前記階段状の前記段部は、前記冷却ファンのベース部の外周縁よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の冷却ファン構造。
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