以下、一実施形態のプレスブレーキ及びバックゲージの制御方法について、添付図面を参照して説明する。
図1において、プレスブレーキは、上下方向に移動自在の上部テーブル1と、固定されている下部テーブル2とを備える。上部テーブル1は、上部テーブル1を上下方向に移動させるための油圧シリンダ3L及び3Rを有する。上部テーブル1が油圧シリンダ3L及び3Rによって上下方向に移動するときの軸をそれぞれD1軸及びD2軸と称する。
上部テーブル1が上昇する方向をD1軸及びD2軸のプラス方向、上部テーブル1が下降する方向をD1軸及びD2軸のマイナス方向とする。
上部テーブル1は、下端部にパンチ金型3(図2参照)を装着するための下方に開口した凹部である金型装着部101を有する。下部テーブル2は上端部にダイ金型4(図2参照)を装着するための凹部である金型装着部201を有する。
上部テーブル1及び下部テーブル2の前面と平行で水平方向をx方向とし、プレスブレーキを見て左方向をxL方向、右方向をxR方向とする。上部テーブル1及び下部テーブル2の前面に直交する方向をy方向とし、プレスブレーキの手前方向をyF方向、奥方向をyB方向とする。x方向とy方向とは直交する。
上部テーブル1及び下部テーブル2の後方には、バックゲージ5が設けられている。バックゲージ5は、突き当て部材51L及び51Rと、ストレッチ52と、サイドフレームであるサポータ53L及び53Rと、サポータ53L及び53Rを所定の高さに支持する支持部材54L及び54Rとを有する。
突き当て部材51L及び51Rは、それぞれ、移動部材51L1及び51R1と、スライダ51L2及び51R2を有する。ストレッチ52にはx方向のレールが形成されている。ここでは図示していないモータによって、スライダ51L2及び51R2がx方向のレールに沿ってx方向に移動して、突き当て部材51L及び51Rがx方向に移動自在に構成されている。
移動部材51L1及び51R1は、スライダ51L2及び51R2上で、y方向に移動自在に構成されている。突き当て部材51L及び51Rの内部には例えば図示していないボールねじが設けられている。ここでは図示していないモータによってボールねじを回転させることによって、移動部材51L1及び51R1をy方向に移動させることができる。
突き当て部材51L及び51Rがx方向に移動するときの軸をそれぞれY1軸及びY2軸と称する。突き当て部材51L及び51RがxR方向に移動する方向をY1軸及びY2軸のプラス方向、xL方向に移動する方向をY1軸及びY2軸のマイナス方向とする。
突き当て部材51L及び51Rがy方向に移動するときの軸をそれぞれLS1軸及びLS2軸と称する。突き当て部材51L及び51RがyB方向に移動する方向をLS1軸及びLS2軸のプラス方向、yF方向に移動する方向をLS1軸及びLS2軸のマイナス方向とする。
突き当て部材51L及び51Rの先端部(前端部)の互いに対向する角部には、切り欠き511が形成されている。切り欠き511は、ワークの角を挟んで隣接する2辺に接触する接触構造の一例である。
サポータ53L及び53Rにはy方向のレールが形成されており、ストレッチ52はy方向のレールに沿ってy方向に移動自在に構成されている。サポータ53L及び53Rの内部には例えば図示していないボールねじが設けられている。ここでは図示していないモータによってボールねじを回転させることによって、ストレッチ52をy方向に移動させることができる。ストレッチ52がサポータ53L及び53R上でy方向に移動するときの軸をそれぞれL1軸及びL2軸と称する。
ストレッチ52がyB方向に移動する方向をL1軸及びL2軸のプラス方向、yF方向に移動する方向をL1軸及びL2軸のマイナス方向とする。
支持部材54L及び54Rは、ここでは図示していないモータによって、上下方向の軸であるZ軸に沿って高さを調整自在に構成されている。支持部材54L及び54Rが上方に移動する方向をプラス方向、下方に移動する方向をマイナス方向とする。
突き当て部材51L及び51Rをx方向またはy方向に移動自在にする構成は特に限定されない。突き当て部材51L及び51Rまたはストレッチ52をy方向に移動自在にする構成も特に限定されず、ボールねじを含む構成でなくてもよい。突き当て部材51L及び51Rまたはストレッチ52を、ラック・ピニオンを用いた構成によって移動自在としてもよい。
図2に示すように、上部テーブル1にはパンチ金型3が取り付けられており、下部テーブル2にはダイ金型4が取り付けられている。金属の板材であるワークWは、ダイ金型4上に載置されている。図2は、上部テーブル1が下降してパンチ金型3がワークWを曲げ加工する直前の状態を示している。
バックゲージ5は、突き当て部材51L及び51Rの先端部がワークWの後端部と接触する位置に設定されている。これにより、ワークWのy方向の位置が位置決めされる。
図3は、突き当て部材51L及び51Rを上部テーブル1及び下部テーブル2の面と平行に配置されたワークWに突き当てている状態を上方より見た平面図である。ワークWの奥側の辺はx方向と平行である。突き当て部材51L及び51Rの先端部は、y方向の同じ位置に位置している。
ワークWの奥側の2つの角部は、突き当て部材51L及び51Rそれぞれの切り欠き511と係合する。よって、突き当て部材51L及び51Rは、x方向及びy方向の双方でワークWを押さえるので、ワークWを安定して位置決めすることができる。
図4は、突き当て部材51L及び51Rを上部テーブル1及び下部テーブル2の前面に対して斜めに配置したワークWに突き当てている状態を上方より見た平面図である。ワークWの奥側の辺はx方向と平行ではない。突き当て部材51Lは、突き当て部材51RよりもyF方向により突出した位置に位置している。
このようにワークWが斜めに配置されている場合も、ワークWの奥側の2つの角部は、突き当て部材51L及び51Rそれぞれの切り欠き511と係合する。よって、突き当て部材51L及び51Rは、x方向及びy方向の双方でワークWを押さえるので、ワークWを安定して位置決めすることができる。
上部テーブル1が図2の状態からさらに下降してパンチ金型3がワークWを曲げ加工するとき、突き当て部材51Lまたは51Rが折り曲げられたワークと干渉することを回避するため、ストレッチ52をyB方向に移動させることにより、突き当て部材51L及び51Rをプルバック動作させることがある。
図4では、例えばワークWが斜めに配置されていて、奥側の辺が上部テーブル1及び下部テーブル2の前面に対して傾斜している。このような状態のワークWに切り欠き511を有する突き当て部材51L及び51Rを突き当てて位置決めし、突き当て部材51L及び51RをyB方向にプルバック動作させようとすると、接触構造がワークWと干渉することがある。
本実施形態においては、後述するように、突き当て部材51L及び51Rのプルバック動作のさせ方を改良している。
図5を用いて、バックゲージ5を制御する構成の一例を説明する。図5において、プレスブレーキ制御装置10は、バックゲージ5だけでなく、プレスブレーキの全体を制御する。プレスブレーキ制御装置10は、演算器11と、演算器11に接続されたメモリ12とを含む。プレスブレーキ制御装置10は、NC装置と称されてもよい。演算器11は、中央演算処理装置(CPU)であってもよい。
メモリ12には、プレスブレーキを制御するための各種のデータ、及び、バックゲージ5を含むプレスブレーキの全体を制御するための制御プログラムが記載されている。演算器11は、メモリ12に記憶された各種のデータ及び制御プログラムに従ってプレスブレーキを制御する。メモリ12は、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体である。
プレスブレーキ制御装置10には、操作・表示部20と、サーバ30が接続されている。操作・表示部20は、複数の操作ボタンを含む操作部21と、各種の情報を表示する液晶パネル等の表示パネル22とを有する。
プレスブレーキ制御装置10は、サーボアンプAL1及びAL2に対して、それぞれ、ストレッチ52のL1軸及びL2軸方向の位置を指令する。サーボアンプAL1及びAL2は、それぞれの位置指令に従ってサーボモータML1及びML2を回転させる。
サーボモータML1は例えばサポータ53Lの奥側端部に取り付けられており、サポータ53Lに内蔵されたボールねじを回転させる。これによって、ストレッチ52はL1軸方向の位置が変化するように構成されている。サーボモータML2は例えばサポータ53Rの奥側端部に取り付けられており、サポータ53Rに内蔵されたボールねじを回転させる。これによって、ストレッチ52はL2軸方向の位置が変化するように構成されている。
サーボアンプAL1及びAL2は、プレスブレーキ制御装置10に、それぞれ、ストレッチ52のサポータ53L側及び53R側のy方向の位置のフィードバック情報を供給する。
サーボアンプAL1及びAL2、及び、サーボモータML1及びML2は、突き当て部材51L及び51Rを、ワークWに近付くyF方向(第1の方向)またはワークWから離れるyB方向(第2の方向)に移動させるよう駆動する第1の駆動機構として動作する。
プレスブレーキ制御装置10は、サーボアンプAY1及びAY2に対して、それぞれ、突き当て部材51L及び51RのY1軸及びY2軸方向の位置(スライダ51L2及び51R2のY1軸及びY2軸方向の位置)を指令する。サーボアンプAY1及びAY2は、それぞれの位置指令に従ってサーボモータMY1及びMY2を回転させる。
サーボモータMY1は例えば突き当て部材51Lの奥側端部に取り付けられており、サーボモータMY1の回転によって突き当て部材51LのY1軸方向の位置が変化するように構成されている。サーボモータMY2は例えば突き当て部材51Rの奥側端部に取り付けられており、サーボモータMY2の回転によって突き当て部材51RのY2軸方向の位置が変化するように構成されている。
サーボアンプAY1及びAY2は、プレスブレーキ制御装置10に、それぞれ、突き当て部材51L及び51Rのx方向の位置のフィードバック情報を供給する。
サーボアンプAY1及びAY2、及び、サーボモータMY1及びMY2は、突き当て部材51L及び51Rを、互いに反対方向であるxL方向(第3の方向)及びxR方向(第4の方向)に移動させるよう駆動する第2の駆動機構として動作する。
プレスブレーキ制御装置10は、サーボアンプAZに対して、支持部材54L及び54RのZ軸方向の位置を指令する。サーボアンプAZは、位置指令に従ってサーボモータMZを回転させる。サーボモータMZの回転によって支持部材54L及び54RのZ軸方向の位置が変化するように構成されている
サーボアンプAZは、プレスブレーキ制御装置10に支持部材54L及び54RのZ軸方向の位置のフィードバック情報を供給する。
プレスブレーキ制御装置10は、サーボアンプALS1及びALS2に対して、それぞれ、突き当て部材51L及び51RのLS1軸及びLS2軸方向の位置を指令する。サーボアンプALS1及びALS2は、それぞれの位置指令に従ってサーボモータMLS1及びMLS2を回転させる。
サーボモータMLS1は例えば突き当て部材51Lの奥側端部に取り付けられており、突き当て部材51Lに内蔵されたボールねじを回転させる。これによって、突き当て部材51L(移動部材51L1)はLS1軸方向の位置が変化するように構成されている。サーボモータMLS2は例えば突き当て部材51Rの奥側端部に取り付けられており、突き当て部材51Rに内蔵されたボールねじを回転させる。これによって、突き当て部材51R(移動部材51R1)はLS2軸方向の位置が変化するように構成されている。
サーボアンプALS1及びALS2は、プレスブレーキ制御装置10に、それぞれ、突き当て部材51L及び51Rのy方向の位置のフィードバック情報を供給する。
プレスブレーキ制御装置10は、サーボアンプAD1及びAD2に対して、それぞれ、上部テーブル1のD1軸及びD2軸方向の位置を指令する。サーボアンプAD1及びAD2は、それぞれの位置指令に従ってサーボモータMD1及びMD2を回転させる。サーボモータMD1及びMD2は、それぞれ、油圧シリンダ3L及び3Rを動かし、上部テーブル1を下降または上昇させる。
サーボアンプAD1及びAD2は、プレスブレーキ制御装置10に、それぞれ、上部テーブル1のD1軸及びD2軸方向の位置のフィードバック情報を供給する。
図1に示すバックゲージ5は突き当て部材51L及び51Rがストレッチ52上に設けられているが、突き当て部材51L及び51Rを共通にy方向に移動させる構成を有さず、突き当て部材51L及び51Rが独立してy方向及びx方向に移動自在な構成であってもよい。
図6を用いて、バックゲージ5を動作させるための機械動作データの生成手順を説明する。図6に示す生成手順は、プレスブレーキ制御装置10(演算器11)によって実行される。
図6において、プレスブレーキ制御装置10は、ステップS101にて、サーバ30よりワークWの展開図データを読み込む。展開図データは、ワークWの展開図を示すデータに加え、曲げる位置を示す曲げ線情報、曲げる角度を示す角度情報、ワークWの材質、板厚、形状それぞれを示す情報を含む。
プレスブレーキ制御装置10は、展開図データに基づき、表示パネル22にワークWの展開図を表示させる。プレスブレーキ制御装置10は、表示パネル22に、ワークWを曲げ加工するために使用する金型(パンチ金型3及びダイ金型4)を選択するためのメニュー画像を表示するように構成されている。ユーザは、操作部21を操作して、ワークWを曲げ加工するために使用するパンチ金型3及びダイ金型4を選択する。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS102にて、ユーザによって選択されたパンチ金型3及びダイ金型4を使用金型として設定する。
プレスブレーキ制御装置10は、表示パネル22に、ワークWを位置決めするときにワークWに突き当てる突き当て部材を選択するためのメニュー画像を表示するように構成されている。ユーザは、操作部21を操作して突き当て部材を選択する。ここでは、上述した切り欠き511が形成された突き当て部材51L及び51Rが選択されたとする。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS103にて、ユーザによって選択された突き当て部材51L及び51Rを使用突き当て部材として設定する。使用する突き当て部材を突き当て部材51L及び51Rのみとする場合には、ユーザによる選択操作は不要である。
プレスブレーキ制御装置10は、表示パネル22に、ワークWの複数の箇所を曲げ加工するときの曲げ順を指定するためのメニュー画像を表示するように構成されている。ユーザは、操作部21を操作して曲げ順を指定する。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS104にて、ユーザによって指定された曲げ順を設定する。
プレスブレーキ制御装置10は、表示パネル22に、ワークWのそれぞれの箇所を曲げ加工するときに、ワークWに突き当て部材51L及び51Rを突き当てる位置を指定するためのメニュー画像を表示するように構成されている。ユーザは、操作部21を操作して突き当て位置を指定する。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS105にて、曲げ加工するそれぞれの箇所に対応させて、ユーザによって指定された突き当て位置を設定する。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS106にて、それぞれの箇所を曲げ加工するときの、バックゲージ5を動作させるための機械動作データを計算する。機械動作データは、突き当て部材51L及び51Rのx方向及びy方向の位置、ストレッチ52のy方向の位置、支持部材54L及び54Rの高さを決めるためのデータを含む。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS107にて、バックゲージ5をプルバック動作させる必要があるか否かを判定する。
例えば、図7に示すように、奥側の端部が下方に折り曲げられている折り曲げ部W1を有するワークWを曲げ加工する場合を考える。突き当て部材51L及び51Rは、パンチ金型3がワークWに接触する直前まで、折り曲げ部W1の上端部に突き当てられており、ワークWを位置決めしている。
パンチ金型3が下降してワークWをダイ金型4へと押し込むと、ワークWが折れ曲がる。すると、折り曲げ部W1は上方へと回動し、折り曲げ部W1の下端部の位置は、ワークWが折れ曲がる前の位置よりも奥側へと移動する。よって、バックゲージ5をプルバック動作させないと、突き当て部材51Lまたは51Rが折り曲げ部W1と干渉してしまう。
プレスブレーキ制御装置10は、ワークWの形状によって、バックゲージ5をプルバック動作させる必要があるか否かを判定することができる。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS107にてバックゲージ5をプルバック動作させる必要があると判定されると(YES)、ステップS108にて、プルバック動作させることを示すプルバック動作フラグを機械動作データに設定して、処理をステップS109に移行させる。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS107にてバックゲージ5をプルバック動作させる必要がないと判定されると(NO)、処理をステップS109に移行させる。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS109にて、バックゲージ5をプルバック動作させると突き当て部材51Lまたは51RがワークWと干渉するか否かを判定する。ここでのプルバック動作とは、突き当て部材51L及び51RをyB方向に移動させる一般的な退避動作を意味する。
図8は、図4におけるワークWの角部が突き当て部材51Lの切り欠き511に係合している状態を拡大して示している。突出部512及び513は、切り欠き511を挟んで対向している。突出部512はワークWの1つの辺上の接触部P1と接触し、突出部513はワークWの他の1つの辺上の接触部P2と接触している。接触部P1及びP2は、突出部512及び513の形状に応じて、点、線分、または所定の面積の領域のいずれかである。
仮に突き当て部材51LをyB方向に移動させると、突出部512は二点鎖線の矢印で示すようにワークWの内部を通過しなければならない。突き当て部材51Lまたは51RをyB方向に移動させたときに、突き当て部材51Lまたは51Rのいずれかの部分がワークWの内部を通過しなければならない場合を、突き当て部材51Lまたは51RがワークWと干渉する場合とする。
突き当て部材51Lまたは51RがyB方向に移動し始めた直後に、ワークWの辺と接触している接触部がワークWから離れず、突き当て部材51Lまたは51Rが移動した後も突き当て部材51Lまたは51Rのいずれかの部分がワークWの辺と接触する場合がある。なお、突き当て部材51Lまたは51RがワークWと干渉するとみなす場合と干渉しないとみなす場合とがある。干渉するとみなす場合と干渉しないとみなす場合とは、接触する長さ、ワークWの材質、板厚等の条件により個別に判断される。
プレスブレーキ制御装置10はメモリ12に切り欠き511の形状を示すデータを保持している。プレスブレーキ制御装置10には、ワークWの形状を示す情報が与えられる。従って、プレスブレーキ制御装置10は、バックゲージ5をプルバック動作させると突き当て部材51Lまたは51Rの接触構造がワークWと干渉するか否かを判定することができる。
図6に戻り、突き当て部材51Lまたは51RがワークWと干渉すると判定されると(YES)、プレスブレーキ制御装置10は、ステップS110にて、突き当て部材51Lまたは51RがワークWと干渉せず退避することができる回避角度と、yB方向の後退距離であるプルバック量とを計算して、処理をステップS111に移行させる。回避角度及びプルバック量の詳細については後述する。
突き当て部材51Lまたは51RがワークWと干渉しないと判定されると(NO)、プレスブレーキ制御装置10は、処理をステップS111に移行させる。
ここで、プレスブレーキ制御装置10は、ステップS107における判定の結果、バックゲージ5をプルバック動作させる必要があるか否かにかかわらず、ステップS109にて干渉の有無を判定するように構成されている。これは次の理由による。
図7はプルバック動作させる必要がある場合の一例であり、下方への折り曲げ部W1を有さないワークWであっても、プルバック動作させる必要がある場合がある。例えば、ワークWの材質によっては材料の伸びが大きく、パンチ金型3がワークWに接触したときにワークWが伸びて突き当て部材51L及び51Rに過度の負荷を与えることがある。このような場合、バックゲージ5をプルバック動作させることが好ましい。
また、ワークWの端部にバリがあり、ワークWが曲げられたときにバリが突き当て部材51L及び51Rに引っかかる場合がある。このような場合も、バックゲージ5をプルバック動作させることが好ましい。
ステップS107にてバックゲージ5をプルバック動作させる必要がないと判定された場合でも、バックゲージ5をプルバック動作させることが好ましい場合には、オペレータが手動でプルバック動作フラグを設定することがある。
図6に示すように、本実施形態においては、バックゲージ5をプルバック動作させるか否かにかかわらず、ステップS109にて干渉の有無を判定し、干渉する場合にはステップS110にて回避角度を計算する。このようにすれば、オペレータが後で、手動でプルバック動作フラグを設定しても、改めてステップS109及びステップS110の処理を実行させる必要がないため効率的である。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS111にて、回避角度が計算された場合には回避角度を示す情報を含む最終的な機械動作データを設定する。プレスブレーキ制御装置10は、機械動作データをメモリ12に保持させる。
図9を用いて、図6のステップS110で計算する回避角度の条件を説明する。図9は、ワークWが菱形であり、奥側の辺が上部テーブル1及び下部テーブル2の前面に対して傾斜している場合を例とする。
図9において、ワークWの4つの角をA〜Dとする。ワークWの辺AD上の接触部P1を通る接線を一点鎖線で示すT1、辺AB上の接触部P2を通る接線を一点鎖線で示すT2とする。辺BC上の接触部P3を通る接線を一点鎖線で示すT3、辺AB上の接触部P4を通る接線を一点鎖線で示すT4とする。
図9において、yB方向を0°として、時計方向の角度をプラス、反時計方向の角度をマイナスとする。x方向は、90°または−90°である。
なお、図9における辺ABは、図2に示すような奥側の端部が下方に折り曲げられていないワークWの奥側の辺であってもよく、図7に示すような折り曲げ部W1を有するワークWの奥側の辺であってもよい。
プルバック動作時に突き当て部材51Lを移動させる方向は、突き当て部材51Lを接線T1と接線T2とで囲まれた角度範囲のいずれかの角度に移動させる方向とする。即ち、突き当て部材51Lの移動方向は、角度θ1minから角度θ1maxまでの範囲のいずれかの角度である。
但し、角度範囲は−90°から90°までの180°の範囲に制限することが必要である。よって、突き当て部材51Lを移動させる方向は、角度θ1minから−90°までの角度範囲θ1r内のいずれかの角度に移動させる方向とする。
突き当て部材51Lの移動方向を−90°から90°の角度範囲に限定するとは、換言すれば、突き当て部材51LをワークWから離れる方向である後ろ側(yB方向)に移動させるということである。
以上のように決定する、突き当て部材51LをワークWとの干渉を回避しながら移動させるときの回避角度を角度θ1とする。
同様に、プルバック動作時に突き当て部材51Rを移動させる方向は、突き当て部材51Rを接線T3と接線T4とで囲まれた角度範囲のいずれかの角度に移動させる方向とする。即ち、突き当て部材51Lの移動方向は、角度θ2minから角度θ2maxまでの範囲のいずれかの角度である。
但し、角度範囲は−90°から90°までの180°の範囲に制限することが必要である。よって、突き当て部材51Rを移動させる方向は、0°から角度θ2maxまでの角度範囲θ2r内のいずれかの角度に移動させる方向とする。
突き当て部材51Rの移動方向を−90°から90°の角度範囲に限定するとは、換言すれば、突き当て部材51Rを後ろ側(yB方向)に移動させるということである。
以上のように決定する、突き当て部材51RをワークWとの干渉を回避しながら移動させるときの回避角度を角度θ2とする。
ところで、図9に示す例では、実際には、突き当て部材51Rを0°の方向に移動させても、突き当て部材51RはワークWと干渉しない。図9は、干渉が発生する場合の回避角度の計算方法を説明している。
図10を用いて、突き当て部材51Lを、角度θ1minから角度θ1maxまでの範囲で、外側かつ後ろ側に移動させるときの回避角度θ1と、突き当て部材51Rを、角度θ2minから角度θ2maxまでの範囲で、外側かつ後ろ側に移動させるときの回避角度θ2の具体的な一例を説明する。
図10において、ワークWを破線で示す曲げ線BLで曲げ加工するとする。曲げ線BLはx方向と平行である。∠DABを2等分する直線をLctrとする。0°の直線と直線をLctrとがなす角度を回避角度θ1とすることができる。回避角度θ1は、式(1)で計算することができる。
θ1=(θ1max−θ1min)/2 …(1)
図示していないが、同様に、0°の直線と∠ABCを2等分する直線とがなす角度を回避角度θ2とすることができる。回避角度θ2は、式(2)で計算することができる。
θ2=(θ2max−θ2min)/2 …(2)
式(1)及び式(2)による回避角度θ1及びθ2の計算方法によれば、図9で説明した条件を満たす回避角度を容易に得ることができる。
図9に示す例では、上記のように、0°の方向にプルバック動作させても突き当て部材51RはワークWと干渉しないため、回避角度θ2を0°としてもよい。プルバック動作時にワークWと干渉しない突き当て部材であっても、式(1)または式(2)によって計算した回避角度で突き当て部材を退避させても構わない。
プレスブレーキ制御装置10は、図6のステップS110において、突き当て部材51L及び51RのyB方向のプルバック量は次のように計算すればよい。図10において、ワークWの曲げ線BLから奥側の端部(ここでは角B)までの距離をFとする。プルバック量をDpb、距離の余裕量をmとすると、プレスブレーキ制御装置10は、式(3)でプルバック量Dpbを計算すればよい。
Dpb=F+m …(3)
図7で説明したように、下方への折り曲げ部W1を有するワークWを曲げ加工する場合には、折り曲げ部W1の長さをGとして、プレスブレーキ制御装置10は、式(4)でプルバック量Dpbを計算すればよい。
Dpb=F+G+m …(4)
式(3)及び(4)において、余裕量mは例えば10mmであり、適宜設定すればよい。
図11を用いて、ワークWの曲げ加工動作を説明する。図11において、ワークWを曲げ加工するよう指示されて動作が開始すると、プレスブレーキ制御装置10は、ステップS201にて、バックゲージ5をワークWの突き当て位置に移動させる。突き当て位置は、図6のステップS105にて設定されている。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS202にて、上部テーブル1を下降させる指示があったか否かを判定する。一般的には、上部テーブル1を下降させる指示は、図示していないフットスイッチを押すことによってなされる。プレスブレーキ制御装置10は、上部テーブル1を下降させる指示がなされなければ(NO)、ステップS202の処理を繰り返し、上部テーブル1を下降させる指示がなされれば(YES)、処理をステップS203に移行させる。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS203にて、プルバック動作が設定されているか否かを判定する。プレスブレーキ制御装置10は、プルバック動作が設定されていれば(YES)、処理をステップS204に移行させ、プルバック動作が設定されていなければYES)、処理をステップS208に移行させる。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS204にて、上部テーブル1を下降させ、ステップS205にて、パンチ金型3がワークWに接触する直前の位置に到達したか否かを判定する。パンチ金型3がワークWに接触する直前の位置に到達していなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置10は、ステップS204及びS205の処理を繰り返す。
パンチ金型3がワークWに接触する直前の位置に到達したら(YES)、プレスブレーキ制御装置10は、ステップS206にて、バックゲージ5のプルバック動作を実行させる。具体的には、プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51L及び51Rをそれぞれ回避角度θ1及びθ2の方向に移動させる。回避角度θ1と回避角度θ2とのうちの一方が0°の場合、双方が0°の場合もある。
回避角度θ1が0°でない場合、プレスブレーキ制御装置10は、サーボモータML1及びML2を回転させてストレッチ52をyB方向に移動させ、かつ、サーボモータMY1を回転させて突き当て部材51LをxL方向に移動させる。
回避角度θ2が0°でない場合、プレスブレーキ制御装置10は、サーボモータML1及びML2を回転させてストレッチ52をyB方向に移動させ、かつ、サーボモータMY2を回転させて突き当て部材51RをxR方向に移動させる。
回避角度θ1が0°であれば、プレスブレーキ制御装置10は、サーボモータMY1を回転させない。回避角度θ2が0°であれば、プレスブレーキ制御装置10は、サーボモータMY2を回転させない。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS207にて、バックゲージ5の後退が完了したか否かを判定する。プレスブレーキ制御装置10は、バックゲージ5の後退が完了しなければ(NO)、ステップS206及びS207の処理を繰り返し、バックゲージ5の後退が完了すれば(YES)、処理をステップS208に移行させる。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS208にて、上部テーブル1を目標位置まで下降させる。目標位置とは、上部テーブル1に装着されたパンチ金型3の先端が、ワークWを所定角度に折り曲げるのに必要な、ワークWを挟んでダイ金型4の上面に近接する位置となるような上部テーブル1の位置である。
プレスブレーキ制御装置10は、ステップS209にて、上部テーブル1が目標位置に到達したか否かを判定する。到達していなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置10は、ステップS208及びS209の処理を繰り返す。到達していれば(YES)、ワークWの1つの曲げ線における曲げ加工が完了したということであるから、ステップS218にて、上部テーブル1を最上方位置まで上昇させて処理を終了させる。
図12及び図13を用いて、突き当て部材51L及び51R、及び、ストレッチ52をどのように移動させるのが好ましいかを説明する。図12に示すように、突き当て部材51Lを回避角度θ1で矢印方向に移動させ、突き当て部材51Rを回避角度θ2で矢印方向に移動させる場合を考える。突き当て部材51L及び51RのyB方向のプルバック量をDpbとする。即ち、ストレッチ52のyB方向の移動距離はDpbである。
突き当て部材51LのxL方向への移動距離はDpb×tanθ1で計算でき、突き当て部材51RのxR方向への移動距離はDpb×tanθ2で計算できる。
プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51Lを、yB方向の移動とxL方向への移動との直線補間によって回避角度θ1の方向へと直線的に移動させることが好ましい。プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51Rを、yB方向の移動とxR方向への移動との直線補間によって回避角度θ2の方向へと直線的に移動させることが好ましい。
図12においては、突き当て部材51LをxL方向に移動させ、突き当て部材51RをxR方向に移動させているが、突き当て部材51L及び51Rの移動方向はこれに限定されない。前述のように突き当て部材51L及び51Rの移動方向は−90°から90°の角度範囲であればよく、突き当て部材51L及び51Rを突き当て部材51L及び51Rが互いにぶつからず、接触構造とワークWとの干渉を回避できる方向に移動させればよい。
プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51L及び51R、及び、ストレッチ52を移動させる速度を図13に示すように設定するのがよい。プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51LのxL方向の移動距離の絶対値と、突き当て部材51RのxR方向の移動距離の絶対値と、ストレッチ52のyB方向の移動距離の絶対値のうち、最も長い移動距離を基本の移動距離として選択する。図12の場合、移動距離Dpbが基本の移動距離である。
突き当て部材51LのyB方向の移動距離と突き当て部材51RのyB方向の移動距離とが異なる場合には、次のようにすればよい。プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51LのyB方向の移動距離の絶対値と、xL方向の移動距離の絶対値と、突き当て部材51RのyB方向の移動距離の絶対値と、xR方向の移動距離の絶対値とのうち、最も長い移動距離を基本の移動距離として選択する。
プレスブレーキ制御装置10は、図13に示すように、ストレッチ52をyB方向に移動させるときの速度を速度指令パターンV52で示すパターンに設定する。プレスブレーキ制御装置10は、速度0から時間Taで速度VLまで線形に加速し、その後、時間Tbだけ速度VLを維持し、時間Tcで速度VLから速度0まで線形に減速するような速度指令パターンV52を設定したとする。
プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51LをxL方向に移動させるときの速度を速度指令パターンV51Lで示すパターンに設定し、突き当て部材51RをxR方向に移動させるときの速度を速度指令パターンV51Rで示すパターンに設定する。
突き当て部材51L及び51Rそれぞれの速度を、ストレッチ52の移動距離と突き当て部材51L及び51Rそれぞれの移動距離との比に応じた速度とする。このようにすれば、ストレッチ52が移動を開始する時刻と移動を完了する時刻に合わせて、突き当て部材51L及び51Rの移動を開始して移動を完了することができる。
プレスブレーキ制御装置10は、速度指令パターンV51Lの速度VY1を式(5)で、速度指令パターンV51Rの速度VY2を式(6)で計算する。
VY1=−VL×Dpb×tanθ1/Dpb=−VL×tanθ1 …(5)
VY2=VL×Dpb×tanθ2/Dpb=VL×tanθ2 …(6)
プレスブレーキ制御装置10は、ストレッチ52の移動開始と同時に、突き当て部材51Lを、速度0から時間Taで速度VY1まで線形に加速し、時間Tbだけ速度VY1を維持し、時間Tcで速度VY1から速度0まで線形に減速するよう、xL方向に移動させる。
また、プレスブレーキ制御装置10は、ストレッチ52の移動開始と同時に、突き当て部材51Rを、速度0から時間Taで速度VY2まで線形に加速し、時間Tbだけ速度VY2を維持し、時間Tcで速度VY2から速度0まで線形に減速するよう、xR方向に移動させる。
以上によって、プレスブレーキ制御装置10は、突き当て部材51L及び51Rを、図12に示すように、それぞれ回避角度θ1及びθ2の方向へと直線的に移動させることができる。突き当て部材51L及び51Rを直線的に移動させれば、短時間で目標とする位置へと退避させることができる。
図14は、演算器11の機能的な内部構成を示している。判定部111は、ワークWの後端部に突き当てられている一対の突き当て部材51L及び51RをyB方向に移動させると、少なくとも一方の突き当て部材が有する接触構造がワークWと干渉するか否かを判定する。判定部111は、ワークの形状を示す情報と、接触構造に関する情報とに基づいて、接触構造がワークWと干渉するか否かを判定することができる。
切り欠き511を接触構造とする場合、接触構造に関する情報は切り欠き511の形状を示すデータである。
回避角度算出部112は、前述のように接触構造と前記ワークWとの干渉を回避する回避角度を算出する。
動作制御部113には、回避角度算出部112で算出された回避角度と、プルバック量Dpbを示す情報とが供給される。動作制御部113は、回避角度とプルバック量Dpbとに基づいて、接触構造がワークWと干渉すると判定された突き当て部材のxL方向またはxR方向への移動量を算出する。動作制御部113は、突き当て部材を回避角度の方向へと、プルバック量DpbとxL方向またはxR方向への移動量だけ移動させるよう、第1及び第2の駆動機構を動作させる。
動作制御部113は、図13で説明したように、第1及び第2の駆動機構を動作させる。
判定部111と回避角度算出部112と動作制御部113は、ソフトウェアモジュールによって構成することができる。判定部111と回避角度算出部112と動作制御部113と同等の機能が集積回路等のハードウェアによって構成されていてもよい。
バックゲージ5が備える突き当て部材は、先端部に切り欠き511が形成されている突き当て部材51L及び51Rに限定されない。バックゲージ5は、図15に示すように、先端部の互いに対向する角部に一対のピン514が取り付けられている突き当て部材51L3及び51R3であってもよい。
また、バックゲージ5は、図16に示すように、先端部の互いに対向する角部に、平面で見たときにL字状の凹部515が形成されている突き当て部材51L4及び51R4であってもよい。
バックゲージ5は、先端部にワークWの角部を挟む2辺に接触する接触構造が形成されている一対の突き当て部材を備え、接触構造を角部に突き当ててワークWを位置決めする構成であればよい。
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。本実施形態においては、上部テーブル1が可動テーブルで下部テーブル2が固定テーブルである場合を例としたが、上部テーブル1が固定テーブルで下部テーブル2が可動テーブルであってもよい。
プレスブレーキは、上部テーブル1と下部テーブル2とを相対的に近付けることによって、パンチ金型3とダイ金型4とでワークWを挟んで曲げ加工する構成であればよい。
プレスブレーキを制御する構成は、ハードウェアで構成されていてもよいし、ソフトウェア(コンピュータプログラム)で構成されていてもよいし、両者が混在して構成されていてもよい。