本発明の実施形態について説明する。なお、粉体(より具体的には、トナー母粒子、外添剤粒子、トナー粒子、キャリアコア、又はキャリア粒子等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から平均的な粒子を相当数選び取って、それら平均的な粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された一次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定した値である。
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ、又は摩擦帯電における負帯電性の強さは、周知の帯電列などで確認できる。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを包括的に「(メタ)アクリロニトリル」と総称する場合がある。
[本実施形態に係る2成分現像剤の構成]
本実施形態に係る2成分現像剤は、静電潜像現像用トナー(以下、トナーと記載することがある)と、摩擦によりトナーを帯電させる静電潜像現像用キャリア(以下、キャリアと記載することがある)とを備える。トナーは、トナー母粒子と、それぞれトナー母粒子の表面に付着した複数の外添剤粒子とを有するトナー粒子を、複数含む。キャリアは、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うキャリアコート層とを有するキャリア粒子を、複数含む。外添剤粒子は、個数平均一次粒子径が50nm以上150nm以下である第1外添剤粒子を、複数含む。第1外添剤粒子、及びキャリアコート層は、各々、第1樹脂を含有する。第1樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂である。これにより、連続印刷を行った場合であってもトナーの現像性に優れた2成分現像剤を提供できる。
一般的に、2成分現像剤を用いて画像形成を行う場合には、2成分現像剤を画像形成装置の現像装置の収容部に供給する。この収容部内では、2成分現像剤が攪拌される、又は、2成分現像剤と補給されたトナーとが攪拌される。この攪拌により、トナーとキャリアとが擦り合わされ、トナーとキャリアとが摩擦帯電を起こす。
本実施形態では、トナー母粒子の表面には複数の第1外添剤粒子が付着しており、キャリアコアの表面はキャリアコート層で覆われている。ここで、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径が50nm以上150nm以下である。そのため、トナーとキャリアとが擦り合わされると、トナー母粒子の表面に付着している第1外添剤粒子とキャリアコート層とが接触し易くなる。
詳しくは、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径が50nm以上であれば、トナーとキャリアとが擦り合わされたときに、トナー母粒子がキャリアコート層に接触することを防止できる。また、外添剤粒子が第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子(例えば後述の第2外添剤粒子)をさらに含む場合であっても、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径が50nm以上であれば、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径の方が、第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子の個数平均一次粒子径よりも大きい傾向となる。そのため、トナーとキャリアとが擦り合わされたときに、第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子がキャリアコート層に接触することを防止できる。これらのことから、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径が50nm以上であれば、トナーとキャリアとが擦り合わされると、第1外添剤粒子とキャリアコート層とが接触し易い。
また、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径が150nm以下であれば、第1外添剤粒子がトナー母粒子の表面に固定され易くなる。そのため、トナーとキャリアとが擦り合わされても、第1外添剤粒子がトナー母粒子の表面から脱離することを防止できる。よって、トナーとキャリアとが擦り合わされると、第1外添剤粒子とキャリアコート層とが接触し易い。
このように、本実施形態では、トナーとキャリアとが擦り合わされると、第1外添剤粒子とキャリアコート層とが接触し易い。ここで、第1外添剤粒子及びキャリアコート層は、各々、第1樹脂を含有する。そのため、トナーとキャリアとの擦り合わせにより、第1外添剤粒子とキャリアコート層とは同一の極性に帯電するため、第1外添剤粒子とキャリアコート層とは電気的に反発し易い。よって、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することを防止できる。
また、第1外添剤粒子及びキャリアコート層の各々が含有する第1樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂である。ここで、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン系樹脂は何れも熱硬化性樹脂であるため、第1外添剤粒子及びキャリアコート層は何れも熱硬化性樹脂を含有する。そして、熱硬化性樹脂は、比較的硬い。これらのことから、第1外添剤粒子及びキャリアコート層の各々の硬度は高い。このことによっても、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することを防止できる。
ここで、第1外添剤粒子はトナー母粒子の表面に付着している。そのため、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することを防止できれば、第1外添剤粒子と共にトナー母粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することを防止できる。つまり、キャリア粒子の表面へのトナー粒子の付着及び埋没を防止できる。キャリア粒子の表面へのトナー粒子の付着を防止できれば、トナーとキャリアとは摩擦帯電するため、トナーの帯電量の低下を防止できる。また、キャリア粒子の表面へのトナー粒子の埋没を防止できれば、トナーが過剰に帯電されることを防止できる。このように、本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーは、良好な帯電安定性を示すため、優れた現像性を示す。例えば、本実施形態に係る2成分現像剤を用いて画像形成を行えば、画像濃度に優れた画像を提供できる。ここで、トナーが良好な帯電安定性を示すとは、トナーが、トナーの帯電量分布がシャープである特性、トナーを用いて画像を形成し始める際にトナーの帯電量を所望の帯電量に維持できる特性、及びトナーを用いて連続して画像を形成した場合にトナーの帯電量を所望の帯電量に維持できる特性を有することを意味する。
以上説明したように、本実施形態では、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径が50nm以上150nm以下であり、第1外添剤粒子及びキャリアコート層の各々が第1樹脂を含有し、且つ、第1樹脂がフェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂であることにより、キャリア粒子の表面へのトナー粒子の付着及び埋没の防止を図っている。ここで、連続印刷を行った場合であっても、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径は変動し難いと考えられ、また、第1外添剤粒子及びキャリアコート層の各々の材料は変化し難いと考えられる。そのため、連続印刷を行った場合であっても、キャリア粒子の表面へのトナー粒子の付着及び埋没を防止できる。よって、連続印刷を行った場合であっても、本実施形態に係る2成分現像剤に含まれるトナーは、良好な帯電安定性を示すため、優れた現像性を示す。
第1樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂であれば、トナー粒子は正に帯電し易い。詳しくは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン系樹脂は、各々、負帯電性を有する。そのため、キャリアコート層が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂を含有すると、キャリア粒子は負に帯電し易い。負に帯電し易いキャリア粒子とトナー粒子とが擦り合わされると、トナー粒子は正に帯電し易い。よって、本実施形態では、正帯電性トナーを提供できる。
なお、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン系樹脂とは別に、メラミン樹脂及び尿素樹脂が挙げられる。ここで、メラミン樹脂及び尿素樹脂は、各々、比較的強い正帯電性を有する。そのため、キャリアコート層がメラミン樹脂又は尿素樹脂を含有すると、キャリア粒子は正に帯電し易い。正に帯電し易いキャリア粒子とトナー粒子とが擦り合わされると、トナー粒子を正に帯電させることは困難となる。よって、正帯電性トナーを提供する場合には、第1樹脂として、メラミン樹脂又は尿素樹脂よりも、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂を使用することが好ましい。
第1外添剤粒子が含有する第1樹脂と、キャリアコート層が含有する第1樹脂とでは、モノマーの化学構造が互いに同一であることが好ましく、モノマーの重合度が互いに同一であることが好ましい。これにより、第1外添剤粒子が含有する第1樹脂と、キャリアコート層が含有する第1樹脂とでは、化学構造式が互いに同一となる。そのため、トナーとキャリアとを擦り合わせたときには、第1外添剤粒子とキャリアコート層との電気的な反発がより一層起こり易くなる。よって、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できるため、第1外添剤粒子と共にトナー母粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。つまり、トナー粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。したがって、連続印刷を行った場合であっても、トナーの帯電安定性がより一層良好となるため、トナーの現像性がより一層良好となる。
第1樹脂が硬化剤に由来する繰返し単位を含む場合には、第1外添剤粒子が含有する第1樹脂とキャリアコート層が含有する第1樹脂とは、同一の化学構造を有する硬化剤に由来する繰返し単位を含むことが好ましい。これにより、第1外添剤粒子が含有する第1樹脂と、キャリアコート層が含有する第1樹脂とでは、化学構造式が互いに同一となる。そのため、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。それだけでなく、第1樹脂が硬化剤に由来する繰返し単位を含むことにより、第1樹脂の硬度がさらに高くなる。そのため、第1外添剤粒子及びキャリアコート層の各々の硬度もさらに高くなる。このことによっても、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。これらのことから、第1外添剤粒子と共にトナー母粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをさらに一層防止できる。つまり、トナー粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをさらに一層防止できる。したがって、連続印刷を行った場合であっても、トナーの帯電安定性がさらに一層良好となるため、トナーの現像性がさらに一層良好となる。
第1樹脂は、熱硬化性樹脂の中でも、シリコーン系樹脂であることが好ましい。これにより、第1外添剤粒子の作製及びキャリアコート層の形成が容易となるため、2成分現像剤の製造が容易となる。
好ましくは、トナー粒子における第1外添剤粒子の含有量は、100質量部のトナー母粒子に対し、0.500質量部以上2.70質量部以下である。トナー粒子における第1外添剤粒子の含有量が100質量部のトナー母粒子に対し0.500質量部以上であれば、第1外添剤粒子はスペーサーとして機能し易くなる。詳しくは、トナーとキャリアとが擦り合わされたときには、キャリア母粒子がキャリアコート層に接触することをより一層防止でき、キャリアコート層への第1外添剤粒子の接触を確保し易くなる。ここで、第1外添剤粒子が含有する樹脂とキャリアコート層が含有する樹脂とは何れも第1樹脂であり、第1樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂である。そのため、上述した効果が得られ易くなる。つまり、連続印刷を行った場合であっても優れたトナーの現像性を示すという効果が得られ易くなる。トナー粒子における第1外添剤粒子の含有量が100質量部のトナー母粒子に対し2.70質量部以下であれば、トナー母粒子の表面には、第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子(例えば、正帯電化処理が施された外添剤粒子)をトナー母粒子の表面に外添させるためのスペースを確保できる。これにより、トナーを正に十分に帯電させることができる。より好ましくは、トナー粒子における第1外添剤粒子の含有量は、100質量部のトナー母粒子に対し、1.00質量部以上1.80質量部以下である。トナー粒子における第1外添剤粒子の含有量は、例えば、蛍光X線分析により求めることができる。
外添剤粒子は、第1外添剤粒子とは別に、正帯電化処理が施されたシリカ粒子(以下、第2外添剤粒子と記載する)を複数含むことが好ましい。これにより、トナーを正に十分に帯電させることができる。また、第2外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径よりも小さいことが好ましい。よって、トナーとキャリアとが擦り合わされたときには、キャリア粒子の表面には、第2外添剤粒子よりも第1外添剤粒子が優先的に接触する。ここで、第1外添剤粒子が含有する樹脂とキャリアコート層が含有する樹脂とは何れも第1樹脂であり、第1樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂である。そのため、外添剤粒子が、第1外添剤粒子とは別に、第2外添剤粒子を複数含む場合であっても、上述した効果、つまり、連続印刷を行った場合であってもトナーの現像性に優れるという効果を得ることができる。
第2外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、好ましくは第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径の0.7倍以下であり、より好ましくは第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径の0.1倍以上0.7倍以下であり、さらに好ましくは第1外添剤粒子の個数平均一次粒子径の0.1倍以上0.3倍以下である。
正帯電化処理が施されたシリカ粒子とは、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基の少なくとも1つにおいて、OHが、OHよりも正帯電性の高い官能基で置換されたものを意味する。OHよりも正帯電性の高い官能基としては例えばアミノ基(−NH2基)が挙げられる。トナー粒子における第2外添剤粒子の含有量は、100質量部のトナー母粒子に対し、1.30質量部以上1.70質量部以下であることが好ましい。
好ましくは、キャリアコート層の厚さは10nm以上である。これにより、キャリアコート層の硬度を第1外添剤粒子の硬度と同程度にまで高め易い。よって、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できるため、第1外添剤粒子と共にトナー母粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。つまり、トナー粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。したがって、連続印刷を行った場合であっても、トナーの帯電安定性がより一層良好となるため、トナーの現像性がより一層良好となる。より好ましくは、キャリアコート層の厚さは10nm以上100nm以下である。キャリアコート層の厚さは、キャリアコアの表面に対して垂直な方向におけるキャリアコート層の寸法を意味し、後述の実施例で記載の方法又はそれに準ずる方法により測定できる。
キャリアコアの表面におけるキャリアコート層の被覆率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは100%である。キャリアコアの表面におけるキャリアコート層の被覆率が高ければ、第1外添剤粒子が、キャリア粒子の表面のうちキャリアコート層から露出する部分(以下、キャリア粒子の露出表面と記載する)に接触することを防止できる。よって、第1外添剤粒子と共にトナー母粒子がキャリア粒子の露出表面に付着及び埋没することを防止できる。つまり、トナー粒子がキャリア粒子の露出表面に付着及び埋没することを防止できる。したがって、連続印刷を行った場合であっても、トナーの帯電安定性がより一層良好となるため、トナーの現像性がより一層良好となる。キャリアコアの表面におけるキャリアコート層の被覆状態は、後述の実施例で記載の方法又はそれに準ずる方法により確認できる。
以下では、図1を用いて、本実施形態に係る2成分現像剤の構成の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る2成分現像剤の構成を示す図である。
本実施形態に係る2成分現像剤100は、トナーと、摩擦によりトナーを帯電させるキャリアとを備える。トナーは、図1に示すトナー粒子10を複数含む。トナー粒子10は、各々、トナー母粒子11と、それぞれトナー母粒子11の表面に付着した複数の外添剤粒子13とを有する。複数の外添剤粒子13は、複数の第1外添剤粒子15と、複数の第2外添剤粒子17とを含む。第1外添剤粒子15の個数平均一次粒子径は、50nm以上150nm以下である。第2外添剤粒子17は、第1外添剤粒子15の個数平均一次粒子径よりも小さな個数平均一次粒子径を有し、正帯電化処理されたシリカ粒子である。
キャリアは、図1に示すキャリア粒子20を複数含む。キャリア粒子20は、各々、キャリアコア21と、キャリアコア21の表面を覆うキャリアコート層25とを有する。
第1外添剤粒子15、及びキャリアコート層25は、各々、第1樹脂から構成されている。第1樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂である。以上、図1を用いて、本実施形態に係る2成分現像剤の構成の一例を説明した。以下、本実施形態に係る2成分現像剤の好ましい製造方法を説明する。
[本実施形態に係る2成分現像剤の好ましい製造方法]
本実施形態に係る2成分現像剤の好ましい製造方法は、トナーの製造工程と、キャリアの製造工程と、混合工程とを含む。トナーの製造工程は、第1外添剤粒子の製造工程を含むことが好ましい。キャリアの製造工程は、キャリアコート層の形成工程を含むことが好ましい。キャリアコート層の形成工程は、第1溶液を含む膜をキャリアコアの表面に設ける工程を含むことが好ましい。第1溶液は、第1外添剤粒子と、第1外添剤粒子を溶解する第1溶媒とを含むことが好ましい。
第1溶液として、第1外添剤粒子と第1外添剤粒子を溶解する第1溶媒とを含む溶液を使用すれば、製造された2成分現像剤では、第1外添剤粒子が含有する第1樹脂と、キャリアコート層が含有する第1樹脂とは、互いに同一の化学構造式を有することとなる。よって、トナーとキャリアとを擦り合わせたときには、第1外添剤粒子とキャリアコート層との電気的な反発がより一層起こり易くなる。したがって、第1外添剤粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できるため、第1外添剤粒子と共にトナー母粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。つまり、トナー粒子がキャリアコート層に付着及び埋没することをより一層防止できる。その結果、連続印刷を行った場合であっても、トナーの帯電安定性がより一層良好となるため、トナーの現像性がより一層良好となる。以下、工程順に、本実施形態に係る2成分現像剤の好ましい製造方法を説明する。
<トナーの準備工程>
トナーの準備工程は、好ましくは、トナー母粒子の製造工程と、外添剤の製造工程と、外添工程とを含む。なお、効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に製造することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
(トナー母粒子の製造工程)
トナー母粒子がトナーコアとシェル層とを有する場合には、トナーコアの製造工程とシェル層の形成工程とを順に行ってトナー母粒子を製造することが好ましい。トナー母粒子がシェル層を有さない場合には、トナーコアの製造工程を行った後にシェル層の形成工程を行うことなくトナー母粒子を製造することが好ましい。
(トナーコアの製造工程)
公知の凝集法又は公知の粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましい。これにより、トナーコアを容易に製造できる。
(シェル層の形成工程)
例えばin−situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法のうちの何れかの方法を用いて、シェル層を形成できる。
(外添剤の準備工程)
外添剤の準備工程は、好ましくは第1外添剤粒子の製造工程を含み、より好ましくは第2外添剤粒子の製造工程をさらに含む。
(第1外添剤粒子の製造工程)
次に示す方法により第1外添剤粒子を製造することが好ましい。まず、モノマー又は反応中間体を重合させて、第1樹脂を合成する。反応中間体としては、例えばプレポリマーが挙げられる。架橋剤の存在下でモノマー又は反応中間体を重合させて、第1樹脂を合成しても良い。次に、合成された第1樹脂を、所望の粒子径を有する粒子に成形する。重合と成形とを同時に行っても良い。こうして、第1外添剤粒子が得られる。効率的に第1外添剤粒子を製造するためには、多数の第1外添剤粒子を同時に製造することが好ましい。同時に製造された第1外添剤粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
第1樹脂の重合条件を制御すれば、第1樹脂の硬度を調整できるため、第1樹脂を含有する第1外添剤粒子及びキャリアコート層の各々の硬度を調整できる。第1樹脂の重合条件としては、例えば、モノマー若しくは反応中間体の重合時間(以下、重合時間と記載する)、又はモノマー若しくは反応中間体の重合温度(以下、重合温度と記載する)が挙げられる。一般的には、モノマー又は反応中間体の材料に応じて、モノマー又は反応中間体の好ましい重合方法が選択される。そして、モノマー又は反応中間体の好ましい重合方法に応じて、好ましい重合時間と好ましい重合温度とが決定される。このように、好ましい重合時間と好ましい重合温度とは、各々、モノマー又は反応中間体の材料に依存する。そのため、一概には言えないが、重合時間の好ましい一例としては、30分以上48時間以下が挙げられ、重合時間のより好ましい一例としては、1時間以上24時間以下が挙げられる。また、一概には言えないが、重合温度の好ましい一例としては、60℃以上110℃以下が挙げられ、重合温度のより好ましい一例としては、65℃以上105℃以下が挙げられる。
(第2外添剤粒子の製造工程)
次に示す方法により第2外添剤粒子を製造することが好ましい。まず、公知のゾルゲル法によりシリカ粒子を製造する。製造されたシリカ粒子に対し、疎水化処理と正帯電化処理とを施す。疎水化処理では、公知の疎水化剤を用いてシリカ粒子の表面を処理することが好ましい。正帯電化処理では、公知の正帯電性付与剤を用いてシリカ粒子の表面を処理することが好ましい。効率的に第2外添剤粒子を製造するためには、多数の第2外添剤粒子を同時に製造することが好ましい。同時に製造された第2外添剤粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
(外添工程)
混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が物理的に結合される。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが得られる。
<キャリアの準備工程>
キャリアの準備工程は、好ましくは、キャリアコアの製造工程と、キャリアコート層の形成工程とを含む。なお、効果的にキャリアを製造するためには、多数のキャリア粒子を同時に製造することが好ましい。同時に製造されたキャリア粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
(キャリアコアの製造工程)
キャリアコアの製造方法として公知の方法によりキャリアコアを製造することが好ましい。
(キャリアコート層の形成工程)
キャリアコアの表面にキャリアコート層を形成する方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法、ビードコート法、ブレードコート法、又はバーコート法が挙げられる。この中でも、スプレーコート法によりキャリアコアの表面にキャリアコート層を形成すれば、厚さが10nm以上のキャリアコート層を比較的容易に形成できる。
詳しくは、まず、第1溶液を調製する。調製された第1溶液は、第1樹脂、重合反応により第1樹脂を生成可能なモノマー、及び重合反応により第1樹脂を生成可能な反応中間体のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。より好ましくは、第1溶液は、第1外添剤粒子と、第1外添剤粒子を溶解する第1溶媒とを含む。第1溶媒としては、例えばメチルエチルケトンが挙げられる。
次に、調製された第1溶液をキャリアコアの表面に供給する。これにより、キャリアコアの表面には、第1溶液を含む第1膜が設けられる。
続いて、第1膜が表面に設けられたキャリアコアに熱を加える。これにより、第1膜に含まれる液体成分が気化する。また、第1膜がモノマー又は反応中間体を含む場合には、モノマー又は反応中間体が重合する。その結果、キャリアコアの表面には、第1樹脂を含有するキャリアコート層が形成される。このようにして、キャリア粒子を多数含むキャリアが得られる。
<混合工程>
トナーとキャリアとを混合して攪拌する。このとき、トナー粒子は、100質量部のキャリア粒子に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下添加され、より好ましくは3質量部以上15質量部以下添加される。また、混合機(例えば、ボールミル、ナウターミキサー又はロッキングミキサー等)を用いて、トナー粒子とキャリア粒子との混合及び攪拌を行うことができる。このようにして、本実施形態に係る2成分現像剤が得られる。
[トナー母粒子、外添剤及びキャリア粒子の各材料の例示]
以下では、まず、第1外添剤粒子及びキャリアコート層が含有する第1樹脂を具体的に説明する。次に、トナー母粒子、第2外添剤粒子、及びキャリアコアの各材料を説明する。
<第1樹脂>
第1樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂である。
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドとを反応させて得られ、三次元的な網目構造を有する。フェノール樹脂は、例えば、各種ノボラック型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、又は脂環型フェノール樹脂であることが好ましい。フェノール樹脂としては、これらを、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有するエポキシ化合物(好ましくは脂環式エポキシ化合物)とその硬化剤とを反応させて三次元的に架橋させることで、合成される。そのため、エポキシ樹脂は、フェノール樹脂と同様、三次元的な網目構造を有する。
エポキシ樹脂は、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、各種ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、又はビフェニル型エポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂としては、これらを、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
(シリコーン系樹脂)
シリコーン系樹脂は、主鎖としてシロキサン結合「Si−O−Si」を有し、側鎖として有機基を有し、三次元的な網目構造を有する。メチルシリコーン樹脂は、側鎖の有機基としてメチル基のみを有する。メチルフェニルシリコーン樹脂は、側鎖の有機基としてメチル基及びフェニル基を有する。シリコーン系樹脂は、例えば、下記式(1−1)又は下記式(1−2)で示される構造を有する。式(1−1)及び式(1−2)中のn11、n21、及びn22は、各々独立して、繰返し単位の繰返し数(任意の数)を示す。シリコーン系樹脂が優れた耐久性を有するためには、シリコーン系樹脂の主鎖(シロキサン結合:Si−O−Si)同士が3次元的につながっていることが好ましい。
式(1−1)中、R11は、有機基(より具体的には、メチル基又はフェニル基)を表す。R12は、水素原子、又は有機基(より具体的には、メチル基又はフェニル基)を表す。R11及びR12は、互いに同一であっても異なっていてもよい。Y11は第1末端部を表し、Y12は第2末端部を表す。第1末端部には、例えばオルガノシロキシ基(より具体的には、トリメチルシロキシ基)が付く。第2末端部には、例えばオルガノシリル基(より具体的には、トリメチルシリル基)が付く。
式(1−2)中、R21、R22、及びR23は、各々独立して、有機基(より具体的には、メチル基又はフェニル基)を表す。R24は、水素原子、又は有機基(より具体的には、メチル基又はフェニル基)を表す。Y21は第1末端部を表し、Y22は第2末端部を表す。第1末端部には、例えばオルガノシロキシ基(より具体的には、トリメチルシロキシ基)が付く。第2末端部には、例えばオルガノシリル基(より具体的には、トリメチルシリル基)が付く。
<トナー母粒子>
トナー母粒子がカプセルトナーである場合には、トナー母粒子は下記トナーコアと下記シェル層とを備える。トナー母粒子が非カプセルトナーである場合には、トナー母粒子は下記トナーコアに相当する。
(トナーコア)
トナーコアは、結着樹脂を含有する。トナーコアは、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤のうちの少なくとも1つをさらに含有しても良い。
(トナーコア:結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。
また、結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(具体的には、水酸基価、酸価、ガラス転移点、又は軟化点)を調整できる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなる。また、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の酸価及び水酸基価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
トナーコアは、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂を使用できる。アクリル酸系樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体を使用できる。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を使用できる。ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂を使用できる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として使用できる。例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂も、トナーコアを構成する熱可塑性樹脂として使用できる。以下では、結着樹脂の一例であるポリエステル樹脂について詳述する。
ポリエステル樹脂は、1種以上のアルコールと1種以上のカルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示す2価アルコール又は3価以上のアルコールを使用できる。2価アルコールとしては、例えば、ジオール類又はビスフェノール類を使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示す2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を使用できる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
(トナーコア:着色剤)
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1.00質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを使用できる。
(トナーコア:離型剤)
離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1.00質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(トナーコア:電荷制御剤)
電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(シェル層)
シェル層は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。シェル層が含有する熱可塑性樹脂としては、例えば、上記(トナーコア:結着樹脂)に記載の熱可塑性樹脂を使用できる。好ましくは、シェル層が、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体を含有する。これにより、トナーの帯電安定性をより一層向上させることができる。スチレン系モノマーとしては、例えばスチレンを使用できる。アクリル酸系モノマーとしては、例えばアクリル酸エステルを使用できる。
シェル層は、熱硬化性樹脂をさらに含有しても良い。シェル層が含有する熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、又はキシレン系樹脂が挙げられる。アミノアルデヒド樹脂は、アミノ基を有する化合物とアルデヒドとの縮重合によって生成する樹脂である。ここで、アルデヒドとしては例えばホルムアルデヒドを使用できる。アミノアルデヒド樹脂の例としては、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、スルホンアミド系樹脂、グリオキザール系樹脂、グアナミン系樹脂、又はアニリン系樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂としては、例えば、マレイミド重合体又はビスマレイミド重合体を使用できる。
<第2外添剤粒子>
第2外添剤粒子は、正帯電化処理が施されたシリカ粒子であることが好ましく、疎水化処理と正帯電化処理とが施されたシリカ粒子であることがより好ましい。第2外添剤粒子は、例えば、親水性シリカ粒子、又は親水性フュームドシリカ粒子であることが好ましい。
外添剤は、第1外添剤粒子及び第2外添剤粒子とは異なる外添剤粒子(以下、第3外添剤粒子と記載する)をさらに含んでいても良い。第3外添剤粒子は、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムを含有する粒子であることが好ましい。
<キャリアコア>
キャリア粒子が含むキャリアコアは、磁性粒子からなることが好ましい。キャリアコアを構成する磁性粒子、及び樹脂キャリアが有する磁性粒子としては、例えば、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、又はコバルトからなる粒子;これらの材料とマンガン、亜鉛又はアルミニウムとの合金からなる粒子;鉄とニッケル又はコバルトとの合金からなる粒子;セラミックスからなる粒子;又は高誘電率物質からなる粒子が挙げられる。セラミックスからなる粒子が含有するセラミックスとしては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウムが挙げられる。高誘電率物質からなる粒子が含有する高誘電率物質としては、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩が挙げられる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係る2成分現像剤D−1〜D−16を示す。表2に、実施例又は比較例で使用された樹脂からなる外添剤粒子(以下、樹脂微粒子と記載する)の構成を示す。表2において、粒子径は、個数平均一次粒子径を意味する。表3に、実施例又は比較例で使用されたキャリアコート層の構成を示す。
以下では、まず、樹脂微粒子A〜Iの製造方法、樹脂微粒子A〜Iの個数平均一次粒子径の測定方法、トナーT−1〜T−9の製造方法、キャリアC−1〜C−7の製造方法、キャリアコート層の厚さの測定方法、及びキャリアコート層の被覆状態の確認方法を順に説明する。次に、2成分現像剤D−1〜D−16の製造方法、評価方法、及び評価結果を順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。
[樹脂微粒子の製造方法]
(樹脂微粒子A〜Eの製造方法)
攪拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた三口フラスコに、1000質量部の純水と、100.0質量部のレゾルシノールと、0.1500質量部の炭酸ナトリウムとを入れた。三口フラスコの内容物を攪拌して、レゾルシノールと炭酸ナトリウムとを純水に完全に溶解させた。三口フラスコに147.0質量部のホルムアルデヒド水溶液(濃度:37質量%)をさらに加え、三口フラスコの内容物を攪拌した。その後、三口フラスコを、マルチモード型マイクロ波照射装置を備えたシールドケースに入れた。ここで、シールドケースはアースされていた。シールドケース内の温度を100℃に保ち、且つ還流条件下で、周波数2450MHzのマイクロ波(出力:600W)を、マルチモード型マイクロ波照射装置から三口フラスコへ30分間照射した。これにより、三口フラスコの内容物が反応した。その後、遠心分離機を用いて、三口フラスコの内容物を液体と固体とに分離した。得られた固体を乾燥した後、解砕した。このようにして、フェノール樹脂からなる微粒子を複数含む粉体が得られた。
分級機(コアンダ効果を利用した風力分級機:日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて、得られた粉体を分級した。このとき、風量と分級機における分級エッジのエッジ角度とのうちの少なくとも1つを変更して、得られた粉体を、粒子径が互いに異なる5つのグループに分けた。その後、グループに分けられた5種類の粉体の各々を篩にかけ、5種類の粉体の各々から凝集物を取り除いた。このようにして、樹脂微粒子A〜Eの各々を複数含む5種類の粉体が得られた。
(樹脂微粒子Fの製造方法)
攪拌棒及び温度計を備えた反応容器に、190質量部のビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学株式会社製「jER(登録商標)828」)と、10.0質量部の有機化処理クレイ(ズードケミー触媒株式会社製「ナノフィル948」、内容:無機クレイがジステアリルジメチルアンモニウムクロライドでインターカレーションされたもの)とを入れた。反応容器内の温度を75℃に上昇させた。反応容器内の温度を75℃に保った状態で、24時間にわたって反応容器の内容物を攪拌した。これにより、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと有機化処理クレイとが均一に混合され、エポキシ樹脂が得られた。
反応容器内の温度を室温まで下げた。反応容器に、27.0質量部のスチレン化クミルフェノールのポリエチレンオキサイド付加物(三洋化成工業株式会社製「イオネットLD−7BE−2」)と、61.0質量部の脂肪族系ジアミン(BASF社製「ラロミンC−260」)とを加え、これらを均一に溶解させた。このようにして得られた液体を油相とした。その後、反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器(油相)に水を滴下した。反応容器への水の滴下量が45.0質量部に達した時点で、反応容器の内容物の色が乳白色に変化した(乳化)。その後、656質量部の水をさらに滴下して、第1懸濁液を得た。第1懸濁液を加熱して反応容器内の温度を75℃に上昇させ、5時間にわたって反応容器内の温度を75℃に保った。その後、反応容器内の温度を95℃に上昇させ、24時間にわたって反応容器内の温度を95℃に保った。反応容器内の温度を95℃に保っている間に、反応容器の内容物が反応すると共に、得られた生成物が熟成した。このようにして、第2懸濁液が得られた。第2懸濁液では、エポキシ樹脂からなる微粒子が水に分散していた。ろ過により、第2懸濁液から樹脂微粒子(エポキシ樹脂からなる微粒子)を取り出した。取り出された樹脂微粒子を循風乾燥機(風温:40℃)で乾燥した。その後、風力分級機を用いて樹脂微粒子の粒度を均一とした後、2400メッシュ(目開き5μm)の篩を用いて樹脂微粒子を篩別した。このようにして、樹脂微粒子Fを複数含む粉体が得られた。
(樹脂微粒子Gの製造方法)
温度計、還流器及び攪拌器を備えた反応容器に、108質量部のイオン交換水(電気伝導度:0.05mS/m)と塩酸とを入れた。このようにして、塩酸の濃度が5×10-5Nである溶液を得た。この溶液の温度を20℃に保ちながら、反応容器に、0.610質量部のテトラメトキシシランと、3.40質量部のメチルトリメトキシシランと、3.00質量部のジメチルジメトキシシランとを滴下した。滴下したアルコキシシランのモル比は、テトラメトキシシラン:メチルトリメトキシシラン:ジメチルジメトキシシラン=0.16:1:1であった。4時間にわたって、反応容器の内容物を攪拌した(回転速度:50rpm)。反応容器の内容物を攪拌している間に、反応容器内では加水分解反応が起こった。このようにして、シラノール溶液が得られた。
得られたシラノール溶液の温度を5℃に保ちながら、シラノール溶液を攪拌した(回転速度:50rpm)。その後、アンモニアの添加量が0.272質量部となるように、アンモニア水溶液(濃度:1質量%)をシラノール溶液に滴下した。その後、4時間にわたって、シラノール溶液を攪拌した。このようにして、シリコーン系樹脂からなる微粒子が得られた。得られた微粒子(シリコーン系樹脂からなる微粒子)を乾燥した。その後、風力分級機を用いて微粒子の粒度を均一とした後、2400メッシュ(目開き5μm)の篩を用いて微粒子を篩別した。このようにして、樹脂微粒子Gを複数含む粉体が得られた。
(樹脂微粒子Hの製造方法)
攪拌機、還流コンデンサー、及び温度計を備えた反応フラスコに、280質量部の水溶性メチロールメラミン(日本カーバイド工業株式会社製「ニカレヂン(登録商標)S−260」)と、740質量部の水と、1.40質量部のアンモニア水(濃度:25質量%)とを入れた。このとき、反応フラスコの内容物のpHは8であった。反応フラスコの内容物を攪拌しながら反応フラスコ内の温度を70℃に上昇させ、30分間にわたって反応フラスコ内の温度を70℃に保った。このようにして、メラミン樹脂の水溶液が得られた。
メラミン樹脂の水溶液の温度を70℃に保ったまま、水溶液に、17.0質量部のPTSA(p−トルエンスルホン酸)水溶液(酸触媒、濃度:18質量%)と1.80質量部のDBSA(ドデシルベンゼンスルホン酸)水溶液(酸触媒、濃度:10質量%)とを加えた。加えられたPTSA及びDBSAについては、PTSA:DBSA=97:3(モル比)であり、PTSA:DBSA=97:3(プロトン供与数比)であった。得られた水溶液のpHを5に調整した。その後、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製「FOC−25」)を用いて水溶液を微粒子化し、メラミン樹脂からなる微粒子を得た。得られた樹脂微粒子(メラミン樹脂からなる微粒子)に100℃の熱風を5時間にわたって当て、樹脂微粒子を乾燥した。その後、風力分級機を用いて樹脂微粒子の粒度を均一とした後、2400メッシュ(目開き5μm)の篩を用いて樹脂微粒子を篩別した。このようにして、樹脂微粒子Hを複数含む粉体が得られた。
(樹脂微粒子Iの製造方法)
攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、及び還流冷却器を備えたセパラブルフラスコ(容量:2L)に、820質量部のイオン交換水を入れた。セパラブルフラスコに窒素を導入しながら、且つセパラブルフラスコの内容物を攪拌しながら、セパラブルフラスコ内の温度を80℃に上昇させた。30分間にわたってセパラブルフラスコ内の温度を80℃に保った後、セパラブルフラスコに0.700質量部の過硫酸アンモニウム(重合開始剤)を加えた。
次に、セパラブルフラスコに、55.0質量部のイオン交換水と108質量部の第1乳化分散液とを一括で加えた。第1乳化分散液としては、36.0質量部のテトラメチロールプロパントリアクリレート(水に対する溶解度(25℃)が1質量%以下である)と20.0質量部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液(濃度:15質量%)とをホモジナイザー(IKA社製「ウルトラタラックスT50」)により乳化して得られた乳化分散液を使用した。その後、3時間にわたって、セパラブルフラスコ内の温度を70℃に保った。セパラブルフラスコ内の温度を70℃に保っている間に、セパラブルフラスコの内容物が重合した。
続いて、滴下ロートを用いて、126質量部のイオン交換水と240質量部の第2乳化分散液とをセパラブルフラスコに滴下した。第2乳化分散液としては、69.0質量部のトリメチロールプロパントリアクリレート(水に対する溶解度(25℃)が1質量%以下である)と30.0質量部のエチレングリコールジメタクリレートと15.0質量部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液(濃度:8質量%)とをホモジナイザー(IKA社製「ウルトラタラックスT50」)により乳化して得られた乳化分散液を使用した。滴下速度は1g/分であり、約4時間後に滴下を終了した。その後、2時間にわたって、セパラブルフラスコ内の温度を70℃に保った。セパラブルフラスコ内の温度を70℃に保っている間にセパラブルフラスコの内容物が重合して、アクリル酸系樹脂からなる微粒子のエマルションが得られた。凍結乾燥機を用いて、得られた樹脂微粒子(アクリル酸系樹脂からなる微粒子)のエマルションを凍結乾燥させた。その後、風力分級機を用いて樹脂微粒子の粒度を均一とした後、2400メッシュ(目開き5μm)の篩を用いて樹脂微粒子を篩別した。このようにして、樹脂微粒子Iを複数含む粉体が得られた。
[樹脂微粒子の個数平均一次粒子径の測定方法]
樹脂微粒子の個数平均一次粒子径は、次に示す方法に従って、求められた。まず、走査型電子顕微鏡を用いて、樹脂微粒子のSEM写真を撮影した。得られたSEM写真から、50個の樹脂微粒子の画像を無作為に抽出した。抽出された樹脂微粒子の画像を用いて、各々、長軸方向における樹脂微粒子の長さを求めた。求められた長さの合計を樹脂微粒子の個数(詳しくは50個)で除した。得られた値を樹脂微粒子の個数平均一次粒子径とした。結果を表2に示す。
[トナーの製造方法]
(トナーT−1の製造方法)
まず、トナー母粒子を作製した。詳しくは、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10」)を用いて、48.0質量部の第1ポリエステル樹脂(質量平均分子量:300000、ガラス転移点:65℃)と、39.0質量部の第2ポリエステル樹脂(質量平均分子量:75000、ガラス転移点:61℃)と、8.00質量部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)と、2.00質量部の電荷制御剤(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)N−71」)と、3.00質量部の離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−5」、成分:ペンタエリスリトールベヘン酸エステルワックス、溶融温度:84℃)とを混合した。
得られた混合物を、2軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−26SS」)を用いて溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。冷却された混練物を、粉砕機(旧東亜器械製作所製「ロートプレックス16/8型」)を用いて、設定粒子径2mmで粗粉砕した。得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS型」)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)7.0μmのトナー母粒子が得られた。
得られたトナー母粒子に対し外添剤を外添させた。詳しくは、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10」)を用いて、回転速度3500rpmの条件で、100質量部のトナー母粒子と、1.50質量部の正帯電性シリカ粒子(表面処理により正帯電性が付与された乾式シリカ粒子、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA200」、個数平均一次粒子径:13nm)と、1.00質量部の酸化チタン粒子(テイカ株式会社製「MT−500B」、内容:未処理の酸化チタン微粒子、個数平均一次粒子径:35nm)と、1.00質量部の樹脂微粒子Aとを、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面には、正帯電性シリカ粒子と酸化チタン粒子と樹脂微粒子Aとが付着した。その後、300メッシュ(目開き48μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナーT−1が得られた。
(トナーT−2〜T−9の製造方法)
樹脂微粒子として表2に示す樹脂微粒子B〜Iを使用したことを除いてはトナーT−1の製造方法に従って、各々、トナーT−2〜T−9を得た。
[キャリアの製造方法]
(キャリアC−1の製造方法)
キャリアコアとして、Mn−Mg−Srフェライトコア(パウダーテック株式会社製「EF−35」、粒子径35μm)を準備した。
次に、キャリアコアの表面にキャリアコート層aを形成した。詳しくは、フェノール樹脂をメチルエチルケトンに溶解して、塗布液を得た。フェノール樹脂としては、樹脂微粒子Aを複数含む粉体を使用した。得られた塗布液をキャリアコアに噴霧した。これにより、キャリアコアの表面には、塗布液を含む塗膜が設けられた。塗膜が表面に設けられたキャリアコアを200℃で1時間加熱した。200メッシュ(目開き73μm)の篩を用いて、得られた粉体から凝集物を取り除いた。その結果、多数のキャリア粒子を含むキャリアC−1が得られた。
(キャリアC−2〜C−5の製造方法)
フェノール樹脂の代わりに表3に記載の樹脂を用いたことを除いてはキャリアC−1の製造方法に従って、各々、キャリアC−2〜C−5を得た。なお、エポキシ樹脂としては、樹脂微粒子Fを複数含む粉体を使用した。シリコーン系樹脂としては、樹脂微粒子Gを複数含む粉体を使用した。メラミン樹脂としては、樹脂微粒子Hを複数含む粉体を使用した。アクリル酸系樹脂としては、樹脂微粒子Iを複数含む粉体を使用した。
(キャリアC−6の製造方法)
ポリエステル樹脂(日本合成化学工業株式会社「ポリエステル樹脂TP−220」)をメチルエチルケトンに溶解して、塗布液を得た。得られた塗布液を、キャリアC−1の製造時に準備したキャリアコアに噴霧した。これにより、キャリアコアの表面には、塗布液を含む塗膜が設けられた。塗膜が表面に設けられたキャリアコアを40℃で真空乾燥した。200メッシュ(目開き73μm)の篩を用いて、得られた粉体から凝集物を取り除いた。その結果、多数のキャリア粒子を含むキャリアC−6が得られた。
(キャリアC−7の製造方法)
キャリアコート層を形成することなくキャリアC−7を製造した。つまり、キャリアC−7は、Mn−Mg−Srフェライトコア(キャリアC−1の製造時に準備したキャリアコア)を多数含んでいた。
[キャリアコート層の厚さの測定方法]
キャリアコート層の厚さは、次に示す方法に従って、求められた。まず、走査型電子顕微鏡を用いて、キャリアコート層を形成する前のキャリアコアのSEM写真を撮影した。得られたSEM写真から、50個のキャリアコアの画像を無作為に抽出した。抽出されたキャリアコアの画像を用いて、各々、長軸方向におけるキャリアコアの長さを求めた。求められた長さの合計をキャリアコアの個数(詳しくは50個)で除した。得られた値をキャリアコアの個数平均一次粒子径とした。
次に、走査型電子顕微鏡を用いて、キャリア粒子(キャリアコアの表面にキャリアコート層が形成されたもの)のSEM写真を撮影した。得られたSEM写真から、50個のキャリア粒子の画像を無作為に抽出した。抽出されたキャリア粒子の画像を用いて、各々、長軸方向におけるキャリア粒子の長さを求めた。求められた長さの合計をキャリア粒子の個数(詳しくは50個)で除した。得られた値をキャリア粒子の個数平均一次粒子径とした。そして、下記式を用いて、キャリアコート層の厚さを求めた。
(キャリアコート層の厚さ)=[(キャリア粒子の個数平均一次粒子径)−(キャリアコアの個数平均一次粒子径)]/2
[キャリアコート層の被覆状態の確認]
次に示す方法に従って、キャリアコアの表面におけるキャリアコート層の被覆状態を確認した。まず、走査型電子顕微鏡を用いて、キャリア粒子(キャリアコアの表面にキャリアコート層が形成されたもの)のSEM写真を撮影した。得られたSEM写真を用いて、キャリアコアの表面におけるキャリアコート層の被覆状態を視認により確認した。そして、キャリアC−1〜C−6の各々に含まれるキャリア粒子では、キャリアコアの表面全体にキャリアコート層が形成されていることを確認した。つまり、キャリアC−1〜C−6の各々に含まれるキャリア粒子では、キャリアコアの表面におけるキャリアコート層の被覆率が100%であることを確認した。
[2成分現像剤の製造方法]
(2成分現像剤D−1の製造方法)
ロッキングミキサー(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」、混合方式:容器回転揺動方式)を用いて、10.0質量部のトナーT−1と100質量部のキャリアC−1とを30分間混合した。このようにして、2成分現像剤D−1が得られた。
(2成分現像剤D−2〜D−16の製造方法)
表1に示すトナー及びキャリアを用いたことを除いては2成分現像剤D−1の製造方法に従って、2成分現像剤D−2〜D−16を製造した。
[評価方法]
2成分現像剤D−1〜D−16は、次に示す方法に従って、評価された。対象装置としては、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)を使用した。対象試料としては、2成分現像剤D−1〜D−16の各々を使用した。
(トナーの帯電量の測定)
まず、対象装置の現像装置の収容部に対象試料を入れた後、トナーの帯電量(初期)を測定した。次に、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、印字率5%のサンプル画像を10万枚連続印刷した。その後、トナーの帯電量(耐刷後)を測定した。
以下に示す方法に従って、トナーの帯電量(初期)とトナーの帯電量(耐刷後)とを測定した。詳しくは、0.10±0.01gの対象試料を、対象装置の現像装置の収容部から取り出して、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)の測定セルに入れた。測定セルに入れられた対象試料のうちのトナーのみを、篩(質量既知)を介して10秒間吸引した。吸引されたトナーの総電気量を、上記Q/mメーターを用いて測定した。また、電子天秤を用いて、吸引前の篩の質量と吸引後の篩の質量とを測定した。吸引後の篩の質量から吸引前の篩の質量を差し引くことにより、吸引されたトナーの質量を算出した。そして、下記式を用いて、トナーの帯電量(μC/g)を算出した。
[トナーの帯電量(μC/g)]=[吸引されたトナーの総電気量(μC)]/[吸引されたトナーの質量(g)]
トナーの帯電量(初期)及びトナーの帯電量(耐刷後)の各々が12μC/g以上であれば、良いと評価した。トナーの帯電量(初期)及びトナーの帯電量(耐刷後)の各々が12μC/g未満であれば、悪いと評価した。結果を表4に示す。
(画像濃度の測定)
まず、対象装置の現像装置の収容部に対象試料を入れた。その後、ベタ画像部を含むサンプル画像を印刷用紙に印刷した。反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、印刷後の印刷用紙のベタ画像部の反射濃度(ID:画像濃度)を測定した。このようにして、画像濃度(初期)を測定した。
次に、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、印字率5%のサンプル画像を10万枚連続印刷した。その後、ベタ画像部を含むサンプル画像を印刷用紙に印刷した。反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye」)を用いて、印刷後の印刷用紙のベタ画像部の反射濃度(ID:画像濃度)を測定した。このようにして、画像濃度(耐刷後)を測定した。
画像濃度(初期)及び画像濃度(耐刷後)の各々が1.2以上であれば、良いと評価した。画像濃度(初期)及び画像濃度(耐刷後)の各々が1.1以上1.2未満であれば、普通と評価した。画像濃度(初期)及び画像濃度(耐刷後)の各々が1.1未満であれば、悪いと評価した。結果を表4に示す。
(キャリア粒子の表面への樹脂微粒子の付着の有無)
まず、対象装置の現像装置の収容部に対象試料を入れた後、キャリア粒子の表面に樹脂微粒子が付着しているか否かを確認した。次に、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、印字率5%のサンプル画像を10万枚連続印刷した。その後、キャリア粒子の表面に樹脂微粒子が付着しているか否かを確認した。
以下に示す方法に従って、キャリア粒子の表面に樹脂微粒子が付着しているか否かを確認した。詳しくは、対象装置の現像装置の収容部から対象試料を取り出し、取り出された対象試料からキャリア粒子を取り出した。取り出されたキャリア粒子を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、キャリア粒子の表面に樹脂微粒子が付着しているか否かを目視により確認した。
キャリア粒子の表面において樹脂微粒子の付着が全く確認されなければ、良い(○)と評価した。キャリア粒子の表面において少量の樹脂微粒子の付着が確認されれば、普通(△)と評価した。キャリア粒子の表面において多量の樹脂微粒子の付着が確認されれば、悪い(×)と評価した。結果を表4に示す。
[評価結果]
2成分現像剤D−1〜D−16の各々の評価結果を表4に示す。表4には、トナーの帯電量(初期、耐刷後)、画像濃度(初期、耐刷後)、及びキャリア粒子の表面への樹脂微粒子の付着の有無(初期、耐刷後)の各々の評価結果を示している。なお、表4において、数値は測定結果を表している。また、現像剤は、2成分現像剤を意味する。付着には、キャリア粒子の表面への樹脂微粒子の付着の有無の評価結果を記している。
2成分現像剤D−1〜D−5(実施例1〜5に係る2成分現像剤)は、各々、トナーと、摩擦によりトナーを帯電させるキャリアとを備えていた。トナーは、トナー母粒子と、それぞれトナー母粒子の表面に付着した複数の外添剤粒子とを有するトナー粒子を、複数含んでいた。キャリアは、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うキャリアコート層とを有するキャリア粒子を、複数含んでいた。外添剤粒子は、個数平均一次粒子径が50nm以上150nm以下である第1外添剤粒子を、複数含んでいた。第1外添剤粒子、及びキャリアコート層は、各々、第1樹脂を含有していた。第1樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン系樹脂であった。
表4に示されるように、2成分現像剤D−1〜D−5は、各々、耐刷後においても、トナーの帯電量及び画像濃度に優れていた。また、2成分現像剤D−1〜D−5では、耐刷後においても、キャリア粒子の表面における樹脂微粒子の付着は全く確認されなかった。
一方、2成分現像剤D−6(比較例1に係る2成分現像剤)では、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下した。また、耐刷後には、キャリア粒子の表面には少量の樹脂微粒子の付着が確認された。このような結果が得られた理由として、樹脂微粒子の個数平均一次粒子径が50nm未満であったことが考えられる。詳しくは、樹脂微粒子の個数平均一次粒子径が50nm未満であれば、印刷枚数が増加するにつれて樹脂微粒子がトナー母粒子に埋没し易くなる。そのため、樹脂微粒子がスペーサーとして機能し難くなり、酸化チタン粒子又は正帯電性シリカ粒子(以下、樹脂微粒子とは異なる外添剤粒子と記載する)がキャリアコート層の表面に接触し易くなる。これにより、樹脂微粒子とは異なる外添剤粒子がキャリアコート層の表面に付着又は埋没し易くなるため、樹脂微粒子とは異なる外添剤粒子と共にトナー母粒子がキャリア粒子の表面に付着又は埋没し易くなる。よって、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下し、キャリア粒子の表面には少量の樹脂微粒子の付着が確認された。
2成分現像剤D−7(比較例2に係る2成分現像剤)では、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下した。また、初期においても、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。このような結果が得られた理由として、樹脂微粒子の個数平均一次粒子径が150nm超であったことが考えられる。詳しくは、樹脂微粒子の個数平均一次粒子径が150nm超であれば、樹脂微粒子は初期においてもトナー母粒子の表面から脱離し易い。そのため、初期においても、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。
また、樹脂微粒子の個数平均一次粒子径が150nm超であれば、印刷枚数が増加するにつれて、トナー母粒子の表面からの樹脂微粒子の脱離がより一層起こり易くなる。そのため、樹脂微粒子がスペーサーとして機能し難くなる。よって、2成分現像剤D−6と同様の理由から、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下した。
2成分現像剤D−8(比較例3に係る2成分現像剤)では、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が著しく低下した。また、初期においても、キャリア粒子の表面には少量の樹脂微粒子の付着が確認され、耐刷後には、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。このような結果が得られた理由として、樹脂微粒子を構成する樹脂がメラミン樹脂であったのに対し、キャリアコート層を構成する樹脂がフェノール樹脂であったことが考えられる。詳しくは、メラミン樹脂及びフェノール樹脂は共に熱硬化性樹脂である。しかし、メラミン樹脂は正帯電性を有する一方、フェノール樹脂は負帯電性を有する。そのため、樹脂微粒子とキャリアコート層とは互いに異なる極性に帯電するため、樹脂微粒子とキャリアコート層とが電気的に引き合い、よって、樹脂微粒子がキャリアコート層に付着又は埋没し易くなる。したがって、樹脂微粒子と共にトナー母粒子がキャリアコート層に付着又は埋没し易くなるため、トナー粒子がキャリアコート層に付着又は埋没し易くなる。その結果、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が著しく低下し、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。
2成分現像剤D−9(比較例4に係る2成分現像剤)では、初期においても、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が著しく低下した。また、初期においても、キャリア粒子の表面には少量の樹脂微粒子の付着が確認され、耐刷後には、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。このような結果が得られた理由として、樹脂微粒子を構成する樹脂がフェノール樹脂であったのに対し、キャリアコート層を構成する樹脂がメラミン樹脂であったことが考えられる。詳しくは、2成分現像剤D−8と同様の理由から、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が著しく低下し、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。また、キャリアコート層は正帯電性を有する樹脂(詳しくはメラミン樹脂)で構成されているため、トナーは正に帯電し難い。そのため、初期においても、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が著しく低下した。
2成分現像剤D−10(比較例5に係る2成分現像剤)では、初期においても、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下した。このような結果が得られた理由として、樹脂微粒子を構成する樹脂、及びキャリアコート層を構成する樹脂が、各々、メラミン樹脂であったことが考えられる。詳しくは、キャリアコート層は正帯電性を有する樹脂(詳しくはメラミン樹脂)で構成されているため、トナーは正に帯電し難い。そのため、初期においても、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下した。
2成分現像剤D−11〜D−14(比較例6〜9に係る2成分現像剤)では、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下した。また、耐刷後には、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。このような結果が得られた理由として、樹脂微粒子を構成する樹脂、及びキャリアコート層を構成する樹脂のうちの少なくとも1つが熱可塑性樹脂(詳しくはアクリル酸系樹脂又はポリエステル樹脂)であったことが考えられる。一般に、熱可塑性樹脂の硬度は、熱硬化性樹脂の硬度よりも低い。そのため、樹脂微粒子及びキャリアコート層において、一方の硬度は他方の硬度よりも低くなる、又は、両方の硬度が比較的低くなる。これにより、キャリアコート層への樹脂微粒子の付着及び埋没を防止できず、耐刷後には、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が低下し、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。
2成分現像剤D−15〜D−16(比較例10〜11に係る2成分現像剤)では、初期においても、トナーの帯電量が低下し、画像濃度が著しく低下した。また、耐刷後には、キャリア粒子の表面には多量の樹脂微粒子の付着が確認された。このような結果が得られた理由として、キャリアコアの表面がキャリアコート層で被覆されていないため、トナーが帯電し難いことが考えられる。