JP7151273B2 - 2成分現像剤及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、2成分現像剤に関する。
樹脂被覆キャリアが知られている。樹脂被覆キャリアに含まれるキャリア粒子は、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆う樹脂層(コート層)とを備える(例えば、特許文献1参照)。また、キャリアとトナーとを含む2成分現像剤が知られている。
特開2009-193016号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、画像形成に適したトナーの帯電量を確保しつつ、多数枚(例えば10万枚)の印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できる2成分現像剤を提供することは困難である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、画像形成に適したトナーの帯電量を確保しつつ、多数枚(例えば10万枚)の印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できる2成分現像剤を提供することを目的とする。
本発明に係る2成分現像剤は、キャリア粒子を含むキャリアと、トナー粒子を含むトナーとを含有する。前記キャリア粒子は、キャリアコアと、前記キャリアコアの表面を覆うコート層と、前記コート層に付着した第1樹脂粒子とを備える。前記第1樹脂粒子は、前記コート層の表面に埋め込まれている埋没部分と、前記コート層の厚さ方向外側に突出する突出部分とを含む。前記第1樹脂粒子の質量は、前記キャリアコア100質量部に対して0.03質量部以上0.15質量部以下である。前記トナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。前記外添剤は、第2樹脂粒子を含む。前記第1樹脂粒子及び前記第2樹脂粒子は、何れもシリコーン樹脂を含む。
本発明によれば、画像形成に適したトナーの帯電量を確保しつつ、多数枚(例えば10万枚)の印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できる2成分現像剤を提供することができる。
本発明の実施形態に係る2成分現像剤に含まれる、キャリア粒子の断面構造の一例及びトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。 図1に示されるキャリア粒子の断面における表層の部分拡大図である。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、キャリアは、キャリア粒子の集合体(例えば粉体)である。トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、樹脂粒子の粉体、トナー粒子の粉体、キャリア粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定されたメディアン径である。粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した、100個の一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。なお、粒子の個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均一次粒子径を指す。
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電のし易さである。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電性トナー用標準キャリア:P-01)と測定対象(例えばトナー)とを混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えばQ/mメーター(トレック社製「MODEL 212HS」)で測定対象の帯電量を測定する。摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
<2成分現像剤>
本実施形態に係る2成分現像剤(以下、現像剤と記載することがある。)は、キャリア粒子を含むキャリアと、トナー粒子を含むトナーとを含有する。本実施形態に係る現像剤は、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態に係る現像剤に含まれるトナーは、例えば正帯電性トナーとして用いることができる。正帯電性トナーは、キャリアと一緒に攪拌されることで、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
本実施形態に係る現像剤では、キャリア粒子は、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うコート層と、コート層に付着した第1樹脂粒子とを備える。第1樹脂粒子は、コート層の表面に埋め込まれている埋没部分と、コート層の厚さ方向外側に突出する突出部分とを含む。第1樹脂粒子の質量は、キャリアコア100質量部に対して0.03質量部以上0.15質量部以下である。本実施形態に係る現像剤では、トナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。外添剤は、第2樹脂粒子を含む。第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子は、何れもシリコーン樹脂を含む。
本実施形態に係る現像剤は、上述の構成を備えることにより、画像形成に適したトナーの帯電量を確保しつつ、多数枚(例えば10万枚)の印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できる。その理由は、以下のように推測される。
本実施形態に係る現像剤では、キャリアコアを覆うコート層の表面に第1樹脂粒子が部分的に埋め込まれている。また、第1樹脂粒子の質量は、キャリアコア100質量部に対して0.03質量部以上である。そして、第1樹脂粒子は、耐久性に優れるシリコーン樹脂を含む。そのため、本実施形態に係る現像剤では、多数枚(例えば10万枚)の印刷中においても、コート層の剥がれが抑制される。その結果、本実施形態に係る現像剤では、多数枚印刷中において、キャリアの帯電付与能の低下が抑制される。また、本実施形態に係る現像剤では、トナー粒子が第2樹脂粒子を含む外添剤を備える。そして、第2樹脂粒子は、シリコーン樹脂を含む。そのため、本実施形態に係る現像剤では、多数枚印刷中において、キャリア粒子からトナー粒子へ第1樹脂粒子(シリコーン樹脂を含む樹脂粒子)が移行しても、トナー粒子の帯電性の変化が抑制される。よって、本実施形態に係る現像剤によれば、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できる。
また、本実施形態に係る現像剤では、第1樹脂粒子の質量が、キャリアコア100質量部に対して0.15質量部以下である。このように、本実施形態に係る現像剤では、トナーの帯電を阻害しない程度に第1樹脂粒子の質量の上限が設定されている。よって、本実施形態に係る現像剤によれば、画像形成に適したトナーの帯電量を確保できる。
多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、コート層の質量は、キャリアコア100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下であることが好ましく、3質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
画像形成に適したトナーの帯電量を容易に確保しつつ、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第2樹脂粒子の質量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下であることが好ましい。
画像形成に適したトナーの帯電量を容易に確保しつつ、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第1樹脂粒子の個数平均一次粒子径は、40nm以上200nm以下であることが好ましい。同様の理由から、第2樹脂粒子の個数平均一次粒子径は、40nm以上200nm以下であることが好ましい。なお、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子とは、同種の樹脂粒子であってもよく、異なる樹脂粒子であってもよい。多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子とは、同種の樹脂粒子であることが好ましい。
以下、本実施形態に係る現像剤の詳細について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
[現像剤の構成]
本実施形態に係る現像剤は、キャリア粒子を含むキャリアと、トナー粒子を含むトナーとを含有する。図1に、本実施形態に係る現像剤に含まれる、キャリア粒子の断面構造の一例及びトナー粒子の断面構造の一例を示す。図2は、図1に示されるキャリア粒子の断面における表層の部分拡大図である。
図1に示すように、現像剤100は、キャリア粒子10を含むキャリアと、トナー粒子20を含むトナーとを含有する。キャリア粒子10は、キャリアコア11と、キャリアコア11の表面を覆うコート層12と、コート層12に付着した第1樹脂粒子13(例えば、複数個の第1樹脂粒子13)とを備える。トナー粒子20は、結着樹脂を含むトナー母粒子21と、トナー母粒子21の表面に付着した外添剤とを備える。外添剤は、第2樹脂粒子22(例えば、複数個の第2樹脂粒子22)を含む。第1樹脂粒子13及び第2樹脂粒子22は、何れもシリコーン樹脂を含む。第1樹脂粒子13の質量は、100質量部のキャリアコア11に対して0.03質量部以上0.15質量部以下である。
トナー粒子20は、シェル層を備えないトナー粒子であってもよいし、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載することがある。)であってもよい。カプセルトナー粒子では、トナー母粒子21が、結着樹脂を含むトナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備える。シェル層は、樹脂を含む。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散されていてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。
画像形成に適したトナーを得るためには、トナー母粒子21の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。
トナー母粒子21は、結着樹脂以外に、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤の少なくとも1つ)を含有してもよい。
図2に示すように、第1樹脂粒子13は、コート層12の表面に埋め込まれている埋没部分13Aと、コート層12の厚さ方向Drの外側(コート層12において、キャリアコア11側とは反対側)に突出する突出部分13Bとを含む。突出部分13Bは、コート層12の表面のうち、第1樹脂粒子13が付着していない面(例えば、図2に示す面12A)よりもコート層12の厚さ方向Drの外側に突出する部分である。
画像形成に適したトナーの帯電量を容易に確保しつつ、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第1樹脂粒子13が以下の条件を満たすことが好ましい。即ち、第1樹脂粒子13の断面において、コート層12の厚さ方向Drにおける埋没部分13Aの最大長さをLAとし、コート層12の厚さ方向Drにおける突出部分13Bの最大長さをLBとしたとき、0.1≦LA/(LA+LB)≦0.5の関係を満たすことが好ましい。同様の理由から、第1樹脂粒子13の断面において、埋没部分13Aの最大長さLAと、突出部分13Bの最大長さLBとが、0.2≦LA/(LA+LB)≦0.5の関係を満たすことがより好ましい。以下、LA/(LA+LB)を埋没比と記載することがある。埋没比の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
なお、LAは、コート層12の厚さ方向Drにおける、埋没部分13Aと突出部分13Bとの境界13Cからの埋没部分13Aの最大長さに相当する。また、LBは、コート層12の厚さ方向Drにおける、埋没部分13Aと突出部分13Bとの境界13Cからの突出部分13Bの最大長さに相当する。なお、図2では、面12Aを直線で記載しているが、実際のキャリア粒子では、コート層の表面は曲面形状を有する。
コート層12の厚さは、キャリアコア11を覆うことができる限り、特に限定されないが、画像形成に適したトナーの帯電量を容易に確保しつつ、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、30nm以上5000nm以下であることが好ましい。なお、コート層12の厚さは、コート層12のうち第1樹脂粒子13が付着していない箇所の厚さを指す。
コート層12の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてキャリア粒子10の断面のTEM(透過電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。キャリア粒子10の断面は、例えば、断面試料作製装置(日本電子株式会社製「クロスセクションポリッシャ(登録商標)」)を用いて作製できる。キャリア粒子10の断面は染色されていてもよい。1つのキャリア粒子10においてコート層12の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、キャリア粒子10の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がコート層12と交差する4箇所)の各々でコート層12の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのキャリア粒子10の評価値(コート層12の厚さ)とする。
画像形成に適したトナーの帯電量を容易に確保しつつ、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、コート層12がキャリアコア11の表面領域のうち90%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。
キャリアコア11の表面領域のうちコート層12で覆われた領域が占める面積割合(被覆率)は、キャリア粒子10(例えば、予め染色されたキャリア粒子10)の断面を電子顕微鏡で撮影し、得られた撮影像を、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析することで測定できる。
良好な現像性を得るためには、キャリアコア11の体積中位径(D50)は、15μm以上150μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。
良好な現像性を得るためには、キャリアコア11の3000(103/4π・A/m)の印加磁場での飽和磁化は、30A・m2/kg以上90A・m2/kg以下であることが好ましく、40A・m2/kg以上80A・m2/kg以下であることがより好ましい。
以上、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る現像剤に含まれる、キャリア粒子の構成の一例及びトナー粒子の構成の一例について説明した。
[現像剤の要素]
次に、本実施形態に係る現像剤の要素について説明する。
〔キャリアの要素〕
(キャリアコア)
キャリアコアは、磁性材料を含有することが好ましい。キャリアコアは、磁性材料の粒子であってもよいし、キャリアコア用結着樹脂と、キャリアコア用結着樹脂中に分散した磁性材料の粒子とを備えるキャリアコア(以下、樹脂キャリアコアと記載することがある。)であってもよい。
キャリアコアに含有される磁性材料の例としては、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、及びこれら金属の一種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト等)が挙げられる。フェライトの好適な例としては、Baフェライト、Mnフェライト、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、Mn-Mgフェライト、Ca-Mgフェライト、Liフェライト、Cu-Znフェライト、及びMn-Mg-Srフェライトが挙げられる。また、強磁性金属酸化物の好適な例としては、スピネルフェライトの一種であるマグネタイトも挙げられる。キャリアコアの材料として、一種類の磁性材料を単独で使用してもよいし、二種以上の磁性材料を併用してもよい。キャリアコアを作製する方法としては、例えば磁性材料を粉砕及び焼成する工程を含む方法が挙げられる。なお、キャリアコアとしては、市販品を使用してもよい。
キャリアコアが磁性材料の粒子である場合、磁性材料の粒子の好ましい例としては、フェライト粒子(フェライトコア)が挙げられる。フェライト粒子は、画像形成のために十分な磁性を有する傾向がある。
キャリアコアが樹脂キャリアコアである場合、樹脂キャリアコアに含まれるキャリアコア用結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及びフェノール樹脂からなる群より選択される一種以上の樹脂が好ましく、フェノール樹脂がより好ましい。キャリアコア用結着樹脂中に分散した磁性材料の粒子としては、例えば上記磁性材料の例として挙げられた磁性材料から選択される一種以上を含む粒子が挙げられる。
(コート層)
コート層は、例えば樹脂から構成される。コート層を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用してもよいし、熱硬化性樹脂を使用してもよい。また、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを組み合わせて使用してもよい。なお、コート層には、添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、コート層の電気抵抗率を調整するためのカーボンブラックが挙げられる。
コート層を形成するための熱可塑性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル樹脂(より具体的には、ポリアリレート等)、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルケトン樹脂が挙げられる。
コート層を形成するための熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素-メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド樹脂、及びポリエーテルイミド樹脂が挙げられる。
多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、コート層がシリコーン樹脂を含むことが好ましい。多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動を更に抑制するためには、シリコーン樹脂としては、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂が好ましく、メチルシリコーン樹脂が特に好ましい。シリコーン樹脂は、主鎖としてシロキサン結合「Si-O-Si」を有し、側鎖として有機基を有する。メチルシリコーン樹脂は、側鎖の有機基としてメチル基のみを有する。メチルフェニルシリコーン樹脂は、側鎖の有機基としてメチル基及びフェニル基のみを有する。シリコーン樹脂が優れた耐久性を有するためには、シリコーン樹脂の主鎖(シロキサン結合:Si-O-Si)同士が3次元的につながっていることが好ましい。
また、正帯電性トナーに対するキャリア粒子の帯電付与能を高めつつ、多数枚印刷前後において正帯電性トナーの帯電量の変動をより抑制するためには、コート層が、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂を含むことが好ましい。フッ素樹脂は強い負帯電性を有するため、コート層がフッ素樹脂を含むと、正帯電性トナーに対するキャリア粒子の帯電付与能を高めることができる。
コート層の構成樹脂に使用できるフッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(より具体的には、ポリクロロトリフルオロエチレン等)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及びテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。正帯電性トナーに対するキャリア粒子の帯電付与能をより高めるためには、コート層の構成樹脂に使用できるフッ素樹脂としては、FEPが好ましい。
コート層がフッ素樹脂及びシリコーン樹脂を含む場合、コート層におけるフッ素樹脂とシリコーン樹脂との質量比(フッ素樹脂/シリコーン樹脂)は、例えば1/4以上4/1以下である。また、コート層がフッ素樹脂及びシリコーン樹脂を含む場合、正帯電性トナーに対するキャリア粒子の帯電付与能をより高めつつ、多数枚印刷前後において正帯電性トナーの帯電量の変動をより抑制するためには、コート層中のフッ素樹脂及びシリコーン樹脂の合計質量が、コート層全体に対して90質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
(第1樹脂粒子)
第1樹脂粒子は、シリコーン樹脂を含む。多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第1樹脂粒子に含まれるシリコーン樹脂としては、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂が好ましく、メチルシリコーン樹脂が特に好ましい。
多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第1樹脂粒子中のシリコーン樹脂の含有量は、第1樹脂粒子全体に対して80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
第1樹脂粒子の調製方法としては、シリコーン樹脂が含まれる樹脂粒子を調製できる方法である限り、特に限定されない。第1樹脂粒子の調製方法の一例は、実施例において後述する。なお、第1樹脂粒子としては、市販品を使用してもよい。
(材料の組合せ)
画像形成に適した正帯電性トナーの帯電量を容易に確保しつつ、多数枚印刷前後において正帯電性トナーの帯電量の変動を更に抑制するためには、コート層がフッ素樹脂及びメチルシリコーン樹脂を含み、第1樹脂粒子がメチルシリコーン樹脂を含むことが好ましい。同様の理由から、コート層がフッ素樹脂及びメチルシリコーン樹脂を含み、第1樹脂粒子がメチルシリコーン樹脂を含み、第1樹脂粒子の個数平均一次粒子径が40nm以上200nm以下であることがより好ましい。
〔トナーの要素〕
次に、トナーの要素について説明する。
(結着樹脂)
トナー母粒子は、全成分の大部分(例えば、70質量%以上)を結着樹脂が占める。低温定着性に優れるトナーを得るためには、トナー母粒子は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-アクリル酸エステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として使用できる。
熱可塑性樹脂は、一種以上の熱可塑性モノマーを、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性モノマーは、単独重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(より具体的には、アクリル酸エステル系モノマー、スチレン系モノマー等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になるモノマー(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
低温定着性に優れるトナーを得るためには、トナー母粒子が、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の80質量%以上100質量%以下の割合でポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。ポリエステル樹脂は、一種以上の多価アルコールと一種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、脂肪族ジオール、ビスフェノール等)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、多価カルボン酸の無水物、多価カルボン酸ハライド等の縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体を使用してもよい。
脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオール、α,ω-アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール等)、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノールの好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、1,10-デカンジカルボン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナー母粒子は、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、並びにC.I.アシッドブルーが挙げられる。
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、耐オフセット性に優れるトナーを得るために使用される。耐オフセット性に優れるトナーを得るためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、エステルワックス、ポリオレフィンワックス(より具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、マイクロクリスタリンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、及びカスターワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(より具体的には、カルナバワックス、ライスワックス等)、及び合成エステルワックスが挙げられる。本実施形態では、一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー母粒子に添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性に優れるトナーを得るために使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。
トナー母粒子に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のカチオン性(正帯電性)を強めることができる。また、トナー母粒子に負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のアニオン性(負帯電性)を強めることができる。
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。これらの電荷制御剤の一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
負帯電性の電荷制御剤の例としては、キレート化合物である有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体としては、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体、及びこれらの塩が好ましい。
帯電安定性に優れるトナーを得るためには、電荷制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
(外添剤)
本実施形態に係る現像剤に含まれるトナー粒子は、トナー母粒子の表面に付着した外添剤を備える。外添剤は、第2樹脂粒子を含む。第2樹脂粒子は、シリコーン樹脂を含む。多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第2樹脂粒子に含まれるシリコーン樹脂としては、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂が好ましく、メチルシリコーン樹脂が特に好ましい。
多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動をより抑制するためには、第2樹脂粒子中のシリコーン樹脂の含有量は、第2樹脂粒子全体に対して80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
第2樹脂粒子の調製方法としては、シリコーン樹脂が含まれる樹脂粒子を調製できる方法である限り、特に限定されない。第2樹脂粒子の調製方法の一例は、実施例において後述する。なお、第2樹脂粒子としては、市販品を使用してもよい。
外添剤は、外添剤粒子として第2樹脂粒子のみを含んでいてもよく、第2樹脂粒子以外に他の外添剤粒子を含んでいてもよい。トナーの流動性を良好に維持するためには、他の外添剤粒子としては、無機粒子が好ましい。無機粒子としては、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、チタニア、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等)の粒子が挙げられる。
他の外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、他の外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数のヒドロキシ基(-OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、ヒドロキシ基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
トナー母粒子からの外添剤の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(他の外添剤粒子を使用する場合には、第2樹脂粒子及び他の外添剤粒子の合計量)が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
<現像剤の製造方法>
次に、上述した実施形態に係る現像剤の好適な製造方法について説明する。詳しくは、キャリアの作製方法、トナーの作製方法、及びキャリアとトナーとの混合方法について説明する。以下、上述した実施形態に係る現像剤と重複する構成要素については説明を省略する。
[キャリアの作製方法]
まず、キャリアの好適な作製方法について説明する。以下で説明するキャリアの好適な作製方法は、キャリアコアの調製工程と、コート層の形成工程とを備える。また、以下で説明するキャリアの好適な作製方法は、コート層の形成と、第1樹脂粒子のコート層への付着とを同時に行う方法である。
(キャリアコアの調製工程)
まず、キャリアコアの原材料と水とを混合し、混合物を得る。次いで、湿式ボールミルを用いて、混合物中の原材料を粉砕する。次いで、例えばスプレードライヤーを用いて、粉砕された原材料を含む混合物の乾燥及び造粒を行う。その後、乾燥した造粒物を焼成することにより、キャリアコアが得られる。
(コート層の形成工程)
まず、流動コーティング装置を用いて、コート層の原料を含む液(コート層形成溶液)を流動層中のキャリアコアに噴霧し、キャリアコアの表面にコーティング膜を形成する。この際、例えば、コート層形成溶液中の原料の濃度、及びコート層形成溶液の噴霧量の少なくとも一方を変更することにより、得られるキャリア粒子中のキャリアコア100質量部に対するコート層の質量を調整できる。
次いで、シリコーン樹脂を含む第1樹脂粒子を、流動コーティング装置に投入し、キャリアコアの表面に形成されたコーティング膜(熱処理前のコーティング膜)に、第1樹脂粒子を付着させる。熱処理前のコーティング膜の表面は、硬化していないため、第1樹脂粒子は、コーティング膜の表面に食い込んだ状態で付着する。この際、例えば、コーティング膜中の原料の濃度を変更することにより、第1樹脂粒子の埋没比を調整できる。また、第1樹脂粒子の投入量を変更することにより、得られるキャリア粒子中のキャリアコア100質量部に対する第1樹脂粒子の質量を調整できる。
次いで、上記流動コーティング装置内の流動層を熱処理し、コーティング膜を硬化させることにより、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うコート層と、コート層に付着した第1樹脂粒子とを備えるキャリア粒子の粉体(キャリア)が得られる。以上説明した方法によれば、第1樹脂粒子がコーティング膜の表面に食い込んだ状態でコーティング膜を硬化させるため、コート層の表面に第1樹脂粒子の一部を埋め込むことができる。
[トナーの作製方法]
次に、トナーの好適な作製方法について説明する。以下で説明するトナーの好適な作製方法は、トナー母粒子の調製工程と、外添工程とを備える。
(トナー母粒子の調製工程)
まず、凝集法又は粉砕法によりトナー母粒子を調製する。
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナー母粒子を構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナー母粒子を形成する。
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易にトナー母粒子を調製できる上、製造コストの低減が可能である。粉砕法でトナー母粒子を調製する場合、トナー母粒子の調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナー母粒子の調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナー母粒子の調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
混合工程では、結着樹脂と、必要に応じて添加する内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナー母粒子が得られる。
(外添工程)
次いで、混合機を用いて、得られたトナー母粒子と、外添剤とを混合して、トナー母粒子に外添剤を付着させる。外添剤は、第2樹脂粒子を少なくとも含む。混合機としては、例えばFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)が挙げられる。こうして、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子の粉体(トナー)が得られる。
[キャリアとトナーとの混合方法]
キャリアとトナーとを混合する方法としては、例えば混合機(より具体的には、ボールミル、ロッキングミキサー(登録商標)等)を用いて、キャリアと、トナーとを攪拌しながら混合する方法が挙げられる。こうした方法により、キャリア粒子を含むキャリアと、トナー粒子を含むトナーとを含有する現像剤(2成分現像剤)が得られる。キャリア粒子100質量部に対するトナー粒子の配合量は、好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上15質量部以下である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
<樹脂粒子S1~S5の調製>
温度計、還流器及び攪拌器を備えた反応容器に、108質量部のイオン交換水(電気伝導度:0.05mS/m)と塩酸とを入れた。このようにして、塩化水素の濃度が5×10-5モル/Lである溶液を得た。この溶液の温度を20℃に保ちながら、反応容器に、0.610質量部のテトラメトキシシランと、3.400質量部のメチルトリメトキシシランと、3.000質量部のジメチルジメトキシシランとを滴下した。滴下したアルコキシシランのモル比は、テトラメトキシシラン:メチルトリメトキシシラン:ジメチルジメトキシシラン=0.16:1:1であった。次いで、4時間にわたって、反応容器の内容物を攪拌した(回転速度:50rpm)。反応容器の内容物を攪拌している間に、反応容器内では加水分解反応が起こった。このようにして、シラノール溶液が得られた。
得られたシラノール溶液の温度を5℃に保ちながら、シラノール溶液を攪拌した(回転速度:50rpm)。その後、アンモニアの添加量が0.272質量部となるように、アンモニア水溶液(濃度:1質量%)をシラノール溶液に滴下した。その後、4時間にわたって、反応容器の内容物を攪拌した。このようにして、シリコーン樹脂(詳しくは、メチルシリコーン樹脂)からなる樹脂粒子が得られた。
得られた樹脂粒子(シリコーン樹脂からなる樹脂粒子)を乾燥した後、乾燥した樹脂粒子の粉体を、風力分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて分級した。このとき、風量と風力分級機における分級エッジのエッジ角度とのうちの少なくとも1つを変更して、樹脂粒子の粉体を、粒子径が互いに異なる5つのグループに分けた。その後、グループに分けられた5種類の粉体の各々を篩にかけ、5種類の粉体の各々から凝集物を取り除いた。このようにして、個数平均一次粒子径110nmの樹脂粒子S1の粉体、個数平均一次粒子径40nmの樹脂粒子S2の粉体、個数平均一次粒子径200nmの樹脂粒子S3の粉体、個数平均一次粒子径20nmの樹脂粒子S4の粉体、及び個数平均一次粒子径220nmの樹脂粒子S5の粉体をそれぞれ得た。なお、得られた樹脂粒子S1~S5の個数平均一次粒子径は、後述する方法でキャリア粒子を作製した後、キャリア粒子から分離させた樹脂粒子の粉体を測定対象として測定した場合も同じ結果が得られた。
<キャリアの作製>
以下、キャリアCA-1~CA-9及びCB-1~CB-5の作製方法について説明する。
[キャリアCA-1の作製]
(キャリアコアの調製工程)
MnO換算で40質量部のMnO含有粒子(体積中位径(D50):0.9μm)と、MgO換算で10質量部のMgO含有粒子(体積中位径(D50):0.6μm)と、Fe23換算で50質量部のFe23含有粒子(体積中位径(D50):0.8μm)と、水とを混合し、混合物を得た。次いで、湿式ボールミルを用いて、混合物中の原材料(詳しくは、MnO含有粒子、MgO含有粒子及びFe23含有粒子)を2時間かけて粉砕した。次いで、粉砕された原材料を含む混合物の乾燥及び造粒を、スプレードライヤーで行った。その後、乾燥した造粒物を、温度1000℃で5時間焼成することにより、キャリアコア(マンガン含有フェライトコア)を得た。得られたキャリアコアは、体積中位径(D50)が40μmであり、3000(103/4π・A/m)の印加磁場での飽和磁化が65A・m2/kgであった。
(コート層の形成工程)
固形分換算で100質量部の加熱硬化型シリコーン樹脂溶液(東レダウコーニング株式会社製「SR2400」、樹脂:メチルシリコーン樹脂、溶剤:トルエン)と、500質量部のトルエンと、100質量部のテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)と、2質量部のカーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製「MA100」)とを混合してコート層形成溶液を得た。
次いで、キャリアコア(前述の手順で調製したマンガン含有フェライトコア)を流動コーティング装置(株式会社パウレック製「マルチプレックスMP-01」)に投入し、キャリアコアを流動させた。そして、流動コーティング装置を用いて、流動しているキャリアコア100質量部に対して、固形分換算で4質量部のコート層形成溶液(前述の手順で得られたコート層形成溶液)を噴霧し、キャリアコアの表面にコーティング膜を形成した。次いで、キャリアコア100質量部に対して0.03質量部の樹脂粒子S1を、上記流動コーティング装置に投入し、キャリアコアの表面に形成されたコーティング膜に、樹脂粒子S1を付着させた。次いで、上記流動コーティング装置内の流動層に対して、温度270℃の熱処理を2時間行って、コーティング膜を硬化させた。その結果、キャリア粒子の粉体であるキャリアCA-1が得られた。キャリアCA-1に含まれるキャリア粒子は、キャリアコアと、キャリアコアの表面全体を覆うコート層(詳しくは、メチルシリコーン樹脂と、FEPと、カーボンブラックとからなるコート層)と、コート層に付着した樹脂粒子S1とを備えていた。キャリアCA-1では、樹脂粒子S1の質量は、キャリアコア100質量部に対して0.03質量部であった。また、キャリアCA-1では、コート層の質量は、キャリアコア100質量部に対して4質量部であった。
[キャリアCA-2~CA-9及びCB-1~CB-5の作製]
キャリアコアの表面に形成されたコーティング膜に付着させる樹脂粒子の種類、及び流動コーティング装置への樹脂粒子の投入量を表1に示すとおりとしたこと以外は、キャリアCA-1の作製と同じ方法でキャリアCA-2~CA-9及びCB-1~CB-4をそれぞれ作製した。また、0.03質量部の樹脂粒子S1の代わりに、0.03質量部の非架橋スチレン-アクリル酸系樹脂粒子(日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製「ファインスフェア(登録商標)FS-102」、個数平均一次粒子径:100nm)を使用したこと以外は、キャリアCA-1の作製と同じ方法でキャリアCB-5を作製した。なお、表1の樹脂粒子の投入量は、キャリアコア100質量部に対する質量部数である。また、キャリアCA-2~CA-9及びCB-1~CB-5では、何れも、キャリアコア100質量部に対する樹脂粒子の質量は、表1に示す樹脂粒子の投入量と同じ値であった。
Figure 0007151273000001
<埋没比の測定方法>
キャリアCA-1~CA-9では、樹脂粒子が、コート層の表面に埋め込まれている埋没部分と、コート層の厚さ方向外側に突出する突出部分とを含んでいた。キャリアCA-1~CA-9について、以下に示す方法で埋没比を測定した。まず、試料(キャリアCA-1~CA-9の何れか)を可視光硬化性樹脂(東亞合成株式会社製「アロニックス(登録商標)D-800」)中に分散させた後、可視光照射により樹脂を硬化させて、硬化物を得た。その後、超薄切片作製用ナイフ(住友電気工業株式会社製「スミナイフ(登録商標)」:刃幅2mm、刃先角度45°のダイヤモンドナイフ)及びウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて、切削速度0.3mm/秒で硬化物を切削することで、厚さ150nmの薄片を作製した。得られた薄片を、銅メッシュ上で四酸化ルテニウム水溶液の蒸気中に10分間暴露して、Ru染色した。続けて、染色された薄片試料の断面を、透過電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H-7100FA」)を用いて撮影した。
上記のようにして得たTEM撮影像(キャリア粒子の断面撮影像)を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析した。詳しくは、得られたTEM撮影像において、無作為に10個のキャリア粒子を選択した。そして、選択したキャリア粒子の各々において、無作為に1個の樹脂粒子を選択し、選択した樹脂粒子について、画像解析ソフトウェアの計測ツールを用いて、コート層の厚さ方向における埋没部分の最大長さLAと、コート層の厚さ方向における突出部分の最大長さLBとを計測した。次いで、選択したキャリア粒子の各々について、埋没比、即ちLA/(LA+LB)を算出した。そして、得られた10個の埋没比の算術平均を、試料(キャリア)の評価値とした。
キャリアCA-1~CA-9では、何れも埋没比が0.1以上0.5以下であった。
<トナーの作製>
以下、トナーT1~T6の作製方法について説明する。
[トナーT1の作製]
(トナー母粒子の調製工程)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)を用いて、100質量部の結着樹脂(三井化学株式会社製「XPE258」、成分:ポリエステル樹脂)と、9質量部の離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-9」、成分:エステルワックス)と、9質量部の着色剤(三菱ケミカル株式会社製「MA100」、成分:カーボンブラック)と、1質量部の電荷制御剤(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P-51」、成分:4級アンモニウム塩)とを、回転速度2000rpmの条件で4分間混合した。得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」)を用いて、材料供給速度100g/分、軸回転速度150rpm、溶融混練温度(シリンダー温度)100℃の条件で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を、その温度が25℃になるまで冷却した。
続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、風力分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.7μmのトナー母粒子が得られた。
(外添工程)
100質量部のトナー母粒子(上述した手順で得られたトナー母粒子)と、1.0質量部のシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、表面処理剤により正帯電性が付与されたシリカ粒子)と、1.0質量部の導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC-100」)と、1.0質量部の樹脂粒子S1とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)を用いて、回転速度2000rpmかつジャケット温度20℃の条件で5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子、導電性酸化チタン粒子及び樹脂粒子S1)を付着させた。続けて、得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、正帯電性のトナーT1が得られた。
[トナーT2~T6の作製]
外添工程で使用した樹脂粒子の種類を表2に示すとおりとしたこと以外は、トナーT1の作製と同じ方法でトナーT2~T5をそれぞれ作製した。なお、トナーT2~T5を作製する際、FMミキサーへの樹脂粒子の投入量は、何れも100質量部のトナー母粒子に対して1.0質量部であった。また、外添工程において、1.0質量部の樹脂粒子S1の代わりに、1.0質量部の非架橋スチレン-アクリル酸系樹脂粒子(日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製「ファインスフェア(登録商標)FS-102」、個数平均一次粒子径:100nm)を使用したこと以外は、トナーT1の作製と同じ方法でトナーT6を作製した。得られたトナーT2~T6は、何れも正帯電性のトナーであった。
Figure 0007151273000002
<現像剤の調製>
[現像剤DA-1の調製]
100質量部のキャリアCA-1と、8質量部のトナーT1とを、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」、混合方式:容器回転揺動方式)を用いて30分間混合して、現像剤DA-1を調製した。
[現像剤DA-2~DA-9及びDB-1~DB-6の調製]
粉体混合機で混合する際に用いるキャリア及びトナーを、後述する表3に示すとおりとしたこと以外は、現像剤DA-1の調製と同じ方法で現像剤DA-2~DA-9及びDB-1~DB-6をそれぞれ調製した。なお、現像剤DA-2~DA-9及びDB-1~DB-6を調製する際、100質量部のキャリアに対するトナーの使用量(質量)は、何れも8質量部であった。
<評価方法>
[初期帯電量の測定]
前述の方法で現像剤(現像剤DA-1~DA-9及びDB-1~DB-6の何れか)を調製した後、温度25℃かつ湿度65%RHの環境下、24時間にわたって現像剤を静置した。その後、温度25℃かつ湿度65%RHの環境下、現像剤に含まれるトナーの帯電量(単位:μC/g)を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)を用いて測定した。以下、ここで測定された帯電量を、「初期帯電量E1」(又は、単に「E1」)と記載する。
初期帯電量E1が20μC/g以上40μC/g以下であれば、「画像形成に適したトナーの帯電量を確保できている」と評価した。一方、初期帯電量E1が20μC/g未満である場合、及び初期帯電量E1が40μC/gを超える場合、「画像形成に適したトナーの帯電量を確保できていない」と評価した。
[連続印刷後の帯電量の測定]
評価機としては、プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「ECOSYS(登録商標)FS-C5250DN」)を用いた。前述の方法で調製した現像剤(現像剤DA-1~DA-9及びDB-1~DB-6の何れか)を評価機のブラック用現像装置に投入し、現像剤の調製で使用されたトナーと同種のトナー(トナーT1~T6の何れか)を評価機のブラック用トナーコンテナに投入した。
次いで、温度25℃かつ湿度65%RHの環境下、文字画像(印字率:4%)を印刷用紙(A4サイズ)に10万枚連続で印刷した。次いで、評価機のブラック用現像装置から現像剤を取り出した後、温度25℃かつ湿度65%RHの環境下、現像剤に含まれるトナーの帯電量(単位:μC/g)を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)を用いて測定した。以下、ここで測定された帯電量を、「連続印刷後の帯電量E2」(又は、単に「E2」)と記載する。
[帯電量変動率の算出]
上記のように得た初期帯電量E1と連続印刷後の帯電量E2とから、以下の式に基づいて、帯電量変動率(単位:%)を求めた。なお、以下の式において、|E1-E2|は、E1とE2との差の絶対値を表す。
帯電量変動率=100×|E1-E2|/E1
帯電量変動率が20%以下であれば、「多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できている」と評価した。一方、帯電量変動率が20%を超える場合、「多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できていない」と評価した。
現像剤DA-1~DA-9及びDB-1~DB-6について、使用したキャリア及びトナーの種類、E1、E2、並びに帯電量変動率を、それぞれ表3に示す。
Figure 0007151273000003
現像剤DA-1~DA-9では、キャリア粒子が、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うコート層と、コート層に付着した第1樹脂粒子(シリコーン樹脂からなる樹脂粒子)とを備えていた。現像剤DA-1~DA-9のそれぞれに含まれるキャリア粒子では、第1樹脂粒子が、コート層の表面に埋め込まれている埋没部分と、コート層の厚さ方向外側に突出する突出部分とを含んでいた。現像剤DA-1~DA-9では、第1樹脂粒子の質量が、キャリアコア100質量部に対して0.03質量部以上0.15質量部以下であった。現像剤DA-1~DA-9では、トナー粒子が、結着樹脂を含むトナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えていた。現像剤DA-1~DA-9のそれぞれに含まれるトナー粒子では、外添剤が、第2樹脂粒子(シリコーン樹脂からなる樹脂粒子)を含んでいた。
表3に示すように、現像剤DA-1~DA-9では、E1が20μC/g以上40μC/g以下であった。よって、現像剤DA-1~DA-9は、画像形成に適したトナーの帯電量を確保できていた。現像剤DA-1~DA-9では、帯電量変動率が20%以下であった。よって、現像剤DA-1~DA-9は、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できていた。
現像剤DB-1~DB-4では、キャリア粒子が、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うコート層と、コート層に付着した第1樹脂粒子(シリコーン樹脂からなる樹脂粒子)とを備えていた。しかし、現像剤DB-1及びDB-4では、第1樹脂粒子の質量が、キャリアコア100質量部に対して0.03質量部未満であった。また、現像剤DB-2及びDB-3では、第1樹脂粒子の質量が、キャリアコア100質量部に対して0.15質量部を超えていた。
現像剤DB-5では、キャリア粒子が、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うコート層と、コート層に付着した樹脂粒子とを備えていた。しかし、現像剤DB-5に含まれるキャリア粒子では、コート層に付着した樹脂粒子がシリコーン樹脂を含んでいなかった。
現像剤DB-6では、キャリア粒子が、キャリアコアと、キャリアコアの表面を覆うコート層と、コート層に付着した樹脂粒子とを備えていた。しかし、現像剤DB-6では、キャリア粒子が、コート層の表面に埋め込まれている埋没部分と、コート層の厚さ方向外側に突出する突出部分とを含む樹脂粒子として、シリコーン樹脂を含む樹脂粒子を備えていなかった。なお、現像剤DB-6について上述した連続印刷後の帯電量E2を測定する際、文字画像を印刷用紙に10万枚連続で印刷した後の現像剤DB-6に含まれるキャリア粒子は、トナー粒子から移行した樹脂粒子(外添剤粒子として使用したシリコーン樹脂からなる樹脂粒子、以下、「移行樹脂粒子」と記載する。)を含んでいた。しかし、移行樹脂粒子は、コート層の表面に、埋め込まれずに付着していた。よって、移行樹脂粒子は、埋没部分を有していなかった。また、移行樹脂粒子の質量は、キャリアコア100質量部に対して0.03質量部未満であった。
表3に示すように、現像剤DB-2、DB-3及びDB-6では、E1が20μC/g未満であった。よって、現像剤DB-2、DB-3及びDB-6は、画像形成に適したトナーの帯電量を確保できていなかった。現像剤DB-4では、E1が40μC/gを超えていた。よって、現像剤DB-4は、画像形成に適したトナーの帯電量を確保できていなかった。
表3に示すように、現像剤DB-1及びDB-4~DB-6では、帯電量変動率が20%を超えていた。よって、現像剤DB-1及びDB-4~DB-6は、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できていなかった。
以上の結果から、本発明によれば、画像形成に適したトナーの帯電量を確保しつつ、多数枚印刷前後においてトナーの帯電量の変動を抑制できることが示された。
本発明に係る2成分現像剤は、例えば複写機、プリンター又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
10 キャリア粒子
11 キャリアコア
12 コート層
13 第1樹脂粒子
20 トナー粒子
21 トナー母粒子
22 第2樹脂粒子
100 現像剤(2成分現像剤)

Claims (6)

  1. キャリア粒子を含むキャリアと、トナー粒子を含むトナーとを含有する2成分現像剤であって、
    前記キャリア粒子は、キャリアコアと、前記キャリアコアの表面を覆うコート層と、前記コート層に付着した第1樹脂粒子とを備え、
    前記第1樹脂粒子は、前記コート層の表面に埋め込まれている埋没部分と、前記コート層の厚さ方向外側に突出する突出部分とを含み、
    前記第1樹脂粒子の質量は、前記キャリアコア100質量部に対して0.03質量部以上0.15質量部以下であり、
    前記トナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備え、
    前記外添剤は、第2樹脂粒子を含み、
    前記第1樹脂粒子及び前記第2樹脂粒子は、何れもシリコーン樹脂を含み、
    前記第1樹脂粒子の断面において、前記コート層の厚さ方向における前記埋没部分の最大長さをL A とし、前記コート層の厚さ方向における前記突出部分の最大長さをL B としたとき、0.1≦L A /(L A +L B )≦0.5の関係を満たす、2成分現像剤。
  2. 前記コート層は、シリコーン樹脂を含む、請求項1に記載の2成分現像剤。
  3. 前記コート層は、フッ素樹脂を更に含む、請求項2に記載の2成分現像剤。
  4. 前記コート層の質量は、前記キャリアコア100質量部に対して2質量部以上10質量部以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の2成分現像剤。
  5. 前記第2樹脂粒子の質量は、前記トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の2成分現像剤。
  6. キャリア粒子を含むキャリアと、トナー粒子を含むトナーとを含有する2成分現像剤の製造方法であって、
    前記キャリア及び前記トナーを混合する工程を備え、
    混合前の前記キャリア粒子は、キャリアコアと、前記キャリアコアの表面を覆うコート層と、前記コート層に付着した第1樹脂粒子とを備え、
    前記第1樹脂粒子は、前記コート層の表面に埋め込まれている埋没部分と、前記コート層の厚さ方向外側に突出する突出部分とを含み、
    前記第1樹脂粒子の質量は、前記キャリアコア100質量部に対して0.03質量部以上0.15質量部以下であり、
    前記トナー粒子は、結着樹脂を含むトナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備え、
    前記外添剤は、第2樹脂粒子を含み、
    前記第1樹脂粒子及び前記第2樹脂粒子は、何れもシリコーン樹脂を含む、2成分現像剤の製造方法。
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