JP6549458B2 - 反射防止膜、光学素子、及び眼科装置 - Google Patents

反射防止膜、光学素子、及び眼科装置 Download PDF

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Description

本発明は、可視光から近赤外光までの帯域の光線の反射を抑制する反射防止膜、その反射防止膜を備えた光学素子、及びその光学素子を備えた眼科装置に関する。
従来から、入射する光線の反射を低減するため、レンズ等の光学素子の表面に、反射防止膜を設けたものが知られている。このような反射防止膜として、最外層側に、MgF2を積層した技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、特許文献1、2に記載の反射防止膜は、350〜700nm程度の可視域の光線に対して低い反射率特性を示すことは開示があるが、可視域から近赤外域までの広い帯域に対する反射率については開示がない。また、反射防止膜では、膜材料の組み合わせによっては入射光線が減衰される現象が発生することがあり、反射防止の効果を十分に奏することができないことや、反射防止膜や光学部品の生産性に影響することがあった。
特開2009−8901号公報 特開2007−333806号公報
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、可視域及び近赤外域の、より広い帯域に対して、優れた反射防止の効果を奏し、生産性を向上させることを目的とする。
上記の目的を達成するため、本願に係る反射防止膜は、基板上に形成される反射防止膜であって、少なくとも9層が積層されてなり、最外層に、基板から順にSiO2からなる層と、MgF2からなる層とを有することを特徴とする。
また、本願に係る光学素子は、上述のような反射防止膜を備えることを特徴とする。
また、本願に係る眼科装置は、上述のような光学素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、可視域及び近赤外域の、より広い帯域に対して、優れた反射防止の効果を奏する反射防止膜を提供することができる。また、成膜の際の反射防止膜の品質も向上して、生産性を向上させることができる。また、このような反射防止膜を備えることで、可視域及び近赤外域の、より広い帯域に対して、優れた反射防止の効果を奏する光学素子、及びこの光学素子を備えた眼科装置を提供することができるとともに、光学素子及び眼科装置の生産性を向上させることもできる。
本発明の実施例1に係る反射防止膜を備えた光学素子の断面図である。 本発明の実施例1に係る反射防止膜の光学特性を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る反射防止膜の光学特性を示すグラフである。 本発明の実施例3に係る反射防止膜の光学特性を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る反射防止膜の光学特性を示すグラフである。 本発明の実施例5に係る反射防止膜の光学特性を示すグラフである。 本発明の実施例6に係る反射防止膜の光学特性を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る反射防止膜及び比較例1に係る反射防止膜の光学特性を比較したグラフである。 本発明の実施例2に係る反射防止膜及び比較例2に係る反射防止膜の光学特性を比較したグラフである。 本発明の実施例7に係る眼科装置の正面図である。 本発明の実施例7に係る眼科装置の側面図である。
本発明の反射防止膜は、基板上に形成され、少なくとも9層が積層された構成を有している。そして、本発明の反射防止膜は、最外層に、基板から順にSiO2からなる層(以下、「SiO2層」という)と、MgF2からなる層(以下、「MgF2層」という)とを有している。反射防止膜の成膜方法としては、特に限定されることはなく、真空蒸着法、IAD成膜法、イオンプレーティング成膜法、各種スパッタリング法等を用いることができる。
従来のように最外層側に、基板側から順にNb25層とMgF2層を積層した膜構成では、成膜不良等を生じることがあり、入射光が減衰される、すなわち、入射光が吸収される現象が発生することがあった。この現象は、5回の成膜作業で2回程度の頻度で発生し、光学部品の生産性に影響していた。
そこで、発明者は、最外層に、基板側から順に、Nb25層とMgF2層とを積層した膜構成において、Nb25層とMgF2層との間に、SiO2層を積層することを試みたところ、成膜を良好に行うことができ、入射光が減衰する現象の発生を低減できることを知見した。さらに、反射防止膜が8層では可視域若しくは近赤外域に対する良好な反射防止効果が得られないが、反射防止膜を9層とすることで、可視域及び近赤外域の広い帯域に対する反射防止効果が得られることを知見し、本願を発明するに至った。
本発明の反射防止膜は、上述のような構成を有することで、可視域だけでなく、近赤外域を含む、より広い帯域に対して、優れた反射防止の効果を奏することが可能となり、反射防止膜の品質も向上して、生産性を向上させることができる。したがって、本発明の反射防止膜は、可視光や近赤外光を入射させる光学素子、及び可視光や近赤外光で検査等を行う眼科装置に、好適に用いることができる。
本発明の反射防止膜は、少なくとも9層を有していればよく、使用目的や使用する装置の機種等に応じて、10層以上とすることもできる。例えば、最外層にMgF2層を配置し、MgF2層の内側(基板側)に、基板側から順に、所定以上の屈折率を有する高屈折率物質(Nb25など)からなる層と、高屈折率物質よりも屈折率の低い低屈折率物質(SiO2)からなる層の組を、少なくとも4組設けて反射防止膜を構成する。10層以上とする場合は、このような層の組を5組以上配置したり、基板側に低屈折率物質(SiO2)からなる層を追加したりすることで実現できる。
なお、本明細書では、「高屈折率物質」とは、所定以上の屈折率(例えば、d線に対する屈折率が1.5以上。ただし、これに限定されない)を有する物質をいう。また、「低屈折率物質」とは、所定未満の屈折率(例えば、d線に対する屈折率が1.5未満。ただし、これに限定されない)を有する物質をいう。
また、本発明の反射防止膜は、外層に防汚膜等の他の機能を有する膜を成膜する場合、MgF2層の前記基板とは反対側に、SiO2層を、さらに有することが好ましい。この構成により、防汚膜等を設けた場合でも、反射防止膜の光学性能が低減されるのを抑制することができ、優れた反射防止効果を実現することができる。
また、本発明の反射防止膜は、可視域及び近赤外域の800nm〜900nmに対し、1.0%以下、より好ましくは0.5%以下の反射率を実現することが好ましい。この条件を満足することで、発光波長840nm近傍の低コヒーレンス光源を用いたSD−OCTのような光干渉計測を利用した3次元眼底像撮影装置等の眼科装置のレンズの反射防止膜として特に好適に用いることができる。
また、本発明の反射防止膜は、可視域及び近赤外域の1,000nm〜1,100nmに対し、1.0%以下、より好ましくは0.5%以下の低反射率を実現することが好ましい。この条件を満足することで、発光波長1μm近傍の波長掃引光源を用いたSS−OCTのような光干渉計測を利用した3次元眼底像撮影装置等の眼科装置のレンズの反射防止膜として特に好適に用いることができる。
また、上述のような反射防止膜を備えることで、本発明の光学素子及び本発明の眼科装置は、可視域及び近赤外域における、より広い帯域に対して優れた反射防止の効果を奏することが可能となる。その結果、光学素子及び眼科装置の生産性を向上させることもできる。
以下、本発明に係る反射防止膜を備えた光学素子、及び眼科装置の実施例について、図面を参照しながら説明する。
(実施例1)
本発明の実施例1に係る反射防止膜を備えた光学素子について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1に係る反射防止膜10を備えた光学素子1の概略構成を示す断面図である。図2は、実施例1に係る反射防止膜10の光学特性を示すグラフであり、より詳細には可視域及び近赤外域の光線に対する反射率分布図である。
図1に示すように、本発明の実施例1に係る光学素子1は、基板2上に、9層からなる反射防止膜10が配置された構成を備えている。
基板2として、実施例1では、1.6以上の屈折率を有するガラス基板の「TIH11」(株式会社オハラ製)を用いている。なお、基板2が「TIH11」に限定されることはなく、「TIH11」と同様の光学性能を有するものであれば、他の硝材に実施例1のような反射防止膜10を設けることができる。
反射防止膜10は、図1に示すように、基板2側から順に、Nb25(五酸化二ニオブ)からなる第1層11、SiO2(二酸化ケイ素)からなる第2層12、Nb25からなる第3層13、SiO2からなる第4層14、Nb25からなる第5層15、SiO2からなる第6層16、Nb25からなる第7層17、SiO2からなる第8層18、及びMgF2(二フッ化マグネシウム)からなる第9層19を積層した構成を備えている。第9層19の外側(基板2とは反対側)は、空気層となっている。この順に各層を成膜することで、可視域から近赤外域の800nm〜900nmの帯域に対する反射防止膜10を形成している。
実施例1の反射防止膜10の層構成、各層の物質名、d線に対する屈折率、及び物理的膜厚を下記表1に示す。
表1に示すように、実施例1の反射防止膜10は、基板2側から、屈折率が2.3以上で高屈折率の物質(Nb25)からなる層と、屈折率が1.5以下で低屈折率の物質(SiO2)からなる層との組を4組積層し、基板2から最も離れた最外層にMgF2層を積層した9層構造を備える。
反射防止膜10を9層構造とすることで、可視域及び近赤外域に対する優れた反射防止性能を得ることができる。また、最外層側のNb25からなる第7層17と、MgF2からなる第9層19との間に、SiO2からなる第8層18を配置することで、成膜を良好に行うことが可能となり、可視域から入射光の減衰を抑制すること、すなわち入射光の吸収を抑制することができる。したがって、反射防止膜10及び光学素子1の品質が向上して、これらの生産性を向上させることができる。
なお、高屈折率物質として、Nb(ニオブ)に代えて、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)等を用いることができる。より具体的には、高屈折率物質として、Nb25以外にも、Ta25(酸化タンタル)、TiO2(酸化チタン)、ZrO2(酸化ジルコニウム)等を用いることができる。
実施例1では、成膜手順として、Nb25又はSiO2からなる第1層11〜第8層18をIAD成膜法で成膜し、最外層のMgF2からなる第9層19を真空蒸着法により成膜した。この成膜手順により、可視域及び近赤外域の帯域に対して、低い反射率を実現することができる。また、化学的にも物理的にも各層の結合性が向上するため、成膜の安定性がより向上し、反射防止膜10及び光学素子1の品質が向上し、これらの生産性を向上させることが可能となる。
なお、成膜手順が上記手順に限定されることはなく、すべての層をIAD成膜法によって成膜することもできるし、すべての層を真空蒸着法で成膜することもできる。また、真空蒸着法、IAD成膜法以外にも、イオンプレーティング成膜法、各種スパッタリング法等を用いて成膜することや、これらの成膜方法を組み合わせて成膜することもできる。
上述のような構成の反射防止膜10を備えた光学素子1の光学特性(反射率分布図)を、図2に示す。図2からわかるように、実施例1の反射防止膜10では、可視域(420nm〜800nm)から近赤外域の800nm〜900nmの帯域において、0.5%以下の低反射率を実現できた。
(実施例2)
次に、実施例2の反射防止膜を備えた光学素子について説明する。実施例2の光学素子は、図1に示す実施例1の光学素子1と同一の基本構成を備えているが、反射防止膜の外層に防汚層を設けるため、MgF2からなる第9層19の外側に、SiO2層をさらに積層して、反射防止膜を10層構造としている。
実施例2の反射防止膜の層構成、各層の物質名、d線に対する屈折率、及び物理的膜厚を下記表2に示す。実施例2では、ガラス基板「TIH11」上に、下記表2のような物質からなる層を積層することで、可視域から近赤外域の800nm〜900nmの帯域に対する反射防止膜を形成している。
防汚層は、指紋や汚れ等の付着を防止するために、対物レンズ等の光学素子の表面に設けられる。実施例2では、反射防止膜のMgF2層の外層にSiO2層を積層し、このSiO2層の外層に防汚層を積層している。防汚層の材料及び成膜方法としては、例えば、特開2013−156523公報に記載の材料や成膜方法を用いることができるが、これに限定されることはなく、公知の他の材料や成膜方法を用いることもできる。
実施例2のようにMgF2層と防汚層との間にSiO2層を配置することにより、防汚層によって反射防止膜の反射防止効果が阻害されることがなく、可視域及び近赤外域の800nm〜900nmの帯域に対する優れた反射防止効果を実現することができる。
実施例2の反射防止膜の光学特性(反射率分布図)を、図3に示す。図3からわかるように、実施例2の反射防止膜では、可視域(420nm〜800nm)及び近赤外域の800nm〜900nmの帯域において、0.5%以下の低反射率を実現できた。
(実施例3)
次に、実施例3の反射防止膜を備えた光学素子について説明する。実施例3の光学素子1は、基板2として「TIH11」に代えて、これよりも屈折率の低い「BAL35」(株式会社オハラ製のガラス基板)を用い、各層の物理的膜厚を変えたこと以外は、図1に示す実施例1の光学素子1と同一の基本構成を備え、9層構造の反射防止膜を備えている。この場合も、基板2が「BAL35」に限定されることはなく、「BAL35」と同様の光学性能を有するものであれば、他の硝材に実施例3のような反射防止膜を設けることができる。
実施例3の反射防止膜の層構成、各層の物質名、d線に対する屈折率、及び物理的膜厚を下記表3に示す。実施例3では、ガラス基板の「BAL35」上に、下記表3のような物質からなる層を積層することで、可視域から近赤外域の800nm〜900nmの帯域に対する反射防止膜を形成している。
実施例3の反射防止膜の光学特性(反射率分布図)を、図4に示す。図4からわかるように、実施例3の反射防止膜では、可視域及び近赤外域の800nm〜900nmの帯域において、0.5%以下の低反射率を実現できた。
(実施例4)
次に、実施例4の反射防止膜を備えた光学素子について説明する。実施例4の光学素子は、図1に示す実施例1の光学素子1と同一の基本構成を備えているが、基板2とNb25層(図1の第1層11)との間に、SiO2層を配置して、反射防止膜を10層構造としている。
実施例4の反射防止膜の層構成、各層の物質名、d線に対する屈折率、及び物理的膜厚を下記表4に示す。実施例4では、ガラス基板の「TIH11」上に、下記表4のような物質からなる層を積層することで、可視光から近赤外光の1,000nm〜1,100nmの帯域で反射防止膜を形成している。
実施例4の反射防止膜の光学特性(反射率分布図)を、図5に示す。図5からわかるように、実施例4の反射防止膜では、可視域(420nm〜720nm)及び近赤外域の1,000nm〜1,100nmの帯域において、0.5%以下の低反射率を実現できた。
(実施例5)
次に、実施例5の反射防止膜を備えた光学素子について説明する。実施例5の光学素子は、実施例4の光学素子と同一の基本構成を備えているが、反射防止膜の外装に防汚層を設けるため、MgF2層の外側に、SiO2層をさらに積層して、反射防止膜を11層構造としている。
実施例5の反射防止膜の層構成、各層の物質名、d線に対する屈折率、及び物理的膜厚を下記表5に示す。実施例5では、ガラス基板の「TIH11」上に、下記表5のような物質からなる層を積層することで、可視光から近赤外光の1,000nm〜1,100nmの帯域で反射防止膜を形成している。
実施例5の反射防止膜の光学特性(反射率分布図)を、図6に示す。図6からわかるように、実施例5の反射防止膜では、可視域(420nm〜720nm)及び近赤外域の1,000nm〜1,100nmの帯域において、0.5%以下の低反射率を実現できた。
(実施例6)
次に、実施例6の反射防止膜を備えた光学素子について説明する。実施例6の光学素子は、反射防止膜の各層の物理的膜厚を変えたこと以外は、実施例3の光学素子と同様の基本構成を備えており、反射防止膜は9層構造である。
実施例6の反射防止膜の層構成、各層の物質名、d線に対する屈折率、及び物理的膜厚を下記表6に示す。実施例6では、ガラス基板の「BAL35」上に、下記表6のような物質からなる層を積層することで、可視光から近赤外光の1,000nm〜1,100nmの帯域で反射防止膜を形成している。
実施例6の反射防止膜の光学特性(反射率分布図)を、図7に示す。図7からわかるように、実施例6の反射防止膜では、可視域(420nm〜720nm)及び近赤外域の1,000nm〜1,100nmの帯域において、0.5%以下の低反射率を実現できた。
(比較例1)
実施例1に対する比較例1として、8層の反射防止膜を有する光学素子を作製した。具体的には、図1に示す実施例1の最も基板2側の第1層11のNb25層を設けずに、第2層12〜第9層19と同様の構成の8層のみをガラス基板の「TIH11」上に成膜して比較例1の光学素子を作製した。可視域から近赤外域までの帯域における比較例1の反射防止膜の光学特性と、実施例1の反射防止膜の光学特性とを比較したグラフ(反射率分布図)を、図8に示す。図8中、細線が比較例1の反射防止膜の光学特性であり、太線が実施例1の反射防止膜の光学特性である。
図8のグラフから、Nb25層を設けずに8層からなる比較例1の反射防止膜と比較して、Nb25層を設けた9層からなる実施例1の反射防止膜は、可視域から近赤外域までの帯域に対して優れた反射防止の効果を奏することがわかる。
(比較例2)
実施例2に対する比較例2として、実施例2の反射防止膜の構成において、最も基板側の第1層のNb25層を設けずに、9層の反射防止膜を成膜した。つまり、比較例2の反射防止膜は、MgF2層までが8層である。可視域から近赤外域までの帯域における比較例2の反射防止膜の光学特性と、実施例2の反射防止膜の光学特性とを比較したグラフ(反射率分布図)を、図9に示す。図9中、細線が比較例2の反射防止膜の光学特性であり、太線が実施例2の反射防止膜の光学特性である。
図9のグラフから、全体では9層であるが、基板側にNb25層を設けないことでMgF2層までが8層である比較例2の反射防止膜と比較して、Nb25層を設けて10層(MgF2層までが9層)からなる実施例2の反射防止膜は、可視域から近赤外域までの帯域に対して優れた反射防止の効果を奏することがわかる。
(その他の比較例)
その他の比較例として、実施例1〜実施例6の光学素子の反射防止膜の層構成において、最外層側のMgF2層とNb25層との間にSiO2層を設けずに反射防止膜を成膜して光学素子を作製した。これらの比較例の光学素子では、5回の成膜作業で2回程度の頻度で入射光が吸収される現象が発生した。これに対して、実施例1〜実施例6の光学素子では、このような現象が発生しなかった。
以上、実施例1〜6の反射防止膜及び、その反射防止膜を備えた光学素子は、可視域及び近赤外域の、より広い帯域に対して優れた反射防止の効果を奏することが可能となる。また、成膜作業時に入射光が吸収される現象が抑制され、反射防止膜及び光学素子の品質が向上して、製品ごとに品質のばらつきがなく、これらの生産性を向上させることができる。また、実施例1の反射防止膜10及び光学素子1は、可視光又は近赤外光を用いて眼の診断、検査等を行う眼科装置、特に眼底検査装置や3次元眼底像撮影装置のような光断層撮影装置(Optical Coherence Tomography)等に好適に用いることができる。
なお、上記各実施例では、反射防止膜を9層〜11層構造としている。これに対して、他の異なる実施例として、基板上に積層された高屈折率物質(Nb25など)と低屈折率物質(SiO2)の繰り返し層を増やし、その最外層にMgF2を積層して、20層程度の積層構造を有する反射防止膜とすることもできる。このような反射防止膜では、可視域及び近赤外域における優れた反射防止の効果を得られるだけでなく、さらに、光学的な画像のノイズを低減させることができる。従って、光断層撮影装置等の眼科装置に組み込まれるレンズの反射防止膜として好適に用いることができる。
(実施例7)
以下、実施例7として、上記実施例1〜実施例6のような反射防止膜を設けた光学素子を備えた眼科装置の一実施例を、図10A、図10Bを参照しながら説明する。図10A、図10Bは、実施例7の眼科装置としての光断層撮影装置100の正面図と側面図である。
図10A、図10Bに示すように、実施例7の光断層撮影装置100は、ベース101と、装置本体102とを備えて構成されている。装置本体部102は、対物レンズ103等の光学素子を有する光学系が収容されたレンズ収容部104、操作画面や測定結果等を表示する液晶ディスプレイ等の表示部105等を備えている。ベース101は、装置本体102の動作を制御する制御系、駆動系等を内部に備え、被検者(患者)Xの顔(被検眼)の位置を固定するための顎受部及び額当部を有する顔受部106等を外部に備えている。そして、光学系の対物レンズ103に、実施例1〜実施例6のいずれかの反射防止膜を設けた光学素子を用いている。なお、眼科装置が実施例7の光断層撮影装置100に限定されることはなく、他の構成の光断層撮影装置を用いることもできるし、眼底カメラ等の他の眼科装置を用いることもできる。
実施例7の光断層撮影装置100では、実施例1〜6のような反射防止膜を設けた光学素子を対物レンズ103に用いることで、可視域及び近赤外域の800nm〜900nmに対して、若しくは可視域及び近赤外域の1,000nm〜1,100nmに対して、0.5%以下の反射率を実現することができる。このような優れた反射防止効果により、光断層撮影装置100のような眼科装置の光学性能や生産性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれる。
1 光学素子 2 基板 10 反射防止膜 11 第1層 12 第2層
13 第3層 14 第4層 15 第5層 16 第6層 17 第7層
18 第8層 19 第9層 100 光断層撮影装置(眼科装置)
103 対物レンズ(光学素子)

Claims (6)

  1. 基板上に形成される反射防止膜であって、
    前記基板はガラスであり、
    前記反射防止膜は、前記基板から見た場合において、
    屈折率2.39526及び物理的膜厚16.21nmのNbからなる第1層、
    屈折率1.45998及び物理的膜厚24.15nmのSiOからなる第2層、
    屈折率2.39526及び物理的膜厚41.82nmのNbからなる第3層、
    屈折率1.45998及び物理的膜厚7.75nmのSiOからなる第4層、
    屈折率2.39526及び物理的膜厚83.3nmのNbからなる第5層、
    屈折率1.45998及び物理的膜厚21.66nmのSiOからなる第6層、
    屈折率2.39526及び物理的膜厚24.31nmのNbからなる第7層、
    屈折率1.45998及び物理的膜厚18.53nmのSiOからなる第8層、
    屈折率1.38531及び物理的膜厚94.1nmのMgFからなる第9層、及び
    空気層を有することを特徴とする反射防止膜。
  2. 基板上に形成される反射防止膜であって、
    前記基板はガラスであり、
    前記反射防止膜は、前記基板から見た場合において、
    屈折率2.39945及び物理的膜厚12.79nmのNbからなる第1層、
    屈折率1.46037及び物理的膜厚36.78nmのSiOからなる第2層、
    屈折率2.39945及び物理的膜厚34.56nmのNbからなる第3層、
    屈折率1.46037及び物理的膜厚12.22nmのSiOからなる第4層、
    屈折率2.39945及び物理的膜厚87.39nmのNbからなる第5層、
    屈折率1.46037及び物理的膜厚20.11nmのSiOからなる第6層、
    屈折率2.39945及び物理的膜厚24.69nmのNbからなる第7層、
    屈折率1.46037及び物理的膜厚11.67nmのSiOからなる第8層
    屈折率1.38559及び物理的膜厚98.66nmのMgFからなる第9層、及び
    空気層を有することを特徴とする反射防止膜。
  3. 基板上に形成される反射防止膜であって、
    前記基板はガラスであり、
    前記反射防止膜は、前記基板から見た場合において、
    屈折率1.45441及び物理的膜厚31.86nmのSiOからなる第1層、
    屈折率2.30466及び物理的膜厚17.9nmのNbからなる第2層、
    屈折率1.45441及び物理的膜厚51.51nmのSiOからなる第3層、
    屈折率2.30466及び物理的膜厚29.56nmのNbからなる第4層、
    屈折率1.45441及び物理的膜厚24.34nmのSiOからなる第5層、
    屈折率2.30466及び物理的膜厚150.84nmのNbからなる第6層、
    屈折率1.45441及び物理的膜厚25.28nmのSiOからなる第7層、
    屈折率2.30466及び物理的膜厚24.27nmのNbからなる第8層、
    屈折率1.45441及び物理的膜厚14.11nmのSiOからなる第9層、
    屈折率1.37726及び物理的膜厚101.18nmのMgFからなる第10層、及び
    空気層を有することを特徴とする反射防止膜。
  4. 基板上に形成される反射防止膜であって、
    前記基板はガラスであり、
    前記反射防止膜は、前記基板から見た場合において、
    屈折率2.30113及び物理的膜厚7.11nmのNbからなる第1層、
    屈折率1.45422及び物理的膜厚40.76nmのSiOからなる第2層、
    屈折率2.30113及び物理的膜厚24.97nmのNbからなる第3層、
    屈折率1.45422及び物理的膜厚21.63nmのSiOからなる第4層、
    屈折率2.30113及び物理的膜厚145.89nmのNbからなる第5層、
    屈折率1.45422及び物理的膜厚25.03nmのSiOからなる第6層、
    屈折率2.30113及び物理的膜厚24.41nmのNbからなる第7層、
    屈折率1.45422及び物理的膜厚11.83nmのSiOからなる第8層、
    屈折率1.37672及び物理的膜厚102.65nmのMgFからなる第9層、及び、
    空気層を有することを特徴とする反射防止膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射防止膜を備えたことを特徴とする光学素子。
  6. 請求項5に記載の光学素子を備えたことを特徴とする眼科装置。
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