JP6547633B2 - 炭酸化物からの膜状遊離炭素製造方法 - Google Patents

炭酸化物からの膜状遊離炭素製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭酸化物から炭素を分離して膜状の遊離炭素を製造する方法に関するものである。
炭酸化物は、各種添加剤又は各種原料として使用されることが多い。例えば、炭酸ナトリウムは、洗剤、入浴剤、ソーダガラスの原料として使用されており、食品添加物としての使用も認められている。炭酸カルシウムは、ベビーパウダー、チョーク、ゴムの添加剤、入浴剤、歯磨き粉、化粧品の原料として使用されている。
しかしながら、炭酸化物から遊離炭素を製造する試みはほとんど知られていない。
一般的な炭素の製造方法として、特許文献1〜4には、ピッチ、タール等の有機物を加熱して製造する方法、特許文献5及び6には、アセチレンガスを燃焼等して製造する方法が開示されている。また、生石灰CaOは効率良くCO2を吸収し炭酸カルシウムCaCO3が生成することが知られており、炭酸カルシウム中の炭素を分離し遊離炭素とすることができると、トータルとして、CO2をCへ転化することができる。
特開2002−083595号公報 特開2011−168761号公報 特開2006−236942号公報 特開2012−246215号公報 特開2009−227552号公報 特開2007−091495号公報
本発明の目的は、上記実情に鑑み、遊離炭素を、炭酸化物から効率良く製造する方法を提供することである。さらに、絶縁物である酸化物セラミックス表面に膜状の遊離炭素を析出させることも目的である。
本発明者らは、水ガラス又はアルカリ珪酸化物と炭酸化物を混合し、非酸化性雰囲気中で、700℃以上1600℃以下に加熱して炭酸化物からの炭素を分離する技術を見出し、既に、特願2014−240553号において報告している。そこで、本発明者らは、この技術に基礎とし、上記課題を解決する方法について鋭意検討した。
その結果、水ガラスと炭酸化物を混合し、これをシリカアルミナ系セラミックス焼結体表面に薄く塗布後加熱することにより、炭酸化物から遊離炭素を効率良く、又、膜状に製造する技術を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は次の通りである。
(1)水ガラスと炭酸化物を混合した混合物を基材表面に塗布し、加熱して炭酸化物から炭素を分離して膜状遊離炭素を製造する方法において、
前記基材としてシリカアルミナ系セラミックス焼結体を用い、
加熱前の前記混合物を前記シリカアルミナ系セラミックス焼結体表面に塗布厚さが0.05〜1mmとなるように塗布して非酸化性雰囲気中で700℃以上1600℃以下に加熱する
ことを特徴とする膜状遊離炭素の製造方法。
(2)前記炭酸化物が、アルカリ金属元素の炭酸化物及びアルカリ土類金属元素の炭酸化物の少なくとも一方であることを特徴とする前記(1)に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
(3)前記炭酸化物が、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムの少なくとも一方であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
本発明により、通常の炭素源として使用することができる遊離炭素を、炭酸化物から効率良く製造することが可能となり、炭酸化物の利用範囲を広げることができる。また、絶縁物である酸化物セラミックス表面に膜状の遊離炭素を析出させることも可能となる。
さらに、生石灰CaOは効率良くCO2を吸収し炭酸カルシウムCaCO3が生成することが知られており、本発明の方法を用い、炭酸カルシウム中の炭素を分離し遊離炭素とすると、トータルとしてCO2をCへ転化することができる。
また、CaOの代わりに、Na2OにCO2を吸収させNa2CO3を生成させ、本発明の方法を用い、炭酸ナトリウム中の炭素を分離し遊離炭素とすると、トータルとしてCO2をCへ転化することができる。同様の反応は、他の酸化物に、特にアルカリ土類及びアルカリ金属の酸化物にCO2を吸収させ炭酸化物を生成させた場合にも適用できる。
以下、本発明の遊離炭素製造方法について順次説明する。
まず、原料について説明する。
水ガラスは、珪酸ナトリウムの水溶液であり、珪酸ナトリウムはNa2O・nSiO2の分子式で記載される。ここで係数nは連続的に変化することができ、一般的には、n=0.5〜4程度のものが多いが、本発明において、特にnが限定されるわけではない。水ガラス中の固形分である珪酸ナトリウムの割合は、10〜60質量%程度が一般的であるが、これについても、特に限定されるわけではない。ただ、固形分濃度が高い、即ち水分量が少ないと水ガラスの粘性が高くなり炭酸化物との混合時に扱い難さが生じる。扱い易いものとしては、例えば、n=1〜3、固形分濃度30〜50質量%程度のものを挙げることができる。
炭酸化物は、特に限定されるわけではないが、例えば、アルカリ金属元素の炭酸化物やアルカリ土類金属元素の炭酸化物が使用可能であり、具体的には、炭酸ナトリウムや炭酸カルシウムを挙げることができる。また、他の金属元素、例えば炭酸銀等も用いることができる。形態は、一般的な粉末のものが使用でき、例えば、平均粒径が1μm〜0.5mm、好ましくは、10〜100μmのものが使用できる。
次に、混合について説明する。
炭酸化物と水ガラスの混合方法は一般的な混合方法でよく、乳鉢での混合、また、各種混合器、例えば、回転式の混合器等での混合が使用できる。炭酸化物と水ガラスの混合比率も、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸化物/水ガラスの質量比として、0.05〜5を選択できる。この比率は、炭酸化物と水ガラスの混合し易さに基づいており、混合し難さを許容するなら、炭酸化物/水ガラスの質量比として、0.01〜20でもよい。
上述したように、炭酸化物は平均粒径1μm〜0.5mm程度の粉末が多いが、水ガラスとの混合には、回転式の混合器であれば、例えば、60rpmで1〜10分、好ましくは、2〜5分も混合すると十分である。
この混合物をシリカアルミナ系セラミックスの表面に塗布するわけであるが、混合物が粘性を有するので、塗布方法としては、へら、はけ等で機械的に塗布する方法が好ましいが、これら塗布方法に限定されるわけではない。
混合物の塗布厚さは、0.05mm以上1mm以下とする。上述の混合物は粘性を有するため、一般的には、0.05mmよりも薄く塗布するには労力を要するし、塗布単位面積当たりの炭酸化物量も減少する。さらに、0.05mmより薄く塗布しようとすると、混合物の粘性のため塗布物が島状に分離することがある。
本発明のメカニズムについては下記でも触れるが、水ガラス中の水分が気化し残ったアルカリ珪酸化物中を炭酸化物の酸素原子が拡散し炭素が取り残される、と推測している。この現象が効率良く進行するには、炭酸化物が水ガラス中成分のアルカリ珪酸化物でできるだけ完全に包み込まれる必要がある。もし包み込みが不完全なまま加熱すると、炭酸化物から二酸化炭素が抜ける通常の反応が進行するのみで、酸素が抜け炭素が残る本発明の反応は進みにくい。以上の理由から塗布厚さは0.05mm以上とする。
また、混合物は粘性を有するが、1mm以上の厚さで塗布すると塗布位置から徐々に流出し、装置上問題が生じるため、避ける方が良い。さらに、1mm以上の厚さでは、炭酸化物は完全に包み込まれるものの、水ガラス中の水分が気化し残ったアルカリ珪酸化物が厚くなり、この中を炭酸化物の酸素原子が拡散することが難しくなる。結果、本発明の炭素が取り残される反応は進み難くなると考えられる。
シリカアルミナ系セラミックスの材質としては、シリカ(SiO2)の含有率が1〜90質量%程度が好ましく、さらに好ましくは10〜90質量%である。この組成の酸化物セラミックスが好ましい理由としては、上記混合物との濡れ性が良いことが上げられる。濡れ性が良いと、上述したような塗布物が島状になることが生じ難く、加熱時に炭酸化物が水ガラス中成分のアルカリ珪酸化物で完全に包み込まれる現象が効率良く生じる。従って、炭酸化物から効率良く膜状遊離炭素が析出すると考えられる。
シリカアルミナセラミックスの形状としては、特に制約は無く、板状のものが好ましく、平板、湾曲板等を使用することができる。また、板厚は工業的に使用可能なものであれば特に制約は無い。
次に、加熱について説明する。
加熱方法としては各種加熱炉が使用可能である。また、様々な高温プロセスから排出される排熱も、温度が適合すれば使用可能であり、排熱利用の加熱装置も使用できる。また、太陽光を集光する加熱装置も使用可能である。
これら加熱装置に、上述の混合物を塗布したシリカアルミナ板を入れたるつぼを装入し、非酸化性雰囲気中で加熱すればよい。シリカアルミナ板の設置状態としては特に限定されるものではなく、混合物の塗布面を上にした水平状態、斜め状態のいずれでも良く、この結果湾曲しているシリカアルミナ板も使用可能となり、材質が合えばるつぼ内面自体をシリカアルミナ板として利用することも可能である。また、混合物の塗布面が下側であっても特段の問題は無い。ただし、加熱時に塗布混合物が流出又は落下しないように、シリカアルミナ板の塗布面を上側とした水平状態で設置することが好ましい。
るつぼ材質としては、特に限定されるものではないが、加熱温度に対し耐熱性のあるものが選択されるべきである。例えば、シリカアルミナ、アルミナ、石英等の材質のるつぼが使用可能である。また、るつぼ材質がシリカアルミナであれば、るつぼ内面に上述の混合物を塗布し、このるつぼを加熱することでも良いことは、上述したとおりである。
雰囲気として、非酸化性雰囲気が選択される。それは、生成した遊離炭素の酸化を防止するためであり、例えば、アルゴン雰囲気等の不活性ガスの雰囲気、さらに窒素雰囲気も選択できる。雰囲気ガスの純度としては、一般的なガスボンベの純度、例えば、99.99%で十分である。この程度の純度があれば、一般的な反応装置において、生成した遊離炭素の酸化を実質的に無視することができる。雰囲気ガスの流量としては特に、制約は無く、経済的な観点から少量でよく、加熱による反応容器内圧力の上昇・破損を防ぐ目的で、ガスフロー系にて本発明を実施するなら、排気管からガスが逆流しない流量であればよい。この流量として、例えば、数10mL〜数10L/分、好ましくは、100mL〜2L/分の流量を挙げることができる。
加熱温度は、700℃以上1600℃以下が良い。実施例から分かるように、本発明により炭酸化物から遊離炭素を生成させるためには700℃以上が必要である。また、加熱温度が1600℃より高くなると、遊離炭素は少ししか認められなくなるので、加熱温度は1600℃以下が良い。1600℃より高温では、一度生成した遊離炭素がアルカリ珪酸化物により酸化されるために減少するのではないかと推測しているが、詳細は不明である。さらに、一般的なるつぼの耐熱性を考慮すると、1300℃以下がより好ましい。
加熱の昇温速度は、特に制約が無く、例えば、通常の加熱炉の昇温速度である1〜40℃/分、好ましくは、10〜20℃/分が選択できる。最高温度での保持時間も、特に制約は無く、経済的な観点から短時間を選択してよく、例えば、1〜20分、好ましくは、5〜10分で十分である。冷却速度も、特に制約は無く、最高温度での保持時間終了後、直ちに加熱を終了し、装置の自然冷却に任せてよく、もし、装置の構造上から冷却速度に制限があるならば、それに従ってよい。
これらの製造方法によって生成した膜状遊離炭素は、固化した水ガラスとシリカアルミナセラミックス板の間に析出している。温度が低下してから、温水で固化した水ガラスを溶解するとシリカアルミナセラミックス板の表面に膜状遊離炭素が固着している状態となる。これは、絶縁物のセラミックス板の表面に導電性の炭素が膜状に生成している状態であり、各種用途に使用可能である。
ここで、固化した水ガラスは、温水で洗浄すれば溶解するが、100℃以下の通常の温水では完全溶解は難しく、その結果、シリカアルミナセラミックス板の表面に膜状遊離炭素が固着していると考えられる。温水の代わりにフッ化水素酸で洗浄すれば、固化した水ガラスを完全除去することが可能であり、膜状遊離炭素は剥離し粉末状となり液体中に懸濁するので、これを濾過・回収することもできる。得られた粉末状遊離炭素は、通常の炭素源として使用することができる。
本発明の反応メカニズムについてほとんど分かっていないが、以下のメカニズムが推測される。
水ガラスは、化学量論的に最大量の酸素原子を有しており、還元物質としては作用できない。従って、反応の進行に還元物質は関与しておらず、水ガラスは触媒として作用し、炭酸化物から遊離炭素を生成させると考えられる。推測されるメカニズムとしては、加熱下では、水ガラス中の水分はほぼ気化し主としてアルカリ珪酸化物が残っており、炭酸化物の酸素原子がアルカリ珪酸化物中を拡散し、炭素が取り残されるというものである。ただ、このメカニズムは、今のところ推測である。
上記メカニズムが正しいならば、700℃以下ではアルカリ珪酸化物中の酸素拡散速度が十分でなく、従って、本発明では700℃以上が必要と考えられる。また、1600℃より高温では、一度生成した遊離炭素がアルカリ珪酸化物により酸化されると推測される点は、上述したとおりである。
本発明による遊離炭素生成効率は、後述する発明例7に記載しているように90%近い。この様に、水ガラスと炭酸化物を混合し、シリカアルミナ系セラミックス表面に薄く塗布後加熱する本発明では遊離炭素生成効率が非常に高い。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(発明例1)
市販の1号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:2、含水量は約52%)と市販の炭酸ナトリウム粉末を混合し、幅約10mm、長さ約30mm、厚さ1mmのシリカアルミナ板(シリカ約23%含有、株式会社ニッカトーの材質F)に厚さ0.1〜0.2mmで塗布した。尚、塗布には樹脂製へらを使用し、質量増を測定しながら所定厚さに塗布した。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で所定温度まで10℃/分で昇温し、5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板の上記混合物塗布面が黒く変色し、黒色物が膜状に析出していた。以上の実験条件及び結果を表1に示す。
シリカアルミナ板希釈したフッ化水素酸で洗浄したところ、粉状の黒色物が分離し洗浄液の表面に浮上したので、これを濾過分離し、純水で洗浄、その後乾燥した。表1の全実験について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。さらに、表1のNo.8の黒色析出物について、XPS(X線光電子分光法)による分析を行ったところ、グラファイト型カーボンであった。
実験系の中に炭素源は炭酸ナトリウムしかないので、炭酸ナトリウムから遊離炭素が生成したことが判明した。また、製造された炭素は、ほぼ100%純度の遊離炭素であるので、燃料等の炭素源として使用することができる。
Figure 0006547633
(比較例1)
比較例1は、温度条件を変更したことを除いて、発明例1と同様の実験を行った。比較例1では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表2に示す。
Figure 0006547633
(発明例2)
発明例2は、市販の1号水ガラスの代わりに、市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)を使用したことを除いて、発明例1と同様の実験を行った。実験条件及び結果を表3に示す。
表3の全実験について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。さらに、表3のNo.20の黒色析出物について、XPS(X線光電子分光法)による分析を行ったところ、グラファイト型カーボンであった。
実験系の中に炭素源は炭酸ナトリウムしかないので、炭酸ナトリウムから遊離炭素が生成したことが判明した。
Figure 0006547633
(比較例2)
比較例2は、温度条件を変更したことを除いて、発明例2と同様の実験を行った。比較例2では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表4に示す。
Figure 0006547633
(発明例3)
発明例3は、市販の炭酸ナトリウム粉末の代わりに、市販の炭酸カルシウム粉末を使用したことを除いて、発明例1と同様の実験を行った。実験条件及び結果を表5に示す。
表5の全実験について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。さらに、表5のNo27の黒色析出物について、XPS(X線光電子分光法)による分析を行ったところ、グラファイト型カーボンであった。
実験系の中に炭素源は炭酸カルシウムしかないので、炭酸カルシウムから遊離炭素が生成したことが判明した。
Figure 0006547633
(比較例3)
比較例3は、温度条件を変更したことを除いて、発明例3と同様の実験を行った。比較例3では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表6に示す。
Figure 0006547633
(発明例4)
発明例はシリカアルミナ板のシリカ含有量の適正値を求めるために実施した。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、混合物の内0.15g程度を縦1cm横3cm厚さ1mm程度のシリカアルミナ板に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.2〜0.3mm程度である。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板表面の遊離炭素析出状態を観察した。以上の実験条件及び結果を表7に示す。また、No35〜39のシリカアルミナ板は、それぞれ株式会社ニッカトーのSSA−S、SSA−H、F、CW(無釉薬)、CW(釉薬)の材質品を使用した。No40は石英板を使用した。
Figure 0006547633
(発明例5)
発明例は水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために実施した。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、縦1cm横3cm厚さ1mm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.07〜0.1mm程度である。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板表面は黒く変色し、膜状遊離炭素が析出していた。
(比較例4)
比較例4は、発明例5と同様の条件で厚さ0.03mmにて塗布しようとしたが、塗布物が島状に分離してしまい、縦1cm横3cm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)全体に塗布することができなかった。
(発明例6)
発明例6も水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために実施した。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、縦1cm横3cm厚さ1mm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.7〜0.9mm程度である。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板表面は黒く変色し、膜状遊離炭素が析出していた。
(比較例5)
比較例5も、水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために、発明例6と同様の混合物を、発明例6と同一材質のるつぼの底に厚さ1.2mmにて塗布し、同様の加熱を実施した。冷却後、シリカアルミナるつぼの底の混合物は薄青色となっており、遊離炭素の析出は確認できなかった。比較例はるつぼ底に塗布したので塗布物の流出は生じないが、塗布厚さが1.2mmでは厚すぎ遊離炭素が析出しないことが分かる。
(比較例6)
比較例6も、水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために実施した。混合物を厚さ1.2mmにて塗布したこと以外は、発明例6と同様の条件で行った。冷却後、シリカアルミナ板から塗布物が流れ落ちており、この厚さではシリカアルミナ板の表面に混合物を完全に保持することができなかった。比較例6から塗布厚さが1.2mmでは塗布物の保持が難しく、塗布物が流出した場合には遊離炭素が得られないことが分かる。
(発明例7)
発明例7は遊離炭素生成効率を求める目的で行ったものである。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、混合物の内0.15gを幅約10mm、長さ約30mm、厚さ1mm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.2〜0.3mm程度である。シリカアルミナ板を塗布物が剥離しないよう注意しながら数mmの破片に折り割った。
これら破片全体を直径10mm長さ60mm程度の石英セルに装入し、石英セルをガス流通下で加熱可能なガス分析装置にセットした。この石英セルをヘリウムガス流通下で1100℃まで10℃/分で昇温し、5分間保持後室温まで自然冷却した。この間、発生してくる二酸化炭素ガスを定量したが、1100℃保持中および自然冷却中に発生してくる二酸化炭素ガスは、昇温中に発生する量と比べて無視できる極々わずかな量であった。1100℃保持中に発生する二酸化炭素ガスが無視できる量であったことから、1100℃昇温中に反応は完結していると考えられる。尚、ガス分析装置には、マイクロトラック・ベル(株)製の四重極質量分析器が組み込まれている。
四重極質量分析器の二酸化炭素定量性の更正には、1%二酸化炭素と99%ヘリウムの混合ガス、2%二酸化炭素と98%ヘリウムの混合ガス、10%二酸化炭素と90%ヘリウムの混合ガスを用いて行った。また、二酸化炭素、ヘリウム等の分析は1〜数秒程度の間隔で行い、これら分析値の総和とヘリウム流量から二酸化炭素量を定量した。
相図等から考えると、炭酸ナトリウムが水ガラス中の珪酸ナトリウムと反応すると二酸化炭素を放出し、酸化ナトリウムとなって完全に珪酸ナトリウムに取り込まれることが示唆されるが、こうであるなら炭酸ナトリウムのモル数に合致した二酸化炭素量が測定されるはずである。これに対し発明例では、炭酸ナトリウムのモル数の14%に対応する二酸化炭素量しか測定されなかった。従って、本発明例による遊離炭素生成効率は86%と算出された。
尚、本実験後の石英セル中のシリカアルミナ板の上記混合物塗布面には、黒く遊離炭素が析出していた。
(比較例7)
比較例7は遊離炭素生成効率を求める目的で行ったものである。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、混合物の内0.15gを0.5mm程度の粒状とし、これとシリカアルミナセラミックス粒(粒径0.6〜1mm程度)約6gを混合した。
これら全体を直径10mm長さ60mm程度の石英セルに装入し、石英セルをガス流通下で加熱可能なガス分析装置にセットした。この後は、発明例5と同様の実験を行った。
比較例7では、炭酸ナトリウムのモル数の47%に対応する二酸化炭素量しか測定されなかった。従って、比較例7による遊離炭素生成効率は53%と算出された。
尚、本実験後の石英セル中には、わずかではあるが、所々、遊離炭素が析出していた。
(発明例8)
発明例は、アルカリ金属元素の炭酸化物及びアルカリ土類金属元素の炭酸化物以外の炭酸化物を使用して実施したものである。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)と市販の炭酸銀粉末を混合し、幅約10mm、長さ約30mm、厚さ1mmのシリカアルミナ板(シリカ約23%含有、株式会社ニッカトーの材質F)に厚さ0.1〜0.2mmで塗布した。尚、塗布には樹脂製へらを使用し、質量増を測定しながら所定厚さに塗布した。これをアルミナルツボへ入れアルミナ製の蓋をした。これらをAr雰囲気の加熱炉で所定温度まで10℃/分で昇温し、5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板の上記混合物塗布面の主として上部10mm程度が黒く変色し、黒色物が膜状に析出していた。以上の実験条件及び結果を表8に示す。
シリカアルミナ板の黒色物が析出した上部10mmを割り取り希釈したフッ化水素酸で洗浄したところ、粉状の黒色物が分離し洗浄液の表面に浮上したので、これを濾過分離し、純水で洗浄、その後乾燥した。表8の全実験について、乾燥した粉状の黒色物を燃焼赤外線吸収法で炭素分析したところ、ほぼ100%の炭素であった。実験系の中に炭素源は炭酸銀しかないので、炭酸銀から遊離炭素が生成したことが判明した。尚、発明例1〜7では混合物塗布面全体が黒色化したのに対し、本発明例では混合物塗布面の上部10mm程度しか黒色化しておらず、遊離炭素生成効率はアルカリ金属元素の炭酸化物及びアルカリ土類金属元素の炭酸化物と比べ低いことが分かる。
Figure 0006547633
(比較例8)
比較例8は、温度条件を変更したことを除いて、発明例8と同様の実験を行った。比較例8では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表9に示す。
Figure 0006547633
本発明により、通常の炭素源として使用することができる遊離炭素を、炭酸化物から効率良く製造することが可能となる。また、絶縁物であるシリカアルミナセラミックスの表面に導電性の炭素膜を形成することも可能となる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。

Claims (3)

  1. 水ガラスと炭酸化物を混合した混合物を基材表面に塗布し、加熱して炭酸化物から炭素を分離して膜状遊離炭素を製造する方法において、
    前記基材としてシリカアルミナ系セラミックス焼結体を用い、
    加熱前の前記混合物を前記シリカアルミナ系セラミックス焼結体表面に塗布厚さが0.05〜1mmとなるように塗布して非酸化性雰囲気中で700℃以上1600℃以下に加熱する
    ことを特徴とする膜状遊離炭素の製造方法。
  2. 前記炭酸化物が、アルカリ金属元素の炭酸化物及びアルカリ土類金属元素の炭酸化物の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
  3. 前記炭酸化物が、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
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