JP6547633B2 - 炭酸化物からの膜状遊離炭素製造方法 - Google Patents
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しかしながら、炭酸化物から遊離炭素を製造する試みはほとんど知られていない。
(1)水ガラスと炭酸化物を混合した混合物を基材表面に塗布し、加熱して炭酸化物から炭素を分離して膜状遊離炭素を製造する方法において、
前記基材としてシリカアルミナ系セラミックス焼結体を用い、
加熱前の前記混合物を前記シリカアルミナ系セラミックス焼結体表面に塗布厚さが0.05〜1mmとなるように塗布して非酸化性雰囲気中で700℃以上1600℃以下に加熱する
ことを特徴とする膜状遊離炭素の製造方法。
(2)前記炭酸化物が、アルカリ金属元素の炭酸化物及びアルカリ土類金属元素の炭酸化物の少なくとも一方であることを特徴とする前記(1)に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
(3)前記炭酸化物が、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムの少なくとも一方であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
さらに、生石灰CaOは効率良くCO2を吸収し炭酸カルシウムCaCO3が生成することが知られており、本発明の方法を用い、炭酸カルシウム中の炭素を分離し遊離炭素とすると、トータルとしてCO2をCへ転化することができる。
まず、原料について説明する。
炭酸化物と水ガラスの混合方法は一般的な混合方法でよく、乳鉢での混合、また、各種混合器、例えば、回転式の混合器等での混合が使用できる。炭酸化物と水ガラスの混合比率も、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸化物/水ガラスの質量比として、0.05〜5を選択できる。この比率は、炭酸化物と水ガラスの混合し易さに基づいており、混合し難さを許容するなら、炭酸化物/水ガラスの質量比として、0.01〜20でもよい。
加熱方法としては各種加熱炉が使用可能である。また、様々な高温プロセスから排出される排熱も、温度が適合すれば使用可能であり、排熱利用の加熱装置も使用できる。また、太陽光を集光する加熱装置も使用可能である。
水ガラスは、化学量論的に最大量の酸素原子を有しており、還元物質としては作用できない。従って、反応の進行に還元物質は関与しておらず、水ガラスは触媒として作用し、炭酸化物から遊離炭素を生成させると考えられる。推測されるメカニズムとしては、加熱下では、水ガラス中の水分はほぼ気化し主としてアルカリ珪酸化物が残っており、炭酸化物の酸素原子がアルカリ珪酸化物中を拡散し、炭素が取り残されるというものである。ただ、このメカニズムは、今のところ推測である。
市販の1号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:2、含水量は約52%)と市販の炭酸ナトリウム粉末を混合し、幅約10mm、長さ約30mm、厚さ1mmのシリカアルミナ板(シリカ約23%含有、株式会社ニッカトーの材質F)に厚さ0.1〜0.2mmで塗布した。尚、塗布には樹脂製へらを使用し、質量増を測定しながら所定厚さに塗布した。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で所定温度まで10℃/分で昇温し、5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板の上記混合物塗布面が黒く変色し、黒色物が膜状に析出していた。以上の実験条件及び結果を表1に示す。
比較例1は、温度条件を変更したことを除いて、発明例1と同様の実験を行った。比較例1では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表2に示す。
発明例2は、市販の1号水ガラスの代わりに、市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)を使用したことを除いて、発明例1と同様の実験を行った。実験条件及び結果を表3に示す。
実験系の中に炭素源は炭酸ナトリウムしかないので、炭酸ナトリウムから遊離炭素が生成したことが判明した。
比較例2は、温度条件を変更したことを除いて、発明例2と同様の実験を行った。比較例2では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表4に示す。
発明例3は、市販の炭酸ナトリウム粉末の代わりに、市販の炭酸カルシウム粉末を使用したことを除いて、発明例1と同様の実験を行った。実験条件及び結果を表5に示す。
実験系の中に炭素源は炭酸カルシウムしかないので、炭酸カルシウムから遊離炭素が生成したことが判明した。
比較例3は、温度条件を変更したことを除いて、発明例3と同様の実験を行った。比較例3では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表6に示す。
発明例はシリカアルミナ板のシリカ含有量の適正値を求めるために実施した。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、混合物の内0.15g程度を縦1cm横3cm厚さ1mm程度のシリカアルミナ板に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.2〜0.3mm程度である。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板表面の遊離炭素析出状態を観察した。以上の実験条件及び結果を表7に示す。また、No35〜39のシリカアルミナ板は、それぞれ株式会社ニッカトーのSSA−S、SSA−H、F、CW(無釉薬)、CW(釉薬)の材質品を使用した。No40は石英板を使用した。
発明例は水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために実施した。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、縦1cm横3cm厚さ1mm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.07〜0.1mm程度である。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板表面は黒く変色し、膜状遊離炭素が析出していた。
比較例4は、発明例5と同様の条件で厚さ0.03mmにて塗布しようとしたが、塗布物が島状に分離してしまい、縦1cm横3cm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)全体に塗布することができなかった。
発明例6も水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために実施した。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、縦1cm横3cm厚さ1mm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.7〜0.9mm程度である。これをアルミナルツボへ入れ、Ar雰囲気の加熱炉で1200℃まで10℃/分で昇温し5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板表面は黒く変色し、膜状遊離炭素が析出していた。
比較例5も、水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために、発明例6と同様の混合物を、発明例6と同一材質のるつぼの底に厚さ1.2mmにて塗布し、同様の加熱を実施した。冷却後、シリカアルミナるつぼの底の混合物は薄青色となっており、遊離炭素の析出は確認できなかった。比較例はるつぼ底に塗布したので塗布物の流出は生じないが、塗布厚さが1.2mmでは厚すぎ遊離炭素が析出しないことが分かる。
比較例6も、水ガラスと炭酸化物の混合物の塗布厚みを求めるために実施した。混合物を厚さ1.2mmにて塗布したこと以外は、発明例6と同様の条件で行った。冷却後、シリカアルミナ板から塗布物が流れ落ちており、この厚さではシリカアルミナ板の表面に混合物を完全に保持することができなかった。比較例6から塗布厚さが1.2mmでは塗布物の保持が難しく、塗布物が流出した場合には遊離炭素が得られないことが分かる。
発明例7は遊離炭素生成効率を求める目的で行ったものである。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、混合物の内0.15gを幅約10mm、長さ約30mm、厚さ1mm程度のシリカアルミナ板(シリカ約23%含有)に塗布した。塗布厚みは場所により不均一性があるものの大凡0.2〜0.3mm程度である。シリカアルミナ板を塗布物が剥離しないよう注意しながら数mmの破片に折り割った。
尚、本実験後の石英セル中のシリカアルミナ板の上記混合物塗布面には、黒く遊離炭素が析出していた。
比較例7は遊離炭素生成効率を求める目的で行ったものである。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)5.0gと市販の炭酸ナトリウム粉末4.0gを混合し、混合物の内0.15gを0.5mm程度の粒状とし、これとシリカアルミナセラミックス粒(粒径0.6〜1mm程度)約6gを混合した。
比較例7では、炭酸ナトリウムのモル数の47%に対応する二酸化炭素量しか測定されなかった。従って、比較例7による遊離炭素生成効率は53%と算出された。
尚、本実験後の石英セル中には、わずかではあるが、所々、遊離炭素が析出していた。
発明例は、アルカリ金属元素の炭酸化物及びアルカリ土類金属元素の炭酸化物以外の炭酸化物を使用して実施したものである。
市販の3号水ガラス(Na2O:SiO2比は約1:3、含水量は約61%)と市販の炭酸銀粉末を混合し、幅約10mm、長さ約30mm、厚さ1mmのシリカアルミナ板(シリカ約23%含有、株式会社ニッカトーの材質F)に厚さ0.1〜0.2mmで塗布した。尚、塗布には樹脂製へらを使用し、質量増を測定しながら所定厚さに塗布した。これをアルミナルツボへ入れアルミナ製の蓋をした。これらをAr雰囲気の加熱炉で所定温度まで10℃/分で昇温し、5分間保持後室温まで自然冷却した。冷却後、シリカアルミナ板の上記混合物塗布面の主として上部10mm程度が黒く変色し、黒色物が膜状に析出していた。以上の実験条件及び結果を表8に示す。
比較例8は、温度条件を変更したことを除いて、発明例8と同様の実験を行った。比較例8では、実験後、黒色物は視認できなかった。実験条件及び結果を表9に示す。
Claims (3)
- 水ガラスと炭酸化物を混合した混合物を基材表面に塗布し、加熱して炭酸化物から炭素を分離して膜状遊離炭素を製造する方法において、
前記基材としてシリカアルミナ系セラミックス焼結体を用い、
加熱前の前記混合物を前記シリカアルミナ系セラミックス焼結体表面に塗布厚さが0.05〜1mmとなるように塗布して非酸化性雰囲気中で700℃以上1600℃以下に加熱する
ことを特徴とする膜状遊離炭素の製造方法。 - 前記炭酸化物が、アルカリ金属元素の炭酸化物及びアルカリ土類金属元素の炭酸化物の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
- 前記炭酸化物が、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜状遊離炭素の製造方法。
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