以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明のウォッシャポンプのウォッシャタンクへの装着状態を説明する分解斜視図を示している。
図1に示すように、ウォッシャタンク(タンク)10は、白色かつ半透明のプラスチック材料等により中空の略直方体形状に形成され、その内部には、ウォッシャ液等の洗浄液(液体)Wが貯留されている。ウォッシャタンク10は、当該ウォッシャタンク10の外郭を形成するタンク壁12を備えており、タンク壁12の底部側(図中下側)には、ポンプ装着部13が一体に設けられている。ポンプ装着部13は、ウォッシャタンク10の内側に窪んで設けられ、ポンプ装着部13には、ウォッシャポンプ20のハウジング30を保持する一対のタンク側保持部14が設けられている。各タンク側保持部14は、ポンプ装着部13の一部を、その径方向内側に突出させることにより設けられ、各タンク側保持部14同士の離間寸法はW1に設定されている。
ポンプ装着部13の底部側には、ウォッシャポンプ20の吸入管32cが差し込まれる差し込み孔15が設けられている。差し込み孔15には、ゴム等の弾性材料により環状に形成されたグロメット16が装着されている。グロメット16は、ウォッシャタンク10と吸入管32cとの間で弾性変形され、差し込み孔15と吸入管32cとの間を密閉している。これにより、ウォッシャタンク10とウォッシャポンプ20との間からの洗浄液Wの漏洩が防止され、かつウォッシャポンプ20のウォッシャタンク10に対するがたつきが防止される。
ここで、ポンプ装着部13は、ウォッシャタンク10の内側に窪んでいるため、吸入管32cを差し込み孔15に差し込み、かつ各タンク側保持部14にハウジング30を保持させた状態、つまりウォッシャタンク10にウォッシャポンプ20を組み付けた状態のもとで、ウォッシャポンプ20の殆どがポンプ装着部13の内側に入り込むようになっている。したがって、ウォッシャタンク10からウォッシャポンプ20が大きく突出するようなことが無い。よって、ウォッシャタンク10およびウォッシャポンプ20(ウォッシャ装置)を、自動車等の車両のエンジンルーム内(図示せず)に容易に設置することができる。なお、ウォッシャ装置は、図1に示すように、ウォッシャタンク10のポンプ装着部13が下側となるようにエンジンルーム内に設置する。
図2は図1のウォッシャポンプをモータカバー側から見た斜視図を、図3は図1のウォッシャポンプをカバー部材側から見た斜視図を、図4はアーマチュアシャフトの軸方向に沿うウォッシャポンプの断面図をそれぞれ示している。
図2ないし図4に示すように、ウォッシャポンプ20は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形等することで、断面が略T字形状に形成されたハウジング30を備えている。ハウジング30は、ウォッシャポンプ20を構成する部品の中でも大きい部品であり、ウォッシャポンプ20の外郭を形成している。言い換えれば、ハウジング30を小型化することで、体格の小さなウォッシャポンプ20を実現できる。ハウジング30は、モータ収容部31と、ポンプ収容部32と、弁体収容部33とを備えている。
図5(a),(b)はモータ収容部に対するマグネットの固定構造を説明する斜視図を、図6はアーマチュアシャフトの軸方向と交差する方向に沿うモータ収容部の断面図をそれぞれ示している。
図2ないし図6に示すように、モータ収容部31は、略円筒形状に形成されており、その径方向内側には、モータ40を収容するモータ室31aが形成されている。また、モータ収容部31の径方向内側には、モータ40を形成するヨーク41の径方向外側を支持する複数の支持リブ31bが設けられている。これらの支持リブ31bは、モータ収容部31を補強する役割も果たしている。各支持リブ31bは、モータ収容部31の軸方向に延在されるとともに、モータ収容部31の周方向に所定間隔で配置されている。これにより、モータ40のモータ収容部31への装着作業を困難にすること無く、モータ40のモータ収容部31内でのがたつきが抑制される。
また、モータ収容部31の径方向外側には、図6に示すように、3つずつの補強リブ31cからなる一対のリブ群RBが設けられている。これらのリブ群RBは、モータ収容部31の小型化(薄肉化)に対応させて設けたもので、モータ収容部31を補強する役割を果たしている。合計6つの補強リブ31cは、モータ収容部31の径方向内側に設けた支持リブ31bと同様に、モータ収容部31の軸方向に延在されている。そして、一対のリブ群RBは、モータ収容部31の軸心を中心に、互いに対向するよう略180度間隔で配置されている。また、各リブ群RBをそれぞれ形成する補強リブ31cのうち、互いに最も離れた補強リブ31cの頂部の離間寸法はW2に設定されている。
ここで、ハウジング30を形成するモータ収容部31は、ウォッシャタンク10の各タンク側保持部14(図1参照)に保持される部分となっている。具体的には、互いの離間寸法がW2とされた一対の補強リブ31cが、各タンク側保持部14の間に挟持されるようになっている。すなわち、互いに最も離れた補強リブ31cの頂部の離間寸法W2は、各タンク側保持部14同士の離間寸法W1よりも若干大きい寸法に設定されている(W2>W1)。このように、複数の補強リブ31cのうちの一部は、ウォッシャポンプ20をウォッシャタンク10に固定する役割も果たしている。
図5(a)および図6に示すように、モータ収容部31の径方向内側には、磁石支持部31dが設けられている。磁石支持部31dは、モータ収容部31の底部BTから突出して設けられ、モータ収容部31の径方向内側に所定隙間Sを介して配置されている。磁石支持部31dは、断面が略円弧形状に形成され、その幅方向両側(図6中左右側)において、モータ40を形成する一対のマグネット42の幅方向一端側(図6中下側)を支持している。
また、図5および図6に示すように、モータ収容部31の径方向内側には、一対の磁石載置部31eが設けられている。これらの磁石載置部31eは、モータ収容部31の軸心を中心に、互いに対向するよう180度間隔で配置されている。各磁石載置部31eは、磁石支持部31dと略同様の形状に形成され、磁石支持部31dと同様にモータ収容部31の底部BTから突出して設けられている。そして、各磁石載置部31eは、一対のマグネット42の高さ方向一端側(図4中下側)を支持している。
ここで、モータ収容部31の軸方向に沿う底部側とは反対側(図4中上側)には、第1開口部31fが形成されており、当該第1開口部31fは、モータカバー50によって閉塞されている。なお、モータカバー50とモータ収容部31とは、超音波溶着等の接着手段により互いに密着されている。したがって、モータ収容部31の内部に雨水等が進入することは無い。
図7は図4のA−A線に沿うコンミテータの断面図を、図8は図4のB−B線に沿うアーマチュアコアの断面図を、図9はモータカバーの内側に装着されるブラシ構造を説明する説明図をそれぞれ示している。
図4ないし図9に示すように、モータ収容部31の内部には、モータ40が収容されている。ここで、モータ40は、モータ収容部31の第1開口部31fを閉塞するモータカバー50も含めて構成されている。モータ40は、鋼板をプレス加工等することで、断面が略円筒形状に形成され、その周方向に沿う一部が切り欠かれたヨーク41を備えている。そして、図5および図6に示すように、ヨーク41の径方向外側は複数の支持リブ31bに支持され、かつヨーク41は所定隙間Sに入り込んでいる。すなわち、磁石支持部31dはヨーク41の径方向内側に配置されている。
ここで、図6に示すように、ヨーク41には、その軸方向に延びる切欠部41aが形成されており、当該切欠部41aには、モータ収容部31の径方向内側に形成された位置決め突起31gが入り込んでいる。これにより、ヨーク41(モータ40)のモータ収容部31の周方向に対する位置決めが行われる。なお、ヨーク41(モータ40)のモータ収容部31の軸方向に対する位置決めは、詳細には図示しないが、モータ収容部31の底部BTの一部に、ヨーク41の軸方向一側(図4中下側)が部分的に当接することで行われる。
ヨーク41の径方向内側には、2つ(2極)のマグネット(永久磁石)42が設けられている。具体的には、一方のマグネット42の径方向内側がS極に着磁され、他方のマグネット42の径方向内側がN極に着磁されている。各マグネット42は、断面が略円弧形状に形成され、その径方向外側がヨーク41の径方向内側に接触して固定されている。すなわち、ヨーク41は各マグネット42の磁力線が通過する磁路を形成している。
ここで、各マグネット42の高さ方向一端側は、各磁石載置部31eにそれぞれ当接されており、各マグネット42の幅方向一端側は、磁石支持部31dの幅方向両側にそれぞれ当接されている。これに対し、図5に示すように、各マグネット42の高さ方向他端側(図4中上側)は、ヨーク41の軸方向他側(図4中上側)に形成された複数の支持爪41bにより支持され、各マグネット42の幅方向他端側(図6中上側)は、略U字形状に形成されたスプリングピンSPにより弾性支持されている。すなわち、各マグネット42は、スプリングピンSPのばね力によって、ヨーク41に向けてがたつくこと無く押さえ付けられている。
なお、本実施の形態においては、スプリングピンSPを2つ使うこと無く、1つのスプリングピンSPと磁石支持部31dとで、各マグネット42のヨーク41に対する固定を行っている。つまり、磁石支持部31dは非磁性材料であるため、各マグネット42が形成する磁路を乱す等の悪影響を与えずに済む。したがって、各マグネット42をより小型化することができ、ひいてはウォッシャポンプ20のさらなる小型軽量化も可能となる。
図4,図7および図8に示すように、各マグネット42の径方向内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してアーマチュアコア43が回転自在に設けられている。アーマチュアコア43の回転中心、つまりモータ40の回転中心には、アーマチュアシャフト(回転軸)44が貫通して固定されている。つまり、アーマチュアシャフト44はアーマチュアコア43とともに回転するようになっている。そして、アーマチュアシャフト44の軸方向一端側は、モータ収容部31の底部BTに装着された第1軸受B1により回転自在に支持され、アーマチュアシャフト44の軸方向他端側は、モータカバー50に装着された第2軸受B2により回転自在に支持されている。
アーマチュアシャフト44の軸方向他端側におけるアーマチュアコア43の近傍には、2つの給電ブラシ54がそれぞれ摺接されるコンミテータ(整流子)45が固定されている。図7に示すように、コンミテータ45は、合計6つのセグメント(整流子片)45aを備えており、これらのセグメント45aは、アーマチュアシャフト44の軸心を中心に、周方向に等間隔(60度間隔)で配置されている。なお、各セグメント45aは、モールド樹脂MRによって、略円柱形状となるように固められている。また、各セグメント45aのフック部FKには、コイル46がそれぞれ引っ掛けられている。
アーマチュアコア43は、複数の鋼板を積層して略円柱形状に形成されており、図8に示すように、6つのセグメント45aに対応させて、合計6つのスロット43aを備えている。言い換えれば、アーマチュアコア43は、合計6つのティースTを備えている。そして、各スロット43aには、コイル46が重ね巻きによって巻装されている。ここで、重ね巻きとは、アーマチュアシャフト44を中心に互いに対向するスロット43aに対して、コイル46をたすき状に巻く巻き方のことである。すなわち、本実施の形態では、合計6つのスロット43aを設けることで、ダブルフライヤ方式により3回の巻線作業で、コイル46のアーマチュアコア43への装着を完了させることができる。よって、巻線作業の時間短縮が図れてひいてはコストダウンを実現できる。なお、コイル46には、外周に絶縁処理が施された銅線(エナメル線等)が用いられている。
これにより、アーマチュアコア43は、各給電ブラシ54に供給される駆動電流の大きさや向きに応じて、所定の回転数で正逆方向に回転するようになっている。各給電ブラシ54には、一対の給電ターミナルTM(図9参照)の一端側がそれぞれ電気的に接続されており、各給電ターミナルTMの他端側は、モータカバー50に設けられたコネクタ接続部52の内部に突出されている。
図2ないし図4および図9に示すように、モータカバー50は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、モータ収容部31の第1開口部31fを閉塞する略円盤状に形成されたカバー本体51と、車両側の給電コネクタ(図示せず)が装着される略箱形状に形成されたコネクタ接続部52とを備えている。
カバー本体51の内側で、かつその中心部分には、アーマチュアシャフト44の軸方向他端側を回転自在に支持する第2軸受B2が設けられている。また、カバー本体51の内側には、第2軸受B2を中心に互いに180度間隔で対向するようにして、一対の保持板固定部51aが設けられている。これらの保持板固定部51aは、カバー本体51の径方向外側寄りの部分に配置され、各保持板固定部51aには、保持板53の基端部53aががたつくこと無く固定されている。
カバー本体51の各保持板固定部51aと、コネクタ接続部52との間には、屈曲形状に形成された一対の給電ターミナルTMがインサート成形により埋設されている。各給電ターミナルTMは、車両側の給電コネクタからの駆動電流を、一対の保持板53を介して各給電ブラシ54に供給するものである。つまり、各給電ターミナルTMの一端側は、各保持板53を介して各給電ブラシ54に電気的に接続されている。ここで、図9の左側の図では、図示を明確にするために、各保持板53および各給電ブラシ54に網掛けを施している。
一対の保持板53はそれぞれ同じ形状に形成され、黄銅等よりなる長尺の弾性部材を略V字形状に屈曲して形成されている。すなわち、各保持板53はそれぞればね性を有している。保持板53の長手方向一側には、保持板固定部51aに固定される基端部53aが設けられ、保持板53の長手方向他側には、略直方体形状に形成された給電ブラシ54を保持するブラシ保持部(先端部)53bが設けられている。そして、ブラシ保持部53bの基端部53a寄りの部分には、2つの屈曲部53cが設けられている。すなわち、保持板53の長手方向に沿う基端部53a寄りの部分に、2つの屈曲部53cが設けられている。
このように、2つの屈曲部53cを保持板53の基端部53a寄りの部分に設けることで、図9の想像線で示すように、コンミテータ45を挟んで、各給電ブラシ54を省スペースで容易に対向配置可能としている。また、2つの屈曲部53cを保持板53の基端部53a寄りの部分に設けることで、各給電ブラシ54をコンミテータ45に対して、最適な押圧力で摺接させるようにしている。さらには、2つの屈曲部53cを保持板53の基端部53a寄りの部分に設け、かつ屈曲部53cの屈曲角度を最適値(略90度)に設定することで、図9の右側の図に示すように、コンミテータ45を組む前の状態において、各給電ブラシ54がブラシ保持部53bの延在方向に並べられるようになっている。これにより、各給電ブラシ54を最後まで使い切れるようになっている。すなわち、各給電ブラシ54のサイズを小型化することが可能となり、この観点からも、ウォッシャポンプ20の小型軽量化に有利となっている。このように、本実施の形態のモータ40は、2極6スロット2ブラシの電動モータを採用している。
また、カバー本体51の内側には、図9に示すように、ハニカム形状(正六角形を隙間無く並べた形状)のリブ55が形成されている。リブ55は、カバー本体51からモータ40に向けて所定高さ(約1.0mm程度)で突出され、カバー本体51に一体に設けられている。リブ55は、カバー本体51の薄肉化に対応するために、カバー本体51の補強のために設けたものである。また、車両側の給電コネクタをコネクタ接続部52に抜き差しする際に、比較的大きな負荷がカバー本体51に作用するが、リブ55を設けることでカバー本体51には十分な強度が得られている。
図10はウォッシャポンプのポンプ室側(カバー部材省略)を示す平面図を、図11は図4の破線円C部の拡大図を、図12はインペラの詳細構造を説明する斜視図をそれぞれ示している。
図4および図10ないし図12に示すように、アーマチュアシャフト44の軸方向一端側には、インペラ60が一体回転可能に固定されている。インペラ60とアーマチュアシャフト44とは、互いに相対回転不能となるよう所謂Dカット形状の嵌合により固定されている。つまり、インペラ60は、モータ40によって回転される。図12に示すように、インペラ60は、アーマチュアシャフト44に固定されるインペラ本体61と、インペラ本体61から放射状に延び、かつ略三日月形状に湾曲された合計6つの羽根62とを備えている。
図11に示すように、アーマチュアシャフト44の軸方向に沿う6つの羽根62のアーマチュアコア43側(図中上側)には、所定の曲率半径Rの円弧形状に形成された椀状凸部62aが形成されている。これらの椀状凸部62aは、ポンプ室32aを形成する羽根摺接面32dに摺接するようになっている。ここで、ポンプ収容部32を形成する羽根摺接面32dの曲率半径もRとされ、これにより、羽根摺接面32dに対してインペラ60は、略隙間無く摺接するようになっている。このように、曲率半径R同士で摺接させることにより、インペラ60の羽根摺接面32dに対する多少の軸ずれを許容しつつ、互いのクリアランスを詰めてポンプ能力が低下するのを防止している。
また、インペラ本体61と6つの羽根62との間には、インペラ本体61の径方向外側に膨出された環状のフランジ部63が形成されている。このフランジ部63は、インペラ本体61に対して洗浄液Wの流れ方向(図12中破線矢印)に沿う下流側に配置されている。これにより、図12の破線矢印に示すように、洗浄液Wの流れる方向が各羽根62の先端側に速やかに向けられて、ポンプ能力を向上させている。
図4,図10および図11に示すように、ポンプ収容部32は、ポンプ室32aと、当該ポンプ室32aの上流側(ウォッシャタンク10側)に設けられた洗浄液流入孔32bとを備えている。ここで、洗浄液流入孔32bは、ウォッシャタンク10(図1参照)の差し込み孔15に差し込まれる吸入管32cの内側に形成されている。また、洗浄液流入孔32bは、図4に示すように、ウォッシャタンク10側からポンプ室32a側に向かうにつれて、その流路面積が徐々に小さくなっている。これにより、洗浄液流入孔32bに吸入された洗浄液Wの流速を高めて、ポンプ室32aに効率良く吸入できるようにしている。
ポンプ室32aは、インペラ60が回転自在に略隙間無く収容され得る扁平形状に形成され、曲率半径がRに設定された羽根摺接面32dを有している。ここで、ポンプ室32aおよび各弁室33a,33bの開口部分は、ハウジング30の第2開口部30aを形成しており、当該第2開口部30aは、カバー部材CV(図3参照)によって閉塞されている。なお、カバー部材CVは、プラスチック等の樹脂材料により略平板状に形成され、ハウジング30に対して超音波溶着等によって強固に固定されている。
また、図4に示すように、洗浄液流入孔32bの下流側(ポンプ室32a側)には、アーマチュアシャフト44が横切るように配置されている。よって、洗浄液流入孔32bとアーマチュアシャフト44との間には、ゴム等よりなるリップシールLSが設けられている。これにより、洗浄液流入孔32bを流れる洗浄液Wが、モータ室31aの内部に漏洩するのを防止している。
さらに、一対の給電ブラシ54の極性(プラス/マイナス)を反転させて、モータ40を正逆方向に回転させると、ポンプ室32aの内部においてインペラ60も正逆方向に回転される。このとき、インペラ60の回転方向に関わらず、洗浄液流入孔32bを流れる洗浄液Wは、ポンプ室32aに吸入されるようになっている。
図13(a),(b)は弁室の開口部に対する吐出孔の位置を説明する断面図を、図14(a),(b)はバルブユニットを示す斜視図を、図15は図14(a)のD−D線に沿う断面図をそれぞれ示している。
図4,図10および図13に示すように、弁体収容部33は、ポンプ室32aの洗浄液流入孔32b側とは反対側にそれぞれ配置されたフロント側弁室33aおよびリヤ側弁室33bを備えている。つまり、一対の弁室33a,33bには、ポンプ室32aから吐出された洗浄液Wがそれぞれ流入するようになっている。また、弁体収容部33には、フロント側弁室33aに対応してフロント側吐出管33cが一体に設けられるとともに、リヤ側弁室33bに対応してリヤ側吐出管33dが一体に設けられている。
そして、フロント側弁室33aに流入した洗浄液Wは、バルブユニット70を介してフロント側吐出管33cの内側のフロント側吐出孔33eに流出するようになっている。また、リヤ側弁室33bに流入した洗浄液Wは、バルブユニット70を介してリヤ側吐出管33dの内側のリヤ側吐出孔33fに流出するようになっている。ここで、フロント側吐出孔33eおよびリヤ側吐出孔33fは、本発明における一対の吐出孔を構成している。
図10に示すように、ポンプ室32aとフロント側弁室33aとの間には、フロント側流路34が設けられている。また、ポンプ室32aとリヤ側弁室33bとの間には、リヤ側流路35が設けられている。このように、ポンプ室32a,一対の弁室33a,33b,一対の吐出孔33e,33fおよび一対の流路34,35は、1つのハウジング30にそれぞれ一体に設けられている。そして、各弁室33a,33bには、インペラ60の回転方向により洗浄液Wがそれぞれ流入するようになっている。
具体的には、インペラ60を反時計回り方向に回転させることで、洗浄液Wはポンプ室32aからフロント側流路34に向けて流れるようになっている。これに対し、インペラ60を時計回り方向に回転させることで、洗浄液Wはポンプ室32aからリヤ側流路35に向けて流れるようになっている。ここで、インペラ60の各羽根62を略三日月形状に形成したことで、モータ40(図4参照)の回転数を正逆方向で同じ回転数とした場合において、フロント側流路34に流出する洗浄液Wの方が、リヤ側流路35に流出する洗浄液Wよりも流量が多くなっている。これは、フロント側はリヤ側に比して走行風を受けるため、洗浄液Wの噴射圧を大きくする必要があるからである。すなわち、本実施の形態のウォッシャポンプ20では、洗浄液Wのフロント側のウィンドシールド(洗浄面)に対する噴射位置を、走行風に依らず略一定にできるようにしている。
図10に示すように、フロント側流路34およびリヤ側流路35の長手方向に沿うフロント側弁室33a側およびリヤ側弁室33b側(図中下側)は、それぞれフロント側吐出孔33eおよびリヤ側吐出孔33fの位置まで延在されている。具体的には、図10のクロスハッチングを施した領域が、フロント側流路34およびリヤ側流路35となっている。これにより、フロント側流路34およびリヤ側流路35からの洗浄液Wは、従前に比して狭いフロント側弁室33aおよびリヤ側弁室33bに放出されるため、これらの弁室33a,33bの内部において、それぞれ急激に拡散されることが抑制される。
また、フロント側弁室33aおよびリヤ側弁室33bには、それぞれ湾曲壁部33gが設けられている。これらの湾曲壁部33gは、フロント側流路34およびリヤ側流路35の出口部分の正面に形成され、フロント側流路34およびリヤ側流路35から放出された洗浄液Wは、それぞれ湾曲壁部33gに沿うように整流される。このように、洗浄液Wの各弁室33a,33b内への急激な拡散が抑えられ、かつ洗浄液Wの各弁室33a,33b内での整流によって、洗浄液Wの各弁室33a,33b内での乱流が抑えられる。
図10に示すように、フロント側流路34の形状と、リヤ側流路35の形状とは、互いに異なっている。ただし、各流路34,35の長手方向と交差する方向の断面形状は何れも略長方形形状に形成され、かつ各流路34,35の深さ寸法は同じ寸法とされる。ここで、フロント側流路34は、本発明における一方の流路を構成し、リヤ側流路35は、本発明における他方の流路を構成している。
フロント側流路34の長手方向に沿うポンプ室32a側の流路面積の方が、フロント側流路34の長手方向に沿うフロント側弁室33a側の流路面積よりも小さく設定されている。具体的には、図10に示すように、フロント側流路34の外側(図中左側)に配置された外側壁部34aは、ハウジング30の側壁30b寄りに当該側壁30bと平行に設けられている。また、フロント側流路34の内側(図中右側)に配置された内側壁部34bは、ハウジング30の側壁30bよりも、ハウジング30の内側に設けられ、側壁30bに対して傾斜されている。
このように、内側壁部34bは、フロント側流路34のポンプ室32a側からフロント側弁室33a側に向けて、その流路面積を徐々に大きくさせている。つまり、内側壁部34bは、本発明における傾斜壁を構成している。また、図10に示すように、外側壁部34aは、内側壁部34bと対向しており、本発明における対向壁を構成している。
これにより、フロント側流路34の長手方向に沿うポンプ室32a側が絞られて、ポンプ室32aからフロント側流路34に流出する洗浄液Wの流速を高めている。よって、フロント側弁室33aへの洗浄液Wの流れをスムーズにしつつ、その後のフロント側弁室33a内への洗浄液Wの急激な拡散が抑えられる。このように、フロント側流路34は、車両のフロント側のウィンドシールドへの洗浄液Wの噴射に対応して設けられている。つまり、本実施の形態のウォッシャポンプ20では、洗浄液Wの噴射圧を大きくする必要があるフロント側への適用に適した構造を採用している。
これに対し、リヤ側の洗浄液Wの噴射圧は、フロント側の洗浄液Wの噴射圧ほど大きくする必要が無い。そのため、ハウジング30の製造のし易さ等を優先して、リヤ側流路35の長手方向に沿うポンプ室32a側の流路面積と、リヤ側流路35の長手方向に沿うリヤ側弁室33b側の流路面積とを、それぞれ同じ流路面積としている。具体的には、図10に示すように、リヤ側流路35の外側(図中右側)に配置された外側壁部35aと、リヤ側流路35の内側(図中左側)に配置された内側壁部35bとは、互いに平行とされ、何れもハウジング30の側壁30bに対して平行となっている。
ここで、フロント側流路34のポンプ室32a側の流路面積の方が、リヤ側流路35のポンプ室32a側の流路面積よりも小さく設定されている。これに対し、フロント側流路34のフロント側弁室33a側の流路面積の方が、リヤ側流路35のリヤ側弁室33b側の流路面積よりも大きく設定されている。具体的には、フロント側弁室33aからポンプ室32aまでの内側壁部34bの長さが、リヤ側弁室33bからポンプ室32aまでの内側壁部35bの長さより長くなっている。
このように、モータ40の正方向または逆方向への回転に応じてポンプ能力を異ならせて、かつフロント側流路34とリヤ側流路35との形状を異ならせたことから、フロント側流路34の方がリヤ側流路35に比べて、洗浄液Wの流量が多くかつ流速が速くなっている。
図10に示すように、フロント側吐出管33cおよびリヤ側吐出管33dの延在方向(図中左右方向)に沿う、フロント側弁室33aとリヤ側弁室33bとの間には、バルブ収容室36が設けられている。このバルブ収容室36には、ダイヤフラム式のバルブユニット70が装着されている。つまり、バルブユニット70は、一対の弁室33a,33bを仕切っている。そして、バルブユニット70を構成する切替バルブ71の弁本体71b(図15参照)が、フロント側吐出管33cとリヤ側吐出管33dとの間に配置され、フロント側吐出管33c側またはリヤ側吐出管33d側、つまり各吐出管33c,33dの延在方向に移動自在となっている。
ここで、切替バルブ71の弁本体71bの移動方向両側には、フロント側吐出孔33eおよびリヤ側吐出孔33fが配置され、切替バルブ71の弁本体71bは、フロント側弁室33aの内圧が高くなると、フロント側吐出管33cを開き、かつリヤ側吐出管33dを閉じる。これにより、洗浄液Wはフロント側吐出孔33eのみを流れて、その後、フロント側のウィンドシールドに向けて噴射される。これに対し、切替バルブ71の弁本体71bは、リヤ側弁室33bの内圧が高くなると、リヤ側吐出管33dを開き、かつフロント側吐出管33cを閉じる。これにより、洗浄液Wはリヤ側吐出孔33fのみを流れて、その後、リヤ側のウィンドシールドに向けて噴射される。
なお、バルブ収容室36には、バルブユニット70が所定の向きで装着されるようになっている。つまり、バルブユニット70には、バルブ収容室36に対して組み付け方向性を持っている。
図13(a)に示すように、フロント側弁室33aには、フロント側吐出孔33eが開口されており、当該フロント側吐出孔33eの周囲には、バルブユニット70の一側面70a(図15参照)が対向される第1対向面36aが設けられている。ここで、フロント側弁室33aと第1対向面36aとの間には、フロント側弁室33a内を流れる洗浄液Wを、フロント側吐出孔33e、つまり弁本体71bの中心に向けて整流する一対の湾曲部36bが設けられている。
図13(b)に示すように、リヤ側弁室33bには、リヤ側吐出孔33fが開口されており、当該リヤ側吐出孔33fの周囲には、バルブユニット70の他側面70b(図15参照)が対向される第2対向面36cが設けられている。ここで、リヤ側弁室33bと第2対向面36cとの間には、リヤ側弁室33b内を流れる洗浄液Wを、リヤ側吐出孔33f、つまり弁本体71bの中心に向けて整流する一対の湾曲部36dが設けられている。また、第2対向面36cには、バルブユニット70の他側面70bに設けられた誤組付防止突起72c(図15参照)が入り込む一対の窪み部36eが設けられている。なお、これらの窪み部36eは、リヤ側吐出管33d(図10参照)に向けて窪んでいる。
これらの窪み部36eは、フロント側弁室33a側には設けられていない(図13(a)参照)。すなわち、バルブユニット70の一側面70aを第2対向面36cに対向させ、かつバルブユニット70の他側面70bを第1対向面36aに対向させた状態では、誤組付防止突起72cの行き場が無くなる。そのため、バルブユニット70はバルブ収容室36から突出されて、正しく組み付けられない状態となる。このように、誤組み付けされた状態を、外観上容易に把握することができ、ひいては確実にバルブユニット70のバルブ収容室36に対する誤組み付けを防止することができる。
ここで、図13に示すように、フロント側吐出孔33eおよびリヤ側吐出孔33fの中心部分と、ハウジング30の第2開口部30a側の下端部30cとの間の距離はHに設定されている。この距離Hは、フロント側吐出管33cおよびリヤ側吐出管33dの最も太い部分の直径寸法D(図2参照)よりも大きい寸法となっている(H>D)。これにより、各吐出管33c,33d(各吐出孔33e,33f)は、それぞれハウジング30の下端部30cよりもモータ収容部31側(図中上方側)に配置されている。これにより、ウォッシャポンプ20の形状が複雑化するのを抑制しつつ、ウォッシャポンプ20の小型軽量化を実現している。
図14および図15に示すように、バルブユニット70は、略正方形形状の板状に形成されている。そして、バルブユニット70は、ゴム材料等を薄肉に形成してなる切替バルブ71と、切替バルブ71に装着されて当該切替バルブ71を補強する枠体72と、を備えている。なお、図14においては、切替バルブ71と枠体72とを明確に区別するために、枠体72に網掛けを施している。
切替バルブ71は、略正方形に形成された装着部71aを備えている。この装着部71aは、バルブ収容室36(図10参照)に装着されるようになっている。ここで、詳細には図示しないが、切替バルブ71の装着部71aは、カバー部材CVに設けたカバー部材側収容部CM(図3参照)の内側にも装着されるようになっている。
図15に示すように、装着部71aは、断面が略U字形状に形成されており、その内部には、枠体72の本体部72aの一部が装着されるようになっている。これにより、装着部71aが本体部72aによって補強されて、装着部71aをバルブ収容室36等へ装着する際に、装着部71aが変形したり傾斜したりすることが防止される。
装着部71aの径方向内側には、略円盤状に形成された弁本体71bが設けられている。この弁本体71bは、各弁室33a,33bの内圧に応じて各吐出管33c,33dの延在方向に移動される。これにより、弁本体71bの厚み方向両側によって、フロント側吐出管33cおよびリヤ側吐出管33dをそれぞれ開閉される。
また、弁本体71bと装着部71aとの間には、弁本体71bの移動時に変形される環状の薄肉部71cが設けられている。そして、図15に示すように、薄肉部71cは、弁本体71bよりも薄肉とされ、かつ断面が屈曲形状となっている。これにより、弁本体71bの移動を容易にしつつ、各吐出管33c,33dをそれぞれ確実に開閉できるようにしている。
枠体72は、切替バルブ71の剛性よりも高い剛性のプラスチック等により形成され、これにより切替バルブ71の装着部71aを十分に補強することができる。枠体72は、略正方形形状に形成された本体部72aを備えており、本体部72aの一部が装着部71aの内側に装着されている。また、本体部72aの径方向内側には、切替バルブ71の薄肉部71cの外径寸法と略同じ内径寸法に設定された円形孔72bが設けられている。これにより、弁本体71bは円形孔72bの径方向内側を、枠体72に阻害されること無く移動自在となっている。
本体部72aの四隅には誤組付防止突起72cがそれぞれ設けられている。これらの誤組付防止突起72cは、図15に示すように、バルブユニット70の他側面70bから突出されている。このように、本体部72aの四隅に設けられた誤組付防止突起72cは、弁本体71bの移動の妨げにならない。さらに言い換えれば、各誤組付防止突起72cは、本体部72aのデッドスペースに設けられている。なお、各誤組付防止突起72cを薄肉部71c側を向くように、枠体72を切替バルブ71に組み付けることはできない。すなわち、各誤組付防止突起72cは、バルブユニット70自身の誤組付防止機能も備えている。
図14に示すように、誤組付防止突起72cは、平面視で略三角形形状に形成され、円形孔72bに向けて徐々に下る傾斜面72dを備えている。ここで、各誤組付防止突起72cは、バルブユニット70をバルブ収容室36に装着した状態のもとで、それぞれリヤ側弁室33b内の四隅(図示せず)に露出される。よって、各誤組付防止突起72cに傾斜面72dをそれぞれ設けることで、リヤ側弁室33b内を流れる洗浄液Wの整流効果を下げないようにしている。つまり、各傾斜面72dは、リヤ側弁室33b内を流れる洗浄液Wの向きを弁本体71bに向ける役割を果たしている。
ここで、図15に示すように、弁本体71bの移動方向によって、その移動の硬さが異なっている。つまり、弁本体71bは、実線矢印M1の方向(図中上方)への移動は硬く、破線矢印M2の方向(図中下方)への移動は軟らかくなっている。より具体的には、実線矢印M1の方向への移動時には、薄肉部71cの移動あるいは変形が本体部72aに阻害されることになるが、破線矢印M2の方向への移動時には、薄肉部71cの移動あるいは変形は本体部72aに阻害されることが無い。これにより、弁本体71bの移動方向により、その移動の硬さが異なる。なお、硬い方向への弁本体71bの移動をフロント側とし、軟らかい方向への弁本体71bの移動をリヤ側としている。これにより、洗浄液Wをリヤ側のウィンドシールドに弱い噴射圧で噴射させて、リヤ側のウィンドシールドの広範囲を洗浄液Wで満遍なく濡らすことができる。
このように、本実施の形態のウォッシャポンプ20では、フロント側とリヤ側とで洗浄液Wの噴射圧に差を持たせることで、フロント側とリヤ側とで洗浄液Wの噴射圧を最適化している。そのため、バルブユニット70に組み付け方向性を持たせている。そこで、バルブユニット70側に4つの誤組付防止突起72cを設け、かつリヤ側弁室33b側に一対の窪み部36eを設けることで、ウォッシャポンプ20が誤組み付けされるのを防止している。したがって、ウォッシャポンプ20の組み立て過程における歩留まりを良くすることができる。
図16は図10のE−E線に沿うハウジングの断面図を、図17は図10の破線円F部の部分拡大図を、図18は多孔質フィルタの変形例を説明する部分拡大断面図をそれぞれ示している。
図1および図2に示すように、略円筒形状に形成されたモータ収容部31を、ウォッシャタンク10に設けた一対のタンク側保持部14に保持させ、これによりウォッシャポンプ20をウォッシャタンク10に装着している。したがって、平坦面を有するウォッシャタンク10と、円弧面を有するモータ収容部31との間には、図2の破線円に示すように、略三角形形状のデッドスペースDSが形成されている。そして、ポンプ収容部32のデッドスペースDSに対応する部分には、角部32eが設けられている。すなわち、角部32eは、ウォッシャポンプ20をウォッシャタンク10に装着した状態のもとで、モータ収容部31とウォッシャタンク10との間のハウジング30に配置されている。
図16および図17に示すように、モータ収容部31と角部32eとの間には、モータ収容部31の内外を連通する呼吸孔80が設けられている。より具体的には、呼吸孔80の一端側(図16中下側)は、モータ収容部31の内部に開口されており、呼吸孔80の他端側(図16中上側)は、角部32eの内部に開口されている。これにより、呼吸孔80は、モータ収容部31内のモータ室31aとハウジング30の外部との間を連通するようになっている。なお、呼吸孔80は、ポンプ収容部32のデッドスペースDS(図2参照)にある角部32eに配置されているが、ポンプ室32aには連通していない。
呼吸孔80は、図16の破線円内の部分拡大図に示すように、モータ収容部31の軸方向に貫通しており、かつ階段状に形成されている。これにより、モータ収容部31の外部であって、かつポンプ収容部32のデッドスペースDSにある角部32e(ハウジング30の外部)と、モータ収容部31内のモータ室31aとの間において、空気(AIR)が行き来できるようになっている。
ここで、モータ40の作動時に発生する熱により、モータ収容部31の内部の空気は膨張する。よって、モータ40を適正に作動させるためにも、モータ収容部31内のモータ室31aとハウジング30の外部との間において、空気(AIR)を行き来させる「呼吸構造」が必要となる。ただし、この呼吸構造を設けるべく、単に呼吸孔を備えた専用設計のハウジングとすると、かえってハウジングが大型化する虞がある。そこで、本実施の形態のウォッシャポンプ20では、ハウジング30の上述のようなデッドスペースDSとなり得る角部32eに呼吸孔80を配置している。
よって、ハウジング30が無駄に大きくなることは無く、かつ十分な呼吸機能を設けることが可能となる。さらには、ウォッシャポンプ20をウォッシャタンク10に装着した状態のもとで、ウォッシャポンプ20およびウォッシャタンク10を含むその外郭の範囲内に呼吸孔80を配置させることが可能となる。
図10,図16および図17に示すように、呼吸孔80の第2開口部30a側(図16中上側)には、水の通過を規制する一方で空気の通過を許容する多孔質フィルタ81が装着されている。多孔質フィルタ81は、呼吸孔80を塞ぐように設けられ、その外周部分を超音波溶着等することで、角部32e(ハウジング30)の内側に固定されている。ただし、多孔質フィルタ81の角部32eの内側への固定は、超音波溶着に限らず、両面テープや接着剤等を用いても良い。
図10および図17に示すように、ハウジング30におけるポンプ室32aの径方向外側で、かつ呼吸孔80に設けた多孔質フィルタ81の上流側(ハウジング30の外部側)には、各吐出管33c,33dの延在方向に沿うハウジング30の幅方向の略全域亘って、第1通気路82が設けられている。つまり、第1通気路82は、洗浄液Wの吸入方向(図17中上下方向)と交差するハウジング30の幅方向に延びて設けられ、かつ第1通気路82の一端側(図中右側)が、呼吸孔80の他端側と連通されている。
第1通気路82は、ポンプ室32aを形成するハウジング30の円弧壁30dと、当該円弧壁30dの径方向外側に設けられたハウジング30の外壁30eと、カバー部材CV(図3参照)との間に形成されている。すなわち、角部32eの内部と、当該角部32eの内部に設けられて呼吸孔80を塞ぐように設けた多孔質フィルタ81と、第1通気路82とは、それぞれハウジング30の第2開口部30aを閉塞するカバー部材CVによって覆われている。これにより、呼吸孔80,多孔質フィルタ81および第1通気路82は、アーマチュアシャフト44の軸方向から覗くことはできず、カバー部材CVによって隠されている(図3参照)。
また、洗浄液Wの吸入方向と交差するハウジング30の幅方向他側(図17中左側)には、外壁30eの一部を切り欠いて形成された切欠部30fが配置されている。これにより、空気(AIR)は、図中破線矢印に示すように、第1通気路82を介して、ハウジング30の外部と呼吸孔80との間で行き来される。すなわち、呼吸孔80(多孔質フィルタ81)は、ハウジング30の幅方向に沿うカバー部材CVで覆われた奥深くの部位に配置されることになる。
このように、呼吸孔80の上流側に、円弧壁30dと、外壁30eと、カバー部材CVとで囲まれた第1通気路82を設けることで、ハウジング30の外部と多孔質フィルタ81との間の距離を稼ぎ、これにより、多孔質フィルタ81に雨水や埃等が到達し難くしている。したがって、長期に亘り十分な呼吸機能を維持することができ、ウォッシャポンプ20の寿命を延ばすことができる。
本実施の形態のウォッシャポンプ20では、第1通気路82のさらに上流側に、第2通気路83が設けられている。そして、第2通気路83は、第1通気路82に折り返すようにして形成され、その一端側が第1通気路82の他端側に対して切欠部30fを介して連通されている。第2通気路83は、第1通気路82と同様に、洗浄液Wの吸入方向と交差するハウジング30の幅方向の略全域に亘って設けられている。
ただし、第2通気路83は、カバー部材CVで塞がれておらず、図3および図17に示すように、第2通気路83の洗浄液Wの吸入方向と交差するハウジング30の幅方向全域が開口されている。これにより、仮に、ウォッシャポンプ20が被水した場合であっても、第2通気路83が細長くかつ大きく開口されているため水膜等ができ難くなっており、よって、水分等が呼吸動作の阻害になることが効果的に抑えられる。
なお、超音波溶着等により角部32eの内側に固定される多孔質フィルタ81に換えて、図18に示すようなフィルタ部材90を、呼吸孔80に着脱自在に設けるようにしても良い。これにより、フィルタ部材90を定期的に交換できるようになり、ウォッシャポンプ20のメンテナンス性を向上させることができる。具体的には、フィルタ部材90は、ゴム等よりなる管材91と、当該管材91の軸方向一側(図中上側)に超音波溶着等により固定された多孔質フィルタ92とから構成されている。
次に、以上のように形成したウォッシャポンプ20の動作、特に、ハウジング30の内部における洗浄液Wの流れについて、フロント側とリヤ側のそれぞれについて詳細に説明する。
図19はフロント側の洗浄液の流れを説明する説明図を、図20はリヤ側の洗浄液の流れを説明する説明図をそれぞれ示している。
[フロント側]
操作スイッチ(図示せず)を操作して、モータ40のアーマチュアシャフト44を反時計回り方向に回転駆動させると、図19に示すように、インペラ60が実線矢印R1の方向に回転される。すると、ウォッシャタンク10内の洗浄液Wが、洗浄液流入孔32bを介してポンプ室32a内に吸い込まれる。その後、ポンプ室32a内の洗浄液Wは、フロント側流路34内に流出される。
ここで、インペラ60の反時計回り方向への回転時においては、時計回り方向への回転時に比してポンプ能力が高いため、フロント側流路34内に流出される洗浄液Wの流量は、図中白抜きの実線矢印に示すように多くなっている。また、フロント側流路34を流れる洗浄液Wの流速は、リヤ側流路35を流れる洗浄液Wに比して速くなっている。
その後、フロント側流路34を流れる速い流速の洗浄液Wは、フロント側弁室33a(図中網掛部)内に放出される。このとき、洗浄液Wの流速が速く、フロント側吐出孔33eの部分でフロント側弁室33a内に洗浄液Wが放出され、フロント側弁室33a内に放出された直後に洗浄液Wは湾曲壁部33gに倣って整流されるので、フロント側弁室33a内において洗浄液Wは乱流とならない。よって、フロント側弁室33a内に放出された洗浄液Wは、バルブユニット70の中心、つまり切替バルブ71の弁本体71bに向けてスムーズに集約される。
これにより、フロント側弁室33aの内圧が上昇して、図15および図19の実線矢印M1に示す方向に弁本体71bが移動されて、ひいてはフロント側吐出孔33eが開放される。その後、洗浄液Wは、フロント側のウィンドシールドの所定の射点に向けて勢い良く噴射される。このとき、リヤ側吐出管33dのリヤ側吐出孔33fは、弁本体71bにより閉じられている。
[リヤ側]
操作スイッチを操作して、モータ40のアーマチュアシャフト44を時計回り方向に回転駆動させると、図20に示すように、インペラ60が破線矢印R2の方向に回転される。すると、ウォッシャタンク10内の洗浄液Wが、洗浄液流入孔32bを介してポンプ室32a内に吸い込まれる。その後、ポンプ室32a内の洗浄液Wは、リヤ側流路35内に流出される。
ここで、インペラ60の時計回り方向への回転時においては、反時計回り方向への回転時に比してポンプ能力が低いため、リヤ側流路35内に流出される洗浄液Wの流量は、図中白抜きの破線矢印に示すように少なめとなっている。また、リヤ側流路35を流れる洗浄液Wの流速は、フロント側流路34を流れる洗浄液Wに比して遅くなっている。
その後、リヤ側流路35を流れた洗浄液Wは、リヤ側弁室33b(図中網掛部)内に放出される。このとき、リヤ側吐出孔33fの部分でリヤ側弁室33b内に洗浄液Wが放出され、リヤ側弁室33b内に放出された直後に洗浄液Wは湾曲壁部33gに倣って整流されるので、リヤ側弁室33b内において洗浄液Wは乱流とならない。よって、リヤ側弁室33b内に放出された洗浄液Wは、バルブユニット70の中心、つまり切替バルブ71の弁本体71bに向けてスムーズに集約される。
これにより、リヤ側弁室33bの内圧が上昇して、図15および図20の破線矢印M2に示す方向に弁本体71bが移動されて、ひいてはリヤ側吐出孔33fが開放される。その後、洗浄液Wは、リヤ側のウィンドシールドの所定の射点に向けて噴射される。このとき、フロント側吐出管33cのフロント側吐出孔33eは、弁本体71bにより閉じられている。
以上詳述したように、本実施の形態に係るウォッシャポンプ20によれば、ポンプ室32a、各弁室33a,33b、各吐出孔33e,33fおよび各流路34,35がそれぞれハウジング30に一体に設けられているので、これらを別部材で形成した場合における、洗浄液Wの流れる経路に洗浄液Wの流れを阻害する段差等が形成されずに済むため、洗浄液Wの圧力損失を低減することができる。
また、各流路34,35の各弁室33a,33b側が各吐出孔33e,33fの位置まで延在されているので、各流路34,35から流れ出る洗浄液Wを、従前に比して各弁室33a,33bの中央寄りの部分で放出させることができる。これにより、各流路34,35の出口部分と各吐出孔33e,33fの入口部分とを互いに近付けることができ、各弁室33a,33bの内部での洗浄液Wの乱流が抑えられて、圧力損失を低減することができる。
したがって、噴射能力の低下が抑えられて、従前と同じ噴射能力のウォッシャポンプにおいて、低出力の小型モータを採用することができ、ウォッシャポンプのさらなる小型軽量化を実現できる。
また、本実施の形態に係るウォッシャポンプ20によれば、フロント側流路34のポンプ室32a側の流路面積の方がフロント側弁室33a側の流路面積よりも小さいので、フロント側流路34を流れる洗浄液Wの流速を高めて、フロント側弁室33aへの洗浄液Wの流れをスムーズにし、その後のフロント側弁室33a内への洗浄液Wの急激な拡散を抑えることができる。よって、各弁室33a,33bの内部での洗浄液Wの乱流をより確実に抑えることができる。
さらに、本実施の形態に係るウォッシャポンプ20によれば、フロント側流路34は、ポンプ室32a側からフロント側弁室33a側に向けて流路面積を徐々に大きくさせる内側壁部34bを備えているので、フロント側流路34の流路面積を、ポンプ室32a側からフロント側弁室33a側に向けて、リニアに変化させることができる。よって、フロント側流路34内での乱流もより確実に抑えることができ、より圧力損失が少なく高効率のウォッシャポンプ20を実現することができる。
また、本実施の形態に係るウォッシャポンプ20によれば、フロント側流路34は、内側壁部34bと対向する外側壁部34aを有し、外側壁部34aは、ハウジング30の側壁30b寄りに当該側壁30bと平行に設けられ、内側壁部34bは、ハウジング30の側壁30bよりも内側に設けられているので、ハウジング30を大型化すること無く、ハウジング30の内部に、ポンプ室32a側からフロント側弁室33a側に向けて流路面積が徐々に大きくなるフロント側流路34を形成できる。よって、カバー部材CVの専用設計も不要となり、コストアップが抑えられる。
さらに、本実施の形態に係るウォッシャポンプ20によれば、フロント側流路34のポンプ室側の流路面積の方が、リヤ側流路35のポンプ室32a側の流路面積よりも小さいので、モータ40の正方向または逆方向への回転に応じてポンプ能力を異ならせることができる。
また、フロント側流路34は、車両のフロント側のウィンドシールドへの洗浄液Wの噴射に対応して設けられているので、走行風の影響を受けるフロント側のウィンドシールドに対する洗浄液Wの噴射位置を、走行風に依らず略一定にすることができる。つまり、ウォッシャポンプ20の洗浄性能を向上させることができる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、フロント側流路34の形状とリヤ側流路35の形状とを異ならせたものを示したが、本発明はこれに限らず、ウォッシャポンプ20の仕様等に応じて、フロント側流路とリヤ側流路とで同じ形状にすることもできる。
また、上記実施の形態では、フロント側流路34の内側壁部34bを傾斜壁として、フロント側流路34の流路面積をリニアに変化させるようにしたものを示したが、本発明はこれに限らず、ウォッシャポンプ20の仕様等に応じて、内側壁部34bを階段状に形成して、フロント側流路34の流路面積を段階的に変化させるようにしても良い。
さらに、上記実施の形態では、車両のフロント側およびリヤ側のウィンドシールドにそれぞれ洗浄液Wを噴射させるウォッシャポンプ20であるものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ワイパブレードの払拭方向往路側および復路側にそれぞれ洗浄液を噴射するウォッシャポンプにも適用することができる。
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。