以下、添付図面を参照しながら、例示する実施形態にかかるロープ検査システムを詳細に説明する。
図1は、実施形態にかかるロープ検査システムの概略構成例を示すブロック図である。図1に示すように、ロープ検査システム1は、例えばロープ検査装置30と、監視センタ40とを備え、エレベータ装置20に対して設置される。なお、エレベータ装置20は、ロープ検査システム1に含まれていてもよい。
本実施形態で例示するエレベータ装置20は、利用者が乗降する乗りかご21とカウンタウエイト22とをメインロープ23で連結した、いわゆるつるべ式のエレベータである。このエレベータ装置20は、巻上機26を制御することで、乗りかご21を建物に設けられている昇降路に沿って昇降させて、利用者を目的階のエレベータホールに移動させる。
ここで、本実施形態にかかるメインロープ23の一例について、図2を用いて詳細に説明する。図2において、(a)は本実施形態にかかるメインロープの断面図を示し、(b)はメインロープの側面図を示している。図2に示すように、メインロープ23は、例えば炭素鋼及びステンレス鋼等で造られた複数の素線をより合わせた複数のストランド23aを心鋼23bの周りに所定のピッチでより合わせることで構成されたワイヤロープ23Aの外周が樹脂製のカバー層23Bで覆われた構造を有する樹脂被覆ロープである。
カバー層23Bの外周面には、外側から視認することが可能なマーキング51が所定の間隔Lで設けられている。したがって、マーキング51間の間隔Lを実測することで、そのマーキング51間のメインロープ23がどの程度伸張しているかを特定することができる。そこで本実施形態では、特定された伸張度合いから、メインロープ23の劣化の程度を推定・評価する。これにより得られた推定・評価の結果は、例えばメインロープ23のメンテナンスや交換の時期を決定する際に利用することが可能である。
なお、本実施形態にかかるメインロープ23は、図2に例示する樹脂被覆ロープに限定されず、金属表面が露出したワイヤロープなど、エレベータ装置20のメインロープ23として使用可能な強度等を備えた種々のロープを用いることが可能である。ただし、そのようなロープを使用した場合でも、ロープの外周面には、外側から視認することが可能なマーキング51が所定の間隔Lで設けられているものとする。
図1の説明に戻る。巻上機26は、乗りかご21とカウンタウエイト22とを連結するメインロープ23の巻き上げを行うことで、乗りかご21を昇降させる。巻上機26は、メインロープ23の巻き上げを行う動力源となるモータ24と、モータ24の回転数を検出するパルスジェネレータ25とを有する。モータ24は、パルスジェネレータ25を介してエレベータ運転制御部27に接続されている。パルスジェネレータ25は、エレベータ装置20が稼働中、例えばある特定の周期でモータ24の回転数を示すパルス値を検出し、検出したパルス値をパルス信号としてエレベータ運転制御部27へ出力する。
モータ24の回転数を示すパルス値は、乗りかご21の昇降速度に換算することが可能な情報である。また、エレベータ運転制御部27には、パルス信号として入力されたパルス値をカウントする不図示のカウンタ回路が設けられている。このカウンタ回路は、例えば乗りかご21を下降させた際のパルス値が入力された場合にカウントダウンし、乗りかご21を上昇させた際のパルス値が入力された場合にカウントアップする。したがって、カウンタ回路のカウント値に基づくことで、昇降路上の乗りかご21の位置を特定することが可能である。
そこで、エレベータ運転制御部27は、カウンタ回路のカウント値に基づいてパルスジェネレータ25からモータ24に与えるパルス値を制御することで、乗りかご21を目的の位置まで移動させる昇降動作を実行する。
具体的には、エレベータ運転制御部27は、乗りかご21の昇降動作を制御する際に、カウンタ回路のカウント値に基づいて乗りかご21の現在位置を特定するとともに、パルスジェネレータ25から取得したパルス信号に基づいて乗りかご21の昇降速度を特定する。また、エレベータ運転制御部27は、利用者が各階のエレベータホールに設置された呼出しボタン又は乗りかご21内に設置された行先階ボタンを操作することで生成された信号に基づいて、乗りかご21を所定の位置に昇降させるためのパルス信号を生成するようにパルスジェネレータ25を制御する。そして、エレベータ運転制御部27は、生成したパルス信号をモータ24に入力してモータ24を制御することで、乗りかご21の昇降動作を制御して利用者を目的階のエレベータホールに移動させる。
なお、エレベータ運転制御部27は、乗りかご21の昇降動作の他、乗りかご21に設けられたドアの開閉動作も制御する。
また、エレベータ運転制御部27は、カウンタ回路のカウント値を示すパルス信号を、後述するロープ検査装置30における情報収集制御部33に、適宜若しくは所定の周期で出力する。なお、上述したように、カウンタ回路のカウント値を示すパルス信号のパルス値は、昇降路上の乗りかご21の位置を示している。そこで以下の説明では、エレベータ運転制御部27から出力されたカウンタ回路のカウント値を示すパルス信号のパルス値を、かご位置パルス値という。
一方、ロープ検査装置30は、図1に示すように、例えば撮像部32と、傾き補正部71と、撮像制御部31と、起動部37と、情報収集制御部33と、情報保存部34と、情報処理部35と、遠隔端末36とを備える。
撮像部32は、例えばCCD(Charge-Coupled Device)カメラなどの静止画像または動画を取得可能な撮像装置であり、メインロープ23を撮像することで得られた画像データを出力する。本実施形態では画像データは静止画像とするが、動画でも良い。
撮像部32の光学システム及び設置位置の少なくとも一方は、巻上機26と乗りかご21との間で略直線状に引張されている部分のメインロープ23を、メインロープ23の延在方向(すなわち垂直方向)に沿ってある程度の画角をもって撮像できるように調整されている。
撮像部32の設置位置としては、例えば巻上機26が設置された機械室内とすることができる。機械室内には乗りかご21が進入しないため、撮像部32をメインロープ23に近接配置することが可能であり、より鮮明なメインロープ23の画像データを取得することが可能となる。ただし、この設置位置に限定されず、メインロープ23における点検が必要な部分(以下、点検対象範囲という)を撮像することが可能な位置であれば、適宜変更することが可能である。
撮像制御部31は、撮像部32に任意のタイミングでの撮像動作または周期的な撮像動作を実行させるための制御装置である。本実施形態では、撮像制御部31は、傾き補正部71から信号を受信した場合に、撮像部32を制御して撮像を実行させる。起動部37は、例えばロープ検査装置30のオペレータが撮像制御部31に対して撮像開始の指示を直接または遠隔で入力するための操作部である。
傾き補正部71は、撮像部32によって撮像された画像データにおいて、メインロープ23が傾いた状態で撮像されている場合に、画像処理によってメインロープ23の傾きを補正する。以下、傾き補正部71によって補正される前の画像データを撮像画像、傾き補正部71によって補正された後の画像データを補正画像という。特に撮像画像と補正画像とを区別しない場合は、単に画像データという。
より具体的に、傾き補正部71の機能について説明する。図3は、本実施形態にかかる傾き補正部71の機能の一例を示す図である。図3に示すように、傾き補正部71は、撮像指示部71aと、画像一時保存部71bと、中心軸算出部71cと、モデル画像保存部71dと、中心点保存部71eと、回転処理部71fと、取得部71gとを備える。画像一時保存部71b、モデル画像保存部71d、および中心点保存部71eは、例えば、RAMやHDD等の記憶装置である。
撮像指示部71aは、撮像制御部31に対して、1回の撮像タイミング毎に、撮像を指示する信号を送信する。撮像指示部71aが撮像を指示する信号を送信するのは、例えば、オペレータによる撮像開始の指示を撮像制御部31を介して受けた後とする。
取得部71gは、撮像部32によって撮像された撮像画像を取得し、画像一時保存部71bに保存する。
モデル画像保存部71dには、基準となるモデル画像が予め保存される。モデル画像は、モデル画像上でメインロープ23の画像が予め定められた所定の位置および角度になるように、撮像部32の設置角度が調整された状態で撮像された画像である。本実施形態では、モデル画像に含まれるメインロープ23の画像の長手方向は、モデル画像の縦方向と平行になる。メインロープ23の角度の基準はこれに限定されるものではない。なお、モデル画像は、サンプル画像ともいう。
中心軸算出部71cは、撮像画像に含まれるメインロープ23の画像と、モデル画像に含まれるメインロープ23の画像とを比較し、モデル画像におけるメインロープ23の画像に対する撮像画像に含まれるメインロープ23の画像の角度を示す傾斜角度を算出する。中心軸算出部71cは、本実施形態における算出部の一例である。
図4は、本実施形態にかかる補正の一例を示す図である。図4の左の画像はモデル画像501であり、中央の画像は撮像画像500であり、右の画像は補正画像50である。
中心軸算出部71cは、撮像画像500から、メインロープ23の画像54を特定(検出)する。また、中心軸算出部71cは、特定したメインロープ23の画像54の中心軸72の位置を特定する。中心軸72は、メインロープ23の長手方向の中心線である。中心軸算出部71cは、撮像画像500における中心軸72の位置を示す座標を中心点保存部71eに保存する。
中心軸算出部71cは、撮像画像500におけるメインロープ23の中心軸72と、モデル画像501におけるメインロープ23の中心軸172とのなす角(傾きの差異)を、傾斜角度として算出する。モデル画像501と撮像画像500におけるメインロープ23の画像54の傾きが同じであれば、傾斜角度は0°となる。また、例えば、撮像部32の設置角度が基準と異なっていたり、何らかの外力によって撮像部32またはメインロープ23が傾いたりしていると、図4に示すように撮像画像500のメインロープ23の画像54がモデル画像501のメインロープ23の画像54と比べて傾いた状態になる。
中心軸算出部71cは、算出した傾斜角度を回転処理部71fに送信する。また、中心軸算出部71cは、撮像画像500からメインロープ23の画像54を検出しなかった場合、撮像画像500にメインロープ23が含まれないことを情報収集制御部33に送信する。なお、中心軸算出部71cは、異常判断処理部ともいう。
図3に戻り、回転処理部71fは、撮像画像500を、撮像画像500におけるメインロープ23の画像54の傾きをモデル画像501におけるメインロープ23の画像54の傾きに一致させるように傾斜角度分回転させる。傾斜角度と、回転処理部71fが撮像画像500を回転させる角度とは等しいため、傾斜角度は回転角度ともいう。図4の補正画像50は、回転処理部71fが撮像画像500を回転させた画像データである。回転処理部71fは、補正画像50と、撮像画像500と、中心軸72の傾斜角度とを情報収集制御部33に送信する。
図1に戻り、情報収集制御部33は、撮像画像500におけるメインロープ23の画像54の有無と、傾き補正部71によって補正された補正画像50と、撮像画像500と、中心軸72の傾斜角度と、エレベータ運転制御部27から出力されたパルス信号とを入力し、入力した補正画像50とパルス信号が示すかご位置パルス値と撮像画像500と中心軸の傾斜角度とを必要に応じて情報保存部34に入力する。
情報保存部34は、例えばデータベースやファイルサーバなどで構成された記憶領域であり、情報収集制御部33から入力された画像データ及びパルス信号が示すかご位置パルス値の他、各種データを関連付けて保存するデータ表を格納する。なお、情報保存部34内に格納されているデータ表の例については、後述において図6を用いて説明する。
情報処理部35は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの情報処理装置で構成され、情報保存部34に格納されている各種データに対する解析や演算処理を実行することで必要なデータを生成し、生成したデータを情報保存部34に格納する。また、本実施形態の情報処理部35は、メインロープ23の画像54の傾きが補正された補正画像50から、メインロープ23の側面に所定間隔で施されたマーキング51の画像を検出し、2つのマーキング51の画像間の距離に基づいて、メインロープ23の異常個所の有無を判定する。情報処理部35の機能の詳細については後述する。
遠隔端末36は、例えばPHS(Personal Handyphone System)やタブレット端末などの通信機能を備えた情報端末であり、情報保存部34に格納されている各種データの取得・閲覧や、取得したデータの転送などを実行する。
また、監視センタ40は、例えばエレベータ管理会社に構築されたコンピュータシステムであり、例えば遠隔端末36からネットワーク41を介して送られてきた各種データに基づいて、検査結果の解析や解析結果等のオペレータへの表示などを実行する。なお、ネットワーク41には、例えばインターネット(登録商標)や移動体通信網等のWAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、公衆回線、専用回線などの種々のネットワークを適用することが可能である。
以上のような構成において、法定点検や任意点検を行なう際には、まず、メインロープ23における少なくとも点検対象範囲の画像が取得される。ここで、点検対象範囲とは、たとえばメインロープ23における、乗りかご21を第1の所定位置(たとえば最上位置)から第2の所定位置(たとえば最下位置)まで移動させた際に撮像部32の撮像領域を通過する部分であり、主に、乗りかご21を昇降させる際に巻上機26と接触することで昇降時の負荷を直接的に受ける部分である。なお、本説明では、明確化のため、第1の所定位置を乗りかご21の昇降路上の最上位置とし、第2の所定位置を乗りかご21の昇降路上の最下位置とする。
点検対象範囲の画像を取得する際には、まず、オペレータは、エレベータ運転制御部27に対して指示を与えることで、乗りかご21を最上位置に移動させる。つづいて、オペレータは、起動部37を用いて撮像開始の指示を入力する。すると、起動部37から指示が入力された撮像制御部31が、傾き補正部71に撮像開始の指示を送信する。傾き補正部71は、撮像開始の指示を受けた後、1回の撮像タイミング毎に、撮像制御部31に撮像を指示する信号を送信する。撮像制御部31は、傾き補正部71から撮像を指示する信号を受けると、メインロープ23を撮像するように撮像部32を制御する。撮像指示部71aは、例えば、所定の周期で撮像を指示する信号を送信するものとする。その結果、撮像部32による周期的な撮像画像500の取得が開始され、これにより取得された撮像画像500が順次、傾き補正部71へ入力される。なお、情報収集制御部33には、エレベータ装置20が稼働中、常時、カウンタ回路のカウント値(かご位置パルス値)を示すパルス信号がエレベータ運転制御部27から入力される。
つぎに、オペレータは、エレベータ運転制御部27に指示を与えることで、乗りかご21を最上位置から最下位置へ移動させる。この乗りかご21が最上位置から最下位置へ移動する動作中に撮像部32による周期的な撮像を実行させておくことで、メインロープ23における点検対象範囲全体の画像が取得される。その後、乗りかご21が最下位置に到達すると、オペレータは、起動部37を用いて撮像停止の指示を入力する。これにより、撮像部32による周期的な撮像動作が停止する。
なお、周期的な撮像を実行中、言い換えれば点検作業中、乗りかご21の最高昇降速度は、たとえば時間軸上において連続する2つの画像に映り込んでいるメインロープ23が一部で重複することを保証し得る速度以下であることが望ましい。これにより、点検対象範囲内のメインロープ23の一部が撮像されていないということを回避できる。
また、撮像部32の撮像周期は、例えばエレベータ運転制御部27がカウンタ回路のカウント値(かご位置パルス値)を示すパルス信号を出力する周期と同程度の周期であってもよいが、これに限定されず、例えばエレベータ運転制御部27がパルス信号を出力する周期の1/a(aは2以上の整数)逓倍の周期など、種々変形することが可能である。
図5は、本実施形態にかかる傾き補正部71によって補正された補正画像50の一例を示す図である。図5の(a)〜(c)に示すように、撮像部32による一連の撮像動作では、メインロープ23の略全体が映り込むように、連続する静止画像である補正画像50(1)〜50(M)(Mは2以上の整数)が取得される。なお、図5中、符号54はメインロープ23の画像を示している。
時間軸上において連続する2つの補正画像50(m)及び50(m+1)(mは1以上M以下の整数)は、それらの一部においてメインロープ23の同じ部分の画像を含んでいる。すなわち、補正画像50(m)に映り込んでいるメインロープ23の一部と、補正画像50(m+1)に映り込んでいるメインロープ23の一部とは、重複している。
また、メインロープ23に付されたマーキング51の総数をK(Kは2以上の整数)とすると、各補正画像50(m)は、メインロープ23上で隣接する少なくとも2つのマーキング51の画像52(k−1)及び52(k)(kは2以上K以下の整数)を含んでいる。以下、マーキング51の画像(以下、マーキング51の画像を総称する場合の符号を52とする)をマーキング画像という。なお、画像解析によって検出することが困難なマーキング画像52が含まれている場合を考慮すると、各補正画像50(m)には、3つ以上のマーキング画像52が含まれていることが好ましい。図5では補正画像50を示して説明したが、撮像画像500も同様に、メインロープ23上で隣接する少なくとも2つのマーキング51の画像52を含み、3つ以上のマーキング画像52が含まれていることが好ましい。
また、メインロープ23の側面に付されたマーキング51の間隔L(図2参照)は、撮像周期の1サイクルの時間長に乗りかご21の最高昇降速度を乗算して得られる距離と同程度かそれよりも短いことが望ましい。それにより、メインロープ23の点検対象範囲内に付されたマーキング51の全てが何れかの補正画像50において先頭となるようにすることができる。
撮像部32によって周期的に取得されたメインロープ23の撮像画像500は、撮像部32から傾き補正部71へ順次出力される。ここで、撮像部32が画像データを取得したタイミングにおける乗りかご21の位置は、このタイミング近傍でエレベータ運転制御部27から出力されたパルス信号が示すかご位置パルス値に基づいて特定することができる。言い換えれば、撮像画像500および補正画像がメインロープ23のどの部分を撮像した画像であるかは、撮像タイミングの近傍でエレベータ運転制御部27から出力されたパルス信号が示すかご位置パルス値に基づいて特定することができる。
そこで情報収集制御部33は、撮像部32から傾き補正部71に撮像画像500が入力されたタイミングの直前または直後のタイミングでエレベータ運転制御部27から入力されたパルス信号が示すかご位置パルス値を、当該撮像画像500および当該撮像画像500から作成された補正画像50と関連付けて情報保存部34のデータ表に格納する。これにより、各画像データがメインロープ23のどの部分を撮影した画像であるかを、情報保存部34において管理することが可能となる。
ただし、乗りかご21の移動中と停止中とに関わらず定期的に入力される画像データ及びかご位置パルス値の全てを情報保存部34に格納すると、情報保存部34に膨大な量の不要データが蓄積されかねない。そこで情報収集制御部33は、例えば乗りかご21が停止している期間中に入力された画像データ及びかご位置パルス値を、情報保存部34には格納せずに破棄する。これにより、停止した状態でメインロープ23の同じ部分を撮影することで得られた画像データが情報保存部34に大量に蓄積されることを回避することができる。なお、乗りかご21が移動中であるか停止中であるかは、例えば連続するパルス信号が示すかご位置パルス値の差から求まる乗りかご21の昇降速度に基づいて判断することが可能である。
以上のようにして、情報保存部34に画像データ及びかご位置パルス値が格納されると、情報処理部35は、データ表において関連付けられた画像データとかご位置パルス値とから必要なデータを生成し、生成したデータを情報保存部34に格納する。ここで、情報処理部35の機能について、より詳細に説明する。
情報処理部35は、例えば情報収集制御部33から入力された画像データを保存する画像保存領域と、同じく情報収集制御部33から入力されたかご位置パルス値を保存するかご位置パルス値保存領域とを含んでいる。
また、図6に、情報保存部34内に格納されているデータ表の一例を示す。図6に例示するように、データ表には、索引(インデックス)yと、カウント変数xと、かご位置パルス値Cpと、画像データp(x)と、マーキング間距離L(x)と、不検出マーキング数nと、ロープ伸び量T(x)と、判定結果q(x)と、基準位置からのかご移動距離u5と、異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)と、傾斜角度θとが関連付けられて格納されている。図6の画像データp(x)は、補正画像50であるが、情報保存部34には、さらに撮像画像500も保存される。
索引(インデックス)yは、一連の周期的な撮像動作を個別に識別するための識別情報である。また、カウント変数xは、周期的に実行される一連の撮像動作のうちの1回の撮像動作を個別に識別するための識別情報である。したがって、同一の索引yに対応する画像データp(x)をカウント変数xの順序で重複させつつ結合させることで、メインロープ23における点検対象範囲全体の画像を再現することができる。なお、索引y及びカウント変数xは、例えば、撮像画像500および補正画像50が傾き補正部71から情報収集制御部33に入力された際に情報収集制御部33によって生成され、入力された撮像画像500および補正画像50と関連付けて情報保存部34のデータ表に格納される。
かご位置パルス値Cpは、上述したように、エレベータ運転制御部27に設けられたカウンタ回路のカウント値を示すパルス値であって、昇降路上の乗りかご21の位置を特定することが可能な情報である。画像データp(x)は、傾き補正部71によって補正された補正画像50である。また、図6には不図示であるが、データ表には、さらに撮像画像500も保存される。また、撮像画像500におけるメインロープ23が傾いていない場合には、撮像画像500が画像データp(x)としてデータ表に保存されてもよい。
マーキング間距離L(x)は、図7に例示するように、解析によって特定された補正画像50A(画像データp(x))中のマーキング画像52(k−1)〜52(k+1)のうち、ある方向に沿って1つ目のマーキング画像52(k−1)における特定の箇所(たとえば下端)から2つ目のマーキング画像52(k)における対応する箇所(たとえば下端)までの距離を示している。
ただし、補正画像50Bに映された3つのマーキング画像52(k−1)〜52(k+1)のうち、中央に位置するマーキング画像52(k)に相当する画像が、マーキング51自体の変色、消色、汚れ、キズ等が原因で不鮮明であった結果、補正画像50Bの解析ではこの画像に相当するマーキング51が検出されない場合が存在する。そのような場合、2つ目のマーキング51として、マーキング画像52(k+1)に相当するマーキング51が検出されるため、マーキング間距離L(x)には、1つ目のマーキング画像52(k−1)の特定の箇所(たとえば下端)から2つ目のマーキング画像52(k+1)の対応する箇所(たとえば下端)までの距離が格納される。なお、マーキング間距離L(x)を特定する際の各マーキング51の基準位置は、各マーキング画像52の下端に限らず、上端など、種々変更することが可能である。
不検出マーキング数nは、上述したように、画像データp(x)(補正画像50B)の解析において1つ目に検出されたマーキング51と2つ目に検出されたマーキング51との間に本来存在するはずではあるが画像データp(x)の解析によっては検出されなかったマーキング(以下、不検出マーキングという)51の数を示している。したがって、上述のようにマーキング画像52(k)に相当する画像が不鮮明であった結果、当該マーキング画像52(k)に相当するマーキング51が検出されなかった場合は、不検出マーキング数nとして、‘1’が格納される。
ロープ伸び量T(x)は、メインロープ23上において連続する2つのマーキング51で区切られた各区間に関して、マーキング間距離L(x)から求めたこの区間のメインロープ23の伸び量を示している。
判定結果q(x)は、各画像データp(x)に関連づけられたロープ伸び量T(x)から推定されるこの区間のメインロープ23の状態の判定結果を示している。この判定結果q(x)には、例えばこの区間のメインロープ23の状態が正常であれば「○」が格納され、例えば異常であれば「×」が格納され、例えば要注意であれば「△」が格納される。また、傾き補正部71によって撮像画像500にメインロープ23が含まれないと判断された場合にも、当該撮像画像500に関連付けられた索引yおよびカウント変数xの行の判定結果q(x)には、「×」が格納される。ただし、このような3段階の判定結果に限られず、2段階又は4段階以上の判定結果が格納されてもよい。
基準位置からのかご移動距離u5は、判定結果q(x)において異常「×」または要注意「△」などの正常「○」でないことが示されているメインロープ23の区間(以下、異常箇所という)を作業員が目視や手作業等で点検・修繕する際の乗りかご21の位置を示す情報である。この基準位置からのかご移動距離u5に、ある基準位置(例えば後述する最上階ホール位置)から目的の位置までの乗りかご21底部の移動距離や、最寄りの階のホール位置から目的の位置までの乗りかご21底部の移動距離などを用いることができる。図6では、基準位置からのかご移動距離u5として、最寄りの階のホール位置から目的の位置までの乗りかご21底部の移動距離が格納されている場合が例示されているが、後述の説明では、簡略化のため、基準位置(最上階ホール位置)から目的の位置までの乗りかご21底部の移動距離を用いることとする。なお、最寄りの階のホール位置から目的の位置までの乗りかご21底部の移動距離は、基準位置(最上階ホール位置)から目的の位置までの乗りかご21底部の移動距離から、基準位置から最寄りの階のホール位置までの乗りかご21底部の移動距離を引算することで容易に求めることが可能である。また、これらに限定されず、メインロープ23の異常箇所を作業員が目視や手作業等で点検・修繕する際の乗りかご21の位置を示す情報であれば、種々の情報を用いることが可能である。
異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)は、基準位置からのかご移動距離u5に基づいて乗りかご21を昇降させた場合の昇降後の乗りかご21の予定位置をかご位置パルス値で表したものである。したがって、異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)は、エレベータ運転制御部27に設けられたカウンタ回路のカウント値に相当するものであり、昇降後の乗りかご21の位置が異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)となるように巻上機26を制御することで、乗りかご21を目的の点検位置へ移動させることができる。
傾斜角度θは、中心軸算出部71cによって算出された撮像画像500のメインロープの23の中心軸72の傾斜角度である。
情報処理部35の機能についての説明に戻る。情報処理部35は、画像保存領域に保存されている各画像データp(x)を解析することで、各画像データp(x)に対するマーキング間距離L(x)を算出するとともに、各画像データp(x)に対する不検出マーキング数nを特定し、これにより得られたデータを情報保存部34のデータ表に格納する(図6参照)。
情報処理部35は、算出/特定したマーキング間距離L(x)及び不検出マーキング数nからメインロープ23における該当区間のロープ伸び量T(x)を特定し、特定したロープ伸び量T(x)を情報保存部34のデータ表に格納する(図6参照)。なお、ロープ伸び量T(x)の特定方法としては、例えば各マーキング間距離L(x)が設計上のマーキング51の間隔Lからどの程度増加しているかに基づいてロープ伸び量T(x)を特定する方法など、種々の方法を用いることが可能である。
情報処理部35は、情報保存部34のデータ表に格納されているロープ伸び量T(x)に基づいて、メインロープ23における該当区間の劣化の状態を判定し、その判定結果q(x)を情報保存部34のデータ表に格納する(図6参照)。
情報処理部35は、情報保存部34のデータ表において異常「×」または要注意「△」などの正常「○」でないことを示す判定結果q(x)に関連付けられている行(ロウともいう。また、情報保存部34がデータベースの場合はレコードともいう)について、基準位置からのかご移動距離u5を算出し、算出した基準位置からのかご移動距離u5を情報保存部34のデータ表に格納する(図6参照)。また、情報処理部35は、算出した基準位置からのかご移動距離u5から異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)を特定し、得られた異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)を情報保存部34のデータ表に格納する(図6参照)。
以上のようにして情報保存部34のデータ表に格納されているデータは、例えば遠隔端末36(図1参照)によって読み出され、遠隔端末36からネットワーク41を介して監視センタ40へ送られてもよい。なお、遠隔端末36から監視センタ40へのデータの送信方式は、プッシュ型であってもよいし、プル型であってもよい。
つぎに、本実施形態にかかるロープ検査の処理の流れについて、詳細に説明する。本実施形態にかかるロープ検査装置30が実行するロープ検査の処理は、例えば、オペレータによって起動部37に撮像開始の指示が入力された場合に開始する。
ロープ検査の処理が開始すると、まず、傾き補正部71が撮像画像500に対する傾き補正処理を実行する。傾き補正部71は、補正画像50を情報収集制御部33に送信する。情報収集制御部33は補正画像50を情報保存部34のデータ表に格納する。傾き補正処理の詳細については、後述において、図8〜図12を用いて説明する。
つぎに、情報処理部35は、情報保存部34のデータ表に格納されている各画像データp(x)に対する解析処理を実行する。これにより、各画像データp(x)に関連付けられるマーキング間距離L(x)、不検出マーキング数n及びロープ伸び量T(x)が生成され、情報保存部34のデータ表に格納される。なお、解析処理の詳細については、後述において、図13〜図15を用いて説明する。
つぎに情報処理部35は、情報保存部34のデータ表における各行のロープ伸び量T(x)に基づいて、該当区間におけるメインロープ23の状態を判定し、この判定結果q(x)を情報保存部34のデータ表に格納する異常判定処理を実行する。なお、異常判定処理の詳細については、後述において、図16を用いて説明する。
つぎに情報処理部35は、情報保存部34のデータ表において、異常「×」または要注意「△」などの正常「○」でないことを示す判定結果q(x)が格納されている行に関し、基準位置からのかご移動距離u5及び異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)を算出し、算出した基準位置からのかご移動距離u5及び異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)を情報保存部34のデータ表に格納する異常箇所位置特定処理を実行する。なお、異常箇所位置特定処理の詳細については、後述において、図17を用いて説明する。
その後、例えば情報保存部34に接続された遠隔端末36が、情報保存部34のデータ表における判定結果q(x)を参照し、異常「×」または要注意「△」などの正常「○」でないことを示す判定結果q(x)が存在するか否かを判定する。正常「○」でないことを示す判定結果q(x)が存在しない場合、本動作は終了する。一方、正常「○」でないことを示す判定結果q(x)が存在する場合、メインロープ23に要点検箇所(異常箇所等)が存在することを遠隔端末36が監視センタ40へ発報し、その後、本動作が終了する。
つぎに、上述した傾き補正処理の詳細について説明する。まず、撮像指示部71aは、撮像を指示する信号を撮像制御部31に送信する。つぎに、取得部71gは、撮像部32から撮像画像500を取得し、画像一時保存部71bに保存する。
図8は、本実施形態にかかる撮像画像500の一例を示す図である。図8に示す例では、撮像画像500上のメインロープ23の画像54は、基準と比べて斜めに傾いているものとする。中心軸算出部71cは、撮像画像500の例えば左端の上端を原点とした座標系で、撮像画像500に含まれる各ピクセルの位置を特定する。iは撮像画像500の水平方向(横方向)の座標を示し、jは撮像画像500の垂直方向(縦方向)の座標を示す。例えば、撮像画像500の先頭列先頭行である原点に位置するピクセルの座標は(i,j)=(0,0)であり、撮像画像500の右端下端のピクセルの座標は(i,j)=(2160,3840)である。
つぎに、中心軸算出部71cは、撮像画像500からメインロープ23の画像54を特定する。より詳細には、中心軸算出部71cは、撮像画像500に含まれる各ピクセルの色を認識し、メインロープ23の色と同色のピクセルを検出する。中心軸算出部71cは、撮像画像500のうち、メインロープ23の色と同色のピクセルが連続する範囲を、メインロープ23の画像54として特定する。メインロープ23の色は、例えば、予め画像一時保存部71bに保存されているものとする。
中心軸算出部71cは、撮像画像500からメインロープ23と同色のピクセルを検出したか否かに基づいて、撮像画像500にメインロープ23が含まれるか否かを判断する。中心軸算出部71cは、撮像画像500からメインロープ23と同色のピクセルを検出した場合、撮像画像500にメインロープ23が含まれると判断する。
この場合、中心軸算出部71cは、撮像画像500におけるメインロープ23の中心軸72の位置を算出(特定)する。より詳細には、中心軸算出部71cは、撮像画像500の行ごとにメインロープ23の色と同色のピクセルが連続する範囲の中点を算出し、複数の中点を結ぶ線を、メインロープ23の中心軸72として算出する。
より具体的に、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態にかかる中心軸72の特定の手法を説明する図である。中心軸算出部71cは、原点(0,0)を起点として、撮像画像500の行ごとに、水平方向に各ピクセルの色を読み取り、各ピクセルの色がメインロープ23と同色であるか否かを判定する。中心軸算出部71cは、撮像画像500の各行のメインロープ23と同色の連続するピクセルの数から、撮像画像500におけるメインロープ23の画像54の幅を特定する。そして、中心軸算出部71cは、行ごとのメインロープ23と同色の連続するピクセルのうち、両端に位置するピクセルの中点を算出することにより、各行のメインロープ23と同色のピクセルの中心のピクセル(以下、中心ピクセルという)の座標を特定する。メインロープ23の中心軸72は、各行の中心ピクセルを通るため、中心軸算出部71cは、撮像画像500の全ての行について中心ピクセルの座標を求めることにより、撮像画像500上の中心軸72の位置を算出する。
例えば、中心軸算出部71cは、k行目の座標(i1,j1)のピクセルから、座標(i2,j1)のピクセルまでがメインロープ23と同色であると判定した場合、座標(i1,j1)と座標(i2,j1)の中点である中心ピクセルの座標(pk,qk)を以下の式(1)を用いて算出する。
式(1)では、k行目=1925行目で、座標(i1,j1)=(1080,1925)、座標(i2,j2)=(1380,1925)の場合、k行目の中心ピクセルの座標(pk,qk)=(1230,1925)となる。中心軸算出部71cは、撮像画像500の1行目から最終行(j行目)まで同様の処理を行って各行の中心ピクセルを算出することにより、中心軸72の位置を算出する。中心軸算出部71cは、算出した中心軸72の位置を、中心点保存部71eに保存する。
つぎに、中心軸算出部71cは、メインロープ23の中心軸72の傾斜角度を算出する。図10は、本実施形態にかかる傾斜角度θの算出の手法の一例を示す図である。具体的には、図10は、モデル画像501と撮像画像500とを重ね合わせた状態を示す。モデル画像501におけるメインロープ23の中心軸172の位置は、予め算出されているものとする。あるいは、中心軸算出部71cが、撮像画像500におけるメインロープ23の中心軸72の位置を算出する手法と同様の手法によってモデル画像501からメインロープ23の中心軸172を算出しても良い。
中心軸算出部71cは、撮像画像500におけるメインロープ23の中心軸72と、モデル画像501におけるメインロープ23の中心軸172とのなす角θを求める。図10に示す点Aと点Dは、モデル画像501における中心軸172の縦方向の両端である。また、点Bと点Cは、撮像画像500における中心軸72の縦方向の両端である。点Eは、点Bを画像の上端まで縦方向に移動した点である。点Eは、点Bと同じ列の1行目に位置する。中心軸算出部71cは、AD間の長さとEC間の長さとBC間の長さから、傾斜角度θを求める。
点A〜Eの座標は、それぞれ(1080,0)、(1000,3840)、(2000,0)、(1080,3840)、(1000,0)とする。点Aと点Dは同じ列に位置するため、AD間の長さは点Aと点Dの座標の行を示す値の差(3840−0)となる。点Eと点Cは同じ行に位置するため、EC間の長さは点Eと点Cの座標の列を示す値の差(2000−1000)となる。BC間の長さは、AD間の長さとEC間の長さから、三平方の定理によって、以下の式(2)に示す値となる。
よって、中心軸算出部71cは、AD間の長さとEC間の長さとBC間の長さから、以下の式(3)を用いて傾斜角度θを求める。式(3)の解は傾斜角度θ=14.5となるが、中心軸算出部71cは小数点以下の数を四捨五入して整数にし、傾斜角度θ≒15として扱う。中心軸算出部71cは、算出した傾斜角度θを回転処理部71fに送信する。
つぎに、回転処理部71fは、算出された傾斜角度θに基づいて、回転処理を行う。より詳細には、回転処理部71fは、撮像画像500の中心を回転中心として、撮像画像500に含まれる回転中心以外の全てのピクセルを、傾斜角度θ分回転移動させる。
図11は、本実施形態にかかる撮像画像500のピクセルの回転移動の一例を示す図である。回転処理部71fは、撮像画像500の中心(画像中心)を回転中心Fとして、撮像画像500に含まれる回転中心F以外の各ピクセルを、傾斜角度θ(回転角度θ)分、回転移動する。座標(m1,n1)に位置するピクセルG1は、撮像画像500の中心の座標(1080,1920)を回転中心Fとして、反時計回りに回転角度θ分回転移動すると、ピクセルG2の位置に移動する。
ここで、ピクセルG1の移動先のピクセルG2の座標(m2,n2)を算出する手法を説明する。回転処理部71fは、各ピクセルと回転中心Fとの位置関係を保った状態で、回転中心Fが原点(0,0)に移動するように平行移動した上で、各ピクセルを回転移動し、再度平行移動した場合に各ピクセルが位置する座標を、各ピクセルの移動先の座標として算出する。
図12は、本実施形態にかかる回転中心FおよびピクセルG1の移動の一例を示す図である。図12に示すように、回転中心Fの座標(a,b)から、列の値をa減算し、行の値をb減算すると、原点(0,0)となる。回転処理部71fは、回転中心F以外の各ピクセルの座標から、列の値をa減算し、行の値をb減算することで、回転中心Fおよび各ピクセルを平行移動する。図12の例では、回転角度の値はφとする。回転処理部71fは、回転中心Fの原点(0,0)への移動と同じ方向に、同じ距離分、ピクセルG1(M1,N1)を移動し、座標(M1−a,N1−b)の位置へ移動する。平行移動したピクセルG1をピクセルG1´という。回転処理部71fは、ピクセルG1´を、原点(0,0)を中心として角度φ分反時計回りに回転移動させる。ピクセルG1´の回転移動した位置は、ピクセルG2´とする。回転処理部71fは、ピクセルG2´の座標の列の値をa加算し、行の値をb加算した座標(M2,N2)を算出する。座標(M2,N2)の位置が、ピクセルG1の回転移動先であるピクセルG2の位置である。図12に示すピクセルG1の座標と回転中心Fの座標から、ピクセルG2の座標(M2,N2)を算出する手法は、以下の回転行列の式(4)として表される。
式(4)に図11で示した座標の値を代入すると、以下の回転行列の式(5)のようになる。
より具体的に、例えば傾斜角度θ=45°であり、ピクセルG1の座標(m1,n1)=(1820,1800)であるとすると、回転処理部71fはピクセルG2の座標(m2,n2)は以下の式(6)、式(7)のように求める。以下の式(8)は、式(6)、式(7)の解であり、座標(m2,n2)の値である。
回転処理部71fは、撮像画像500の回転中心F以外の全てのピクセルを回転移動することにより、撮像画像500全体を回転角度θ分回転させる。当該回転移動によって、撮像画像500のメインロープ23の中心軸72は、モデル画像501のメインロープ23の中心軸172と同じ傾きとなる。このため、撮像画像500に含まれるメインロープ23の画像54の傾きが、モデル画像501に含まれるメインロープ23の画像54の傾きと一致する。回転後の撮像画像500は、補正画像50である。補正画像50と、撮像画像500と、傾斜角度θとを情報収集制御部33に送信し、傾き補正処理を終了し、次の解析処理を実行する。
なお、本実施形態では、回転処理部71fは撮像画像500全体ではなく、撮像画像500に含まれるメインロープ23の画像54に含まれるピクセルのみを回転移動させてもよい。また、回転中心Fは、撮像画像500のメインロープ23の中心軸72の端部間の中点(図10に示す点Bと点Cの中点)等でも良い。
また、中心軸算出部71cは、撮像画像500からメインロープ23と同色のピクセルを検出しなかった場合、撮像画像500にメインロープ23が含まれないと判断する。
この場合、中心軸算出部71cは、撮像画像500にメインロープ23が含まれないことを情報収集制御部33に送信する。その後、情報処理部35は、情報保存部34のデータ表に、当該撮像画像500と、異常「×」を示す判定結果q(x)と対応付けて格納する。そして、遠隔端末36が、メインロープ23に要点検箇所(異常箇所等)が存在することを監視センタ40へ発報し)、傾き補正処理を終了し、次の解析処理を実行する。なお、中心軸算出部71cは、遠隔端末36に対して、撮像画像500にメインロープ23の画像54が含まれないことを示す信号を送信して異常を知らせてもよい。このように、中心軸算出部71cは、撮像画像500にメインロープ23が含まれるか否かを判断するため、撮像部32が正常に作動していないことや、撮像部32がメインロープ23を撮像可能な位置からずれていることを検出することができる。
なお、回転処理部71fは、傾斜角度θが0°の場合は、S17の回転処理を行わずに、撮像画像500と傾斜角度θとを情報収集制御部33に送信し、傾き補正処理を終了し、次の解析処理を実行しても良い。傾斜角度θが0°の場合とは、換言すれば、撮像画像500に含まれるメインロープ23の画像54の傾きとモデル画像501に含まれるメインロープ23の画像54との傾きとが一致する場合である。
つづいて、解析処理の詳細について説明する。図13は、本実施形態にかかる解析処理の詳細な流れを示すフローチャートである。図13に示すように、解析処理では、まず、情報処理部35は、情報保存部34のデータ表における解析対象の行を特定するための索引y及びカウント変数xを、それぞれ初期値であるy=1,x=0に設定し(ステップS101)、つづいて、データ表における索引y及びカウント変数xで特定される行から画像データp(x)及びロープ伸び量T(x)を取得する(ステップS102)。
つぎに情報処理部35は、取得したロープ伸び量T(x)に値が格納済みであるか否かを判定し(ステップS103)、格納済みである場合(ステップS103;YES)、ステップS118へ進む。一方、ロープ伸び量T(x)に値が未だ格納されていない場合(ステップS103;NO)、情報処理部35は、後述するステップS104〜S117を実行することで、ステップS102で取得した画像データp(x)を解析してロープ伸び量T(x)を算出する。
ここで、画像データp(x)の解析手順について、図14を用いて説明する。画像データp(x)の解析では、画像データp(x)を構成するピクセル1つ1つについて、マーキング51を映したピクセルであるか否かが判定される。具体的には、図14に示すように、画像データp(x)に対し、メインロープ23の移動方向において下流側となる下端の例えば左端を原点(0,0)とした座標系を設定し、この原点(0,0)を起点として、メインロープ23の移動方向に対して直角の方向(すなわち、画像の水平方向)にピクセルをスキャンしてマーキング51を映したピクセルであるか否かを判定する水平走査を、メインロープ23の移動方向と反対方向(すなわち、画像の垂直上方向)に向かって順次繰り返す処理が実行される。
例えば、メインロープ23に500mmの間隔Lで太さ0.5mmのマーキング51が施されている場合、1つの画像データp(x)中にマーキング画像52が2〜3つずつ含まれるようにするためには、撮像部32は、メインロープ23の移動方向(以下、垂直方向という)に沿って1001mm以上の範囲を撮像する必要がある。そこで、撮像部32が撮像するメインロープ23の垂直方向の範囲を1100mmとし、撮像部32の解像度を3840×2160ピクセルとしたとすると、1ピクセルの実際の垂直方向の長さは、0.29mm(=1100mm÷3840ピクセル)となる。その場合、マーキング51は垂直方向に1〜2ピクセルの幅のマーキング画像52として撮像されるため、ピクセル単位の画像解析によって画像データp(x)に含まれるマーキング画像52を検出することができる。
図13の説明に戻る。ステップS104では、情報処理部35が、解析対象のピクセルの座標(i,j)を先頭列先頭行である原点(0,0)に設定する。つづいて情報処理部35は、座標(i,j)のピクセル(以下、ピクセル(i,j)という)の値を読み込み(ステップS105)、読み込んだ値に基づいて、ピクセル(i,j)がマーキング51を映したピクセルであるか否かを判定する(ステップS106)。なお、ピクセル(i,j)がマーキング51を映したピクセルであるか否かは、たとえばピクセル(i,j)の画素値又は輝度値や、周囲のピクセルとの画素値又は輝度値の差などに基づいて判定することができる。
ピクセル(i,j)がマーキング51のピクセルではないと判定した場合(ステップS106;NO)、情報処理部35は、ステップS113へ進み、水平方向の座標iを1インクリメントする。つづいて情報処理部35は、インクリメント後の座標iが画像データp(x)におけるi座標の最大値imax(たとえば3840ピクセル)を超えたか否かを判定し(ステップS114)、最大値imaxを超えていない場合(ステップS114;NO)、ステップS105へリターンして、水平方向における次のピクセルに対する処理を実行する。
一方、インクリメント後の座標iが最大値imaxを超えていた場合(ステップS114;YES)、情報処理部35は、水平方向の座標iをリセット(i=0)するとともに、垂直方向の座標jを1インクリメントする(ステップS115)。これにより、画像データp(x)における走査対象の行が次の行に移る。つづいて情報処理部35は、インクリメント後の座標jが画像データp(x)におけるj座標の最大値jmax(たとえば2160ピクセル)を超えたか否かを判定し(ステップS116)、最大値jmaxを超えていない場合(ステップS116;NO)、ステップS105へリターンする。
一方で、インクリメント後の座標jが最大値jmaxを超えたということは、解析対象のピクセルが最終行最終列のピクセルを超えたということである。したがって、インクリメント後の座標jが最大値jmaxを超えたということは、解析対象の画像データp(x)から1つ目又は2つ目のマーキング51が検出されなかったことを意味している。そこで、インクリメント後の座標jが最大値jmaxを超えていた場合(ステップS116;YES)には、情報処理部35は、情報保存部34のデータ表における該当行のロープ伸び量T(x)に所定値を格納し(ステップS117)、ステップS118へ進む。なお、所定値は、異常判定処理において要注意「△」又は異常「×」と判定される値であってもよいし、マーキング51が検出されなかったと判定される値であってもよい。
また、ステップS106において、ピクセル(i,j)がマーキング51のピクセルであると判定した場合(ステップS106;YES)、情報処理部35は、当該ピクセル(i,j)が解析中の画像データp(x)から1つ目に検出されたマーキング51、すなわち画像データp(x)に含まれるマーキング画像52のうち最も下流側に位置するマーキング画像52であるか否かを判定する(ステップS107)。ピクセル(i,j)が1つ目に検出されたマーキング51のピクセルであると判定された場合(ステップS107;YES)、情報処理部35は、このピクセルの座標(i,j)を所定のメモリに保存しておき(ステップS112)、ステップS113へ進み、2つ目のマーキング51を検出する動作を実行する。
一方、ピクセル(i,j)が1つ目に検出されたマーキング51のピクセルではない場合、すなわち、ピクセル(i,j)が2つ目に検出されたマーキング51のピクセルである場合(ステップS107;NO)、情報処理部35は、図15に示すように、ステップS112で保存しておいた1つ目のマーキング51のピクセルP1の座標(i,j)と今回検出された2つ目のマーキング51として検出されたピクセルP2の座標(i,j)とから、これらの座標間の垂直方向(j座標軸方向)のピクセル数を特定し、特定したピクセル数からマーキング間距離L(x)を算出する(ステップS108)。なお、算出されたマーキング間距離L(x)は、情報保存部34のデータ表における該当する行に格納される。
これを具体例を挙げて説明する。上述した例に合せ、メインロープ23の垂直方向に1100mmの範囲を撮像可能な解像度3840×2160の撮像部32で撮像し、それにより、1ピクセルの実際の垂直方向の長さが0.29mm(=1100mm÷3840ピクセル)であるとすると、ピクセルP1の座標(i,j)からピクセルP2の座標(i,j)までの垂直方向(j座標方向)のピクセル数が2000ピクセルである場合、ステップS108では、以下の式(9)を用いて、マーキング間距離L(x)が580mm(=0.29mm×2000ピクセル)と算出される。
図13の説明に戻る。以上のようにして、1つ目に検出されたマーキング51から2つ目に検出されたマーキング51までのマーキング間距離L(x)を算出すると、つぎに、情報処理部35が、1つ目のマーキング51と2つ目のマーキング51との間における不検出マーキングの数nを特定する(ステップS109)。不検出マーキング数nは、メインロープ23に付されているマーキング51の設計上の間隔Lを用いて以下の式(10)に基づき特定することが可能である。
たとえば、メインロープ23に付されたマーキング51の設計上の間隔Lが500mmであって、ステップS108で算出されたマーキング間距離L(x)が1024mmであった場合、上記式(10)より、不検出マーキング数nは、‘1’と特定することができる。
つぎに情報処理部35は、ステップS108で算出したマーキング間距離L(x)とステップS109で特定した不検出マーキング数nとから、以下の式(11)に基づくことで、1つ目に検出されたマーキング51と2つ目に検出されたマーキング51との間に存在する不検出マーキングを含めた1区間以上のマーキング51間のロープ伸び量T(x)を算出する(ステップS110)。
具体例を挙げて説明する。上述した例に合せ、ステップS108で算出されたマーキング間距離L(x)が1024mmであり、ステップS109で特定された不検出マーキング数nが‘1’であるとすると、1つ目に検出されたマーキング51と2つ目に検出されたマーキング51との間に存在するマーキング51で区切られた区間は2つであるため、これらの区間についてのロープ伸び量T(x)は、上述した式(11)より、それぞれ24mmと算出される。
以上のようにしてロープ伸び量T(x)を算出すると、情報処理部35は、算出したロープ伸び量T(x)を、情報保存部34のデータ表において索引yに対応している行のうち、カウント変数x〜x+nで特定される行それぞれに格納し(ステップS111)、ステップS118へ進む。
ステップS118では、情報処理部35は、カウント変数xを1インクリメントし、つづいて、インクリメント後のカウント変数xがカウント変数xの最大値xmaxを超えているか否かを判定する(ステップS119)。
カウント変数xが最大値xmaxを超えていない場合(ステップS119;NO)、情報処理部35はステップS102へリターンし、データ表における次の行に対する処理を実行する。一方、カウント変数xが最大値xmaxを超えている場合(ステップS119;YES)、情報処理部35は、索引yを1インクリメントするとともに、カウント変数xを‘0’にリセットする(ステップS120)。つづいて情報処理部35は、インクリメント後の索引yが索引yの最大値ymaxを超えているか否かを判定する(ステップS121)。なお、索引yの最大値ymax及び各索引yに対するカウント変数xの最大値xmaxは、たとえば情報処理部35が予め情報保存部34のデータ表を確認して取得しておくように構成されてもよい。
索引yが最大値ymaxを超えていない場合(ステップS121;NO)、情報処理部35はステップS102へリターンし、データ表における次の行に対する処理を実行する。一方、索引yが最大値ymaxを超えている場合(ステップS121;YES)、情報処理部35は、解析処理を終了し、次の異常判定処理を実行する。
つぎに、異常判定処理の詳細について説明する。図16は、本実施形態にかかる異常判定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。図16に示すように、異常判定処理では、まず、情報処理部35が、異常箇所を判定する際の目安として、ロープ伸び量T(x)に対する閾値を1つ以上設定する(ステップS201)。本実施形態では、各区間のメインロープ23の状態を、正常「○」、要注意「△」、および、異常「×」の3段階で判定する場合を例示するため、ステップS201では、ロープ伸び量T(x)に対する少なくとも2つの閾値E1およびE2(E2>E1)が設定される。例えば、本実施形態では、第1閾値E1は4mmとし、第1閾値E1に対応付けられる判定結果は「△」(要注意)とする。また、第2閾値E2を6.5mmとし、第2閾値E2に対応付けられる判定結果は「○」(正常)とする。
なお、第1閾値E1は、各区間のメインロープ23の状態が要注意「△」であるかを判定するための閾値であり、第2閾値E2は、各区間のメインロープ23の状態が異常「×」であるかを判定するための閾値である。したがって、ロープ伸び量T(x)が第1閾値E1以下(若しくは未満)の場合には判定結果q(x)に正常「○」が格納され、第1閾値E1より大きく(若しくは以上)且つ第2閾値E2以下(若しくは未満)である場合には判定結果q(x)に要注意「△」が格納され、第2閾値E2より大きい(若しくは以上)場合には判定結果q(x)に異常「×」が格納される。
上述の例にあるように、例えばメインロープ23に付されたマーキング51の間隔Lを500mmとし、メインロープ23の垂直方向に沿った1100mmの範囲を解像度が3840×2160ピクセルの撮像部32で撮像した場合では、間隔Lの1.3%に相当する6.5mmが22〜23ピクセルに相当する。したがって、第2閾値E2を6.5mmとした場合、各区間のメインロープ23の状態が異常「×」であるか否かを十分正確に判定することが可能である。同様に、間隔Lの0.8%に相当する4mmは13〜14ピクセルに相当するため、第1閾値E1を4mmとした場合、各区間のメインロープ23の状態が要注意「△」であるか否かを十分正確に判定することが可能である。ただし、第1閾値E1を4mmとし、第2閾値E2を6.5mmとする例は単なる例にすぎず、エレベータ装置20に要求される仕様等に応じて種々変形することが可能である。
つぎに、情報処理部35は、情報保存部34のデータ表における対象の行を特定するための索引y及びカウント変数xを、それぞれ初期値であるy=1,x=0に設定し(ステップS202)、つづいて、データ表における索引y及びカウント変数xで特定される行からロープ伸び量T(x)を取得する(ステップS203)。
つぎに、情報処理部35は、まず、取得したロープ伸び量T(x)が第1閾値E1より大きいか否かを判定する(ステップS204)。ロープ伸び量T(x)が第1閾値E1以下である場合(ステップS204;NO)、情報処理部35は、データ表の索引y及びカウント変数xで特定される行における判定結果q(x)に正常であることを示す「○」を格納し(ステップS206)、ステップS209へ進む。
一方、ロープ伸び量T(x)が第1閾値E1より大きい場合(ステップS204;YES)、情報処理部35は、つぎに、ロープ伸び量T(x)が第2閾値E2より大きいか否かを判定する(ステップS205)。ロープ伸び量T(x)が第2閾値E2以下である場合(ステップS205;NO)、情報処理部35は、データ表の索引y及びカウント変数xで特定される行における判定結果q(x)に要注意であることを示す「△」を格納し(ステップS207)、ステップS209へ進む。一方、ロープ伸び量T(x)が第2閾値E2より大きい場合(ステップS205;YES)、情報処理部35は、データ表の索引y及びカウント変数xで特定される行における判定結果q(x)に異常であることを示す「×」を格納し(ステップS208)、ステップS209へ進む。
ステップS209では、情報処理部35は、カウント変数xを1インクリメントし、つづいて、インクリメント後のカウント変数xがカウント変数xの最大値xmaxを超えているか否かを判定する(ステップS210)。
カウント変数xが最大値xmaxを超えていない場合(ステップS210;NO)、情報処理部35はステップS203へリターンし、データ表における次の行に対する処理を実行する。一方、カウント変数xが最大値xmaxを超えている場合(ステップS210;YES)、情報処理部35は、索引yを1インクリメントするとともに、カウント変数xを‘0’にリセットする(ステップS211)。つづいて情報処理部35は、インクリメント後の索引yが索引yの最大値ymaxを超えているか否かを判定する(ステップS212)。
索引yが最大値ymaxを超えていない場合(ステップS212;NO)、情報処理部35はステップS203へリターンし、データ表における次の行に対する処理を実行する。一方、索引yが最大値ymaxを超えている場合(ステップS212;YES)、情報処理部35は、異常判定処理を終了して次の異常箇所位置特定処理を実行する。
つぎに、異常箇所位置特定処理の詳細について説明する。図17は、本実施形態にかかる異常箇所位置特定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。図17に示すように、異常箇所位置特定処理では、まず、情報処理部35の情報処理部35が、初期値を設定する(ステップS301)。
初期値には、例えば、乗りかご21の高さ(u1)と、基準位置(最上階ホール位置)にある乗りかご21の上端(たとえば天井)から撮像部32までの高さ(w)と、乗りかご21の上端(たとえば天井)からこの上端に乗っている点検員の目線(以下、点検位置という)までの高さ(h)と、巻上機26の頂部から撮像部32までのメインロープ23の長さ(r)とが含まれる。基準位置は、異常箇所位置特定処理において各種演算を実行する際の初期条件となる乗りかご21の位置である。例えば、本実施形態では、昇降路に対して設けられた最上階のホール位置(以下、最上階ホール位置という)を基準位置とする。この基準位置は、たとえば撮像部32による撮像動作の開始時点の位置と同じであってもよい。これらの値u1、w、hおよびrは、予め固定値として求めることが可能である。そこでステップS301では、情報処理部35は、所定の記憶領域に格納されている値u1、w、hおよびrを取得して、これらを初期値として設定する。
図17の説明に戻る。初期値を設定後、情報処理部35は、情報保存部34のデータ表における対象の行を特定するための索引y及びカウント変数xを、それぞれ初期値であるy=1,x=0に設定し(ステップS302)、つづいて、データ表における索引y及びカウント変数xで特定される行から所定の格納データを取得する(ステップS303)。なお、取得される格納データには、例えば、かご位置パルス値Cpと、判定結果q(x)とが含まれる。
つぎに、情報処理部35は、取得した判定結果q(x)が異常「×」又は要注意「△」であるか否かを判定し(ステップS304)、異常「×」でも要注意「△」でもなければ(ステップS304;NO)、ステップS309へ進む。
一方、判定結果q(x)が異常「×」又は要注意「△」である場合(ステップS304;YES)、情報処理部35は、データ表において異常「×」又は要注意「△」である判定結果q(x)と同じ行に格納されているかご位置パルス値Cpに基づいて、乗りかご21の上端に乗っている点検員の目線の高さである点検位置から異常「×」又は要注意「△」と判定された箇所までのメインロープ23の長さu2を算出する(ステップS305)。
ステップS305における長さu2の算出方法を、より詳細に説明する。例えば、メインロープ23の異常箇所を発見した画像データp(x)を取得した際の乗りかご21の位置は、データ表において、判定結果q(x)が異常「×」又は要注意「△」である行と同じ行に格納されているかご位置パルス値Cpによって特定される。したがって、異常箇所を撮像部32に対応する位置まで移動させるために必要となる乗りかご21の基準位置(最上階ホール位置)からの移動距離(v2)は、乗りかご21が基準位置にあることを示すかご位置パルス値Cpと、データ表において異常箇所に対応する行に格納されているかご位置パルス値Cpとの差(たとえばパルス数)を長さに換算することで求めることができる。
また、撮像部32から最上階ホール位置までの距離(v1)は、固定値である初期値u1およびwを用いて算出することができる(v1=u1+w)。したがって、異常箇所から点検位置(乗りかご21の上端に乗っている点検員の目線)までのメインロープ23の長さu2は、以下の式(12)を用いて求めることができる。
図17の説明に戻る。以上のようにして、異常箇所から点検位置までのメインロープ23の長さu2を算出すると、つぎに情報処理部35は、異常箇所と点検位置(乗りかご21の上端に乗っている点検員の目線)とを同じ長さとするために必要となる乗りかご21の基準位置(最上階ホール位置)からのかご移動距離u5を算出する(ステップS306)。
ステップS306におけるかご移動距離u5の算出方法を、より詳細に説明する。たとえば異常箇所を撮像部32に対応する位置から作業員63の目線である点検位置まで移動させるためには、まず、以下の式(13)を用いることで、撮像部32の高さから点検位置までの距離と撮像部32の高さから異常箇所までの距離とが等しくなる距離u3を求める。
つづいて、撮像部32の高さから異常箇所までの距離がu3となる際の乗りかご21の移動距離u4を、以下の式(14)を用いて求める。なお、移動距離u4は、たとえば、異常箇所が撮像部32と対応する位置にある状態からの乗りかご21の移動距離であるとする。
その後、以上のようにして求められた乗りかご21の移動距離u4と、異常箇所を撮像部32に対応する位置まで移動させるために必要となる乗りかご21の基準位置(最上階ホール位置)からの移動距離v2とを用い、以下の式(15)を計算することで、基準位置(最上階ホール位置)からのかご移動距離u5を求めることができる。
図17の説明に戻る。以上のようにして基準位置からのかご移動距離u5を求めると、つぎに情報処理部35は、算出した基準位置からのかご移動距離u5を情報保存部34のデータ表における該当する行に格納する(ステップS307)。つづいて、情報処理部35は、ステップS306で算出した基準位置からのかご移動距離u5から点検時の乗りかご21の位置を示す異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)を特定し、これにより得られた異常箇所確認用かご位置パルス値S(x)を情報保存部34のデータ表における該当する行に格納し(ステップS308)、ステップS309へ進む。
ステップS309では、情報処理部35は、カウント変数xを1インクリメントし、つづいて、インクリメント後のカウント変数xがカウント変数xの最大値xmaxを超えているか否かを判定する(ステップS310)。
カウント変数xが最大値xmaxを超えていない場合(ステップS310;NO)、情報処理部35はステップS303へリターンし、データ表における次の行に対する処理を実行する。一方、カウント変数xが最大値xmaxを超えている場合(ステップS310;YES)、情報処理部35は、索引yを1インクリメントするとともに、カウント変数xを‘0’にリセットする(ステップS311)。つづいて情報処理部35は、インクリメント後の索引yが索引yの最大値ymaxを超えているか否かを判定する(ステップS312)。
索引yが最大値ymaxを超えていない場合(ステップS312;NO)、情報処理部35はステップS303へリターンし、データ表における次の行に対する処理を実行する。一方、索引yが最大値ymaxを超えている場合(ステップS312;YES)、情報処理部35は、異常箇所位置特定処理を終了し、以降の遠隔端末36による異常および要注意の確認や発報等の動作を実行する。
以上のように、本実施形態のロープ検査システム1では、モデル画像501に含まれるメインロープ23の画像54に対する撮像画像500に含まれるメインロープ23の画像54の角度を示す傾斜角度θを算出し、撮像画像500を、撮像画像500におけるメインロープ23の画像54の傾きをモデル画像501におけるメインロープ23の画像54の傾きに一致させるように傾斜角度θ分回転させる。このため、本実施形態のロープ検査システム1によれば、撮像画像500上でメインロープ23が基準と比べて傾いた状態にある場合であっても、メインロープ23の劣化を高精度に検査することができる。
従来は、撮像画像500上のメインロープ23の傾きを修整するためには、作業員が機械室内等に行って撮像部32の設置角度を修正していた。これに対して、本実施形態のロープ検査システム1では、撮像部32の設置角度を直接的に修正しなくとも、画像処理によって撮像画像500上のメインロープ23の傾きを補正する。このため、本実施形態のロープ検査システム1では基準となる設置角度で設置された撮像部32で撮像された場合と同様に、メインロープ23の劣化の検査を高精度にすることができる。また、本実施形態のロープ検査システム1によれば、撮像部32の設置角度の修正のための作業の手間および作業時間を削減することができる。
さらに、本実施形態のロープ検査システム1では、撮像画像500におけるメインロープ23の中心軸72と、モデル画像501におけるメインロープ23の中心軸172とのなす角を、傾斜角度θとして算出し、撮像画像500の中心を回転中心Fとして、撮像画像500に含まれる回転中心F以外の全てのピクセルを、傾斜角度θ分回転移動させる。このため、本実施形態のロープ検査システム1によれば、撮像画像500におけるメインロープ23の画像54の傾きをモデル画像501におけるメインロープ23の画像54の傾きと等しくすることができる。
さらに、本実施形態のロープ検査システム1では、補正画像50から、メインロープ23の側面に所定間隔で施されたマーキング画像52を検出し、2つのマーキング画像52間の距離に基づいて、メインロープ23の異常個所の有無を判定する。一般に、撮像画像500上でメインロープ23が傾いた状態にあると、メインロープ23に施されたマーキング51間の間隔Lを高精度に計測することが困難な場合がある。これに対して、本実施形態のロープ検査システム1によれば、メインロープ23の傾きが補正された補正画像50を用いるため、メインロープ23の傾きの影響を受けずにメインロープ23の異常個所の有無を判定することができる。
さらに、本実施形態のロープ検査システム1では、撮像画像500のメインロープ23の色と同色のピクセルが連続する範囲を、メインロープ23の画像54として特定する。このため、本実施形態のロープ検査システム1によれば、撮像画像500にメインロープ23に類似した物体が含まれても、当該物体をメインロープ23と区別することができ、誤検出を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、撮像部32で取得した画像データを画像処理することで、メインロープ23に発生した局所的な伸びなどの状態異常を検出することが可能となる。その結果、メインロープ23に対する目視による点検やメンテナンス等の必要性の有無や、それらを実施すべき時期などを的確に判断することが可能となる。
また、本実施形態によれば、メインロープ23に施されたマーキング51が変色、消色、キズ等によって画像処理で検出されない場合でも、検出されなかったマーキング51の前後のマーキング51を用いてメインロープ23の状態を診断することが可能であるため、より確実にメインロープ23に発生した局所的な伸びなどの状態異常を検出することが可能となる。その結果、メインロープ23に対する目視による点検やメンテナンス等の必要性の有無や、それらを実施すべき時期などをより的確に判断することが可能となる。
なお、図6に示したデータ表の項目および値は一例であり、他のデータがさらに保存されても良い。例えば、データ表には、ロープ検査が実施された日時等が保存されても良い。また、本実施形態におけるメインロープ23の画像54の特定の手法は一例であり、他の画像処理の手法を用いても良い。
本実施形態ではエレベータのメインロープ23の検査を例としたが、本実施形態のロープ検査装置30は、クレーン及び橋梁等に使用されているロープの検査にも適用可能である。
(変形例1)
上述の実施形態では、傾き補正部71は、撮像画像500におけるメインロープ23と同色のピクセルの検出結果を、中心軸72の位置を算出するために用いているが、さらにメインロープ23の異常個所を検出するために用いても良い。
例えば、一般に、撮像画像500および補正画像50の各行におけるメインロープ23の画像54の幅は一定となるため、各行におけるメインロープ23と同色の連続するピクセルの数は同数となる。しかしながら、メインロープ23に線細り(径の細り)が発生している場合は、一部の行でメインロープ23の画像54の幅が狭くなる場合がある。そこで、変形例1の傾き補正部71の中心軸算出部71cは、撮像画像500または補正画像50の各行のうち、メインロープ23と同色の連続するピクセルの数が他の行よりも所定の閾値以上少ない行があれば、当該行に該当するメインロープ23の箇所が線細りしている可能性があると判断する。なお、中心軸算出部71cは、比較対象を他の行のピクセルの数ではなく、予め定められたメインロープ23の画像54の幅としても良い。
また、変形例1の中心軸算出部71cは、補正画像50において、メインロープ23と同色のピクセルのX座標が上の行または下の行と差異がある行があれば、当該行に該当するメインロープ23の箇所でキンク(kink)が発生していると判断する。なお、キンクの発生個所は、連続する複数の行を含む場合があり、また、キンクの発生個所を過ぎると、メインロープ23と同色のピクセルのX座標はまた元の値に戻る。また、中心軸算出部71cは、補正画像50における中心軸72のX座標が上の行または下の行とずれている箇所をキンクの発生個所と判断しても良い。キンクは、曲がり、折れ、うねり等ともいう。
また、変形例1の中心軸算出部71cは、撮像画像500または補正画像50の各行のうち、メインロープ23と同色の連続するピクセルの数が他の行よりも多い行があれば、当該行に該当するメインロープ23の箇所で樹脂製のカバー層23Bの剥離が発生していると判断しても良い。
変形例1の中心軸算出部71cは、線細り、キンク、剥離等が発生していると判断した場合、撮像画像500または補正画像50と、判断結果とを情報収集制御部33または遠隔端末36に送信する。遠隔端末36は、中心軸算出部71cから信号を受信した場合、または、情報保存部34に保存されたデータ表から線細り、キンク、剥離等の異常の発生を読み取った場合に、監視センタ40に発報する。このように、本変形例のロープ検査システム1によれば、撮像画像500または補正画像50から、メインロープ23の様々な異常を検出することができる。
(変形例2)
また、ロープ検査装置30は、最新のロープ検査における傾斜角度θを、過去のロープ検査における傾斜角度θの履歴と比較して、傾斜角度θの変化を検出しても良い。
例えば、変形例2の情報処理部35は、最新のロープ検査における傾斜角度θと、前回のロープ検査における同じメインロープ23の位置の傾斜角度θとの差異が所定の角度以上である場合に、データ表の判定結果q(x)に異常「×」または要注意「△」を格納しても良い。また、情報処理部35は、最新のロープ検査における傾斜角度θを、数ヶ月前や1年前のロープ検査における同じメインロープ23の位置の傾斜角度θや、過去の所定の期間における傾斜角度θの平均値と比較しても良い。
判定結果q(x)が異常「×」または要注意「△」となった場合は遠隔端末36が発報するため、エレベータ管理会社等は、撮像部32の設置角度の急な変化等を容易に把握することができる。また、データ表には過去および最新のロープ検査における撮像画像500および補正画像50が判定結果q(x)と対応付けられて保存されているため、傾斜角度θの変化を作業員等が画像データによって把握することができる。
上述の実施形態のロープ検査装置30は、CPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
実施形態のロープ検査装置30で実行されるロープ検査プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、本実施形態のロープ検査装置30で実行されるロープ検査プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のロープ検査装置30で実行されるロープ検査プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態のロープ検査プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
本実施形態のロープ検査装置30で実行されるロープ検査プログラムは、上述した各部(起動部、撮像制御部、情報収集制御部、情報処理部、傾き補正部、撮像指示部、取得部、中心軸算出部、回転処理部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からロープ検査プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、起動部、撮像制御部、情報収集制御部、情報処理部、傾き補正部、撮像指示部、取得部、中心軸算出部、回転処理部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
また、ロープ検査装置30は、複数のサーバやPC(Personal Computer)やその他の装置を含むものでも良い。本実施形態の傾き補正部71は、CPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置とを備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成でも良い。
上記実施形態およびその変形例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施形態が可能であることは上記記載から自明である。例えば実施形態に対して適宜例示した変形例は、他の実施形態と組み合わせることも可能であることは言うまでもない。