本発明に係る帯電部材の表面層のバインダーとして、特定の構造を有する化合物を用いることで、異常放電の発生を抑制することができることを知見している。特定の構造を有する化合物とは、ポリメタロキサン、金属アルコキシド又は金属ヒドロキシド中の金属原子に特定の構造を有する配位子が配位及び結合している、または、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する重合体におけるフェノール性水酸基と特定の構造を有する配位子が相互作用している構成である。このような構成を有する化合物をバインダーとして表面層に含む帯電部材において、異常放電の発生が抑制される理由を、本発明者らは以下のように考えている。
大気中の近接放電現象はパッシェン則に従い発生する。この現象は、遊離した電子が電界によって加速され、電極間に存在する分子や電極と衝突して電子、陽イオン及び陰イオンを生成する過程を繰り返す、電子雪崩の拡散現象である。この電子雪崩は電界に従って拡散し、拡散が最終的な放電電荷量を決定する。パッシェン則に従う条件よりも過剰な電界となれば、局所的な強い放電、すなわち異常放電が発生しやすくなる。
低温低湿下では、常温常湿下と比較して電極間に存在する分子が少ないことから、パッシェンの法則から導かれる放電開始電圧よりも放電開始電圧が高くなる傾向にある。放電開始電圧が高くなることで、パッシェン則に従う条件よりも過剰な電界になりやすく、低温低湿下では異常放電が発生しやすくなっている。
本発明に係る帯電部材の表面層にバインダーとして含まれる化合物は、ポリメタロキサン、金属アルコキシド又は金属ヒドロキシド中の金属原子に特定の構造を有する配位子が配位及び結合している、または、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する重合体におけるフェノール性水酸基と特定の構造を有する配位子が相互作用している構成である。かかる構成を有する化合物は、特定の構造を有する配位子が配位及び結合または相互作用する前と比較して最高被占軌道(HOMO)が浅くなっている。その結果、表面層からは電子が放出されやすくなっていると考えられる。そのため、表面層の放電開始電圧が下がり、放電電荷量が抑制されることで、異常放電の発生が抑制されているものと考えられる。
さらに、本発明者らは、上記の化合物を含むバインダー中に導電粒子を分散させることで、より過酷な条件においても異常放電の発生が抑制されることを見出した。すなわち、特許文献1および特許文献2に記載されている表面層に対して導電粒子を分散させても、異常放電の発生の抑制に対する効果は見られないのに対し、上記の化合物を含むバインダー中に導電粒子を含有させると、より厳しい条件においても異常放電の発生が抑制されるようになるというものである。かかる理由については明らかになっていないが、上記の化合物を含むバインダー中では導電粒子からの微細な放電が促進されているためであると、本発明者らは考えている。過剰な電界となる前に導電粒子からの微細な放電が繰り返し行われるため、異常放電が抑制されていると考えられる。
以下、本発明の一実施形態に係る帯電部材について説明する。
〔帯電部材〕
図1に本発明の一実施様態に係る、ローラ形状の帯電部材の断面を示す。帯電部材は、支持体101と、導電性の弾性層102と、表面層103とを有している。帯電部材の形状はローラ形状に限定されるものではなく、いずれの形状であってもよい。
電子写真感光体(以下、「感光体」ともいう)の表面を帯電可能に配置される帯電部材は、感光体との当接ニップを十分に確保するために、弾性層を有する構成が好ましく用いられる。弾性層を有する帯電部材の最も簡単な構成は、支持体上に弾性層及び表面層の2層を設けた構成である。支持体と弾性層との間や弾性層と表面層との間に別の層を1つ又は2つ以上設けてもよい。
〔支持体〕
支持体101としては導電性を有するものを用いる。具体例としては、以下のものが挙げられる。鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属製(合金製)の支持体。
〔弾性層〕
弾性層102を構成する材料としては、従来から帯電部材の弾性層として用いられているゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性体を1種又は2種以上用いることができる。
ゴムとしては、具体的には、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴムなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
弾性層102は、導電剤を含むことによって所定の導電性を有するように構成することが好ましい。弾性層102の電気抵抗値の好適な範囲は102Ω以上108Ω以下である。
弾性層102に用いられる導電剤としては、炭素系材料、金属酸化物、金属、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などを用いることが可能である。
炭素系材料としては、具体的には、カーボンブラックおよびグラファイトが挙げられる。金属酸化物としては、具体的には、酸化スズ、酸化チタン及び酸化亜鉛が挙げられる。金属としては、具体的には、ニッケル、銅、銀及びゲルマニウムが挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、第四級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム等)、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩およびハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩など)が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩および高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩が挙げられる。
帯電防止剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び多価アルコール脂肪酸エステルの如き非イオン性帯電防止剤が挙げられる。
電解質としては、周期律表第1族の金属(Li、Na、Kなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩としては、具体的には、LiCF3SO3、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCNおよびNaClが挙げられる。
また、弾性層102用の導電剤として、周期律表第2族の金属(Ca、Baなど)の塩(Ca(ClO4)2など)やこれから誘導される帯電防止剤を用いることもできる。また、これらと多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)もしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)との錯体の如きイオン導電性導電剤を用いることが可能である。
弾性層102の硬度は、帯電部材と被帯電体である感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、MD−1硬度で60度以上85度以下であることが好ましい。また、弾性層102は、感光体と幅方向で均一に当接させるために、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
〔表面層〕
(i)第一の実施形態
帯電部材の表面層103は、下記式(a)で表される化合物(以下に詳述する)を含むバインダーと、該バインダーに分散されてなる導電粒子とを含有する。
〈式(a)で表される化合物〉
(式(a)中、
L1は、M1On/2で表される構造単位を有するポリメタロキサンを表し、
nは、金属原子M1の価数がpである場合、1以上p以下の整数を表し、
M1は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、Al、Ga、In及びGeからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属原子を表し、
X1は、下記式(1)〜(4)で表されるいずれかの構造を表し、
Y1は、L1中のM1に配位する部位を有する基を表し、
A1は、
(i)X1が式(1)で表される構造である場合、
M1、X1、及びY1と共に4〜8員環を形成するのに必要な原子団であって、かつ、芳香環を含み、芳香環を構成する1つの炭素原子はX1の酸素原子に結合しており、
(ii)X1が式(2)〜(4)のいずれかで表される構造である場合、
M1、X1、及びY1と共に4〜8員環を形成するのに必要な結合又は原子団を表す。)
(式(1)〜(4)中、*は、A1との結合部位を表し、**は、L1中のM1との結合部位を表す。)
ポリメタロキサン中の金属原子M1は、複数種の金属原子であっても良い。また、ポリメタロキサンは、SiOr/2(rは1以上4以下の整数)で表される構造単位を有していても良い。この構造単位を有することで、ポリメタロキサンの非晶性が向上し、膜の平滑性や強度をより一層向上させることが可能である。
式(2)中、窒素原子は、ピロール骨格、インドール骨格、ピロリジン骨格、カルバゾール骨格、イミダゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、ピラゾール骨格、インダゾール骨格、トリアゾール骨格、ベンゾトリアゾール骨格、テトラゾール骨格、ピロリドン骨格、ピペリジン骨格、モルホリン骨格、ピペラジン骨格の如き複素環中の窒素原子であってもよい。これらの骨格は、置換基を有していても良い。置換基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐の、アルキル基またはアルコキシ基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜4である。(以降に登場する置換基も、特別の記載が無い限り、ここで記載した置換基と同様である。)窒素原子が複素環中の窒素原子でない場合において、窒素原子に、A1及びM1以外で結合している原子又は基は、水素原子、置換もしくは未置換のアリール基又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。具体的には、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの直鎖のアルキル基、イソプロピル基、t−ブチルなどの分岐鎖を持つアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基が挙げられる。特に、式(2)で表される基としては、未置換のアミノ基、炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基及びピロール骨格を有する基から、窒素原子に結合する水素原子を1つ取り除いた基であることがよい。
式(a)中のY1は、L1中のM1に配位する部位を有する基を表し、非共有電子対を持つ原子を含む基である。具体的には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボニル基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のイミノ基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基が挙げられる。なお、これらの基は、置換基を有していても良い。
アルキルチオ基としては、アルコキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた基が挙げられる。
アリールチオ基としては、アリールオキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた基が挙げられる。
カルボニル基としては、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド基(R−CO−NR−又はR−NR−CO−)、ウレイド基(NH2−CO−NH−)、ウレア基(R−NH−CO−NH−)が挙げられる。アルキルカルボニル基およびアルコキシカルボニル基中のアルキル基、並びに、アミド基、及びウレア基中のRは、それぞれ、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの直鎖のアルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの分岐鎖のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜4である。
アリールカルボニル基としては、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素とカルボニル基とが結合した基、または、置換もしくは未置換の芳香族複素環とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。具体的には、置換または未置換の、フェニルカルボニル基及びナフチルカルボニル基が挙げられる。
チオカルボニル基としては、前記カルボニル基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた基が挙げられる。
置換されたアミノ基としては、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、置換または未置換のアリールアミノ基が挙げられる。具体的には、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基の如き炭素数1〜10のモノアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基の如き炭素数1〜10のジアルキルアミノ基、モノフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基の如き、置換または未置換のアリールアミノ基が挙げられる。
未置換のイミノ基は、>C=NHまたは−N=CH2と表される基である。未置換のイミノ基中の水素原子は、炭素数1〜10のアルキル基、または、置換もしくは未置換のアリール基(フェニル基、ナフチル基)によって置換されていてもよい。
また、Y1は脂肪族又は芳香族の複素環骨格を有する基であっても良い。芳香族の複素環骨格としては、チオフェン骨格、フラン骨格、ピリジン骨格、ピラン骨格、ベンゾチオフェン骨格、ベンゾフラン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格、オキサゾール骨格、ベンゾオキサゾール骨格、チアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、チアジアゾール骨格、ベンゾチアジアゾール骨格、ピリダジン骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、フェナジン骨格、アクリジン骨格、キサンテン骨格、イミダゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、ピラゾール骨格、インダゾール骨格、トリアゾール骨格、ベンゾトリアゾール骨格及びテトラゾール骨格が挙げられる。なお、これらの骨格は、置換基を有していても良い。脂肪族の複素環骨格としては、置換または未置換の、モルホリン骨格が挙げられる。
上記したY1の中でも、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換または未置換のフェノキシ基、置換または未置換のナフチルオキシ基、ホルミル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルカルボニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシカルボニル基、チオカルボニル基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、エチルメチルアミド基、未置換のアミノ基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノフェニルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、未置換のイミノ基、メタンイミノ基、エタンイミノ基、ピリジン骨格を有する基、キノリン骨格を有する基、または、イソキノリン骨格を有する基であることが好ましい。
式(a)中のA1は、X1が式(1)である場合に、M1、X1、及びY1と共に4〜8員環を形成するのに必要な原子団であって、かつ、芳香環を含み、芳香環を構成する1つの炭素原子はX1の酸素原子に結合している。
具体的なA1として、置換または未置換の、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、キノリン環及びイソキノリン環等)を含む原子団が挙げられる。また、A1はY1の芳香族複素環と縮合環を形成してもよい。A1としては、特には、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環)を含む原子団であることが好ましい。
なお、X1が式(1)である場合のA1は、芳香環を有することが重要である。芳香環を有する場合の方が、A1、M1、X1、及びY1によって形成される構造を有する金属錯体の安定性が高く、帯電部材の性能安定性も高い。
式(a)中のA1は、X1が式(2)〜(4)で表されるいずれかの構造である場合に、M1、X1、及びY1と共に4〜8員環を形成するのに必要な結合又は原子団を表す。A1が、M1、X1、及びY1と共に4〜8員環を形成するのに必要な原子団である場合における当該原子団の例を以下に挙げる。メチレン基、エチレン基などのアルキレン基、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、キノリン環及びイソキノリン環)を含む原子団。
A1としては、特には、結合及びアルキレン基、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環)を含む原子団であることが好ましい。
また、A1が芳香環を含む原子団である場合、Y1の芳香族複素環、X1の芳香族複素環、またはその両方の芳香族複素環と縮合環を形成してもよい。
式(a)において、A1、M1、X1、及びY1によって形成される環は、錯体の形成容易性の観点から、5員環又は6員環であることが好ましい。
式(a)中のA1、X1及びY1の好ましい組み合わせを以下に2つ挙げる。
A1が、下記式(A1−1)または(A1−2)で表される構造であり、X1が、下記式(X1−1)または(X1−2)で表される構造であり、Y1が、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、メチルエチルアミド基、メチルチオ基、エチルチオ基、チオカルボニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、未置換のイミノ基、メタンイミノ基、エタンイミノ基、ピリジン骨格を有する基、キノリン骨格を有する基、または、イソキノリン骨格を有する基である。
(式(A1−1)及び(A1−2)中、R11及びR13は、それぞれ、Y1と結合している、単結合またはメチレン基を表し、R12及びR14は、それぞれ、水素原子、メトキシ基、または、エトキシ基を表し、*はX1との結合部位を表す。)
(式(X1−1)及び(X1−2)中、*はA1との結合部位を表し、**はM1との結合部位を表す。)
なお、上記組み合わせにおいて、Y1がピリジン骨格を有する基、キノリン骨格を有する基、または、イソキノリン骨格を有する基である場合は、Y1中の芳香環とA1中の芳香環とが縮合環を形成しているものも含むものとする。
また、A1が、結合、メチレン基、エチレン基、または、トリメチレン基であり、X1が、下記式(X1−3)〜(X1−7)のいずれかで表される構造であり、Y1が、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、メチルエチルアミド基、メチルチオ基、エチルチオ基、チオカルボニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、未置換のイミノ基、メタンイミノ基、エタンイミノ基、ピリジン骨格を有する基、キノリン骨格を有する基、または、イソキノリン骨格を有する基である。
(式(X1−3)〜(X1−7)中、*はA1との結合部位を表し、**はM1との結合部位を表す。)
なお、上記2つのA1、X1及びY1の組み合わせにおいて、さらに、A1、M1、X1、及びY1によって形成される環は、錯体の形成容易性の観点から、5員環又は6員環であることが好ましい。
上記式(a)について、金属原子に配位及び結合して上記の構造を形成する化合物(以下、「配位子用化合物」ともいう)として具体的な例を表1〜4にまとめて示した。なお、表1〜4中、「Me」は、メチル基を意味する。
表1〜4に示した配位子用化合物のうちのいくつか取り上げ詳細に説明する。
X1が式(1)である場合の配位子用化合物の例として、下記式(101)で表されるグアヤコールが挙げられる。
グアヤコールは、ヒドロキシ基の水素原子が外れて酸素原子が金属原子に結合し、メトキシ基の酸素原子が金属原子に配位結合することにより、錯体を形成する。残部の1,2−フェニレン基がA1に該当する。
X1が式(1)である場合の配位子用化合物の他の例として、下記式(102)で表される4−ヒドロキシ−5−アザフェナントレンが挙げられる。4−ヒドロキシ−5−アザフェナントレンは、A1中の芳香環がY1の芳香族複素環と一体となっている配位子用化合物である。
4−ヒドロキシ−5−アザフェナントレンは、ヒドロキシ基の水素原子が外れて酸素原子が金属原子に結合し、ピリジン骨格中の窒素原子が金属原子と配位結合することにより、錯体を形成する。ナフタレン骨格がA1に該当し、ピリジン骨格とナフタレン骨格が縮合環を形成し、アザフェナントレン骨格となる。
X1が式(2)〜(4)である場合の配位子用化合物の例として、下記式(103)で表される2−アセチルピロールが挙げられる。
2−アセチルピロールは、ピロール骨格中の窒素原子が金属原子に結合し、アセチル基の酸素原子が金属原子に配位結合することにより、錯体を形成する。アセチル基とピロール基をつなぐ結合がA1に該当する。
〈導電粒子〉
導電粒子としては公知の粒子を用いることが可能であり、炭素系材料、金属酸化物を用いることが可能である。炭素系材料としては、カーボンブラック、グラファイト、球状炭素粒子が挙げられる。また、金属酸化物としては、導電性酸化スズ、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛が挙げられる。これらの中でも、表面層を形成する塗工液の塗工性、塗工液中の導電粒子の分散安定性の観点から、比較的比重の小さい、カーボンブラックまたはグラファイトを用いることが好ましい。
導電粒子の平均粒径(体積平均粒径)としては、導電粒子からの微細な放電を促進する観点から0.001μm以上であることが好ましい。また、塗工性、塗工液中の分散安定性の観点から、導電粒子の平均粒径は10μm以下であることが好ましい。特に、異常放電の抑制効果が高いため、導電粒子の平均粒径は、0.3μm以上5μm以下であることが好ましい、
〈表面層の形成方法〉
表面層103は、支持体101上、又は、弾性層102上にコーティング液の塗膜を乾燥させることにより形成することが可能である。
コーティング液は、有機溶剤中、金属アルコキシド、配位子用化合物、および、導電粒子を混合することにより得ることができる。入手可能な場合には、化合物が配位した金属アルコキシドを入手し、そのまま使用することも可能である。
金属アルコキシドとしては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびゲルマニウムのアルコキシドが用いられる。アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、iso−プロポキシド、n−ブトキシド、2−ブトキシド、t−ブトキシドが挙げられる。
配位子用化合物は、金属アルコキシド1モルに対して0.5モル以上添加することが好ましく、1モル以上添加することがより好ましい。また、複数の化合物や金属アルコキシドを組み合わせても良い。
式(a)で表される化合物において、金属原子と先述の配位子用化合物が結合していることは、1H−NMR分析をおこなうことで確認することが可能である。
コーティング液には、必要に応じ、金属アルコキシドを縮合してポリメタロキサンとするために、触媒として水、酸、塩基を加えることも可能である。また、コーティング液を加熱して縮合を促進しても良い。水を添加する場合、水の添加量は金属アルコキシド1モルに対して0.01モル〜5モル添加することが好ましく、0.1モル〜3モル添加することがより好ましい。
表面層103の膜性(膜の平滑性、強度)をより向上させるために、コーティング液にアルコキシシランを添加することもできる。用いられるアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランが用いられる。
テトラアルコキシシランとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(iso−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(2−ブトキシ)シラン、テトラ(t−ブトキシ)シランが挙げられる。
トリアルコキシシランとしては、トリメトキシヒドロシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシ(n−プロピル)シラン、トリメトキシ(iso−ポロポキシ)シラン、トリメトキシ(n−ブトキシ)シラン、トリメトキシ(2−ブトキシ)シラン、トリメトキシ(t−ブトキシ)シラン、トリメトキシ(n−ヘキシル)シラン、トリメトキシ(n−オクチル)シラン、トリメトキシ(n−デシル)シラン、トリメトキシ(n−ドデカ)シラン、トリメトキシ(n−テトラデカ)シラン、トリメトキシ(n−ペンタデカ)シラン、トリメトキシ(n−ヘキサデカ)シラン、トリメトキシ(n−オクタデ)シラン、トリメトキシシクロヘキシルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(3−グリシジルプロピル)シランなどのトリメトキシシラン類、トリエトキシヒドロシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシ(n−プロピル)シラン、トリエトキシ(iso−ポロポキシ)シラン、トリエトキシ(n−ブトキシ)シラン、トリエトキシ(2−ブトキシ)シラン、トリエトキシ(t−ブトキシ)シラン、トリエトキシ(n−ヘキシル)シラン、トリエトキシ(n−オクチル)シラン、トリエトキシ(n−デシル)シラン、トリエトキシ(n−ドデカ)シラン、トリエトキシ(n−テトラデカ)シラン、トリエトキシ(n−ペンタデカ)シラン、トリエトキシ(n−ヘキサデカ)シラン、トリエトキシ(n−オクタデ)シラン、トリエトキシシクロヘキシルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリエトキシ(3−グリシジルプロピル)シランの如きトリエトキシシラン類が挙げられる。
ジアルコキシシランとしては、具体的には、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシ(ビス−3−グリシジルプロピル)シランなどのジメトキシシラン類、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシ(ビス−3−グリシジルプロピル)シランなどのジエトキシシラン類が挙げられる。
用いる有機溶剤としては、金属アルコキシドと先述の化合物が溶解できる溶剤であれば特に限定はないが、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒など用いられる。アルコール系溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、シクロヘキサノールが挙げられる。エーテル系溶媒としては、具体的には、ジメトキシエタンが挙げられる。セロソルブ系溶媒としては、具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブが挙げられる。ケトン系溶媒としては、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンが挙げられる。エステル系溶媒としては、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチルなどが挙げられる。有機溶剤は、単独で用いるほか、2種以上の混合物も使用可能である。
表面層103を形成させる方法は特に限定はなく、一般的に用いられる方法を選択することができる。具体的には、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布が挙げられる。
表面層103の形成後は、溶剤を乾燥させるために、加熱処理することも可能である。
また、表面層103を表面処理することにより、動摩擦、表面自由エネルギーなどの表面物性を調整することが可能である。具体的には、活性エネルギー線を照射する方法があり、活性エネルギー線としては、紫外線、赤外線、電子線が挙げられる。
表面層103の厚さは、0.005μm〜30μmであることが好ましく、0.005μm〜5μmであることがより好ましい。
(ii)第二の実施形態
帯電部材の表面層103は、下記式(b)で表される化合物を含むバインダーと、該バインダーに分散されてなる導電粒子とを含有する。
(式(b)中、
L2は、M2Om/2で表される構造単位を有するポリメタロキサンを表し、
M2は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、Al、Ga、In及びGeからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属原子を表し、
mは、金属原子M2の価数がqである場合、1以上q以下の整数を表し、
R21〜R25は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はトリメチルシリル基を表し、
シクロペンタジエニル基は、L2中の金属原子M2に配位している。)
式(b)において、ポリメタロキサン中の金属原子M2は、複数種の金属原子であっても良い。また、ポリメタロキサンは、SiOs/2(sは1以上4以下の整数)で表される構造単位を有していても良い。この構造単位を有することで、ポリメタロキサンの非晶性が向上し、膜の平滑性や強度をより一層向上させることが可能である。
式(b)中のR21〜R25は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基又はトリメチルシリル基を表す。R21〜R25は、特には電子供与性を示す基であることが好ましい。すなわち、R21〜R25は、それぞれ独立して、メチル基、t−ブチル基又はトリメチルシリル基であることが好ましい。
式(b)について、金属原子に配位及び結合して上記の構造を形成する化合物(配位子用化合物)として具体的な例を表5にまとめて例示した。
導電粒子は、第一の実施形態で述べたものと同様である。
本実施形態に係る表面層103は、第一の実施形態に係る表面層103の場合と同様の方法で形成することが可能である。
(iii)第三の実施形態
帯電部材の表面層103は、フェノール性水酸基を含む構成単位を有する重合体であって、該構成単位の少なくとも一部のフェノール性水酸基の水素原子が、下記式(c)で表される基によって置換されている重合体を含むバインダーと、該バインダーに分散されてなる導電粒子とを含有する。
(式(c)中、
M3は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、Al、Ga、InおよびGeからなる群より選ばれる金属原子を表し、
lは0以上k以下の整数を表し、
M3がAl、Ga、Inの場合、k=2、
M3がTi、Zr、Hf、Geの場合、k=3、
M3がNb、Ta、Wの場合、k=4、
M3がVの場合、k=2または4であり、
R30は、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、
L3は、下記式(d)で表される構造を有する配位子または(e)で表される構造を有する配位子を表し、
*は、前記フェノール性水酸基の酸素原子との結合部位を表す。)
(式(d)中、
X2は、下記式(5)〜(8)で表されるいずれかの構造を表し、
Y2は、M3に配位する部位を有する基を表し、
A2は、M3、X2、およびY2と共に4〜8員環を形成するのに必要な結合または原子団を表し、
**はM3に結合または配位する部位を表す。)
(式(5)〜(8)中、**はM3との結合部位を表し、***はA2との結合部位を表す。)
(式(e)中、R31〜R35は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはトリメチルシリル基を表し、****はM3との配位部位を表す。)
〈フェノール性水酸基を有する構成単位を有する重合体〉
フェノール性水酸基を有する構成単位を有する重合体としては、ポリビニルフェノール(ポリヒドロキシスチレン)の如きビニルフェノールを構成単位として有する重合体、および、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
〈式(c)で表される基〉
前記式(c)において、lは好ましくは1以上k以下の整数である。lが0である場合、すなわち、フェノール性水酸基の酸素原子が金属アルコキシドだけと結合している場合と比較して、lが1以上である場合の方が、式(c)で表される構造の安定性が高い。lはさらに好ましくは、1または2である。また、lが2以上である場合、L3は異なるものであってもよい。
式(c)において、R30としては、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基である。
式(6)中、窒素原子は、置換もしくは未置換の、ピロール骨格、インドール骨格、ピロリジン骨格、カルバゾール骨格、イミダゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、ピラゾール骨格、インダゾール骨格、トリアゾール骨格、ベンゾトリアゾール骨格、テトラゾール骨格、ピロリドン骨格、ピペリジン骨格、モルホリン骨格、ピペラジン骨格の如き複素環骨格中の窒素原子であってもよい。該置換基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐の、アルキル基またはアルコキシ基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜4である。(以降の置換基も特別の記載が無い限り同様とする。)窒素原子が複素環骨格中の窒素原子でない場合において、窒素原子に、A2およびM3以外で結合している原子または基は、水素原子、置換もしくは未置換のアリール基または炭素数1〜10のアルキル基を表す。具体的には、フェニル基、ナフチル基の如きアリール基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基の如き直鎖のアルキル基、イソプロピル基、t−ブチルの如き分岐鎖を持つアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基の如き環状アルキル基が挙げられる。特に、式(6)で表される基としては、未置換のアミノ基、炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基またはピロール骨格を有する2価の基から、窒素原子に結合する水素原子を1つ取り除いた基であることがよい。
式(d)中のY2は、式(c)中のM3に配位する部位を有する基を表し、非共有電子対を持つ原子を含む基である。具体的には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオカルボニル基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のイミノ基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。
アリールオキシ基としては、置換または未置換の、フェノキシ基およびナフチルオキシ基が挙げられる。
アルキルチオ基としては、アルコキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた基が挙げられる。
アリールチオ基としては、アリールオキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた基が挙げられる。
カルボニル基としては、ホルミル基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド基(R−CO−NR−またはR−NR−CO−)、ウレイド基(NH2−CO−NH−)、ウレア基(R−NH−CO−NH−)が挙げられる。アルキルカルボニル基およびアルコキシカルボニル基中のアルキル基、並びに、アミド基およびウレア基中のRは、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基の如き直鎖のアルキル基、イソプロピル基、t−ブチルの如き分岐のアルキル基が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4である。
アリールカルボニル基としては、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素とカルボニル基とが結合した基、または、置換もしくは未置換の芳香族複素環とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。具体的には、置換または未置換の、フェニルカルボニル基およびナフチルカルボニル基が挙げられる。
チオカルボニル基としては、前記カルボニル基の酸素原子を硫黄原子に置き換えた基が挙げられる。
置換されたアミノ基としては、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、置換または未置換のアリールアミノ基が挙げられる。具体的には、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基の如き炭素数1〜10のモノアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基の如き炭素数1〜10のジアルキルアミノ基、モノフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基の如き、置換または未置換の炭素数1〜10のアリールアミノ基が挙げられる。
未置換のイミノ基は、>C=NHまたはN=CH2と表される基である。未置換のイミノ基中の水素原子は、炭素数1〜10のアルキル基、または、置換もしくは未置換のアリール基(フェニル基、ナフチル基)によって置換されていても良い。
また、Y2は脂肪族または芳香族の複素環骨格を有する基であっても良い。芳香族の複素環骨格としては、置換または未置換の、チオフェン骨格、フラン骨格、ピリジン骨格、ピラン骨格、ベンゾチオフェン骨格、ベンゾフラン骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格、オキサゾール骨格、ベンゾオキサゾール骨格、チアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、チアジアゾール骨格、ベンゾチアジアゾール骨格、ピリダジン骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、フェナジン骨格、アクリジン骨格、キサンテン骨格、イミダゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、ピラゾール骨格、インダゾール骨格、トリアゾール骨格、ベンゾトリアゾール骨格およびテトラゾール骨格が挙げられる。脂肪族の複素環骨格としては、置換または未置換のモルホリン骨格が挙げられる。
上記したY2の中でも、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換または未置換のフェノキシ基、置換または未置換のナフチルオキシ基、ホルミル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルカルボニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシカルボニル基、チオカルボニル基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、エチルメチルアミド基、未置換のアミノ基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノフェニルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、未置換のイミノ基、メタンイミノ基、エタンイミノ基、ピリジン骨格を有する基、キノリン骨格を有する基、または、イソキノリン骨格を有する基であることが好ましい。
式(d)中のA2は、M3、X2、およびY2と共に4〜8員環を形成するのに必要な結合または原子団である。A2が、M3、X2、およびY2と共に4〜8環を形成するのに必要な原子団である場合における当該原子団の例を以下に挙げる。メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトレメチレン基の如きアルキレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基の如きアルケニレン基、置換もしくは未置換の芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、キノリン環およびイソキノリン環)を含む原子団。A2としては、特には、結合、アルキレン基、または、置換もしくは未置換の芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、ピリジン環、インドール環、キノリン環およびイソキノリン環)を含む原子団であることが好ましい。A2がこれらである場合は、A2がアルケニレン基である場合と比較して、(d)で表される構造の安定性が高い。
A2が芳香環を含む原子団である場合、Y2の芳香族複素環、X2の芳香族複素環またはその両方の芳香族複素環と縮合環を形成してもよい。
A2、M3、X2、およびY2によって形成される環は、錯体の形成容易性の観点から、5員環または6員環であることが好ましい。
上記式(d)で表される配位子は、具体的には以下のものが好ましい。
X2が式(5)で表される配位子である場合、式(d)で表される配位子は、下記式(9)〜(13)で表されるいずれかの構造であることが好ましい。
(式(9)〜(12)中、R101〜104は、それぞれ独立して、水素原子、メトキシ基、または、エトキシ基であり、Y21〜Y24は、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、メチルエチルアミド基、メチルチオ基、エチルチオ基、チオカルボニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、未置換のイミノ基、メタンイミノ基、エタンイミノ基、ピリジン骨格を有する基、キノリン骨格を有する基、または、イソキノリン骨格を有する基であり、**はM3との結合部位を表す。)
(式(13)中、R105は、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、または、ベンジル基であり、R106は、水素原子、または、炭素数1〜4のアルキル基であり、R107は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、または、ベンジル基であり、**はM3との結合部位を表す。)
また、X2が式(6)〜(8)で表される配位子である場合、式(d)において、X2、A2、および、Y2の組み合わせは、以下であることが好ましい。
A2が、結合、メチレン基、エチレン基、または、トリメチレン基であり、X2が、下記式(6a)〜(6c)、(7)および(8)のいずれかで表される構造であり、Y2が、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、メチルエチルアミド基、メチルチオ基、エチルチオ基、チオカルボニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、未置換のイミノ基、メタンイミノ基、エタンイミノ基、ピリジン骨格を有する基、キノリン骨格を有する基、または、イソキノリン骨格を有する基である。
(式(6a)〜(6c)、(7)および(8)中、**はM3との結合部位を表し、***はA2との結合部位を表す。)
下記式(d)で表される構造を有する配位子を形成し得る化合物(以下「配位子用化合物」と称す)の具体的な例は、上記表1〜4に示した化合物と同様である。これらの中からいくつか取り上げ、具体的に説明する。
X2が式(8)である場合の配位子用化合物の例として、下記式(104)で表されるo−アニス酸が挙げられる。
o−アニス酸は、カルボキシル基の水素原子が外れて酸素原子が金属原子に結合し、メトキシ基の酸素原子が金属原子に配位結合することにより、錯体を形成する。残部の1,2−フェニレン基がA2に該当する。
o−アニス酸とチタンイソプロポキシドをモル比2:1で混合させて錯体を形成し、ポリビニルフェノールと混合した場合、下記式(105)のような構造を取ると考えられる。
また、表1〜4に示した配位子用化合物以外の配位子用化合物の例として、上記式(13)で表される配位子用化合物の例を挙げる。
アセチルアセトン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−へプタンジオン、2,6−ジメチル−3,5−へプタンジオン、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、3−フェニル−2,4‐ペンタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンの如きβ−ジケトン、および、アセト酢酸メチル、3−オキソペンタン酸メチル、4−オキソヘキサン酸メチル、イソブチリル酢酸メチル、4,4−ジメチル−3−オキソ吉草酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸tert−ブチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸ベンジルの如きβ−ケトエステル。
これらのうち、例えば下記式(106)で表されるアセチルアセトンは、エノール体のヒドロキシ基の酸素原子がX2、メチルカルボニル基がY2に該当し、残部がA2である。
アセチルアセトンとチタンイソプロポキシドをモル比2:1で混合させて錯体を形成し、ポリビニルフェノールと混合した場合、下記式(107)のような構造を取ると考えられる。
前記式(e)において、R31〜R35は電子供与性を示す基であることが好ましい。すなわち、メチル基、t−ブチル基またはトリメチルシリル基であることが好ましい。
上記式(e)について、金属原子に配位および結合して上記の構造を形成する化合物として具体的な例は、上記表5に例示した化合物と同様である。
〈導電粒子〉
導電粒子は、第一の実施形態に記載したものと同様である。
〈表面層の形成方法〉
本実施形態に係る表面層103は、フェノール性水酸基を含む構成単位を有する重合体と、下記式(f)で表される構造を有する金属アルコキシドとを含むコーティング液の塗膜を乾燥させることにより形成することが可能である。つまり、本実施形態に係る表面層103は、フェノール性水酸基を含む構成単位を有する重合体と、下記式(f)で表される構造を有する金属アルコキシドとの反応物を含む。なお、その反応物はアモルファス状である。
式(f)中、M4は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、Al、Ga、InおよびGeからなる群より選ばれる金属原子を表す。jは0以上i以下の整数を表し、M4がAl、Ga、Inの場合、i=3、M4がTi、Zr、Hf、Geの場合、i=4、M4がNb、Ta、Wの場合、i=5、M4がVの場合、i=3または5である。R40は、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。jは好ましくは1以上i以下の整数である。jが0である場合、すなわち、フェノール性水酸基の酸素原子が金属アルコキシドだけと結合している場合と比較して、jが1以上である場合の方が、式(d)で表される構造の安定性が高い。さらに好ましくは、jは1または2である。また、jが2以上である場合、L4は異なるものであってもよい。
R40としては、好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基である。
L4は、下記式(g)で表される構造を有する配位子または(h)で表される構造を有する配位子を表す。
式(g)中、**はM4に結合または配位する部位を表す。A3およびY3は、それぞれ先に述べたA3およびY3と同意義である。X3は、下記式(14)〜(17)で表されるいずれかの構造を表す。
式(14)〜(17)中、**はM4との結合部位を表し、***はA3との結合部位を表す。式(14)〜(17)の具体的な構造は、それぞれ、前記式(5)〜(8)と同意義である。
式(h)中、****はM4との配位部位を表す。R41〜R45は、それぞれ、先に述べたR31〜R35と同意義である。
式(f)で表される金属アルコキシドは、金属アルコキシドと、必要に応じて先に述べた配位子用化合物とを混合して得ることが可能である。金属アルコキシドとしては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびゲルマニウムのアルコキシドが用いられる。アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、iso−プロポキシド、n−ブトキシド、2−ブトキシド、t−ブトキシドが挙げられる。入手可能な場合には、配位子用化合物が配位した金属アルコキシドを入手し、そのまま使用することも可能である。
配位子用化合物は、金属アルコキシド1モルに対して0.5モル以上添加することが好ましく、1モル以上添加することがより好ましい。また、複数の化合物や金属アルコキシドを組み合わせても良い。また、金属アルコキシドは、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する重合体に対して、0.01モル以上添加することが好ましく、0.1モル以上添加することがより好ましい。
コーティング液には、第一の実施形態と同様に、アルコキシシランを添加しても良い。また、表面層103は、コーティング液を用いて第一の実施形態と同様にして形成することが可能である。
〔電子写真装置およびプロセスカートリッジ〕
図2に、本発明の帯電部材を有する電子写真装置の一例を示す。
感光体21は、回転ドラム型の像担持体である。この感光体21は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度で回転駆動する。
帯電ローラ22は帯電部材である。帯電ローラ22に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S2によって帯電手段が構成されている。帯電ローラ22は、感光体21の表面に、所定の押圧力で接触させてあり、感光体21の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラ22に対して帯電バイアス印加電源S2から所定の直流電圧(後述の実施例では−1050Vとした)が印加される(DC帯電方式)ことで、感光体21の表面が所定の極性電位(後述の実施例では暗部電位−500Vとした)に一様に帯電処理される。
感光体21の帯電処理面に露光手段23により目的の画像情報に対応した像露光が形成される。感光体帯電面の露光明部の電位(後述の実施例では明部電位−150Vとした)が選択的に低下(減衰)して感光体21に静電潜像が形成される。露光手段23には公知の手段を利用することができ、レーザービームスキャナーを好適に例示することができる。
現像ローラ24aは、感光体21表面の静電潜像の露光明部に、感光体21の帯電極性と同極性に帯電しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する。後述の実施例では現像バイアス−400Vとした。現像方式としては特に制限はなく、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式および磁気ブラシ方式が存在するが、特にカラー画像を出力する電子写真装置には、トナーの飛散性改善を目的として、接触現像方式が好ましいといえる。
転写ローラ25は、感光体21に所定の押圧力で接触させてあり、感光体21の回転と順方向に感光体21の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S4からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。感光体21と転写ローラ25の接触部に不図示の給紙機構から転写材Pが所定のタイミングで給紙され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ25により、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電される。このことにより、感光体21と転写ローラ25との接触部において感光体面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。転写ローラ25としては、公知の手段を利用することができる。具体的には、金属の導電性支持体上に中抵抗に調製された弾性層を被覆してなる転写ローラを例示することができる。
トナー画像の転写を受けた転写材Pは感光体面から分離して、不図示の定着装置へ導入されて、トナー画像の定着を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写部へ再導入される。転写残余トナーの感光体21上の残留物は、クリーニングブレードを有するクリーニング装置(不図示)により、感光体21上から回収される。また、感光体21に残留電荷が残るような場合には、転写後、帯電ローラ22による一次帯電を行う前に、前露光装置(不図示)によって感光体21の残留電荷を除去してもよい。
本発明に係るプロセスカートリッジは、少なくとも帯電部材と感光体を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱可能に構成されている。後述の実施例では、帯電ローラ22、感光体21、および、現像ローラ24aを一体に支持するプロセスカートリッジを用いた。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また、実施例1〜11、13〜15は、参考例である。
<コーティング液の調製>
〔コーティング液E1〕
100mLのガラス製容器に、2−ブタノール15.0g、チタンイソプロポキシド0.74gを秤量し、撹拌し溶解してチタンイソプロポキシド/2−ブタノール溶液を調製した。別の容器に、グアヤコール0.32g、エタノール34.0gを秤量し、撹拌し溶解してグアヤコール/エタノール溶液を調製した。先に調製したチタンイソプロポキシド/2−ブタノール溶液に、グアヤコール/エタノール溶液を加え、撹拌した後に、導電粒子No.1 0.27g(人造黒鉛粒子、平均粒子径;3μm、商品名;ニカビーズMPX−F、メーカー名;日本カーボン)を加え、ペイントシェーカーにて分散処理を行い、コーティング液E1を調製した。
〔コーティング液E2〜E15〕
コーティング液の処方を表6に示した処方にしたこと以外は実施例1と同様にして、コーティング液E2〜E15を調製した。尚、コーティング液の調製に使用した導電粒子を下記表7に示す。
〔コーティング液E16〕
100mLのガラス製容器に、2−ブタノール15.0g、チタンイソプロポキシド0.74gを秤量し、撹拌し溶解してチタンイソプロポキシド/2−ブタノール溶液を調製した。別の容器に、グアヤコール0.32g、エタノール34.0gを秤量し、撹拌し溶解してグアヤコール/エタノール溶液を調製した。先に調製したチタンイソプロポキシド/2−ブタノール溶液に、グアヤコール/エタノール溶液を加え、30分撹拌した。次に、予め調製しておいたポリビニルフェノール(シグマアルドリッチジャパン株式会社)のメチルイソブチルケトン1wt%溶液15.0gを加え、30分撹拌した。次に、導電粒子No.1 0.40gを加え、ペイントシェーカーにて分散処理を行い、コーティング液E16を調製した。
〔コーティング液E17〜E21〕
コーティング液の処方を表8に示した処方にしたこと以外はコーティング液E16と同様にして、コーティング液E17〜E21を調製した。コーティング液の調製に使用した導電粒子は先に述べたものと同じである。
〔コーティング液C1〜C3〕
コーティング液の処方を表8に示した処方にしたこと以外はコーティング液E1と同様にして、コーティング液C1〜C3を調製した。コーティング液の調製に使用した導電粒子は先に述べたものと同じである。
〔コーティング液C4〕
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が16質量%となるように調整した。
この溶液71.4gに対して、導電粒子No.3を2.0g、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物であるブロックイソシアネートを8.0g加え、ペイントシェーカーにて分散処理を行い、コーティング液C4を調製した。
<実施例1>
〔帯電ローラの作製〕
下記表9に示した材料を、6L加圧ニーダー(使用装置:商品名、TD6−15MDX トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド[商品名:サンセラーTBZTD、三新化学工業(株)製]4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径30.5cm(12インチ)のオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性層用の混練物Iを得た。
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の支持体(表面をニッケルメッキ加工したもの)を準備した。そして、この支持体の、軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを30分間温度80℃で乾燥させた後、さらに1時間温度120℃で乾燥させ、接着層付き芯金を得た。
混練物Iを、押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の弾性層を積層した弾性ローラを作製した。
次に、未加硫の弾性層が積層された弾性ローラを80℃にて30分、続いて160℃にて30分加熱し加硫を行い、加硫後の弾性ローラを得た。
次に、加硫後の弾性ローラの弾性層部分の両端を切断し、弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、弾性層部分の表面を回転砥石で研磨した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状の弾性ローラ(表面研磨後の弾性ローラ)を得た。
次に、表面研磨後の弾性ローラの弾性層上に、コーティング液E1を、リング塗布(総吐出量:0.100ml、リング部のスピード:85mm/s)した。コーティング液E1の塗膜の表面に、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射し、塗膜を硬化させて表面層を形成した。紫外線の照射には低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。以上のようにして帯電ローラE1を作製した。
〔評価〕
レーザープリンタ(商品名:HPColorLaserJetCP4525、HP社製)用のシアンカートリッジに装着されている帯電ローラを先に作製した帯電部材E1に置き換えた。レーザープリンタ(商品名:HPColorLaserJetCP4525、HP社製)に上記のカートリッジをセットして、A4サイズの用紙にハーフトーン画像を形成した。なお、電子写真画像の形成に際して、前露光は行わず、また、帯電電圧を−1162V、転写電圧を2575Vに設定した。この設定は、異常放電がより発生しやすい環境を作り出すためのものである。また、電子写真画像の出力は、低温低湿環境(温度15℃、湿度10%)の下で行った。
そして、得られたハーフトーン画像について、異常放電に起因する画像ムラの有無を目視で観察することにより、異常放電が発生したか否かを評価した。
A:異常放電なし
B:異常放電あり
この結果、帯電部材E1では異常放電が観測されなかった。
<実施例2〜18、比較例1〜3>
コーティング液E1をコーティング液E2〜18に変えたこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価を行った。
また、コーティング液E1をコーティング液C1〜C3に変えたこと以外は実施例1と同様にして比較例に係る帯電ローラを作製し、評価を行った。
評価結果をまとめて表10に示す。
<比較例4>
コーティング液C4を、実施例1と同様に作製した弾性ローラ(表面研磨後の弾性ローラ)の弾性層上にリング塗布(総吐出量:0.100ml、リング部のスピード:85mm/s)した。塗布後の弾性ローラを、常温で30分間以上風乾し、さらに熱風循環乾燥機にて、80℃で1時間、160℃で1時間乾燥して、塗膜を硬化させて、帯電ローラC4を作製した。帯電ローラC4についても実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。